説明

マイクロチップならびに試料抽出方法、試料分離方法、試料分析方法、および試料回収方法

試料導入部(107)に、試料−担体複合体(119)を導入し、試料−担体複合体(119)を移動させ、堰き止め部(111)に堆積させる。所定量の試料−担体複合体(119)を堰き止め部(111)に堆積させた段階で、堰き止め部(111)を加熱する。所定の温度まで昇温し、試料−担体複合体(119)を試料(121)と担体(123)とに分解させる。そして、試料導入部(107)と試料回収部(109)との間に電圧を印加し、柱状体(115)間を通過させて試料(121)を第二の流路(106)中に移動させ、所定の分離、分析または回収操作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、マイクロチップならびにマイクロチップを用いる試料抽出方法、試料分離方法、試料分析方法、および試料回収方法に関する。
【背景技術】
近年、生体由来物質の分離、分析機能をチップ上に具備するマイクロチップの研究開発が活発に行われている(特許文献1)。これらのマイクロチップには、微細加工技術を用いて微細な分離用流路等が設けられており、極めて少量の試料をマイクロチップに導入し、分離、分析を行うことができるようになっている。
こうしたマイクロチップをプロテオミクス研究やゲノミクス研究に活用する技術において、電気泳動の技術を導入する試みが提案されている。タンパク質やペプチドを電気泳動により分離し、ゲルから回収して分析を行っている。マイクロチップを用いた電気泳動では、図13(a)に示すように、基板300上に投入用流路302および分離用流路304が十字型に形成される。図13(b)に示すように、まず液溜め306から試料を投入し、図中横方向に電界をかけて投入された試料を右方向に移動させ、次いで図13(c)に示すように、図中縦方向に電界をかけることにより、投入用流路302および分離用流路304の交差した部分の試料を分離用流路に流し、これにより移動速度の異なる成分を分離することができる。
【特許文献1】特開2002−131280号公報
【発明の開示】
ところが、投入用流路から分離用流路に導入される試料の量が少ないと、分離の過程で目的成分を微量しか得ることができない。このため、高濃度の目的成分を得ることができず、分析を精度よく行えない場合があった。一方、投入用流路の幅を広く形成して分離用流路に導入される試料の量を多くすると、分離用流路中で流れる試料のバンド幅が広くなり、分解能が低下し、精度よい分離ができないことがあった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、微量の試料を簡単な操作で効率よく分離または回収する技術を提供することにある。また、本発明の別の目的は、微量の試料を効率よく分析する技術を提供することにある。
本発明によれば、流路の設けられた基材を備え、前記流路に導入された、試料および該試料を保持する担体の複合体から、前記試料を抽出するマイクロチップであって、前記流路は、前記複合体の導入される導入口と、前記複合体を堰き止める堰き止め部と、前記導入口から前記堰き止め部に至る、前記複合体の流れる導入流路と、前記堰き止め部の下流側にあって、前記堰き止め部を介して前記導入流路に連通し、前記堰き止め部で堰き止められた前記複合体から抽出される前記試料の流れる試料流路と、を備えることを特徴とするマイクロチップが提供される。
本発明において、試料の抽出とは、試料と試料を保持する担体との複合体から試料を取り出すことをいう。また、堰き止め部は、導入流路から流れてくる複合体が試料流路に移動するのを阻害し、堰き止める機能を有する。
本発明に係るマイクロチップによれば、導入流路を流れる複合体は、堰き止め部を通過することができず、堰き止め部に連通する試料流路へと移動できない。このため、導入流路に導入された複合体は、堰き止め部に堆積され、濃縮される。よって、堰き止め部における試料濃度も高くなる。試料は複合体中に保持された状態で堰き止め部に堆積するからである。
試料の分離、回収、分析を行う場合、予め試料を高濃度化しておく必要があったが、従来は高濃度化には限界があった。また、試料を分離してバンドを得る際にも、分離効率の改善の余地があった。これに対し、本発明では、堰き止め部に複合体を濃縮しておくことにより、試料を担体に保持された状態で堰き止め部に濃縮しておくことが可能となる。このため、試料を充分に濃縮した後、複合体から抽出することができる。そして、堰き止め部から試料流路へ試料を濃縮した状態で移動させることができる。したがって、試料流路において試料の分離、分析、回収等を高濃度で行うことが可能となり、効率的にこれらの操作を行うことができる。
なお、堰き止め部における複合体の堰き止め方法は、物理的な方法であってもよいし、遠隔操作による方法であってもよい。物理的に堰き止める場合、たとえば堰き止め部に導入流路と試料流路とを連通させる連通流路を有する構成とすることができる。そして、試料は連通流路を通過することができるが複合体は通過できないように構成することにより、効果的に複合体を堰き止めることができる。
また、試料を迅速に抽出することが可能であれば、複合体は刺激によって構造が完全に崩壊または分解してもよいし、その一部が崩壊、変形等する態様であってもよい。
本発明のマイクロチップにおいて、前記堰き止め部に堰き止められた前記複合体に対して刺激を与え、前記試料を抽出する刺激付与手段を備えることができる。
また、本発明において、前記複合体を前記流路中の所定の位置に堰き止めた後、前記刺激を与えてもよい。
また、本発明によれば、流路の設けられた基材を備えるマイクロチップを用い、試料および該試料を保持する担体の複合体を前記流路に導入し、前記複合体に刺激を与えることにより、前記複合体から前記試料を抽出することを特徴とする試料抽出方法が提供される。
本発明における刺激は、複合体から試料を抽出させることができる程度の大きさのものを指す。堰き止め部に堆積された複合体に所定の刺激が付与されると、複合体から試料が抽出される。堰き止め部は、導入流路と試料流路とを連通させており、複合体は堰き止め部を通過することができないが、試料は複合体よりも小さく、堰き止め部を通過することができる。このように、本発明において刺激付与手段を備えることにより、堰き止め部に堆積された複合体に刺激を与え、試料を抽出することができるため、試料の抽出をより一層好適なタイミングで確実に行うことができる。
本発明のマイクロチップにおいて、前記流路は前記試料中の成分を分離するための分離部を備えることができる。
また、本発明によれば、前記試料抽出方法により前記複合体から前記試料を抽出した後、抽出された前記試料中の成分を前記流路の下流側で分離することを特徴とする試料分離方法が提供される。
こうすることにより、試料に複数の成分が含まれる場合にも、効率よく成分の分離を行うことができる。堰き止め部において試料を複合体中に保持された状態で濃縮することができるため、試料流路に濃縮したバンドとして試料を導入することができる。このため、分離効率の高い分離を行うことができる。なお、試料は一種の成分からなっていてもよいし、二種類以上の成分を含んでいてもよい。
本発明のマイクロチップにおいて、前記流路は前記試料を分析するための分析部を備えることができる。
また、本発明によれば、前記試料抽出方法により前記複合体から前記試料を抽出した後、抽出された前記試料を前記流路の下流側で分析することを特徴とする試料分析方法が提供される。
本発明によれば、試料を濃縮した状態で堰き止め部から試料流路に移動させることができるため、一定の濃度基準以上の試料の分析を行うことができる。このため、分析精度および感度を向上させることができる。
本発明のマイクロチップにおいて、前記流路は前記試料を回収するための回収部を備えることができる。
また、本発明によれば、前記試料抽出方法により前記複合体から前記試料を抽出した後、抽出された前記試料を前記流路の下流側で回収することを特徴とする試料回収方法が提供される。
本発明によれば、試料を濃縮した状態で堰き止め部から試料流路に移動させることができるため、試料を高濃度で効率よく回収することができる。
本発明のマイクロチップにおいて、前記堰き止め部は、複数の突起を備えることができる。
導入流路に導入された複合体のうち、最初に堰き止め部に到達したものは、突起の間隙を通過することできず、堰き止め部に堰き止められる。すると、後に堰き止め部に到達した複合体が堰き止め部に堆積されることになる。よって、堰き止め部に複数の突起を備える構成とすることにより、複合体を物理的に確実に堰き止め部にとどめておくことができる。また、突起の形状、間隔を所定の大きさに調節することにより、複合体の形状、大きさと試料の形状、大きさとに応じて最適の構成を選択することが可能となる。
本発明のマイクロチップにおいて、前記刺激付与手段が加熱部材であってもよい。
また、本発明において、前記複合体を加熱して前記複合体に前記刺激を与えてもよい。
こうすることにより、所定の温度で構造が変化して試料を抽出する担体を用いて好適に試料を抽出することができる。また、試料を好適に分離または分析することができる。
本発明のマイクロチップにおいて、前記刺激付与手段が光照射部材であってもよい。
光照射部材を用いて刺激を付与することにより、複合体により迅速に刺激を付与することができる。このため、光照射条件によって分解または開裂する複合体を用いて、速やかに試料の抽出と試料流路への移動を開始させることができる。
本発明において、前記流路のpHを変化させて前記複合体に前記刺激を与えてもよい。
こうすることにより、導入流路に塩等のpHを変化させる物質を導入して容易に複合体の構造を変化させ、試料を抽出することができる。また、試料を好適に分離または分析することができる。
また、本発明において、前記担体の濃度を希釈して前記複合体に前記刺激を与えてもよい。
こうすることにより、たとえば簡便な方法で試料を抽出することが可能となる。また、試料を好適に分離または分析することができる。
本発明において、前記複合体を遠隔操作により前記流路中の前記所定の位置に保持することにより、前記複合体を堰き止めてもよい。
本発明において、「遠隔操作により保持する」とは、物理的な妨害部材によって複合体を堰き止め部に堰き止めるのではなく、複合体が堰き止め部内に選択的に存在するように流路の外部から複合体に所定の操作を施すことをいう。遠隔操作により複合体を保持することにより、物理的な妨害部材を流路に設ける必要がなく、刺激付与後、担体を構成する分子等、試料以外の成分が堰き止め部にて目詰まりを起こし、試料の通過を阻害することが抑制される。
たとえば、本発明の試料分離方法において、前記遠隔操作はレーザートラップ(以下、「光ピンセット」とも呼ぶ。)であってもよい、こうすれば、堰き止め部に光を照射し、光ピンセット機能を用いて複合体を確実に保持しておくことができる。レーザートラップにより複合体を堰き止め部に保持した場合にも、保持された複合体よりも上流に存在する複合体は保持された複合体に妨害されて堰き止め部を通過することができず、複合体が堰き止め部に堆積する。このため、物理的な妨害部を設けることなく、複合体を堰き止め部に確実に堆積させることが可能となる。
また、マイクロチップ作製後、流路中の任意の位置に容易に堰き止め部を形成することができる。このため、マイクロチップの設計の自由度が拡大し、目的により一層ふさわしい構成のマイクロチップを得ることができる。刺激により試料が抽出される担体から試料をより確実に、そして速やかに抽出させ、試料の移動を開始させることができる。
以上説明したように本発明によれば、微量の試料を簡単な操作で効率よく分離または回収する技術が実現される。また、本発明によれば、微量の試料を効率よく分析する技術が実現される。
【図面の簡単な説明】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
図1は、一般的な分離装置を本実施形態に適用した構成を示す図である。
図2は、本実施形態に係るマイクロチップの構成を示す図である。
図3は、図2のマイクロチップの断面を示す図である。
図4は、図2のマイクロチップの使用方法を説明する図である。
図5は、本実施形態に係るマイクロチップの構成を示す図である。
図6は、本実施形態に係るマイクロチップの構成を示す図である。
図7は、本実施形態に係るマイクロチップの構成を示す図である。
図8は、図2のマイクロチップにおける試料導入部付近の拡大図である。
図9は、図8のB−B’方向の断面図である。
図10は、本実施形態に係るマイクロチップの作製方法を示す工程断面図である。
図11は、本実施形態に係るマイクロチップの作製方法を示す工程断面図である。
図12は、本実施形態に係るマイクロチップの作製方法を示す工程断面図である。
図13は、従来の分離装置の構成を示す上面図である。
図14は、図5のマイクロチップの堰き止め部における堰き止め方法を説明するための図である。
図15は、本実施形態に係るマイクロチップの堰き止め部の構成を示す上面図である。
図16は、図1のマイクロチップに分離部や分析部を設けた場合の流路の構成を示す図である。
図17は、図15のマイクロチップの堰き止め部の作製方法を説明するための図である。
図18は、図15のマイクロチップの堰き止め部の作製方法を説明するための図である。
図19は、実施例に係るマイクロチップの第一の流路の蛍光顕微鏡像を示す上面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
(第一の実施形態)
本実施形態は、流路中に設けられた堰き止め部に物理的な堰き止め部材が設けられたマイクロチップに関する。図1は、本実施形態のマイクロチップを分離装置に適用した構成を示す図である。分離装置100を構成するマイクロチップ101は、基板103上に形成された試料導入部107と、第一の流路105と、第二の流路106と、試料回収部109とを含む。第一の流路105中に、試料を担体に保持された複合体の状態で堰き止めておくための堰き止め部111を有する。また、第二の流路106の所定の位置に、分離領域(不図示)が設けられている。
試料は担体に保持された状態、すなわち複合体の状態で試料導入部107に導入され、第一の流路105中を移動する。担体に保持された状態では試料は堰き止め部111を通過することができないため、堰き止め部111に堆積される。そして、所定のタイミングで付与される後述の外部刺激に応答して試料が担体から放出されると、堰き止め部111を通過して、堰き止め部111の下流に設けられた第二の流路106中を、下流すなわち試料回収部109側へ移動する。堰き止め部111を通過した試料は第二の流路106にて分離、分取されたり、試料回収部109から回収されたりする。
分離装置100およびマイクロチップ101は、図1に示した構成に限られず、どのような構成とすることもできる。マイクロチップ101において、試料導入部107および試料回収部109には電極120aおよび電極120bがそれぞれ設けられている。電極120aおよび電極120bはマイクロチップ101外部の電源122に接続される。分離装置100は、電源制御部124をさらに含む。電源制御部124は、電極120aおよび電極120bに印加する電圧の方向、電位、時間等の電圧印加パターンを制御する。
ここで、基板103としては、シリコン基板、石英等のガラス基板あるいはプラスチック材料により構成されたものを用いることができる。第一の流路105または第二の流路106は、このような基板103に溝を形成することにより設けることもできるが、たとえば疎水性の基板表面に親水性処理を施したり、親水性の基板103表面の第一の流路105または第二の流路106の部分の壁部に疎水性処理を施したりすること等によっても形成することができる。さらに、基板103としてプラスチック材料を用いる場合、エッチングやエンボス成形等の金型を用いたプレス成形、射出成形、光硬化による形成等、基板103の材料の種類に適した公知の方法で第一の流路105または第二の流路106を形成することができる。
第一の流路105および第二の流路106の幅は、分離目的に応じて適宜設定される。たとえば、細胞の液状分画成分(細胞質)のうち、高分子量成分(DNA、RNA、タンパク質、糖鎖)の抽出を行う場合、5μm〜1000μmとする。
なお、マイクロチップ101の第二の流路106に分析領域を設けることにより、試料の分離だけでなく分析にも用いることができる。すなわち、マイクロチップ101は試料の分析装置としても利用可能である。また、試料回収部109から試料を回収すれば、試料の回収装置としても利用可能である。
以下、マイクロチップ101の構成についてさらに詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、試料導入部107または試料回収部109は、緩衝液等のリザーバとして用いることもできる。
図2は、本実施形態に係るマイクロチップの構成を示す図である。また、図3(a)は、図2のマイクロチップのA−A’方向の断面図であり、図3(b)は図2のマイクロチップのB−B’方向の断面図である。
マイクロチップ101において、第一の流路105に設けられた堰き止め部111には、複数の柱状体115を有する妨害部113が設けられている。また、図3(b)に示したように、堰き止め部111は、その底面からヒーター117によって加熱される。なお、図2においては、一列の柱状体115が第一の流路105の延在方向に対して垂直な方向に延在しているが、妨害部113は複数の柱状体115の列を設けてもよい。
試料は、試料導入部107から第一の流路105に導入される。このとき、試料を柱状体115の間隙を通過できない程度の大きさの担体に保持させておくことにより、試料は担体とともに堰き止め部111にて所望のタイミングまで堰き止められる。そして、ヒーター117によって所定の温度に昇温させると、その温度がトリガーとなって試料が堰き止め部111を通過して第二の流路106に導入され、第二の流路106中を下流すなわち試料回収部109に向かって流れるようになっている。以下、加熱により分解する担体に電荷を有する試料を保持させ、試料を第二の流路106中に抽出する方法を例に、この過程をさらに詳細に説明する。
図4は、マイクロチップ101の使用方法を説明する図である。図4において、試料の抽出は、
(i)通電による試料−担体複合体119の移動、
(ii)試料−担体複合体119の堰き止め部111への堆積、
(iii)試料−担体複合体119の移動停止、
(iv)加温による試料121の放出、
(v)加温の停止、
(vi)試料121の第二の流路106中への移動、
のステップで行われる。(i)〜(vi)のステップが終了した後、さらに試料121を試料導入部107に導入し、(i)のステップから繰り返してもよい。
(i)通電による試料−担体複合体119の移動
まず、試料導入部107に、試料−担体複合体119を導入する(図4(a))。そして、試料−担体複合体119が第一の流路105を試料導入部107から試料回収部109に向かって流れるように試料導入部107と試料回収部109との間に電圧を印加し、図1を用いて前述したように試料−担体複合体119を移動させる。
(ii)試料−担体複合体119の堰き止め部111への堆積
試料−担体複合体119は、堰き止め部111に到達すると、柱状体115の間を通過することができないため、堰き止め部111を通過することができず、柱状体115の近傍に堰き止められる。すると、続いて堰き止め部111に到達した試料−担体複合体119は、先に堰き止め部に到達した試料−担体複合体119が柱状体115の近傍に堰き止められているため、その堰き止められている試料−担体複合体119の近傍に堰き止められる。こうして、第一の流路105中を移動した試料−担体複合体119は、堰き止め部111に堰き止められ、堆積される(図4(b))。
(iii)試料−担体複合体119の移動停止
試料導入部107に導入された所定量の試料−担体複合体119が、堰き止め部111に堆積した段階で、電圧の印加を停止する。
(iv)加温による試料121の放出
電圧の印加を停止したら、堰き止め部111の底部に設けられたヒーター(図4では不図示)のスイッチを入れて、加熱する。試料−担体複合体119が構造変化を起こす温度まで昇温された時点で、試料−担体複合体119は試料121と担体123とに分解する(図4(c))。ここで、試料121を保持する担体123は、複数の分子の集合体として形成されていてもよいし、架橋した巨大分子であってもよい。
(v)加温の停止
試料−担体複合体119が試料121と担体123とに分解したら、ヒーターによる加熱をやめる。
(vi)試料121の第二の流路106中への移動
放出された試料121が、堰き止め部111から試料回収部109に向かって流れるように、試料導入部107と試料回収部109との間に再度電圧を印加する。放出された試料121は、柱状体115の間隙を通過することが可能な大きさであるため、堰き止め部111を通過して第二の流路106中を移動する(図4(d))。堰き止め部111より下流側に分離領域または分析領域(いずれも図4では不図示)を設けておけば、比較的大量の試料121について分離または分析を行うことができる。もちろん、試料回収部109から試料121を回収することもできる。
このように、マイクロチップ101においては、第一の流路105を試料−担体複合体119が移動し、第二の流路106中を、試料−担体複合体119から放出された試料121が移動する。試料−担体複合体119は堰き止め部111を通過することができないため、第二の流路106を移動することができない。
このため、試料−担体複合体119が所定量堆積するまで試料121を第二の流路106に移動させず、堰き止め部111に試料−担体複合体119として堆積させておくことができる。また、試料−担体複合体119から試料121を放出する過程は、ヒーター117による温度制御によって簡単に行うことができる。このため、第二の流路106にて分離操作を行う場合、より大量の試料121を濃縮させた状態で分離すなわち試料121の移動を開始させることができる。よって、精度よい分離が可能である。また、分析操作を行う場合にも、測定精度、感度を向上させることが可能となる。
図16はマイクロチップ101に試料分離部149や試料分析部151を設けた場合の流路の構成を示す図である。図16(a)では、堰き止め部111の下流に試料分離部149が設けられている。試料分離部149は、たとえば柱状体115よりも径の小さい柱状体が形成された構成とする。こうすれば、堰き止め部111に堆積された試料−担体複合体119中の試料121が、所定の温度になった時点で試料−担体複合体119から分離し、堰き止め部111を通過して試料分離部149にて分離される。
このとき、堰き止め部111に試料121が濃縮されているため、分離開始時の試料濃度を高くすることができる。そして、堰き止め部111にて所定量の試料−担体複合体119が蓄積されているため、充分な試料量を確保して、その分離を行うことができる。このように、マイクロチップ101では、堰き止め部111にて比較的多量の試料を濃縮してから試料121中の成分を分離することができる。このとき、試料分離部149にて分離された各画分の濃度も高めることができる。したがって、少量の試料についても確実に効率よく分離を行うことができる。
図16(b)は、第二の流路106に、試料分析部151を形成した例である。試料−担体複合体119中の試料121は、堰き止め部111に堆積されて濃縮されるため、分析も効率よく行うことができる。なお、試料分析部151における分析の形式に特に制限はないが、たとえば、マイクロチップ101の上部から所定の波長の光を試料分析部151に照射し、マイクロチップ101の底面で検出することにより、特定の吸収波長を有する物質を検出したり、定量したりすることができる。
試料−担体複合体119は、試料121を確実に保持して堰き止め部111まで運搬することができれば特に制限はないが、たとえば、試料121を内部に保持したリポソーム、デンドリマー、微粒子等とすることができる。このような担体は、たとえばDDS(ドラッグデリバリーシステム)に用いられる材料から選択してもよい。試料−担体複合体119の大きさは、柱状体115の間隙を通過することができない大きさであれば特に制限されない。
また、柱状体115の間隔は、試料121を通過させ、上述のように試料−担体複合体119を通過させない大きさであれば制限されない。なお、マイクロチップ101では、妨害部113に柱状体115が配設された構成としたが、妨害部113を形成する妨害部材は柱状体115に限定されず、たとえば、スリット状の妨害部材を設けてもよい。また、所定の大きさ以下の粒子のみを透過させる多孔質材料としてもよい。
次に、図3に示したマイクロチップ101および試料−担体複合体119の調製方法について説明する。ここでは、試料121がDNAであって、担体123がブロック共重合体であり、試料−担体複合体119が、ブロック共重合体により形成され試料121すなわちDNAを内包するミセルである場合を例に説明する。
まず、マイクロチップ101の作製は、以下のようにして行う。基板103への第一の流路105、第二の流路106、試料導入部107、試料回収部109の形成は、図1を用いて前述したようにすればよい。
基板103上への柱状体115の形成は、基板103を所定のパターン形状にエッチング等を行うことができるが、その形成方法には特に制限はない。図10、図11、および図12はその一例を示す工程断面図である。各分図において、中央が上面図であり、左右の図が断面図となっている。この方法では、微細加工用レジストのカリックスアレーンを用いた電子線リソグラフィ技術を利用して第一の流路105の堰き止め部111に設けられる柱状体115を形成する。カリックスアレーンの分子構造の一例を以下に示す。カリックスアレーンは電子線露光用のレジストとして用いられ、ナノ加工用のレジストとして好適に利用することができる。

ここでは、基板103として面方位が(100)のシリコン基板を用いる。まず、図10(a)に示すように、基板103上にシリコン酸化膜185、カリックスアレーン電子ビームネガレジスト183をこの順で形成する。シリコン酸化膜185、カリックスアレーン電子ビームネガレジスト183の膜厚は、それぞれ40nm、55nmとする。次に、電子ビーム(EB)を用い、柱状体115となる領域を露光する。現像はキシレンを用いて行い、イソプロピルアルコールによりリンスする。この工程により、図10(b)に示すように、カリックスアレーン電子ビームネガレジスト183がパターニングされる。
つづいて全面にポジフォトレジスト137を塗布する(図10(c))。膜厚は1.8μmとする。その後、第一の流路105および第二の流路106となる領域が露光するようにマスク露光をし、現像を行う(図11(a))。
次に、シリコン酸化膜185をCF、CHFの混合ガスを用いてRIEエッチングする。エッチング後の膜厚を40nmとする(図11(b))。レジストをアセトン、アルコール、水の混合液を用いた有機洗浄により除去した後、酸化プラズマ処理をする(図11(c))。つづいて、基板103をHBrガスを用いてECRエッチングする。エッチング後の基板103の段差、すなわち柱状体115の高さを400nmとする(図12(a))。つづいてBHFバッファードフッ酸でウェットエッチングを行い、シリコン酸化膜185を除去する(図12(b))。以上により、基板103上に第一の流路105、柱状体115および第二の流路106が形成される。
ここで、図12(b)の工程に次いで、基板103表面の親水化を行うことが好ましい。基板103表面を親水化することにより、第一の流路105、第二の流路106や堰き止め部111の柱状体115の間隙に試料−担体複合体119の分散液が円滑に導入される。特に、柱状体115により第一の流路105が微細化した堰き止め部111においては、第一の流路105の表面を親水化することにより、移動相の毛管現象による導入が促進され、また試料−担体複合体119が第一の流路105表面に非特異的に吸着することによって構造変化し、疎水部が露出して試料121を放出してしまうことが抑制されるため好ましい。
そこで、図12(b)の工程の後、基板103を炉に入れてシリコン熱酸化膜187を形成する(図12(c))。このとき、酸化膜の膜厚が30nmとなるように熱処理条件を選択する。シリコン熱酸化膜187を形成することにより、分離装置内に液体を導入する際の困難を解消することができる。その後、被覆145で静電接合を行い、シーリングしてマイクロチップ101を完成する(図12(d))。
なお、基板103にシリコンを用いる場合、カリックスアレーン電子ビームネガレジスト183に代えてスミレジストNEB(住友化学製)等を用いてパターニングを行うこともできる。レジストの種類を適宜選択することにより、試料−担体複合体119の大きさに応じて堰き止め部111を設計することができる。
なお、基板103にプラスチック材料を用いる場合、柱状体115は、エッチングやエンボス成形等の金型を用いたプレス成形、射出成形、光硬化による形成等、基板103の材料の種類に適した公知の方法で行うことができる。
基板103をプラスチック材料により構成した場合、機械加工あるいはエッチング法によりマスタを製作し、このマスタを電気鋳造反転して製作した金型を用いて、射出成形または射出圧縮成形により柱状体115が形成された基板103を形成することができる。また、柱状体115は、金型を用いたプレス加工により形成することもできる。さらに、光硬化性樹脂を用いた光造形法により、柱状体115が形成された基板103を形成することもできる。
次に、試料導入部107および試料回収部109に電極を設ける方法について、試料導入部107を例に図8および図9を参照して説明する。図8は、図2のマイクロチップ101における試料導入部107付近の拡大図である。また図9は、図8のB−B’方向の断面図である。第一の流路105および試料導入部107が設けられた基板103上には、緩衝液等を注入できるようにするための開口部139が設けられた被覆145が配設される。また被覆145の上には、外部電源に接続することができるように電導路141が設けられる。
さらに図9に示されるように、電極板143が試料導入部107の壁面と電導路141とに沿うように配設される。電極板143と電導路141とは圧着され、電気的に接続される。なお、試料回収部109についても上記と同様な構造を有する。試料導入部107と試料回収部109のそれぞれに形成された電極板143は、基板103の下面等を導通させて外部電源(不図示)に接続すると、電圧が印加可能となる。
図3に戻り、以上のようにして基板103の加工を行った後、図3(b)に示したように、堰き止め部111の温度を調節するためのヒーター117を基板103の底部に設ける。
なお、基板103の材料としてプラスチックを用いる場合にも、表面に親水化処理を施すことが好ましい。
親水性を付与するための表面処理としては、たとえば、親水基をもつカップリング剤を第一の流路105または第二の流路106の側壁に塗布することができる。親水基をもつカップリング剤としては、たとえばアミノ基を有するシランカップリング剤が挙げられ、具体的にはN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が例示される。これらのカップリング剤は、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、気相法等により塗布することができる。
次に、試料−担体複合体119について説明する。試料121として、核酸を用いる。核酸は、たとえばDNAとする。DNAはポリアニオンであるため、担体123として、ポリカチオンを含む分子を用いれば、DNAを内包してミセルを形成させることができる。このミセルを試料−担体複合体119とすればよい。
ポリカチオンを含む分子として、ポリカチオンと刺激応答性ポリマーとのブロック共重合体を用いることができる。本実施形態においては、ヒーター117における加熱により試料−担体複合体119を開裂させるため、刺激応答性ポリマーとしては温度応答性ポリマーを用いる。
ポリカチオンとしては、たとえばアミノ基を有するポリマーを用いることができる。具体的には、たとえばポリ−L−リジン(polyLys)等が利用可能である。また、温度応答性ポリマーとしては、たとえばポリN−イソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)等のアルキル置換基を有するポリアクリルアミド誘導体をはじめとする、LCST(下限臨界共溶温度)を有するポリマーを用いることができる。試料121の耐熱性等に応じて、所定のLCSTを有する構造を選択することができる。
これらのブロック共重合体は、たとえば特開平9−169850号公報に記載の方法またはA.Harada and K.Kataoka,Macromolecules,1995年,28,p.5294−5299に記載の方法に準じて作製することができる。
得られたポリカチオン−温度応答性ポリマーブロック共重合体、たとえばpolyLys−PIPAAmブロック共重合体をCMC(臨界ミセル濃度)以上の濃度となるよう所定の溶媒に溶解させる。これを試料121の溶液と混合し、ミセルを形成する。ミセルの形成方法として、たとえば透析法や、超音波を用いる方法を採用することもできる。
こうして得られたミセルは、試料121であるDNAを内包し、温度応答性ポリマーを水相側に向けたミセルである。このミセルを試料−担体複合体119として用い、上述のようにして堰き止め部111に滞留させる。所定のタイミングで堰き止め部111を加熱すると、温度応答性ポリマーのLCSTでブロック共重合体の温度応答性領域が速やかに収縮し、ミセルの少なくとも一部が崩壊する。そこで、試料回収部109が陽極となるよう電界を付与することによって、DNAを堰き止め部111の下流に設けられた第二の流路106に選択的に移動させることができる。
なお、昇温した際に、担体123である共重合体が凝集した場合、担体123の堰き止め部111の通過がさらに効果的に抑制される。このため、試料121のみを選択的に第二の流路106へと移動させることが可能となる。この場合、試料121の分離や分析等を終了した後にLCST以下に降温することによって、水に再溶解させることができる。このとき、堰き止め部111にはDNAが存在しないため、溶解した共重合体はミセルを形成せずに、柱状体115の間隙を通過する。このため、担体123を試料回収部109から回収し、再利用することができる。
また、DNAを内包するミセルをより安定的に形成させるため、ポリカチオンと温度応答性ポリマーに加え、さらに親水性ポリマーを用いた、親水性ポリマー−温度応答性ポリマー−ポリカチオンブロック共重合体を担体123として用いてもよい。親水性ポリマーをさらに有する分子を担体123とすることにより、ポリアニオンであるDNAとポリカチオンの領域を内相とし、親水性ポリマーを好適に水相側に配置させることができる。
親水性ポリマーとしては、たとえばポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)などのポリエチレン誘導体;プルラン、デキストラン等の多糖類;等を用いることが可能である。親水性ポリマー−温度応答性ポリマー−ポリカチオンブロックとして、具体的にはたとえばPEG−PIPAAm−polyLysブロック共重合体などを挙げることができる。
以上においては、試料121がアニオン性である場合を例に説明したが、試料121がポリカチオンである場合には、担体123にポリカルボン酸やポリリン酸等のアニオン性の領域を設けることにより、同様にミセルを得ることができる。また、試料121が疎水性である場合には、担体123にポリスチレン等の疎水性領域を形成すればよい。
本実施形態に係るマイクロチップは、細胞を破壊して得られる液状分画の成分の、高分子量成分(DNA、RNA、タンパク質、糖鎖)、低分子量成分(ステロイド、ブドウ糖、ペプチド等)など、生体由来成分をはじめとする様々な成分の分離、分析等に適用することができる。
また、本実施形態は、これらの処理に限定されず、外力を付与することにより、移動距離が異なる成分を含むどのような試料をも分離対象とすることができる。外力としては、たとえば電界を印加することにより電気泳動または電気浸透流により移動させる方法、あるいはポンプを用いて圧力を付与することにより移動させる方法等種々の方法を用いることができる。
(第二の実施形態)
本実施形態は、第一の実施形態に記載のマイクロチップ101(図2)において、ジスルフィド結合を有するミセルを用い、第一の流路105に導入される還元剤をトリガーとして試料−担体複合体119を崩壊させる態様に関する。本実施形態に係るマイクロチップの構成は基本的にはマイクロチップ101と同様であるが、堰き止め部111を加熱する必要がないため、ヒーター117は特に設けなくてよい。
試料121をDNA等のポリアニオンとする場合、たとえばポリチオール−ポリカチオン−親水性ポリマーのブロック共重合体を作製し、これを用いて試料121を内包するミセルを形成することができる。担体123はポリカチオン領域を有するため、ポリアニオンである試料121とポリイオンコンプレックスミセルを形成させることが可能である。ここでは、ポリチオールとは、側鎖に−SH基を有するモノマーユニットを有するポリマーを指す。
このようなブロック共重合体としては、たとえばPEG−polyLys−チオール基導入polyLysのブロック共重合体を用い、これを還元剤存在下でポリアニオンである試料121と混合させた後、透析により還元剤を除去することによりミセルを形成させることができる。なお、PEG−polyLys−チオール基導入polyLysは、たとえば特開2001−146556号公報に記載の方法に準じて作製することができる。
このようなミセルを堰き止め部111に滞留させた後、試料導入部107からDTT(ジチオトレイトール)等の還元試薬を導入すれば、ミセルを構成する担体123分子間に形成されていたジスルフィド結合が開裂するため、ミセルは崩壊し、試料121が放出される。このため、堰き止め部111を加熱することなく、所定のタイミングで試料121を放出させ、堰き止め部111を通過させることが可能となる。
(第三の実施形態)
本実施形態は第一の実施形態に記載のマイクロチップの堰き止め部111の構成が異なるものである。
図15は、本実施形態に係るマイクロチップの堰き止め部111を示す上面図である。図15において、堰き止め部111には複数の疎水性領域191が、略等間隔で規則的に配置されている。また、疎水性領域191以外の領域は石英等により形成された基板(不図示)表面が露出しており、親水性領域192となっている。このような疎水/親水パターンを形成することにより、堰き止め部111の疎水性が適度に制御される。そして、親水性領域192の上部に試料−担体複合体119の分散媒が選択的に存在し、疎水性領域191の上部は空隙となる。
この結果、疎水性領域191は、第一の実施形態における柱状体115と同様に、第一の流路105から堰き止め部111に到達した試料−担体複合体119を堰き止めることが可能となる。試料−担体複合体119は、堰き止め部111を通過することができずに堰き止め部111に堆積する。そして、加熱等所定の刺激が付与され、試料−担体複合体119が分解すると、試料121は分子サイズが試料−担体複合体119よりも小さいため、堰き止め部111の親水性領域192を通過することができる。
図15の堰き止め部111の作製方法は、たとえば親水性の基板上に疎水性領域を形成することにより行う。図17は、図15の堰き止め部の形成方法を説明するための図である。初めに、図17(a)のように、基板701上に電子ビーム露光用レジスト702を形成する。続いて、電子ビームを用い、電子ビーム露光用レジスト702を所定の形状にパターン露光する(図17(b))。こうして、未露光部702aと露光部702bが形成される。そして、露光部702bを溶解除去すると、図17(c)のように所定の形状にパターニングされた開口部が形成される。その後、図17(d)に示したように、酸素プラズマアッシングを行う。なお、酸素プラズマアッシングは、サブミクロンオーダーのパターンを形成する際には必要となる。酸素プラズマアッシングを行えば、カップリング剤の付着する下地が活性化し、精密なパターン形成に適した表面が得られるからである。一方、ミクロンオーダー以上の大きなパターンを形成する場合においては必要性が少ない。
アッシング終了後、図18(a)の状態となる。図中、親水性領域192はレジスト残さ及び汚染物が堆積して形成されたものである。この状態で、疎水性領域191を形成する(図18(b))。疎水性領域191を構成する膜の成膜法としては、たとえば気相法を用いることができる。この場合、密閉容器中に基板と疎水基を有するカップリング剤を含む液とを配置し、所定時間放置することにより膜を形成する。この方法によれば、基板表面に溶剤等が付着しないため、所望どおりの精密なパターンの処理膜を得ることができる。
他の成膜法としてスピンコート法を用いることもできる。この場合、疎水基を有するカップリング剤溶液を塗布して表面処理を行い、疎水性領域191を形成する。疎水基を有するカップリング剤としては、3−チオールプロピルトリエトキシシランを用いることができる。成膜方法として、ほかにディップ法等を用いることもできる。疎水性領域191は、親水性領域192の上部には堆積せず、基板701の露出部のみに堆積するため、図15に示すように、多数の疎水性領域191が離間して形成された表面構造が得られる。基板の疎水処理は、分子中に、基板材料と吸着ないし化学結合するユニットと、疎水性装飾基を有するユニットとを併せ持つ構造の化合物を、基板表面に付着ないし結合させること等により実現される。こうした化合物として、たとえばシランカップリング剤等を用いることができる。
さらに、この疎水性処理はスタンプやインクジェットなどの印刷技術を用いて行うこともできる。スタンプによる方法では、PDMS樹脂を用いる。PDMS樹脂はシリコーンオイルを重合して樹脂化するが、樹脂化した後も分子間隙にシリコーンオイルが充填された状態となっている。そのため、PDMS樹脂を親水性の表面、例えば、ガラス表面に接触させると、接触した部分が強い疎水性となり水をはじく。これを利用して、流路部分に対応する位置に凹部を形成したPDMSブロックをスタンプとして、親水性の基板に接触させることにより、前記の疎水性処理による流路が簡単に製造できる。
インクジェットプリントによる方法では、粘稠性が低いタイプのシリコーンオイルをインクジェットプリントのインクとして用い、流路壁部分にシリコーンオイルが付着するようなパターンに印刷することによっても同じ効果が得られる。
(第四の実施形態)
本実施形態は、第一の実施形態に記載のマイクロチップにおいて、堰き止め部111における堰き止め方法が異なる構成のマイクロチップに関する。図5は、本実施形態に係るマイクロチップの構成を示す図である。図5(a)は、マイクロチップ125の上面図であり、図5(b)は、図5(a)のマイクロチップ125のC−C’方向の断面図である。
図5(a)および図5(b)に示したように、マイクロチップ125においては堰き止め部111に物理的な妨害部材は設けられていない。図5(b)に示したように、堰き止め部111の上部には、堰き止め部111にレーザー光の照射を行うための光源127が設けられており、レーザートラップによって、試料−担体複合体119を堰き止め部111に堆積させることができるようになっている。
レーザートラップは、2本のレーザーを物体に照射した際に生ずる光の放射圧を用いて、ピンセットで物体を捕捉するように細胞や粒子等をトラッピングする装置である。レーザーを細胞や微粒子などに集光照射すると、レーザーは媒質の違いから屈折し、光の運動量が変化する。この際粒子には、運動量と逆向きの力が生じ、その結果粒子は焦点にトラップされる。レーザトラッピングでは、非接触でナノメートルオーダ以上の粒子等のトラッピングが可能であるため、これを本実施形態のマイクロチップに適用することにより、堰き止め部111に物理的な妨害部113を設けずに、遠隔操作により試料−担体複合体119を堰き止め部111に保持しておくことが可能となる。
この様子を、図14を用いて説明する。図14は、図5のマイクロチップの堰き止め部111における堰き止め方法を説明するための図である。図14(a)は、図5のマイクロチップのC−C’方向の断面図であり、図14(b)は、図5および図14(a)のD−D’方向の断面図である。図14(a)、図14(b)に示したように、堰き止め部111において、下流側に位置する試料−担体複合体119は、光ピンセット147によって堰き止め部111内に保持されており、上流側の試料−担体複合体119は、光ピンセット147によって捕捉された試料−担体複合体119によって堰き止められている。
光ピンセット147は、開口数の大きなレンズで集光したレーザー光によって、非接触的、非侵襲的に水中の微小物体を捕捉する。このため、試料−担体複合体119を、水の波長よりも大きな直径を有し、水より大きい屈折率を有する透明な粒子とすることが好ましい。
図5に戻り、光源127としては、たとえば波長1064nm、強度350mWのNd−YAGレーザーを用いることができる。また、堰き止め部111表面への集光は、レンズ等を用いて行い、表面における照射光強度を、たとえば50mW〜200mW程度とすることができる。
光ピンセット147によって試料−担体複合体119を堰き止め部111に滞留させる場合、たとえば、図5のマイクロチップを顕微鏡のステージ上にセットし、堰き止め部111の下流側に光源127から光を集光照射する。そして、ガルバノスキャナーミラーを動かすことで粒子を捕捉し、これを相対的に平行移動させる。このようにして、堰き止め部111の下流側に複数の試料−担体複合体119を光ピンセット147で保持しておき、上流側に存在する試料−担体複合体119がトラップされた試料−担体複合体119の間隙を通過することができないようにする。
マイクロチップ125では、堰き止め部111に妨害部113を設けずに、光により試料−担体複合体119をトラップするため、基板103の製造が容易となる。また、物理的な障壁を有しないため、試料121や担体123が妨害部113において目詰まりを起こすこともない。このため、加熱によって試料−担体複合体119から抽出された試料121は、試料導入部107と試料回収部109との間に電圧を付与することによって確実に第二の流路106中を移動することができる。
次に、堰き止め部111にて試料−担体複合体119を開裂させるトリガーは、たとえば、第一の実施形態と同様に温度とすることができる。この場合、ヒーター117によって堰き止め部111を加熱することにより、試料−担体複合体119を開裂させることができる。
また、光源127からの照射光を切替えて、堰き止め時よりも強力な光パルスを堰き止め部に与え、この刺激により試料−担体複合体119を開裂させてもよい。たとえば、堰き止め時より強力なIRレーザーを照射して堰き止め部111の試料−担体複合体119を加熱し、開裂させてもよい。この場合、ヒーター117は設けなくてよく、光源127を試料−担体複合体119の堰き止めと、試料121の抽出のいずれにも用いることができるので、装置構成を簡素化することができる。
また、試料−担体複合体119には、たとえば第一の実施形態と同様のものを用いることができる。
マイクロチップ125では、堰き止め部111に妨害部113を設けずに、光により試料−担体複合体119をトラップするため、基板103の製造が容易となる。また、物理的な障壁を有しないため、試料121や担体123が妨害部113において目詰まりを起こすこともない。このため、加熱によって試料−担体複合体119から抽出された試料121は、試料導入部107と試料回収部109との間に電圧を付与することによって確実に第二の流路106中を移動することができる。
(第五の実施形態)
本実施形態は、第一の実施形態に記載のマイクロチップ101(図2)において、担体123の濃度の希釈をトリガーとして試料−担体複合体119を崩壊させる態様に関する。本実施形態に係るマイクロチップの構成は基本的にはマイクロチップ101と同様であるが、堰き止め部111を加熱する必要がないため、ヒーター117は特に設けなくてよい。
担体123の種類は試料121の性状に応じて適宜選択される。たとえば、担体123を界面活性剤とすることができる。界面活性剤として、アニオン系またはカチオン系のイオン性界面活性剤を用いることができる。具体的には、たとえば、アニオン系界面活性剤は、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸塩とすることができる。たとえば、硫酸エステル塩として、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等を用いることができる。また、スルホン酸塩として、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いることができる。また、界面活性剤として、脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤を用いることもできる。
所定の担体123を用いて試料−担体複合体119を作製し、これを試料導入部107から第一の流路105に導入する。試料−担体複合体119は、堰き止め部111にて堰き止められて、濃縮される。次に、担体123の希釈用の液体を試料導入部107から第一の流路105に導入する。希釈用の液体は、担体123や試料121の種類に応じて適宜選択されるが、たとえば緩衝液とすることができる。希釈液が第一の流路105の堰き止め部111に至ると、担体123が希釈される。そして、たとえば担体123が界面活性剤からなる場合、担体123の濃度が界面活性剤の臨界ミセル濃度よりも小さくなると、ミセルが崩壊し、内包されていた試料121が放出される。放出された試料121は柱状体115の間隙を通過することができるため、第二の流路106の側に試料121を抽出することができる。
本実施形態では、堰き止め部111中の担体123の濃度を希釈により変化させることを刺激として試料−担体複合体119を崩壊させる。このため、試料導入部107から緩衝液等の希釈液を第一の流路105に添加することにより、確実に試料−担体複合体119を崩壊させて、試料121を第二の流路106の側に抽出することができる。よって、簡便な方法で試料121の抽出を安定的に行うことができる。また、担体123の希釈を刺激とすることにより、担体123の材料の選択の自由度を高めることができる。
(第六の実施形態)
第一〜第五の実施形態に記載のマイクロチップにおいて、複数の流路を有する構成としてもよい。図6は、本実施形態に係るマイクロチップの構成を示す図である。図6に示したように、マイクロチップ129は、第一の流路105と、第二の流路106と、第一の流路105に連通する副流路131とを有する。副流路131には、リザーバ133が設けられており、試料の導入や回収、試薬の導入等に用いることができる。堰き止め部111の上部には、光源(不図示)が設けられ、第二の実施形態と同様に光ピンセット機能によって試料を滞留させることができるようになっている。
マイクロチップ129では、光ピンセット機能によって試料を堰き止め部111に滞留させるため、試料を試料導入部107、試料回収部109、またはリザーバ133のいずれか任意の液溜めから導入して堰き止め部111に導き、他の任意の液溜めから回収することができる。
(第七の実施形態)
第一〜第五の実施形態に記載のマイクロチップにおいて、複数の流路が交差する構成としてもよい。図7は、本実施形態に係るマイクロチップの構成を示す図である。図7に示したように、マイクロチップ138は、第一の流路105と副流路131とが交差した構成となっており、副流路131にはリザーバ133およびリザーバ135がそれぞれ設けられている。堰き止め部111の上部には、光源(不図示)が設けられ、第二の実施形態と同様に光ピンセット機能によって試料を滞留させることができるようになっている。
マイクロチップ138では、光ピンセット機能によって試料を堰き止め部111に滞留させるため、試料を試料導入部107、試料回収部109、リザーバ133、またはリザーバ135のいずれか任意の液溜めから導入して堰き止め部111に導き、他の任意の液溜めから回収することができる。また、たとえば堰き止め部111の下流に試料分析部149や試料分離部151を設ける場合に、分離や分析に用いる緩衝液や試薬等をこれらの液溜めから所望の流路に導入することができる。このため、試料121の分離や分析の選択の幅が広がり、種々の目的に対応する構成のマイクロチップ138を安定的に得ることができる。
以上、本発明を実施形態に基づき説明した。これらの実施形態は例示であり様々な変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
たとえば、試料−担体複合体119として用いる担体123に脂肪酸を用いてミセルを形成させてもよい。脂肪酸を用いる場合も、堰き止め部111をその転移温度まで加熱することによってミセルが崩壊し、試料121が放出される。脂肪酸としては、たとえばC12〜C14程度の分子を用いることが可能である。脂肪酸を用いることにより、たとえば疎水性タンパク質等を堰き止め部111に安定的に運搬することができる。
また、担体123として、周囲のpHによって崩壊するミセルや、pHに応じて膨潤、収縮を行うゲル粒子等を用いてもよい。この場合、上述の実施形態に記載のマイクロチップにおいて、試料−担体複合体119を堰き止め部111に蓄積し、所定のタイミングで塩を第一の流路105に導入すれば、試料−担体複合体119は開裂し、試料121が堰き止め部111を通過する。
また、担体123として、光照射により構造変化を生じ、試料−担体複合体119から試料121を放出させることができる物質を用いてもよい。この場合、光源127から所定の波長の光を照射すればよい。このような試料として、たとえば表面にアゾベンゼンユニットを有するデンドリマー等を用いることができる。アゾベンゼンユニットは光照射だけでなくpHによってもシス−トランス変化するため、上述の方法によっても試料121を抽出することが可能となる。
【実施例】
本実施例では、第二の実施形態に記載の方法を用いてタンパク質の抽出を行った。まず、図2に示した構成のマイクロチップ101を作製した。ただし、本実施例では妨害部113の全体を堰き止め部111とした。堰き止め部111は、柱状体115の列を複数有する構成とした。基板103としてシリコン基板を用いた。図10〜図12を用いて第一の実施形態で説明した方法により、基板103に柱状体115としてナノピラーを形成した。柱状体115は電子ビーム露光によりパターン形成され、最終的なマイクロチップ101において、堰き止め部111に形成された柱状体115は、間隙が10nm以上50nm以下のナノピラーであった。
次に、SDSミセルにタンパク質を内包させた。タンパク質は、蛍光色素であるCy3を用いて蛍光染色しておいた。これにより、蛍光顕微鏡によるタンパク質の可視化が可能となる。
タンパク質を内包するミセルを、マイクロチップ101の試料導入部107に導入した。そして、トリスホウ酸緩衝液を満たした第一の流路105中で電気力により堰き止め部111にミセルを移動させた。適切な電圧を選択することにより、妨害部113に相当する部位でミセルは堰き止められた。この状態の蛍光顕微鏡観察を行った。図19は、第一の流路105の蛍光顕微鏡像を示す上面図である。図19において、妨害部113全体が堰き止め部111となっている。
図19より、ミセルに内包されたタンパク質の蛍光が第一の流路105にて観察された。蛍光は妨害部113に集中しており、ミセルの存在している部分で局所的に蛍光が観察された。一方、第二の流路(図19では不図示)では、蛍光が観察されなかった。このため、タンパク質を内包するミセルが第一の流路105の妨害部113に堰き止められ、また、妨害部113にタンパク質が濃縮されていることがわかる。
次に、低濃度緩衝液を試料導入部107から第一の流路105に低速で導入し、外部刺激となるSDSの希釈を行った。すると、第二の流路106における蛍光が観察された。蛍光は第二の流路に細いバンド状に観察された。これより、希釈により、第一の流路105中のSDSの濃度が臨界ミセル濃度を下回り、ミセルが破壊されたことがわかる。そして、ミセルに内包されたタンパク質が柱状体115の間隙を通過して、第二の流路106に移動したことがわかる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路の設けられた基材を備え、前記流路に導入された、試料および該試料を保持する担体の複合体から、前記試料を抽出するマイクロチップであって、
前記流路は、
前記複合体の導入される導入口と、
前記複合体を堰き止める堰き止め部と、
前記導入口から前記堰き止め部に至る、前記複合体の流れる導入流路と、
前記堰き止め部の下流側にあって、前記堰き止め部を介して前記導入流路に連通し、前記堰き止め部で堰き止められた前記複合体から抽出される前記試料の流れる試料流路と、
を含むことを特徴とするマイクロチップ。
【請求項2】
請求の範囲第1項に記載のマイクロチップにおいて、前記堰き止め部に堰き止められた前記複合体に対して刺激を与え、前記試料を抽出する刺激付与手段を備えることを特徴とするマイクロチップ。
【請求項3】
請求の範囲第1項または第2項に記載のマイクロチップにおいて、前記堰き止め部は、複数の突起を備えることを特徴とするマイクロチップ。
【請求項4】
請求の範囲第2項または第3項に記載のマイクロチップにおいて、前記刺激付与手段が加熱部材であることを特徴とするマイクロチップ。
【請求項5】
請求の範囲第2項または第3項に記載のマイクロチップにおいて、前記刺激付与手段が光照射部材であることを特徴とするマイクロチップ。
【請求項6】
請求の範囲第1項乃至第5項いずれかに記載のマイクロチップにおいて、前記流路は前記試料中の成分を分離するための分離部を備えることを特徴とするマイクロチップ。
【請求項7】
請求の範囲第1項乃至第6項いずれかに記載のマイクロチップにおいて、前記流路は前記試料を分析するための分析部を備えることを特徴とするマイクロチップ。
【請求項8】
請求の範囲第1項乃至第7項いずれかに記載のマイクロチップにおいて、前記流路は前記試料を回収するための回収部を備えることを特徴とするマイクロチップ。
【請求項9】
流路の設けられた基材を備えるマイクロチップを用い、
試料および該試料を保持する担体の複合体を前記流路に導入し、
前記複合体に刺激を与えることにより、前記複合体から前記試料を抽出することを特徴とする試料抽出方法。
【請求項10】
請求の範囲第9項に記載の試料抽出方法により前記複合体から前記試料を抽出した後、抽出された前記試料中の成分を前記流路の下流側で分離することを特徴とする試料分離方法。
【請求項11】
請求の範囲第10項に記載の試料分離方法において、前記複合体を加熱して前記複合体に前記刺激を与えることを特徴とする試料分離方法。
【請求項12】
請求の範囲第10項に記載の試料分離方法において、前記流路のpHを変化させて前記複合体に前記刺激を与えることを特徴とする試料分離方法。
【請求項13】
請求の範囲第10項に記載の試料分離方法において、前記担体の濃度を希釈して前記複合体に前記刺激を与えることを特徴とする試料分離方法。
【請求項14】
請求の範囲第10項乃至第13項いずれかに記載の試料分離方法において、前記複合体を前記流路中の所定の位置に堰き止めた後、前記刺激を与えることを特徴とする試料分離方法。
【請求項15】
請求の範囲第14項に記載の試料分離方法において、前記複合体を遠隔操作により前記流路中の前記所定の位置に保持することにより、前記複合体を堰き止めることを特徴とする試料分離方法。
【請求項16】
請求の範囲第15項に記載の試料分離方法において、前記遠隔操作がレーザートラップであることを特徴とする試料分離方法。
【請求項17】
請求の範囲第9項に記載の試料抽出方法により前記複合体から前記試料を抽出した後、抽出された前記試料を前記流路の下流側で分析することを特徴とする試料分析方法。
【請求項18】
請求の範囲第17項に記載の試料分析方法において、前記複合体を加熱して前記複合体に前記刺激を与えることを特徴とする試料分析方法。
【請求項19】
請求の範囲第17項に記載の試料分析方法において、前記流路のpHを変化させて前記複合体に前記刺激を与えることを特徴とする試料分析方法。
【請求項20】
請求の範囲第17項に記載の試料分析方法において、前記担体の濃度を希釈して前記複合体に前記刺激を与えることを特徴とする試料分析方法。
【請求項21】
請求の範囲第17項乃至第20項いずれかに記載の試料分析方法において、前記複合体を前記流路中の所定の位置に堰き止めた後、前記刺激を与えることを特徴とする試料分析方法。
【請求項22】
請求の範囲第21項に記載の試料分析方法において、前記複合体を遠隔操作により前記流路中の前記所定の位置に保持することにより、前記複合体を堰き止めることを特徴とする試料分析方法。
【請求項23】
請求の範囲第22項に記載の試料分析方法において、前記遠隔操作がレーザートラップであることを特徴とする試料分析方法。
【請求項24】
請求の範囲第9項に記載の試料抽出方法により前記複合体から前記試料を抽出した後、抽出された前記試料を前記流路の下流側で回収することを特徴とする試料回収方法。
【請求項25】
請求の範囲第24項に記載の試料回収方法において、前記複合体を加熱して前記複合体に前記刺激を与えることを特徴とする試料回収方法。
【請求項26】
請求の範囲第24項に記載の試料回収方法において、前記流路のpHを変化させて前記複合体に前記刺激を与えることを特徴とする試料回収方法。
【請求項27】
請求の範囲第24項に記載の試料回収方法において、前記担体の濃度を希釈して前記複合体に前記刺激を与えることを特徴とする試料回収方法。
【請求項28】
請求の範囲第24項乃至第27項いずれかに記載の試料回収方法において、前記複合体を前記流路中の所定の位置に堰き止めた後、前記刺激を与えることを特徴とする試料回収方法。
【請求項29】
請求の範囲第28項に記載の試料回収方法において、前記複合体を遠隔操作により前記流路中の前記所定の位置に保持することにより、前記複合体を堰き止めることを特徴とする試料回収方法。
【請求項30】
請求の範囲第29項に記載の試料回収方法において、前記遠隔操作がレーザートラップであることを特徴とする試料回収方法。

【国際公開番号】WO2004/083823
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【発行日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503761(P2005−503761)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003751
【国際出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】