説明

マイクロカプセル及びその製造方法

【課題】体内に摂取可能で内包物の体内吸収に適したサイズの微小で内包物の抑臭が可能なマイクロカプセル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】カチオン性高分子、アニオン性高分子、水、及び揮発性物質と水に対する溶解度が5%以下の動植物由来抽出物と複数の脂肪酸から構成される植物油とを含む疎水性物質を含有し、カチオン性高分子(c)とアニオン性高分子(a)との質量比(a/c)が3以上である乳濁液を準備する工程と、乳濁液に含まれる揮発性物質を揮発する工程と、乳濁液を相分離して、疎水性物質がカチオン性高分子及びアニオン性高分子で被覆されたマイクロカプセルを得る工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、臭い等があるが飲食物(例えば清涼飲料、加工食品など)、医薬品、化粧品等への添加物として有用な生物抽出物を取り扱うのに好適なサイズのマイクロカプセル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカチオンコロイドの一つであるゼラチンを皮膜素材としたカプセル、いわゆるゼラチンカプセルは、医薬品のみならず、近年の健康志向の高まりから栄養補助食品、機能性食品などの健康食品の分野において数多く用いられている。ゼラチンカプセルは、医薬や食品に含まれる成分や香料の保護、安定化、味・臭いのマスキング等を目的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ゼラチン等を使用したポリカチオンコロイドと、アラビアガム、ペクチン、アルギネート類、CMC等のアニオン性多糖類を用いたポリアニオンコロイドとを混合した系をpH調製して相分離を起こさせ、コアとなる物質の周囲にカプセル壁膜を形成する複合コアセルベーション法を利用したマイクロカプセルの製法は広く知られており、既に実用に供されている。
【0004】
近年、健康志向の分野が注目されている中、特に抗酸化作用を持つ活性物質が注目されている。中でも、カロチノイド類は、その抗酸化作用の高さから栄養補助食品として均質に手軽に確実に摂取することができるものの1つである。
【0005】
ところが、カロチノイドは、極めて酸化されやすく、水溶性も低い(一般に水などの極性溶媒に溶けにくい)ので、摂取が一般に困難である。また、油溶性食品成分、例えば植物や動物のエキスなどを含む調理、食品加工では、水に溶けて水面に油滴が浮かばない等の性質が求められることから、カロチノイドは使用しにくい素材であり、摂取が敬遠される現状がある。
そこで、カロチノイドを封入した微小な構造を有する組成物とすることが検討されている(例えば、特許文献2〜3参照)。
【0006】
微小な構造に関連する技術として、例えば、オリゴペプチドを含有する水相をゼラチン等の蛋白質などの高分子中に分散してマイクロカプセルとすること、及びその製造方法の一つにコアセルべーション法があることが記載されている(例えば、特許文献4参照)。また、マンニトール及びコーンスターチからなる組成物や植物油等を使用して被覆することが開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特開平6−254382号公報
【特許文献2】特開平3−66615号公報
【特許文献3】特開平2−51594号公報
【特許文献4】特開平9−208488号公報
【特許文献5】特開平9−77669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、単離又は合成されたカロチノイド類は安定性が低く、得られた組成物の製造から保存、摂取過程に至るまでの経過で安定に保持することができず、例えば人体に服用する場合に、実際に体内に届くまでの安定性を確保することが難しい。
例えば、体内に服用する場合、pHの低い胃部や比較的pHが高くなる腸部など環境変化の影響を受けやすい。服用したカロチノイド類の吸収効率を得るためには、これらのpHの変化に対して安定にかつ小径に保たれ、小腸等に達すると吸収されやすくなる等が望まれる。
【0008】
特に近年では、市場における消費者の好みは天然品指向にあり、天然のカロチノイドが好まれている。
【0009】
さらに、天然カロチノイドを高濃度に含む天然の動植物油由来の抽出物を混合した食品類が数年来提供されているが、抽出物の分散安定性が低く、凝集体として析出するなど摂取効率が改善されていない。そればかりか、これら天然の動植物油由来の抽出物は、独特の臭みがあるために摂取を敬遠させる課題がある。そのため、摂取時の抑臭が望まれていた。
【0010】
上記に鑑みて、これまで良質な動植物抽出油からの抗酸化作用物質を皮膜した微小な分散物を得る技術が検討されてきているが、例えば食用などのような場合おいて、摂取、体内吸収に支障を来すことのない微小サイズ(例えば1μm以下)に分散された分散物の安定製造は未だ困難な状況にある。
【0011】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、例えば体内摂取において内包物の体内吸収が阻害されにくい微小サイズを有し、内包物の抑臭が可能なマイクロカプセル及びその製造方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> カチオン性高分子、アニオン性高分子、水、及び揮発性物質と水に対する溶解度が5%以下の動植物由来抽出物と複数の脂肪酸から構成される植物油とを含む疎水性物質を含有し、前記カチオン性高分子(c)と前記アニオン性高分子(a)との質量比(a/c)が3.0以上である乳濁液を準備する工程と、前記乳濁液に含まれる揮発性物質を揮発する工程と、前記乳濁液を相分離して前記疎水性物質を覆うコアセルベート皮膜を形成する工程と、前記コアセルベート皮膜をゲル化する工程と、を有するマイクロカプセルの製造方法である。
【0013】
<2> 前記乳濁液の相分離は、前記乳濁液を前記カチオン性高分子の等電点以下のpHに調整すると共に、温度を下げてゲル化することにより、前記疎水性物質の周りに皮膜形成することを特徴とする前記<1>に記載のマイクロカプセルの製造方法である。
<3> 前記動植物由来抽出物(α)と前記植物油(β)との質量混合比(α/β)が1より小さいことを特徴とする前記<1>又は<2>に記載のマイクロカプセルの製造方法である。
<4> 前記乳濁液が界面活性剤を更に含み、前記界面活性剤がショ糖エステル類及びポリオキシエチレンソルビタンエステル類からなる群より選択される少なくとも1種であることをとする前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載のマイクロカプセルの製造方法である。
【0014】
<5> 前記動植物由来抽出物の少なくとも一種が、天然カロチノイドであることを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれか1つに記載のマイクロカプセルの製造方法である。
<6> 前記動植物由来抽出物の少なくとも一種が、藻類抽出物であることを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のマイクロカプセルの製造方法である。
【0015】
<7> 前記<1>〜<6>のいずれか1つに記載のマイクロカプセルの製造方法により作製されたマイクロカプセルである。
<8> カチオン性高分子及びアニオン性高分子により疎水性物質が被覆されているマイクロカプセルであって、前記疎水性物質は天然カロチノイドを含有する動植物由来抽出物(α)と植物油(β)とを含み、動植物由来抽出物と植物油との質量混合比(α/β)が1より小さく、一次粒子の体積標準でのメジアン径が0.05〜1.0μmであることを特徴とする前記<7>に記載のマイクロカプセルである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば体内摂取において内包物の体内吸収が阻害されにくい微小サイズを有し、内包物の抑臭が可能なマイクロカプセル及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のマイクロカプセル及びその製造方法について詳細に説明する。
本発明のマイクロカプセルの製造方法は、カチオン性高分子、アニオン性高分子、水、及び揮発性物質と動植物由来抽出物と植物油とを含む疎水性物質を含有し、カチオン性高分子(c)とアニオン性高分子(a)との質量比(a/c)が3.0以上である乳濁液を準備する工程(以下、「乳濁液準備工程」ということがある。)と、乳濁液に含まれる揮発性物質を揮発する工程(以下、「揮発工程」ということがある。)と、乳濁液を相分離して疎水性物質を覆うコアセルベート皮膜を形成する工程(以下、「皮膜形成工程」ということがある。)と、コアセルベート皮膜をゲル化する工程(以下、「ゲル化工程」ということがある。)とを設けて構成されたものである。また、必要に応じて、他の工程を設けて構成することができる。
【0018】
本発明のマイクロカプセルの製造方法は、いわゆる複合コアセルベーション法に分類される方法である。
【0019】
本発明のマイクロカプセルの製造方法では、乳濁液準備工程において、揮発性物質と動植物由来抽出物と植物油とを含む疎水性物質が水中に液体の小滴として分散された乳濁液が準備される。この液体の小滴がコアセルベーション法における芯物質として機能する。この液体の小滴(芯物質)に含まれる揮発性物質の少なくとも一部が、揮発工程において揮発し、揮発性物質の少なくとも一部が揮発することにより、乳濁液中の芯物質の粒径が小さくなる。その結果として、微小な(好ましくは1μm以下)マイクロカプセルを得ることが可能となる。
【0020】
以下、本発明について各工程毎に説明する。
<乳濁液準備工程>
乳濁液準備工程では、カチオン性高分子、アニオン性高分子、水、及び揮発性物質と水に対する溶解度が5%以下の動植物由来抽出物と複数の脂肪酸から構成される植物油とを含む疎水性物質を含有し、カチオン性高分子(c)とアニオン性高分子(a)との質量比(a/c)が3.0以上である乳濁液を準備する。
【0021】
乳濁液準備工程で用いられるカチオン性高分子としては、等電点を有し、ゲル化し得る親水性コロイドが使用され、一般の水溶性タンパク質を用いることができる。
より具体的には、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク、コラーゲン、アルブミンなどを例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、複数のカチオン性高分子を組み合わせて用いてもよい。中でも、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等のゼラチンが好ましく、酸処理ゼラチンを用いることが最も好ましい。
【0022】
カチオン性高分子の乳濁液中における含有量としては、乳濁液の質量に対して、0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜20質量%である。カチオン性高分子の量が前記範囲内であると、乳濁液準備液の調製における均一溶解性確保の点で好適である。
【0023】
乳濁液準備工程で用いられるアニオン性高分子としては、具体的には例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ブチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、寒天、アミロース、グルコマンナン、デキストランなどの多糖類、メタクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、複数のアニオン性高分子を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち、小腸での吸収性の点で、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウムがより好ましい。
【0024】
アニオン性高分子の乳濁液中における含有量としては、乳濁液の質量に対して、0.01〜80質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜60質量%である。アニオン性高分子の量が前記範囲内であると、後述の皮膜形成工程における1次粒子の凝集抑制の点で有効である。
【0025】
カチオン性高分子とアニオン性高分子との好ましい組み合わせとしては、皮膜形成工程における1次粒子の凝集抑制の点で、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等のゼラチンとアラビアゴム又はカルボキシメチルセルロースナトリウムとの組み合わせが好ましい。
【0026】
本発明においては、揮発性物質等を含む疎水性物質が乳濁液中に液体の小滴として存在する必要があることから、揮発性物質と動植物由来抽出物と植物油とを含む疎水性物質が液体である必要がある。液体として存在するのであれば、疎水性物質は均一な液体であっても分散液等の不均一な液体であってもよい。
【0027】
本発明における疎水性物質は、コアセルベーション法を利用して得られるマイクロカプセルの芯物質となる。疎水性物質は、揮発性物質と、水に対する溶解度が5%以下の動植物由来抽出物と、複数の脂肪酸から構成される植物油とを含有し、更に目的とするマイクロカプセルに応じて任意に選択した他の成分を含有することができる。
【0028】
疎水性物質の乳濁液中における含有量としては、乳濁液の質量に対して、0.001〜75質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20質量%である。疎水性物質の量が前記範囲内であると、疎水性物質量の確保の点で好適である。
【0029】
芯物質となる疎水性物質に含まれる揮発性物質としては、カチオン性高分子を含む水溶液及びアニオン性高分子を含む水溶液との混和性が貧なるもの、すなわち全く混和しないものから5%程度しか混和しない有機溶媒が好ましい。
【0030】
本発明において「5%混和する」とは、乳化を行なう温度における、水への溶解度が5質量%であることを意味する。また、揮発性とは、後述する揮発工程で大気中に揮発し得る性質をいい、揮発の方法(加温、送風など)に合わせて選択すればよい。
疎水性物質に揮発性物質を含有して後工程で揮発させることにより、サイズのより微小なカプセルを形成できる。
【0031】
揮発性物質として用いられる有機溶媒の誘電率は、得られた皮膜安定性の点で、10以下が好ましい。揮発性物質として用いられる有機溶媒の沸点は、100℃未満が好ましく、35〜90℃がさらに好ましい。揮発性物質として用いられる有機溶媒は、乳化を阻害しないものであることが好ましい。無機微粒子や有機微粒子を分散した芯物質を用いる場合には、揮発性物質として用いられる有機溶媒はこれらの微粒子の分散安定性を阻害しないものが好ましい。
【0032】
揮発性物質として用いられる有機溶媒としては、具体的には、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、酢酸メチル、酢酸エチル等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また複数の有機溶媒を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
揮発性物質の疎水性物質中における量としては、60〜95質量%が好ましく、より好ましくは75〜90質量%である。揮発性物質の量を前記範囲内とすると、得られた皮膜安定性の点で好適である。
【0034】
前記疎水性物質には、水に対する溶解度が5%以下の動植物由来抽出物の少なくとも一種が含有される。この動植物由来抽出物を含有すると、カプセル粒子の凝集が防止され微小なカプセルを形成でき、また、臭い成分であるが芯物質として内包されるので抑臭される。この動植物由来抽出物は、中でも天然カロチノイドを含むものが好ましく、それ自体臭いを持つものが多い。
【0035】
本発明における動植物由来抽出物は、水に対する溶解度が5%以下である。水に対する溶解度が5%を超えると、疎水性物質を油相として用い乳化したときに水相側に移動してしまい、抽出物(特にカロチノイド成分)の安定性及び抑臭効果が低下する。動植物由来抽出物は、天然、人工のいずれであってもよい。具体例としては、海老殻・かに殻抽出物や、ヘマトコッカス藻抽出物等の藻類抽出物、オキアミ抽出物、放線菌抽出物などの天然カロチノイド、あるいはカロチノイドを親鶏に与えた鶏卵抽出物、等から選択することができる。
【0036】
カロチノイドの一種にアスタキサンチンがあるが、アスタキサンチンは、高い抗酸化作用を持ち、紫外線や脂質過酸化から生体を防御し得るもので、酸化されやすい。
【0037】
近年、健康志向の分野が注目され、中でも抗酸化作用を持つ活性物質が注目されている。その中でも、カロチノイド類は、その抗酸化作用の高さから栄養補助食品として均質に手軽に確実に摂取することが望まれている。
上記の点で、動植物由来抽出物としては、天然カロチノイドが好ましく、具体的には、藻類抽出物がより好ましい。
【0038】
例えば植物由来抽出物では、種々の植物性蛋白由来物質などが混在するため、そのまま乳化したのでは乳化安定性が得られにくく、凝集が避けられない。特に摂取、体内吸収に好適な1μm以下の粒子を形成しようとする場合には、その乳化安定性を保持することは極めて困難である。本発明においては、動植物由来抽出物をコアセルベーション法を利用してカプセル化し、安定なカプセル分散物(乳化物)を得ると共に、1μm以下の微小なカプセル含有液に調製することができる。
【0039】
動植物由来抽出物の疎水性物質中における量は、目的に応じて選択できるが0.1〜15質量%が好ましい。動植物由来抽出物の量が前記範囲内であると、形成された皮膜の安定性において好適である。
【0040】
前記疎水性物質には、複数の脂肪酸から構成される植物油の少なくとも一種が含有される。複数の脂肪酸からなる植物油は、溶解度を安定化することによる乳化安定化が図れ、凝集を防止して小粒径を得ることができる点で好ましい。
【0041】
本発明における植物油としては、例えば、大豆油、菜種油、べに花油、コーン油、綿実油、ごま油、オリーブ油、やし油、パーム油、ひまわり油などを挙げることができる。
【0042】
複数の脂肪酸からなる植物油は、一種単独で用いる以外に、複数種混合して用いてもよい。
植物油の疎水性物質中における量としては、植物由来抽出物に対して、0.5〜10倍質量部であることが好ましい。植物油の量が前記範囲内であると、皮膜安定性の点で好適である。
【0043】
動植物由来抽出物は、抽出操作中における加水分解などの影響により、疎水性が低下していることに由来する分散安定性の低下が顕著なことがある。よって、1次粒子の凝集体の生成を抑制するために、動植物由来抽出物(α)と植物油(β)との質量混合比(α/β)は高くないことが好ましく、1以下であることが更に好ましい。
【0044】
動植物由来抽出物を水溶性の高分子にとじこめようとする場合に、動植物由来抽出物と植物油とは混和せず上手く包めないことがあるが、これを回避するために植物油を用いると安定に存在させ得る。このとき、植物油の量は少な過ぎないようにし、前記質量混合比を満たす範囲とすることが望ましい。
【0045】
疎水性物質には、上記以外に他の成分として、例えば、抗酸化剤、界面活性剤、安定剤、レシチンなどの添加剤を混合してもよい。更に、他の成分として、天然の染料、香料などを用いることができる。また、これらを溶解又は分散する補助溶媒を使用してもよい。
【0046】
疎水性物質には、抗酸化剤を適量混合することができる。例えば、アスコルビン酸の脂肪酸エステル類、トコフェロール類、没食子酸のエステル類、エリソルビン酸、などが挙げられる。これらは各々、一種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
抗酸化剤は、水相に用いてもよく、特に水相にアスコルビン酸やそのアルカリ金属塩を用いることが好ましい。
【0047】
また、疎水性物質には前記安定剤として、例えば、クエン酸、リン酸、及びこれらのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩などを用いることができる。これらは各々、一種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
分散安定性を得るために、疎水性物質には界面活性剤を加えてもよい。中でも、分散安定性を高め、微少径のカプセルを得る観点から、ショ糖エステル類及びポリオキシエチレンソルビタンエステル類から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤は、一種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。更には、ステアリン酸ショ糖エステル、ラウリン酸ショ糖エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートが好ましい。
【0049】
また、分散安定性を付与するためには、レシチンなどの添加剤を含んでもよい。レシチンなどの添加剤は、水溶性高分子中に予め添加されていてもよく、乳化後添加されてもよい。これら添加剤は、前記界面活性剤と併用してもよい。
【0050】
また、上記した動植物由来抽出物及び植物油以外の、動物油、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、高級脂肪酸、高級アルコール、ワックス、ビタミンおよびビタミン様作用物質、その他食品、医薬品、医薬部外品、香料、洗浄剤等、水に不混和なものを用いることができる。これらは、複数組み合わせて用いてもよい。
また、疎水性物質には、カーボンブラック、金、白金、Feなどの無機微粒子や、ポリスチレン、ポリエチレンなどの有機微粒子が分散されていてもよい。
【0051】
本発明における乳濁液を得る方法は特に限定されるものではなく、例えば、(1)カチオン性高分子を含む水溶液と、揮発性物質と動植物由来抽出物と植物油とを含む疎水性物質とを含む混合液を調製し、この混合液を乳化して乳濁液とした後にアニオン性高分子を含む水溶液をこの乳濁液に添加する方法や、(2)カチオン性高分子及びアニオン性高分子を含む水溶液と、揮発性物質と動植物由来抽出物と植物油とを含む疎水性物質とを含む混合液を調製し、この混合液を乳化して乳濁液とする方法、(3)カチオン性高分子及びアニオン性高分子を含む水溶液を調製し、この水溶液に揮発性物質と動植物由来抽出物と植物油とを含む疎水性物質を含む溶液を混合し、これを乳化して乳濁液とする方法、等が挙げられる。乳濁液とした後に、この乳濁液に水を添加して濃度調節してもよい。
【0052】
混合液を乳化して乳濁液を調製する方法としては、既知の任意の方法を用いることができる。例えば、ホモミキサー、回転円盤式ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波照射、ナノマイザーなどの方法を用いることができる。
【0053】
また、疎水性物質を、ミクロ多孔質ガラスチューブ又はマイクロチャネルを通してカチオン性高分子を含む水溶液又は、カチオン性高分子及びアニオン性高分子を含む水溶液中に押し出して乳濁液を得ることもできる。
【0054】
なお、アニオン性高分子は、乳濁液を得た後に添加してもよく、また、乳濁液を得る前にカチオン性高分子とともにカチオン性高分子等を含む乳化前の混合液中に添加しておいてもよいが、後者の方がより安定でより微粒子のマイクロカプセルを得ることができる点で好ましい。
【0055】
本発明において、乳濁液中におけるカチオン性高分子の含有量(c)とアニオン性高分子の含有量(a)との質量比(a/c)は、3以上であることが好ましく、3.5以上であることが更に好ましい。質量比(a/c)が3以上であると、マイクロカプセルの凝集を防ぐことができる。これより、二次粒子の形成が抑えられ、微少な一次粒子が得られる。
【0056】
なお、前記質量比(a/c)は、後述するゲル化工程を実施する際に、乳濁液中に含まれるカチオン性高分子とアニオン性高分子との質量比である。この質量比(a/c)を3.0以上にする方法については、特に限定されるものではなく、例えば以下の方法が挙げられる。なお、下記方法を組み合わせてもよい。
【0057】
(1)乳濁液を調製する際に用いられるカチオン性高分子及びアニオン性高分子を含む水溶液中における、カチオン性高分子とアニオン性高分子との含有量を質量比(a/c)で3.0以上としておく方法。
(2)カチオン性高分子と疎水性物質(揮発性物質、動植物由来抽出物、及び植物油を含む)と水とを含有する乳濁液と、アニオン性高分子を含む水溶液とを混合して乳濁液中のカチオン性高分子とアニオン性高分子との含有量を質量比(a/c)で3.0以上に調製する方法。
(3)アニオン性高分子と疎水性物質(揮発性物質、動植物由来抽出物、及び植物油を含む)と水とを含有する乳濁液と、カチオン性高分子を含む水溶液とを混合して乳濁液中のカチオン性高分子とアニオン性高分子との含有量を質量比(a/c)で3.0以上に調製する方法。
(4)カチオン性高分子とアニオン性高分子と疎水性物質(揮発性物質、動植物由来抽出物、及び植物油を含む)と水とを含有する乳濁液と、アニオン性高分子及び/又はカチオン性高分子を含む水溶液とを混合して乳濁液中のカチオン性高分子とアニオン性高分子との含有量を質量比(a/c)で3.0以上に調製する方法。
(5)pHを3〜6に調整したアニオン性高分子を含む水溶液に、揮発工程を経た乳濁液を添加して乳濁液中のカチオン性高分子とアニオン性高分子との含有量を質量比(a/c)で3.0以上に調製する方法。
【0058】
また、前記疎水性物質の総質量(e)と、前記カチオン性高分子及び前記アニオン性高分子の総質量(f;固形分)との質量比(e/f)としては、2以下であることが好ましい。この質量比は、値が大きいほど動植物由来抽出物(特に天然カロチノイド)の摂取効率が高く、体内への吸収効果が高い。質量比(e/f)が2以下であると、マイクロカプセルの強度を保持でき、安定性に優れたマイクロカプセルが得られる。
【0059】
<揮発工程>
揮発工程では、乳濁液中に含まれる揮発性物質を揮発させる。揮発性物質を揮発させるには、既知の任意の方法を用いることができる。
例えば、加温、送風、減圧、長時間放置等が挙げられ、これらを適宜併用してもよい。これらの方法の中でも加温、送風が乳濁液の安定性を損なわないことから好ましい。
【0060】
なお、揮発工程は、乳濁液準備工程の開始後、後述するゲル化工程の開始前までの間に実施すればよい。つまり、乳濁液準備工程を実施しながら揮発工程を実施するようにしてもよいし、乳濁液準備工程完了後(後述の皮膜形成工程の際)に揮発工程を実施してもよい。
揮発工程を設けることにより、微小なマイクロカプセル、特に1μm以下の微粒径のマイクロカプセルを得ることができる。
【0061】
<皮膜形成工程>
皮膜形成工程では、乳濁液を相分離して、疎水性物質を覆うコアセルベート皮膜を形成する。
本工程においては、乳濁液の濃度、pH、及び温度のうちの少なくとも一要素を調節することにより相分離(コアセルベーション)が生じ、芯物質の表面にコアセルベート皮膜が形成される。乳濁液の濃度、pH、及び温度の調節の順序は問わない。
【0062】
pHによる場合、乳濁液のpHを、所定のpHからカチオン性高分子の等電点以下のpHに調整することが好ましい。
乳濁液の前記所定のpHとしては、好ましくはpH3〜6であり、更に好ましくはpH3.5〜4.5に調節される。pHを所定pH(例えばpH6)から含有されているカチオン性高分子の等電点以下の低pH(例えばpH4)に調整すると、例えばゼラチン等のカチオン性高分子がプラス帯電に変わり、アニオン性高分子と静電的に作用して疎水性物質の周りに皮膜を形成する。
【0063】
より具体的には、例えば、乳濁液の濃度と温度とを予め濃度5%、温度40℃のように調節しておき、乳濁液のpHを6.0のものを4.0に調節することにより相分離を生じさせてもよいし、乳濁液の温度とpHとを予め温度40℃、pH4.0のように調節しておき、乳濁液の濃度を20%のものを5%に調節することにより相分離を生じさせてもよい。但し、本発明においては、これらの例に限定されるものではない。
【0064】
皮膜形成工程においては、例えば、アニオン性高分子を含む水溶液のpHを調製しておき、この水溶液に乳濁液準備工程において得られた乳濁液を添加することにより皮膜を形成することもできる。
【0065】
pH調整に用いられるpH調節剤は、芯物質や皮膜材料の性質を損なわないものであることが好ましい。具体的には、酢酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、乳酸、サリチル酸等の有機酸、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、複数のpH調節剤を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
<ゲル化工程>
ゲル化工程では、皮膜形成工程で形成されたコアセルベート皮膜をゲル化する。
芯物質(疎水性物質)の表面にコアセルベート皮膜を形成した後、該コアセルベート皮膜をゲル化するために乳濁液を冷却することが好ましい。この場合、乳濁液の冷却温度は、通常5〜25℃であり、好ましくは5〜20℃である。
【0067】
本発明においては、乳濁液を含有されているカチオン性高分子の等電点以下のpHに調整すると共に、さらに温度を下げてゲル化させることで、疎水性物質の周りにコアセルベート皮膜を形成する態様が好ましい。このようにコアセルベート被膜を形成すると、保存時の皮膜安定性確保の点で好ましい。
【0068】
乳濁液中には、必要に応じてさらに硬膜剤を添加し、ゲル化したコアセルベート皮膜を硬化(架橋及び/又は変性)させることもできる。
硬膜剤としては、従来知られている任意の硬膜剤を用いることができる。例えば、トランスグルタミナーゼ、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド、尿素、メラミン、ミョウバン、没食子酸、タンニン酸、ゲニピンなどを例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、複数の硬膜剤を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
コアセルベート皮膜をゲル化(必要に応じて硬化)した後、乳濁液に対して必要に応じて濾過やデカンテーション、遠心分離等の操作を施すことにより目的のマイクロカプセルを得ることができる。
【0070】
本発明のマイクロカプセルは、芯物質である疎水性物質が天然カロチノイドを含有する動植物由来抽出物(α)と植物油(β)とを含み、動植物由来抽出物と植物油との質量混合比(α/β)を1より小さくしたものであって、一次粒子の体積標準でのメジアン径を0.05〜1.0μmの範囲としたものである。本発明のマイクロカプセルは、前記カチオン性高分子及び前記アニオン性高分子により前記疎水性物質が被覆されてなるものであって、既述の「本発明のマイクロカプセルの製造方法」により好適に作製することができる。
【0071】
ここで、カチオン性高分子、アニオン性高分子、疎水性物質、動植物由来抽出物、及び植物油の詳細については、既述した通りであり、好ましい態様も同様である。また、質量混合比(α/β)についても既述の通りである。
【0072】
本発明のマイクロカプセルの製造方法において、ゲル化工程を経て得られるマイクロカプセルの一次粒子の粒径は、体積標準でのメジアン径で0.05〜1.0μmが好ましい。なお、製造の点から0.05以上であるのが望ましい。また、本発明においては、前記一次粒子の粒径は0.05〜0.8μmの範囲がより好ましい。一次粒子の粒径が前記範囲内であると、人体に服用した際の体内吸収効率を高めることができる。
前記一次粒子の粒径は、上記のように、揮発性物質の揮発、動植物由来抽出物の含有、及びカチオン性高分子及びアニオン性高分子の質量比(a/c)≧3.0により小径化を図ることができる。
【0073】
体積標準でのメジアン径は、以下のようにして求められる。
〈1〉一次粒子
走査型電子顕微鏡(SEM)の写真から1000個のマイクロカプセルの粒子径を計測し、体積標準でのメジアン径を算出し、一次粒子径とする。
〈2〉二次粒子
マイクロカプセル液に超音波処理(処理条件:42KHz、100W、25℃、10分)を行なった後、マイクロトラックUPA(日機装(株)製)を用いて体積標準でのメジアン径を求め、二次粒子径とする。ここで、下記基準により二次粒子の有無を判断する。すなわち、マイクロトラックUPAの測定で得られたメジアン径の値が、SEM写真から算出したメジアン径の値の2倍以上あるときには、二次粒子があると判断し、また、マイクロトラックUPAの測定で得られたメジアン径の値が、SEM写真から算出したメジアン径の値の2倍未満であるときには二次粒子はないと判断する。
【0074】
既述の本発明のマイクロカプセルの製造方法は揮発工程を有するものであり、乳濁液中に形成した芯物質の粒径を小さくすることができる。そのため、複合コアセルベーション法により得ることが困難なメジアン径0.05〜1.0μmのマイクロカプセルを容易に得ることが可能である。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0076】
(実施例1)
10%酸処理ゼラチン水溶液15部、10%アラビアゴム水溶液15部、及びScraph AG−8(50%、日本精化(株)製;界面活性剤)0.1部を混合して攪拌し、この混合物を40℃に保温し、水溶性高分子水溶液とした。
【0077】
次に、クロロホルム4部、食用菜種油1.0部、綿実油0.5部、及びオキアミ抽出物(天然カロチノイドを15%含有)1.65部を混合して疎水性混合液とした。ここで、オキアミ抽出物(α)と食用菜種油及び綿実油(β)との質量比α/βは1.1とした。
【0078】
得られた疎水性混合液を前記水溶性高分子水溶液に加えて混合し、これをホモジナイザーを用いて乳化処理を行なった。これを攪拌しながら、40℃に保温した2.5%アラビアゴム水溶液120部に添加し、乳濁液を得た。このとき、ゼラチン(c)とアラビアゴム(a)との質量比(a/c)は3.0であった。
【0079】
次に、この乳濁液を充分に撹拌して揮発性物質を揮発させた後、酢酸を添加して乳濁液のpHを4.0に調整し、コアセルベート皮膜を形成した。その後さらに、この乳濁液を撹拌しながら徐々に冷却してコアセルベート皮膜をゲル化させ、マイクロカプセル分散液を得た。
【0080】
(実施例2)
実施例1において、食用菜種油の量を1.5部に代えると共に、オキアミ抽出物1.65部をヘマトコッカス藻抽出物(天然カロチノイドを20%含有)1.0部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル分散液を得た。
ここで、ヘマトコッカス藻抽出物(α)と食用菜種油及び綿実油(β)との質量比α/βは0.5とした。
【0081】
(実施例3)
実施例2において、水溶性高分子水溶液の調製に用いたScraph AG−8(50%、日本精化(株)製)0.1部を、ショ糖ステアリン酸エステル0.035部及びポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノオレエート0.035部(界面活性剤)に代えたこと以外は、実施例2と同様にして、マイクロカプセル分散液を得た。
【0082】
(実施例4)
実施例1において、水溶性高分子水溶液の調製に用いた10%アラビアゴム水溶液15部を、10%アラビアゴム水溶液10部及び7%カルボキシメチルセルロース10部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル分散液を得た。
【0083】
(比較例1)
実施例1において、水溶性高分子水溶液の調製に用いた10%アラビアゴム水溶液15部を同量のイオン交換水に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較のマイクロカプセル液を得た。このとき、ゼラチン(c:カチオン性高分子)とアニオン性高分子(a)との質量比(a/c)は2.0であった。
【0084】
(比較例2)
実施例1において、水溶性高分子水溶液の調製に用いた10%酸処理ゼラチン水溶液15部を10部に代え、10%アラビアゴム水溶液15部を10部に代え、更に綿実油を用いず、保温した2.5%アラビアゴム水溶液120部中に添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較のマイクロカプセル液を得た。このとき、ゼラチン(c)とアニオン性高分子(a)との質量比(a/c)は1.0であった。
【0085】
(評価1)
本発明のマイクロカプセルの製造方法によって得られたマイクロカプセルの効果を示す評価及びその結果を以下に示す。
−粒径−
〈1〉一次粒子
走査型電子顕微鏡(SEM)の写真から1000個のマイクロカプセルの粒子径を計測し、体積標準でのメジアン径を算出し、一次粒子径とした。
〈2〉二次粒子
マイクロカプセル液に超音波処理(処理条件:42KHz、100W、25℃、10分)を行なった後、マイクロトラックUPA(日機装(株)製)を用いて体積標準でのメジアン径を求め、二次粒子径とした。なお、下記基準により二次粒子の有無を判断した。
すなわち、マイクロトラックUPAの測定で得られたメジアン径の値が、SEM写真から算出したメジアン径の値の2倍以上あるときに二次粒子があると判断した。また、マイクロトラックUPAの測定で得られたメジアン径の値が、SEM写真から算出したメジアン径の値の2倍未満であるときに、二次粒子がないと判断した。
【0086】
【表1】

【0087】
前記表1に示すように、本発明のマイクロカプセルの製造方法に係る実施例では、二次粒子が少なく、一次粒子の粒径の小さいマイクロカプセルが得られる。動植物由来抽出物と植物油との混合比を1未満とした実施例2〜3では、実施例1に比してより小さい一次粒子が得られ、二次粒子の形成をより抑制することができた。また、実施例3のように特定の界面活性剤を用いた場合、マイクロカプセルの粒径を更に小さくすることができた。
これに対し、比較例では、微小なマイクロカプセルを得ることができなかった。
【0088】
(評価2)
得られたマイクロカプセル液をろ過してマイクロカプセル粒子を分別し、暗冷条件下で乾燥させた。20人の被験者により、得られた各マイクロカプセルの内包物の抑臭効果を試験した。
【0089】
【表2】


前記表2に示すように、実施例では、良好な抑臭効果が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性高分子、アニオン性高分子、水、及び揮発性物質と水に対する溶解度が5%以下の動植物由来抽出物と複数の脂肪酸から構成される植物油とを含む疎水性物質を含有し、前記カチオン性高分子(c)と前記アニオン性高分子(a)との質量比(a/c)が3.0以上である乳濁液を準備する工程と、
前記乳濁液に含まれる揮発性物質を揮発する工程と、
前記乳濁液を相分離して前記疎水性物質を覆うコアセルベート皮膜を形成する工程と、
前記コアセルベート皮膜をゲル化する工程と、
を有するマイクロカプセルの製造方法。
【請求項2】
前記乳濁液の相分離は、前記乳濁液を前記カチオン性高分子の等電点以下のpHに調整すると共に、温度を下げてゲル化することにより、前記疎水性物質の周りに皮膜形成することを特徴とする請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項3】
前記動植物由来抽出物(α)と前記植物油(β)との質量混合比(α/β)が1より小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項4】
前記乳濁液が界面活性剤を更に含み、前記界面活性剤がショ糖エステル類及びポリオキシエチレンソルビタンエステル類からなる群より選択される少なくとも1種であることをとする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項5】
前記動植物由来抽出物の少なくとも一種が、天然カロチノイドであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項6】
前記動植物由来抽出物の少なくとも一種が、藻類抽出物であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法により作製されたマイクロカプセル。
【請求項8】
カチオン性高分子及びアニオン性高分子により疎水性物質が被覆されているマイクロカプセルであって、前記疎水性物質は天然カロチノイドを含有する動植物由来抽出物(α)と植物油(β)とを含み、動植物由来抽出物と植物油との質量混合比(α/β)が1より小さく、一次粒子の体積標準でのメジアン径が0.05〜1.0μmであることを特徴とする請求項7に記載のマイクロカプセル。

【公開番号】特開2009−84224(P2009−84224A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256583(P2007−256583)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】