説明

マイクロリアクタおよびマイクロ分析システム

【課題】複数流体の混合比を効率的に均一化させるマイクロ分析システムを提供する。
【解決手段】マイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部と、流体が流通する流路とが少なくとも設けられたマイクロ流体チップと、本体とを備えるシステムであり、複数流路から送液されてきた複数の流体が、一合流点で合流しそれより下流の混合流路で混合される場合該複数流路のうち、少なくとも1つの流路からは他流路から送液される流体とは異なる流体が合流点に送液されるときは、混合流路で混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体の流量の、混合流路内の流路幅方向の壁際付近を流れる流体の流量に対する、比率を調整することによるか、あるいは混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体の混合点へ送液する送液開始タイミングを、その他の流体の混合点へ送液する送液開始タイミングよりも遅らせている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、セ
ンサーなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている(特許文献
1)。これは、μ−TAS(Micro total Analysis System)、バイオリアクタ、ラブ・
オン・チップ(Lab-on-chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野でその応用が期待されている。現実には遺伝子検査に見られるように、煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、自動化、高速化および簡便化されたミクロ化分析システムは、コスト、必要試料量、所要時間のみならず、時間および場所を選ばない分析を可能とすることによる恩恵は多大と言える。
【0002】
各種の分析、検査ではこれらの分析用チップにおける分析の定量性、解析の精度、経済性などが重要視される。そのためにはシンプルな構成で、高い信頼性の送液システムを確立することが課題である。精度が高く、信頼性に優れるマイクロ流体制御素子が求められている。これに好適なマイクロポンプシステムおよびその制御方法を本発明者らはすでに提案している(特許文献2〜4)。
【0003】
ミクロ化分析システムにおいては、複数の流体、例えば試薬、試料をチップ内の微細流路で混合することが必要な工程として組み込まれる。複数の流体を微細流路から流して混合する際、短時間で所望の混合比に混合することが望まれる。通常はそれぞれの流体を送出するマイクロポンプの駆動電圧を変えることにより、送液流量を調整して混合比を制御する方式が採られている。しかしながら流量の目標値を定めてそれに応じた駆動電圧をマイクロポンプに供給していても、流路抵抗値の変化によって流量が目標値からずれてしまう問題や、流量が変化するために混合比を安定化させることが困難となるという問題もある。微細流路内を流体が層流で流れる場合、流路中央部分を流れる流体の流速は、流路壁際付近を流れる流体の流速よりも速くなるという一般的な特性がある。かかる特性は、複数の流体を混合する際にも影響を与える。シンプルな構成で、安定した混合比が得られ、信頼性の高い送液システムを確立するためには、精度が高く、信頼性に優れるマイクロ流体制御素子の使用とともに、上記混合比が自在に変更でき、しかも安定して実現できることが必須であり、そのための送液技術の開発が要請されている。
【特許文献1】特開2004-28589号公報
【特許文献2】特開2001-322099号公報
【特許文献3】特開2004-108285号公報
【特許文献4】特開2004-270537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の流体を混合流路へ流して混合する場合には、上記の特性によって、流路中央部を流れる流体のみが、どんどん先へ流れ、それ以外の流体は遅れて流れる状況になる。結果的にそのような流路中央部を流れる流体の濃度が、実際の送液比と比べて高くなるという問題があった。本発明はこれらの実状に鑑みてなされたものであり、複数種類の流体を効率的に所望の混合比になるように均一に混合するマイクロリアクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のマイクロリアクタは、複数流路から送液されてきた複数の流体が、一合流点で合流しそれより下流の混合流路で混合されるチップであって、
該複数流路のうち、少なくとも1つの流路からは他流路から送液される流体とは異なる
流体が合流点に送液されるときに、混合流路で
混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体Aの流量の、
混合流路内の流路幅方向の壁際付近を流れる流体Bの流量に対する、
比率の調整によって混合流路で均一に混合することを特徴としている。
【0006】
好ましくは前記比率の調整が、送液開始直後よりも送液時間の後半の方が高くなるように送液することである。
前記比率の調整が、流体Bを駆動するマイクロポンプの駆動電圧に対する、流体Aを駆動するマイクロポンプの駆動電圧の比率を、送液開始直後よりも送液時間の後半の方が、高くなるように駆動電圧を変化させてもよい。
【0007】
あるいは合流する流体を送出する流路の長さまたは流路数を違えることに基づいてもよい。
さらに、複数流路から送液されてきた複数の流体が、一合流点で合流しそれより下流の混合流路で拡散混合されるマイクロリアクタであって、
該複数流路のうち、少なくとも1つの流路からは他流路から送液される流体とは異なる流体が合流点に送液されるときに、
混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体の混合点へ送液する送液開始タイミングを、その他の流体の混合点へ送液する送液開始タイミングよりも遅らせることによってもよい。
【0008】
前記の複数流路は、それぞれ前記チップとは別途のマイクロポンプに個別に連通されており、該マイクロポンプを駆動することによりそれぞれの流路から合流点へ各流体を送液することを特徴としている。
【0009】
本発明のマイクロ分析システムは、別途のマイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部と、流体が流通する微細流路と、2以上の流体が合流して混合される混合流路と、を少なくとも設けられたマイクロ流体チップと、
システム本体と、
を備え、そのシステム本体は、少なくとも
ベース本体と、
そのベース本体内に配置され、該チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部と、該マイクロポンプとを含むマイクロポンプユニットと、
少なくとも該マイクロポンプユニットの機能を制御する制御装置と、
を備え、
該マイクロポンプが、
流路に設けられ、流路抵抗が差圧に応じて変化する第1流路と、
前記流路に設けられ、差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が第1流路よりも小さい第2流路と、
前記流路に設けられ、第1流路および第2流路に接続された加圧室と、
該加圧室の内部圧力を変化させるアクチュエータと、
該アクチュエータを駆動する駆動装置と
を備えるマイクロポンプである。
【0010】
本発明による混合流路で複数の流体を均一に混合する方法は、複数流路から送液されてきた複数の流体が、一合流点で合流しそれより下流の混合流路で拡散混合されるマイクロリアクタにおいて、
該複数流路のうち、少なくとも1つの流路からは他流路から送液される流体とは異なる流体が合流点に送液されるときに、混合流路で
混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体の流量の、
混合流路内の流路幅方向の壁際付近を流れる流体の流量に対する、
比率を調整することによるか、あるいは
混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体の混合点へ送液する送液開始タイミングを、その他の流体の混合点へ送液する送液開始タイミングよりも遅らせることに基づいている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマイクロリアクタにおいて、複数の流体を複数の微細流路から合流させて混合する場合、混合流路の全域において均一な濃度となる混合を実現することができる。送液される混合流体の先頭付近に生じる濃度の偏りを回避できる。したがってカットされ、廃棄される先端部分がなくなるために試薬などのロスがなくなる。
【0012】
特に混合比が1:1からかけ離れた高い比率であっても、混合流路全域にわたって2流体の安定的な混合比を確保できる。
本発明により、シンプルな構成で、複数流体の安定的かつ精度の高い混合を実現し、効率良く迅速な分析のためのマイクロ分析システムを提供する。
〔発明の詳細な説明〕
本明細書において、「流体」とは、流体収容部などからマイクロポンプにより送出され、マイクロリアクタ・チップ内の流路を流れるものであり、適用する流体として液体、流動体、気体などであってもよい。対象とする流体は、実際は液体であることが多く、具体的には、各種の試薬類、試料液、変性剤液、洗浄液、駆動液などが該当する。
【0013】
「微細流路」は、マイクロリアクタに形成された微小な溝状流路のことであり、単に「流路」ということもある。試薬類などの収容部、反応部位もしくは検出部位が、広幅の液溜め状に形成されている場合にも、これらを含めて「微細流路」ということもある。
・マイクロリアクタ
本発明のマイクロリアクタは、一般に分析チップ、マイクロリアクタ・チップ、マイクロ流体チップなどとも称されるものと同等である。そのチップは、縦横のサイズが、通常、数十mm、高さが数mm程度であり、微細加工技術によりマイクロオーダーサイズの幅および高さを有する微細流路をその上に形成したものである。
【0014】
本マイクロリアクタは、化学分析、各種検査、試料の処理・分離、化学合成などに利用される。チップの材料として、様々な成形材料が使用可能であり、個々の材料特性に応じて使用される。本発明のマイクロリアクタの基本構造は、プラスチック樹脂、ガラス、シリコンなどの1以上の成形材料を適宜組み合わせて作製され、少なくとも2つの基板で本体が構成されるチップタイプのマイクロリアクタ(マイクロ流体チップ)である。本発明のチップにおける好ましいその構造は、溝形成基板および被覆基板なる基本的基板を用いて、構造部として、ポンプ接続部、弁基部および液溜部(試薬収容部、検体収容部、廃液貯留部など)の構造部を形成するとともに、流路が少なくとも該溝形成基板上に形成されており、該溝形成基板における、少なくともこれらの構造部、該流路および検出部を、あるいは少なくとも検出部を光透過性の被覆基板を密着させて覆うことを特徴としている。・流路
マイクロリアクタとしてのチップの流路は、基板上に目的に応じて予め設計された流路配置に従って、形成される。流体が流れる流路は、例えば幅および深さが数10十〜数百μm、好ましくは幅50〜200μm、深さ25〜300μm程度に形成されるマイクロメーターオーダー幅の微細流路である。流路幅が50μm未満であると、流路抵抗が増大し、流体の送出および検出上不都合である。幅500μmを超える流路ではマイクロスケール空間の利点
が薄まる。その形成方法は、従来の微細加工技術による。典型的にはフォトリソグラフィ技術による感光性樹脂による微細構造の転写が好適であり、その転写構造を利用して、不要部分の除去、必要部分の付加、形状の転写が行われる。チップの構成要素を型どるパタ
ーンをフォトリソグラフィ技術により作製し、このパターンを樹脂に転写成形する。したがって、マイクロリアクタの微細流路を形成加工する基本的基板の材料は、サブミクロンの構造も正確に転写でき、吸水による流路の変形などが起こりにくく、機械的特性の良好なプラスチックが好ましい。例えばポリスチレン、ポリジメチルシロキサンなどは形状転写性に優れる。必要であれば射出成形、押し出し成形などによる加工も使用してもよい。さらに微細空間では、流路内面が疎水性である流路が流体の流れを止めたり、緩めたりなどする流体運動の制御に好都合である。そこで微細流路を形成する基板に、微量の検体液が途中でロスすることなく送液されるように、疎水性、溌水性のプラスチック樹脂を使用すれば、流路内を特に撥水コーティングは必要ない。このような材質には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンビニルアルコール、ポリカーボネートなどの樹脂が例示される。
【0015】
本発明のマイクロリアクタでは、各種試薬の収容部、検体収容部などの各収容部内の液体が、マイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部によってこれらの各収容部に連通されたマイクロポンプによって送液される。複数流路から送液されてきた複数の流体が、一合流点で合流しそれより下流の混合流路で混合され、前記の複数流路は、それぞれ前記チップとは別途のマイクロポンプに個別に連通されており、該マイクロポンプを駆動することによりそれぞれの流路から合流点へ各流体を送液している。
【0016】
マイクロメートル領域での流路と流体との関係では、一般に流体の挙動は慣性力よりも粘性力の方が支配的となる。流路の幅が狭いほど、粘性力と慣性力との力の比を表す無次元パラメータであるレイノルズ数(=密度×速度×代表寸法÷粘度)が小さくなる。例えば幅が1mm以下の領域ではこの効果は大きい。このレイノルズ数が小さいと流れが安定化し、レイノルズ数から流体の流れが層流かどうかを推測できる。概ね、レイノルズ数が2000以下だと層流である。
【0017】
このようなマイクロリアクタ(マイクロ流体チップ)の微細流路内を流体が、レイノルズ数の小さい層流の形態で流れる場合、図1に示すように、流路中央部分を流れる流体の流速は、流路壁際付近を流れる流体の流速よりも速くなるという一般的な特性がある。かかる特性は、複数流体を混合する際の混合効率にも影響を与える。
・複数の流体の混合
複数の微細流路を流れる流体が流体混合部に集まって合流し、混合する場合、それらの間の混合比は必要に応じて変えられる。2種類の流体の合流・混合は、具体的には試薬と試薬、または検体と試薬とを流路内で混合する場合が該当する。例えば、検体液と反応試薬液を混合するときには、往々にして後者の方の容量が多い。2つの流体を1:1の混合比で混合する場合には、それぞれの流体を送出するマイクロポンプが同タイプでしかもその駆動電圧および流通する流路の流路抵抗が略同一であれば、2流体を1:1の割合で合流させればよい。しかし、2流体の混合比が1:1からはずれると別の問題が生じる。
【0018】
2流体を均一に混合させる際に、正確な混合比が安定して確立されないと、分析の精度にも影響する。正確な混合比を得るには、精密な流体の流量制御および混合方法の面から検討することが必要である。一例として、流量センサーを用いて流量を計測し、計測値に基づいてフィードバック制御を行う方法も考えられるが、センサーおよび制御回路がシステムをより複雑なものとし、その分コスト的に不利となる。
【0019】
複数の流体を混合流路へ流して混合する場合には、上記の特性によって、流路中央部を流れる流体のみが、どんどん先へ流れ、それ以外の流体は遅れて流れる状況になる。このため混合流体の先頭(メニスカス)付近には、流路中央部を流れている流体の比率が高くなる傾向がある。結果的にそのような流路中央部を流れる流体の濃度が、実際の送液比と比べて高くなるという問題があった。
【0020】
図2は、そうした混合流路内での複数流体の挙動を概念的に示すものである。メニスカス部分では、流体が渦を巻くようになって乱流気味となる。図2では、液体Aが3流路が
合流する三股の中央部に位置し、側流路が両方とも液体Bを送液しているため、合流点に
おける流路の位置関係から、流体Aが混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体と
なる可能性が高い。しかしながら、合流の様式(例えば、合流点における合流流体の交差角度)、流体の粘性、合流点に流入する流体の勢いの違いなど、様々な要因が作用することも考えられる。特に図2のように混合比率が1:1以外の場合には、混合流路内の流体に速度差が発生しやすい。なお図2は、液体Bが2つの流路から送液されるが、3種類の流体が3つの流路から合流しても同様になる。
【0021】
2つの流路が1:1で合流して層流状態で混合する場合には、流体相互の拡散は界面での自己拡散のみに基づいて起こる。この場合でも、粘性抵抗の相対的な差などから、流体Aが混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体となると、流れの先端部分は、流体Aの比率が高くなる。
【0022】
合流した流体が混合してなる混合流体は、その先端部分では濃度の偏りがあるためにカットするとともに、それ以外の部分では均一に混合するような方策を講じる必要がある。混合流体の先頭部分を切り捨てて、混合比率が安定してから混合液を次工程へ送液する方式では、カットされる先端部分は廃棄するため、試薬などの無駄になることは否めない。
【0023】
そこで、本発明のマイクロリアクタでは、該複数流路のうち、少なくとも1つの流路からは他流路から送液される流体とは異なる流体が合流点に送液されるときに、混合流路で
混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体Aの流量の、
混合流路内の流路幅方向の壁際付近を流れる流体Bの流量に対する、
比率の調整によって混合流路で均一に混合することを実現するものである。
【0024】
そうした比率の調整の一方法として、当該比が送液開始直後よりも送液時間の後半の方で高くなるように送液することである。すなわち、送液を開始してしばらくは、壁際付近を流れる流体Bよりも混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体Aを流す量を少なくする方式である。例えば、流体Aと流体Bを1:1に混合する場合、流体Aの流体Bに対する流量の比率を1/4〜3/4の割合にする。この比率は、一概に決められないが、通常は流
体Aと流体Bの粘度、混合流路の長さなどを考慮して設定するのがよい。送液の後半では、流体Aの流量を上げて、最終的に1:1の割合の流量比となるように送液して流体Bと混合する。図2のように、2つの液体が1:1ではなく、1:2の割合で混合する場合には、送液開始当初の流量の比率は、上記1:1の場合よりもさらに流体Aの流量は流体Bよりも下げる必要がある。
【0025】
上記比率の別の調整方法として、流体Bを駆動するマイクロポンプの駆動電圧に対する、流体Aを駆動するマイクロポンプの駆動電圧の比率を、送液開始直後よりも送液時間の後半の方が、高くなるように駆動電圧を変化させることによってもよい。流路を流れる流体の流量は、他の条件が同一であれば、流体を送液している個別のマイクロポンプの送液圧力によって決まる。実際にはマイクロポンプの発生圧力は、そのポンプに供給される駆動電圧にほぼ比例するので、それぞれの流体を送出するマイクロポンプの駆動電圧を変えることによりポンプの発生圧力を違えて流体の送液流量を調整することとなる。
【0026】
マイクロポンプの能力にもよるが印加する最大電圧は、発生圧力に応じて数ボルト〜数十ボルトである。ただし混合する複数流体の混合比を、ここではマイクロポンプの駆動電圧の制御によって決定するのではなく、上記目的のために駆動電圧の制御により一時的に流量比を変化させるだけである。したがって駆動電圧の相違は、最終混合比に対応したも
のではなくてもよく、両流体の上記のような流速の違いを解消するに充分な駆動電圧の違いであればよい。
【0027】
他方、ポンプの駆動電圧を下げると、用いるマイクロポンプの送出特性から一般的には精密な送出調整が容易ではなくなる。特に本発明に使用する、バルブのないポンプの場合、低電圧で動かすポンプの力が微小であるために、高電圧で動かす方のポンプの力による影響を受けやすい。このため合流させる流路のポンプをなるべく同一電圧で駆動することが望ましい。前記の流量比率の調整が流量の一時的な調整であることから、別の流量変更手段を用いて、合流点での流量調整をおこなってもよい。例えば合流する流体を送出する流路の流路数を違えることに基づくことも考えられる。すなわち合流する流体を送出するマイクロポンプの使用台数および流路数を一時的に増減することにより、当初の合流する流量の比率を調整してもよい。具体的には流量を多くする流体の方の流路を、1つの流路ではなく2以上の流路を使用し、各々の流路にマイクロポンプを配置することにより該流体の流量を相対的に多くする形態であってもよい。この態様では合流点で2流体が合流しても、各流体が流れて来た流路の数は同一ではない。あるいは流体を送出する各マイクロポンプの駆動電圧を実質的に略同一にしながら、合流点までの流路の長さを調整することにより流路抵抗を違えて合流する量比を調整する方式であってもよい。
【0028】
さらに別の混合方式として、
複数流路から送液されてきた複数の流体が、一合流点で合流しそれより下流の混合流路で拡散混合されるマイクロリアクタであって、
該複数流路のうち、少なくとも1つの流路からは他流路から送液される流体とは異なる流体が合流点に送液されるときに、
混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体の混合点へ送液する送液開始タイミングを、その他の流体の混合点へ送液する送液開始タイミングよりも遅らせることによって混合流路で均一に混合する。
【0029】
送液開始時点で、混合流路直前の合流点に流体Aおよび流体Bを送り出すタイミングによって上記の問題を解決する。具体的には、送液開始時点で、流体Aの送液を流体Bの送液より若干遅らせればよく、これによって流体Bの方が合流点に先に到達するようになる。
その送液開始のタイミングの違いを設定するには、上記の流量比調節の場合と同様に、諸条件を検討する。
【0030】
さらに本発明には、複数流路から送液されてきた複数の流体が、一合流点で合流しそれより下流の混合流路で混合されるマイクロ流体チップにおいて、
該複数流路のうち、少なくとも1つの流路からは他流路から送液される流体とは異なる流体が合流点に送液されるときに、混合流路で
混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体の流量の、
混合流路内の流路幅方向の壁際付近を流れる流体の流量に対する、
比率を調整することによるか、あるいは
混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体の混合点へ送液する送液開始タイミングを、その他の流体の混合点へ送液する送液開始タイミングよりも遅らせることにより、混合流路で複数の流体を均一に混合する方法も含まれる。
・混合流路における流体の混合
マイクロリアクタの微細流路を層流として流れる複数流体の混合では、混合速度は、外的作用による撹拌がなければ濃度差に起因する拡散が律速となる。比界面積(液体の体積に対する、液体間界面の面積の比)を大きく、拡散距離を短くすることで比較的短い時間に定量混合することができる。図5は、マイクロメートルオーダーの幅の流路15に一定の幅比で複数の流体を層流状に流し、流体の混合を行う流路構成の一例を示した図である
。図5(a)に示したように、合流点までの流路径が異なる2つの流路を流れる2つの流体は、合流点に単位時間あたり、それぞれm:nの比率で流入して合流する。そして合流点からこの割合での幅からなる2層の一様な流れを形成し、上記のように最終的にm:nの比率で混合する。例えば、流路径100μmの流路で2:1の一定の割合で流路15に流体Aと流体Bとを送出した場合、図5(a)に示したように、概ね60μm幅の流体Aの層
と、概ね30μm幅の流体Bの層とが形成され、しばらく混合流路を流れている間に自発的
な拡散によって次第に混合する。
【0031】
混合比m:nが1:1から離れると、混合流路内の流体に速度差が発生しやすい。そうした速度差による混合流路の非均一な部分を少なくするために、図5(b)では、合流点へ流入する流量の比が、送液開始直後と、その後の送液とは相違するように送液している。すなわち、送液を開始してしばらくは、混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体Aを流す量を、他の混合流体Bよりも少な目にする。送液の後半では、流体Aの流量を上げて、最終的にm:nの割合の流量比となるように送液して流体Bと混合する。このように複数の分岐流路から各流体を混合流路に送出する場合、各分岐流路ごとに混合比に応じた流量となるように送出するが、上記のようにすることにより混合流路長の全域にわたって均一な濃度で混合し、最終的に所望の比率でこれらの流体を迅速に混合することができる。
【0032】
2つの流体をそれぞれ所定の流量で混合流路15内へ合流させた後、例えば流体Aを送出するマイクロポンプを、送出方向を順・逆方向と繰り返し切り替えるように駆動し、混合流路15内の合流した2流体を流路15内で前後動させて混合を促進してもよい。例えば流路15の幅が0.2mm、深さが0.2mm、液量が25μlである場合、振幅25mm、周期5秒程度の往復動をさせればよい。この前後動により、流路15内の2つの流体は活発に拡散混合される。
【0033】
また、流体B側の流路33に逆止弁、能動弁などの弁を設けて、混合時にはそれを閉止するとともに、流体Aを送出するマイクロポンプによって流路15内の合流した2流体を前後動させると、混合用の別途のマイクロポンプを流路に配置する必要がない。このようなマイクロポンプには、図4に示したようなピエゾポンプが好適である。
・マイクロポンプ
マイクロポンプとしては、アクチュエータを設けた弁室の流出入孔に逆止弁を設けた逆止弁型のポンプなど各種のものが使用できるが、ピエゾポンプを用いることが好適である。図4(a)は、ピエゾポンプの一例を示した断面図、図4(b)は、その上面図である。このマイクロポンプには、第1液室48、第1流路46、加圧室45、第2流路47、および第2液室49が形成された基板42と、基板42上に積層された上側基板41と、上側基板41上に積層された振動板43と、振動板43の加圧室45と対向する側に積層された圧電素子44と、圧電素子44を駆動するための駆動部(図示せず)とが設けられている。この駆動部と、圧電素子44表面上の2つの電極とは、フレキシブルケーブルなどによる配線で接続されており、かかる接続を通じて当該駆動部の駆動回路によって圧電素子44に特定波形の電圧を印加する構成となっている。
【0034】
駆動部からの駆動電圧により、圧電素子44とこれに貼付された振動板43が振動し、これにより加圧室45の体積が増減する。第1流路46と第2流路47とは、幅および深さが同じで、長さが第1流路よりも第2流路の方が長くなっており、第1流路46では、差圧が大きくなると、流路内およびその近傍で乱流が発生し、流路抵抗が増加する。一方、第2流路47では、流路幅が長いので差圧が大きくなっても層流になり易く、第1流路に比べて差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が小さくなる。
【0035】
例えば、圧電素子44に対する駆動電圧により、加圧室45の内方向へ素早く振動板4
3を変位させて大きい差圧を与えながら加圧室45の体積を減少させ、次いで加圧室45から外方向へゆっくり振動板43を変位させて小さい差圧を与えながら加圧室45の体積を増加させると、流体は同図のB方向へ送液される。逆に、加圧室45の外方向へ素早く振動板43を変位させて大きい差圧を与えながら加圧室45の体積を増加させ、次いで加圧室45から内方向へゆっくり振動板43を変位させて小さい差圧を与えながら加圧室45の体積を減少させると、流体は同図のA方向へ送液される。
【0036】
なお、第1流路と第2流路における、差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合の相違は、必ずしも流路の長さの違いによる必要はなく、他の形状的な相違に基づくものであってもよい。
【0037】
上記のように構成されたピエゾポンプによれば、ポンプの駆動電圧および周波数を変えることによって、所望する流体の送液方向、送液速度を制御できるようになっている。
図4(c)に、このポンプの他の例を示した。この例では、ポンプをシリコン基板71、圧電素子44、および図示しないフレキシブル配線から構成している。シリコン基板71は、シリコンウエハをフォトリソグラフィー技術により所定の形状に加工したものであり、エッチングにより加圧室45、ダイヤフラム43、第1流路46、第1液室48、第2流路47、および第2液室49が形成されている。第1液室48にはポート72が、第2液室49にはポート73がそれぞれ設けられており、例えばこのピエゾポンプをマイクロリタクタチップとは別体とする場合には、このポート73を介してマイクロリアクタチップのポンプ接続部12と連通する(図3)。例えば、ポート72、73が穿孔された基板74と、チップのポンプ接続部近傍とを上下に重ね合わせることによって、ポンプを該チップに接続することができる。また、1枚のシリコン基板に複数のポンプを形成することも可能である。この場合、チップ2と接続したポートの反対側のポートには、駆動液タンク10が接続されていることが望ましい。ポンプが複数個ある場合、それらのポートは共通の駆動液タンクに接続されていてもよい。
【0038】
上記マイクロポンプと、本発明のマイクロ流体システムとの関係を以下説明する。本発明の好ましい態様を示す図6の例では、マイクロポンプは、マイクロリアクタチップとは別の装置としてシステム本体に属し、駆動液タンクと連通している。マイクロポンプは、マイクロリアクタチップとは、両者が互いに所定の形態で接合したときに、該チップ上のポンプ接続部と連結して該チップの流路と連通するようになる。
【0039】
図3は、マイクロポンプとしてのピエゾポンプと連通するチップ上のポンプ接続部周辺の構成を示す。この図でマイクロポンプの流体送出のポートからチップの流路へと接続するポンプ接続部12から下流の流路がマイクロリアクタチップ上にある。(a)は駆動液を送液するポンプ部の構成を示し、同図(b)は試薬を送液するポンプ部の構成を示している。ここで、24は駆動液の収容部であり、図1の駆動液タンクに相当するである。駆動液は鉱物油などのオイル系または水系のいずれであってもよい。25は、予め収容された試薬を封止する封止液の収容部である。この封止液は、微細流路への漏出により試薬が反応してしまうこと等を防止するためのものである。封止液は、微細流路中に充填してもよく、封止液用に設けられた貯留部に充填してもよい。
【0040】
図4(a)(b)に図示されていないが、第1液室48には駆動液タンク10につながるポート72が、第2液室49にはポンプ接続部と連結するポート73が設けられている。第1液室は、「リザーバ」の役割を演じ、ポート72で駆動液タンク10から駆動液の供給を受けている。第2液室は、マイクロポンプユニットの流路を形成し、その流路の先にポート73があり、チップの「ポンプ接続部」12とつながる。
【0041】
なおマイクロポンプそのものもチップ上に組み込むことも可能である。特にチップ上の
流路が比較的単純であり、反復使用を前提とする目的または用途、例えば化学合成反応用のマイクロリアクタとする場合にはこの形態を採り得る。
・流体の送出制御方法
マイクロポンプを制御する電気制御系統においても、流量の目標値および送液タイミングを設定してそれに応じた駆動電圧をマイクロポンプに供給しているシステムでも、流路抵抗値の変化によって流量が目標値からずれてくるという問題がある。複数のマイクロポンプによって複数の流体を送出して合流させる場合には、合流後の流路に満たされる流体量に応じて複数のマイクロポンプ相互間の影響度合いが変化する。これを解決する技術として、流量が目標値になるように制御する方法の発明が開示されている(特開2004-270537号公報)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
・本発明のマイクロ分析システムの概要
本発明のマイクロ分析システムは、
チップとは別途のマイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部と、流体が流通する微細流路と、2以上の流体が合流して混合される混合流路と、
を少なくとも設けられたマイクロ流体チップと、
システム本体と、
を備え、そのシステム本体は、少なくとも
ベース本体と、
そのベース本体内に配置され、該チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部と、該マイクロポンプとを含むマイクロポンプユニットと、
少なくとも該マイクロポンプユニットの機能を制御する制御装置と、
を備え、
該マイクロポンプが、
流路に設けられ、流路抵抗が差圧に応じて変化する第1流路と、
前記流路に設けられ、差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が第1流路よりも小さい第2流路と、
前記流路に設けられ、第1流路および第2流路に接続された加圧室と、
該加圧室の内部圧力を変化させるアクチュエータと、
該アクチュエータを駆動する駆動装置と
を備えるマイクロポンプである。前記の複数流路は、それぞれ前記マイクロポンプに個別に連通されており、該マイクロポンプを駆動することによりそれぞれの流路から合流点へ各流体を送液することを特徴としている。
【0043】
以下、本発明のマイクロ分析システムの一実施形態における構成を示した概念図である図6を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図示したようにマイクロリアクタチップとともに、このチップを収容する装置として、反応のための加熱・冷却ユニット(ペルティエ素子、ヒーター)と、送液用マイクロポンプ、駆動液タンクおよびチップ接続部を有するマイクロポンプユニットと、その送液、温度、反応の各制御に関わる制御装置(図示せず)と、光学検出系(LED、ホトダイオードなど)を含み、データの収集(測定)および処理をも受け持つ検出データ処理装置(CPU)とを備えているシステム本体がある。
【0044】
チップ以外の構成要素については、これらを一体化したシステム装置本体とし、チップをこの装置本体に着脱するように構成することが望ましい。またマイクロポンプとして、通常、形状が略同一の複数のマイクロポンプが装置本体に組み込まれる。これら複数のマイクロポンプと、チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部とを含むマイクロポンプユニットが、本発明システム本体のベース本体内に配置されている。図示したようにチップを該装置本体に装着し、面同士で重ね合わせることによりチップのポンプ接
続部を装置本体のマイクロポンプユニットにあるチップ接続部のポートに接続するようになっている。
【0045】
マイクロポンプを制御する電気制御系統の装置は、流量の目標値および送液のタイミングを設定し、それに応じた駆動電圧をマイクロポンプに供給している。そうした制御を受け持つ制御装置についても、後述するように本発明システムの装置本体に組み込んで、マイクロリアクタチップのポンプ接続部を装置本体のマイクロポンプユニットのチップ接続部に接続させた場合に作動制御させるようにしてもよい。
【0046】
光学的検出、データの収集および処理を受け持つユニットである検出処理装置は、例えば可視分光法、蛍光測光法などの手法が適用される場合、その光学的測定の手段として特に限定されないが、LED、光電子増倍菅、フォトダイオード、CCDカメラなどがその構成要素としてシステム装置本体内に適宜設置されることが望ましい。
【0047】
少なくとも前記マイクロポンプユニットの機能と検出処理装置の機能とを制御する制御装置が本発明システムの装置本体に組み込まれている。その制御装置は、さらに温度管理、測定データの記録と処理なども含めてシステムを統括的に制御支配させてもよい。この場合の制御装置は、予め送液の順序、容量、タイミングなどに関して設定された諸条件を、マイクロポンプおよび温度の制御とともにプログラムの内容としてマイクロ分析システムに搭載されたソフトウェアに組み込まれている。検体の前処理、反応および検出の一連の分析工程は、前記のマイクロポンプ、検出処理装置および制御装置とが一体化されたシステム装置本体にチップを装着した状態で行なわれる。装着したチップに検体を注入してから、あるいは検体を注入したチップを装置本体に装着してから分析を開始してもよい。検体および試薬類の送液、前処理、混合に基づく所定の反応および光学的測定が、一連の連続的工程として自動的に実施され、測定データが、必要な条件、記録事項とともにファイル内に格納される形態が望ましい。
【0048】
・分析の実施態様
本発明のマイクロ分析システムに用いられる前記マイクロリアクタチップでは、以下の処理を行なうことによって検体中の標的物質を分析することができる:
該チップのポンプ接続部と前記マイクロポンプユニットのチップ接続部とを液密に密着させた状態で該チップをベース本体内に装着した後、該チップにおいて、
検体収容部に収容された検体または該検体を流路内で処理した処理液に含まれる標的物質と、
試薬収容部に収容された試薬とを、
反応部位を構成する流路へ送液して合流させて、
これらを反応させた後、得られた反応生成物質もしくはその処理物質を、
検出部位を構成する流路へ送液してその検出を前記検出処理装置により行なう。
【0049】
典型的には、図6に示されるように最上流部に位置する複数の試薬収容部に収容された各試薬が試薬収容部より下流側の流路で混合され、混合試薬が下流の分析流路に送液される。分析流路において検体と混合試薬とがY字流路などから合流して混合され、昇温等により反応が開始され、流路下流に設けられた検出部位において反応が検出される。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、種々の実施の形態において、本発明の趣旨に沿って任意の変形、変更が可能であり、それらは本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、微細流路を流れる層流の中央部と流路壁側との流速の違いを示す。
【図2】図2は、2種の流体が3流路から合流し、混合する有様を図示する。
【図3】図3は、ピエゾポンプをチップとは別体とした場合におけるチップのポンプ接続部周辺の構成を示した図である。
【図4】図4(a)は、ピエゾポンプの一例を示した断面図、図4(b)は、その上面図である。図4(c)は、ピエゾポンプの他の例を示した断面図である。
【図5】図5は、混合流路での2種の流体の混合様式を示す。
【図6】図6は、マイクロ分析システムの一つの実施形態として構成を示す。
【符号の説明】
【0052】
11 マイクロポンプ(ピエゾポンプ)
12 ポンプ接続部
13 送液制御部(疎水性バルブ)
15 微細流路
18 試薬収容部
24 駆動液収容部
25 封止液収容部
26 空気抜き用流路
31 分岐部
33 分岐部
41 上側基板
42 基板
43 振動板
44 圧電素子
45 加圧室
46 第1流路
47 第2流路
48 第1液室
49 第2液室
71 シリコン基板
72 ポート
73 ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数流路から送液されてきた複数の流体が、一合流点で合流しそれより下流の混合流路で拡散混合されるマイクロリアクタであって、
該複数流路のうち、少なくとも1つの流路からは他流路から送液される流体とは異なる流体が合流点に送液されるときに、混合流路で
混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体Aの流量の、
混合流路内の流路幅方向の壁際付近を流れる流体Bの流量に対する、
比率の調整によって均一に混合することを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項2】
前記比率の調整が、送液開始直後よりも送液時間の後半の方が高くなるように送液することである、請求項1に記載のマイクロリアクタ。
【請求項3】
前記比率の調整が、流体Bを駆動するマイクロポンプの駆動電圧に対する、流体Aを駆動するマイクロポンプの駆動電圧の比率を、送液開始直後よりも送液時間の後半の方が、高くなるように駆動電圧を変化させることによる、請求項1または2に記載のマイクロリ
アクタ。
【請求項4】
前記比率の調整が、合流する流体を送出する流路の長さまたは流路数を違えることに基づく、請求項1に記載のマイクロリアクタ。
【請求項5】
複数流路から送液されてきた複数の流体が、一合流点で合流しそれより下流の混合流路で拡散混合されるマイクロリアクタであって、
該複数流路のうち、少なくとも1つの流路からは他流路から送液される流体とは異なる流体が合流点に送液されるときに、
混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体の混合点へ送液する送液開始タイミングを、その他の流体の混合点へ送液する送液開始タイミングよりも遅らせることによって混合流路で均一に混合することを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項6】
前記の複数流路は、それぞれ前記チップとは別途のマイクロポンプに個別に連通されており、該マイクロポンプを駆動することによりそれぞれの流路から合流点へ各流体を送液することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロリアクタ。
【請求項7】
別途のマイクロポンプに連通させるための流路開口を有するポンプ接続部と、流体が流通する微細流路と、2以上の流体が合流して混合される混合流路と、を少なくとも設けられたマイクロ流体チップと、
システム本体と、
を備え、そのシステム本体は、少なくとも
ベース本体と、
そのベース本体内に配置され、該チップに連通させるための流路開口を有するチップ接続部と、該マイクロポンプとを含むマイクロポンプユニットと、
少なくとも該マイクロポンプユニットの機能を制御する制御装置と、
を備え、
該マイクロポンプが、
流路に設けられ、流路抵抗が差圧に応じて変化する第1流路と、
前記流路に設けられ、差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が第1流路よりも小さい第2流路と、
前記流路に設けられ、第1流路および第2流路に接続された加圧室と、
該加圧室の内部圧力を変化させるアクチュエータと、
該アクチュエータを駆動する駆動装置と
を備えるマイクロポンプであることを特徴とするマイクロ分析システム。
【請求項8】
複数流路から送液されてきた複数の流体が、一合流点で合流しそれより下流の混合流路で混合されるマイクロ流体チップにおいて、
該複数流路のうち、少なくとも1つの流路からは他流路から送液される流体とは異なる流体が合流点に送液されるときに、混合流路で
混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体の流量の、
混合流路内の流路幅方向の壁際付近を流れる流体の流量に対する、
比率を調整することによるか、あるいは
混合流路内の流路幅方向の中央付近を流れる流体の混合点へ送液する送液開始タイミングを、その他の流体の混合点へ送液する送液開始タイミングよりも遅らせることにより、混合流路で複数の流体を均一に混合する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−117883(P2007−117883A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313379(P2005−313379)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】