説明

マイクロニードルアレイ

【課題】
本発明は、皮膚表層及び/又は皮膚角質層に折れることなく容易且つ均一に刺入できるマイクロニードルであって、マイクロニードルは皮膚表層及び/又は皮膚角質層において溶解するマイクロニードルアレイを提供する。
【解決手段】 複数の微細なマイクロニードルが基板の表面に形成されてなるマイクロニードルアレイであって、該マイクロニードルはヒアルロン酸60重量%以上含む素材により形成された円錐台状であり、その根元直径は0.15〜0.3mm、先端直径は0.02〜0.08mm、高さは0.3〜1.2mmであり、マイクロニードルとマイクロニードルのピッチが0.4〜1.0mmであることを特徴とするマイクロニードルアレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚表層及び/又は皮膚角質層に修飾効果及び/又は機能効果を与えるためのマイクロニードルアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚表層及び/又は皮膚角質層に修飾効果及び/又は機能効果を与えるためには、薬効成分を含む液状物質、軟膏剤、クリーム製剤、テープ製剤、バッチ製剤、パップ製剤等が使用されており、局部に塗布又は貼付することにより、薬物を皮膚や粘膜を透過して投与している。
【0003】
しかし、これらの製剤は皮膚上に塗布又は貼付することにより使用するものなので、使用中に発汗、洗浄、外的圧力等により消失したり脱落するという欠点があった。又、これらの製剤は薬効成分を皮膚に浸透させ体内に拡散することにより薬効を発揮するものであるが、皮膚表層及び/又は皮膚角質層は体内へ異物の侵入を抑止するバリアー機能を有しているので、薬理効果を発揮するのに充分な量の薬効成分を吸収させるのは困難であり、且つ、皮膚表層及び/又は皮膚角質層の特定の場所に薬効成分を確実に供給することは困難であった。
【0004】
最近、これらの問題を解決し、皮膚表層及び/又は皮膚角質層の特定の場所に薬効成分を確実に供給する方法として、マイクロニードルの研究が盛んに行なわれている。例えば、マルトース等の生体内で溶解消失する糖質からなり、一辺又は直径が0.1〜100μmの正方形又は円形の断面形状であり、長さが0.5〜500μmの正方柱状又は円柱状のパイルを基板上に設けた機能性マイクロパイル(例えば、特許文献1参照。)や中心部材の周囲にポリ乳酸、マルトース等の生分解性材料を成分として含む複数の針を設けた皮膚用針(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【特許文献1】特開2003−238347号公報
【特許文献2】特開2006−346126号公報
【0005】
上記マイクロニードルを使用する際には、マイクロパイル(針)を皮膚表層及び/又は皮膚角質層に刺入し摺動すると、マイクロパイル(針)は折れて皮膚表層及び/又は皮膚角質層に残留し溶解消失する。従って、皮膚表層及び/又は皮膚角質層の特定の場所に薬効成分を確実に供給することができる。又、マイクロパイル(針)は非常に細いので皮膚表層及び/又は皮膚角質層に刺入しても痛みはないし出血することなく且つ穿刺創は速やかに閉鎖されるので、皮膚表層及び/又は皮膚角質層の特定の場所に薬効成分を確実に供給する方法として好適である。
【0006】
しかしながら、ポリ乳酸、マルトースでマイクロニードルを形成した場合は、マイクロニードルの機械的強度や硬度が適切ではなく、マイクロニードルを皮膚表層及び/又は皮膚角質層に刺入する際に均一に刺入できず折れてしまったり、摺動してもマイクロニードルが均一且つ容易に折れず皮膚表層及び/又は皮膚角質層に残留させることが困難になる欠点があった。
【0007】
一方、本発明者等は、ヒアルロン酸は多糖類であり、それ自体でも化粧効果を有していることを発見し、ヒアルロン酸でマイクロニードルを作製することを鋭意検討した結果、基板上に特定形状、特定ディメンジョンのマイクロニードルを形成すると、マイクロニードルを皮膚表層及び/又は皮膚角質層に折れることなく均一に刺入でき、皮膚内の水分を吸収して皮膚表層及び/又は皮膚角質層に残留することを見出し、本発明をなすに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記欠点に鑑み、皮膚表層及び/又は皮膚角質層に折れることなく容易且つ均一に刺入でき、皮膚表層及び/又は皮膚角質層において溶解するマイクロニードルアレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のマイクロニードルアレイは、複数の微細なマイクロニードルが基板の表面に形成されてなるマイクロニードルアレイであって、該マイクロニードルはヒアルロン酸60重量%以上含む素材により形成された円錐台状であり、その根元直径は0.15〜0.3mm、先端直径は0.02〜0.08mm、高さは0.3〜1.2mmであり、マイクロニードルとマイクロニードルのピッチが0.4〜1.0mmであることを特徴とする。
【0010】
本発明で使用されるヒアルロン酸は、グリコサミノグリカン(ムコ多糖)の一種であり、N−アセチルグルコサミンとグルクロン酸の二糖単位が連結した構造を有している。ヒアルロン酸としては、例えば、鶏冠、臍帯等から単離される生物由来のヒアルロン酸、乳酸菌、連鎖球菌等により大量生産される培養由来のヒアルロン酸等が挙げられる。生物由来のヒアルロン酸は、その由来となる生物が有するコラーゲンを完全には除去できず、残存するコラーゲンが悪い影響を与える可能性があるので、コラーゲンを含有しない培養由来のヒアルロン酸が好ましい。従って、ヒアルロン酸は培養由来のヒアルロン酸を50重量%以上含んでいるのが好ましい。
【0011】
ヒアルロン酸から成形されたマイクロニードルは、重量平均分子量が小さくなると硬くなり、大きくなると機械的強度が向上し粘り強くなる。即ち、ヒアルロン酸から成形されたマイクロニードルは重量平均分子量が小さくなると硬くなり皮膚に刺さりやすくなるが、機械的強度が低下し保存時や皮膚に刺入する際に折れやすくなる。逆に、重量平均分子量が大きくなると機械的強度が向上し粘り強くなるので保存時や皮膚に刺入する際に折れにくくなるが、硬さが低下し皮膚に刺さりにくくなるので重量平均分子量は5千〜200万が好ましい。
【0012】
又、マイクロニードルを皮膚に刺入する際には刺さりやすく折れにくく、且つ、体内で溶解しやすくするために、重量平均分子量が10万以上の高分子量ヒアルロン酸と重量平均分子量が5万以下の低分子量ヒアルロン酸の混合物からマイクロニードルを形成してもよい。
【0013】
上記高分子量ヒアルロン酸の重量平均分子量は10万以上であればよく、200万以下が好ましい。又、低分子量ヒアルロン酸の重量平均分子量は5万以下であればよく、1000以上が好ましい。尚、本発明において、重量平均分子量はゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値である。
【0014】
又、高分子量ヒアルロン酸と低分子量ヒアルロン酸を混合する際の比率は、各ヒアルロン酸の重量平均分子量によっても異なるので、好ましい機械的強度及び硬さになるように適宜決定されればよいが、一般に、高分子量ヒアルロン酸60〜95重量%と低分子量ヒアルロン酸40〜5重量%よりなるのが好ましい。
【0015】
本発明のマイクロニードルアレイのマイクロニードルは、上記ヒアルロン酸を60重量%以上含む素材により形成される。ヒアルロン酸以外の素材として、マルトース、プルラン等のような糖やコラーゲン、ゼラチンのような蛋白質、ポリビニルアルコールのような合成高分子が添加されてもよい。
【0016】
又、ヒアルロン酸は架橋されていても良い。架橋により機械的強度が改良できる。ヒアルロン酸の架橋は、グルタルアルデヒド等の多官能性アルデヒド、エチレングリコールジグリシジルエーテル等の多官能性エポキシ化合物などを用いて行うことができる。又、市販の架橋ヒアルロン酸を使用してもよい。
【0017】
更に、上記ヒアルロン酸に薬効成分が添加されていてもよい。薬効成分としては、従来から経皮吸収製剤として使用されている薬物及び化粧品の原料であれば特に限定されず、例えば、解熱鎮痛消炎剤、ステロイド系抗炎症剤、血管拡張剤、不整脈用剤、血圧降下剤、局所麻酔剤、ホルモン剤、抗ヒスタミン剤、全身麻酔剤、睡眠鎮痛剤、抗癲癇剤、精神神経用剤、骨格筋弛緩剤、自立神経用剤、抗パーキンソン剤、利尿剤、血管収縮剤、呼吸促進剤、麻薬等が挙げられる。
【0018】
上記解熱鎮痛消炎剤としては、例えば、イブプロフェン、フルルピプロフェン、ケトプロフェン等が挙げられ、上記ステロイド系抗炎症剤としては、例えば、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、プレドニゾロン等が挙げられる。上記血管拡張剤としては、例えば、塩酸ジルチアゼム、硝酸イソソルビド等が挙げられる。上記不整脈用剤としては、例えば、塩酸プロカインアミド、塩酸メキシレチン等が挙げられる。
【0019】
上記血圧降下剤としては、例えば、塩酸クロニジン、塩酸ブニトロロール、カプトプリル等が挙げられる。上記局所麻酔剤としては、例えば、塩酸テトラカイン、塩酸プロピトカイン等が挙げられる。上記ホルモン剤としては、例えば、プロピルチオウラシル、エストラジオール、エストリオール、プロゲステロン等が挙げられる。上記抗ヒスタミン剤としては、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等が挙げられる。
【0020】
上記全身麻酔剤としては、例えば、ペントバルビタールナトリウム等が挙げられる。上記睡眠・鎮痛剤としては、例えば、アモバルビタール、フェノバルビタール等が挙げられる。上記抗癲癇剤としては、例えば、フェニトインナトリウム等が例示される。上記精神神経用剤としては、例えば、塩酸クロルプロマジン、塩酸イミプラミン、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム等が挙げられる。上記骨格筋弛緩剤としては、例えば、塩酸スキサメトニウム、塩酸エペリゾン等が挙げられる。
【0021】
上記自立神経用剤としては、例えば、臭化ネオスチグミン、塩化ベタネコール等が挙げられる。上記抗パーキンソン剤としては、例えば、塩酸アマンタジン等が挙げられる。上記利尿剤としては、例えば、ヒドロフルメチアジド、イソソルビド、フロセミド等が挙げられる。上記血管収縮剤としては、例えば、塩酸フェニレフリン等が挙げられる。上記呼吸促進剤としては、例えば、塩酸ロベリン、ジモルホラミン、塩酸ナロキソン等が挙げられる。上記麻薬としては、例えば、塩酸モルヒネ、塩酸コカイン、塩酸ペチジン等が挙げられる。
【0022】
上記化粧品の原料としては、例えば、パルミチン酸アスコルビル、コウジ酸、ルシノール、トラネキサム酸、油用性甘草エキス、ビタミンA誘導体等の美白成分;レチノール、レチノイン酸、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等の抗しわ成分;酢酸トコフェロール、カプサイン、ノリル酸バニリルアミド等の血行促進成分;ラズベリーケトン、月見草エキス、海草エキス等のダイエット成分;イソプロピルメチルフェノール、感光素、酸化亜鉛等の抗菌成分;ビタミンD、ビタミンD、ビタミンK等のビタミン類などが挙げられる。
【0023】
上記薬効成分はいずれも分子量600以下の低分子化合物であるが、高分子の薬効成分であってもよく、好ましい高分子薬効成分としては、例えば、生理活性ペプチド類とその誘導体、核酸、オリゴヌクレオチド、各種の抗原蛋白質、バクテリア、ウイルスの断片等が挙げられる。
【0024】
上記生理活性ペプチド類とその誘導体としては、例えば、カルシトニン、副腎皮質刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン(PTH)、hPTH(1→34)、インスリン、セクレチン、オキシトシン、アンギオテンシン、β−エンドルフィン、グルカゴン、バソプレッシン、ソマトスタチン、ガストリン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、エンケファリン、ニューロテンシン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ブラジキニン、サブスタンスP、ダイノルフィン、甲状腺刺激ホルモン、プロラクチン、インターフェロン、インターロイキン、G−CSF、グルタチオンパーオキシダーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ、デスモプレシン、ソマトメジン、エンドセリン、及びこれらの塩等が挙げられる。抗原蛋白質としては、HBs表面抗原、HBe抗原等が挙げられる。
【0025】
本発明のマイクロニードルアレイのマイクロニードルの形状は円錐台状であり、その根元直径は0.15〜0.3mm、先端直径は0.02〜0.08mm、高さは0.3〜1.2mmであり、マイクロニードルとマイクロニードルのピッチが0.4〜1.0mmである。
【0026】
マイクロニードルの形状は、マイクロニードルを皮膚に刺入するのであるから、刺入しやすく且つ苦痛を伴わないように円錐台状である。マイクロニードルの根元直径は細くなると皮膚内に刺入するヒアルロン酸の量が減少すると共に皮膚に刺入する際に折れやすくなり、太くなると皮膚に刺入する際に苦痛を伴うので0.15〜0.3mmである。先端直径は、細くなると(尖っていると)皮膚に刺入する際に折れやすくなり、太くなると皮膚に刺入しにくくなり苦痛を伴うので0.02〜0.08mmである。
【0027】
マイクロニードルの高さは、低くなるとヒアルロン酸を皮膚表層及び/又は皮膚角質層の所定位置に供給しにくくなり、高くなると皮膚に刺入する際に折れやすくなるので0.3〜1.2mmである。又、マイクロニードルとマイクロニードルのピッチは、短くなると皮膚に刺入しにくくなり、長くなると面積あたりのマイクロニードルの数が少なくなり、所定の狭い部位に多量のヒアルロン酸を供給できなくなるので、0.4〜1.0mmである。
【0028】
本発明のマイクロニードルアレイは、上記ヒアルロン酸よりなる、微細な針状のマイクロニードルが基板の表面に形成されてなるが、基板はその表面にマイクロニードルを形成しうるものであれば、特に限定されず、例えば、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、SIS樹脂、SEBS樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アルミニウム等のフィルム又はシートが挙げられる。又、マイクロニードルを構成するヒアルロン酸よりなるフィルム又はシートであってもよい。
【0029】
本発明のマイクロニードルアレイの製造方法は、特に限定されず、従来公知の任意の方法で製造されればよく、例えば、マイクロニードルの形状が穿設された型に、上記高分子量ヒアルロン酸と低分子量ヒアルロン酸及び必要に応じて薬効成分の水溶液を流延し、乾燥した後剥離する方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のマイクロニードルアレイの構成は上述の通りであり、マイクロニードルはヒアルロン酸より形成された円錐台状であり、その根元直径は0.15〜0.3mm、先端直径は0.02〜0.08mm、高さは0.3〜1.2mmであり、マイクロニードルとマイクロニードルのピッチが0.4〜1.0mmであるから、皮膚表層及び/又は皮膚角質層に折れることなく容易に刺入でき、且つ、ヒアルロン酸が皮膚水分を吸収して容易にマイクロニードルは皮膚表層及び/又は皮膚角質層において溶解する。
【0031】
従って、皮膚表層及び/又は皮膚角質層の特定の場所にヒアルロン酸を確実に供給することができ、更に、マイクロニードルに薬効成分を添加すれば、皮膚表層及び/又は皮膚角質層の特定の場所に薬効成分を確実に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明を図面を参照して詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
図1は本発明のマイクロニードルアレイの製造方法の一例を示す断面図である。図中1は、感光性樹脂に光照射するリソグラフィ法により所定形状のマイクロニードルパターンを形成した後、電鋳加工することにより所定形状のマイクロニードルパターンを転写したマイクロニードル形成用凹部11が形成された鋳型である。
【0034】
マイクロニードル形成用凹部11は根元の直径が0.2mm、先端直径が0.04mm、深さ0.8mの円錐台状であり、0.8mm間隔に格子状に配列されており、1cmあたり144個形成されている。又、マイクロニードル形成用凹部11は1辺が1.0cmの正方形内に形成されていた。
【0035】
図中2はヒアルロン酸水溶液層であり、重量平均分子量10万の高分子量ヒアルロン酸(紀文フードケミカル社製、商品名「FUH−SU)、培養由来)13.5重量部と重量平均分子量1万の低分子量ヒアルロン酸(キューピー社製、商品名「ヒアルオリゴ」、培養由来)1.5重量部を水85重量部に溶解して得られたヒアルロン酸水溶液を鋳型1上に流延して形成した。
【0036】
次に、加熱してヒアルロン酸水溶液層2の水分を蒸発させた後、鋳型1から剥離して、図2に示した本発明のマイクロニードルアレイを得た。マイクロニードルアレイは基板3の表面にマイクロニードル形成用凹部11の形状が転写された微細な円錐状の多数のマイクロニードル4が立錐されており、基板3とマイクロニードル4の両方共上記高分子量ヒアルロン酸と低分子量ヒアルロン酸から形成されている。
【0037】
マイクロニードル4は高さaが0.8mm、根元の直径bが0.2mm、先端直径cが0.04mmである円錐台状であり、マイクロニードル4とマイクロニードル4の間隔dは0.8mmで格子状に配列されており、1cmあたり144個形成されている。又、基板3の厚さeは0.2mmであり、1辺が1.0cmの正方形であった。
【0038】
得られたマイクロニードルアレイを被験者の額に軽く押し当てると、マイクロニードル4は皮膚に容易に刺入され且つ60分後には皮膚内刺入部は皮膚内で溶解して形をとどめなかった。この際、被験者は痛みを感じなかった。又、剥離後の基板2を顕微鏡で観察したところマイクロニードル4は100%溶けており全く残存していなかった。
【0039】
(実施例2)
重量平均分子量10万の高分子量ヒアルロン酸(紀文フードケミカル社製、商品名「FCH−SU」、培養由来)13.5重量部と重量平均分子量1万の低分子量ヒアルロン酸(キューピー社製、商品名「ヒアルオリゴ」、培養由来)1.5重量部を水85重量部に溶解して得られたヒアルロン酸水溶液に35重量%グルタルアルデヒド水溶液(ナカライテスク社試薬)20重量部を添加した。液のpHを1規定苛性ソーダ水溶液によりpH10とし24時間室温で架橋反応を進行させた。24時間後ヒアルロン酸の精製を流水中での透析によって行った後、ヒアルロン酸濃度を10%に調整した。以後の操作は実施例1と同様にしてマイクロニードルを作成した。
【0040】
得られたマイクロニードルアレイを被験者の額に軽く押し当てると、マイクロニードル4は皮膚に容易に刺入された。この際、被験者は痛みを感じなかった。180分後に剥離後の基板3を顕微鏡で観察したところマイクロニードル4は先端部皮膚内に全て残留して基板には全く残存していなかった。
【0041】
(実施例3)
重量平均分子量90万の高分子量ヒアルロン酸(紀文フードケミカル社製、商品名「FCH−80」、培養由来)10.5重量部と重量平均分子量1万の低分子量コラーゲン3.5重量部を水85重量部に溶解して得られたヒアルロン酸−コラーゲン水溶液を得た。以後の操作は実施例1と同様にしてマイクロニードルを作成した。
【0042】
得られたマイクロニードルアレイを被験者の手の甲に軽く押し当てると、マイクロニードル4は皮膚に容易に刺入された。この際、被験者は痛みを感じなかった。180分後に剥離後の基板3を顕微鏡で観察したところマイクロニードル4は先端部皮膚内に全て残留して基板には全く残存していなかった。
【0043】
(比較例1)
マイクロニードル4の高さaを1.5mmとした以外は実施例1で行なったと同様にしてマイクロニードルアレイを得た。得られたマイクロニードルアレイを被験者の額に押し当てると皮膚内へ刺入するが、被験者は強い痛みを感じ、又、出血も見られた。
【0044】
(比較例2)
マイクロニードル4の根元直径bを0.5mmとした以外は実施例1で行なったト同様にしてマイクロニードルアレイを得た。得られたマイクロニードルアレイを被験者の手の甲に強く押し当て刺針したところ被験者は痛みを感じた。1時間後針を取り出し基板3を顕微鏡で観察したところマイクロニードル4は先端部の0.2mmが溶けていた。
【0045】
(比較例3)
マイクロニードル4の先端直径bを0.1mmとした以外は実施例1で行なったと同様にしてマイクロニードルアレイを得た。得られたマイクロニードルアレイを被験者の額に押し当て刺針したが、押し当てる際にきつく押さえないとマイクロニードルは皮膚に刺入せず、被験者は痛みを感じた。又、剥離後の基板3を顕微鏡で観察したところマイクロニードル4は約15%が折れ曲がって残存していた。
【0046】
(比較例4)
マイクロニードル4とマイクロニードル4の間隔をなくし、隣り合うマイクロニードル4の根元が接するようにした以外は実施例1で行なったト同様にしてマイクロニードルアレイを得た。得られたマイクロニードルアレイを被験者の額に押し当てたがマイクロニードルは皮膚に刺入せず、こするようにして剥離したがマイクロニードル4は折れ曲がっただけであった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】 本発明のマイクロニードルアレイの製造方法の一例を示す断面図である。
【図2】 本発明のマイクロニードルアレイの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 鋳型
11 マイクロニードル形成用凹部
2 ヒアルロン酸水溶液層
3 基板
4 マイクロニードル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の微細なマイクロニードルが基板の表面に形成されてなるマイクロニードルアレイであって、該マイクロニードルはヒアルロン酸60重量%以上含む素材により形成された円錐台状であり、その根元直径は0.15〜0.3mm、先端直径は0.02〜0.08mm、高さは0.3〜1.2mmであり、マイクロニードルとマイクロニードルのピッチが0.4〜1.0mmであることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項2】
ヒアルロン酸が、培養由来のヒアルロン酸を50重量%以上含むことを特徴とする請求項1記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項3】
ヒアルロン酸が、重量平均分子量10万以上の高分子量ヒアルロン酸60〜95重量%及び重量平均分子量5万以下の低分子量ヒアルロン酸40〜5重量%よりなることを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項4】
ヒアルロン酸が架橋されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項5】
マイクロニードルを形成するヒアルロン酸以外の素材が、コラーゲン、ゼラチン又はプルランであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項6】
更に、マイクロニードルに薬効成分が添加されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のマイクロニードルアレイ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−201956(P2009−201956A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81900(P2008−81900)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(501296380)コスメディ製薬株式会社 (42)
【Fターム(参考)】