説明

マイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシート

【課題】ダイヤモンドツールによるマイクロレンズの製作が可能であって、表面にレンズが現れず、レンチキュラレンズとマイクロレンズの立体効果が同時に得られるマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシートを提供する。
【解決手段】本発明のマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシートは、上から下へ、半円柱形凸レンズが平行に配列された第1レンチキュラレンズ層と、屈折調整接着層と、半円柱形凸レンズが平行に配列された第2レンチキュラレンズ層と、焦点距離調整用透明樹脂層と、3次元的立体でイメージが観察される立体層とを含み、第1レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形凸レンズの母線と第2レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形凸レンズの母線が互いに交差しており、第1レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形凸レンズの曲面は下方に向いており、第2レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形の凸レンズの曲面は上方に向いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズシートに関するものであり、より詳細には、マイクロレンズ兼用のレンチキュラレンズシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンズシートは、多様な分野で使用され、代表的には液晶ディスプレイ用、立体映像ディスプレイ、面光源装置、バックライトユニット、立体用レンズシートなどに適用されている。
【0003】
図1は、従来の立体用マイクロレンズシートの構造を示す斜視図である。
【0004】
図1を参照すると、従来の立体用マイクロレンズシート100は、凸レンズがアレイ形態で配列されたレンズアレイ層110と、該レンズアレイ層の下部に形成され、レンズの曲率半径に対応して適切な焦点距離を設定するための焦点距離調整用透明樹脂層120と、前記焦点距離調整用透明樹脂層120の下部に形成され、所定の立体パターンによって立体イメージが結ばれる立体層130とを備える。
【0005】
このようなマイクロレンズシートは、観察者の視覚的錯視現象によって深さを感じ、その深さの感じ方の差は立体パターンの大きさと稠密度の差によって決まる。例えば、45度で、インチ当たり200個で構成された凸レンズにおいて、立体パターンの個数を200個より少なくした場合、観察者は突き出される立体感を感じ、一方、200個より多くした場合は凹んでいるように見える立体感を感じる。
【0006】
一般に、立体用マイクロレンズシート100は、レンズの形状をリソグラフやレーザエッチングなどの方法を用いて金型を製作し、この金型を用いて生産する。ここで、リソグラフを利用した金型の製作は、高品質のマイクロレンズを加工することができるが、レンズの大きさが非常に制限的で価格が高価である。レーザエッチングを利用した金型の製作は、比較的安価な価格で大型のロール金型を製作することができるが、金型の品質が低下し、設計図面どおりに製作するのが困難である。
【0007】
図2は、従来のレンチキュラレンズシートの構造を示す斜視図である。
【0008】
図2を参照すると、従来のレンチキュラレンズシート200は、半円柱形凸レンズが複数平行に配列されたレンズアレイ層210と、該レンズアレイ層210の下部に形成され、レンズの曲率半径に対応して適切な焦点距離を設定するための焦点距離調整用透明樹脂層220と、前記焦点距離調整用透明樹脂層220の下部に形成され、立体のイメージが結ばれる立体層230とを備える。
【0009】
一般に、レンチキュラレンズシート200は、ダイヤモンドツールを利用して高品質の金型を製作することができ、自由な立体感を付与することができるが、立体感が観測方向によって制限的であり、めまいを誘発させるなどの問題点がある。また、マイクロレンズのようにモアレを利用した安定的な立体パターンを実現することができない。
【0010】
以下、エッチング技法を使用して製作した金型を用いて生産された従来のマイクロレンズの問題点を整理すると次のようになる。
【0011】
1)化学的エッチングによるマイクロレンズは、レンズ設計図面どおりの曲率半径を有することが難しい。
2)化学的エッチングの特性上、金型エンボスの深さに比例して、レンズシートの透明度が低下する。
3)化学的エッチングの特性上、全く同じレンズを再生産する場合、エッチング液の状態、外部温度及び操作者の体調などによって均一なマイクロレンズ金型を製作することが難しい。
4)単純なパターンは、安定化した立体実現が可能であるが、一般的なイメージは立体実現が制限的である。
【0012】
そして、ダイヤモンドツールを利用して製作した金型を用いて生産された従来のレンチキュラレンズが有する問題点を整理すると次のようになる。
【0013】
1)立体イメージの実現において、自由な立体感を実現することができる反面に、上下方向ではなく左右方向のみでしか立体感を感じられない。
2)イメージのジャンプ現象によって視覚的にめまいを誘発することがある。
3)モアレ技法を利用した多様なパターンの立体実現が不可能である。
【0014】
韓国登録実用新案公報に開示された放射形凸レンズ立体印刷シート(登録番号20−0311905)と立体印刷シート(登録番号20−0444099)は、多色の2Dイメージが含まれたモアレを利用した立体印刷パターンイメージを表現したものであり、従来のマイクロレンズを採用している。
【0015】
また、韓国特許公開公報に開示された光速の差を利用した印刷用平面レンズシート(出願番号10−2006−0138521)は、レンズ表面に異なる屈折率の固形樹脂を塗布して、レンズが見えないようにする平面の立体シートに関するものであり、従来のマイクロレンズまたはレンチキュラレンズを選択的に使用している。
【0016】
その他、多様な印刷立体の代わりをして陰刻または陽刻の微細エンボス柄パターンを与えて立体を実現する立体レンズシートが公開されているが、これら全てが従来の上・下、左・右放射形のマイクロレンズを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】韓国登録実用新案第20−0311905号公報
【特許文献2】韓国登録実用新案第20−0444099号公報
【特許文献3】韓国特許出願第10−2006−0138521号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明が解決しようとする技術的課題は、ダイヤモンドツールによるマイクロレンズの製作が可能であって、表面にレンズが現れず、レンチキュラレンズとマイクロレンズの立体効果を同時に得ることができるマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記技術的課題を達成するため、本発明の一実施形態によるマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシートは、半円柱形凸レンズが平行に配列された第1レンチキュラレンズ層と、該第1レンチキュラレンズ層の下部に形成された屈折調整接着層と、該屈折調整接着層の下部に形成され、半円柱形凸レンズが平行に配列された第2レンチキュラレンズ層と、該第2レンチキュラレンズ層の下部に形成された焦点距離調整用透明樹脂層と、前記焦点距離調整用透明樹脂層の下部に形成された立体層とを含み、前記第1レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形凸レンズの母線と前記第2レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形凸レンズの母線が互いに交差していることを特徴とする。
【0020】
望ましくは、前記第1レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形凸レンズの曲面が下方に向いており、前記第2レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形の凸レンズの曲面が上方に向いている。
【0021】
また、前記第1レンチキュラレンズ層の上部に形成された第1コーティング層、前記第1レンチキュラレンズ層と前記屈折調整接着層の間に形成された第2コーティング層、及び前記屈折調整接着層と前記第2レンチキュラレンズ層との間に形成された第3コーティング層のうちの少なくとも1つの層をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、ダイヤモンドツールによってマイクロレンズの製作が可能であって、2つの凸レンズ曲面が互いに異なる角度で対向して、表面にレンズが現れない高品位の立体シートの製作が可能になるという長所がある。
【0023】
また本発明は、レンズ設計図面どおりにレンズ機能を実現することによって、高い鮮明度の立体感を得ることができる長所がある。
【0024】
また本発明は、レンチキュラレンズとマイクロレンズで得られる立体効果、すなわち、どの方向でも観察が可能な立体感とフレーム単位の映像分割イメージの立体感を同時に得ることができる長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の立体用マイクロレンズシートの構造を示す斜視図である。
【図2】従来のレンチキュラレンズシートの構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態によるマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシートを各層別に分解した斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態によるマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシートを各層別に分解した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
【0027】
図3は、本発明の一実施形態によるマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシートを各層別に分解した斜視図である。
【0028】
図3を参照すると、本発明の一実施形態によるマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシート300は、複数の半円柱形凸レンズ311が平行に配列された第1レンチキュラレンズ層310と、第1レンチキュラレンズ層310の下部に形成された屈折調整接着層320と、該屈折調整接着層320の下部に形成され、複数の半円柱形凸レンズ331が平行に配列された第2レンチキュラレンズ層330と、該第2レンチキュラレンズ層330の下部に形成され、レンズの曲率半径に対応して適切な焦点距離を設定するための焦点距離調整用透明樹脂層340と、前記焦点距離調整用透明樹脂層340の下部に形成され、立体のイメージが結ばれる立体層350とを含む。
【0029】
このとき、前記第1レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形凸レンズ311の母線と前記第2レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形凸レンズ331の母線を互いに交差させる。望ましくは、前記交差角度を90度または45度にする。
【0030】
本発明の一実施形態は、第1および第2レンチキュラレンズ層310,330を互いに対向させる。すなわち、前記第1レンチキュラレンズ層310に配列された半円柱形凸レンズ311の曲面は下方に向いており、前記第2レンチキュラレンズ層330に配列された半円柱形の凸レンズ331の曲面は上方に向いている。本発明の一実施形態は、このような構成により表面にレンズが現れない高品位の立体レンズシートの製作が可能である。
【0031】
また、第1レンチキュラレンズ層310は、その下部に焦点距離調整用透明樹脂層を有することなく、半円柱形の凸レンズのみを有し、最小の厚さで生産できる。そして、第1レンチキュラレンズ層310の凸レンズ311と第2レンチキュラレンズ層330の凸レンズ331は、等しい曲率半径、等しい屈折率及び等しいレンズピッチを有することが望ましい。
【0032】
第2レンチキュラレンズ層330の下部に形成された焦点距離調整用透明樹脂層340は、第1レンチキュラレンズ層310の屈折率と曲率半径、屈折調整接着層320の屈折率、及び第2レンチキュラレンズ層330の屈折率と曲率半径を考慮して計算された物性を有する。
【0033】
図4は、本発明の他の実施形態によるマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシートを各層別に分解した斜視図である。
【0034】
図4を参照すると、本発明の他の実施形態による立体用マイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシート400は、図3に示したレンズシート300において、第1レンチキュラレンズ層310の上部に形成された第1樹脂コーティング層410、第1レンチキュラレンズ層310と屈折調整接着層320との間に形成された第2樹脂コーティング層420、及び屈折調整接着層320と第2レンチキュラレンズ層330との間に形成された第3樹脂コーティング層430のうちの少なくとも1つの層をさらに含む。
【0035】
このような第1〜第3樹脂コーティング層410、420、430は、レンチキュラレンズ層の機能を向上させる。例えば、レンチキュラレンズ層310、330がA−PET(A-Polyethylene Terephthalate)樹脂である場合には、高透明性、高屈折率、寸法安全性及び低価格であるという長所があるが、接着性及び印刷適性などに問題があり、G−PET(G-Polyethylene Terephthalate)樹脂である場合には、高透明性、良い接着性、印刷適性、高屈折率及び寸法安全性という長所があるが、高価であるという短所がある。すなわち、それぞれの樹脂には長所と短所が共存する。
【0036】
したがって、本発明の一実施形態は、レンチキュラレンズ層310、330としてA−PET樹脂を使用するが、第1〜第3樹脂コーティング層410、420、430としてG−PETを使用して微細にコーティングする。その結果、A−PETが有する高透明性、高屈折率、寸法安全性及び低価格という特性と、G−PETが有する良い接着性及び印刷適性という特性を同時に備えることができる。このような樹脂の組合せは、単に一つの例で挙げただけであり、本発明は前記例として挙げた組合せに限定されるものではない。
【0037】
また、第1レンチキュラレンズ層310の凸レンズ311と前記第2レンチキュラレンズ層330の凸レンズ331を非球面形態に設計することが望ましい。
【0038】
その理由は、一般的な断面を有する立体レンズシートは、曲率半径による画角を有するようになるが、この画角が45度以上である場合には変換用レンズで、45度以下である場合には立体用レンズに分類される。
【0039】
しかし、レンズの表面に対して低い屈折率のコーティング剤などで表面処理を施した場合には、単一屈折率ではない2重の屈折率を有するようになって、これにより画角が細くなる現象が発生する。
【0040】
したがって、本発明の実施形態は、極端的に高い画角を有する非球面形態でレンズを加工した後、第1レンチキュラレンズ層310と第2レンチキュラレンズ層320を透明の固形樹脂接着剤を使用して一体化させて、計算された屈折率の公式によって画角が狭くなっても安定的な立体感を得ることができる。
【0041】
そして、透明の固形樹脂である屈折調整接着層320の屈折率は、第1および第2レンチキュラレンズ層310、330の屈折率より低いことが好ましい。例えば、第1および第2レンチキュラレンズ層310、330のPETが1.575の屈折率を有し、屈折調整接着層320の透明な固形樹脂が1.575の屈折率を有する場合、レンズシートは立体レンズシートではない一般透明シートの形態になってしまう。そして、透明の固形樹脂である屈折調整接着層320の屈折率が低いほど、製作したレンズシートの厚さが減少することは当然である。
【0042】
以上では、本発明に対する技術思想を添付図面と共に敍述したが、これは本発明の望ましい実施例を例示的に説明したものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明が属する技術分野で通常の知識を有した者なら誰も本発明の技術的思想の範疇を離脱しない範囲内で多様な変形及び模倣が可能であることは明白な事実である。
【符号の説明】
【0043】
300,400 レンチキュラレンズシート
311 半円柱形凸レンズ
310 第1レンチキュラレンズ層
320 屈折調整接着層
331 半円柱形凸レンズ
330 第2レンチキュラレンズ層
340 焦点距離調整用透明樹脂層
350 立体層
410 第1樹脂コーティング層
420 第2樹脂コーティング層
430 第3樹脂コーティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半円柱形凸レンズが平行に配列された第1レンチキュラレンズ層と、
前記第1レンチキュラレンズ層の下部に形成された屈折調整接着層と、
前記屈折調整接着層の下部に形成され、半円柱形凸レンズが平行に配列された第2レンチキュラレンズ層と、
前記第2レンチキュラレンズ層の下部に形成された焦点距離調整用透明樹脂層と、
前記焦点距離調整用透明樹脂層の下部に形成され、3次元的立体でイメージが観察される立体層と、を含み、
前記第1レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形凸レンズの母線と前記第2レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形凸レンズの母線が互いに交差しており、
前記第1レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形凸レンズの曲面は下方に向いており、前記第2レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形の凸レンズの曲面は上方に向いていることを特徴とするマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシート。
【請求項2】
前記第1レンチキュラレンズ層の上部に形成された第1樹脂コーティング層、前記第1レンチキュラレンズ層と前記屈折調整接着層との間に形成された第2樹脂コーティング層、及び前記屈折調整接着層と前記第2レンチキュラレンズ層との間に形成された第3樹脂コーティング層のうちの少なくとも1つの層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシート。
【請求項3】
前記第1レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形凸レンズの母線と前記第2レンチキュラレンズ層に配列された半円柱形凸レンズの母線が90度または45度で交差していることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシート。
【請求項4】
前記第1レンチキュラレンズ層の凸レンズと前記第2レンチキュラレンズ層の凸レンズは、等しい曲率半径、等しい屈折率及び等しいレンズピッチを有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシート。
【請求項5】
前記第1レンチキュラレンズ層の凸レンズと前記第2レンチキュラレンズ層の凸レンズは、非球面形態であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシート。
【請求項6】
前記屈折調整接着層の屈折率は、前記第1および第2レンチキュラレンズ層の屈折率より低いことを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズ兼用レンチキュラレンズシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−128423(P2012−128423A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−272020(P2011−272020)
【出願日】平成23年12月13日(2011.12.13)
【出願人】(511303364)
【Fターム(参考)】