説明

マイクロカプセル及びその製造方法

【課題】微粒子の表面に被覆した超微粒子又は薄膜からなるマイクロカプセル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るマイクロカプセルは、優れた生体適合性を有するDLCからなる超微粒子又は薄膜により形成されたマイクロカプセルであって、生体内部に導入した際、又は、生体に接触させた際、生体あるいは生体構成要素の持つ本来の機能を損なわない性質を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆微粒子、CVD(chemical vapor deposition)装置及びCVD成膜方法、マイクロカプセル及びその製造方法に関する。特には、微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆する被覆微粒子、CVD装置及びCVD成膜方法に関する。また、微粒子の表面に被覆した超微粒子又は薄膜からなるマイクロカプセル及びその製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
従来のスパッタリング装置について説明する。
真空室内に基板とスパッタリングターゲットを対向させて配置する。スパッタリングターゲットはカソードに取り付けられている。そして、真空室内を高真空に排気し、真空室内にアルゴンガスを導入する。この状態でカソードに電力を供給するとスパッタリングターゲットの近傍でグロー放電が発生し、これにより生成したイオンがスパッタリングターゲットに衝突してターゲット原子をはじき出し、ターゲット材が基板に堆積する。このようにして基板上にターゲット材を成膜する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−171431号公報(第8段落〜第10段落、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のスパッタリング装置を用いて微粒子の表面にターゲット材を成膜することも考えられる。この場合、基板の代わりに微粒子をスパッタリングターゲットと対向させて配置することになる。
【0005】
しかしながら、上記のスパッタリング装置では、ターゲット側の微粒子表面にターゲット材が偏って成膜されてしまい、ターゲットとは反対側の微粒子表面にはターゲット材がほとんど成膜されない。スパッタリング現象によってスパッタリングターゲットからはじき出された原子の飛来には方向性があり、ターゲット側の微粒子表面に原子が降りそそぐようにして成膜されるからである。
【0006】
また、上記スパッタリング装置では、凹凸のある微粒子の窪み部分にターゲット材を成膜することも困難である。この理由もターゲット原子には方向性があるからである。
このように上記従来のスパッタリング装置では、微粒子の全表面を均一性高くコーティング又は被覆することは非常に困難である。そこで、微粒子の表面に均一性よく被覆できる成膜装置の開発が求められている。
また、スパッタリング装置はCVD装置に比べて成膜速度が遅いという欠点がある。同一の薄膜をスパッタリング装置で成膜する場合とCVD装置で成膜する場合を成膜速度の観点から比較すると、スパッタリング装置はCVD装置に比べて成膜速度が10倍程度遅い。
【0007】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、微粒子又は粉体の表面に薄膜又は超微粒子を均一性よく被覆した被覆微粒子を提供することにある。また、本発明の他の目的は、微粒子又は粉体の表面に薄膜又は超微粒子を均一性よく被覆できるCVD装置及びCVD成膜方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、微粒子の表面に被覆した超微粒子又は薄膜からなるマイクロカプセル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、化学気相成長法(chemical vapor deposition)を用いたCVD装置に注目した。CVD装置の場合、スパッタリング装置に比べて微粒子表面に薄膜又は超微粒子を偏りの少ない状態で被覆することが可能である。尚、超微粒子とは、微粒子より粒径の小さい微粒子をいう。微粒子表面に超微粒子が被覆された状態としては、微粒子表面に超微粒子が連続的又は不連続に被覆された状態、微粒子表面に超微粒子の集合体が連続的又は不連続に被覆された状態、超微粒子と超微粒子の集合体が混在し且つ連続的又は不連続に被覆された状態を含むものである。
【0009】
以下、具体的に説明する。
本発明に係る被覆微粒子は、CVD法によって微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜が被覆されたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る被覆微粒子は、内部の断面形状が略円形を有する容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜が被覆されたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る被覆微粒子は、内部の断面形状が多角形を有する容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜が被覆されたことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るCVD成膜方法は、容器内に微粒子を収容し、
サーマルCVD法又はプラズマCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆することを特徴とする。
本発明に係るCVD成膜方法は、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が略円形である容器内に微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るCVD成膜方法は、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が多角形である容器内に微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るCVD装置は、微粒子を載置する容器と、
前記容器を収容するチャンバーと、
前記容器に載置された微粒子を加熱する加熱機構と、
前記チャンバー内に原料ガスを導入するガス導入機構と、
を具備し、
サーマルCVD法を用いることにより、前記微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆することを特徴とする。
【0015】
上記CVD装置によれば、サーマルCVD法を用いることにより、微粒子又は粉体の表面に薄膜又は超微粒子を従来のスパッタリング装置に比べて均一性よく被覆することができる。
【0016】
また、前記本発明に係るCVD装置において、前記容器はチャンバーと一体的に形成されていることも可能である。
【0017】
本発明に係るCVD装置は、微粒子を収容する容器であって、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が略円形である容器と、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させる回転機構と、
前記容器内に収容された微粒子を加熱する加熱機構と、
前記容器内に原料ガスを導入するガス導入機構と、
を具備し、
前記回転機構を用いて前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらサーマルCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆することを特徴とする。
【0018】
上記CVD装置によれば、容器の内部形状が略円形であるため、容器自体を回転させることで粉体自体を回転させ攪拌させることができる。したがって、粒径の非常に小さい微粒子に該微粒子より粒径が更に小さい超微粒子又は薄膜を均一性よく被覆することが可能となる。
【0019】
本発明に係るCVD装置は、微粒子を収容する容器であって、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が多角形である容器と、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させる回転機構と、
前記容器内に収容された微粒子を加熱する加熱機構と、
前記容器内に原料ガスを導入するガス導入機構と、
を具備し、
前記回転機構を用いて前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらサーマルCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆することを特徴とする。
【0020】
上記CVD装置によれば、容器の内部形状が多角形であるため、容器自体を回転させることで粉体自体を回転させ攪拌させることができる。容器の内部形状を多角形とすることにより、粉体を重力により定期的に落下させることができる。このため、容器の内部形状が略円形の場合に比べて攪拌効率を飛躍的に向上させることができ、粉体を扱う時にしばしば問題となる水分や静電気力による粉体の凝集を防ぐことができる。つまり回転により攪拌と、凝集した粉体の粉砕を同時かつ効果的に行うことができる。したがって、粒径の非常に小さい微粒子に該微粒子より粒径が更に小さい超微粒子又は薄膜を均一性よく被覆することが可能となる。
【0021】
本発明に係るCVD装置は、微粒子を載置する容器と、
前記容器を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内に原料ガスを導入するガス導入機構と、
前記チャンバー内に配置され、前記容器に対向するように配置された電極と、
を具備し、
プラズマCVD法を用いることにより、前記微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆することを特徴とする。
【0022】
上記CVD装置によれば、プラズマCVD法を用いることにより、微粒子又は粉体の表面に薄膜又は超微粒子を従来のスパッタリング装置に比べて均一性よく被覆することができる。
【0023】
また、前記本発明に係るCVD装置において、前記容器は前記チャンバーと一体的に形成されていることも可能である。
【0024】
本発明に係るCVD装置は、微粒子を収容する容器であって、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が略円形である容器と、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させる回転機構と、
前記容器内に配置された電極と、
前記容器内に原料ガスを導入するガス導入機構と、
を具備し、
前記回転機構を用いて前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらプラズマCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆することを特徴とする。
【0025】
上記CVD装置によれば、容器の内部形状が略円形であるため、容器自体を回転させることで粉体自体を回転させ攪拌させることができる。したがって、粒径の非常に小さい微粒子に該微粒子より粒径が更に小さい超微粒子又は薄膜を均一性よく被覆することが可能となる。
【0026】
本発明に係るCVD装置は、微粒子を収容する容器であって、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が多角形である容器と、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させる回転機構と、
前記容器内に配置された電極と、
前記容器内に原料ガスを導入するガス導入機構と、
を具備し、
前記回転機構を用いて前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらプラズマCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆することを特徴とする。
【0027】
上記CVD装置によれば、容器の内部形状が多角形であるため、容器自体を回転させることで粉体自体を回転させ攪拌させることができる。容器の内部形状を多角形とすることにより、粉体を重力により定期的に落下させることができる。このため、容器の内部形状が略円形の場合に比べて攪拌効率を飛躍的に向上させることができ、粉体を扱う時にしばしば問題となる水分や静電気力による粉体の凝集を防ぐことができる。つまり回転により攪拌と、凝集した粉体の粉砕を同時かつ効果的に行うことができる。したがって、粒径の非常に小さい微粒子に該微粒子より粒径が更に小さい超微粒子又は薄膜を均一性よく被覆することが可能となる。
【0028】
また、前述した本発明に係るCVD装置それぞれにおいて、前記電極及び前記容器のいずれか一方又は両方に接続されたプラズマ電源をさらに具備することが好ましい。このプラズマ電源は、高周波電源、マイクロ波用電源、DC放電用電源及びそれぞれパルス変調された高周波電源、マイクロ波用電源、DC放電用電源のいずれかであってもよい。
【0029】
また、前述した本発明に係るCVD装置それぞれにおいて、前記ガス導入機構は、前記電極からシャワー状のガスを前記容器内に導入する機構を有することも可能である。
【0030】
また、前述した本発明に係るCVD装置それぞれにおいて、前記容器を収容するチャンバーと、該チャンバー内を真空排気する真空排気機構とをさらに具備してもよい。尚、前記容器はチャンバーと一体的に形成されていても良いし、この場合は、回転機構によって容器とともにチャンバーも回転する構成となる。
【0031】
本発明に係るマイクロカプセルは、優れた生体適合性を有するDLCからなる超微粒子又は薄膜により形成されたマイクロカプセルであって、
生体内部に導入した際、又は、生体に接触させた際、生体あるいは生体構成要素の持つ本来の機能を損なわない性質を有することを特徴とする。
【0032】
本発明に係るマイクロカプセルは、外表面を構成する第1の超微粒子又は第1の薄膜と、
前記第1の超微粒子又は第1の薄膜の内側に形成された第2の超微粒子又は第2の薄膜とを具備するマイクロカプセルであって、
前記第1の超微粒子又は前記第1の薄膜は優れた生体適合性を有するDLCからなり、
生体内部に導入した際、又は、生体に接触させた際、生体あるいは生体構成要素の持つ本来の機能を損なわない性質を有することを特徴とする。
【0033】
本発明に係るマイクロカプセルは、内部の断面形状が略円形である容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜が被覆され、この被覆された超微粒子又は薄膜の母体となっている前記微粒子が取り除かれたものであることを特徴とする。
【0034】
本発明に係るマイクロカプセルは、内部の断面形状が多角形である容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜が被覆され、この被覆された超微粒子又は薄膜の母体となっている前記微粒子が取り除かれたものであることを特徴とする。
【0035】
前述したそれぞれの本発明に係るマイクロカプセルにおいては、前記超微粒子又は前記薄膜が優れた生体適合性を有するDLCからなり、
生体内部に導入した際、又は、生体に接触させた際、生体あるいは生体構成要素の持つ本来の機能を損なわない性質を有することが好ましい。
【0036】
本発明に係るマイクロカプセルは、内部の断面形状が略円形である容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい第1の超微粒子又は第1の薄膜が被覆され、前記CVD法を用いることで、該第1の超微粒子又は該第1の薄膜の表面に前記微粒子より粒径の小さい第2の超微粒子又は第2の薄膜が被覆され、この被覆された第1及び第2の超微粒子又は第1及び第2の薄膜の母体となっている前記微粒子が取り除かれたものであることを特徴とする。
【0037】
本発明に係るマイクロカプセルは、内部の断面形状が多角形である容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい第1の超微粒子又は第1の薄膜が被覆され、前記CVD法を用いることで、該第1の超微粒子又は該第1の薄膜の表面に前記微粒子より粒径の小さい第2の超微粒子又は第2の薄膜が被覆され、この被覆された第1及び第2の超微粒子又は第1及び第2の薄膜の母体となっている前記微粒子が取り除かれたものであることを特徴とする。
【0038】
また、前述した本発明に係るマイクロカプセルそれぞれは、前記第2の超微粒子又は前記第2の薄膜が優れた生体適合性を有するDLCからなり、
生体内部に導入した際、又は、生体に接触させた際、生体あるいは生体構成要素の持つ本来の機能を損なわない性質を有することが好ましい。
【0039】
また、前述した本発明に係るマイクロカプセルそれぞれは、前記DLCについてラマンスペクトル分析を行った結果のラマンスペクトル曲線において、Gピークベースライン強度をBとし、Gピーク補正後強度をAとした場合、B/Aの値が1.9未満であることが好ましい。
【0040】
また、本発明に係るマイクロカプセルにおいて、前記DLCは、0.28W/cm以上の電力密度を用いて成膜されたものであることが好ましい。
【0041】
本発明に係るマイクロカプセルの製造方法は、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が略円形である容器内に微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆させ、
前記被覆した超微粒子又は薄膜の母体となっている前記微粒子を取り除くことを特徴とする。
【0042】
本発明に係るマイクロカプセルの製造方法は、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が多角形である容器内に微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆させ、
前記被覆した超微粒子又は薄膜の母体となっている前記微粒子を取り除くことを特徴とする。
【0043】
また、前述した本発明に係るマイクロカプセルの製造方法それぞれにおいて、前記超微粒子又は薄膜は、優れた生体適合性を有するDLCからなり、
前記超微粒子又は薄膜を被覆させる際、前記容器内に、少なくとも炭素と水素を含む炭化水素系ガスを0.5mTorr以上500mTorr以下の圧力下で導入し、高周波電源に接続された電極を前記容器内に配置し、前記電極に電力密度が0.28W/cm以上の高周波電力を印加してプラズマCVD法により被覆することも可能である。
【0044】
本発明に係るマイクロカプセルの製造方法は、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が略円形である容器内に微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい第1の超微粒子又は第1の薄膜を被覆させ、
重力方向に対して略平行な断面の内部形状が略円形である容器内に、前記第1の超微粒子又は前記第1の薄膜が被覆された前記微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、前記第1の超微粒子又は前記第1の薄膜の表面に前記微粒子より粒径の小さい第2の超微粒子又は第2の薄膜を被覆させ、
前記被覆した第1及び第2の超微粒子又は第1及び第2の薄膜の母体となっている前記微粒子を取り除くことを特徴とする。
【0045】
本発明に係るマイクロカプセルの製造方法は、重力方向に対して略平行な断面の内部形状が多角形である容器内に微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい第1の超微粒子又は第1の薄膜を被覆させ、
重力方向に対して略平行な断面の内部形状が多角形である容器内に、前記第1の超微粒子又は前記第1の薄膜が被覆された前記微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、前記第1の超微粒子又は前記第1の薄膜の表面に前記微粒子より粒径の小さい第2の超微粒子又は第2の薄膜を被覆させ、
前記被覆した第1及び第2の超微粒子又は第1及び第2の薄膜の母体となっている前記微粒子を取り除くことを特徴とする。
【0046】
また、前述した本発明に係るマイクロカプセルの製造方法それぞれにおいて、前記第2の超微粒子又は前記第2の薄膜は、優れた生体適合性を有するDLCからなり、
前記第2の超微粒子又は前記第2の薄膜を被覆させる際、前記容器内に、少なくとも炭素と水素を含む炭化水素系ガスを0.5mTorr以上500mTorr以下の圧力下で導入し、高周波電源に接続された電極を前記容器内に配置し、前記電極に電力密度が0.28W/cm以上の高周波電力を印加してプラズマCVD法により被覆することも可能である。
【発明の効果】
【0047】
以上説明したように本発明によれば、微粒子又は粉体の表面に薄膜又は超微粒子を均一性よく被覆した被覆微粒子を提供することができる。また、他の本発明によれば、微粒子又は粉体の表面に薄膜又は超微粒子を均一性よく被覆できるCVD装置及びCVD成膜方法を提供することができる。また、他の本発明によれば、微粒子の表面に被覆した超微粒子又は薄膜からなるマイクロカプセル及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る実施の形態1によるサーマルCVD装置の概略を示す構成図である。
【図2】図1に示すサーマルCVD装置によって微粒子に薄膜を被覆した被覆微粒子の一例を示す断面図である。
【図3】(A)は、本発明に係る実施の形態2によるサーマルCVD装置の概略を示す断面図であり、(B)は、(A)に示す3B−3B線に沿った断面図である。
【図4】(A)は、本発明に係る実施の形態3によるサーマルCVD装置の概略を示す断面図であり、(B)は、(A)に示す4B−4B線に沿った断面図である。
【図5】図4に示すサーマルCVD装置によって微粒子に薄膜を被覆した被覆微粒子の一例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る実施の形態4によるプラズマCVD装置の概略を示す構成図である。
【図7】(A)は、本発明に係る実施の形態5によるプラズマCVD装置の概略を示す断面図であり、(B)は、(A)に示す7B−7B線に沿った断面図である。
【図8】(A)は、本発明に係る実施の形態6によるプラズマCVD装置の概略を示す断面図であり、(B)は、(A)に示す8B−8B線に沿った断面図である。
【図9】DLC膜のラマンスペクトルの一例を示す図である。
【図10】細胞接着評価の結果を示すものであって、ディッシュにおけるPS、DLCをコーティングしたA〜I及びTCDそれぞれと吸光度(O.D.595nm)との関係を示す棒グラフである。
【図11】細胞毒性評価の結果を示すものであり、ディッシュにおけるPS、DLCをコーティングしたA〜I及びTCDそれぞれとLDHの溶出率との関係を示す棒グラフである。
【図12】ディッシュにおける穴の底面部(PS、DLCをコーティングしたA〜I及びTCD)のタンパク質の吸着率を示す棒グラフである。
【図13】ラマンスペクトル分析を行うサンプルを作製した際のRF出力とB/A値の関係を示すグラフである。
【図14】B/A値の定義を説明するためのラマンスペクトル曲線である。
【図15】各々のサンプルを作製した際のRF出力とDLC膜の密度の関係を示すグラフである。
【図16】100WのRF出力でDLC膜を成膜したサンプルのアノード分極測定結果を示すものであって、電位と電流密度の関係を示すグラフである。
【図17】200WのRF出力でDLC膜を成膜したサンプルのアノード分極測定結果を示すものであって、電位と電流密度の関係を示すグラフである。
【図18】DLC膜を成膜していないSi基体のアノード分極測定結果を示すものであって、電位と電流密度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る実施の形態1によるサーマルCVD装置の概略を示す構成図である。このサーマルCVD装置は、微粒子(又は粉体)の表面に、該微粒子より粒径の小さい超微粒子(ここでの超微粒子とは微粒子より粒径の小さい微粒子をいう)又は薄膜を被覆させるための装置である。
【0050】
サーマルCVD装置は、粉体(微粒子)1を載置又は収容する容器2を有している。この容器2の下部には、粉体1を加熱する加熱機構としてのヒーター4が配置されている。容器2及びヒーター4はチャンバー3内に配置されている。
【0051】
また、サーマルCVD装置は、チャンバー3の内部にガスを導入するガス導入機構を備えている。ガス導入機構は、Oガスを導入する第1ガス導入機構と、SiHガスを導入する第2ガス導入機構とを有している。第1ガス導入機構は、配管5〜7、第1バルブ12、第1マスフローコントローラ(MFC)14及びOガス供給源を有している。第2ガス導入機構は、配管8〜10、第2バルブ13、第1マスフローコントローラ(MFC)15及びSiHガス供給源を有している。
【0052】
配管5の先端はチャンバー3に接続されており、配管5の先端からOガスをチャンバー3内に噴き出すようになっている。配管5の基端は第1バルブ12の一方側に接続されており、第1バルブ12の他方側は配管6の一端に接続されている。配管6の他端はマスフローコントローラ14の一端に接続されており、マスフローコントローラ14の他端は配管7の一端に接続されている。配管7の他端はOガス供給源に接続されている。
【0053】
配管8の先端はチャンバー3に接続されており、配管8の先端からSiHガスをチャンバー3内に噴き出すようになっている。配管8の基端は第2バルブ13の一方側に接続されており、第2バルブ13の他方側は配管9の一端に接続されている。配管9の他端はマスフローコントローラ15の一端に接続されており、マスフローコントローラ15の他端は配管10の一端に接続されている。配管10の他端はSiHガス供給源に接続されている。
【0054】
また、サーマルCVD装置は、チャンバー3の内部を真空引きする真空ポンプ16を備えている。この真空ポンプ16は配管11によってチャンバー3に接続されている。
【0055】
次に、上記サーマルCVD装置を用いて粉体(微粒子)1に超微粒子又は薄膜を被覆するCVD成膜方法について説明する。
まず、容器2内に多くの微粒子が集まった粉体1を収容する。容器2内に収容する粉体1の量は、微粒子からなる層を2〜3層積層させる程度が好ましい。微粒子からなる層の積層数を多くすると、下層の方の微粒子にはCVD成膜のための原料ガスが到達しにくいため、下層の微粒子表面への薄膜の付きまわりが悪くなるからである。尚、微粒子1を構成する母材は、樹脂でも金属でもセラミックでも良く、種々の材質を用いることが可能であるが、本実施の形態では例えばTi粉体又はAl粉体を用いる。また、微粒子1は、単一の物質から構成されている必要は必ずしも無く、複数の物質を混合したものから構成されていることも可能である。また、微粒子1の形状は、種々の形状を用いることが可能であり、例えば球又は球に近い形状とすることが好ましい。
【0056】
次いで、ヒーター4で容器2を介して粉体1を所定の温度(例えば200℃程度)まで加熱しながら、真空ポンプ16を用いてチャンバー3内を所定の圧力(例えば2×10−3Torr程度)まで減圧する。そして、第1バルブ12を開けてマスフローコントローラ14によって流量制御された酸素ガスを、配管5〜7を通してチャンバー3の内部に導入すると共に、第2バルブ13を開けてマスフローコントローラ15によって流量制御されたSiHガスを、配管8〜10を通してチャンバー3の内部に導入する。これにより、粉体1の各々の微粒子表面にSiOからなる超微粒子又は薄膜を被覆することができる。
【0057】
図2は、図1に示すサーマルCVD装置によって微粒子に薄膜を被覆した被覆微粒子の一例を示す断面図である。
被覆微粒子18は、微粒子1の表面に薄膜17が均一性よく被覆されたものである。ただし、前記サーマルCVD装置では、容器2に収容された微粒子1を静止させた状態でサーマルCVD法により薄膜を成膜しているため、微粒子1の底部(容器2と接する側の部分)に被覆される薄膜の厚さは薄くなる。これに対し、従来のスパッタリング装置によって微粒子に薄膜を被覆した場合、CVD装置に比べて付きまわりが悪いために、微粒子の上部(スパッタリングターゲット側の部分)に主に薄膜が覆され、微粒子の側部及び底部には十分に薄膜が被覆されない。
【0058】
上記実施の形態1によれば、サーマルCVD装置を用いることにより、微粒子又は粉体の表面に薄膜又は超微粒子を従来のスパッタリング装置に比べて均一性よく被覆することができる。
また、本実施の形態では、CVD法を用いるため、スパッタリング法に比べて結晶性がよく緻密な薄膜を微粒子に被覆することができる。
【0059】
(実施の形態2)
図3(A)は、本発明に係る実施の形態2によるサーマルCVD装置の概略を示す断面図であり、図3(B)は、図3(A)に示す3B−3B線に沿った断面図である。このサーマルCVD装置は、微粒子(又は粉体)の表面に、該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆させるための装置である。
【0060】
サーマルCVD装置は円筒形状のチャンバー3を有している。このチャンバー3の両端はチャンバー蓋20によって閉じられている。チャンバー3の内部には容器19が配置されている。この容器19は円筒形状の部分(丸型バレル)を有しており、この丸型バレルの内部に粉体(微粒子)1が収容されるようになっている。図3(B)で示す断面は、重力方向に対して略平行な断面である。なお、本実施の形態では、断面形状が略円形の容器19を用いているが、これに限定されるものではなく、断面形状が略楕円形の容器を用いることも可能である。
【0061】
容器19には回転機構(図示せず)が設けられており、この回転機構により容器19を矢印のように回転させることで該容器19内の粉体(微粒子)1を攪拌あるいは回転させながら被覆処理を行うものである。前記回転機構により容器19を回転させる際の回転軸は、略水平方向(重力方向に対して垂直方向)に平行な軸である。また、容器19の外面には、粉体1を加熱する加熱機構としてのヒーター21が配置されている。
【0062】
また、サーマルCVD装置は、容器19の内部にガスを導入するガス導入機構を備えている。ガス導入機構は、Oガスを導入する第1ガス導入機構と、SiHガスを導入する第2ガス導入機構とを有している。第1ガス導入機構及び第2ガス導入機構それぞれの構造は実施の形態1と略同様である。また、サーマルCVD装置は、チャンバー3の内部を真空引きする真空ポンプ(図示せず)を備えている。
【0063】
次に、上記サーマルCVD装置を用いて粉体(微粒子)1に超微粒子又は薄膜を被覆するCVD成膜方法について説明する。
まず、容器19内に多くの微粒子が集まった粉体1を収容する。尚、粉体1としては種々の材質を用いることが可能であるが、本実施の形態では実施の形態1と同様に例えばTi粉体又はAl粉体を用いる。
【0064】
次いで、ヒーター4で容器19を介して粉体1を所定の温度(例えば200℃程度)まで加熱しながら、真空ポンプ16を用いてチャンバー3内を所定の圧力(例えば2×10−3Torr程度)まで減圧する。そして、第1ガス導入機構によって流量制御された酸素ガスを容器19の内部に導入すると共に、第2ガス導入機構によって流量制御されたSiHガスを容器19の内部に導入する。そして、回転機構により容器19を所定の回転速度(例えば15rpm)で所定時間(例えば120分)回転させることで、容器19内の粉体1を回転させ、攪拌させる。これにより、粉体1の各々の微粒子表面にSiO膜からなる超微粒子又は薄膜を均一性よく被覆することができる。
【0065】
上記実施の形態2においても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、丸型バレルの容器19自体を回転させることで粉体自体を回転させ攪拌できるため、粉体を扱う時にしばしば問題となる水分や静電気力による粉体の凝集を防ぐことができる。したがって、粒径の非常に小さい微粒子に該微粒子より粒径が更に小さい超微粒子又は薄膜を均一性よく被覆することが可能となる。
【0066】
(実施の形態3)
図4(A)は、本発明に係る実施の形態3によるサーマルCVD装置の概略を示す断面図であり、図4(B)は、図4(A)に示す4B−4B線に沿った断面図である。図4において図3と同一部分には同一符号を付し、同一部分の説明は省略する。
【0067】
チャンバー3の内部には容器22が配置されている。この容器22は、図4(B)に示すようにその断面が六角形のバレル形状(六角型バレル形状)を有している。そして、容器22の内部に粉体(微粒子)1が収容されるようになっている。図4(B)で示す断面は、重力方向に対して略平行な断面である。なお、本実施の形態では、六角型バレル形状の容器22を用いているが、これに限定されるものではなく、六角形以外の多角形のバレル形状の容器を用いることも可能である。
【0068】
容器22には実施の形態2と同様に回転機構(図示せず)が設けられている。この回転機構により容器22を矢印のように回転させることで該容器22内の粉体(微粒子)1を攪拌あるいは回転させながら被覆処理を行うものである。前記回転機構により容器22を回転させる際の回転軸は、略水平方向(重力方向に対して垂直方向)に平行な軸である。
【0069】
また、容器22の外面には実施の形態2と同様に加熱機構が配置されている。また、本サーマルCVD装置は実施の形態2と同様にガス導入機構及び真空ポンプを備えている。
【0070】
次に、上記サーマルCVD装置を用いて粉体(微粒子)1に超微粒子又は薄膜を被覆するCVD成膜方法について説明する。
まず、容器19内に多くの微粒子が集まった粉体1を収容する。尚、粉体1としては種々の材質を用いることが可能であるが、本実施の形態では実施の形態1と同様に例えばTi粉体又はAl粉体を用いる。
【0071】
次いで、ヒーター4で容器22を介して粉体1を所定の温度まで加熱しながら、真空ポンプを用いてチャンバー3内を所定の圧力まで減圧する。そして、第1ガス導入機構によって流量制御された酸素ガスを容器22の内部に導入すると共に、第2ガス導入機構によって流量制御されたSiHガスを容器22の内部に導入する。そして、回転機構により容器を所定の回転速度で所定時間回転させることで、容器22内の粉体1を回転させ、攪拌させる。これにより、粉体1の各々の微粒子表面にSiO膜からなる超微粒子又は薄膜を均一性よく被覆することができる。
【0072】
図5は、図4に示すサーマルCVD装置によって微粒子に薄膜を被覆した被覆微粒子の一例を示す断面図である。
被覆微粒子23は、微粒子1の表面に薄膜17が均一性よく被覆されたものである。前記サーマルCVD装置では、容器22を回転させることで微粒子1を回転させ攪拌しながらサーマルCVD法により薄膜を成膜しているため、微粒子1の表面全体に薄膜を非常に均一性よく被覆することができる。また、微粒子1の表面に凹凸又は窪みがある場合でも、膜の付きまわりが良いというCVD装置の特性上、凹凸又は窪みにカバレージよく薄膜を被覆することができる。これに対し、従来のスパッタリング装置によって凹凸又は窪みがある微粒子に薄膜を被覆した場合、CVD装置に比べて付きまわりが悪いために、凹凸又は窪みには薄膜が十分に被覆されない。
【0073】
上記実施の形態3においても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、六角型バレル形状の容器22自体を回転させることで粉体自体を回転させ攪拌でき、更にバレルを六角型とすることにより、粉体を重力により定期的に落下させることができる。このため、実施の形態2に比べて攪拌効率を飛躍的に向上させることができ、粉体を扱う時にしばしば問題となる水分や静電気力による粉体の凝集を防ぐことができる。つまり回転により攪拌と、凝集した粉体の粉砕を同時かつ効果的に行うことができる。したがって、粒径の非常に小さい微粒子に該微粒子より粒径が更に小さい超微粒子又は薄膜を均一性よく被覆することが可能となる。具体的には、粒径が50μm以下の微粒子に超微粒子又は薄膜を被覆することが可能となる。
【0074】
(実施の形態4)
図6は、本発明に係る実施の形態4によるプラズマCVD装置の概略を示す構成図である。このプラズマCVD装置は、微粒子(又は粉体)の表面に、該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆させるための装置である。
【0075】
プラズマCVD装置はチャンバー3を有している。チャンバー3内には、コーティング対象の粉体(微粒子)1を収容する容器2が配置されている。この容器2はプラズマ電源31又は接地電位に接続されるようになっており、両者はスイッチ32により切り替え可能に構成されている。
【0076】
また、プラズマCVD装置は、チャンバー3内に原料ガスを導入する原料ガス導入機構を備えている。この原料ガス導入機構は筒状のガスシャワー電極24を有しており、このガスシャワー電極24はチャンバー3内に配置されている。ガスシャワー電極24の一方側には、単数又は複数の原料ガスをシャワー状に吹き出すガス吹き出し口が複数形成されている。このガス吹き出し口は容器に収容された粉体1と対向するように配置されている。ガスシャワー電極24の他方側は真空バルブ26を介してマスフローコントローラ(MFC)27の一方側に接続されている。マスフローコントローラ27の他方側は図示せぬ真空バルブ及びフィルターなどを介して原料ガス発生源28に接続されている。この原料ガス発生源28は、粉体に被覆する薄膜によって発生させる原料ガスの種類が異なるが、例えばSiO膜を成膜する場合はSiHガス等を発生させるものとする。
【0077】
また、プラズマCVD装置はプラズマパワー供給機構を備えており、このプラズマパワー供給機構はガスシャワー電極24にスイッチ33を介して接続されたプラズマ電源25を有している。プラズマ電源25,31は、高周波電力(RF出力)を供給する高周波電源、マイクロ波用電源、DC放電用電源、及びそれぞれパルス変調された高周波電源、マイクロ波用電源、DC放電用電源のいずれかであればよい。例えばプラズマ電源が高周波電力を供給するものである場合、図示せぬインピーダンス整合器(マッチングボックス)を高周波電源とガスシャワー電極24との間に配置することが好ましい。つまり、この場合、ガスシャワー電極24はマッチングボックスに接続されており、マッチングボックスは同軸ケーブルを介して高周波電源(RF電源)に接続されている。
尚、ガスシャワー電極24及び容器2のいずれか一方にプラズマ電源が接続され、他方に接地電位が接続されていても良いし、ガスシャワー電極24及び容器2の両方にプラズマ電源が接続されていても良い。
【0078】
また、プラズマCVD装置は、チャンバー3内を真空排気する真空排気機構を備えている。例えば、ガスシャワー電極12にはチャンバー3内を排気する排気口(図示せず)が複数設けられており、排気口は真空ポンプ(図示せず)に接続されている。
【0079】
次に、上記プラズマCVD装置を用いて粉体1に超微粒子又は薄膜を被覆する方法について説明する。
まず、複数の微粒子からなる粉体1を容器2内に収容する。容器2内に収容する粉体1の量及び粉体の材質は実施の形態1と同様である。この後、真空ポンプを作動させることによりチャンバー3内を所定の圧力(例えば2×10−3Torr程度)まで減圧する。
【0080】
次いで、真空バルブ26を開き、原料ガス発生源28において原料ガス(例えばSiHガス)を発生させ、この原料ガスをマスフローコントローラ27によって流量制御し、この流量制御された原料ガスをガスシャワー電極24の内側に導入する。そして、ガスシャワー電極のガス吹き出し口から原料ガスを吹き出させる。
【0081】
この後、ガスシャワー電極24に例えばマッチングボックスを介してプラズマ電源25の一例である高周波電源(RF電源)から例えば13.56MHzのRF出力が供給される。この際、容器2は接地電位に接続されている。これにより、ガスシャワー電極24と容器2との間にプラズマを着火する。このとき、マッチングボックスは、容器2とガスシャワー電極24のインピーダンスに、インダクタンスL、キャパシタンスCによって合わせている。これによって、チャンバー3内にプラズマが発生し、SiOからなる超微粒子又は薄膜が微粒子1の表面に被覆される。
【0082】
上記実施の形態4によれば、プラズマCVD装置を用いることにより、微粒子又は粉体の表面に薄膜又は超微粒子を従来のスパッタリング装置に比べて均一性よく被覆することができる。
【0083】
また本実施の形態では、プラズマCVD法を用いるため、100℃以下の低温でも微粒子表面に薄膜等を被覆することが可能である。従って、100℃以上の高温で分解しやすい微粒子や相変化を起こしやすい微粒子、或いは表面変質しやすい微粒子に薄膜等を被覆することが可能となる。
また、本実施の形態では、プラズマCVD装置を用いるため、スパッタリング装置を用いる場合に比べてターゲット交換が不要であり、メンテナンス性が良い。
【0084】
(実施の形態5)
図7(A)は、本発明に係る実施の形態5によるプラズマCVD装置の概略を示す断面図であり、図7(B)は、図7(A)に示す7B−7B線に沿った断面図である。このプラズマCVD装置は、微粒子(又は粉体)の表面に、該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆させるための装置である。
【0085】
プラズマCVD装置は円筒形状のチャンバー3を有している。このチャンバー3の両端はチャンバー蓋20によって閉じられている。チャンバー3の内部には容器29が配置されている。この容器29は円筒形状の部分(丸型バレル)を有しており、この丸型バレルの内部にコーティング対象物としての粉体(微粒子)1が収容されるようになっている。また、容器29は、電極としても機能し、プラズマ電源31又は接地電位に接続されるようになっており、両者はスイッチ32により切り替え可能に構成されている。図7(B)で示す断面は、重力方向に対して略平行な断面である。なお、本実施の形態では、断面形状が略円形の容器29を用いているが、これに限定されるものではなく、断面形状が略楕円形の容器を用いることも可能である。
【0086】
容器29には回転機構(図示せず)が設けられており、この回転機構によりガスシャワー電極24を回転中心として容器29を矢印のように回転させることで該容器29内の粉体(微粒子)1を攪拌あるいは回転させながら被覆処理を行うものである。前記回転機構により容器29を回転させる際の回転軸は、略水平方向(重力方向に対して垂直方向)に平行な軸である。また、チャンバー3内の気密性は、容器29の回転時においても保持されている。
【0087】
また、プラズマCVD装置は、チャンバー3内に原料ガスを導入する原料ガス導入機構を備えている。この原料ガス導入機構は筒状のガスシャワー電極24を有しており、このガスシャワー電極24は容器29内に配置されている。即ち、容器29の一方側には開口部が形成されており、この開口部からガスシャワー電極24が挿入されている。ガスシャワー電極24には、単数又は複数の原料ガスをシャワー状に吹き出すガス吹き出し口が複数形成されている。このガス吹き出し口は容器に収容された粉体1と対向するように配置されている。ガス吹き出し口は、図7(B)に示すように重力方向30に対して容器29の回転方向に1°〜90°程度の方向に配置されている。
【0088】
ガスシャワー電極24は、実施の形態4と同様に真空バルブ、マスフローコントローラ(MFC)、真空バルブ、フィルター、原料ガス発生源に接続されている(図示せず)。この原料ガス発生源は、粉体に被覆する薄膜によって発生させる原料ガスの種類が異なるが、例えばSiO膜を成膜する場合はSiHガス等を発生させるものとする。
【0089】
また、プラズマCVD装置はプラズマパワー供給機構を備えており、このプラズマパワー供給機構は実施の形態4と同様の構造を有している。また、プラズマCVD装置は、チャンバー3内を真空排気する真空排気機構を備えており、真空排気機構の構造は実施の形態4と略同様である。
【0090】
次に、上記プラズマCVD装置を用いて粉体1に超微粒子又は薄膜を被覆する方法について説明する。
まず、複数の微粒子からなる粉体1を容器2内に収容する。尚、粉体1としては種々の材質を用いることが可能であるが、本実施の形態では実施の形態1と同様に例えばTi粉体又はAl粉体を用いる。この後、真空ポンプを作動させることによりチャンバー3内を所定の圧力(例えば2×10−3Torr程度)まで減圧する。これと共に、回転機構により容器29を回転させることで、その内部に収容された粉末(微粒子)1が容器内面において重力方向30とそれに対して回転方向に90°の間を転がりながら動く。
【0091】
次いで、原料ガス発生源において原料ガス(例えばSiHガス)を発生させ、この原料ガスをマスフローコントローラによって流量制御し、この流量制御された原料ガスをガスシャワー電極24の内側に導入する。そして、ガスシャワー電極のガス吹き出し口から原料ガスを吹き出させる。これにより、容器29内を転がりながら動いている微粒子1に原料ガスが吹き付けられ、制御されたガス流量と排気能力のバランスによって、CVD法による成膜に適した圧力に保たれる。
【0092】
この後、ガスシャワー電極24に例えばマッチングボックスを介してプラズマ電源25の一例である高周波電源(RF電源)から例えば13.56MHzのRF出力が供給される。この際、容器29は接地電位に接続されている。これにより、ガスシャワー電極24と容器29との間にプラズマを着火する。このとき、マッチングボックスは、容器2とガスシャワー電極24のインピーダンスに、インダクタンスL、キャパシタンスCによって合わせている。これによって、容器29内にプラズマが発生し、SiOからなる超微粒子又は薄膜が微粒子1の表面に被覆される。つまり、容器29を回転させることによって微粒子1を転がしているため、微粒子1の表面全体に薄膜を均一に被覆することが容易にできる。
【0093】
上記実施の形態5においても実施の形態4と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、丸型バレルの容器29自体を回転させることで粉体自体を回転させ攪拌できるため、粉体を扱う時にしばしば問題となる水分や静電気力による粉体の凝集を防ぐことができる。したがって、粒径の非常に小さい微粒子に該微粒子より粒径が更に小さい超微粒子又は薄膜を均一性よく被覆することが可能となる。
【0094】
(実施の形態6)
図8(A)は、本発明に係る実施の形態6によるプラズマCVD装置の概略を示す断面図であり、図8(B)は、図8(A)に示す8B−8B線に沿った断面図である。図8において図7と同一部分には同一符号を付し、同一部分の説明は省略する。
【0095】
チャンバー3の内部には容器30が配置されている。この容器30は、図8(B)に示すようにその断面が六角形のバレル形状(六角型バレル形状)を有している。そして、容器30の内部にはコーティング対象物である粉体(微粒子)1が収容されるようになっている。また、容器30は、電極としても機能し、プラズマ電源31又は接地電位に接続されるようになっており、両者はスイッチ32により切り替え可能に構成されている。図8(B)で示す断面は、重力方向に対して略平行な断面である。なお、本実施の形態では、六角型バレル形状の容器30を用いているが、これに限定されるものではなく、六角形以外の多角形のバレル形状の容器を用いることも可能である。
【0096】
容器30には実施の形態5と同様に回転機構(図示せず)が設けられている。この回転機構により容器30を矢印のように回転させることで該容器30内の粉体(微粒子)1を攪拌あるいは回転させながら被覆処理を行うものである。前記回転機構により容器30を回転させる際の回転軸は、略水平方向(重力方向に対して垂直方向)に平行な軸である。
【0097】
また、プラズマCVD装置は実施の形態5と同様に原料ガス導入機構及び真空排気機構を備えている。この原料ガス導入機構は実施の形態5と同様に筒状のガスシャワー電極24を有している。また、プラズマCVD装置は実施の形態5と同様にプラズマパワー供給機構を備えている。
【0098】
次に、上記プラズマCVD装置を用いて粉体(微粒子)1に超微粒子又は薄膜を被覆するCVD成膜方法について説明する。
まず、複数の微粒子からなる粉体1を容器30内に収容する。尚、粉体1としては種々の材質を用いることが可能であるが、本実施の形態では実施の形態1と同様に例えばTi粉体又はAl粉体を用いる。この後、真空ポンプを作動させることによりチャンバー3内を所定の圧力(例えば2×10−3Torr程度)まで減圧する。これと共に、回転機構により容器30を回転させることで、その内部に収容された粉末(微粒子)1が容器内面において攪拌又は回転される。
【0099】
次いで、原料ガス発生源において原料ガス(例えばSiHガス)を発生させ、この原料ガスをマスフローコントローラによって流量制御し、この流量制御された原料ガスをガスシャワー電極24の内側に導入する。そして、ガスシャワー電極のガス吹き出し口から原料ガスを吹き出させる。これにより、容器30内を攪拌又は回転しながら動いている微粒子1に原料ガスが吹き付けられ、制御されたガス流量と排気能力のバランスによって、CVD法による成膜に適した圧力に保たれる。
【0100】
この後、ガスシャワー電極24に例えばマッチングボックスを介してプラズマ電源25の一例である高周波電源(RF電源)から例えば13.56MHzのRF出力が供給される。この際、容器30は接地電位に接続されている。これにより、ガスシャワー電極24と容器30との間にプラズマを着火する。このとき、マッチングボックスは、容器2とガスシャワー電極24のインピーダンスに、インダクタンスL、キャパシタンスCによって合わせている。これによって、容器30内にプラズマが発生し、SiOからなる超微粒子又は薄膜が微粒子1の表面に被覆される。つまり、容器30を回転させることによって微粒子1を攪拌し、回転させているため、微粒子1の表面全体に薄膜を均一に被覆することが容易にできる。
【0101】
上記実施の形態6においても実施の形態4と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、六角型バレル形状の容器30自体を回転させることで粉体自体を回転させ攪拌でき、更にバレルを六角型とすることにより、粉体を重力により定期的に落下させることができる。このため、実施の形態5に比べて攪拌効率を飛躍的に向上させることができ、粉体を扱う時にしばしば問題となる水分や静電気力による粉体の凝集を防ぐことができる。つまり回転により攪拌と、凝集した粉体の粉砕を同時かつ効果的に行うことができる。したがって、粒径の非常に小さい微粒子に該微粒子より粒径が更に小さい超微粒子又は薄膜を被覆することが可能となる。具体的には、粒径が50μm以下の微粒子に超微粒子又は薄膜を被覆することが可能となる。
【0102】
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7によるマイクロカプセルについて説明する。
第1のマイクロカプセルは、微粒子の表面に優れた生体適合性を有するDLCからなる超微粒子又は薄膜を被覆し、この被覆された超微粒子又は薄膜の母体となっている前記微粒子を取り除いたものである。また、他の例である第2のマイクロカプセルは、微粒子の表面に第1の超微粒子又は第1の薄膜を被覆し、第1の超微粒子又は第1の薄膜の表面に優れた生体適合性を有するDLCからなる第2の超微粒子又は第2の薄膜を被覆し、この被覆された第1及び第2の超微粒子又は第1及び第2の薄膜の母体となっている前記微粒子を取り除いたものである。このようなマイクロカプセルは、医薬としてのドラッグデリバリーなどに適用するものである。尚、DLC(Diamond Like Carbon)膜は、炭素間のSP結合を主体としたアモルファスな炭素で、非常に硬く、絶縁性に優れ、高屈折率で非常に滑らかなモルフォロジを有する硬質炭素膜である。
【0103】
ここでのDLCからなる超微粒子又は薄膜(以下、DLC膜と呼ぶ)は、炭素を主成分とする非晶質炭素系薄膜であって、山形状を有する曲線を2つ以上合成したラマンスペクトル曲線を持つものをいい、比較的軟らかいものから非常に硬いものまで含まれる。このラマンスペクトルは図9に示すようなものである。但し、図9に示すラマンスペクトルは単なる一例である。
【0104】
図9に示すように、ラマンスペクトル曲線110は、GバンドとDバンドと呼ばれる2つの山を有するものであって、波数(wavenumber)が1500付近にピークを有する山形状の曲線(Gバンド)111と波数が1300付近にピークを有する山形状の曲線(Dバンド)112とを合成したものである。
【0105】
上記優れた生体適合性を有するDLC膜は、そのDLC膜を生体内部に導入した際、又は、生体に接触させた際、生体あるいは生体構成要素の持つ本来の機能を損なわない性質を有するものであり、細胞毒性がほとんど無いという性質を有するものである。
【0106】
ここで、生体適合性に優れていることは、組織適合性に優れ、非免疫性に優れ、血液適合性にも優れていることをいう。
【0107】
組織適合性とは、DLC膜を生体内部に導入した際、又は、生体に接触させた際、生体の組織を構成する細胞にダメージを発現させないことをいう。言い換えると、細胞毒性を発現させないことである。
細胞毒性とは、本来、増殖・分化していく細胞が、ある物質と直接又は間接的に接触し、破壊されることをいう。
【0108】
非免疫性とは、DLC膜を生体内部に導入した際、又は、生体に接触させた際、生体外部からの刺激(有害な異物)から生体を守る免疫反応を誘発させないことをいう。
血液適合性とは、DLC膜を血液と接触する部位で使用する際、不必要な血液の凝固(血栓形成)や破壊(溶血)を起こさないことをいう。血液凝固にはいくつかの要因があるが、その一つに血小板の吸着が挙げられる。血液中のアルブミンが吸着した材料表面は血小板の吸着が起こりにくいため、血栓形成を抑制することになる。
【0109】
次に、上記DLC膜が生体適合性を有することを確認するための細胞実験を行ったので、それについて説明する。
【0110】
実験方法について説明する。
まず、細胞を培養するポリスチレン製ディッシュを準備する。このディッシュは、平面が四角形状を有しており、縦8列、横12列の合計96個の穴(窪み)が設けられ、この穴の中に培養液と細胞を入れて細胞を培養するものである。これらの穴の底(底面)には次のような処理が施されている。すなわち、Cの使用ガス、20sccmのガス流量、5mmTorrのガス圧、下記A〜IのRF出力と成膜時間で穴底にDLC膜をコーティングしたもの、ポリスチレン(PS)のままのもの、TCD(ティッシュカルチャーポリスチレンディッシュ)処理を施したものが各々8個ずつ設けられている。TCDは組織培養用ディッシュである。
【0111】
成膜条件A:300WのRF出力、30秒の成膜時間
成膜条件B:300WのRF出力、60秒の成膜時間
成膜条件C:300WのRF出力、90秒の成膜時間
成膜条件D:500WのRF出力、30秒の成膜時間
成膜条件E:500WのRF出力、60秒の成膜時間
成膜条件F:500WのRF出力、90秒の成膜時間
成膜条件G:900WのRF出力、30秒の成膜時間
成膜条件H:900WのRF出力、60秒の成膜時間
成膜条件I:900WのRF出力、90秒の成膜時間
【0112】
次に、細胞を培地にて調整し、この細胞懸濁液を上記ディッシュの各々の穴に入れ、24時間のインキュベート後、穴の底面部における細胞接着性評価、細胞毒性評価を行った。なお、細胞としてはラット頭蓋冠由来骨芽細胞(マウスの頭頂部の骨の細胞)を用い、培地としてはDMEM培地と10%FBS(血清)と抗生物質、非必須アミノ酸などの培地に必要な栄養分を含むものを用いる。
【0113】
細胞接着性を評価するための細胞接着試験について説明する。
まず、ラット頭蓋冠由来骨芽細胞をDMEM培地にて8×10cells/mlに調整し、この細胞懸濁液100μlを上記ディッシュの各々の穴に入れる。そして、24時間のインキュベート後、穴の底面部に接着している細胞数をMTT assayにて算出した。
【0114】
MTTはミトコンドリア中の酵素によりformazanに変化する。Formazanを溶解し、比色定量することにより、ミトコンドリアの活性を評価できる。生成したformazan量は生細胞数に比例するため、MTT assayの吸光度(O.D.595nm)の値を接着細胞数とする。つまり、ミトコンドリアは1細胞につき1個あるから、MTT assayの吸光度の値から測定したミトコンドリアの数によって接着細胞数を測定できる。この結果は図10に示されている。
【0115】
図10は、細胞接着評価の結果を示すものであり、ディッシュにおけるPS(ポリスチレン)、DLCをコーティングしたA〜I及びTCDそれぞれと吸光度(O.D.595nm)との関係を示す棒グラフである。図10によれば、縦軸の値が高い程、接着した細胞数が多いことを示しているが、A〜IはDLCをコーティングしていないPSと比較して細胞接着性が明らかに良好であった。また、細胞接着性は対象比較として用いたTCDよりも若干良好であった。
【0116】
細胞毒性を評価するための細胞毒性試験について説明する。
まず、ラット頭蓋冠由来骨芽細胞をDMEM培地にて8×10cells/mlに調整し、この細胞懸濁液100μlを上記ディッシュの各々の穴に入れる。そして、24時間のインキュベート後、細胞膜障害性試験であるLDH漏出測定法にて細胞毒性を定量的に測定した。
【0117】
ライソソーム酵素であるLDHは、細胞膜が障害を受けた場合に細胞内から培地中に放出される。この放出されたLDHを、Iatrozyme LDH−L Kitを用い吸光度(O.D.595nm)を比色定量した。LDHの溶出率が高いほど、細胞膜に与えるダメージが大きいので、細胞毒性が強いと言える。この試験結果は図11に示されている。
【0118】
図11は、細胞毒性評価の結果を示すものであり、ディッシュにおけるPS(ポリスチレン)、DLCをコーティングしたA〜I及びTCDそれぞれとLDHの溶出率との関係を示す棒グラフである。
【0119】
図11において、縦軸のLDHの溶出率の値が高い程、細胞膜に対する障害性が高いこと(即ち細胞膜に与えるダメージが大きいこと)を示している。DLCをコーティングしていない未処理のPSでは、LDHの溶出率が20%と高い値を示しており、細胞膜の障害性が高いといえる。しかし、DLCをコーティングしたA〜Iでは、LDHの溶出率が低い値を示しているので、細胞膜の障害性が低いと言える。従って、DLCをコーティングすることにより、細胞膜の障害性を抑えることができる。A〜IはDLCをコーティングしていないPSと比較して明らかに低い毒性であった。また、細胞毒性は対象比較として用いたTCDとほぼ同等であった。
【0120】
細胞接着評価及び細胞毒性評価を行った結果、ディッシュにおいてDLCをコーティングしたものは、DLC膜の膜厚によらず、TCDと同程度又はそれ以上の細胞接着性を有し、低細胞毒性であることが判明した。従って、DLC膜は生体適合性が非常に優れていると言える。また、膜厚依存性が見られないので、PS表面にDLC膜を若干でもコーティングしておけば、骨芽細胞にとって良好な増殖の場となり得るのである。
【0121】
次に、上記DLC膜が血液適合性を有することを確認するための実験を行ったので、それについて説明する。
【0122】
実験方法方について説明する。
まず、ポリスチレン製ディッシュを準備する。このディッシュは前述した細胞実験に用いたものと同様である。
次に、タンパク溶液をディッシュの各々の穴に入れ、酵素免疫測定法(ELISA法)を用いて、穴の底面部に吸着したタンパク質を検出する。なお、ELISA法は、enzyme-liked immunosorbentassayの略で酵素活性を標識して抗原抗体応を追跡し、抗原又は抗体の量を定量するという方法であって、検出感度が非常に高く、ナノグラム・オーダーのタンパク質を検出することが可能である。
【0123】
具体的な実験方法について説明する。各種ディッシュに500ng/mlに調整した人血清アルブミン溶液を入れ、37℃で1時間インキュベートを行い、アルブミンをディッシュに吸着させる。1時間後、上澄みを除去し、1次抗体溶液を加え、37℃で2時間インキュベートを行い、吸着したタンパク質に1次抗体を結合させる。その後、ディッシュを洗浄して余剰な1次抗体を除去する。
【0124】
次に、ディッシュに2次抗体溶液を入れ、37℃で2時間インキュベートを行い、タンパク質に結合した1次抗体に2次抗体を結合させる。そして、1次抗体の場合と同様に余剰な2次抗体を洗浄除去した後、p−ニトロフェニルリン酸2ナトリウム6水和物によって、2次抗体に結合しているアルカリフォスファターゼに酵素反応させた後、水酸化ナトリウム水溶液で反応を停止させ吸光度を測定する。この測定結果から、各種ディッシュにおけるタンパク質の吸着率を算出し、その結果を図12に示している。
【0125】
図12は、ディッシュにおける穴の底面部(PS(ポリスチレン)、DLCをコーティングしたA〜I及びTCD)のタンパク質の吸着率を示す棒グラフである。ここでのタンパク質の吸着率は、穴に入れられたタンパク溶液に含まれているタンパク質が、穴の底面部に吸着した割合(%)である。
【0126】
図12によれば、A〜Iはタンパク質の吸着率が90〜100%と非常に良好であり、TCDに比較して非常に高い吸着率を示している。このような結果から、上記DLC膜が非常に優れた血液適合性を有することを確認することができた。
【0127】
次に、DLC膜についてラマンスペクトル分析を行った結果について説明する。
高周波電源に接続された電極上に基板を固定し、この電極に高周波電力を印加し、プラズマCVD法により基板表面にDLC膜を成膜することによりサンプルを作製した。この際の成膜条件として、使用ガスにCを用い、ガス流量を15sccmとし、ガス圧を5mTorrとし、RF出力を100W〜900Wで変化させた。このようにして作製した各々のサンプルにラマンスペクトル分析を行った。その結果得られた各々のサンプルのラマンスペクトル曲線において、Gピークベースライン強度BとGピーク補正後強度Aを測定し、各々のサンプルにおいてB/Aの値を計算した。その結果を図13に示す。
【0128】
ここで、B/A値とは、図14に示すように、Gピークベースライン強度をBとし、Gピーク補正後強度をAとした場合、B/Aの値のことである。図14は、B/A値の定義を説明するためのラマンスペクトル曲線である。
【0129】
図13は、各々のサンプルを作製した際のRF出力とB/A値の関係を示すグラフである。図15は、各々のサンプルを作製した際のRF出力とDLC膜の密度の関係を示すグラフである。各々のサンプルを作製する際のCガスの流量は15sccmで、ガス圧は5mTorrである。
図13に示すように、100W以上のRF出力で成膜したサンプルのB/A値は1.9程度となっているが、200WのRF出力から急激にB/A値が下がり、300W以上のRF出力でのB/A値はほぼ1.6以下となっている。また、図15に示すように、RF出力が高いほどDLC膜の膜密度が高くなっている。図13及び図15の結果から、B/A値が低いほどDLC膜の密度が高くなり緻密な膜が形成されているので、B/A値がより低いほど生体適合性に優れたDLC膜となる。したがって、DLC膜が生体適合性に優れているためには、B/A値が1.9未満であることがこのましい。
【0130】
次に、DLC膜についてアノード分極測定を行った結果について説明する。
高周波電源に接続された電極上にSi基体を固定し、この電極に高周波電力を印加し、プラズマCVD法によりSi基体表面にDLC膜を成膜することによりサンプルを作製した。この際の成膜条件として、使用ガスにCを用い、RF出力を100W〜500Wで変化させた。このようにして作製した各々のサンプルを10%KOH溶液に浸漬し、アノード分極測定を行った。その結果を図16及び図17に示している。
【0131】
図16は、100WのRF出力でDLC膜を成膜したサンプルのアノード分極測定結果を示すものであって、電位と電流密度の関係を示すグラフである。
図17は、200WのRF出力でDLC膜を成膜したサンプルのアノード分極測定結果を示すものであって、電位と電流密度の関係を示すグラフである。
図18は、DLC膜を成膜していないSi基体のアノード分極測定結果を示すものであって、電位と電流密度の関係を示すグラフである。
【0132】
アノード分極測定の結果、図16に示すように、100WのRF出力で成膜したサンプルのDLC膜はガス流量、ガス圧に拘わらず、小さい活性態を示し、Si基体のいくらかの溶解が観察された。これに対して、図17に示すように、200W以上のRF出力で成膜したサンプルのDLC膜は自然電極電位が貴側にシフトし、活性態を生じなかった。200W以上のRF出力で成膜した膜の臨界不動態化電流密度Icritは、図18に示すSi基体の場合に比べて3〜5桁小さく、DLC膜の欠陥面積を算出したところ10−2〜10−5オーダーで低欠陥の膜質であることが確認できた。したがって、200W以上のRF出力で成膜したDLC膜は非常に低欠陥であるので、このようなDLC膜を下地金属に被覆したものを生体内に埋め込んでも、下地金属を腐食から保護することが可能となる。よって、このような200W以上のRF出力、言い換えると0.28W/cm以上の電力密度で成膜したDLC膜は医療器具、人口臓器などに用いることが好ましい。なお、RF出力の電極面積が708cm(Φ300mm)であるので200Wの電力密度は0.28W/cmとなる。
【0133】
次に、前述した第1のマイクロカプセルの製造方法について説明する。
図8に示すプラズマCVD装置を用いて、実施の形態6で説明した方法により微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆させる。この際、超微粒子又は薄膜の材料はマイクロカプセルとして使用する場合に適したものを用いる。微粒子としては例えばNaClを用い、超微粒子又は薄膜の材料としては例えばDLCを用いる。
【0134】
詳細には、複数のNaCl微粒子1を容器30内に収容する。次いで、真空ポンプを作動させることによりチャンバー3内を所定の圧力まで減圧する。これと共に、回転機構により容器30を回転させることで、その内部に収容された粉末(NaCl微粒子)1が容器内面において攪拌又は回転される。
【0135】
次いで、原料ガス発生源において原料ガス(例えば、炭素と水素を含む炭化水素系ガス)を発生させ、この原料ガスをマスフローコントローラによって流量制御し、この流量制御された原料ガスをガスシャワー電極24の内側に導入する。そして、ガスシャワー電極のガス吹き出し口から原料ガスを吹き出させる。この際のガス圧は0.5mTorr以上500mTorr以下である。これにより、容器30内を攪拌又は回転しながら動いている微粒子1に原料ガスが吹き付けられ、制御されたガス流量と排気能力のバランスによって、CVD法による成膜に適した圧力に保たれる。
【0136】
この後、ガスシャワー電極24に例えばマッチングボックスを介してプラズマ電源25の一例である高周波電源(RF電源)から例えば13.56MHzのRF出力が供給される。この際、RF出力は30W以上であり、容器30は接地電位に接続されている。これにより、ガスシャワー電極24と容器30との間にプラズマを着火する。これによって、容器30内にプラズマが発生し、DLCからなる超微粒子又は薄膜がNaCl微粒子1の表面に被覆される。つまり、容器30を回転させることによって微粒子1を攪拌し、回転させているため、微粒子1の表面全体に薄膜等を均一に被覆することが容易にできる。
【0137】
この後、前記被覆した超微粒子又は薄膜の母体となっているNaCl微粒子を溶解、気化等を利用して取り除く。詳細には、例えば、ビーカーに水を入れ、この水の中にDLCを被覆したNaCl微粒子を入れる。この際、DLCを被覆したNaCl微粒子は水の底に沈む。
【0138】
次いで、時間が経過するにしたがい、DLCを被覆した微粒子が徐々に水面に浮かんでくる。これは、母体であるNaCl微粒子が水に溶解して被覆したDLCの内部から除去されるためである。
【0139】
次いで、一定の時間が経過すると、DLCを被覆した微粒子の全てが水面に浮かぶ。このようにしてDLCを被覆した全ての微粒子の内部のNaClが除去され、マイクロカプセルが作製される。
【0140】
次に、前述した第2のマイクロカプセルの製造方法について説明する。
図8に示すプラズマCVD装置を用いて、実施の形態6で説明した方法により微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい第1の超微粒子又は第1の薄膜を被覆させる。この際、第1の超微粒子又は第1の薄膜の材料はマイクロカプセルとして使用する場合に適したものであれば金属でも良いし絶縁物でも良い。次いで、図8に示すプラズマCVD装置を用いて、実施の形態6で説明した方法により第1の超微粒子又は第1の薄膜の表面に該微粒子より粒径の小さい第2の超微粒子又は第2の薄膜を被覆させる。この際、第2の超微粒子又は第2の薄膜の材料はマイクロカプセルとして使用する場合に適したものであれば良い。微粒子としては例えばNaClを用い、第2の超微粒子又は第2の薄膜の材料としては例えばDLCを用いる。
【0141】
DLCからなる第2の超微粒子又は第2の薄膜を被覆する方法の詳細は、第1のマイクロカプセルの場合の超微粒子又は薄膜を被覆する方法と同様である。
【0142】
この後、前記被覆した第1及び第2の超微粒子又は第1及び第2の薄膜の母体となっているNaCl微粒子を溶解、気化等を利用して取り除く。詳細は、第1のマイクロカプセルと同様である。
【0143】
尚、本実施の形態では、使用ガスとして炭化水素系ガスを用いているが、少なくとも炭素と水素を含むものであれば種々の炭化水素系ガスを用いることが可能であり、例えば、炭素と水素のみを含む化合物ガス、炭素と水素と酸素を含むガス、炭素、水素、酸素、珪素、窒素、銅、銀などを含むガス、ベンゼン、トルエン、アセチレンなどを用いることも可能である。
【0144】
また、本実施の形態では、成膜条件において0.5mTorr以上500mTorr以下の炭化水素系ガス圧を用いているが、さらに好ましいガス圧として10mTorr以上100mTorr以下が挙げられる。
【0145】
また、本実施の形態では、成膜条件においてRF出力が0.28W/cm以上の電力密度を用いることが好ましい。
【0146】
また、炭化水素系ガスの流量としては、上記圧力を実現できるガス流量であれば、種々のガス流量を用いることが可能である。
【0147】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、微粒子に薄膜を成膜する成膜条件を適宜変更することも可能である。
【0148】
また、実施の形態7では、図8に示すプラズマCVD装置を用いたマイクロカプセルの製造方法について説明しているが、これに限定されるものではなく、他のCVD装置を用いたマイクロカプセルの製造方法に本発明を適用することも可能である。例えば、図3のCVD装置、図4のCVD装置、又は図7のCVD装置を用いてマイクロカプセルを製造することも可能である。
【符号の説明】
【0149】
1…粉体(微粒子)、2…容器、3…チャンバー、4…ヒーター、5〜11…配管、12…第1バルブ、13…第2バルブ、14,15…マスフローコントローラ(MFC)、16…アルゴンガス導入機構、17…薄膜、18…被覆微粒子、19…容器、20…チャンバー蓋、21…ヒーター、22…容器、23…被覆微粒子、24…ガスシャワー電極、25…プラズマ電源、26…真空バルブ、27…マスフローコントローラ(MFC)、28…原料ガス発生源、29,30…容器、31…プラズマ電源、32,33…スイッチ、110…ラマンスペクトル曲線、111…山形状の曲線(Gバンド)、112…山形状の曲線(Dバンド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
優れた生体適合性を有するDLCからなる超微粒子又は薄膜により形成されたマイクロカプセルであって、
生体内部に導入した際、又は、生体に接触させた際、生体あるいは生体構成要素の持つ本来の機能を損なわない性質を有することを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項2】
外表面を構成する第1の超微粒子又は第1の薄膜と、
前記第1の超微粒子又は第1の薄膜の内側に形成された第2の超微粒子又は第2の薄膜とを具備するマイクロカプセルであって、
前記第1の超微粒子又は前記第1の薄膜は優れた生体適合性を有するDLCからなり、
生体内部に導入した際、又は、生体に接触させた際、生体あるいは生体構成要素の持つ本来の機能を損なわない性質を有することを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項3】
内部の断面形状が略円形である容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜が被覆され、この被覆された超微粒子又は薄膜の母体となっている前記微粒子が取り除かれたものであることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項4】
内部の断面形状が多角形である容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜が被覆され、この被覆された超微粒子又は薄膜の母体となっている前記微粒子が取り除かれたものであることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項5】
請求項3又は4において、前記超微粒子又は前記薄膜が優れた生体適合性を有するDLCからなり、
生体内部に導入した際、又は、生体に接触させた際、生体あるいは生体構成要素の持つ本来の機能を損なわない性質を有することを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項6】
内部の断面形状が略円形である容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい第1の超微粒子又は第1の薄膜が被覆され、前記CVD法を用いることで、該第1の超微粒子又は該第1の薄膜の表面に前記微粒子より粒径の小さい第2の超微粒子又は第2の薄膜が被覆され、この被覆された第1及び第2の超微粒子又は第1及び第2の薄膜の母体となっている前記微粒子が取り除かれたものであることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項7】
内部の断面形状が多角形である容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転させることにより、該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい第1の超微粒子又は第1の薄膜が被覆され、前記CVD法を用いることで、該第1の超微粒子又は該第1の薄膜の表面に前記微粒子より粒径の小さい第2の超微粒子又は第2の薄膜が被覆され、この被覆された第1及び第2の超微粒子又は第1及び第2の薄膜の母体となっている前記微粒子が取り除かれたものであることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項8】
請求項6又は7において、前記第2の超微粒子又は前記第2の薄膜が優れた生体適合性を有するDLCからなり、
生体内部に導入した際、又は、生体に接触させた際、生体あるいは生体構成要素の持つ本来の機能を損なわない性質を有することを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項9】
重力方向に対して略平行な断面の内部形状が略円形である容器内に微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆させ、
前記被覆した超微粒子又は薄膜の母体となっている前記微粒子を取り除くことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項10】
重力方向に対して略平行な断面の内部形状が多角形である容器内に微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい超微粒子又は薄膜を被覆させ、
前記被覆した超微粒子又は薄膜の母体となっている前記微粒子を取り除くことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、前記超微粒子又は薄膜は、優れた生体適合性を有するDLCからなり、
前記超微粒子又は薄膜を被覆させる際、前記容器内に、少なくとも炭素と水素を含む炭化水素系ガスを0.5mTorr以上500mTorr以下の圧力下で導入し、高周波電源に接続された電極を前記容器内に配置し、前記電極に電力密度が0.28W/cm以上の高周波電力を印加してプラズマCVD法により被覆することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項12】
重力方向に対して略平行な断面の内部形状が略円形である容器内に微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい第1の超微粒子又は第1の薄膜を被覆させ、
重力方向に対して略平行な断面の内部形状が略円形である容器内に、前記第1の超微粒子又は前記第1の薄膜が被覆された前記微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、前記第1の超微粒子又は前記第1の薄膜の表面に前記微粒子より粒径の小さい第2の超微粒子又は第2の薄膜を被覆させ、
前記被覆した第1及び第2の超微粒子又は第1及び第2の薄膜の母体となっている前記微粒子を取り除くことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項13】
重力方向に対して略平行な断面の内部形状が多角形である容器内に微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、該微粒子の表面に該微粒子より粒径の小さい第1の超微粒子又は第1の薄膜を被覆させ、
重力方向に対して略平行な断面の内部形状が多角形である容器内に、前記第1の超微粒子又は前記第1の薄膜が被覆された前記微粒子を収容し、
前記断面に対して略垂直方向を回転軸として前記容器を回転させることにより該容器内の微粒子を攪拌あるいは回転させながらCVD法を用いることで、前記第1の超微粒子又は前記第1の薄膜の表面に前記微粒子より粒径の小さい第2の超微粒子又は第2の薄膜を被覆させ、
前記被覆した第1及び第2の超微粒子又は第1及び第2の薄膜の母体となっている前記微粒子を取り除くことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13において、前記第2の超微粒子又は前記第2の薄膜は、優れた生体適合性を有するDLCからなり、
前記第2の超微粒子又は前記第2の薄膜を被覆させる際、前記容器内に、少なくとも炭素と水素を含む炭化水素系ガスを0.5mTorr以上500mTorr以下の圧力下で導入し、高周波電源に接続された電極を前記容器内に配置し、前記電極に電力密度が0.28W/cm以上の高周波電力を印加してプラズマCVD法により被覆することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−270144(P2010−270144A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170311(P2010−170311)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【分割の表示】特願2004−195314(P2004−195314)の分割
【原出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(595152438)株式会社ユーテック (59)
【出願人】(503004965)
【Fターム(参考)】