マイクロミラーアレイ及びマイクロミラーアレイの製造方法
【課題】所望する光反射面を有するマイクロミラーアレイを製造すること。
【解決手段】基板3に支持部4を介して傾動可能に支持される可動板5の上面側に、光反射面2が設けられる金属柱20を形成する際、可動板5の上面側を露出させる開口40aを有する保護膜40を形成し、その開口40a内に銀メッキを施して銀製の金属柱20を形成した後、その金属柱20の上端面20aに鏡面加工を施して光反射面2を形成することとした。
【解決手段】基板3に支持部4を介して傾動可能に支持される可動板5の上面側に、光反射面2が設けられる金属柱20を形成する際、可動板5の上面側を露出させる開口40aを有する保護膜40を形成し、その開口40a内に銀メッキを施して銀製の金属柱20を形成した後、その金属柱20の上端面20aに鏡面加工を施して光反射面2を形成することとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロミラーアレイ及びマイクロミラーアレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信や光情報処理の分野で使用されるマイクロミラーに関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−242396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)に属するマイクロミラーの場合、その製造プロセスの制約上、ミラーの反射面の材料や形状の選択性が乏しいため、マイクロミラーの用途に応じた反射面を形成することは困難であった。
【0005】
本発明の課題は、所望する光反射面を有するマイクロミラーアレイを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様は、マイクロミラーアレイの製造方法であって、
基板に傾動可能に支持された複数の可動板の上面側を露出させる開口が設けられた金属柱形成用保護膜を形成する金属柱形成用保護膜形成工程と、
前記開口内に金属柱を形成する金属柱形成工程と、
前記金属柱形成用保護膜とともに前記金属柱を研削して、その金属柱の上端面を研磨する研磨工程と、
前記金属柱形成用保護膜を除去する金属柱形成用保護膜除去工程と、を備えることを特徴とする。
好ましくは、前記基板上に複数の可動板を固定する固定用保護膜を形成する工程をさらに備える。
また、好ましくは、前記固定用保護膜を除去する工程をさらに備える。
また、好ましくは、前記研磨工程において、前記金属柱の上端面を研磨することで、前記金属柱の上端面に鏡面加工を施し、その上端面を光反射面に形成する。
また、好ましくは、前記金属柱の上端面に金属部材を設け、その金属部材の表面を研磨して光反射面に形成する工程を備える。
また、好ましくは、前記固定用保護膜と前記金属柱形成用保護膜との間に電解めっき用シード層を形成するシード層形成工程をさらに備え、前記金属柱形成工程は、前記電解めっき用シード層を陰極とする電解めっきによって、前記金属柱形成用保護膜の開口内に金属柱を形成する。
【0007】
また、本発明の他の態様は、マイクロミラーアレイであって、
上記記載のマイクロミラーアレイの製造方法によって製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所望する光反射面を有するマイクロミラーアレイを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1に係るマイクロミラーアレイを示す平面図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】実施形態1に係るマイクロミラーアレイを示す断面図である。
【図4】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図5】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図6】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図7】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図8】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図9】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図10】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図11】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図12】本発明の実施形態2に係るマイクロミラーアレイを示す断面図である。
【図13】実施形態3に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図14】実施形態3に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図15】実施形態3に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図16】実施形態3に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図17】実施形態3に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図18】実施形態3に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図19】本発明の実施形態3に係るマイクロミラーアレイを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るマイクロミラーアレイ1Aを示す平面図であり、図2は図1のII−II矢視断面図である。
【0012】
マイクロミラーアレイ1Aは、図1、図2に示すように、基板3に支持部4を介して傾動可能に支持されて、その基板3上に配列された複数(例えば、25個)の可動板5と、可動板5の上面側に形成されて、光反射面2を有する金属柱20と、を備えている。
そして、マイクロミラーアレイ1Aは、図1に示すように、その表面に複数(本実施形態では25個)の光反射面2が配列された構成を有している。
【0013】
基板3は、例えば、シリコン基板である。支持部4は、例えば、基板3上に配される可動板5を支持するトーションバネと、可動板5に作用させる静電力を発生させる駆動電極等を備えている。この基板3に支持部4を介して可動板5が配設されて、ミラー基部10が構成されている。
このミラー基部10において、駆動電極に印加する電圧値を調整し、その電圧値に応じた静電力によって可動板5を引き付けるなどして、可動板5を任意の角度に傾斜させることが可能になっている。なお、ミラー基部10の構成は、例えば、MEMSに属するDMD(Digital Micromirror Device)の構成と同様のものであり、DMDに関する技術は従来公知であるので、ここでは詳述しない。
【0014】
金属柱20は、可動板5の上面に電解めっき用シード層6を介して設けられている。
金属柱20の上端面20aは、可動板5の上面とは異なる形状を有しており、特に、可動板5の上面より広く形成されている。具体的に、例えば、可動板5の上面が40μm四方の矩形状を呈する場合に、金属柱20の上端面20aは100μm四方の矩形状を呈するようになっている。
この金属柱20の上端面20aは研磨され、鏡面加工が施されて光反射面2が形成されている。
【0015】
そして、図3に示すように、ミラー基部10において支持部4で支持される可動板5が傾動されて金属柱20が傾斜されることで、金属柱20の上端面20aである光反射面2が任意の方向に向けられる。
このマイクロミラーアレイ1Aにおける複数の光反射面2は、それぞれ異なる方向に向けることが可能であり、何れかの光反射面2に入射させた光の反射方向を切り替えて、その反射光を目的の方向に誘導することができる。つまり、マイクロミラーアレイ1Aは、入力側の光ファイバの光信号を出力側の光ファイバにスイッチングする光スイッチとして機能させることが可能である。
【0016】
次に、マイクロミラーアレイ1Aの製造方法について図4から図11を用いて説明する。
【0017】
まず、図4に示すように、基板3上に支持部4及び可動板5を設けてミラー基部10を形成する。ミラー基部10は、従来公知のDMDを形成する手法に基づき製造することができる。なお、DMDにおける可動ミラーが、本実施形態での可動板5となる。DMDであれば可動ミラーに反射面を形成するが、本実施形態の可動板5には反射面を形成する必要はない。
【0018】
次に、図5に示すように、可動板5の上面を基板3に対して平行に配した状態で、第一保護膜(固定用保護膜)30となるレジスト膜用の樹脂を塗布し、可動板5の上面とほぼ面一となる第一保護膜30を形成する。
この第一保護膜30は、マイクロミラーアレイ1Aを製造する過程で、ミラー基部10の可動板5が傾動してしまわないように、可動板5と支持部4を一時的に固定するための保護膜である。なお、可動板5の上面に第一保護膜30が成膜されてしまう場合には、可動板5と第一保護膜30の表面が面一となるように研削するなどして第一保護膜30を除去し、可動板5の上面を露出させるようにする。
【0019】
次に、図6に示すように、スパッタ等の気相堆積法によって、可動板5の上面と第一保護膜30を覆う電解めっき用シード層6を形成する。
【0020】
次に、図7に示すように、電解めっき用シード層6の上に第二保護膜(金属柱形成用保護膜)40となる、例えばネガ型のフォトレジスト膜を成膜し、所定のパターニングを施すことで、金属柱20を形成する位置であって可動板5に対応する位置に開口40aを形成する。この開口40aから可動板5の上面に相当する電解めっき用シード層6部分が露出するようになっている。
この開口40aは、シード層6から離間するほど幅が広く、上方に向かって開口が広がる形状を有している。なお、フォトレジスト膜を露光する際の露光条件を最適化することによって、開口40aの断面が所望のテーパ形状となる第二保護膜40を形成することができる。
【0021】
次に、図8に示すように、電解めっき用シード層6を陰極とする電解めっきによって、第二保護膜40の開口40a内に銀メッキを施し、銀製の金属柱20を形成する。なお、金属柱20を銀で形成することに限らず、その他の銀色を呈する金属(例えば、ニッケル、クロム、アルミニウム、鉄など)で形成してもよい。
【0022】
次に、図9に示すように、第二保護膜40と金属柱20の表面が略面一となるように研削して、金属柱20の上端面20aを研磨する。
次に、図10に示すように、第二保護膜40を除去する。なお、金属柱20は、第二保護膜40に形成された開口40aの形状に対応し、その上端面20aが可動板5の上面側よりも広い形状に形成されている。
【0023】
次に、図11に示すように、金属柱20が形成されていない部分の電解めっき用シード層6を除去する。なお、このとき金属柱20の一部もエッチングされるが、電解めっき用シード層6と比較して充分に厚いため、金属柱20の形状変化はほとんどない。但し、金属柱20の上端面20aの平滑性が乱れることがあるので、電解めっき用シード層6を除去した後に金属柱20の上端面20aを研磨し直す。そして、金属柱20の上端面20aを研磨して鏡面加工を施し、その上端面20aを光反射面2に形成する。
ここで、金属柱20の上端面20aを研磨する際、ミラー基部10における可動板5及び支持部4はその周囲が第一保護膜30で覆われて保護されているため、その研磨時に支持部4にかかる力学的負担が軽減されるので、支持部4が損傷してしまうことはなく、可動板5を傾動させる機能に支障をきたさないようになっている。
【0024】
その後、第一保護膜30を除去し、基板3の表面を露出させるように支持部4と可動板5の固定を解除して、金属柱20が形成された可動板5が傾動可能となるようにして、図2、図3に示すマイクロミラーアレイ1Aが製造される。
【0025】
このように、本実施形態によれば、基板3上に配列された複数の可動板5に光反射面2を一括して形成することができるので、より容易にマイクロミラーアレイ1Aを製造することができる。
特に、可動板5にメッキを施して形成した金属柱20の上端面20aを研磨することで光反射面2を形成することができるので、可動板5にメッキを施す金属材料を変えることで、所望する任意の金属材料からなる光反射面2を形成することができる。
また、第二保護膜40の開口40aの断面形状を所望する形状にパターニングすることによって、所望する任意の形状を呈する光反射面2を形成することができる。
【0026】
具体的に、光反射面2を有する金属柱20は、第二保護膜40の開口40a内にメッキを施すことで形成される部材であるので、メッキを施す金属材料を変えることで金属柱20の素材を変化させて、光反射面2の光沢を変化させることができる。
また、第二保護膜40の開口40aの形状を変えることで金属柱20の形状(断面形状)を変化させて、光反射面2の形状を変化させることができる。
【0027】
例えば、第二保護膜40を厚く形成することで、金属柱20を高く形成して、基板3や可動板5から離間した位置に光反射面2を形成することができる。また、第二保護膜40を薄く形成することで、金属柱20を低く形成して、基板3や可動板5に近接した位置に光反射面2を形成することができる。
【0028】
また、第二保護膜40の開口40aを広く大きくするほど、広く大きな光反射面2を形成することができ、光反射面2による光の反射効率を向上させることができる。
なお、第二保護膜40の開口40aが、シード層6から離間するほど幅が広く、上方に向かって開口が広がる形状とした場合、開口40a内に形成した金属柱20を第二保護膜40とともに研削する程度を調整することによって、金属柱20の上端面20aの大きさを段階的に調節することができる。例えば、金属柱20及び第二保護膜40を浅く(薄く)研削するほど金属柱20の上端面20aを大きくすることができ、また、金属柱20及び第二保護膜40を深く(厚く)研削するほど金属柱20の上端面20aを小さくすることができる。
【0029】
つまり、本実施形態のように、光反射面2を形成する金属柱20を開口40a内にメッキを施して製作する手法によれば、光反射面2の素材、色、光沢等を所望するものに容易に切り替えることができ、また、光反射面2の大きさ、形状等を所望するものに容易に切り替えることができる。
そして、DMDの可動ミラーに相当する可動板5とは異なる材料、異なる形状の金属柱20に応じて所望する光反射面2を形成することができる。
以上のように、所望する光反射面2を有するマイクロミラーアレイ1Aを容易に製造することができる。
【0030】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係るマイクロミラーアレイについて説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0031】
図12は、実施形態2に係るマイクロミラーアレイ1Bを示す断面図である。実施形態2においては、第二保護膜40の開口40a内に銅メッキを施し、銅製の金属柱20を形成している。
そして、第二保護膜40と金属柱20の表面が略面一となるように研削した後、その銅製の金属柱20の上端面に無電解めっきによってニッケルメッキを施し、ニッケル製の金属部材22を形成している。
次いで、第二保護膜40を除去し、金属柱20が形成されていない部分の電解めっき用シード層6を除去した後、金属部材22の表面を研磨して鏡面加工を施し、光反射面2を形成している。なお、金属部材22をニッケルで形成することに限らず、その他の銀色を呈する金属(例えば、銀、クロム、アルミニウム、鉄など)で形成してもよい。
【0032】
このように、金属柱20の上端面に設けた金属部材22の表面を研磨して光反射面2を形成することによって、容易にマイクロミラーアレイ1Bを製造することができる。
特に、銅製の金属柱20の上端面20aを光反射面とするにはその反射率が低いような場合、金属柱20の上端面20aに銀色を呈する金属(例えば、ニッケル)からなる金属部材22を設け、その金属部材22の表面に鏡面加工を施して、銀色の光反射面2を形成することで、好適な反射率の光反射面2を備えるマイクロミラーアレイ1Bを製造することができる。
【0033】
なお、金属柱20の上端面に金属部材22を形成することに限らず、第二保護膜40の開口40a内の下層側に銅メッキを施してなる金属柱20を形成し、さらに第二保護膜40の開口40a内の上層側であり先に形成された銅製の金属柱20上にニッケルメッキを施してなる金属部材22を形成してもよい。この金属部材22の表面に鏡面加工を施すことでも光反射面2を形成することが可能である。
【0034】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係るマイクロミラーアレイについて説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0035】
実施形態1において、第二保護膜40の開口40aを電解めっき用シード層6から離間するほど幅が広く、上方に向かって開口が広がるテーパ形状に形成することで、金属柱20の上端面20aをより広くするようにしたが、第二保護膜の開口をテーパ形状にしなくても、金属柱の上端面を広く形成することは可能である。
図13から図19を用いて、実施形態3のマイクロミラーアレイ1Cの製造方法について説明する。
【0036】
まず、DMDを形成する手法に基づいて、基板3上に支持部4及び可動板5を設けてミラー基部10を形成する(図4参照)。次いで、可動板5の上面を基板3に対して平行に配した状態で、第一保護膜30となるレジスト膜用の樹脂を塗布し、可動板5の上面とほぼ面一となる第一保護膜30を形成する。その際、可動板5の上面に第一保護膜30が成膜されてしまう場合にはその第一保護膜30を除去し、可動板5の上面を露出させるようにする(図5参照)。次いで、スパッタ等の気相堆積法によって、可動板5の上面と第一保護膜30を覆う電解めっき用シード層6を形成する(図6参照)。
【0037】
次に、図13に示すように、電解めっき用シード層6の上に第二保護膜の一部を成す下層保護膜41となるフォトレジスト膜を成膜し、所定のパターニングを施すことで、金属柱20を形成する位置であって可動板5に対応する位置に小開口41aを形成する。この小開口41aは可動板5の上面形状に対応しており、平面視した場合、例えば20〜40μm四方の矩形状を呈している。
【0038】
次に、図14に示すように、下層保護膜41上に第二保護膜の一部を成す上層保護膜42となるフォトレジスト膜を成膜し、所定のパターニングを施すことで、可動板5に対応する位置であって小開口41aと重なり、その小開口41aを露出させる部分に大開口42aを形成する。この大開口42aは光反射面の形状に対応しており、平面視した場合、例えば80〜100μm四方の矩形状を呈している。
そして、下層保護膜41と上層保護膜42が積層されてなる第二保護膜には、小開口41aと大開口42aとが重なって連なった断面視略T字形状を呈する開口が形成されており、上層保護膜42の大開口42a内に下層保護膜41の小開口41aが収まり、その小開口41aの底部から可動板5の上面に相当するシード層6部分が露出している。
【0039】
次に、図15に示すように、電解めっき用シード層6を陰極とする電解めっきによって、小開口41aと大開口42aとが連なった開口内に銀メッキを施し、銀製の金属柱21を形成する。なお、金属柱21を銀で形成することに限らず、その他の銀色を呈する金属(例えば、ニッケル、クロム、アルミニウム、鉄など)で形成してもよい。
【0040】
次に、図16に示すように、上層保護膜42と金属柱21の表面が略面一となるように研削して、金属柱21の上端面21aを研磨する。
次に、図17に示すように、第二保護膜である上層保護膜42と下層保護膜41を除去する。なお、金属柱21は、小開口41aと大開口42aとが連なった開口の形状に対応して側面視略T字形状を呈し、その上端面21aが可動板5の上面側よりも広い形状に形成されている。
【0041】
次に、図18に示すように、金属柱21が形成されていない部分の電解めっき用シード層6を除去する。なお、このとき金属柱21の一部もエッチングされるが、電解めっき用シード層6と比較して充分に厚いため、金属柱21の形状変化はほとんどない。但し、金属柱21の上端面21aの平滑性が乱れることがあるので、電解めっき用シード層6を除去した後に金属柱21の上端面21aを研磨し直す。そして、金属柱21の上端面21aを研磨して鏡面加工を施し、その上端面21aを光反射面2に形成する。
ここで、金属柱21の上端面21aを研磨する際、ミラー基部10における可動板5及び支持部4はその周囲が第一保護膜30で覆われて保護されているため、その研磨時に支持部4にかかる力学的負担が軽減されるので、支持部4が損傷してしまうことはなく、可動板5を傾動させる機能に支障をきたさないようになっている。
【0042】
次に、図19に示すように、第一保護膜30を除去し、基板3の表面を露出させるように支持部4と可動板5の固定を解除して、金属柱21が形成された可動板5が傾動可能となるようにして、マイクロミラーアレイ1Cが製造される。
そして、マイクロミラーアレイ1Cは、ミラー基部10の可動板5に設けられた金属柱21の上端面21aに形成された光反射面2が複数配列されてなる構成を有している。
【0043】
このように、本実施形態によれば、第二保護膜の開口をテーパ形状にしなくても、開口の大きさの異なる2層の保護膜(下層保護膜41、上層保護膜42)を形成することで、側面視略T字形状を呈し、その上端面21aが可動板5の上面側よりも広い形状の金属柱21を形成することができ、可動板5の上面より広いサイズの光反射面2を有するマイクロミラーアレイ1Cを製造することができる。
そして、光反射面2を形成する金属柱21を開口(小開口41a、大開口42a)内にメッキを施して製作する手法によれば、光反射面2の素材、色、光沢等を所望するものに容易に変更することができ、また、光反射面2の大きさ、形状等を所望するものに容易に変更することができる。
そして、所望する光反射面2を有するマイクロミラーアレイ1Cを容易に製造することが可能になる。
【0044】
なお、金属柱21を銀のみで形成することに限らず、第二保護膜の開口内の下層側に銅メッキを施し、さらに第二保護膜の開口内の上層側であって、先に形成された銅メッキ上にニッケルメッキを施すことで、2種類の金属材料からなる2層の金属柱を形成してもよい。この金属柱の上層の表面に鏡面加工を施すことでも光反射面2を形成することが可能である。
【0045】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0046】
1A、1B、1C マイクロミラーアレイ
2 光反射面
3 基板
4 支持部
5 可動板
6 電解めっき用シード層
10 ミラー基部
20、21 金属柱
20a、21a 上端面
22 金属部材
30 第一保護膜(固定用保護膜)
40 第二保護膜(金属柱形成用保護膜)
40a 開口
41 下層保護膜(第二保護膜)
41a 小開口
42 上層保護膜(第二保護膜)
42a 大開口
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロミラーアレイ及びマイクロミラーアレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信や光情報処理の分野で使用されるマイクロミラーに関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−242396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)に属するマイクロミラーの場合、その製造プロセスの制約上、ミラーの反射面の材料や形状の選択性が乏しいため、マイクロミラーの用途に応じた反射面を形成することは困難であった。
【0005】
本発明の課題は、所望する光反射面を有するマイクロミラーアレイを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様は、マイクロミラーアレイの製造方法であって、
基板に傾動可能に支持された複数の可動板の上面側を露出させる開口が設けられた金属柱形成用保護膜を形成する金属柱形成用保護膜形成工程と、
前記開口内に金属柱を形成する金属柱形成工程と、
前記金属柱形成用保護膜とともに前記金属柱を研削して、その金属柱の上端面を研磨する研磨工程と、
前記金属柱形成用保護膜を除去する金属柱形成用保護膜除去工程と、を備えることを特徴とする。
好ましくは、前記基板上に複数の可動板を固定する固定用保護膜を形成する工程をさらに備える。
また、好ましくは、前記固定用保護膜を除去する工程をさらに備える。
また、好ましくは、前記研磨工程において、前記金属柱の上端面を研磨することで、前記金属柱の上端面に鏡面加工を施し、その上端面を光反射面に形成する。
また、好ましくは、前記金属柱の上端面に金属部材を設け、その金属部材の表面を研磨して光反射面に形成する工程を備える。
また、好ましくは、前記固定用保護膜と前記金属柱形成用保護膜との間に電解めっき用シード層を形成するシード層形成工程をさらに備え、前記金属柱形成工程は、前記電解めっき用シード層を陰極とする電解めっきによって、前記金属柱形成用保護膜の開口内に金属柱を形成する。
【0007】
また、本発明の他の態様は、マイクロミラーアレイであって、
上記記載のマイクロミラーアレイの製造方法によって製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所望する光反射面を有するマイクロミラーアレイを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1に係るマイクロミラーアレイを示す平面図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】実施形態1に係るマイクロミラーアレイを示す断面図である。
【図4】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図5】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図6】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図7】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図8】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図9】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図10】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図11】実施形態1に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図12】本発明の実施形態2に係るマイクロミラーアレイを示す断面図である。
【図13】実施形態3に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図14】実施形態3に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図15】実施形態3に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図16】実施形態3に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図17】実施形態3に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図18】実施形態3に係るマイクロミラーアレイの製造方法の説明図である。
【図19】本発明の実施形態3に係るマイクロミラーアレイを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るマイクロミラーアレイ1Aを示す平面図であり、図2は図1のII−II矢視断面図である。
【0012】
マイクロミラーアレイ1Aは、図1、図2に示すように、基板3に支持部4を介して傾動可能に支持されて、その基板3上に配列された複数(例えば、25個)の可動板5と、可動板5の上面側に形成されて、光反射面2を有する金属柱20と、を備えている。
そして、マイクロミラーアレイ1Aは、図1に示すように、その表面に複数(本実施形態では25個)の光反射面2が配列された構成を有している。
【0013】
基板3は、例えば、シリコン基板である。支持部4は、例えば、基板3上に配される可動板5を支持するトーションバネと、可動板5に作用させる静電力を発生させる駆動電極等を備えている。この基板3に支持部4を介して可動板5が配設されて、ミラー基部10が構成されている。
このミラー基部10において、駆動電極に印加する電圧値を調整し、その電圧値に応じた静電力によって可動板5を引き付けるなどして、可動板5を任意の角度に傾斜させることが可能になっている。なお、ミラー基部10の構成は、例えば、MEMSに属するDMD(Digital Micromirror Device)の構成と同様のものであり、DMDに関する技術は従来公知であるので、ここでは詳述しない。
【0014】
金属柱20は、可動板5の上面に電解めっき用シード層6を介して設けられている。
金属柱20の上端面20aは、可動板5の上面とは異なる形状を有しており、特に、可動板5の上面より広く形成されている。具体的に、例えば、可動板5の上面が40μm四方の矩形状を呈する場合に、金属柱20の上端面20aは100μm四方の矩形状を呈するようになっている。
この金属柱20の上端面20aは研磨され、鏡面加工が施されて光反射面2が形成されている。
【0015】
そして、図3に示すように、ミラー基部10において支持部4で支持される可動板5が傾動されて金属柱20が傾斜されることで、金属柱20の上端面20aである光反射面2が任意の方向に向けられる。
このマイクロミラーアレイ1Aにおける複数の光反射面2は、それぞれ異なる方向に向けることが可能であり、何れかの光反射面2に入射させた光の反射方向を切り替えて、その反射光を目的の方向に誘導することができる。つまり、マイクロミラーアレイ1Aは、入力側の光ファイバの光信号を出力側の光ファイバにスイッチングする光スイッチとして機能させることが可能である。
【0016】
次に、マイクロミラーアレイ1Aの製造方法について図4から図11を用いて説明する。
【0017】
まず、図4に示すように、基板3上に支持部4及び可動板5を設けてミラー基部10を形成する。ミラー基部10は、従来公知のDMDを形成する手法に基づき製造することができる。なお、DMDにおける可動ミラーが、本実施形態での可動板5となる。DMDであれば可動ミラーに反射面を形成するが、本実施形態の可動板5には反射面を形成する必要はない。
【0018】
次に、図5に示すように、可動板5の上面を基板3に対して平行に配した状態で、第一保護膜(固定用保護膜)30となるレジスト膜用の樹脂を塗布し、可動板5の上面とほぼ面一となる第一保護膜30を形成する。
この第一保護膜30は、マイクロミラーアレイ1Aを製造する過程で、ミラー基部10の可動板5が傾動してしまわないように、可動板5と支持部4を一時的に固定するための保護膜である。なお、可動板5の上面に第一保護膜30が成膜されてしまう場合には、可動板5と第一保護膜30の表面が面一となるように研削するなどして第一保護膜30を除去し、可動板5の上面を露出させるようにする。
【0019】
次に、図6に示すように、スパッタ等の気相堆積法によって、可動板5の上面と第一保護膜30を覆う電解めっき用シード層6を形成する。
【0020】
次に、図7に示すように、電解めっき用シード層6の上に第二保護膜(金属柱形成用保護膜)40となる、例えばネガ型のフォトレジスト膜を成膜し、所定のパターニングを施すことで、金属柱20を形成する位置であって可動板5に対応する位置に開口40aを形成する。この開口40aから可動板5の上面に相当する電解めっき用シード層6部分が露出するようになっている。
この開口40aは、シード層6から離間するほど幅が広く、上方に向かって開口が広がる形状を有している。なお、フォトレジスト膜を露光する際の露光条件を最適化することによって、開口40aの断面が所望のテーパ形状となる第二保護膜40を形成することができる。
【0021】
次に、図8に示すように、電解めっき用シード層6を陰極とする電解めっきによって、第二保護膜40の開口40a内に銀メッキを施し、銀製の金属柱20を形成する。なお、金属柱20を銀で形成することに限らず、その他の銀色を呈する金属(例えば、ニッケル、クロム、アルミニウム、鉄など)で形成してもよい。
【0022】
次に、図9に示すように、第二保護膜40と金属柱20の表面が略面一となるように研削して、金属柱20の上端面20aを研磨する。
次に、図10に示すように、第二保護膜40を除去する。なお、金属柱20は、第二保護膜40に形成された開口40aの形状に対応し、その上端面20aが可動板5の上面側よりも広い形状に形成されている。
【0023】
次に、図11に示すように、金属柱20が形成されていない部分の電解めっき用シード層6を除去する。なお、このとき金属柱20の一部もエッチングされるが、電解めっき用シード層6と比較して充分に厚いため、金属柱20の形状変化はほとんどない。但し、金属柱20の上端面20aの平滑性が乱れることがあるので、電解めっき用シード層6を除去した後に金属柱20の上端面20aを研磨し直す。そして、金属柱20の上端面20aを研磨して鏡面加工を施し、その上端面20aを光反射面2に形成する。
ここで、金属柱20の上端面20aを研磨する際、ミラー基部10における可動板5及び支持部4はその周囲が第一保護膜30で覆われて保護されているため、その研磨時に支持部4にかかる力学的負担が軽減されるので、支持部4が損傷してしまうことはなく、可動板5を傾動させる機能に支障をきたさないようになっている。
【0024】
その後、第一保護膜30を除去し、基板3の表面を露出させるように支持部4と可動板5の固定を解除して、金属柱20が形成された可動板5が傾動可能となるようにして、図2、図3に示すマイクロミラーアレイ1Aが製造される。
【0025】
このように、本実施形態によれば、基板3上に配列された複数の可動板5に光反射面2を一括して形成することができるので、より容易にマイクロミラーアレイ1Aを製造することができる。
特に、可動板5にメッキを施して形成した金属柱20の上端面20aを研磨することで光反射面2を形成することができるので、可動板5にメッキを施す金属材料を変えることで、所望する任意の金属材料からなる光反射面2を形成することができる。
また、第二保護膜40の開口40aの断面形状を所望する形状にパターニングすることによって、所望する任意の形状を呈する光反射面2を形成することができる。
【0026】
具体的に、光反射面2を有する金属柱20は、第二保護膜40の開口40a内にメッキを施すことで形成される部材であるので、メッキを施す金属材料を変えることで金属柱20の素材を変化させて、光反射面2の光沢を変化させることができる。
また、第二保護膜40の開口40aの形状を変えることで金属柱20の形状(断面形状)を変化させて、光反射面2の形状を変化させることができる。
【0027】
例えば、第二保護膜40を厚く形成することで、金属柱20を高く形成して、基板3や可動板5から離間した位置に光反射面2を形成することができる。また、第二保護膜40を薄く形成することで、金属柱20を低く形成して、基板3や可動板5に近接した位置に光反射面2を形成することができる。
【0028】
また、第二保護膜40の開口40aを広く大きくするほど、広く大きな光反射面2を形成することができ、光反射面2による光の反射効率を向上させることができる。
なお、第二保護膜40の開口40aが、シード層6から離間するほど幅が広く、上方に向かって開口が広がる形状とした場合、開口40a内に形成した金属柱20を第二保護膜40とともに研削する程度を調整することによって、金属柱20の上端面20aの大きさを段階的に調節することができる。例えば、金属柱20及び第二保護膜40を浅く(薄く)研削するほど金属柱20の上端面20aを大きくすることができ、また、金属柱20及び第二保護膜40を深く(厚く)研削するほど金属柱20の上端面20aを小さくすることができる。
【0029】
つまり、本実施形態のように、光反射面2を形成する金属柱20を開口40a内にメッキを施して製作する手法によれば、光反射面2の素材、色、光沢等を所望するものに容易に切り替えることができ、また、光反射面2の大きさ、形状等を所望するものに容易に切り替えることができる。
そして、DMDの可動ミラーに相当する可動板5とは異なる材料、異なる形状の金属柱20に応じて所望する光反射面2を形成することができる。
以上のように、所望する光反射面2を有するマイクロミラーアレイ1Aを容易に製造することができる。
【0030】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係るマイクロミラーアレイについて説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0031】
図12は、実施形態2に係るマイクロミラーアレイ1Bを示す断面図である。実施形態2においては、第二保護膜40の開口40a内に銅メッキを施し、銅製の金属柱20を形成している。
そして、第二保護膜40と金属柱20の表面が略面一となるように研削した後、その銅製の金属柱20の上端面に無電解めっきによってニッケルメッキを施し、ニッケル製の金属部材22を形成している。
次いで、第二保護膜40を除去し、金属柱20が形成されていない部分の電解めっき用シード層6を除去した後、金属部材22の表面を研磨して鏡面加工を施し、光反射面2を形成している。なお、金属部材22をニッケルで形成することに限らず、その他の銀色を呈する金属(例えば、銀、クロム、アルミニウム、鉄など)で形成してもよい。
【0032】
このように、金属柱20の上端面に設けた金属部材22の表面を研磨して光反射面2を形成することによって、容易にマイクロミラーアレイ1Bを製造することができる。
特に、銅製の金属柱20の上端面20aを光反射面とするにはその反射率が低いような場合、金属柱20の上端面20aに銀色を呈する金属(例えば、ニッケル)からなる金属部材22を設け、その金属部材22の表面に鏡面加工を施して、銀色の光反射面2を形成することで、好適な反射率の光反射面2を備えるマイクロミラーアレイ1Bを製造することができる。
【0033】
なお、金属柱20の上端面に金属部材22を形成することに限らず、第二保護膜40の開口40a内の下層側に銅メッキを施してなる金属柱20を形成し、さらに第二保護膜40の開口40a内の上層側であり先に形成された銅製の金属柱20上にニッケルメッキを施してなる金属部材22を形成してもよい。この金属部材22の表面に鏡面加工を施すことでも光反射面2を形成することが可能である。
【0034】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係るマイクロミラーアレイについて説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0035】
実施形態1において、第二保護膜40の開口40aを電解めっき用シード層6から離間するほど幅が広く、上方に向かって開口が広がるテーパ形状に形成することで、金属柱20の上端面20aをより広くするようにしたが、第二保護膜の開口をテーパ形状にしなくても、金属柱の上端面を広く形成することは可能である。
図13から図19を用いて、実施形態3のマイクロミラーアレイ1Cの製造方法について説明する。
【0036】
まず、DMDを形成する手法に基づいて、基板3上に支持部4及び可動板5を設けてミラー基部10を形成する(図4参照)。次いで、可動板5の上面を基板3に対して平行に配した状態で、第一保護膜30となるレジスト膜用の樹脂を塗布し、可動板5の上面とほぼ面一となる第一保護膜30を形成する。その際、可動板5の上面に第一保護膜30が成膜されてしまう場合にはその第一保護膜30を除去し、可動板5の上面を露出させるようにする(図5参照)。次いで、スパッタ等の気相堆積法によって、可動板5の上面と第一保護膜30を覆う電解めっき用シード層6を形成する(図6参照)。
【0037】
次に、図13に示すように、電解めっき用シード層6の上に第二保護膜の一部を成す下層保護膜41となるフォトレジスト膜を成膜し、所定のパターニングを施すことで、金属柱20を形成する位置であって可動板5に対応する位置に小開口41aを形成する。この小開口41aは可動板5の上面形状に対応しており、平面視した場合、例えば20〜40μm四方の矩形状を呈している。
【0038】
次に、図14に示すように、下層保護膜41上に第二保護膜の一部を成す上層保護膜42となるフォトレジスト膜を成膜し、所定のパターニングを施すことで、可動板5に対応する位置であって小開口41aと重なり、その小開口41aを露出させる部分に大開口42aを形成する。この大開口42aは光反射面の形状に対応しており、平面視した場合、例えば80〜100μm四方の矩形状を呈している。
そして、下層保護膜41と上層保護膜42が積層されてなる第二保護膜には、小開口41aと大開口42aとが重なって連なった断面視略T字形状を呈する開口が形成されており、上層保護膜42の大開口42a内に下層保護膜41の小開口41aが収まり、その小開口41aの底部から可動板5の上面に相当するシード層6部分が露出している。
【0039】
次に、図15に示すように、電解めっき用シード層6を陰極とする電解めっきによって、小開口41aと大開口42aとが連なった開口内に銀メッキを施し、銀製の金属柱21を形成する。なお、金属柱21を銀で形成することに限らず、その他の銀色を呈する金属(例えば、ニッケル、クロム、アルミニウム、鉄など)で形成してもよい。
【0040】
次に、図16に示すように、上層保護膜42と金属柱21の表面が略面一となるように研削して、金属柱21の上端面21aを研磨する。
次に、図17に示すように、第二保護膜である上層保護膜42と下層保護膜41を除去する。なお、金属柱21は、小開口41aと大開口42aとが連なった開口の形状に対応して側面視略T字形状を呈し、その上端面21aが可動板5の上面側よりも広い形状に形成されている。
【0041】
次に、図18に示すように、金属柱21が形成されていない部分の電解めっき用シード層6を除去する。なお、このとき金属柱21の一部もエッチングされるが、電解めっき用シード層6と比較して充分に厚いため、金属柱21の形状変化はほとんどない。但し、金属柱21の上端面21aの平滑性が乱れることがあるので、電解めっき用シード層6を除去した後に金属柱21の上端面21aを研磨し直す。そして、金属柱21の上端面21aを研磨して鏡面加工を施し、その上端面21aを光反射面2に形成する。
ここで、金属柱21の上端面21aを研磨する際、ミラー基部10における可動板5及び支持部4はその周囲が第一保護膜30で覆われて保護されているため、その研磨時に支持部4にかかる力学的負担が軽減されるので、支持部4が損傷してしまうことはなく、可動板5を傾動させる機能に支障をきたさないようになっている。
【0042】
次に、図19に示すように、第一保護膜30を除去し、基板3の表面を露出させるように支持部4と可動板5の固定を解除して、金属柱21が形成された可動板5が傾動可能となるようにして、マイクロミラーアレイ1Cが製造される。
そして、マイクロミラーアレイ1Cは、ミラー基部10の可動板5に設けられた金属柱21の上端面21aに形成された光反射面2が複数配列されてなる構成を有している。
【0043】
このように、本実施形態によれば、第二保護膜の開口をテーパ形状にしなくても、開口の大きさの異なる2層の保護膜(下層保護膜41、上層保護膜42)を形成することで、側面視略T字形状を呈し、その上端面21aが可動板5の上面側よりも広い形状の金属柱21を形成することができ、可動板5の上面より広いサイズの光反射面2を有するマイクロミラーアレイ1Cを製造することができる。
そして、光反射面2を形成する金属柱21を開口(小開口41a、大開口42a)内にメッキを施して製作する手法によれば、光反射面2の素材、色、光沢等を所望するものに容易に変更することができ、また、光反射面2の大きさ、形状等を所望するものに容易に変更することができる。
そして、所望する光反射面2を有するマイクロミラーアレイ1Cを容易に製造することが可能になる。
【0044】
なお、金属柱21を銀のみで形成することに限らず、第二保護膜の開口内の下層側に銅メッキを施し、さらに第二保護膜の開口内の上層側であって、先に形成された銅メッキ上にニッケルメッキを施すことで、2種類の金属材料からなる2層の金属柱を形成してもよい。この金属柱の上層の表面に鏡面加工を施すことでも光反射面2を形成することが可能である。
【0045】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0046】
1A、1B、1C マイクロミラーアレイ
2 光反射面
3 基板
4 支持部
5 可動板
6 電解めっき用シード層
10 ミラー基部
20、21 金属柱
20a、21a 上端面
22 金属部材
30 第一保護膜(固定用保護膜)
40 第二保護膜(金属柱形成用保護膜)
40a 開口
41 下層保護膜(第二保護膜)
41a 小開口
42 上層保護膜(第二保護膜)
42a 大開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に傾動可能に支持された複数の可動板の上面側を露出させる開口が設けられた金属柱形成用保護膜を形成する金属柱形成用保護膜形成工程と、
前記開口内に金属柱を形成する金属柱形成工程と、
前記金属柱形成用保護膜とともに前記金属柱を研削して、その金属柱の上端面を研磨する研磨工程と、
前記金属柱形成用保護膜を除去する金属柱形成用保護膜除去工程と、
を備えることを特徴とするマイクロミラーアレイの製造方法。
【請求項2】
前記基板上に複数の可動板を固定する固定用保護膜を形成する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のマイクロミラーアレイの製造方法。
【請求項3】
前記固定用保護膜を除去する工程をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のマイクロミラーアレイの製造方法。
【請求項4】
前記研磨工程において、前記金属柱の上端面を研磨することで、前記金属柱の上端面に鏡面加工を施し、その上端面を光反射面に形成することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のマイクロミラーアレイの製造方法。
【請求項5】
前記金属柱の上端面に金属部材を設け、その金属部材の表面を研磨して光反射面に形成する工程を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のマイクロミラーアレイの製造方法。
【請求項6】
前記固定用保護膜と前記金属柱形成用保護膜との間に電解めっき用シード層を形成するシード層形成工程をさらに備え、
前記金属柱形成工程は、前記電解めっき用シード層を陰極とする電解めっきによって、前記金属柱形成用保護膜の開口内に金属柱を形成することを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載のマイクロミラーアレイの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のマイクロミラーアレイの製造方法によって製造されることを特徴とするマイクロミラーアレイ。
【請求項1】
基板に傾動可能に支持された複数の可動板の上面側を露出させる開口が設けられた金属柱形成用保護膜を形成する金属柱形成用保護膜形成工程と、
前記開口内に金属柱を形成する金属柱形成工程と、
前記金属柱形成用保護膜とともに前記金属柱を研削して、その金属柱の上端面を研磨する研磨工程と、
前記金属柱形成用保護膜を除去する金属柱形成用保護膜除去工程と、
を備えることを特徴とするマイクロミラーアレイの製造方法。
【請求項2】
前記基板上に複数の可動板を固定する固定用保護膜を形成する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のマイクロミラーアレイの製造方法。
【請求項3】
前記固定用保護膜を除去する工程をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のマイクロミラーアレイの製造方法。
【請求項4】
前記研磨工程において、前記金属柱の上端面を研磨することで、前記金属柱の上端面に鏡面加工を施し、その上端面を光反射面に形成することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のマイクロミラーアレイの製造方法。
【請求項5】
前記金属柱の上端面に金属部材を設け、その金属部材の表面を研磨して光反射面に形成する工程を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のマイクロミラーアレイの製造方法。
【請求項6】
前記固定用保護膜と前記金属柱形成用保護膜との間に電解めっき用シード層を形成するシード層形成工程をさらに備え、
前記金属柱形成工程は、前記電解めっき用シード層を陰極とする電解めっきによって、前記金属柱形成用保護膜の開口内に金属柱を形成することを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載のマイクロミラーアレイの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のマイクロミラーアレイの製造方法によって製造されることを特徴とするマイクロミラーアレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−164262(P2011−164262A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25336(P2010−25336)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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