説明

マイクロポンプ

【課題】 ポンプの接液部として使用するマイクロ流体デバイスに複雑な構造を形成する必要がなく、且つ、定量性に優れたマイクロポンプを提供すること。
【解決手段】 流路の断面が変形する圧迫部を有するマイクロ流体デバイスと、圧迫部を圧迫しながら流路方向に転がることによって、流路内の流体を移送する複数の押圧ローラーを有する駆動装置からなり、駆動装置が躯体と躯体に固定された第一回転軸周りに回転しうる回転体と回転体を回転させる回転体駆動機構を有し、回転体の第一回転軸を中心として保持された第一回転軸と平行な複数の第二回転軸周りに押圧ローラーを備え、押圧ローラーが第一回転軸方向に押したときに第一回転軸と第一回転軸から最も遠い側の押圧ローラーの外周部との間の距離が減少可能な状態で回転体に保持され、回転体が回転したとき複数のローラーの少なくとも一つが流路を閉状態とする距離に駆動装置が設置されているマイクロポンプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体デバイスを使用したマイクロポンプ、マイクロポンプ回転体駆動機構および流体の移送方法に関し、配管をマイクロ流体デバイスの流路に接続する必要がなく、かつ単純なポンプ回転体駆動機構で、定量性良く流体を移送し、しかも、流体の移送を停止したときには、特別な操作を行うことなく、またエネルギーを消費することなく、流体をその位置で停止させておくことが出来、流体の逆流や流失を防止することが出来る流体移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、シリコンゴムを使用して、注型法にて表面に1本の溝を有する部材と3本の溝を有する部材をそれぞれ形成し、これら2つの部材でシリコンゴムシートを挟んで、各々の部材の溝が立体交差するように接着することによって、シリコンゴムシートの一方の側に流体の移送用流路、他方の側に平行な3本の駆動用流路を形成し、該3本の駆動用流路に順次圧力気体を導入して、シリコンゴムシートを移送用流路内へ順次押しだすことによって、移送用流路内の流体を移動させる方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、上記の構造は常態で流路を開放しているため、ポンプ機構を駆動していないときに流路内の流体が不必要に流動しがちであり、これを防ぐために、駆動部を常時作動させておく必要があった。また、上記のポンプ機構を駆動するための圧力気体の配管をマイクロ流体デバイスに接続する必要があった。そのため、これらの圧力配管の接続機構をマイクロ流体デバイスに設ける必要があり、マイクロ流体素子の構造が複雑になりがちであった。そのため、特に多数並列運転する場合に、配管系が複雑になるとともに、使い捨てのマイクロ流体デバイスの場合には、無視し得ないほどコストが高くなる問題があった。
また、上記ポンプを駆動するには、3本の駆動用流路に加圧気体を順次導入するという、複雑な機構と複雑な駆動プログラムを必要とした。
【0004】
一方、本発明者らの出願になる特許文献1には、層を貫通する貫通溝状の欠損部を有する樹脂層を積層して逆止弁を形成し、2つの該逆止弁の間に形成したダイヤフラムを外部から駆動することによって駆動するポンプ機構が開示されている。しかし、該文献に開示されているポンプは流量(送液量)の吐出圧依存性が高く、この傾向は流体が気体の場合には更に大きくなった。また、該ポンプは2つの逆止弁を必要とし、そのため製造工程数が増えて製造コストが上昇しがちであった。
【0005】
また、本発明者らの出願になる特許文献2には、流路途上に弁機構となる堰を設け、該堰の一辺が他の部材と接触しているが接着していない構造を形成し、これを、常態では閉じているが、一定以上の圧力差が掛かると開く圧力弁として機能させ得ること、及び、該圧力弁を逆流防止弁機構としてポンプ機構を形成出来ることが記載されている。しかしながら、該ポンプ機構は吐出量の定量性は高くなく、この傾向は流体が気体の場合には更に大きくなった。
【0006】
また、本発明者らの出願になる特許文献3には、内部に流路を有し、該流路の途上に逆止弁が形成され、該流路と連絡して空洞と、該空洞に可撓性の樹脂ダイヤフラムが形成されており、凸構造が前記樹脂ダイヤフラムの空洞と反対側の面に設けられているダイヤフラム式ポンプ機構を有するマイクロ流体デバイスが開示されている。しかし、これもまた、逆止弁を必要とし、前記特許文献2や特許文献3と同様の欠点を有していた。
【0007】
【特許文献1】特開2002−86399号公報
【特許文献2】特開2003−139660号公報
【特許文献3】特開2003−139065号公報
【非特許文献1】サイエンス(SCIENCE)誌(第288巻、113頁、2000年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ポンプの接液部として使用するマイクロ流体デバイスに複雑な構造を形成する必要がなく、且つ、定量性に優れたマイクロポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、毛細管状の流路をマイクロ流体デバイス外表面から圧迫することによって、流路が変形して流路断面積が減少する、一定の長さの圧迫部が設けられたマイクロポンプを用い、複数のローラーを円環状に回転させて、マイクロ流体デバイス外から流路を順次圧迫しつつ移動させることにより、上記目的を達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【0010】
すなわち本発明は、毛細管状の流路と、前記流路の途中に、外部から前記流路に相対するマイクロ流体デバイス表面を圧迫することにより該流路の断面が変形して該断面積が減少する圧迫部を有するマイクロ流体デバイスと、
前記圧迫部を圧迫しながら流路方向に転がることによって、流路内の流体を移送する複数の押圧ローラーを有する駆動装置からなるマイクロポンプであって、
(1)前記駆動装置が、躯体と、該躯体に固定された第一回転軸周りに回転しうる回転体と、該回転体を回転させる回転体駆動機構を有すること、
(2)前記回転体の、前記第一回転軸を中心として略等角度となる位置に保持された、前記第一回転軸と平行な複数の第二回転軸周りにそれぞれ回転しうる押圧ローラーを備えること、
(3)前記押圧ローラーが、前記押圧ローラーを前記第一回転軸方向に押したときに、前記第一回転軸と、前記第一回転軸から最も遠い側の前記押圧ローラーの外周部との間の距離が弾性的に減少可能な状態で、前記回転体に保持されていること、
及び、
(4)前記回転体が回転したとき、いずれの回転角に於いても前記複数のローラーの少なくとも一つが前記流路を実質的に閉状態とする前記マイクロ流体デバイスとの距離に前記駆動装置が設置されていること、
を特徴とするマイクロポンプを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、液体、気体にかかわらず、吐出量に対する背圧の影響が少なく、定量性の高いマイクロポンプを提供できる。
また、逆止弁などの弁が不要であるため、構造が単純で生産性が高い。このため、本発明のマイクロポンプの接液部であるマイクロ流体デバイス部分を使い捨てにする場合であってもコストを低く抑えることができる。また、送液量の吐出圧異存性が小さく定量性に優れ、さらに、好適に気体の移送にも適用できる。
【0012】
また、ポンプを駆動するための配管をマイクロ流体デバイスに接続する必要がなく、送液停止時に流路が閉状態に保たれ、駆動に当たっては駆動装置を任意の回転速度で回転させるだけで良いため、送液のために複雑な構成や制御を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について、詳細に説明する。なお、本発明は、液体、気体、超臨界流体、チクソトロピック流体などの任意の流体の移送に適用できるが、説明の簡略化の面から、特に言及しない限り、液体の場合について説明する。
[マイクロ流体デバイス]
本発明に使用するマイクロ流体デバイスは、本発明に成るマイクロポンプの接液部であり、その外形は、圧迫部に於ける流路が直線状であるか又は戻りがなければ任意である。例えば、圧迫部が、平面状、円筒と平面との交線の一部、或いは、円錐と平面の交線の一部の形状であればよい。但し、後述のように、圧迫部の流路はジグザグや曲線状などの戻りのない形状であってもよい。圧迫部以外の部分は任意である。また、全体がフィルム状などの変形可能な構造であって、剛直な台の上に置けば圧迫部を直線状や平面内とすることが出来るものであってもよい。これらの中で、厚さが一定の板状(平板状)またはフィルム状であることが好ましい。なお、以下説明の簡略化のため、「板状またはフィルム状」をまとめて「板状」と記述する。勿論、この構造は、類似の構造、例えばシート状やリボン状を含むものとする。
【0014】
前記マイクロ流体デバイスの素材は、圧迫部以外は特に制約はなく、使用可能なものとしては、例えば、有機重合体およびその類似物(以下、「有機重合体およびその類似物」を、単に[重合体」又は「樹脂」と称する。又、「その類似物」とはポリジメチルシロキサンなどの可撓性のある無機重合体を言う。)、石英の如き結晶、岩石やセラミックなどの多結晶、ガラスなどの非晶性無機物、シリコンの如き半導体、金属などが挙げられるが、これらの中でも、易成形性、高生産性、低価格などの点から重合体が特に好ましい。重合体は生産性の高い熱可塑性樹脂やエネルギー硬化性樹脂が好ましい。
本発明に好ましく使用できる重合体として、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン/マレイン酸共重合体、ポリスチレン/アクリロニトリル共重合体の如きスチレン系重合体;ポルスルホン、ポリエーテルスルホンの如きポリスルホン系重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルの如き(メタ)アクリル系重合体;ポリマレイミド系重合体;ビスフェノールA系ポリカーボネート、ビスフェノールF系ポリカーボネート、ビスフェノールY系ポリカーボネートなどのポリカーボネート系重合体;
【0015】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1の如きポリオレフィン系重合体;塩化ビニル、塩化ビニリデンの如き塩素含有重合体;酢酸セルロース、メチルセルロースの如きセルロース系重合体;ポリウレタン系重合体;ポリアミド系重合体;ポリイミド系重合体;ポリ−2,6−ジメチルフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイドの如きポリエーテル系又はポリチオエーテル系重合体;ポリエーテルエーテルケトンの如きポリエーテルケトン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレートの如きポリエステル系重合体;エポキシ樹脂;ウレア樹脂;フェノール樹脂;ポリ四フッ化エチレン、PFA(四フッ化エチレンとパーフロロアルコキシエチレンの共重合体)などのフッ素系重合体、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系重合体;アクリル系やエポキシ系などのエネルギー線硬化性樹脂等が挙げられる。
【0016】
本発明に使用するマイクロ流体デバイスは、他の機構を持つマイクロ流体デバイス、例えば、濾過膜や反応槽や検出部などを有するマイクロ流体デバイスと一体化されていても良く、その場合は、上記の構造や素材は、該マイクロ流体デバイスの中で、本マイクロポンプの一部として使用するマイクロ流体デバイス部分のことを言う。
【0017】
〔流路〕
本マイクロポンプの一部として使用するマイクロ流体デバイスは、その内部に、流体が移送される毛細管状の流路を有する。該流路は、圧迫部に於いて、後述のようにマイクロポンプの外部から流路が圧迫されることによって流路壁が変形し、流路の断面積が減少しうる深さに形成されるが、その他の部分については任意である。
【0018】
流路の断面積は任意であり、後述のように圧迫部の流路断面積は所定の範囲にあることが好ましいが、それ以外の部分に於ける流路の断面積は任意である。流路の断面形状も任意である。
【0019】
流路の長さは、後述の圧迫部の長さ以上であれば任意である。流路は、マイクロ流体デバイスの他の機構の流路と連続して作製することが出来る。
【0020】
流路の形成方法は任意であるが、例えば、表面に流路となる溝を有する部材と蓋となる部材を貼り合わせる方法、表面に平行な線状の、板状部材の表裏を貫通した、流路となる欠損部(切り抜き部)を有する該板状の部材の両側に、底及び蓋となる部材を貼り合わせる方法、マイクロ光造形法により、部材の形成と同時に流路を形成する方法、などが挙げられる。
【0021】
〔圧迫部〕
本発明に使用するマイクロ流体デバイスは、流路の途中に、外部からの圧迫により流路断面積が減少しうる圧迫部が設けられている。該圧迫部においては、流路は可撓性を有する流路壁でもってデバイス外と隔てられており、デバイス外から該圧迫部を圧迫することによって、該部位の流路断面積を減少させることが出来、好ましくは流路断面積を実質的にゼロとして流路を実質的に遮断することが出来る。「実質的に」とは、漏れが無視できる程度に少ないことを言う。
【0022】
圧迫部に於ける流路の断面形状は任意であり、円、矩形、台形、半円形、スリット状など(但し、上記は角が丸められた形状を含む。以下同じ)であり得る。これらのなかで、角の丸められた矩形や半円形が圧迫による流路の遮断が容易であり好ましい。また、流路の高さ/幅の比を0.05〜1とすることが、圧迫による流路の遮断が容易であり好ましい。
【0023】
圧迫部における流路の断面積は任意であるが、好ましくは1μm〜10mm、さらに好ましくは10μm〜1mm、最も好ましくは100μm〜0.1mmである。該圧迫部分の流路断面積を大きくすると、流体の送出量が増す。
該圧迫部の流路は、他の部分と形状や断面寸法が異なっていてよい。
【0024】
圧迫部における流路を取り囲む流路壁は、少なくとも押圧ローラーで圧迫される側(即ち、圧迫側)は柔軟で可撓性のある素材で形成する必要がある。例えば、前記マイクロ流体デバイスが、流路となる溝を有する板状の第一部材と、蓋となる板状の第二部材が積層固着されて形成されたものである場合には、前記第一部材側を圧迫側としても第二部材側を圧迫側としてもよいが、圧迫側の流路壁は柔軟で可撓性のある素材で構成する必要がある。
【0025】
前記圧迫部の圧迫側流路壁を構成する柔軟で可撓性のある素材の好ましい引張弾性率(ヤング率)は下限が好ましくは0.2MPa以上、更に好ましくは1MPa以上、最も好ましくは5MPa以上である。この下限以上とすることにより耐久性や最高吐出圧力が増し、また、押圧ローラーが圧迫を解除する位置へ移動したとき該流路中への流体吸引力の不足により、流体移送の定量性が低下することもない。又、上限は好ましくは1GPa以下、更に好ましくは500MPa以下、最も好ましくは200MPa以下である。この上限以下とすることによって、好ましい状態である流路を実質的に遮断することが容易となるため、吐出量の定量性が増し、背圧依存性がなくなり、最高吐出圧力も高くなる。
【0026】
圧迫部における流路を取り囲む流路壁の、前記圧迫側の裏面側や側面を構成する素材の引張弾性率は任意であり、圧迫側の流路壁に比べて引張弾性率が低い素材であっても高い素材であっても良い。しかし側面の流路壁(側壁)は、圧迫側の流路壁の特性によって、好ましい引張弾性率が異なる。例えば、圧迫側の流路壁が、例えば引張弾性率が0.2MPa〜10MPaのような、特に柔軟な素材で形成されている場合には、側壁は任意であり、剛直な素材で形成されていて良い。圧迫側の流路壁が、例えば引張弾性率が10MPa〜500MPaのような、中程度に柔軟な素材で形成されている場合には、側壁は例えば引張弾性率が0.2MPa〜500MPaのような、中程度より柔軟な素材で形成されていることが好ましい。圧迫部の流路壁が、例えば引張弾性率が500MPa〜1GPaのような、比較的柔軟性の低い素材で形成されている場合には、側壁は、例えば引張弾性率が0.2MPa〜10MPaのような特に柔軟な素材で形成されていることが好ましい。上記のいずれの場合にも、裏面側の流路壁は任意である。このようにすることによって、圧迫により実質的に流路断面積をゼロに近くすることが容易になる。
【0027】
前記柔軟で可撓性のある素材は、JIS K−7127により測定された破断伸び率が、好ましくは2%以上、更に好ましくは5%以上のものである。本発明においては、JIS K−7127による引張試験で2〜5%という低い破断伸び率を示す素材であっても、本発明の使用方法においてはエッジがないため破壊しにくく、上記試験による破断伸び率以上の歪みを与えても破壊することなく使用可能である。破断伸び率の上限は、自ずと限界はあろうが、高いことそれ自身による不都合は無い為、上限を設けることは要せず、例えば、400%でありうるが、100%以下が好ましく、30%以下がさらに好ましい。この範囲とすることで、強度の高い素材が選定でき、また、素材選定の自由度が大きくなる。
【0028】
上記のような引張弾性率と破断伸び率を有する素材は重合体が好ましい。該重合体は、単独重合体であっても、共重合体であっても良く、また、熱可塑性重合体であっても、熱硬化性重合体であっても良いが、繰り返しの圧迫に対する耐久性の点や、クリープによる塑性変形が残りにくい点から、架橋重合体がさらに好ましく、生産性の面からエネルギー線硬化性の架橋重合体であることが最も好ましい。
【0029】
好ましく使用できる架橋重合体としては、例えば、天然ゴム、クロロプレン系ゴム、ニトリルゴム、ブチルゴムなどのゴム類;ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどのエラストマー;(メタ)アクロイル基含有化合物の架橋重合体;エポキシ系含有化合物の架橋重合体;ビニルエーテル基含有化合物の架橋重合体を例示できる。
【0030】
このような素材は、少なくとも圧迫部の圧迫側流路壁を形成すればよいが、該圧迫側流路壁を含むマイクロポンプの外面の少なくとも一つの面や一つの層全体を形成していることが、製造の工程数が少なくなり好ましい。
【0031】
圧迫部に於ける流路の表面からの深さ(即ち、流路と外表面を隔てる圧迫側流路壁の厚み)は、圧迫によって流路断面積を減少させることが出来れば特に限定する必要はないが、該圧迫側の流路壁を構成する素材の引張弾性率が高い場合には薄く、低い場合には厚くすることが好ましい。引張弾性率として上記好ましい範囲のものを使用したとき、マイクロポンプに後述の凸構造を設けない場合には、該流路壁は、好ましくは1〜3000μm、更に好ましくは5〜1000μm、最も好ましくは10〜500μmである。但し、マイクロ流体デバイスが後述の凸構造を有する場合には、上記範囲に凸構造の高さを足した値が好ましい範囲となる。この範囲とすることにより、製造が容易となり、かつ、マイクロ流体デバイスの利点を十分に発揮させることが出来る。
【0032】
マイクロ流体デバイスの表面から見た圧迫部の形状は、押圧ローラーが転がることにより流路の断面積が減少した部分が移動して送液される形状であれば任意である。直線状が好ましいが、緩やかな曲線状やジグザグ状のように、戻りがない形状であればよく、押圧ローラーを柔軟な素材で広幅に形成して圧迫部を含む範囲を圧迫したり、第一回転軸をマイクロ流体デバイスの表面と平行でない状態に固定し、押圧ローラーが移動する軌跡を曲線状にしたり、圧迫部に後述の凸状構造を形成して、広幅の押圧ローラーにより該圧迫部を含む範囲を圧迫することで機能させうる。しかしながら、圧迫部に後述の凸状構造を形成しない場合には、直線状であることが好ましい。
【0033】
〔凸構造〕
前記マイクロ流体デバイスの前記圧迫部の外表面に該圧迫部に沿った凸構造を設けることも好ましい。凸構造を設けると、該凸構造を含む範囲を圧迫することにより、該凸構造を介して前記圧迫部が選択的に圧迫されるため、微小な圧迫部を正確に圧迫する必要がない。このため、広幅の押圧ローラーでもって該凸構造を含む範囲を圧迫すればよく、圧迫部の流路を正確な直線状にしたり、圧迫部をマイクロ流体デバイス中の正確な位置に形成する必要もなくなり、また、マイクロ流体デバイスを設置する際に押圧ローラーとの位置関係も高精度を要しない。これらに多少の誤差があっても移送の精度が低下することがない。
【0034】
前記凸構造の素材や寸法形状は任意であるが、該凸構造が押圧ローラーの圧迫により変形しないような硬質の素材、例えば引っ張り弾性率が500MPa〜500GPaの素材で形成されている場合には、幅が概ね前記圧迫部の流路幅の0.5〜1倍、高さが概ね前記圧迫部の流路の高さの1〜10倍であるような構造が好ましく、該凸構造が押圧ローラーの圧迫により変形するような柔軟な素材、例えば引っ張り弾性率が0.2MPa〜500MPaの素材で形成されていて、幅が概ね前記圧迫部の流路幅の1〜100倍、高さが前記圧迫部の流路の深さの1〜100倍であるような構造を好ましく例示できる。凸構造を柔軟な素材で高さを大き目に形成すると、凸構造の形成位置に高精度を要しないし、又、第1回転軸とマイクロ流体デバイスの圧迫部との距離に多少の誤差があっても移送の定量性が低下しにくいため好ましい。
また、上記凸構造は、前記圧迫部の外表面に固着されていても良いし、他の部材、例えば板状やシート状の部材に固着されていて、該凸構造の位置を圧迫部に合わせてマイクロ流体デバイスに固定されていても良い。
【0035】
[駆動装置]
本マイクロポンプを駆動するための駆動装置は、躯体、回転体、回転体駆動機構、及び押圧ローラーを有する。これらを構成する素材は特に制約はなく、前記マイクロ流体デバイスに使用出来る素材として示した中で、500MPa〜500GPaの引張弾性率を持つものが好ましく使用できる。
【0036】
〔回転体〕
回転体は、前記躯体に固定された第一回転軸の周りに回転しうる状態に取り付けられ、回転体駆動機構によって回転することによって、押圧ローラーを、前記マイクロ流体デバイスの圧迫部を圧迫しながら流路方向に転がらせ、これを順次、次の押圧ローラーについて行う。回転体の形状は任意であるが、円板状、または中心から複数の腕が放射状に伸びた形状が好ましい。
【0037】
押圧ローラーは円板状の回転体の外周付近や、腕状の回転体の先端付近に設けられた第二回転軸に取り付けられる。非圧迫状態に於ける前記第一回転軸と前記第二回転軸との距離をA[m]とすると、距離Aは0.3〜30[cm]の範囲であり、好ましくは0.5〜20[cm]、更に好ましくは1〜10[cm]である。この範囲内とすることにより、駆動や製造が容易になり、かつ、無駄な設置スペースを要しない。
【0038】
〔回転体駆動機構〕
回転体駆動機構は前記回転体を回転させる動力部である。駆動するための機構は任意であり、例えば、交流モーター,直流モーター,パルスモーターなどの電気モーター、圧縮空気による回転機構、ゼンマイなどの機械的回転体駆動機構、電磁石とストッパやラチェットによる機構、手動の為のハンドル等であり得る。駆動モードも任意であり、用途目的に応じて選択できる。例えば、一定速度の回転、間欠回転、プログラムされた速度での回転であり得る。回転体駆動機構が回転体に動力を伝える部分は任意であり、第一回転軸、回転体の外周部、回転体に設けられたギヤ等であり得る。しかし、回転体駆動部の回転軸に前記回転体を取り付け、回転体駆動部の回転軸を前記第一回転軸とすることが、構造が簡単になり好ましい。
【0039】
〔押圧ローラー〕
押圧ローラーは、回転体に、第一回転軸と平行に設けられた複数の第二回転軸周りにそれぞれ回転しうる状態に保持されていて、マイクロ流体デバイスの圧迫部を圧迫して、流路断面積を減少させた状態で流路方向に転がることにより、流体を移送することが出来るものである。
【0040】
回転体に取り付けられる押圧ローラーの数n[個]は、3〜24の範囲であり、4〜18が好ましく、6〜12がさらに好ましい。3個未満では、流路の少なくとも一部を常に閉じているように圧迫部を圧迫することができず、24個を越えると、駆動装置の構造が複雑になると共に、駆動装置が過剰に大きくなりがちである。
【0041】
第一回転軸と、互いに隣り合った押圧ローラーの第二回転軸とが成す角は180度未満であればよく、回転体が回転したとき、常に少なくとも一つのローラーが流路を実質的に閉状態にすることが出来ればよい。しかしながら、略等角度であれることが好ましく、等角度であることが、送液の脈動が最小になるため好ましい。
【0042】
非圧迫状態に於ける押圧ローラーの半径B[m]は、駆動装置を稼働させたとき、回転体のいずれの位置に於いても押圧ローラー同士がぶつからなければ使用可能であるが、非圧迫状態に於ける第一回転軸から第二回転軸までの距離をA[m]とすると、A未満であり、A/2以下が好ましい。この範囲とすることにより駆動装置を小型化できる。また、半径Bは実質的に作成、使用できる大きさ以上であればよいが、実質的に流路を閉塞させるためには、圧迫部に於ける流路の高さをH[m]としたとき、H以上とすることが好ましい。半径Bをこの下限以上とすることで、押圧ローラーの製造が容易となり、また、移送の確実さや定量性も向上する。
【0043】
押圧ローラーは、押圧ローラーの外周部を第一回転軸方向に押したときに、第一回転軸と、第一回転軸から最も遠い側の押圧ローラーの外周部との距離が弾性的に減少可能な状態で、回転体に保持されている。これにより、回転体を回転させたとき、押圧ローラーのマイクロ流体デバイスとの接触部がマイクロ流体デバイスの表面に平行に移動することが可能となり、ポンプとして機能させることが可能となる。
【0044】
押圧ローラーの外周部を第一回転軸方向に押したときに、前記第一回転軸と、前記第一回転軸から最も遠い側の押圧ローラーの外周部との距離が弾性的に減少加能とするためには、例えば、(a)第二回転軸が弾性的に第一回転軸に近づく方向に移動することにより、押圧ローラー全体が第1回転軸に近づく方向に移動する機構、(B)押圧ローラーが柔軟な弾性素材、例えば引張弾性率が0.2〜200MPaの素材で形成されていて、回転体が回転したとき、非圧迫状態に於ける押圧ローラーの半径をB[m]とすると、接触部に於いて押圧ローラーが弾性変形して半径がBより減少することにより、第一回転軸から前記外周部までの距離が減少し得る機構、などの少なくとも一つを設ければよい。いずれの場合においても当然に、マイクロ流体デバイスの圧迫部を圧迫した際に、流路を変形させて流路断面積を減少させることの出来る弾性力を有するものを使用する。
【0045】
(a)の機構の具体的な構造は任意であり、例えば次のような押圧ローラー保持具を用いることで実施できる。即ち、(i)一端が回転体に固定され、他端に第二回転軸が設けられたアームであり、該アームが撓み得る機構、(ii)一端が回転体に固定され、他端に第二回転軸が設けられたアームを有し、該アームの第二回転軸端がバネによって第一回転軸から離れる方向へ付勢されている機構、(iii)バネや空気バネを備えたシリンダーとピストン機構、(iv)バネを備えたリニアスライダー、などであり得る。前記(a)の機構の場合、非圧迫状態に於いても、第二回転軸が第一回転軸方向に弾性力に抗して縮められていて、押圧ローラーが第一回転軸から離れる方向に付勢された状態で、ストッパにより前記距離Aの増加が止められている状態が好ましい。このようにすることにより、押圧ローラーが圧迫部を圧迫しつつ転がる際の圧迫力の変化が小さくなり、常に少なくとも一つの押圧ローラーが流路を閉状態に保つことが容易になる。
前記(B)の機構の場合には、特別な保持具は不要であり、回転体に第二回転軸を直接固定すればよい。
【0046】
押圧ローラーの素材は、前記(a)の機構による場合には任意であり、例えば引張弾性率にして0.5MPa〜500GPaの範囲の素材を好ましく使用できる。中心部付近を例えば500MPa以上の硬質の素材で形成し、比較的狭く取った外周部を例えば0.2〜200MPaの柔軟な素材で形成することも好ましい。前記(B)の機構による場合には、押圧ローラーが変形し得るような柔軟な素材を用いる。例えば引張弾性率にして1MPa〜50MPaの範囲の素材を好ましく使用できる。この場合も、中心部付近を例えば500MPa以上の硬質の素材で形成し、比較的広く取った外周部を例えば0.2〜200MPaの柔軟な素材で形成することも、圧迫位置の精度向上や耐久力向上の点から好ましい。
【0047】
押圧ローラーの外周の形状は、マイクロ流体デバイスの圧迫部を圧迫したときに流路断面積を減少させ、好ましくは流路を遮断状態に出来る形状であれば良い。例えば、圧迫部が凸構造を有しない場合において、押圧ローラーの材質の引張弾性率と、マイクロ流体デバイスの圧迫部の素材の引張弾性率が共に200MPa以上であるような場合には、押圧ローラーの外周部の幅(以下、単に「押圧ローラーの幅」と称する場合がある。)は圧迫部に於ける流路幅をW[m]としたとき、0.2W〜1.0Wが好ましく0.5W〜1.0Wが更に好ましい。圧迫部における流路の側壁を構成する素材の引張弾性率が低いほど、許容される範囲は広くなる。押圧ローラーの外周部の断面形状は角がまるめられていることも好ましく、半円であることも好ましい。半円の場合には、直径が0.2W〜3Wが好ましく0.5W〜1.5Wが更に好ましい。マイクロ流体デバイスの圧迫部の素材の引張弾性率と押圧ローラーの外周部の引張弾性率の少なくとも一方が0.5MPa〜50MPaであるような柔軟な素材で構成されている場合には、押圧ローラーの幅はかなり広くても良く、例えば、1W〜1000Wが好ましく3W〜100Wが更に好ましい。
【0048】
前記(B)の機構である場合、即ち、押圧ローラーが柔軟な弾性素材で形成されていて、回転体が回転したとき、非圧迫状態に於ける押圧ローラーの半径をB[m]としたとき、接触部に於いて押圧ローラーが弾性変形して半径がBより減少し得る機構、である場合には、押圧ローラーの幅は0.5W〜30Wが好ましく1.0W〜10Wが更に好ましい。押圧ローラーの外周部の断面形状が半円の場合には、直径が0.5W〜50Wが好ましく1W〜15Wが更に好ましい。
【0049】
圧迫部が凸構造を有する場合には、押圧ローラーの幅は任意であり、凸構造の幅より広いことが好ましく、凸構造の幅の2倍以上がさらに好ましい。この範囲とすることで確実に凸構造を圧迫することが出来る。このときの押圧ローラーの幅の上限は特に限定する必要はないが、凸構造の幅の1000倍以下が好ましく、100倍以下がさらに好ましく、50倍以下が最も好ましい。この範囲とすることにより、駆動装置を小型にすることが出来、マイクロ流体デバイス中の他の機構との干渉を防ぐことができる。
【0050】
圧迫部が凸構造を有する場合にも押圧ローラーの素材は任意であり、押圧ローラーに好ましく使用できる素材の引張弾性率は凸構造がない場合と同様である。しかし、押圧ローラーは凸構造より高い引張弾性率の素材で形成することが、圧迫が確実になり好ましい。圧迫部が凸構造を有し、かつ、例えばジグザグや戻りのない曲線状である場合には、押圧ローラーの幅は、これらの圧迫部が押圧ローラーの幅の外に出ないだけの幅が必要である。この場合には、押圧ローラーが転がると、順次、該ローラーの幅方向の異なる部分で押圧部(凸構造)を圧迫することになる。
【0051】
上記いずれの場合にも、押圧ローラーの中心部付近は、回転によるローラーの振れを少なくするために幅広とし、外周付近でそれより幅狭とすることが好ましい。従って、押圧ローラーは、例えばそろばん玉状の形状が好ましい。
【0052】
〔躯体〕
躯体は、それに固定された第一回転軸を通じて、回転体及び押圧ローラーを保持しており、また、回転体駆動機構も保持している。第1回転軸は、回転体と一体化された回転体駆動機構を躯体に固定することによって、躯耐の所定の位置に設けても良い。躯体には、マイクロ流体デバイスを固定する固定機構や、回転体とマイクロ流体デバイスとの相対位置を一定にするための位置決め機構を有していることが好ましい。位置決め機構としては、位置決めピン、位置決めバー、マイクロ流体デバイスを納めるための凹部を例示できる。固定機構は任意であり、ネジ式、バネ式などのクランプを例示できる。位置決め機構がマイクロ流体デバイスを納める凹部である場合のように、押圧ローラーの移動によってマイクロ流体デバイスの位置がずれなければ、固定機構はなくてもよい。
【0053】
〔回転体とマイクロ流体デバイスとの距離の設定〕
本駆動装置は、前記回転体と前記マイクロ流体デバイスとの距離を、前記回転体が回転したとき、いずれの回転角に於いても前記複数のローラーの少なくとも一つが前記流路を実質的に閉状態とするように設置する。即ち、装置が回転して、前記複数のローラーの一つが流路を閉状態から開状態とする以前に又は閉状態から開状態とすると略同時に、隣接する他のローラーが流路を開状態から閉状態とするような距離に設置する。中でも、装置が回転して、前記複数のローラーの一つが流路を閉状態から開状態とすると略同時に、隣接する他のローラーが流路を開状態から閉状態とするような距離、即ち、最大で二つのローラーが前記流路を実質的に閉鎖する距離、に設置することが好ましい。上記のように設置することによって、送液量の背圧依存性を抑制し、本マイクロポンプを定量ポンプとして機能させることが出来るし、本マイクロポンプを駆動しない状態に於いても、流体が勝手に流出することがない。
【0054】
前記回転体と前記マイクロ流体デバイスとの距離を上記のようにする寸法的な関係は、マイクロ流体デバイスの圧迫部の流路方向が第一回転軸と直角な向きに設置し、かつ、前記回転体と前記マイクロ流体デバイスとの距離を次の範囲とする。即ち、非圧迫状態に於ける前記第一回転軸から第二回転軸までの距離をA[m]、非圧迫状態に於ける押圧ローラーの半径をB[m]、圧迫部に於ける流路の高さをH[m]、押圧ローラーの数をn[個]、360°をnで除した値をθ[°]、第一回転軸とマイクロ流体デバイスの圧迫部との距離をX[m]、前記第一回転軸と前記第一回転軸から最も遠い側の前記押圧ローラーの外周部との間の距離を減少させるときの弾性係数をE1[Pa]、マイクロ流体デバイスの圧迫部を押圧して流路断面積変形させるときの圧迫部の弾性係数をE2[Pa]とした際に、値Xを、下記式(1)を満たすように調節する。但し、マイクロ流体デバイスの圧迫部に凸構造が設けられている場合には、上記Xを算出するための圧迫部は凸構造の上面を言う。
【0055】
X ≦ Acos(θ/2)+B−H{1+(E2/E1)} (1)
【0056】
Xがこの範囲以外であると、常に一つ以上の押圧ローラーがマイクロ流体デバイスの流路断面積を十分に減少させることが出来なくなり、流体の移送に支障を生じがちとなる。なお、前記式{1}中の(E2/E1)の値は、E1、E2の値を個々に測定しなくても、前記駆動装置の押圧ローラー部でマイクロ流体デバイスのあ朴部を押したときの変形量の比として求めることができる。
【0057】
但し、第二回転軸が第一回転軸に対して等角度に設置されていない場合には、各押圧ローラーが第一回転軸となす角度の内の最大のものを上記θとして計算した値を用いる。
【0058】
Xの下限は、回転体や押圧ローラー保持具などがマイクロ流体デバイス表面にぶつからなければよく、マイクロ流体デバイス内の流路の位置やマイクロ流体デバイスの固定位置に依存する。例えば、回転体がマイクロ流体デバイスの平面の上方にある場合には、Xはその最大半径を越える必要があるが、回転体がマイクロ流体デバイスの平面の外にある場合にはこの制約はない。しかし、回転体がマイクロ流体デバイスの平面の外にある場合であっても、Xは回転体の半径の1/2以上とすることが、製造が容易で、動作の精度も高くなり好ましい。
【0059】
上記式(1)において、押圧ローラーの項で述べたように、前記距離をAは0.003〜0.3[m]の範囲である。また、押圧ローラーの数nは3〜24の範囲であり、押圧ローラーの半径BはH〜Aの範囲である。
【0060】
しかしながら、駆動装置を所定の位置に設置する方法として、上記のように寸法を測ることなく、例えば次のような実際的な方法を採ることも出来る。
(1)まずマイクロ流体デバイスの流路に流体を流しておく。2つの押圧ローラーが第一回転軸の垂線に対して対称になる位置まで回転体を回して止め、前記回転体を該流体の移動が止まる位置まで下げて固定する。
(2)まずマイクロ流体デバイスの流路に流体を流しておく。回転体を回して本ポンプを駆動し、マイクロ流体デバイスの流出口に背圧を掛けても流量が変化しない位置まで、回転体を下げて固定する。
【0061】
[実施態様]
〔マイクロ流体デバイスNo.1〕
図1は、本発明に係るマイクロ流体デバイスの実施態様を示す図である。図に示すマイクロ流体デバイスは、溝を有する第1部材(1)とフィルム状の第2部材(8)が貼り合わされて形成されている。第一部材(1)は例えばハイインパクトポリスチレン(HIPS)で形成されており、例えば75mm×25mm×厚さ1mmの板状の部分、該板状の部分の一方の面に形成された、流路(2)となる例えば幅500μm、高さ100μmであって、底の両角が半径100μmに丸められている平面視コの字型の溝(2)、該板状の部分を貫通する直径500μmの孔として形成された流入口(4)と流出口(5)、前記溝(2)とは反対の面に、流入口(4)と流出口(5)の開口部にそれぞれ接続するように形成されたルアーフィッティング(6)、(7)を有する。
【0062】
あるいは図2に示したように、第一部材(1)は例えば厚み1mmの基板(31)と例えば厚さ0.1mmの樹脂層(32)が固着した積層体として構成されていてもよい。この場合、該樹脂層(32)には流路(2)となる、該樹脂層(32)の表裏を貫通した幅500μmの平面視コの字型の欠損部(2)が形成されていて、基板(31)と積層して固着されることにより、該欠損部(2)は第一部材(1)の溝(2)となる。
【0063】
第一部材(1)と第二部材(8)とは互いに固着され、溝(2)は例えば幅500μm、高さ100μmの毛細管状の流路(2)となされており、該流路(2)に相対する部分の第二の部材(4)は厚み100μmの圧迫側の流路壁とされている。
【0064】
また、コの字流型の流路(2)の第二角の部分は圧迫部(3)とされている。流路(2)中の圧迫部(3)の中の、押圧ローラー(12)によって実際に圧迫される範囲は、用いる駆動装置の構造と、該駆動装置の第一回転軸(22)と圧迫部(3)との距離Xによって決まる。
圧迫部(3)の圧迫側流路壁、例えば前記第二部材(8)は、押圧ローラーの圧迫力によって弾性変形可能な弾性率を有する重合体、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)からなっている。
【0065】
〔マイクロ流体デバイスNo.2〕
図2は、凸構造を有するマイクロ流体デバイスの実施態様を示す図である。図中、圧迫部(3)の圧迫側流路壁の外面に凸構造(9)が固着されて形成されていること以外は図1の前記マイクロ流体デバイスと同様である。凸構造(9)は、例えばPDMSで形成されていて、例えば幅は、圧迫部に於ける流路の幅と同じ500μm、高さは、該流路の高さの2倍である200μmであり、断面形状は矩形である。また、長さは50mmである。
【0066】
〔駆動装置No.1、No.2〕
図3は、本発明に係る駆動装置の実施態様を示す図である。例えば直径10cmの円板状の回転体(11)の周囲付近に、直径1cmの押圧ローラーが着いた8個の保持具(13)が等角度に配置されている。該回転体(11)の回転軸(22)即ち第一回転軸(22)は回転体駆動機構(16)であるギヤ付きモーターに接続されていて、任意の速度で回転するようになっている。該回転体駆動機構(16)が躯体(17)の躯体上部(17a)に取り付けられることによって、該回転体(11)および第一回転軸(22)もまた、躯体上部(17a)に取りつけられる。該躯体上部(17a)と躯体下部(17B)は、長穴(18)とボルト(19)により伸長/短縮が可能な構造になっている。該躯体下部(17B)には、装着台(17c)が設けられ、該装着台(17c)にはマイクロ流体デバイスを嵌め込むことの出来る凹部(23)とクランプ(24)が設けられていて、所定の位置にマイクロ流体デバイスを固定できるようになっている。また、装着台(17c)には、マイクロ流体デバイスの配管接続口であるルアーフィッテイング(6,7)を避けるための切り欠き(25a、25B)が設けられている。
【0067】
なお、マイクロ流体デバイスNo.1用の駆動装置No.1には、外周幅が例えば0.3mmの押圧ローラー、マイクロ流体デバイスNo.2用の駆動装置No.2には、外周幅が例えば3mmの押圧ローラーが用いられる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、各々「質量%」、「質量部」を表す。
【0069】
(実施例1)
本実施例では、本発明の実施態様で説明したマイクロ流体デバイスNo.1(凸構造を有しないマイクロ流体デバイス)と駆動装置No.1から成るマイクロポンプの製造方法、及び送液方法について述べる。
【0070】
[マイクロ流体デバイスの作製]
射出成型により、図1に示したようなハイインパクトポリスチレン(HIPS、引張弾性率2GPa、破断伸び率26%)製の第一部材(1)を作製した。該第一部材(1)は、幅30mm×長さ100mm×厚さ2mmの板に、流路(2)となる溝(2)、流入口(4)、流出口(5)、ルアーフィッティング(6)、およびルアーフィッテイィング(7)が同時に形成されている。溝(2)は、幅500μm、深さ100μmで、底の角が半径100μmに丸められている。流入口(4)と流出口(5)の断面はどちらも直径500μmの円である。
【0071】
一方、第二部材(8)として厚さ500μmのポリジメチルシロキサン(PDMS、引張弾性率約0.8MPa)シートを用い、これにPDMS系の接着剤を薄く塗布して、上記部材(1)の溝形成面全体に接着した(図1中、接着剤の厚みは無視した。)。これにより、前記溝(2)は第二部材(8)で蓋をし、幅500μm、高さ約95μmの、底の角が半径100μmに丸められた略矩形の断面を有する毛細管状の流路(2)を形成した。
【0072】
前記のコの字型の流路(2)の第二角の部分に相対する第二部材(8)側を圧迫部(3)とした。
【0073】
[駆動装置]
図4は、本発明のマイクロポンプの駆動装置を示す図であり、第5図は押圧ローラーおよびその保治具を示す図である。
【0074】
〔回転体および回転体駆動機構〕
硬質塩化ビニル板(引張弾性率2.9GPa)を切り抜いて、直径100mm、厚さ6MMの円板状の回転体(11)を作製した。
【0075】
〔押圧ローラーおよび第二回転軸〕
上記と同じ硬質塩化ビニル板を旋盤加工して、図5に示したような、直径10mm、厚さ6MM、外周の幅が400μmのそろばん玉状の押圧ローラー(12)を8個作製した。また、鉄製の角型シリンダー式の固定部(13a)とその内側に装着された角棒形のスライダー式の可動部(13B)からなる、押圧ローラーの保持具(13)を作製した。該固定部(13a)は回転体(11)の外周付近にネジ(図示略)で固定され、可動部(13B)の先端部付近に第二回転軸(15)を設けて押圧ローラー(12)を保持した。可動部(13B)の他端部付近にはストッパ(14)が設けられ、該ストッパに取り付けられたバネ(13c)にて、押圧ローラー(12)は放射方向に付勢されている。
【0076】
〔回転体駆動機構〕
回転体駆動機構(16)として、速度調節式ギヤ付きモーター(16)を使用した。
【0077】
〔躯体〕
厚さ5mmのアルミ板を加工して、躯体(17)として図3に示したような躯体上部(17a)と躯体下部(17B)を作製した。躯体下部(17B)に設けた長穴(18)とボルト(19)により、回転体(11)の高さを長節して固定できるようになっている。また、躯体上部(17a)には軸孔(20)を穿ち、回転体駆動機構(16)の軸(21)を通し、これに回転体(11)を固定して、該軸(20)を第一回転軸(22)とした。回転体駆動機構(16)は躯体上部(18a)にネジ(図示略)で固定した。
【0078】
また、躯体下部(17B)の装着台(17c)には、マイクロ流体デバイスが丁度嵌め込まれる寸法の凹部(23)が設けられ、バネ式のクランプ(24)で押さえることにより、マイクロ流体デバイスを決まった位置に固定出来るようになっている。また装着台(17c)には、マイクロ流体デバイスのルアーフィッティング(6,7)形成面を下側にして装着する際に、該ルアーフィッティング(6,7)を逃がすための切り欠き(25a、25B)が設けられている。
【0079】
〔回転体とマイクロ流体デバイスの位置設定と送液試験〕
マイクロ流体デバイスの流入口(4)のルアーフィッテイィング(6)に内径0.5mmの樹脂チューブ(図示略)を接続し、該マイクロ流体デバイスを装着台(17c)の凹部(23)に嵌め込んで、クランプ(24)で固定した。接続口(4)に接続されたチューブの他端を、メチレンブルーで着色した蒸留水を入れた試験管(図示略)中に挿入した。また、流出口(5)のルアーフィッテイィング(7)にも同じチューブ(図示略)を接続し、他端を空の試験管(図示略)中に挿入した。
【0080】
一方、回転体の下側に来ている2つの押圧ローラー(12)が、第一回転軸(22)から下げた垂線に対して対称な位置になるよう位置において回転体(11)を停止させ、流入口(4)側の試験管に加圧空気のチューブを差しこみ、シリコンゴム製の栓をして、流路(5)に着色水を加圧空気の圧力によって流しながら回転体(11)を下げて行き、図7に示した様な、5kPaの圧力によって水が流通しない状態になったところで躯体(17)のボルト(19)を固定した。このとき、第一回転軸(22)とマイクロ流体デバイスの圧迫部との距離Xは0.091[m]であり、[Acos(θ/2)+B−H{1+(E2/E1)}](但し、非圧迫状態に於ける第一回転軸から第二回転軸までの距離A=0.1[m]、非圧迫状態に於ける前記押圧ローラーの半径B=0.01[m]、押圧ローラーの数n=8[個]、360°をnで除した値θ=45[°]、圧迫部に於ける流路の高さH=0.95×10−3[m]、マイクロ流体デバイスの圧迫部を押圧して流路断面積変形させるときの圧迫部の弾性係数をE2[Pa]と、前記第一回転軸と前記第一回転軸から最も遠い側の前記押圧ローラーの外周部との間の距離を減少させるときの弾性係数をE1[Pa]の比E2/E1=2.5[−])の値0.093[m]より小であった。なあお、前記の(E2/E1)の値は、前記駆動装置の押圧ローラー部でマイクロ流体デバイスのあ朴部を押したとき、変形量の比として求めた。
【0081】
次いで、試験管から加圧空気のチューブと栓を取り去り、回転体駆動機構(16)を回転させて、回転体(11)を反時計方向に回転させると、図8に示したように、押圧ローラー保持具(13)の可動部(13B)は回転体(11)の中心方向に弾性的に押されつつ、押圧ローラー(12)は流路断面積をほぼゼロにした状態で転がり、着色水は流出口(5)方向に送られた。このとき、流出口(5)側の試験管に加圧空気のチューブを差しこみ、シリコンゴム製の栓をして、約30kPaの圧力を掛けたが、着色水の流れに変化はなかった。
【0082】
(実施例2)
本実施例では、本発明の実施態様で説明したマイクロ流体デバイスNo.2(凸構造を有するマイクロ流体デバイス)と駆動装置No.2から成るマイクロポンプの製造方法及び送液方法の例について述べる。
【0083】
[マイクロ流体デバイスの作製]
上記第二部材(8)の外表面に型紙を置き、PDMS系接着剤をヘラで塗りつけた後、型紙を除去して該PDMS系接着剤を硬化させることで、図2に示されたように、流路(2)の圧迫部(3)の外表面に、幅500μm、高さ200μm、長さ70mmの、断面が略矩形の凸構造(3)を形成したこと以外は、実施例と同様のマイクロ流体デバイスを作製した。
【0084】
[駆動装置]
図6に示したように、硬質塩化ビニル板で形成された固定部(13a)と可動部(13B)が金属製の板バネ(14)で結合された形状の押圧ローラーの保持部(13)を作製した。即ち、固定部(13a)はネジで回転体811)に固定され、押圧ローラー(12)は可動部(13B)に設けられた第二回転軸(15)に取り付けられている。本実施例に於いては、押圧ローラー(12)の外周の幅を4mmとした。
〔回転体とマイクロ流体デバイスの位置設定と送液試験〕
凸構造(9)を含む範囲を押圧ローラー(12)で圧迫したこと以外は実施例1と同様にして位置設定を行い、送液試験をした。その結果、第一回転軸(22)とマイクロ流体デバイスの圧迫部の距離Xは0.088[m]であり、[Acos(θ/2)+B−H{1+(E2/E1)}]の値0.093[m](A=0.1[m]、B=0.01[m]、n=8[個]、θ=45[°]、H=0.95×10−3[m]、比E2/E1=2.5[−]))より小であり、実施例1と同様に送液された。また、クランプ(24)をはずして、凹部(23)の中でマイクロ流体デバイスが多少動いても、同様に移送出来た。
【0085】
(実施例3)
本実施例では、本発明の実施態様で説明したマイクロ流体デバイスNo.2と駆動装置No.2から成るマイクロポンプであって、圧迫部、および該部分に於ける側壁を中程度に柔軟な素材で形成した場合の製造方法及び送液方法について述べる。
【0086】
〔エネルギー線硬化性組成物(E)〕
重合性化合物として、平均分子量約2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(大日本インキ化学工業株式会社製の「ユニディックV−4263」)80部、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート(第一工業製薬株式会社製の「N−177E」)20部、光重合開始剤としてチバスペシャルテッィケミカルズ社製1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」2部を混合して、エネルギー線硬化性組成物(E)を調製した。
本エネルギー線硬化性組成物(E)の硬化物は、引張弾性率(ヤング率)が430MPa、破断伸び率が8.9%であった。
【0087】
〔紫外線〕
製造例に於ける紫外線照射は、200Wメタルハライドランプを光源とするウシオ電機株式会社製のマルチライト200型露光装置用光源ユニットを用い、365nmにおける紫外線強度が100mW/cm2の紫外線を室温、空気雰囲気中で照射した。
【0088】
[マイクロ流体デバイスの作製]
図2に於ける第1部材(1)を、厚さ1mmのアクリル板製の基板(31)とエネルギー線硬化樹脂で形成された樹脂層(32)で形成されていること以外は、実施例2と同様のマイクロ流体デバイスを作製した。即ち、厚さ1mmのアクリル板製の基板(31)にエネルギー線硬化性組成物(E)を塗布し、フォトマスク(図示略)を用いて、流路(2)となる部分以外の部分に紫外線を照射して半硬化させ、50%エタノール水溶液にて未照射部の未硬化樹脂を洗浄除去し、流路(2)となる溝(2)を形成することにより第1部材(1)とした。
【0089】
一方、コロナ放電処理したポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)を一時的な支持体(図示略)とし、この上に、エネルギー線硬化性組成物(E)を塗布し、紫外線を1秒間照射して、粘着性は有するが流動しない半硬化状態の第二部材(8)とし、前記第1部材(1)の樹脂層(32)の上に密着させて紫外線を2秒間照射して、前記樹脂層(32)及び第二部材(8)を固着させ、前記一時的な支持体を剥離除去した。
【0090】
次いで、第二部材の上に、同じエネルギー線硬化性組成物(E)を塗布し、凸構造(8)となすべき部分のみに紫外線を照射して照射部を硬化させ、50%エタノール水溶液にて未照射部の未硬化樹脂を洗浄除去して、凸構造(9)を形成した。
【0091】
その後、前記基板(31)側からドリルで孔を開けて流入口(4)と流出口(5)を形成し、該部分に、ルアーフィッティング(6)、およびルアーフィッテイィング(7)をエポキシ系接着剤にて接着した。
【0092】
以上のようにして、実施例2で作製したマイクロ流体デバイスと同じ各部寸法を有するマイクロ流体デバイスを作製した。
【0093】
〔回転体とマイクロ流体デバイスの位置設定と送液試験〕
Xを0.085[m]としたこと以外は実施例2と同様にして位置設定を行い、送液試験をした。その結果、実施例2と同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施例で作製したマイクロポンプのマイクロ流体デバイス部分の平面模式図、及び、側面模式図である。
【図2】本発明の実施例で作製したマイクロポンプの、圧迫部に凸構造を有するマイクロ流体デバイス部分の平面模式図、及び、側面模式図である。
【図3】本発明の実施例で作製したマイクロポンプの、圧迫部に凸構造を有するマイクロ流体デバイス部分の平面模式図、及び、側面模式図である。
【図4】本発明の実施例で作製したマイクロポンプの駆動装置の正面図、平面図、及び、側面図である。
【図5】本発明の実施例で作製した押圧ローラーと保持具付近の拡大正面図、及び平面図である。
【図6】本発明の実施例で作製した押圧ローラーと保持具付近の拡大正面図、及び平面図である。
【図7】本発明の実施例において、押圧ローラーが流路の2箇所を同時に遮断している状態を示すマイクロ流体デバイスの断面模式図である。
【図8】本発明の実施例において、第一回転軸と押圧ローラーの圧迫部との距離が最も小さくなる状態を示す、マイクロ流体デバイスの断面模式図である。
【符号の説明】
【0095】
1・・・第一部材
2・・・流路、溝、欠損部
3・・・圧迫部
4・・・流入口
5・・・流出口
6・・・ルアーフィッティング
7・・・ルアーフィッティング
8・・・第二部材
9・・・凸構造
11・・・回転体
12、12a、12B・・・押圧ローラー
13・・・保持具
13a・・・保持具の固定部
13B・・・保持具の可動部
13c・・・保持具のバネ
14・・・ストッパ
15・・・第二回転軸
16・・・回転体駆動機構
17・・・躯体
17a・・・躯体上部
17B・・・躯体下部
17c・・・装着台
18・・・長穴
19・・・ボルト
20・・・軸孔
21・・・回転体駆動機構の軸
22・・・第一回転軸
23・・・凹部
24・・・クランプ
25a,25B・・・切り欠き
31・・・基板
32・・・樹脂層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛細管状の流路と、前記流路の途中に、外部から前記流路に相対するマイクロ流体デバイス表面を圧迫することにより該流路の断面が変形して該断面積が減少する圧迫部を有するマイクロ流体デバイスと、
前記圧迫部を圧迫しながら流路方向に転がることによって、流路内の流体を移送する複数の押圧ローラーを有する駆動装置からなるマイクロポンプであって、
(1)前記駆動装置が、躯体と、該躯体に固定された第一回転軸周りに回転しうる回転体と、該回転体を回転させる回転体駆動機構を有すること、
(2)前記回転体の、前記第一回転軸を中心として略等角度となる位置に保持された、前記第一回転軸と平行な複数の第二回転軸周りにそれぞれ回転しうる押圧ローラーを備えること、
(3)前記押圧ローラーが、前記押圧ローラーを前記第一回転軸方向に押したときに、前記第一回転軸と、前記第一回転軸から最も遠い側の前記押圧ローラーの外周部との間の距離が弾性的に減少可能な状態で、前記回転体に保持されていること、
及び、
(4)前記回転体が回転したとき、いずれの回転角に於いても前記複数のローラーの少なくとも一つが前記流路を実質的に閉状態とする前記マイクロ流体デバイスとの距離に前記駆動装置が設置されていること、
を特徴とするマイクロポンプ。
【請求項2】
前記駆動装置が回転して、前記複数のローラーの一つが流路を閉状態から開状態とする際に、隣接する他のローラーが流路を開状態から閉状態とする前記マイクロ流体デバイスとの距離に前記駆動装置が設置されている請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項3】
前記押圧ローラーを前記第一回転軸方向に押したときに、前記第一回転軸と、前記第一回転軸から最も遠い側の前記押圧ローラーの外周部との間の距離の弾性的な減少が、前記第二回転軸が弾性的に第一回転軸に近づく方向に移動することにより、押圧ローラー全体が第1回転軸に近づく方向に移動する機構である請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項4】
前記押圧ローラーを前記第一回転軸方向に押したときに、前記第一回転軸から第二回転軸までの距離が弾性的に減少するように移動させる機構が、前記回転体に一方の端が固定され他方の端に前記第二回転軸が設けられたアームであり、該アームは、撓むことにより前記第二回転軸を移動させるものである請求項2に記載のマイクロポンプ。
【請求項5】
前記マイクロ流体デバイスが板状であり、前記流路が該マイクロ流体デバイスの表面から一定の深さに設けられている請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項6】
前記マイクロ流体デバイスの前記圧迫部における圧迫される側の流路壁を構成する素材が、引張弾性率が0.2MPa〜500MPaの範囲にある請求項1に記載のポンプ機能を有するマイクロポンプ。
【請求項7】
前記マイクロ流体デバイスの前記圧迫部における圧迫される側の流路壁の厚さが1〜3000μmの範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロポンプ。
【請求項8】
前記マイクロ流体デバイスの前記圧迫部の外表面に凸構造が設けられており、該凸構造を含む範囲を圧迫することによって、前記流路の断面積が減少する請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−138801(P2007−138801A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332713(P2005−332713)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】