説明

マイクロチップ処理装置

【課題】微量の試料を収容した試料容器を扱えるようにする。
【解決手段】試料容器90は上部開口が分注プローブ8のニードルで貫通可能なセプタムなどのシール材90aで閉じられた状態でマイクロチップ処理装置に装着される。分注プローブ8はその側面に溝8bが設けられており、分注プローブ8の先端が試料容器90に挿入されて試料を吸入する際に試料容器90内と大気とが連通して試料容器90内が陰圧になるのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学やライフサイエンスなどの分野において、マイクロチップ電気泳動方法や微量液体クロマトグラフィなどの分析を行なうマイクロチップ処理装置に関するものであり、板状部材の内部に溶液が移動しつつ分析が行なわれる分離用主流路を少なくとも備えたマイクロチップを保持する保持部と、試料容器又は試薬容器に上部から挿入して試料又は試薬を吸入し前記保持部に保持されたマイクロチップの所定の位置に注入するための分注プローブと、前記分注プローブを前記マイクロチップ、試料容器及び試薬容器の所定の位置の間で移動させる分注プローブ駆動機構とを少なくとも備えたマイクロチップ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロチップ電気泳動では、分離用主流路の一端側に導入されたDNA、RNA又はタンパク質などの試料をその流路の両端間に印加した電圧によりその流路の他端方向に電気泳動させることにより分離させて検出する。
マイクロチップ電気泳動において、1つの電気泳動流路を有する単一のマイクロチップを繰り返し使用して、バッファ液の充填、試料分注、電気泳動及び分離された試料成分の検出を自動で行なう装置が開発されている(特許文献1参照。)。
【0003】
分析の稼働率を上げるために、複数の流路を備えた電気泳動装置も提案されている。その1つの装置は、12個の流路を備え、分離バッファ液の充填と試料分注を手動で行なった後、12個の流路から順次電気泳動を起こさせて分離してデータを得ている(非特許文献1参照。)。
【0004】
他の装置ではキャピラリによる12個の流路を備え、分離バッファ液の充填、試料分注、電気泳動分離及びデータ取得を自動で行なうようになっている(非特許文献2参照。)。
【0005】
微量液体クロマトグラフィでは、マイクロチップは主流路として分離用カラムを含む送液流路を備えており、分離用カラムの一端側に導入された試料をその分離用カラムの他端方向に移動させることにより分離させて分析する(非特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平10−246721号公報
【非特許文献1】「ぶんせき」誌、No.5,267−270頁(2002年)
【非特許文献2】Electrophoresis 2003, 24, 93-95
【非特許文献3】Anal. Chem., 70, 3790 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DNAやRNAなどの生体試料を解析する場合、マイクロチップに分注される試料を収容する試料容器に収容される試料量は通常、数μL程度というような微量になるので、マイクロチップ処理装置に試料容器を装着する際に、試料容器を開放状態とすると蒸発による試料の変性が起こりうる。
そこで、本発明の第1の目的は、微量の試料を収容した試料容器を扱うのに適したマイクロチップ処理装置を提供することである。
【0007】
例えば電気泳動分析では分離バッファ液を複数の流路に繰り返し分注する。そのため、分離バッファ液を収容した試薬容器には使用する分離バッファ液の液量を予め計って試薬容器に注入しておく必要がある。もし人為的なミスにより分離バッファ液の量が不足したまま分析を続けると分析結果が不良となってしまう。そのような事態を避けるために、分離バッファ液を大過剰に注入しておくと、分離バッファ液の無駄な消費が増え、試薬容器も大きくなるという問題が生じる。
また、分離バッファ液の量が不足したまま分析を続けると分析結果が不良となってしまうと、試料を無駄にしてしまう。
そこで、本発明の第2の目的は、分離バッファ液などの試薬や試料の無駄な消費を少なくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の目的を達成する本発明のマイクロチップ処理装置は、板状部材の内部に溶液が移動しつつ分析が行なわれる分離用主流路を少なくとも備えたマイクロチップを保持する保持部と、試料容器又は試薬容器に上部から挿入して試料又は試薬を吸入し前記保持部に保持されたマイクロチップの所定の位置に注入するための分注プローブと、前記分注プローブを前記マイクロチップ、試料容器及び試薬容器の所定の位置の間で移動させる分注プローブ駆動機構とを少なくとも備えたものであるが、前記分注プローブは先端がニードルとなっており、試料及び試薬で共用されるものであり、前記試料容器はその上部開口が前記ニードルで貫通可能なシール材で閉じられた状態でこのマイクロチップ処理装置に装着され、前記試薬容器はその上部開口が開けられた状態でこのマイクロチップ処理装置に装着され、試料分注操作の際には前記ニードルが前記シール材を貫通して試料の吸入を行なうようになっていることを特徴とするものである。
【0009】
試料容器のシール材の一例はセプタム又はアルミニウムシートであるが、蓋であってもニードルで貫通可能なものは含む概念で使用する。
試薬容器に収容される試薬は、電気泳動分析の場合は分離バッファ液体クロマトグラフィの場合は移動相などである。
【0010】
分注プローブが試料容器のシール材を貫通して試料容器に挿入された状態で試料を吸入しようとすると、シール材と分注プローブが密着してその間に隙間のない場合には試料の吸入に伴なって試料容器内が陰圧になり、正確な試料量の吸入ができずに分析精度が低下することがある。
【0011】
そのような問題を解決するために、本発明の他の局面では、分注プローブはその側面に溝を有し、その溝は先端が試料容器に挿入されて試料を吸入する際に試料容器内と大気とが連通する位置に配置されているようにする。
溝は試料を吸入する際に試料容器内と大気とが連通する位置にあればよく、プローブの基端部から先端まで延びている必要はないが、基端部から先端まで延びていてもよい。また、溝の形状もシール材を貫通している部分で試料容器内と大気とが連通する形状であればよい。
【0012】
試料を分注するときは試料容器のシール材を貫通して分注プローブを試料容器に挿入するので、試料吸入後に分注プローブを上昇させる際にシール材と分注プローブの摩擦で試料容器を引き上げてしまい、分注プローブが移動する際に障害となることがある。
そのような問題を解決する本発明のさらに他の局面では、分注プローブ駆動機構は分注プローブが試料容器から引き抜かれる際に浮き上がらないように下方向に付勢する押さえ機構を備えている。
【0013】
好ましい一例では、その押さえ機構は、分注プローブを保持して上下方向に移動するプローブホルダに摺動可能に取りつけられており、押さえ機構を下方向に付勢する付勢手段と、押さえ機構の下端が分注プローブの下端よりもさらに下方へ移動するのを規制するストッパとを備えていることにより、押さえ機構と分注プローブはプローブホルダを上下方向に移動させる一軸の駆動系により駆動されるようになっている。
【0014】
分注プローブは試料容器のシール材は貫通することができるが、分離バッファ液などを収容する試薬容器で蓋が樹脂製など硬いものである場合には貫通することができない。このような、分注プローブで貫通できない硬い蓋を「外蓋」と称し、シール材と区別する。試薬容器をこのマイクロチップ処理装置に装着する際に誤って外蓋をつけたままで装着し、試薬分注動作を実行すると、分注プローブが試薬容器の外蓋に押しつけられて破損することがある。
【0015】
そのような問題を解決する本発明のさらに他の局面では、分注プローブ駆動機構は分注プローブを上下動するプローブホルダに摺動可能に保持しており、分注プローブをプローブホルダに対して下方向に付勢する第2付勢手段と、分注プローブがプローブホルダに対し所定量だけ上方に変位したことを検出する位置センサとを備えている。
【0016】
この位置センサは分注プローブが試料容器のシール材を貫通する際には異常を検知しないようにする必要がある。そのための好ましい一例では、第2付勢手段の付勢力は、ニードルが試料容器のシール材を貫通するときは分注プローブがこの位置センサの作動する位置までは変位せず、ニードルが試料容器のシール材より硬いものに衝突したときは分注プローブがこの位置センサの作動する位置まで変位する強さに設定されている。
【0017】
しかしながら、第2付勢手段の付勢力はそのように設定されているものだけでなく、ニードルが試料容器のシール材を貫通するときにも分注プローブがこの位置センサの作動する位置まで変位するように設定されていてもよい。その場合は、試薬分注操作のときにはこの位置センサが作動し、試料分注操作のときにはこの位置センサが作動しないようにこの位置センサの動作を制御すればよい。
この局面においては、分注プローブ駆動機構は試薬分注の際にこの位置センサが作動したときは分注動作を停止するように制御されることが好ましい。
【0018】
第2の目的を達成する本発明のマイクロチップ処理装置は、板状部材の内部に溶液が移動しつつ分析が行なわれる分離用主流路を少なくとも備えたマイクロチップを保持する保持部と、試料容器又は試薬容器に上部から挿入して試料又は試薬を吸入し前記保持部に保持されたマイクロチップの所定の位置に注入するための分注プローブと、前記分注プローブを前記マイクロチップ、試料容器及び試薬容器の所定の位置の間で移動させる分注プローブ駆動機構とを少なくとも備えたマイクロチップ処理装置において、前記分注プローブはその先端に液面センサを備えていることを特徴とするものである。
【0019】
液面センサの好ましい一例は、静電容量式センサである。
液面センサの出力に基づいて試薬容器内の残液量を算出して表示する残液量表示部を備えていることが好ましい。
【0020】
液面センサの出力に基づいて試薬容器内の残液量を算出し、分析開始前に残液量が不足していたらその旨を知らせる警報手段を備えていることも好ましい。
さらに、液面センサの出力に基づいて試薬容器内の残液量を算出し、残液量が不足したらその都度知らせる警報手段を備えていることも好ましい。
【0021】
本発明が適用されるマイクロチップ処理装置は、その分析動作の制御については特に限定されるものではないが、例えば、保持部は主流路の数が複数個となるようにマイクロチップを保持し、主流路における前処理工程と分析工程を制御するために制御部が設けられ、分注プローブは複数の主流路で共通に使用され、それらの主流路における分析工程に先立つ前処理工程を行なうものであり、その制御部は1つの主流路における前処理工程が終了すると次の主流路の前処理工程に移行するように前処理工程を主流路ごとに独立して行ない、前処理工程が終了した複数の主流路で並行して分析工程を行なうように制御するものとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のマイクロチップ処理装置では、試料容器はその上部開口がニードルで貫通可能なシール材で閉じられた状態でこのマイクロチップ処理装置に装着され、試料分注操作の際には分注プローブのニードルが試料容器のシール材を貫通して試料の吸入を行なうようにしたので、微量の試料の乾燥を防ぎながらマイクロチップに注入することができるようになる。
【0023】
また、分注プローブが試料と試薬で共用されるので、装置の構成が簡単になる。
分注プローブが試料容器内と大気とを連通させる溝を備えている場合には、試料吸入時に容器内が陰圧になることがなくなり、試料を精度よく吸入することができて分析精度が向上する。
【0024】
分注プローブ駆動機構が分注プローブを引き抜く際に試料容器が浮き上がらないように下方向に付勢する押さえ機構を備えていれば、試料容器の浮き上がりによる分注プローブの移動障害がなくなる。
その押さえ機構と分注プローブがプローブホルダを上下方向に移動させる駆動系により駆動されるようになっておれば、駆動のための機構が簡単になるので、小型で安価なマイクロチップ処理装置を提供することができるようになる。
【0025】
分注プローブ駆動機構で分注プローブをプローブホルダに摺動可能に保持し、分注プローブがプローブホルダに対して所定量だけ上方に変位したことを検出するようにすれば、分注プローブの先端が障害物に接触したことを検出できるので、その後の分注動作を停止するなどの処置に移ることができるようになる。
そして、分注プローブの先端が障害物に接触したときは分注動作を停止するようにすれば、分注プローブへのダメージを少なくすることができる。
【0026】
分注プローブがその先端に液面センサを備えているようにすれば、残液量がわかるので、試薬を大過剰に注入しておく必要がなくなって無駄な消費を抑えることができ、また試薬容器も必要以上に大きくする必要がなくなる。また、試薬不足に起因する無駄な測定も少なくなるので、試料の無駄も抑えることができる。
【0027】
液面センサとして静電容量式センサを用いれば、分注プローブ1本だけで液面を検出でき、試薬容器の底の試薬まで吸入できるので、試薬容器をより小型にすることができる。
液面センサの出力に基づいて試薬容器内の残液量を算出して表示するようにすれば、試薬の不足が操作者にわかるようになる。
【0028】
液面センサの出力に基づいて試薬容器内の残液量を算出し、分析開始前に残液量が不足していたらその旨を知らせるようにすれば、試薬が不足した状態で分析操作を開始するという事態を防ぐことができる。
液面センサの出力に基づいて試薬容器内の残液量を算出し、残液量が不足したらその都度知らせるようにすれば、試薬が不足した時点で分析を停止したり、又は操作者に知らせることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は本発明をマイクロチップ電気泳動装置に適用した一実施例における制御部に関する部分を概略的に示すブロック図である。
2は分注部で、分注プローブを備えた分注プローブ駆動機構を含んでいる。分注部2の分注プローブは、シリンジポンプ4により分離バッファ液又は試料を吸入し、マイクロチップの電気泳動流路の一端に注入するものであり、複数の電気泳動流路について共通に設けられている。16は電気泳動流路の一端に注入された分離バッファ液を空気圧により電気泳動流路に充填し、不用な分離バッファ液を吸引ポンプ部23により排出する分離バッファ液充填装置であり、分離バッファ液充填装置16も、処理しようとする複数の電気泳動流路について共通に設けられている。26は電気泳動流路のそれぞれに独立して泳動用電圧を印加する電気泳動用高圧電源部である。31は電気泳動流路で分離された試料成分を検出する検出部の一例としての蛍光測定部である。38は制御部で、1つの電気泳動流路への分離バッファ液充填及び試料注入が終了すると次の電気泳動流路への分離バッファ液充填及び試料注入に移行するように分注部2の動作を制御し、試料注入が終了した電気泳動流路で泳動電圧を印加して電気泳動を起こさせるように電気泳動用高圧電源部26の動作を制御し、蛍光測定部31による検出動作を制御するものである。40はこのマイクロチップ電気泳動装置の動作を指示したり、蛍光測定部31が得たデータを取り込んで処理したりするための外部制御装置としてのパーソナルコンピュータである。
【0030】
図2に一実施例のマイクロチップ電気泳動装置の要部を概略的に示す。マイクロチップ5−1〜5−4は保持部(図示略)に4個が保持される。マイクロチップ5−1〜5−4は後で詳しく説明するように、それぞれ1試料を処理するための1つの電気泳動流路が形成されたものである。
【0031】
それらのマイクロチップ5−1〜5−4に分離バッファ液と試料を分注するために、分注部2は、吸引と吐出を行なうシリンジポンプ4と、分注ノズルを備えた分注プローブ8と、洗浄液用の容器10とを備えており、分注プローブ8と洗浄液用の容器10は三方電磁弁6を介してシリンジポンプ4に接続されている。分離バッファ液と試料はマイクロタイタプレート12上の穴にそれぞれ収容されて、分注部2によりマイクロチップ5−1〜5−4に分注される。なお、分離バッファ液は専用の容器に収容してマイクロタイタプレート12の近くに配置してもよい。14は分注プローブ8を洗浄するための洗浄部であり、洗浄液が溢れている。
【0032】
分注部2は、三方電磁弁6を分注プローブ8とシリンジポンプ4が接続される方向に接続して分離バッファ液又は試料を分注プローブ8に吸引し、シリンジポンプ4によりマイクロチップ5−1〜5−4のいずれかの電気泳動流路に吐出する。分注プローブ8を洗浄する際は三方電磁弁6をシリンジポンプ4と洗浄液用の容器10を接続する方向に切り替え、シリンジポンプ4に洗浄液を吸引した後、分注プローブ8を洗浄部14の洗浄液に浸し、三方電磁弁6をシリンジポンプ4と分注プローブ8を接続する側に切り替えて分注プローブ8の内部から洗浄液を吐出することにより洗浄を行なう。
【0033】
マイクロチップ5−1〜5−4の電気泳動流路の一端のリザーバに分注された分離バッファ液を流路内に充填するために、4つのマイクロチップ5−1〜5−4について分離バッファ液充填装置16が共通に備えられている。分離バッファ液充填装置16はマイクロチップ5−1〜5−4のいずれかの電気泳動流路の一端のリザーバ上に空気供給口18を気密を保って押し付け、他のリザーバに吸引ノズル22を挿入し、空気供給口18から空気を吹き込んで分離バッファ液を電気泳動流路に押し込むとともに、他のリザーバから溢れた分離バッファ液をノズル22から吸引ポンプにより吸引して外部へ排出する。
【0034】
各マイクロチップ5−1〜5−4の電気泳動流路に独立して泳動用の電圧を印加するために、マイクロチップ5−1〜5−4ごとに独立した電気泳動用高圧電源26(26−1〜26−4)が設けられている。
【0035】
マイクロチップ5−1〜5−4の分離流路55で電気泳動分離された試料成分を検出するための蛍光測定部31は、マイクロチップ5−1〜5−4ごとに設けられてそれぞれの電気泳動流路の一部に励起光を照射するLED(発光ダイオード)30−1〜30−4と、電気泳動流路を移動する試料成分がLED30−1〜30−4からの励起光により励起されて発生した蛍光を受光する光ファイバ32−1〜32−4と、それらの光ファイバ32−1〜32−4からの蛍光から励起光成分を除去し、蛍光成分のみを透過させるフィルタ34を介して蛍光を受光する光電子増倍管36とを備えている。LED30−1〜30−4を互いに時間をずらして発光させることにより、1つの光電子増倍管36で4つのマイクロチップ5−1〜5−4からの蛍光を識別して検出することができる。なお、励起光の光源としては、LEDに限らずLD(レーザダイオード)を用いてもよい。
【0036】
図3と図4はこの実施例におけるマイクロチップの一例を示したものである。本発明におけるマイクロチップは基板内に電気泳動流路が形成されたこのような電気泳動装置を指しており、必ずしもサイズの小さいものに限定される意味ではない。
【0037】
図3に示されるように、このマイクロチップ5は一対の透明基板(石英ガラスその他のガラス基板や樹脂基板)51,52からなり、一方の基板52の表面に、(B)に示されるように、互いに交差する泳動用キャピラリ溝54,55を形成し、他方の基板51には、(C)に示されるように、その溝54,55の端に対応する位置にリザーバ53を貫通穴として設け、両基板51,52を(C)に示すように重ねて接合し、キャピラリ溝54,55を試料の電気泳動分離用の分離流路55と、その分離流路に試料を導入するための試料導入流路54とする。
【0038】
マイクロチップ5は基本的には図3に示したものであるが、取扱いを容易にするために、図4に示されるように、電圧を印加するための電極端子を予めチップ上に形成したものを使用する。図4はそのマイクロチップ5の平面図を示したものである。4つのリザーバ53は流路54,55に電圧を印加するためのポートでもある。ポート#1と#2は試料導入流路54の両端に位置するポートであり、ポート#3と#4は分離流路55の両端に位置するポートである。各ポートに電圧を印加するために、このチップ5の表面に形成された電極パターン61〜64がそれぞれのポートからマイクロチップ5の側端部に延びて形成されており、電気泳動用高圧電源部26−1〜26−4に接続されるようになっている。
【0039】
図5はバッファ充填・排出部16における空気供給口18とマイクロチップ5の接続状態を概略的に示したものである。空気供給口18の先端にはOリング20が設けられており、空気供給口18をマイクロチップ5の1つのリザーバ上に押し当てることにより、マイクロチップ5の電気泳動流路に対し、空気供給口18を機密を保って取り付けることができ、空気供給口18から空気を加圧して流路内に送り出すことができる。他のリザーバにはノズル22が挿入され、流路から溢れ出した不用な分離バッファ液を吸入して排出する。
【0040】
図6は一実施例における動作を詳細に示したものである。ここでは1つのマイクロチップに1つの電気泳動流路が形成されているものを使用する。したがって、この場合には1つのマイクロチップから次のマイクロチップに処理が移行することは1つの電気泳動流路から次の電気泳動流路に処理が移行することと同義である。
【0041】
(A)は前処理工程と電気泳動・測光工程が4つのマイクロチップで一部並行しながら順次行なわれていく実施例の動作を示している。
各工程は時間で設定され、前処理工程は40秒、電気泳動・測光工程は120秒に設定されており、1つのマイクロチップについての1サイクルは160秒である。
【0042】
1つのマイクロチップについての前処理工程が終わると、そのマイクロチップでの電気泳動・測光工程の終了を待つことなく次のマイクロチップの前処理工程へと移行していく。すなわち、1番目のマイクロチップでの前処理工程の終了に伴って電気泳動が開始され、測光も開始されるとともに、2番目のマイクロチップでの前処理工程が開始される。2番目のマイクロチップでの前処理工程が終わると2番目のマイクロチップでの電気泳動が開始され、測光も開始されるとともに、3番目のマイクロチップでの前処理工程が開始される。このようにして、前処理工程はマイクロチップごとに順次行なわれていき、それとは別に前処理工程の終わったマイクロチップでは電気泳動と測光が順次開始されていき、結果として電気泳動と測光は複数のマイクロチップで並行して実行される。4番目のマイクロチップまで前処理工程が行なわれると、1番目のマイクロチップでは分析が終了しているので、1番目のマイクロチップを再度利用して同様の処理が繰り返されていく。
【0043】
電気泳動工程では、試料を試料導入流路から分離用流路との交差位置まで導くための電圧印加が行なわれ、続いて分離用流路での電圧印加による電気泳動分離が行なわれる。それとともに、検出位置ではLEDから光照射がなされ、蛍光測定が開始される。
【0044】
前処理工程を(B)に詳細に示す。
最上段の数値は時間(秒)を表わしている。「マイクロチップ」の欄は1つのマイクロチップにおける処理の内容を示したものである。「分注部」欄はシリンジポンプ4により行なわれる分注プローブ8からの分離バッファ液と試料の吸引と吐出動作を示している。
【0045】
「分離バッファ液充填装置」の欄は、マイクロチップに分注された分離バッファ液を流路に押し込む充填操作と溢れ出た分離バッファ液を吸引して排出する吸引工程を吸引ポンプにより行なう操作を示している。
【0046】
「マイクロチップ」の欄において、最初の分離バッファ液吸引(B吸引)は先の分析で使用した分離バッファ液を吸引して排出する工程である。次の「W4B分注」工程で4番目のリザーバへ分離バッファ液を分注し、次の「充填・吸引」工程で分離バッファ液充填装置から加圧空気を供給してその分離バッファ液を電気泳動流路に押し込むとともに、他のリザーバから不要な分離バッファ液を吸引して排出することにより流路を新たな分離バッファ液で洗浄する。
【0047】
次の「W1B分注」工程により1番目のリザーバを洗浄するために1番目のリザーバに新たな分離バッファ液を分注し、次の「充填・吸引」工程で分離バッファ液充填装置から4番目のリザーバに加圧空気を供給してその分離バッファ液を電気泳動流路に押し込むとともに、他のリザーバから不要な分離バッファ液を吸引して排出することにより分離バッファ液を流路に充填する。その後、次の「W2,3,4バッファ分注」工程により他の2,3,4番目のリザーバからも分離バッファ液を分注する。これで電気泳動流路への分離バッファ液の充填が完了する。
【0048】
次に、試料の分注のために分注部の分注プローブに試料が吸引され、「W1S分注」工程により1番目のリザーバにその試料が吐出されて試料分注が行なわれる。試料分注後、分注部の分注プローブは洗浄された後、次の試料のための分離バッファ液の吸入に備える。これでそのマイクロチップの電気泳動流路での前処理工程が終了する。
【0049】
実施例のマイクロチップではクロスインジェクション方式の電気泳動流路を採用しているが、これに限らず、流路が分離流路だけのマイクロチップであってもよい。
【0050】
また、実施例のマイクロチップでは1つのマイクロチップに電気泳動流路が1つだけ設けられたものを使用しているが、1つのマイクロチップに電気泳動流路が複数形成されていてもよく、その場合には電気泳動流路を単位として本発明を適用すればよい。
【0051】
検出部として蛍光を測定するものを使用しているが、蛍光を測定する以外に、吸光度を測定したり、化学発光又は生物発光を利用した検出方法を用いたりすることもできる。
検出部に関してはそれぞれのマイクロチップで独立して励起光を照射するものでなくても、全てのマイクロチップに共通に使用される測光系を用意し、その光学系を全てのマイクロチップの検出位置の間で移動させるように走査する方式のものであってもよい。
【0052】
次に分注部2を詳細に説明する。
図7に拡大して示されているように、分注プローブ8は中空で先端がニードルとなっており、先端の孔から液の吸入と吐出を行なう。分注プローブ8は試料と試薬(この実施例では分離バッファ液)で共用される。図7は試料容器90に分注プローブ8の先端が挿入された状態を示している。試料容器90は、図7に示されるように、上部開口が分注プローブ8のニードルで貫通可能なセプタムなどのシール材90aで閉じられた状態でこのマイクロチップ処理装置に装着される。一方、分離バッファ液を収容した試薬容器は、外蓋が外されて上部開口が開けられた状態でこのマイクロチップ処理装置に装着される。試料分注操作の際には分注プローブ8のニードルがシール材90aを貫通して試料容器90に挿入されて試料の吸入が行なわれ、試薬分注の際には分注プローブ8のニードルが開口した試薬容器に挿入されて試薬の吸入が行なわれる。
【0053】
分注プローブ8はその側面に溝8bが設けられている。その溝8bは例えば幅及び深さがともに50μm〜0.6mmであり、その位置は分注プローブ8の先端が試料容器90に挿入されて試料を吸入する際に試料容器90内と大気とが連通する位置、すなわちシール材90aを貫通している位置である。これにより、分注プローブ8によって容器90内の試料を吸入しても大気が溝8bを通って容器90内に流入するので、容器90内が陰圧になるのを防止することができ、精度良く液体を吸引することができる。
【0054】
分注プローブ8は金属製であり、その先端部での静電容量が検出されることにより静電容量式液面センサとなっている。分注プローブ8の先端部の一例は、同軸上に設けられて互いに絶縁された内菅と外菅の二重菅となっており、それら両管により容量式液面センサを構成している。分注プローブ8の先端部の静電容量は、試料容器又は試薬容器に挿入されて容器中の液体に接触すると変化することにより、液面を検出する。液面センサは図1に符号92として示されているように、制御部38に接続されて、静電容量が常時監視されることにより、試料容器又は試薬容器内での液面位置が検知される。
【0055】
制御部38はこの液面センサの出力に基づいて試料容器内又は試薬容器内の残液量を算出し、パーソナルコンピュータ(PC)40を残液量表示部として、図8に示されるように表示を行なう。
【0056】
この液面センサの出力に基づいた残液量が分析開始前に不足していた場合には、制御部38はパーソナルコンピュータ40を警報手段としてその旨を知らせるようにしてもよい。
この液面センサの出力に基づいた残液量が不足した場合には、制御部38はパーソナルコンピュータ40を警報手段としてその都度知らせるようにしてもよい。
【0057】
図9には、分注部2における分注プローブ駆動機構のうち、分注プローブ8をZ方向(上下方向)に駆動するとともに、分注プローブ8が試料容器90から引き抜かれる際に試料容器90が浮き上がらないように下方向に付勢する水平方向の押さえ部材86bをもつ押さえ機構としての押さえレバー86を下端に備えたものの一例を示す。
【0058】
押さえレバー86は分注プローブ8を保持して上下方向に移動するプローブホルダ80に摺動可能に取りつけられており、押さえレバー86をプローブホルダ80に対して下方向に付勢する付勢手段としてのバネ87と、押さえ部材86bがプローブホルダ80に対して、分注プローブ8の下端の停止位置(図9(A)の状態の位置)よりもさらに下方へ移動するのを規制するストッパ86aとを備えている。ストッパ86aはプローブホルダ80の上側で押さえレバー86に固定され、プローブホルダ80の上面に当接することにより、押さえレバー86がそれ以上に下方に移動することを規制している。バネ87は引っ張りバネであり、プローブホルダ80の上側で、押さえレバー86の上端とプローブホルダ80との間にかけられている。
【0059】
押さえレバー86と分注プローブ8は、プローブホルダ80を上下方向に移動させる一軸の駆動系により駆動される。この機構をさらに詳細に説明すると、分注プローブ8を駆動するための駆動部70は、この駆動部70を水平面内のX方向及びY方向に移動させるための駆動機構(図示は省略)に固定された固定軸72を備えている。固定軸72には垂直方向のリニアガイド82が固定され、プローブホルダ80はリニアガイド82に案内され、上下方向に摺動可能に支持されている。プローブホルダ80にはボールネジ76が螺合し、ボールネジ76の回転によりプローブホルダ80の上下方向の移動が駆動される。固定軸72にはまた、駆動用モータ74としてステッピングモータが取りつけられ、駆動用モータ74の回転軸とボールネジ76とがタイミングベルト78で連結されていることにより、駆動用モータ74の回転がボールネジ76に伝達される。
図9の分注部により分注プローブ8で試料を吸入する動作を説明する。
【0060】
(待機状態)
図9(A)の位置は待機位置であり、待機位置ではプローブホルダ80が最も上の位置に上がっており、押さえレバー86のストッパ86aがプローブホルダ80の上面と当接してプローブホルダ80に対して押さえレバー86が最も下がった状態となっている。この待機状態では、押さえレバー86の下端にある押さえ部材86bは分注プローブ8の先端よりも下側にきている。
【0061】
(試料吸入のための下降)
図9(B)は分注プローブ8が下降するときの状態を表わしたものである。駆動用モータ74の回転がタイミングベルト78を介してボールネジ76に伝達され、ボールネジ76が回転することによりプローブホルダ80が下降する。分注プローブ8はプローブホルダ80に固定されているのでプローブホルダ80とともに下降し、また押さえレバー86はバネ87によりプローブホルダ80に対して下方向に付勢されているので、押さえレバー86もプローブホルダ80と共に下降する。押さえレバー86の下端にある押さえ部材86bが試料容器90の上面に当接すると、押さえレバー86の下降が停止する。
【0062】
(試料吸入)
図9(B)の状態からさらにプローブホルダ80が下降を続ける。押さえレバー86はその下端の押さえ部材86bが試料容器と当接しているためそれ以上に下降することができず、プローブホルダ80の下降に伴なって押さえレバー86はプローブホルダ80に対し摺動し、プローブホルダ80のみが下降を続けてバネ87が伸びていく。分注プローブ8はプローブホルダ80とともに下降し、その先端が試料容器90のシールド材90aを貫通して試料容器90内に挿入される。それより所定の深さだけ試料中に侵入したところで駆動モータ74の駆動が停止され、プローブホルダ80の下降が停止される。その状態が図9(C)に示された状態であり、その状態で分注プローブ8により試料の所定量が吸入される。
【0063】
次に、駆動モータ74が逆方向に回転し、プローブホルダ80が上昇を始める。プローブホルダ80の上昇にともなって分注プローブ8が上昇を始め、試料容器90から引き抜かれる。このとき押さえレバー86はバネ87によってプローブホルダ80に対し下方向に付勢されているので、プローブホルダ80が上昇を始めても押さえレバー86は図9(C)の位置に留まる。これにより分注プローブ8が試料容器90のシール材90aから引き抜かれるときに分注プローブ8とシール材90aの間の摩擦により試料容器90には上方向に引き上げようとする力が働くが、押さえ部材86bが図9(C)の位置に固定されているため、試料容器90の浮き上がりが防止される。
【0064】
やがて、プローブホルダ80が図9(B)の位置まで上昇すると、押さえレバー86に取りつけられているストッパ86aがプローブホルダ80の上面と当接し、その後さらにプローブホルダ80が上昇すると、押さえレバー86はプローブホルダ80とともに上昇する。プローブホルダ80が図9(A)の位置まで上昇すると、試料の吸入動作が終了する。
その後、駆動部70全体がマイクロチップの所定の位置まで移動させられ、分注プローブ8がマイクロチップの所定のリザーバに挿入されて試料が注入される。
【0065】
分注プローブ8は試料の分注だけでなく、試薬の分注にも用いられる。試薬はこの実施例では分離バッファ液であるが、他の試薬を用いる場合も同じである。試薬容器はマイクロチップに対し繰り返し分注される試薬を収容するために試料容器よりも大型のものが使用され、開口部の蓋を取り外した状態でこのマイクロチップ処理装置に装着される。分注プローブ8は蓋が外された試薬容器に挿入されることを想定して製作されているものとする。試薬容器の蓋は例えば樹脂製など、試料容器90のシール材90aに比べて硬いものであり、もし試薬容器の蓋が付けられたままでこのマイクロチップ処理装置に装着されると、分注プローブ8の先端が試薬容器の蓋に押しつけられて損傷する恐れが生じる。そのような事態を防ぐための実施例として、図10には分注プローブ8が試薬容器の蓋に当たったことを検知する手段を備えたものを示している。
【0066】
図10に示された駆動部70aは図9の駆動部70と比べると、プローブホルダ80に対する分注プローブ8を保持する機構が異なっており、分注プローブ8の先端が蓋に当たったことを検知するセンサが設けられている点で図9のものと異なる。
【0067】
図10の駆動部70aでは、分注プローブ8はプローブホルダ80に対し摺動可能に保持されている。プローブホルダ80は上方に伸びたL字型のバネ押さえ部80aを一体として備えている。分注プローブ8はプローブホルダ80及びバネ押さえ部80aを貫通して摺動可能に支持されており、バネ押さえ部80aの下面には圧縮バネ84が挿入されて分注プローブ8をプローブホルダ80に対し下方向に付勢している。
【0068】
プローブホルダ80に対し分注プローブ8が変位したことを検出するために、分注プローブ8はプローブホルダ80の上側で突片8aが設けられている。プローブホルダ80にはその突片8aを検出するためにフォトセンサなどの位置センサ88が設けられている。突片8aと位置センサ88は、分注プローブ8が所定量だけプローブホルダ80に対し上方向に変位すると位置センサ88がオンとなるように両者の位置が定められている。
【0069】
図10の実施例において分注プローブ8の先端が試薬容器の蓋にあたったことを検知する動作を説明する。
試薬容器91は蓋91aが外された状態で装着されるべきものであるが、誤って蓋91aがついたままでこのマイクロチップ処理装置に装着されたものとする。
【0070】
図10(A)は待機状態であり、その状態から図9で説明されているように、プローブホルダ80が下降し、図10(B)のように押さえレバー86の下端の押さえ部材86bが試薬容器91の上面と当接すると、押さえレバー86の下降は停止するが、プローブホルダ80がなお下降を続けることによって分注プローブ8の先端が試薬容器91の蓋91aに当接する。
【0071】
その後もなおプローブホルダ80が下降を続けるが、分注プローブ8はその先端が蓋91aを貫通することができないので、分注プローブ8は停止し、プローブホルダ80は分注プローブ8に対し摺動してさらに下降を続ける。位置センサ88はプローブホルダ80に固定されているので、プローブホルダ80とともに下降をし、やがて図10(C)に示されるように位置センサ88が突片8aの位置まで来たところで位置センサ88がオンとなって分注プローブ8の先端が硬いものに接触しているが検知される。この状態でプローブホルダ80の下降が停止され、分注動作が停止される。
【0072】
このマイクロチップ処理装置においてマイクロチップは繰り返し使用されるものとした場合の処理手順を図11から図14に示し、図15のフローチャートにより説明する。図15のフローチャート中での符号(A〜U)は図11〜図14での工程の符号を意味する。ここで行なわれる処理は、前回の分析で使用されたマイクロチップを洗浄し、流路に分離バッファ液を充填し、各リザーバにも分離バッファ液を充填した状態で流路に電流が正常に流れるか否かの泳動テストを行ない、その後サンプルを分注して泳動を開始し、分注プローブと吸引ノズルを洗浄する一連の工程である。
【0073】
(A)はマイクロチップ5を示している。マイクロチップ5は図3及び図4に示されたものであり、分離流路55と試料導入流路54が交差するように設けられ、各流路54,55の端部にリザーバ53が形成されたものである。図4の1番から4番までのリザーバをここでは符号53−1〜53−4で示す。
【0074】
(B)前のサンプルの分析が終了した状態であり、流路及び各リザーバには分離バッファ液が残っており、その分離バッファ液内に分離された試料も残っている。
【0075】
(C)まず試料注入用リザーバ53−1を洗浄するために、吸引ノズル22−1のみがリザーバ53−1に挿入される。吸引ノズル22−2と吸引ノズル22−3も吸引ノズル22−1と同時に上下動するものであるが、吸引ノズル22−1の長さが他の吸引ノズル22−2,22−3よりも長くなっているために、吸引ノズル22−1のみがリザーバ53−1に挿入されてそのリザーバ53−1の底部に押しつけられた状態となるが、他の吸引ノズル22−2,22−3はそれぞれの対応するリザーバ53−2,53−3には挿入されない。その状態で吸引ノズル22−1から吸引されることによりリザーバ53−1内の分離バッファ液が吸引されて除去される。
【0076】
(D)リザーバ53−1に分注プローブ8から洗浄水が供給される。
(E)再びリザーバ53−1に吸引ノズル22−1が挿入され、洗浄水が吸引されて排出される。
(F)リザーバ53−1に分注プローブ8から再び洗浄水が供給される。
【0077】
(G)次に、リザーバ53−1〜53−3にそれぞれ吸引ノズル22−1〜22−3が挿入される。このとき3つの吸引ノズル22−1〜22−3はそれぞれのリザーバ53−1〜53−3に挿入され、押しつけられることによってそれぞれのリザーバの底に当接する。それらの3つの吸引ノズル22−1〜22−3から同時に液が吸引されて除去される。分注プローブ8はリンスポート100に挿入されて分注プローブ8内の洗浄水の全量が吐出されるとともに、分注プローブ8の内外が洗浄される。
【0078】
(H)他の一つのリザーバ53−4に4番目の吸引ノズル22−4が挿入される。この吸引ノズル22−4は3本の吸引ノズル22−1〜22−3とは別に設けられ、後で説明する図15に示された空気供給口用のシリンダの近くに配置されたものである。吸引ノズル22−4も押しつけられることによりリザーバ53−4の底に当接する。吸引ノズル22−4からリザーバ53−4内の分離バッファ液が吸引されて除去される。分注プローブ8はバッファ液を入れた試薬容器91から分離バッファ液を吸引する。
【0079】
(I)分注プローブ8をリザーバ53−4へ移動し、分離バッファ液を分注する。
(J)リザーバ53−4上に空気供給口18が気密を保って押しつけられ、後で図15に示すシリンダが駆動されて空気がリザーバ53−4から流路に供給される。他のリザーバ53−1〜53−3にはそれぞれ吸引ノズル22−1〜22−3が挿入され、流路からそれぞれのリザーバ53−1〜53−3に溢れ出した分離バッファ液が吸引されて除去される。
【0080】
(K)リザーバ53−4に吸引ノズル22−4が挿入され、そのリザーバ53−4の分離バッファ液が吸引されて除去される。これにより流路内にのみ分離バッファ液が残る状態となる。
(L)〜(O)リザーバ53−1〜53−4に分注プローブ8により分離バッファ液が順次分注される。
【0081】
(P)それぞれのリザーバに電極が挿入され、泳動テストが行なわれる。ここでは電極間の電流値を検出することにより流路にゴミや気泡が混入していないかどうかを確認する。ここで流路に印加する電圧は、試料を分離するための泳動電圧と同じであってもよいが、それよりも低電圧としてもよい。
分離バッファ液を分注した分注プローブ8はリンスポート100に挿入され、分注プローブ8内の分離バッファ液が全量吐出されるとともに分注プローブ8の内外が洗浄される。
【0082】
この泳動テスト工程で流路への分離バッファの充填が正常に行なわれたと判定されたときは、サンプルを注入して分析を行なうために次の工程(Q)へ進むが、流路への分離バッファの充填が正常に行なわれたと判定されなかったときは、流路への分離バッファ液の充填をし直すために工程(B)に戻る。
【0083】
流路への分離バッファ液の充填のし直しを許容する回数(N)を予め設定しておき、その回数だけ分離バッファ液の充填し直しを行なっても流路への分離バッファの充填が正常に行なわれたと判定されないときは、別のマイクロチップに交換した後、工程(B)に戻る。分離バッファ液の充填のし直し許容する回数Nは特に限定されるものではないが、例えば2又は3が適当である。
【0084】
(Q)試料供給用リザーバ53−1にのみ吸引ノズル22−1が挿入され、そのリザーバリザーバ53−1の分離バッファ液が吸引されて除去される。
(R)そのリザーバ53−1に分注プローブ8から試料が注入される。
(S)それぞれのリザーバ53−1〜53−4に電極が挿入されて試料導入用の電圧が印加され、試料が流路54と55の交差位置へ導かれる。
【0085】
(T)印加電圧が泳動分離用の電圧に切り換えられ、試料が分離流路55でリザーバ53−4の方向に電気泳動されて分離する。
(U)分析終了後、各吸引ノズル22−1〜22−4がリンスプール102に挿入されて洗浄液が吸引され、ノズル内外が洗浄されるとともに、プローブ8がリンスポート100に挿入されて内外が洗浄される。
【0086】
次に、図16と図17により、分離バッファ液充填装置の一実施例を説明する。
3本の吸引ノズル22−1〜22−3はノズル保持部材104に摺動可能に保持され、図17に拡大して示されるように、上下方向の移動範囲が上下のストッパ105,107により規制されており、バネ106によりノズル保持部材104から下方向に付勢されている。これらの吸引ノズル22−1〜22−3はリザーバに押しつけられることによりバネ106に抗して上方向に移動することができる。
【0087】
図16(A)に示されるように、吸引ノズルがリザーバに挿入される前の状態においては、吸引ノズル22−1は他の吸引ノズル22−2,22−3に比べてノズル保持部材104から下方に突出する長さがリザーバに存在する液の深さ分よりも長く設定されている。このことは、吸引ノズル22−1が下方向に突出した状態でその先端がリザーバ53−1の底に当接した時点では、吸引ノズル22−2,22−3はまだリザーバ53−2,53−3内の液面には到達しないことを意味する。ノズル保持部材104がさらに下方向に移動すると、いずれ全ての吸引ノズル22−1〜22−3がリザーバの底面に当接する。
【0088】
この実施例では、ノズル保持部材104はエアーシリンダ保持部材も兼ねており、ノズル保持部材104にシリンダ108が固定されている。シリンダ108の先端開口部にはシール部110が設けられ、そのシール部をもつ開口が空気供給口18となっている。シリンダ108はその上側にプランジャ112をもち、プランジャ112の上下動によりシリンダから空気が吐出される。プランジャ112はプランジャ保持部材114に固定されている。
【0089】
ノズル保持部材(エアーシリンダ保持部材)104とプランジャ保持部材114はリニアガイド116に摺動可能に支持され、ノズル保持部材104とプランジャ保持部材114との間にはコイルバネ118が挿入されている。ノズル保持部材104から上方向に伸びるストッパ120が設けられており、ストッパ120はプランジャ保持部材114の上死点を規定している。
【0090】
この分離バッファ液充填装置は支持体122に固定され、支持体122が水平方向の移動機構に取りつけられていることにより、この分離バッファ液充填装置が横方向に移動可能になっている。ノズル保持部材104とプランジャ保持部材114を上下方向に移動させるための機構として、支持体122に駆動モータ124としてステッピングモータが取りつけられ、プランジャ保持部材114にはボールネジ126が螺合している。モータ124とボールネジ126の間にはタイミングベルト128がかけられ、モータ124の回転がタイミングベルト128を介してボールネジ126に伝達される。ボールネジ126の回転によりプランジャ保持部材114が上下方向に移動させられる。この実施例では、ノズル保持部材104がエアリシンダ保持部材を兼用しているので、吸引ノズル22−1〜22−3の駆動とエアーシリンダ108の移動及び駆動機構を一つの駆動モータ124により駆動することができる。
【0091】
図16において、ノズル保持部材104が吸引ノズル22−1〜22−3を備えていない形態、すなわち部材104がノズル保持部材の機能を果たさずに単にエアーシリンダ保持部材として機能している形態も本発明の一実施例となるものである。
【0092】
次に、図16によりマイクロチップ5に分離バッファ液を充填する動作を説明する。この動作は図12(I)でリザーバ53−4に分離バッファ液が供給されたのち、(J)で空気供給口18により空気が供給されて分離バッファ液が加圧して圧入されるとともに、流路から溢れ出た分離バッファ液が吸引ノズル22−1〜22−3で吸引されて排出されるまでの工程に該当するものである。
【0093】
(A):図16(A)は待機状態であり、プランジャ保持部材114が上死点にある。この状態ですでにマイクロチップのリザーバ53−4に分離バッファ液が供給されている。
【0094】
(B):ボールネジ126が回転してプランジャ保持部材114を下げ、コイルバネ118を介してノズル保持部材104を押し下げる。図16(B)に示されるように、シリンダ108のシール部110がリザーバ53−4上に気密を保って当接させられ、同時に3つの吸引ノズル22−1〜22−3はそれぞれのリザーバに挿入されてリザーバ53−1〜53−3の底部に押しつけられた状態となる。
【0095】
(C):ボールネジ126をさらに回転させてプランジャ保持部材114を下降させると、ノズル保持部材104はシリンダ108の下端がマイクロチップ5に当接していることによりそれ以上の下降は規制されているが、図16(C)に示されるように、コイルバネ118が縮むことによってプランジャ保持部材114がストッパ120から離れてさらに下降し、プランジャ112を押して空気供給口18から空気を供給する。これにより、リザーバ53−4内の分離バッファ液が流路内に圧入され、流路からリザーバ53−1〜53−3に溢れ出た分離バッファ液はそれぞれの吸引ノズル22−1〜22−3により吸引されて除去される。
【0096】
図16(C)の状態で分離バッファ液を流路に圧入した後、ボールネジ126が逆方向に回転し、図16(B)の状態に戻る。その後、さらにボールネジ126が逆方向に回転すると、プランジャ保持部材114がストッパ120に当たることによってノズル保持部材104引き上げ、図16(A)の待機状態に戻る。
【0097】
図16の分離バッファ液充填装置において、吸引ノズル22−1の先端がリザーバ53−1の底面に到達した時点でボールネジ126の回転を停止すると、吸引ノズル22−1のみがリザーバ53−1に挿入され、他の吸引ノズル22−2,22−3はそれぞれのリザーバ53−2,53−3の液面に到達しない位置で停止することになる。この状態は図11(E)及び図13(Q)の工程に使用される状態である。
【0098】
図16には示されていないが、他の一本の吸引ノズル22−4はシリンダ108の近傍に設けられており、他の吸引ノズル22−1〜22−3と同様にバネにより下方向に付勢されている。その吸引ノズル22−4をリザーバ53−4に挿入するときは支持体122が水平方向に移動しているため、他の吸引ノズル22−1〜22−3はそれぞれの対応するリザーバ53−1〜53−3には挿入されない。
【0099】
図18は吸引ノズル22(22−1〜22−4)がリザーバ53(53−1〜53−4)の底部周辺部以外の場所、例えば中央部に当接したとした場合のリザーバ内の液の吸引除去の状態を示したものである。
【0100】
吸引ノズル22の先端の外径はリザーバ53の底部の寸法よりも小さく、吸引ノズル22の先端は斜めにカットされており、リザーバ底面と吸引ノズル先端の隙間から液を吸引する。吸引ノズル22がリザーバ底部の側壁部以外の場所、例えば中央部に当接したとき、液130がリザーバ底部の周囲部にドーナツ状に残る。特に、このリザーバ53が試料供給用リザーバである場合は充分に洗浄を行なわないと次の分析に対するキャリーオーバの原因となる。そのためリザーバ底部周囲部に液が残る場合にはリザーバを洗浄する水量が多くなったり、洗浄回数を多くしたりしなければならなくなり、洗浄時間が長くなって、結果として分析時間全体が長くなる。
【0101】
そこで、好ましい実施例として、図19に示されるように、吸引ノズル22をリザーバ53の底部周壁部に押しつけるように挿入する。このように吸引ノズル22の位置を調節することによってリザーバ53に液を残すことなく吸引して除去することができる。その結果、キャリーオーバが小さくなって、洗浄水が少なくてすむようになったり、洗浄時間が短かくなって、結果として分析時間を短縮することができる。また同じ洗浄条件であればキャリーオーバが小さくなることによって分析精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明が適用される一例のマイクロチップ電気泳動装置における制御部に関する部分を概略的に示すブロック図である。
【図2】同マイクロチップ電気泳動装置の要部を概略的に示す斜視図である。
【図3】マイクロチップの一例を示す図であり、(A)と(B)はマイクロチップを構成する透明板状部材を示す平面図、(C)はマイクロチップの正面図である。
【図4】マイクロチップの具体的な一例を示す平面図である。
【図5】同マイクロチップ電気泳動装置において分離バッファ液を充填する際の空気供給口とマイクロチップの接続状態を概略的に示す断面図である。
【図6】同マイクロチップ電気泳動装置の動作を示すタイムチャート図である。
【図7】一実施例における分注プローブを示す概略正面図である。
【図8】試薬容器内の残液量を表示する表示画面の一例を示す図である。
【図9】一実施例における分注プローブ駆動機構を示す正面図であり、(A)は待機位置、(B)は試料吸入のための下降過程、(C)は試料吸入位置をそれぞれ表わす。
【図10】他の実施例における分注プローブ駆動機構を示す正面図であり、(A)は待機位置、(B)は試薬吸入のための下降過程、(C)は異物に当接したことを検知した状態をそれぞれ表わす。
【図11】一実施例の動作を工程順に示す斜視図である。
【図12】同実施例の動作をその後の工程順に示す斜視図である。
【図13】同実施例の動作をさらにその後の工程順に示す斜視図である。
【図14】同実施例の動作をさらにその後の工程順に示す斜視図である。
【図15】同実施例の動作における処理手順を示すフローチャートである。
【図16】一実施例における分離バッファ液充填装置を示す正面図であり、(A)は待機位置、(B)は空気供給口と吸引ノズルをマイクロチップに押し当てた状態、(C)は分離バッファ液を流路に圧入する工程をそれぞれ表わす。
【図17】同分離バッファ液充填装置における吸引ノズル部分を拡大して示す断面図である。
【図18】吸引ノズルによりリザーバから液を吸引する状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【図19】吸引ノズルによりリザーバから液を吸引する改良された方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0103】
2 分注部
4 シリンジポンプ
5,5−1〜5−4 マイクロチップ
8 分注プローブ
8b 溝
16 分離バッファ液充填装置
22−1〜22−4 吸引ノズル
26(26−1〜26−4) 電気泳動用高圧電源部
38 制御部
70,70a 駆動部
74 駆動用モータ
76 ボールネジ
80 プローブホルダ
80a バネ押さえ部
82 リニアガイド
84 圧縮バネ
86 押さえレバー
86b 押さえ部材
87 バネ
88 位置センサ
90 試料容器
90a シール材
92 液面センサ
104 ノズル保持部材
106 バネ
108 シリンダ
110 シール部
112 プランジャ
114 プランジャ保持部材
116 リニアガイド
118 コイルバネ
120 ストッパ
124 駆動モータ
126 ボールネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材の内部に溶液が移動しつつ分析が行なわれる分離用主流路を少なくとも備えたマイクロチップを保持する保持部と、試料容器又は試薬容器に上部から挿入して試料又は試薬を吸入し前記保持部に保持されたマイクロチップの所定の位置に注入するための分注プローブと、前記分注プローブを前記マイクロチップ、試料容器及び試薬容器の所定の位置の間で移動させる分注プローブ駆動機構とを少なくとも備えたマイクロチップ処理装置において、
前記分注プローブは先端がニードルとなっており、試料及び試薬で共用されるものであり、
前記試料容器はその上部開口が前記ニードルで貫通可能なシール材で閉じられた状態でこのマイクロチップ処理装置に装着され、
前記試薬容器はその上部開口が開けられた状態でこのマイクロチップ処理装置に装着され、
試料分注操作の際には前記ニードルが前記シール材を貫通して試料の吸入を行なうことを特徴とするマイクロチップ処理装置。
【請求項2】
前記分注プローブはその側面に溝を有し、その溝は先端が前記試料容器に挿入されて試料を吸入する際に試料容器内と大気とが連通する位置に配置されている請求項1に記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項3】
前記分注プローブはその先端に液面センサを備えている請求項1又は2に記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項4】
前記液面センサは静電容量式である請求項3に記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項5】
前記液面センサの出力に基づいて前記試薬容器内の残液量を算出して表示する残液量表示部を備えている請求項3又は4に記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項6】
前記液面センサの出力に基づいて前記試薬容器内の残液量を算出し、分析開始前に残液量が不足していたらその旨を知らせる警報手段を備えている請求項3から5のいずれかに記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項7】
前記液面センサの出力に基づいて前記試薬容器内の残液量を算出し、残液量が不足したらその都度知らせる警報手段を備えている請求項3から6のいずれかに記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項8】
前記分注プローブ駆動機構は前記分注プローブが前記試料容器から引き抜かれる際に浮き上がらないように下方向に付勢する押さえ機構を備えている請求項1から7のいずれかに記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項9】
前記押さえ機構は前記分注プローブを保持して上下方向に移動するプローブホルダに摺動可能に取りつけられており、前記押さえ機構を下方向に付勢する付勢手段と、前記押さえ機構の下端点が分注プローブの下端よりもさらに下方へ移動するのを規制するストッパとを備えていることにより、前記押さえ機構と前記分注プローブは前記プローブホルダを上下方向に移動させる駆動系により駆動される請求項8に記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項10】
前記分注プローブ駆動機構は前記分注プローブを上下動するプローブホルダに摺動可能に保持しており、
前記分注プローブを前記プローブホルダに対して下方向に付勢する第2付勢手段と、前記分注プローブが前記プローブホルダに対し所定量だけ上方に変位したことを検出する位置センサとを備えている請求項1から9のいずれかに記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項11】
前記第2付勢手段の付勢力は、前記ニードルが前記試料容器のシール材を貫通するときは前記分注プローブが前記センサの作動する位置までは変位せず、前記ニードルが前記試料容器のシール材より硬いものに衝突したときは前記分注プローブが前記位置センサの作動する位置まで変位する強さに設定されている請求項10に記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項12】
前記分注プローブ駆動機構は試薬分注の際に前記位置センサが作動したときは分注動作を停止するように制御される請求項10又は11に記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項13】
板状部材の内部に溶液が移動しつつ分析が行なわれる分離用主流路を少なくとも備えたマイクロチップを保持する保持部と、試料容器又は試薬容器に上部から挿入して試料又は試薬を吸入し前記保持部に保持されたマイクロチップの所定の位置に注入するための分注プローブと、前記分注プローブを前記マイクロチップ、試料容器及び試薬容器の所定の位置の間で移動させる分注プローブ駆動機構とを少なくとも備えたマイクロチップ処理装置において、
前記分注プローブはその先端に液面センサを備えていることを特徴とするマイクロチップ処理装置。
【請求項14】
前記液面センサは静電容量式である請求項13に記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項15】
前記液面センサの出力に基づいて前記試薬容器内の残液量を算出して表示する残液量表示部を備えている請求項13又は14に記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項16】
前記液面センサの出力に基づいて前記試薬容器内の残液量を算出し、分析開始前に残液量が不足していたらその旨を知らせる警報手段を備えている請求項13から15のいずれかに記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項17】
前記液面センサの出力に基づいて前記試薬容器内の残液量を算出し、残液量が不足したらその都度知らせる警報手段を備えている請求項13から16のいずれかに記載のマイクロチップ処理装置。
【請求項18】
前記保持部は前記主流路の数が複数個となるようにマイクロチップを保持し、
前記主流路における前処理工程と分析工程を制御するために制御部が設けられ、
前記分注プローブは前記複数の主流路で共通に使用され、それらの主流路における分析工程に先立つ前処理工程を行なうものであり、
前記制御部は1つの主流路における前処理工程が終了すると次の主流路の前処理工程に移行するように前処理工程を主流路ごとに独立して行ない、前処理工程が終了した複数の主流路で並行して分析工程を行なうように制御する請求項1から17のいずれかに記載のマイクロチップ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−107918(P2007−107918A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296538(P2005−296538)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】