説明

マイクロスキャナ

【課題】簡単な構成によって櫛歯電極間に精度よく段差構造が形成され、かつ、全体の小型化を可能とするマイクロスキャナを提供すること。
【解決手段】反射ミラー(10)の自由端に形成された櫛歯電極を有する第1の櫛歯部(13a,13b)と、第1の櫛歯部(13a,13b)と対向し互いの櫛歯が噛み合うように配置された櫛歯電極を有する第2の櫛歯部(15a,15b)と、反射ミラー(10)および第2の櫛歯部(15a,15b)の一方の面に対向するようにスペースを開けて配置された透光性基板(22)と、透光性基板(22)を固定端として第2の櫛歯部(15a,15b)の一部であって第2のトーションバー(16)の軸から外れた位置を押圧する押圧部材(23)と、具備する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スキャナに関し、特にMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を利用したマイクロスキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミラー面が設けられた可動板を揺動させて、そのミラー面に入射した光ビームなどを走査する光スキャナが、例えば、レーザプリンタやバーコードリーダなどの光学機器に使用されている。光スキャナの一例として、MEMS技術を用いて成形される可動構造体を有するマイクロスキャナが挙げられる。マイクロスキャナとしては、対向する2枚の櫛歯電極を電極の延伸方向に対して垂直方向に段差を設けて配置し、所定の電圧が印加されるのに応じて櫛歯電極間に発生する静電気力によってミラー面を揺動させるバーティカルコムアクチュエータ方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたマイクロスキャナは、2本の梁をねじり回転軸として往復振動可能に支持されたミラー基板と、このミラー基板の自由端に形成された可動櫛歯電極と、この可動櫛歯電極と噛み合うよう設けられた固定櫛歯電極と、から構成される。このマイクロスキャナでは、櫛歯電極間の段差構造を、スティクションパッドを利用して形成している。この方法では、支持基板上に形成された絶縁膜上にスティクションパッドを形成した後、スティクションパッドと重なる領域の絶縁膜をエッチングにより除去し、乾燥工程においてスティクションパッドと支持基板とを直接接着することによって段差構造を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−47897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、乾燥工程において、スティクションパッドと支持基板のみならず、例えば、可動櫛歯電極と固定櫛歯電極とが接着してしまうおそれがある。すなわち、マイクロスキャナなどの微細な構造体の駆動用として櫛歯電極間の段差構造を実現する場合、製造プロセスが複雑となるうえに、段差構造を精度よく形成することが困難であった。また、スティクションパッドの面積を大きく取る必要があるため、マイクロスキャナ全体の小型化が困難であった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成によって櫛歯電極間に精度よく段差構造が形成され、かつ、全体の小型化を可能とするマイクロスキャナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のマイクロスキャナは、反射ミラーと、前記反射ミラーを支持するための第1の支持部と、前記反射ミラーを回転駆動可能とするように前記反射ミラーと前記第1の支持部とを連結する第1のトーションバーと、前記反射ミラーの自由端に形成された櫛歯電極を有する第1の櫛歯部と、前記第1の櫛歯部と対向し互いの櫛歯が噛み合うように配置された櫛歯電極を有する第2の櫛歯部と、前記第2の櫛歯部を支持するための第2の支持部と、前記第2の櫛歯部を回転駆動可能とするように前記第2の櫛歯部と前記第2の支持部とを連結する第2のトーションバーと、前記反射ミラーおよび前記第2の櫛歯部の一方の面に対向するようにスペースを開けて配置された透光性基板と、前記透光性基板を固定端として前記第2の櫛歯部の一部であって前記第2のトーションバーの軸から外れた位置を押圧する押圧部材と、を具備したことを特徴とする。
【0008】
このマイクロスキャナによれば、押圧部材が、第2の櫛歯部の一部であって第2のトーションバーの軸から外れた位置を押圧することにより、第2の櫛歯部に、トーションバーを回転軸とするトルクを発生させることができる。これにより、第2の櫛歯部が回転駆動され、第2の櫛歯電極と第1の櫛歯電極との間に段差構造を形成することが可能となる。また、押圧部材は、透光性基板に設けられているため、反射ミラーおよび櫛歯部が形成された基板上に、押圧部材を設けるためのスペースを必要としない。したがって、簡単な構成によって櫛歯電極間に精度よく段差構造を形成することが可能となり、また、マイクロスキャナ全体の小型化が実現できる。
【0009】
また、上記マイクロスキャナにおいて、前記押圧部材は、前記第2の櫛歯部における櫛歯電極側とは反対側の一部を押圧することが考えられる。
【0010】
さらに、上記マイクロスキャナにおいて、前記押圧部材は、前記第2の櫛歯部における櫛歯電極側の一部を押圧することが考えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マイクロスキャナ全体の小型化を可能としつつ、可動櫛歯電極と固定櫛歯電極との段差構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態に係るマイクロスキャナを示す上面図である。
【図2】第1の実施の形態に係るマイクロスキャナを示す断面模式図である。
【図3】第1の実施の形態に係るマイクロスキャナを示す斜視図である。
【図4】第2の実施の形態に係るマイクロスキャナを示す上面図である。
【図5】第2の実施の形態に係るマイクロスキャナを示す断面模式図である。
【図6】第2の実施の形態に係るマイクロスキャナを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1の実施の形態に係るマイクロスキャナ1を示す上面図である。図2は、図1のA−A線断面模式図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に係るマイクロスキャナ1は、上面視で1辺が数mm程度の略正方形または略矩形である直方体状の素子である。マイクロスキャナ1は、下部基板21の基体となるSOI(Silicon On Insulator)基板を、MEMS技術を用いて加工することにより作製されたMEMS素子である。図2に示すように、下部基板21は、例えば、導電性を有する第1のシリコン層からなる活性層21aと、活性層21a上に形成された酸化シリコン層からなる絶縁層21bと、絶縁層21b上に形成された第2のシリコン層からなる支持層21cと、から構成される3層構造の基板である。
【0015】
下部基板21の一方の面には中央部に矩形形状の開口部211が形成されていて、開口部211内にミラー面10aを有する矩形状の薄板体からなる反射部材10が配置されている。反射部材10のX軸方向(図1参照)の両側部に、X軸方向となる外方へ伸びる一対のトーションバー11の一端部が結合(一体形成)されている。下部基板21の開口部211に近接する位置であって各トーションバー11のそれぞれの延伸方向に一対の固定部12が設けられている。各トーションバー11の他端部は、それぞれ対応する各固定部12に結合(一体形成)されている。図2に示すように、開口部211内に浮かせた状態で配置された反射部材10、は、一対のトーションバー11をねじり回転軸として揺動可能に支持されている。一対のトーションバー11は、反射部材10の重心位置(Y軸方向の中間位置)近傍を両側面から支持することが望ましい。
【0016】
図2に示すように、反射部材10およびトーションバー11は、支持層21cと同一層に形成されている。ミラー面10aは、支持層21c(反射部材10の形成位置)の上面に、例えばアルミニウム薄膜を形成することで実現される。
【0017】
反射部材10のY軸方向の両端部が反射部材10の自由端となる。反射部材10の双方の自由端には、それぞれ可動櫛歯電極13a,13bが形成されている。各可動櫛歯電極13a,13bと当該各可動櫛歯電極13a,13bと対向する反射部材10の開口部211の側面との間に、固定櫛歯電極部14a,14bが配置されている。固定櫛歯電極部14a,14bのうち、可動櫛歯電極13a,13bと向かい合う部分には、それぞれ固定櫛歯電極15a,15bが形成されている。可動櫛歯電極13a,13bおよび固定櫛歯電極15a,15bは、それぞれ複数の櫛歯を有し、互いに櫛歯が噛み合うように配置されている。
【0018】
固定櫛歯電極部14a,14bは、反射部材10の双方の自由端に沿って延在している。固定櫛歯電極部14a,14bは、歯列方向となるX軸方向の両側部に、X軸方向に延伸する一対のトーションバー16の一端部が結合(一体形成)されている。下部基板21の開口部211の近傍であって各トーションバー16の延伸方向の対向位置に、それぞれ固定部17が設けられている。各トーションバー16の他端部は、それぞれ対応する各固定部17に連結(一体形成)されている。図2に示すように、固定櫛歯電極部14a,14bは、反射部材10と共に開口部211内に配置されており、一対のトーションバー16をねじり回転軸として揺動可能に支持されている。
【0019】
図2に示すように、下部基板21の上方には、所定のスペースを介して上部基板22が配置されている。上部基板22の材料として、光を走査するために透光性を有する材料、例えば、パイレックスガラス(パイレックスは登録商標)を用いることができる。上部基板22の外周部には、スペーサとして機能する外壁部221が形成されている。上部基板22を固定端として、固定櫛歯電極部14a,14bの一部であって、トーションバー16の回転軸上から外れた場所を押圧する押圧部材23が設けられている。押圧部材23は、その先端が支持層21cの表面位置より所定距離だけ下方(上部基板22とは反対方向)に到達する長さに調整されている。これにより、押圧部材23の先端が、固定櫛歯電極部14a,14bの表面(支持層21cの上面位置と同じ高さ)を下方へ所定距離だけ押しこむように構成されている。なお、図1〜3において、押圧部材23は、角柱形状に図示されているが、押圧部材23の形状はこれに限定されない。
【0020】
次に、上記のように構成されたマイクロスキャナ1における櫛歯電極間の段差構造について説明する。
図2および図3には、櫛歯電極間に段差構造が形成された状態が示されている。図3は、櫛歯電極間に段差構造が形成された状態のマイクロスキャナ1を示す斜視図であり、反射部材10、固定櫛歯電極部14a,14bおよび押圧部材23を抜き出して示している。
【0021】
押圧部材23は、下部基板21に上部基板22を取り付けて固定した状態で、固定櫛歯電極部14aの上面であってトーションバー16の回転軸よりも固定櫛歯電極15aとは反対側の一部を押圧する。押圧部材23の先端が固定櫛歯電極部14aの表面よりも所定距離だけ下方へ位置する。押圧部材23の押圧力によって固定櫛歯電極部14aには、トーションバー16をねじり回転軸とする所定回転方向のトルクに変換される。したがって、固定櫛歯電極部14aのうち、固定櫛歯電極15aとは反対側は下方向に変位し、固定櫛歯電極15a側は上方向に変位する。これにより、可動櫛歯電極13aと固定櫛歯電極15aとの間には垂直方向に段差が生じる。すなわち、櫛歯電極間に段差構造が形成される。
【0022】
固定櫛歯電極部14bでも同様に、押圧部材23が、固定櫛歯電極部14bにおける固定櫛歯電極15bとは反対側の一部を押圧することにより、トーションバー16をねじり回転軸とするトルクに変換される。したがって、固定櫛歯電極部14bのうち、固定櫛歯電極15bとは反対側は下方向に変位し、固定櫛歯電極15b側は上方向に変位する。これにより、可動櫛歯電極13bと固定櫛歯電極15bとの間には垂直方向に段差が生じる。すなわち、櫛歯電極間に段差構造が形成される。
【0023】
次に、上記のように構成されたマイクロスキャナ1の動作について説明する。
マイクロスキャナ1は、反射部材10を回転駆動し、ミラー面10aで反射する光の反射角を1軸方向に連続的に変化させて光走査する。マイクロスキャナ1は、例えば、静電気力を駆動力として反射部材10を揺動する。可動櫛歯電極13aと固定櫛歯電極15aとの間に電圧が印加されると、両電極間に互いに引き合う方向に作用するクーロン力(静電気力)が発生し、このクーロン力が反射部材10の自由端部において反射部材10(ミラー面10a)の上面に対し略垂直方向に作用する。これにより、反射部材10には、トーションバー11をねじり回転軸とする第1方向(時計回り)のトルクが発生する。また、可動櫛歯電極13bと固定櫛歯電極15bとの間に電圧が印加されると、可動櫛歯電極13aと固定櫛歯電極15aとの間のクーロン力(引力)は解除され、ねじられたトーションバー11が弾性復帰力により反射部材10(ミラー面10a)を元の位置に戻そうとするとともに、可動櫛歯電極13bと固定櫛歯電極15bとの間に互いに引き合う方向に作用するクーロン力が発生し、このクーロン力が反射部材10の自由端部に対して略垂直方向に作用する。これにより、反射部材10には、トーションバー11をねじり回転軸とする第1方向とは反対方向となる第2方向(反時計回り)のトルクが発生する。
【0024】
したがって、例えば切り換えスイッチにより、可動櫛歯電極13aと固定櫛歯電極15aの間と、可動櫛歯電極13bと固定櫛歯電極15bの間と、に交互に電圧を印加することによって、反射部材10は1軸方向に連続的に回転する。ミラー面10aに入射した光ビームは、反射部材10の回転にしたがったミラー面10aの回転によって反射角が変更されることにより1軸方向に走査される。
【0025】
以上説明したように、第1の実施の形態に係るマイクロスキャナ1によれば固定櫛歯電極部14a,14bにおける固定櫛歯電極15a,15b側とは反対側の一部であってトーションバー16から外れた位置を押圧部材23によって押圧する構成により、固定櫛歯電極部14a,14bに、トーションバー16を回転軸とするトルクを発生させることができ、固定櫛歯電極部14a,14bを所定角度だけ回転させて固定櫛歯電極15a,15bと可動櫛歯電極13a,13bとの間に段差構造を形成することが可能となる。また、トルクを発生させるための押圧部材23は、上部基板22上に設けることができるため、下部基板21上に押圧部材23を設けるためのスペースを必要としない。したがって、簡単な構成によって櫛歯電極間に精度よく段差構造を形成することが可能となり、また、マイクロスキャナ1全体の小型化が実現できる。
【0026】
(第2の実施の形態)
以下、第2の実施の形態に係るマイクロスキャナ3について、図面に基づいて説明する。図4は、第2の実施の形態に係るマイクロスキャナ3を示す上面図である。図5は、第2の実施の形態に係るマイクロスキャナ3のB−B線断面模式図である。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態に係るマイクロスキャナ1と共通する構成については同一の符号を付与してその説明を省略し、第1の実施の形態で示したマイクロスキャナ1とは異なる構造について主に説明する。マイクロスキャナ3は、トーションバー16の結合位置および押圧部材の押圧位置が、第1の実施の形態と相違する。
【0027】
固定櫛歯電極部14a,14bの歯列方向となるX軸方向の両側部には、それぞれX軸方向に延伸する一対のトーションバー16の一端部が結合(一体形成)されている。本実施の形態では、トーションバー16の固定櫛歯電極部14a,14bへの結合位置を、固定櫛歯電極15a,15bとは反対側となるY軸方向の端部にしている。したがって、固定櫛歯電極部14a,14bの固定櫛歯電極15a,15b側を前面とし固定櫛歯電極15a,15bとは反対側を背面とすれば、固定櫛歯電極部14a,14bの背面端部に沿ったX軸方向の直線がトーションバー16によるねじり回転軸となる。上部基板22の下面に固定端が固定された押圧部材23の先端は、固定櫛歯電極部14a,14bの上面であってトーションバー16によるねじり回転軸と固定櫛歯電極15a,15bとの中間に当接している。第1の実施の形態と同様に、押圧部材23の先端が支持層21cの表面位置より所定距離だけ下方(上部基板22とは反対方向)に到達する長さに調整されている。これにより、押圧部材23の先端が、常に固定櫛歯電極部14a,14bの表面(支持層21cの上面位置と同じ高さ)を下方へ所定距離だけ押しこむ。
【0028】
次に、上記のように構成されたマイクロスキャナ3における櫛歯電極間の段差構造について説明する。図6は、櫛歯電極間に段差構造が形成された状態のマイクロスキャナ3を示す斜視図であり、反射部材10、固定櫛歯電極部14a,14bおよび押圧部材23を抜き出して示している。
【0029】
押圧部材23は、下部基板21に上部基板22を取り付けて固定した状態で、固定櫛歯電極部14aの上面であってトーションバー16の回転軸よりも固定櫛歯電極15a寄りの一部を押圧する。押圧部材23の先端が固定櫛歯電極部14aの表面よりも所定距離だけ下方へ位置するので、押圧部材23の押圧力によって固定櫛歯電極部14aにおける固定櫛歯電極15aの基端部近傍を上部基板22側から下方に向けて押圧する。この力によって、固定櫛歯電極部14aには、トーションバー16をねじり回転軸とする第1の方向(時計回り)のトルクが発生する。したがって、固定櫛歯電極部14aのうち、固定櫛歯電極15a側は下方向に変位する。これにより、可動櫛歯電極13aと固定櫛歯電極15aとの間には垂直方向に段差が生じる。すなわち、櫛歯電極間に段差構造が形成される。
【0030】
固定櫛歯電極部14bでも同様に、押圧部材23が、固定櫛歯電極部14bにおけるトーションバー16の軸よりも固定櫛歯電極15b寄りの一部を押圧することにより、トーションバー16をねじり回転軸とする第1方向とは反対方向となる第2方向(反時計回り)のトルクが発生する。したがって、固定櫛歯電極部14bのうち、固定櫛歯電極15b側は下方向に変位する。これにより、可動櫛歯電極13bと固定櫛歯電極15bとの間には垂直方向に段差が生じる。すなわち、櫛歯電極間に段差構造が形成される。
【0031】
したがって、例えば切り換えスイッチにより、可動櫛歯電極13aと固定櫛歯電極15aの間と、可動櫛歯電極13bと固定櫛歯電極15bの間と、に交互に電圧を印加することによって、反射部材10は1軸方向に連続的に回転する。その結果、ミラー面10aに入射した光ビームは、反射部材10の回転にしたがったミラー面10aの回転によって反射角が変更されることにより1軸方向に走査される。
【0032】
以上説明したように、第2の実施の形態に係るマイクロスキャナ3によれば、固定櫛歯電極部14a,14bの上面であってトーションバー16の軸から外れた固定櫛歯電極15a,15b側の一部を押圧部材23によって押圧する構成により、固定櫛歯電極部14a,14bに、トーションバー16を回転軸とするトルクを発生させることができ、固定櫛歯電極15a,15bと可動櫛歯電極13a,13bとの間に段差構造を形成することが可能となる。また、トルクを発生させるための押圧部材23は、上部基板22上に設けることができるため、下部基板21上に押圧部材23を設けるためのスペースを必要としない。したがって、簡単な構成によって櫛歯電極間に精度よく段差構造を形成することが可能となり、また、マイクロスキャナ3全体の小型化が実現できる。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
【0034】
上記実施の形態においては、固定櫛歯電極部14a(14b)の上部に押圧部材23を配置する構成について説明しているが、この構成に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、固定櫛歯電極部14a(14b)の下部に押圧部材23を配置する構成であってもよい。
【0035】
さらに、上記実施の形態においては、ミラー面10aが上面視で略矩形形状である構成について説明しているが、この構成に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、ミラー面10aは、円形など、他の形状であってもよい。これに伴って、固定櫛歯電極部14a,14bなどの形状も適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、マイクロスキャナのみならず、他のデバイスに適用されるバーティカルコムアクチュエータに利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1,3 マイクロスキャナ
10 反射部材
10a ミラー面(反射ミラー)
11 トーションバー
12 固定部(第1の支持部)
13a,13b 可動櫛歯電極
14a,14b 固定櫛歯電極部(第2の櫛歯部)
15a,15b 固定櫛歯電極
16 トーションバー
17 固定部(第2の支持部)
21 下部基板
21a 活性層
21b 絶縁層
21c 支持層
211 開口部
22 上部基板(透光性基板)
221 外壁部
23 押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射ミラーと、前記反射ミラーを支持するための第1の支持部と、前記反射ミラーを回転駆動可能とするように前記反射ミラーと前記第1の支持部とを連結する第1のトーションバーと、前記反射ミラーの自由端に形成された櫛歯電極を有する第1の櫛歯部と、前記第1の櫛歯部と対向し互いの櫛歯が噛み合うように配置された櫛歯電極を有する第2の櫛歯部と、前記第2の櫛歯部を支持するための第2の支持部と、前記第2の櫛歯部を回転駆動可能とするように前記第2の櫛歯部と前記第2の支持部とを連結する第2のトーションバーと、前記反射ミラーおよび前記第2の櫛歯部の一方の面に対向するようにスペースを開けて配置された透光性基板と、前記透光性基板を固定端として前記第2の櫛歯部の一部であって前記第2のトーションバーの軸から外れた位置を押圧する押圧部材と、
を具備したことを特徴とするマイクロスキャナ。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記第2の櫛歯部における櫛歯電極側とは反対側の一部を押圧することを特徴とする請求項1記載のマイクロスキャナ。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記第2の櫛歯部における櫛歯電極側の一部を押圧することを特徴とする請求項1記載のマイクロスキャナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−97139(P2013−97139A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239055(P2011−239055)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】