マイクロチップ
【課題】遠心力の印加により流体回路内に存在する液体を流体回路内の所望の位置に移動させるマイクロチップにおいて、表面張力による意図しない液体の移動を防止することができるマイクロチップを提供する。
【解決手段】内部に形成された空間からなる流体回路を備えており、流体回路内に存在する液体を流体回路内の所望の位置に移動させるマイクロチップであって、流体回路は、液体を通す第1の流路と、該第1の流路を通過した液体を通す第2の流路とを含み、第1の流路は、第2の流路側の端部である第1の端部が第2の流路の内壁面と離間するように配置されるマイクロチップである。
【解決手段】内部に形成された空間からなる流体回路を備えており、流体回路内に存在する液体を流体回路内の所望の位置に移動させるマイクロチップであって、流体回路は、液体を通す第1の流路と、該第1の流路を通過した液体を通す第2の流路とを含み、第1の流路は、第2の流路側の端部である第1の端部が第2の流路の内壁面と離間するように配置されるマイクロチップである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に流体回路を備えており、遠心力の印加により流体回路内に存在する検体および試薬等の液体を流体回路内の所望の位置に移動させることにより、該検体の検査または分析等を行なうことができるマイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療や健康、食品、創薬などの分野で、DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)や酵素、抗原、抗体、タンパク質、ウィルスおよび細胞などの生体物質、ならびに化学物質を検知、検出あるいは定量する重要性が増してきており、それらを簡便に測定できる様々なバイオチップおよびマイクロ化学チップ(以下、これらを総称してマイクロチップと称する。)が提案されている。
【0003】
マイクロチップは、実験室で行なっている一連の分析または実験操作を、数cm角で厚さ数mm〜1cm程度のチップ内で行なえることから、検体および試薬が微量で済み、コストが安く、反応速度が速く、ハイスループットな検査ができ、検体を採取した現場で直ちに検査結果を得ることができるなど多くの利点を有している。このようなマイクロチップは、たとえば血液検査等の生化学検査用として好適に用いられている。
【0004】
マイクロチップとしては、流体回路(あるいはマイクロ流体回路)と呼ばれる、該回路内に存在する検体、試薬等の液体に対して特定の処理を行なうための複数種類の部位(室)とこれらの部位を適切に接続する微細な流路とから構成される流路網をその内部に備えたものが従来公知である。このような流体回路を内部に備えるマイクロチップを用いた検体の検査または分析などにおいては、その流体回路を利用して、流体回路内に導入された検体やこれと混合される試薬の計量(すなわち、計量を行なうための部位である計量部への移動)、検体と液体試薬との混合(すなわち、これらを混合するための部位である混合部への移動)、ある部位から他の部位への移動などの種々の処理が行なわれる。なお、マイクロチップ内でなされる、各種液体(検体、検体中の特定成分、液体試薬、またはこれらのうちの2種以上の混合物など)に対してなされる処理を以下では「流体処理」ともいう。これら種々の流体処理は、マイクロチップに対して、適切な方向の遠心力を印加することにより行なうことができる。
【0005】
上記のような、遠心力を利用して流体回路内の液体を流体回路内の所望の位置(部位)に移動させて流体処理を行なうマイクロチップにおいては、液体の濡れ性が比較的高い場合、表面張力によって液体が流体回路の流路内壁を伝わって、意図しない液体移動が生じるという問題があった。たとえば、遠心力の印加がないにもかかわらず、上記液体試薬を収容する部位である試薬保持部から、液体試薬が流路内壁を伝わって流出することがあった。
【0006】
特許文献1には、液体の排出を防止することができるバルブを設けたマイクロチップが開示されている。しかし、このバルブは比較的複雑な構造を有しており、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−285792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、遠心力の印加により流体回路内に存在する液体を流体回路内の所望の位置に移動させるマイクロチップにおいて、表面張力による意図しない液体の移動を防止することができるマイクロチップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、内部に形成された空間からなる流体回路を備えており、流体回路内に存在する液体を流体回路内の所望の位置に移動させるマイクロチップであって、流体回路は、液体を通す第1の流路と、該第1の流路を通過した液体を通す第2の流路とを含み、第1の流路は、第2の流路側の端部である第1の端部が第2の流路の内壁面と離間するように配置されるマイクロチップを提供する。
【0010】
本発明の1つの好ましい実施形態において、流体回路は液体試薬を収容する試薬保持部を含み、試薬保持部は、上記第1の端部である、前記液体試薬を前記試薬保持部から排出するための排出口を有する。
【0011】
第1の流路は、第1の端部が第2の流路内に位置するように配置されることが好ましい。また、第1の流路の断面積は、第2の流路の断面積より小さいことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遠心力の印加により流体回路内に存在する液体を流体回路内の所望の位置に移動させるマイクロチップにおいて、表面張力による意図しない液体の移動を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るマイクロチップの流体回路が有する第1の流路および第2の流路を概念的に示す斜視図および断面図である。
【図2】本発明に係るマイクロチップが有する試薬保持部およびその近傍、ならびに試薬保持部内に収容された液体試薬の移動の様子を模式的に示す断面図である。
【図3】従来のマイクロチップが有する試薬保持部およびその近傍、ならびに試薬保持部内に収容された液体試薬の移動の様子を模式的に示す断面図および斜視図である。
【図4】本発明のマイクロチップの一例を示す外形図である。
【図5】図4に示されるマイクロチップを構成する第2の基板を示す上面図である。
【図6】図4に示されるマイクロチップを構成する第2の基板を示す下面図である。
【図7】図4に示されるマイクロチップが有する試薬保持部およびその近傍の構造を示す上面図、断面図および下面図である。
【図8】従来のマイクロチップが有する試薬保持部およびその近傍の構造を示す上面図、断面図および下面図である。
【図9】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の全血計量、試薬計量工程における第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図10】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の全血移動工程における第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図11】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の血球分離工程における第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図12】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の血漿成分計量工程における第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図13】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の第1混合工程第1ステップにおける第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図14】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の第1混合工程第2ステップにおける第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図15】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の第2混合工程第1ステップにおける第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図16】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の第2混合工程第2ステップにおける第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図17】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の検出部導入工程における第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図18】液体試薬保持力試験の結果を示す図である。
【図19】本発明のマイクロチップの他の一例を示す上面図である。
【図20】図19に示されるマイクロチップが有する試薬保持部およびその近傍の構造を模式的に示す断面図である。
【図21】本発明のマイクロチップのさらに他の例を模式的に示す断面図である。
【図22】本発明のマイクロチップのさらに他の例を模式的に示す断面図である。
【図23】本発明のマイクロチップのさらに他の一例を模式的に示す断面図および斜視図であり、該マイクロチップを用いた流体処理の血漿導入工程における血漿成分の様子を示す図である。
【図24】図23に示されるマイクロチップを用いた流体処理の血漿計量工程における血漿成分の様子を示す図である。
【図25】図23に示されるマイクロチップを用いた流体処理の血漿排出工程における血漿成分の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のマイクロチップは、各種化学合成、検査または分析等を、それが内部に有する流体回路を用いて行なうことができるチップであり、たとえば、第1の基板と、該第1の基板上に積層され、基板表面に溝を備える第2の基板との積層構造であることができる。この場合、マイクロチップの流体回路は、上記溝および第1の基板表面とによって形成される内部空間である。
【0015】
また、本発明のマイクロチップは、第1の基板と、該第1の基板上に積層され、基板の両表面に溝を備える第2の基板と、該第2の基板上に積層される第3の基板とを含むものであってもよい。この場合、流体回路は、第2の基板における第1の基板側表面および第1の基板における第2の基板側表面に設けられた溝から構成される空間からなる第1の流体回路と、第3の基板における第1の基板側表面および第1の基板における第3の基板側表面に設けられた溝から構成される空間からなる第2の流体回路との2層構造を有する。「2層」とは、マイクロチップの厚み方向に関して異なる2つの位置に流体回路が設けられていることを意味する。かかる2層の流体回路は、第1の基板を厚み方向に貫通する貫通穴によって接続することができる。
【0016】
マイクロチップの大きさは、特に限定されず、たとえば縦横数cm〜10cm程度、厚さ数mm〜数cm程度とすることができる。
【0017】
基板同士を貼り合わせる方法としては、特に限定されるものではなく、たとえば貼り合わせる基板のうち、少なくとも一方の基板の貼り合わせ面を融解させて溶着させる方法(溶着法)、接着剤を用いて接着させる方法などを挙げることができる。溶着法としては、基板を加熱して溶着させる方法;レーザー等の光を照射して、光吸収時に発生する熱により溶着する方法(レーザー溶着);超音波を用いて溶着する方法などを挙げることができる。なかでもレーザー溶着法が好ましく用いられる。
【0018】
本発明のマイクロチップを構成する上記各基板の材質は、特に制限されず、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアリレート樹脂(PAR)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、スチレン−ブタジエン樹脂(スチレン−ブタジエン共重合体)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)、ポリブタジエン樹脂(PBD)、生分解性ポリマー(BP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)などの有機材料(熱可塑性樹脂);シリコン、ガラス、石英などの無機材料等を用いることができる。なかでも、流体回路の形成のし易さ等を考慮すると、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
マイクロチップが第1の基板と、基板表面に溝を備える第2の基板とから構成される場合、第2の基板は、光学測定の際、検出光が照射される部位を含んでいることから、透明基板とすることが好ましい。第1の基板は、透明基板であっても不透明基板であってもよいが、レーザー溶着を行なう場合には、光吸収率を増大できることから、不透明基板とすることが好ましく、基板を熱可塑性樹脂から構成し、該樹脂中にカーボンブラック等の黒色顔料を添加することにより黒色基板とすることがより好ましい。
【0020】
マイクロチップが第1の基板と、基板の両表面に溝を備える第2の基板と、第3の基板とから構成される場合、レーザー溶着の効率性の観点から、第2の基板を不透明基板とすることが好ましく、黒色基板とすることがより好ましい。一方、第1および第3の基板は、検出部を構築するために、透明基板とすることが好ましい。第1および第3の基板を透明基板とすると、第2の基板に設けられた貫通穴と、透明な第1および第3の基板とから検出部(光学測定用キュベット)を形成でき、マイクロチップ表面と略垂直な方向から該検出部に光を照射して、透過する光の強度(透過率)を検出するなどの光学測定を行なうことが可能となる。
【0021】
第2の基板表面に、流体回路を構成する溝(パターン溝)を形成する方法としては、特に制限されず、転写構造を有する金型を用いた射出成形法、インプリント法などを挙げることができる。無機材料を用いて基板を形成する場合には、エッチング法などを用いることができる。溝の形状(パターン)は、所望される適切な流体回路構造となるように決定される。
【0022】
本発明のマイクロチップは、流体回路内に存在する液体(検体、検体中の特定成分、液体試薬、および、これらのうちの2種以上の混合物など)を、遠心力の印加により流体回路内の所望の位置(部位)に移動させることにより、該液体に対して適切な流体処理を行なうことができるものである。このために流体回路は、適切な位置に配置された種々の部位(室)を備えており、これらの部位は微細な流路を介して適切に接続されている。
【0023】
流体回路は、上記部位(室)として、たとえば、検査または分析などの対象となる検体と混合(または反応)させるための液体試薬を保持するための試薬保持部;流体回路内に導入された検体から特定成分を取り出すための分離部;検体(検体中の特定成分を含む。以下同じ。)を計量するための検体計量部;液体試薬を計量するための試薬計量部;検体と液体試薬とを混合するための混合部;得られた混合液についての検査または分析(たとえば、混合液中の特定成分の検出または定量)を行なうための検出部(光学測定用キュベット)などを含むことができる。検査または分析の方法は特に制限されず、たとえば、混合液を収容する検出部に光を照射して透過する光の強度(透過率)を検出する方法、検出部に保持された混合液についての吸収スペクトルを測定する方法等の光学測定を挙げることができる。本発明のマイクロチップは、上述の例示された部位のすべてを有していてもよく、いずれか1以上を有していなくてもよい。また、これら例示された部位以外の部位を有していてもよい。
【0024】
なお、「検体」とは、流体回路内に導入される、マイクロチップが行なう検査または分析等の対象となる物質であり、たとえば全血である。「液体試薬」とは、マイクロチップが行なう検査または分析の対象となる検体を処理する、または該検体と混合あるいは反応される試薬であり、通常、マイクロチップ使用前にあらかじめ流体回路の試薬保持部に内蔵されている。
【0025】
検体からの特定成分の抽出(不要成分の分離)、検体および/または液体試薬の計量、検体と液体試薬との混合、得られた混合液の検出部への導入などのような流体回路内における種々の流体処理は、マイクロチップに対して、適切な方向の遠心力を順次印加することにより行なうことができる。マイクロチップへの遠心力の印加は、マイクロチップを、遠心力を印加可能な装置(遠心装置)に載置して行なうことができる。遠心装置は、回転自在なローター(回転子)と、該ローター上に配置された回転自在なステージとを備えることができる。該ステージ上にマイクロチップを載置し、該ステージを回転させてローターに対するマイクロチップの角度を任意に設定することにより、マイクロチップに対して任意の方向の遠心力を印加することができる。
【0026】
ここで、本発明のマイクロチップは、図1に概念的にその一例を示すように、流体回路が上記液体を通す第1の流路1と、第1の流路1を通過した液体を通す第2の流路2とを含み、かつ第1の流路1は、第2の流路2側の端部である第1の端部1aが第2の流路2の内壁面2aと離間するように(すなわち、第1の端部1aが第2の流路2の内壁面2aに接触しないように)配置されることを特徴とする。第1の流路1および第2の流路2は、流体回路を構成する上述したような部位(室)を接続する流路であってもよいし、部位(室)それ自体あるいはその一部であってもよい。図1(a)は本発明に係るマイクロチップの流体回路が有する第1の流路1および第2の流路2を概念的に示す斜視図であり、図1(b)はその断面図である。
【0027】
上記特徴を有する本発明のマイクロチップによれば、第1の流路1における第1の端部1aからの表面張力による意図しない液体の移動を有効に防止することができる。この有利な効果について、第1の端部1が液体試薬を試薬保持部から排出するための排出口である場合を例に挙げてより具体的に説明する。図2は、本発明に係るマイクロチップが有する試薬保持部およびその近傍、ならびに試薬保持部内に収容された液体試薬の移動の様子を模式的に示す断面図である。図2に示されるマイクロチップは、第1の基板7、第2の基板6および第3の基板5の積層構造からなり、第2の基板6の表面に設けられた溝と第1の基板7とによって液体試薬Xを収容する試薬保持部4が形成されている〔図2(a)〕。
【0028】
そして図2に示されるマイクロチップでは、試薬保持部4から延びる第1の流路1の端部(第1の端部1aであり、液体試薬Xの排出口である)は、第1の流路1を通過した液体試薬Xがついで通過することとなる第2の流路2の内壁面2aのいずれとも離間している(接触していない)〔図2(a)〕。したがって、第1の端部1aまで到達した液体試薬Xは、第2の流路2側へ流出することなく保持され、意図しない第2の流路2への液体試薬Xの移動が防止される〔図2(b)〕。第2の流路2へ液体試薬Xを意図的に移動させるときには、マイクロチップに対して遠心力が印加される。
【0029】
これに対し、図3に示されるような従来のマイクロチップにおいては、第1の流路1の第1の端部1aが第2の流路2の内壁面2aと接しており、第1の流路の内壁面と第2の流路の内壁面とが連続しているため〔図3(a)〕、第1の端部1aまで到達した液体試薬Xは、表面張力によりそのまま第2の流路2へ流出してしまう〔図3(b)〕。なお、図3(c)は、図3(a)に示される部分Aの概略斜視図である。
【0030】
以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図4は、本発明のマイクロチップの一例を示す外形図であり、図4(a)は上面図、図4(b)は側面図、図4(c)は下面図である。図4に示されるマイクロチップ100は、透明基板である第1の基板101、黒色基板である第2の基板102および透明基板である第3の基板103をこの順で貼り合わせてなる〔図4(b)参照〕。これら基板の縦横の長さは、特に限定されないが、本実施形態においては、横(図4(a)におけるA)およそ62mm×縦(図4(a)におけるB)およそ30mmとしている。また、本実施形態において、第1の基板101、第2の基板102および第3の基板103の厚み(それぞれ図4(b)におけるC、DおよびE)は、それぞれ約1.6mm、約9mm、約1.6mmとしている。ただし、本発明に係るマイクロチップのサイズは上記のサイズに限定されるものではない。
【0031】
第1の基板101には、その厚み方向に貫通する試薬導入口110(本実施形態において合計11個)および検体(たとえば全血)をマイクロチップの流体回路内に導入するための検体導入口120が形成されている。本実施形態のマイクロチップ100は、通常、液体試薬を試薬導入口110から注入した後、試薬導入口110を封止用ラベル等により封止して、実使用に供される。
【0032】
第2の基板102には、その両面に形成された溝および厚み方向に貫通する複数の貫通穴が形成されており、これに第1の基板101および第3の基板103を貼り合わせることによって、マイクロチップ内部に2層の流体回路が形成されている。なお、以下では、第1の基板101と第2の基板102における第1の基板101側表面に設けられた溝とから構成される流体回路を「第1の流体回路」、第3の基板103と第2の基板102における第3の基板103側表面に設けられた溝とから構成される流体回路を「第2の流体回路」と称する。これら2つの流体回路は、第2の基板102に形成された厚み方向に貫通する貫通穴によって連結している。以下、第2の基板102の両面に形成された流体回路(溝)の構成について詳細に説明する。
【0033】
図5および図6に、それぞれ図4に示されるマイクロチップが有する第2の基板102の上面図および下面図を示す。図5は、第2の基板102の上側流体回路(第1の流体回路)を示しており、図6は、下側流体回路(第2の流体回路)を示している。なお、図6では、図5に示される上側流体回路との対応関係が明確に把握できるよう、左右反転させた状態で第2の基板102の下側流体回路を示している。本実施形態のマイクロチップ100は、1つの検体について6項目の検査または分析を行なうことができる多項目チップであり、その流体回路は、6項目の検査または分析を行なうことができるよう、6つのセクション(図5におけるセクション1〜6)に分けられている〔ただし、第1成分計量部設置領域(下側流体回路上部領域)においてこれらのセクションは互いに接続されている〕。
【0034】
上記各セクションには、第1の流体回路(上側流体回路)内に、液体試薬が内蔵された試薬保持部が1つまたは2つ設けられている(図5における試薬保持部301a、301b、302a、302b、303a、303b、304a、304b、305a、305bおよび306aの合計11個)。図4における検体導入口120から導入された検体は、計量され、ついで血球成分が分離除去された後、各セクションに分配されるとともに計量されると、別途計量された各セクション内の1種または2種の液体試薬と混合されて、それぞれ検出部311、312、313、314、315、316に導入される。各セクションの各検出部に導入された混合液は、たとえば、マイクロチップ表面と略垂直な方向から検出部に光を照射し、その透過光の透過率を測定する等の光学的測定に供され、該混合液中の特定成分の検出等がなされる。これら一連の流体処理は、マイクロチップに対して適切な方向の遠心力を印加することにより、液体試薬、検体、検体中の特定成分または該特定成分と液体試薬との混合液を、各セクションに設けられた2層の流体回路内の各部位へ適切な順序で移動させていくことにより行なわれる。マイクロチップへの遠心力の印加は、たとえば上記した遠心装置に載置して行なうことができる。
【0035】
各試薬保持部は、第2の基板102を貫通する流路(貫通穴)を介して試薬計量部と接続されている。たとえば、セクション1の試薬保持部301a(図5参照)と試薬計量部411a(図6参照)とは、流路21bによって接続されている。他の試薬保持部および試薬計量部についても同様である。
【0036】
上記各セクションには、その第2の流体回路(下側流体回路)内に、検体から分離された特定成分(たとえば血漿成分)を計量する成分計量部(図6における検体計量部401、402、403、404、405、406の合計6個)および液体試薬を計量する試薬計量部(図6における試薬計量部411a、411b、412a、412b、413a、413b、414a、414b、415a、415bおよび416aの合計11個)が設けられている。各検体計量部は、流路によって直列的に接続されている(図6参照)。
【0037】
マイクロチップ100は、マイクロチップ内に導入された検体を計量する検体計量部500(図5参照)、流量制限部700(図6参照)、および、計量された検体から不要成分を分離し、特定成分(液体試薬と混合される成分)を取り出すための分離部420を備えている(図6参照)。特定成分の抽出は、遠心分離によりなされる。検体計量部500と流量制限部700とは、流路(貫通穴)30によって接続されている。
【0038】
また、マイクロチップ100は、図5に示されるように、計量時において検体計量部および成分計量部から溢れ出た検体または特定成分を収容するための溢出液収容部330a,330b、ならびに、計量時において試薬計量部から溢れ出た液体試薬を収容するための溢出試薬収容部331a、331b、332a、332b、333a、333b、334a、334b、335a、335bおよび336aが設けられている。溢出液収容部330bは、流路16a(図6参照)、厚み方向に貫通する流路(貫通穴)26aおよび流路16b(図5参照)を介して成分計量部406に接続されている。また、各溢出試薬収容部は、対応する試薬計量部に、流路を介して接続されている。たとえば、セクション1において、試薬保持部301a内に収容される液体試薬を計量するための試薬計量部411aと、溢れ出た液体試薬を収容する溢出試薬収容部331a(図3参照)とは、流路11a(図6参照)、厚み方向に貫通する流路(貫通穴)21aおよび流路11b(図5参照)を介して接続されている。他の溢出試薬収容部についても同様である。
【0039】
このように、マイクロチップが、溢出液収容部および溢出試薬収容部(以下、まとめて溢出収容部と称することがある。)を備えることにより、当該溢出収容部における溢出物の有無を検出することによって、検体、特定成分または液体試薬が遠心操作により確実に計量部に移送され、かつ当該計量部が、被計量物で満たされたかどうかを容易に確認することができる。すなわち、溢出収容部に溢出物が存在することが検知されれば、計量部において検体、特定成分または液体試薬が正確に計量されたことが保証される。これにより、検査または分析の信頼性を向上させることができる。
【0040】
溢出収容部内に、溢出物が存在するか否かを検知する方法としては、たとえば、当該溢出収容部に対して、透明基板である第1の基板101側から光を照射し、その反射光の強度を測定する方法を好ましく用いることができる。用いる光は、特に制限されず、たとえば波長400〜1000nm程度の単色光(たとえばレーザー光)であってもよいし、白色光等の混合光であってもよい。反射光の強度の測定は、たとえば市販の反射センサなどを用いて行なうことができる。
【0041】
上記反射光強度の測定を行なうことにより溢出物の有無を検知する方法においては、基本的には、溢出収容部内に溢出物が導入される前に、溢出収容部に対して、第1の基板101側から光を照射することにより得られる反射光強度と、計量部に被計量物が導入された後に、溢出収容部に対して、第1の基板側から光を照射することにより得られる反射光強度との比を求め、当該強度比から溢出物の有無を検知する。すなわち、当該比(導入後の反射光強度/導入前の反射光強度)が1より小さい場合(導入後の反射光強度がより小さい場合)には、溢出収容部内に、溢出物が存在すると判断される。ただし、マイクロチップ間の製造振れが小さく、溢出物導入前の反射光強度が、マイクロチップ間でほぼ一定とみなすことができる場合には、溢出物導入前における反射光強度の測定は省略することが可能である。
【0042】
ここで、本実施形態のマイクロチップ100は、各試薬保持部およびそれらの近傍における構造が、本発明に係る上述の特徴を有している。試薬保持部306aを例に挙げて説明する。図7は、試薬保持部306aおよびその近傍の構造を示す上面図、断面図および下面図である。図7(a)が上面図であり、図7(c)が下面図であり(図6とは左右反転した状態で示している)、図7(b)は、図7(a)および(c)に示される点線における断面図である。この断面図においては、第2の基板102の上下に配置される第1の基板101および第3の基板103を併せて示している。
【0043】
図7に示されるように、試薬保持部306aは、その一方端(第2の端部)が試薬保持部306aに接続され、試薬保持部306a内の液体試薬を試薬計量部416aに誘導するための流路(貫通穴)22bを備えている。この流路22bは、上述した第1の流路に相当する。図7(b)を参照して、流路22bは、その他方端である第1の端部1a(液体試薬の排出口)が、第2の流体回路側の第2の流路2の内壁面2aのいずれとも離間するように(すなわち、第1の端部1aがいずれの内壁面2aとも接触しないように)配置されている。これにより、第1の端部1aまで到達した液体試薬が第2の流路2側へ流出することを防止できる。
【0044】
なお、試薬保持部およびその近傍の従来の構造を示すと図8のとおりである。従来のマイクロチップにおいては、試薬保持部306aから延び、第3の基板103まで到達する流路22b’と、流路22b’の第3の基板103側端部に設けた切り欠き溝からなる流路22c’〔図8(c)〕とで構成される第1の流路が第2の流路2の内壁面2aと接しているため、流路22b’を通過した液体は、表面張力により、流路22c’を通り、第2の流路2へ流出してしまう。
【0045】
図7を参照して、本実施形態のマイクロチップ100においては、第1の端部1aの内径をφ、第1の端部1aからこれに対向する内壁面2aまでの距離をrとすると、r>φ/2の関係式を満たすことが好ましく、r>3φ/2の関係式を満たすことがより好ましい。これにより、表面張力によって第1の端部1aより外側に膨らんだ液体試薬が、第1の端部1aに対向する内壁面2aに接触することがないので、第2の流路2側への液体試薬の流出をより確実に防止できる。
【0046】
各試薬保持部およびそれらの近傍の構造が図7に示されるような構造であるマイクロチップ100(外形および流体回路構造は図4〜図6のとおりである)、および、各試薬保持部およびそれらの近傍の構造が図8に示されるような構造であること以外はマイクロチップ100と同様のマイクロチップについて、次に示す液体試薬保持力試験を行なった。結果を図18に示す(グラフ1点あたりのn数は66である)。
【0047】
マイクロチップ100の試薬保持部のそれぞれ(計11個)に液体試薬を入れ、試薬導入口をシールした後、温度4℃で240時間保持した。保持後のマイクロチップについて各試薬保持部における排出口(第1の端部)からの液体試薬の流出の有無を確認した。同じ試験を合計6回繰り返し(n=66)、流出率(100×流出した試薬保持部の数/66)を算出した。当該液体試薬保持力を濡れ性(接触角)の異なる3種類の液体試薬について行なった。図8に示される構造を有するマイクロチップについても同様の試験を行なった。
【0048】
図18に示されるように、本発明に係るマイクロチップ100では、濡れ性の高い(接触角の低い)液体試薬を用いた場合であっても、流出率は0%であった。一方、図8に示される構造を有する従来のマイクロチップでは、最も濡れ性の高い液体試薬(接触角約41°)を用いた場合、流出率が約40%にも達した。
【0049】
次に、本実施形態のマイクロチップ100を用いた流体処理の一例を、図9〜17を参照して説明する。図9〜17は、流体処理の各工程における第2の基板102の上面(第1の基板側表面)の液体(検体、特定成分、液体試薬および特定成分と液体試薬との混合液)の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。各図における(a)が第2の基板上面(第1の流体回路)の液体の状態を示す図であり、(b)が第2の基板下面(第2の流体回路)の液体の状態を示す図である。なお、図9〜17の(b)においては、図6と同様に、図9〜17の(a)に示される上側流体回路との対応関係が明確に把握できるよう、左右反転させた状態で第2の基板102の下側流体回路を示している。また、以下の説明においては、セクション1の流体回路における流体処理についてのみ説明するが、他のセクションについても同様の処理がなされており、このことは、図面を参照することにより明確に理解することができる。さらに、以下では、検体が全血である場合を例に説明するが、検体の種類はこれに限定されるものではない。
【0050】
(1)全血計量、液体試薬計量工程
まず、本工程において、図5および6に示される状態にあるマイクロチップに対して、図9における下向き(以下、単に下向きという。図10〜17についても同様であり、また、他の方向についても同様である。)に遠心力を印加する。これにより、第1の基板101の検体導入口120(図4参照)から導入された全血600は、検体計量部500に導入され、計量される。検体計量部500からオーバーフローした全血600は、溢出液収容部330aに収容される〔図9(a)参照〕。また、この下向きの遠心力印加により、液体試薬保持部301a、301b内の液体試薬は、それぞれ流路(貫通穴)21b、21cを通って試薬計量部411a、411bに至り、計量される〔図9(b)参照〕。各液体試薬計量部から溢れた液体試薬は、それぞれ流路(貫通穴)21a、21dを通って、上面側流体回路内の溢出試薬収容部331a、331bに収容される〔図9(a)参照〕。この段階で、液体試薬に関し液量異常がない場合、溢出試薬収容部332bを除いてすべての溢出試薬収容部内に液体試薬が存在することとなる。
【0051】
(2)全血移動工程
次に、右向きの遠心力を印加する。これにより、検体計量部500内の計量された全血600は、貫通穴30を通って、下側流体回路の待機部701に移動する〔図10(b)参照〕。
【0052】
(3)血球分離工程
次に、下向きの遠心力を印加する。これにより、待機部701の計量された全血600の全量が、流量制限部700を通って、分離部420に導入される〔図11(b)参照〕。分離部420に導入された全血600は、分離部420にて遠心分離され、血漿成分(上層)と血球成分(下層)とに分離される。各液体試薬は再度、試薬計量部に収容される。
【0053】
(4)血漿成分計量工程
次に、右向きの遠心力を印加する。これにより、分離部420において分離された血漿成分は、成分計量部401に導入され(同時に成分計量部402、403、404および405,406にも導入される)、計量される〔図12(b)参照〕。計量部から溢れた血漿成分は、流路(貫通穴)26aを通って上側流体回路内に移動する〔図12(a)参照〕。
【0054】
(5)第1混合工程
次に、下向きの遠心力を印加する。これにより、計量された液体試薬(試薬保持部301aに保持されていた液体試薬)と、成分計量部401にて計量された血漿成分とが、試薬計量部411aにおいて混合される〔第1混合工程第1ステップ、図13(b)参照〕。この際、下側流体回路の混合部441aには、液体試薬が残存している。
【0055】
次に、右向きの遠心力を印加することにより、混合液は、混合部441aに残存していた液体試薬とさらに混合される〔第1混合工程第2ステップ、図14(b)参照〕。これら第1ステップおよび第2ステップを必要に応じて複数回行ない、確実に混合を行なう。最終的に、図14に示される状態と同様の状態を得る。
【0056】
(6)第2混合工程
次に、上向きの遠心力を印加する。これにより、混合部441a内の混合液は、流路(貫通穴)21eを通って上側流体回路の混合部441bに至り、計量されたもう一方の液体試薬(試薬保持部301b内に保持されていた液体試薬)もまた、流路21eを通って混合部441bに至り、これらは混合される〔第2混合工程第1ステップ、図15(a)参照〕。
【0057】
次に、左向きの遠心力を印加することにより、図16(a)に示されるように、混合液が移動し、混合が促進される〔第2混合工程第2ステップ、図16(a)参照〕。また、この左向きの遠心力により、溢出試薬収容部332bに液体試薬が収容されることとなる〔図16(a)参照〕。これら第1ステップおよび第2ステップを必要に応じて複数回行ない、確実に混合を行なう。最終的に、図16に示される状態と同様の状態を得る。
【0058】
(7)検出部導入工程
最後に、下向きの遠心力を印加する。これにより、混合液は検出部311に導入される〔他の混合液についても同様、図17(a)および(b)参照〕。また、溢出試薬収容部331a、331bおよび溢出液収容部330bには、液体試薬または血漿成分が収容された状態となる。他の溢出試薬収容部についても同様である。検出部に充填された混合液は、光学測定に供され、検査・分析が行なわれる。たとえば、マイクロチップ表面に対して略垂直な方向から光を照射し、その透過光を測定することにより、混合液中の特定成分の検出等がなされる。また、この際、溢出液収容部330bおよび各溢出試薬収容部に光を照射し、その反射光の強度を測定することにより、血漿成分または液体試薬の有無を確認する。血漿成分または液体試薬の有無の確認は必ずしもこの段階で行なわれる必要はないが、血漿成分または液体試薬が、すべての溢出液収容部および溢出試薬収容部に収容され得る状態となるのはこの段階であるため、操作の簡略化のためには、検出部導入工程後に血漿成分または液体試薬の有無の確認を行なうことが好ましい。
【0059】
<第2の実施形態>
図19は、本発明のマイクロチップの他の一例を示す上面図である。図19に示されるマイクロチップ200は、表面に溝を備える第1の基板1000上に、第2の基板(図19において図示せず)を積層、貼合してなる、1層の流体回路を有するマイクロチップである。第1の基板1000は、図示しない第2の基板上に、その溝形成側表面が第2の基板に対向するように貼り合わされている。図19は、第1の基板1000の、溝形成側表面とは反対側の表面を示したものであるが、説明の便宜上、溝パターンを実線で示している。マイクロチップ200において第2の基板は、第1の基板1000と同じか、または同様の輪郭形状を有している。第1の基板1000および第2の基板はそれぞれ、たとえば熱可塑性樹脂からなる透明基板、黒色基板である。
【0060】
マイクロチップ200は、被験者から採取された全血を含むキャピラリー等のサンプル管を組み込むためのサンプル管載置部1001;サンプル管より導出された全血を、血球成分と血漿成分とに分離するための分離部1002;分離された血球成分を計量するための血球計量部1003;液体試薬を保持するための3つの試薬保持部1004、1005および1006;試薬保持部1005および1006にそれぞれ隣接して設けられた、一時的に液体試薬を収容するための試薬収容部1007および1008;液体試薬を計量するための3つの試薬計量部1009、1010および1011;血球成分と液体試薬とを混合するための第1の混合部1012;血球成分と液体試薬との混合液を計量するための混合液計量部1013;血球成分と液体試薬との混合液と、他の液体試薬との混合を行なうための第2の混合部1014;ならびに、最終的に得られた混合液についての検査・分析が行なわれる検出部1015から主に構成される。
【0061】
3つの試薬保持部1004、1005および1006は、液体試薬を当該試薬保持部内に注入するための試薬導入口1016、1017および1018をそれぞれ有している。試薬導入口1016、1017および1018は、第1の基板1000を厚み方向に貫通する貫通口である。本実施形態のマイクロチップ200は、通常、液体試薬を試薬導入口1016、1017および1018から注入した後、これらの試薬導入口を封止用ラベル等により封止して、実使用に供される。なお、以下では、試薬導入口を介して試薬保持部1004、1005および1006内に注入、保持される液体試薬を、それぞれ液体試薬R0、R1、R2と称することとする。
【0062】
以上のように、本実施形態のマイクロチップ200が有する流体回路は、全血から分離された血球成分に対して、液体試薬R0、R1およびR2をこの順で混合させ、得られた混合液について光学測定等の検査・分析を行なうのに適した構成となっている。
【0063】
ここで、本実施形態のマイクロチップ200は、各試薬保持部およびそれらの近傍における構造が、本発明に係る上述の特徴を有している。試薬保持部1006を例に挙げて説明する。図20は、試薬保持部1006およびその近傍の構造を模式的に示す断面図である。この断面図においては、第1の基板1000上に積層される第2の基板1100および試薬導入口などの開口を封止するための封止用ラベル1200を併せて示している。
【0064】
図20に示されるように、試薬保持部1006は、その一方端(第2の端部)が試薬保持部1006に接続され、試薬保持部1006内の液体試薬を試薬収容部1008に誘導するための、第1の基板1000を厚み方向に貫通する流路1006aを備えている(同様に、試薬保持部1004,1005もそれぞれ、第1の基板1000を厚み方向に貫通する流路1004a,1005aを備えている。図19参照)。この流路1006aは、上述した第1の流路に相当する。流路1006aは、その他方端である第1の端部1a(液体試薬の排出口)が、第2の流路2(試薬収容部1008を含む)の内壁面2aのいずれとも離間するように(すなわち、第1の端部1aがいずれの内壁面2aとも接触しないように)配置されている。これにより、第1の端部1aまで到達した液体試薬が第2の流路2側へ流出することを防止できる。
【0065】
図19に示されるマイクロチップ200を用いた流体処理の一例を挙げれば、概略以下のとおりである。まず、全血サンプルを採取したサンプル管をサンプル管載置部1001に挿入する。次に、マイクロチップに対して、図19における左向き方向(以下、単に左向きという。他の方向についても以下同様。)に遠心力を印加し、サンプル管内の全血サンプルを取り出した後、下向きの遠心力により、全血サンプルを分離部1002に導入して遠心分離を行ない、血漿成分と血球成分とに分離する。次に、左向きの遠心力を印加し、上層の血漿成分を除去する。この際、除去された血漿成分は、領域aに収容される。ついで、下向きの遠心力を印加することにより、分離部1002内の血球成分液面を整えるとともに、除去した血漿成分を領域bに移動させる。次に、右向きの遠心力を印加し、試薬保持部1004内の液体試薬R0を試薬計量部1009に導入し、計量を行なう。この遠心力により、試薬保持部1005内の液体試薬R1および試薬保持部1006内の液体試薬R2は、それぞれ試薬収容部1007、1008に移動する。また、この遠心力により、分離部1002内の血球成分は、血球計量部1003に導入され計量される。
【0066】
次に、下向きの遠心力を印加して、計量された血球成分と液体試薬R0とを第1の混合部1012にて混合し混合液を得る。この遠心力により、試薬収容部1008内の液体試薬R2は、試薬計量部1011にて計量される。ついで、右向き、下向き、左向き、下向きの遠心力を順次印加して、上記混合液の混合を十分に行なう。なお、上記左向きの遠心力の印加により、試薬収容部1007内の液体試薬R1は、試薬計量部1010にて計量される。また、最後の下向きの遠心力により、計量された液体試薬R1は、第2の混合部1014に移動する。
【0067】
次に、左向きの遠心力を印加した後、左上向きついで左向きの遠心力を印加して、第1の混合部1012内の混合液の上澄み部分を混合液計量部1013に導入し、計量を行なう。次に、下向きの遠心力を印加することにより、計量された混合液と液体試薬R1とを第2の混合部1014にて混合する。ついで、左向き、下向きの遠心力を順次印加して、当該混合液の混合を十分に行なう。この下向きの遠心力を印加した状態において、計量された液体試薬R2は、領域cに位置している。次に、右向きの遠心力を印加して、該混合液と液体試薬R2とを検出部1015にて混合し、さらに下向きの遠心力を印加して混合を十分に行なう。最後に、右向きの遠心力を印加して、混合液を検出部1015に収容させ、該検出部1015に光を照射し、その透過光の強度を測定するなどの光学測定を行なう。
【0068】
<第3の実施形態>
図21〜22は、本発明のマイクロチップの他の例を模式的に示す断面図であり、本発明に係る第1の流路1および第2の流路2が設けられている部分を拡大して示す図である。図21〜22のマイクロチップは、上記第1の実施形態と同様、第1の基板7、第2の基板6および第3の基板5の積層構造からなり、2層の流体回路を有している。図22に示されるように、第1の端部1aが第2の流路2の内壁面2aのいずれとも離間している(接触していない)限り、流体回路を構成する溝は、第2の基板6だけでなく、これを挟持する第1の基板7や第3の基板5にも形成できる。上記第2の実施形態のような1層の流体回路を有するマイクロチップにおいても、他方の基板に溝を形成することができる。
【0069】
<第4の実施形態>
本発明は、試薬保持部およびその近傍における構造が、本発明に係る上述の特徴を有している場合に限定されない。たとえば図23に示される全血から分離した血漿成分を計量する成分計量部のような、各種計量部およびその近傍に本発明に係る上述の特徴を付与してもよい。図23〜25は、本発明のマイクロチップの他の一例を模式的に示す上面図および断面図であり、血漿成分を計量する成分計量部およびその近傍を拡大して示したものである。図23〜25の(a)が上面図であり、(b)が断面図である。なお、ここでいう上面図は、流体回路を構成する溝が形成されている第2の基板6の上面図である。
【0070】
図23に示されるマイクロチップは、第1の基板7、第2の基板6および第3の基板5の積層構造からなり、2層の流体回路を有するマイクロチップであり、上側の流体回路に、分離部(図示せず)において分離された血漿成分2000を計量するための成分計量部2001を有している。成分計量部2001の底面には開口2002が形成されており、この開口2002に、第2の基板6を厚み方向に貫通する第1の流路1が接続されている。この第1の流路1は、計量時にオーバーフローした血漿成分を下側の流体回路内にある廃液槽(図示せず)に誘導するための流路である。そしてこの第1の流路1は、その他方端である第1の端部1a(オーバーフローした血漿成分の第2の流路への排出口)が、下側の流体回路の第2の流路2の内壁面のいずれとも離間するように(すなわち、第1の端部1aがいずれの内壁面とも接触しないように)配置されている。これにより、計量された血漿成分が、表面張力により第2の流路2側へ流出することを防止できるため、計量精度を向上させることができる。
【0071】
図23に示されるマイクロチップを用いた血漿成分の計量操作の一例を、図23〜25を参照して説明する。まず、図23に示される矢印の方向の遠心力を印加することにより、分離部(図示せず)において分離された血漿成分2000を成分計量部2001に導入し(血漿導入工程、図23)、成分計量部2001を血漿成分2000で満たすことにより血漿成分の計量を行なう(血漿計量工程、図24)。血漿計量工程において、成分計量部2001の容量を超える過剰の血漿成分2000は、第1の流路1、ついで第2の流路2を通って、下側の流体回路の廃液槽(図示せず)に収容される。第1の流路1および第2の流路2は本発明に係る構造を有しているため、血漿計量工程の後、遠心力の印加を停止した際に、計量された血漿成分が、表面張力により第2の流路2側へ流出することはない。最後に、図25に示される矢印の方向の遠心力を印加することにより、計量された血漿成分を成分計量部2001から排出する(血漿排出工程、図25)。排出された血漿成分は、液体試薬との混合などに供される。
【符号の説明】
【0072】
1 第1の流路、1a 第1の流路における第1の端部、2 第2の流路、2a 第2の流路の内壁面、4 試薬保持部、5 第3の基板、6 第2の基板、7 第1の基板、11a,11b,16a,16b,21a,21b,21c,21d,21e,22b,22b’,26a,30 流路、100 マイクロチップ、101 第1の基板、102 第2の基板、103 第3の基板、110 試薬導入口、120 検体導入口、200 マイクロチップ、301a,301b,302a,302b,303a,303b,304a,304b,305a,305b,306a 試薬保持部、311,312,313,314,315,316 検出部、330a,330b 溢出液収容部、331a,331b,332a,332b,333a,333b,334a,334b,335a,335b,336a 溢出試薬収容部、401,402,403,404,405,406 成分計量部、411a,411b,412a,412b,413a,413b,414a,414b,415a,415b,416a 試薬計量部、420 分離部、441a,441b 混合部、500 検体計量部、600 全血、700 流量制限部、701 待機部、1000 第1の基板、1001 サンプル管載置部、1002 分離部、1003 血球計量部、1004,1005,1006 試薬保持部、1007,1008 試薬収容部、1009,1010,1011 試薬計量部、1012 第1の混合部、1013 混合液計量部、1014 第2の混合部、1015 検出部、1016,1017,1018 試薬導入口、1100 第2の基板、1200 封止用ラベル、2000 血漿成分、2001 成分計量部、2002 開口。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に流体回路を備えており、遠心力の印加により流体回路内に存在する検体および試薬等の液体を流体回路内の所望の位置に移動させることにより、該検体の検査または分析等を行なうことができるマイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療や健康、食品、創薬などの分野で、DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)や酵素、抗原、抗体、タンパク質、ウィルスおよび細胞などの生体物質、ならびに化学物質を検知、検出あるいは定量する重要性が増してきており、それらを簡便に測定できる様々なバイオチップおよびマイクロ化学チップ(以下、これらを総称してマイクロチップと称する。)が提案されている。
【0003】
マイクロチップは、実験室で行なっている一連の分析または実験操作を、数cm角で厚さ数mm〜1cm程度のチップ内で行なえることから、検体および試薬が微量で済み、コストが安く、反応速度が速く、ハイスループットな検査ができ、検体を採取した現場で直ちに検査結果を得ることができるなど多くの利点を有している。このようなマイクロチップは、たとえば血液検査等の生化学検査用として好適に用いられている。
【0004】
マイクロチップとしては、流体回路(あるいはマイクロ流体回路)と呼ばれる、該回路内に存在する検体、試薬等の液体に対して特定の処理を行なうための複数種類の部位(室)とこれらの部位を適切に接続する微細な流路とから構成される流路網をその内部に備えたものが従来公知である。このような流体回路を内部に備えるマイクロチップを用いた検体の検査または分析などにおいては、その流体回路を利用して、流体回路内に導入された検体やこれと混合される試薬の計量(すなわち、計量を行なうための部位である計量部への移動)、検体と液体試薬との混合(すなわち、これらを混合するための部位である混合部への移動)、ある部位から他の部位への移動などの種々の処理が行なわれる。なお、マイクロチップ内でなされる、各種液体(検体、検体中の特定成分、液体試薬、またはこれらのうちの2種以上の混合物など)に対してなされる処理を以下では「流体処理」ともいう。これら種々の流体処理は、マイクロチップに対して、適切な方向の遠心力を印加することにより行なうことができる。
【0005】
上記のような、遠心力を利用して流体回路内の液体を流体回路内の所望の位置(部位)に移動させて流体処理を行なうマイクロチップにおいては、液体の濡れ性が比較的高い場合、表面張力によって液体が流体回路の流路内壁を伝わって、意図しない液体移動が生じるという問題があった。たとえば、遠心力の印加がないにもかかわらず、上記液体試薬を収容する部位である試薬保持部から、液体試薬が流路内壁を伝わって流出することがあった。
【0006】
特許文献1には、液体の排出を防止することができるバルブを設けたマイクロチップが開示されている。しかし、このバルブは比較的複雑な構造を有しており、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−285792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、遠心力の印加により流体回路内に存在する液体を流体回路内の所望の位置に移動させるマイクロチップにおいて、表面張力による意図しない液体の移動を防止することができるマイクロチップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、内部に形成された空間からなる流体回路を備えており、流体回路内に存在する液体を流体回路内の所望の位置に移動させるマイクロチップであって、流体回路は、液体を通す第1の流路と、該第1の流路を通過した液体を通す第2の流路とを含み、第1の流路は、第2の流路側の端部である第1の端部が第2の流路の内壁面と離間するように配置されるマイクロチップを提供する。
【0010】
本発明の1つの好ましい実施形態において、流体回路は液体試薬を収容する試薬保持部を含み、試薬保持部は、上記第1の端部である、前記液体試薬を前記試薬保持部から排出するための排出口を有する。
【0011】
第1の流路は、第1の端部が第2の流路内に位置するように配置されることが好ましい。また、第1の流路の断面積は、第2の流路の断面積より小さいことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遠心力の印加により流体回路内に存在する液体を流体回路内の所望の位置に移動させるマイクロチップにおいて、表面張力による意図しない液体の移動を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るマイクロチップの流体回路が有する第1の流路および第2の流路を概念的に示す斜視図および断面図である。
【図2】本発明に係るマイクロチップが有する試薬保持部およびその近傍、ならびに試薬保持部内に収容された液体試薬の移動の様子を模式的に示す断面図である。
【図3】従来のマイクロチップが有する試薬保持部およびその近傍、ならびに試薬保持部内に収容された液体試薬の移動の様子を模式的に示す断面図および斜視図である。
【図4】本発明のマイクロチップの一例を示す外形図である。
【図5】図4に示されるマイクロチップを構成する第2の基板を示す上面図である。
【図6】図4に示されるマイクロチップを構成する第2の基板を示す下面図である。
【図7】図4に示されるマイクロチップが有する試薬保持部およびその近傍の構造を示す上面図、断面図および下面図である。
【図8】従来のマイクロチップが有する試薬保持部およびその近傍の構造を示す上面図、断面図および下面図である。
【図9】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の全血計量、試薬計量工程における第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図10】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の全血移動工程における第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図11】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の血球分離工程における第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図12】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の血漿成分計量工程における第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図13】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の第1混合工程第1ステップにおける第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図14】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の第1混合工程第2ステップにおける第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図15】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の第2混合工程第1ステップにおける第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図16】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の第2混合工程第2ステップにおける第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図17】図4に示されるマイクロチップを用いた流体処理の検出部導入工程における第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図18】液体試薬保持力試験の結果を示す図である。
【図19】本発明のマイクロチップの他の一例を示す上面図である。
【図20】図19に示されるマイクロチップが有する試薬保持部およびその近傍の構造を模式的に示す断面図である。
【図21】本発明のマイクロチップのさらに他の例を模式的に示す断面図である。
【図22】本発明のマイクロチップのさらに他の例を模式的に示す断面図である。
【図23】本発明のマイクロチップのさらに他の一例を模式的に示す断面図および斜視図であり、該マイクロチップを用いた流体処理の血漿導入工程における血漿成分の様子を示す図である。
【図24】図23に示されるマイクロチップを用いた流体処理の血漿計量工程における血漿成分の様子を示す図である。
【図25】図23に示されるマイクロチップを用いた流体処理の血漿排出工程における血漿成分の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のマイクロチップは、各種化学合成、検査または分析等を、それが内部に有する流体回路を用いて行なうことができるチップであり、たとえば、第1の基板と、該第1の基板上に積層され、基板表面に溝を備える第2の基板との積層構造であることができる。この場合、マイクロチップの流体回路は、上記溝および第1の基板表面とによって形成される内部空間である。
【0015】
また、本発明のマイクロチップは、第1の基板と、該第1の基板上に積層され、基板の両表面に溝を備える第2の基板と、該第2の基板上に積層される第3の基板とを含むものであってもよい。この場合、流体回路は、第2の基板における第1の基板側表面および第1の基板における第2の基板側表面に設けられた溝から構成される空間からなる第1の流体回路と、第3の基板における第1の基板側表面および第1の基板における第3の基板側表面に設けられた溝から構成される空間からなる第2の流体回路との2層構造を有する。「2層」とは、マイクロチップの厚み方向に関して異なる2つの位置に流体回路が設けられていることを意味する。かかる2層の流体回路は、第1の基板を厚み方向に貫通する貫通穴によって接続することができる。
【0016】
マイクロチップの大きさは、特に限定されず、たとえば縦横数cm〜10cm程度、厚さ数mm〜数cm程度とすることができる。
【0017】
基板同士を貼り合わせる方法としては、特に限定されるものではなく、たとえば貼り合わせる基板のうち、少なくとも一方の基板の貼り合わせ面を融解させて溶着させる方法(溶着法)、接着剤を用いて接着させる方法などを挙げることができる。溶着法としては、基板を加熱して溶着させる方法;レーザー等の光を照射して、光吸収時に発生する熱により溶着する方法(レーザー溶着);超音波を用いて溶着する方法などを挙げることができる。なかでもレーザー溶着法が好ましく用いられる。
【0018】
本発明のマイクロチップを構成する上記各基板の材質は、特に制限されず、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアリレート樹脂(PAR)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、スチレン−ブタジエン樹脂(スチレン−ブタジエン共重合体)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)、ポリブタジエン樹脂(PBD)、生分解性ポリマー(BP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)などの有機材料(熱可塑性樹脂);シリコン、ガラス、石英などの無機材料等を用いることができる。なかでも、流体回路の形成のし易さ等を考慮すると、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
マイクロチップが第1の基板と、基板表面に溝を備える第2の基板とから構成される場合、第2の基板は、光学測定の際、検出光が照射される部位を含んでいることから、透明基板とすることが好ましい。第1の基板は、透明基板であっても不透明基板であってもよいが、レーザー溶着を行なう場合には、光吸収率を増大できることから、不透明基板とすることが好ましく、基板を熱可塑性樹脂から構成し、該樹脂中にカーボンブラック等の黒色顔料を添加することにより黒色基板とすることがより好ましい。
【0020】
マイクロチップが第1の基板と、基板の両表面に溝を備える第2の基板と、第3の基板とから構成される場合、レーザー溶着の効率性の観点から、第2の基板を不透明基板とすることが好ましく、黒色基板とすることがより好ましい。一方、第1および第3の基板は、検出部を構築するために、透明基板とすることが好ましい。第1および第3の基板を透明基板とすると、第2の基板に設けられた貫通穴と、透明な第1および第3の基板とから検出部(光学測定用キュベット)を形成でき、マイクロチップ表面と略垂直な方向から該検出部に光を照射して、透過する光の強度(透過率)を検出するなどの光学測定を行なうことが可能となる。
【0021】
第2の基板表面に、流体回路を構成する溝(パターン溝)を形成する方法としては、特に制限されず、転写構造を有する金型を用いた射出成形法、インプリント法などを挙げることができる。無機材料を用いて基板を形成する場合には、エッチング法などを用いることができる。溝の形状(パターン)は、所望される適切な流体回路構造となるように決定される。
【0022】
本発明のマイクロチップは、流体回路内に存在する液体(検体、検体中の特定成分、液体試薬、および、これらのうちの2種以上の混合物など)を、遠心力の印加により流体回路内の所望の位置(部位)に移動させることにより、該液体に対して適切な流体処理を行なうことができるものである。このために流体回路は、適切な位置に配置された種々の部位(室)を備えており、これらの部位は微細な流路を介して適切に接続されている。
【0023】
流体回路は、上記部位(室)として、たとえば、検査または分析などの対象となる検体と混合(または反応)させるための液体試薬を保持するための試薬保持部;流体回路内に導入された検体から特定成分を取り出すための分離部;検体(検体中の特定成分を含む。以下同じ。)を計量するための検体計量部;液体試薬を計量するための試薬計量部;検体と液体試薬とを混合するための混合部;得られた混合液についての検査または分析(たとえば、混合液中の特定成分の検出または定量)を行なうための検出部(光学測定用キュベット)などを含むことができる。検査または分析の方法は特に制限されず、たとえば、混合液を収容する検出部に光を照射して透過する光の強度(透過率)を検出する方法、検出部に保持された混合液についての吸収スペクトルを測定する方法等の光学測定を挙げることができる。本発明のマイクロチップは、上述の例示された部位のすべてを有していてもよく、いずれか1以上を有していなくてもよい。また、これら例示された部位以外の部位を有していてもよい。
【0024】
なお、「検体」とは、流体回路内に導入される、マイクロチップが行なう検査または分析等の対象となる物質であり、たとえば全血である。「液体試薬」とは、マイクロチップが行なう検査または分析の対象となる検体を処理する、または該検体と混合あるいは反応される試薬であり、通常、マイクロチップ使用前にあらかじめ流体回路の試薬保持部に内蔵されている。
【0025】
検体からの特定成分の抽出(不要成分の分離)、検体および/または液体試薬の計量、検体と液体試薬との混合、得られた混合液の検出部への導入などのような流体回路内における種々の流体処理は、マイクロチップに対して、適切な方向の遠心力を順次印加することにより行なうことができる。マイクロチップへの遠心力の印加は、マイクロチップを、遠心力を印加可能な装置(遠心装置)に載置して行なうことができる。遠心装置は、回転自在なローター(回転子)と、該ローター上に配置された回転自在なステージとを備えることができる。該ステージ上にマイクロチップを載置し、該ステージを回転させてローターに対するマイクロチップの角度を任意に設定することにより、マイクロチップに対して任意の方向の遠心力を印加することができる。
【0026】
ここで、本発明のマイクロチップは、図1に概念的にその一例を示すように、流体回路が上記液体を通す第1の流路1と、第1の流路1を通過した液体を通す第2の流路2とを含み、かつ第1の流路1は、第2の流路2側の端部である第1の端部1aが第2の流路2の内壁面2aと離間するように(すなわち、第1の端部1aが第2の流路2の内壁面2aに接触しないように)配置されることを特徴とする。第1の流路1および第2の流路2は、流体回路を構成する上述したような部位(室)を接続する流路であってもよいし、部位(室)それ自体あるいはその一部であってもよい。図1(a)は本発明に係るマイクロチップの流体回路が有する第1の流路1および第2の流路2を概念的に示す斜視図であり、図1(b)はその断面図である。
【0027】
上記特徴を有する本発明のマイクロチップによれば、第1の流路1における第1の端部1aからの表面張力による意図しない液体の移動を有効に防止することができる。この有利な効果について、第1の端部1が液体試薬を試薬保持部から排出するための排出口である場合を例に挙げてより具体的に説明する。図2は、本発明に係るマイクロチップが有する試薬保持部およびその近傍、ならびに試薬保持部内に収容された液体試薬の移動の様子を模式的に示す断面図である。図2に示されるマイクロチップは、第1の基板7、第2の基板6および第3の基板5の積層構造からなり、第2の基板6の表面に設けられた溝と第1の基板7とによって液体試薬Xを収容する試薬保持部4が形成されている〔図2(a)〕。
【0028】
そして図2に示されるマイクロチップでは、試薬保持部4から延びる第1の流路1の端部(第1の端部1aであり、液体試薬Xの排出口である)は、第1の流路1を通過した液体試薬Xがついで通過することとなる第2の流路2の内壁面2aのいずれとも離間している(接触していない)〔図2(a)〕。したがって、第1の端部1aまで到達した液体試薬Xは、第2の流路2側へ流出することなく保持され、意図しない第2の流路2への液体試薬Xの移動が防止される〔図2(b)〕。第2の流路2へ液体試薬Xを意図的に移動させるときには、マイクロチップに対して遠心力が印加される。
【0029】
これに対し、図3に示されるような従来のマイクロチップにおいては、第1の流路1の第1の端部1aが第2の流路2の内壁面2aと接しており、第1の流路の内壁面と第2の流路の内壁面とが連続しているため〔図3(a)〕、第1の端部1aまで到達した液体試薬Xは、表面張力によりそのまま第2の流路2へ流出してしまう〔図3(b)〕。なお、図3(c)は、図3(a)に示される部分Aの概略斜視図である。
【0030】
以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図4は、本発明のマイクロチップの一例を示す外形図であり、図4(a)は上面図、図4(b)は側面図、図4(c)は下面図である。図4に示されるマイクロチップ100は、透明基板である第1の基板101、黒色基板である第2の基板102および透明基板である第3の基板103をこの順で貼り合わせてなる〔図4(b)参照〕。これら基板の縦横の長さは、特に限定されないが、本実施形態においては、横(図4(a)におけるA)およそ62mm×縦(図4(a)におけるB)およそ30mmとしている。また、本実施形態において、第1の基板101、第2の基板102および第3の基板103の厚み(それぞれ図4(b)におけるC、DおよびE)は、それぞれ約1.6mm、約9mm、約1.6mmとしている。ただし、本発明に係るマイクロチップのサイズは上記のサイズに限定されるものではない。
【0031】
第1の基板101には、その厚み方向に貫通する試薬導入口110(本実施形態において合計11個)および検体(たとえば全血)をマイクロチップの流体回路内に導入するための検体導入口120が形成されている。本実施形態のマイクロチップ100は、通常、液体試薬を試薬導入口110から注入した後、試薬導入口110を封止用ラベル等により封止して、実使用に供される。
【0032】
第2の基板102には、その両面に形成された溝および厚み方向に貫通する複数の貫通穴が形成されており、これに第1の基板101および第3の基板103を貼り合わせることによって、マイクロチップ内部に2層の流体回路が形成されている。なお、以下では、第1の基板101と第2の基板102における第1の基板101側表面に設けられた溝とから構成される流体回路を「第1の流体回路」、第3の基板103と第2の基板102における第3の基板103側表面に設けられた溝とから構成される流体回路を「第2の流体回路」と称する。これら2つの流体回路は、第2の基板102に形成された厚み方向に貫通する貫通穴によって連結している。以下、第2の基板102の両面に形成された流体回路(溝)の構成について詳細に説明する。
【0033】
図5および図6に、それぞれ図4に示されるマイクロチップが有する第2の基板102の上面図および下面図を示す。図5は、第2の基板102の上側流体回路(第1の流体回路)を示しており、図6は、下側流体回路(第2の流体回路)を示している。なお、図6では、図5に示される上側流体回路との対応関係が明確に把握できるよう、左右反転させた状態で第2の基板102の下側流体回路を示している。本実施形態のマイクロチップ100は、1つの検体について6項目の検査または分析を行なうことができる多項目チップであり、その流体回路は、6項目の検査または分析を行なうことができるよう、6つのセクション(図5におけるセクション1〜6)に分けられている〔ただし、第1成分計量部設置領域(下側流体回路上部領域)においてこれらのセクションは互いに接続されている〕。
【0034】
上記各セクションには、第1の流体回路(上側流体回路)内に、液体試薬が内蔵された試薬保持部が1つまたは2つ設けられている(図5における試薬保持部301a、301b、302a、302b、303a、303b、304a、304b、305a、305bおよび306aの合計11個)。図4における検体導入口120から導入された検体は、計量され、ついで血球成分が分離除去された後、各セクションに分配されるとともに計量されると、別途計量された各セクション内の1種または2種の液体試薬と混合されて、それぞれ検出部311、312、313、314、315、316に導入される。各セクションの各検出部に導入された混合液は、たとえば、マイクロチップ表面と略垂直な方向から検出部に光を照射し、その透過光の透過率を測定する等の光学的測定に供され、該混合液中の特定成分の検出等がなされる。これら一連の流体処理は、マイクロチップに対して適切な方向の遠心力を印加することにより、液体試薬、検体、検体中の特定成分または該特定成分と液体試薬との混合液を、各セクションに設けられた2層の流体回路内の各部位へ適切な順序で移動させていくことにより行なわれる。マイクロチップへの遠心力の印加は、たとえば上記した遠心装置に載置して行なうことができる。
【0035】
各試薬保持部は、第2の基板102を貫通する流路(貫通穴)を介して試薬計量部と接続されている。たとえば、セクション1の試薬保持部301a(図5参照)と試薬計量部411a(図6参照)とは、流路21bによって接続されている。他の試薬保持部および試薬計量部についても同様である。
【0036】
上記各セクションには、その第2の流体回路(下側流体回路)内に、検体から分離された特定成分(たとえば血漿成分)を計量する成分計量部(図6における検体計量部401、402、403、404、405、406の合計6個)および液体試薬を計量する試薬計量部(図6における試薬計量部411a、411b、412a、412b、413a、413b、414a、414b、415a、415bおよび416aの合計11個)が設けられている。各検体計量部は、流路によって直列的に接続されている(図6参照)。
【0037】
マイクロチップ100は、マイクロチップ内に導入された検体を計量する検体計量部500(図5参照)、流量制限部700(図6参照)、および、計量された検体から不要成分を分離し、特定成分(液体試薬と混合される成分)を取り出すための分離部420を備えている(図6参照)。特定成分の抽出は、遠心分離によりなされる。検体計量部500と流量制限部700とは、流路(貫通穴)30によって接続されている。
【0038】
また、マイクロチップ100は、図5に示されるように、計量時において検体計量部および成分計量部から溢れ出た検体または特定成分を収容するための溢出液収容部330a,330b、ならびに、計量時において試薬計量部から溢れ出た液体試薬を収容するための溢出試薬収容部331a、331b、332a、332b、333a、333b、334a、334b、335a、335bおよび336aが設けられている。溢出液収容部330bは、流路16a(図6参照)、厚み方向に貫通する流路(貫通穴)26aおよび流路16b(図5参照)を介して成分計量部406に接続されている。また、各溢出試薬収容部は、対応する試薬計量部に、流路を介して接続されている。たとえば、セクション1において、試薬保持部301a内に収容される液体試薬を計量するための試薬計量部411aと、溢れ出た液体試薬を収容する溢出試薬収容部331a(図3参照)とは、流路11a(図6参照)、厚み方向に貫通する流路(貫通穴)21aおよび流路11b(図5参照)を介して接続されている。他の溢出試薬収容部についても同様である。
【0039】
このように、マイクロチップが、溢出液収容部および溢出試薬収容部(以下、まとめて溢出収容部と称することがある。)を備えることにより、当該溢出収容部における溢出物の有無を検出することによって、検体、特定成分または液体試薬が遠心操作により確実に計量部に移送され、かつ当該計量部が、被計量物で満たされたかどうかを容易に確認することができる。すなわち、溢出収容部に溢出物が存在することが検知されれば、計量部において検体、特定成分または液体試薬が正確に計量されたことが保証される。これにより、検査または分析の信頼性を向上させることができる。
【0040】
溢出収容部内に、溢出物が存在するか否かを検知する方法としては、たとえば、当該溢出収容部に対して、透明基板である第1の基板101側から光を照射し、その反射光の強度を測定する方法を好ましく用いることができる。用いる光は、特に制限されず、たとえば波長400〜1000nm程度の単色光(たとえばレーザー光)であってもよいし、白色光等の混合光であってもよい。反射光の強度の測定は、たとえば市販の反射センサなどを用いて行なうことができる。
【0041】
上記反射光強度の測定を行なうことにより溢出物の有無を検知する方法においては、基本的には、溢出収容部内に溢出物が導入される前に、溢出収容部に対して、第1の基板101側から光を照射することにより得られる反射光強度と、計量部に被計量物が導入された後に、溢出収容部に対して、第1の基板側から光を照射することにより得られる反射光強度との比を求め、当該強度比から溢出物の有無を検知する。すなわち、当該比(導入後の反射光強度/導入前の反射光強度)が1より小さい場合(導入後の反射光強度がより小さい場合)には、溢出収容部内に、溢出物が存在すると判断される。ただし、マイクロチップ間の製造振れが小さく、溢出物導入前の反射光強度が、マイクロチップ間でほぼ一定とみなすことができる場合には、溢出物導入前における反射光強度の測定は省略することが可能である。
【0042】
ここで、本実施形態のマイクロチップ100は、各試薬保持部およびそれらの近傍における構造が、本発明に係る上述の特徴を有している。試薬保持部306aを例に挙げて説明する。図7は、試薬保持部306aおよびその近傍の構造を示す上面図、断面図および下面図である。図7(a)が上面図であり、図7(c)が下面図であり(図6とは左右反転した状態で示している)、図7(b)は、図7(a)および(c)に示される点線における断面図である。この断面図においては、第2の基板102の上下に配置される第1の基板101および第3の基板103を併せて示している。
【0043】
図7に示されるように、試薬保持部306aは、その一方端(第2の端部)が試薬保持部306aに接続され、試薬保持部306a内の液体試薬を試薬計量部416aに誘導するための流路(貫通穴)22bを備えている。この流路22bは、上述した第1の流路に相当する。図7(b)を参照して、流路22bは、その他方端である第1の端部1a(液体試薬の排出口)が、第2の流体回路側の第2の流路2の内壁面2aのいずれとも離間するように(すなわち、第1の端部1aがいずれの内壁面2aとも接触しないように)配置されている。これにより、第1の端部1aまで到達した液体試薬が第2の流路2側へ流出することを防止できる。
【0044】
なお、試薬保持部およびその近傍の従来の構造を示すと図8のとおりである。従来のマイクロチップにおいては、試薬保持部306aから延び、第3の基板103まで到達する流路22b’と、流路22b’の第3の基板103側端部に設けた切り欠き溝からなる流路22c’〔図8(c)〕とで構成される第1の流路が第2の流路2の内壁面2aと接しているため、流路22b’を通過した液体は、表面張力により、流路22c’を通り、第2の流路2へ流出してしまう。
【0045】
図7を参照して、本実施形態のマイクロチップ100においては、第1の端部1aの内径をφ、第1の端部1aからこれに対向する内壁面2aまでの距離をrとすると、r>φ/2の関係式を満たすことが好ましく、r>3φ/2の関係式を満たすことがより好ましい。これにより、表面張力によって第1の端部1aより外側に膨らんだ液体試薬が、第1の端部1aに対向する内壁面2aに接触することがないので、第2の流路2側への液体試薬の流出をより確実に防止できる。
【0046】
各試薬保持部およびそれらの近傍の構造が図7に示されるような構造であるマイクロチップ100(外形および流体回路構造は図4〜図6のとおりである)、および、各試薬保持部およびそれらの近傍の構造が図8に示されるような構造であること以外はマイクロチップ100と同様のマイクロチップについて、次に示す液体試薬保持力試験を行なった。結果を図18に示す(グラフ1点あたりのn数は66である)。
【0047】
マイクロチップ100の試薬保持部のそれぞれ(計11個)に液体試薬を入れ、試薬導入口をシールした後、温度4℃で240時間保持した。保持後のマイクロチップについて各試薬保持部における排出口(第1の端部)からの液体試薬の流出の有無を確認した。同じ試験を合計6回繰り返し(n=66)、流出率(100×流出した試薬保持部の数/66)を算出した。当該液体試薬保持力を濡れ性(接触角)の異なる3種類の液体試薬について行なった。図8に示される構造を有するマイクロチップについても同様の試験を行なった。
【0048】
図18に示されるように、本発明に係るマイクロチップ100では、濡れ性の高い(接触角の低い)液体試薬を用いた場合であっても、流出率は0%であった。一方、図8に示される構造を有する従来のマイクロチップでは、最も濡れ性の高い液体試薬(接触角約41°)を用いた場合、流出率が約40%にも達した。
【0049】
次に、本実施形態のマイクロチップ100を用いた流体処理の一例を、図9〜17を参照して説明する。図9〜17は、流体処理の各工程における第2の基板102の上面(第1の基板側表面)の液体(検体、特定成分、液体試薬および特定成分と液体試薬との混合液)の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。各図における(a)が第2の基板上面(第1の流体回路)の液体の状態を示す図であり、(b)が第2の基板下面(第2の流体回路)の液体の状態を示す図である。なお、図9〜17の(b)においては、図6と同様に、図9〜17の(a)に示される上側流体回路との対応関係が明確に把握できるよう、左右反転させた状態で第2の基板102の下側流体回路を示している。また、以下の説明においては、セクション1の流体回路における流体処理についてのみ説明するが、他のセクションについても同様の処理がなされており、このことは、図面を参照することにより明確に理解することができる。さらに、以下では、検体が全血である場合を例に説明するが、検体の種類はこれに限定されるものではない。
【0050】
(1)全血計量、液体試薬計量工程
まず、本工程において、図5および6に示される状態にあるマイクロチップに対して、図9における下向き(以下、単に下向きという。図10〜17についても同様であり、また、他の方向についても同様である。)に遠心力を印加する。これにより、第1の基板101の検体導入口120(図4参照)から導入された全血600は、検体計量部500に導入され、計量される。検体計量部500からオーバーフローした全血600は、溢出液収容部330aに収容される〔図9(a)参照〕。また、この下向きの遠心力印加により、液体試薬保持部301a、301b内の液体試薬は、それぞれ流路(貫通穴)21b、21cを通って試薬計量部411a、411bに至り、計量される〔図9(b)参照〕。各液体試薬計量部から溢れた液体試薬は、それぞれ流路(貫通穴)21a、21dを通って、上面側流体回路内の溢出試薬収容部331a、331bに収容される〔図9(a)参照〕。この段階で、液体試薬に関し液量異常がない場合、溢出試薬収容部332bを除いてすべての溢出試薬収容部内に液体試薬が存在することとなる。
【0051】
(2)全血移動工程
次に、右向きの遠心力を印加する。これにより、検体計量部500内の計量された全血600は、貫通穴30を通って、下側流体回路の待機部701に移動する〔図10(b)参照〕。
【0052】
(3)血球分離工程
次に、下向きの遠心力を印加する。これにより、待機部701の計量された全血600の全量が、流量制限部700を通って、分離部420に導入される〔図11(b)参照〕。分離部420に導入された全血600は、分離部420にて遠心分離され、血漿成分(上層)と血球成分(下層)とに分離される。各液体試薬は再度、試薬計量部に収容される。
【0053】
(4)血漿成分計量工程
次に、右向きの遠心力を印加する。これにより、分離部420において分離された血漿成分は、成分計量部401に導入され(同時に成分計量部402、403、404および405,406にも導入される)、計量される〔図12(b)参照〕。計量部から溢れた血漿成分は、流路(貫通穴)26aを通って上側流体回路内に移動する〔図12(a)参照〕。
【0054】
(5)第1混合工程
次に、下向きの遠心力を印加する。これにより、計量された液体試薬(試薬保持部301aに保持されていた液体試薬)と、成分計量部401にて計量された血漿成分とが、試薬計量部411aにおいて混合される〔第1混合工程第1ステップ、図13(b)参照〕。この際、下側流体回路の混合部441aには、液体試薬が残存している。
【0055】
次に、右向きの遠心力を印加することにより、混合液は、混合部441aに残存していた液体試薬とさらに混合される〔第1混合工程第2ステップ、図14(b)参照〕。これら第1ステップおよび第2ステップを必要に応じて複数回行ない、確実に混合を行なう。最終的に、図14に示される状態と同様の状態を得る。
【0056】
(6)第2混合工程
次に、上向きの遠心力を印加する。これにより、混合部441a内の混合液は、流路(貫通穴)21eを通って上側流体回路の混合部441bに至り、計量されたもう一方の液体試薬(試薬保持部301b内に保持されていた液体試薬)もまた、流路21eを通って混合部441bに至り、これらは混合される〔第2混合工程第1ステップ、図15(a)参照〕。
【0057】
次に、左向きの遠心力を印加することにより、図16(a)に示されるように、混合液が移動し、混合が促進される〔第2混合工程第2ステップ、図16(a)参照〕。また、この左向きの遠心力により、溢出試薬収容部332bに液体試薬が収容されることとなる〔図16(a)参照〕。これら第1ステップおよび第2ステップを必要に応じて複数回行ない、確実に混合を行なう。最終的に、図16に示される状態と同様の状態を得る。
【0058】
(7)検出部導入工程
最後に、下向きの遠心力を印加する。これにより、混合液は検出部311に導入される〔他の混合液についても同様、図17(a)および(b)参照〕。また、溢出試薬収容部331a、331bおよび溢出液収容部330bには、液体試薬または血漿成分が収容された状態となる。他の溢出試薬収容部についても同様である。検出部に充填された混合液は、光学測定に供され、検査・分析が行なわれる。たとえば、マイクロチップ表面に対して略垂直な方向から光を照射し、その透過光を測定することにより、混合液中の特定成分の検出等がなされる。また、この際、溢出液収容部330bおよび各溢出試薬収容部に光を照射し、その反射光の強度を測定することにより、血漿成分または液体試薬の有無を確認する。血漿成分または液体試薬の有無の確認は必ずしもこの段階で行なわれる必要はないが、血漿成分または液体試薬が、すべての溢出液収容部および溢出試薬収容部に収容され得る状態となるのはこの段階であるため、操作の簡略化のためには、検出部導入工程後に血漿成分または液体試薬の有無の確認を行なうことが好ましい。
【0059】
<第2の実施形態>
図19は、本発明のマイクロチップの他の一例を示す上面図である。図19に示されるマイクロチップ200は、表面に溝を備える第1の基板1000上に、第2の基板(図19において図示せず)を積層、貼合してなる、1層の流体回路を有するマイクロチップである。第1の基板1000は、図示しない第2の基板上に、その溝形成側表面が第2の基板に対向するように貼り合わされている。図19は、第1の基板1000の、溝形成側表面とは反対側の表面を示したものであるが、説明の便宜上、溝パターンを実線で示している。マイクロチップ200において第2の基板は、第1の基板1000と同じか、または同様の輪郭形状を有している。第1の基板1000および第2の基板はそれぞれ、たとえば熱可塑性樹脂からなる透明基板、黒色基板である。
【0060】
マイクロチップ200は、被験者から採取された全血を含むキャピラリー等のサンプル管を組み込むためのサンプル管載置部1001;サンプル管より導出された全血を、血球成分と血漿成分とに分離するための分離部1002;分離された血球成分を計量するための血球計量部1003;液体試薬を保持するための3つの試薬保持部1004、1005および1006;試薬保持部1005および1006にそれぞれ隣接して設けられた、一時的に液体試薬を収容するための試薬収容部1007および1008;液体試薬を計量するための3つの試薬計量部1009、1010および1011;血球成分と液体試薬とを混合するための第1の混合部1012;血球成分と液体試薬との混合液を計量するための混合液計量部1013;血球成分と液体試薬との混合液と、他の液体試薬との混合を行なうための第2の混合部1014;ならびに、最終的に得られた混合液についての検査・分析が行なわれる検出部1015から主に構成される。
【0061】
3つの試薬保持部1004、1005および1006は、液体試薬を当該試薬保持部内に注入するための試薬導入口1016、1017および1018をそれぞれ有している。試薬導入口1016、1017および1018は、第1の基板1000を厚み方向に貫通する貫通口である。本実施形態のマイクロチップ200は、通常、液体試薬を試薬導入口1016、1017および1018から注入した後、これらの試薬導入口を封止用ラベル等により封止して、実使用に供される。なお、以下では、試薬導入口を介して試薬保持部1004、1005および1006内に注入、保持される液体試薬を、それぞれ液体試薬R0、R1、R2と称することとする。
【0062】
以上のように、本実施形態のマイクロチップ200が有する流体回路は、全血から分離された血球成分に対して、液体試薬R0、R1およびR2をこの順で混合させ、得られた混合液について光学測定等の検査・分析を行なうのに適した構成となっている。
【0063】
ここで、本実施形態のマイクロチップ200は、各試薬保持部およびそれらの近傍における構造が、本発明に係る上述の特徴を有している。試薬保持部1006を例に挙げて説明する。図20は、試薬保持部1006およびその近傍の構造を模式的に示す断面図である。この断面図においては、第1の基板1000上に積層される第2の基板1100および試薬導入口などの開口を封止するための封止用ラベル1200を併せて示している。
【0064】
図20に示されるように、試薬保持部1006は、その一方端(第2の端部)が試薬保持部1006に接続され、試薬保持部1006内の液体試薬を試薬収容部1008に誘導するための、第1の基板1000を厚み方向に貫通する流路1006aを備えている(同様に、試薬保持部1004,1005もそれぞれ、第1の基板1000を厚み方向に貫通する流路1004a,1005aを備えている。図19参照)。この流路1006aは、上述した第1の流路に相当する。流路1006aは、その他方端である第1の端部1a(液体試薬の排出口)が、第2の流路2(試薬収容部1008を含む)の内壁面2aのいずれとも離間するように(すなわち、第1の端部1aがいずれの内壁面2aとも接触しないように)配置されている。これにより、第1の端部1aまで到達した液体試薬が第2の流路2側へ流出することを防止できる。
【0065】
図19に示されるマイクロチップ200を用いた流体処理の一例を挙げれば、概略以下のとおりである。まず、全血サンプルを採取したサンプル管をサンプル管載置部1001に挿入する。次に、マイクロチップに対して、図19における左向き方向(以下、単に左向きという。他の方向についても以下同様。)に遠心力を印加し、サンプル管内の全血サンプルを取り出した後、下向きの遠心力により、全血サンプルを分離部1002に導入して遠心分離を行ない、血漿成分と血球成分とに分離する。次に、左向きの遠心力を印加し、上層の血漿成分を除去する。この際、除去された血漿成分は、領域aに収容される。ついで、下向きの遠心力を印加することにより、分離部1002内の血球成分液面を整えるとともに、除去した血漿成分を領域bに移動させる。次に、右向きの遠心力を印加し、試薬保持部1004内の液体試薬R0を試薬計量部1009に導入し、計量を行なう。この遠心力により、試薬保持部1005内の液体試薬R1および試薬保持部1006内の液体試薬R2は、それぞれ試薬収容部1007、1008に移動する。また、この遠心力により、分離部1002内の血球成分は、血球計量部1003に導入され計量される。
【0066】
次に、下向きの遠心力を印加して、計量された血球成分と液体試薬R0とを第1の混合部1012にて混合し混合液を得る。この遠心力により、試薬収容部1008内の液体試薬R2は、試薬計量部1011にて計量される。ついで、右向き、下向き、左向き、下向きの遠心力を順次印加して、上記混合液の混合を十分に行なう。なお、上記左向きの遠心力の印加により、試薬収容部1007内の液体試薬R1は、試薬計量部1010にて計量される。また、最後の下向きの遠心力により、計量された液体試薬R1は、第2の混合部1014に移動する。
【0067】
次に、左向きの遠心力を印加した後、左上向きついで左向きの遠心力を印加して、第1の混合部1012内の混合液の上澄み部分を混合液計量部1013に導入し、計量を行なう。次に、下向きの遠心力を印加することにより、計量された混合液と液体試薬R1とを第2の混合部1014にて混合する。ついで、左向き、下向きの遠心力を順次印加して、当該混合液の混合を十分に行なう。この下向きの遠心力を印加した状態において、計量された液体試薬R2は、領域cに位置している。次に、右向きの遠心力を印加して、該混合液と液体試薬R2とを検出部1015にて混合し、さらに下向きの遠心力を印加して混合を十分に行なう。最後に、右向きの遠心力を印加して、混合液を検出部1015に収容させ、該検出部1015に光を照射し、その透過光の強度を測定するなどの光学測定を行なう。
【0068】
<第3の実施形態>
図21〜22は、本発明のマイクロチップの他の例を模式的に示す断面図であり、本発明に係る第1の流路1および第2の流路2が設けられている部分を拡大して示す図である。図21〜22のマイクロチップは、上記第1の実施形態と同様、第1の基板7、第2の基板6および第3の基板5の積層構造からなり、2層の流体回路を有している。図22に示されるように、第1の端部1aが第2の流路2の内壁面2aのいずれとも離間している(接触していない)限り、流体回路を構成する溝は、第2の基板6だけでなく、これを挟持する第1の基板7や第3の基板5にも形成できる。上記第2の実施形態のような1層の流体回路を有するマイクロチップにおいても、他方の基板に溝を形成することができる。
【0069】
<第4の実施形態>
本発明は、試薬保持部およびその近傍における構造が、本発明に係る上述の特徴を有している場合に限定されない。たとえば図23に示される全血から分離した血漿成分を計量する成分計量部のような、各種計量部およびその近傍に本発明に係る上述の特徴を付与してもよい。図23〜25は、本発明のマイクロチップの他の一例を模式的に示す上面図および断面図であり、血漿成分を計量する成分計量部およびその近傍を拡大して示したものである。図23〜25の(a)が上面図であり、(b)が断面図である。なお、ここでいう上面図は、流体回路を構成する溝が形成されている第2の基板6の上面図である。
【0070】
図23に示されるマイクロチップは、第1の基板7、第2の基板6および第3の基板5の積層構造からなり、2層の流体回路を有するマイクロチップであり、上側の流体回路に、分離部(図示せず)において分離された血漿成分2000を計量するための成分計量部2001を有している。成分計量部2001の底面には開口2002が形成されており、この開口2002に、第2の基板6を厚み方向に貫通する第1の流路1が接続されている。この第1の流路1は、計量時にオーバーフローした血漿成分を下側の流体回路内にある廃液槽(図示せず)に誘導するための流路である。そしてこの第1の流路1は、その他方端である第1の端部1a(オーバーフローした血漿成分の第2の流路への排出口)が、下側の流体回路の第2の流路2の内壁面のいずれとも離間するように(すなわち、第1の端部1aがいずれの内壁面とも接触しないように)配置されている。これにより、計量された血漿成分が、表面張力により第2の流路2側へ流出することを防止できるため、計量精度を向上させることができる。
【0071】
図23に示されるマイクロチップを用いた血漿成分の計量操作の一例を、図23〜25を参照して説明する。まず、図23に示される矢印の方向の遠心力を印加することにより、分離部(図示せず)において分離された血漿成分2000を成分計量部2001に導入し(血漿導入工程、図23)、成分計量部2001を血漿成分2000で満たすことにより血漿成分の計量を行なう(血漿計量工程、図24)。血漿計量工程において、成分計量部2001の容量を超える過剰の血漿成分2000は、第1の流路1、ついで第2の流路2を通って、下側の流体回路の廃液槽(図示せず)に収容される。第1の流路1および第2の流路2は本発明に係る構造を有しているため、血漿計量工程の後、遠心力の印加を停止した際に、計量された血漿成分が、表面張力により第2の流路2側へ流出することはない。最後に、図25に示される矢印の方向の遠心力を印加することにより、計量された血漿成分を成分計量部2001から排出する(血漿排出工程、図25)。排出された血漿成分は、液体試薬との混合などに供される。
【符号の説明】
【0072】
1 第1の流路、1a 第1の流路における第1の端部、2 第2の流路、2a 第2の流路の内壁面、4 試薬保持部、5 第3の基板、6 第2の基板、7 第1の基板、11a,11b,16a,16b,21a,21b,21c,21d,21e,22b,22b’,26a,30 流路、100 マイクロチップ、101 第1の基板、102 第2の基板、103 第3の基板、110 試薬導入口、120 検体導入口、200 マイクロチップ、301a,301b,302a,302b,303a,303b,304a,304b,305a,305b,306a 試薬保持部、311,312,313,314,315,316 検出部、330a,330b 溢出液収容部、331a,331b,332a,332b,333a,333b,334a,334b,335a,335b,336a 溢出試薬収容部、401,402,403,404,405,406 成分計量部、411a,411b,412a,412b,413a,413b,414a,414b,415a,415b,416a 試薬計量部、420 分離部、441a,441b 混合部、500 検体計量部、600 全血、700 流量制限部、701 待機部、1000 第1の基板、1001 サンプル管載置部、1002 分離部、1003 血球計量部、1004,1005,1006 試薬保持部、1007,1008 試薬収容部、1009,1010,1011 試薬計量部、1012 第1の混合部、1013 混合液計量部、1014 第2の混合部、1015 検出部、1016,1017,1018 試薬導入口、1100 第2の基板、1200 封止用ラベル、2000 血漿成分、2001 成分計量部、2002 開口。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に形成された空間からなる流体回路を備えており、前記流体回路内に存在する液体を前記流体回路内の所望の位置に移動させるマイクロチップであって、
前記流体回路は、前記液体を通す第1の流路と、前記第1の流路を通過した前記液体を通す第2の流路とを含み、
前記第1の流路は、前記第2の流路側の端部である第1の端部が前記第2の流路の内壁面と離間するように配置されるマイクロチップ。
【請求項2】
前記流体回路は、液体試薬を収容する試薬保持部を含み、
前記試薬保持部は、前記第1の端部である、前記液体試薬を前記試薬保持部から排出するための排出口を有する請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記第1の流路は、前記第1の端部が前記第2の流路内に位置するように配置される請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項4】
前記第1の流路の断面積は、前記第2の流路の断面積より小さい請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項1】
内部に形成された空間からなる流体回路を備えており、前記流体回路内に存在する液体を前記流体回路内の所望の位置に移動させるマイクロチップであって、
前記流体回路は、前記液体を通す第1の流路と、前記第1の流路を通過した前記液体を通す第2の流路とを含み、
前記第1の流路は、前記第2の流路側の端部である第1の端部が前記第2の流路の内壁面と離間するように配置されるマイクロチップ。
【請求項2】
前記流体回路は、液体試薬を収容する試薬保持部を含み、
前記試薬保持部は、前記第1の端部である、前記液体試薬を前記試薬保持部から排出するための排出口を有する請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記第1の流路は、前記第1の端部が前記第2の流路内に位置するように配置される請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項4】
前記第1の流路の断面積は、前記第2の流路の断面積より小さい請求項1に記載のマイクロチップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−229985(P2012−229985A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98227(P2011−98227)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
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