説明

マイクロスフィアの製法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は薬物の徐放性マイクロスフィアの製法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、液中乾燥法によりマイクロスフィアを調製する方法として、O/O型、W/O/W型、O/W型が知られている。
【0003】薬物を効率良くマイクロスフィア内部に取り込ませるためには、水混和性溶媒を内相とし、他方シリコーン油、植物油等を外相とするO/O型が挙げられる。しかしながら、この方法は溶媒の大量使用や、乾燥時に加熱が必要である等問題点が多い。
【0004】特開昭62−201816号公報には、W/O/W型の液中乾燥法において、W/O型乳化物の粘度を約150cpないし10000cpに調整して薬物を効率良く取り込ませる方法が開示されている。しかしながら、W/O/W型は三相構造となり、複雑である上、内水相にゼラチン等を使用し粘度を調製しなければならない。
【0005】O/W型液中乾燥法は、有機溶媒の使用量が比較的少ない方法であるが、水溶性薬物に適用した場合、そのほとんどが外水相に分配するため、マイクロスフィア中に取り込まれる薬物量が極めて少なくなる欠点を有する。
【0006】また、一般のO/W型液中乾燥法は、マイクロスフィアからの薬物の放出が投薬の初期において比較的遅く、時間の経過と共に速くなる放出挙動を示す。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、種々の調整方法のうち、O/W型液中乾燥法について検討を試みた。すなわち、上記に示したO/W型液中乾燥法の有する欠点を克服するため、鋭意研究を重ねた結果、下記に示す方法を採用することにより、このような問題点を解決することができることを見い出し、本発明を完成した。
【0008】更に、本発明者らは、O/W型液中乾燥方法における薬物の放出を投薬の初期から速めるため下記方法を採用することにより問題解決に成功し、本発明を完成した。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は薬物をO/W型液中乾燥法によりマイクロスフィアとするに当り、油相の溶媒組成が少なくとも一種の水不溶性溶媒と少なくとも一種の水混和性の溶媒とから成ることを特徴とする薬物を含有するマイクロスフィアの製法である。
【0010】更に詳しくは、薬物を高分子物質と共に、少なくとも一種の水不溶性溶媒と少なくとも一種の水混和性溶媒とから成る有機溶媒組成物に溶解若しくは分散して油相(内相)とし、水相(外相)である例えばポリビニルアルコールなどの活性剤水溶液中で攪拌して、液中乾燥をおこなうことによる薬物を含有するマイクロスフィアの製法である。
【0011】本発明方法により、薬物をO/W型液中乾燥法によりマイクロスフィアとする場合、薬物が外水相に分配することを防ぎ、マイクロスフィアへの薬物の取り込み率を高め、その結果マイクロスフィア中の薬物の量を増加せしめることが可能である。
【0012】したがって、本発明の目的は薬物をO/W型液中乾燥法によりマイクロスフィアとする際に、マイクロスフィアへの薬物の取り込み率を改善する新規な方法を提供するにある。
【0013】本発明を実施する際は、O/W型液中乾燥法は一般に知られている方法を用いることができる。すなわち、薬物にポリ乳酸などの生体内分解型あるいは生体内適合性を有する高分子重合物を加え、これを油相の溶媒組成が少なくとも一種の水不溶性溶媒と少なくとも一種の水混和性の溶媒、換言すればエタノールなどの水混和性溶媒を少なくとも一種以上混合した塩化メチレンなどの水不溶性溶媒に溶解または分散し、ポリビニルアルコールなどの水溶性液中で乳化分散する。
【0014】乳化分散は、ポリトロン(商標)あるいは、超音波乳化など一般に使用される装置を用いておこなうことが可能である。次いで攪拌しながら、O/W型液中乾燥をおこなって、油相を固化させた後、遠心分離機で生成したマイクロスフィアを捕集し、精製水で洗浄し、次いで水に再分散して凍結乾燥をおこなって粉末とする。
【0015】水混和性溶媒としては、水に混和する任意の溶媒を使用することができるが、代表的な好ましい溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルスルホキシド、及びアセトニトリルなどをあげることができる。
【0016】水混和性溶媒の油相中の比率としては、好ましくは、5〜95%であり、更に好ましくは、10〜50%であるが、溶媒相互の性質あるいは薬物の特性によってその比率を自由に変えることができる。
【0017】また、水混和性溶媒とともに用いられる水不溶性溶媒は、水と混和しにくく、かつ高分子重合物を溶解するものを使用することができる。好ましい例を挙げれば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンなどのハロゲン化アルカン、酢酸エチル、シクロヘキサンなどを挙げることができる。ポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合物を用いる場合は塩化メチレンが最も好ましい。本発明で用いられる油相に含まれる高分子重合物としては水に不溶又は難溶で、生体適合性があるものが望ましい。これらの高分子重合体としては、例えば生体内分解型としてポリ乳酸、ポリグリコール酸等のポリ脂肪酸エステル、ポリ−α−シアノアクリル酸エステル、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸、ポリオルソエステル等の他、熱変性あるいはホルマリン等で懸架したコラーゲン、ゼラチンもしくはアルブミン、酵素等で変性したフィブリン等の生体由来物質の重合体が挙げられる。
【0018】また、生体適合性を有するその他の高分子化合物として、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、無水マレイン酸共重合物、ポリウレタン等が挙げられる。
【0019】これらの重合体は一種でも、または二種以上の共重合物あるいは単なる混合物でもそれらの塩でもよい。
【0020】これらの重合体のなかで、注射可能な物としては、生体内分解型のポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合物が好ましく、平均分子量は1,000から100,000の範囲が好ましい。
【0021】更に、本発明は、O/W型液中乾燥法によりマイクロスフィアを製造するに当り、油相に脂肪酸またはその塩を添加することを特徴とするマイクロスフィアの製法である。更に詳しくは薬物と脂肪酸塩を溶媒に溶解あるいは分散せしめて油相(内相)とし、水相(外相)である例えばポリビニルアルコールなどの活性剤水溶液中で攪拌して、液中乾燥をおこなうことにより薬物を含有するマイクロスフィアを製造することができる。
【0022】本発明方法により、薬物をO/W型液中乾燥法によりマイクロスフィアとする場合、薬物が外水相に分配することを防ぎ、マイクロスフィアへの薬物の取り込み率を高め、その結果マイクロスフィア中の薬物の量を増加せしめることが可能である。
【0023】したがって、本発明の目的は、薬物をO/W型液中乾燥法によりマイクロスフィアとする際に、マイクロスフィアへの薬物の取り込み率を改善する新規な方法を提供するにある。
【0024】本発明におけるマイクロスフィアは一般に知られているO/W型液中乾燥法を用いて製造することができる。即ち、薬物に脂肪酸またはその塩とポリ乳酸あるいはポリスチレン等の生体内分解型あるいは生体適合性を有する高分子重合物を加え、塩化メチレン等の有機溶媒に溶解あるいは分散し、ポリビニルアルコール等の水溶液中で乳化分散する。乳化分散にはポリトロン(商標)あるいは超音波乳化機等の一般に使用される装置を用いることができる。攪拌しながら、O/W型液中乾燥を行って、油相を固化させた後、遠心分離機で生成したマイクロスフィアを捕集し、精製水で洗浄、水に再分散して凍結乾燥を行なって粉末とすることができる。
【0025】本発明で用いられる脂肪酸またはその塩とは、直鎖あるいはアルキル基に側鎖を持つ鎖式構造でカルボキシル基1個を持つカルボン酸またはその塩を意味するが、炭素数4以上である場合が好ましい。具体的には例えば、酪酸ナトリウム、吉草酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、エナント酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、ペラルゴン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ウンデシル酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、トリデシル酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ペンタデシル酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ヘプタデシル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ノナデカン酸ナトリウム、アラキン酸ナトリウム、イソクロトン酸ナトリウム、ウンデシレン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、エライジン酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、リノール酸ナトリウム、リノレン酸ナトリウム、アラキドン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなどを挙げることができる。
【0026】さらに好ましくは、炭素数8以上18以下の偶数個の炭素を持つ脂肪酸塩、例えば、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなどを挙げることができる。塩は薬理学的に許容可能な金属塩で、水溶液中で解離可能であればいかなる塩でもよいが、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩などをあげることができる。
【0027】さらに、本発明を実施するに当っては、薬物のマイクロスフィア中への取り込み率を増加させるために、油相の溶媒に水混和性の溶媒を加えたり、油相に脂肪酸もしくは脂肪酸塩を添加することもできる。
【0028】すなわち、本発明を実施するためには、従来のO/W型液中乾燥法によるマイクロスフィアの製造方法によることができる。
【0029】製造方法の1例を挙げると、薬物及びグリセリン脂肪酸エステルにポリ乳酸などの生体内分解型あるいは生体内適合性を有する高分子重合物を加え、これを塩化メチレンなどの水不溶性溶媒に溶解または分散し、ポリビニルアルコールなどを溶解した水溶液中で乳化分散する。乳化分散は、ポリトロン(商標)などの一般に使用される装置を用いて行うことができる。ついで攪拌しながらO/W型液中乾燥を行って油相を固化させた後、遠心分離機で生成したマイクロスフィアを捕集し、精製水で洗浄し、次いで水に再分散して凍結乾燥を行って粉末とする。
【0030】水溶性薬物の場合にはマイクロスフィア中への取り込み率を更に高めるために、塩化メチレンなどの油相にエタノールなどの水混和性の溶媒を加えることができる。
【0031】本発明の薬物含有マイクロスフィアは、また薬物に、生体内分解型あるいは生体内適合型を有する高分子物質を加え、これに、(i)少なくとも一種の水溶性溶媒と少なくとも一種の水混和性溶媒とから成る混合溶媒と、(ii)脂肪酸またはその塩と、(iii)少なくとも一種のグリセリン脂肪酸エステル及び/または少なくとも一種のプロピレングリコール脂肪酸エステルとを添加して油相とし、これをポリビニルアルコールなどを溶解した水溶液中で乳化分散してO/W型液中乾燥を行うことによっても製造することが出来る。
【0032】本発明におけるグリセリン脂肪酸エステルは、C〜C18の飽和もしくは不飽和の炭素鎖が、グリセリンの水酸基の1つまたは2つにエステル結合したものを意味し、グリセリンモノカプリル酸エステル、グリセリンモノカプリン酸エステル、グリセリンモノラウリン酸エステル、グリセリンモノミリスチン酸エステル、グリセリンモノパルミチン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、グリセリンジカプリン酸エステルなどを具体的な例としてあげることができ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】また、プロピレングリコール脂肪酸エステルの例としては、プロピレングリコールモノカプリル酸エステル、プロピレングリコールジカプリル酸エステル、プロピレングリコールモノカプリン酸エステル、プロピレングリコールモノラウリン酸エステル、プロピレングリコールモノミリスチン酸エステル、プロピレングリコールモノパルミチン酸エステル、プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノオレイン酸エステルなどを挙げることができる。
【0034】本発明においては、1種または2種以上のグリセリン脂肪酸エステルと1種または2種以上のプロピレングリコール脂肪酸エステルを組み合わせて用いることもできる。すなわち、上記物質を適切に組み合わせることにより、所望の溶出速度を有するマイクロスフィアを製造することができる。
【0035】本発明で用いられる油相に溶解する高分子物質としては水に不溶または難溶性で生体適合性があるものが望ましく、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸などの生体内分解型あるいはポリスチレン、ポリアクリル酸などの生体適合性高分子物質が挙げられる。これらの重合物は1種でもまたは2種以上の共重合物あるいは単なる混合物でも良い。これらの中でも特に、生体内分解型のポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合物が好ましく、平均分子量は1000から100000の範囲が望ましい。
【0036】本発明で用いられる薬物は、とくに限定されないが、水溶性薬物としては、例えば、抗腫瘍剤、解熱鎮痛剤、抗生物質、鎮咳去痰剤、鎮痛剤、筋弛緩剤、降圧剤、抗凝血剤、生理活性を有するペプチドなどを挙げることができる。
【0037】生理活性ペプチドの具体例としては塩化リゾチーム、エンケファリン、ダイノルフィン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)、インシュリン、ソマトスタチン、カルシトニン、セクレチン、ニューロテンシン、甲状腺ホルモン放出ホルモン(TRH)等及びこれらの塩類と誘導体が挙げられる。上記の抗腫瘍剤としては、たとえばアドレアマイシン、ネオカルチノスタチン、フルオロウラシル、テトラヒドロフリル−5−フルオロウラシル、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンブラスチン、塩酸ブレオマイシン、ピシバニール、マイトマイシン等が挙げられる。また、上記の解熱、鎮痛・消炎剤としては、例えばサリチル酸ナトリウム、スルピリン、ジクロフェナックナトリウム、塩酸モルヒネ、塩酸ペチジンなどが、抗生物質としては、塩酸テトラサイクリン、塩酸オキシテトラサイクリン、ゲンタマイシン、アミカシン、アンピレリン、セファロチン、セフメタゾール、セファゾリン、セフォペラゾン、アズスレオナムなどが挙げられ、鎮咳去痰剤としては、塩酸メチルエフェドリン、塩酸エフェドリン、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸イソプロテレノール、硫酸サルブタモールなどが、鎮静剤としてはたとえば塩酸クロルプロマジン、臭化スコポラミン、硫酸アトロピンなどが、筋弛緩剤としてはたとえば塩酸エペリゾン、塩化ツボクラリン、臭化パンクロニウムなどが、降圧剤としては塩酸ブナゾシン、塩酸クロマジンなどが、抗凝血剤としては例えばヘパリンナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0038】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0039】実施例1ニューロテンシン・アナログ20mg、ポリdl乳酸(数平均分子量2000)200mgを塩化メチレン/エタノール混合溶媒(容量混合比5:1)0.6mlに溶解し、0.5%ポリビニルアルコール水溶液200ml中に小型ホモジナイザーで乳化分散後、約3時間攪拌してO/W型液中乾燥を行って、油相を固化させた。生成したマイクロスフィアを遠心分離機で捕集し、精製水で洗浄後水に再分散して凍結乾燥し粉末として得た。
【0040】実施例2サイロトロピン・リリースィング・ホルモン10mg、ポリ−l−乳酸(数平均分子量2000)100mgを塩化メチレン/エタノール混合溶媒(容量混合比5:1)0.3mlに溶解して、0.5%ポリビニルアルコール水溶液100ml中で実施例1と同様の手順でO/W型液中乾燥後、凍結乾燥を行ない粉末を得た。
【0041】実施例3ニューロテンシン・アナログ10mg、ポリdl乳酸(数平均分子量2000)100mgを塩化メチレン/エタノール混合溶媒(容量混合比5:2)0.3mlに溶解し、0.5%ポリビニルアルコール水溶液100ml中で実施例1と同様の手順でO/W型液中乾燥後、凍結乾燥を行ない粉末を得た。
【0042】実施例4ニューロテンシン・アナログ10mg、ポリdl乳酸(数平均分子量2000)100mgを塩化メチレン/エタノール混合溶媒(容量混合比5:3)0.3mlに溶解し、0.5%ポリビニルアルコール水溶液100ml中で実施例1と同様の手順でO/W型液中乾燥後、凍結乾燥を行ない粉末を得た。
【0043】実施例5ニューロテンシン・アナログ10mg、ポリdl乳酸(数平均分子量2000)100mgを塩化メチレン/エタノール混合溶媒(容量混合比1:1)0.3mlに溶解し、0.5%ポリビニルアルコール水溶液100ml中で実施例1と同様の手順でO/W型液中乾燥後、凍結乾燥を行ない粉末を得た。
【0044】
【発明の効果】次に本発明の効果を詳細に説明するため以下に実験例を示す。
【0045】実験例(1) 方 法上記に示した実施例1〜5及び下記に示す比較例1〜2によって製造されたマイクロスフィアを用いて、マイクロスフィア中の薬物含量を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、取り込み率を比較した。
【0046】比較例1実施例1において、塩化メチレン/エタノール混合溶媒の代りに塩化メチレン0.6mlを使用し、他は同様の方法でマイクロスフィアを製造した。
【0047】比較例2実施例2において、塩化メチレン/エタノール混合溶媒の代りに塩化メチレンを使用し、他は同様の方法でマイクロスフィアを製造した。
【0048】(2) 結 果結果を表1に示す。
【0049】
【表1】


【0050】この表1において、取り込み率は、次式によって求めた。
【0051】
【数1】


【0052】表1より明らかなように、本発明方法により得られたマイクロスフィアは水混和性溶媒を含まない油相を使用して製造したマイクロスフィア(対照)よりも高い取り込み率を示した。
【0053】実施例6ニューロテンシン・アナログ20mg、カプリル酸ナトリウム9.2mg、ポリdl乳酸(数平均分子量2000)200mgを塩化メチレン0.6mlに溶解し、0.5%ポリビニルアルコール水溶液200ml中に小型ホモジナイザーで乳化分散後、約3時間攪拌して、O/W型液中乾燥を行って油相を固化させた。遠心分離機で生成したマイクロスフィアを捕集し、精製水で洗浄後、水に再分散して凍結乾燥し粉末として得た。
【0054】実施例7ダイノルフィン・アナログ10mg、ラウリル酸ナトリウム2.5mg、ポリdl乳酸(数平均分子量2000)100mgを塩化メチレン0.3mlに溶解し、1%ポリビニルアルコール水溶液100ml中に、乳化分散して、実施例6と同様の手順で液中乾燥、洗浄、凍結乾燥を行い、粉末として得た。
【0055】実施例8サイロトロピン・リリースィング・ホルモン10mg、パルミチン酸ナトリウム5mg、ポリ−l−乳酸(数平均分子量2000)100mgを塩化メチレン0.3mlに溶解し、0.5%ポリビニルアルコール水溶液100ml中で、実施例6と同様の手順でO/W型液中乾燥後、凍結乾燥を行ない粉末を得た。
【0056】実施例9ニューロテンシン・アナログ20mg、カプリル酸ナトリウム9.2mg、ポリdl乳酸(数平均分子量2000)200mgを塩化メチレン/エタノール混合溶媒(容量混合比5:1)0.6mlに溶解し、0.5%ポリビニルアルコール水溶液200ml中で実施例6と同様の手順でO/W型液中乾燥後、凍結乾燥を行ない粉末を得た。
【0057】実施例10ニューロテンシン・アナログ10mg、カプリル酸ナトリウム4.6mg、ポリdl乳酸(数平均分子量4000)100mgを塩化メチレン/ジメチルスルホキシド混合溶媒(容量混合比5:2)0.4mlに溶解して0.5%ポリビニルアルコール水溶液100ml中で実施例6と同様の手順でO/W型液中乾燥後、凍結乾燥を行ない粉末を得た。
【0058】
【発明の効果】次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を示す。
【0059】実験例(1) 方 法上述の実施例6〜10及び下記の比較例3〜5で得られたマイクロスフィアを用いて、マイクロスフィア中の薬物含量を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、取り込み率を比較した。
【0060】比較例3実施例6において、カプリル酸ナトリウムを添加せず、他は同様の方法でマイクロスフィアを製造した。
【0061】比較例4実施例7において、ラウリル酸ナトリウムを添加せず、他は同様の方法でマイクロスフィアを製造した。
【0062】比較例5実施例8において、パルミチン酸ナトリウムを添加せず、他は同様の方法でマイクロスフィアを製造した。
【0063】(2) 結 果結果を表2に示す。
【0064】
【表2】


【0065】表2から明らかな如く、本発明方法によって得られたマイクロスフィアは脂肪酸塩を添加せずに得られたマイクロスフィアと比較して極めて高い水溶性薬物の取り込み率を示した。
【0066】実施例11ニューロテンシン・アナログ10mg、ポリdl乳酸(数平均分子量4000)100mg、カプリル酸ナトリウム4.6mg、グリセリンモノカプリン酸エステル5mgを塩化メチレン/エタノール混合溶媒(容量混合比5:1)0.3mlに溶解し、0.5%ポリビニルアルコール水溶液100ml中に小型ホモジナイザーで乳化分散後、約3時間攪拌してO/W型液中乾燥を行って、油相を固化させた。生成したマイクロスフィアを遠心分離機で捕集し、精製水で洗浄後水に再分散して凍結乾燥し粉末として得た。
【0067】実施例12ニューロテンシン・アナログ10mg、ポリdl乳酸(数平均分子量4000)100mg、カプリル酸ナトリウム4.6mg、グリセリンモノオレイン酸エステル5mgを塩化メチレン/エタノール混合溶媒(容量混合比5:1)0.3mlに溶解し、0.5%ポリビニルアルコール水溶液100ml中に小型ホモジナイザーで乳化分散後、約3時間攪拌してO/W型液中乾燥を行って、油相を固化させた。生成したマイクロスフィアを遠心分離機で捕集し、精製水で洗浄後水に再分散して凍結乾燥し粉末として得た。
【0068】比較例6ニューロテンシン・アナログ10mg、ポリdl乳酸(数平均分子量4000)100mg、カプリル酸ナトリウム4.6mgを塩化メチレン/エタノール混合溶媒(容量混合比5:1)0.3mlに溶解し、0.5%ポリビニルアルコール水溶液100ml中に小型ホモジナイザーで乳化分散後、約3時間攪拌してO/W型液中乾燥を行って油相を固化させた。生成したマイクロスフィアを遠心分離機で捕集し、精製水で洗浄後水に再分散して凍結乾燥し粉末として得た。
【0069】
【発明の効果】本発明による、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルを添加したマイクロスフィアからの薬物の放出挙動を表3に示す。マイクロスフィアは実施例11及び12で製造したものを用い、pH7.4のリン酸塩緩衝液中で穏やかに攪拌し、マイクロスフィア中の薬物残存量を測定した。測定には高速液体クロマトグラフィーを用いた。
【0070】
【表3】


【0071】表3より、本発明によるマイクロスフィアは、投薬初期から一定速度で薬物を放出し、また、添加する物質により、放出速度が変化することが明らかである。
【0072】実施例13ニューロテンシン・アナログ10mg、ポリdl乳酸(数平均分子量4000)100mg、カプリル酸ナトリウム4.6mg、プロピレングリコールモノカプリル酸エステル5mgを塩化メチレン/エタノール混合溶媒(容量混合比5:1)0.3mlに溶解し、0.5%ポリビニルアルコール水溶液100ml中に小型ホモジナイザーで乳化分散後、約3時間攪拌してO/W型液中乾燥を行なって、油相を固化させた。生成したマイクロスフィアを遠心分離機で捕集し、精製水で洗浄後、水に再分散して凍結乾燥し粉末として得た。
【0073】実施例14ニューロテンシン・アナログ10mg、ポリdl乳酸(数平均分子量4000)100mg、カプリル酸ナトリウム4.6mg、グリセリンモノカプリン酸エステル2.5mg、プロピレングリコールジカプリル酸エステル2.5mgを塩化メチレン/エタノール混合溶媒(容量混合比5:1)0.3mlに溶解し、0.5%ポリビニルアルコール水溶液100ml中に小型ホモジナイザーで乳化分散後、約3時間攪拌してO/W型液中乾燥を行って、油相を固化させた。生成したマイクロスフィアを遠心分離機で捕集し、精製水で洗浄後、水に再分散して凍結乾燥し粉末として得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 薬物をO/W型液中乾燥法によりマイクロスフィアとするに当り、油相の溶媒組成が少なくとも一種の水不溶性溶媒と少なくとも一種の水混和性の溶媒とから成ることを特徴とする薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項2】 薬物が水溶性薬物である請求項1記載の薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項3】 水混和性溶媒が、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド、又はアセトニトリルである請求項1記載の薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項4】 水混和性溶媒がエタノールである請求項1記載の薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項5】 水混和性溶媒がジメチルスルホキシドである請求項1記載の薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項6】 水不溶性溶媒が塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、酢酸エチル、又はシクロヘキサンである請求項1記載の薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項7】 油相の溶媒が水不溶性溶媒の塩化メチレンと、水混和性溶媒の1つまたは2つ以上との混合溶媒である請求項1記載の薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項8】 油相の溶媒が塩化メチレンと、エタノールとの混合溶媒である請求項1記載の薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項9】 薬物をO/W型液中乾燥法によりマイクロスフィアとするに当り、油相に脂肪酸又はその塩を添加することを特徴とする薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項10】 薬物をO/W型液中乾燥法によりマイクロスフィアとするに当り、油相に脂肪酸またはその塩を添加し、更に油相の溶媒組成が少なくとも一種の水不溶性溶媒と少なくとも一種の水混和性の溶媒とから成ることを特徴とする薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項11】 脂肪酸塩が炭素数4以上である脂肪酸塩である請求項9または10記載の薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項12】 脂肪酸塩が薬理学的に許容でき、水溶液中で解離可能な塩である請求項9または10記載の薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項13】 薬理学的に許容でき、水溶液中で解離可能な塩がナトリウム塩またはカリウム塩である請求項12記載の薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項14】 脂肪酸塩が、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、及びアラキドン酸から選択された1つまたは2つ以上の薬理学的に許容でき、水溶液中で解離可能な塩である請求項9または10記載の薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項15】 脂肪酸塩が、酪酸ナトリウム、吉草酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、エナント酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、ペラルゴン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ウンデシル酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、トリデシル酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ペンタデシル酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ヘプタデシル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ノナデカン酸ナトリウム、アラキン酸ナトリウム、イソクロトン酸ナトリウム、ウンデシレン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、エライジン酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、リノール酸ナトリウム、リノレン酸ナトリウム、アラキドン酸ナトリウム、及びオレイン酸カリウムから選択された一つまたは二つ以上の脂肪酸塩である請求項9または10記載の薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項16】 薬物をO/W型液中乾燥法によりマイクロスフィアとするに当り、油相の溶媒組成が少なくとも一種の水不溶性溶媒と少なくとも一種の水混和性の溶媒とから成り、油相に脂肪酸またはその塩を添加し、更に少なくとも一種のグリセリン脂肪酸エステル及び/または少なくとも一種のプロピレングリコール脂肪酸エステルを添加することを特徴とする薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項17】 グリセリン脂肪酸エステルがグリセリンモノカプリル酸エステル、グリセリンモノカプリン酸エステル、グリセリンモノラウリン酸エステル、グリセリンモノミリスチン酸エステル、グリセリンモノパルミチン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、又はグリセリンモノオレイン酸エステルである請求項16記載の薬物を含有するマイクロスフィアの製法。
【請求項18】 プロピレングリコール脂肪酸エステルが、プロピレングリコールモノカプリル酸エステル、プロピレングリコールモノカプリン酸エステル、プロピレングリコールモノラウリン酸エステル、プロピレングリコールモノミリスチン酸エステル、プロピレングリコールモノパルミチン酸エステル、プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、又はプロピレングリコールモノオレイン酸エステルである請求項16記載の薬物を含有するマイクロスフィアの製法。

【特許番号】特許第3116311号(P3116311)
【登録日】平成12年10月6日(2000.10.6)
【発行日】平成12年12月11日(2000.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−153830
【出願日】平成3年5月30日(1991.5.30)
【公開番号】特開平6−65063
【公開日】平成6年3月8日(1994.3.8)
【審査請求日】平成10年3月10日(1998.3.10)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【参考文献】
【文献】特開 昭61−63613(JP,A)
【文献】特開 昭61−65816(JP,A)