説明

マイクロタイタープレート用のアダプタ

【課題】MTPの熱変形を防ぎ、或いは変形したMTPを矯正するためのアダプタを提供する。
【解決手段】3辺を額縁部材22で縁取られた略長方形の平板21から成り、縁取りのない1辺からMTPを、MTPの周縁部と額縁部材22とを嵌合させながら挿入し、平板21上の所定位置までスライドさせて保持するように構成した。これにより、MTPの3辺の周縁部が額縁部材22と嵌合した状態で平板21上に保持されるので、反りが防止され、また既に反りの生じたMTPも矯正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学分野等において試験用の液体を収納するマイクロタイタープレート(以下、MTPと記す)に関する。
【背景技術】
【0002】
MTPは、生化学等の分野において、分析、培養或いは生化学反応を行わせるための多数の液状試料を収納する容器として用いられるもので、多くはプラスチック製で長方形のプレート状に成型され、表面に試料収納用の凹部であるウェルが格子状に多数配列されている(例えば、特許文献1参照)。
ウェルに液体を収納したMTPは、培養、生化学反応、自動分析などの処理装置に装填され、それぞれ目的に応じた処理が行われる。これらの各種装置において互換性を以て共通に使用できるように、MTPはその外形寸法やウェルの配列が規格化されている。
【0003】
図3に、従来から用いられているMTPの一例として、384個のウェルを持つMTP(384MTPと略称される)を示す。同図(A)は平面図、(B)は側面図(一部断面図)である。
同図において、1はポリプロピレン樹脂製のMTPであって、16行24列に配列されたウェル11が開口する表面12は4辺の側壁13により底面14からほぼウェル11の深さ分だけ立ち上げられており、側壁13の下部から水平に外方に向けて張り出す裾部15が底面14を規定している。なお、ここで底面14は実体として形成された面ではなく、仮想的な面と考えるべきである。
【0004】
【特許文献1】特開2003−302407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MTPを例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)に使用して94→55→72°Cというような温度サイクルを繰り返すと、MTPは熱変形により若干ではあるが反りを生じる。PCR処理後、反りの生じたMTPを次に例えば自動分注器に装填し、試料を電気泳動などの分析装置に移送しようとすると、MTPの底面が平坦でないので、自動分注器のノズルが正常にアクセスできないため液の吸い残しが生じるとか、自動分注器内に処理待ちのMTPを積み重ねておくスタッカに積載することができないといった問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、MTPの熱変形を防ぎ、或いは変形したMTPを矯正するためのアダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明になるアダプタは、例えば3辺を額縁部材で縁取られた略長方形平板から成り、縁取りのない1辺からMTPを、MTPの周縁部と額縁部材とを嵌合させながら挿入し、平板上の所定位置までスライドさせて保持するように構成した。これにより、MTPの3辺の周縁部が額縁部材と嵌合した状態で平板上に保持されるので、反りが防止され、また既に反りの生じたMTPも矯正される。
【0008】
また、本発明になるアダプタは、所定位置に収められたMTPがずれたり脱落することを防ぐ係止手段を備え、また、スタッカに積み重ねたとき上下のアダプタが嵌り合うスタッカブル構造を備えたものを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明になるMTP用のアダプタは上記のように構成されているので、MTPをスライドさせて装着することでMTPの変形を予防または矯正することが可能である。これにより、後段の自動分析装置などへの装填が確実簡便になり、自動分析における分注器のノズルがMTPに正確にアクセスできるので液の吸い残し等の問題もなくなり、微量試料を扱う場合に極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に本発明の一実施形態を示す。同図(A)は平面図、(B)は側面図(一部断面図)である。
MTP用のアダプタ2は、主として略長方形の平板21とその3辺を縁取るように設けられた額縁部材22とで構成される。平板21のサイズは、このアダプタ2に装着されるMTP、例えば図3に示すMTP1よりもひと回り大きく、また、額縁部材22は該MTPの外周の3辺に接してこれを囲むように設けられている。平板21と額縁部材22の材質は、ABS樹脂等のエンジニアリング・プラスティックスを用いるのが好適であるが、アルミ合金等の金属で製作してもよい。
【0011】
額縁部材22の内側下部と平板21の表面との間に、このアダプタ2に装着されるMTP、例えば図3に示すMTP1の裾部15と嵌合する溝23が設けられる。この場合、MTP1はアダプタ2の縁取りのない1辺、即ち図1(A)では下側から矢印方向に挿入し、平板21上の所定位置までスライドさせて保持する。
【0012】
26はボールプランジャであって、小球26aが平板21の表面から半ば突出するようにバネ26bで押し上げられており、上から力を加えれば小球26aは沈下するものである。額縁部材22の上部外周には段24が設けられ、また、平板21裏面は周縁を残してほぼ全面を窪ませることにより下面凹部25が形成されている。これにより、後述するように、複数個の同形アダプタ2の積み重ねが可能になる。
【0013】
次に、上記のように構成されたアダプタ2の使用法を説明する。
図1に示す実施形態であるアダプタ2に図3に示すMTP1を装着した状態を、図2に示す。同図(A)は平面図、(B)は側面図であり、図1または図3と同一の構成要素には同一符号を付してある。
MTP1は、裾部15と額縁部材22とを嵌合させながらアダプタ2に矢印方向に挿入され、奥までスライドされて図示の状態、即ち、所定位置に収まった状態となる。このようにアダプタ2に装着された状態で、MTP1は自動分注器やその他の処理装置に装填される。この状態では、MTP1の3辺の裾部15がこれらに接する額縁部材22の溝23にしっかり嵌合しているので、熱サイクルが加えられても変形を起こす恐れがない。また、MTP1が既に変形している場合であっても、適当に力を加えながら挿入することで歪みが矯正される。
【0014】
所定位置に収まったMTP1は、額縁部材22に接していない1辺がボールプランジャ26の突出した小球26aに当たって係止されるので、所定位置からずれたり、アダプタ2から脱落したりすることが防止され、また、MTP1がアダプタ2の所定位置に正しく挿入されたことが確認できる。
段24は、その上に重ねられた別の同形のアダプタ2の下面凹部25と嵌合するようにサイズが定められている。これにより、MTP1に装着されたアダプタ2を自動分注器等のスタッカに積み重ねたとき、正確で安定な積み重ねが可能となる。
【0015】
以上は、本発明の一実施形態について説明したものであるから、本発明をこれに限定するものではなく、様々な変形が可能である。例えば、MTP1の係止手段としてはボールプランジャ26以外に適当なラッチ等を用いてもよい。また、MTP1をアダプタ2上に保持する嵌合構造に関しても、裾部15だけでなく側壁13を含むMTP1の周縁部を額縁部材22と嵌合させる構造も設計可能である。さらに、アダプタの形状は略長方形に限定されず、MTPの形状に即した形状にすることができる。例えば、MTPが円形の場合は半円形状のものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、生化学等の分野において、試料容器としてMTPを用いて分析、培養、或いは生化学反応を行わせる各種処理装置で利用される可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態の使用状態を示す図である。
【図3】MTPの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1 MTP
2 アダプタ
11 ウェル
12 表面
13 側壁
14 底面
15 裾部
21 平板
22 額縁部材
23 溝
24 段
25 下面凹部
26 ボールプランジャ
26a 小球
26b バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロタイタープレートを保持する平板から成るアダプタであって、該平板の周辺の一部を縁取ると共に該平板上に保持されるマイクロタイタープレートの周辺の一部を囲繞する額縁部材を備え、該額縁部材は前記マイクロタイタープレートの周縁部とスライド可能に嵌合する嵌合構造を有することを特徴とするマイクロタイタープレート用のアダプタ。
【請求項2】
所定位置に保持されたマイクロタイタープレートを係止する係止手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のマイクロタイタープレート用のアダプタ。
【請求項3】
額縁部材の上面と該額縁部材の上に積み重ねられた同形の他のアダプタの下面とが嵌合する嵌合構造を有することを特徴とする請求項1記載のマイクロタイタープレート用のアダプタ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載のアダプタで囲繞されてなるマイクロタイタープレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−126066(P2006−126066A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316315(P2004−316315)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】