説明

マイクロレンズアレイシートおよび透過型スクリーン

【課題】本発明は、リアプロジェクションテレビ等の透過型スクリーンに用いられる、明るく、視野角が広く、解像度やコントラストの高い、シンチレーションやモアレを制御可能な光拡散効果に優れるマイクロレンズアレイシートおよびこのマイクロレンズアレイシートを用いた透過型スクリーンを提供することを目的とする。
【解決手段】透明基材上の片面に単位レンズが2次元配列されてなるマイクロレンズアレイ部を有し、他面の平坦面には、前記単位レンズの非集光部領域にマトリクス状の遮光層が形成されて、さらに、その遮光層を形成した面に光拡散層を積層してなるマイクロレンズアレイシートであって、前記光拡散層のヘイズ(拡散透過率)が30〜70%の範囲を満たすことを特徴とするマイクロレンズアレイシートおよび透過型スクリーンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアプロジェクションテレビ等の透過型スクリーンに用いられる、光拡散効果に優れるマイクロレンズアレイシートおよび高品質の映像が得られる透過型スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来プロジェクションテレビにおいては、高輝度、広視野角といったものが要求されている。
【0003】
プロジェクションテレビに用いられる透過型スクリーンとしては、視野角が広い、コントラストが高い、シンチレーシヨンが少ない、モアレがない、迷光、ボケ、歪みがないといった光学的特性をもつものが要求されている。
【0004】
プロジエクシヨンテレビの透過型スクリーンに含まれる光拡散用スクリーンとして、従来レンチキユラーレンズスクリーンとクロスレンチキユラーレンズスクリーンがある。
【0005】
従来のレンチキユラーレンズスクリーンは、表面にレンチキユラーレンズが形成された透明基材の裏面に縦ストライプ状遮光層を設けているレンチキユラーレンズシートを、レンズシートの遮光層面と光拡散層を有する板を貼合したものである。レンチキユラーレンズは水平方向において大きな光拡散効果があるが、垂直方向と斜め方向への光拡散は小さい。レンチキユラーレンズスクリーンは垂直方向と斜め方向への視野を確保するため光拡散層のヘイズ(拡散透過率)を高く設定している。
【0006】
プロジエクシヨンテレビは、プロジエクター光源からの光がフレネルレンズシートを透過し平行光となり、レンチキュラーレンズスクリーンのレンズ面に入射し水平方向に強く拡散される。そして、光拡散層によりさらに全方位に拡散され良好な視野角を得ているが、光拡散層の高いヘイズにより解像度が落ちることが問題である。
【0007】
また、レンチキユラーレンズをクロス状に配列した、レンチキユラーレンズより広い垂直視野を持つクロスレンチキユラーレンズがある。格子状の遮光層(以下、BM(Black Matrix)と称す)を有しており解像度はレンチキユラーレンズよりも良い。しかしレンチキユラーレンズ同様、斜め方向への光拡散効果がなくスクリーンには高いヘイズの光拡散層を用いる必要があり解像度が低下する問題がある。
【0008】
一方、マイクロレンズは全方位に光拡散効果を持ち、視野調整も可能な特徴をもつ。マイクロレンズスクリーンは光拡散層を挿入することなく、十分な視野角を得ることが可能である。マイクロレンズシートは遮光層としてBMを形成しており高解像度を得ている。
【0009】
光拡散層無しで十分な視野を得ることがマイクロレンズスクリーンの特徴であるが、しかし、光拡散層無のマイクロレンズスクリーンはフレネルレンズスクリーンと合わせた際にモアレ、シンチレーションが見えてしまう問題がある。
【0010】
また、広視野領域でゲインがやや不足しておりスクリーン端が暗く見えてしまう問題もある。
【0011】
上記の問題点を改善するために、レンチキユラーレンズスクリーンやクロスレンチキユラーレンズスクリーンで用いている光拡散層をマイクロレンズスクリーンに当てはめてみ
ても過剰な光拡散が起こり、スクリーン観察領域でのゲイン低下を招いてしまう。特に画面を真正面から観察したときのゲイン(ピークゲイン)は大きく減衰してしまう問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、リアプロジェクションテレビ等の透過型スクリーンに用いられる、明るく、視野角が広く、解像度やコントラストの高い、シンチレーションやモアレを制御可能な光拡散効果に優れるマイクロレンズアレイシートおよびこのマイクロレンズアレイシートを用いた透過型スクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、すなわち、請求項1に係る発明は、透明基材上の片面に単位レンズが2次元配列されてなるマイクロレンズアレイ部を有し、他面の平坦面には、前記単位レンズの非集光部領域にマトリクス状の遮光層が形成されて、さらに、その遮光層を形成した面に光拡散層を積層してなるマイクロレンズアレイシートであって、
前記光拡散層のヘイズ(拡散透過率)が30〜70%の範囲を満たすことを特徴とするマイクロレンズアレイシートである。
【0014】
また、請求項2に係る発明は、請求項1記載のマイクロレンズアレイシートとフレネルレンズシートと組み合わせてなることを特徴とする透過型スクリーンである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、マイクロレンズアレイシートに積層する光拡散層のヘイズ(拡散透過率)を30〜70%の範囲とすることで、モアレ、シンチレーシヨンを低減でき、ゲインの過剰な低下を防ぎ、広視野でありながら高いピークゲインの実現が可能である。また、広視野領域でのゲインが緩やかに変化するのでスクリーン端部分が極端に暗く見えること無く、スクリーンを全体的に明るく観察することもできる。さらに、レンチキユラーレンズスクリーンやクロスレンチキユラーレンズスクリーンよりも光拡散層のヘイズが小さいため、マイクロレンズアレイの特徴である高い解像度も損なわれることはなく、光拡散層によるスクリーン全面の白っぽさを抑えるため高コントラストを有するマイクロレンズアレイシートおよびこのマイクロレンズアレイシートとフレネルレンズシートと組み合わせてなる透過型スクリーンを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例としてのマイクロレンズアレイシートの一部を示す模式斜視図である。図2は、図1で示したマイクロレンズアレイシートの一部をレンズ側から見た模式平面図である。図3は、図1で示したマイクロレンズアレイシートの一部を光拡散層(一部欠切部あり)側から見た模式平面図である。図4は、本発明のマイクロレンズアレイシートとフレネルレンズシートを組み合わせてなる透過型スクリーンの模式斜視図である。
【0017】
図1で示すように、本発明の一実施例としてのマイクロレンズアレイシートは、透明基材(2)上の片面に、円形の底面形状を有するドーム状曲面から構成される単位レンズ(3a)が2次元配列されてなるマイクロレンズアレイ部(3)を有し、他面の平坦面には、上記単位レンズの集光部領域を開口部(6)とし、非集光部領域にマトリクス状の遮光層(5)が感光性粘着層(4)を介して形成されて、さらに、前記遮光層(5)を形成した面に光拡散層(7)を積層してなり、上記光拡散層のヘイズ(拡散透過率)が30〜70%の範囲を満たすことを特徴とするマイクロレンズアレイシート(1)である。
【0018】
そして、図4で示すように、本発明のマイクロレンズアレイシート(1)とフレネルレンズシート(10)とを組み合わせて、リアプロジェクションテレビ等のモアレとシンチレーシヨンが低減した、高品質の映像が得られる透過型スクリーンとして用いることができる。
【0019】
本発明では、レンチキユラーレンズスクリーンやクロスレンチキユラーレンズスクリーンに用いる光拡散層よりも低いヘイズの光拡散層を組み合わせることによりシンチレーシヨンやモアレの低減、さらに高輝度かつ広視野を特徴とする優れたマイクロレンズアレイシートを実現することができる。
【0020】
従来のレンチキユラーレンズスクリーン、クロスレンチキユラーレンズスクリーンは高いヘイズの光拡散層を組み合わせている。この光拡散層とマイクロレンズシートを合わせると、マイクロレンズにより十分拡散された光が過剰に拡散され、観察頻度の多い視野領域でのゲインが大きく低下することでスクリーンが全体的に暗くなり特性的に優れているとはいえない。よって、モアレ、シンチレーシヨンを低減するには高いヘイズの光拡散層を合わせることで解決できるが、ピークゲインや解像度が悪化することを考慮するとなるべく低いヘイズ範囲の光拡散層を用いることが望ましい。
【0021】
広視野領域でのゲイン不足については、光拡散層を設けることにより光が拡散され、ゲインが緩やかに減少していくことでスクリーン端の暗さを解消することが可能である。
【0022】
図5に示すようにピークゲインは光拡散層のヘイズが30%〜70%で減少が緩やかであり、図6の「15°での相対輝度」が示すようにスクリーン中央周辺のゲインに変化はほとんどない。またこのヘイズ変化量に相当する広視野領域の視野変化量(ここでは図4の40°相対輝度)は4°〜5°であり、ピークゲインをそのままに広視野領域でのゲイン増幅が実現できている。光拡散層のヘイズが30%よりも小さい場合、ピークゲインは大幅に減少している割には広視野領域での拡散効果はほとんど無いに等しく、光拡散層を挿入する意味はあまりない。光拡散層のヘイズが70%〜85%では広視野領域での拡散はそれ以下のヘイズのときよりも大きな拡散効果をもつが、ピークゲインの減衰が大きく解像度も悪化する。以上より、30%〜70%の光拡散層と合わせることにより、ピークゲインを大きく減衰させることなくスクリーン全体を明るく観察できるマイクロレンズスクリーンが実現できる。
【0023】
さらに、ヘイズが55%以下であれば、ピークゲインがヘイズ30%のときの値をほぼ維持しつつ、広視野領域でのゲイン増加を実現することが可能であり解像度も良好でより素晴らしい。
【0024】
本発明におけるマイクロレンズアレイシートの透明基材としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系/スチレン系共重合樹脂等の熱可塑性樹脂材料、あるいは珪酸塩を成分に含む無機系材料も使用することができる。いずれの材料も光透過性が高いことが必須である。
【0025】
本発明における光拡散層に用いる光拡散材としては、無機系ではアルミナ、シリカ等、有機系ではアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系/スチレン系共重合樹脂が好適である。
【0026】
本発明における光拡散層は、上記拡散材を下記に樹脂材料に、例えば、練り込んだ光拡散フィルムもしくは光拡散板を積層して形成できる。
【0027】
本発明における上記樹脂材料としては、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカ−ボネイト系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアリレ−ト系樹脂、ポリサルフオン系樹脂、ポリエ−テルサルフオン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフイン系樹脂、フツ素化ポリイミド系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ナイロン系樹脂、などから選択される単体あるいは混合体からなる。
【0028】
上記の光拡散層の観察側の最外面に、傷防止処理、汚れ防止処理、帯電防止処理、無反射処理、ノングレア処理、マツト化処理、着色処理(テイント処理)、から選ばれた少なくとも1つの処理を施すことができる。
【0029】
透過率、拡散透過率、ベース樹脂との屈折率差等の光学的性質や表面の光沢、光拡散板として成形する際の分散性や、成形されたときの脆性等を考慮に入れて光拡散板を構成する材料を選定することで、光学特性に優れた光拡散フィルムもしくは光拡散板を得ることができる。
【0030】
マイクロレンズアレイのレンズ部は、プレス法、キャスティング法、または平面スタンパ、ロールスタンパの凹凸形成面に紫外線硬化型樹脂(UV樹脂)や電子線硬化型樹脂等の電離放射線樹脂を塗布または注入し、その上に基材を配置し、硬化処理後、スタンパから離型するという方法で得ることができる。
【0031】
マイクロレンズアレイシートは、放射線硬化性樹脂の硬化物によりマイクロレンズアレイ(単位レンズ群)を形成し、他面の平坦面に、各単位レンズの非集光部に相当する位置に、ポジ型感光性粘着層を介して、BMを形成した構成である。
【0032】
マイクロレンズアレイは、同形状の単体レンズが規則的に配列したレンズ群、もしくは、形状の異なる単体レンズを隙間無くランダムに2次元配列したレンズ群のことを指す。
【0033】
上記の遮光層(BM)上に、光拡散フイルムもしくは光拡散板を粘着剤により積層して本発明のマイクロレンズアレイシートを得ることができる。
【0034】
上記のようにして得られた本発明のマイクロレンズアレイシートは、光拡散層のヘイズ(拡散透過率)が30〜70%の範囲を満たすことで、優れた光拡散効果を奏するもので、本発明のマイクロレンズアレイシートとフレネルレンズシートと組み合わせて得られる透過型スクリーンは、リアプロジェクションテレビ等に好適に使用でき、明るく、視野角が広く、解像度やコントラストの高い、シンチレーションやモアレを低減した高品質の映像が観察できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例としてのマイクロレンズアレイシートの一部を示す模式斜視図である。
【図2】図1で示したマイクロレンズアレイシートの一部をレンズ側から視た模式平面図である。
【図3】図1で示したマイクロレンズアレイシートの一部を光拡散層(一部切欠されている)側から視た模式平面図である。
【図4】本発明のマイクロレンズアレイシートとフレネルレンズシートを組み合わせてなる透過型スクリーンの一例を示す模式斜視図である。
【図5】本発明における光拡散層のヘイズとピークゲインの関係を示すグラフである。
【図6】本発明における光拡散層のヘイズと視野角の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0036】
1・・・マイクロレンズアレイシート
2・・・透明基材
3・・・マイクロレンズアレイ
3a・・・単位レンズ
4・・・ポジ型感光性粘着層
5・・・遮光層(BM)
6・・・開口部
7・・・光拡散層(光拡散フィルムもしくは光拡散板)
10・・・フレネルレレンズシート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上の片面に単位レンズが2次元配列されてなるマイクロレンズアレイ部を有し、他面の平坦面には、前記単位レンズの非集光部領域にマトリクス状の遮光層が形成されて、さらに、前記遮光層を形成した面に光拡散層を積層してなるマイクロレンズアレイシートであって、
前記光拡散層のヘイズ(拡散透過率)が30〜70%の範囲を満たすことを特徴とするマイクロレンズアレイシート。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロレンズアレイシートとフレネルレンズシートと組み合わせてなることを特徴とする透過型スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−199565(P2007−199565A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20323(P2006−20323)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】