説明

マイクロレンズの製造方法およびマイクロレンズの製造装置

【課題】 マイクロレンズと基体との密着性を確保しつつ、マイクロレンズを小型化することが可能な、マイクロレンズの製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】 マイクロレンズの構成材料を含む液滴22を吐出する液滴吐出ヘッド34と、マイクロレンズを形成すべき基体5を載置するテーブル50と、液滴吐出ヘッド34から基体5に向かって飛行中の液滴22に対して紫外線を照射するレーザ光源60と、を有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズの製造方法およびマイクロレンズの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロレンズと呼ばれる微小レンズを多数有した光学装置が提供されている。
このような光学装置としては、例えばレーザを備えた発光装置や、光ファイバの光インタコネクション、さらには入射光を集めるための集光レンズを有した固体撮像素子などがある。
【0003】
このようなマイクロレンズの製造方法として、インクジェット法の採用が検討されている。これは、インクジェットヘッドに形成された微細ノズルから、マイクロレンズの構成材料を含む液滴を基体上に吐出し、硬化させてマイクロレンズを形成するものである。
【0004】
インクジェット法では、微細ノズルの目詰まりを防止するため、吐出しうる液状体は50cps以下の比較的低粘度のものに限られている。ところが、低粘度の液状体では、液滴が基体への着弾後に濡れ広がるので、形成されるマイクロレンズは直径が大きいものになる。
【0005】
そこで、基体上の表面エネルギーを調整することにより、着弾後の液滴径を調整する方法が検討されている。具体的には、基体上に撥液処理を施すことにより、着弾後の液滴の濡れ広がりを制限する(例えば、特許文献1参照)。これにより、直径の小さいマイクロレンズを形成することが可能になる。
【特許文献1】特開2003−240911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基体上の表面エネルギーを調整する方法では、マイクロレンズの形状が基体の表面エネルギーに大きく依存することになり、設計の自由度が小さい。また、撥液処理を施した基体上にマイクロレンズが形成されるので、マイクロレンズと基体との密着性を確保することが困難になるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、マイクロレンズと基体との密着性を確保しつつ、マイクロレンズを小型化することが可能な、マイクロレンズの製造方法およびマイクロレンズの製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のマイクロレンズの製造方法は、マイクロレンズの構成材料を含む液滴を液滴吐出ヘッドから吐出し基体上に着弾させてマイクロレンズを製造する方法であって、前記液滴の吐出後から着弾直後までにおける間に、少なくとも一度、前記液滴に紫外線を照射することを特徴とする。
この構成によれば、吐出前の液状体が低粘度であっても、吐出後の液滴に紫外線を照射することにより、その粘度を急激に上昇させることができる。これにより、基体に着弾した後の液滴の濡れ広がりが小さくなって、小型のマイクロレンズを形成することが可能になる。その際、基体の表面エネルギーを調整する必要がないので、マイクロレンズと基体との密着性を確保することも可能になる。
【0009】
また、前記マイクロレンズの構成材料は、紫外線硬化性樹脂材料を主成分とすることが望ましい。特に、前記紫外線硬化性樹脂材料は、エポキシ樹脂であることが望ましい。
マイクロレンズの構成材料として、紫外線硬化性樹脂材料を採用すれば、吐出後の液滴に紫外線を照射することによりその粘度を急激に上昇させることができる。特に、エポキシ樹脂はカチオン重合により硬化するため、紫外線照射による硬化速度が比較的速く、吐出後の液滴に紫外線を照射することによりその粘度を急激に上昇させることができる。また、エポキシ樹脂は硬化収縮が比較的小さく、硬化後の線膨張係数も比較的小さい。したがって、紫外線硬化性樹脂材料としてエポキシ樹脂を採用することにより、マイクロレンズを精度よく形成することができる。
【0010】
一方、本発明のマイクロレンズの製造装置は、マイクロレンズの構成材料を含む液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、マイクロレンズを形成すべき基体を載置するテーブルと、前記液滴吐出ヘッドから前記基体に向かって飛行中の前記液滴または前記基体に着弾後の前記液滴に対して紫外線を照射する紫外線照射手段と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、基体との密着性を確保しつつ、小型のマイクロレンズを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0012】
[マイクロレンズの製造方法]
図1は、本実施形態に係るマイクロレンズの製造方法の説明図である。本実施形態のマイクロレンズの製造方法は、マイクロレンズの構成材料を含む液滴22を液滴吐出ヘッド34から吐出し基体5上に着弾させてマイクロレンズを製造する方法であって、液滴22の吐出後から着弾直後までにおける間に、少なくとも一度、吐出された液滴22に紫外線62を照射するものである。
【0013】
[マイクロレンズの構成材料]
マイクロレンズの構成材料(レンズ材料)として、紫外線硬化性を有する光透過性樹脂が用いられる。この光透過性樹脂として、特に非溶剤系のものが好適に用いられる。この非溶剤系の光透過性樹脂は、有機溶剤を用いて光透過性樹脂を溶解し液状体とすることなく、例えばこの光透過性樹脂をそのモノマーで希釈することによって液状化し、液滴吐出ヘッドからの吐出を可能にしたものである。また、この非溶剤系の光透過性樹脂では、ビイミダゾール系化合物などの光重合開始剤を配合することにより、放射線照射硬化型のものとして使用できるようにしている。すなわち、このような光重合開始剤を配合することにより、前記光透過性樹脂に放射線照射硬化性を付与することができるのである。ここで、放射線とは可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の総称であり、特に紫外線が一般的に用いられる。
【0014】
このような光透過性樹脂として、具体的にはアクリル樹脂やエポキシ樹脂等を採用することが可能である。特に、エポキシ樹脂を採用することが望ましい。アクリル樹脂はラジカル重合により硬化するため、紫外線照射による硬化速度が比較的遅く、また硬化収縮が比較的大きくなる。これに対して、エポキシ樹脂はカチオン重合により硬化するため、紫外線照射による硬化速度が比較的速く、また硬化収縮が比較的小さいからである。さらに、硬化後のアクリル樹脂とエポキシ樹脂とを比較すると、屈折率や光透過率は同等であるが、線膨張係数はアクリル樹脂が比較的大きくエポキシ樹脂が比較的小さい。したがって、マイクロレンズの構成材料としてエポキシ樹脂を採用することにより、マイクロレンズを精度よく形成することができる。
【0015】
また、レンズ材料として用いる光透過性樹脂の表面張力としては、0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法によりインクを吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インクのノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなる。また、表面張力が0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記光透過性樹脂の分散液には、基体5との接触角を大きく低下させず、屈折率などの光学的特性に影響を与えない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、インクの基体5への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0016】
また、レンズ材料として用いる光透過性樹脂の粘度としては1mPa・s以上200mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いてインクを液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすい。また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ヘッドもしくは液滴吐出装置にインク加熱機構を設けることで吐出が可能となるが、常温においてはノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。200mPa・s以上の場合、加熱しても液滴を吐出できる程度に粘度を落とすことが難しい。
【0017】
[液滴吐出工程、紫外線照射工程]
上述したレンズ材料を含む液滴を、後述する液滴吐出ヘッドから吐出し、基体5上に着弾させる。
基体5として、ガラス基板や半導体基板、さらにはこれらに各種の機能性薄膜や機能性要素を形成したものが用いられる。なお、基体5の表面については平面であっても曲面であってもよく、さらに基体自体の形状についても特に限定されることなく種々の形状のものが採用可能である。
【0018】
一例を挙げれば、GaAs基板に多数の面発光レーザを形成したものを基体として用いることができる。この場合、各面発光レーザの出射口の周辺には、ポリイミド樹脂等からなる絶縁層が形成されている。そして、各面発光レーザの出射側となる面上に土台部材を設け、その土台部材の上面にレンズ材料の液滴を着弾させて、マイクロレンズを形成する。ここで、土台部材の形成材料としては、透光性を有する材料、すなわち、面発光レーザ2からの発光光の波長域においてほとんど吸収を起こさず、したがって実質的にこの発光光を透過させる材料とするのが好ましく、例えばポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、あるいはフッ素系樹脂等が好適に用いられるが、特にポリイミド系樹脂がより好適に用いられる。
【0019】
[紫外線照射工程]
本実施形態では、液滴の吐出後から着弾直後までにおける少なくともいずれかの時期に、吐出された液滴22に紫外線62を照射する。紫外線62の波長は、液滴に十分なエネルギーを付与するため、200nm以上400nm以下であることが望ましい。特に、254nm以上365nm以下であることが、紫外線照射手段であるレーザ光源60の確保の容易性から望ましい。
【0020】
図2は、着弾後における液滴の濡れ広がりの比較図である。一般に、液滴吐出ヘッドから液滴を安定して吐出するには、低粘度の液状体を採用する必要がある。しかしながら、吐出前の液状体が低粘度であっても、吐出後の液滴に紫外線を照射することにより、その粘度を急激に上昇させることができる。その理由は、紫外線照射により、レンズ材料である紫外線硬化性樹脂の一部が硬化するからであり、また液滴に含まれる光重合開始剤やモノマーの一部が硬化するからである。そして、液滴の粘度を上昇させることにより、基体5に着弾した後の液滴の濡れ広がりを抑制することが可能になる。一例を挙げれば、体積5pLの液滴を基体上に吐出する場合において、紫外線照射を行わなかった液滴28の着弾後の直径は約60μm程度であったが、紫外線照射を行った液滴24の着弾後の直径は約40μmであった。なお、照射する紫外線の強度を調整することにより、着弾後の液滴の直径を制御することも可能である。
【0021】
その後、着弾した液滴にあらためて紫外線照射等を行い、液滴を完全に硬化させて、マイクロレンズを形成する。
上述したように、本実施形態のマイクロレンズの製造方法では、液滴の吐出後から着弾直後までにおける少なくともいずれかの時期に、液滴に紫外線を照射する構成とした。これにより、着弾後における液滴の濡れ広がりを抑制することができるので、マイクロレンズを小型化することができる。その際、基体5上の表面エネルギーを調整することなく、すなわち基体5の表面を撥液処理することなくマイクロレンズを形成することができるので、マイクロレンズと基体5との密着性を確保することも可能である。
【0022】
なお図1に示すように、紫外線62の照射は、液滴22が吐出される基体5と平行に行うことが望ましい。この場合、基体5に対して紫外線62が照射されることはないので、基体5上の表面エネルギーの変化を防止することができる。また、吐出された液滴22の全体が紫外線62のビーム径の内部を通過するように、紫外線62を照射することが望ましい。この場合、液滴22の全体の粘度を均等に増加させることが可能になり、着弾後の液滴を対称形状とすることができる。これにより、対称形状のマイクロレンズを形成することが可能になり、良好な光学特性を発揮させることができる。
【0023】
[撥液処理工程]
図3は、基体の撥液処理の説明図である。上述した液滴吐出工程の前に、基体5上におけるマイクロレンズの形成領域3の周囲に、あらかじめ撥液処理を施しておくことが望ましい。この撥液処理として、例えば自己組織化膜を形成する方法や、プラズマ処理法等を採用することが可能である。
【0024】
上述した自己組織膜形成法では、導電膜配線を形成すべき基体5の表面に、有機分子膜などからなる自己組織化膜70を形成する。
基体表面を処理するための有機分子膜は、基体5に結合可能な官能基と、その反対側に親液基あるいは撥液基といった基体5の表面性を改質する(表面エネルギーを制御する)官能基と、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖とを備えており、基体5に結合して自己組織化して分子膜、例えば単分子膜を形成する。
【0025】
ここで、自己組織化膜70とは、基体5の下地層等の構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜70は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性や親液性を付与することができる。
【0026】
上記の高い配向性を有する化合物として、例えばフルオロアルキルシランを用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜70が形成され、膜の表面に均一な撥液性が付与される。
自己組織化膜70を形成する化合物としては、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下「FAS」という)を例示できる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、FASを用いることにより、基体5との密着性と良好な撥液性とを得ることができる。
【0027】
FASは、一般的に構造式RnSiX(4−n)で表される。ここでnは1以上3以下の整数を表し、Xはメトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子などの加水分解基である。またRはフルオロアルキル基であり、(CF)(CF)x(CH)yの(ここでxは0以上10以下の整数を、yは0以上4以下の整数を表す)構造を持ち、複数個のR又はXがSiに結合している場合には、R又はXはそれぞれすべて同じでもよく、異なっていてもよい。Xで表される加水分解基は加水分解によりシラノールを形成して、基体(ガラス、シリコン)5の下地のヒドロキシル基と反応してシロキサン結合で基体5と結合する。一方、Rは表面に(CF)等のフルオロ基を有するため、基体5の下地表面を濡れない(表面エネルギーが低い)表面に改質する。
【0028】
有機分子膜などからなる自己組織化膜70は、上記の原料化合物と基体5とを同一の密閉容器中に入れておき、室温で2〜3日程度の間放置することにより基体上に形成される。また、密閉容器全体を100℃に保持することにより、3時間程度で基体上に形成される。これらは気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化膜70を形成できる。例えば、原料化合物を含む溶液中に基体5を浸積し、洗浄、乾燥することで基体上に自己組織化膜70が形成される。
なお、自己組織化膜70を形成する前に、基体表面に紫外光を照射したり、溶媒により洗浄したりして、基体表面の前処理を施すことが望ましい。
【0029】
一方、プラズマ処理法としては、例えば大気雰囲気中にてテトラフルオロメタンを処理ガスとするプラズマ処理法(CFプラズマ処理法)が好適に採用される。このCFプラズマ処理の条件は、例えばプラズマパワーが50〜1000kW、テトラフルオロメタン(CF)のガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基体5の搬送速度が0.5〜1020mm/sec、基体温度が70〜90℃とされる。なお、処理ガスとしては、テトラフルオロメタン(CF)に限定されることなく、他のフルオロカーボン系のガスを用いることもできる。このような撥液化処理を行うことにより、基体5の表面にフッ素基が導入され、これによって高い撥液性が付与される。
【0030】
このように、マイクロレンズの形成領域の周囲に撥液処理を施した状態で、マイクロレンズの形成領域に液滴24を吐出すれば、液滴24の濡れ広がりを抑制することができる。これにより、マイクロレンズの直径をさらに精度よく形成することが可能になる。
【0031】
また、図2に示すように、紫外線照射を行わなかった液滴28に比べて、紫外線照射を行った液滴24は、その形状が球に近くなっている。なお、マイクロレンズを球形状に近づけると、焦点距離が短くなる。そして、焦点距離の短いマイクロレンズを用いて光学装置を形成することにより、光学装置を小型化することができる。
【0032】
[マイクロレンズの製造装置]
次に、本実施形態のマイクロレンズの製造装置につき、図1および図4を用いて説明する。図1に示すように、本実施形態のマイクロレンズの製造装置は、マイクロレンズの構成材料を含む液滴22を吐出する液滴吐出ヘッド34と、マイクロレンズを形成すべき基体5を載置するテーブル50と、液滴吐出ヘッド34から基体5に向かって飛行中の液滴22または基体5に着弾後の液滴に対して紫外線62を照射するレーザ光源60とを有するものである。
【0033】
図4(a)および図4(b)は液滴吐出ヘッドの概略構成図である。
本実施形態のマイクロレンズの製造装置は、マイクロレンズの構成材料を含む液滴を吐出する液滴吐出ヘッド34を備えている。この液滴吐出ヘッド34は、例えば図4(a)に示すように、ステンレス製のノズルプレート12と振動板13とを備え、両者を仕切部材(リザーバプレート)14を介して接合したものを用いる。ノズルプレート12と振動板13との間には、仕切部材14によって複数のキャビティ15とリザーバ16とが形成されており、これらキャビティ15とリザーバ16とは流路17を介して連通している。
【0034】
各キャビティ15とリザーバ16の内部とは吐出するための液状体(レンズ材料)で満たされるようになっており、これらの間の流路17はリザーバ16からキャビティ15に液状体を供給する供給口として機能するようになっている。また、ノズルプレート12には、キャビティ15から液状体を噴射するための孔状のノズル18が縦横に整列した状態で複数形成されている。一方、振動板13には、リザーバ16内に開口する孔19が形成されており、この孔19には液状体タンク(図示せず)がチューブ(図示せず)を介して接続されるようになっている。
【0035】
また、振動板13のキャビティ15に向く面と反対の側の面上には、図4(b)に示すように圧電素子(ピエゾ素子)20が接合されている。この圧電素子20は、一対の電極21、21間に挟持され、通電により外側に突出するようにして撓曲するよう構成されたものである。
【0036】
このような構成のもとに圧電素子20が接合された振動板13は、圧電素子20と一体になって同時に外側へ撓曲し、これによりキャビティ15の容積を増大させる。すると、キャビティ15内とリザーバ16内とが連通しており、リザーバ16内に液状体が充填されている場合には、キャビティ15内に増大した容積分に相当する液状体が、リザーバ16から流路17を介して流入する。
そして、このような状態から圧電素子20への通電を解除すると、圧電素子20と振動板13はともに元の形状に戻る。よって、キャビティ15も元の容積に戻ることから、キャビティ15内部の液状体の圧力が上昇し、ノズル18から液状体の液滴22が吐出される。
【0037】
なお、液滴吐出ヘッド34の吐出手段としては、前記の圧電素子(ピエゾ素子)20を用いた電気機械変換体以外でもよく、例えば、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いた方式や、帯電制御型、加圧振動型といった連続方式、静電吸引方式、さらにはレーザなどの電磁波を照射して発熱させ、この発熱による作用で液状体を吐出させる方式を採用することもできる。
【0038】
図1に戻り、上述した液滴吐出ヘッド34のノズルプレートと対向するように、マイクロレンズを形成すべき基体5を載置するテーブル50が配置されている。この液滴吐出ヘッド34およびテーブル50は、図示しない駆動手段により、3次元的に相対移動可能とされている。液滴吐出ヘッド34およびテーブル50を水平面内で相対移動可能とすることにより、基体5上の任意の位置に液滴を吐出することができるようになっている。また、液滴吐出ヘッド34およびテーブル50を垂直方向に相対移動可能とすることにより、液滴22の飛行距離を調整することが可能になり、基体5上の所定位置に対して正確に液滴を吐出することができるようになっている。
【0039】
そして、液滴吐出ヘッド34およびテーブル50の側方には、紫外線照射手段であるレーザ光源60が配設されている。このレーザ光源60は、液滴吐出ヘッド34から基体5に向かって飛行中の液滴22または基体5に着弾直後の液滴に対して、紫外線62を照射するものである。レーザ光源60として、波長200nm以上400nm以下の紫外線レーザ光源を採用することが望ましい。特に、波長254nm以上365nm以下の紫外線レーザ光源は、低コストで容易に調達することができる。また、レーザ光源60として、照射光のビーム径が、液滴吐出ヘッド34から吐出される液滴22の直径より大きいものを採用することが望ましい。
【0040】
そして図1に示すように、レーザ光源60は、テーブル50に載置した基体5と平行に紫外線を照射しうるように配設されている。これにより、基体5に対する紫外線の照射を防止しうるようになっている。なお、レーザ光源60は必ずしもテーブル50側に固定する必要はなく、液滴吐出ヘッド34側に固定されていてもよい。
【0041】
図5に、マイクロレンズの製造装置の平面図を示す。上述した液滴吐出ヘッド34には複数のノズル18が整列配置され、各ノズル18から同時または異時に液滴を吐出しうるように構成されて、複数のマイクロレンズの効率的な形成が可能となっている。そこで、複数のノズル18から同時に吐出された液滴に対して紫外線を照射しうるようにするため、例えばレーザ光源60を以下のように構成・配置することが望ましい。
第1例として、図5(a)に示すように、ノズル数と同数の光線64を照射可能なレーザ光源60を採用する。そして、レーザ光源60から照射される各光線64の光軸が、各ノズル18から吐出される液滴の飛行路をそれぞれ横切るように、各ノズル18の配列方向に対して垂直方向にレーザ光源60を配置する。これにより、複数のノズル18から同時に液滴が吐出された場合でも、各液滴に対して紫外線を照射することができる。
第2例として、図5(b)に示すように、光線66を面状に照射可能なレーザ光源60を採用してもよい。この場合には、液滴の飛行路と光線の光軸との精密な位置あわせを必要とすることなく、複数のノズル18から同時に吐出された液滴に対して紫外線を照射することができる。
【0042】
上述したマイクロレンズの製造装置を使用することにより、液滴吐出ヘッドから吐出された液滴の粘度を急激に上昇させることが可能になり、基体に着弾した後の液滴の濡れ広がりが小さくなって、小型のマイクロレンズを形成することができる。その際、基体の表面エネルギーを調整する必要がないので、マイクロレンズと基体との密着性を確保することも可能になる。
【0043】
ところで、図2に示すように、紫外線照射を行った液滴24では、紫外線照射を行わなかった液滴28に比べて着弾後の濡れ広がりが抑制されるので、その形状が球に近くなっている。なお、マイクロレンズを球形状に近づけると、焦点距離が短くなる。そして、焦点距離の短いマイクロレンズを用いて光学装置を形成することにより、光学装置を小型化することができる。
【0044】
[レーザプリンタ用ヘッド]
図6は、レーザプリンタ用ヘッドの概略構成図である。図6のレーザプリンタ用ヘッドは、本実施形態のマイクロレンズの製造方法を用いて製造したマイクロレンズを備えている。すなわち、このレーザプリンタ用ヘッドの光学装置として、多数の面発光レーザ2を直線的に配してなる面発光レーザアレイ2aと、この面発光レーザアレイ2aを構成する個々の面発光レーザ2に対して配設されたマイクロレンズ8aとが形成されている。なお、面発光レーザ2に対してはTFT等の駆動素子(図示せず)が設けられており、また、このレーザプリンタ用ヘッドには温度補償回路(図示せず)が設けられている。
そして、このような構成のレーザプリンタ用ヘッドにより、レーザプリンタが構成される。
【0045】
このようなレーザプリンタ用ヘッドにあっては、前述したように良好な光学特性を有するマイクロレンズを備えているので、描画特性が良好なレーザプリンタ用ヘッドとなる。
また、このレーザプリンタ用ヘッドを備えたレーザプリンタにあっても、前述したように描画特性が良好なレーザプリンタ用ヘッドを備えているので、このレーザプリンタ自体が描画特性に優れたものとなる。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明のマイクロレンズは、前記した用途以外にも種々の光学装置に適用可能であり、例えば固体撮像装置(CCD)の受光面や光ファイバの光結合部、光伝送装置、プロジェクション用スクリーン、プロジェクタシステムなどに設けられる光学部品としても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施形態に係るマイクロレンズの製造方法および製造装置の説明図である。
【図2】着弾後における液滴の濡れ広がりの比較図である。
【図3】基体の撥液処理の説明図である。
【図4】液滴吐出ヘッドの概略構成図である。
【図5】マイクロレンズの製造装置の平面図である。
【図6】レーザプリンタ用ヘッドの概略構成図である。
【符号の説明】
【0048】
5‥基体 22‥液滴 34‥液滴吐出ヘッド 50‥テーブル 60‥レーザ光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロレンズの構成材料を含む液滴を液滴吐出ヘッドから吐出し基体上に着弾させてマイクロレンズを製造する方法であって、
前記液滴の吐出後から着弾直後までにおける間に、少なくとも一度、前記液滴に紫外線を照射することを特徴とするマイクロレンズの製造方法。
【請求項2】
前記マイクロレンズの構成材料は、紫外線硬化性樹脂材料を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズの製造方法。
【請求項3】
前記紫外線硬化性樹脂材料は、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロレンズの製造方法。
【請求項4】
マイクロレンズの構成材料を含む液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
マイクロレンズを形成すべき基体を載置するテーブルと、
前記液滴吐出ヘッドから前記基体に向かって飛行中の前記液滴または前記基体に着弾後の前記液滴に対して紫外線を照射する紫外線照射手段と、
を有することを特徴とするマイクロレンズの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−30633(P2006−30633A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209862(P2004−209862)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】