説明

マイクロメカニカル共振器

【課題】基板9上に両端部が支持された共振子5と、該共振子5に対向して配置された2つの電極1、2とを具え、一方の電極1と共振子5とが互いに対向して、1或いは複数のギャップ部が形成されると共に、他方の電極2と共振子5とが互いに対向して、1或いは複数のギャップ部が形成されているマイクロメカニカル共振器において、低インピーダンス化を図る。
【解決手段】本発明に係るマイクロメカニカル共振器において、共振子5は、基板9上に、互いに並列の位置関係に配置された複数本の共振ビーム52、53、54を具え、各共振ビームの両端部が基板9上に支持されると共に、隣接する共振ビームどうしが、それぞれの振動の腹の位置若しくはその近傍位置にて互いに連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された高周波信号を機械的な信号に変換した後に再び高周波信号に変換して出力する共振器に関し、特に、半導体分野における微細加工技術を利用して作製されるマイクロメカニカル共振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体分野における微細加工技術を利用して、微細な機械構造を電子回路と一体化して形成する、所謂マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)技術が開発されており、フィルターや共振器への応用が検討されている。
【0003】
図24は、MEMS技術を用いた従来のマイクロメカニカル共振器を表わしている(非特許文献1)。該マイクロメカニカル共振器は、図示の如く基板(96)上に共振子(90)を具え、該共振子(90)は、角柱状の共振ビーム(92)と、該共振ビーム(92)の両端部を支持すべき4本の角柱状の支持ビーム(91)〜(91)とから構成されており、各支持ビーム(91)の基端部はそれぞれアンカー(93)によって基板(96)上に固定されている。これによって、共振子(90)は、基板(96)の表面から僅かに浮上した位置に保持されている。
【0004】
又、共振子(90)の共振ビーム(92)の両側には、共振ビーム(92)の中央部を挟んで入力電極(94)と出力電極(95)が配備され、共振ビーム(92)と両電極(94)95)との間に所定のギャップ部Gが形成されている。
そして、入力電極(94)には高周波電源(6)が接続されると共に、1つのアンカー(93)には主電圧電源(7)が接続されている。
【0005】
アンカー(93)を介して共振子(90)に直流電圧Vpを印加した状態で、入力電極(94)に高周波信号Viを入力すると、入力電極(94)と共振ビーム(92)との間にギャップ部Gを介して交番静電気力が発生し、該静電気力によって共振子(90)が基板(96)の表面と平行な面内で振動する。この共振子(90)の振動により、共振ビーム(92)と両電極(95)(94)との間に形成される静電容量が変化し、該静電容量の変化が出力電極(95)から高周波信号Ioとして出力される。
【0006】
又、図25は、従来の他のマイクロメカニカル共振器を表わしている(非特許文献2、特許文献1)。該マイクロメカニカル共振器は、基板(107)上に平板状の共振子(100)を具え、該共振子(100)は、両端部と中央部の3カ所に支持部(103)を有すると共に、隣接する2つの支持部(103)(103)間に共振ビーム(102)を有している。各支持部(103)には支持ビーム(101)が突設され、各支持ビーム(101)の基端部はそれぞれアンカー(104)によって基板(107)に固定されている。これによって、共振子(100)は、基板(107)の表面から僅かに浮上した位置に保持されている。
【0007】
又、基板(107)上には、共振子(100)の2つの共振ビーム(102)(102)との間に、入力電極(106)と出力電極(105)が配備され、一方の共振ビーム(102)と入力電極(106)の間、並びに他方の共振ビーム(102)と出力電極(105)との間に、所定のギャップ部が形成されている。
そして、入力電極(106)には高周波電源(6)が接続されると共に、1つのアンカー(104)には主電圧電源(7)が接続されている。
【0008】
アンカー(104)を介して共振子(100)に直流電圧Vpを印加した状態で、入力電極(106)に高周波信号Viを入力すると、入力電極(106)と共振ビーム(102)との間にギャップ部を介して交番静電気力が発生し、該静電気力によって共振子(100)が基板(107)の表面と垂直な面内で振動する。この共振子(100)の振動により、共振子(100)と両電極(106)(105)との間に形成される静電容量が変化し、該静電容量の変化が出力電極(105)から高周波信号Ioとして出力される。
【0009】
【非特許文献1】W.-T.Hsu,J.R.Clark, and C.T.-C.Nguyen,“Q-optimized lateral freee-free beam micromechanical resonators,”Digest of Technical papers, the 11th Int. Conf. on Solid-State Sensors & Actuators (Transducers’01), Munich, Germany, June 10-14,2001, pp.1110-1113.
【非特許文献2】M.U.Demirci and C.T.-C.Nguyen,“Higher-mode freee-free beam micromechanical resonators,”Proceedings,2003 IEEE Int. Frequency Control Symposium, Tampa, May5-8, 2003, pp.810-818.
【特許文献1】特表2002-535865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の如きマイクロメカニカル共振器においては、図26(a)に示す1次の共振モードの他、同図(b)に示す2次の共振モードや同図(c)に示す3次の共振モード等の高次の共振モードが混在して発生するが、特にマイクロメカニカル共振器をGHz帯で動作する高周波無線通信機器に応用する場合、製造時の加工を容易にするため、共振器のサイズを大きく出来る、高次の共振モードを利用する必要がある。しかしながら、図27に示す如く、1次の共振モードの強度が最も高く、3次の共振モード、5次の共振モードと、高次になるほど強度が低くなるため、応用が進んでいないのが実状である。
【0011】
そこで本発明者らは上記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、意図的に高次の共振モードを発生させることが可能なマイクロメカニカル共振器の開発に成功した。
図17及び図18は、該マイクロメカニカル共振器の一例を示している。図示の如く、該マイクロメカニカル共振器は、基板(9)上に両端部が支持された共振ビーム(52)と、該共振ビーム(52)を挟んで両側に配置された2つの電極(1)(2)とを具え、共振ビーム(52)の両端部間にて、一方の電極(1)と共振ビーム(52)とが互いに対向して、1或いは複数のギャップ部が形成されると共に、他方の電極(2)と共振ビーム(52)とが互いに対向して、1或いは複数のギャップ部が形成され、高周波信号の入力により何れか一方若しくは両方の電極(1)(2)と共振ビーム(52)との間に交番静電気力を発生させて共振ビーム(52)に振動を与え、何れか一方若しくは両方の電極(1)(2)と共振ビーム(52)との間の静電容量の変化を高周波信号として出力するものである。
【0012】
該マイクロメカニカル共振器によれば、ギャップ部の数に応じた3次以上の高次の共振モードで共振ビーム(52)が共振し、高い周波数の出力信号が得られることになる。従って、出力される高周波信号の周波数を挺倍する必要がないため、特に、低位相ノイズが必要とされる装置、例えばリモートキーレスエントリーシステムや、スペクトラム拡散通信やソフトウエア無線等のRF無線装置に有効である。
【0013】
ところで、この様な装置への応用を考慮した場合、マイクロメカニカル共振器のインピーダンスを低減させて損失を少しでも抑えることが要求される。
そこで本発明の目的は、発明者らが開発したマイクロメカニカル共振器を更に低インピーダンスなものとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るマイクロメカニカル共振器は、基板(9)上に両端部が支持された共振子(5)と、該共振子(5)に対向して配置された2つの電極(1)(2)とを具え、一方の電極(1)と共振子(5)とが互いに対向して、1或いは複数のギャップ部が形成されると共に、他方の電極(2)と共振子(5)とが互いに対向して、1或いは複数のギャップ部が形成され、高周波信号の入力により何れか一方若しくは両方の電極(1)(2)と共振子(5)との間に交番静電気力を発生させて共振子(5)に振動を与え、何れか一方若しくは両方の電極(1)(2)と共振子(5)との間の静電容量の変化を高周波信号として出力するものである。
ここで、前記共振子(5)は、基板(9)上に、互いに並列の位置関係に配置された複数本の共振ビームを具え、各共振ビームの両端部が基板上に支持されると共に、隣接する共振ビームどうしが、それぞれの振動の腹の位置若しくはその近傍位置にて互いに連結されている。
【0015】
本発明に係るマイクロメカニカル共振器においては、前記共振子(5)を構成する複数本の共振ビームに対し、これらの共振ビームが配列されている面に対して垂直な方向に、若しくは平行な方向に静電気力を作用させる。
【0016】
上記本発明のマイクロメカニカル共振器によれば、共振子が1本の共振ビームから構成されている複数のマイクロメカニカル共振器を単に電気的に並列接続した場合に比べて、共振子(5)を構成する各共振ビームの機械的振幅が増大し、Q値が増大することが、実験的に確認された。
【0017】
具体的には、前記共振子(5)を構成する複数本の共振ビームは、それぞれの共振周波数が互いに異なることとなる形状寸法を有している。例えば、前記共振子(5)を構成する複数本の共振ビームは、それぞれの長さが互いに異なっている。
該具体的構成によれば、よりQ値が増大することが、実験的に確認された。
【0018】
ここで、互いに隣接する2本の共振ビームの内、短い方の共振ビームの長さに対する長い方の共振ビームの長さの比を、1.2未満とすれば、共振子(5)を同じサイズの複数本の共振ビームによって構成した場合に比べて、Q値が増大することが、実験的に確認された。
更に、互いに隣接する2本の共振ビームの内、短い方の共振ビームの長さに対する長い方の共振ビームの長さの比を、約1.01〜約1.02の範囲とすれば、Q値の最大化を図ることが出来る。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るマイクロメカニカル共振器によれば、Q値を増大させてインピーダンスの低減を図ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明に係るマイクロメカニカル共振器は、図1に示す如く、シリコン或いはガラスからなる基板(9)上に、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる共振子(5)が配備され、その両端部はシリコン、アルミニウム等の導電材料からなるアンカー(3)(3)によって基板(9)上に支持されている。これによって、共振子(5)は、基板(9)の表面から僅かに浮上した位置に保持されている。
【0021】
共振子(5)は、互いに並列の位置関係に配置された3本の共振ビーム(52)(53)(54)を具え、各共振ビームの両端部がアンカー(3)(3)に連結されている。又、3本の共振ビーム(52)(53)(54)は、隣接するどうしがビーム中央部にてシリコン、アルミニウム等の導電材料からなる連結ビーム(41)により連結されている。
【0022】
共振子(5)の3本の共振ビーム(52)(53)(54)を挟んで基板(9)側の下方には、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる2本の電極(1)(1)が配備されると共に、基板(9)とは反対側の上方には、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる1本の電極(2)が配備され、これらの電極(1)(1)(2)は基板(9)上で互いに連結されている。下方の各電極(1)には、3本の共振ビーム(52)(53)(54)を横切る電極突出部(16)が形成されると共に、上方の電極(2)には3本の共振ビーム(52)(53)(54)を横切る電極突出部(26)が形成され、これらの電極突出部(16)(26)(26)は食い違いの位置関係で交互に等間隔で並んでいる。
電極(1)(1)(2)には高周波電源(6)が接続され、一方のアンカー(3)には主電圧電源(7)が接続されている。
【0023】
主電圧電源(7)からアンカー(3)を介して共振子(5)に直流電圧Vpを印加した状態で、高周波電源(6)から電極(1)(1)(2)に高周波信号Viを入力すると、3本の共振ビーム(52)(53)(54)と電極突出部(16)(26)(26)の間にギャップ部を介して交番静電気力が発生し、該静電気力によって3本の共振ビーム(52)(53)(54)が基板(9)の表面と垂直な面内で振動する。
この共振ビーム(52)(53)(54)の振動により、共振ビーム(52)(53)(54)と電極突出部(16)(26)(26)の間の静電容量が変化し、該静電容量の変化が該アンカー(3)から高周波信号Ioとして出力される。
【0024】
ここで、共振子(5)を構成する3本の共振ビーム(52)(53)(53)は、それぞれ3次共振モードで振動するが、該振動の3つの腹の位置の内、中央の腹の位置にて連結ビーム(41)により互いに機械的に連結されているので、共振子(5)は全体として1つの共振周波数で共振することになる。
【0025】
上記マイクロメカニカル共振器は、3本の共振ビーム(52)(53)(54)の各ビームを独立に具えた3つの共振器要素を互いに並列関係で機械的に連結した構成を有しているが、本発明のマイクロメカニカル共振器(連結型マイクロメカニカル共振器)は、1つの共振器要素からなるマイクロメカニカル共振器(単独型マイクロメカニカル共振器)よりも大きな機械的振幅で振動することになる。
そして、3つの共振器要素によって得られる出力電流を足し合わせた電流値が高周波信号として出力されることになる。
【0026】
図2は、3つの単独型マイクロメカニカル共振器の周波数特性Pa、Pb、Pcと、該3つの単独型マイクロメカニカル共振器の共振器要素を互いに連結してなる連結型マイクロメカニカル共振器の周波数特性Pmとを比較したものである。
図示の如く、本発明の連結型マイクロメカニカル共振器の周波数特性Pmの機械的振幅の大きさは、3つの単独型マイクロメカニカル共振器の周波数特性Pa、Pb、Pcの何れの機械的振幅よりも大きくなっている。
従って、本発明の連結型マイクロメカニカル共振器によれば、3つの単独型マイクロメカニカル共振器によって得られる3つの出力電流を足し合わせた電流値よりも大きな出力電流が得られることとなり、共振器全体のインピーダンスを低下させることが出来る。
【0027】
次に、図3乃至図16を用いて、本発明の連結型マイクロメカニカル共振器の種々の実施例と、各実施例におけるコンピュータシミュレーションを用いたモード解析及び静的解析の結果について説明する。
【0028】
第1実施例
図3に示す第1実施例においては、2本の共振ビーム(52)(53)を基板上に基板と平行に配列し、これらの共振ビーム(52)(53)を上面及び下面の中央位置にて連結ビーム(41)(41)により互いに連結して、横型2連結の共振子(5)が構成されている。
該共振子(5)においては、図4に示す如く、両共振ビーム(52)(53)の配列方向に、各共振ビーム(52)(53)の中央部と両端部に互いに逆向きの静電気力P1、P2を作用させて、図中に点線で示す様に両共振ビーム(52)(53)に3次の共振モードを発生させる。
ここで、共振ビーム(52)(53)(54)の中央部に作用させる静電気力P1は、共振ビーム(52)(53)(54)の両端部に作用させる静電気力P2よりも小さく設定されている。
【0029】
コンピュータシミュレーションにおいては、図5に示す様に、共振ビームに生じる3次共振モードの振動の2つの節の間隔を単位長さとして、5μmの単位長さを有する第1の共振ビームと、該共振ビームの単位長さを徐々に変化させた第2の共振ビームの組み合わせにおいて、連結型マイクロメカニカル共振器のQ値の変化を調べた。
その結果、図示の如く、2つの共振器要素のサイズが同じ連結型マイクロメカニカル共振器のQ値は、単独型マイクロメカニカル共振器のQ値(図中の「1個の場合」)よりも大きなものとなった。
【0030】
更に、2つの共振器要素のサイズが異なる連結型マイクロメカニカル共振器のQ値は、2つの共振器要素のサイズが同じ連結型マイクロメカニカル共振器のQ値に対し、第2の共振ビームの単位長さが5μm〜5.1μmの範囲では、より大きな値となり、更に第2の共振ビームの単位長さが5.06μmにて最大値となった。
従って、2本の共振ビームの内、短い方の共振ビームの長さに対する長い方の共振ビームの長さの比は、1.02未満であることが好ましく、更に、短い方の共振ビームの長さに対する長い方の共振ビームの長さの比が約1.012であることが最も好ましいということが出来る。
【0031】
第2実施例
図6に示す第2実施例においては、3本の共振ビーム(52)(53)(54)を基板上に基板と平行に配列し、これらの共振ビーム(52)(53)(54)を上面及び下面の中央位置にて連結ビーム(41)(41)により互いに連結して、横型3連結の共振子(5)が構成されている。
該共振子(5)においては、図7に示す如く、3本の共振ビーム(52)(53)(54)の配列方向に、各共振ビーム(52)(53)(54)の中央部と両端部に互いに逆向きの静電気力P1、P2を作用させて、図中に点線で示す様に3本の共振ビーム(52)(53)(54)に3次の共振モードを発生させる。
ここで、共振ビーム(52)(53)(54)の中央部に作用させる静電気力P1は、共振ビーム(52)(53)(54)の両端部に作用させる静電気力P2よりも小さく設定されている。
【0032】
コンピュータシミュレーションにおいては、図8に示す様に、5μmの単位長さを有する第1の共振ビームAと、該共振ビームの単位長さを徐々に変化させた第2の共振ビームBと、各共振ビームBに対して同じだけ単位長さを変化させた第3の共振ビームCとの組み合わせを有する連結型マイクロメカニカル共振器のQ値の変化を調べた。
その結果、図示の如く、3つの共振器要素のサイズが同じ連結型マイクロメカニカル共振器のQ値は、単独型マイクロメカニカル共振器のQ値(図中の「1個の場合」)よりも大きなものとなった。
【0033】
更に、3つの共振器要素のサイズが異なる連結型マイクロメカニカル共振器のQ値は、3つの共振器要素のサイズが同じ連結型マイクロメカニカル共振器のQ値に対し、第2の共振ビームの単位長さが5μm〜5.1μmの範囲であって、且つ第3の共振ビームの単位長さが5μm〜5.2μmの範囲では、より大きな値となり、更に第2の共振ビームの単位長さが5.09μm、第3の共振ビームの単位長さが5.18μmで最大値となった。
従って、隣接する2本の共振ビームの内、短い方の共振ビームの長さに対する長い方の共振ビームの長さの比は、1〜1.02の範囲が好ましく、更に、隣接する2本の共振ビームの内、短い方の共振ビームの長さに対する長い方の共振ビームの長さの比が約1.018であることが最も好ましいということが出来る。
【0034】
第3実施例
図9に示す第3実施例においては、3本の共振ビーム(52)(53)(54)を基板上に基板と垂直に配列し、各共振ビームの長さ方向の中央位置にて連結ビーム(41)(41)により互いに連結して、縦型3連結の共振子(5)が構成されている。
該共振子(5)においては、図10に示す如く、3本の共振ビーム(52)(53)(54)の配列方向と直交する向きに、各共振ビーム(52)(53)(54)の中央部と両端部に互いに逆向きの静電気力P1、P2を作用させて、図中に点線で示す様に3本の共振ビーム(52)(53)(54)に3次の共振モードを発生させる。
ここで、共振ビーム(52)(53)(54)の中央部に作用させる静電気力P1は、共振ビーム(52)(53)(54)の両端部に作用させる静電気力P2よりも小さく設定されている。
【0035】
コンピュータシミュレーションにおいては、図11に示す様に、5μmの単位長さを有する第1の共振ビームAと、該共振ビームの単位長さを徐々に変化させた第2の共振ビームBと、各共振ビームBに対して同じだけ単位長さを変化させた第3の共振ビームCとの組み合わせを有する連結型マイクロメカニカル共振器のQ値の変化を調べた。
【0036】
その結果、3つの共振器要素のサイズが異なる連結型マイクロメカニカル共振器のQ値は、3つの共振器要素のサイズが同じ連結型マイクロメカニカル共振器のQ値に対し、第2の共振ビームの単位長さが5μm〜5.12μmの範囲であって、且つ第3の共振ビームの単位長さが5μm〜5.24μmの範囲では、より大きな値となり、更に第2の共振ビームの単位長さが5.09μm、第3の共振ビームの単位長さが5.18μmで最大値となった。
従って、隣接する2本の共振ビームの内、短い方の共振ビームの長さに対する長い方の共振ビームの長さの比は、1〜1.024の範囲が好ましく、更に、隣接する2本の共振ビームの内、短い方の共振ビームの長さに対する長い方の共振ビームの長さの比が約1.018であることが最も好ましいということが出来る。
【0037】
第4実施例
図12(a)(b)はそれぞれ、縦型2連結の共振子と縦型3連結の共振子において、各共振ビームの中央部に作用させる静電気力P1と各共振ビームの両端部に作用させる静電気力P2を均等とした場合のQ値の変化を表わしている。
図12(a)に示す如く縦型2連結の共振子においては、隣接する2本の共振ビームの内、短い方の共振ビームの長さに対する長い方の共振ビームの長さの比は、1〜1.024の範囲が好ましく、更に、短い方の共振ビームの長さに対する長い方の共振ビームの長さの比が約1.024であることが最も好ましいということが出来る。
又、図12(b)に示す如く縦型3連結の共振子においては、隣接する2本の共振ビームの内、短い方の共振ビームの長さに対する長い方の共振ビームの長さの比は、1〜1.024の範囲が好ましく、更に、短い方の共振ビームの長さに対する長い方の共振ビームの長さの比が約1.018であることが最も好ましいということが出来る。
【0038】
図12に示す結果から、本発明の連結型マイクロメカニカル共振器においては、各共振ビームの中央部に作用させる静電気力P1よりも各共振ビームの両端部に作用させる静電気力P2を大きく設定した場合に限らず、これらの静電気力P1、P2を均等とした場合にも同様の効果を得ることが出来ると言える。
【0039】
第5実施例
図13〜図15は、縦型3連結の共振子を有するマイクロメカニカル共振器において、共振子を1次共振モードで振動させる実施例を示している。図16(a)(b)はそれぞれ、縦型2連結の共振子と縦型3連結の共振子において、静電気力を各共振ビームの中央部に作用させ、共振子を1次共振モードで振動させた場合のQ値の変化を表わしている。
図13は各共振ビームの寸法形状を表わしている。図14は、実験番号毎に、タイプAの共振ビーム(52)、タイプBの共振ビーム(53)及びタイプCの共振ビーム(54)について、各ビームの単位長さLを表わしている。又、図15は、縦型3連結の共振子における連結ビーム(41)の形状寸法と、外力の位置及び大きさを表わしている。
尚、縦型2連結の共振子では、タイプAの共振ビーム(52)とタイプBの共振ビーム(53)のみを用いた。
【0040】
縦型2連結の共振子では、図16(a)の如く、Q値は、タイプBの共振ビーム(53)の単位長さLが5μm〜6.8μmの範囲で増大し、約6.2μmでQ値が最大となっている。又、縦型3連結の共振子では、図16(b)の如く、Q値は、タイプCの共振ビーム(53)の単位長さLが5μm〜6.6μmの範囲で増大し、約5.8μmでQ値が最大となっている。
従って、本発明に係る連結型のマイクロメカニカル共振器においては、3次以上の高次の共振モードで各共振ビームを振動させる構成に限らず、1次の共振モードで各共振ビームを振動させる構成であっても同様の効果を得ることが出来ると言える。
【0041】
図17〜図23は、本発明に係る連結型マイクロメカニカル共振器を構成すべき高次モード発生のための1つの共振器要素の具体的な構成例を示している。尚、以下の説明において共振子、各種電極及び電源は、複数の共振器要素に共通の構成であって、各共振器要素の共振ビームは、共振ビーム(52)で代表している。
第1構成例
図17及び図18に示す共振器要素においては、シリコン或いはガラスからなる基板(9)上に、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる共振子(5)が配備されると共に、該共振子(5)の両側には、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる一対の駆動電極(1)(2)が配備されている。
【0042】
共振子(5)は、長さが例えば10〜20μmの角柱状の共振ビーム(52)と、該共振ビーム(52)の両端部に互いに平行に突設された一対の支持ビーム(51)(51)とを具えて、全体がH字状に形成されている。共振ビーム(52)には、その長手方向の7カ所にくびれ部が等間隔に凹設されている。各支持ビーム(51)の両端部は、それぞれシリコン、アルミニウム等の導電材料からなるアンカー(3)によって、基板(9)の表面に固定されており、これによって、共振子(5)は、基板(9)の表面から僅かに浮上した位置に保持されている。
又、共振子(5)の両支持ビーム(51)(51)の外側には、それぞれ支持ビーム(51)の中央部に対向して、一対のバイアス電極(4)(4)が配備されており、支持ビーム(51)とバイアス電極(4)の間には所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップが形成されている。
【0043】
一対の駆動電極(1)(2)はそれぞれ、基部(11)(21)と、該基部(11)(21)から共振ビーム(52)へ向けて等間隔に突設された3つの電極突出部(10)(20)とを具えて、全体が櫛歯状を呈している。
一方の駆動電極(1)の3つの電極突出部(10)(10)(10)と他方の駆動電極(2)の3つの電極突出部(20)(20)(20)はそれぞれ、基板(9)の表面と平行な面内で、共振ビーム(52)の非くびれ部と交互に対向して、共振ビーム(52)の非くびれ部との間に所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップ部Gを形成している。
【0044】
図18に示す如く、一対の駆動電極(1)(2)には高周波電源(6)が接続され、1つのアンカー(3)には主電圧電源(7)が接続されている。又、一対のバイアス電極(4)(4)にはバイアス電圧電源(8)が接続されている。
斯くして、図17及び図18に示す共振器要素は、高周波電源(6)から2つの駆動電極(1)(2)に高周波信号が入力されて、1つのアンカー(3)から高周波信号Ioが出力される1ポート型の共振器要素を構成している。
【0045】
上記の共振器要素において、アンカー(3)を介して共振子(5)に直流電圧Vpを印加した状態で、両駆動電極(1)(2)に高周波信号を入力すると、電極突出部(10)(20)と支持ビーム(51)の非くびれ部との間に静電気力が発生し、この静電気力によって、共振子(5)の共振ビーム(52)は、その両端部を支持部(50)(50)として、基板(9)の表面と平行な面内で振動することになる。
電極突出部(10)(20)と共振ビーム(52)の非くびれ部との間に発生させるべき静電気力は、上述の如く、共振ビーム(52)の中央部近傍のギャップ部で最も小さく且つ両端部近傍のギャップ部で最も大きくなる様に設定される。
【0046】
共振子(5)の共振ビーム(52)は、くびれ部が振動の節、非くびれ部が振動の腹となって振動し、この振動に伴って、共振ビーム(52)と両駆動電極(1)(2)との間に形成される静電容量が変化し、該静電容量の変化が他の1つのアンカー(3)から高周波信号Ioとして出力される。
【0047】
ここで、バイアス電極(4)(4)にバイアス電圧を印加することにより、共振子(5)の支持ビーム(51)(51)とバイアス電極(4)(4)との間に静電気力が発生し、これによって共振子(5)の共振ビーム(52)は、長手方向の引っ張り力を受けることになる。
従って、バイアス電圧電源(8)のバイアス電圧を調整することにより、共振ビーム(52)の共振周波数を変化させることが出来る。
【0048】
第2構成例
図19に示す共振器要素においては、シリコン或いはガラスからなる基板(9)上に、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる共振子(5)が配備されると共に、該共振子(5)の両側には、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる入力電極(22)と出力電極(12)が配備されている。
【0049】
共振子(5)は、第1構成例と同じ構造を有し、共振子(5)の両支持ビーム(51)(51)の外側には、それぞれ支持ビーム(51)の中央部に対向して、一対のバイアス電極(4)(4)が配備されており、支持ビーム(51)とバイアス電極(4)の間には所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップが形成されている。
【0050】
入力電極(22)及び出力電極(12)はそれぞれ、基部(23)(13)と、該基部(23)(13)から共振ビーム(52)へ向けて等間隔に突設された3つの電極突出部(24)(14)とを具えて、全体が櫛歯状を呈している。
入力電極(22)の3つの電極突出部(24)(24)(24)と出力電極(12)の3つの電極突出部(14)(14)(14)はそれぞれ、基板(9)の表面と平行な面内で、共振ビーム(52)の非くびれ部と交互に対向して、共振ビーム(52)の非くびれ部との間に所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップ部Gを形成している。
【0051】
入力電極(22)には高周波電源(6)が接続され、1つのアンカー(3)には主電圧電源(7)が接続されている。又、一対のバイアス電極(4)(4)にはバイアス電圧電源(8)が接続されている。
斯くして、図19に示す共振器要素は、高周波電源(6)から入力電極(22)に高周波信号が入力されて、出力電極(12)から高周波信号Ioが出力される2ポート型の共振器を構成している。
【0052】
上記の共振器要素において、アンカー(3)を介して共振子(5)に直流電圧Vpを印加した状態で、入力電極(22)に高周波信号を入力すると、電極突出部(24)と支持ビーム(51)の非くびれ部との間に静電気力が発生し、この静電気力によって、共振子(5)の共振ビーム(52)は、その両端部を支持部(50)(50)として、基板(9)の表面と平行な面内で振動することになる。
電極突出部(10)と共振ビーム(52)の非くびれ部との間に発生させるべき静電気力は、上述の如く、共振ビーム(52)の中央部近傍のギャップ部で最も小さく且つ両端部近傍のギャップ部で最も大きくなる様に設定される。
【0053】
共振子(5)の共振ビーム(52)は、くびれ部が振動の節、非くびれ部が振動の腹となって振動し、この振動に伴って、共振ビーム(52)と出力電極(12)との間に形成される静電容量が変化し、該静電容量の変化が出力電極(12)から高周波信号Ioとして出力される。
【0054】
ここで、バイアス電極(4)(4)にバイアス電圧を印加することにより、共振子(5)の支持ビーム(51)(51)とバイアス電極(4)(4)との間に静電気力が発生し、これによって共振子(5)の共振ビーム(52)は、長手方向の引っ張り力を受けることになる。
従って、バイアス電圧電源(8)のバイアス電圧を調整することにより、共振ビーム(52)の共振周波数を変化させることが出来る。
【0055】
第3構成例
図20に示す共振器要素においては、シリコン或いはガラスからなる基板(9)上に、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる共振子(5)が配備されると共に、該共振子(5)の両側には、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる一対の駆動電極(15)(25)が配備されている。
【0056】
共振子(5)は、第1構成例と同じ構造を有し、共振子(5)の両支持ビーム(51)(51)の外側には、それぞれ支持ビーム(51)の中央部に対向して、一対のバイアス電極(4)(4)が配備されており、支持ビーム(51)とバイアス電極(4)の間には所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップが形成されている。
【0057】
一方の駆動電極(15)は、共振ビーム(52)の下方、即ち共振ビーム(52)と基板(9)の間へ向けて等間隔に突出する3つの電極突出部(16)(16)(16)を具え、他方の駆動電極(25)は、共振ビーム(52)の上方へ向けて等間隔に突出する3つの電極突出部(26)(26)(26)を具えている。
一方の駆動電極(15)の3つの電極突出部(16)(16)(16)と他方の駆動電極(25)の3つの電極突出部(26)(26)(26)はそれぞれ、基板(9)の表面と垂直な面内で、共振ビーム(52)の非くびれ部と交互に対向して、共振ビーム(52)の非くびれ部との間に所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップ部を形成している。
【0058】
一対の駆動電極(15)(25)には高周波電源(6)が接続され、1つのアンカー(3)には主電圧電源(7)が接続されている。又、一対のバイアス電極(4)(4)にはバイアス電圧電源(8)が接続されている。
斯くして、図20に示す共振器要素は、高周波電源(6)から2つの駆動電極(15)(25)に高周波信号が入力されて、1つのアンカー(3)から高周波信号Ioが出力される1ポート型の共振器要素を構成している。
【0059】
上記の共振器要素において、アンカー(3)を介して共振子(5)に直流電圧Vpを印加した状態で、両駆動電極(15)(25)に高周波信号を入力すると、電極突出部(16)(26)と支持ビーム(51)の非くびれ部との間に静電気力が発生し、この静電気力によって、共振子(5)の共振ビーム(52)は、その両端部を支持部(50)(50)として、基板(9)の表面と垂直な面内で振動することになる。
電極突出部(16)(26)と共振ビーム(52)の非くびれ部との間に発生させるべき静電気力は、上述の如く、共振ビーム(52)の中央部近傍のギャップ部で最も小さく且つ両端部近傍のギャップ部で最も大きくなる様に設定される。
【0060】
共振子(5)の共振ビーム(52)は、図21に示す様に、くびれ部が振動の節、非くびれ部が振動の腹となって振動し、この振動に伴って、共振ビーム(52)と両駆動電極(1)(2)との間に形成される静電容量が変化し、該静電容量の変化が他の1つのアンカー(3)から高周波信号Ioとして出力される。
【0061】
ここで、バイアス電極(4)(4)にバイアス電圧を印加することにより、共振子(5)の支持ビーム(51)(51)とバイアス電極(4)(4)との間に静電気力が発生し、これによって共振子(5)の共振ビーム(52)は、長手方向の引っ張り力を受けることになる。
従って、バイアス電圧電源(8)のバイアス電圧を調整することにより、共振ビーム(52)の共振周波数を変化させることが出来る。
【0062】
第4構成例
図22に示す共振器要素においては、シリコン或いはガラスからなる基板(9)上に、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる共振子(5)が配備されると共に、該共振子(5)の両側には、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる入力電極(27)と出力電極(17)が配備されている。
【0063】
共振子(5)は、第1構成例と同じ構造を有し、共振子(5)の両支持ビーム(51)(51)の外側には、それぞれ支持ビーム(51)の中央部に対向して、一対のバイアス電極(4)(4)が配備されており、支持ビーム(51)とバイアス電極(4)の間には所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップが形成されている。
【0064】
入力電極(27)及び出力電極(17)はそれぞれ、共振ビーム(52)の下方、即ち共振ビーム(52)と基板(9)の間へ向けて等間隔に突出する3つの電極突出部(28)(18)を具え、これらの電極突出部(28)(18)はそれぞれ、基板(9)の表面と垂直な面内で、共振ビーム(52)の非くびれ部と交互に対向して、共振ビーム(52)の非くびれ部との間に所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップ部を形成している。
【0065】
入力電極(27)には高周波電源(6)が接続され、1つのアンカー(3)には主電圧電源(7)が接続されている。又、一対のバイアス電極(4)(4)にはバイアス電圧電源(8)が接続されている。
斯くして、図22に示す共振器要素は、高周波電源(6)から入力電極(27)に高周波信号が入力されて、出力電極(17)から高周波信号Ioが出力される2ポート型の共振器要素を構成している。
【0066】
上記の共振器要素において、アンカー(3)を介して共振子(5)に直流電圧Vpを印加した状態で、入力電極(27)に高周波信号を入力すると、電極突出部(28)と支持ビーム(51)の非くびれ部との間に静電気力が発生し、この静電気力によって、共振子(5)の共振ビーム(52)は、その両端部を支持部(50)(50)として、基板(9)の表面と垂直な面内で振動することになる。
電極突出部(28)と共振ビーム(52)の非くびれ部との間に発生させるべき静電気力は、上述の如く、共振ビーム(52)の中央部近傍のギャップ部で最も小さく且つ両端部近傍のギャップ部で最も大きくなる様に設定される。
【0067】
共振子(5)の共振ビーム(52)は、図23に示す様に、くびれ部が振動の節、非くびれ部が振動の腹となって振動し、この振動に伴って、共振ビーム(52)と出力電極(17)との間に形成される静電容量が変化し、該静電容量の変化が出力電極(17)から高周波信号Ioとして出力される。
【0068】
ここで、バイアス電極(4)(4)にバイアス電圧を印加することにより、共振子(5)の支持ビーム(51)(51)とバイアス電極(4)(4)との間に静電気力が発生し、これによって共振子(5)の共振ビーム(52)は、長手方向の引っ張り力を受けることになる。
従って、バイアス電圧電源(8)のバイアス電圧を調整することにより、共振ビーム(52)の共振周波数を変化させることが出来る。
【0069】
本発明に係るマイクロメカニカル共振器は、上述の各種構成を有する複数の共振器要素を基板上に横型若しくは縦型に配列し、これらを連結ビームにより互いに連結することによって構成される。尚、図1に示す本発明のマイクロメカニカル共振器は、横型3連結のマイクロメカニカル共振器であるが、外力の方向は基板に対して垂直方向となっている。
この様な連結型マイクロメカニカル共振器によれば、複数の単独型マイクロメカニカル共振器を単に電気的に接続した構成よりもQ値が増大し、共振器全体の損失を低減させることが出来る。
【0070】
又、共振子(5)に高次モードの振動を意図的に発生させることが出来るので、共振子(5)を作製容易な寸法に維持したまま、従来よりも高い発振周波数を得ることが出来る。又、バイアス電圧電源(8)の電圧調整により、共振子(5)の形状寸法を変更することなく、共振周波数の変更を行なうことが出来る。
【0071】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、共振子(5)の材料として、ヤング率の高い材料、例えばダイアモンド等を用いることによって、更に高い発振周波数を実現することも可能である。又、上記の構成例では電極の形状は何れも櫛歯状を呈しているが、複数の電極突出部(電極片)を互いに導電線路で接続した構成を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係るマイクロメカニカル共振器の構成を示す斜視図である。
【図2】連結型マイクロメカニカル共振器と単独型マイクロメカニカル共振器の周波数特性を示すグラフである。
【図3】本発明に係るマイクロメカニカル共振器の第1実施例を示す斜視図である。
【図4】第1実施例における静電気力の作用方向を説明する図である。
【図5】第1実施例における共振ビームの単位長さの変化に応じたQ値の変化を示すグラフである。
【図6】本発明に係るマイクロメカニカル共振器の第2実施例を示す斜視図である。
【図7】第2実施例における静電気力の作用方向を説明する図である。
【図8】第2実施例における共振ビームの単位長さの変化に応じたQ値の変化を示すグラフである。
【図9】本発明に係るマイクロメカニカル共振器の第3実施例を示す斜視図である。
【図10】第3実施例における静電気力の作用方向を説明する図である。
【図11】第3実施例における共振ビームの単位長さの変化に応じたQ値の変化を示すグラフである。
【図12】第4実施例における共振ビームの単位長さの変化に応じたQ値の変化を示すグラフである。
【図13】第5実施例における共振ビームの形状寸法を示す図である。
【図14】第5実施例における各実験の共振ビームの単位長さを示す図表である。
【図15】第5実施例における連結ビームの形状寸法を示す図である。
【図16】第5実施例における共振ビームの単位長さの変化に応じたQ値の変化を示すグラフである。
【図17】本発明のマイクロメカニカル共振器を構成すべき第1構成例の共振器要素の斜視図である。
【図18】第1構成例の共振器要素の平面図である。
【図19】第2構成例の共振器要素の平面図である。
【図20】第3構成例の共振器要素の平面図である。
【図21】第3構成例の共振器要素における共振ビームの振動状態を説明する断面図である。
【図22】第4構成例の共振器要素の平面図である。
【図23】第4構成例の共振器要素における共振ビームの振動状態を説明する断面図である。
【図24】従来のマイクロメカニカル共振器の斜視図である。
【図25】従来の他のマイクロメカニカル共振器の斜視図である。
【図26】共振モードを説明する図である。
【図27】1次共振モード及び高次共振モードの周波数特性を表わすグラフである。
【符号の説明】
【0073】
(1) 電極
(16) 電極突出部
(2) 電極
(26) 電極突出部
(3) アンカー
(4) バイアス電極
(5) 共振子
(51) 支持ビーム
(52) 共振ビーム
(53) 共振ビーム
(54) 共振ビーム
(41) 連結ビーム
(6) 高周波電源
(7) 主電圧電源
(8) バイアス電圧電源
(9) 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(9)上に両端部が支持された共振子(5)と、該共振子(5)に対向して配置された2つの電極(1)(2)とを具え、一方の電極(1)と共振子(5)とが互いに対向して、1或いは複数のギャップ部が形成されると共に、他方の電極(2)と共振子(5)とが互いに対向して、1或いは複数のギャップ部が形成され、高周波信号の入力により何れか一方若しくは両方の電極(1)(2)と共振子(5)との間に交番静電気力を発生させて共振子(5)に振動を与え、何れか一方若しくは両方の電極(1)(2)と共振子(5)との間の静電容量の変化を高周波信号として出力するマイクロメカニカル共振器において、
前記共振子(5)は、基板(9)上に、互いに並列の位置関係に配置された複数本の共振ビームを具え、各共振ビームの両端部が基板上に支持されると共に、隣接する共振ビームどうしが、それぞれの振動の腹の位置若しくはその近傍位置にて互いに連結されていることを特徴とするマイクロメカニカル共振器。
【請求項2】
前記共振子(5)を構成する複数本の共振ビームは、それぞれの共振周波数が互いに異なっている請求項1に記載のマイクロメカニカル共振器。
【請求項3】
前記共振子(5)を構成する複数本の共振ビームは、それぞれの長さが互いに異なっている請求項2に記載のマイクロメカニカル共振器。
【請求項4】
互いに隣接する2本の共振ビームの内、短い方の共振ビームの長さに対する長い方の共振ビームの長さの比は、1.2未満である請求項3に記載のマイクロメカニカル共振器。
【請求項5】
互いに隣接する2本の共振ビームの内、短い方の共振ビームの長さに対する長い方の共振ビームの長さの比は、約1.01〜約1.02の範囲である請求項3に記載のマイクロメカニカル共振器。
【請求項6】
前記共振子(5)と両電極(1)(2)との間には、3つ以上のギャップ部が形成されて、該共振子(5)は3次以上の高次共振モードで振動し、該共振子(5)を構成する複数本の共振ビームは、高次共振モードにおける振動の腹の位置若しくはその近傍位置で互いに連結されている請求項1乃至請求項5の何れかに記載のマイクロメカニカル共振器。
【請求項7】
互いに隣接する2本の共振ビームは、該共振ビームの弾性係数と同等若しくはそれ以上の弾性係数を有する連結ビーム(41)によって互いに連結されている請求項1乃至請求項6の何れかに記載のマイクロメカニカル共振器。
【請求項8】
前記共振子(5)を構成する複数本の共振ビームには、これらの共振ビームが配列されている面に対して垂直な方向に静電気力を作用させる請求項1乃至請求項7項の何れかに記載のマイクロメカニカル共振器。
【請求項9】
前記共振子(5)を構成する複数本の共振ビームには、これらの共振ビームが配列されている面に対して平行な方向に静電気力を作用させる請求項1乃至請求項7項の何れかに記載のマイクロメカニカル共振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2008−103777(P2008−103777A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282074(P2006−282074)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】