説明

マイクロガスタービン用燃焼器

【課題】液体燃料(例えば灯油)を燃料とし、小型燃焼室において、安定した着火性能、高い燃焼効率、低いCO濃度及びNOxを達成することができるマイクロガスタービン用燃焼器を提供する。
【解決手段】中心軸を囲み互いに同心かつ円筒形のインナーライナ12及びアウターライナ14と、燃料噴射と着火を行うバーナ16とを備え、内部に中空円筒形の燃焼室18を形成するマイクロガスタービン用燃焼器。燃焼室18は、エンドライナ側に設けられ外径が相対的に小さい1次燃焼室18aと、1次燃焼室の下流側に位置し外径が相対的に大きい2次燃焼室18bとからなる。1次燃焼室18aは、エンドライナ側の着火室19aと、2次燃焼室側の急速希釈室19bとからなり、その間に1次燃焼室の外径を狭める円環状の中間絞り20を有し、着火室19a内で燃料濃度の高い予混合旋回流を形成して着火し、急速希釈室19b内で旋回火炎を急速希釈する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置および推進装置に適用するためのマイクロガスタービン用燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットの駆動電源、緊急時の携帯電源として、レシプロエンジンより軽く静かな発電用超小型マイクロガスタービンの開発が進められており、その燃焼器として超小型燃焼器が要望されている。
【0003】
このようなマイクロガスタービン用燃焼器は、小型であるとともに、作動の安定性、排気の清浄性が重要であり、例えば特許文献1、2が既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,684,642号明細書,“GAS TURBINE ENGINE HAVING A MULTI−STAGE MULTI−PLANE COMBUSTION SYSTEM”
【特許文献2】国際公開第2008/047825号公報、「ガスタービン燃焼器」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したマイクロガスタービン用燃焼器は、小型であるとともに、作動の安定性、排気の清浄性が重要となる。
例えば、数百W容量の小型発電装置を想定した場合、経験則から外挿すると、マイクロガスタービン用燃焼器の燃焼室容積は100cm程度となる。
しかし、従来このような小型燃焼室においては、安定した着火性能、高い燃焼効率、低いCO濃度及びNOxを達成することはできなかった。
【0006】
特に、可搬性が良いことから液体燃料(例えば灯油)を燃料としたマイクロガスタービン用燃焼器が望まれているが、このような液焚きのマイクロガスタービン用燃焼器では燃料流量が数mL/minと極めて小流量となるため、燃料の十分な微粒化を行うことが難しく、良好な燃焼を行うことが困難であるため、液焚きでは特に、着火、燃焼安定範囲が十分でなく、低負荷時にはCO濃度や未燃分が高く、臭いやエミッションの排出が問題であった。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑みて創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、小型燃焼室において、安定した着火性能、高い燃焼効率、低いCO濃度及びNOxを達成することができるマイクロガスタービン用燃焼器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、中心軸を囲み互いに同心かつ円筒形のインナーライナ及びアウターライナと、燃料噴射と着火を行うバーナ部を備え、内部に中空円筒形の燃焼室を形成するマイクロガスタービン用燃焼器であって、
前記燃焼室は、バーナ部に設けられ外径が相対的に小さい1次燃焼室と、該1次燃焼室の下流側に位置し外径が相対的に大きい2次燃焼室とからなり、
前記1次燃焼室は、上流側の着火室と、下流側の急速希釈室とからなり、その間に1次燃焼室の外径を狭める円環状の中間絞りを有し、
前記着火室内で燃料濃度の高い予混合旋回流を形成して着火し、前記急速希釈室内で旋回火炎を急速希釈する、ことを特徴とするマイクロガスタービン用燃焼器が提供される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、さらに、前記着火室に着火用空気を外部から導入し、かつ急速希釈室に希釈用空気を外部から導入して、中心軸を囲む旋回空気流を形成する旋回空気流形成装置と、
前記着火室内の旋回空気流の旋回方向に向けて燃料を噴射し予混合旋回流を形成する液体燃料噴射装置と、
前記着火室内の予混合旋回流に着火して管状火炎面を形成する着火装置とを備える。
【0010】
また、前記旋回空気流形成装置は、バーナ部に設けられ、内側に前記1次燃焼室を形成するアニュラー型部材と、
該アニュラー型部材の外面から前記着火室及び急速希釈室内の前記旋回空気流の旋回方向に向けてそれぞれ貫通する着火用空気孔と希釈用空気孔とを有する。
【0011】
また、前記燃料噴射装置は、前記燃焼用空気孔を通り前記着火室内の旋回空気流中に燃料を噴射する燃料噴射ノズルを有する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の構成によれば、アニュラー型の燃焼室が100cm以下の小型燃焼室の場合でも、安定した燃焼が可能であり、高い燃焼効率が得られることが、後述する実施例により確認された。
【0013】
特に、1次燃焼室が着火室と急速希釈室とからなり、その間に1次燃焼室の外径を狭める円環状の中間絞りを有するので、中間絞りより着火室の着火用空気を調整することにより着火室内の燃料濃度を高く設定でき、燃焼安定性を高めることができ、これにより着火時やアイドル時の排ガス臭いや未燃分の排出を抑えることができる。また、中間絞りにより2次燃焼室側の急速希釈室の希釈用空気を調整することにより旋回火炎を急速希釈してNOxも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるマイクロガスタービン用燃焼器の第1実施形態図である。
【図2】図1の燃焼器の燃焼試験結果である。
【図3】本発明による燃焼器の試験装置の構成図である。
【図4】本発明によるマイクロガスタービン用燃焼器の第2実施形態図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明によるマイクロガスタービン用燃焼器の第1実施形態図であり、(A)は縦断面図、(B)はそのA−A断面図である。
この図において、本発明のマイクロガスタービン用燃焼器10(以下、単に「燃焼器」と呼ぶ)は、インナーライナ12、アウターライナ14、及びバーナ部16を備える。
インナーライナ12及びアウターライナ14は、それぞれ円筒形であり、中心軸Z−Zを囲み互いに同心に形成されている。
【0017】
バーナ部16は、インナーライナ12とアウターライナ14の上流側端部(この図で下端)を塞ぐ円環状の円板を有する。インナーライナ12とアウターライナ14の下流側端部(この図で上端)は発生した燃焼排ガス9をタービン2と排気管6を介して外部に排気するために開口している。
この燃焼器10の燃焼室18は、インナーライナ12とアウターライナ14で囲まれるほぼアニュラー型の領域である。
【0018】
図1(A)において、燃焼器10の燃焼室18は、1次燃焼室18aと2次燃焼室18bからなる。
1次燃焼室18aは、燃焼室18のエンドライナ12側に設けられ、外径D1が相対的に小さく形成されている。また、2次燃焼室18bは、1次燃焼室18aの下流側(図で上側)に位置し、外径D2が相対的に大きく形成されている。
【0019】
図1(A)において、1次燃焼室18aは、着火室19aと急速希釈室19bとからなり、その間に1次燃焼室18aの外径D1を狭める円環状の中間絞り20を有する。中間絞り20は内径D3の中心孔を有する。
【0020】
後述する実施例1において、燃焼室容積は50cmであり、1次燃焼室18aの外径D1と2次燃焼室18bの外径D2との比率は、1:1.36、1次燃焼室18aの外径D1と中間絞り20の内径D3の比率は、1:0.9である。
しかし、本発明はこれに限定されず、任意に変更することができる。
【0021】
図1(A)(B)において、本発明の燃焼器10は、さらに旋回空気流形成装置22、液体燃料噴射装置24、及び着火装置26を備える。
旋回空気流形成装置22は、着火室19aに着火用空気7aを外部から導入し、急速希釈室19bに希釈用空気7bを外部から導入して、中心軸Z−Zを囲む旋回空気流を形成する。
液体燃料噴射装置24は、着火室19a内に形成された旋回空気流の旋回方向に向けて液体燃料8を噴射し予混合旋回流を形成する。
着火装置26は、例えば周知の点火栓であり、形成された予混合旋回流に着火して管状火炎面11を形成する。
【0022】
旋回空気流形成装置22は、この例では、アニュラー型部材23と着火用空気孔23aと希釈用空気孔23bからなる。アニュラー型部材23は、アウターライナ14内面のエンドライナ側端部に設けられ、内側に1次燃焼室18aを形成する。着火用空気孔23aは、アニュラー型部材23の外面から着火室19a内の旋回空気流の旋回方向に向けて貫通する。希釈用空気孔23bは、アニュラー型部材23の外面から急速希釈室19b内の旋回空気流の旋回方向に向けて貫通する。
【0023】
液体燃料噴射装置24は、この例では、着火用空気孔23aを通り着火室19a内の旋回空気流中にガス燃料8(例えばプロパン)を噴射する燃料噴射ノズルである。
【0024】
この例において、着火用空気孔23aは、周方向に同一間隔で2箇所設けられ、希釈用空気孔23bは、周方向に同一間隔で4箇所設けられており、燃料噴射ノズル24は、各着火用空気孔23aに計2本設けられている。
この構成により、各着火用空気孔23aから着火室19a内に外部から着火用空気7aを導入して中心軸Z−Zを囲む旋回空気流を形成することができる。
また、液体燃料噴射装置24から着火室19a内に形成された旋回空気流の旋回方向に向けて液体燃料8を噴射し予混合旋回流を形成することができる。
さらに、着火装置26で着火室19aに形成された予混合旋回流に着火して管状火炎面11を形成することができる。
【0025】
なお、着火用空気孔23aと希釈用空気孔23bは、周方向に1箇所以上あればよい。また、燃料噴射ノズル24も、周方向に1箇所以上あればよい。また、各寸法は、この実施例に限定されず、任意に変更することができる。
さらに、旋回空気流形成装置22は、この例に限定されず、燃焼器入口にスワーラを設け、燃焼器周方向全体にわたり旋回する空気流を形成するようにしてもよい。
【実施例1】
【0026】
図2は、図1の燃焼器の燃焼試験結果である。なおこの試験では、燃料としてプロパンガスを用い、着火特性を試験した。
この図において、横軸は空気流量、縦軸は燃料流量、図中の◆は上述した中間絞り有り、■は中間絞り無しの場合の着火限界を示しており、それより空気流量が少ない領域では着火ができなくなる。中間絞り無しでは空気流量が多い条件で着火できなくなるが、中間絞り有りでは少ない燃料流量で空気流量が多い条件でも着火可能である。
【0027】
図2の試験結果から、1次燃焼室18aが、着火室19aと急速希釈室19bとからなり、その間に1次燃焼室18aの外径を狭める円環状の中間絞り20を有するので、着火用空気7aを調整することにより着火室19a内の燃料濃度を高く設定でき、着火性能を高めることができ、これにより着火時やアイドル時の排ガス臭いや未燃分の排出を抑えることができる。また、中間絞り20より2次燃焼室側の急速希釈室19bの希釈用空気を調整することにより旋回火炎を急速希釈してNOxも低減できることが確認された。
【実施例2】
【0028】
(実験装置および方法)
図3は、本発明によるマイクロガスタービン用燃焼器の第2実施形態図である。
図1のガス焚き燃焼器との違いは、液体燃料用に噴射弁と点火栓を変えた点であり、その他の基本構造は同一である。
【0029】
図4は、図3の燃焼器の燃焼試験結果である。なおこの試験では、燃料として灯油を用い、燃焼安定性の吹き消え限界を試験した。
この図において、横軸は空気流量、縦軸は燃料流量、図中の◆は上述した中間絞り有り、■は中間絞り無しの場合を示している。
【0030】
図2の試験結果から、1次燃焼室18aが、着火室19aと急速希釈室19bとからなり、その間に1次燃焼室18aの外径を狭める円環状の中間絞り20を有するので、着火用空気7aを調整することにより着火室19a内の燃料濃度を高く設定でき、燃焼安定性を高めることができ、これにより着火時やアイドル時の排ガス臭いや未燃分の排出を抑えることができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
2 タービン、6 排気管、
7a 着火用空気、7b 希釈用空気、
8 液体燃料、9 燃焼排ガス、
10 マイクロガスタービン用燃焼器(燃焼器)、
11 管状火炎面、12 インナーライナ、12a 下流側端部、
14 アウターライナ、16 バーナ部、
18 燃焼室、18a 1次燃焼室、18b 2次燃焼室、
19a 着火室、19b 急速希釈室、20 中間絞り、
22 旋回空気流形成装置、23 アニュラー型部材、
23a,23b 燃焼用空気孔、
24 液体燃料噴射装置(燃料噴射ノズル)、
26 着火装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を囲み互いに同心かつ円筒形のインナーライナ及びアウターライナと、燃料噴射と着火を行うバーナ部を備え、内部に中空円筒形の燃焼室を形成するマイクロガスタービン用燃焼器であって、
前記燃焼室は、エンドライナ側に設けられ外径が相対的に小さい1次燃焼室と、該1次燃焼室の下流側に位置し外径が相対的に大きい2次燃焼室とからなり、
前記1次燃焼室は、エンドライナ側の着火室と、2次燃焼室側の急速希釈室とからなり、その間に1次燃焼室の外径を狭める円環状の中間絞りを有し、
前記着火室内で燃料濃度の高い予混合旋回流を形成して着火し、前記急速希釈室内で旋回火炎を急速希釈する、ことを特徴とするマイクロガスタービン用燃焼器。
【請求項2】
さらに、前記着火室に着火用空気を外部から導入し、かつ急速希釈室に希釈用空気を外部から導入して、中心軸を囲む旋回空気流を形成する旋回空気流形成装置と、
前記着火室内の旋回空気流の旋回方向に向けて燃料を噴射し予混合旋回流を形成する燃料噴射装置と、
前記着火室内の予混合旋回流に着火して管状火炎面を形成する着火装置とを備える、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロガスタービン用燃焼器。
【請求項3】
前記旋回空気流形成装置は、バーナ部に設けられ、内側に前記1次燃焼室を形成するアニュラー型部材と、
該アニュラー型部材の外面から前記着火室及び急速希釈室内の前記旋回空気流の旋回方向に向けてそれぞれ貫通する着火用空気孔と希釈用空気孔とを有する、ことを特徴とする請求項2に記載のマイクロガスタービン用燃焼器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−7430(P2011−7430A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151897(P2009−151897)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)