マイクロホン装置および電子機器
【課題】組み立て時の手間を軽減しながら、一方の音道の音波を他方に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることが可能なマイクロホン装置を提供する。
【解決手段】このMEMSマイク10(マイクロホン装置)は、音波により振動するダイアフラム141を含み、ダイアフラム141の振動に基づいて音波を電気信号に変換する振動部14と、内部に振動部14を収容するとともに、ダイアフラム141の下面に音波を導く第1音道171と、ダイアフラム141の上面に音波を導く第2音道172とを含むマイクロホン筐体17とを備え、第1音道171には、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして第2音道172に対して音波を遅延させる音波遅延部121aが形成されている。
【解決手段】このMEMSマイク10(マイクロホン装置)は、音波により振動するダイアフラム141を含み、ダイアフラム141の振動に基づいて音波を電気信号に変換する振動部14と、内部に振動部14を収容するとともに、ダイアフラム141の下面に音波を導く第1音道171と、ダイアフラム141の上面に音波を導く第2音道172とを含むマイクロホン筐体17とを備え、第1音道171には、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして第2音道172に対して音波を遅延させる音波遅延部121aが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロホン装置および電子機器に関し、特に、音波を導く音道が形成されたマイクロホン装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音波を導く音道が形成されたマイクロホン装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、マイクロホン(振動部)と、マイクロホンを収容するハウジング(筐体)とを備え、マイクロホンの前面に音波を導く第1導音空間(第1音道)と、マイクロホンの後面に音波を導く第2導音空間(第2音道)とが形成されたマイクロホン装置が開示されている。このマイクロホン装置では、第2導音空間に、第1導音空間に対して音波を遅延させる発泡樹脂製の音響抵抗材を設けることによって、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げている。また、上記特許文献1のマイクロホン装置では、ハウジングを構成する前ハウジングおよび後ハウジングの間に音響抵抗材を挟み込みながら第2導音空間内に音響抵抗材を組み入れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−295278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のマイクロホン装置では、音響抵抗材により第2導音空間(第2音道)の音波を遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることが可能である一方、発泡樹脂製の音響抵抗材を、前ハウジングおよび後ハウジングの間に挟み込みながら第2導音空間内に組み入れる必要があるので、マイクロホン装置の組み立て時に手間がかかるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、組み立て時の手間を軽減しながら、一方の音道の音波を他方に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることが可能なマイクロホン装置および電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の局面によるマイクロホン装置は、音波により振動する振動板を含み、振動板の振動に基づいて音波を電気信号に変換する振動部と、内部に振動部を収容するとともに、振動板の一方の面に音波を導く第1音道と、振動板の他方の面に音波を導く第2音道とを含む筐体とを備え、第1音道および第2音道の一方には、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして他方に対して音波を遅延させる音波遅延部が形成されている。
【0008】
この発明の第1の局面によるマイクロホン装置では、上記のように、第1音道および第2音道の一方に、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして他方に対して音波を遅延させる音波遅延部を形成することによって、音波遅延部により第1音道および第2音道の一方の音波を遅延させて振動板の一方の面に到達する音波と他方の面に到達する音波との音圧差を生じ易くすることができるので、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。なお、第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して遅延させることにより、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができることは、後述する本願発明者のシミュレーションにより確認済みである。また、第1音道および第2音道の一方の断面を小さくする音波遅延部を形成するだけで第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して遅延させることができるので、第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して遅延させる発泡樹脂製の音響抵抗材などを、筐体で挟み込みながら音道内に組み入れる場合に比べて、マイクロホン装置の組み立て時の手間を軽減することができる。したがって、このマイクロホン装置では、マイクロホン装置の組み立て時の手間を軽減しながら、第1音道および第2音道の一方の音道の音波を他方に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。
【0009】
上記第1の局面によるマイクロホン装置において、好ましくは、音波遅延部は、第1音道および第2音道の一方の音道の断面を局所的に小さくすることにより、他方に対して音波を遅延させるように構成されている。このように構成すれば、音波遅延部により、第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して容易に遅延させることができる。
【0010】
この場合、好ましくは、音波遅延部は、第1音道および第2音道の一方の音道の断面を局所的に小さくすることにより、他方に対して音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させるように構成されている。このように構成すれば、マイクロホン装置の指向性を、両指向性と全指向性との間の指向性にすることができるので、全指向性に近づけながら、両指向性の効果も維持することができる。これにより、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げながら、ノイズ抑圧性能が低下するのを抑制することができる。なお、遅延量を30μ秒以上50μ秒以下にすることにより、マイクロホン装置の指向性を両指向性と全指向性との間の指向性にすることができることと、マイクロホン装置の指向性を両指向性と全指向性との間の指向性にすることにより、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げながら、ノイズ抑圧性能が低下するのを抑制することができることとは、後述する本願発明者のシミュレーションにより確認済みである。
【0011】
上記音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させる構成において、好ましくは、音波遅延部は、第1音道および第2音道の一方の音道の断面を局所的に1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさにすることにより、他方に対して音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させるように構成されている。このように構成すれば、音波遅延部により、容易に、第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して30μ秒以上50μ秒以下遅延させることができる。これにより、容易に、マイクロホン装置の指向性を両指向性と全指向性との間の指向性にすることができる。
【0012】
上記音道の断面を1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさにする構成において、好ましくは、音波遅延部は、音波の進行方向における長さが20μm以上100μm以下になるように形成されている。このように構成すれば、音波遅延部により、より容易に、第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して30μ秒以上50μ秒以下遅延させることができる。
【0013】
上記音道の断面を1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさにする構成において、好ましくは、第1音道および第2音道の一方のうち、音波遅延部が設けられた箇所以外の箇所と、第1音道および第2音道の他方との音波の進行方向に略直交する音道の断面は、70×10−9m2以上の大きさを有し、音波遅延部は、第1音道および第2音道の一方の音道の断面を局所的に1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに小さくするように構成されている。このように構成すれば、音波遅延部が形成された箇所以外の箇所で音波が遅延するのを抑制することができるので、音波遅延部により、確実に一方の音道の音波を他方に対して30μ秒以上50μ秒以下遅延させることができる。
【0014】
上記第1の局面によるマイクロホン装置において、好ましくは、振動部は、振動板の他方の面に対向するように配置された固定電極をさらに含み、振動板の振動に起因して振動板と固定電極との間の間隔が変動されることにより音波を電気信号に変換するように構成されており、音波遅延部は、振動板の一方の面に音波を導く第1音道に設けられている。このように構成すれば、固定電極により、第2音道を介して外部から侵入する塵などが振動板の他方の面に到達するのを抑制することができるとともに、音道の断面を小さくした音波遅延部により、第1音道を介して外部から侵入する塵などが振動板の一方の面に到達するのを抑制することができる。これにより、振動板の一方および他方の両面に塵が付着するのを抑制することができるので、塵の付着に起因して振動部の感度が低下するのを抑制することができる。
【0015】
上記第1の局面によるマイクロホン装置において、好ましくは、筐体は、振動部が搭載されるベース基板と、振動部を覆うように設けられるカバー基板とを含み、音波遅延部は、ベース基板またはカバー基板に形成されている。このように構成すれば、音波遅延部をベース基板およびカバー基板とは別体で形成する場合とは異なり、部品点数の増加を抑制することができる。
【0016】
上記第1の局面によるマイクロホン装置において、好ましくは、筐体は、振動部が搭載されるベース基板と、振動部を覆うように設けられるカバー基板とを含み、ベース基板またはカバー基板の表面には、音波遅延部を有する板状の音波遅延部材が貼付されている。このように構成すれば、音波遅延部を有する専用の音波遅延部材を設ける場合でも、ベース基板またはカバー基板の表面に貼付するだけで容易に第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して遅延させることができるので、マイクロホン装置の組み立て時に手間がかかるのを抑制することができる。
【0017】
上記第1の局面によるマイクロホン装置において、好ましくは、音波遅延部により音波を遅延させることによって両指向性と全指向性との間の指向性を有するように構成されている。このように構成すれば、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げながら、ノイズ抑圧性能が低下するのを抑制することが可能なマイクロホン装置を得ることができる。
【0018】
上記第1の局面によるマイクロホン装置において、好ましくは、音源が遠距離に位置する場合には、両指向性と全指向性との間の指向性のうち、音源が近距離に位置する場合よりも両指向性に近い指向性を有するように構成されている。このように構成すれば、近距離の音源に対しては、全指向性に近くなることにより、より広い範囲の音を検知することができるとともに、遠距離の音源に対しては、近距離の場合よりも両指向性に近くなることにより、ノイズ抑圧性能を高くすることができる。
【0019】
この発明の第2の局面による電子機器は、マイクロホン装置を備える電子機器であって、マイクロホン装置は、音波により振動する振動板を含み、振動板の振動に基づいて音波を電気信号に変換する振動部と、内部に振動部を収容するマイクロホン筐体とを備え、電子機器の外表面から通ずるとともに振動板の一方の面に音波を導く第1音道と、電子機器の外表面から通ずるとともに振動板の他方の面に音波を導く第2音道とが形成されており、第1音道および第2音道の一方には、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして他方に対して音波を遅延させる音波遅延部が形成されている。
【0020】
この発明の第2の局面による電子機器では、上記のように、第1音道および第2音道の一方に、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして他方に対して音波を遅延させる音波遅延部を形成することによって、音波遅延部により第1音道および第2音道の一方の音波を遅延させて振動板の一方の面に到達する音波と他方の面に到達する音波との音圧差を生じ易くすることができるので、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。なお、第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して遅延させることにより、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができることは、後述する本願発明者のシミュレーションにより確認済みである。また、第1音道および第2音道の一方の断面を小さくする音波遅延部を形成するだけで第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して遅延させることができるので、第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して遅延させる発泡樹脂製の音響抵抗材などを、マイクロホン筐体で挟み込みながら音道内に組み入れる場合に比べて、組み立て時の手間を軽減することができる。したがって、この電子機器では、組み立て時の手間を軽減しながら、第1音道および第2音道の一方の音道の音波を他方に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、組み立て時の手間を軽減しながら、第1音道および第2音道の一方の音道の音波を他方に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態による携帯電話の全体構成を示した平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるMEMSマイクの上方から見た全体斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるMEMSマイクの下方から見た全体斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるMEMSマイクの全体構成を示した分解斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態によるMEMSマイクの第1基板層を示した平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態によるMEMSマイクの第2基板層を示した平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるMEMSマイクの音波遅延部を示した拡大断面図である。
【図9】音源が近距離に位置する場合の遅延量と指向性パターンとの関係を示したシミュレーション結果である。
【図10】音源が遠距離に位置する場合の遅延量と指向性パターンとの関係のシミュレーション結果を示した図である。
【図11】遠距離の音源からホワイトノイズを出力した場合の周波数と感度との関係の実測結果を示した図である。
【図12】音波遅延部の開口径と遅延量との関係のシミュレーション結果を示した図である。
【図13】音波遅延部の開口径とゲインとの関係のシミュレーション結果を示した図である。
【図14】差動マイクロホンの指向性パターンについて説明するための図である。
【図15】ユーザが電子機器を耳に近づけて顔の横で持った状態を正面から見た図である。
【図16】ユーザが電子機器を耳に近づけて顔の横で持った状態を側方から見た図である。
【図17】ユーザが電子機器を顔の前方で持った状態を示した図である。
【図18】本発明の第2実施形態によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図19】本発明の第3実施形態によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図20】本発明の第3実施形態によるMEMSマイクの製造手順を説明するための断面図である。
【図21】本発明の第3実施形態によるMEMSマイクの製造手順を説明するための平面図である。
【図22】本発明の第4実施形態によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図23】本発明の第2実施形態の第1変形例によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図24】本発明の第2実施形態の第2変形例によるMEMSマイクの第2基板層を示した平面図である。
【図25】本発明の第3実施形態の変形例によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図26】本発明の第4実施形態の第1変形例によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図27】本発明の第4実施形態の第2変形例によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図28】本発明の第4実施形態の第3変形例によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図29】本発明の第1〜第4実施形態の第1変形例による電子機器を示した断面図である。
【図30】本発明の第1〜第4実施形態の第2変形例によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図31】本発明の第1〜第4実施形態の第3変形例によるMEMSマイクを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1〜図8を参照して、本発明の第1実施形態による携帯電話100の構成について説明する。なお、携帯電話100は、本発明の「電子機器」の一例である。
【0025】
本発明の第1実施形態による携帯電話100は、図1に示すように、表示部1と、表示部1を露出する開口部2aを有する筐体2とを備えている。また、筐体2の内部には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイク10を搭載した搭載基板3が設けられている。なお、MEMSマイク10は、本発明の「マイクロホン装置」の一例である。
【0026】
MEMSマイク10は、図2〜図4に示すように、シールド11と、カバー基板12と、ベース基板13とを備えている。また、MEMSマイク10のベース基板13には、図4に示すように、振動部14と、回路部15と、チップコンデンサー16とが搭載されている。また、カバー基板12とベース基板13とにより、振動部14、回路部15およびチップコンデンサー16を収容するMEMSマイク10のマイクロホン筐体17が構成されている。なお、マイクロホン筐体17は、本発明の「筐体」および「マイクロホン筐体」の一例である。また、MEMSマイク10は、2つの音道(第1音道171および第2音道172)を介して振動部14に音波を伝達することにより差動マイクロホンとして機能するように構成されている。また、第1実施形態のMEMSマイク10は、たとえば、約7mmの長さ(X方向の長さ)と、約4mmの幅(Y方向の長さ)と、約1.2mmの厚み(Z方向の長さ)とを有している。
【0027】
シールド11は、カバー基板12側からマイクロホン筐体17を覆うように構成されている。また、シールド11は、金属(たとえば、ニッケルシルバー(洋白))により形成されており、電気的なノイズを防ぐために設けられている。また、シールド11の上面部11aには、図2および図4に示すように、2つの音孔111および112が形成されている。2つの音孔111および112は、シールド11の上面部11aを上下方向(Z方向)に貫通するように形成されている。また、音孔111および112は、平面視において、長手方向が約2.65mm、短手方向が約0.6mmのトラック形状(長円形状)に形成されている。また、音孔111および112は、音波の進行方向(Z方向)に直交する方向において約1.5×10−6m2の断面積(開口面積)を有している。また、音孔111および112は、X方向に互いに間隔を隔てて配置されている。また、シールド11は、図3に示すように、マイクロホン筐体17を下方側(Z2方向側)から保持する保持部113を有している。保持部113は、かしめられることによりベース基板13を下方側から保持するように構成されている。
【0028】
カバー基板12は、FR−4(Flame Retardant Type 4)などのガラスエポキシ樹脂により形成されている。また、カバー基板12は、図4に示すように、シールド11とベース基板13とにより挟み込まれる位置に配置されている。また、カバー基板12には、図4および図5に示すように、シールド11の2つの音孔111および112のそれぞれに対応する2つの音孔121および122が形成されている。また、カバー基板12には、振動部14、回路部15およびチップコンデンサー16を収容する凹部123が形成されている。また、カバー基板12は、振動部14などを覆うように設けられている。また、音孔122と凹部123とは、互いに接続されている。また、音孔121は、カバー基板12を上下方向(Z方向)に貫通するように形成されている。また、音孔121および122は、平面視において、長手方向が約2.65mm、短手方向が約0.6mmのトラック形状に形成されている。また、音孔121および122は、音波の進行方向(Z方向)に直交する方向において約1.5×10−6m2の断面積(開口面積)を有している。また、第1実施形態においては、音孔121および122は、X方向に互いに間隔(たとえば5.0mm間隔)を隔てて配置されている。
【0029】
また、図2、図4および図5に示すように、カバー基板12には、音孔121を通る音波を遅延させる極小孔からなる音波遅延部121aが形成されている。極小孔からなる音波遅延部121aは、図5に示すように、カバー基板12に形成されている。また、音波遅延部121aは、音孔121の音波の進行方向(Z方向)に直交する小さい円形断面を有している。また、音波遅延部121aは、音孔121の上端部に配置されている。なお、音波遅延部121aの詳細については後述する。
【0030】
ベース基板13は、カバー基板12と同様に、FR−4などのガラスエポキシ樹脂により形成されている。これにより、カバー基板12とベース基板13との熱膨張率を合わせることができるので、MEMSマイク10をリフロー実装する場合に両者の熱膨張率の差に起因して互いが剥離してしまうのを防止することが可能である。また、ベース基板13は、図2〜図5に示すように、第1基板層131と、第2基板層132と、第3基板層133とにより3層構造に形成されている。具体的には、第1基板層131、第2基板層132および第3基板層133は、図示しない接着シートにより互いに貼り合わされている。
【0031】
第1基板層131には、図4〜図6に示すように、カバー基板12の音孔121に対応するトラック形状(長円形状)の音孔131aと、音孔131aとX方向に間隔を隔てて配置された円形状の音孔131bとが形成されている。また、図4に示すように、第1基板層131の上面(Z1方向側の表面)には、ボンディングパッド131cと、パッド131dとが設けられている。
【0032】
第1基板層131の音孔131aは、カバー基板12の音孔121と同様に、長手方向において約2.65mm、短手方向において約0.6mmの長さを有するとともに、音波の進行方向(Z方向)に直交する方向において約1.5×10−6m2の断面積(開口面積)を有している。また、第1基板層131の音孔131bは、約0.6mmの直径を有するとともに、音波の進行方向(Z方向)に直交する方向において約2.8×10−7m2の断面積(開口面積)を有している。また、音孔131bは、上側(Z1方向側)が振動部14により覆われるように構成されている。
【0033】
ボンディングパッド131cは、図4に示すように、ベース基板13と回路部15とを図示しないボンディングワイヤを介して接続するために設けられている。また、パッド131dは、ベース基板13とチップコンデンサー16とを半田により接続するために設けられている。また、ボンディングパッド131cおよびパッド131dは、図示しない回路パターンおよびスルーホールを介して、第3基板層133の下面(Z2方向側の表面)に配置された後述の電極パッド133a(図3参照)に接続されている。
【0034】
第2基板層132には、図4、図5および図7に示すように、第1基板層131の音孔131aおよび131bを互いに連通する中空部132aが形成されている。中空部132aは、図7に示すように、平面視でT字形状に形成されている。
【0035】
図3に示すように、第3基板層133の下面(Z2方向側の表面)には、4つの電極パッド133aが設けられている。MEMSマイク10は、電極パッド133aを介して、搭載基板3(図1参照)に半田付けされて搭載される。
【0036】
ここで、第1実施形態では、図5に示すように、カバー基板12の音孔121と、ベース基板13の音孔131a、中空部132aおよび音孔131bとにより、振動部14の後述するダイアフラム141の下面(Z2方向側の表面)に音波を導く第1音道171が形成されている。また、カバー基板12の音孔122および凹部123により、振動部14の後述するダイアフラム141の上面(Z1方向側の表面)に音波を導く第2音道172が形成されている。第1音道171は、カバー基板12の上側(Z1方向側)からダイアフラム141の露出された下面に向かって音波を導くように構成されている。また、第2音道172は、カバー基板12の上側(Z1方向側)から、振動部14の後述するバックプレート電極142を介してダイアフラム141の上面に向かって音波を導くように構成されている。
【0037】
第1音道171および第2音道172のうちの第1音道171にのみ、上記音波遅延部121aが形成されている。また、極小孔からなる音波遅延部121aは、第1音道171の音波の進行方向(図5および図8に破線矢印で示した方向)に直交する断面を局所的に小さくして、第1音道171の音波を第2音道172の音波に対して遅延させるように構成されている。具体的には、音波遅延部121aは、第1音道171の音波の進行方向(Z方向)に直交する小さい円形断面を有している。図8に示すように、音波遅延部121aにより小さくされた断面は、50μm以上150μm以下の直径Dを有している。すなわち、極小孔からなる音波遅延部121aでは、第1音道171の音波の進行方向に直交する断面を1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに局所的に小さくしている。また、音波遅延部121aは、第1音道171の音波の進行方向において、20μm以上100μm以下の長さ(厚み)Tを有している。また、第1音道171の音波遅延部121aが設けられた箇所以外の箇所において、音波の進行方向に直交する断面は、70×10−9m2以上の大きさを有している。また、第2音道172の音波の進行方向に直交する断面も、70×10−9m2以上の大きさを有している。このような構成により、音波遅延部121aは、第1音道171の音波を第2音道172に対して30μ秒以上50μ秒以下の範囲で遅延させることが可能である。
【0038】
また、MEMSマイク10は、音波遅延部121aにより第1音道171の音波が遅延されることによって、音を検知することができないNull範囲を有する両指向性(略8の字状の指向性パターン、図9および図10参照)と、全範囲にわたって均一に音を拾うことができる全指向性(円形状の指向性パターン)との間の指向性を有するように構成されている。また、MEMSマイク10は、音源が遠距離(たとえば、MEMSマイク10から1mの距離)に位置する場合には、両指向性と全指向性との間のうち、音源が近距離(たとえば、MEMSマイク10から50mm以下の距離)に位置する場合よりも両指向性に近い指向性を有するように構成されている。なお、本発明の第1実施形態のMEMSマイク10が上記特性を有することは、後述するシミュレーション結果から明らかである。
【0039】
振動部14は、図4および図5に示すように、第1基板層131の音孔131bを覆うように第1基板層131の上面に配置されている。また、振動部14は、図5に示すように、音波により振動するダイアフラム141と、ダイアフラム141の上面(Z1方向側の表面)に対向するように配置されたバックプレート電極142とを有している。なお、ダイアフラム141は、本発明の「振動板」の一例であり、バックプレート電極142は、本発明の「固定電極」の一例である。また、振動部14は、ダイアフラム141およびバックプレート電極142により形成されるコンデンサの容量の変化を検出して音波を電気信号に変換するように構成されている。すなわち、振動部14は、ダイアフラム141の振動に起因してダイアフラム141とバックプレート電極142との間の間隔が変動されることにより音波を電気信号に変換するように構成されている。言い換えれば、振動部14は、ダイアフラム141の振動に基づいて音波を電気信号に変換している。また、振動部14は、図示しない接着層により、ベース基板13の上面に接合されている。また、振動部14は、図5に示すように、ボンディングワイヤ15a(たとえば、金製)により回路部15に接続されている。また、バックプレート電極142には、複数の直径数μmの小径の貫通孔が形成されており、音波をダイアフラム141側に通過させることが可能である。また、この貫通孔を直径数μmの小径に形成することによって、それよりも大きい塵(たとえば数十μm程度の塵)がダイアフラム141側に到達するのを防止することが可能である。
【0040】
回路部15は、図4および図5に示すように、第1基板層131の上面に配置されている。また、回路部15は、振動部14から出力された電気信号を処理するように構成されている。また、回路部15は、図示しない接着層により、第1基板層131の上面に接合されている。また、回路部15は、ボンディングワイヤ(たとえば、金製)によりボンディングパッド131c(図4参照)に接続されている。
【0041】
チップコンデンサー16は、図4に示すように、第1基板層131の上面に配置されている。また、チップコンデンサー16は、パッド131dに半田付けされて第1基板層131に搭載されている。
【0042】
第1実施形態では、上記のように、第1音道171に、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして第2音道172に対して音波を遅延させる音波遅延部121aを形成することによって、音波遅延部121aにより第1音道171の音波を遅延させてダイアフラム141の下面に到達する音波と上面に到達する音波との音圧差を生じ易くすることができるので、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。また、第1音道171の断面を小さくする音波遅延部121aを形成するだけで第1音道171の音波を第2音道172に対して遅延させることができるので、第1音道171の音波を第2音道172に対して遅延させる発泡樹脂製の音響抵抗材などを、マイクロホン筐体17で挟み込みながら音道内に組み入れる場合に比べて、MEMSマイク10の組み立て時の手間を軽減することができる。したがって、このMEMSマイク10では、MEMSマイク10の組み立て時の手間を軽減しながら、第1音道171の音波を第2音道172に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。
【0043】
また、第1実施形態では、第1音道171の断面を局所的に小さくすることにより、第2音道172に対して音波を遅延させるように音波遅延部121aを構成する。これにより、音波遅延部121aにより、第1音道171の音波を第2音道172に対して容易に遅延させることができる。
【0044】
また、第1実施形態では、第1音道171の断面を局所的に小さくすることにより、第2音道172に対して音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させるように音波遅延部121aを構成する。これにより、MEMSマイク10の指向性を、両指向性と全指向性との間の指向性にすることができるので、全指向性に近づけながら、両指向性の効果も維持することができる。これにより、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げながら、ノイズ抑圧性能が低下するのを抑制することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、第1音道171の断面を局所的に1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに小さくすることにより、第2音道172に対して音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させるように音波遅延部121aを構成する。これにより、音波遅延部121aにより、容易に、第1音道171の音波を第2音道172に対して30μ秒以上50μ秒以下遅延させることができる。これにより、容易に、MEMSマイク10の指向性を両指向性と全指向性との間の指向性にすることができる。
【0046】
また、第1実施形態では、音波の進行方向における長さが20μm以上100μm以下になるように音波遅延部121aを形成する。これにより、音波遅延部121aにより、より容易に、第1音道171の音波を第2音道172に対して30μ秒以上50μ秒以下遅延させることができる。
【0047】
また、第1実施形態では、第1音道171のうち、音波遅延部121aが設けられた箇所以外の箇所と第2音道172との音波の進行方向に略直交する音道の断面を、70×10−9m2以上の大きさを有するように形成し、第1音道171の断面を局所的に1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに小さくするように音波遅延部121aを構成する。これにより、音波遅延部121aが形成された箇所以外の箇所で音波が遅延するのを抑制することができるので、音波遅延部121aにより、確実に第1音道171の音波を第2音道172に対して30μ秒以上50μ秒以下遅延させることができる。
【0048】
また、第1実施形態では、ダイアフラム141の上面に対向するように小径の貫通孔を有するバックプレート電極142を設けるとともに、振動板14の下面に音波を導く第1音道171に音波遅延部121aを設ける。これにより、バックプレート電極142の小径の貫通孔により、第2音道172を介して外部から侵入する大きめの塵(数十μm程度の塵)などがダイアフラム141の上面に到達するのを抑制することができるとともに、第1音道171の断面を小さくした音波遅延部121aにより、第1音道171を介して外部から侵入する塵などがダイアフラム141の下面に到達するのを抑制することができる。これにより、ダイアフラム141の上下の両面に塵が付着するのを抑制することができるので、塵の付着に起因して振動部14の感度が低下するのを抑制することができる。
【0049】
また、第1実施形態では、カバー基板12に音波遅延部121aを形成する。これにより、音波遅延部121aをカバー基板12とは別体で形成する場合とは異なり、部品点数の増加を抑制することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、音波遅延部121aにより音波を遅延させることによって両指向性と全指向性との間の指向性を有するように構成する。これにより、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げながら、ノイズ抑圧性能が低下するのを抑制することが可能なMEMSマイク10を得ることができる。なお、マイクロホン装置の指向性を両指向性と全指向性との間の指向性にすることにより、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げながら、ノイズ抑圧性能が低下するのを抑制することができることは、後述する本願発明者のシミュレーションにより確認済みである。
【0051】
また、第1実施形態では、音源が遠距離に位置する場合には、両指向性と全指向性との間の指向性のうち、音源が近距離に位置する場合よりも両指向性に近い指向性を有するように構成する。これにより、近距離の音源に対しては、全指向性に近くなることにより、より広い範囲の音を検知することができるとともに、遠距離の音源に対しては、近距離の場合よりも両指向性に近くなることにより、ノイズ抑圧性能を高くすることができる。
【0052】
次に、本発明の第1実施形態の効果を確認するために差動マイクロホンについて行ったシミュレーション結果および実測結果について説明する。
【0053】
まず、図9および図10に示すシミュレーション結果を参照して、音源が近距離(50mm)に位置する場合と、音源が遠距離(1m)に位置する場合との指向性について説明する。音源が近距離および遠距離のいずれの場合でも、2つの音道の一方の音波を他方に対して遅延させない場合(遅延量が0μ秒の場合)には、差動マイクロホンの指向性は両指向性(略8の字状の指向性パターン)であった。また、音源が近距離および遠距離のいずれの場合でも、遅延量を大きくするのに伴って差動マイクロホンの指向性が両指向性から徐々に全指向性(円形状の指向性パターン)に近づく結果となった。
【0054】
また、第1実施形態のMEMSマイク10が有する遅延量30μ秒以上50μ秒以下の範囲では、差動マイクロホンの指向性が両指向性と全指向性との間の指向性であった。この結果、音波遅延部により音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させることによって、Null範囲を減少させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができることを確認した。また、図9に示す結果から、音源が近距離の場合において、遅延量が30μ秒以上の場合には、方向によりばらつく感度の変動量を最大で10dB以下に抑えることができることを確認した。すなわち、遅延量を30μ秒以上にすれば、近距離の音源に対して、音源の方向によるばらつきを抑制していずれの方向から到達する音波でも良好に検知可能であることを確認することができた。
【0055】
また、遅延量が30μ秒以上50μ秒以下の範囲において、近距離の指向性パターンが遠距離に比べてより円形状に近い形状であった。言い換えると、遅延量が30μ秒以上50μ秒以下の範囲において、遠距離の場合には、両指向性と全指向性との間のうち、近距離よりも両指向性に近い指向性を示した。この結果、遅延量が50μ秒以下であれば、ノイズ抑圧性能を確保することができることを確認した。また、音波遅延部により音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させることによって、近距離の音源に対して、音源の方向によるばらつきを抑制していずれの方向から到達する音波でも良好に検知することができるとともに、遠距離の音源に対して、ノイズ抑圧性能を適切に確保することができることを確認した。
【0056】
次に、遅延量が30μ秒以上50μ秒以下の範囲のうちの40μ秒の場合におけるノイズ抑圧性能の評価を行った。図11に示す実測結果を参照して、遠距離(1m)の音源からホワイトノイズを出力した場合の周波数と感度との関係について説明する。遅延量が40μ秒に設定された差動マイクロホンでは、いずれの周波数においても、ノイズ抑圧性能を有さない通常マイクロホンに対して感度が約15dB低くなった。すなわち、遅延量が40μ秒の差動マイクロホンは、通常マイクロホンに対して約15dBのノイズ抑圧効果を有することを確認した。この結果、遅延量を30μ秒以上50μ秒以下にしてマイクロホンの指向性を両指向性と全指向性との間の指向性にすることによって、音を検知可能な範囲を広げながら、十分なノイズ抑圧性能を得ることができることを確認した。
【0057】
ここで、図12に示すシミュレーション結果を参照して、音道の音波遅延部により小さくされる断面の大きさ(面積)と遅延量(μ秒)との関係を説明する。図12では、音波遅延部により小さくされる断面が円形状である場合において、断面の大きさを開口径(第1実施形態における直径D)で示している。図12に示すように、いずれの厚みにおいても、直径D(面積)が大きくなるのに伴って遅延量が小さくなった。また、厚みTが20μm以上100μm以下の範囲において、直径D(面積)を50μm(1.9×10−9m2)以上100μm(18×10−9m2)以下にすることによって遅延量を30μ秒以上50μ秒以下にすることができることを確認した。
【0058】
次に、図13に示すシミュレーション結果を参照して、開口径(第1実施形態における直径D)とゲインとの関係について説明する。直径D(面積)が約75μm(4.4×10−9m2)以下の範囲では、直径D(面積)が小さくなるのに伴ってゲイン減衰量が大きく(ゲインが小さく)なる一方、直径D(面積)が約75μm(4.4×10−9m2)よりも大きい範囲では、ゲイン減衰がなかった(ゲイン減衰が0であった)。また、図13に示すシミュレーション結果から、ゲイン減衰を−3(dB)以上確保するために(ゲイン減衰量が−3(dB)よりも大きくならないようにするために)、直径D(面積)を50μm(1.9×10−9m2)以上にすればよいことを確認した。なお、ゲイン減衰は、一般的に−3(dB)以上であれば問題ない範囲である。これらの結果、音道の音波遅延部により小さくされる断面の大きさ(面積)を、1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下にすれば、ゲイン減衰を抑制して音を良好に検知することができるとともに、音を検知可能な範囲を広げながら、十分なノイズ抑圧性能を得ることができることを確認した。
【0059】
また、図14に示すように、差動マイクロホンの指向性パターンは、三次元的に同一形状になる。すなわち、差動マイクロホンの指向性パターンは、2つの音道の入り口を結ぶ直線を軸にマイクロホンを回動させた場合でも同一形状になる。ここで、マイクロホンが搭載された電子機器(たとえば、携帯電話)を、ユーザが耳に近づけて顔の横で持つ場合(図15および図16参照)とユーザが電子機器の表示部を見ながら顔の前方で持つ場合(図17参照)とでは、いずれも音源が近距離であるものの、ユーザの口元(音源)とマイクロホンとの位置関係は異なる。このため、電子機器に搭載されたマイクロホンが両指向性を有する場合には、一方の持ち方で音の検知が良好となるようにマイクロホンを配置すると他方の持ち方の場合には音源がNull範囲内となって音を良好に検知することができない場合がある。また、ユーザが耳に近づけて顔の横で持つ場合において、図15に示すように、マイクロホンをユーザの顔から離間する方向(横方向)に回動させた場合や、図16に示すように、マイクロホンを前後方向に回動させた場合には、両指向性を有するマイクロホンでは音源がNull範囲内となって音を良好に検知することができない場合がある。これに対して、上記第1実施形態のように、両指向性と全指向性との間の指向性を有するMEMSマイク10を携帯電話100(電子機器)に搭載した場合には、近距離の音源に対して音を検知可能な範囲が広がるので、携帯電話100を顔の横で持つ場合と顔の前方で持つ場合との両方において、音を良好に検知することができる。また、図15および図16に示すように、マイクロホンを横方向および前後方向に回動させた場合でも、近距離の音源に対して音を検知可能な範囲が広がるので、音を良好に検知することができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、図18を参照して、本発明の第2実施形態による携帯電話100のMEMSマイク20について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、ベース基板213に極小孔からなる音波遅延部231aを設ける構成について説明する。なお、MEMSマイク20は、本発明の「マイクロホン装置」の一例である。
【0061】
第2実施形態のMEMSマイク20のベース基板213は、図18に示すように、第1基板層231と、第2基板層132と、第3基板層133とにより3層構造に形成されている。第1基板層231には、第1音道171の音波を遅延させる極小孔からなる音波遅延部231aが形成されている。極小孔からなる音波遅延部231aは、カバー基板12の音孔121に対応する位置に形成されている。音波遅延部231aは、第1音道171の音波の進行方向(Z方向)に直交する小さい円形断面を有している。音波遅延部231aにより小さくされた断面は、50μm以上150μm以下の直径を有している。すなわち、極小孔からなる音波遅延部231aでは、第1音道171の音波の進行方向に直交する断面を1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに局所的に小さくしている。また、音波遅延部231aは、第1音道171の音波を第2音道172に対して30μ秒以上50μ秒以下の範囲で遅延させるように構成されている。
【0062】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0063】
第2実施形態では、上記のように、ベース基板213の第1基板層231に音波遅延部231aを形成することによって、音波遅延部231aをベース基板213とは別体で形成する場合とは異なり、部品点数の増加を抑制することができる。
【0064】
また、上記のように、第2実施形態の構成においても、上記第1実施形態と同様に、第1音道171に、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして第2音道172に対して音波を遅延させる音波遅延部231aを形成することによって、MEMSマイク20の組み立て時の手間を軽減しながら、第1音道171の音波を第2音道172に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。
【0065】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0066】
(第3実施形態)
次に、図19を参照して、本発明の第3実施形態による携帯電話100のMEMSマイク30について説明する。この第3実施形態では、上記第1実施形態と異なり、極小孔からなる音波遅延部301aを有する音波遅延部材301を設ける構成について説明する。なお、MEMSマイク30は、本発明の「マイクロホン装置」の一例である。
【0067】
第3実施形態のMEMSマイク30のカバー基板12には、図19に示すように、極小孔からなる音波遅延部301aを有する音波遅延部材301が取り付けられている。具体的には、音波遅延部材301は、カバー基板12の上面に図示しない接着層により貼付されている。音波遅延部材301は、リフロー実装時の高熱に対応可能なように、耐熱性が高い金属やポリイミドなどにより構成されている。好ましくは、音波遅延部材301を、FR−4などのガラスエポキシ樹脂により形成されたカバー基板12に剛性が近いポリイミドにより構成する。これにより、音波遅延部材301をカバー基板12に貼り付けた状態で、音波遅延部材301およびカバー基板12の複合層(複合体)を容易に一括で切断することが可能である。また、音波遅延部材301をポリイミドにより構成することによって、音波遅延部301aを容易に形成することが可能である。このように音波遅延部材301をポリイミドにより構成すれば、製造時の手間を軽減することができるので、生産性の向上を図ることができる。
【0068】
ここで、第3実施形態のMEMSマイク30の製造手順について説明する。まず、図20に示すように、ベース基板13に振動部14および回路部15を搭載する。そして、カバー基板12の上面に図示しない接着層により音波遅延部材301を貼付し、振動部14および回路部15を覆うようにカバー基板12をベース基板13上に配置する。その後、上下の両面にダイシングフィルム310を配置した状態で、ダイシングブレードにより、図20および図21に示す切断線に沿って切断して個々のMEMSマイク30に分割する。この際、音波遅延部材301をポリイミドにより構成していれば、音波遅延部材301およびカバー基板12の複合層(複合体)を容易に一括で切断することが可能である。
【0069】
また、音波遅延部材301の音波遅延部301aは、カバー基板12の音孔121に対応する位置に形成されている。音波遅延部301aは、第1音道171の音波の進行方向(Z方向)に直交する小さい円形断面を有している。音波遅延部301aにより小さくされた断面は、50μm以上150μm以下の直径を有している。すなわち、極小孔からなる音波遅延部301aでは、第1音道171の音波の進行方向に直交する断面を1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに局所的に小さくしている。また、音波遅延部301aは、第1音道171の音波を第2音道172に対して30μ秒以上50μ秒以下の範囲で遅延させるように構成されている。また、音波遅延部材301には、カバー基板12の音孔122に対応する位置に音孔122と同形状の音孔301bが形成されている。また、第3実施形態の音波遅延部材301は、20μm以上100μm以下の厚みを有している。
【0070】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0071】
第3実施形態では、上記のように、カバー基板12の上面に、音波遅延部301aを有する音波遅延部材301を貼付する。これにより、音波遅延部301aを有する専用の音波遅延部材301を設ける場合でも、カバー基板12の上面に貼付するだけで容易に第1音道171の音波を第2音道172に対して遅延させることができるので、MEMSマイク30の組み立て時に手間がかかるのを抑制することができる。
【0072】
また、上記のように、第3実施形態の構成においても、上記第1実施形態と同様に、第1音道171に、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして第2音道172に対して音波を遅延させる音波遅延部301aを形成することによって、MEMSマイク30の組み立て時の手間を軽減しながら、第1音道171の音波を第2音道172に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。
【0073】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0074】
(第4実施形態)
次に、図22を参照して、本発明の第4実施形態による携帯電話100のMEMSマイク40について説明する。この第4実施形態では、上記第1実施形態と異なり、ベース基板413の下側(Z2方向側)から振動部14に音波を導くように第1音道471および第2音道472を設ける構成について説明する。なお、MEMSマイク40は、本発明の「マイクロホン装置」の一例である。
【0075】
第4実施形態では、図22に示すように、カバー基板412と、ベース基板413とによりMEMSマイク40のマイクロホン筐体417が構成されている。カバー基板412には、振動部14や回路部15などを収容する凹部423が形成されている。なお、マイクロホン筐体417は、本発明の「筐体」および「マイクロホン筐体」の一例である。
【0076】
ベース基板413は、カバー基板412と同様に、FR−4などのガラスエポキシ樹脂により形成されている。また、ベース基板413は、第1基板層431と、第2基板層432と、第3基板層433とにより3層構造に形成されている。具体的には、第1基板層431、第2基板層432および第3基板層433は、図示しない接着シートにより互いに貼り合わされている。
【0077】
第1基板層431には、トラック形状の音孔431aと、音孔431aとX方向に間隔を隔てて配置された円形状の音孔431bとが形成されている。音孔431aおよび431bは、それぞれ、上記第1実施形態の音孔131aおよび131bと同形状に形成されている。円形状の音孔431bは、振動部14に対応する位置に設けられている。
【0078】
第2基板層432には、上記第1実施形態の第2基板層132と同様に、平面視でT字形状の中空部432aが形成されている。中空部432aは、第1基板層431の音孔431bと、第3基板層433の後述する極小孔からなる音波遅延部433aとを連通するように構成されている。また、第2基板層432には、第1基板層431の音孔431aに対応するように、音孔431aと同形状の音孔432bが形成されている。
【0079】
第3基板層433には、極小孔からなる音波遅延部433aが形成されている。第4実施形態では、第3基板層433の極小孔からなる音波遅延部433aと、第2基板層432の中空部432aと、第1基板層431の音孔431bとにより、振動部14のダイアフラム141の下面(Z2方向側の表面)に音波を導く第1音道471が形成されている。音波遅延部433aは、第1音道471の音波の進行方向に直交する断面を局所的に小さくして、第1音道471の音波を遅延させるように構成されている。具体的には、音波遅延部433aは、第1音道471の音波の進行方向(Z方向)に直交する小さい円形断面を有している。音波遅延部433aにより小さくされた断面は、50μm以上150μm以下の直径を有している。すなわち、極小孔からなる音波遅延部433aでは、第1音道471の音波の進行方向に直交する断面を1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに局所的に小さくしている。また、音波遅延部433aは、第1音道471の音波を第2音道472に対して30μ秒以上50μ秒以下の範囲で遅延させるように構成されている。
【0080】
また、第3基板層433には、第2基板層432の音孔432bに対応するように、音孔432bと同形状の音孔433bが形成されている。第4実施形態では、第3基板層433の音孔433bと、第2基板層432の音孔432bと、第1基板層431の音孔431aと、カバー基板412の凹部423とにより、バックプレート電極142を介して振動部14のダイアフラム141の上面(Z1方向側の表面)に音波を導く第2音道472が形成されている。
【0081】
なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0082】
上記のように、ベース基板413の下側(Z2方向側)から振動部14に音波を導くように第1音道471および第2音道472を設ける第4実施形態の構成においても、上記第1実施形態と同様に、第1音道471に、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして第2音道472に対して音波を遅延させる音波遅延部433aを形成することによって、MEMSマイク40の組み立て時の手間を軽減しながら、第1音道471の音波を第2音道472に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。
【0083】
なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0084】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0085】
たとえば、上記第1〜第4実施形態では、本発明の電子機器の一例としての携帯電話に本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。携帯電話以外の電子機器に本発明を適用してもよい。たとえば、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ボイスレコーダー、携帯情報端末、またはPC(パーソナルコンピュータ)等のマイクロホン装置を搭載する電子機器に本発明を適用してもよい。
【0086】
また、上記第1実施形態では、音波遅延部121aを、カバー基板12の音孔121の上端部に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、極小孔からなる音波遅延部を、カバー基板の音孔の下端部に形成してもよいし、音孔の中央部に形成してもよい。
【0087】
また、上記第2実施形態では、第1基板層231のうち、カバー基板12の音孔121に対応する位置に音波遅延部231aを設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図23に示すように、第1基板層231のうち、振動部14に対応する位置に極小孔からなる音波遅延部231bを設けてもよい。
【0088】
また、上記第2実施形態では、音波遅延部231aを第1基板層231に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図24に示すように、極小孔からなる音波遅延部232aを第2基板層232に形成してもよい。この場合、音波遅延部232aにより、T形状の中空部232bの一部の断面を局所的に小さくするように構成する。
【0089】
また、上記第3実施形態では、音波遅延部301aが形成された音波遅延部材301をカバー基板12の上面に貼付する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図25に示すように、極小孔からなる音波遅延部302aを有する音波遅延部材302をカバー基板12の下面に貼付してもよい。この場合、音波遅延部302aをカバー基板12の音孔121に対応する位置に設ける。
【0090】
また、上記第4実施形態では、第1音道471および第2音道472がベース基板413の下側(Z2方向側)から振動部14に音波を導くように形成された構成において、音波遅延部433aを第3基板層433に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図26に示すように、第1基板層431に極小孔からなる音波遅延部431cを形成してもよい。この場合、音波遅延部431cを振動部14に対応する位置に形成する。
【0091】
また、上記第4実施形態では、第1音道471および第2音道472がベース基板413の下側(Z2方向側)から振動部14に音波を導くように形成された構成において、音波遅延部433aを第3基板層433に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、極小孔からなる音波遅延部を第2基板層に形成してもよい。この場合、図24に示した第2実施形態の変形例と同様に、音波遅延部により、T形状の中空部の一部の断面を局所的に小さくするように構成する。
【0092】
また、上記第4実施形態では、第1音道471および第2音道472がベース基板413の下側(Z2方向側)から振動部14に音波を導くように形成された構成において、音波遅延部433aを第3基板層433に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図27に示すように、カバー基板412の下面に極小孔からなる音波遅延部401aを有する音波遅延部材401を貼付してもよい。この場合、音波遅延部401aを振動部14に対応する位置に形成する。また、図28に示すように、第3基板層433の下面に極小孔からなる音波遅延部402aを有する音波遅延部材402を貼付してもよい。
【0093】
また、上記第1〜第4実施形態では、本発明のマイクロホン装置としてのMEMSマイクに音波遅延部を形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、音道の断面を小さくする構成であれば、マイクロホン装置以外の箇所に音波遅延部を形成してもよい。たとえば、図29に示すように、電極パッド133aを介してMEMSマイク50(マイクロホン装置)が搭載される搭載基板51を、ガスケット52を間に挟んだ状態で電子機器の筐体53に取り付けた構成において、電子機器の外表面から振動部に通ずる第1音道571および第2音道572のうち、第1音道571の音波の進行方向に直交する断面を小さくする極小孔からなる音波遅延部51aを搭載基板51に形成してもよい。また、極小孔からなる音波遅延部を搭載基板51以外のガスケット52や筐体53に形成してもよい。この場合、マイクロホン装置自体に極小孔からなる音波遅延部を設けなくても、組み立て時の手間を軽減しながら、一方の音道の音波を他方に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることが可能な電子機器を得ることができる。
【0094】
また、上記第1〜第4実施形態では、本発明のマイクロホン装置としてのMEMSマイクに、差動マイクロホンとして機能させるための1つの振動部14を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図30に示すように、マイクロホン装置に、全指向性のマイクロホンとして機能させるための振動部614をさらに設けてもよい。この場合、2つの振動部14および614の両方を、第2音道172を構成するカバー基板12の凹部123内に設ける。これにより、音波遅延部が設けられない第2音道172を介して音波を全指向性用の振動部614に導くことができるので、全指向性用の振動部614に対して、第1音道171に形成された音波遅延部121aの影響が及ぶのを防止することができる。
【0095】
また、上記2つの振動部を設ける場合に、いずれか一方の振動部で音を検知するように切り替え可能に構成することによって、差動マイクロホン用の振動部を用いる場合には、音を検知可能な範囲を広げながらノイズ抑圧性能を確保することができるとともに、全指向性用の振動部を用いる場合には、近距離および遠距離の両方の音を広範囲で検知することができる。これにより、たとえば、ユーザが携帯電話を手に持って通話する際には、差動マイクロホン用の振動部を用いて、近距離の音を検知可能な範囲を広げながらノイズ抑圧性能を確保することができる。一方、ユーザがハンズフリー機能により通話する際や会議等を録音する際には、全指向性用の振動部を用いて近距離および遠距離の両方の音を広範囲で良好に検知することができる。
【0096】
また、本発明では、たとえば、図31に示すように、音波遅延部材301により、第2音道172の音波の進行方向に直交する断面が局所的に小さくされている構成であっても、音波遅延部材301により音波が遅延される第2音道172よりもさらに音波を遅延させる音波遅延部121bを第1音道171に設ければよい。この際、第2音道172の音波遅延部材301により小さくされた断面が直径aの円形断面であり、第1音道171の音波遅延部121bにより小さくされた断面も直径aの円形断面である場合には、音波遅延部121bの音波の進行方向における長さb(厚み)を音波遅延部材301の厚みよりも大きくして、第1音道171の音波を第2音道172に対して遅延させるように構成する。すなわち、本発明では、音波遅延部の音波の進行方向における長さ(厚み)を調整することにより音波の遅延量を調整してもよい。この際、音波遅延部の長さ(厚み)を大きくすればより遅延量が大きくなる方向に調整される。
【符号の説明】
【0097】
10、20、30、40、50 MEMSマイク(マイクロホン装置)
12、412 カバー基板
13、213、413 ベース基板
14 振動部
17、417 マイクロホン筐体(筐体)
51a、121a、121b、231a、231b、232a、301a、302a、401a、402a、431c、433b 音波遅延部
100 携帯電話(電子機器)
141 ダイアフラム(振動板)
142 バックプレート電極(固定電極)
171、471、571 第1音道
172、472、572 第2音道
301、302、401、402 音波遅延部材
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロホン装置および電子機器に関し、特に、音波を導く音道が形成されたマイクロホン装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音波を導く音道が形成されたマイクロホン装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、マイクロホン(振動部)と、マイクロホンを収容するハウジング(筐体)とを備え、マイクロホンの前面に音波を導く第1導音空間(第1音道)と、マイクロホンの後面に音波を導く第2導音空間(第2音道)とが形成されたマイクロホン装置が開示されている。このマイクロホン装置では、第2導音空間に、第1導音空間に対して音波を遅延させる発泡樹脂製の音響抵抗材を設けることによって、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げている。また、上記特許文献1のマイクロホン装置では、ハウジングを構成する前ハウジングおよび後ハウジングの間に音響抵抗材を挟み込みながら第2導音空間内に音響抵抗材を組み入れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−295278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のマイクロホン装置では、音響抵抗材により第2導音空間(第2音道)の音波を遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることが可能である一方、発泡樹脂製の音響抵抗材を、前ハウジングおよび後ハウジングの間に挟み込みながら第2導音空間内に組み入れる必要があるので、マイクロホン装置の組み立て時に手間がかかるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、組み立て時の手間を軽減しながら、一方の音道の音波を他方に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることが可能なマイクロホン装置および電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の局面によるマイクロホン装置は、音波により振動する振動板を含み、振動板の振動に基づいて音波を電気信号に変換する振動部と、内部に振動部を収容するとともに、振動板の一方の面に音波を導く第1音道と、振動板の他方の面に音波を導く第2音道とを含む筐体とを備え、第1音道および第2音道の一方には、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして他方に対して音波を遅延させる音波遅延部が形成されている。
【0008】
この発明の第1の局面によるマイクロホン装置では、上記のように、第1音道および第2音道の一方に、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして他方に対して音波を遅延させる音波遅延部を形成することによって、音波遅延部により第1音道および第2音道の一方の音波を遅延させて振動板の一方の面に到達する音波と他方の面に到達する音波との音圧差を生じ易くすることができるので、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。なお、第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して遅延させることにより、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができることは、後述する本願発明者のシミュレーションにより確認済みである。また、第1音道および第2音道の一方の断面を小さくする音波遅延部を形成するだけで第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して遅延させることができるので、第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して遅延させる発泡樹脂製の音響抵抗材などを、筐体で挟み込みながら音道内に組み入れる場合に比べて、マイクロホン装置の組み立て時の手間を軽減することができる。したがって、このマイクロホン装置では、マイクロホン装置の組み立て時の手間を軽減しながら、第1音道および第2音道の一方の音道の音波を他方に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。
【0009】
上記第1の局面によるマイクロホン装置において、好ましくは、音波遅延部は、第1音道および第2音道の一方の音道の断面を局所的に小さくすることにより、他方に対して音波を遅延させるように構成されている。このように構成すれば、音波遅延部により、第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して容易に遅延させることができる。
【0010】
この場合、好ましくは、音波遅延部は、第1音道および第2音道の一方の音道の断面を局所的に小さくすることにより、他方に対して音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させるように構成されている。このように構成すれば、マイクロホン装置の指向性を、両指向性と全指向性との間の指向性にすることができるので、全指向性に近づけながら、両指向性の効果も維持することができる。これにより、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げながら、ノイズ抑圧性能が低下するのを抑制することができる。なお、遅延量を30μ秒以上50μ秒以下にすることにより、マイクロホン装置の指向性を両指向性と全指向性との間の指向性にすることができることと、マイクロホン装置の指向性を両指向性と全指向性との間の指向性にすることにより、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げながら、ノイズ抑圧性能が低下するのを抑制することができることとは、後述する本願発明者のシミュレーションにより確認済みである。
【0011】
上記音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させる構成において、好ましくは、音波遅延部は、第1音道および第2音道の一方の音道の断面を局所的に1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさにすることにより、他方に対して音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させるように構成されている。このように構成すれば、音波遅延部により、容易に、第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して30μ秒以上50μ秒以下遅延させることができる。これにより、容易に、マイクロホン装置の指向性を両指向性と全指向性との間の指向性にすることができる。
【0012】
上記音道の断面を1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさにする構成において、好ましくは、音波遅延部は、音波の進行方向における長さが20μm以上100μm以下になるように形成されている。このように構成すれば、音波遅延部により、より容易に、第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して30μ秒以上50μ秒以下遅延させることができる。
【0013】
上記音道の断面を1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさにする構成において、好ましくは、第1音道および第2音道の一方のうち、音波遅延部が設けられた箇所以外の箇所と、第1音道および第2音道の他方との音波の進行方向に略直交する音道の断面は、70×10−9m2以上の大きさを有し、音波遅延部は、第1音道および第2音道の一方の音道の断面を局所的に1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに小さくするように構成されている。このように構成すれば、音波遅延部が形成された箇所以外の箇所で音波が遅延するのを抑制することができるので、音波遅延部により、確実に一方の音道の音波を他方に対して30μ秒以上50μ秒以下遅延させることができる。
【0014】
上記第1の局面によるマイクロホン装置において、好ましくは、振動部は、振動板の他方の面に対向するように配置された固定電極をさらに含み、振動板の振動に起因して振動板と固定電極との間の間隔が変動されることにより音波を電気信号に変換するように構成されており、音波遅延部は、振動板の一方の面に音波を導く第1音道に設けられている。このように構成すれば、固定電極により、第2音道を介して外部から侵入する塵などが振動板の他方の面に到達するのを抑制することができるとともに、音道の断面を小さくした音波遅延部により、第1音道を介して外部から侵入する塵などが振動板の一方の面に到達するのを抑制することができる。これにより、振動板の一方および他方の両面に塵が付着するのを抑制することができるので、塵の付着に起因して振動部の感度が低下するのを抑制することができる。
【0015】
上記第1の局面によるマイクロホン装置において、好ましくは、筐体は、振動部が搭載されるベース基板と、振動部を覆うように設けられるカバー基板とを含み、音波遅延部は、ベース基板またはカバー基板に形成されている。このように構成すれば、音波遅延部をベース基板およびカバー基板とは別体で形成する場合とは異なり、部品点数の増加を抑制することができる。
【0016】
上記第1の局面によるマイクロホン装置において、好ましくは、筐体は、振動部が搭載されるベース基板と、振動部を覆うように設けられるカバー基板とを含み、ベース基板またはカバー基板の表面には、音波遅延部を有する板状の音波遅延部材が貼付されている。このように構成すれば、音波遅延部を有する専用の音波遅延部材を設ける場合でも、ベース基板またはカバー基板の表面に貼付するだけで容易に第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して遅延させることができるので、マイクロホン装置の組み立て時に手間がかかるのを抑制することができる。
【0017】
上記第1の局面によるマイクロホン装置において、好ましくは、音波遅延部により音波を遅延させることによって両指向性と全指向性との間の指向性を有するように構成されている。このように構成すれば、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げながら、ノイズ抑圧性能が低下するのを抑制することが可能なマイクロホン装置を得ることができる。
【0018】
上記第1の局面によるマイクロホン装置において、好ましくは、音源が遠距離に位置する場合には、両指向性と全指向性との間の指向性のうち、音源が近距離に位置する場合よりも両指向性に近い指向性を有するように構成されている。このように構成すれば、近距離の音源に対しては、全指向性に近くなることにより、より広い範囲の音を検知することができるとともに、遠距離の音源に対しては、近距離の場合よりも両指向性に近くなることにより、ノイズ抑圧性能を高くすることができる。
【0019】
この発明の第2の局面による電子機器は、マイクロホン装置を備える電子機器であって、マイクロホン装置は、音波により振動する振動板を含み、振動板の振動に基づいて音波を電気信号に変換する振動部と、内部に振動部を収容するマイクロホン筐体とを備え、電子機器の外表面から通ずるとともに振動板の一方の面に音波を導く第1音道と、電子機器の外表面から通ずるとともに振動板の他方の面に音波を導く第2音道とが形成されており、第1音道および第2音道の一方には、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして他方に対して音波を遅延させる音波遅延部が形成されている。
【0020】
この発明の第2の局面による電子機器では、上記のように、第1音道および第2音道の一方に、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして他方に対して音波を遅延させる音波遅延部を形成することによって、音波遅延部により第1音道および第2音道の一方の音波を遅延させて振動板の一方の面に到達する音波と他方の面に到達する音波との音圧差を生じ易くすることができるので、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。なお、第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して遅延させることにより、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができることは、後述する本願発明者のシミュレーションにより確認済みである。また、第1音道および第2音道の一方の断面を小さくする音波遅延部を形成するだけで第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して遅延させることができるので、第1音道および第2音道の一方の音波を他方に対して遅延させる発泡樹脂製の音響抵抗材などを、マイクロホン筐体で挟み込みながら音道内に組み入れる場合に比べて、組み立て時の手間を軽減することができる。したがって、この電子機器では、組み立て時の手間を軽減しながら、第1音道および第2音道の一方の音道の音波を他方に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、組み立て時の手間を軽減しながら、第1音道および第2音道の一方の音道の音波を他方に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態による携帯電話の全体構成を示した平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるMEMSマイクの上方から見た全体斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるMEMSマイクの下方から見た全体斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるMEMSマイクの全体構成を示した分解斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態によるMEMSマイクの第1基板層を示した平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態によるMEMSマイクの第2基板層を示した平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるMEMSマイクの音波遅延部を示した拡大断面図である。
【図9】音源が近距離に位置する場合の遅延量と指向性パターンとの関係を示したシミュレーション結果である。
【図10】音源が遠距離に位置する場合の遅延量と指向性パターンとの関係のシミュレーション結果を示した図である。
【図11】遠距離の音源からホワイトノイズを出力した場合の周波数と感度との関係の実測結果を示した図である。
【図12】音波遅延部の開口径と遅延量との関係のシミュレーション結果を示した図である。
【図13】音波遅延部の開口径とゲインとの関係のシミュレーション結果を示した図である。
【図14】差動マイクロホンの指向性パターンについて説明するための図である。
【図15】ユーザが電子機器を耳に近づけて顔の横で持った状態を正面から見た図である。
【図16】ユーザが電子機器を耳に近づけて顔の横で持った状態を側方から見た図である。
【図17】ユーザが電子機器を顔の前方で持った状態を示した図である。
【図18】本発明の第2実施形態によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図19】本発明の第3実施形態によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図20】本発明の第3実施形態によるMEMSマイクの製造手順を説明するための断面図である。
【図21】本発明の第3実施形態によるMEMSマイクの製造手順を説明するための平面図である。
【図22】本発明の第4実施形態によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図23】本発明の第2実施形態の第1変形例によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図24】本発明の第2実施形態の第2変形例によるMEMSマイクの第2基板層を示した平面図である。
【図25】本発明の第3実施形態の変形例によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図26】本発明の第4実施形態の第1変形例によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図27】本発明の第4実施形態の第2変形例によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図28】本発明の第4実施形態の第3変形例によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図29】本発明の第1〜第4実施形態の第1変形例による電子機器を示した断面図である。
【図30】本発明の第1〜第4実施形態の第2変形例によるMEMSマイクを示した断面図である。
【図31】本発明の第1〜第4実施形態の第3変形例によるMEMSマイクを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1〜図8を参照して、本発明の第1実施形態による携帯電話100の構成について説明する。なお、携帯電話100は、本発明の「電子機器」の一例である。
【0025】
本発明の第1実施形態による携帯電話100は、図1に示すように、表示部1と、表示部1を露出する開口部2aを有する筐体2とを備えている。また、筐体2の内部には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイク10を搭載した搭載基板3が設けられている。なお、MEMSマイク10は、本発明の「マイクロホン装置」の一例である。
【0026】
MEMSマイク10は、図2〜図4に示すように、シールド11と、カバー基板12と、ベース基板13とを備えている。また、MEMSマイク10のベース基板13には、図4に示すように、振動部14と、回路部15と、チップコンデンサー16とが搭載されている。また、カバー基板12とベース基板13とにより、振動部14、回路部15およびチップコンデンサー16を収容するMEMSマイク10のマイクロホン筐体17が構成されている。なお、マイクロホン筐体17は、本発明の「筐体」および「マイクロホン筐体」の一例である。また、MEMSマイク10は、2つの音道(第1音道171および第2音道172)を介して振動部14に音波を伝達することにより差動マイクロホンとして機能するように構成されている。また、第1実施形態のMEMSマイク10は、たとえば、約7mmの長さ(X方向の長さ)と、約4mmの幅(Y方向の長さ)と、約1.2mmの厚み(Z方向の長さ)とを有している。
【0027】
シールド11は、カバー基板12側からマイクロホン筐体17を覆うように構成されている。また、シールド11は、金属(たとえば、ニッケルシルバー(洋白))により形成されており、電気的なノイズを防ぐために設けられている。また、シールド11の上面部11aには、図2および図4に示すように、2つの音孔111および112が形成されている。2つの音孔111および112は、シールド11の上面部11aを上下方向(Z方向)に貫通するように形成されている。また、音孔111および112は、平面視において、長手方向が約2.65mm、短手方向が約0.6mmのトラック形状(長円形状)に形成されている。また、音孔111および112は、音波の進行方向(Z方向)に直交する方向において約1.5×10−6m2の断面積(開口面積)を有している。また、音孔111および112は、X方向に互いに間隔を隔てて配置されている。また、シールド11は、図3に示すように、マイクロホン筐体17を下方側(Z2方向側)から保持する保持部113を有している。保持部113は、かしめられることによりベース基板13を下方側から保持するように構成されている。
【0028】
カバー基板12は、FR−4(Flame Retardant Type 4)などのガラスエポキシ樹脂により形成されている。また、カバー基板12は、図4に示すように、シールド11とベース基板13とにより挟み込まれる位置に配置されている。また、カバー基板12には、図4および図5に示すように、シールド11の2つの音孔111および112のそれぞれに対応する2つの音孔121および122が形成されている。また、カバー基板12には、振動部14、回路部15およびチップコンデンサー16を収容する凹部123が形成されている。また、カバー基板12は、振動部14などを覆うように設けられている。また、音孔122と凹部123とは、互いに接続されている。また、音孔121は、カバー基板12を上下方向(Z方向)に貫通するように形成されている。また、音孔121および122は、平面視において、長手方向が約2.65mm、短手方向が約0.6mmのトラック形状に形成されている。また、音孔121および122は、音波の進行方向(Z方向)に直交する方向において約1.5×10−6m2の断面積(開口面積)を有している。また、第1実施形態においては、音孔121および122は、X方向に互いに間隔(たとえば5.0mm間隔)を隔てて配置されている。
【0029】
また、図2、図4および図5に示すように、カバー基板12には、音孔121を通る音波を遅延させる極小孔からなる音波遅延部121aが形成されている。極小孔からなる音波遅延部121aは、図5に示すように、カバー基板12に形成されている。また、音波遅延部121aは、音孔121の音波の進行方向(Z方向)に直交する小さい円形断面を有している。また、音波遅延部121aは、音孔121の上端部に配置されている。なお、音波遅延部121aの詳細については後述する。
【0030】
ベース基板13は、カバー基板12と同様に、FR−4などのガラスエポキシ樹脂により形成されている。これにより、カバー基板12とベース基板13との熱膨張率を合わせることができるので、MEMSマイク10をリフロー実装する場合に両者の熱膨張率の差に起因して互いが剥離してしまうのを防止することが可能である。また、ベース基板13は、図2〜図5に示すように、第1基板層131と、第2基板層132と、第3基板層133とにより3層構造に形成されている。具体的には、第1基板層131、第2基板層132および第3基板層133は、図示しない接着シートにより互いに貼り合わされている。
【0031】
第1基板層131には、図4〜図6に示すように、カバー基板12の音孔121に対応するトラック形状(長円形状)の音孔131aと、音孔131aとX方向に間隔を隔てて配置された円形状の音孔131bとが形成されている。また、図4に示すように、第1基板層131の上面(Z1方向側の表面)には、ボンディングパッド131cと、パッド131dとが設けられている。
【0032】
第1基板層131の音孔131aは、カバー基板12の音孔121と同様に、長手方向において約2.65mm、短手方向において約0.6mmの長さを有するとともに、音波の進行方向(Z方向)に直交する方向において約1.5×10−6m2の断面積(開口面積)を有している。また、第1基板層131の音孔131bは、約0.6mmの直径を有するとともに、音波の進行方向(Z方向)に直交する方向において約2.8×10−7m2の断面積(開口面積)を有している。また、音孔131bは、上側(Z1方向側)が振動部14により覆われるように構成されている。
【0033】
ボンディングパッド131cは、図4に示すように、ベース基板13と回路部15とを図示しないボンディングワイヤを介して接続するために設けられている。また、パッド131dは、ベース基板13とチップコンデンサー16とを半田により接続するために設けられている。また、ボンディングパッド131cおよびパッド131dは、図示しない回路パターンおよびスルーホールを介して、第3基板層133の下面(Z2方向側の表面)に配置された後述の電極パッド133a(図3参照)に接続されている。
【0034】
第2基板層132には、図4、図5および図7に示すように、第1基板層131の音孔131aおよび131bを互いに連通する中空部132aが形成されている。中空部132aは、図7に示すように、平面視でT字形状に形成されている。
【0035】
図3に示すように、第3基板層133の下面(Z2方向側の表面)には、4つの電極パッド133aが設けられている。MEMSマイク10は、電極パッド133aを介して、搭載基板3(図1参照)に半田付けされて搭載される。
【0036】
ここで、第1実施形態では、図5に示すように、カバー基板12の音孔121と、ベース基板13の音孔131a、中空部132aおよび音孔131bとにより、振動部14の後述するダイアフラム141の下面(Z2方向側の表面)に音波を導く第1音道171が形成されている。また、カバー基板12の音孔122および凹部123により、振動部14の後述するダイアフラム141の上面(Z1方向側の表面)に音波を導く第2音道172が形成されている。第1音道171は、カバー基板12の上側(Z1方向側)からダイアフラム141の露出された下面に向かって音波を導くように構成されている。また、第2音道172は、カバー基板12の上側(Z1方向側)から、振動部14の後述するバックプレート電極142を介してダイアフラム141の上面に向かって音波を導くように構成されている。
【0037】
第1音道171および第2音道172のうちの第1音道171にのみ、上記音波遅延部121aが形成されている。また、極小孔からなる音波遅延部121aは、第1音道171の音波の進行方向(図5および図8に破線矢印で示した方向)に直交する断面を局所的に小さくして、第1音道171の音波を第2音道172の音波に対して遅延させるように構成されている。具体的には、音波遅延部121aは、第1音道171の音波の進行方向(Z方向)に直交する小さい円形断面を有している。図8に示すように、音波遅延部121aにより小さくされた断面は、50μm以上150μm以下の直径Dを有している。すなわち、極小孔からなる音波遅延部121aでは、第1音道171の音波の進行方向に直交する断面を1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに局所的に小さくしている。また、音波遅延部121aは、第1音道171の音波の進行方向において、20μm以上100μm以下の長さ(厚み)Tを有している。また、第1音道171の音波遅延部121aが設けられた箇所以外の箇所において、音波の進行方向に直交する断面は、70×10−9m2以上の大きさを有している。また、第2音道172の音波の進行方向に直交する断面も、70×10−9m2以上の大きさを有している。このような構成により、音波遅延部121aは、第1音道171の音波を第2音道172に対して30μ秒以上50μ秒以下の範囲で遅延させることが可能である。
【0038】
また、MEMSマイク10は、音波遅延部121aにより第1音道171の音波が遅延されることによって、音を検知することができないNull範囲を有する両指向性(略8の字状の指向性パターン、図9および図10参照)と、全範囲にわたって均一に音を拾うことができる全指向性(円形状の指向性パターン)との間の指向性を有するように構成されている。また、MEMSマイク10は、音源が遠距離(たとえば、MEMSマイク10から1mの距離)に位置する場合には、両指向性と全指向性との間のうち、音源が近距離(たとえば、MEMSマイク10から50mm以下の距離)に位置する場合よりも両指向性に近い指向性を有するように構成されている。なお、本発明の第1実施形態のMEMSマイク10が上記特性を有することは、後述するシミュレーション結果から明らかである。
【0039】
振動部14は、図4および図5に示すように、第1基板層131の音孔131bを覆うように第1基板層131の上面に配置されている。また、振動部14は、図5に示すように、音波により振動するダイアフラム141と、ダイアフラム141の上面(Z1方向側の表面)に対向するように配置されたバックプレート電極142とを有している。なお、ダイアフラム141は、本発明の「振動板」の一例であり、バックプレート電極142は、本発明の「固定電極」の一例である。また、振動部14は、ダイアフラム141およびバックプレート電極142により形成されるコンデンサの容量の変化を検出して音波を電気信号に変換するように構成されている。すなわち、振動部14は、ダイアフラム141の振動に起因してダイアフラム141とバックプレート電極142との間の間隔が変動されることにより音波を電気信号に変換するように構成されている。言い換えれば、振動部14は、ダイアフラム141の振動に基づいて音波を電気信号に変換している。また、振動部14は、図示しない接着層により、ベース基板13の上面に接合されている。また、振動部14は、図5に示すように、ボンディングワイヤ15a(たとえば、金製)により回路部15に接続されている。また、バックプレート電極142には、複数の直径数μmの小径の貫通孔が形成されており、音波をダイアフラム141側に通過させることが可能である。また、この貫通孔を直径数μmの小径に形成することによって、それよりも大きい塵(たとえば数十μm程度の塵)がダイアフラム141側に到達するのを防止することが可能である。
【0040】
回路部15は、図4および図5に示すように、第1基板層131の上面に配置されている。また、回路部15は、振動部14から出力された電気信号を処理するように構成されている。また、回路部15は、図示しない接着層により、第1基板層131の上面に接合されている。また、回路部15は、ボンディングワイヤ(たとえば、金製)によりボンディングパッド131c(図4参照)に接続されている。
【0041】
チップコンデンサー16は、図4に示すように、第1基板層131の上面に配置されている。また、チップコンデンサー16は、パッド131dに半田付けされて第1基板層131に搭載されている。
【0042】
第1実施形態では、上記のように、第1音道171に、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして第2音道172に対して音波を遅延させる音波遅延部121aを形成することによって、音波遅延部121aにより第1音道171の音波を遅延させてダイアフラム141の下面に到達する音波と上面に到達する音波との音圧差を生じ易くすることができるので、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。また、第1音道171の断面を小さくする音波遅延部121aを形成するだけで第1音道171の音波を第2音道172に対して遅延させることができるので、第1音道171の音波を第2音道172に対して遅延させる発泡樹脂製の音響抵抗材などを、マイクロホン筐体17で挟み込みながら音道内に組み入れる場合に比べて、MEMSマイク10の組み立て時の手間を軽減することができる。したがって、このMEMSマイク10では、MEMSマイク10の組み立て時の手間を軽減しながら、第1音道171の音波を第2音道172に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。
【0043】
また、第1実施形態では、第1音道171の断面を局所的に小さくすることにより、第2音道172に対して音波を遅延させるように音波遅延部121aを構成する。これにより、音波遅延部121aにより、第1音道171の音波を第2音道172に対して容易に遅延させることができる。
【0044】
また、第1実施形態では、第1音道171の断面を局所的に小さくすることにより、第2音道172に対して音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させるように音波遅延部121aを構成する。これにより、MEMSマイク10の指向性を、両指向性と全指向性との間の指向性にすることができるので、全指向性に近づけながら、両指向性の効果も維持することができる。これにより、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げながら、ノイズ抑圧性能が低下するのを抑制することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、第1音道171の断面を局所的に1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに小さくすることにより、第2音道172に対して音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させるように音波遅延部121aを構成する。これにより、音波遅延部121aにより、容易に、第1音道171の音波を第2音道172に対して30μ秒以上50μ秒以下遅延させることができる。これにより、容易に、MEMSマイク10の指向性を両指向性と全指向性との間の指向性にすることができる。
【0046】
また、第1実施形態では、音波の進行方向における長さが20μm以上100μm以下になるように音波遅延部121aを形成する。これにより、音波遅延部121aにより、より容易に、第1音道171の音波を第2音道172に対して30μ秒以上50μ秒以下遅延させることができる。
【0047】
また、第1実施形態では、第1音道171のうち、音波遅延部121aが設けられた箇所以外の箇所と第2音道172との音波の進行方向に略直交する音道の断面を、70×10−9m2以上の大きさを有するように形成し、第1音道171の断面を局所的に1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに小さくするように音波遅延部121aを構成する。これにより、音波遅延部121aが形成された箇所以外の箇所で音波が遅延するのを抑制することができるので、音波遅延部121aにより、確実に第1音道171の音波を第2音道172に対して30μ秒以上50μ秒以下遅延させることができる。
【0048】
また、第1実施形態では、ダイアフラム141の上面に対向するように小径の貫通孔を有するバックプレート電極142を設けるとともに、振動板14の下面に音波を導く第1音道171に音波遅延部121aを設ける。これにより、バックプレート電極142の小径の貫通孔により、第2音道172を介して外部から侵入する大きめの塵(数十μm程度の塵)などがダイアフラム141の上面に到達するのを抑制することができるとともに、第1音道171の断面を小さくした音波遅延部121aにより、第1音道171を介して外部から侵入する塵などがダイアフラム141の下面に到達するのを抑制することができる。これにより、ダイアフラム141の上下の両面に塵が付着するのを抑制することができるので、塵の付着に起因して振動部14の感度が低下するのを抑制することができる。
【0049】
また、第1実施形態では、カバー基板12に音波遅延部121aを形成する。これにより、音波遅延部121aをカバー基板12とは別体で形成する場合とは異なり、部品点数の増加を抑制することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、音波遅延部121aにより音波を遅延させることによって両指向性と全指向性との間の指向性を有するように構成する。これにより、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げながら、ノイズ抑圧性能が低下するのを抑制することが可能なMEMSマイク10を得ることができる。なお、マイクロホン装置の指向性を両指向性と全指向性との間の指向性にすることにより、音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げながら、ノイズ抑圧性能が低下するのを抑制することができることは、後述する本願発明者のシミュレーションにより確認済みである。
【0051】
また、第1実施形態では、音源が遠距離に位置する場合には、両指向性と全指向性との間の指向性のうち、音源が近距離に位置する場合よりも両指向性に近い指向性を有するように構成する。これにより、近距離の音源に対しては、全指向性に近くなることにより、より広い範囲の音を検知することができるとともに、遠距離の音源に対しては、近距離の場合よりも両指向性に近くなることにより、ノイズ抑圧性能を高くすることができる。
【0052】
次に、本発明の第1実施形態の効果を確認するために差動マイクロホンについて行ったシミュレーション結果および実測結果について説明する。
【0053】
まず、図9および図10に示すシミュレーション結果を参照して、音源が近距離(50mm)に位置する場合と、音源が遠距離(1m)に位置する場合との指向性について説明する。音源が近距離および遠距離のいずれの場合でも、2つの音道の一方の音波を他方に対して遅延させない場合(遅延量が0μ秒の場合)には、差動マイクロホンの指向性は両指向性(略8の字状の指向性パターン)であった。また、音源が近距離および遠距離のいずれの場合でも、遅延量を大きくするのに伴って差動マイクロホンの指向性が両指向性から徐々に全指向性(円形状の指向性パターン)に近づく結果となった。
【0054】
また、第1実施形態のMEMSマイク10が有する遅延量30μ秒以上50μ秒以下の範囲では、差動マイクロホンの指向性が両指向性と全指向性との間の指向性であった。この結果、音波遅延部により音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させることによって、Null範囲を減少させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができることを確認した。また、図9に示す結果から、音源が近距離の場合において、遅延量が30μ秒以上の場合には、方向によりばらつく感度の変動量を最大で10dB以下に抑えることができることを確認した。すなわち、遅延量を30μ秒以上にすれば、近距離の音源に対して、音源の方向によるばらつきを抑制していずれの方向から到達する音波でも良好に検知可能であることを確認することができた。
【0055】
また、遅延量が30μ秒以上50μ秒以下の範囲において、近距離の指向性パターンが遠距離に比べてより円形状に近い形状であった。言い換えると、遅延量が30μ秒以上50μ秒以下の範囲において、遠距離の場合には、両指向性と全指向性との間のうち、近距離よりも両指向性に近い指向性を示した。この結果、遅延量が50μ秒以下であれば、ノイズ抑圧性能を確保することができることを確認した。また、音波遅延部により音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させることによって、近距離の音源に対して、音源の方向によるばらつきを抑制していずれの方向から到達する音波でも良好に検知することができるとともに、遠距離の音源に対して、ノイズ抑圧性能を適切に確保することができることを確認した。
【0056】
次に、遅延量が30μ秒以上50μ秒以下の範囲のうちの40μ秒の場合におけるノイズ抑圧性能の評価を行った。図11に示す実測結果を参照して、遠距離(1m)の音源からホワイトノイズを出力した場合の周波数と感度との関係について説明する。遅延量が40μ秒に設定された差動マイクロホンでは、いずれの周波数においても、ノイズ抑圧性能を有さない通常マイクロホンに対して感度が約15dB低くなった。すなわち、遅延量が40μ秒の差動マイクロホンは、通常マイクロホンに対して約15dBのノイズ抑圧効果を有することを確認した。この結果、遅延量を30μ秒以上50μ秒以下にしてマイクロホンの指向性を両指向性と全指向性との間の指向性にすることによって、音を検知可能な範囲を広げながら、十分なノイズ抑圧性能を得ることができることを確認した。
【0057】
ここで、図12に示すシミュレーション結果を参照して、音道の音波遅延部により小さくされる断面の大きさ(面積)と遅延量(μ秒)との関係を説明する。図12では、音波遅延部により小さくされる断面が円形状である場合において、断面の大きさを開口径(第1実施形態における直径D)で示している。図12に示すように、いずれの厚みにおいても、直径D(面積)が大きくなるのに伴って遅延量が小さくなった。また、厚みTが20μm以上100μm以下の範囲において、直径D(面積)を50μm(1.9×10−9m2)以上100μm(18×10−9m2)以下にすることによって遅延量を30μ秒以上50μ秒以下にすることができることを確認した。
【0058】
次に、図13に示すシミュレーション結果を参照して、開口径(第1実施形態における直径D)とゲインとの関係について説明する。直径D(面積)が約75μm(4.4×10−9m2)以下の範囲では、直径D(面積)が小さくなるのに伴ってゲイン減衰量が大きく(ゲインが小さく)なる一方、直径D(面積)が約75μm(4.4×10−9m2)よりも大きい範囲では、ゲイン減衰がなかった(ゲイン減衰が0であった)。また、図13に示すシミュレーション結果から、ゲイン減衰を−3(dB)以上確保するために(ゲイン減衰量が−3(dB)よりも大きくならないようにするために)、直径D(面積)を50μm(1.9×10−9m2)以上にすればよいことを確認した。なお、ゲイン減衰は、一般的に−3(dB)以上であれば問題ない範囲である。これらの結果、音道の音波遅延部により小さくされる断面の大きさ(面積)を、1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下にすれば、ゲイン減衰を抑制して音を良好に検知することができるとともに、音を検知可能な範囲を広げながら、十分なノイズ抑圧性能を得ることができることを確認した。
【0059】
また、図14に示すように、差動マイクロホンの指向性パターンは、三次元的に同一形状になる。すなわち、差動マイクロホンの指向性パターンは、2つの音道の入り口を結ぶ直線を軸にマイクロホンを回動させた場合でも同一形状になる。ここで、マイクロホンが搭載された電子機器(たとえば、携帯電話)を、ユーザが耳に近づけて顔の横で持つ場合(図15および図16参照)とユーザが電子機器の表示部を見ながら顔の前方で持つ場合(図17参照)とでは、いずれも音源が近距離であるものの、ユーザの口元(音源)とマイクロホンとの位置関係は異なる。このため、電子機器に搭載されたマイクロホンが両指向性を有する場合には、一方の持ち方で音の検知が良好となるようにマイクロホンを配置すると他方の持ち方の場合には音源がNull範囲内となって音を良好に検知することができない場合がある。また、ユーザが耳に近づけて顔の横で持つ場合において、図15に示すように、マイクロホンをユーザの顔から離間する方向(横方向)に回動させた場合や、図16に示すように、マイクロホンを前後方向に回動させた場合には、両指向性を有するマイクロホンでは音源がNull範囲内となって音を良好に検知することができない場合がある。これに対して、上記第1実施形態のように、両指向性と全指向性との間の指向性を有するMEMSマイク10を携帯電話100(電子機器)に搭載した場合には、近距離の音源に対して音を検知可能な範囲が広がるので、携帯電話100を顔の横で持つ場合と顔の前方で持つ場合との両方において、音を良好に検知することができる。また、図15および図16に示すように、マイクロホンを横方向および前後方向に回動させた場合でも、近距離の音源に対して音を検知可能な範囲が広がるので、音を良好に検知することができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、図18を参照して、本発明の第2実施形態による携帯電話100のMEMSマイク20について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、ベース基板213に極小孔からなる音波遅延部231aを設ける構成について説明する。なお、MEMSマイク20は、本発明の「マイクロホン装置」の一例である。
【0061】
第2実施形態のMEMSマイク20のベース基板213は、図18に示すように、第1基板層231と、第2基板層132と、第3基板層133とにより3層構造に形成されている。第1基板層231には、第1音道171の音波を遅延させる極小孔からなる音波遅延部231aが形成されている。極小孔からなる音波遅延部231aは、カバー基板12の音孔121に対応する位置に形成されている。音波遅延部231aは、第1音道171の音波の進行方向(Z方向)に直交する小さい円形断面を有している。音波遅延部231aにより小さくされた断面は、50μm以上150μm以下の直径を有している。すなわち、極小孔からなる音波遅延部231aでは、第1音道171の音波の進行方向に直交する断面を1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに局所的に小さくしている。また、音波遅延部231aは、第1音道171の音波を第2音道172に対して30μ秒以上50μ秒以下の範囲で遅延させるように構成されている。
【0062】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0063】
第2実施形態では、上記のように、ベース基板213の第1基板層231に音波遅延部231aを形成することによって、音波遅延部231aをベース基板213とは別体で形成する場合とは異なり、部品点数の増加を抑制することができる。
【0064】
また、上記のように、第2実施形態の構成においても、上記第1実施形態と同様に、第1音道171に、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして第2音道172に対して音波を遅延させる音波遅延部231aを形成することによって、MEMSマイク20の組み立て時の手間を軽減しながら、第1音道171の音波を第2音道172に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。
【0065】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0066】
(第3実施形態)
次に、図19を参照して、本発明の第3実施形態による携帯電話100のMEMSマイク30について説明する。この第3実施形態では、上記第1実施形態と異なり、極小孔からなる音波遅延部301aを有する音波遅延部材301を設ける構成について説明する。なお、MEMSマイク30は、本発明の「マイクロホン装置」の一例である。
【0067】
第3実施形態のMEMSマイク30のカバー基板12には、図19に示すように、極小孔からなる音波遅延部301aを有する音波遅延部材301が取り付けられている。具体的には、音波遅延部材301は、カバー基板12の上面に図示しない接着層により貼付されている。音波遅延部材301は、リフロー実装時の高熱に対応可能なように、耐熱性が高い金属やポリイミドなどにより構成されている。好ましくは、音波遅延部材301を、FR−4などのガラスエポキシ樹脂により形成されたカバー基板12に剛性が近いポリイミドにより構成する。これにより、音波遅延部材301をカバー基板12に貼り付けた状態で、音波遅延部材301およびカバー基板12の複合層(複合体)を容易に一括で切断することが可能である。また、音波遅延部材301をポリイミドにより構成することによって、音波遅延部301aを容易に形成することが可能である。このように音波遅延部材301をポリイミドにより構成すれば、製造時の手間を軽減することができるので、生産性の向上を図ることができる。
【0068】
ここで、第3実施形態のMEMSマイク30の製造手順について説明する。まず、図20に示すように、ベース基板13に振動部14および回路部15を搭載する。そして、カバー基板12の上面に図示しない接着層により音波遅延部材301を貼付し、振動部14および回路部15を覆うようにカバー基板12をベース基板13上に配置する。その後、上下の両面にダイシングフィルム310を配置した状態で、ダイシングブレードにより、図20および図21に示す切断線に沿って切断して個々のMEMSマイク30に分割する。この際、音波遅延部材301をポリイミドにより構成していれば、音波遅延部材301およびカバー基板12の複合層(複合体)を容易に一括で切断することが可能である。
【0069】
また、音波遅延部材301の音波遅延部301aは、カバー基板12の音孔121に対応する位置に形成されている。音波遅延部301aは、第1音道171の音波の進行方向(Z方向)に直交する小さい円形断面を有している。音波遅延部301aにより小さくされた断面は、50μm以上150μm以下の直径を有している。すなわち、極小孔からなる音波遅延部301aでは、第1音道171の音波の進行方向に直交する断面を1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに局所的に小さくしている。また、音波遅延部301aは、第1音道171の音波を第2音道172に対して30μ秒以上50μ秒以下の範囲で遅延させるように構成されている。また、音波遅延部材301には、カバー基板12の音孔122に対応する位置に音孔122と同形状の音孔301bが形成されている。また、第3実施形態の音波遅延部材301は、20μm以上100μm以下の厚みを有している。
【0070】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0071】
第3実施形態では、上記のように、カバー基板12の上面に、音波遅延部301aを有する音波遅延部材301を貼付する。これにより、音波遅延部301aを有する専用の音波遅延部材301を設ける場合でも、カバー基板12の上面に貼付するだけで容易に第1音道171の音波を第2音道172に対して遅延させることができるので、MEMSマイク30の組み立て時に手間がかかるのを抑制することができる。
【0072】
また、上記のように、第3実施形態の構成においても、上記第1実施形態と同様に、第1音道171に、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして第2音道172に対して音波を遅延させる音波遅延部301aを形成することによって、MEMSマイク30の組み立て時の手間を軽減しながら、第1音道171の音波を第2音道172に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。
【0073】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0074】
(第4実施形態)
次に、図22を参照して、本発明の第4実施形態による携帯電話100のMEMSマイク40について説明する。この第4実施形態では、上記第1実施形態と異なり、ベース基板413の下側(Z2方向側)から振動部14に音波を導くように第1音道471および第2音道472を設ける構成について説明する。なお、MEMSマイク40は、本発明の「マイクロホン装置」の一例である。
【0075】
第4実施形態では、図22に示すように、カバー基板412と、ベース基板413とによりMEMSマイク40のマイクロホン筐体417が構成されている。カバー基板412には、振動部14や回路部15などを収容する凹部423が形成されている。なお、マイクロホン筐体417は、本発明の「筐体」および「マイクロホン筐体」の一例である。
【0076】
ベース基板413は、カバー基板412と同様に、FR−4などのガラスエポキシ樹脂により形成されている。また、ベース基板413は、第1基板層431と、第2基板層432と、第3基板層433とにより3層構造に形成されている。具体的には、第1基板層431、第2基板層432および第3基板層433は、図示しない接着シートにより互いに貼り合わされている。
【0077】
第1基板層431には、トラック形状の音孔431aと、音孔431aとX方向に間隔を隔てて配置された円形状の音孔431bとが形成されている。音孔431aおよび431bは、それぞれ、上記第1実施形態の音孔131aおよび131bと同形状に形成されている。円形状の音孔431bは、振動部14に対応する位置に設けられている。
【0078】
第2基板層432には、上記第1実施形態の第2基板層132と同様に、平面視でT字形状の中空部432aが形成されている。中空部432aは、第1基板層431の音孔431bと、第3基板層433の後述する極小孔からなる音波遅延部433aとを連通するように構成されている。また、第2基板層432には、第1基板層431の音孔431aに対応するように、音孔431aと同形状の音孔432bが形成されている。
【0079】
第3基板層433には、極小孔からなる音波遅延部433aが形成されている。第4実施形態では、第3基板層433の極小孔からなる音波遅延部433aと、第2基板層432の中空部432aと、第1基板層431の音孔431bとにより、振動部14のダイアフラム141の下面(Z2方向側の表面)に音波を導く第1音道471が形成されている。音波遅延部433aは、第1音道471の音波の進行方向に直交する断面を局所的に小さくして、第1音道471の音波を遅延させるように構成されている。具体的には、音波遅延部433aは、第1音道471の音波の進行方向(Z方向)に直交する小さい円形断面を有している。音波遅延部433aにより小さくされた断面は、50μm以上150μm以下の直径を有している。すなわち、極小孔からなる音波遅延部433aでは、第1音道471の音波の進行方向に直交する断面を1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに局所的に小さくしている。また、音波遅延部433aは、第1音道471の音波を第2音道472に対して30μ秒以上50μ秒以下の範囲で遅延させるように構成されている。
【0080】
また、第3基板層433には、第2基板層432の音孔432bに対応するように、音孔432bと同形状の音孔433bが形成されている。第4実施形態では、第3基板層433の音孔433bと、第2基板層432の音孔432bと、第1基板層431の音孔431aと、カバー基板412の凹部423とにより、バックプレート電極142を介して振動部14のダイアフラム141の上面(Z1方向側の表面)に音波を導く第2音道472が形成されている。
【0081】
なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0082】
上記のように、ベース基板413の下側(Z2方向側)から振動部14に音波を導くように第1音道471および第2音道472を設ける第4実施形態の構成においても、上記第1実施形態と同様に、第1音道471に、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして第2音道472に対して音波を遅延させる音波遅延部433aを形成することによって、MEMSマイク40の組み立て時の手間を軽減しながら、第1音道471の音波を第2音道472に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることができる。
【0083】
なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0084】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0085】
たとえば、上記第1〜第4実施形態では、本発明の電子機器の一例としての携帯電話に本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。携帯電話以外の電子機器に本発明を適用してもよい。たとえば、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ボイスレコーダー、携帯情報端末、またはPC(パーソナルコンピュータ)等のマイクロホン装置を搭載する電子機器に本発明を適用してもよい。
【0086】
また、上記第1実施形態では、音波遅延部121aを、カバー基板12の音孔121の上端部に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、極小孔からなる音波遅延部を、カバー基板の音孔の下端部に形成してもよいし、音孔の中央部に形成してもよい。
【0087】
また、上記第2実施形態では、第1基板層231のうち、カバー基板12の音孔121に対応する位置に音波遅延部231aを設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図23に示すように、第1基板層231のうち、振動部14に対応する位置に極小孔からなる音波遅延部231bを設けてもよい。
【0088】
また、上記第2実施形態では、音波遅延部231aを第1基板層231に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図24に示すように、極小孔からなる音波遅延部232aを第2基板層232に形成してもよい。この場合、音波遅延部232aにより、T形状の中空部232bの一部の断面を局所的に小さくするように構成する。
【0089】
また、上記第3実施形態では、音波遅延部301aが形成された音波遅延部材301をカバー基板12の上面に貼付する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図25に示すように、極小孔からなる音波遅延部302aを有する音波遅延部材302をカバー基板12の下面に貼付してもよい。この場合、音波遅延部302aをカバー基板12の音孔121に対応する位置に設ける。
【0090】
また、上記第4実施形態では、第1音道471および第2音道472がベース基板413の下側(Z2方向側)から振動部14に音波を導くように形成された構成において、音波遅延部433aを第3基板層433に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図26に示すように、第1基板層431に極小孔からなる音波遅延部431cを形成してもよい。この場合、音波遅延部431cを振動部14に対応する位置に形成する。
【0091】
また、上記第4実施形態では、第1音道471および第2音道472がベース基板413の下側(Z2方向側)から振動部14に音波を導くように形成された構成において、音波遅延部433aを第3基板層433に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、極小孔からなる音波遅延部を第2基板層に形成してもよい。この場合、図24に示した第2実施形態の変形例と同様に、音波遅延部により、T形状の中空部の一部の断面を局所的に小さくするように構成する。
【0092】
また、上記第4実施形態では、第1音道471および第2音道472がベース基板413の下側(Z2方向側)から振動部14に音波を導くように形成された構成において、音波遅延部433aを第3基板層433に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図27に示すように、カバー基板412の下面に極小孔からなる音波遅延部401aを有する音波遅延部材401を貼付してもよい。この場合、音波遅延部401aを振動部14に対応する位置に形成する。また、図28に示すように、第3基板層433の下面に極小孔からなる音波遅延部402aを有する音波遅延部材402を貼付してもよい。
【0093】
また、上記第1〜第4実施形態では、本発明のマイクロホン装置としてのMEMSマイクに音波遅延部を形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、音道の断面を小さくする構成であれば、マイクロホン装置以外の箇所に音波遅延部を形成してもよい。たとえば、図29に示すように、電極パッド133aを介してMEMSマイク50(マイクロホン装置)が搭載される搭載基板51を、ガスケット52を間に挟んだ状態で電子機器の筐体53に取り付けた構成において、電子機器の外表面から振動部に通ずる第1音道571および第2音道572のうち、第1音道571の音波の進行方向に直交する断面を小さくする極小孔からなる音波遅延部51aを搭載基板51に形成してもよい。また、極小孔からなる音波遅延部を搭載基板51以外のガスケット52や筐体53に形成してもよい。この場合、マイクロホン装置自体に極小孔からなる音波遅延部を設けなくても、組み立て時の手間を軽減しながら、一方の音道の音波を他方に対して遅延させて音を検知可能な範囲(指向性の範囲)を広げることが可能な電子機器を得ることができる。
【0094】
また、上記第1〜第4実施形態では、本発明のマイクロホン装置としてのMEMSマイクに、差動マイクロホンとして機能させるための1つの振動部14を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図30に示すように、マイクロホン装置に、全指向性のマイクロホンとして機能させるための振動部614をさらに設けてもよい。この場合、2つの振動部14および614の両方を、第2音道172を構成するカバー基板12の凹部123内に設ける。これにより、音波遅延部が設けられない第2音道172を介して音波を全指向性用の振動部614に導くことができるので、全指向性用の振動部614に対して、第1音道171に形成された音波遅延部121aの影響が及ぶのを防止することができる。
【0095】
また、上記2つの振動部を設ける場合に、いずれか一方の振動部で音を検知するように切り替え可能に構成することによって、差動マイクロホン用の振動部を用いる場合には、音を検知可能な範囲を広げながらノイズ抑圧性能を確保することができるとともに、全指向性用の振動部を用いる場合には、近距離および遠距離の両方の音を広範囲で検知することができる。これにより、たとえば、ユーザが携帯電話を手に持って通話する際には、差動マイクロホン用の振動部を用いて、近距離の音を検知可能な範囲を広げながらノイズ抑圧性能を確保することができる。一方、ユーザがハンズフリー機能により通話する際や会議等を録音する際には、全指向性用の振動部を用いて近距離および遠距離の両方の音を広範囲で良好に検知することができる。
【0096】
また、本発明では、たとえば、図31に示すように、音波遅延部材301により、第2音道172の音波の進行方向に直交する断面が局所的に小さくされている構成であっても、音波遅延部材301により音波が遅延される第2音道172よりもさらに音波を遅延させる音波遅延部121bを第1音道171に設ければよい。この際、第2音道172の音波遅延部材301により小さくされた断面が直径aの円形断面であり、第1音道171の音波遅延部121bにより小さくされた断面も直径aの円形断面である場合には、音波遅延部121bの音波の進行方向における長さb(厚み)を音波遅延部材301の厚みよりも大きくして、第1音道171の音波を第2音道172に対して遅延させるように構成する。すなわち、本発明では、音波遅延部の音波の進行方向における長さ(厚み)を調整することにより音波の遅延量を調整してもよい。この際、音波遅延部の長さ(厚み)を大きくすればより遅延量が大きくなる方向に調整される。
【符号の説明】
【0097】
10、20、30、40、50 MEMSマイク(マイクロホン装置)
12、412 カバー基板
13、213、413 ベース基板
14 振動部
17、417 マイクロホン筐体(筐体)
51a、121a、121b、231a、231b、232a、301a、302a、401a、402a、431c、433b 音波遅延部
100 携帯電話(電子機器)
141 ダイアフラム(振動板)
142 バックプレート電極(固定電極)
171、471、571 第1音道
172、472、572 第2音道
301、302、401、402 音波遅延部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波により振動する振動板を含み、前記振動板の振動に基づいて音波を電気信号に変換する振動部と、
内部に前記振動部を収容するとともに、前記振動板の一方の面に音波を導く第1音道と、前記振動板の他方の面に音波を導く第2音道とを含む筐体とを備え、
前記第1音道および前記第2音道の一方には、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして他方に対して音波を遅延させる音波遅延部が形成されている、マイクロホン装置。
【請求項2】
前記音波遅延部は、前記第1音道および前記第2音道の一方の音道の前記断面を局所的に小さくすることにより、他方に対して音波を遅延させるように構成されている、請求項1に記載のマイクロホン装置。
【請求項3】
前記音波遅延部は、前記第1音道および前記第2音道の一方の音道の前記断面を局所的に小さくすることにより、他方に対して音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させるように構成されている、請求項2に記載のマイクロホン装置。
【請求項4】
前記音波遅延部は、前記第1音道および前記第2音道の一方の音道の前記断面を局所的に1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさにすることにより、他方に対して音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させるように構成されている、請求項3に記載のマイクロホン装置。
【請求項5】
前記音波遅延部は、音波の進行方向における長さが20μm以上100μm以下になるように形成されている、請求項4に記載のマイクロホン装置。
【請求項6】
前記第1音道および前記第2音道の一方のうち、前記音波遅延部が設けられた箇所以外の箇所と、前記第1音道および前記第2音道の他方との音波の進行方向に略直交する音道の断面は、70×10−9m2以上の大きさを有し、
前記音波遅延部は、前記第1音道および前記第2音道の一方の音道の前記断面を局所的に1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに小さくするように構成されている、請求項4または5に記載のマイクロホン装置。
【請求項7】
前記振動部は、前記振動板の他方の面に対向するように配置された固定電極をさらに含み、前記振動板の振動に起因して前記振動板と前記固定電極との間の間隔が変動されることにより音波を電気信号に変換するように構成されており、
前記音波遅延部は、前記振動板の一方の面に音波を導く前記第1音道に設けられている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項8】
前記筐体は、前記振動部が搭載されるベース基板と、前記振動部を覆うように設けられるカバー基板とを含み、
前記音波遅延部は、前記ベース基板または前記カバー基板に形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項9】
前記筐体は、前記振動部が搭載されるベース基板と、前記振動部を覆うように設けられるカバー基板とを含み、
前記ベース基板または前記カバー基板の表面には、前記音波遅延部を有する板状の音波遅延部材が貼付されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項10】
前記音波遅延部により音波を遅延させることによって両指向性と全指向性との間の指向性を有するように構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項11】
音源が遠距離に位置する場合には、両指向性と全指向性との間の指向性のうち、音源が近距離に位置する場合よりも両指向性に近い指向性を有するように構成されている、請求項10に記載のマイクロホン装置。
【請求項12】
マイクロホン装置を備える電子機器であって、
前記マイクロホン装置は、音波により振動する振動板を含み、前記振動板の振動に基づいて音波を電気信号に変換する振動部と、内部に前記振動部を収容するマイクロホン筐体とを備え、
前記電子機器の外表面から通ずるとともに前記振動板の一方の面に音波を導く第1音道と、前記電子機器の外表面から通ずるとともに前記振動板の他方の面に音波を導く第2音道とが形成されており、
前記第1音道および前記第2音道の一方には、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして他方に対して音波を遅延させる音波遅延部が形成されている、電子機器。
【請求項1】
音波により振動する振動板を含み、前記振動板の振動に基づいて音波を電気信号に変換する振動部と、
内部に前記振動部を収容するとともに、前記振動板の一方の面に音波を導く第1音道と、前記振動板の他方の面に音波を導く第2音道とを含む筐体とを備え、
前記第1音道および前記第2音道の一方には、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして他方に対して音波を遅延させる音波遅延部が形成されている、マイクロホン装置。
【請求項2】
前記音波遅延部は、前記第1音道および前記第2音道の一方の音道の前記断面を局所的に小さくすることにより、他方に対して音波を遅延させるように構成されている、請求項1に記載のマイクロホン装置。
【請求項3】
前記音波遅延部は、前記第1音道および前記第2音道の一方の音道の前記断面を局所的に小さくすることにより、他方に対して音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させるように構成されている、請求項2に記載のマイクロホン装置。
【請求項4】
前記音波遅延部は、前記第1音道および前記第2音道の一方の音道の前記断面を局所的に1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさにすることにより、他方に対して音波を30μ秒以上50μ秒以下遅延させるように構成されている、請求項3に記載のマイクロホン装置。
【請求項5】
前記音波遅延部は、音波の進行方向における長さが20μm以上100μm以下になるように形成されている、請求項4に記載のマイクロホン装置。
【請求項6】
前記第1音道および前記第2音道の一方のうち、前記音波遅延部が設けられた箇所以外の箇所と、前記第1音道および前記第2音道の他方との音波の進行方向に略直交する音道の断面は、70×10−9m2以上の大きさを有し、
前記音波遅延部は、前記第1音道および前記第2音道の一方の音道の前記断面を局所的に1.9×10−9m2以上18×10−9m2以下の大きさに小さくするように構成されている、請求項4または5に記載のマイクロホン装置。
【請求項7】
前記振動部は、前記振動板の他方の面に対向するように配置された固定電極をさらに含み、前記振動板の振動に起因して前記振動板と前記固定電極との間の間隔が変動されることにより音波を電気信号に変換するように構成されており、
前記音波遅延部は、前記振動板の一方の面に音波を導く前記第1音道に設けられている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項8】
前記筐体は、前記振動部が搭載されるベース基板と、前記振動部を覆うように設けられるカバー基板とを含み、
前記音波遅延部は、前記ベース基板または前記カバー基板に形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項9】
前記筐体は、前記振動部が搭載されるベース基板と、前記振動部を覆うように設けられるカバー基板とを含み、
前記ベース基板または前記カバー基板の表面には、前記音波遅延部を有する板状の音波遅延部材が貼付されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項10】
前記音波遅延部により音波を遅延させることによって両指向性と全指向性との間の指向性を有するように構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。
【請求項11】
音源が遠距離に位置する場合には、両指向性と全指向性との間の指向性のうち、音源が近距離に位置する場合よりも両指向性に近い指向性を有するように構成されている、請求項10に記載のマイクロホン装置。
【請求項12】
マイクロホン装置を備える電子機器であって、
前記マイクロホン装置は、音波により振動する振動板を含み、前記振動板の振動に基づいて音波を電気信号に変換する振動部と、内部に前記振動部を収容するマイクロホン筐体とを備え、
前記電子機器の外表面から通ずるとともに前記振動板の一方の面に音波を導く第1音道と、前記電子機器の外表面から通ずるとともに前記振動板の他方の面に音波を導く第2音道とが形成されており、
前記第1音道および前記第2音道の一方には、音波の進行方向に略直交する音道の断面を小さくして他方に対して音波を遅延させる音波遅延部が形成されている、電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2013−110581(P2013−110581A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254004(P2011−254004)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
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