説明

マイクロチャネル装置における調整された均一なコーティング

【課題】均一な又は調整されたコーティングを有する新規なマイクロチャネル装置、及び、これらのコーティングを製造する新規な方法を提供する。
【解決手段】マイクロチャネル装置内の内部マイクロチャネルは、均一にコーティングされる。注目すべきことには、これらの均一なコーティングは、装置が組み立てられた後もしくは製造された後に内部チャネルに適用した材料から形成される。コーティングは、マイクロチャネルのコーナーにおいて、及び/又は、複数マイクロチャネルのアレイの多数のマイクロチャネル全体にわたって、マイクロチャネルの長さに沿って均一に作られ得る。マイクロチャネル上へのウォッシュコートの塗布を調整するための技術も記述される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
35U.S.C.sect.119(e)に従い、本出願は、2004年3月23日付け出願の米国仮出願第60/556,014号に対する優先権を主張する。
発明の分野
本発明は、内部マイクロチャネルを有するマイクロチャネル装置に関し、該内部マイクロチャネルは、該内部マイクロチャネルを形成するように該装置が組み立てられた後もしくは製造された後に塗布されるコーティングを有する。
【背景技術】
【0002】
昨今、マイクロチャネルデバイスに対して多大な学術的及び商業的な関心が向けられている。この関心は、マイクロテクノロジーから得られる利点によって生じており、利点には、寸法の縮小、生産性の向上、任意の所望の容量(すなわち「増加する」チャネル)のシステムを所定の大きさに作る能力、熱伝達の向上、及び物質(質量)移動の向上が含まれる。マイクロ反応器(マイクロチャネル装置のサブセット)を含む研究のいくつかの概説、「Technology And Applications of Microengineered Reactors」会報、Trans.IChemE,第80巻,パートA,3〜30頁(2002年1月)が、Gavrilidis等によって提供されている。
【0003】
マイクロチャネル装置は、セラミック、プラスチック及び金属を含む種々の材料から作製され得る。多くの用途において、マイクロチャネル装置におけるプロセスチャネルは、該構造材料を覆う一又は複数のコーティングを必要とする。該コーティングは、吸収、吸着、望ましくない相互作用又は堆積に対する金属パッシベーションのための金属壁に対する物理的障壁、膜、及び触媒等の目的を果たし得る。あるケースでは、マイクロチャネルは、スラリー又はゾルがコーティングされる。例えば、酸化物コーティングがセラミックハニカムに塗布される。あるケースでは、材料のシートがコーティングされ、次いで、組み立てられ結合されて多層マイクロチャネルデバイスを形成する。
【0004】
かねてから認識されている一つの問題は、マイクロチャネル壁上の不均一なコーティングである。浸漬被覆等の慣用方法では、毛細管動作が、チャネルコーナーに余剰なコーティングをもたらす。米国特許第5,827,577号(1996年11月出願)においてSpencerが指摘しているように、平坦でない触媒コーティングは、触媒性能の低下及び熱衝撃障害をもたらす。Spencerは、シート上へと触媒組成物又は吸着性組成物に押す(押印する)ことにより、この問題に対処した。上記シートは、その後、ハニカムもしくはモノリス汚染処理デバイスへと巻かれ得る。
【0005】
Zapf等は、「Detailed Characterization of Various Porous Alumina-Based Catalyst Coatings Within Microchannels and Their Testing for Methanol Steam Reforming」会報、Trans.IChemE,721〜729頁(2003年8月)において、文献報告がこれまで、半円形チャネル及び矩形チャネルの両方において不均一なコーティング分布を示したことを述べている。開放した表面の板に食刻されたマイクロチャネル上へのアルミナウォッシュコートに関する彼ら自身の研究において、彼らは、500及び750μm幅のマイクロチャネルに対して、中央で20μmでかつチャネル壁付近又はコーナー付近で70μmであったアルミナウォッシュコーティングの厚さを報告している。ウォッシュコート厚の最小差は、深さが70μmの浅いチャネルに対して観察された。すなわち、チャネル中央で10〜15μm、またチャネル壁で15〜20μmであった。
【0006】
「1-Pentene Epoxidation in Titanium Silicate-1 Microchannel Reactor:Experiments and Modeling」Trans.IChemE,第1〜7頁(2003年8月)においてWan等は、選択的にゼオライト層をマイクロチャネル内に堆積させるための技術を報告している。この技術は、シリコン基材をエッチングし、その後、エッチングした面の機能分化が続き、更に、調製面上のシーディング及びゼオライト成長を行うことを必要とする。
【0007】
Bednarova等は、「Preferential oxidation of CO in a microreactor with a single channel」Am. Chem. Soc.,Div.Fuel Chem.2003年,48(2)において、ゾル−ゲル技術によって形成されたアルミナ/Pt層を有する開放面(open-face)反応器を示した。著者は、コーティングを「かなり均一」と記述したが、断面の写真は、実質的に不均一なコーティングを示すように思われた。
【0008】
本発明の一側面はアルミナイドコーティングを含むので、米国特許第3,944,505号においてLaCroixによって記述された初期の研究が参照され得る。この特許は、エキスパンデッドメタルシート(インコネル等)のスタックから成る触媒デバイスを記述する。該金属シートは、ニッケル又はコバルトアルミナイドの層と、該アルミナイド上のアルファアルミナの層と、該アルミナイド上の触媒表面とを有する。LaCroixは、どのようにしてアルミナイド層が該層上に形成されたかを記述しておらず、また、アルミナイド層を記述するいかなるデータも提供していない。
【0009】
アルミナイドコーティングを形成する方法はよく知られており、特定のジェットエンジン部品をコーティングするために商業的に利用されている。ハロゲン化アルミニウムからアルミナイドコーティングを作る方法は、例えば、米国特許第3,486,927号及び第6,332,926号に記述されている。
【0010】
アルミナイドコーティングをガスタービン翼の内部チャネルに塗布することが試みられてきた。米国特許第6,283,714号においてRigney等は、スラリー/パック法を用いてタービンブレードの内部冷却通路をアルミナイドコーティングすることを報告している。Rigney等はまた、アルミナイドコーティングが約0.002インチ(50μm)厚で、約4〜8時間後に堆積され得るように、ハロンゲン化アルミニウムガスが冷却通路を高温で通過可能であることを述べている。米国特許第6,332,926号においてPfaendter等はまた、内部翼面上にアルミニウムを堆積させるためにアルミニウムコーティング前駆物質を流すことを提案している。
【0011】
Howard等は、米国特許第5,928,725号、タイトル「Method and Apparatus for Gas Phase Coating Complex Internal Surfaces of Hollow Articles」において、内部面をコーティングするための気相コーティングの先行技術方法を見直し、該先行技術方法は、現代の翼の多数のガス通路をコーティングするには効果的ではなく、不均一な内部コーティングをもたらしたと述べている。この特許に記述された方法において、コーティングガス流量は、少なくとも二つのチャネル内へ異なる速度まで制御される。Howard等は、アルミニウム粉末、酸化アルミニウム及びフッ化アルミニウムを含むコーティング混合物が、コーティングガスを搬送するために加熱され得ることを述べている。この改良方法は、1.5ミル±1.0ミル厚のアルミナイドコーティングをもたらしたと報告された。
【0012】
Folta等は、米国特許第6,562,404号において、シリコンマイクロ流デバイスに窒化ケイ素(SiN)の正角層をコーティングするための技術を記述している。この技術は、775〜875℃でのジクロロシアン及びアンモニアの真空化学蒸着(CVD)を用い、クラックの無い1〜2μm厚のSiNフィルムを作り出した。Folta等は、この技術は、「40:1又はそれ以上の縦横比を有する深い凹状のくぼみを均一にコーティングする能力」を有すると主張した。彼らは、両端部が開放する長さ8.2mmで高さ0.1mmのチャネルを有するシリコン構造上の技術を実証した。Folta等は、デバイスの外面上のSiNコーティングは138nm厚で、チャネル内で115nmの均一厚さで、テーパー付き口の表面は、中間厚さを有することを報告している。Foltaの技術は、ある比較的単純なシリコンデバイスに対して良好な表面保護を提供すると思われる。しかしながら、該技術は、次のものを含むいくつかの制限を有する。すなわち、これは、SiNコーティングシリコンに特有であり、例えば、均一な酸化物コーティングを提供することはできないと考えられる。また、該技術は、例えば鋭い曲がりを有するチャネル等の複雑な構造に均一なコーティングを適用することはできないと思われる。マイクロチャネルのコーナーにおけるコーティングの均一性は全く示していない。更に、該技術は、外側面上により厚いコーティングをもたらすために示されている。これは、あるマイクロチャネル装置の入口/出口において流れの問題及び閉塞さえをも引き起こし得る。
【0013】
慣用のCVD技術は、マイクロチャネル内に均一なコーティングを作り出す可能性はない。その理由は、より厚いコーティングが、チャネル開口部付近や鋭い曲がり及びオリフィス等の特徴(機能)部分において並びにチャネルコーナーにおいて見込まれるからである。Foltaによる上記コーティングは、CVD法に対しては例外的に均一であると思われるが、その場合でさえ、デバイス外面上及びマイクロチャネルへと至る口により厚いコーティングが存在した。
【0014】
無電解めっきコーティングはずっと知られており、Mallory等が編集した「Electroless Plating Fundamentals & Applications」米国メッキ学会(1990年)、及びChepuri等の「Chemical and electrochemical depositions of platinum group metals and their applications」Coord.Chem.Rev., 第249巻、第613〜631頁(2005年)によって再検討されている。Yekimov等は、米国特許第6,361,824号において、非常に薄いガラスシートを通じてのマイクロチャネル上への銀の無電解めっきコーティングを報告している。該マイクロチャネルは、長さが50〜1000ミクロン(μm)であり得た。(複数)マイクロチャネルは、コーティング中、水平に整列されなければならないと報告されている。Yekimov等はまた、目詰まりを避けるため、ガラス板の上面及び下面は遮られないことが必要であると報告している。マイクロチャネルをこれらの極端に短い長さに限定してもなお、金属銀のコーティングは、30〜50nm厚になると報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
後述するように、本発明は、均一な又は調整されたコーティングを有する新規なマイクロチャネル装置、及び、これらのコーティングを製造する新規な方法を提供する。本発明はまた、コーティングされたマイクロチャネルを有するマイクロチャネルデバイスを通じて単位操作を行う方法を含む。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の側面において、本発明は、マイクロチャネル壁を含む内部マイクロチャネルと、マイクロチャネル壁の少なくとも1cmの連続した長さに沿う連続した組立後のコーティングとを備えたマイクロチャネル装置を提供する。前記連続した組立後のコーティングは、少なくとも1cmの連続した長さで、かつ少なくとも5μmの平均厚さ(コーティングが該壁から離れる方に成長する方向においてマイクロチャネル長さに対し垂直に測定される)を有し、該連続した長さのコーティングの前記平均厚さの+/−20%内にある。本明細書中に述べるあらゆる側面において、上記少なくとも1cmのコーティング長さは、ある好ましい実施形態において、少なくとも5cm、少なくとも20cm又は少なくとも50cmであり得る。同様に、本明細書中に述べるあらゆる側面において、上記少なくとも90%は、ある好ましい実施形態において、少なくとも95%、又は100%であり得る。また、本明細書中に述べるあらゆる側面において、上記+/−20%内は、ある好ましい実施形態において、10%内又は5%内であり得る。各側面の種々の実施形態において、コーティングは、少なくとも5μm厚、又は少なくとも15μm厚、又は少なくとも25μm厚であり得る。また、パーセント分散に代えて、コーティング厚変動は、絶対値±5μm以下又は±3μm以下で定義され得る。
【0017】
ある好ましい実施形態において、アルミニウム化合物のCVD及びアルミナイド層の形成による均一なコーティングを有するマイクロチャネル装置が提供される。
【0018】
別の側面において、本発明は、マイクロチャネル壁上にウォッシュコートを塗布する方法であって、毛細管機能を含む少なくとも一つのマイクロチャネル壁によって定義されるマイクロチャネルを含むマイクロチャネル装置を準備する工程と、ウォッシュコーティング液体を該マイクロチャネルに加えて毛細管機能に接触させる工程と、該マイクロチャネルからウォッシュコーティング液体を排出させる工程とを含む該方法を提供する。毛細管機能は、マイクロチャネルの全長にわたる連続路を含まない。
【0019】
更なる側面において、本発明は、マイクロチャネル壁を含む複雑な内部マイクロチャネルと、マイクロチャネル壁の少なくとも1cmの連続した長さに沿う連続した組立後のコーティングとを備えたマイクロチャネル装置を提供する。前記連続した組立後のコーティングは、少なくとも1cmの連続した長さで、かつ少なくとも1μmの平均厚さ(コーティングが該壁から離れる方に成長する方向においてマイクロチャネル長さに対し垂直に測定される)を有し、該連続した長さのコーティングの少なくとも90%は、前記平均厚さの+/−20%内にある。
【0020】
別の側面において、本発明は、マイクロチャネル壁を含む内部マイクロチャネルと、マイクロチャネル壁の少なくとも1cmの連続した長さに沿う連続した組立後のアルミナコーティングとを備えたマイクロチャネル装置を提供する。前記連続した組立後のコーティングは、少なくとも1cmの連続した長さで、かつ少なくとも1μmの平均厚さ(コーティングが該壁から離れる方に成長する方向においてマイクロチャネル長さに対し垂直に測定される)を有し、該連続した長さのコーティングの少なくとも90%は、前記平均厚さの+/−20%内にある。
【0021】
更に別の側面において、本発明は、共通マニホルドを共有する複数の平行内部マイクロチャネルにして、各マイクロチャネルが金属壁を含む該平行内部マイクロチャネルと、該複数のマイクロチャネルにおける該マイクロチャネルの少なくとも90%の金属壁の少なくとも1cmの連続した長さに沿う連続した組立後のコーティングとを備えたマイクロチャネル装置を提供する。前記連続した組立後のコーティングは、少なくとも1cmの連続した長さで、かつ少なくとも1μmの平均厚さ(コーティングが該壁から離れる方に成長する方向においてマイクロチャネル長さに対し垂直に測定される)を有し、前記複数のマイクロチャネルにおける該マイクロチャネルの少なくとも90%の各マイクロチャネルにおける連続した組立後のコーティングは、共通マニホルドを共有する該複数の平行内部マイクロチャネルに対する平均長さ及び平均コーティング塗布量の+/−20%内の長さ及びコーティング塗布量を有する。
【0022】
更に別の側面において、本発明は、次のマイクロチャネル装置を提供する。すなわち、該装置は、共通マニホルドを共有する複数の平行内部マイクロチャネルにして、各マイクロチャネルがマイクロチャネル壁を含む該複数の平行内部マイクロチャネルと、該複数のマイクロチャネルにおける該マイクロチャネルの少なくとも90%のマイクロチャネル壁の少なくとも5cmのチャネル長さに沿う連続した組立後のコーティングとを備え、前記連続した組立後のコーティングは、該連続した組立後のコーティングの軸方向長さの最初の20%にわたる少なくとも1μmの第1平均厚さ(コーティングが該壁から離れる方に成長する方向においてマイクロチャネル長さに対し垂直に測定される)と、該連続した組立後のコーティングの軸方向長さの最後の20%にわたる少なくとも1μmの第2平均厚さ(コーティングが該壁から離れる方に成長する方向においてマイクロチャネル長さに対し垂直に測定される)とを有し、該連続した組立後のコーティングの最初の20%及び最後の20%は、共通マニホルドを共有する該複数の平行内部マイクロチャネルの該マイクロチャネルの少なくとも90%における互いの20%内であるコーティング塗布量を有する。上記最初の20%及び最後の20%は、任意に選択され得る。この用語は単に、マイクロチャネルの連続コーティングの始まりと終わりを意味する。該複数の平行マイクロチャネルにおいて、これらのコーティングは平均され、該複数のマイクロチャネルの一端部におけるコーティング塗布(装入)量は、他端部におけるものとほぼ同じ(20%内)である。好ましいウォッシュコーティング手順において、第2の20%は、第1の20%の上方に向けられ(重力を基準にして)、また、第2の20%が配置されるマイクロチャネル壁は毛細管機能を含む。
【0023】
更なる側面において、本発明は、マイクロチャネルデバイスをウォッシュコーティングする方法を提供する。該方法は、共通マニホルドを共有する複数の平行内部マイクロチャネル内に液体コーティング組成物を加える工程と、共通マニホルドを共有する該複数の平行内部マイクロチャネルから前記液体を排出させる工程と、次の工程(a)、(b)及び(c)のうちの少なくとも一つの工程とを更に含み、(a)は、共通マニホルドを共有する該複数の平行内部マイクロチャネルから外へ液体を吸い上げる工程であり、(b)は、共通マニホルドを共有する該複数の平行内部マイクロチャネルにおけるどのマイクロチャネルを通る流れも、共通マニホルドを共有する該複数の平行内部マイクロチャネルにおける各マイクロチャネルを通る平均流の50%内であるように十分低流であるガス流のパージングにより共通マニホルドを共有する該複数の平行内部マイクロチャネルから液体を除去する工程であり、(c)は、共通マニホルドを共有する該複数の平行内部マイクロチャネルのサブセットに真空を適用する工程である。
【0024】
別の側面において、本発明は、内部マイクロチャネルのマイクロチャネル壁上に均一な金属コーティングを適用する方法を提供する。該方法は、内部マイクロチャネルを無電解めっき液で望ましい高さまで満たす工程と、金属がマイクロチャネルの一又は複数の壁上にめっきする際、該液体が内部マイクロチャネルに留まることを許容する工程と、反応速度を低減するために排出前に液体を冷却するか、又は、本質的な反応物質の一つがマイクロチャネル内で実質的に枯渇するまで無電解めっき溶液をマイクロチャネル内で反応させる工程と、マイクロチャネルから上記液体を排出させる工程とを含む。
【0025】
更なる側面において、本発明は、少なくとも一つのマイクロチャネル壁を含む内部マイクロチャネルと、組立後のコーティングとを備えたマイクロチャネル装置を提供する。前記内部マイクロチャネルは、少なくとも45°の角度を有する少なくとも二つのコーナーと、該コーナー間の少なくとも一つの平坦領域とを含み、前記組立後のコーティングは、前記コーナー角度を二等分する線に沿って測定されるコーナー厚を含み、前記組立後のコーティングは、平坦領域コーティング厚を有する前記平坦領域上のコーティングを含み、前記コーナー厚は、前記平坦領域コーティング厚よりもせいぜい50%厚い。あるいは、前記コーナーコーティング(図13b参照)の周囲における該コーティングの平均厚さ((d1+d2)/2)は、コーティング角度を測定するために用いられる100μm線の延長部(d1及びd2)に基づく。好ましくは、コーナーコーティングの周囲におけるコーティングのこの厚さは、平均コーティング厚(マイクロチャネル壁にわたって、又は、コーナーに終端する100μmのマイクロチャネル壁セグメントにわたって平均される)の25%内、より好ましくは10%内、又は、該中間点厚さ(マイクロチャネル壁の中間点で測定されるか、又は、コーナーで終端する100μmマイクロチャネル壁セグメントの中間点で測定される)の25%内、より好ましくは10%内である。
【0026】
別の側面において、マイクロチャネル装置を提供し、該装置は、内部マイクロチャネルにおけるコーナー裂け目と、裂け目充填を形成するように前記裂け目を実質的に埋める組立後のコーティングと、第1の実質的に平坦なマイクロチャネル壁にして、該壁上に配置された実質的に平坦な組立後のコーティングを有する該第1マイクロチャネル壁と、該第1マイクロチャネル壁に実質的に垂直な第2マイクロチャネル壁とを含む二つの実質的に垂直なマイクロチャネル壁と、前記第1の実質的に平坦なマイクロチャネル壁上の組立後のコーティングと開放マイクロチャネルとの間の境界面とを備える。前記裂け目充填の表面は、前記開放マイクロチャネルとの境界面を形成し、前記裂け目充填の表面は、前記第1の実質的に平坦なマイクロチャネル壁からの組立後コーティング成長の方向に対して、該第1の実質的に平坦なマイクロチャネル壁上の組立後のコーティングと開放マイクロチャネルとの間の境界面のレベル以下にある。この側面は、SEM顕微鏡写真を参照して理解されるべきである。好ましい実施形態において、第1マイクロチャネル壁及び第2マイクロチャネル壁は、拡散拡散接合又は鑞付けにより互いに結合される。
【0027】
別の側面において、本発明は、複数の不連続な凹状又は凸状の毛細管機能にして、該凸状又は凹状深さが、該毛細管機能が配置されるマイクロチャネルの最小寸法の40%未満である毛細管機能を備えマイクロチャネル装置を提供し、該毛細管機能は、少なくとも三つ以上の平行マイクロチャネル内に含まれ、該毛細管機能は、1mm未満の少なくとも一つの寸法を有する。好ましくは、マイクロチャネル壁の平坦領域上よりも、毛細管機能を有する領域上に少なくとも40%多いウォッシュコート材料の質量がある。関連する側面において、本発明は、レーザー切断、ロール成形、放電加工、光化学加工及び/又はレーザーアブレーションを含む方法によって毛細管機能を形成する方法を提供する。
【0028】
別の側面において、本発明は、マルチチャネルすなわちマイクロチャネルデバイスにおけるマルチマイクロチャネルを正確に満たす方法を提供する。該方法は、該デバイスにおけるマイクロチャネルの長手軸が該デバイスの選択された領域において重力と平行に向けられるように、マルチチャネルすなわちマイクロチャネルデバイスを重力に対して配向させる工程と、液体源から液体を、前記デバイスの選択された領域におけるマルチマイクロチャネル内へと加える工程と、マイクロチャネルデバイス又は他の液体源と連通するウォッチ管の使用により、デバイス内の液体レベルを監視する工程とを含む。好ましい実施形態において、該液体は、デバイス底部で入口を通り、マニホルド内次いでマルチマイクロチャネル内へと流れ、液体レベルは、ウォッチ管の使用により所望高さまで調整される。
【0029】
マイクロチャネルにおけるアルミナイドコーティングは、ガス状アルミニウム化合物を金属表面(特に、マイクロチャネルの金属壁)に対して通し、同時に又はその後、基材における金属と反応させて、金属アルミナイドの表面層を形成する。この方法は、アルミナ化と呼ばれ、おそらくより正確にはアルミナイド化と呼ばれる。アルミナイド化のための条件は、ジェットエンジン部品に対して従来から知られている。慣用の工程はここには記述されない。酸素の排除、流れの制御、及びマニホルドの通過等の特定の工程が、より詳しく後述される。
【0030】
一側面において、本発明は、触媒を形成する方法を提供し、該方法は、次の工程を含む。すなわち、(1)Al層を堆積させる工程と、(2)金属合金上に金属アルミナイド層を形成する工程と、(3)金属アルミナイドを酸化させてアルミナスケールを形成する工程と、(4)選択的に金属酸化物ゾル(又は金属酸化物スラリー)をコーティングする工程と、(5)触媒材料を付加する工程(一般に含浸により)である。好ましくは、金属酸化物ゾル又はスラリーは、アルミナゾル(ここでは、アルミナゾルは、堆積及び加熱後にアルミナを形成するゾルを意味する)又はアルミナスラリーである。本発明はまた、個々の工程各々又はそれらの任意の組合せを含む。例えば、工程(1)及び(2)、すなわち、Alの堆積及び金属アルミナイドの形成は、単一の工程で実現され得る。別の例において、工程(4)及び(5)、すなわち、触媒前駆物質ゾルのコーティング及び触媒金属の付加は、単一の工程に組み込まれ得る。
【0031】
本発明は、マイクロチャネル装置を更に含む。該装置は、上記本発明の方法のいずれかによって処理される。例えば、本発明は、均一な又は調整されたコーティングを含むマイクロチャネル装置、又は、ニッケルアルミナイドを酸化させることによりもしくはウォッシュコートを塗布することにより作製される装置を含む。本発明はまた、マイクロチャネル装置に取り付けられる管、チューブ又は他の構造の随意のコーティングを含む。
【0032】
本発明はまた、触媒化学転化を含む。該方法は、反応物質流体組成物をマイクロチャネル内へと流す工程にして、触媒組成物がマイクロチャネル内に存在する該工程と、反応物質流体組成物をマイクロチャネルにおいて望ましい(一又は複数の)生成物へと反応させる工程とを含む。本発明は、触媒化学転化のための方法を更に含み、該方法は、少なくとも一つの反応物質を独創的な触媒と接触させる工程を含む。本発明はまた、本明細書中に記述した装置のいずれかを用いて単位操作を行う方法を含む。
【0033】
本発明の方法は、ウォッシュコーティング組成物に広く適用可能であり、また、コーティング組成物は、広範な望ましいコーティングに対してよく知られている。本発明の好ましいコーティングは、触媒、不活性化層又は吸着コーティングを含む。好ましいコーティング組成物はアルミナゾルである。
【0034】
使用する用語の解説
「毛細管機能(毛細管特性)」は、液体物質を保持するために使用されるマイクロチャネルに関連した機能(特徴)である。これらは、マイクロチャネルの壁内に凹所(窪み)が作られるか、又は、マイクロチャネルの壁から、該マイクロチャネル壁と隣り合う流路内へと突き出る。該機能は、1mm未満の間隔、より好ましくは250ミクロン以下の間隔、より一層好ましくは100μm以下の間隔を作り出す。該機能は、これらが位置しているマイクロチャネルのどの寸法よりも小さい少なくとも一つの寸法(次元)を有する。
【0035】
「触媒材料」は、望ましい反応に触媒作用を及ぼす材料である。それはアルミナではない。触媒材料は、金属、金属酸化物及び酸性部位(酸性サイト)を含み得る。
【0036】
「触媒金属」は、触媒材料の好ましい形態であり、望ましい反応に触媒作用を及ぼす金属形態の材料である。特に好ましい触媒金属は、Pd、Rh及びPtである。
【0037】
「化学単位操作」は、反応、分離、加熱、冷却、蒸発、凝縮、及び混合を含む。
【0038】
「複合マイクロチャネル」は、一又は複数の次の特徴を含む装置にある。すなわち、少なくとも一つの連続したマイクロチャネルが、少なくも45°の曲がり角(回転)、ある実施形態では少なくとも90°の曲がり角、ある実施形態ではU字形ベンド(曲がり)、50cm以上の長さ、もしくは2mm以下の寸法を伴う20cm以上の長さ、及び、ある実施形態では50〜500cmの長さを有すること;少なくとも1cmの隣接長さを有する少なくとも二つの隣接するチャネルが、共通マイクロチャネル壁に沿う複数のオリフィスによって接続され、ここで、オリフィスの面積は総計で、オリフィスが配置されるマイクロチャネル壁の面積の20%未満になり、また、各オリフィスは、2mm2以下、ある実施形態では1mm2以下、ある実施形態では0.6もしくは0.1mm2以下(これは、コーティングが、該複数孔を詰まらせることなく塗布されるべきなので、特に手腕を問われる形態である)であること;又は、少なくとも1cmの長さを有する少なくとも二つの、ある実施形態では少なくとも五つの平行なマイクロチャネルが一体型マニホルドに対する開口を有し、ここで、該マニホルドは、平行マイクロチャネルの最小寸法のわずか三倍である(三倍を超えない)少なくとも一つの寸法を含むこと(例えば、平行マイクロチャネルの一つが(平行マイクロチャネルのセットにおける最小寸法として)1mmの高さを有するなら、マニホルドは、わずか3mmの(3mmを超えない)高さを有するであろう)。一体型マニホルドは組み立てられたデバイス(素子もしくは装置)の一部であり、接続管ではない。複合マイクロチャネルは、内部マイクロチャネルの一種である。
【0039】
「連続したマイクロチャネル」は、実質的な途切れもしくは開口を伴うことなく、該開口が存在する一又は複数のマイクロチャネル壁によって囲まれるマイクロチャネルである。実質的な途切れもしくは開口を伴うことなくとは、開口(存在する場合)が総計で、一又は複数のマイクロチャネル壁の面積のわずか20%(ある実施形態ではわずか5%、また、ある実施形態ではいかなる開口も伴わない)になることを意味する。
【0040】
句「壁から離れる方に成長(伸長)するコーティング」は、熱酸化法又はウォッシュコート等の付着(付加)法のいずれかによってコーティングが成長する方向を意味する。
【0041】
「内部マイクロチャネル」は、入口及び出口、及び随意的に、例えば多孔質仕切り等のマイクロチャネルの長さに沿う接続孔、又は燃料チャネルと酸化剤チャネルとの間の接続オリフィス等のオリフィスを除いて、一又は複数のマイクロチャネル壁によってあらゆる面(全ての側において)囲まれる、デバイス内のマイクロチャネルである。内部マイクロチャネルは壁で囲まれるので、慣用のリソグラフィ、慣用の物理蒸着又は他の表面技術によってはアクセスできない。
【0042】
「インサート」は、反応器又は分離器の組立ての前又は後にチャネル内に挿入され得る構成要素である。
【0043】
「内部マイクロチャネル」は、入口及び出口、及び随意的に、多孔質仕切り等のマイクロチャネルの長さに沿う接続孔、又は燃料チャネルと酸化剤チャネルとの間の接続オリフィス等のオリフィスを除いて、一又は複数のマイクロチャネル壁によってあらゆる面で境界が定められるマイクロチャネルを意味する。内部マイクロチャネルは壁で囲まれるので、慣用のリソグラフィ、慣用の物理蒸着又は他の表面技術によってはアクセスできない。
【0044】
「マニホルド」は、複数のマイクロチャネルを接続するヘッダー又はフッターであり、装置と一体のものである。
【0045】
測定技術 すべてのコーティングでは、「平均厚さ」は、横断(断面)顕微鏡検査(マイクロチャネルデバイスを切開することにより得られる)によって測定され得、又は、5μm厚以下であるコーティングでは、EDS元素分析によって測定され得る。共通マニホルドに接続されるチャネル又は同じ入口から満たされるために他の態様で接続されるチャネルの場合、「平均厚さ」は、すべてのチャネルに対する平均とされ、すなわち、接続されるチャネルの総計を適正に示すために選択される少なくとも十の、多数の接続されるチャネルに対する平均とされる。測定は、連続(隣接)するコーティングの全長にわたってなされるべきである。すなわち、より長い連続するコーティングから選択した単なる1cmではない。「コーティング荷重」は、体積又は質量を得るためにコーティングの高さ及び/又は厚さ(又は元素分析)が測定される場合を除き、平均厚さ同様に測定される。コーナー測定として指定されない限り、平均コーティング厚は、コーナー(存在する場合)間のセンターラインに沿って測定されるべきであり、コーナーのどのようなセット(組)も選択され得る。コーナー厚さは、単一のコーナーにおいて測定され得る。しかしながら、該コーナーは、代表的なものでなければならない(例外的なものではなく)。
【0046】
「金属アルミナイド」は、10%以上の金属と5%以上のアルミニウム(Al)とを含有しかつ金属とAlの総計が50%以上である金属材料を意味する。これらの割合は、質量パーセントを意味する。好ましくは、金属アルミナイドは、50%以上の金属と10%以上のAlを含み、かつNiとAlの総計が80%以上である。金属とAlがかなりの熱拡散を受けたある実施形態において、金属−Al層の組成は、該金属−Al層を下にある金属含有合金基材から区別する別個のラインが存在しないかもしれないように、厚さの関数として次第に変化すると予測される。用語「アルミナイド」は、金属アルミナイドと同義で用いられる。
【0047】
好ましい金属アルミナイドは、ニッケルアルミナイド(NiAl)である。「ニッケルアルミナイド」は、10%以上のNiと5%以上の、好ましくは10%以上のAlとを含有しかつNiとAlの総計が50%以上である材料を意味する。これらの割合は、質量パーセントを意味する。好ましくは、ニッケルアルミナイドは、20%以上のNiと10%以上のAlを含み、かつNiとAlの総計が80%以上である。Ni及びAlがかなりの熱拡散を受けたある実施形態において、Ni−Al層の組成は、該Ni−Al層を下にあるNiベースの合金基材から区別する別個のラインが存在しないかもしれないように、厚さの関数として次第に変化すると予測される。
【0048】
「Niベース」の合金は、少なくとも30(質量)%の、好ましくは少なくとも45%の、最も好ましくは少なくとも60%のNiを含むそれらの合金である。ある好ましい実施形態において、それらの合金はまた、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%のCrを含む。
【0049】
「組立後」コーティングは、三次元マイクロチャネル装置上へと塗布される。これは、複数シートもしくは複数サブ組立体をラミネートすることによってなされた多層デバイスにおけるラミネート工程後、又は、マイクロチャネルがブロックに穿孔される装置のような製造マルチ(多重)レベル装置の製造後である。この「組立後」コーティングは、複数シートがコーティングされ、次いで組み立てられて接合されるプロセスによってなされた装置、又は、シートをコーティングし、次いで該シートを拡張させて三次元構造を作ることによってなされた装置と対比され得る。例えば、その後に拡張させられるコーティングされたシートは、コーティングされていないスリット縁を有し得る。組立後コーティングは、クラック充填及び製造の容易さ等の利点を提供する。更に、アルミナイド又は他のコーティングは、コーティングされた複数シートのスタック(積み重ね体)の拡散接合と干渉し得、その結果、低質の接合をもたらし得る。これは、アルミナイドが、ラミネートされたデバイスを接合するための理想的な材料ではなく、また、高温での機械的要求を満たさないかもしれないためである。装置が、組立後コーティングによって作製されるか否かは、観測できる特性、例えば、ギャップ充填、クラック充填、元素分析(例えば、シート表面対接合領域の元素組成)等によって検出できる。一般に、これらの特性は、光学顕微鏡法、電子顕微鏡法、もしくは、元素分析を伴う電子顕微鏡法によって観測される。従って、与えられた装置では、組立前コーティングデバイスと組立後コーティングデバイスとの間に違いがあり、また、周知の分析技術を用いる分析は、コーティングがマイクロチャネルデバイスの組立ての前に塗布されたか又は後(又は、穿孔されたマイクロチャネルの場合、製造後)に塗布されたかを確かめることができる。
【0050】
「分離器」は、流体から一又は複数の成分を分離することができる化学処理装置の一種である。例えば、吸着装置、吸収装置、蒸留装置、もしくは反応蒸留装置等を含む装置である。
【0051】
句「マイクロチャネル内で実質的に枯渇した(欠乏したもしくは使い果たした)」は、緩慢な排液(ドレン)プロセスが反応温度で行われていた場合に、該排液プロセスが実質的に不均一な(>20%のばらつき)コーティング厚をもたらさないように、(一又は複数の)反応物質が消費されることを意味する。好ましくは、一つの本質的な反応物質の90%を超える部分が反応している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】反応マイクロチャネルのセットが冷却マイクロチャネルのセットと直交流関係にあるマイクロ反応器の簡易化した図である。
【図2】アルミナイド化チャネル表面を示す切開マイクロチャネルデバイスの写真である。この表面は、オリフィス(噴出口)を有する側部とは反対側のマイクロチャネルの側部にあり、アルミナイド化ガスは、これらオリフィスを通って流れ、該表面に衝突し、ジェット衝突欠陥を引き起こした。
【図3】アルミナイドコーティングされた基材の概略断面図である。
【図4】ウォッシュコートモデル変数の説明概略図である。
【図5】ウォッシュコート組成物が充填及び排出されるチャネルの計算された膜厚である。
【図6a】水平溝におけるメニカスの計算された形状を示し、5mm深さ×5mm幅チャネル、45度接触角及び1の重力と仮定した1−Dモデルによって予測されるような水平溝におけるメニカスの形状である。
【図6b】水平溝におけるメニカスの計算された形状を示し、0.125mm深さ×0.5mm幅チャネル、80度接触角及び10の重力と仮定した1−Dモデルによって予測されるような水平溝におけるメニカスの形状である。
【図7】毛細管機能(ニッチ)の充填段階を示す。
【図8】毛細管保持の概略図である。
【図9a】毛細管機能の実施形態を示す。
【図9b】毛細管機能の実施形態を示す。
【図9c】毛細管機能の実施形態を示す。
【図9d】毛細管機能の実施形態を示す。
【図9e】毛細管機能の実施形態を示す。
【図9f】毛細管機能の実施形態を示す。
【図9g】毛細管機能の実施形態を示す。
【図9h】毛細管機能の実施形態を示す。
【図9i】毛細管機能の実施形態を示す。
【図10】内部マイクロチャネルがアルミナイドでコーティングされたマルチチャネルすなわちマイクロチャネルデバイスの部分分解図である。
【図11】図10のデバイス内のアルミナイド化チャネルの断面SEM顕微鏡写真である。
【図12】図10のデバイス内のアルミナイド化チャネルの断面SEM顕微鏡写真である。
【図13a】マイクロチャネル内のアルミナイド化コーナーの断面SEM顕微鏡写真である。
【図13b】コーナーコーティングを特徴付けるために測定可能な間隔を示す。
【図14】マイクロチャネルコーナーにおけるアルミナイド化裂け目の断面SEM顕微鏡写真を示す。
【図15】均一なコーティングからの偏差の関数としての選択されたマイクロチャネル装置における燃焼反応の計算された性能を示す。
【図16】インコネル(登録商標)617のアルミナイド化サンプルの断面SEM顕微鏡写真を示す。
【図17】アルミナイド化された(左側)、又は、アルミナイド層を成長させる前にある表面酸化物を成長させるために400度で1時間、空気にさらされたインコネル(登録商標)617の試験片の断面SEM顕微鏡写真を示す。
【図18】アルミナディスクの存在下でアルミナイド化されたインコネル(登録商標)617の試験片の断面SEM顕微鏡写真を示す。
【図19】毛細管機能を有する(○)ウォッシュコートされたチャネル及び毛細管機能を有さない(□)ウォッシュコートされたチャネルを比較するメタン蒸気改質の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
マイクロチャネル装置
マイクロチャネル反応器は、少なくとも一つの次の反応チャネルの存在によって特徴付けられる。該反応チャネルは、1.0cm以下、好ましくは2.0mm以下(ある実施形態では約1.0mm以下)でかつ100nmを超え(好ましくは1μmを超え)、ある実施形態では50〜500μmである少なくとも一つの寸法(壁から壁まで、触媒をカウントしない)を有する。触媒反応チャネルは、触媒を収容するチャネルであり、ここで、触媒は、不均一系又は均一系であり得る。均一系触媒は、反応物質と共に流れ得る。マイクロチャネル装置も、触媒収容反応チャネルが必要ない点を除き、同様に特徴付けられる。高さ及び幅の両方は、該反応器を通る反応物質の流れの方向に対して実質的に垂直である。マイクロチャネルはまた、少なくとも一つの出口とは別個の少なくとも一つの入口の存在によって定義される。マイクロチャネルは、ゼオライト又はメソポーラス材料を通る単なるチャネルではない。反応マイクロチャネルの高さ及び/又は幅は、好ましくは約2mm以下、より好ましくは1mm以下である。反応チャネルの長さは、一般により長い。好ましくは、反応チャネルの長さは、1cmを超え、ある実施形態では50cmを超え、ある実施形態では20cmを超え、また、ある実施形態では1〜100cmである。マイクロチャネルの側部は、反応チャネル壁によって規定される。これらの壁は、好ましくは硬質材料、例えばセラミック、鋼等の鉄ベースの合金、又はモネル等のNiベース、CoベースもしくはFeベースの超合金等から成る。反応チャネルの壁のための材料の選択は、該反応器が意図される反応によって決まり得る。ある実施形態において、反応室壁は、耐久性がありかつ良好な熱伝導率を有するステンレス鋼又はインコネル(登録商標)から成る。該合金は、低硫黄であるべきであり、また、ある実施形態においてアルミナイドの形成前に脱硫処理にかけられる。一般に、反応チャネル壁は、マイクロチャネル装置に対して主要な構造的支持を与える材料で形成される。マイクロチャネル装置は、(本明細書中に記述したコーティング及び処理を除き)既知の方法で作製され得る。マイクロチャネル装置はまた、ある好ましい実施形態において、交互配置板(「シミ」としても知られている)をラミネートすることによって作製され、好ましくは、反応チャネル用に設計されたシムが熱交換用に設計されたシムと交互配置される。もちろん、従来から知られているように、「反応器」又は「分離器」は、ジェットエンジン部品は含まない。好ましい実施形態において、マイクロチャネル装置は、ジェットエンジン部品は含まない。あるマイクロチャネル装置は、デバイスにおいてラミネートされた少なくとも十層を含み、これらの層の各々が少なくとも十チャネルを含み、該デバイスは、より少ないチャネルを有する他の層を含み得る。
【0054】
図1は、マイクロチャネル反応器の単純化した概略図であり、該反応器において、反応物質供給物は反応マイクロチャネル(底部)を通過し、他方、(直交流構成にある)冷却液は、隣接する熱交換器(上部)を通って流れる。マイクロチャネル反応器は、好ましくは、複数のマイクロチャネル反応チャネル及び複数の隣接する熱交換マイクロチャネルを含む。該複数のマイクロチャネル反応チャネルは、例えば、二、十、百、千もしくはそれ以上のチャネルを含み得る。好ましい実施形態において、マイクロチャネルは、平面(平面的な)マイクロチャネルの平行アレイ、例えば少なくとも三つの、平面マイクロチャネルのアレイに配列される。ある好ましい実施形態において、複数のマイクロチャネル入口は共通ヘッダに接続され、及び/又は、複数のマイクロチャネル出口は、共通フッタに接続される。操作中、熱交換マイクロチャネル(存在する場合)は、流れている加熱流体及び/又は冷却流体を含む。本発明に使用できるこの種の既知の反応器の非限定的な例には、米国特許第6,200,536号及び第6,219,973号(両文献は参照により本明細書中に組み込まれる)に例示される多様なマイクロコンポーネント(超小型構成部品)シートアーキテクチャの例が含まれる。本発明の目的のためにこの種の反応器アーキテクチャを使用することの性能面での利点には、それらの比較的高い熱伝達率(伝熱速度)及び物質(質量)移動速度と、いかなる爆発限界も実質的に無いことが含まれる。マイクロチャネル反応器は、良好な熱伝達(熱移動)及び物質(質量)移動、優れた温度制御、滞留(残留)時間、及び副産物の最小化の利益を組み合わせることができる。圧力低下は低くなり得、高スループットを許容し、また、触媒は、非常にアクセスしやすい形態でチャネル内に固定され得、分離の必要性を無くす。更に、マイクロチャネル反応器の使用は、慣用システムと比べて、より良い温度制御を実現でき、また、比較的より等温のプロフィール(分布もしくは特性)を維持し得る。ある実施形態において、一又は複数の反応マイクロチャネルは、バルク流路を含む。用語「バルク流路」は、反応室内の開放路(連続したバルク流領域)を意味する。連続したバルク流領域は、大きな圧力低下を伴うことなく反応室を通る急速な流体流を許容する。ある好ましい実施形態において、バルク流領域に層流が存在する。各反応チャネル内のバルク流領域は、好ましくは、5×10-8〜1×10-22、より好ましくは5×10-7〜1×10-42の断面積を有する。バルク流領域は、好ましくは、少なくとも5%の、より好ましくは少なくとも50%、ある実施形態では30〜99%の1)反応室の内部容積又は2)反応チャネルの断面のいずれかを含む。
【0055】
多くの好ましい実施形態において、マイクロチャネル装置は、複数のマイクロチャネル、好ましくは、少なくとも五つの群の、より好ましくは少なくとも十の平行チャネルを含む。該平行チャネルは、該デバイスに一体である共通マニホルド(後に取り付けられる管ではない)において接続され、ここで、共通マニホルドは、該マニホルドに接続されるチャネルを通る流れを均等にする傾向がある一又は複数の特徴を含む。そのようなマニホルドの例は、2003年10月27日付け出願の米国特許出願通し番号第10/695,400号に記載されている。該文献は、以下に完全に再現されるごとく本明細書中に組み込まれる。この文脈において、「平行」は、必ずしも直線状を意味せず、むしろ複数チャネルが互いに沿っていることをいう。ある好ましい実施形態において、マイクロチャネルデバイスは、少なくとも三つの、平行マイクロチャネルの群を含み、各群内のチャネルは共通マニホルドに接続され(例えば、四群の複数マイクロチャネル及び四つのマニホルド)、また、好ましくは、各共通マニホルドは、該マニホルドに接続されるチャネルを通る流れを均等にする傾向がある一又は複数の特徴を含む。アルミナイドコーティングは、アルミニウム含有ガスをマニホルド内へと通すことにより、接続された複数マイクロチャネルの群に形成され得る。一般に、マニホルドもコーティングされる。
【0056】
熱交換流体は、プロセスチャネル(好ましくは反応マイクロチャネル)に隣接する熱交換マイクロチャネルを通って流れ得る。熱交換流体はまた、気体又は液体であり得、また、蒸気、オイルもしくは他の既知の熱交換流体を含み得る。該システムは、熱交換器において相変化を生じるように最適化され得る。ある好ましい実施形態において、複数熱交換層は、複数反応マイクロチャネルと交互配置される。例えば、少なくとも十の熱交換器が少なくとも十の反応マイクロチャネルと交互配置され、好ましくは、少なくとも十層の反応マイクロチャネルとインターフェースされる十層の熱交換マイクロチャネルアレイが存在する。これら層の各々は、単純で直線状のチャネルを含み得、又は、層内のチャネルはより複雑な幾何学的形態を有し得る。
【0057】
単純なマイクロチャネルが利用され得るが、本発明は、複雑なマイクロチャネル形態を有する装置に対して特に利点がある。ある好ましい実施形態において、マイクロチャネル装置は、一又は複数の以下の特性を含む:少なくとも一つの連続したマイクロチャネルが、少なくとも45°の曲がり角、ある実施形態では少なくもと90°の曲がり角、ある実施形態ではU字形ベンドと、50cm以上の長さ、又は2mm以下の寸法に沿う20cm以上の長さ、ある実施形態では50〜500cmの長さとを有すること;少なくとも1cmの隣接する長さを有する少なくとも2の隣接チャネルが、共通マイクロチャネル壁に沿う複数のオリフィスによって接続されること。該共通マイクロチャネル壁において、複数オリフィスの面積は総計で、該オリフィスが設置されるマイクロチャネル壁の面積の20%以下になり、また、各オリフィスは、2mm2以下、ある実施形態では1mm2以下、ある実施形態では0.6もしくは0.1mm2以下であること。これは、コーティングが、該複数孔を詰まらせることなく塗布されるべきなので、特に手腕を問われる形態である;又は、少なくとも1cmの長さを有する少なくとも二つの、ある実施形態では少なくとも五つの平行なマイクロチャネルが一体型マニホルドに対する開口を有し、ここで、該マニホルドは、平行マイクロチャネルの最小寸法のわずか三倍である少なくとも一つの寸法を含むこと(例えば、平行マイクロチャネルの一つが(平行マイクロチャネルのセットにおける最小寸法として)1mmの高さを有するなら、マニホルドは、わずか3mmの高さを有するであろう)。一体型マニホルドは組み立てられたデバイスの一部であり、接続管ではない。ある実施形態において、マイクロチャネルはU字形ベンドを含み、該ベンドは、作動中、流れ(もしくは該流れの少なくとも一部)がデバイス内及び連続したチャネル内において互いに反対の方向に通過することを意味する。(ある実施形態では、マイクロチャネル内のすべての流れが、単一マイクロチャネル内の反対方向にU字形ベンドを通過するけれども、U字形ベンド付きの連続したチャネルは、W字形ベンドのような分流(split flows)を含むことに留意されたい。)
【0058】
連続したマイクロチャネルは、該連続したマイクロチャネルの長さに沿って異なる断面積開口を有し得る。該異なる断面積は、異なるシムもしくはラミネートの積重ね(スタッキング)によって形成され得る。
【0059】
ある実施形態において、本発明の装置(又は方法)は触媒材料を含む。触媒は、バルク流路の少なくと一つの壁の少なくとも一部によって規定される。ある好ましい実施形態において、触媒の表面は、該混合物が通るバルク流路の少なくとも一つの壁を規定する。作動中、反応物質組成物はマイクロチャネルを通って流れ、触媒を通過して触媒と接触する。ある好ましい実施形態において、触媒は、単一部分の各チャネル内へと挿入可能な(又は各チャネルから取外し可能な)インサートとして設けられる。もちろん、インサートは、マイクロチャネル内に適合する寸法に設計される必要があるであろう。ある実施形態において、マイクロチャネルの高さ及び幅は断面積を定義し、この断面積は、多孔質触媒及び開放領域を含み、ここで、該多孔質触媒材料は該断面積の5%〜99%を占め、また、該開放領域は該断面積の5%〜99%を占める。ある実施形態において、該断面積における開放領域は、5×10-8〜1×10-22の連続した領域を占める。ある実施形態において、多孔質触媒(触媒内の空隙スペースを含まない)は、マイクロチャネルの断面積の少なくとも60%、ある実施形態では少なくとも90%を占める。あるいは、触媒は、マイクロチャネル(輪郭(外形)を通る流れ)の断面積を実質的に埋め得る。別の代替案において、触媒は、マイクロチャネル反応チャネル又はチャネル内に材料のコーティング(例えばウォッシュコート)として設けられ得る。フローバイ(flow-by)触媒形態の使用は、有利な容積/圧力低下関係を生み出し得る。フローバイ触媒形態において、流体は、好ましくは、多孔質インサートに隣接する空隙内を流れ、又は、マイクロチャネル壁と接触する触媒の壁コーティングを越えて流れる。(好ましくは、触媒と接触するマイクロチャネル壁は、熱交換器(好ましくはマイクロチャネル熱交換器)と熱的に直接接触し、
ある実施形態において、冷却液ストリームは、触媒と接触する壁の反対側と接触する)。
【0060】
金属アルミナイド層
本発明のある実施形態において、マイクロチャネル装置(好ましくはマイクロ反応器)の少なくとも一つの内部壁の少なくとも一部は、金属アルミナイド(好ましくはニッケルアルミナイド(NiAl))の層がコーティングされる。驚くべきことに、金属アルミナイド(例えばNiAl)コーティングを酸化させることによって形成されたアルミナ壁コーティングは、熱成長酸化物層(アルミナイドを形成することなく基材から成長した)又は溶剤堆積アルミナ層と比べて、優れた耐食性を提供することが発見された。非常に均一でかつ高密度なコーティングが、気相から表面に堆積されたアルミニウムと該基材から該表面に向かって拡散したニッケルとの固相反応に起因すると考えられる。加えて、ニッケルは、アルミナイド化プロセスに対する反応性(反応しやすい)面を作り出すため、ニッケルがリッチ(豊富)ではないステンレス鋼等の金属上にめっきされ得る。ニッケルアルミナイドはまた、両Al及びNi前駆物質を気相中に同時にもしくは混合物として供給することにより、堆積され得る。関連した側面において、触媒又は触媒中間物は、ニッケルアルミナイド面等を有する基材上に形成される。もちろん、本発明はまた、触媒又はマイクロチャネル装置を製造する方法を含み、該方法は、基材(好ましくはNiベースの合金)に化学蒸着アルミニウムをコーティングする工程を含む。該化学蒸着アルミニウムは、同時に及び/又はその後にアルミナイド(例えばNiAl)に転化される。
【0061】
NiAl層は、Niベースの合金を、高温で、好ましくは少なくとも700℃、ある実施形態において900〜1200℃でAlCl3及びH2にさらすことにより、形成され得る。アルミニウムは、AlCl3とH2間の反応の結果として表面に堆積させられる。該温度において、基材からのNiは、表面に向かって拡散し、アルミニウムと反応して、ニッケルアルミナイドの表面層を形成する。Ni源は、Niベースの合金基材、電解めっきNi層、又は、アルミナイド化の前に基材上に堆積され得る蒸着Ni層におけるNiであり得る。他の金属アルミナイド(例えばCo又はFe)も同様の条件下で形成され得る。
【0062】
好ましくは、アルミナイド化プロセスは、マニホルドを通る該デバイスに対する流れの良好な管理制御を伴って行われる。例えば、良好な制御は、漏れのないマニホルドを通ってマイクロチャネル内へと流れを送ることにより得られる。好ましくは、アルミナイド化プロセスは、100Torr(2ポンド/平方インチ絶対圧力、psia)〜35psia(1800Torr)、より好ましくは、400Torr(8psia)〜25psia(1300Torr)で行われる。
【0063】
好ましい実施形態において、ニッケルアルミナイドは、13〜32%の、より好ましくは20〜32%のアルミニウムを含み、更に好ましくは、ベータ−NiAlから本質的に構成される。Alが、ガンマ−プライム(γ’)層の重量%レベルの13%をかなり下回る場合、熱成長アルミナスケールの質に悪影響を及ぼすことが予想され得る。
【0064】
ある実施形態において、金属アルミナイド層は、1〜100マイクロメートルの厚さ、ある実施形態において、5〜50マイクロメートルの厚さを有する。ある実施形態において、アルミナイド層は、完全に酸化させられる。しかしながら、これは一般に好ましくない。
【0065】
金属アルミナイドが形成される金属表面には、好ましくは実質的に酸化物が無い。随意的に、該面は、そのような酸化物がもし少しでもあれば、これを除去するため、浄化、研磨又は他の方法で処理され得る。
【0066】
反応器は、内部壁(該壁は単純な壁又は加工された壁であり得る)上にコーティングとして堆積される触媒によって形成され得る。あるいは、もしくは加えて、フィン、板、ワイヤ、メッシュもしくはフォーム(発泡体)等のインサートがチャネル内に挿入され得る。これらのインサートは、追加の表面積を与え、流量特性をもたらし得る。アルミナイド化プロセスは、デバイス(反応器等)の壁上にインサートを固定するために使用され得る。結果として生じるアルミナイド層は、いくつかの空隙を埋め、インサートとデバイス壁(反応器壁等)との間の熱伝導を著しく向上させる。
【0067】
熱成長酸化物
金属アルミナイド層、より好ましくはNiAl層は、酸素又は他の酸化剤の存在下で加熱され、酸化アルミニウムの層を成長させる。驚くべきことに、該酸化物層の成長の前に、O2又は他の酸化剤の欠乏下で表面が最初に処理温度まで加熱された場合、著しく改善した酸化物コーティングが結果として生じることが発見された。酸素の存在下で表面を処理温度まで加熱する間に成長した酸化物層は、スポーリング(破砕もしくは剥落)を示したのに対し、酸素の欠乏下で周囲温度から処理温度まで表面を加熱することにより成長した層は、スポーリングを示さなかった。酸素は、熱処理プロセスの加熱工程から実質的に排除され得る。
【0068】
表面を周囲温度から処理温度まで加熱しつつ該表面から酸素を排除する簡便で好ましい方法は、水素にさらすことを含む。水素は、加熱中に雰囲気の酸化パワーを有効に減らし、酸化物スケールの早すぎる成長を防ぐ。NH3、CO、CH4、炭化水素等又はこれらのある組合せといった、気体の酸化パワーを減らす他の気体も使用され得る。これらのすべての還元ガスは、N2、He、Ar等の不活性ガスもしくは他の不活性ガス又は複数不活性ガスの組合せと組み合わせて使用され得る。
【0069】
上記酸化物層は、100℃又はそれ以内の熱処理温度で酸化雰囲気に表面をさらすことによって優先的に形成される。酸化気体は、不活性希釈剤を含むか又は含まない、空気、希釈空気、酸素、CO2、蒸気もしくはこれらの気体の任意の混合物、又は実質的に酸化パワーを有する他の気体であり得る。不活性希釈剤は、N2、He、Arもしくは他の不活性ガス、又は複数不活性ガスの組合せであり得る。酸化物成長の温度は、少なくとも500℃、好ましくは少なくとも650℃である。該表面は、異なる温度、異なる酸化パワー、又はこれら両方の段階にある処理状態(処理条件)にさらされ得る。例えば、該表面は、ある時間の間、650℃で処理され、次いで、1000℃まで加熱され、追加の時間の間、1000℃に保たれ得る。このような制御された段階的な表面処理は、望ましい形態構造、結晶相及び組成の表面構造をもたらし得る。
【0070】
優れた酸化物コーティングは、不活性雰囲気中で、好ましくは還元性雰囲気中、例えばH2含有雰囲気(好ましくは少なくとも1000ppmH2、ある実施形態では1〜10%H2)中における約1000℃までの(ある実施形態では少なくとも900℃)予熱に起因する。還元性雰囲気下での予熱は、スポーリングがほとんどないかもしくは全くない優れた酸化物コーティングを作り出すことが確認された。予熱条件のこの制御は、酸化ニッケルの形成を最小にするため、優れたコーティングをもたらすと考えられる。不活性雰囲気と従前考えられていた雰囲気は、低級の結果をもたらすため、真に「不活性な」雰囲気を選択することに高度な注意が払われなければならない。その理由は、酸化ニッケルは、理論的に10-10atm酸素でさえ生じ得、クロミア(chromia)は10-21atm酸素で生じ得るからであり。このような極度のレベルの純度は、市販される気体では利用できない。従って、還元性雰囲気が好ましい。
【0071】
一般的通念は、温度が上がれば上がるほど、酸化速度は速まると示唆している。驚くべきことに、我々は、酸化物が、1050℃よりも1000℃でより早く成長することを発見した。一つのあり得る説明は、高温酸化物がより高密度(高濃度)になり得、そのため、より早い成長を妨げるということである。より低温の酸化物は、より浸透性(多孔性)であり得、そのため、より早い酸化物成長を許容する。他方、高すぎる温度は、アルミナイド層と基材との間の相互拡散を促進し、また、アルミナイドは、バルク合金中へと見えなくなる(消滅する)。従って、熱成長した酸化物は、好ましくは、1000〜1100℃、より好ましくは1025〜1075℃の温度範囲で実施される。流れる空気等の過剰酸素の存在下で、上記酸化処理は、好ましくは、30〜6000min、好ましくは60〜1500minの間行われる。
【0072】
用語「アルミナ」は、その他の金属の存在下で酸化アルミニウムを含む材料のことを言うために用いられ得ることが認識されるべきである。本明細書中の記述において、特に明記されない限り、「アルミナ」は、(「アルミナから本質的に成る」)実質的に純粋な材料、及び/又は改質剤を含む酸化アルミニウムを包含する。
【0073】
より薄い層は、クラッキングする傾向は低い。そのため、熱成長した酸化物層は、好ましくは5μm厚以下、より好ましくは1μm厚以下、ある実施形態では、0.1μm〜0.5μm厚である。ある好ましい実施形態において、物品は、10マイクロメートル未満の熱成長スケールの酸化物厚さを有し、ある実施形態において、約1〜約5マイクロメートルの熱成長スケールの酸化物厚さである。ある実施形態において、例えば、より高表面積の触媒サポート(担体)のために、より厚い酸化物層は有用であり得る。ある好ましい実施形態において、該物品は、10マイクロメートル未満のウォッシュコートの酸化物厚さを有し、ある実施形態において、ウォッシュコートの酸化物厚さは、約1〜約5マイクロメートルである。一般に、これらの厚さは、光学顕微鏡又は電子顕微鏡で測定される。一般に、熱成長酸化物層は、視覚により特定され得る。下にあるアルミナイド層は、本質的に金属であり、わずか5重量%の(5重量%を超えない)酸素原子を含む。表面ウォッシュコート層は、密度、間隙(孔隙)率又は結晶相の違いにより、熱成長酸化物から区別され得る。
【0074】
アルミナイド化された表面は、アルカリ土類元素(Be、Mg、Ca、Sr、Ba)、希土類元素(Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)又はこれらの組合せによって変更され得る。これらの元素の付加の後、酸化性雰囲気中での反応が続き、混合酸化物スケールを形成する。例えば、変更元素がLaの場合、スケールは、LaAlOx、アルミン酸ランタンを含む。ある実施形態において、安定化アルミナ表面は、La等の希土類元素を加えることにより形成され、アルミナゾルの層がコーティングされ、次いで、Ca等のアルカリ土類元素がドープ(注入)され、その後、熱処理される。
【0075】
Laは、ゾルアルミナコーティングとアルミナスケールとの間の付着を高めるのに有効であると実証された。アルミナイド化及び熱処理後のインコネル(登録商標)617基材には、硝酸ランタンの水溶液がコーティングされ、その後、1,000℃で4時間、乾燥及び空気焼成された。これには、次に、ゾルアルミナがコーティングされ、960℃で1,000時間、腐食試験環境にさらされる。該ゾルアルミナコーティグは、フレーキング又はクラッキング等の目に見える損傷の兆候を伴わずに、十分に耐え抜いた。対照的に、硝酸ランタンの水溶液での前処理を伴わずに、ゾルアルミナがコーティングされた、アルミナイド化及び熱処理後のインコネル(登録商標)617基材での同様の試験は、ゾルアルミナコーティングの大部分が、わずか100時間の試験後に失われた。これは、ゾルアルミナとアルミナイド上のアルファアルミナとの間の不十分な付着を示唆する。
【0076】
付着助触媒としてのLaの利益は、該表面をより化学的に活性なアルミン酸ランタンへと変えるため、Laのアルファアルミナスケールとの反応に関連すると考えられる。表面X線回折(XRD)は、LaAlO3の形成を示した。Laの付加を伴わずに、アルファアルミナといくらかのバックグラウンドニッケルアルミナイドだけが表面XRDによって検出され得る。
【0077】
流量(流速)
アルミナイド層は、好ましくは、動的流れ状態下で表面をガス状反応物質混合物と反応させることによって形成される。アルミナイド形成に必要なアルミニウムは、AlCl3及びH2をマイクロチャネル内に流すことにより、マイクロチャネル内に堆積され得る。マルチチャネルデバイスにおいて、該Alは、選択したチャネルにのみ堆積され得る(例えば、CVD処理中にアルミニウム前駆物質を遮断するため、あるチャネルを塞ぐこと等による)。アルミニウム層はまた、相対圧力を制御することにより、マイクロチャネルデバイスの選択した部分上に適用され得る。例えば、壁で分けられた少なくとも二つのチャネルを含むマイクロチャネルデバイスにして、該二つのチャネルが該壁におけるオリフィスを通じて互いに接続される該マイクロチャネルデバイスにおいて、AlCl3は第1チャネルを通って流れ、他方、より高圧にあるH2は、第2チャネル及びオリフィスを通って第1チャネル内へと流れる。
【0078】
静的ガス処理は、所望領域に、必要なら仮ガスポンピングと共に反応ガスを充填することによって行われ得る。
【0079】
過度な高流量は、むらのあるコーティングをもたらし得ることが分かった。この問題の例は図2から理解され得る。
【0080】
二つの流れのメトリクス(識別のための計測技術)は、せん断及びジェット埋伏(jet impaction)の程度を特徴付けるために確立されている。機械的せん断では、総壁せん断応力(2接線成分及び1垂直成分)は、関連測定基準(関連計量)として選択された。同様に、ジェットプルームの運動量フラックスに等しい動圧は、コーティング形成におけるジェット埋伏の効果を監視する手段として選択された。
【0081】
いくつかのデバイスアルミナイド化試験の計算流体力学(CFD)シミュレーションが、処理が首尾良く適用された領域に対して処理が首尾良くいかなかった領域における壁せん断応力及び動圧を対比するために行われた。これらのシミュレーションは、境界条件として、それぞれのデバイスのアルミナイド化プロセスに用いられたものと同じ温度、流量、ストリーム組成及び流れ入力/出力形態を用いた。比較は、アルミナ化して熱処理したデバイスの検視結果を利用した。これらの研究から、壁せん断応力及び動圧の両方に対する閾値、従って以下の流れ条件のための閾値が確立され得ることが突き止められた。上記流れ条件において、せん断及び動圧の両方が閾値を下回り、良好な処理が行われ、かつ、いずれかの変数が閾値を超えた際、該処理が無効とされ得る。
【0082】
測定閾値
壁せん断応力は、次式として表される。すなわち、チャネル単位表面積当たりの力を単位として表された、流体粘度(粘性)μと局所速度勾配の大きさとの積として表される。
【数1】

この量は、非常に薄い流体層とチャネル壁自体との間の境界面における分子摩擦力の大きさを表す。
【0083】
動圧(すなわち運動量フラックス)は、ρ=1/2ρμ2で与えられる。ここでρは、流体密度を示し、μは、局所流体速度の大きさを示す。これは、ジェットプルームがチャネルの側部に打ち当たる場合、及び、単位面積当たりの力によっても表される場合の、運動量の変化によって与えられる力の指標(基準もしくは程度)である。ある数の燃焼試験デバイスのCFDシミュレーションは、アルミナイド欠乏コーティングと壁せん断応力又は動圧のいずれかの臨界値との間に何らかの決定的な相関関係が存在したか否かを決定するために行われた。
【0084】
上記試験済みのデバイスの詳細な分析に基づいて、以下の閾値が確立された。
【0085】
壁せん断応力:抵抗力がアルミナイドコーティングの形成を損なわないことを確実なものとするため、壁せん断応力は、もしアルミナイド化ガスがジェットオリフィスを通って流れているなら、50Paを超えるべきではない。許容できる壁せん断応力は、もしアルミナイド化ガスが、ジェットオリフィスを通る際にマイクロチャネルの壁に衝突していないなら、200Paを超えるべきではない。
【0086】
壁動圧:運動量衝撃浸食が、アルミナイドコーティングの十分な形成を損なわないことを確実なものとするため、壁動圧は、もしアルミナイド化ガスがジェットオリフィスを通って流れているなら、10Paを超えるべきではない。実質的により高い壁動圧は、ジェットオリフィスが無い状態で許容される。許容できる壁動圧は、もしアルミナイド化ガスが、ジェットオリフィスを通る際にマイクロチャネルの壁に衝突していないなら、100Paを超えるべきではない。
【0087】
実際の応用
上記提示のメトリクスは、流体工学の見地から良好なアルミナイド化処理を暗示する流れ形態及び個々の流入流量を求めるために使用される。一般に、デバイスのための可能性がある入力流路及び出力流路の組合せが存在する。CFD予測は、それらの流入/流出の組合せ及び個々の入口流量(これは、もしアルミナイド化ガスの少なくとも一つの流れがジェットオリフィスを通るなら、デバイス全体にわたって壁せん断応力を50Pa未満に、かつ壁動圧を10Pa未満に全体的に維持する結果をもたらす。)を決定するために使用される。これら二つの基準を満たす最大許容入口流量及び随伴した流れ形態は、ここで展開したメトリクスに基づいて該デバイスをアルミナイド化するための推奨手順となる。このガイダンスから得られたアルミナイドコーティングの例は、視覚的欠陥のないアルミナイドコーティングを作り出した。
【0088】
本発明の驚くべき発見は、アルミナイド化ガスを、上述した閾値流量(速度)未満の流量で流すこと(非静止、好ましい圧力についての上記論議参照)が、欠陥の無い非常に均一な(厚さのばらつき(変動)が10%未満)アルミナイドコーティングを作り出したことである。
【0089】
図3は応用例を概略的に例示し、該例において、金属基材42がアルミナイドから成る第1層44と、焼結助剤を有するアルミナ層46と、アルミナ層48とを有する。好ましい実施形態において、最も外側の層は、追加の触媒活性材料49を更に含む。
【0090】
II.ウォッシュコート
ウォッシュコートは、チャネル壁を液体ベースのコーティング組成物にさらすことによりチャネル壁に塗布されるコーティングである。該コーティング組成物は、懸濁粒子(一般に、金属酸化物、又は金属酸化物及び金属粒子の混合物)又はゾルを含み得る。
【0091】
毛細管機能を用いず注排法を用いるウォッシュコートの均一性
プロセスの説明
マイクロチャネルの実質的に平面で平らな壁にウォッシュコート溶液を塗布する注排法は、複数マイクロチャネルの平行アレイに対し、望ましいコーティング位置をウォッシュコート溶液にさらす地点にて溶液をゆっくりと注入する工程を含む。完全に又は中間レベルまでチャネルが満たされた後、該溶液は、該デバイスの一端部から排出されるようにされる。流体は、マイクロチャネル壁上に残る。窒素ガス等の第2流体が、次いで、マイクロチャネルをパージして過剰な材料を除去するために使用され得る。
注排法は、マイクロチャネル反応器のアルミナイド化されたインコネル(登録商標)壁上へと水性コーティング組成物をウォッシュコーティングするために適用され、十分な均一性を実証しなかった。
【0092】
モデリングアプローチ
注釈
流体特性
【数2】

チャネルの幾何学的形態
【数3】

その他
【数4】

【0093】
排出(排液)速度
排出速度は、チャネルから排出される際の流体レベルの変化の関数としての、重力、粘性喪失(せん断流)の力及び毛細管力の総合の変化を記述する微分方程式に基づく。3成分(重力、粘性喪失及び毛細管)すべてを含む力平行は、正確に解けるが、実際に計算することは数的に難しい。以下は、この問題に対する近似解であり、毛細管力は無視され、また、該微分の詳細はアペンディックス(appendix)におかれる。
流体レベルが、初期液体注入ライン内でいくつかの以下の水力直径まで該等価物を低下させた場合、排出流体の平均速度の大きさは、次式で与えられる。
【数5】

【0094】
初期膜厚
初期平均膜厚は、Landau及びLevich (1942年)並びにDeryagin(1943年,1945年)によるモデルに基づく。彼らは、静止した浴槽から一定速度で抜かれた、平らな表面上に残る残留液体層を研究した。該モデルは、数学的に次のように提示される。
【数6】

【0095】
このモデルは、Deryagin及びTitiyevskaya(1945年)により実験により実証されたと報告される。合理的な結果を与えるように思われるが、この式の一つの欠点は、該板の長さへの明確な依存関係が存在しないことである。直感的に、誰でも、長さが液体層上における重量及び表面せん断応力の総合力を決定するので、長さは、ある役割を果たすと予想する。初期平均膜厚のための代わりの式が、Levich(1962年)によって与えられる。
【数7】

【0096】
ここで、Fτは、液固界面の全表面積にわたって積分された総壁せん断応力を表す。残念ながら、サンプル計算は、この式が、初期膜厚にとって非現実的に小さい値をもたらすことを示した。総壁せん断のための二つの式は次のとおりであった。
【数8】

【0097】
時間及び空間的依存膜厚
モデル本質要素の略図が図4に与えられる。図示されるように、液体フィルム膜δは、軸方向位置zとバルク排液からの経過時間tの両方の関数である。我々は次の連続方程式から始め、そして、z及びz+Δz間のフィルム上の不安定なマスバランスを実行する。
【数9】

該モデルを偽IDアプローチへと換算する(変える)ため、我々は、局所速度ベクトル

を、該液体膜の局所厚さにわたる断面平均値と置き換える。周囲ガス状媒質の密度(濃度)を無視して、差動(微分)体積における局所密度ρは、今、ただ単に局所膜厚の関数となり、また、連続方程式は、次のようになる。
【数10】

ここで、<Vz>は、軸方向位置zにおける断面平均速度である。
【0098】
次式は、自由(外側)膜表面から壁表面に向かう垂直距離x及び重力の方向に対する傾斜角度βの関数としての、液体膜のための速度分布を与える(Transport Phenomena, Bird, Stewart及びLightfoot, 第2偏, Wiley及びSons):
【0099】
【数11】

この式に対する解は、軸方向位置及び経過時間の関数としてウォッシュコート厚を与える。
【数12】

【0100】
特別なモデリング要求又は前提(仮定)
前提
・該モデルは、重力、粘性喪失の力及び毛細管力下のウォッシュコートの1次元排液を考慮するだけである。所望により、例えば、チャネルのポンプ補助排出中初期膜厚を得るため、代替値が排出速度u0に対して指定され得る。
・該モデルは、単一の又は平行な平らな板に最も適切である。特に、矩形チャネルのコーナーにおいて説明される吸上げ(ウィッキング)効果(毛細管現象)は無い。実際、実質的により厚い(2x平らな領域を上回る)コーティングは、コーティングの注排法が使用される際、マイクロチャネル反応器のコーナーにおいて観察される。
・パージサイクル中の液体膜のブローオフ(吹き飛ばし)に対して何の準備もなされていかった。しかしながら、現在のウォッシュコートプロトコルは、パージサイクル前に排液(重力又はポンプ支援)を必要とすることが認識されるべきである。そのため、パージサイクルが始める時間まで、このモデルは、液体膜厚分布を予測するために相当に正確であるべきである。
・該モデルは、流体特性がずっと一定ポイント値のままであることを前提とする(ままであると仮定する)。特に、膜の乾燥は、このモデルにおいて説明されない。
【0101】
このモデルの使用上の以下の規制に従うべきである。
式(6)の数式は、大部分の流体がチャネルから除去された後の排液中の濡れたウォッシュコート層の摩損を見積もるためにのみ適用されるべきである。該モデルにおいてt=0を設定する際、関連したある主観が存在し得る。確認の観点から、該ガスがチャネルの全長を通過し得る場合、すなわち、液体で塞がれた全断面積が全くない場合、tはゼロに等しくセットされるべきである。
【0102】
該モデルは、液体膜厚が重力によって支配される場合に最も適用できる。壁付着力及び毛細管力は、ウォッシュコートのバルク排液の間、無視された。最初に濡れた表面積のほとんどが、排液サイクル中に濡れたままであるなら、毛細管力の省略は、該モデルの精度に無視してよい影響を与える。しかしながら、一旦濡れたチャネルのかなりの面積が湿潤/乾燥境界面を形成するようにかなりの吸上げが生じる場合、毛細管力はより顕著となる。
【0103】
該厚さの見積もりは、チャネル壁面の中央、すなわち、コーナー及び他のより複雑な空間上の位置関係から離れた面においてのみ有効である。
【0104】
モデル結果
排液速度
ウォッシュコートの物理的特性及びチャネル寸法のための本質的にすべての信頼できる値では、重力による排液流量は、初期注入レベルを下回るいくつかの水力直径の距離内において実質的に安定した状態(定常状態)である。以下の分析式(分析表現)は、平均流れ速度のために与えられる。この流れ速度(あるいは、流れがポンプ援助の場合、別の流れ速度)は、初期膜厚計算に使用される。
【0105】
初期膜厚
初期膜厚に対して現在使用されるモデルは、単に平均排出速度及びウォッシュコートの流体特性の関数である。これは形態依存を全く有さない。水力直径及びチャネルの長さの両方を潜在的に使用し得る、初期膜コーティング厚に対する代わりの式(表現)が議論されるが、不合理な結果を与えていると思われるので、現在は用いられない。
【0106】
時間及び空間的依存膜厚
該モデルは、濡れたウォッシュコート厚さは(z/t)1/2として変化することを示す。ここで、zは、チャネル内の充満レベル未満の軸方向位置であり、tは、チャネルから出るバルク流体排液に続く経過時間を示す。モデル入力パラメータは、ウォッシュコートの速度、密度及び重力の局所的加速度を含む。該モデルは、ウォッシュコート適用の初期段階の間にのみ適していると判断される。ここで、重力の影響は、壁付着力及び垂直毛細管力を支配する。
【0107】
モデル概要
注入及び排出したチャネルの側部に沿う液体落下フィルムを記述する部分微分法的式の分析解が得られた。該モデルは、次の入力パラメータを必要とする。すなわち、(1)液体粘度、(2)液体濃度、(3)重力の方向に対する傾斜角度、及び(4)重力の局所加速度である。解における変数は、(1)引力の方向における満杯マーク(fill mark)から測定した軸方向位置と、(2)チャネルのバルク排液が行われてからの経過時間(すなわち、チャネルを満たす内部液体が除去されて過剰な液体のみが壁の側部にへばりつくまでの時間)である。該モデルは、引力が壁の付着力及び毛細管効果を優越する場合にウォッシュコートがチャネル側部を流れ落ちる際の、ある一定の軸方向位置に対する、時間の関数としての液体厚の低減を予測する。
【0108】
結論及び提案
ツールを用いたパラメータ分析及び式の解の検証は、異なる円滑なマイクロチャネル壁上に毛細管機能が存在しない場合、以下のウォッシュコートプロセスに対する暗示を示唆する。
【0109】
流体特性
・濃度:濃度の向上は、初期膜厚を増長し、また薄くなる速度をも高める。
・粘度:粘度が高まれば、初期膜厚も厚くなり、薄くなる速度は低下する。
・表面張力:表面張力の向上は、初期膜厚を減少させるが、膜の薄くなる(膜薄化)速度に対する影響はほとんどない。
・接触角:膜薄化における二次効果(膜厚における3%〜10%の転化率)
【0110】
チャネル寸法
・水力直径:より大きいチャネルは、より厚い初期膜層をもたらすが、薄くなる速度における影響は無視できる。
・長さ:より長いチャネルは、より不均一なウォッシュコートをもたらす。
【0111】
力の寄与
・重力及び粘性喪失力が優勢であり、互いを平衡させて、ほぼ一定の排出速度を与える。
・推力方向における毛細管力は、二次であり、濡れた表面と乾いた表面との間の液体コラムの上部において役割を果たす。これらはまた、排液時にも役割を果たすと考えられ、その場合、流体は、マイクロチャネルの底部付近で停滞させられる。
【0112】
性質の寄与
・粘度(粘性)は、初期層厚及び最終層厚の決定において最大の役割を果たす。
・濃度(密度)は、濃度を高めて、より高速の膜薄化によって後に補償されるより厚い初期膜をもたらすことにより、次に大きく寄与するものである。
・表面張力は、初期残留膜層の形成中に重要な役割を果たすが、数分後の膜厚に対する影響は無視できる。
【0113】
参考文献
Deryagin, B.V., 1943年, Dokl. Akad. Nauk SSSR 39, 11.
Deryagin, B.V., 1945年, Acta Physicochimica URSS 20, 6.
Deryagin, B.V.及びA.S.Titiyevskaya, 1945年, Acta. Akad. Nauk SSSR 50, 307.
Landau, L.D. and V.G. Levich, 1942年, Acta Physicochimica URSS 17, 42.
Levich, V.G., 1962年, Physiochemical Hydrodynamics, Prentice-Hall.
Rossum, J.J, “Viscous lifting and drainage of liquid ,“ Journal of Scientific Research 7, 121-144.
【0114】
モデルは、コーティングの内部チャネル均一性は、すべての流体特性に対して乏しい(>20%のばらつき(変動))ことを予測する。ここで、コーティングされた区域の上部におけるコーティングはかなり薄く、また、ずっと厚いコーティングがマイクロチャネルの底部に存在する。これらの結果は実験的に検証された。ここで、触媒チャネルの底部縁における測定した触媒組成は、マイクロチャネルの上部における触媒よりも20%厚い(又は重量荷重がより大きい)。あるケースでは、マイクロチャネルの上部において触媒は全く観察されなかった。
【0115】
望ましいコーティング又は反応器領域の長さが軸方向コーティングプロフィールのほぼ漸近的領域内に入るように、所望レベルよりもずっと高い垂直高さに対するコーティングにより、内部チャネル不均一性を低減することは可能である点にも留意すべきである。これは、コーティングが乏しいコーティングプロフィール(所定位置での乾燥)をもたらさないように、乾燥時間が十分に長い場合、十分合理的に機能するであろう。望ましいコーティング位置上に保持された平坦でない触媒を洗い落とすことは可能であろう。これは、マイクロチャネル反応器又はデバイスの反対側端部から第2流体が注入されて排出された場合、可能であろう。該第2流体は、上記平坦でないコーティングを可溶化して、該材料を除去するであろう。いくつかの注排工程は、望ましくない触媒を洗い落とすために要求され得る。
【0116】
モデルパラメータが、時間の関数としてのコーティング厚の軸方向プロフィールを示す図5で用いられた。
粘度:0.006135Pa−s
濃度:1100kg/m3
液体表面張力:0.07N/m
液体接触角:75度
水力直径:1mm
【0117】
マイクロチャネル壁に液体を保持する毛細管機能の使用によるウォッシュコートの均一性モデリング
組立後にコーティングされたマイクロチャネルの壁上における均一な液体保持に対する改善は、マイクロチャネル壁内へと又はマイクロチャネル壁外へと作り出された小さいな特徴(機能)の使用によって可能とされる。該特徴は、毛細管機能と呼ばれ、マイクロ反応器壁の長さに沿って並びにチャネルからチャネルへの長さに沿って流体を十分に均一に保つ、すなわち保持するために毛細管力を利用する。
【0118】
表面力は、重量に対して優勢である場合、触媒チャネル間及び内部チャネル均一性を高めるのに十分なものであるべきである点に留意するべきである。表面力は、付着及び化学反応を含む。付着の例は、マイクロチャネル壁との比較的強い引力を有する粘着性流体である。高分子流体、粘着性流体又は他の粘着傾向の流体は、マイクロチャネル内の触媒均一性を高め得る。
【0119】
毛細管機能液体吸上げモデルの効果
A1−D毛細管機能液体保持モデルは、溝断面が矩形であり、かつ、重力が溝幅と平行に作用しかつ重力が溝の長さ及び深さと直交するように溝が配向されると仮定して発展した。この1−Dシステムを記述する結果として生じる三次非線形微分方程式は、Mathcad2001i(MathSoft,ケンブリッジ,マサチューセッツ州)を用いて解かれた。該微分方程式を解くため、次の境界条件が仮定された。溝内の液体深さは、重力に対して最も底の縁に沿う溝の深さにほぼ等しく、また、該底部と上部縁に沿う液体と固体との間の角度は、上記液体/固体/気体境界面システムに対する熱力学的接触角に等しい。
【0120】
該モデルは、溝(例えば図6a及び6b参照)内の液体メニスカスの形状を予測するために、また、液体保持における広範な条件にわたるいくつかの変数の効果を探るために使用される。許容できる触媒取込み(吸上げもしくは吸収)に対して最大の効果が得られるように見出した変数は、溝深さ、溝の幅対深さ比、接触角及び重力因子比である。重力因子比は、下記の式1に示すように定義され、ここで、ρは液体濃度、gは重力定数(すなわち9.81m/s2)、また、σは液体表面張力である。室温及び室内圧力において水に対する重力因子比は、約1である。
毛細管機能を有する表面上におけるミリグラム活物質(活性剤)/inch2(ミリグラム/6.45cm2)の活物質取込みを予測するための該式の一般形態は、下記の式2で与えられる。
【数13】

【0121】
活物質取込み(mg/6.45cm2)=10*(ρ液体)*(W触媒)*f面積*[+2.13119−0.040174*(接触角)+0.025326*(溝深さ)−0.69857*(高さ/深さ)+7.70816E−004*(接触角)*(溝深さ)+0.013161*(接触角)*(高さ/深さ)−8.42001E−003*(溝深さ)*(高さ/深さ)](式2)
ここで、ρ液体は、液体の濃度(グラム/cm3)であり、W触媒は、溶液中の活物質の質量分率であり、f面積は、毛細管機能がカバーする面積分率であり、接触角は度であり、溝深さはミクロン(10-6m)であり、また、高さ/深さ比は無単位である。
方程式Zにおけるモデル式は、25〜125ミクロンの溝深さ、0.5〜10の溝幅対深さ比、10〜80度の接触角及び0.1〜10の重力因子(式1)の範囲にわたってのみ有効である。
更に、高さ/深さ比は、次の基準(そこでは接触角は度で与えられる)を満たさなければならない。
高さ/深さ<[1.122E−03*(接触角)2+8.265E−03*(接触角)+2.155]
表1は、上記相関性を用いた予測とフル(全もしくは満杯)モデルを用いて得た予測とを比較する。
ここで、リブは、マイクロチャネルの長さに沿う窪みも突出もしない平らな壁として定義される。重力排出が生じる際、より少ない液体ウォッシュコート溶液がリブの上部に保持されると予想される。
【0122】
【表1】

【0123】
比較すると、注入及び排出プロセスに全体的に基づく、毛細管機能の無いマイクロチャネルの壁上における予想した取込みは、0.1mg/^2未満である。従って、多くのウォッシュコーティング工程が高装入(高塗布量)を得るために必要とされ、そこで、不均一バイアス(偏り)が各ウォッシュコーティング工程に保持される。
【0124】
溝内のどの地点においても液体の深さが溝の深さ未満になると予測された場合、該モデルの限界が超えられ、有効ではないかもしれない。数学的モデルに対してシミュレートされた範囲において、接触角及び高さ対深さ比は、モデル限界が超えられるか否かの決定における単なる重要な因子であり、この限界超過は、それぞれ接触角10〜45度に対して溝の幅対深さ比2.3〜4.5付近で生じた。ある状況下において、溝当たりの液体保持は、5mm程度もの溝の深さ及び/又は幅にとって重要であった。80ml/6.45cm2程度もの該液体保持値が、毛細管機能のない平坦垂直面上における予想した液体保持よりずっと上の、数学的モデルに対してシミュレートされた範囲(すなわち、125ml未満の溝深さ)におけるいくつかの状況に対して予測される。液体取込みは、一般に、溝深さ及び接触角が増すにつれて高くなる(接触角が大きくなって90度に近づくにつれ、毛細管機能は、溝を満たすように湿潤させることがより難しくなり得るけれでも)。溝幅が5mm付近に拡大するにつれ又は5mmを超えると、大きい毛細管機能が作り出す力に重力の影響が打ち勝ち、毛細管機能内の液体保持は、著しく低下(落下)する。
【0125】
マイクロチャネル壁における毛細管機能
毛細管機能は、マイクロチャネルの壁内におかれるか壁上方を突き出る際、マイクロチャネル壁上又は該壁付近において液体の選択的保持を可能にする化学的単位操作(反応器、分離器及び熱交換器に対するものを含む)に対して有益である。該機能は、マイクロチャネル壁に沿って排出又は滑落を防ぐために毛細管力が重力(引力)よりも強いように、流体特性に基づく定義パラメータ未満の少なくとも一つの限界寸法を与える限り、どのような形状でもあり得る(矩形、円形、台形他)。
【0126】
マイクロチャネル壁の平均表面から突き出る毛細管機能は、マイクロチャネル壁を成す板と同じ材料から好ましく形成される。毛細管機能は、拡散接合前に壁シムに隣接して積み重ねられる薄い金属シムにおけるスロット又は孔のように形成され得る。結果として生じた構造は、最初の(第1)マイクロチャネル壁における凹状機能に類似するであろう。
【0127】
毛細管機能は、均一な又は調整された内部チャネル分布を作り出すため、マイクロチャネルの長さに沿って所望位置に配され得る。良好なチャネル−チャネル(チャネル間)の均一性を助長するため、同じプロフィールの毛細管機能が、マイクロチャネルのアレイにおける平行マイクロチャネルごとに沿って配される。該機能は、重力の方向による排出を最小にするため、重力の方向に垂直に優先的に整列させられる。該機能は、排出中、重力の方向に対してある角度で整列させられ得る。該機能は、これらが短くかつ不連続な場合、重力の方向と平行に向けられ得る。マイクロチャネル壁上において、好ましくは、三、五、十又はそれ以上の機能が群(グループ)で存在する。
【0128】
一実施形態において、調整されたプロフィールは、触媒に対する要求が高まる反応器区域の前部付近に、より多くの毛細管機能、従ってより多くの触媒溶液を残し得る。選択的酸化等の発熱反応のケースに対する別の実施形態において、反応器の前部付近に配置又は保持された触媒の量は放出した熱の量まで低減され得、次いで、該放出熱量を減らし、そのため不必要な温度が上昇する。第3実施形態において、毛細管機能の位置及び大きさは、マイクロチャネルデバイスの縁チャネル上において、熱放出が該デバイス縁付近で低減されるように調整され得る。例えば、マイクロチャネルデバイスの層において、より多くのコーティングがデバイスの中心付記に塗布されるように、縁付近よりも層の中心付近に毛細管機能のより高い集中があり得る。従って、少なくとも一つの中心(中央)マイクロチャネル及び二つの縁マイクロチャネルを有するマイクロチャネルアレイを含む層において、ある実施形態では、上記少なくとも一つの中心チャネルは、上記二つの縁チャネルのいずれかにおける集中よりも高い毛細管機能の集中を有し得る。これは、縁に沿ってより大きい触媒密度が望まれる場合、逆にされ得る。これは、利点のある機械的設計を作り出し得、該設計において高い熱ひずむの領域付近で局所縁温度が低減させられる。毛細管機能は、単位体積当たりのある一定の容量又は流量に対する転化率及び選択性において測定されるプロセス性能を制御又は調整するために使用され得る。該機能は、局所熱放出を低減して、結果として生じる温度勾配を減少させることにより、該装置の高ひずみ領域における機械的ひずみを最小にするためにも使用され得る。
【0129】
均一な又は調整されたプロフィールを作り出すためのウォッシュコーティングのための方法
1)毛細管機能の使用
液体(触媒前駆物質又は他のもの)を保持すること。該流体は、マイクロチャネル内又は平行マイクロチャネルのアレイ内に充填され、次いで、壁上における毛細管機能内に流体を残した後に排出される。該流体は、次に、乾燥又は排出させられ、該壁上に活性剤を残し得る。該流体は、水性ベースであり得、又は固体ナノ粒子、ポリマーコーティング組成物又は任意の液体コーティング組成物の溶液を含み得る。
【0130】
毛細管機能保持モデリング
重力を伴わない毛細管機能
図7は、毛細管ニッチに注入する、ケースI〜VIと名付けた6段階を示す。該ニッチは、便宜のために上方に向けられて示される。表面の曲率半径は、重力が重要ではないかのように、各ケースにおいて該表面にわたって一定であるかのように示される。
【0131】
ケースIにおいて、接触θの静水角度(静水接触角)は、熱力学、すなわちθ=αにより制御される。ここで、αは、熱力学接触角であり、液体、固体及び蒸気の組成の関数である。より多くの液体を加えると、結局、該表面は接触ラインがコーナーに達する地点、すなわちケースIIまで高まる。静水接触角は、熱力学接触角に以前として等しい。次により多くの液体を加えると、該表面は、コーナーにおいての該表面の向きの不連続性のために熱力学接触角を維持することができない。その代わり、接触ラインはコーナーに残り、他方、静水接触角は、ケースIIIに示されるように増加する。結局、この角度は直角になり、該ニッチは満たされる。更に液体を加えると、該表面が該ニッチの上部を超えて膨張する(ケースIV)。適切な静水接触角は、今度はニッチ外部の表面に対して測定され得る。この角度はθ’で示される。ケースIVでは、θ’<αである。更なる液体の追加は、表面の曲率をθ’=α(ケースV)まで高める。次の更なる液体の追加は、接触地点をニッチのコーナーを超えて移動させ、液体は、ニッチ外部の面上へと広がる(ケースVI)。該表面形状はまたもθ’=αである。従って、ケースI〜VIでは、表面の形状における境界条件は、熱力学接触角によって設定された傾斜である。yの導関数(微分)は固定され、位置はODEを解くことから見出される。ケースII〜Vでは、境界条件は、表面がニッチのコーナーによって境界付けられる。yの値はある位置に固定され、導関数(傾斜)はODEを解くことから見出される。
【0132】
重力を伴う毛細管機能(2−Dモデル)
次に、ニッチが水平に右側を向いて(図8)重力の影響を無視しないように該ニッチを配向させる。
最初に、我々は、毛細管圧力差を表面の形状に関連付ける必要がある。
関数=f(x,z)(図8参照)によって記述される表面を考察する。次に、実際にyがxにより変化しない2次元のケースを考察する。すなわち、z=一定の面が直線に沿う表面と交差するのに対し、x=一定の面は、y=y(z)が記述するx面における線に沿う面と交差する。
zのある値付近でこの線が局所的に円弧なら、これは、局所的に、
2+z2=R2で記述される。
ここで、Rは曲率半径である。zに対して一度微分すると、yy'+z=0となる。
再度微分すると、y'2+yy''+1=0となる。
また、最初の微分を円弧に対する式に代入すると、y2+(−yy')2=R2となる。
yに対して解くと、次のようになる。
【数14】

ここで、該符合は、座標系の配列及び該円弧の凸状又は凹状内の配列に依存する。第2の微分は次式を与える。
【数15】

1/Rに対して解くと、次のようになる。
【数16】

【0133】
この半径Rは、y−z面における曲率を表す。上記のように仮定すると、xによるyの変動はなく、y−x面における曲率半径は無限である。その場合、湾曲表面にわたる毛細管圧力差は、次のようになる。
【数17】

ΔP=液体とその上の気体との間の圧力降下
σ=表面張力
毛細管力の他、化学コーティングのような他の表面の力も、毛細管機能における液体の保持に寄与し得る。上記式の一般形態は、次のようになり得る。
【数18】

この分析では、我々はF表面=0と仮定する。
【0134】
毛細管ニッチがここで示される。
液体表面は、y=y(z)で記述される。液体外部の圧力は、paで一定である。液体内部の圧力は、zのみの関数、p=p(z)である。従って、圧力差は、
p(z)−paであり、これは毛細管圧力差である。
【数19】

【0135】
境界条件は次のようになる。
1)y(0)=w
2)y'(0)=y'(h)=cot(θ)
ここで、w=毛細管構造の幅
h=毛細管構造の高さ
θ=表面との接触角
【0136】
毛細管機能の例
毛細管機能は、マイクロチャネルの壁内に窪むか、又はマイクロチャネルの壁から、マイクロチャネル壁上に作り出される流路内へと突出する。レーザー切断は、窪んだ機能を作り出す1方法である。該機能は、1mm未満、より好ましくは250ミクロン以下、更に好ましくは100μm以下のスペーシング(間隔)を作り出す。突出した機能は、ロール成形法又はローレット切り法によって作り出され得る。
【0137】
毛細管機能、すなわち液体物質を保持するために用いられる機能は、以下の製造方法により首尾良く作られた。レーザーエッチングは、ベース材料を除去して所期の機能を作り出すため、レーザーの速度及びパワーを調整することにより、レーザーが材料表面に機能を作り出す方法である。毛細管機能を首尾良く作るために用いられる第2の方法は、放電加工(EDM)によるものである。このプロセスは、導電性ベース材料を焼き払うことによって所期の機能を作製するために小径ワイヤを使用する。最後に、毛細管機能は、薄い材料への所期の機能のロール成形により作られている。このプロセスは、円形部品の代わりに平坦材料が用いられる点を除き、円形部品へのローレット切り機能に類似する。このプロセスは、ベース材料上配置される、機能が作製された円形工具を必要とする。該工具が材料上を移動する際、ベース材料を移動させる適用圧力を使用するので、機能が作り出される。
【0138】
機能は、どのような幾何学的形態をも採り得、また、流体保持のための限界寸法を下回る少なくとも一つの寸法(長さ、幅又は深さ)を有することによって定義される。該限界寸法は、流体及び表面境界特性の関数である(モデリング欄参照)。
【0139】
毛細管機能深さ(重力方向に垂直な窪み間隔又は突出間隔として定義される)のための好ましい範囲は2mm未満であり、より好ましくは1mm、最も好ましくは、0.01mm〜0.5mmである。次の点に留意するべきである。すなわち、マイクロチャネル自体が毛細管力を働かせることができる。しかしながら、この力は重力と整列され、また、チャネルは、ウォッシュコーティング流体の一部排出に対し開放する。自然の液体高さは、チャネルからの毛細管力の結果として、排液後、流体だめレベル上方にマイクロチャネル内で保持される。この高さは、マイクロチャネルの望ましいコーティング長さを下回るだろう。
【0140】
毛細管機能の幅(重力方向に平行な開放間隔として定義される)に対する好ましい範囲は、2mm未満であり、より好ましくは1mm未満、最も好ましくは0.1〜0.5mm未満である。
【0141】
毛細管機能の長さは、任意の長さであり得、好ましくは重量方向に直交する。該長さは、マイクロチャネル幅又はその任意の一部に及び得る。ある実施形態において、毛細管機能の長さは、複数の平行マイクロチャネルに及ぶように、マイクロチャネルの幅よりも長いかもしれない。これは、シム製造プロセス中、より長い毛細管機能を形成するために特に有利であり得る。
【0142】
湿潤(濡れた)コーティング厚は、毛細管機能の深さと実質的に同じであり得る。乾燥コーティング厚は、大量のコーティング溶液が、通常、乾燥次第排除される水溶液又は有機液体であるため、実質的に低減される。ある実施形態において、最終乾燥コーティング厚は、約1ミクロン〜250ミクロンの範囲であり得る。コーティング厚の好ましい範囲は、約5ミクロン〜約25ミクロンである。毛細管機能が存在する場合、コーティング厚は、毛細管機能の深さに対する適切な控除又は付加により平均される。
【0143】
水平に整列された毛細管機能の長さは、マイクロチャネル長さに垂直な方向から定義される。深さは、該機能がマイクロチャネル表面から落ち込むか又はマイクロチャネル表面から突き出る間隔である。毛細管機能の幅は、長さ及び深さの両方に垂直な方向である。ある実施形態において、マイクロチャネルのコーティングされた区域は、実質的に直線状の長さを有する(高さ及び幅は変化し得る)。
【0144】
コーティング厚の測定は、該コーティング厚を量的に測定するためにデバイスを断面へと切り込み、SEM画像を撮ることにより、実験施設内で行われる。
【0145】
複数の機能が任意の与えられたマイクロチャネル(マイクロチャネル壁内又は該壁外へと異なる深さで突出又は窪む機能を含む)内に含められ得る。
【0146】
一例の機能は、角度付けられた凹状機能によりオフセットされた水平(重力が下方を向く)凹状の毛細管機能を含む。図9a参照。水平機能は、マイクロチャネル壁の下方への重力による流体排出に対する止め部を作り出すために特に好ましい。しかしながら、すべての毛細管機能が、ウォッシュコート溶液を均一に保持するために水平である必要はない。ばらつき(変動)が、ウォッシュコーティング溶液(又は、マイクロチャネルの壁に塗布され得る任意の他の流体溶液)の保持を調整するために加えられ得る。
【0147】
いくつかのパラメータがあり、これらは、各機能に対する深さ、幅及びスペーシングを含む。これらのパラメータのどれか又はすべては、デバイスの特定区域における触媒装入(触媒使用量)を調整するため、チャネル全体にわたって変更され得る。より複雑なパターンが、サブパターンを共にグループ化することにより、形成され得る。取込みを最小にするか及び/又は触媒装填を調整するため、各サブパターンは、それ自体のパラメータセットを有し、該パラメータセットは、他のサブパターンセットとは互いに独立に制御され得る。
【0148】
毛細管機能は、マイクロチャネル壁の長さに沿う触媒又は任意の他のウォッシュコーティング溶液の適用を調整するために使用され得る。より多くの触媒が好ましくは反応器入口付近にあり得、従って、より深い及び/又はより接近して間隔がおかれた凹状又は凸状毛細管機能がこの域に配置され得る。該反応域の端部付近において、反応が完了付近で進行しているので、必要な触媒はより少ないかもしれない。触媒区域の端部付近で触媒装入を低減することが好ましいかもしれない。従って、ある実施形態において、一つの入口及び一つの出口を持つ反応マイクロチャネルは、出口付近よりも入口付近により高密度な毛細管機能を有するか、又は逆に、入口付近よりも出口付近により高密度な毛細管機能を有する。
【0149】
図9bに示すように、上記機能は、凹状又は凸状のドット、円形、半球、円筒その他の形態を採り得る。凸状毛細管機能間のスペーシングは毛細管を作り出す。好ましくは、これらのスペーシングは、上記の毛細管寸法を有する。
【0150】
図9cは、凸部(突起)領域と凹部(窪み)領域の交互の区域を示す。毛細管機能は、間に直線状毛細管スペーシングがある直線状水平凹状チャネル又は直線状凸部を含み得る。別の代替案において、毛細管機能は、正方形波形パターンを含み得る。
【0151】
図9dは、斜交平行毛細管機能を例示する。図9eは、単純な水平機能を例示する。他方、9fは斜線機能と交互となる水平機能を示す。図9gは、斜線機能から本質的に成る毛細管機能を示す。
【0152】
図9hに示すように、毛細管機能は、丸みのある突起部、好ましくはコラムの形態の突起部、より好ましくは少なくとも三つのコラムの突起部であって、コラムの突起部が隣り合う突起部と整列しないものであり得る。あるいは、突起部は、窪みであり得、ある実施形態において、丸みのある縁を有する窪みであり得る。
【0153】
図9iは、凸状毛細管機能としての三角柱を示す。また、代替実施形態において、該突起は窪みであり得る。
【0154】
均一コーティングの場合、毛細管機能は、マイクロチャネルの長さ又は均一コーティングにとって望ましい長さに実質的にわたって延びる。ある実施形態において、マイクロチャネルは、その長さの50%以下にわたって毛細管機能を有し得、ある実施形態ではその長さの20%以下にわたって有し得る。
【0155】
ある好ましい実施形態において、均一層の断面SEM画像は、アルミナイド層に対して示されるように、滑らかな表面を示すと言及され得る。
【0156】
無電解めっき
導電性及び非導電性の両方の反応器壁における触媒金属の無電解めっきの使用もまた、均一なコーティングを作り出し得る。そのような無電解めっき溶液は、水溶性金属塩と、ヒドラジン水和物等の還元剤と、場合によっては、めっき金属の沈殿を防止するEDTA等の安定剤と、場合によっては、最適なめっきのためのpHを調整する、3,4−ジメトキシ安息香酸、もしくは酢酸等の酸の促進剤とを含み得る。マイクロチャネル反応器では、無電解めっき溶液は、反応の開始前に、チャネル内に(所望高さまで)好ましく満たされる。該溶液は、室温以下で導入され得、次いで、必要なめっき温度まで埋込みマイクロチャネルを用いて加熱される。ある用途において、均一なコーティングを実現するため、めっきプロセスが、めっき溶液が排出される前に終わることが重要であり得る(特に、該排出プロセスが、めっきプロセスに比べて長い場合)。これは、例えば、本質的な反応物質の一つが、排出プロセスが始める前に枯渇する、めっき組成/反応を制御することによって成し遂げられ得る。別のアプローチは、排出前にめっき温度を下げるものである。無電解めっきは、マイクロチャネルに均一なコーティングを作るための好ましい選択肢であると考えられ、また更に、マイクロチャネルコーティングに対して使用されると考えられる。しかしながら、この技術は、マイクロチャネルにおいて証明されていなかった。また、該技術は、必ずしも、マイクロチャネルに均一なコーティングをもたらさないであろう。例えば、排液問題に加えて、めっき液は、液中で粒子が生じず、かつ重力でドリフトしないように、マイクロチャネルにおいて安定するように選択されるべきである。また、濃度勾配が生じ得るので、またこれら勾配の影響が知られていないので、溶液を、マイクロチャネル内で撹拌することはできない。
【0157】
マイクロチャネル壁は、セラミック、金属、アルミナがコーティングされたアルミナイド等であり得る。無電解析出にとって好ましい金属には、Cu、Ni、Fe、Co、Au、Ag、Pd、Pt、Sn、Rh、Ir、及びこれらの組合せを含む。めっき浴の組成、めっき速度、及びめっき条件、例えば温度は、めっきコーティングの形態、すなわち平均金属結晶寸法をもたらすと予想される。そのようなパラメータの制御は、非反応性であるコーティングプロセス(例えば、水溶性金属塩溶液のウォッシュコーティング)に対して予測されるものよりも小さく、またより狭い範囲の金属結晶寸法をもたらし得る。
【0158】
他のコーティング改修
種々の他の改修は、アルミナスケールに対するアルミナコーティングの付着又は他の特性を高めるために使用することができる。アルミナコーティングは、アルミナゾル又はスラリーを用いて堆積され得る。
【0159】
マイクロチャネルにおいてより高い均一性を達成するため、コーティング溶液は、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルピロリドン等の界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、壁に対する流体の接触角を低減し、これは、該流体が、マイクロチャネル壁をより十分に濡らしかつ覆うことを可能にする。
【0160】
排出液体コーティング組成
ウォッシュコーティングの一つの問題は、マイクロチャネルからの液体の排出中、マイクロチャネルの上部が有効に排出されるのに対し、マイクロチャネルの底部は、いくらかの液体が毛細管動作によりマイクロチャネル内に保持されるため、濡れたままであることである。最後の液体を除去する一つの技術は、ガス流でのパージである。しかしながら、液体が複数のマイクロチャネル(例えば、少なくとも二つ、少なくとも十、もしくは少なくとも百のマイクロチャネル)から除去されている際、ガス流は、マイクロチャネルを通じて一様ではなく、又は一様ではなくなり、不均一なチャネル−チャネル(チャネル間)コーティング厚をもたらす。該不均一性は、二通りで生じ得る。すなわち、(1)チャネルからよりゆっくりと液体が除去され、これが、チャネル壁へのより多くの堆積を許容するか、又は、(2)ガスがいくつかのマイクロチャネルをより迅速に流れ、チャネル壁からコーティングをはぎ取る。この影響を最小にするため、マイクロチャネルを通るパージ流は、各マイクロチャネルを通る流れが70%以下(最大流のパーセントとして)だけ、好ましくは40%以下だけ変化するように、低速に制御される。この流れは、背圧(逆圧)によって又はドレイン(一般にマニホルド入口又はマニホルド出口)を通じての真空による吸引よって引き起こされ得る。より好ましい方法は、吸込導管を使用することであり、該導管は、マニホルドに接続されるマイクロチャネルセットのマイクロチャネル(好ましくは一つのマイクロチャネル)のサブセットから流体を吸引するため、マニホルドを通って動かされる。この方法において、マイクロチャネルに(又は逆に、マイクロチャネルを通るガス流に)適用された排液吸込みは、吸込みが全体としてのマニホルドに適用された場合に比べてより等しくされる。二つ以上又は十以上のチャネルに供給する接続チャネルへの吸込みの適用についての一つの問題は、接続チャネル回路における流れが作り出す圧力差が結果として生じることである。(最低の圧力低下で定義されるような)第1チャネルが排出された後、吸込み又は連続液体流の喪失は、残りのチャネルに保持された液体を除去することを困難にする。これは、ストローからの吸引によってソーダ缶から最後の液体を排出することの困難さに類似する。
【0161】
コーティング均一性を高める別の可能性は、マイクロチャネルから液体を排出することを補助する芯材(吸上げ材)を使用することである。この目的のため、吸上げ機能は、マイクロチャネルデバイスと一体であり得、又は、排出プロセス中に一時的に挿入され得るが、使用前に除去される。芯材は、残りの液体を排出する毛細管サイフォン作用を作り出すために使用され得る。
【0162】
マイクロチャネルのコーティング溶液の高さを制御するため、ウォッチ管が使用され得る。ウォッチ管は、マイクロチャネルデバイスに接続される透明管である。コーティング液は、マイクロチャネルデバイスの一部内へと注入され得る。ウォッチ管はマイクロチャネルデバイスに接続される(例えばW字形接続部により、該接続部において、シリンジが該Wの中央に取り付けられ、Wの一側部がマイクロチャネルデバイスに接続され、Wの一側部がウォッチ管に接続される)。この形式において、マイクロチャネルの水力直径が毛細管力を作り出すのに十分小さい場合、ウォッチ管の水力直径がチャネル水力直径と同様ならば、液体レベルの高さはマイクロチャネルにおける液体の高さに対応する。2mm未満の水力直径では、特に濡れていないマイクロチャネルにおいて液体上昇が生じるように、いくらかの毛細管力が作用することが予測される。別の選択的コーティング技術において、コーティングは、選択されたチャネルを一時的に塞ぐことにより(取外しできるキャップ等により)、選択されたマイクロチャネルから排除される。これは、ガス圧が、それらチャネルが満たされることを防ぐ一方、他の塞がれていないチャネルが液体で満たされて、ガスが出口ポートから逃げるようにされる。
【0163】
触媒コーティング
触媒は、当業界に知られている技術を用いて適用され得る。塩水による含浸が好ましい。Pt、Rh及び/又はPdは、ある実施形態において好ましい。一般に、これには、当業界において知られている熱処理及び活性化ステップが続く。pH>0の溶液からの塩が好ましい。
【0164】
他の液体コーティング技術
コーティングは、チャネルを望ましい高さまで液体コーティング組成物で満たし、かつ減圧下で揮発性成分(一般に溶剤)を除去することにより、マイクロチャネル壁上に塗布(適用)され得る。泡立ち欠陥を避けるため、注意が払う必要があり得る。
【0165】
コーティングがマイクロチャネルに塗布され得る別の方法は、過飽和のウォッシュコート溶液を用いること、又は、該溶液をマイクロチャネル内で冷却してその位置で過飽和を作り出すことである。固体は、次いで、マイクロチャネル壁上に堆積する。この技術は、マイクロチャネルの選択された部分を冷却するため、隣接する冷却(している)チャネルを使用することにより、選択的コーティングの可能性を提供する。例えば、マイクロチャネルの長さのせいぜい50%(又はせいぜい20%)の区域が選択的に冷却され得る。適用した冷却の量は小さい、また、該量は、壁が優先的に冷却される一方、チャネルにおける液体が実質的に冷却されないように制御され、これにより、バルク流体中の粒子の形成を防ぐ。
【0166】
反応
コーティングされたマイクロチャネル装置は、表面触媒が用いられ、また高温の場合、例えば、180℃超、250℃超、500℃超、ある実施形態では700℃以上又はある実施形態では900℃以上の場合、特に有用である。
【0167】
ある側面において、本発明は、反応を実行する方法を提供し、該方法は、少なくとも一つの反応物質をマイクロチャネル内へと流す工程と、該少なくとも一つの反応物質を触媒の存在下でマイクロチャネル内で反応させ、少なくとも一つの生成物を形成する工程とを含む。ある実施形態において、反応は、以下から選択される反応から本質的に成る。すなわち、アセチル化、付加反応、アルキル化、脱アルキル、水添脱アルキル化、還元アルキル化、アミノ化、アンモ酸化、アンモニア合成、芳香族化、アリル化、自熱式改質、カルボニル化、脱カルボニル、還元カルボニル化、カルボキシル化、還元カルボキシル化、還元カップリング、凝縮、分解、水素化分解、環化、環オリゴマー化、脱ハロゲン、二量化、エポキシ化、エステル化、交換、フィッシャー−トロプシュ、ハロゲン化、ヒドロハロゲン化、同族体化、水和、脱水、水素化、脱水素、ヒドロカルボキシル化、ヒドロホルミル化、水素化分解、ヒドロメタル化、ヒドロシリル化、加水分解、水素処理(HDS/HDN)、異性化、メチル化、脱メチル、メタセシス、ニトロ化、重合、還元、改質、逆水性ガスシフト反応、サバティエ、スルホン化、短鎖重合、エステル交換、三重化、及び水性ガスシフトから選択される反応である。燃焼は、別の好ましい反応である。(メタン、エタン又はプロパン蒸気改質等の)炭化水素蒸気改質は、特に好ましい。
【実施例】
【0168】
マイクロチャネルすなわちマイクロチャネルデバイスにおける均一コーティング
マイクロチャネルデバイス(図10)は、48セット(4×12)の平行なチャネルを有し、各セットは5の個々のチャネルから成る。該デバイスは、メタンの蒸気改質(SMR)のために設計され、また、一体型燃焼器(燃焼のための燃料、空気及び排気、反応物質、及び、SMRに対する生成物)を含む。該デバイスは、20インチ(50cm)を超える長さであり、アルミナイド化回路を40インチ(1.0m)を超える長さにする(排気は燃料及び空気に連通し、生成物は反応物質に連通する)。燃料及び空気チャネルは、各組のチャネルにおけるジェット孔のアレイを介して連通する。
【0169】
SMRチャネルはアルゴン流で覆われ、他方、燃焼器回路内の複数チャネルは、アルミナイド化された。計算は、マイクロチャネルを通るアルミナイド化ガスの流れが、かなり不均一であったことを示した。ここで、いくつかのチャネルの流量が他のチャネルの流量よりも十倍大きいが、各マイクロチャネル内の表面積が相対的に同様であった。流れにおけるこの差は、チャネル及びマニホルド領域の複雑な設計のためであり、ここで、流れ分布設計は、アルミナイド化プロセス中に用いられる低流量に比べての(10倍を超える格段に高い流量の)操作状態中の流れに対して開発された。CVD蒸気流は、排気マニホルドから供給され、排気チャネル及びU字形ベンドを通り、次いで燃料及び空気チャネル内へと流れ、燃料及び空気マニホルドを通って出た。アルミナイド化後、該デバイスは、切開され、種々のチャネルがSEMによって検査された。断面サンプルは、デバイスの中間点(図11)及び一端部付近で調べられた。この端部は、アルミナイド化回路の始まり付近(排気チャネル)及びアルミナイド化回路の終わり付近(空気及び燃料チャネル)(図12)の両方である。
【0170】
SEMデータから、アルミナイドコーティングが、チャネル間流量の大きな差異にもかかわらず、各チャネルの長さ並びにチャネル間の両方に沿って非常に均一であったことが理解され得る。各ケースにおいて、コーティング厚は約10%以内にあるように見えた。加えて、コーティングは、本質的に欠陥がないように思われた。
【0171】
コーナーにおけるコーティング
マイクロチャネルデバイスの内部コーナーはSEMにより検査された。これらのデバイスもまた、アルミナイド層がコーティングされたインコネル(登録商標)617であった。アルミナイド層がコーティングされた鋭く(90±20°)適格なコーナーは、驚いたことに等角(もしくは正角)コーティング(図13a参照)(チャネル内部(暗い領域)とアルミナイドコーティングとの間の境界において鋭角を有する)を有することが分かった。該コーティングの角度を測定するため、コーティングの角度は、各コーナーから各縁に沿う100μmに対する表面粗度の平均に基づく。ある好ましい実施形態においてコーティングの角度は90±20°、ある好ましい実施形態では90±10°である。別の測定は、コーティング角度を測定するために用いた同じ100μmの(二つの)線の延長部(d1及びd2)(図13b参照)に基づく、コーナーコーティングの周囲におけるコーティングの厚さ((d1+d2)/2)である。好ましくは、コーナーコーティングの周囲におけるコーティングの厚さは、(マイクロチャネル壁にわたって平均した又は該コーナーで終端する100μmのマイクロチャネル壁セグメントにわたって平均した)平均厚の25%以内、より好ましくは10%以内、又は、(マイクロチャネル壁の中間点で測定した又は該コーナーで終端するマイクロチャネル壁セグメントで測定した)中間点厚さの25%以内、より好ましくは10%以内である。
【0172】
クラック充填が図14に示される。この例において、インコネルシートが型押(刻印)された。型押プロセスは、わずかに湾曲した縁をもたらす傾向にある。これらの湾曲した縁は、二つのラミネートされたシート間に形成されたコーナーにおける空隙をもたらし得る。アルミナイドコーティングがこの空隙を埋め、再びこれが、該空隙が埋められる地点まで等角形態(コーティングの厚さは均一)で生じ、該コーティングは、もはや成長できない。換言すれば、厚さは、金属基材からの距離によって制限されるように思われる。
【0173】
マルチチャネルゾルコーティングデバイス
48セットのチャネルを有するマイクロチャネル試験デバイスが組立後のコーティングと共に準備され、試験された。該デバイスは、インコネル(登録商標)Niベースの超合金から作製された。アルミナイド層が該合金上に形成された。次いで、これが(後述するように)酸化させられ、アルミナ層を形成した。いくつかの溶液ベースのコーティングが塗布された。コーティングを塗布するため、デバイスが一端部上に配向され(直線状マイクロチャネルが重力と平行に配向され)、各段階において、該液体は、底部(重量に対して)にある入口を通ってマニホルド及びマイクロチャネルまで加えられた。マニホルドにおける液体のレベルは、圧力計を使用して制御された。該流体は、次いで、重量により徐々に排出され、N2パージがマイクロチャネルから残った液体を一掃した。窒素パージ速度は、48プロセス及び48燃料マイクロチャネルを有するデバイスでは、140SLPMを超えた。可能性はほとんどないが分布が均一の場合、マイクロチャネル毎の流量は、窒素パージ工程中、2.9SLPMを超えるであろう。この例において、熱成長アルミナ層は、まず、La含有溶液で処理され、次にアルミナゾル(15wt%アルミナ)、次いでLa含有溶液、最後にPt含有溶液(10wt%溶液)で処理された。該デバイスは、次に、分析のために複数部分にカットされた。該コーティングは、フレーキングの無い優れた付着性を示した。元素分析が、20kV励起エネルギーのエネルギー分散分光法(EDS)を使用して100×、500×及び2000×の拡大で行われた。別途指定の無い限り、これは、本明細書中に記載したいかなるコーティングの元素分析に対しても使用されるべき条件(100×において、又は100×が利用可能な面積よりも大きい場合、SEMにとって最大利用可能面積)である(そのような測定条件が特定システムにとって実行不可能な場合、ある変更が望まれ得ることを認識している)。周知のように、この技術は、表面組成並びに該面下のいくつかの厚さをを測定する。
【0174】
6チャネル(3チャネルが2セット)が分析された。各セット3チャネルから、該デバイスの縁上に2チャネルがあり、中間に1チャネルがあった。6チャネルにおけるコーティングは、コーティングされた区域の上部及び底部(ウォッシュコーティング時の重力に対して)で分析された。各チャネルのwt%Ptが次に示される。
【表2】

理解され得るように、マイクロチャネル毎において一貫した傾向はない。第2セットのマイクロチャネル(4、5、6)において、装入、排出又はその両方に問題があったように思われる。第2セットのチャネルは、チャネルの上部よりも底部において約2倍も多いコーティングを含んでいた。おそらく、ウォッシュコーティング段階中、第1セットのチャネルは効率良く排液したが、第2セットはそうではなかった。外側マイクロチャネルが、おそらくこれらのチャネルのよりゆっくりとした排液のため、多くのコーティングを含むという影響があるとも思われた。このデータでは、一つの標準偏差に対する変動(ばらつき)は、六つのチャネルの上部及び底部の両方に対する平均値の40%を超える。
【0175】
チャネル間及び内部チャネルの両方の偏差は、上記平均あたりの標準偏差に換算して記述され得る。チャネルからチャネルへの及びチャネル内での触媒装入の正規ガウス分布を想定して、すべてのチャネルの68%は、平均から1標準偏差以内となり、すべてのチャネルの95%が平均から2標準偏差以内となり、かつ、すべてのチャネルの99.7%が平均から3標準偏差以内となる。
【0176】
別のセットの分析チャネルでは、チャネルからチャネルへの及びチャネルの長さに沿う幅広の変動が測定された。4軸方向位置において分析された3チャネルのセットに対するPt触媒のチャネル間変動は、チャネルの上部において27%の平均あたりから2標準偏差を有した。1標準偏差以内の均一性は、約+/−l5%のチャネル間変動を与えるであろう。2標準偏差以内の均一性は、約+/−22%のチャネル間変動を与えるであろう。3標準偏差以内の均一性は、約+/−45%のチャネル間変動を与えるであろう。チャネルの底部におけるPt触媒変動は、52%Ptの平均及び8の標準偏差を与える。1標準偏差の均一性は、+/−30%のチャネル間変動を与えるであろう。2標準偏差以内の、チャネルの底部におけるチャネルからチャネルへの均一性は、+/−約61%のチャネル間変動を与えるであろう。チャネル底部における3標準偏差以内の均一性は、+/−約92%のチャネル間変動を与えるであろう。すべてのケースにおいて、Pt触媒の均一性の程度は、2標準偏差以内に定義され、20%を超える。変動は、予想どおり、チャネルの底部においてより大きい。これは、チャネルからチャネルへの排出における相違によって均一性が悪化されるからである。排出口により近いチャネルは、最初に排液し、排出口からより離れたチャネルに比べ、より長い時間、材料蓄積が少ないと予想される。
【0177】
内部チャネル変動も、このデバイスではかなり大きかった。1標準偏差の3チャネルにわたる平均変動は、わずかに50%を超えた。このデータは、チャネルのおおよそ2/3が、50%近くの変動を有し、他方、チャネルの1/3が一層大きい変動を有するであろうと見積もられることを示唆する。
【0178】
チャネル間及び内部チャネル両方の触媒装入に対する目標変動は、目標プロセス性能を達成するために20%以内である。均一性は、デバイスにおいて測定されるように2標準偏差以内の性能を評価することによって測定され得る。
【0179】
記述した発明は、この実施例において述べたコーティング均一性の課題を克服する。内部チャネル均一性は、ウォッシュコーティング流体に作用する優勢な力が表面力で、重力ではない場合、特に有利である。この実施例においてウォッシュコーティング流体に作用した重力は、保持した液体層の上部を薄くし、また、内部チャネルの大きい不均一性をもたらした。表面力は、毛細管、付着、又はチャネル長さに沿って均一に又はほぼ均一に流体を保持するように作用する化学反応を含む。加えて、記述した例は、乏しいチャネル間均一性を実証した。記述した発明は、チャネル間均一性が、該デバイスがウォッシュコーティング溶液を注入されかつ排出されるプロセス方法によって支配されることを示す。一つの溶液は、液体がマイクロチャネル壁に到達した際に該液体を滞留させる毛細管機能を使用することとなる。この方法は、注入及び排出時に流体が該デバイスにおける他の箇所で費やす時間にあまり影響を受けない。そのため、チャネル当たり約1SLPM未満のガス状パージが排出プロセス後にマイクロチャネルの端部における過剰材料を吹き飛ばすために必要であると予想される。好ましくは、ガス状パージはマイクロチャネル当たり0.5SLPM未満である。より好ましくは、ガス状パージはマイクロチャネル当たり0.1SLPM未満であり、ある実施形態では実質的にゼロである。付着、化学反応、電気化学反応を含む他の表面力アプローチは、注入及び排出プロセスから生じる不均一性に対してより影響を受けやすいであろう。均一性は、流体が本質的に所定の箇所にある場合、又は、液体が、表面力が実質的に作用する前に望ましい液体レベルまでチャネル内に注入された場合、特に有利となる。逆に、マイクロチャネルからウォッシュコーティング流体を除去又は排出する前に表面力の割合(速度)を下げることが望ましい。付着又は化学反応の両ケースでは、一つのオプションは、チャネルを第1温度で注入及び排出することであろう。該第1温度は、実質的に、ウォッシュコーティング流体を蓄積もしくは保持するようにウォッシュコーティング流体と壁が相互作用又は反応する第2温度未満である。第2温度は、第1温度よりも少なくとも10度高く、好ましくは20℃以上高い。化学反応の場合は、ウォッシュコーティング流体は、反応して消滅することが許容され、排出プロセス中に不均一コーティングは起こりそうにない。また、排出中、温度の低下は必要ない。ウォッシュコーティング流体をコーティングするマイクロチャネルは、化学反応器のようなチャネルプロセスの操作中に使用される第2セットの平行マイクロチャネルに隣接する。この第2セットのマイクロチャネルは、注入及び排出プロセス中にマイクロチャネルデバイス全体にわたって均一な加熱及び冷却の分布を制御及び維持するために特に有利であり得る。例として、隣接する熱交換マイクロチャネルにおける一方向から熱交換流体を流すことにより、デバイス温度を第1温度から第2温度へと上げることに特に有利であろう。このプロセスの一時的な性質は、マイクロチャネルの第1端部がより高い温度の熱交換流体をまず認識し、最初に温度を高めることを明らかにする。平均マイクロチャネル温度を第1温度から第2温度へと動かすための一時的な時間は、30分未満、好ましくは10分未満、より好ましくは1分未満であり得る。デバイス温度を高める該時間がマイクロチャネル壁に流体保持する表面反応又は付着プロセスに必要な総時間の10%以内である場合、逆に冷却が行われ得、これにより、マイクロチャネルの両端部に対する温度においての総時間がほぼ等しくなり、そのため、排出中、チャネル間不均一を最小にするように、熱交換流体はマイクロチャネルの第2端部から入る。
【0180】
性能計算は、メタン蒸気改質設計のために終了し、燃焼又は発熱マイクロチャネルに対する不均一コーティングの影響を示した。触媒がチャネルの上部又は底部付近で20%以上低下した場合(チャネルの上部20%又は底部20%により定義されるような)、排出性能測定(400ppm又は99.3%メタン燃焼)は、達成され得ない。反応器に対する該性能測定の厳格さがより小さければ、より高い不均一性の程度が許容されるであろう。
【0181】
理論的性能に対する必要なアプローチと許容できる触媒不均一性との間の関係は、十分に評価する意欲をそそり、すべての反応のケースに対していまだ十分に定量化されていない。性能測定は、特に、絶対転化(率)(排出の場合のような)、選択性(部分酸化反応の場合のような)、平衡変換に対するアプローチ(圧力でのメタン改質又は他の平衡制限反応の場合のような)、最大金属又は触媒温度(反応器において有害なホット又はコールドスポットを防ぐ場合のような)、熱ひずみ(デバイスの機械的一体性又は寿命を低減するのに十分な温度勾配を作り出し得る高ひずみ領域付近の過活性触媒の場合のような)を含む。ほとんどの場合、20%以内の触媒均一性が許容でき、より高い触媒不均一性の程度がいくつかのケースで許容され得るであろうことが予想される。
【0182】
熱処理
インコネル(登録商標)617試験片が種々の条件下でアルミナイド化され、熱処理された。アルミナイドコーティングを形成するためにアルミナイド化されたが酸化されていない試験片が図16に示される。アルミナイド層は約30μm厚であり、アルミナイド層と約5μm厚であった合金との間に相互拡散域が存在した。アルミナイド層は28〜31wt%のAlを含み、これはNiAlに相当する。
【0183】
1100度で100時間のアルミナイド化試験片の熱処理は、相互拡散域を本質的に消滅させ、アルミナイド層から合金内へのアルミニウムの実質的喪失があった。1050度で100時間のアルミナイド化試験片の処理は、アルミナイドコーティングの顕著な喪失を示さなかった。
【0184】
アルミナイド化プロセス中に存在する酸化物の影響
図17は、標準アルミナイド化試験片と、アルミナイド化される前にクロミアのある自然酸化物を故意に成長させるために400℃で1時間、空気中で熱処理された試験片との比較を示す。アルミナイドにおける含有物の細い点線が、アルミナイド化前の自然酸化物を有する試験片において観察される。包含物のそのような線は、付着の面で弱点となり得る。これらの図面に対する参照は、アルミナイド層がアルミナイド層と金属基材との間に実質的に酸化物欠陥を有するか又は有さないかを決定する際に採られるべきである。
【0185】
コーティング欠陥はまた、アルミナディスクの存在下でアルミナイド化されたFeCrAlYフィンにおいても観察された。図18は、インコネル(登録商標)617試験片のアルミナイド層における大きな空隙を示す。
【0186】
マルチチャネルデバイスのアルミナイド化における初期の試みにおいて、次の点が発見された。すなわち、ガス入口(すなわち、アルミニウム化合物のための入口)に最も近いチャネルが最も多い含有(物)を示し、他方、最も遠いチャネルは最も少ない含有(物)を示したことである。これは、マイクロチャネル以前のアルミニウム化合物の通路の管類又はマニホルド類における表面酸化物によって引き起こされたと考えられる。管類においての表面酸化物の存在は、EDSによって確認された。これらの欠陥を回避するため、アルミナイド化プロセスにおいて表面酸化物、特に、マイクロチャネルデバイスに至る流体通路(すなわち、アルミニウム化合物を搬送する通路)に沿う表面酸化物を有する構成要素の使用を回避するよう注意が払われるべきである。ある好ましい技術において、管類及び/又は他の流体通路は、水素処理等による表面酸化物を除去する処理(光沢化)にさらされる。もちろん、アルミナイド化前に、マイクロチャネルはまた、表面酸化物を除去するための処理にさらされ得る。
【0187】
好ましい実施形態において、アルミナイド層と、合金基材を有するアルミナイド層と酸化物層(存在する場合)との境界面とは、10μmより大きい空隙又は含有物を好ましくは実質的に伴わず、より好ましくは、3μmより大きい空隙又は含有物を実質的に伴わない。「空隙又は含有物を実質的に伴い」は、図14に示されるようなコーティング、及び、チャネルに沿う50μmの長さにおいて多数の欠陥(すなわち、約五つを超える大きい欠陥又は単一の非常に大きい欠陥)を有する他の構造を除外するが、小数の分離された欠陥を示す図13の左側に示される構造は除外しないであろう。
【0188】
実施例
比較取込み及び反応性能試験が、壁内に毛細管機能凹部を有するマイクロチャネルと比較して平坦マイクロチャネルを用いて行われた。毛細管機能はまた、この例においてマイクロフィンとも呼ばれる。該試験は、燃焼反応に対して行われた。毛細管機能は、この例において非最適化され、好ましくはないが、重力の方向及びプロセス流に対して垂直に向けられた。
【0189】
試験は、両試験デバイスにおける燃焼触媒形成により行われた。第1試験デバイスは、長さ2インチ、直径0.5インチのインコネル617ロッドで、ワイヤーEDMを用いてその中にカットされた0.375インチ×0.045インチ軸方向スロット平坦マイクロチャネルを有する。第2試験デバイスは、長さ2インチ、直径0.5インチで、20軸方向毛細管機能(長い中央リブによって分けられた10の二セットの群)を持つ0.375インチ×0.045インチ軸方向マイクロチャネルを有する。該20軸方向毛細管機能は、深さ0.010インチ×幅0.012インチで、0.004インチのリブで分けられた。軸方向毛細管機能は、第2試験デバイスに第1試験デバイスよりも40%多い幾何学的表面積を与えた。各試験デバイスは、クロミアスケールを作り出すために熱処理され、触媒は内部面にウォッシュコーティングされた。各デバイスでは、15wt%アルミナの7ウォッシュコーティング工程があり、次いで、10wt%Prの1ウォッシュコーティング工程、及び、10wt%Ptの2ウォッシュコーティング工程が続いた。第1デバイス(平坦マイクロチャネル)における触媒の総取込みは、7.9mg/in2と測定された。毛細管機能を有する第2デバイスにおける触媒の総取込みは、14mg/in2と測定された(77%超又は1.77×の増加)。各試験デバイスは、同じ数のゾルアルミナ及び活性金属ウォッシュコートを受けた。メタン燃焼(2%メタン、15%過剰空気、10%蒸気、残余窒素)が行われた際、毛細管機能を有するマイクロチャネルにおけるメタン定常状態転化率は、いかなる表面又は毛細管機能を有さない第1の平坦マイクロ反応器における転化率よりも2.4倍高かったことが分かった。最初の転化率は、毛細管機能付きマイクロチャネルでは平坦マイクロチャネルよりも1.24×高かった。非活性化速度が、毛細管機能マイクロチャネルに対して平坦マイクロチャネルが実質的により高いと判断された。平坦マイクロチャネル上の触媒が、該平坦壁を過ぎて流れる高ガス速度に起因するより高い壁せん断応力を見ることが理論化される。平坦マイクロチャネルに対する平均速度は、この例では100m/sを超える。計算された層流に対して結果として生じるせん断応力は、流れ方向に垂直な速度と速度勾配の積によって定義されるように、6Paを超える。毛細管機能内の予想壁せん断応力は、凹状毛細管機能内に非常に少ない流れが予想されるので、1Paより小さくなると予測される。コーティングの温度が発熱燃焼反応により高まるにつれ、コーティングと壁(非常に異なる熱膨張係数を有する各材料)との間に結果として生じる材料の応力は、該コーティングをよりクラック及びフレーキングを生じやすくし得る。そのため、材料の喪失を起因とする触媒非活性化を悪化させる。これに応じて、毛細管機能内に保持される触媒は、壁せん断応力の高さとして見ず、そのため、メタン転化率及びそのため熱放出がより高いため、触媒コーティングの予想温度がより高いにもかかわらず、フレーキングを受ける可能性が低下する。更に、毛細管機能におけるコーティングはより大きい表面積を有し、また、コーティングサイトが配置される卑金属構造がより堅くなり、そのため、コーティングは張力がより強くなる。マイクロチャネル金属壁とアルミナコーティングとの間のCTE不整合は、該コーティングを高温で緊張させ、そのため、クラックが生じやすい。この例の金属マイクロチャネルは、アルミナイド化されていないが、熱処理表面上に直接ウォッシュコートされたアルミナゾルを予想以上に含んでいたことも留意されるべきである。アルミナイド化されたチャネルは、バルク材料からセラミック上塗コーティングへと段階的材料を作り出すために理論化され、ここで、CTE不整合問題が熱膨張の段階的係数により最小化される。結果として生じた、アルミナイド化表面上のセラミックコーティングは、緊張により強く、クラック形成の傾向が低減するように理論化される。
【0190】
実験結果が図19に示される。総反応物質流量は19SLPMであり、温度は800℃であった。性能の向上の相対量(2.4×)は、表面触媒装入量の測定量(1.7×)を超え、また、幾何学的表面積の増加量(1.4×)をも超えた。更に、残留時間の増加は、毛細管機能の全容量が流れに対して開放している場合、1.14×である。モデル予測が行われ、ここで、仮定均一コーティングが毛細管機能及び介在平坦壁及びリブ上に作り出された。この計算では、2%(1.02×)の予測転化率の改善が計算された。この予測した向上は、毛細管機能におけるより高い触媒装入の結果としての実際と比較して、かなり低く、また、毛細管機能内に見出された領域に対する計算された有効係数よりもことによるとより高かった。毛細管機能は、滞留時間分布がマイクロチャネルにおいて作り出されるように、流れに対する停滞領域を作り出すように作用することが更に理論化される。平均しての反応物質分子は、毛細管機能を含むデバイスにおいてわずかに多い反応する時間を有する。これは、該反応物質分子が、短接触時間操作中、バルク流マイクロチャネルから対流によって押し流されないであろうからである。
【0191】
毛細管機能は、毛細管機能を伴わない理想的に調製されたチャネルと比較して、驚くほど優れた結果を実証した。
【0192】
本発明の好ましい実施形態において、ウォッシュコーティングは、毛細管機能を伴わない点を除く理想的な条件下でマイクロチャネルをウォッシュコーティングすることと比較して、0.5mg/cm2以上の、より好ましくは1mg/cm2以上のコーティング厚を作り出す。この場合、cm2は、コーティング前のチャネルの幾何学的表面積を意味し、この値は、毛細管機能によって与えられる余分の面積を数に入れない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロチャネル装置であって、
複数の不連続な凹状又は凸状の毛細管機能にして、該凸状又は凹状深さが、該毛細管機能が配置されるマイクロチャネルの最小寸法の40%未満である毛細管機能を備え、
該毛細管機能は、少なくとも三つ以上の平行マイクロチャネル内に含まれ、
該毛細管機能は、1mm未満の少なくとも一つの寸法を有するマイクロチャネル装置。
【請求項2】
前記毛細管機能はウォッシュコートでコーティングされる請求項1のマイクロチャネル装置。
【請求項3】
前記マイクロチャネル装置は、毛細管機能が無い平坦領域を含み、マイクロチャネル壁の平坦領域上よりも、毛細管機能を有する領域上に少なくとも40%多いウォッシュコート材料の質量がある請求項2のマイクロチャネル装置。
【請求項4】
前記ウォッシュコートは触媒を含む請求項2又は3のマイクロチャネル装置。
【請求項5】
前記少なくとも三つ以上の平行マイクロチャネルが層にあり、該層は中央領域及び縁領域を有し、該中央領域は、縁領域よりも高密度の毛細管機能を有する請求項4のマイクロチャネル装置。
【請求項6】
前記複数の毛細管機能は、250μm以下の間隔により分離される請求項1〜5のいずれか1項のマイクロチャネル装置。
【請求項7】
前記ウォッシュコートは、1〜250μmの厚さを有する請求項2〜5のいずれか1項のマイクロチャネル装置。
【請求項8】
前記ウォッシュコートは、5〜25μmの厚さを有する請求項2〜5のいずれか1項のマイクロチャネル装置。
【請求項9】
前記毛細管機能は、凹状又は凸状の円筒からなる請求項1〜8のいずれか1項のマイクロチャネル装置。
【請求項10】
化学単位操作を実行する方法であって、
請求項1の前記マイクロチャネル装置の内部マイクロチャネルに流体を通す工程と、
内部マイクロチャネルにおける前記流体に化学単位操作を実行する工程とを含み、
前記化学単位操作は、反応、分離、加熱、冷却、蒸発、凝縮、及び混合からなる群から選択される方法。
【請求項11】
マイクロチャネル壁上にウォッシュコートを塗布する方法であって、
毛細管機能を含む少なくとも一つのマイクロチャネル壁によって定義されるマイクロチャネルを含むマイクロチャネル装置を準備する工程と、
ウォッシュコーティング液体を該マイクロチャネルに加えて毛細管機能に接触させる工程と、
該マイクロチャネルからウォッシュコーティング液体を排出させる工程とを含む方法。
【請求項12】
マイクロチャネルデバイスをウォッシュコーティングする方法であって、
共通マニホルドを共有する複数の平行内部マイクロチャネル内に液体コーティング組成物を加える工程と、
共通マニホルドを共有する該複数の平行内部マイクロチャネルから前記液体を排出させる工程と、
次の工程(a)、(b)及び(c)のうちの少なくとも一つの工程とを更に含み、
(a)は、共通マニホルドを共有する該複数の平行内部マイクロチャネルから外へ液体を吸い上げる工程であり、
(b)は、共通マニホルドを共有する該複数の平行内部マイクロチャネルにおけるどのマイクロチャネルを通る流れも、共通マニホルドを共有する該複数の平行内部マイクロチャネルにおける各マイクロチャネルを通る平均流の50%内であるように十分低流であるガス流のパージングにより共通マニホルドを共有する該複数の平行内部マイクロチャネルから液体を除去する工程であり、
(c)は、共通マニホルドを共有する該複数の平行内部マイクロチャネルのサブセットに真空を適用する工程である方法。
【請求項13】
共通マニホルドを共有する前記複数の平行内部マイクロチャネルのサブセットに真空を適用する工程を含む請求項12の方法。
【請求項14】
マルチチャネルマイクロチャネルデバイスにマルチマイクロチャネルを正確に満たす方法であって、
前記マルチチャネルマイクロチャネルデバイスにおける前記マルチマイクロチャネルそれぞれの長手軸が該マルチチャネルマイクデバイスの選択された領域において重力と平行に向けられるように、マルチチャネルマイクロチャネルデバイスを重力に対して配向させる工程と、液体源から液体を、前記マルチチャネルデバイスの前記された領域におけるマルチマイクロチャネル内へと加える工程と、マルチチャネルマイクロチャネルデバイス又は他の液体源と連通するウォッチ管の使用により、該マルチチャネルマイクロチャネルバイス内の液体レベルを監視する工程とを含む方法。
【請求項15】
前記液体は、前記マルチチャネルマイクロチャネルデバイスの底部の入口を通ってマニホルド内に流入し、次いで前記マルチマイクロチャネル内へと流れ、液体レベルは、前記ウォッチ管の使用により、望ましい高さに調整される請求項14の方法。
【請求項16】
本発明は、レーザー切断、ロール成形、放電加工、光化学加工及び/又はレーザーアブレーションを含む方法によって毛細管機能を形成することを含む請求項1のマイクロチャネル装置を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図9e】
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【図9f】
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【図9g】
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【図9h】
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【図9i】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−61469(P2012−61469A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259108(P2011−259108)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【分割の表示】特願2007−505225(P2007−505225)の分割
【原出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(504455241)ヴェロシス インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】