説明

マイクロメカニカル共振器

【課題】共振周波数の微調整を行なうことが可能なマイクロメカニカル共振器を提供する。
【解決手段】本発明に係るマイクロメカニカル共振器は、基板9上に両端部が支持された共振ビーム52と、該共振ビーム52の両端部間の軸部に対向して配置された2つの電極1、2とを具え、共振ビーム52の両端部間にて、一方の電極1と共振ビーム52とが互いに対向して、1或いは複数のギャップ部が形成されると共に、他方の電極2と共振ビーム52とが互いに対向して、1或いは複数のギャップ部が形成される。ここで、共振ビーム52の両端部の内、少なくとも何れか一方の端部は、共振ビーム52の軸方向とは直交する面内での移動が拘束されると共に、共振ビーム52の軸方向の変位は可能に支持されており、該端部と対向してバイアス電極4が配備され、該バイアス電極4に印加すべきバイアス電圧の調整が可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された高周波信号を機械的な信号に変換した後に再び高周波信号に変換して出力する共振器に関し、特に、半導体分野における微細加工技術を利用して作製されるマイクロメカニカル共振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体分野における微細加工技術を利用して、微細な機械構造を電子回路と一体化して形成する、所謂マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)技術が開発されており、フィルターや共振器への応用が検討されている。
【0003】
図10は、MEMS技術を用いた従来のマイクロメカニカル共振器を表わしている(非特許文献1)。該マイクロメカニカル共振器は、図示の如く基板(96)上に共振子(90)を具え、該共振子(90)は、角柱状の共振ビーム(92)と、該共振ビーム(92)の両端部を支持すべき4本の角柱状の支持ビーム(91)〜(91)とから構成されており、各支持ビーム(91)の基端部はそれぞれアンカー(93)によって基板(96)上に固定されている。これによって、共振子(90)は、基板(96)の表面から僅かに浮上した位置に保持されている。
【0004】
又、共振子(90)の共振ビーム(92)の両側には、共振ビーム(92)の中央部を挟んで入力電極(94)と出力電極(95)が配備され、共振ビーム(92)と両電極(94)95)との間に所定のギャップ部Gが形成されている。
そして、入力電極(94)には高周波電源(6)が接続されると共に、1つのアンカー(93)には主電圧電源(7)が接続されている。
【0005】
アンカー(93)を介して共振子(90)に直流電圧Vpを印加した状態で、入力電極(94)に高周波信号Viを入力すると、入力電極(94)と共振ビーム(92)との間にギャップ部Gを介して交番静電気力が発生し、該静電気力によって共振子(90)が基板(96)の表面と平行な面内で振動する。この共振子(90)の振動により、共振ビーム(92)と両電極(95)(94)との間に形成される静電容量が変化し、該静電容量の変化が出力電極(95)から高周波信号Ioとして出力される。
【0006】
又、図11は、従来の他のマイクロメカニカル共振器を表わしている(非特許文献2、特許文献1)。該マイクロメカニカル共振器は、基板(107)上に平板状の共振子(100)を具え、該共振子(100)は、両端部と中央部の3カ所に支持部(103)を有すると共に、隣接する2つの支持部(103)(103)間に共振ビーム(102)を有している。各支持部(103)には支持ビーム(101)が突設され、各支持ビーム(101)の基端部はそれぞれアンカー(104)によって基板(107)に固定されている。これによって、共振子(100)は、基板(107)の表面から僅かに浮上した位置に保持されている。
【0007】
又、基板(107)上には、共振子(100)の2つの共振ビーム(102)(102)との間に、入力電極(106)と出力電極(105)が配備され、一方の共振ビーム(102)と入力電極(106)の間、並びに他方の共振ビーム(102)と出力電極(105)との間に、所定のギャップ部が形成されている。
そして、入力電極(106)には高周波電源(6)が接続されると共に、1つのアンカー(104)には主電圧電源(7)が接続されている。
【0008】
アンカー(104)を介して共振子(100)に直流電圧Vpを印加した状態で、入力電極(106)に高周波信号Viを入力すると、入力電極(106)と共振ビーム(102)との間にギャップ部を介して交番静電気力が発生し、該静電気力によって共振子(100)が基板(107)の表面と垂直な面内で振動する。この共振子(100)の振動により、共振子(100)と両電極(106)(105)との間に形成される静電容量が変化し、該静電容量の変化が出力電極(105)から高周波信号Ioとして出力される。
【0009】
【非特許文献1】W.-T.Hsu,J.R.Clark, and C.T.-C.Nguyen,“Q-optimized lateral freee-free beam micromechanical resonators,” Digest of Technical papers, the 11th Int. Conf. on Solid-State Sensors & Actuators (Transducers’01), Munich, Germany, June 10-14,2001, pp.1110-1113.
【非特許文献2】M.U.Demirci and C.T.-C.Nguyen,“Higher-mode freee-free beam micromechanical resonators,” Proceedings,2003 IEEE Int. Frequency Control Symposium, Tampa, May5-8, 2003, pp.810-818.
【特許文献1】特表2002-535865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の如きマイクロメカニカル共振器においては、図8に示す様に、1次の共振モードの他、2次の共振モードや3次の共振モード等の高次の共振モードが混在して発生し、高次の共振モードを利用すれば、GHz帯で動作する高周波無線通信機器に応用することが出来るが、共振ビームの共振周波数は、共振ビームの寸法形状に依存しており、共振周波数を微調整するには、共振ビームの寸法形状に微細な変更を加える必要がある。しかしながら、共振ビームの寸法は高々数十ミクロンと微細なため、この様な共振ビームの寸法形状に更に微細な変更を加えて所望の共振周波数を得ることは、極めて困難であった。
又、マイクロメカニカル共振器の完成品においては共振周波数を微調整することは出来なかった。
【0011】
そこで本発明の目的は、共振ビームの寸法形状を変更することなく共振周波数の微調整を行なうことが可能なマイクロメカニカル共振器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るマイクロメカニカル共振器は、基板(9)上に両端部が支持された共振ビーム(52)と、該共振ビーム(52)の両端部間の軸部を挟んで共振ビーム(52)の両側に配置された2つの電極(1)(2)とを具え、共振ビーム(52)の両端部間にて、一方の電極(1)と共振ビーム(52)とが互いに対向して、1或いは複数のギャップ部が形成されると共に、他方の電極(2)と共振ビーム(52)とが互いに対向して、1或いは複数のギャップ部が形成され、高周波信号の入力により何れか一方若しくは両方の電極(1)(2)と共振ビーム(52)との間に交番静電気力を発生させて共振ビーム(52)に振動を与え、何れか一方若しくは両方の電極(1)(2)と共振ビーム(52)との間の静電容量の変化を高周波信号として出力するものである。
ここで、前記共振ビーム(52)の両端部の内、少なくとも何れか一方の端部は、共振ビーム(52)の軸方向とは直交する面内での移動が拘束されると共に、共振ビーム(52)の軸方向の変位は可能に支持されており、該端部と対向してバイアス電極(4)が配備され、該バイアス電極(4)にバイアス電圧電源(8)を接続して、バイアス電圧を印加することが可能である。
【0013】
上記本発明のマイクロメカニカル共振器においては、バイアス電圧電源(8)によってバイアス電極(4)にバイアス電圧を印加することにより、共振ビーム(52)の端部とバイアス電極(4)との間に静電気力が発生し、これによって共振子(5)の共振ビーム(52)は、軸方向の引張力若しくは圧縮力を受ける。この結果、共振ビーム(52)の自由振動時の振動数(固有振動数)が変化することになる。
従って、バイアス電圧電源(8)のバイアス電圧を調整することにより、共振ビーム(52)の共振周波数を変化させて、出力される高周波信号の周波数を微調整することが出来る。
【0014】
具体的構成において、前記共振ビーム(52)の両端部がそれぞれ、共振ビーム(52)の軸方向とは直交する面内での移動が拘束されると共に、共振ビーム(52)の軸方向の変位は可能に支持されており、該共振ビーム(52)の各端部に対向して前記バイアス電極(4)が配備されている。
該具体的構成によれば、共振ビーム(52)の両端部に対向して配備された一対のバイアス電極(4)(4)にバイアス電圧を印加することにより、共振ビーム(52)が両側から引張力若しくは圧縮力を受けて、共振ビーム(52)の共振周波数の調整が行なわれる。
【0015】
又、具体的構成において、前記共振ビーム(52)の両端部にはそれぞれ共振ビーム(52)に対して直交する支持ビーム(51)が突設され、該支持ビーム(51)によって共振ビーム(52)の端部が基板(9)上に支持されている。
更に具体的には、前記支持ビーム(51)は、共振ビーム(52)との連結部を中心として両側に伸び、共振ビーム(52)とその両側の支持ビーム(51)(51)によって、全体がH字状の共振子(5)が構成されており、各支持ビーム(51)に対向して前記バイアス電極(4)が配備されている。
【0016】
これによって、共振ビーム(52)の両端部はそれぞれ、共振ビーム(52)の軸方向とは直交する面内での移動が拘束されると共に、共振ビーム(52)の軸方向の変位は可能に支持されることになり、支持ビーム(51)とバイアス電極(4)との間に静電気力が発生して、共振ビーム(52)が両側から引張力若しくは圧縮力を受けることになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るマイクロメカニカル共振器によれば、共振ビームの寸法形状を変更することなく共振周波数の微調整を行なうことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
第1実施例
図1及び図2に示すマイクロメカニカル共振器においては、シリコン或いはガラスからなる基板(9)上に、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる共振子(5)が配備されると共に、該共振子(5)の軸部の両側には、共振子(5)に沿って、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる一対の駆動電極(1)(2)が配備されている。
【0019】
共振子(5)は、長さが例えば10〜20μmの角柱状の共振ビーム(52)と、該共振ビーム(52)の両端部に互いに平行に突設された一対の支持ビーム(51)(51)とを具えて、全体がH字状に形成されている。共振ビーム(52)には、その長手方向の7カ所にくびれ部が等間隔に凹設されている。各支持ビーム(51)の両端部は、それぞれシリコン、アルミニウム等の導電材料からなるアンカー(3)によって、基板(9)の表面に固定されており、これによって、共振子(5)は、基板(9)の表面から僅かに浮上した位置に保持されている。
又、共振子(5)の両支持ビーム(51)(51)の外側には、それぞれ支持ビーム(51)の中央部に対向して、一対のバイアス電極(4)(4)が配備されており、支持ビーム(51)とバイアス電極(4)の間には所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップが形成されている。
【0020】
一対の駆動電極(1)(2)はそれぞれ、基部(11)(21)と、該基部(11)(21)から共振ビーム(52)へ向けて等間隔に突設された3つの電極突出部(10)(20)とを具えて、全体が櫛歯状を呈している。
一方の駆動電極(1)の3つの電極突出部(10)(10)(10)と他方の駆動電極(2)の3つの電極突出部(20)(20)(20)はそれぞれ、基板(9)の表面と平行な面内で、共振ビーム(52)の非くびれ部と交互に対向して、共振ビーム(52)の非くびれ部との間に所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップ部Gを形成している。
【0021】
図2に示す如く、一対の駆動電極(1)(2)には高周波電源(6)が接続され、1つのアンカー(3)には主電圧電源(7)が接続されている。又、一対のバイアス電極(4)(4)にはバイアス電圧電源(8)が接続されている。尚、図2においては、図示の便宜上、左側のバイアス電極(4)とバイアス電圧電源(8)の接続ラインを省略している。
斯くして、図1及び図2に示すマイクロメカニカル共振器は、高周波電源(6)から2つの駆動電極(1)(2)に高周波信号が入力されて、1つのアンカー(3)から高周波信号Ioが出力される1ポート型の共振器を構成している。
【0022】
上記のマイクロメカニカル共振器において、アンカー(3)を介して共振子(5)に直流電圧Vpを印加した状態で、両駆動電極(1)(2)に高周波信号を入力すると、電極突出部(10)(20)と共振ビーム(52)の非くびれ部との間に静電気力が発生し、この静電気力によって、共振子(5)の共振ビーム(52)は、その両端部を支持部(50)(50)として、基板(9)の表面と平行な面内で振動することになる。
【0023】
共振子(5)の共振ビーム(52)は、くびれ部が振動の節、非くびれ部が振動の腹となって振動し、この振動に伴って、共振ビーム(52)と両駆動電極(1)(2)との間に形成される静電容量が変化し、該静電容量の変化が他の1つのアンカー(3)から高周波信号Ioとして出力される。
【0024】
ここで、バイアス電極(4)(4)にバイアス電圧を印加することにより、共振子(5)の支持ビーム(51)(51)とバイアス電極(4)(4)との間に静電気力が発生し、これによって共振子(5)の共振ビーム(52)は、軸方向の引張力を受ける。この結果、共振ビーム(52)の自由振動時の振動数(固有振動数)が変化することになる。
従って、バイアス電圧電源(8)のバイアス電圧を調整することにより、共振ビーム(52)の共振周波数を変化させて、アンカー(3)から出力される高周波信号Ioの周波数を微調整することが出来る。
【0025】
上述のマイクロメカニカル共振器によれば、共振子(5)の共振ビーム(52)の長手方向に沿って、複数の電極突出部(10)(20)を交互に配置することにより、その電極突出部(10)(20)の数に応じた高次の共振モードで共振ビーム(52)を意図的に共振させて、GHz帯の発振周波数を得ることが出来る。
【0026】
第2実施例
図3に示すマイクロメカニカル共振器においては、シリコン或いはガラスからなる基板(9)上に、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる共振子(5)が配備されると共に、該共振子(5)の両側には、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる入力電極(22)と出力電極(12)が配備されている。
【0027】
共振子(5)は、第1実施例と同じ構造を有し、共振子(5)の両支持ビーム(51)(51)の外側には、それぞれ支持ビーム(51)の中央部に対向して、一対のバイアス電極(4)(4)が配備されており、支持ビーム(51)とバイアス電極(4)の間には所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップが形成されている。
【0028】
入力電極(22)及び出力電極(12)はそれぞれ、基部(23)(13)と、該基部(23)(13)から共振ビーム(52)へ向けて等間隔に突設された3つの電極突出部(24)(14)とを具えて、全体が櫛歯状を呈している。
入力電極(22)の3つの電極突出部(24)(24)(24)と出力電極(12)の3つの電極突出部(14)(14)(14)はそれぞれ、基板(9)の表面と平行な面内で、共振ビーム(52)の非くびれ部と交互に対向して、共振ビーム(52)の非くびれ部との間に所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップ部Gを形成している。
【0029】
入力電極(22)には高周波電源(6)が接続され、1つのアンカー(3)には主電圧電源(7)が接続されている。又、一対のバイアス電極(4)(4)にはバイアス電圧電源(8)が接続されている。尚、図3においては、図示の便宜上、左側のバイアス電極(4)とバイアス電圧電源(8)の接続ラインを省略している。
斯くして、図3に示すマイクロメカニカル共振器は、高周波電源(6)から入力電極(22)に高周波信号が入力されて、出力電極(12)から高周波信号Ioが出力される2ポート型の共振器を構成している。
【0030】
上記のマイクロメカニカル共振器において、アンカー(3)を介して共振子(5)に直流電圧Vpを印加した状態で、入力電極(22)に高周波信号を入力すると、電極突出部(24)と共振ビーム(52)の非くびれ部との間に静電気力が発生し、この静電気力によって、共振子(5)の共振ビーム(52)は、その両端部を支持部(50)(50)として、基板(9)の表面と平行な面内で振動することになる。
【0031】
共振子(5)の共振ビーム(52)は、くびれ部が振動の節、非くびれ部が振動の腹となって振動し、この振動に伴って、共振ビーム(52)と出力電極(12)との間に形成される静電容量が変化し、該静電容量の変化が出力電極(12)から高周波信号Ioとして出力される。
【0032】
ここで、バイアス電極(4)(4)にバイアス電圧を印加することにより、共振子(5)の支持ビーム(51)(51)とバイアス電極(4)(4)との間に静電気力が発生し、これによって共振子(5)の共振ビーム(52)は、軸方向の引張力を受けることになる。
従って、バイアス電圧電源(8)のバイアス電圧を調整することにより、共振ビーム(52)の共振周波数を変化させて、アンカー(3)から出力される高周波信号Ioの周波数を微調整することが出来る。
【0033】
上述のマイクロメカニカル共振器によれば、共振子(5)の共振ビーム(52)の長手方向に沿って、複数の電極突出部(14)(24)を交互に配置することにより、その電極突出部(14)(24)の数に応じた高次の共振モードで共振ビーム(52)を意図的に共振させて、GHz帯の発振周波数を得ることが出来る。
【0034】
第3実施例
図4に示すマイクロメカニカル共振器においては、シリコン或いはガラスからなる基板(9)上に、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる共振子(5)が配備されると共に、該共振子(5)の両側には、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる一対の駆動電極(15)(25)が配備されている。
【0035】
共振子(5)は、第1実施例と同じ構造を有し、共振子(5)の両支持ビーム(51)(51)の外側には、それぞれ支持ビーム(51)の中央部に対向して、一対のバイアス電極(4)(4)が配備されており、支持ビーム(51)とバイアス電極(4)の間には所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップが形成されている。
【0036】
一方の駆動電極(15)は、共振ビーム(52)の下方、即ち共振ビーム(52)と基板(9)の間へ向けて等間隔に突出する3つの電極突出部(16)(16)(16)を具え、他方の駆動電極(25)は、共振ビーム(52)の上方へ向けて等間隔に突出する3つの電極突出部(26)(26)(26)を具えている。
一方の駆動電極(15)の3つの電極突出部(16)(16)(16)と他方の駆動電極(25)の3つの電極突出部(26)(26)(26)はそれぞれ、基板(9)の表面と垂直な面内で、共振ビーム(52)の非くびれ部と交互に対向して、共振ビーム(52)の非くびれ部との間に所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップ部を形成している。
【0037】
一対の駆動電極(15)(25)には高周波電源(6)が接続され、1つのアンカー(3)には主電圧電源(7)が接続されている。又、一対のバイアス電極(4)(4)にはバイアス電圧電源(8)が接続されている。尚、図4においては、図示の便宜上、左側のバイアス電極(4)とバイアス電圧電源(8)の接続ラインを省略している。
斯くして、図4に示すマイクロメカニカル共振器は、高周波電源(6)から2つの駆動電極(15)(25)に高周波信号が入力されて、1つのアンカー(3)から高周波信号Ioが出力される1ポート型の共振器を構成している。
【0038】
上記のマイクロメカニカル共振器において、アンカー(3)を介して共振子(5)に直流電圧Vpを印加した状態で、両駆動電極(15)(25)に高周波信号を入力すると、電極突出部(16)(26)と共振ビーム(52)の非くびれ部との間に静電気力が発生し、この静電気力によって、共振子(5)の共振ビーム(52)は、その両端部を支持部(50)(50)として、基板(9)の表面と垂直な面内で振動することになる。
【0039】
共振子(5)の共振ビーム(52)は、図5に示す様に、くびれ部が振動の節、非くびれ部が振動の腹となって振動し、この振動に伴って、共振ビーム(52)と両駆動電極(1)(2)との間に形成される静電容量が変化し、該静電容量の変化が他の1つのアンカー(3)から高周波信号Ioとして出力される。
【0040】
ここで、バイアス電極(4)(4)にバイアス電圧を印加することにより、共振子(5)の支持ビーム(51)(51)とバイアス電極(4)(4)との間に静電気力が発生し、これによって共振子(5)の共振ビーム(52)は、軸方向の引張力を受けることになる。
従って、バイアス電圧電源(8)のバイアス電圧を調整することにより、共振ビーム(52)の共振周波数を変化させて、アンカー(3)から出力される高周波信号Ioの周波数を微調整することが出来る。
【0041】
上述のマイクロメカニカル共振器によれば、共振子(5)の共振ビーム(52)の長手方向に沿って、複数の電極突出部(16)(26)を交互に配置することにより、その電極突出部(16)(26)の数に応じた高次の共振モードで共振ビーム(52)を意図的に共振させて、GHz帯の発振周波数を得ることが出来る。
【0042】
第4実施例
図6に示すマイクロメカニカル共振器においては、シリコン或いはガラスからなる基板(9)上に、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる共振子(5)が配備されると共に、該共振子(5)の両側には、シリコン、アルミニウム等の導電材料からなる入力電極(27)と出力電極(17)が配備されている。
【0043】
共振子(5)は、第1実施例と同じ構造を有し、共振子(5)の両支持ビーム(51)(51)の外側には、それぞれ支持ビーム(51)の中央部に対向して、一対のバイアス電極(4)(4)が配備されており、支持ビーム(51)とバイアス電極(4)の間には所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップが形成されている。
【0044】
入力電極(27)及び出力電極(17)はそれぞれ、共振ビーム(52)の下方、即ち共振ビーム(52)と基板(9)の間へ向けて等間隔に突出する3つの電極突出部(28)(18)を具え、これらの電極突出部(28)(18)はそれぞれ、基板(9)の表面と垂直な面内で、共振ビーム(52)の非くびれ部と交互に対向して、共振ビーム(52)の非くびれ部との間に所定(例えば0.1〜0.5μm)のギャップ部を形成している。
【0045】
入力電極(27)には高周波電源(6)が接続され、1つのアンカー(3)には主電圧電源(7)が接続されている。又、一対のバイアス電極(4)(4)にはバイアス電圧電源(8)が接続されている。尚、図6においては、図示の便宜上、左側のバイアス電極(4)とバイアス電圧電源(8)の接続ラインを省略している。
斯くして、図6に示すマイクロメカニカル共振器は、高周波電源(6)から入力電極(27)に高周波信号が入力されて、出力電極(17)から高周波信号Ioが出力される2ポート型の共振器を構成している。
【0046】
上記のマイクロメカニカル共振器において、アンカー(3)を介して共振子(5)に直流電圧Vpを印加した状態で、入力電極(27)に高周波信号を入力すると、電極突出部(28)と共振ビーム(52)の非くびれ部との間に静電気力が発生し、この静電気力によって、共振子(5)の共振ビーム(52)は、その両端部を支持部(50)(50)として、基板(9)の表面と垂直な面内で振動することになる。
【0047】
共振子(5)の共振ビーム(52)は、図7に示す様に、くびれ部が振動の節、非くびれ部が振動の腹となって振動し、この振動に伴って、共振ビーム(52)と出力電極(17)との間に形成される静電容量が変化し、該静電容量の変化が出力電極(17)から高周波信号Ioとして出力される。
【0048】
ここで、バイアス電極(4)(4)にバイアス電圧を印加することにより、共振子(5)の支持ビーム(51)(51)とバイアス電極(4)(4)との間に静電気力が発生し、これによって共振子(5)の共振ビーム(52)は、軸方向の引張力を受けることになる。
従って、バイアス電圧電源(8)のバイアス電圧を調整することにより、共振ビーム(52)の共振周波数を変化させて、アンカー(3)から出力される高周波信号Ioの周波数を微調整することが出来る。
【0049】
図9は、図4に示す第3実施例のマイクロメカニカル共振器において、コンピュータシミュレーションにより、バイアス電極に対するバイアス電圧を変化させたときの共振周波数の変化を計算したものである。尚、共振ビーム(52)の長さは30μm、幅は2μm、厚さは1.8μmとし、バイアス電圧を印加しない状態での共振ビーム(52)の共振周波数を300MHzに設定した。
図9のグラフから明らかな様に、バイアス電圧を0Vから100Vに変化させることによって、共振周波数は300MHzから308MHzまで滑らかなカーブで変化しており、バイアス電圧の可変設定によって共振周波数の微調整が可能であることが分かる。
【0050】
上述のマイクロメカニカル共振器によれば、共振子(5)の共振ビーム(52)の長手方向に沿って、複数の電極突出部(18)(28)を交互に配置することにより、その電極突出部(18)(28)の数に応じた高次の共振モードで共振ビーム(52)を意図的に共振させて、GHz帯の発振周波数を得ることが出来、然もバイアス電極(4)に対するバイアス電圧の調整により、共振子(5)の形状寸法を変更することなく、発振周波数の微調整を行なうことが出来るので、共振子(5)を作製容易な寸法に維持したまま、従来よりも高い所望の発振周波数を得ることが出来る。
【0051】
特に、本発明に係るマイクロメカニカル共振器は、出力される高周波信号の周波数を挺倍することなく、直接に必要な周波数を発振させることが出来るので、低位相ノイズが必要とされる装置、例えばリモートキーレスエントリーシステムや、スペクトラム拡散通信やソフトウエア無線等のRF無線装置に有効である。
【0052】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、共振子(5)の材料として、ヤング率の高い材料、例えばダイアモンド等を用いることによって、更に高い発振周波数を実現することも可能である。又、上記実施例では電極の形状は何れも櫛歯状を呈しているが、複数の電極突出部(電極片)を互いに線路で接続した構成を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1実施例のマイクロメカニカル共振器の斜視図である。
【図2】第1実施例のマイクロメカニカル共振器の平面図である。
【図3】第2実施例のマイクロメカニカル共振器の平面図である。
【図4】第3実施例のマイクロメカニカル共振器の平面図である。
【図5】第3実施例のマイクロメカニカル共振器における共振ビームの振動状態を説明する断面図である。
【図6】第4実施例のマイクロメカニカル共振器の平面図である。
【図7】第4実施例のマイクロメカニカル共振器における共振ビームの振動状態を説明する断面図である。
【図8】マイクロメカニカル共振器における周波数特性を表わすグラフである。
【図9】本発明に係るマイクロメカニカル共振器におけるバイアス電圧に応じた共振周波数の変化を表わすグラフである。
【図10】従来のマイクロメカニカル共振器の斜視図である。
【図11】従来の他のマイクロメカニカル共振器の斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
(1) 駆動電極
(10) 電極突出部
(2) 駆動電極
(20) 電極突出部
(3) アンカー
(4) バイアス電極
(5) 共振子
(50) 支持部
(51) 支持ビーム
(52) 共振ビーム
(6) 高周波電源
(7) 主電圧電源
(8) バイアス電圧電源
(9) 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(9)上に両端部が支持された共振ビーム(52)と、該共振ビーム(52)の両端部間の軸部に対向して配置された2つの電極(1)(2)とを具え、共振ビーム(52)の両端部間にて、一方の電極(1)と共振ビーム(52)とが互いに対向して、1或いは複数のギャップ部が形成されると共に、他方の電極(2)と共振ビーム(52)とが互いに対向して、1或いは複数のギャップ部が形成され、高周波信号の入力により何れか一方若しくは両方の電極(1)(2)と共振ビーム(52)との間に交番静電気力を発生させて共振ビーム(52)に振動を与え、何れか一方若しくは両方の電極(1)(2)と共振ビーム(52)との間の静電容量の変化を高周波信号として出力するマイクロメカニカル共振器において、
前記共振ビーム(52)の両端部の内、少なくとも何れか一方の端部は、共振ビーム(52)の軸方向とは直交する面内での移動が拘束されると共に、共振ビーム(52)の軸方向の変位は可能に支持されており、該端部と対向してバイアス電極(4)が配備され、該バイアス電極(4)にバイアス電圧を印加することが可能であることを特徴とするマイクロメカニカル共振器。
【請求項2】
前記共振ビーム(52)の両端部がそれぞれ、共振ビーム(52)の軸方向とは直交する面内での移動が拘束されると共に、共振ビーム(52)の軸方向の変位は可能に支持されており、該共振ビーム(52)の各端部に対向して前記バイアス電極(4)が配備されている請求項1に記載のマイクロメカニカル共振器。
【請求項3】
前記共振ビーム(52)の両端部にはそれぞれ共振ビーム(52)に対して直交する支持ビーム(51)が突設され、該支持ビーム(51)によって共振ビーム(52)の端部が基板(9)上に支持されている請求項1又は請求項2に記載のマイクロメカニカル共振器。
【請求項4】
前記支持ビーム(51)は、共振ビーム(52)との連結部を中心として両側に伸び、共振ビーム(52)とその両側の支持ビーム(51)(51)によって、全体がH字状の共振子(5)が構成されており、各支持ビーム(51)に対向して前記バイアス電極(4)が配備されている請求項3に記載のマイクロメカニカル共振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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