説明

マイクロバブル組成物およびその製法ならびに使用法

例えば、標的表面や基質への結合を容易にするために用いることができる、変形させた表面形態を導入した膜を有するマイクロバブルを含有した、マイクロバブル組成物が記載される。表面形態は非球形によるものであり、例えば鈍鋸歯状、折り畳み、突出状、あるいはしわ状等が挙げられ、マイクロバブル膜の変形性を増加することができる。かかるマイクロバブル組成物を標的化超音波コントラスト剤及びその方法論に導入することができる。変形マイクロバブル組成物の製造法は、球形膜を有するマイクロバブルを用意し、球形膜を上述したような非球形膜に変化させることを含む。球形から非球形への変化の前あるいは後に、標的化物質を膜に導入することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は2002年7月11日に出願された米国仮出願No.60/395,179の利益を請求し、ここにそのすべてを参考文献として組み込む。
【0002】
[政府の権利]
本発明は政府認可番号NIH T32 HL 07284-26およびR01HL 64381の援助により行われた。政府は本発明に関して、幾分かの権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本発明は概してマイクロバブル組成物と方法に関し、特に特定の基質または物質に結合するよう標的化された(targeted)マイクロバブル組成物に関する。
さらに背景技術として、超音波研究の領域において、気体充填マイクロバブルがグレースケール及びドップラー超音波のコントラストを顕著に向上する。コントラストの増強は、マイクロバブルに取り込まれている気体とそれを取り巻く血液との音波のインピーダンスのずれに起因する。超音波変換器が放射する音波パルスは異なるインピーダンスを有する物質の界面で後方に反射(後方散乱)されるが、インピーダンスのずれが大きいと超音波の後方散乱の割合が大きくなり、超音波の後方散乱の割合が大きくなるとより大きな超音波コントラストが達成される。超音波の音波パルスがマイクロバブルに当たるとバブルの気相の容積振動(volumetric oscillation)が誘導される。この振動は高度に非線形であり、大きな後方散乱を起こすので、変換器アレイにより検出することができる(Forsberg及びShi,2001)。マイクロバブルの振動により形成された後方散乱は、研究中の組織構造により形成されるものよりも数桁も大きくなりうる(Klibanov,1999)。
【0004】
超音波造影剤(ultrasound contrast agents; UCA)としてのマイクロバブルの使用には、多くの臨床学的利用の可能性がある。例えば心臓解剖の視覚化(Shubら、1976; Crouseら、1993)、器官または組織の灌流の評価(Rimら、2001; Mulvaghら、2000)、および心筋の生存能力の評価(Villanueva,2000)等が挙げられる。このような各応用法では自由に流動するマイクロバブルを用いる;すなわち、マイクロバブルは研究中の組織に必ずしも付着したままでいるわけではない。自由に流動するUCAは組織レベルでの臨床学的関連情報を提供することができるが、関心のある部位に結合するマイクロバブルを生起させることで、分子スケールでの超音波イメージングが可能になりうる。マイクロバブルはバブルの外表に標的化分子(targeting molecule)を付けることにより、特定の分子に目標を定められることができる。これにより、生物活性物質を研究中の組織に送達することができるようになる他、かかる組織における非常に空間的に特定の部位に集まった病状の検出が可能になる。
【0005】
マイクロバブル造影剤の効率に影響する要因は多い。心筋の造影のための静脈注射UCAの臨床的投与量は10オーダーのマイクロバブルである(Gunda及びMulvagh, 2001)。しかしKlibanovら(1997)は、左心室の乳白化(opacification)には、mm血液当たり僅か20マイクロバブルの投与量で充分であることや、平坦な面を僅か3%覆うだけでごく基本的な(ハーモニックのものではなく)造影により検出可能な超音波シグナルを作ることができることを示している。この結果は、臨床的な超音波画像化は、低量のマイクロバブルで達成することができることを示唆している;しかし、超音波コントラストの度合いは標的部位におけるマイクロバブルの濃度に従い増加する。予想通り毛細血管閉塞を引き起こさずに体内に安全に注射できるUCAの量には上限がある。したがって安全と造影の解像度の最適なバランスは、精密に標的化された造影マイクロバブルを少数注射することにより達成できる。
【0006】
標的化されたマイクロバブル組成物に関する従来技術は限られている。脂質及びタンパク質シェルマイクロバブルの初期の観察により、肝臓(Girardら、2001)、脾臓及び肺(Waldayら、1994)、および再灌流心筋層(reperfused myocardium)(Kellerら、1990; Villanuevaら、1997)への選択的な蓄積が示された。この現象は後に、流動が停滞している部位、例えば肝臓類洞(Konoら、2001)にマイクロバブルが陥る(entrapment)こと、及び活性化した白血球によるマイクロバブルの食作用(Lindnerら、2000)によることが明らかになった。近年の文献は、マイクロバブルシェルの組成を変えたり、マイクロバブル表面の抗体を固定することにより、ICAM-1(Villanuevaら、1997;Wellerら、2003)、P−セレクチン(Lindnerら、2001)、及び活性化された白血球(Lindnerら、2000; Christiansenら、2002)に標的化されたマイクロバブルにより、炎症の造影化の可能性を示している。血管形成、特に腫瘍の場合のものは、インテグリンαβに標的化されたマイクロバブルを用いて研究されており(Leong-Poiら、2003; Ellegalaら、2003)、血栓は血小板レセプターGPIIb/IIIaに結合するマイクロバブルにより標的化された(Schumannら、2003)。さらに標的化されたマイクロバブルは、遺伝子(Teupeら、2002; Porterら、2001)及び薬剤(Priceら、1998)の送達の目的で述べられている。
【0007】
標的化されたマイクロバブル剤については、上述の文献よりも前に記載されている。例えば、米国特許No.6,264,917は、超音波と相互作用できるレポーター部分(reporter moiety)、標的部位にアフィニティーを有する標的化ベクター(targeting vector)、及び標的化ベクターとレポーターとをつなぐリンカーから構成される診断用造影剤を記載している。米国特許No.6,245,318は、標的化ベクターをポリマースペーサー腕に固定化して標的部位に選択的に結合させることができるマイクロバブル構造物を開示する。標的基質に対する接着を増強する目的で1以上の標的化ベクターを導入することは米国特許No.6,331,289に記載されている。また、標的化されたマイクロバブルは生物活性送達スキーム、例えば米国特許No.6,443,898において暗示的に述べられている。標的化された組織に生物活性基質を送達するため、マイクロバブルの破壊を利用することは、米国特許No.6,416,740の音波に活性な薬剤送達系において記載されている。
【0008】
発行された先行技術の詳細な研究は、以下のことを示す:上述の標的化マイクロバブルスキームのいくつかは、in vitro及びin vivoの両方で標的部位におけるマイクロバブルの蓄積を達成できるものの、いずれの処方でも高レベルの非特異的な接着が起こる。例えば、血管炎症タンパク質に標的化された脂質シェルマイクロバブルは、in vitro及びin vivoの炎症組織と比較して、非炎症対照の条件下においておよそ0.2(Wellerら、2003)〜0.3(Lindnerら、2001)倍の接着を示す。マイクロバブルに部分的に指図する(dictates)標的化分子(ターゲティング分子;targeting molecule)の選択をしたとしても、この方法にはマクロバブルの標的結合アフィニティー、形態学的な(topographical)表面の特徴及び機械的構造が重大(critical)である。平坦な基質に対する自由流動粒子の接着の生物物理学は、例えば血管内皮に対する白血球の接着などに関して深く研究されている。白血球の接着に関する生体内での観察の初期には、球形の白血球は変形可能(deformable)になり、かつ内皮への接着に際して涙型の輪郭になると想定されることを報告しており(Atherton及びBorn, 1972,; Firrel及びLipowsky,1989)、最近の研究では白血球の形態(Fingerら、1996)や変形可能性(deformability)(Parkら、2002; Yagoら、2002)が白血球の接着プロセスにとって重要であることを確認している。上述の生物学的プロセスと同様に、血管内のマイクロバブルの標的部位への接着は、より効率的な接着メカニズムを達成できるようにマイクロバブル構造を誂えることにより、増強することができる。最近の発明は標的化された治療用及び/又は診断用マイクロバブル組成物及びその調製法及び代替スキームの使用法について記載する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、一の側面において、本発明は、非球形膜を有するマイクロバブルを有し、標的化された表面または基質に対して、対応する球形マイクロバブルと比較して大きな結合能力を示す、マイクロバブル組成物を提供する。一の態様において本発明は、液体キャリヤー中の、気体充填マイクロバブルを含む、標的に結合するマイクロバブル組成物を提供する。組成物中のマイクロバブルの実質的な割合(すなわち少なくとも約20%)は、鈍鋸歯状(crenated)マイクロバブル膜を有しており、ここで膜はさらに標的に結合する標的化分子を含んでいる。
【0010】
もう一つの態様において、本発明は、気体充填マイクロバブルの液体キャリヤー中の懸濁液を含む、標的に結合するのに有用なマイクロバブル組成物を提供し、ここで実質的な割合のマイクロバブルは突起状表面と標的に結合する標的化分子とを有している。
【0011】
もう一つの態様において、本発明は、液体キャリヤー中のマイクロバブル懸濁液を含む、標的に結合するのに有用なマイクロバブル組成物を提供し、ここで実質的な割合のマイクロバブルは非球形マイクロバブル膜を有し、気体核の表面積に対して過剰な表面積を保持している。非球形マイクロバブル膜は標的に結合する標的化分子を有し、流体の剪断応力下において対応する球形マイクロバブル膜よりも大きな変形性を示す。
【0012】
本発明の他の態様は、超音波造影剤に関し、上述したような鈍鋸歯形状、突起形状または非球形状の輪郭を有する膜を有するマイクロバブル組成物と薬学的に許容可能な液体キャリヤーを含む。かかる造影剤を使用する超音波造影法も提供される。
【0013】
本発明の他の態様は、標的化されたマイクロバブル組成物の製造方法に関する。この方法は液体キャリヤー中に懸濁させた、球形マイクロバブル膜を有する気体充填マイクロバブルを形成し、球形マイクロバブル膜を非球形マイクロバブル膜に変化させ、そしてマイクロバブル膜に標的に結合する標的化分子を導入する。
【0014】
本発明の他の態様は、本発明のマイクロバブル組成物を利用する治療法、診断法及び抽出方法を含む。
さらなる態様及び本発明の利点は、ここに記載する事項から明らかであろう。
【0015】
本発明の原理の理解を促進する目的で、以下の記載及び実施例の中に好適な態様を例示し、それらを説明するために特定の用語を使用することがある。しかしながらそのことにより本発明の範囲を限定するものと理解するべきではなく、本発明の好適な態様における変更やさらなる修正及び本発明の原理のさらなる応用は、本発明に関連する当業者には通常起こることであろうと企図する。
【0016】
上述したように、本発明は修飾した表面形態を導入した膜を有し、例えば標的表面や基質に容易に結合させるのに有用なマイクロバブル組成物を提供する。表面形態は、鈍鋸歯状、折り畳み状、突起状、およびしわ状などの非球形のものとし、これによりマイクロバブル膜の変形性を大きくすることができる。このようなマイクロバブル組成物は標的化された超音波造影剤およびその方法論に導入することができる。修飾マイクロバブル組成物の製造法は、球形表面膜を有するマイクロバブルを用意し、そして球形膜を上述したような表面形態を有する非球形膜に変化させることを含む。標的化基質は、球形から非球形形態への変化の前あるいは後に膜に導入するかあるいは接着することができる。
【0017】
膜形成物質に議論を転換すると、多種多様の物質が知られており、本発明のマイクロバブル組成物を製造するのに用いることができる。例えば、気相と液相の間の界面に層を形成することによって、バブル膜または殻の形成および維持の助けとなる化合物または組成物であれば何でも用いることができる。界面活性剤は、単一の化合物あるいはこれら化合物の任意の組合せ(例えば共界面活性剤[co-surfactant])を含む。好適な界面活性剤は脂質であり、ステロール、炭化水素、脂肪酸およびその誘導体、アミン、エステル、スフィンゴ脂質、およびチオール脂質(それぞれが単独でマイクロバブル殻を構成するかあるいは他の脂質、リン脂質、界面活性剤および洗剤との混合物で用いられる)、非イオン性界面活性剤、中性またはアニオン性界面活性剤およびこれらの混合物を含む。
【0018】
適切な界面活性剤として例えばポリオキシプロピレンポリオキシエチレン共重合体、糖エステル、脂肪アルコール、脂肪族アミンオキシド、ヒアルロン酸脂肪族エステル、ヒアルロン酸脂肪族エステルの塩、ドデシルポリ(エチレンオキシ)エタノール、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン脂肪酸エステル、デキストラン、デキストラン脂肪酸エステル、ソルビトール、ソルビトール脂肪酸エステル、ゼラチン、血清アルブミンおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0019】
リン脂質含有界面活性剤組成物として、レシチン(すなわちホスファチジルコリン)、例えば卵白レシチン、大豆レシチンなどの天然レシチン、半合成(例えば部分的あるいは全水素化)レシチン、およびジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、またはジステアロイルホスファチジルコリンなどの合成レシチン;ホスファチジン酸;ホスファチジルエタノールアミン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルグリセロール;ホスファチジルイノシトール;カルジオリピン;スフィンゴミエリン;上述のフッ素化類似体;上述の混合物およびコレステロールなどの他の脂質との混合物が挙げられる。個々に正味全体電荷(例えば負電荷)を示す分子を支配的に(例えば少なくとも75%)含むリン脂質を用いることができ、例えば天然のもの(例えば大豆または卵白由来のもの)、半合成のもの(例えば部分的または全体に水素化されたもの)および合成のホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸及び/又はカルジオ脂質などである。
【0020】
非イオン性界面活性剤の例として、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーが挙げられる。かかるクラスの化合物として、非イオン性プルロニック界面活性剤が挙げられる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルも用いることができ、例えば、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチル化ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールポリオキシエチレングリコールオキシステアレート、グリセロールポリエチレングリコールリシノレエート、エトキシル化大豆ステロール、エトキシル化ひまし油、およびこれらの水素化誘導体およびコレステロールが挙げられる。アニオン性界面活性剤、特に12〜24の炭素原子を有する脂肪酸(またはその塩)、例えばオレイン酸、またはそのナトリウム塩を用いることもできる。
【0021】
界面活性剤に加えて、水相内に他の薬剤を導入することもできる。かかる薬剤として伝統的な粘度調節剤、リン酸緩衝液あるいは他の伝統的な生物適合性緩衝液などの緩衝液、または酸、塩基などのpH調節剤、浸透圧調節剤(等張性、高浸透圧性(hyperosmolarity)または低浸透圧性(hyposmolarity)を提供する)が挙げられる。好ましくは、溶液はpH約7を有し等張である。マイクロバブルは疎水性ポリマーのブラシ、例えばポリオキシエレングリコール、ポリビニルピロリドン、またはポリグリセロールなどで覆われていてもよく、これによりマイクロバブルの物質または基質に対する非特異的接着を低減することができる。
【0022】
マイクロバブルの核に使うことができる気体については、生物適合性の気体であれば何でも用いることができる(混合物を含む)。したがって気体として、空気;チッ素;酸素;二酸化炭素;水素;ヘリウム、アルゴン、キセノン、またはクリプトンなどの不活性気体;サルファーヘキサフルオライド、ジサルファーデカフルオライドまたはトリフルオロメチルサルファーペンタフルオライド等のサルファーフルオライド類;セレニウムヘキサフルオライド;メチルシランまたはジメチルシランなどの任意にハロゲン化されたシラン;低分子量炭化水素(例えば7までの炭素原子を含有する)、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタンまたはペンタンなどのアルカン、シクロプロパン、シクロブタン、またはシクロペンタンなどのシクロアルカン、エチレン、プロペン、プロパジエン、またはブテンなどのアルケン、またはアセチレンまたはプロピンなどのアルキン;ジメチルエーテルなどのエーテル;ケトン;エステル;ハロゲン化低分子量炭化水素(例えば7までの炭素原子を含有する);またはこれらの混合物が挙げられる。ハロゲン化された気体の少なくともいくつかのハロゲン原子はフッ素原子であることができ;このようにして生物適合性ハロゲン化炭化水素気体を、例えばブロモクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、クロロペンタフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロエチレン、エチルフルオライド、1,1−ジフルオロエタンおよびパーフルオロカーボン、例えば塩化メチレン、パーフルオロアセトンなどのフッ素処理した(例えば過フッ素化した)ケトン、およびパーフルオロジエチルエーテルなどのフッ素処理した(例えば過フッ素化した)エーテルから選択することができる。過フッ素化した気体、例えばサルファーヘキサフルオライドおよびパーフルオロプロパン、パーフルオロブタンおよびパーフルオロペンタンなどのパーフルオロカーボンの使用は、このような気体を含有するマイクロバブルの、血流中で認識されている高い安定性の観点から特に有利である。
【0023】
マイクロバブル組成物の形成に関して、種々の適切な方法が知られている。マイクロバブルの形成には音波処理、すなわち超音波伝達セプタムを通じて、または超音波で振動させる皮下注射針からなる超音波プローブをセプタムに貫通させることによって処理することが好適である。場合によりマイクロバブルが形成される水性媒体中で気体(または気体混合物)の存在下でプローブタイプのソニケータを直接作用させるか、あるいはブレンドまたはミリング/ミキシングなどの他の高速混合技術により、大容積のマイクロバブルを製造することができる。気体注入(例えばベンチュリ管気体注入)などの他の技術、機械的高剪断バルブ(またはダブルシリンジ針)と2本のシリンジ、またはシリンジ上のアスピレータアセンブリなどの機械的形成、あるいは単なる振とうが用いられる。マイクロバブルは界面活性剤溶液中に高圧で導入された修飾気体で過飽和された液体浸透薬剤(a liquid osmotic agent)エマルジョンの使用を通じて形成することもできる。
【0024】
音波処理をマイクロバブルの形成に用いる場合、色々な方法で行うことができる。例えば、界面活性剤溶液とバイアルの上部空き高に気体を含むバイアルを薄膜により音波処理することができる。膜は、例えばゴム、テフロン、マイラー、ウレタン、アルミニウム処理されたフィルム、あるいは他の音波透過性の合成または天然ポリマーフィルムまたはフィルム形成物質で作られていてよい。音波処理は、超音波プローブまたは集束超音波ビームを膜に接触させるかあるいはこれらで膜を押すことによっても行うことができる。超音波プローブは使い捨てのものであってよい。いずれの場合であってもプローブは膜に接して置かれ、あるいは膜を通じて液体の中に挿入されてよい。音波処理が終わると、マイクロバブル溶液をバイアルから取り出し、患者に配る。音波処理は、シリンジ状の低エネルギー超音波振動吸引アセンブリを用い、インクジェットプリンタと同じようにシリンジ中で行うこともできる。また、シリンジまたはバイアルを、エネルギーを容器中のある部分に集束させた低エネルギー超音波浴に設置することもできる。
【0025】
本発明のある態様において、標的化されたマイクロバブル組成物が提供される。かかる標的化されたマイクロバブル組成物はマイクロバブル膜に含有されたあるいは結合されたリガンドまたは標的化分子を有するマイクロバブルを含み、リガンドまたは標的化分子は標的表面または物質に、場合により特異的に結合する。用いられる標的化分子の例として、例えば
i)抗体及び抗体フラグメント、高い特異性と高いアフィニティを有する抗体を含む。従来の及び/又は遺伝子学的に設計された抗体を利用することができる。マイクロバブル組成物のヒトへの使用にはヒト抗体が用いられ、標的化分子に対して起こりうる免疫反応を回避しまたは減じることができる。
ii)細胞接着分子、そのレセプター、サイトカイン、成長因子、ペプチドホルモン、ペプチド擬似物及びこれらの断片。
iii)非ペプチドアゴニスト/アンタゴニストまたは細胞接着分子、サイトカイン、成長因子及びペプチドホルモンのためのレセプターの非生物活性バインダー。
iv)オリゴヌクレオチド及び修飾オリゴヌクレオチド、ワトソン−クリックまたは他の型の塩基ペアにより、DNAまたはRNAに結合するアプタマーを含むがこれに限定されない。
v)プロテアーゼ基質/阻害剤。プロテアーゼは多くの病理学的状態に関与する。
vi)種々の小さい分子、種々の生物学的レセプターに結合しうることが知られている生物活性化合物を含む。
vii)基質の結合パートナーとしての不活性化されたプロテアーゼ。
【0026】
標的化超音波造影に特定の関係のある他のペプチド標的化分子及びそれらの脂肪ペプチドは、ペプチドに結合するアテローム性動脈硬化症プラーク;ペプチドに結合する血栓、及びペプチドに結合する血小板を含む。
【0027】
診断薬及び/又は治療薬として使用される、特定のタイプの標的及び意図する領域に標的化されていてもよい標的化分子基質の例としてCD34、ICAM-1、ICAM-2、ICAM-3、E−セレクチン、P−セレクチン、PECAM、CD18インテグリン、VLA-1、VLA-2、VLA-3、VLA-4、VLA-5、VLA-6、GlyCAM、MAdCAM-1、フィブリン、及びミオシンが挙げられる。かようの、及び他の標的化分子は米国特許No.6,264,917に同定され議論されており、このような他の有用な標的化分子を一般的にかつ特定的に同定する目的のためにここに参考文献として組み込む。
【0028】
標的化分子の膜への接着は様々な方法にて達成することができる。例えば、標的化分子化学結合剤(例えばカルボジイミド(EDC)またはチオプロピオネート(SPDP))を用いて直接つなげることができる。しかし好ましくはスペーサー腕分子を通じて標的化分子を間接的にマイクロバブル膜に接着させる。例示すると接着した構造は以下のように表せる:
M−S−V
ここでMはマイクロバブル膜、Sはスペーサー腕、及びVは標的化分子である。
【0029】
本発明に使用されるスペーサー腕(S)は、分枝状あるいは線状合成高分子または生体高分子であり、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリグリセロール、デキストラン、及び糖などが挙げられる。スペーサー腕分子の一端は気−液界面に挿入され、柔軟なポリマースペーサー腕は液体媒体の中に伸長し、標的化分子と標的との相互作用を向上させるであろう。
【0030】
本発明に使用される標的化分子は、例えば、上述した任意のものであることができる。標的化抗体または他のタンパク質のマイクロバブルへのスペーサー腕分子を介した接着のために多くの戦略をとることができる。例えば、スペーサー分子は、マイクロバブル膜に接着するか取り込まれる一端と、そして標的化分子に直接的にまたは最終的に接着するための反応基または他の結合基を有するもう一端を有していてよい。一つの戦略としてはアビジン−ビオチン架橋法に基づくものが挙げられる。スペーサー分子は、例えばPEGは、一端に接着したビオチンと、もう一端に接着し、膜アンカーを形成するマイクロバブル膜形成分子(例えばリン脂質)を有する。膜アンカーはマイクロバブル膜に取り込まれ、スペーサー腕−ビオチンサイトが液相に伸長したままになる。そしてアビジンはスペーサー腕−ビオチンサイトに結合し、そしてアビジンの自由結合サイトがビオチン化抗体または他の標的化分子のスペーサー腕への結合に用いられる。このようにアビジン−ビオチンの組合せは、任意の所望のビオチン化抗体が後で接着されるような、特異的な標的化の用途のための普遍的な薬剤を提供することができる。さらに金属キレート分子をマイクロバブル表面に接着させることもでき、His標識をつけた組み換えタンパク質の接着は、既知の標準的なカップリングスキームを用いて直ちに達成することができる。スペーサー腕分子を介した標的化分子のマイクロバブル膜へかような及び他の接着方法は既知であり、本発明に使用することができる。他の情報を見つけることができ、例えば米国特許No.6,245,318があり、ここに参考文献として組み込む。
【0031】
本発明に従うマイクロバブルは、多くの方法により非球形にすることができる。一般にマイクロバブル中にとらえられている気体の体積を減少させると同時にマイクロバブルの膜物質の量を同じあるいは実質的に同じに保つことにより、球形のマイクロバブルを修飾して非球形マイクロバブルにすることができる。結果として気体の核を包むのに必要とされるよりも多くの、過剰の膜物質が生じ、この過剰の膜物質はマイクロバブルに当初の球形マイクロバブル(大きいサイズのもの)と比べて、及び等しいサイズの非球形マイクロバブルと比較してもかなりの変形度をもたらす。標的基質への接着に際して、この過剰な膜物質により、球形マイクロバブルと比較してより大きなマイクロバブル基質接触面積の形成が可能となる。過剰の物質は典型的にはマイクロバブル膜から突出部を形成し、これを鈍鋸歯状、折り畳み、しわあるいは他のでこぼこ(irregularities)等と記載することができる。球形マイクロバブルから非球形マイクロバブルを調製するときに、マイクロバブル内部から気体を除去するために静水圧または他の方法を望ましくは適用し、少なくとも約10%の気体、より好ましくは少なくとも約20%の気体を球形マイクロバブル内部から除去して非球形マイクロバブルに変化させる。典型的には、かかる方法は球形マイクロバブルから約10%〜80%、より典型的には約20%〜70%の範囲の中心気体を除去するために使用されるであろう。さらにかかる方法は気体核の減少を以下のようなレベルで達成するように適用することができる:元の球形マイクロバブル群のうち少なくとも約20%のマイクロバブル、好ましくは約50%より多く、さらにより好ましくは約80%〜100%の範囲。所望であればかかる方法の結果物である球形/非球形混合マイクロバブル群を処理して非球形マイクロバブルから球形マイクロバブルを分離して、そしてより濃縮させた非球形マイクロバブル群を達成することができる。
【0032】
例として、球形マイクリバブルに圧力、例えば密閉した容器内での静水学的圧力をかけることにより非球形マイクロバブルを調製することができる。かくして表面に直接または間接的に接着した標的化分子を含有してもよいマイクロバブルは水相に分散されそして三方コックを備えた容器(例えばシリンジ)に入れられる。三方コックを閉じシリンジのピストンを部分的に押し、単位当たりの内部圧力を増加させる(1−20psi)。圧力は容量全体にわたって均一に伝わり、かくしてマイクロバブル内部に加圧がかかり、そして気体容量の減少が起こる。過剰のマイクロバブル殻は気液界面の平面から水相に向かって突き出て、折り畳み/フラップ状の形態の鈍鋸歯状の不規則性を形成する。材料を約5〜100秒間高い圧力でインキュベートし、その間、加圧下のマイクロバブル気体は部分的にマイクロバブルから外に発散し、そして周囲の媒体に溶解し、これにより、プランジャーを解放した後も永続的にマイクロバブル全体の容量の減少が起こり、そしてマイクロバブルは大気圧条件に戻っていく。
【0033】
鈍鋸歯状のマイクロバブルは、まず水溶性気体と水不溶性(漸次移行する溶解性、[例えばデカフルオロブタンと空気など]を含めて)気体を含有する気体混合物から球形マイクロバブルを調製することによっても調製することができる。マイクロバブルが分散される水性媒体はまず、例えば減圧することにより脱気され、あるいは好ましくは不溶性気体と共に散布して溶解性気体を媒体から除去する。すると、脱気された媒体にマイクロバブルを分散させると、カプセル化したマイクロバブルの容量が、溶解性気体がバブルの内側から媒体へ追い出されるに従って減少し、そして膜表面の鈍鋸歯状形態が発生する。あるいは溶解性−不溶性気体混合物から調製されたマイクロバブルの分散液に不溶性気体を直接散布すると、バブル内部の溶解性気体の損失と容量の減少及び鈍鋸歯状形状の形成が起こる。場合により、マイクロバブル薬剤を患者の血流に注射した後に鈍鋸歯化方法、例えばマイクロバブルを超音波放射をかけるなどを行ってもよい。
【0034】
本発明のマイクロバブル組成物は実質的なパーセンテージの(すなわち約20%以上)の非球形マイクロバブルを有するよう調製されるのが非常に望ましいだろう。より好ましくは、本発明のマイクロバブル組成物は支配的に(すなわち約50%以上)の非球形マイクロバブルを、さらに好ましくは約80%以上、本質的に100%の非球形マイクロバブルを含有する。このような濃厚非球形マイクロバブルは、マイクロバブル組成物の調製に従来用いられていた技術により、及び/又はその後施される精製技術により発生させることができる。さらに本発明のマイクロバブル組成物は、実質的に均一のマイクロバブルサイズ分布を有する。例えば、組成物は少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約50%の非球形マイクロバブルが約3マイクロメートル(ミクロン)の群平均直径を有するように調製され及び/又は精製される。さらに、組成物中の約30%、より好ましくは少なくとも50%の非球形マイクロバブルは約1〜7マイクロメートルの範囲内の直径を有していてよい。
【0035】
標的化分子(例えば抗体)は、マイクロバブルを非球形にする操作の前、最中、あるいは後のいつでもマイクロバブルに接着することができると理解されるであろう。
スペーサー腕の接着した標的化分子と変形可能な非球形(例えば、鈍鋸歯状、しわ状、折り畳み状など)膜の両方を有するマイクロバブルは、標的化したものが表面に結合するときに特に優位性を示す。標的化分子が標的に結合する能力は、結合部位のレセプターの構造を適応させる膜の変形性とスペーサー腕の柔軟性の両方により増強される。
【0036】
本発明のマイクロバブル組成物は経口のあるいは非経口投与のための診断用組成物または治療用組成物などの薬学的組成物に処方することができ、そしてin vitroの造影法、送達法または分離法他のために使用することもできる。超音波造影法での使用のために、かかる組成物は投与のタイプに適切となるよう意図された従来の薬学的キャリヤー及び賦形剤を伴う超音波剤の有効量を含有することができる。非経口用組成物は直接投与されるかあるいは全身用投与のための大量の非経口用組成物と混合することができる。このような溶液は薬学的に許容可能な緩衝液と、場合により塩化ナトリウムなどの電解質を含有してもよい。
【0037】
本発明の診断用組成物は超音波造影において所望の増強を達成できる有効投与量で投与されるだろう。かかる投与量は非常に広く、特定の患者、造影法に賦される臓器や組織、造影方法、使用される造影機器などに依存しうる。本発明の診断用組成物は従来の方法で使用することができる。組成物を患者、典型的には温血動物に、全身的または造影する臓器または組織に局所的のいずれかにより投与し、そして患者は造影法に賦される。例として、標的化分子のレセプターが管表面に存在する任意の臓器の超音波造影を本発明に従って行うことができる。
【0038】
本発明の治療用組成物は患者に送達すべき少なくとも1つの活性薬剤、例えば治療用薬剤、例えば薬剤物質を含むだろう。かかる組成物は任意の好適な経路で、例えば経口または非経口投与により、局所的または全身的に送達されうる。この目的のために使用できる物質の例として、例えば米国特許No.6,264,917に開示されたものが挙げられ、かかる使用可能な薬剤物質を一般的にあるいは特定的に特定する目的のために、ここに参考文献として組み込む。
【0039】
本発明のマイクロバブル処方薬の製造における使用のためにキットを作成することができる。かかるキットはマイクロバブルを形成するための上述の気体(単数または複数)を封じ込めた容器、液体及び膜形成界面活性剤とを含有する。容器は、調製された球形マイクロバブル組成物に静水圧をかけるための器具、例えばシリンジなどを場合により含有していてもよい。あるいは容器は気体(単数または複数)及び界面活性剤及びマイクロバブルを形成するために加えることのできる液体を含有することができる。さらに界面活性剤は容器中で他の物質とともに存在していてもよく、マイクロバブルを形成するために液体のみが加えられる必要がある。マイクロバブルを形成するのに必要な物質が既に容器内に存在するならキットの他の部品によりパッケージングされることができ、好ましくは一つの形態に、あるいはキットの他の部品とすぐに組み合わせることができるよう調整された形態でパッケージされる。
【0040】
本発明のマイクロバブル組成物は親和力分離試薬(affinity isolation reagents)としても使用でき、例えば水または他の液体媒体中での、通常のまたは人工的重力場におけるマイクロバブルの上方への易動性に基づいたものである。そのように使用する場合組成物は、例えば環境的試料や生物学的液体または他の試料から標的物質または実体(entity)(例えば細胞、微粒子)を濃縮することができる。
【0041】
本発明のさらなる理解、及び態様と優位性を促進するために、以下の実施例を提供する。この実施例は例示的なものであり、本発明を制限するものではないと理解されたい。
【実施例】
【0042】
[実験部]
セクション1:材料及び方法
1.1 試薬
P−セレクチンFc融合タンパク質(P−セレクチン.Fc)を凍結乾燥形にてR&D Systems(Minneapolis,MN)より得た。凍結乾燥されタンパク質750μgをDulbeccoのリン酸緩衝液(DPBS)(Invitogen, UK)15μLに溶解してP−セレクチン.Fcの部分試薬を作成し、これを液体窒素中で凍結し、4ヶ月未満−20℃で保存した。ビオチン化の前にアンチ−P−セレクチン抗体Rb40.34ストックを10,000ダルトンMWCO透析カートリッジ(Pierce, Rockford, IL)を用いてDPBS中で一昼夜透析した。抗体−マイクロバブル架橋系のためのN-ヒドロスクシンイミド−ビオチン(NHS-ビオチン)とストレプトアビジンをSigma(St. Louis, MO)から得た。ユーロピウムラベルしたストレプトアビジンとDELFIA溶液をWallac Oy (Turku, Finland)から得た。抗体濃度を測定するためのアドバンストタンパク質アッセイ試薬をCytoskelton, Inc (Denver, CO)から得た。流フローチャンバー(flow chamber)実験における非特定的接着を防止するためのTBS中のブロッカーカゼインをPierce (Rockford, IL)から得た。Tween-20をJ.T.Baker (Phillipsburg, NJ)から得た。Coulter容器用の希釈剤としてのIsoton-IIをBeckman Coulter(Miami, FL)
から得た。Kimura(0.05%wt/volトルイジンブルー、22%エタノール中0.9%NaCl、及び0.07Mリン酸緩衝液、pH6.4:全てSigma (St.Louis, MO)より)を血液カウントにおける白血球の変色に用いた(Olsemら、2001)。
【0043】
1.2 逆平行板型フローチャンバー
in vitroでの接着能の実験は、平行板型フローチャンバー(GlycoTech, Rockville, MD)にて行った。上板と下板の間の距離はガスケットの厚みから測定し、0.254mmで、フローパス幅は2.5cmであった(ガスケット”B”)。P−セレクチン.Fc基質をおいた35mm直径のポリスチレン皿(Corning, Corning, NY)がフローチャンバーの上板の役割をした。マイクロバブルの浮力のため、特別に誂えたホルダーを用いてフローチャンバーを逆さに用いた。減圧と周囲に巻くゴムバンドにより皿をフローチャンバーの上にしっかりと置き、フローチャンバー全体を逆さにしたホルダーに挿入した。吸い込み状態にあるシリンジポンプ(Harvard Apparatus, Cambridge, MA)を用いてマイクロバブル分散液を吸引して規定の剪断速度でフローチャンバーに通した。実験はLeitz Laborlux II顕微鏡(Rockleigh,NJ)で一部エピ蛍光剤(epifluorescence)を使用し、40倍の対物レンズ(Olympus, Tokyo, Japan)で視覚化した。フローチャンバー実験から得られたデータをその後のオフライン分析のために標準的なVHSカセット(Sony, Tokyo, Japan)またはデジタルビデオカセット(Sony, Tokyo, Japan)に記録した。逆平行板型フローチャンバーの線図を図1に示す。
【0044】
1.3 マウス
5匹の雄のC57B1/6と、P−セレクチンノックアウトマウス(P-/)をHilltop Labs (Scottsdale, PA)から入手し、U.Vaの小さな動物施設にて飼った。全てのマウスは生後8〜12週で見たところ健康だった。全ての動物実験はバージニア大学動物保護及び利用委員会制度(institutional animal care and use committee)により承認されたものである(プロトコル#2474)。
【0045】
1.4 抗体のビオチン化
ハイブリドーマから得たRb40.34上清をDPBS中4℃で一昼夜透析した。各々2mgのモノクローナル抗体(mAb)をビオチン化するために45μgのNHSビオチンを10μLDMSOに溶解した。混合物を2時間4℃でインキュベートし、次いで一昼夜透析し結合しなかったビオチンを除去した。
【0046】
1.5 P−セレクチンの吸着
35mmのポリスチレン皿をメタノールで洗浄し、P−セレクチン.Fcタンパク質の装着の前に空気中で乾燥させた。各洗浄済みの皿の中心に、全ての皿について同じ円のテンプレートを用いて1cm直径の円をフェルトペンで描いた。P−セレクチン.Fc融合タンパク質の必要重量(25,150または250ng)をDPBSで200μLに希釈し、皿の円を描いた部分に吸着させた。次いで皿を用意した蓋とぬらしたペーパータオルで覆い過剰な蒸発を防いだ。結合は一昼夜4℃で行った。その後皿をDPBS中0.05%のTween-20で5回洗浄し、結合しなかったタンパク質を除去した。皿表面への非特定的な接着を防ぐため、皿をTBSに2mLのカゼインを溶解したもので少なくとも2時間室温でインキュベートしてブロックした。全ての皿をブロックし、そして同じ日に使用し、フローチャンバー中で適切に封できない欠陥のある皿は廃棄した。負の対照として幾つかのブロックした皿を1.0mLのDPBS中の1.0mgRb40.34で少なくとも30分間インキュベートし、0.05%Tween-20で5回洗浄した。あるいは幾つかの皿はP−セレクチン.Fcの代わりにカゼインでインキュベートし、次いで洗浄し、ブロックした。
【0047】
1.6 マイクロバブルの調製
本実験で使用したマイクロバブルはジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)の脂質殻でデカフルオロブタン(C4F10)気体核をカプセル化したものである。ポリエチレングリコール(PEG)のブラシで脂質殻の周りを取り囲んだ。ビオチン化C4F10充填マイクロバブルを前記されたとおり(Kimら、2000;Lindnerら、2001)調製した。簡単に述べると、C4F10気体をホスファチジルコリン、PEGステアレート、及びビオチン−PEG−DSPCの水性分散液に高出力ソニケーションにより分散させた。これにより脂質−カプセル化されたC4F10マイクロバブルが形成した;マイクロバブルに取り込まれなかった脂質を遠心浮遊法を繰り返して除去した。2つのマイクロバブルの群を調製した:蛍光プローブ(Di-OまたはDi-I)を脂質殻に取り込んだ、蛍光ラベルしたものと、ラベル化していないものである。それぞれのマイクロバブル群を別々に4℃で2ヶ月間以内で保存し、顕微鏡観察とCoulterサイズ分析で検出された気体の損失は最小限であった。
【0048】
各群(Di-Iラベル化したものとラベル化していないもの)のおよそ250×10個のバブルを500RPMで5分間バケツ遠心分離により5回洗浄し、再度2.0mL C4F10飽和DPBSに懸濁させた。洗浄は、プランジャーをはずした5.0mLシリンジで行った。遠心分離によりバブルはシリンジの頂部に堆積し(US特許No.6245,318に記載されたとおりである)、シリンジの底から Luer-lockバルブを用いて遊泳物(infranatant)を除去した。
【0049】
小さなマイクロバブルと遊離の及びミセル状の脂質を除去するための2回の洗浄の後、Di-Iラベル化したマイクロバブル群を以下のように一部破砕した。2.0mL分散液を8.0mLの空気を含む10mLシリンジに吸い込んだ。シリンジを閉じ、体積が6.5mLになるまで押し下げ、分散液中の全てのバブルに均一に750mmHgの圧力が行き渡るようにした。分散液への圧力の付加は電子マノメータ(Dwyer, Michigan City, IN)で測定した。繰り返し洗浄し、しわ状の群から空の殻フラグメントを除き、両群について、Coulter Counter(Beckman Coulter, Miami, FL)により測定してより均一のサイズ分布のものを提供した。
【0050】
10個のマイクロバブル当たり3μgのストレプトアビジンを各マイクロバブル群に加えた。氷上での30分間のインキュベートの後マイクロバブルを2回洗浄して、結合しなかったストレプトアビジンを除去した。10個のマイクロバブル当たり7.5μgのビオチン化Rb40.34を各群に加えた。マイクロバブルを30分間氷上でインキュベートし3回洗浄して結合しなかった抗体を除去した。この方法により典型的には2.0mLの各群中に20〜50×10個の抗体結合マイクロバブルを生産した。濃度及び平均直径などを含む各群の特性は、球形マイクロバブル及びしわ状のマイクロバブルの両方につき洗浄した後得た。
【0051】
1.7 P−セレクチン.Fc部位の濃度測定
既知の濃度(25、150または250ng/200μg)のP−セレクチン.Fcを上述の通り35mmの皿に吸着させた。カゼイン中で2時間のブロッキングの後1.0mLDPBS中0.96μgのビオチン化Rb40.34を各皿に加えた。溶液の量は皿の全表面を覆うのに充分であった。室温で30分間のインキュベートの後、0.05%Tween-20で7回洗浄して結合しなかった抗体を除去し、1.0mL中ユーロピウムラベルしたストレプトアビジンを各皿に加えた。室温で30分間のインキュベートの後、皿を7回洗浄して結合しなかったストレプトアビジンを除去した。0.9mLのDELFIA増強溶液(enhancement solution)を各皿に加え、室温で5分間インキュベートした。反応物を各皿から集め、96穴のマイクロタイタープレート(穴当たり300μL)に入れ、SPECTRAmax Gemini XSデュアルスキャニングマイクロプレート分光蛍光計(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いた時間分解分光蛍光計に用いた。プレートを360nmで励起し、250〜1250μ秒のタイマー間隔の間610nmで読んだ。カゼインのみでインキュベートしたスキャニングプレートにより非特定的な抗体の接着のレベルを測定した。Rb40.34のビオチン化は、アビジン−HABA置換法(Green, 1965)を用いて1モルの抗体当たりおよそ0.3モルのビオチンであると測定された。吸着されたP−セレクチン.Fcのサイト密度(site densities)は、Rb40.34がP−セレクチン.Fc二量体の各ヘッドと1対1で結合し、ストレプトアビジンとRb40.34が1対1で結合すると仮定して計算した。
【0052】
1.8 フローチャンバー実験
抗体ラベル化したしわ状のマイクロバブルと球形のマイクロバブルとを同数ずつ混合し、希釈してC4F10飽和DPBS緩衝液1mL当たりおよそ3×10バブルとした。マイクロバブルの緩衝液の飽和によりマイクロバブルへのあるいはマイクロバブルからの気体の移動を防いだ。混合したマイクロバブル分散液を磁気撹拌棒で連続的に撹拌し、全ての実験において確実に均一にした。混合したマイクロバブル分散液を望ましい剪断速度で10cmの0.6mm直径のチューブを通じてフローチャンバーに吸い込んだ。各実験の間中、P−セレクチン.Fcが吸着された1cm直径の円の中心近傍の一つの視野(110μm×150μm)を観察した。エピ蛍光発光を低強度透過光に維持し、これにより蛍光ラベル化したしわ状のマイクロバブルとラベル化していない球形マイクロバブルとの区別が可能になった。各皿を単一の剪断速度で実験の間中観察した。各実験をおよそ10分間続き、あるいは視野が結合マイクロバブルで飽和するまで行った。各皿の単一の視野につき、各群のマイクロバブルの総流量75〜300が観察された。
【0053】
1.8.1 接着能
各群の接着マイクロバブルの数を数えることによりオフラインで接着能を測定した。マイクロバブルを一時的に接着している、すなわち結合したマイクロバブルが10秒以内で剥がれるものか、あるいは強固に接着している、すなわち結合したマイクロバブルが10秒以上持ちこたえたものかのいずれかにクラス分けした。接着マイクロバブルの数をマイクロバブルの流量で表面の結合距離(1マイクロバブル直径)内に標準化し、接着能を算出した。
【0054】
1.8.2 マイクロバブル休止時間(pause time)
マイクロバブル接着行動の継続時間における分布を上記のフローチャンバー実験用に集めた。ビデオを1/3の速度で再生して短命の接着行動の検出を可能にした。バブルが静止したままでいるフレーム数を数え、これをビデオのフレームレートで割り、行動の継続時間を算出した。少なくとも10秒間接着したままのマイクロバブルを「強固に接着」と勘定し、10秒間を超えては分析しなかった(これらのバブルの大部分が残りの実験では結合したままであることが観察された)。一瞬結合したバブルの休止時間(pause time)を各P−セレクチン.Fcサイト密度でプールして(pool)、そしてこれをプロットした。
【0055】
1.9 生体内顕微鏡法
マウスに0.5μgのマウス腫瘍壊死因子(TNF-α)(Sigma, St. Louis, MO)を陰嚢内に手術前2時間に投与し、挙睾筋でのP-セレクチンの発現が最大になるようにした。マウスは、125mg/kg体重のケタミン(Parke-Davis, Morris Plains, NJ)、12.5mg/kg体重のキシラジン(Phoenix Scientific, St. Joseph, MO)及び0.025mg/kg体重の硫酸アトロピン(Elkins-Sinn, Cherry Hill, NJ)を腹膜内注射により麻酔にかけた。電気温パッドを用意して体温を38℃に維持した。気管にPE90チューブ(Becton Dickinson, Sparks, MD)を挿管し、自発呼吸を促進させ、そして右頚静脈にPE20チューブのカニューレを挿管した。マイクロバブル分散液を頚部カニューレを通じて投与し、各実験の最後に頚動脈から血液試料を採取した。
【0056】
挙睾筋を露出させ、5%のCOで平衡させた等張の重炭酸塩緩衝液(131.9mMNaCl、18mMNaHCO3、4.7mMKCL、2.0mMCaCl2*2H2O、1.2mMMaCl2)を連続的に注いだ。露出させた挙睾筋を顕微鏡試料台(Carl Zeiss, Thornwood, NY)にピンで刺し、生理食塩水浸漬対物レンズ(SW 40/0.8 num 口径)の真下に置き、生体内顕微鏡法に使用した。試料を高解像度CCDカメラ(Daga-MTI, Inc, Michigan City, IN)で視覚化し、オフライン分析用にVHSビデオカセットに録画した。Di-Iラベル化マイクロバブル(λex=480nm、及びλem=535nm)あるいはDi-Oラベル化したマイクロバブル(λex=545nm及びλem=610nm)のいずれかに用いるフィルターで挙睾筋にエピ蛍光照射し、接着したマイクロバブルの存在を明らかにし、そして引き続き光を透過させて、血管空間に接着したマイクロバブルの場所を突き止めた。
【0057】
各群の2.5×10マイクロバブル(Di-Iラベル化しわ状及びDi-Oラベル化球形)を頚部カニューレを通じて注射した。注射後4〜20分間、各タイプの接着したマイクロバブルの数を10個の視野につき測定した。二重スリット光ダイオード(CircuSoft Instrumentation, Hockessin, DE)を用いて各容器の中心線速度(Vc)を測定した。壁剪断速度(WSR、s−1)を以下の等式15により測定した:
【0058】
【数1】

【0059】
ここで、γは壁剪断速度(s−1)、Vcは中心線速度(μm/s)、及びdは血管直径(μm)(Renemanら、1992)である。15〜55μmの小静脈のみ分析した。血液試料を90μLKimuraと混合し、白血球を染色し、そして血球計で数えた。
【0060】
1.10 マイクロバブルの変形
Di-Iラベル化した殻を両群に用いて上記の実験に記載したようにビオチン化マイクロバブルを調製した。100倍の水浸漬型対物レンズでの光の透過を可能とした修正フローチャンバーを構築した。標準的なCorningの35mmポリスチレン皿から円形の1cm半径の穴を切り出し、200μgのアビジンを吸着させてあるプラスチックカバーガラスを穴に適合させた。このような変更を加えた皿を数本のゴムバンドと通常のフローチャンバー減圧によりフローチャンバー台に固定した。修正フローチャンバーの線図を図2に示す。各マイクロバブル群をそれぞれ別々にフローチャンバーに引き込んだ。45s−1での5分間(分析に充分なバブルが吸着される時間)の引き込みの後、バブル分散液をC4F10飽和DPBSで置換した。およそ5〜20の接着マイクロバブルを取り囲む5つの視野が観測され、写真を撮った。そして剪断速度を5分間で122.5g−1に増加し、その間にさらに5つの視野が観察された。剪断速度を5分間で306.3s−1に増加し、またさらに5つの視野が観察された。カメラを流れの方向に沿わせるように注意した。各接着マイクロバブルの変形指数を、マイクロバブルにおける流れの方向に沿った最も長い軸の長さを、流れの方向に垂直な方向に沿った最も長い軸の長さで割り、算出した。
【0061】
1.11 音波レスポンス
上記の通り鈍鋸歯状のマイクロバブルを静水圧により調製した。24.0×10または120×10球形マイクロバブル(未処理)またはしわ状マイクロバブルの分散液を注射グレードの0.9%NaClの0.5Lバッグに注入した。高調波造影を用い線形の超音波プローブによって、生理食塩水バッグ中でのマイクロバブルの音波レスポンス(echogenicity)を測定した。
【0062】
もう一つの実験では35mm皿の上に様々な濃度のアビジン(Sigma)をメッキ(plated)した。およそ5×10のビオチンで被覆した鈍鋸歯状または球形(未処理)マイクロバブルを、平行板フローチャンバー内のアビジン被覆した皿に低剪断速度で注入した。各皿に結合したバブルの数を視覚的に確認した。以下の各実験で、フローチャンバーから皿を分離してC4F10飽和PBS浴に入れることにより、結合したマイクロバブルが空気に接触するのを防いだ。次いで各皿をPBS浴中に置いて線形超音波プローブで造影した。各皿に結合したバブルの音波レスポンスを再度視覚的にAgilent Sonos5500医療用超音波造影システムのスクリーン上で測定した。
【0063】
1.12 統計的分析
球形及びしわ状マイクロバブルの接着能を、各フローチャンバー実験において賦与した3つの壁剪断速度において比較した。Excel ver.9.0表計算ソフト(Microsoft)を用いて2標本t−検定を行った。有意性はp=0.05となった。10の小静脈における接着したマイクロバブルの平均数をin vivo実験で比較した。同様の2標本t−検定をこれらのデータについて行った。
【0064】
1.13 しわ状リガンドマイクロバブルによる、微粒子または細胞の標的化された抽出
実施例1−5に記載したように調製した1mLの洗浄ビオチン化鈍鋸歯状マイクロバブルを、ストレプトアビジン(1μm直径、Molecular Probes, Eugene, OR)で被覆された〜1.108の蛍光ポリスチレンラテックスビーズと混合して30分間混合のためにインキュベートすることができる。次いで材料を逆さに置いたシリンジまたはフラスコに入れそして通常の重力でまたは〜500rpm(r=15cm)のバケツローターで遠心してマイクロバブルと接着した微粒子の浮遊物を得ることができる。あるいはマイクロバブルを抗体または他のリガンドまたは標的化分子で被覆し、特定の抗原を有する細胞混合物と混合することができる。抗原を有する細胞のマイクロバブルへの選択的な接着は、バブル−細胞複合体の浮遊物を作りだし、そして意図した細胞を含み、水性媒体中のバブル及び堆積物に結合しない、抗原を有していない細胞を含まないマイクロバブル層浮遊物の選択的な濃縮を可能とするだろう。マイクロバブル表面上の鈍鋸歯形状の存在によりマイクロバブルが標的細胞に接着するのが容易になり、接着能と結合力を改善する。
【0065】
セクション2:結果
2.1 マイクロバブルの圧壊
脂質殻がバブル表面を通っての気体の拡散のバリアを提供する。マイクロバブルへのゆっくりとした均一な正の圧力の負荷により、気体内容物が脂質殻を通過して拡散する。脂質単分子層殻の表面部分は気体核の表面よりももはや過剰となり、殻が外側に曲がりしわや折り畳みを形成する。このしわが外側に突き出た二重層を形成する。しわ状マイクロバブルが飽和C4F10溶液内で保存されれば、濃度勾配は再膨張(re-inflation)に対抗するので、しわは安定である。予想されるしわの構造の線図は図3に表される。マイクロバブルへの圧力の負荷は脂質単分子層(黄色)の曲がりを生起し、二重層のしわを形成する。PEG分子は赤で、固定化Rb40.34抗体は黒で示される。
【0066】
しわはマイクロバブル表面上に正の静水圧を負荷することで生起される。このようなしわが存在することは蛍光分光分析により確認され、これにより白血球表面上に見られるマイクロ折り畳みに似た明確な外周及び折り畳みが明らかになる。しわは0.3μm以下にわたることが観察される。Di-I蛍光プローブの取り込みにより蛍光エピ発光のもとで脂質殻を視覚化することができ(図4A、および4B、上の図)、光の透過する明るい部分は気体核を表す(図4A及び4B、下の図)。明るい部分の写真により、蛍光灯下に見られる構造は本当にバブルであり、単なる空の脂質殻ではないことが確かめられる。しわ状マイクロバブルと反対に、球形マイクロバブルは蛍光灯下で丸く見える。かかるしわは、マイクロバブルがC4F10飽和媒体中で保存されれば数時間安定である。
【0067】
Coulterのマルチサイザーを用いて2つのマイクロバブル群のサイズ特性を得た。Coulterカウンターは電気伝導度を測定することにより粒子のサイズを計算する。そこでサイズ分布は、Coulterカウンターの各マイクロバブル群の気体核のサイズレポートから得られ、そしてしわ状バブルの表面にある非連続性はカウントしない。2つのマイクロバブル群の間の、およそ0.5μmの直径の違いが、測定されたサイズ分布(図5)から明らかである。このサイズの違いにより、しわ状マイクロバブルは幾らかの気体容量を損失し、このようにして脂質表面を平坦で、より容量の少ない折り畳みに変化させたということが確かめられた。いずれの群のマイクロバブルの気体容量もCoulterカウンターによりレポートされたのと等しい直径の球体の容積であるとして計算することができる。平均的なしわ状マイクロバブルの気体の容量は7.7μmであり、平均的な球形マイクロバブルの方は13.2μmであった。したがって平均的なしわ状マイクロバブルからは5.6μmのC4F10が放出され、この容量損失は41%に相当する。
【0068】
2.2 皿表面上のP-セレクチン.Fcのサイト密度
異なる3つの濃度の組み換え型マウスP-セレクチン(P-セレクチン.Fc)基質についてフローチャンバー実験を行った。サイト密度対吸着されたP-セレクチン質量のグラフを、皿表面のP-セレクチン.Fcタンパク質について作成し、これを図6に示す。サイト密度25ng、150ng、及び250ngは、それぞれ31,97及び133サイト/μmである。グラフは非線形で、0.785cm(1cm円の面積)当たりおよそ300ngP-セレクチンにおいて飽和していることがわかる。非特定的なバックグラウンドの接着が14サイト/μmと等しいシグナルを生じた。
【0069】
2.3 In Vitroでの接着能
2.3.1 強固な接着能及び一時的な接着能
この実験では、接着行動に2つのタイプが観察された:一時的な接着と強固な接着である。造影には強固な接着が望ましい。なぜなら意図した標的部分にマイクロバブルが集合するからである。P−セレクチン標的化マイクロバブルの接着能を3つのP−セレクチン.Fcサイト濃度につき3つの剪断速度でフローチャンバー法にて測定した。結果を図7に示す。強固な接着能は剪断速度にほぼ線形に減少することが見て取れる:剪断速度33.6s−1、最高のP−セレクチン濃度(250ng/平行板)において最大7.6%から、122s−1、最低濃度(25ng/平行板)において2%にまで減少する(図7、A、B、C)。測定された各サイト密度でしわ状マイクロバブルは球形マイクロバブルと比べて実質的に(p<0.05)より多くの強固な接着能を示した(33.6s−1と76.6s−1)。アイソタイプ対照抗体(Iso Ab)を有する標的化しわ状及び球形マイクロバブル、または純粋カゼイン基質に注入されるP−セレクチン標的化マイクロバブルは、殆ど無視できる程の強固な接着しか生じなかった(<2%)(図7D)。
【0070】
一時的な接着能は、球形及びしわ状マイクロバブルとも、剪断速度とともに減少した。一時的な接着能は、球形マイクロバブルの方が実質的に高く(剪断速度122.5/sのもとでの測定を除く)、この実験において統計的な違いは見られなかった。
【0071】
2.3.2 強固な接着行動の割合(fraction)
強固な接着行動の割合を、強固な接着能を捕捉能(capture efficiency)で割って算出した。この割合は、マイクロバブルが強固な(一時的の逆)接着行動を形成する傾向、あるいは同様にどのように良好な捕捉行動が安定化され、そして強固な接着に変化するかを表すものである(図8)。強固な接着の割合は各剪断速度におけるP−セレクチン.Fcサイト密度の関数としてプロットする。しわ状マイクロバブルの強固な接着の割合は、各剪断速度において250〜150ngのP−セレクチンでだいたい一定であり、25ngP−セレクチンでは若干減少する。球形マイクロバブルは、全ての条件において強固な接着の割合がしわ状マイクロバブルのそれよりも低いが、同様のサイト依存性傾向を示した。
【0072】
2.3.3 休止時間分布
2つのタイプの接着行動が観察された:バブルが少なくとも10秒間接着する強固な接着と、バブルが離れるまでに10秒間未満しか接着しない一時的な接着である。少なくとも10秒間接着したバブルの大半はもっと長い時間結合したままであることが観察されたが、10秒間を強固な接着のカットオフとして選択し、これはフローチャンバー実験にて通常の持続時間である。フローチャンバー実験から得た休止時間分布の分析により一時的な接着行動及び強固な接着行動は2つの異なる群を形成し、しわ状及び球形バブルに異なる群を生じる(図9A〜9C)。これにより、強固及び一時的接着について10秒間をカットオフ時間として使用する正当性が明らかである。
【0073】
2.4 変形指数
種々の剪断条件下の球形及びしわ状マイクロバブルの変形度を測定して、しわ状マイクロバブルの強固な接着能が増強されるのは、結合することができるバブル表面領域における変形が誘導する増加によるものであるという仮説を検証した。接着能を測定した全ての剪断速度にわたってしわ状マイクロバブルは球形マイクロバブルよりも実質的により多く変形しており、これは図10に示されている。1を超える変形指数は流れの方向への伸長(バブルに対する剪断力により変形が引き起こされていることを示す)と、P−セレクチン.Fc基質と接触しているマイクロバブル領域での対応する増加を表している。よりたくさんのP−セレクチン.Fc:Rb40.34結合が形成されると、強固な接着が安定化される。しかし変形指数は、セクション2.4.2に記載された、剪断速度に対する強固な接着能の依存性とは相関関係がないように見える:変形指数は剪断と共に増加するが強固な接着能は剪断と共に減少する。この矛盾点は、結合したバブルに対して剪断力が反対の振る舞いをすることに起因するのであろう。剪断速度を増すと剪断力がバブルを圧す力の大きさが増加し、表面の変形の増加を引き起こす。しかしこの剪断力は結合したバブルに対して平行板表面から離そうとする、引き離す力としてはたらく。2つの相対する効果の相対的な大きさは、接着バブルの剪断引っ張りに対する感受性と脂質殻が変形される相対的な容易性から見積もられる。
【0074】
2.5 マウス挙睾筋における接着の増加
しわ状及び球形マイクロバブルのin vivoでの接着能は、炎症中のモデルマウスにより検討した。結果を図11に示す。剪断速度500〜3000s−1下のサイトカインで刺激した小静脈についてマイクロバブルの接着を検討した。4匹のc57B1/6マウスにおいてしわ状マイクロバブルが球形マイクロバブルよりも実質的に大きな接着を示した。P−セレクチン欠損マウス(P-/-)における標的化マイクロバブルの使用あるいはアイソタイプ対照抗体(Iso Ab)でのマイクロバブルの標的化は、両方のマイクロバブル群についておよそ2倍の接着にまで減少させた。球形マイクロバブルはしわ状マイクロバブルよりも直径で〜0.5μmサイズが大きかったが、このサイズの違いが内皮表面への送達の違いに寄与したとは考えられない。さらに接着したしわ状及び球形マイクロバブルにサイズまたは伸長の違いは特に見られなかった。P-/-マウスまたはアイソタイプ対照実験で接着したマイクロバブルは、Lindnerらが報告(2001)したように、マクロファージに接着するようであった。
【0075】
2.6 しわ状及び球形マイクロバブルの音波応答性
等濃度で0.5Lバッグの注射グレードの0.9%NaClに注入された場合、視覚的に測定されるように、鈍鋸歯状マイクロバブルにより提供されるコントラストは、円形マイクロバブルのそれとおよそ等しく、測定範囲内ではバブル濃度と共に音波応答性が増加する。
【0076】
実験セクション1に記載されたビオチン被覆された鈍鋸歯状または球形(未処理)マイクロバブルを平行板フローチャンバー中のアビジン被覆皿に低剪断速度で注入する実験では、超音波コントラストシグナルは皿に結合したバブルの数と共に増加し、これも等しい濃度の円形及び鈍鋸歯状バブルについてほぼ等しかった。皿に結合したマイクロバブルは超音波の機械指数を0.5超にして破壊した(幾つかの超音波パルスの後、バブルからのシグナルが消失)。
【0077】
本発明が前記の明細書に詳細に説明されたが、例示的なものであると理解され、限定的な性質のものではなく、単に好適な態様が記載されただけであると理解されるべきであり、本発明の精神内の全ての変更及び修正は保護されることをが望ましい。さらに本出願に特定された全ての文献は通常の当業者が保有する能力を示すものであり、ここに参考文献として組み込まれ、以下に全て列挙する。
【0078】
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【0079】
[米国特許文献]
6,331,289 Dec, 2001 Klaveness et a]
6,245,318 Jun 2001 Klibanov et al
6,264,917 July 2001 Klaveness et al
6,416,740 July 2002 Unger
6,443,898 Sept 2002 Unger et al
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、in vitro接着能の検討を行うのに使用する逆平行フローチャンバーを示す線図である。標的基質(P-セレクチン.Fc)をフローチャンバープレート上板に吸着させ、標的化マイクロバブルの分散液を既知の剪断速度でフローチャンバーに注入する。
【図2】図2は、変形度の検討を行うのに使用する修正フローチャンバーを示す線図である。標的基質(アビジン)で薄カバーガラスを被覆し、これを標準35mm培養皿内に置く。高倍率水浸漬対物レンズとカバーガラスとのカップリングを可能とするために培養皿を通過する小さな観察穴を切る。フローチャンバーの残りの部分は、記載したとおりに組み立てる。
【図3】図3は、本発明のある種の態様のしわ状形状を示す線図である。マイクロバブルへの圧力の負荷により脂質単分子膜(黄色)が折れ曲がり、二重のしわを形成する。PEG分子は赤、固定化標的化抗体は黒で示される。
【図4】図4Aおよび4Bは、それぞれしわ状及び球形マイクロバブルの蛍光像(上)及び明視野像(下)である。バブルはプラスチックカバーガラスに静的に吸着され、100倍の高解像度デジタルカメラで写真撮影される。エピ蛍光により脂質殻の視角化が可能となり、ここではしわが生じており、明視野は気体核の視角化を可能とする。上のパネルの右下の隅にある線は10μmである。
【図5】図5は実験部でさらに説明したとおり、マイクロバブルのサイズ特性を示す:(A)フローチャンバー実験に用いたバブルの平均マイクロバブル直径の棒グラフ;(B)球形及びしわ状マイクロバブルのCoulterカウンターサイズ分布;(C)しわ状及び球形マイクロバブルのサイズパラメータの表
【図6】図6は、皿表面の標的レセプターP-セレクチン.Fcのサイト密度を表すグラフであり、この点はさらに実験部に記載されている。ビオチン化Rb40.34を適切な量のP-セレクチン.Fcで被覆した皿と共にインキュベートする。結合した抗体をEu結合ストレプトアビジンでラベル化し、P-セレクチン.Fcサイト密度をλem=360nm、λex=610nmで時間分解スペクトロスコピーにより定量した。
【図7】図7は、フローチャンバー実験におけるしわ状及び球形マイクロバブルの強固な接着を表し、この点はさらに実験部に記載されている。強固な接着の接着能は、結合距離内にいる総流量に対して、10秒間以上接着したままでいるマイクロバブルの割合として定義される。(A、B、C)種々のP-セレクチン.Fcサイト密度に対するしわ状及び球形マイクロバブルの強固な接着能;(D)負対照条件における強固な接着能:Rb40.34バブルのカゼインへの接着能及びアイソタイプ対照バブルの250ng/皿P-セレクチン.Fcへの接着能。
【図8】図8は、フローチャンバー実験における強固に接着したマイクロバブルの割合を示し、この点はさらに実験部に記載されている。強固な接着は、強固な接着能を捕捉能で割ることにより計算した。
【図9A】図9Aは、フローチャンバー実験における球形及びしわ状マイクロバブルの休止持続時間を示し、この点はさらに実験部に記載されている。頻度を各バブルのタイプの接着行動の総数に対して標準化し;標準化した頻度の実際値を各カラムの上に記載した。休止時間のデータを各オフラインでの接着行動の持続時間を計算することにより接着能フローチャンバーの結果から集めた(実験、セクション2.4.2)。>10秒接着したバブルを「強固に接着した」とし、10秒のカラムで示した。全ての一時的接着バブルの平均休止時間は実質的に10秒以内であり、したがって二つの行動群のカットオフとして10秒を用いることが正当化される。
【図9B】図9Bは、フローチャンバー実験における球形及びしわ状マイクロバブルの休止持続時間を示し、この点はさらに実験部に記載されている。頻度を各バブルのタイプの接着行動の総数に対して標準化し;標準化した頻度の実際値を各カラムの上に記載した。休止時間のデータを各オフラインでの接着行動の持続時間を計算することにより接着能フローチャンバーの結果から集めた(実験、セクション2.4.2)。>10秒接着したバブルを「強固に接着した」とし、10秒のカラムで示した。全ての一時的接着バブルの平均休止時間は実質的に10秒以内であり、したがって二つの行動群のカットオフとして10秒を用いることが正当化される。
【図9C】図9Cは、フローチャンバー実験における球形及びしわ状マイクロバブルの休止持続時間を示し、この点はさらに実験部に記載されている。頻度を各バブルのタイプの接着行動の総数に対して標準化し;標準化した頻度の実際値を各カラムの上に記載した。休止時間のデータを各オフラインでの接着行動の持続時間を計算することにより接着能フローチャンバーの結果から集めた(実験、セクション2.4.2)。>10秒接着したバブルを「強固に接着した」とし、10秒のカラムで示した。全ての一時的接着バブルの平均休止時間は実質的に10秒以内であり、したがって二つの行動群のカットオフとして10秒を用いることが正当化される。
【図10】図10は、種々の剪断下におけるしわ状及び球形マイクロバブルの変形度を示し、この点はさらに実験部に記載されている。ビオチン化蛍光しわ状または球形マイクロバブルを、意図した剪断速度で5分間アビジンの基質に接着させた。接着したマイクロバブルの映像を高分解能カメラで100倍でとらえた。変形指数を流れの方向における伸長度(x)を流れと垂直の方向におけるバブルの長さ(y)で割って算出した。xとyの方向の間にピクセルサイズの偏りはなかった。
【図11】図11は、しわ状及び球形マイクロバブル群に関して、P-セレクチン標的化マイクロバブルのin vivoでの蓄積を示す。しわ状(Di-Iラベル化)及び球形(Di-Oラベル化)P-セレクチン標的化またはアイソタイプ対照マイクロバブルの2.5×10の混合分散物を、手術の2時間前に500ngマウスTNF-αで予め処理したc57B1/6またはP-/-マウスの静脈内に注射した。炎症マウス挙睾筋におけるマイクロバブルの接着を、小静脈中で接着したしわ状及び球形マイクロバブルを10箇所数えることにより測定した。(A)炎症微小循環におけるしわ状及び球形マイクロバブルの接着;(B)生理学的パラメータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体キャリヤー中に、気体充填マイクロバブルを含む、標的に結合するマイクロバブル組成物であって;該マイクロバブルが実質的に鈍鋸歯状のマイクロバブル膜を有し;そして該マイクロバブル膜が標的に結合する標的結合分子を含む、前記マイクロバブル組成物。
【請求項2】
該マイクロバブル膜が、脂質、タンパク質、ポリマーまたは他の界面活性剤あるいはこれらの組合せを含む、請求項1に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項3】
気体が実質的に血液に不溶である、請求項1に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項4】
気体がフッ素含有気体である、請求項3に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項5】
マイクロバブルが約1〜約10マイクロメートルの平均直径を有する、請求項1に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項6】
標的がレセプターであり、標的結合分子がレセプターに結合する、請求項1に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項7】
レセプターが細胞外マトリクスタンパク質、接着分子、レセプターに結合するG−プロテイン、細胞表面タンパク質、サイトカイン、糖タンパク、ペプチド、脂質、糖脂質、炭水化物またはこれらの組合せからなる群から選択される、請求項6に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項8】
標的化分子がペプチド、擬ペプチド、アプタマー、タンパク質、抗体と抗体フラグメント、オリゴ糖、及び小さい有機分子からなる群から選択される、請求項1に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項9】
液体キャリヤー中の、気体充填マイクロバブルの懸濁液を含む、標的に結合するのに有用なマイクロバブル組成物であって、該マイクロバブルが表面突起を有するマイクロバブル膜を実質的に有し、該マイクロバブル膜が標的に結合する標的結合分子をさらに含む、前記マイクロバブル組成物。
【請求項10】
表面突起が膜の折り畳みを含む、請求項9に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項11】
マイクロバブル膜が脂質、タンパク質または界面活性剤を含み、マイクロバブルが約1〜約10マイクロメートルの平均直径を有する、請求項9に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項12】
気体が実質的に血液に不溶である、請求項9に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項13】
標的が細胞膜結合レセプターであり、標的結合分子がレセプターに結合する、請求項12に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項14】
標的化結合分子がペプチド、擬ペプチド、アプタマー、タンパク質、抗体と抗体フラグメント、オリゴ糖及び小さい有機分子からなる群から選択される、請求項9に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項15】
レセプターが細胞外マトリクスタンパク質、接着分子、レセプターに結合したG−プロテイン、細胞表面タンパク質、サイトカイン、糖タンパク、ペプチド、脂質、糖脂質またはこれらの組合せからなる群から選択される、請求項13に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項16】
液体キャリヤー中の、気体充填マイクロバブルの懸濁液を含む、標的に結合するのに有用なマイクロバブル組成物であって、該マイクロバブルが主に非球形マイクロバブル膜を有し、該非球形マイクロバブル膜が剪断応力下で、対応する球形マイクロバブル膜よりも高い変形度を示し、該マイクロバブル膜が標的に結合する標的結合分子を含む、前記マイクロバブル組成物。
【請求項17】
マイクロバブル膜が脂質、タンパク質、ポリマーまたは他の界面活性剤またはこれらの組合せを含む、請求項16に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項18】
気体が実質的に血液に不溶である、請求項16に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項19】
マイクロバブルが約1〜約10マイクロメートルの平均直径を有する、請求項16に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項21】
標的が細胞膜結合レセプターであり、標的化分子がレセプターに結合する、請求項16に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項22】
マイクロバブルを標的に結合させる方法であって、請求項1、9及び16のいずれか1項に記載のマイクロバブル組成物に標的を接触させることを含む、前記方法。
【請求項23】
マイクロバブル組成物のマイクロバブル膜がスペーサー腕により接着された標的化分子を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
標的に向けられたマイクロバブル組成物の製造方法であって、
液体キャリヤーに懸濁され、球形マイクロバブル膜を有する、気体充填マイクロバブルを形成し;
球形マイクロバブルを非球形マイクロバブルに変化させ;そして
該マイクロバブル膜に、標的に結合する標的化分子を接着あるいは導入する
ことを含む、前記方法。
【請求項25】
標的化分子が、該変化より前に膜に接着あるいは導入される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
標的化分子が、該変化より後に膜に接着あるいは導入される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
該変化が、球形マイクロバブル膜内からの気体の部分的放出を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
該変化が、球形マイクロバブル膜を圧力にかけることを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
該圧力が、静水圧、超音波、またはマイクロバブル膜の浸透圧差により適用される、請求項38に記載の方法。
【請求項30】
標的化分子がペプチド、擬ペプチド、アプタマー、タンパク質、抗体と抗体フラグメント、オリゴ糖、及び小さい有機分子からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
請求項1、9及び16のいずれか1項に記載のマイクロバブル組成物を含む薬剤組成物であって、液体キャリヤーが薬学的に許容可能な液体キャリヤーである、前記薬剤組成物。
【請求項32】
治療用組成物である、請求項31に記載の薬剤組成物。
【請求項33】
診断用組成物である、請求項31に記載の薬剤組成物。
【請求項34】
超音波造影剤である、請求項31に記載の薬剤組成物。
【請求項35】
患者において超音波造影を行う方法であって:
患者に請求項34に記載の超音波造影剤を導入し;そして
該組成物を基準に超音波像を現像する
ことを含む、前記方法。
【請求項36】
請求項32に記載の治療用組成物を患者に投与することを含む、患者の治療的処置を行う方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−510579(P2006−510579A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−521673(P2004−521673)
【出願日】平成15年7月11日(2003.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2003/021712
【国際公開番号】WO2004/006964
【国際公開日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(505012922)ターゲソン・エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】