説明

マイクロリアクタ

【課題】 複数の試薬を混合した混合試薬と、試料との反応を行うマイクロリアクタにおいて、試薬等の各液を混合するタイミング、各液の混合比率、送液圧力などを精度良く制御可能なマイクロリアクタを提供する。また、駆動液によって液体を押して送液する場合において、これらの液体間に気泡が介在することを防止可能なマイクロリアクタを提供する。
【解決手段】 複数の試薬が個別に収容される収容室からなる複数の試薬収容部33のそれぞれに、駆動液を収容室34aに注入するための注入口34bと、注入された駆動液により収容室34aから試薬が押し出される出口34cと、を設け、注入口34bに連通するマイクロリアクタ1の開口32を通じて外部ポンプ12からの駆動液を収容室34aへ注入するようにした。また、注入口34bと、開口32とを連通させる流路45に、この流路45から分岐し、末端が外部へ開放された空気抜き用の流路46を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、遺伝子増幅反応、抗原抗体反応などによる生体物質の検査・分析、その他の化学物質の検査・分析、有機合成等による目的化合物の化学合成などに用いられるマイクロリアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、セ
ンサーなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている(特許文献
1)。これは、μ−TAS(Micro total Analysis System)、バイオリアクタ、ラブ・
オン・チップ(Lab-on-chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野でその応用が期待されている。現実には遺伝子検査に見られるように、煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、自動化、高速化および簡便化されたミクロ化分析システムは、コスト、必要試料量、所要時間のみならず、時間および場所を選ばない分析を可能とすることによる恩恵は多大と言える。
【0003】
各種の分析、検査ではこれらの分析用チップにおける分析の定量性、解析の精度、経済性などが重要視される。そのためにはシンプルな構成で、高い信頼性の送液システムを確立することが課題である。精度が高く、信頼性に優れるマイクロ流体制御素子が求められている。これに好適なマイクロポンプシステムおよびその制御方法を本発明者らはすでに提案している(特許文献2〜4)。
【0004】
上記のような分析用チップでは、複数の試薬を混合した混合試薬と、試料との反応を行うことができることが望ましいが(以下、このようなチップをマイクロリアクタという)、こうしたマイクロリアクタでは、一つのチップ内で試薬同士の混合、試薬と試料との混合など、各種の混合操作が必要となる。この際、各試薬等の合流のタイミングを精度良く合わせること、各試薬等を所定の圧力で送液することなど、試薬等の送液に高い精度が求められる。試薬等の送液を精度良く制御できないと、反応およびその検出結果に影響する。
【0005】
一方、上記のような分析用チップ内の微細流路において極少量の液体を送液するための機構として、気体の圧力差による方法など各種の方法が提案されている。しかし、一定圧力の気体を駆動力とする吸引、加圧等による圧力差に基づく駆動の場合には、流路内の各領域で温度が異なる場合等に、気体の膨張・収縮により送液が安定しなくなるといった不具合が生じることがある。また、流路の途中に大きな圧力損失を生じる機構が設けられていると、液体が大きな圧力損失を有する部分を通過する前と後で流速が大きく変化するという不具合が生じることがある。
【0006】
一方、特許文献5には、油性の駆動液を用いて、これと非相溶の水性液等を下流へ押して送液するマイクロ流体デバイスの送液方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−28589号公報
【特許文献2】特開2001−322099号公報
【特許文献3】特開2004−108285号公報
【特許文献4】特開2004−270537号公報
【特許文献5】特開2004−61320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のような不具合は、これらの液体間に気泡が介在する場合には同様に生じ得る。例えば、送液対象である液体を分析用チップの微細流路に注入した後、その上流側から、配管などを経由してチップの注入口から駆動液を注入する場合、これらの液体間に気泡が介在する場合が多い。
【0008】
本発明は、複数の試薬を混合した混合試薬と、試料との反応を行うマイクロリアクタにおいて、試薬等の各液を混合するタイミング、各液の混合比率、送液圧力などを精度良く制御可能なマイクロリアクタを提供することを目的としている。
【0009】
また本発明は、駆動液によって液体を押して送液する場合において、これらの液体間に気泡が介在することを防止可能なマイクロリアクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のマイクロリアクタは、板状のチップと、
複数の試薬が個別に収容される収容室からなる複数の試薬収容部と、
前記複数の試薬収容部から送出される複数の試薬を混合して混合試薬を生成する試薬混合部と、
外部から試料を注入するための注入口を有する試料受容部と、
前記試薬混合部から送出される混合試薬と、前記試料受容部から送出される試料とを混合して反応させる反応部と、を備え、
前記複数の試薬収容部、試薬混合部、試料受容部および反応部は、前記チップ内に組み込まれて流路により互いに連通され、
前記試薬収容部に、駆動液を収容室に注入するための注入口と、注入された駆動液により収容室から試薬が押し出される出口と、が設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記の発明において、前記試薬収容部の注入口は、前記チップに外部ポンプを接続することによって当該外部ポンプと連通される開口に流路を介して連通されており、
前記駆動液は、前記チップに接続された外部ポンプによって、前記開口を通り注入口から収容室へ注入されることが好ましい。
【0012】
このように、複数の各試薬を個別に収容する試薬収容部を設けて、それぞれの試薬収容部へ駆動液を供給し、これらの試薬収容部の下流で各試薬を合流させて混合する構成としたので、各試薬を混合するタイミング、各液の混合比率、送液圧力などを精度良く制御することができる。
【0013】
上記の発明において、前記注入口と、前記開口とを連通させる流路に、この流路から分岐し、末端が外部へ開放された空気抜き用の流路が設けられていることが好ましい。
上記の発明において、前記試薬収容部の流路と、その下流側の流路とを連通し、これらの流路よりも流路断面積が小さい送液制御通路を備え、送液圧力が所定圧に達するまで液の通過を遮断し、所定圧以上の送液圧力が加わることにより液を通過させる撥水バルブが設けられ、
前記外部ポンプと連通される開口より前記試薬収容部へ続く流路から前記注入口の位置で分岐した分岐流路が設けられ、
前記分岐流路に、末端が外部へ開放された空気抜き用の流路が設けられていることが好ましい。
【0014】
前記空気抜き用の流路は、流路径が15μm以下であり、且つ、流路内面の水との接触角が30°以上であることが好ましい。
本発明では特に、疎水性の材質からなるマイクロリアクタの流路において、水系の駆動
液で水性試薬を押し出す場合を対象としているが、上記のように、特定の流路径および水との接触角をもつ空気抜き用の流路を設けることで、水系の駆動液と水性試薬との間に気泡が混入することを防止できる。特に、外部ポンプをマイクロリアクタに接続して駆動液を注入口へ送り出す初期の段階において、これらの液の間に気泡が介在する場合が多いが、試薬収容部の注入口上流側の流路に空気抜き用の流路を設けることで、この気泡が当該流路から抜け出ていくので、気泡の介在を防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマイクロリアクタによれば、試薬等の各液を混合するタイミング、各液の混合比率、送液圧力などを精度良く制御することができる。
また、本発明のマイクロリアクタによれば、駆動液によって試薬等の液体を押して送液する際に、これらの液体間に気泡が介在することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のマイクロリアクタは、板状のチップ内に設けられた微細流路または構造部において、各種の検査、化学分析、化学合成、試料の処理・分離などの目的で試料と試薬との反応を行うものである。
【0017】
本発明のマイクロリアクタの用途には、例えば、遺伝子増幅反応、抗原抗体反応などによる生体物質の検査・分析、その他の化学物質の検査・分析、有機合成などによる目的化合物の化学合成、薬効スクリーニング、薬品抽出、金属錯体の形成・分離などが含まれる。
【0018】
本発明のマイクロリアクタは、板状のチップ内に、
(i)複数の試薬が個別に収容される収容室からなる複数の試薬収容部
(ii)前記複数の試薬収容部から送出される複数の試薬を混合して混合試薬を生成する試薬混合部
(iii)外部から試料を注入するための注入口を有する試料受容部
(iv)前記試薬混合部から送出される混合試薬と、前記試薬受容部から送出される試料とを混合して反応させる反応部
を備えている。
【0019】
前記複数の試薬収容部、試薬混合部、試料受容部および反応部は、前記チップ内に組み込まれて流路により互いに連通されている。
上記の各部の他、チップ内には、必要に応じて、各種の機能をもつ構造部が設けられる。このような構造部の具体例としては、送液を制御するための部位、試料および試薬以外の処理液を収容するための収容部、生体試料等に含まれる不要成分を除去するために試薬との反応に先立って前処理を行うための前処理部、反応後の液に含まれる標的物質等を検出するための検出部、廃液を貯留するための廃液貯留部などが挙げられる。
【0020】
送液を制御するための部位の具体例としては、逆止弁、能動弁、後述する撥水バルブのような弁部などが挙げられる。
各処理液を収容するための収容部の具体例としては、流路壁、ビーズ等の担体などに必要物質を吸着させた状態で洗浄を行うための洗浄液の収容部、試薬と試料との反応を停止させる反応停止液の収容部、反応生成物を検出に適するように変性させるための変性処理液の収容部、光学的検出のために反応生成物を蛍光物質等で標識するための標識用試薬の収容部、その他、抽出液、溶離液、溶菌試薬、溶血試薬等の収容部などが挙げられる。
【0021】
検出部は、マイクロリアクタ内における反応生成物を光学的に検出する場合には、例えば、光透過性の部材を用いて形成された流路部位または液溜状の部位から構成される。
前処理部は、試料に含まれる分析対象物の濃縮、分離、溶菌等を行う部位であり、例えば、生体試料に含まれるタンパク質やイオン性物質等の除去が行われる。このような処理は、例えば、フィルター、ビーズ、ゲル、メンブレンなどの担体を流路内に配置し、この担体に生体物質等を吸着させて該流路内に溶菌試薬、溶血試薬等を流し、次いで洗浄液を流すことにより行うことができる。
【0022】
廃液貯留部は、例えば、所要の大きさをもつ凹部が形成された基材を、流路用の基材の下部側に貼り合わせることによって設けられた、流路と連通する空間により構成される。必要に応じて、該空間にはスポンジ等の廃液吸収用の多孔体が収納される。
【0023】
マイクロリアクタは、板状の基材を用いて、フォトリソグラフィ技術などの微細加工技術を適用して作製される。通常は、流路および構造部となる凹部を1または2以上の基材に形成した後、複数枚の基材を貼り合わせることによってマイクロリアクタを作製する。
【0024】
マイクロリアクタを構成する基材の材料には、目的に応じて各種のものが使用される。その具体例としては、ポリスチレンなどのプラスチック樹脂、ポリジメチルシロキサンなどのゴム系材料、各種の無機ガラス、シリコン、セラミックス、金属などが挙げられる。また、流路壁面に対して、目的に応じて疎水化処理などの各種の表面処理を行ってもよい。
【0025】
マイクロリアクタにおける流路幅のサイズは、マイクロスケール空間の利点、流路抵抗などを考慮して適宜に設計されるが、例えば、幅が数十〜数百μm、好ましくは50〜200μmであり、深さが25〜300μm、好ましくは50〜100μmである。マイクロリアクタのチップ全体の縦横サイズは、用途等にもよるが、典型的には数十mm、その高さは典型的には数mm程度である。
【0026】
本発明のマイクロリアクタにおける試料受容部は、試料を一時収容する収容室と、外部から収容室へ試料を注入するための注入口とを備えている。この収容室は、流路形状、液溜形状など各種の形状であってよい。
【0027】
試料受容部の注入口は、例えば、チップ上面から微量試料を注入できるように構成されている。外部への漏失、汚染、生体試料を使用する場合の感染などを防ぎ、密封性を確保するために、ゴム状材質などの弾性体からなる栓が注入口に形成されているか、あるいはポリジメチルシロキサンなどのゴム材、強化フィルム等で注入口が覆われていることが望ましい。例えば、ゴム材質の栓に突き刺したニードルまたは蓋付き細孔に通したニードルでシリンジ内の試料を注入する。前者の場合、ニードルを抜くとその針穴が直ちに塞がることが好ましい。また、これら以外の試料注入機構を設置してもよい。
【0028】
試料受容部の上流側は、マイクロポンプに連通される流路に連通し、その下流側は、試薬との混合部に連通している。試料受容部に注入された試料は、マイクロポンプによって供給された駆動液により下流側へ押し出され、必要に応じて前処理された後、試薬と混合される。
【0029】
試料受容部に注入される試料は、目的に応じて各種のものが対象となる。例えば、生体物質の検査・分析を行う場合には、生体由来のアナライト含有試料、例えば全血、血漿、血清、バフィーコート、尿、糞便、唾液、喀痰などが挙げられる。遺伝子検査の場合、増幅反応の鋳型となる核酸として遺伝子、DNAまたはRNAがアナライトである。また、このような核酸を含む可能性のある試料から調製または単離したものを試料としてもよい。他のアナライトとしては、各種の代謝物質、ホルモン、タンパク質(酵素、抗原なども含む)などが挙げられる。
【0030】
その他、化学合成を目的とする場合には、試薬と反応させる原料化合物が試料となり、薬効スクリーニング、薬品抽出、金属錯体の形成・分離などを目的とする場合には、それらを行うために試薬と反応させる対象が試料となる。
【0031】
本発明のマイクロリアクタにおける試薬収容部は、試薬を収容する収容室を備えている。この収容室は、流路形状、液溜形状など各種の形状であってよい。収容室には、駆動液を収容室に注入するための注入口と、注入された駆動液により収容室から試薬が押し出される出口と、が設けられている。
【0032】
収容室の上流側に設けられた注入口は、外部のマイクロポンプに連通される流路に連通している。すなわち、チップの片面に開放された開口から収容室の注入口までの流路がチップ内に形成されており、外部のマイクロポンプをチップに接続することにより、マイクロポンプで駆動液をチップ開口から流路へ流し込み、注入口から収容室へ駆動液が注入される。
【0033】
収容室の下流側に設けられた出口は、他の試薬との混合部に連通している。収容室内の試薬は、マイクロポンプからの駆動液により収容室の出口から下流側へ押し出される。その後、収容室から出た試薬は他の試薬と合流して混合される。
【0034】
試薬は、目的に応じて各種のものが対象となるが、本発明において用いられる試薬は必要成分を水に溶解または分散した水性液である。例えば、PCR法により検体中に含まれる遺伝子を増幅する場合における試薬には、2'−デオキシヌクレオシド5'−三リン酸、Taq DNAポリメラーゼ、Vent DNAポリメラーゼまたはPfu DNAポリメラーゼなど
が含有される。
【0035】
また、特許第3433929号に記載されたICAN(Isothermal chimera primer initiated nucleic acid amplification )法により検体中に含まれる遺伝子を増幅する場
合における試薬には、2'−デオキシヌクレオシド5'−三リン酸、検出したい遺伝子に特異的にハイブリダイゼーションできるキメラプライマー、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼのRNaseなどが含有される。
【0036】
その他、化学合成を目的とする場合には、試料と反応させる原料化合物などが試薬に含まれ、薬効スクリーニング、薬品抽出、金属錯体の形成・分離などを目的とする場合には、それらを行うために試料と反応させる物質などが試薬に含まれる。
【0037】
遺伝子検査などの用途では、場所や時間を問わず迅速に検査ができるように、試薬収容部に予め試薬が収容されていることが望ましい。この場合、内蔵される試薬の蒸発、漏失、気泡の混入、汚染、変性などを防止するため、試薬収容部の上流側および下流側を封止することが好ましい。
【0038】
試薬収容部の封止は、封止剤により行うことができる。この封止剤は、使用前にマイクロリアクタが保管される冷蔵条件下では、固化もしくはゲル化しており、使用時、室温にすると融解し流動状態となるものである。マイクロリアクタに予め試薬を収容しておく場合、試薬の安定性上、マイクロリアクタを冷蔵保管することが望ましいが、封止剤として、冷蔵時には固体状態であり室温では液状となる物質を使用することにより、冷蔵保管時には固体状態で試薬を封止するとともに、使用時には液状となり流路から容易に排出することができる。
【0039】
このような封止剤としては、水に対する溶解度が1%以下であり、且つ融点が8℃〜室
温(25℃)である油脂、およびゼラチンの水溶液などが挙げられる。ゼラチンの水溶液は、ゼラチンの濃度を変えることによりゲル化温度を調整することができ、例えば10℃前後でゲル化させるためには、約1%の水溶液とするとよい。
【0040】
上記の封止剤は、試薬収容部における収容室の注入口側および出口側に、試薬を挟んで充填される。封止剤による封止形態は、流路中に充填して流路を封じる形態であってもよく、あるいは封止剤用に設けられた液溜に封止剤を充填する形態であってもよい。
【0041】
また、試薬収容部における収容室の注入口または出口、あるいはこれらの両方に、後述する図2の撥水バルブを設けてもよい。これによって、マイクロリアクタの保管時における試薬の外部への流出を有効に防止できると共に、使用時には、マイクロポンプによって容易に試薬を外部へ押し出すことができる。
【0042】
マイクロポンプは、試薬収容部に収容された各試薬、他の収容部に収容された液などの各液を流路下流側へ送出する。マイクロポンプは通常、送出すべき液に対応して複数個が設置され、それぞれのマイクロポンプは水系の駆動液を下流側へ送出し、試料や試薬等の液を駆動液で下流側へ押し出して送液を行う。
【0043】
本発明において、マイクロポンプは、マイクロリアクタとは別途の、すなわち板状のチップとは独立したものである。例えば、マイクロポンプおよびその制御装置、反応検出用の光学検出装置、温度制御装置、駆動液を収容した駆動液タンクなどを備えた装置本体と、予め試薬を封入したマイクロリアクタと、から試料検査装置を構成する場合が挙げられる。
【0044】
この場合、マイクロリアクタの試料受容部に試料を注入した後、このマイクロリアクタを装置本体に装着して、装置本体側の複数のマイクロポンプと、これらのマイクロポンプに対応するマイクロリアクタの各流路とを連通させる。この状態で、駆動液タンクからの駆動液をマイクロポンプによりマイクロリアクタの流路へ送り出し、これによって流路内の液、例えば試薬収容部の試薬、試料受容部の試料などを下流側へ押し出して試薬同士の混合、試薬と試料との混合などを行う。
【0045】
マイクロポンプは、フォトリソグラフィ技術などにより作製され、特開2001−322099号公報、特開2004−108285号公報に記載されたピエゾ素子により駆動するマイクロポンプ、アクチュエータを設けた弁室の流出入孔に逆止弁を設けた逆止弁型のマイクロポンプなど各種のものが使用できる。なお、上記のピエゾ素子により駆動するマイクロポンプは、流路抵抗が差圧に応じて変化する第1流路と、差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が第1流路よりも小さい第2流路と、第1流路および第2流路に接続された加圧室と、該加圧室の内部圧力を変化させるピエゾアクチュエータとを備えており、このアクチュエータを別途の制御装置により電圧で駆動することにより正逆方向への送液ができるようになっている。
【0046】
なお、本発明において用いられる駆動液は、純水、緩衝液などの水性液であり、水性の駆動液によって、上述した水性の試薬を押し出すようにしている。
駆動液によって各試薬収容部から押し出された複数の試薬は、下流側の試薬混合部で合流して混合される。試薬混合部は、例えば、複数の試薬が個別に送り出される各流路の合流点から先の一本の細長い流路であり、この流路内で混合された混合試薬は、そのさらに下流において試料と合流して反応部で反応が行われる。
【0047】
反応部では、試料と混合試薬との混合液が導入された後、例えば、昇温などにより反応が開始される。反応部は、液溜形状、流路形状など各種の形状であってよく、例えば試料
と混合試薬とを液溜に貯留して反応を行う態様、試料と混合試薬とを微細流路内に合流させて、合流液の送液方向をマイクロポンプにより切り替えて、合流液を微細流路内で繰り返し前後動させながら反応させる態様など、試料と試薬の種類等に応じて適宜の反応形態とすることができる。
【0048】
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。図1は、本発明の一実施例におけるマイクロリアクタと、マイクロポンプと、駆動液タンクとの接続形態を説明する概略図である。なお、同図において、チップ状のマイクロリアクタ1と、チップ状のマイクロポンプユニット11とは、ポンプ接続部31(斜線部分)で互いに重ね合わされている。また、マイクロリアクタ1の流路は、試薬収容部33の周辺およびその上流側のみ示している。
【0049】
試薬収容部33には、試薬が収容される収容室34aが設けられている。収容室34aの上流側には駆動液の注入口34bが、下流側には試薬の出口34cが、それぞれ設けられている。
【0050】
本実施例では、試薬収容部33の注入口34bと出口34cとに、撥水バルブ51を設けている。撥水バルブ51は、図2に示した構造を備えている。同図の撥水バルブ51は、細径の送液制御通路52を備えている。送液制御通路52は、その断面積(流路に対して垂直な断面の断面積)が、上流側の流路53aおよび下流側の流路53bの断面積よりも小さい細流路である。
【0051】
流路壁がプラスチック樹脂などの疎水性の材質で形成されている場合には、送液制御通路52に接する液54は、流路壁との表面張力の差によって、下流側の流路53bへ通過することが規制される。
【0052】
下流側の流路53bへ液54を流出させる際には、マイクロポンプによって所定圧以上の送液圧力を加え、これによって表面張力に抗して液54を送液制御通路52から下流側の流路53bへ押し出す。液54が流路53bへ流出した後は、液54の先端部を下流側の流路53bへ押し出すのに要する送液圧力を維持せずとも液が下流側の流路53bへ流れていく。すなわち、上流側から下流側への正方向への送液圧力が所定圧力に達するまで送液制御通路52から先への液の通過が遮断され、所定圧以上の送液圧力が加わることにより液54は送液制御通路52を通過する。
【0053】
流路壁がガラスなどの親水性の材質で形成されている場合には、少なくとも送液制御通路52の内面に、撥水性のコーティング、例えばフッ素系のコーティングを施す必要がある。
【0054】
流路53a,53b、および送液制御通路52のサイズは、このように流路53bへの液の通過を規制できれば特に限定されないが、一例として、縦横が150μm×300μmの流路53a,53bに対して、縦横が25μm×25μm程度となるように送液制御通路52が形成される。
【0055】
図3は、本発明の一実施例における試薬収容部を示した図である。この試薬収容部33には、その注入口34b側と出口34c側のそれぞれに、水性試薬47に界面で接する油性液48と、油性液48に界面で接する水性液49とがこの順に収容されている。
【0056】
試薬収容部33の最も上流側および最も下流側に収容された水性液49は、撥水バルブ51に接しており、その先の流路への流出が抑えられている。
すなわち、流路壁がプラスチック樹脂などの疎水性の材質で形成されており、撥水バル
ブ51に接する水性液49は、流路壁との表面張力の差によって、収容室34aの外へ通過することが規制される。
【0057】
試薬収容部33の上流側は、図1の概略図に示したように、マイクロリアクタ1のポンプ接続部31を介して接続されたマイクロポンプ12に連通されている。試薬収容部33から下流側の流路へ水性試薬を流出させる際には、マイクロポンプ12によって所定圧以上の送液圧力を加え、これによって表面張力に抗して図3の水性液49を撥水バルブ51から先の流路へ押し出す。水性液49が流出した後は、水性液49の先端部を撥水バルブ51から先の流路へ押し出すのに要する送液圧力を維持せずとも試薬収容部33に収容された液が続いて流れていく。
【0058】
なお、図3の油性液48は、マイクロリアクタの保管時等における水性試薬47の蒸散(および漏失、気泡の混入、汚染、変性など)を防止するためのものであり、上述した封止剤に相当する。油性液48として、例えば、マイクロリアクタの保管時における冷蔵条件下において固化し、使用時にマイクロリアクタを室温にすると融解し流動状態となるものなどを使用できる。具体的には、上述したように水に対する溶解度が1%以下の油脂などが用いられる。
【0059】
試薬収容部33の形状は、図3のような細長の流路形状の他、幅広の液溜状など各種の形状であってよい。また、試薬収容部33において、油性液48や水性液49を個別に貯留する液溜め状の貯留部を設けてもよい。
【0060】
図1のマイクロリアクタにおいて、試薬収容部33の注入口34bの上流側には開口32が設けられている。この開口32は、試薬収容部33の注入口34bと流路45で連通されており、チップ片面から外部へ開放されている。
【0061】
一方、チップ状のマイクロポンプユニット11には、フォトリソグラフィ技術等の微細加工によって複数のマイクロポンプ12が設けられている。このマイクロポンプユニット11において、マイクロポンプ12の下流側には開口15が設けられている。この開口15は、マイクロポンプ12と流路で連通されており、チップ片面から外部へ開放されている。
【0062】
そして、マイクロリアクタ1の開口32と、マイクロポンプユニット11の開口15とを位置合わせしてこれらを重ね合わせることによって、マイクロポンプ12が試薬収容部33に連通された状態でマイクロリアクタ1とマイクロポンプユニット11とが接続される。
【0063】
マイクロポンプユニット11は、上流側で駆動液タンク61に接続され、駆動液タンク61からの駆動液が各マイクロポンプ12に供給される。マイクロポンプ12の駆動によって、駆動液は開口32からマイクロリアクタ1に導入され、流路45を通って注入口34bから試薬収容部33の収容室34aに注入される。これにより、収容室34a内に封入されていた試薬は出口34cから押し出され、その先の流路に送り出される。
【0064】
本発明では、図1のマイクロリアクタにおける開口32と注入口34bとの間の流路45に、空気抜き用の流路46を設けることが望ましい。図4は、本発明の一実施例における試薬収容部の上流側に設けられた空気抜き用の流路および、その周辺の流路構成を示した図、図5は、空気抜き用の流路の拡大図である。図示したように、この空気抜き用の流路46は、駆動液50が供給される流路45から分岐し、その末端が外部へ開放されている。この空気抜き用の流路46から、ポンプの接続時などに流路45内に存在する気泡を除去するようにしている。
【0065】
本発明は特に、樹脂材、ゴム材等のような疎水性の材質からなるマイクロリアクタ、あるいは流路内壁に疎水性処理が施されたマイクロリアクタの流路において、純水、緩衝液などの水系の駆動液で水性試薬を押し出す場合を対象としている。このような場合において、特定の流路径および水との接触角をもつ空気抜き用の流路を設けることで、水系の駆動液と水性試薬との間に気泡が混入することを防止できる。
【0066】
この空気抜き用の流路は、流路径が15μm以下であり、且つ、流路内面の水との接触角が30°以上であることが好ましい。ここで、流路径は、流路が円形である場合には直径を表し、流路が矩形である場合には縦横いずれかの辺の長さ、好ましくは縦横両方の辺の長さを表す。
【0067】
このようにすることで、流路内の気泡を除去できると共に、水系の駆動液が空気抜き用の流路から漏出することを充分に防止することができる。
このような空気抜き用の流路は、図4のように一本の流路に複数本設けられていてもよい。
【0068】
特に、マイクロポンプユニットをマイクロリアクタに接続して駆動液を注入口へ送り出す初期の段階において、これらの液の間に気泡が介在する場合が多いが、空気抜き用の流路を設けることによって、この気泡が当該流路から抜け出ていくので、気泡の介在を防止できる。
【0069】
図6(A)〜図6(D)は、本発明の他の実施例における試薬収容部の上流側に設けられた空気抜き用の流路および、その周辺の流路構成を示した図である。図4および図5に示したような形態で空気抜き用の流路46を設けた場合、図4のように試薬収容部33の注入口34bに撥水バルブ51aを配置すると、空気抜き用の流路46が配置された位置から下流側であり撥水バルブ51aが配置された位置から上流側の流路45に気泡が溜まり易くなる。
【0070】
そこで本実施例では、図6(A)〜図6(D)に示したように、マイクロポンプと連通される開口32から試薬収容部33までにおいて、以下の流路構成を備えている。すなわち、マイクロポンプと連通される開口32より試薬収容部33へ続く流路45から、注入口34bの位置における分岐点55で分岐した分岐流路45aが設けられている。この分岐流路45aの末端では、それ以上先への駆動液の送出が抑制される。
【0071】
この分岐流路45aには、その末端が外部へ開放された空気抜き用の流路46が設けられている。空気抜き用の流路46は、分岐流路45aの流路壁から延び出した上述したような細径の流路であり、例えば、図6(A)のように分岐流路45aの末端位置から複数本が延び出すように配置される。
【0072】
このように構成することで、図4の場合のように気泡が撥水バルブ51aの上流位置に溜まることがなく、気泡は分岐流路45aにトラップされて、その末端位置より延び出した空気抜き用の流路46を通過して外部へ放出される。したがって、開口32より試薬収容部33へ続く流路45において気泡が噛むことが無く、安定した送液が確保される。
【0073】
すなわち、駆動液を送出する前である図6(A)の状態では、試薬収容部33にはその両端の撥水バルブ51a,51bの間に試薬57が充填されているが、流路45は空気で満たされていて液体は存在しない。
【0074】
図6(A)の状態から、不図示のマイクロポンプによって開口32より流路45へ駆動
液を流し込むと、図6(B)に示したように、分岐点55から分岐した分岐流路45aに駆動液50が充填されていく。このとき、流路45および分岐流路45aの中に存在していた空気は、空気抜き用の流路46を通過して外部へ放出される。
【0075】
そして、図6(C)の状態になるまで駆動液50が送液されると、流路45および分岐流路45a内には気泡が無くなり駆動液50が充填される。このとき、空気抜き用流路46は流路幅が狭く、且つ撥水性があるため、駆動液50はここで止まりその先への流出が抑止される。
【0076】
その後、マイクロポンプの電圧を上げて、試薬収容部33の下流側における撥水バルブ51bの液保持力以上の送液圧力を流路内の液に与えると、図6(D)に示したように試薬57は撥水バルブ51bを通過してその下流側の流路に送出される。
【0077】
なお、図6(A)〜図6(D)の試薬収容部33の上流に配置された撥水バルブ51aと、下流に配置された撥水バルブ51bのそれぞれは、充填されている試薬57を保持する役割を有している。さらに、撥水バルブ51bは、液に対して所定圧以上の圧力を与えた際に下流へ試薬57を送り出す役割、すなわち送液制御の役割を兼ねている。
【0078】
図8は、本発明の他の実施例におけるマイクロリアクタの流路構成を示した図であり、試料と混合試薬との混合部よりも上流側の流路構成を示している。同図において、マイクロリアクタ1における試薬収容部33h、33i、33jのそれぞれに3種類の各試薬が収容され、各試薬収容部の上流側には、マイクロポンプユニット11に設けられたマイクロポンプ12h,12i,12jがポンプ接続部31を介して連通され、各試薬収容部から、試薬混合部である下流側の混合流路5cへ、これらのマイクロポンプにより駆動液で試薬を押し出して送液する。
【0079】
なお、マイクロポンプの送液圧力を調節することによって、試薬収容部33h、33i、33jから送出され混合流路5cで合流した各試薬の混合液の先端部を切り捨て、混合状態が安定した後に混合試薬を次工程へ送出するようにしている。すなわち、撥水バルブ51bを下流末端とした混合流路5cと、混合流路5cから分岐した送出流路5dと、混合流路5cと送出流路5dとの接続部における送出流路5d側に設けられた撥水バルブ51aとにより、初期混合試薬の送出防止機構が構成されている。
【0080】
最初に、マイクロポンプによる混合試薬の送液圧力を、混合試薬が撥水バルブ51aを通過可能な圧力よりも小さな圧力として混合流路5c内の混合試薬を送液する。これにより、混合流路5cと送出流路5dとの接続部において、初期混合試薬は送出流路5d側には流出せずに混合流路5cの下流末端側へ送り出される。
【0081】
そして、初期混合試薬が混合流路5cの下流末端である撥水バルブ51bに達した後、マイクロポンプによる混合試薬の送液圧力を、混合試薬が撥水バルブ51aを通過可能な圧力以上とする。これにより、混合流路5c内の混合試薬は、撥水バルブ51aを通過し、混合試薬は送出流路5dに流出する。
【0082】
以上のようにマイクロポンプによる送液圧力を制御することで、初期混合試薬は混合流路5cの中間部と下流末端との間に収容され、送出流路5dには、初期混合試薬が切り捨てられた混合試薬のみが送出される。すなわち、混合比率が安定した混合試薬だけを後続する工程へ供給することができる。
【0083】
図9は、本発明のマイクロリアクタにおける他の実施例を示した平面図である。本実施例のマイクロリアクタ1には、流路状の試薬収容部33a、33b、33cのそれぞれに
3種類の試薬が収容されている。これらの試薬収容部の両端部(試薬収容部33aでは上流側の注入口34bおよび下流側の出口34c)には、図2に示した構造の撥水バルブが設けられ、これらの撥水バルブの間の流路に試薬が封入されている。
【0084】
なお、詳細な説明は省略するが、図9のマイクロリアクタ1の微細流路には、試薬収容部33a〜33cの両端部以外の位置にも図2の撥水バルブが設けられており、例えば、混合試薬と試料との合流部38における混合試薬の入口と試料の入口などにも上記の撥水バルブが設けられている。この撥水バルブによってその先の流路への送液開始のタイミングが制御される。
【0085】
図9の試薬収容部33a〜33cの上流側には、マイクロリアクタ1の一方の面から外部へ開放された開口32c〜32eが設けられている。これらの開口32c〜32eは、マイクロリアクタ1を後述するマイクロポンプユニットに重ね合わせて接続した際に、マイクロポンプユニットの接続面に設けられた流路開口と位置合わせされてマイクロポンプに連通される。なお、試薬収容部33a〜33cと開口32c〜32eとの間の流路は、図7に示した構成を備えている。すなわち、試薬収容部33の注入口34bおよび出口34cには、撥水バルブ51a、撥水バルブ51bがそれぞれ配置されている。また、マイクロポンプと連通される開口32より試薬収容部33へ続く流路45から注入口34bの位置で分岐した分岐流路45aが設けられ、この分岐流路45aに設けられた複数本の空気抜き用の流路46から大気連通用の開口56を通じて気泡を抜くようにしている。
【0086】
なお、開口32a,32bおよび32f〜32kも同様に、マイクロリアクタ1とマイクロポンプユニットとの接続によってマイクロポンプに連通される。これらの開口32a〜32kを含むチップ面によってポンプ接続部(図1、図8の符号31)が構成され、ポンプ接続部をマイクロポンプユニットの接続面に密着させることによってマイクロリアクタ1とマイクロポンプユニットとが接続される。
【0087】
このポンプ接続部は、必要なシール性を確保して駆動液の漏出を防止するために、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン樹脂などの柔軟性(弾性、形状追随性)をもつ樹脂によって密着面が形成されることが好ましい。このような柔軟性を有する密着面は、例えばマイクロリアクタの構成基材自体によるものであってもよく、また、ポンプ接続部における流路開口の周囲に貼着された柔軟性を有する別途の部材によるものであってもよい。
【0088】
試薬収容部33a〜33cに収容された試薬は、開口32c〜32eに連通するそれぞれ別途のマイクロポンプによって、試薬収容部33a〜33cの下流側端部に設けられた撥水バルブ(図示せず)を通過して合流部35へ流れ込み、その先に続く流路である混合流路5c(試薬混合部36)で3種類の各試薬が混合される。
【0089】
なお、この混合流路5cと、送出流路5dとを含む流路系によって、図8の実施例に示したような初期混合試薬の送出防止機構が構成されており、初期混合試薬を混合流路5cの流路末端にトラップするようにしている。
【0090】
混合流路5cで混合され送出流路5dに送り出された混合試薬は、試料受容部37に収容された試料と合流部38で合流する。なお、混合試薬は開口32bに連通したマイクロポンプによって駆動液で下流へ押し出され、試料は開口32aに連通したマイクロポンプによって駆動液で下流へ押し出される。混合試薬と試料との混合液は、反応部39へ収容され加熱等によって反応が開始される。
【0091】
反応後の液は、検出部40へ送液され、例えば光学的な検出方法などによって標的物質が検出される。なお、開口32f〜32jに連通するそれぞれ別途のマイクロポンプによ
って、これらの開口から先の流路に予め収容された各試薬(例えば混合試薬と試料との反応を停止させる液、検出対象の物質に対して標識などの必要な処理を行うための液、洗浄液など)を所定のタイミングで下流へ押し出して送液するようにしている。
【0092】
図10は、図9のマイクロリアクタに使用されるマイクロポンプユニットの斜視図、図11は、その断面図である。このマイクロポンプユニット11は、シリコン製の基板17と、その上のガラス製の基板18と、その上のガラス製の基板19との3つの基板から構成されている。基板17と基板18、および基板18と基板19はそれぞれ、陽極接合によって接合されている。
【0093】
シリコン製の基板17と、その上に陽極接合によって貼り合わされたガラス製の基板18との間の内部空間によってマイクロポンプ12(ピエゾポンプ)が構成されている。
基板17は、シリコンウエハをフォトリソグラフィ技術により所定の形状に加工したものである。例えば、シリコン基板面への酸化膜の形成、レジスト塗布、レジストの露光および現像、酸化膜のエッチング、ICP(高周波誘導結合型プラズマ、Inductively Coupled Plasma)などによるシリコンのエッチング等を含む微細加工によって、加圧室22、第1流路23、第1液室25、第2流路24、および第2液室26が形成されている。
【0094】
加圧室22の位置では、シリコン基板がダイヤフラムに加工され、その外側表面には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)セラミックスなどからなる圧電素子21が貼着されている。
【0095】
このマイクロポンプ12は、圧電素子21への制御電圧によって次のように駆動される。印加された所定波形の電圧により圧電素子21が振動すると共に、加圧室22の位置におけるシリコンダイヤフラムが振動し、これによって加圧室22の体積が増減する。第1流路23と第2流路24とは、幅および深さが同じで、長さが第1流路23よりも第2流路24の方が長くなっている。第1流路23では、差圧が大きくなると、流路内で乱流が発生し、流路抵抗が増加する。一方、第2流路24では、流路幅が長いので差圧が大きくなっても層流になり易く、第1流路23に比べて差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合が小さくなる。
【0096】
例えば、圧電素子21に対する制御電圧を調整することにより、加圧室22の内部へ向かう方向へ素早くシリコンダイヤフラムを変位させて大きい差圧を与えながら加圧室22の体積を減少させ、次いで加圧室22からその外側へ向かう方向へゆっくりシリコンダイヤフラムを変位させて小さい差圧を与えながら加圧室22の体積を増加させると、駆動液は図11において左から右へ向かう方向へ正方向に送液される。
【0097】
これとは反対に、加圧室22からその外側へ向かう方向へ素早くシリコンダイヤフラムを変位させて大きい差圧を与えながら加圧室22の体積を増加させ、次いで加圧室22の内部へ向かう方向へゆっくりシリコンダイヤフラムを変位させて小さい差圧を与えながら加圧室22の体積を減少させると、駆動液は図11の右から左へ逆方向に送液される。
【0098】
なお、第1流路23と第2流路24における、差圧の変化に対する流路抵抗の変化割合の相違は、必ずしも流路の長さの違いによる必要はなく、他の形状的な相違に基づくものであってもよい。
【0099】
マイクロポンプ12による流量の制御は、圧電素子21に印加する電圧を調整することにより行うことができる。
基板19には、流路20がパターニングされている。一例として、流路20の寸法および形状は、幅が150μm程度、深さが300μm程度の断面矩形状である。流路20の
下流側には、図9のマイクロリアクタの開口32a〜32kに位置合わせすることによりマイクロポンプ12を検査チップの微細流路に連通させるための開口15が設けられている。
【0100】
流路20の上流側は、基板18の貫通孔16bを介して、基板17に設けられた流路を通りマイクロポンプ12に連通されている。また、マイクロポンプ12の上流側は、基板17に設けられた流路から基板18の貫通孔16aを介して、ガラス製の基板19に設けられた開口14に連通されている。この開口14は不図示の駆動液タンクに接続されている。開口14は、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)のパッキンを介して駆動液タンクに接続される。
【0101】
開口15a,15b,15cはそれぞれ、図9のマイクロリアクタの開口32c,32d,32eと連通される(なお、図10ではマイクロポンプユニット全体のうち一部分のみ示している)。マイクロポンプ12によって、流路20、開口15a、開口32cを通じて駆動液を送液して試薬収容部33aに収容された試薬を下流へ押し出し、流路20、開口15b、開口32dを通じて駆動液を送液して試薬収容部33bに収容された試薬を下流へ押し出し、流路20、開口15c、開口32eを通じて駆動液を送液して試薬収容部33cに収容された試薬を下流へ押し出す。
【0102】
以上のように、各試薬等を送液するための全てのマイクロポンプを1つのチップに配設し、分析時にこのチップとマイクロリアクタとを重ね合わせて互いの流路を連通させるマイクロポンプユニットを用いることで、マイクロリアクタ内の試薬を微細流路の下流へ押し出すポンプ機構をコンパクトな構造とすることができる。
【0103】
さらに、複数のマイクロポンプが駆動液タンクを共有でき、駆動液タンクとチップ状のマイクロポンプユニットとの接続には特別な配管、引き回しのチップ等は必要ないので、マイクロリアクタ内の試薬を微細流路の下流へ押し出すポンプ機構をコンパクトな構造とすることができる。
【0104】
マイクロリアクタは、例えば、別途のシステム本体に装着することにより反応と分析が行われる。このシステム本体とマイクロリアクタとによりマイクロ総合分析システムが構成される。このマイクロ総合分析システムの一例を以下に説明する。図12は、マイクロ総合分析システムの一例を示した斜視図、図13は、このマイクロ総合分析システムにおけるシステム本体の内部構成を示した図である。
【0105】
このマイクロ総合分析システム2のシステム本体3は、分析のための各装置を収納する筺体状の収納体62を備えている。この収納体62の内部には、マイクロリアクタ1に連通させるための流路開口を有するチップ接続部13と、複数のマイクロポンプ(図示せず)とが設けられたマイクロポンプユニット11が配置されている。
【0106】
さらに収納体62の内部には、マイクロリアクタ1における反応を検出するための検出処理装置(LED、光電子増倍菅、CCDカメラ等の光源68および、可視分光法、蛍光測光法などによる光学的な検出を行う検出器69)と、この検出処理装置とマイクロポンプユニット11とを制御する制御装置(図示せず)とが設けられている。この制御装置によって、マイクロポンプによる送液の制御、光学的手段等によりマイクロリアクタ1における反応を検出する検出処理装置の制御の他、後述する加熱・冷却ユニットによるマイクロリアクタ1の温度制御、マイクロリアクタ1における反応の制御、データの収集(測定)および処理等を行う。マイクロポンプの制御は、予め送液順序、流量、タイミングなどに関する諸条件が設定されたプログラムに従って、それに応じた駆動電圧をマイクロポンプに印加することによって行う。
【0107】
このマイクロ総合分析システム2では、マイクロリアクタ1の微細流路の上流側(例えば試薬収容部、試料受容部などの上流側)に設けられた流路開口およびその周囲のチップ面からなるポンプ接続部31と、マイクロポンプユニット11のチップ接続部13とを液密に密着させた状態でマイクロリアクタ1を収納体62の内部に装着した後、マイクロリアクタ1において検体中の標的物質が分析される。マイクロリアクタ1は、搬送トレイ65に載置されて挿入口63から収納体62の内部に導入される。しかし、マイクロリアクタがマイクロポンプユニットに対して加圧された状態でマイクロリアクタを収納体62の内部に固定できるのであれば、必ずしも搬送トレイを用いる必要はない。
【0108】
収納体62の内部には、所定位置に装着されたマイクロリアクタ1を局所的に加熱もしくは冷却するための加熱・冷却ユニット(ペルチェ素子66、ヒーター67)が設けられている。例えば、マイクロリアクタ1における試薬収容部の領域にペルチェ素子66を圧接することにより試薬収容部を選択的に冷却し、これによって試薬の変質等を防止するとともに、反応部を構成する流路の領域にヒーター67を圧接することにより反応部を選択的に加熱し、これによって反応部を反応に適した温度にする。
【0109】
マイクロポンプユニット11は1つの駆動液タンク61に接続され、マイクロポンプの上流側はこの駆動液タンク61に連通している。一方、マイクロポンプの下流側は、マイクロポンプユニット11の片面に設けられた流路開口に連通されており、それぞれのマイクロポンプに連通したそれぞれの流路開口と、マイクロリアクタ1のポンプ接続部31に設けられたそれぞれの流路開口とが連結するようにマイクロリアクタ1がマイクロポンプユニット11に対して接続される。
【0110】
マイクロポンプによって、駆動液タンク61に収容された水系の駆動液を、ポンプ接続部31を経由してマイクロリアクタ1における各液の収容部に送り出し、駆動液によって各収容部の液をマイクロリアクタ1の下流側へ押し出して送液する。
【0111】
測定試料である検体の前処理、反応および検出の一連の分析工程は、マイクロポンプ、検出処理装置および制御装置が一体化されたシステム本体2に、マイクロリアクタ1を装着した状態で行なわれる。好ましくは、試料および試薬の送液、前処理、混合に基づく所定の反応および光学的測定が、一連の連続的工程として自動的に実施され、測定データが、必要な条件、記録事項とともにファイル内に格納される。図12では、分析の結果が収納体62の表示部64に表示されるようになっている。
【0112】
以下に、本発明のマイクロリアクタを用いた試料(検体)と試薬との反応およびその検出の具体的な例を示す。マイクロリアクタの好ましい一態様では、一つのチップ内において、
検体もしくは検体から抽出したアナライト(例えば、DNA、RNA、遺伝子)が注入される試料受容部と、
検体の前処理を行う検体前処理部と、
プローブ結合反応、検出反応(遺伝子増幅反応または抗原抗体反応なども含む)などに用いる試薬が収容される試薬収容部と、
ポジティブコントロールが収容されるポジティブコントロール収容部と、
ネガティブコントロールが収容されるネガティブコントロール収容部と、
プローブ(例えば、遺伝子増幅反応により増幅された検出対象の遺伝子にハイブリダイズさせるプローブ)が収容されるプローブ収容部と、
これらの各収容部に連通する微細流路と、
前記各収容部および流路内の液体を送液する別途のマイクロポンプに接続可能なポンプ接続部と、が設けられている。
【0113】
このマイクロリアクタには、ポンプ接続部を介して上述したマイクロポンプユニットが接続され、試料受容部に注入された検体もしくは検体から抽出した生体物質(例えばDNAまたはそれ以外の生体物質)と、試薬収容部に収容された試薬とを下流の流路へ送液し、微細流路の反応部、例えば遺伝子増幅反応(タンパク質の場合、抗原抗体反応など)を行う反応部で混合して反応させる。次いで、その下流側流路にある検出部へ、この反応液を処理した処理液と、プローブ収容部に収容されたプローブとを送液し、流路内で混合してプローブと結合(またはハイブリダイゼーション)させ、この反応生成物に基づいて生体物質の検出を行う。
【0114】
また、ポジティブコントロール収容部に収容されたポジティブコントロールおよびネガティブコントロールに収容されたネガティブコントロールについても同様に上記反応および検出を行う。
【0115】
試料受容部に注入された検体は、必要に応じて、試薬との混合前に、予め流路に設けられた検体前処理部にて、例えば検体と処理液とを混合することによって前処理される。この検体前処理部は、分離フィルター、吸着用樹脂、ビーズなどを含んでいてもよい。好ましい検体前処理としては、アナライトの分離または濃縮、除タンパクなどが挙げられる。例えば、1%SDS混合液などの溶菌剤を用いて溶菌処理・DNA抽出処理を行なう。この過程では、細胞内部からDNAが放出され、ビーズまたはフィルターの膜面に吸着する。
【0116】
マイクロリアクタの試薬収容部には、必要な試薬が予め所定の量だけ封入されている。したがって使用時にその都度試薬を必要量充填する必要はなく、即使用可能の状態になっている。検体中の生体物質を分析する場合、測定に必要な試薬類は、通常それぞれ公知である。例えば、検体に存在する抗原を分析する場合、それに対する抗体、好ましくはモノクローナル抗体を含有する試薬が使用される。抗体は、好ましくはビオチンおよびFITCで標識されている。
【0117】
遺伝子検査用のマイクロリアクタに予め収容される試薬類には、遺伝子増幅に用いられる各種試薬の他、検出に使用されるプローブ類、発色試薬、前記の検体前処理に使用する前処理試薬などがある。
【0118】
マイクロポンプから駆動液を供給することにより、各試薬収容部から試薬を押し出してこれらを合流させることによって、混合試薬を生成する。その後、マイクロポンプから駆動液を供給することにより、試料受容部から検体を押し出し、混合比率が安定した混合試薬と合流させることによって、反応部にて、遺伝子増幅反応、アナライトのトラップまたは抗原抗体反応といった分析に必要な反応が開始される。
【0119】
マイクロリアクタにおける試薬収容部の注入口と、ポンプ接続部の開口との間の流路には、前述した空気抜き用の流路が設けられる。すなわち、マイクロリアクタの流路は疎水性の樹脂で形成されており、純水、緩衝液などの水系の駆動液で試薬を押し出すようにしているが、径が数μmである末端が外部へ開放された空気抜き用の流路を設けることによって、マイクロポンプユニットをマイクロリアクタに接続して駆動液を注入口へ送り出す初期の段階において、これらの液の間に介在する気泡を除去するようにしている。
【0120】
DNA増幅方法としては、改良点も含めて各種文献などに記載され、多方面で盛んに利用されているPCR増幅法を使用することができる。PCR増幅法においては、3つの温度間で昇降させる温度管理が必要になるが、マイクロチップに好適な温度制御を可能とする流路デバイスが、すでに本発明者らにより提案されている(特開2004−10828
5号)。このデバイスシステムを本発明のチップの増幅用流路に適用すればよい。これにより、熱サイクルが高速に切り替えられ、微細流路を熱容量の小さいマイクロ反応セルとしているため、DNA増幅は、手作業で行う従来の方式よりはるかに短時間で行うことができる。
【0121】
最近開発されたICAN(Isothermal chimera primer initiated nucleic acid
amplification)法は、50〜65℃における任意の一定温度の下にDNA増幅を短時間で実施できるため(特許第3433929号)、本発明システムにおいても好適な増幅技術である。手作業では、1時間かかる本法は、本発明のシステムにおいては、10〜20分、好ましくは15分で解析まで終わる。
【0122】
マイクロリアクタの微細流路における反応部よりも下流側には、アナライト、例えば増幅された遺伝子を検出するための検出部が設けられている。少なくともその検出部分は、光学的測定を可能とするために透明な材質、好ましくは透明なプラスチックとなっている。
【0123】
微細流路上の検出部に吸着されたビオチン親和性タンパク質(アビジン、ストレプトアビジン)は、プローブ物質に標識されたビオチン、または遺伝子増幅反応に使用されるプライマーの5’末端に標識されたビオチンと特異的に結合する。これにより、ビオチンで標識されたプローブまたは増幅された遺伝子が本検出部位でトラップされる。
【0124】
分離されたアナライトまたは増幅された目的遺伝子のDNAを検出する方法は特に限定されないが、好ましい態様として基本的には以下の工程で行われる。
(1a) 検体もしくは検体から抽出したDNA、あるいは検体もしくは検体から抽出したRNAから逆転写反応により合成したcDNAと、5’位置でビオチン修飾したプライマーとを、これらの収容部から下流の微細流路へ送液する。
【0125】
反応部の微細流路内で遺伝子増幅反応を行った後、微細流路内で増幅された遺伝子を含む増幅反応液と変性液とを混合して、増幅された遺伝子を変性処理により一本鎖にし、これと末端をFITC(fluorescein isothiocyanate)で蛍光標識したプローブDNAと
をハイブリダイズさせる。
【0126】
次いで、ビオチン親和性タンパク質を吸着させた微細流路内の検出部位に送液し、前記増幅遺伝子を微細流路内の検出部位にトラップする(増幅遺伝子を検出部位でトラップした後に蛍光標識したプローブDNAとをハイブリダイズさせてもよい。)。
(1b) 検体に存在する抗原、代謝物質、ホルモンなどのアナライトに対する特異的な抗体、好ましくはモノクローナル抗体を含有する試薬を検体と混合する。その場合、抗体は、ビオチンおよびFITCで標識されている。したがって抗原抗体反応により得られる生成物は、ビオチンおよびFITCを有する。これをビオチン親和性タンパク質(好ましくはストレプトアビジン)を吸着させた微細流路内の検出部位に送液し、ビオチン親和性タンパク質とビオチンとの結合を介して該検出部位に固定化する。
(2) 上記微細流路内にFITCに特異的に結合する抗FITC抗体で表面を修飾した金コロイド液を流し、これにより固定化したアナライト・抗体反応物のFITCに、あるいは遺伝子にハイブリダイズしたFITC修飾プローブに、その金コロイドを吸着させる。
(3) 上記微細流路の金コロイドの濃度を光学的に測定する。
【0127】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、本発明の一実施例におけるマイクロリアクタと、マイクロポンプと、駆動液タンクとの接続形態を説明する概略図である。
【図2】図2は、撥水バルブを示した図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例における試薬収容部を示した図である。
【図4】図4は、試薬収容部の上流側に設けられた空気抜き用の流路および、その周辺の流路構成を示した図である。
【図5】図5は、空気抜き用の流路の拡大図である。
【図6A】図6Aは、試薬収容部の上流側に設けられた空気抜き用の流路および、その周辺の流路構成を示した図である。
【図6B】図6Bは、試薬収容部の上流側に設けられた空気抜き用の流路および、その周辺の流路構成を示した図である。
【図6C】図6Cは、試薬収容部の上流側に設けられた空気抜き用の流路および、その周辺の流路構成を示した図である。
【図6D】図6Dは、試薬収容部の上流側に設けられた空気抜き用の流路および、その周辺の流路構成を示した図である。
【図7】図7は、試薬収容部の上流側に設けられた空気抜き用の流路および、その周辺の流路構成を示した図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施例におけるマイクロリアクタの流路構成を示した図であり、試料と混合試薬との混合部よりも上流側の流路構成を示している。
【図9】図9は、本発明のマイクロリアクタにおける他の実施例を示した平面図である。
【図10】図10は、図9のマイクロリアクタに使用されるマイクロポンプユニットの斜視図である。
【図11】図11は、図10のマイクロポンプユニットの断面図である。
【図12】図12は、マイクロ総合分析システムの一例を示した斜視図である。
【図13】図13は、図12のマイクロ総合分析システムにおけるシステム本体の内部構成を示した図である。
【符号の説明】
【0129】
1 マイクロリアクタ
2 マイクロ総合分析システム
3 システム本体
5a 流路
5b 流路
5c 混合流路
5d 送出流路
11 マイクロポンプユニット
12,12h〜12j マイクロポンプ
13 チップ接続部
14 開口
15,15a〜15c 開口
16a 貫通孔
16b 貫通孔
17 基板
18 基板
19 基板
20 流路
21 圧電素子
22 加圧室
23 第1流路
24 第2流路
25 第1液室
26 第2液室
31 ポンプ接続部
32,32a〜32k 開口
33,33a〜33c,33h〜33j 試薬収容部
34a 収容室
34b 注入口
34c 出口
35 合流部
36 試薬混合部
37 試料受容部
38 合流部
39 反応部
40 検出部
45 流路
45a 分岐流路
46 空気抜き用流路
47 水性試薬
48 油性液(封止剤)
49 水性液
50 駆動液
51,51a〜51e 撥水バルブ
52 送液制御通路
53a,53b 流路
54 液
55 分岐点
56 大気連通用の開口
57 試薬
61 駆動液タンク
62 収納体
63 挿入口
64 表示部
65 搬送トレイ
66 ペルチェ素子
67 ヒーター
68 光源
69 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のチップと、
複数の試薬が個別に収容される収容室からなる複数の試薬収容部と、
前記複数の試薬収容部から送出される複数の試薬を混合して混合試薬を生成する試薬混合部と、
外部から試料を注入するための注入口を有する試料受容部と、
前記試薬混合部から送出される混合試薬と、前記試料受容部から送出される試料とを混合して反応させる反応部と、を備え、
前記複数の試薬収容部、試薬混合部、試料受容部および反応部は、前記チップ内に組み込まれて流路により互いに連通され、
前記試薬収容部に、駆動液を収容室に注入するための注入口と、注入された駆動液により収容室から試薬が押し出される出口と、が設けられていることを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項2】
前記試薬収容部の注入口は、前記チップに外部ポンプを接続することによって当該外部ポンプと連通される開口に流路を介して連通されており、
前記駆動液は、前記チップに接続された外部ポンプによって、前記開口を通り注入口から収容室へ注入されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロリアクタ。
【請求項3】
前記注入口と、前記開口とを連通させる流路に、この流路から分岐し、末端が外部へ開放された空気抜き用の流路が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のマイクロリアクタ。
【請求項4】
前記試薬収容部の流路と、その下流側の流路とを連通し、これらの流路よりも流路断面積が小さい送液制御通路を備え、送液圧力が所定圧に達するまで液の通過を遮断し、所定圧以上の送液圧力が加わることにより液を通過させる撥水バルブが設けられ、
前記外部ポンプと連通される開口より前記試薬収容部へ続く流路から前記注入口の位置で分岐した分岐流路が設けられ、
前記分岐流路に、末端が外部へ開放された空気抜き用の流路が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のマイクロリアクタ。
【請求項5】
前記空気抜き用の流路は、流路径が15μm以下であり、且つ、流路内面の水との接触角が30°以上であることを特徴とする請求項3または4に記載のマイクロリアクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−83191(P2007−83191A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276799(P2005−276799)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】