説明

マイクロプレートの処理装置

【課題】金属製など重量が大きい蓋を対象とする場合にあっても、蓋を安定して保持することができるマイクロプレートの処理装置を提供する。
【解決手段】マイクロプレート3から離脱された金属製の蓋4を所定の位置で保持する蓋保持機構7を、蓋4の両側の保持側面4bに当接する当接部22aとこの蓋4の下面を係止する係止部とが設けられた第1保持部材22A、第2保持部材22Bと、これらの保持部材を付勢することにより当接部22aをX方向から押し付ける第1バネ部材24A、第2バネ部材24Bと、蓋4の上面に当接することによりこの蓋4が係止部による係止点を支点として自重により回動することを防止する回動防止部26とを備えた構成とする。これにより、重量が大きい蓋4を対象とする場合にあっても、蓋4の自重による回動を確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面に複数のウェルが形成されたマイクロプレートと、このマイクロプレートの上面を覆う蓋からなる蓋付きのマイクロプレートを取り扱うマイクロプレートの処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロプレートのウェルに試薬等の液体を供給する分注装置では、複数のマイクロプレートを連続的に取り扱うため、マイクロプレートに付属した蓋を自動的に着脱する機能が要求されている。蓋はマイクロプレートの本体を覆うように載置されているだけであるので、蓋と本体とを上下に相対移動させることで蓋を着脱することができる。このような蓋の着脱に用いられる機構として、ロボットアームによって蓋の側面を左右から水平に挟んで保持する方式が知られている(特許文献1参照)。この方式によれば、蓋の側面を把持する簡便なクランプ機構のみによって蓋を取り扱うことができる。
【特許文献1】特表2003−532594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで近年、従来使用されていた樹脂製の蓋に代えて、より重量が大きい金属製の蓋を使用することが求められるようになっている。これは、1つのマイクロプレートに設けられるウェルの多孔化・小径化に伴って、マイクロプレートの周縁部に位置するウェルに外部雰囲気による影響が及ぶエッジエフェクトを極力抑制することを目的とするものである。すなわちマイクロプレートにおける蓋の装着は上述のように単に蓋をマイクロプレートの上面に載置することのみによって行われることから周縁部は完全に密封状態とはならず、周縁部のウェルからの液体の蒸発が内部のウェルよりも促進され、試験結果にばらつきを生じる。
【0004】
このようなエッジエフェクトを抑制する目的で、より重量の大きい金属製の蓋を使用することにより、周縁部における蓋とマイクロプレートの上面との密着状態が改善され、外部雰囲気によるウェルへの影響を極力抑制することができる。しかしながら、このような金属製の蓋を用いたマイクロプレートをロボットアームなどの保持部材によって側面を挟み込んで保持する方式においては、蓋の重力が従来の樹脂製の蓋と比較して大きいことから、安定した姿勢で蓋を保持することが難しいという課題がある。すなわち、側面を挟み込むことによって蓋を保持する方式においては、保持力は主に保持部材を蓋の側面に押し付けることによる摩擦力であることから、金属製の蓋のように重量が大きくなると、確実な保持状態を維持することが困難となる。このため、自重によって蓋が上下方向や回動方向に位置ずれするなどの不具合を生じる場合がある。
【0005】
そこで本発明は、金属製など重量が大きい蓋を対象とする場合にあっても蓋を安定して保持することができるマイクロプレートの処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマイクロプレートの処理装置は、上面に複数のウェルが形成された矩形のマイクロプレートと、このマイクロプレートの上面を覆う蓋からなる蓋付きのマイクロプレートを取り扱うマイクロプレートの処理装置であって、前記マイクロプレートから離脱された金属製の前記蓋を所定の位置で保持する蓋保持機構と、保持ヘッドによって前記マイクロプレートの把持側面を把持することによりこのマイクロプレートを前記所定の位置を含む移送範囲内で移送するマイクロプレート移送機構とを備え、前記蓋保持機構は、前記蓋
の両側の保持側面に第1方向から当接する当接部とこの蓋の下面を係止する係止部とが設けられた1対の保持部材と、これらの保持部材を付勢することにより前記当接部を前記両側の保持側面に第1方向から押し付ける1対の付勢手段と、前記蓋の上面に当接することによりこの蓋が前記係止部による係止点を支点として自重により回動することを防止する回動防止部とを備えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マイクロプレートから離脱された金属製の蓋を所定の位置で保持する蓋保持機構を、蓋の両側面に当接する当接部とこの蓋の下面を係止する係止部とが設けられた1対の保持部材と、これらの保持部材を付勢することにより当接部を第1方向から押し付ける1対の付勢手段と、蓋の上面に当接することによりこの蓋が下面を係止する係止点を支点として自重により回動することを防止する回動防止部とを備えた構成とすることにより、金属製など重量が大きい蓋を対象とする場合にあっても蓋を安定して保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態のマイクロプレートの処理装置が組み込まれた分注装置の斜視図、図2は本発明の一実施の形態の分注装置に使用されるマイクロプレートの斜視図、図3は本発明の一実施の形態の分注装置に使用されるマイクロプレートの断面図、図4は本発明の一実施の形態のマイクロプレートの処理装置における蓋保持機構の構造説明図、図5は本発明の一実施の形態のマイクロプレートの処理装置におけるマイクロプレートおよび蓋の保持状態の説明図、図6、図7、図8は本発明の一実施の形態のマイクロプレートの処理装置における蓋保持動作の動作説明図である。
【0009】
まず図1を参照してマイクロプレートの処理装置が組み込まれた分注装置の構成を説明する。分注装置1は、ゲノム創薬などのバイオ・メディカル研究分野において、試験対象の試料や試験の過程において使用される試薬などの各種の液体を、マイクロプレートに小分けするために用いられるものである。本実施の形態においては、分注装置1にはマイクロプレートとこのマイクロプレートの上面を覆う蓋からなる蓋付きのマイクロプレートを取り扱うマイクロプレートの処理装置が組み込まれている。このマイクロプレートの処理装置は、マイクロプレートおよび蓋を対象として所定のハンドリング操作を行う機能を有するものである。
【0010】
図1において、基台2の上面は分注作業を行うための作業ステージ2aとなっており、作業ステージ2aには、分注の対象となる複数のマイクロプレート3およびマイクロプレート3に分注される液体を貯留するリザーバ5が載置され、さらにマイクロプレート3の上面を覆う蓋4を複数保持する蓋保持部6が配置されている。マイクロプレート3の上面には複数のウェル3aが格子配列で形成されており、ウェル3aにはリザーバ5から取り出された液体が分注される。
【0011】
ここで図2,図3を参照して、マイクロプレート3および蓋4について説明する。図2(a)に示すように、マイクロプレート3は平面視して矩形の形状を有する容器であり、長辺側の側面は以下に説明する保持ヘッド12によって把持される把持側面3cとなっている。マイクロプレート3においてウェル3aが形成された上面3bには、マイクロプレート3の平面形状と対応した形状の蓋4が上面側から装着される(矢印a)。蓋4の各辺には下方に突出した位置ガイド部4aが設けられており、蓋4は位置ガイド部4aによってガイドされて、マイクロプレート3に対して所定の位置関係で装着される。これにより、図2(b)、図3(b)に示す蓋付きのマイクロプレート3となる。蓋4は、ウェル3aへの外部からの異物の混入や、ウェル3a内の液体の蒸散を防止するために装着される
ものである。蓋4の長辺側の側面は、以下に説明する蓋保持機構7によって保持される際の保持側面4bとなっている。
【0012】
図3(a)に示すように、蓋4の下面4cにおいてウェル3aの外周部に対応する位置には、シール部材8が蓋4の周縁に沿って装着されている。蓋4によってマイクロプレート3の上側を覆った状態では、シール部材8はマイクロプレート3の上面3bに当接する。蓋4はステンレスなどの金属製であって樹脂製のものと比較して重量が大きいことから、図3(b)に示すように、シール部材8は蓋4の自重によって上面3bに押し付けられ、この押し付け部によってマイクロプレート3の内側が外部雰囲気に対してシールされる。これによりマイクロプレート3においてシール部材8よりも内側に位置するウェル3aには、外部雰囲気による影響が及びにくく、マイクロプレート3を用いた試験における信頼性が確保される。
【0013】
蓋保持部6は、1つの蓋4を保持する蓋保持機構7を上下方向に所定の間隔で複数段配置して構成されている。これらの複数の蓋保持機構7のうち特定された蓋保持機構7に蓋4を保持させることにより、蓋保持機構7はマイクロプレート3から離脱された蓋4を所定の位置で保持する。分注作業実行に際しては、蓋付きのマイクロプレート3を蓋保持部6にアクセスさせて、蓋4のみを蓋保持機構7に保持させて、蓋4が除去された状態のマイクロプレート3を分注の対象とする。
【0014】
作業ステージ2aの上方には、下面に複数の分注ノズル10aを備えた分注ヘッド10が配設されており、分注ヘッド10はX軸テーブル11X、Y軸テーブル11Yより成るヘッド移動機構によって、マイクロプレート3およびリザーバ5の上方で水平移動する。分注ノズル10aは、マイクロプレート3におけるウェル3aの配列に対応して設けられており、ヘッド移動機構によって分注ヘッド10を移動させることにより、分注ノズル10aによってリザーバ5内に貯留された液体を吸引してマイクロプレート3の各ウェル3aに分注する。
【0015】
また作業ステージ2a上には、1対の把持部材12aを備えた保持ヘッド12が配設されている。把持部材12aによってマイクロプレート3の把持側面3c(図2(a)参照)を両側から把持することにより、蓋4によって覆われた蓋付き状態、または蓋4が除去された蓋無し状態のマイクロプレート3を保持することができる。なお、保持ヘッド12がマイクロプレート3を保持する際には、把持部材12aは、図5(a)に示すように、把持側面3cにおいて把持部位として水平方向の一方側(蓋保持部6へのアクセス方向に対して手前側)に偏って設定された範囲A1にのみ当接して把持する。ここでは、蓋4において長辺の中央から下方に突出した位置ガイド部4aに把持部材12aが干渉しないように、範囲A1が設定されている。すなわち保持ヘッド12は、マイクロプレート3の把持側面3cにおいて把持部位として水平方向の一方側に偏って設定された範囲A1にのみ当接して把持する1対の把持部材12aを備えている。
【0016】
保持ヘッド12は垂直な駆動軸13を介してZ駆動部14Zに結合されており、さらにZ駆動部14Zは、Y駆動部14Y、X駆動部14Xに結合されている。X駆動部14X、Y駆動部14Y、Z駆動部14Zは保持ヘッド駆動機構を構成し、この保持ヘッド駆動機構を駆動することにより、保持ヘッド12は作業ステージ2a上で3次元的に移動する。これにより保持ヘッド12は、分注対象となる蓋付き状態のマイクロプレート3を蓋保持部6の所望の蓋保持機構7にアクセスさせ、当該蓋保持機構7に蓋4のみを保持させることができる。この後蓋4が除去されたマイクロプレートは、作業ステージ2a上の分注エリアに載置され、このマイクロプレート3を対象として分注ヘッド10による分注操作が実行される。
【0017】
そして分注操作後のマイクロプレート3は再び保持ヘッド12によって蓋保持部6に移送され、ここで先に蓋4を保持させた蓋保持機構7にマイクロプレート3をアクセスさせることにより、当該マイクロプレート3には再び蓋4が装着される。したがって、保持ヘッド12およびX駆動部14X、Y駆動部14Y、Z駆動部14Zより成る保持ヘッド駆動機構は、保持ヘッド12によってマイクロプレート3の把持側面3cを把持することにより、このマイクロプレート3を蓋保持部6における所定の位置を含む移送範囲内で移送するマイクロプレート移送機構となっている。
【0018】
次に図4を参照して、蓋保持部6に複数配設された蓋保持機構7の構成について説明する。図4に示すように、蓋保持機構7は平面視してコ字形状の保持フレーム20を主体としており、2つのコーナ部20bを上下方向に挿通する2つの保持ポスト21によって保持されている。蓋保持部6には、蓋保持機構7が上下方向に所定の間隔で複数設けられている。保持フレーム20がコーナ部20bからY方向手前側(図1において左側)に延出した2つのサイドフレーム20aの内側には、1対をなす第1保持部材22A、第2保持部材22Bが対向して配設されている。第1保持部材22Aおよび第2保持部材22Bは、それぞれ保持対象の蓋4の保持側面4b(図2参照)に当接して、この蓋4を保持する機能を有するものである。
【0019】
ここで、第1保持部材22A、第2保持部材22Bは、図5(b)に示すように、蓋付き状態のマイクロプレート3を保持ヘッド12が把持部材12aによって把持した状態で、蓋4の保持側面4bにおいて把持部材12aと干渉しない範囲A2のみに当接する。ここでは図5(a)に示す範囲A1に対応して、蓋4において長辺の中央から下方に突出した位置ガイド部4aを境界にして範囲A1と重ならないように範囲A2が設定されており、この範囲A2に基づいて第1保持部材22A、第2保持部材22Bの長手方向の寸法が設定されている。
【0020】
第1保持部材22A、第2保持部材22Bは、いずれも矩形断面の棒状部材の相対向する内面側において上部側を部分的に除去した段付き加工を施して製作されている。第1保持部材22A、第2保持部材22Bが蓋4を保持した状態では、図4のA−A断面において符号22aで示す垂直面が蓋4の両側の保持側面4bに当接し、符号22cで示す水平面が蓋4の下面4cを係止する。したがって符号22aで示す垂直面は、蓋4の両側の保持側面4bに第1方向であるX方向から当接する当接部22aとなっており、符号22cで示す水平面は、蓋4の下面を係止する係止部22cとなっている。さらに、当接部22aの手前側の端部には、当接部22aの垂直面が手前側に広がったテーパ形状のガイド面22bが設けられている。ガイド面22bは、第1方向(X方向)と直交する第2方向(Y方向)から蓋4を1対の第1保持部材22A、第2保持部材22Bの間に導入するために設けられている。
【0021】
第1保持部材22A、第2保持部材22Bは、いずれもサイドフレーム20aにX方向に設けられた軸孔(図示省略)に摺動自在に嵌合する2本のスライド軸23によって、サイドフレーム20aに対してX方向(第1方向)に進退自在に保持されている(矢印b)。そして、第1保持部材22A、第2保持部材22Bは、それぞれスライド軸23が挿通する形で装着されたコイル状の圧縮バネ部材である第1バネ部材24A,第2バネ部材24Bによって、内側方向(矢印c)に付勢されている。
【0022】
ここで、第1バネ部材24A、第2バネ部材24Bの付勢力は異なっており、第1バネ部材24Aの付勢力の方が第2バネ部材24Bの付勢力よりも大きくなるように、バネ特性の選定がなされている。第1バネ部材24A、第2バネ部材24Bは、これらの保持部材を付勢することにより当接部22aを両側の保持側面4bにX方向から押し付ける1対の付勢手段となっている。そしてこの1対の付勢手段は、それぞれ付勢力が大小の第1付
勢手段である第1バネ部材24Aおよび第2付勢手段である第2バネ部材24Bよりなる。
【0023】
第2保持部材22Bの外側には、サイドフレーム20aから内側へ延出した位置規制部25が設けられている。位置規制部25は、第2バネ部材24Bによって付勢される第2保持部材22Bが、第1バネ部材24Aによって蓋4を介して押し込まれて変位する位置を規制することにより、1対の保持部材によって保持された状態における蓋4のX方向の水平位置を位置決めする機能を有している。
【0024】
保持フレーム20の中央には、保持フレーム20の上面から手前側に延出した回動防止部26が設けられている。第1バネ部材24A、第2バネ部材24Bの間に蓋4が保持された状態において、回動防止部26は蓋4の上面4dの端部に当接する位置にある。回動防止部26は、係止部22cによって下面側を係止された蓋4が自重によって係止部22cの端部の係止点を支点として回動することを防止する機能を有している。すなわち、図5(b)に示す状態では、蓋4は蓋保持機構7によって範囲A2の部分においてのみ下方から係止されているため、蓋4の重心は係止部22cから外れた位置にある。このため、当接部22aによって両側面を挟み込む力が十分でない場合には、蓋4は係止部22cの端部(矢印B)を支点として、矢印d方向に回動する傾向にある。
【0025】
このとき、回動防止部26が蓋4の上面4dにおける端部の上方に存在して上方への変位を規制することにより蓋4の回動が防止される。そして本実施の形態においては、回動防止部26は蓋4の上面4dにおいて図5(a)における一方側、すなわち把持部材12aがマイクロプレート3を把持する範囲A1と反対側の端部に当接するようになっている。これにより蓋4の重心位置から最も離れた部位において蓋4の上方への変位を規制することができ、回動防止をより効果的に行うことができる。
【0026】
次に、図6,図7,図8を参照して、蓋4を蓋保持機構7に保持させる動作の詳細を説明する。まず蓋付き状態のマイクロプレート3を保持ヘッド12によって保持させ、図6(a)に示すように、蓋保持部6に設けられた複数の蓋保持機構7のうち、所定の蓋保持機構7に対してアクセスさせる。このとき、保持ヘッド12はマイクロプレート3の把持側面3cのうち、図5(a)に示す範囲A1のみを把持している。そして図8(a)に示すように、第1保持部材22A、第2保持部材22Bはいずれも第1バネ部材24A、第2バネ部材24Bによって相互に近接する方向に付勢されており、第2保持部材22Bの当接部22aが最終的な蓋4のX方向の保持基準位置P(保持側面4bの基準位置)から内側へ突出した位置にある。そして第1保持部材22A、第2保持部材22Bのそれぞれの当接部22a相互の間隔Bは、蓋4の保持幅寸法である蓋4の短辺の幅寸法よりも小さくなっている。
【0027】
次いでこの状態において、図6(b)に示すように、保持ヘッド12を蓋保持機構7に対して接近させ(矢印e)、蓋4を第1保持部材22A、第2保持部材22Bの間に進入させて保持させる。すなわち、図7(a)に示すように、蓋4の両保持側面4bの先端部を第1保持部材22A、第2保持部材22Bのそれぞれのガイド面22bに沿わせて導入し、蓋4をY方向に移動させる(矢印f)。
【0028】
この後図7(b)に示すように、蓋4をさらにY方向に最終保持位置まで押し込む(矢印g)。このとき、蓋4は第1バネ部材24A、第2バネ部材24Bの付勢力に抗して第1保持部材22A、第2保持部材22Bを押し広げ(矢印h,i)、これにより、第1保持部材22A、第2保持部材22Bの当接部22aは、蓋4の両保持側面4bに押し付けられる。すなわち、蓋4を第1バネ部材24A、第2バネ部材24Bの付勢力に抗してガイド面22bに沿ってY方向から移動させることにより、当接部22aを両側の保持側面
4bにX方向から押し付ける。
【0029】
すなわちここでは、1対の第1保持部材22A、第2保持部材22Bが第1バネ部材24A、第2バネ部材24Bによって相互に近接する方向に付勢されて、相互の間隔が蓋4の保持幅寸法よりも小さくなっている状態において、蓋4を第1バネ部材24A、第2バネ部材24Bの付勢力に抗してガイド面22bに沿って第2方向であるY方向から移動させることにより、当接部22aを両側の保持側面4bにX方向から押し付けるようにしている。
【0030】
その後、図6(c)に示すように、保持ヘッド12を下降させることにより(矢印k)、把持部材12aに把持されたマイクロプレート3のみが下降し、蓋4は蓋保持機構7によって保持された状態となる。このとき、蓋保持機構7には回動防止部26が設けられていることから、蓋4が自重によって回動して保持状態が不安定となる不具合(図5(b)参照)が発生しない。また、第1バネ部材24Aの付勢力は第2バネ部材24Bの付勢力よりも大きいことから、蓋4からマイクロプレート3が離脱すると、第1保持部材22Aと蓋4と第2保持部材22Bは一体となって矢印j方向へ水平移動し、位置規制部25によって規制される位置に位置決めされる。このように、蓋保持機構7によって保持された蓋4は、位置規制部25によって規制される位置に必ず位置決めされることになるため、マイクロプレート3に蓋4を装着する際の保持ヘッド12の目標移動位置を的確に定めることができる。
【0031】
上記説明したように、本発明に示すマイクロプレートの処理装置は、マイクロプレート3から離脱された金属製の蓋4を所定の位置で保持する蓋保持機構7を、蓋4の両側の保持側面4bに当接する当接部22aとこの蓋4の下面4cを係止する係止部22cとが設けられた1対の保持部材と、これらの保持部材を付勢することにより当接部22aを第1方向から押し付ける1対の付勢手段と、蓋4の上面に当接することによりこの蓋4が係止部22cによる係止点を支点として自重により回動することを防止する回動防止部26とを備えた構成を採用している。これにより、マイクロプレート3の周縁部に位置するウェル3aに外部雰囲気による影響が及ぶエッジエフェクトを極力抑制することを目的として、金属製など重量が大きい蓋4を対象とする場合にあっても、蓋4の自重による回動を確実に防止して、蓋4を安定して保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のマイクロプレートの処理装置は、金属製など重量が大きい蓋を対象とする場合にあっても蓋を安定して保持することができるという効果を有し、バイオ・メディカル研究分野などにおいて用いられる分注装置において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態のマイクロプレートの処理装置が組み込まれた分注装置の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態の分注装置に使用されるマイクロプレートの斜視図
【図3】本発明の一実施の形態の分注装置に使用されるマイクロプレートの断面図
【図4】本発明の一実施の形態のマイクロプレートの処理装置における蓋保持機構の構造説明図
【図5】本発明の一実施の形態のマイクロプレートの処理装置におけるマイクロプレートおよび蓋の保持状態の説明図
【図6】本発明の一実施の形態のマイクロプレートの処理装置における蓋保持動作の動作説明図
【図7】本発明の一実施の形態のマイクロプレートの処理装置における蓋保持動作の動作説明図
【図8】本発明の一実施の形態のマイクロプレートの処理装置における蓋保持動作の動作説明図
【符号の説明】
【0034】
1 分注装置
3 マイクロプレート
3a ウェル
3c 把持側面
4 蓋
4b 保持側面
6 蓋保持部
7 蓋保持機構
12 保持ヘッド
12a 把持部材
22A 第1保持部材
22B 第2保持部材
22a 当接部
22b ガイド面
22c 係止部
24A 第1バネ部材
24B 第2バネ部材
25 位置規制部
26 回動防止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に複数のウェルが形成された矩形のマイクロプレートと、このマイクロプレートの上面を覆う蓋からなる蓋付きのマイクロプレートを取り扱うマイクロプレートの処理装置であって、
前記マイクロプレートから離脱された金属製の前記蓋を所定の位置で保持する蓋保持機構と、保持ヘッドによって前記マイクロプレートの把持側面を把持することによりこのマイクロプレートを前記所定の位置を含む移送範囲内で移送するマイクロプレート移送機構とを備え、
前記蓋保持機構は、前記蓋の両側の保持側面に第1方向から当接する当接部とこの蓋の下面を係止する係止部とが設けられた1対の保持部材と、これらの保持部材を付勢することにより前記当接部を前記両側の保持側面に第1方向から押し付ける1対の付勢手段と、前記蓋の上面に当接することによりこの蓋が前記係止部による係止点を支点として自重により回動することを防止する回動防止部とを備えたことを特徴とするマイクロプレートの処理装置。
【請求項2】
前記保持ヘッドは、前記把持側面において把持部位として水平方向の一方側に偏って設定された範囲にのみ当接して把持する1対の把持部材を備え、
前記1対の保持部材は、前記蓋付きのマイクロプレートを前記保持ヘッドが把持した状態で前記蓋の両側の保持側面において前記把持部材と干渉しない範囲に当接し、
前記回動防止部は、前記蓋の上面において前記一方側とは反対側の端部に当接することを特徴とする請求項1記載のマイクロプレートの処理装置。
【請求項3】
前記1対の付勢手段はそれぞれ付勢力が大小の第1付勢手段および第2付勢手段より成り、前記第2付勢手段によって付勢される第2保持部材が、前記第1付勢手段によって前記蓋を介して押し込まれて変位する位置を規制することにより、前記1対の保持部材によって保持された状態における前記蓋の前記第1方向の水平位置を位置決めする位置規制部を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のマイクロプレートの処理装置。
【請求項4】
前記保持部材に設けられた当接部の端部には、前記第1方向と直交する第2方向から前記蓋を前記1対の保持部材の間に導入するためのテーパ形状のガイド面が設けられており、
前記1対の保持部材が前記付勢手段によって相互に近接する方向に付勢されて前記1対の保持部材相互の間隔が前記蓋の保持幅寸法よりも小さくなっている状態において、前記蓋を前記付勢手段の付勢力に抗して前記ガイド面に沿って第2方向から移動させることにより、前記当接部を前記保持側面に前記第1方向から押し付けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマイクロプレートの処理装置。
【請求項5】
前記蓋保持機構が上下方向に所定の間隔で複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のマイクロプレートの処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−169497(P2010−169497A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11531(P2009−11531)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【Fターム(参考)】