説明

マイクロ・ナノソリッド利用型半導体洗浄システム

【課題】半導体ウエハー洗浄プロセスにおける、完全ケミカルフリー・純水フリータイプのドライ型アッシングレス洗浄システム並びに洗浄方法を提供する。
【解決手段】表面にレジストを有している基体を加温又は加熱せしめ、該加温又は加熱された半導体ウエハー表面上のレジストに対して、極低温マイクロソリッド微粒化ノズルから極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流体のジェット流を衝突させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ・ナノソリッド利用型半導体洗浄技術、特には極低温マイクロ・ナノソリッドジェット利用型アッシングレス半導体洗浄法並びに半導体洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造では、ウエハー基板にフォトレジストを塗布した後、ウエハー上にパターンとされた特定の領域並びに構造を形成するように処理される。該ウエハー上のレジストは、紫外線などによる露光処理及び/又はイオン注入処理に曝される。役目を終えたレジストは、基板に障害を与えることなく、極力完全に除去されねばならない。
半導体洗浄に関しては、従来より、アンモニア過酸化水素水を用いたウエット(Wet)洗
浄プロセスが一般的であるが、最近の高集積デバイスに対してこのようなエッチングによるリフトオフを用いた洗浄法は適用限界に近づきつつある。
【0003】
また、ウエハー基板上の処理後のレジストは、イオン注入処理されている結果、通常は、その表面が非常に硬い外皮が形成された状態となっており、それを除去するために酸素プラズマなどのプラズマガスを利用したアッシング処理が不可欠である。しかし、アッシング処理を施すと、処理後に残る残留物や不揮発性汚染物質を除去するため、さらに、化学物質を含んだ液体で処理、及び/又は、希酸を用いた洗浄処理が必要となり、反復洗浄工程が必要となったり、廃液処理にも問題が生じている。また、基板上の残留物は、適切に除去されないと、デバイスの機能障害又は欠陥の原因ともなり、さらには、洗浄除去工程も適切に且つ確実になされないと、集積の高度化、回路の緻密且つ高集積複雑化に伴い、半導体に大きな障害・欠陥などの悪影響を与えることともなる。したがって、アッシング処理を必要としないアッシングレス半導体洗浄技術の開発が必要である。
【0004】
また、半導体産業では、絶え間ない技術革新と高集積化などにより、急激で且つ絶え間なく限界寸法が小さくされており、それにより、半導体基板からのレジストやその残留物を除去・洗浄することは困難になってきている。例えば、100nm未満といった加工精度の
寸法限界の領域では、高集積と微細化により、レジストなどを洗浄・除去することは、一層その困難度を増加させており、液体の表面張力特性に起因する、実質上の限界に直面するなどなどの問題が予想される。さらに、絶縁膜(high-k膜)、金属電極(メタル)などの金属新材料採用に伴う新しい洗浄プロセスの確立が求められており、50〜30nm単位の微小洗浄技術と45nm以降の洗浄技術の壁を打破しうる新型スーパードライ洗浄技術の確立が必要とされると考えられる。
【0005】
スラッシュ窒素(slush nitrogen)とは、液体窒素の中に固体の窒素粒子を含んでいる固液二相からなる極低温の液体であり、近年、超伝導技術の発展にともない、例えば、長距離超伝導ケーブルの次世代冷媒などとしてその適用が期待されている。スラッシュ窒素などのスラッシュ二相状態の液体を製造する技術としては、WO 2004/080892(国際公開日:2004年9月23日、特許文献1)、特開2008-2715号公報(特許文献2)などが挙げられる。
本発明者は、これまで、スラッシュ窒素二相流利用型超伝導ケーブル冷却システムを開発し、そこで、加圧過冷却液体窒素流と極低温ヘリウムガスの高速流の衝突により固体窒素の生成と微粒化を可能にする微細ソリッド窒素生成用二流体エジェクターノズルを開発すると共に、当該二流体ノズルを用いたソリッド粒子生成システム構成により、超伝導混相冷却性能に関する基本計測、CFD(計算流体力学)を用いた融合計算によるノズル内部
におけるソリッド粒子形成に関する解析を行ってきた〔特開2008-2715号公報(特許文献
2)〕。
【0006】
さらに、本発明者は、106(W/m2)レベルの超高熱流束の冷却性能を有する新型のプロセ
ッサ冷却システムを開発することを主目的とした、マイクロ・ナノソリッド利用型超高熱流束混相冷却システムを開発している〔特願2008-154898(特許文献3)〕。これに関連
し、基礎冷却性能に関する実験を行い、マイクロ・ナノソリッド噴霧を用いた場合、噴霧開始からわずか8秒程度の短い噴霧時間で105W/m2レベルの超高熱流束を達成しており、これは液体窒素噴霧の1.5倍以上の冷却熱流束を有することを明らかにした。かくして、550Kの加熱ウエハーをわずか4秒で71Kまで超急速冷却することに成功している。マイクロソ
リッド冷却は膜沸騰状態を経ずして潜熱輸送ならびに粒子接触熱伝達が達成されるため、液体の膜沸騰状態に起因する伝熱劣化を回避し、超高熱流束冷却を可能なものにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2004/080892(国際公開日:2004年9月23日)
【特許文献2】特開2008-2715号公報(公開日:平成20年1月10日)
【特許文献3】特願2008-154898(出願日:平成20年6月13日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体産業では、高集積化や技術革新による新規半導体材料の開発により、半導体の新たな洗浄技術の開発が求められている。また、半導体ウエハー洗浄プロセスにおいて、完全ケミカルフリー・純水フリータイプであるドライ型アッシングレス洗浄システム及び洗浄方法の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、半導体ウエハー洗浄プロセスにおいて、完全ケミカルフリー・純水フリータイプであるドライ型アッシングレス洗浄システム及び洗浄方法であり、且つ、極低温マイクロ・ナノソリッドの超高速噴霧ジェット流を用いた、洗浄システム並びに洗浄法を提供するにある。
本発明者は、半導体ウエハー製造工程で利用されるレジストの除去洗浄技術に着目し開発研究を鋭意進めた結果、極低温マイクロ・ナノソリッド流をレジスト洗浄媒体として用いると、マイクロ・ナノソリッド噴霧流のジェット流の慣性力によるはく離作用に加えて、ソリッド噴流の熱流体力学的効果、超高熱流束急冷によるレジスト熱収縮効果の相互作用も付加され、アッシングプロセスを経ずに、レジストをウエハー面上からはく離・除去、洗浄できることを見出し、次世代極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流利用型半導体洗浄システム並びに洗浄方法を提供するに至った。
【0010】
かくして、本発明では、次のものが提供される。
〔1〕表面にレジストを有している基体からレジストをはく離・除去する半導体ウエハー洗浄法において、極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流体をレジスト洗浄媒体として使用し、該ウエハー表面上のレジストに対して当該極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流を衝突させることを特徴とする半導体ウエハー洗浄法。
〔2〕極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流体でもってレジストをはく離・除去する処理前に、当該表面にレジストを有している基体を加温又は加熱せしめ、該加温又は加熱された半導体ウエハー表面上のレジストに対して当該極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流を衝突させることを特徴とする上記〔1〕に記載の半導体ウエハー洗浄法。
〔3〕当該表面にレジストを有している基体を、100℃以上に加温又は加熱せしめ、該
加温又は加熱された半導体ウエハー表面上のレジストに対して当該極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流を衝突させることを特徴とする上記〔2〕に記載の半導体ウエハー洗浄法

〔4〕極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流が極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧ジェット流であることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載の半導体ウエハー洗浄法。
〔5〕極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧ジェット流が、流速15m/s又はそれ以上の流
速であることを特徴とする上記〔4〕に記載の半導体ウエハー洗浄法。
〔6〕極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧ジェット流が、流速100m/s又はそれ以上の流速であることを特徴とする上記〔4〕に記載の半導体ウエハー洗浄法。
〔7〕極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流中の固体粒子が平均粒子径10μm以下であ
ることを特徴とする上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一に記載の半導体ウエハー洗浄法。
〔8〕極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流体が極低温マイクロ・ナノソリッド窒素噴霧流体であることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一に記載の半導体ウエハー洗浄法。
【0011】
〔9〕半導体ウエハー洗浄装置であって、個々の半導体基体を洗浄するレジスト洗浄媒体を当該半導体基体上のレジストに衝突せしめてレジストをはく離・除去するレジスト洗浄媒体照射装置と、レジスト洗浄媒体供給回路を通してレジスト洗浄媒体を循環せしめるように働くレジスト洗浄媒体駆動手段とを備え、該レジスト洗浄媒体が極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流体であり、当該レジスト洗浄媒体照射装置に極低温マイクロソリッド微粒化ノズルを備えたマイクロ・ナノソリッド噴霧流体生成システムが備えられていることを特徴とする半導体ウエハー洗浄装置。
〔10〕当該レジスト洗浄媒体を当該半導体基体上のレジストに衝突せしめてレジストをはく離・除去する処理前に、当該処理対象の半導体ウエハーを加温又は加熱せしめることをする加温・加熱装置を備えていることを特徴とする上記〔9〕に記載の半導体ウエハー洗浄装置。
〔11〕上記加温・加熱装置は、当該処理対象の半導体ウエハーを100℃以上に加温又は
加熱せしめることのできるものであることを特徴とする上記〔10〕に記載の半導体ウエハー洗浄装置。
〔12〕極低温マイクロソリッド微粒化ノズルが、超音波振動子をノズル噴出口部に設置してあるものであることを特徴とする上記〔9〕〜〔11〕のいずれか一に記載の半導体ウエハー洗浄装置。
〔13〕極低温マイクロソリッド微粒化ノズルが、スパイラルノズルを備えているものであることを特徴とする上記〔9〕〜〔12〕のいずれか一に記載の半導体ウエハー洗浄装置。
〔14〕レジスト洗浄媒体照射装置が、極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流体のジェット流を半導体基体上のレジストに衝突せしめるようにコントロールされているものであることを特徴とする上記〔9〕〜〔13〕のいずれか一に記載の半導体ウエハー洗浄装置。
〔15〕半導体ウエハーの洗浄を、極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流をレジスト洗浄媒体として使用して行うものであることを特徴とする極低温マイクロ・ナノソリッド利用型半導体洗浄システム。
〔16〕極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流が極低温マイクロ・ナノソリッド窒素噴霧流であることを特徴とする上記〔15〕に記載の極低温マイクロ・ナノソリッド利用型半導体洗浄システム。
〔17〕加温又は加熱された半導体ウエハーに対してレジスト洗浄処理を施すことを特徴とする上記〔15〕又は〔16〕に記載の極低温マイクロ・ナノソリッド利用型半導体洗浄システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマイクロ・ナノソリッドジェット利用型アッシングレスレジストはく離・除去技術(レジストはく離・除去システム並びに方法)は、マイクロ・ナノソリッド粒子の運
動力学的高速衝突と極低温粒子流の有する高機能熱流動特性を利用し、従来のケミカルWet洗浄の有する適用限界を打破しうる完全ケミカルフリー、純水フリータイプ、ドライ型
レジストはく離・洗浄システム・方法である点で、新規性・優位性を有する。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】マイクロソリッドジェット噴霧によるレジストはく離効果の予備実験を、模式的に示す。
【図2】マイクロソリッドジェット噴霧によるレジストはく離効果の予備実験の結果を示す。マイクロソリッドジェットの超高熱流束急冷に基づく熱収縮効果により、レジストはく離が達成可能であることを確認した。
【図3】マイクロ・ナノソリッドジェット生成ノズルを示す。スパイラル型ノズルである。
【図4】マイクロソリッドジェット噴霧によるレジストはく離実験に使用したレジスト付き半導体ウエハー(レジスト剥離前)の一例を示す。該レジスト付き半導体ウエハーの一部断面の様子を含んだ電子顕微鏡写真である。
【図5】ソリッドジェット噴霧によるレジストはく離実験に使用した微細ソリッド窒素噴霧流生成ノズル備えているソリッド窒素噴霧流照射装置の一例を示す。本例では、ノズルよりソリッド窒素噴霧流(ジェット)が噴射せしめられている様子が示されている。
【図6】図5に示された微細ソリッド窒素噴霧流生成ノズル備えているソリッド窒素噴霧流照射装置を使用し、ノズルに45kHz/30μm振幅の超音波を付加して、ソリッド窒素噴霧流中の窒素粒子の細粒化をして、そのソリッド窒素噴霧流(ジェット)を、図4に示したようなレジスト付き半導体ウエハーに噴射せしめて、レジストの洗浄処理(レジストの剥離除去処理)を施した結果、得られた半導体ウエハー(レジスト剥離・除去後)の一例を示す。図は電子顕微鏡写真(上方の写真は、ウエハーの断面部、下方の写真は、斜め上方よりの斜視)である。綺麗にレジストが除去されていることが観察できる。
【図7】本発明の半導体ウエハー洗浄法で処理された半導体ウエハー(レジスト剥離・除去後)の例を示す。図は電子顕微鏡写真(下側がウエハーの断面部、上側が、斜め上方よりの斜視)である。微細なパターンでは、綺麗にレジストが除去されていることが観察できる。
【図8】本発明に従った半導体ウエハー洗浄法の実験に使用された半導体ウエハー洗浄装置(ソリッド窒素噴霧流体生成システム並びにレジストへの噴霧流体照射装置を備える)の概略構造図を示す。
【図9】図8の装置を、A-A矢印線より見た場合のその装置の概略構造図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、極低温マイクロ・ナノソリッドの超高速噴霧ジェット流を用いていることを特徴とする、半導体ウエハー洗浄プロセスにおける、完全ケミカルフリー・純水フリータイプのドライ型アッシングレス洗浄システム並びに洗浄方法を提供するものである。
本発明の半導体ウエハー洗浄技術は、過冷却液体窒素と極低温ヘリウムガス(寒剤)の高速衝突により連続生成される微細固体窒素粒子から成るマイクロ・ナノソリッドジェット噴霧流を、ウエハー面上のレジストに衝突させ、粒子の慣性力と噴霧の熱流体力学的効果、超高熱流束急冷、さらには、超音波の付加による氷核生成促進とナノ微粒化効果によ
るレジスト熱収縮効果の相互作用により、アッシングプロセスを経ずに、レジストをウエハー面上からはく離・除去、洗浄するものである。その特徴は、レジスト除去・洗浄同時プロセス機構から成るドライ型アッシングレス洗浄システムであることである。さらなる特徴としては、分子量の小さいN2の固体粒子を用いることにより、微細パターン、特に次世代型3次元ゲート構造の配線パターンに及ぼす粒子衝撃ダメージを極力軽減させ、洗浄時における歩留まりを向上させることが可能になる。本発明で利用するN2の固体粒子は、従来型のブラスト洗浄に用いられているCO2よりも分子量の小さいもので、微細パターン
、特に次世代型3次元ゲート構造の配線パターンに及ぼす粒子衝撃ダメージを極力軽減させて、洗浄時における歩留まりを向上させることが可能であると考えられる。また、N2は不活性ガスであるので、チャージダメージがほとんど生ぜず、新Low-k材料へのダメージ
が少ないと言うメリットを有している。
【0015】
本発明では、半導体などのウエハー面上のレジストのはく離・除去媒体として液化ガスから生成される微小固体粒子を含んでいるマイクロ・ナノソリッドの高速噴霧流、すなわち、液化ガスの極低温マイクロ・ナノソリッドジェット流を用いる。特に好適な具体例では、本発明で、レジストはく離・除去媒体として微小固体窒素粒子を含有しているマイクロ・ナノソリッドの高速噴霧流、すなわち、マイクロ・ナノソリッド窒素ジェット流を用いる。本半導体洗浄システムは、マイクロ・ナノソリッドジェット流の有する高い運動力学的高速衝突特性と極低温粒子流の有する高機能熱流動特性を利用しているものを指していてよい。
【0016】
本明細書で「ソリッド」又は「ソリッド流」とは、液体窒素、液体酸素、液体水素などの液化ガスを凍らせて、その結果、得られる固体窒素、固体酸素、固体水素などの固体粒子を含有している流れであって、窒素ガス、酸素ガス、水素ガスなどのガス、またはそれらの流体状態であるもの、さらには、ヘリウムガスなどの不活性ガスを包含するガスに、ソリッド粒子(固体窒素粒子、固体酸素粒子、固体水素粒子などの固体粒子)、あるいはマイクロソリッド粒子及び/又はナノソリッド粒子が懸濁あるいは分散化した状態で存在しているものあるいはそうした系、さらにはそれらに部分的に液体窒素、液体酸素、液体水素などの液化ガスが混在していてよいといった状態で存在しているものあるいはそうした系を指す。本発明では、好ましいものとして、窒素マイクロ・ナノソリッド流(又は窒素マイクロ・ナノソリッド粒子を含有する流れ)が挙げられ、特に好ましいものとして、窒素のマイクロ・ナノソリッド噴霧流が挙げられる。そして「マイクロ・ナノソリッド」又は「マイクロ・ナノソリッド流」と称した場合、それに含まれるソリッド粒子(あるいはマイクロソリッド粒子及び/又はナノソリッド粒子)の粒子径、すなわち、固体粒子の直径のサイズが、下記マイクロ・ナノソリッド窒素について説明するように、比較的小さなものを指しており、ある場合には、その粒子の平均粒径が100 μm以下のもの、さらに
は、50 μm以下あるいは20 μm以下であるようなもの、さらには、より好ましくは、その粒子の平均粒径が10.0 μm以下のもの、さらには、7.0 μm以下あるいは6.0 μm以下であるようなものを指している意味であってよい。さらに、当該固体粒子の粒径サイズとして、さらに小さな平均粒子径を持つ固体を含有するもの、例えば、固体状粒子の平均粒子径が5.0μm以下であるもの、あるいは4.0μm以下、さらには、3.0μm以下や2.0μm以下であるもの、さらには1.0μm以下であるものを含有するものであってよい。また、当該固体粒子の粒径サイズとして、ナノオーダーのサイズであるものを含有するものが包含されてもよく、特定の場合、例えば、800nm以下あるいは600nm以下、さらには500nm以下あるいは250nm以下、さらには200nm以下あるいは100nm以下の固体状粒子を含有するものであってよく、さらによりサイズの小さなものを含有するもの、例えば、60nm以下の粒子、もっと小さなもの、例えば、50nm以下の粒子、あるいは、おおよそ10〜50nmである粒子、さらにはおおよそ30〜50nmである粒子を含有するものであってもよい。典型的な場合、主におおよそ1.0〜10.05 μmの固体状粒子を含有しているものを指している意味であってよい。本発明では、好ましいものとして、窒素のマイクロ・ナノソリッド粒子が挙げられる。特に好
適には、固体状の粒子のサイズが均一な分布を示すものが挙げられる。
【0017】
本明細書で「窒素マイクロ・ナノソリッド流」とは、窒素ガスと固体窒素とを含有しており、それには液体窒素も含有されていてもよい混合物で、例えば、窒素の固液境界線上に存在している状態にある平衡混合物も包含されてよく、典型的には、固体窒素と気体ヘリウムとを含有している混合物、固体窒素と気体窒素(窒素ガス)と気体ヘリウムとを含有している混合物、さらには、液体窒素と固体窒素と気体ヘリウムとを含有している混合物や、液体窒素と固体窒素と窒素ガスと気体ヘリウムとを含有している混合物などであって、固体窒素粒子(ソリッド窒素粒子)として、微細な粒子であり、且つ、比較的均一なものを含んでいるものを意味する。ここで「微細な」及び/又は「均一な」粒子とは、電子デバイス用基板、例えば、次世代半導体、IC、LSIなどの半導体素子、コンピューター
チップ、CPU、GPUなどのマイクロプロセッサなどの微細なパターンをもって製造される半導体(ハードディスク、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プリント基板などの包含される)に施されたレジストをはく離・除去することを、効率的に且つデバイスの性能に悪影響を与えることなく、実質的に実施できるものを指していてよく、その実質的に実施できるとは、当業者が実用上満足できると判断する程度を意味してよい。
【0018】
該窒素マイクロ・ナノソリッド流は、固体の窒素粒子を含んでいる極低温の噴霧流体であり、且つ、固体窒素として存在しているものが少なくとも平均粒子径において1mmのサイズより小さいものであるもの、例えば、固体窒素粒子あるいは結晶状窒素粒子の粒子径について、その平均粒子径がミクロンオーダーのサイズであるもの、例えば、固体窒素として存在しているものが少なくとも平均粒子径において900μmサイズより小さいものであってよく、さらに、その平均粒子径が500μm以下であるもの、あるいは250μm以下、好ましくは、100μm以下、より好ましくは、50μm以下であるもの、あるいは、より典型的な
場合では、その平均粒子径が25.0μm以下であるもの、あるいは20.0μm以下、好ましくは、15.0μm以下、より好ましくは、10.0μm以下であるものが挙げられる。また、ある場合には、さらに小さな平均粒子径を持つ固体窒素を含有する流体、例えば、固体状窒素粒子の平均粒子径が8.0μm以下であるもの、あるいは6.0μm以下、好ましくは、5.0μm以下、より好ましくは、4.0μm以下であるもの、あるいは、より特別な場合では、その粒子径が3.0μm以下であるもの、あるいは2.0μm以下、好ましくは、1.5μm以下、より好ましくは、1.0μm以下であるものを含有するものが挙げられる。さらに、ナノオーダーのサイズであるものを使用してよく、例えば、800nm以下あるいは600nm以下、さらには500nm以下あ
るいは250nm以下、さらには200nm以下あるいは100nm以下のものを含有するものであって
よく、さらによりサイズの小さなものを含有するもの、例えば、60nm以下の粒子、もっと小さなもの、例えば、50nm以下の粒子、あるいは、おおよそ10〜50nmである粒子、さらにはおおよそ30〜50nmである粒子を含有する流体が挙げられる。
【0019】
本発明技術で利用する当該窒素マイクロ・ナノソリッド噴霧流の生成法としては、液体窒素の流れあるいは過冷却された液体窒素の流れ(過冷却液体窒素流)を極低温のヘリウムガスの流れの作用で微粒化噴霧冷却(atomization - cooling)に付すことにより行うこ
とができる。当該マイクロ・ナノソリッド噴霧流の生成法は、液化ガスのソリッド粒子(特には、マイクロ・ナノソリッド粒子)を生成することのできるものであって、極低温液体の流れの中心部あるいはその近傍に、当該極低温液体の流れと同方向あるいはほぼ同方向に、当該極低温液体の温度と同程度あるいはそれよりは低い温度の気体又は液体の流れを導入せしめ、気体と液体とを衝突せしめて微粒子を形成せしめること、あるいは性質の異なった液体同士を衝突せしめて微粒子を形成せしめることで行われる。典型的な場合では、液体窒素の流れあるいは過冷却された液体窒素の流れ(過冷却液体窒素流)に極低温のヘリウムガスの流れを衝突せしめて微粒化された固体窒素粒子(細粒化固体窒素粒子)を含有する流れ(噴霧流)を形成することにより行われる。当該導入せしめられる気体又は液体の流れは、高圧及び/又は高速で導入され、一般的には高圧且つ高速の条件下に導
入される。当該導入せしめられる流れは、その出口部(例えば、ノズル噴出口)では、噴出流あるいはジェット流となっており、液体を細粒化あるいは微粒子化する作用を有するものである(微粒化噴出流、微粒化ジェット流あるいは細粒化ジェット流であってよい)。該高圧とは、所要の微粒化目的が達成できる限り、いかなる圧力も採用できる、また射出される出口(噴出口)の口径によっても適宜のものとされるが、例えば、0.5〜1,000 MPaとされることができ、ある場合には、1〜100 MPa、別の場合には、1〜10 MPaとしたり
、1.0〜5.0 MPaとすることができる。また、該高圧とは、噴出口からの所要の噴出流速が達成できるものであってもよい。該高速とは、噴出口からの噴出流速を指していてよく、例えば、5〜850 m/s、ある場合には、20〜540 m/s、別の場合には、50〜340 m/sあるいは80〜250 m/sとしたり、90〜200 m/sあるいは100〜150 m/sとすることができる。
【0020】
該液化ガスとしては、代表的には、常圧で−190℃以下の融点を有している物質を指し
ていてよく、例えば、液体窒素、液体酸素、液体水素、液体アルゴンなどが挙げられてよく、液体窒素が好ましいものとして挙げられる。該液化ガスが、窒素である場合について、以下説明する。例えば、当該窒素マイクロ・ナノソリッド噴霧流は、液体窒素の流れあるいは過冷却液体窒素流をノズル(nozzle)から射出するに際して、該過冷却液体窒素流のおおよそ中心部又はその近傍に、該過冷却液体窒素流と同方向あるいはほぼ同方向に当該過冷却液体窒素の温度と同程度あるいはそれより低い温度の気体又は液体の流れ(極低温導入流又は極低温射出補助流)を導入することにより実現可能である。本発明の一つの態様では、当該極低温導入流は、窒素の融点−209.86℃より低い融点や沸点を有するものを使用できるが、例えば、水素は融点−259.14℃、沸点−252.87℃であり、ヘリウム(He)は融点−272.2℃、沸点−268.9℃であり使用することが可能である。特に、ヘリウムは、極低温ヘリウムガスを流すことができ、不活性であり好ましい。
【0021】
窒素ソリッド噴霧流(特には、窒素マイクロ・ナノソリッド噴霧流、さらには窒素マイクロ・ナノソリッド噴霧ジェット流を包含する)を利用して、微小固体窒素粒子からなるマイクロ・ナノソリッド高速噴霧流を形成してその高い運動力学的高速衝突特性と極低温粒子流の有する高機能熱流動特性を利用するに際しては、マイクロ・ナノソリッド噴霧流生成用ノズル(微粒化ノズル)、すなわち、可能な限り粒径が小さく均一なソリッド粒子を短時間・効率的に生成することが可能なソリッド微粒化ノズルが有利であり、そうしたものとしては極低温ヘリウムガスの高速流あるいはジェット流を用いたノズル、すなわち、二流体エジェクターノズルが有効である。該二流体エジェクターノズルは、ヘリウム冷凍機により冷却された極低温ヘリウムガスをエジェクター内に高圧・高速で注入することにより、撹拌容器内の過冷却液体窒素はエジェクター内に吸い込まれ、ヘリウムガスの高速流と衝突混合することにより微細ソリッド窒素粒子(細粒化ソリッド窒素粒子)を形成しエジェクターノズル外部に噴出されるメカニズム(あるいはジェット噴射されるメカニズム)を有しているものが挙げられ、こうしたメカニズムを利用するものは本発明で利用可能としてよい。典型的な例では、液体窒素と極低温ヘリウムガスを流すことのできる同心混合型高速二流体ノズルが挙げられる。当該ノズルは、例えば、WO 2004/080892(国際公開日:2004年9月23日、特許文献1)、特開2008-2715号公報(特許文献2)、特願2008-154898(特許文献3)などに記載がある。当該同心混合型高速二流体ノズルでは、高速且つ高圧で噴出口から射出されるヘリウムガスの流れにより液体窒素はラインを通って壁に囲まれているエジェクター内に吸い込まれ、高速なヘリウムガス流と衝突し、細粒化又は微粒化せしめられ、エジェクターの噴出口からソリッド窒素粒子が形成されて、液体窒素中(あるいは液体窒素流中)あるいは窒素ガス流中に供給され混入せしめられることとなる。
【0022】
一つの好ましい具体例では、スパイラル型ノズルを使用して、窒素マイクロ・ナノソリッド噴霧流が生成される。本スパイラル型ノズルは、特開2008-2715号公報(特許文献2
)、特願2008-154898(特許文献3)などに記載がある。当該スパイラル型ノズルにより
、効率よく、均一粒径を有するマイクロ・ナノソリッド窒素粒子の連続生成が可能となっている。当該二流体スパイラル型エジェクターノズルは、極低温ヘリウムガスの高速流を用いるもので、例えば、ヘリウム冷凍機により冷却された極低温ヘリウムガスをエジェクター内に高圧・高速で注入することにより撹拌容器内の過冷却液体窒素はエジェクター内に吸い込まれ、ヘリウムガスの高速流と衝突混合することによりマイクロ・ナノソリッド窒素粒子よりなる窒素マイクロ・ナノソリッド噴霧流を形成し、スパイラルノズル部を通過する際にマイクロオーダー粒子径までの微粒化が促進されノズル外部に噴出されるメカニズムを有している。こうしたメカニズムを利用するものは本発明に含まれるとしてよい。マイクロ・ナノソリッドの生成法としては、メカニカルな回転部を有しないスパイラル型ノズルを用いることにより、マイクロ・ナノソリッドの連続生成が可能であり、それは高性能微粒化ノズルとして機能しており優れている。
【0023】
代表的な場合、極低温ヘリウムガスの高速流の噴出口の口径と、微粒化したソリッド粒子の放出口(射出口)の口径とは、同一あるいはほぼ同程度であってよく、射出ヘリウムガスにかけられる圧力や目的とするヘリウムガスの流速によっても適宜適切なものとできるが、例えば、0.05〜5.0 mm、ある場合には、0.1〜3.0 mm、別の場合には、0.1〜2.5 mmあるいは0.2〜1.5 mmとしたり、0.3〜1.0 mmあるいはおおよそ0.4 mmとすることができる。
本発明では、さらに、ノズルによる生成粒子を均一で且つより微細な粒子(細粒化粒子)とすることを可能とする超音波振動子装着型部ノズルを好適に利用できる。代表的には、上記スパイラル型ノズルを改良したもので、ノズルによる生成粒子をさらに均一で且つより微細な粒子とすることを可能とする超音波振動子装着型部スパイラル型ノズルを好適に利用できる。典型的な超音波振動子装着型部スパイラル型ノズルの一例を、図3に示す。当該超音波振動子装着型部スパイラル型ノズルでは、超音波振動子がエジェクターノズルの噴出口部に設置され、超音波微粒化促進作用と超音波キャビテーションの相乗効果により、均一で微細なソリッド窒素粒子を形成し、スパイラルノズル部を通過する際にマイクロオーダー粒子径までの微粒化(細粒化)、さらにはナノオーダー粒子径までの微粒化(細粒化)が促進され、ノズル外部に噴出されるといったメカニズムで、優れた性状のマイクロ・ナノソリッドが得られる。
かくして、本発明では、超音波キャビテーション利用型マイクロ・ナノソリッド生成ノズルを提供している。本ノズルは、メカニカルな回転部を極力排除してあり、極低温下の粒子連続生成が可能なものである。
【0024】
該マイクロ・ナノソリッド生成装置(窒素マイクロ・ナノソリッド生成装置を含む)は、液体とガスとが衝突して微粒子(マイクロ・ナノ粒子)が生成する構造を備えているもので、例えば、液体窒素供給ラインにより供給された液体窒素の流れのほぼ中心の位置に、極低温のヘリウムガスを射出する(あるいはジェット噴射する)ノズル(極低温ヘリウムガス射出口)を配置して、当該極低温ヘリウムガス射出口より射出されるヘリウムガス流により、当該液体窒素供給ラインより液体窒素が吸入されることになると共に、当該極低温ヘリウムガス流の周辺部に沿って流れることとなる液体窒素の流れは、例えば、断面形状が漏斗型(ロート型)の狭隘部(筒口)に向かって流れて、極低温ヘリウムガス流と衝突して、霧状に微細な粒子を形成することとなり、当該断面形状漏斗型部の筒口より射出されて窒素マイクロ・ナノソリッド流などのマイクロ・ナノソリッド噴霧流を生成することとなる。該筒口の部分又はその近傍には、超音波振動子が装備されており、超音波によるキャビテーションでより微細で且つ均一な微粒子の形成がなされる。
超音波を液体や溶液に照射した場合、局所的な圧力変動により気泡が発生する。超音波により発生した気泡は,断熱圧縮過程で短時間にエネルギーが集中し、その崩壊時には、局所場を形成すると考えられている。つまり、超音波を液体や溶液に照射するとキャビテーションが発生する。キャビテーションとは、液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象である。キャビテーションによる気泡の崩壊時には、短寿命の高温・高圧の局所場(ホットスポット)が形成されることが知られており、これを利
用することで、生成粒子を超微細粒子化することができるのである。付与又は照射される超音波は、所要の細粒化目的が達成できる限り、いかなるものも採用できる、また射出される出口(噴出口)の口径、噴霧流の流速などによっても適宜のものとされるが、それは、典型的な場合、実験を行って最適なものを決定してよい。当該付与又は照射超音波は、周波数、強度など適宜選択でき、それはレジストの種類に応じて変えることも可能である。典型的な場合、付加される超音波は、例えば、45kHz/30μm振幅のものが挙げられるが
、超音波の周波数としては、強固な付着物の洗浄では、例えば、38kHzとか78kHz、あるいは100kHzとか130kHzといった周波数の超音波、付着物がより微細となると、例えば、160kHzとか200kHz、さらには430kHz、あるいは、750kHzとか950kHz、さらには2MHzといった周波数の超音波であってもよい。当該分野で知られた超音波照射装置の中から適宜最適なものを選択して使用して、適宜最適な超音波照射を行うことも可能である。
【0025】
当該マイクロ・ナノソリッド生成装置は、マイクロ・ナノソリッド窒素などのマイクロ・ナノソリッド生成を可能にするエジェクターノズルを備えているもので、当該エジェクターノズルは、液体窒素供給ラインを有し、該エジェクター内を流れる液体窒素流のほぼ中心部又はその近傍に配置された極低温のヘリウムガス射出口を有しており、当該ヘリウムガス射出口より射出されたガス流の流れる方向側に、液体と気体との混合物が射出する出口(好ましくは、断面形状が漏斗型の狭隘部開口)を有している。当該マイクロ・ナノソリッド生成装置は、間歇的に作動せしめて固体窒素粒子を生成してもよいし、ある程度の時間の間連続的に固体窒素粒子を生成してもよい。好ましい場合には、エジェクターノズルは、加温装置を備えており、万一、固体窒素粒子による目詰まりあるいはノズルへの付着が生じてもそれを除去可能とされている。より好適な例では、エジェクターノズルは、吐出口がスパイラル形状のノズルとなり循環する液体に突き出た状態とされているものであってよい。該スパイラル形状の吐出口を有するエジェクターノズルは、スパイラル部を高速ジェット流が通過することにより、適度な乱流を生起せしめ、より細粒子化に貢献すると共に、生成マイクロ・ナノソリッドがノズルに付着するのを防止して、連続的なマイクロ・ナノソリッドの形成を可能にしている。
【0026】
マイクロ・ナノソリッド微粒化過程並びに粒径分布に関しては、粒子の撮影画像の解析、例えば、直接撮影法(Direct-Imaging Techniques)による粒径分布・数密度分布計測を
行う二色レーザーPIA光学計測システムを使用した二次元化可視化画像計測などにより解
析できる。二色レーザーPIA光学計測システムでは、二色レーザー、例えば、デュアルパ
ルスYAGレーザー、被写界深度チェック用色素レーザーなど、PIA用高解像度カラーカメラ、PIA画像解析ソフトウェアなどを使用できる。また、数値解析などの解析に、クラスタ
型高速ワークステーションを使用した超並列計算による高負荷分散型コンピューティング(Grid Computing)手法を使用することが好ましく、ノズルの微粒化特性、例えば、粒径分布、数密度分布、流速・温度分布等を適切に定量的に評価することができる。LES-VOF法
を用いた微粒化二相熱伝達数値計算とPIA計測を融合して解析することもできる。
【0027】
本発明では、マイクロ粒径及び/又はナノ粒径を有する固体窒素マイクロ・ナノソリッド流を用いた半導体洗浄法が提供されている。本発明では、マイクロ・ナノソリッド窒素流を洗浄媒体として使用する半導体ウエハー洗浄法が提供される。本洗浄法では、マイクロ・ナノソリッドのジェット流がその慣性力によるはく離作用に加えて、ソリッド噴流の熱流体力学的効果、超高熱流束急冷によるレジスト熱収縮効果の相互作用も付加してレジストのはく離・除去を行うことを利用するもので、ウエハーの悪影響も少ない洗浄を可能にしている。本発明の半導体洗浄システムは、最適な微細パターンを有する半導体ウエハー洗浄能を発揮するシステムである。
液体窒素(温度77K)より温度が低いソリッド窒素(温度63K)を洗浄媒体とし、優れた洗浄効果・洗浄能を示すものである。
【0028】
本発明は、半導体の洗浄装置を提供している。また、本発明は、極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流利用型半導体洗浄システムを提供している。典型的な場合、該半導体の洗浄装置は、個々の半導体ウエハー上のレジストをはく離・除去する働きをする高速ジェット流を、そのレジストに衝突せしめるレジスト洗浄媒体照射装置と、該洗浄媒体をこのレジスト洗浄媒体照射装置にある極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流生成装置に供給する洗浄媒体供給回路と、当該洗浄媒体供給回路を通してレジスト洗浄媒体を循環せしめるように働くレジスト洗浄媒体駆動手段とを備えている。該洗浄装置では、該レジスト洗浄媒体が液化ガスのマイクロ・ナノソリッド流体であり、当該装置に極低温マイクロ・ナノソリッド微粒化ノズルを備えたマイクロ・ナノソリッド生成システムが備えられている。当該極低温マイクロ・ナノソリッド微粒化ノズルは、好ましくは、超音波振動子をノズル噴出口部に設置してあるものである。さらに好ましい態様では、当該極低温マイクロ・ナノソリッド微粒化ノズルは、好ましくは、スパイラルノズルを備えているものである。レジスト洗浄媒体照射装置は、通常、極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流体のジェット流を半導体基体上のレジストに衝突せしめるようにコントロールされているものである。本極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流利用型半導体洗浄システムは、半導体ウエハー上のレジストをはく離・除去を、液化ガスの極低温マイクロ・ナノソリッド流をレジスト洗浄媒体として使用して行うものであり、この原理を利用したものは全て包含されてよい。典型的には、本システムの液化ガスの極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流としては、マイクロ・ナノソリッド窒素噴霧流が挙げられる。
【0029】
本発明の半導体ウエハー洗浄法では、粒子の慣性力と噴霧の熱流体力学的効果だけでなく、超高熱流束急冷によるレジスト熱収縮効果を利用し、さらにはそれらの相互作用をも利用して、それによりレジストをウエハー面上からはく離・除去、洗浄するものであり、したがって、好適には、処理対象半導体ウエハーは、ソリッド窒素噴霧流(ソリッド窒素ジェット流)などのソリッド噴霧流による処理の前に、レジスト熱収縮効果をより効率よく且つ効果的に得るために、当該被処理半導体ウエハー(すなわち、表面にレジストを有している基体)を加温又は加熱しておくことができる。典型的な場合、当該被処理半導体ウエハーは、100℃以上に加温又は加熱せしめ、該加温又は加熱された半導体ウエハー表
面上のレジストに対して当該極低温ソリッド噴霧流を衝突させることがなされる。ソリッド噴霧流による処理前の該被処理半導体ウエハーの加温又は加熱の温度としては、所定の目的が達成される限り特に限定されることはなく、実験などにより適切な温度又は温度範囲を選択できる。当該被処理半導体ウエハーの加温又は加熱の温度としては、例えば、100℃以上が挙げられ、150℃以上とか、200℃以上などであってよく、さらには250℃以上など、あるいは、ある場合には、300℃以上であることもできる。
【0030】
かくして、本発明の半導体ウエハー洗浄装置は、好適には、当該レジスト洗浄媒体を当該半導体基体上のレジストに衝突せしめてレジストをはく離・除去する処理前に、当該処理対象の半導体ウエハーを加温又は加熱せしめることをする加温・加熱装置を備えているものである。該加温・加熱装置は、当該分野で知られたものの中から選択して使用できるが、例えば、当該被処理半導体ウエハーの洗浄される部位又は領域を均等に加温又は加熱せしめることのできるものが好ましく、例えば、セラミックヒーターなどを挙げることができる。例えば、セラミックヒーターの上に被処理半導体ウエハーを載荷せしめ、該ヒーターを昇温させるなどして、その被処理半導体ウエハーを加温又は加熱することができる。
さらに、本発明の半導体ウエハー洗浄法では、当該レジスト洗浄媒体を当該半導体基体上のレジストに衝突せしめてレジストをはく離・除去する場合に、当該レジスト洗浄媒体によるレジストはく離・除去作用効果を、より効率よく且つ効果的に得るために、当該被処理半導体ウエハーの洗浄される部位又は領域に超音波を付加又は照射せしめることも可能である。ここで付与又は照射される超音波は、所要の目的が達成できる限り、いかなるものも採用できる、また噴霧流の流速などによっても適宜のものとされるが、それは、典
型的な場合、実験を行って最適なものを決定してよい。当該付与又は照射超音波は、周波数、強度など適宜選択でき、それはレジストの種類に応じて変えることも可能である。典型的な場合、付加される超音波は、例えば、45kHz/30μm振幅のものが挙げられるが、超
音波の周波数としては、上記で言及したような周波数の超音波であってもよい。当該分野で知られた超音波照射装置の中から適宜最適なものを選択して使用して、適宜最適な超音波照射を行うことも可能である。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【実施例1】
【0031】
マイクロ・ナノソリッド窒素などのマイクロ・ナノソリッド流体生成を可能にするエジェクターノズルを備えたマイクロ・ナノソリッド生成装置は、工学的有用性の観点で検討したところ、半導体洗浄用装置として有望であることが認められた。
洗浄装置として使用する場合、ソリッドジェット噴霧流速を、20 m/s程度より早い流速のもの、例えば、100 m/s程度あるいはそれ以上とすることが好適であることが認められ
る。
本アッシングレス洗浄システムの実用化では、レジストはく離には、高速ジェット流が好適に使用され、具体的には100 m/sオーダのマイクロ・ナノソリッドジェット流速を可
能にするジェット高速化技術を開発使用できる。
【0032】
〔レジストはく離用超高速マイクロ・ナノソリッドジェット生成ノズルの設計製作〕
アッシングレスレジストはく離プロセスを効果的に実施するための最重要課題であるマイクロ・ナノソリッドジェットの高速化を実現するため、ジェット高速化のためのシステム設計・製作を行う。高速化に要する設計・ファブリケーションプランは以下である。
次世代プロセッサ用超高熱流束冷却用として設計されたソリッド生成用装置を、次のように改変する。
【0033】
(1)LN2(液体窒素)、GHe(ヘリウムガス)加圧量の増加に要する高圧タンクの増設
ストレージタンクにおいての加圧量を、LN2(液体窒素)、GHe(ヘリウムガス)ともにゲージ圧でおよそ0.2MPa程度を、より高圧が付加できるように、高圧ストレージタンクを新たに設計製作する。例えば、100m/sを超える流速といったジェット高速化の実現のため、作動流体(LN2、GHe)の加圧量を1.0MPa程度まで増大させる。
(2)マイクロ・ナノソリッドジェット用容器の減圧化
上記次世代プロセッサ用超高熱流束冷却用として設計されたソリッド生成用装置では、ジェットは大気圧条件下において噴射を行っているが、ジェットの高速化を図るため、噴射容器内減圧化が可能となるようにすることが有効である。かくして、噴射容器内減圧化を可能とする新たに設計製作されるソリッドジェット用減圧容器を設ける。
【0034】
(3)マイクロ・ナノソリッドジェット生成用ノズルの細密化
ジェット流速の高速化を図るため、上記次世代プロセッサ用超高熱流束冷却用として設計されたソリッド生成用装置におけるソリッド生成用二流体ノズルの射出噴孔径はφ1.0mmであるが、これをφ0.4mm程度まで縮小したノズルを設計製作する。かくして、ジェット流速の高速化が実現する。
噴孔径を縮小させると、極低温流体特有の氷結による目詰まりが格段に生じやすくなるため、氷結目詰まりを回避するための超断熱ファブリケーションによる加工を行うととも
に、局所短時間マイクロヒーティング装置を内蔵させる。本ファブリケーションによりソリッド粒子径のナノサイズ微粒化が可能となる。64nm以降の超細密デバイスには、ソリッド粒径のナノサイズ化(ナノソリッド)が必要であり、開発されたナノソリッド生成用超微粒化ノズルが有効である。
【0035】
〔洗浄対象ウエハーの急速加熱と洗浄性能に及ぼすジェット噴霧角の影響に関する検討〕
マイクロ・ナノソリッドジェットの高速急冷によるレジスト熱収縮効果を利用するため、ウエハーの急速加熱用ヒーターを装備せしめる。該ウエハーの急速加熱用ヒーターを試料台に設置する。また、レジストはく離と洗浄性能に及ぼす噴射角の影響を調査するため、ウエハーの設置角度が可変となるような試料台を設計製作し、洗浄時の最適な噴射角条件を検討する。マイクロ・ナノソリッドジェットの洗浄性能に関しては、スーパーコンピュータを用いた融合解析を行い、マイクロ・ナノソリッドジェット高速化に要する最適設計データの融合数値予測を行う。
〔マイクロ・ナノソリッドジェット流の有する各種レジスト除去特性の計算融合計測〕
PIA(Particle Imaging Analysis:粒子画像解析法)背景光方式を用いたレーザー計測に
より、マイクロ・ナノソリッド粒径分布の計測と、最大レジスト除去性能を得るための最適粒径・数密度を計測する。本計測の実施に際しては、スーパーコンピュータを用いた計算融合解析を行い、最適ソリッド粒径分布を得るためのシステム設計を行う。
【0036】
〔マイクロ・ナノソリッドジェット流に関する総合的検討〕
以上の各種実験的検討に対し、マイクロ・ナノソリッドジェット流に関する以下の試験項目に着目した総合的検討を行う。
(1)マイクロ・ナノソリッド粒子の慣性力による運動力学的レジストはく離機構の評価。
(2)マイクロ・ナノソリッド粒子の液相変化による液ジェット流によるレジストミキシン
グによるはく離機構の評価。
(3)マイクロ・ナノソリッド粒子の固−液相変化から気相への蒸気相変化に基づく体膨張
・拡散効果によるレジストはく離機構の評価。
(4)マイクロ・ナノソリッド粒子の接触熱伝達によるレジストの熱収縮によるはく離機構
の評価。
(5)ウエハー近傍に存在するマイクロ・ナノソリッド粒子が誘起する微小熱対流によるは
く離レジストの再付着防止機構の評価。
【0037】
〔実験方法とデータ解析手法〕
ウエハーレジスト除去量の走査型電顕による評価、パーティクルカウンターを用いた洗浄性能の評価、PIA背景光方式法を用いたマイクロ・ナノソリッド粒径分布に関する光学
計測を行う。さらには、数値流体力学的手法の活用によるスーパーコンピューテーションと各種計測の融合解析手法を用いる。融合解析の実施に当たっては超並列融合クラスタシステムを使用する。
以上より、65nmノードの高集積半導体デバイスのレジストはく離・洗浄を可能にするマイクロ・ナノソリッドジェットシステムの開発が可能となる。本発明のマイクロ・ナノソリッド利用型アッシングレス洗浄装置により、レジストはく離性能試験、洗浄時における歩だまり率の評価、アッシングレス洗浄性能のスーパーコンピュータ融合解析、64nmデバイスに対する適用試験と、総合評価・装置全体の耐用試験の実施が可能である。
【0038】
ソリッド噴霧によるレジストはく離効果の予備実験を行った。図1には予備実験の模式図を示す。その結果、マイクロソリッドジェットの超高熱流束急冷に基づく熱収縮効果により、ある程度のレジストはく離が達成可能であることを確認した。結果を図2に示す。
【0039】
さらに、図4に示す半導体ウエハーの表面にレジストを有する基体、すなわち、レジスト(Resist):500nm/Poly-Si:150nm/SiO2:6nm/Si(剥離前の状態)を使用して、277℃まで
加熱後、ソリッド噴霧処理(約8秒後−200℃)して、マイクロソリッドジェットによるレジスト剥離を行った。マイクロソリッド微粒化ノズルには、45kHz/30μm振幅の超音波を
付加せしめて、マイクロソリッドジェット中の窒素粒子の細粒化をして、得られたマイクロソリッド窒素粒子を含むジェットにより、それをターゲットとなる基体に噴射して当てて、レジスト剥離処理を行った。結果を図6に示す。綺麗にレジストを剥離できていることが観察された。同様な実験を繰り返し、それにより得られた結果を図7に示す。微細なパターンで、綺麗にレジストを剥離除去できることが認められた。したがって、極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流体、例えば、マイクロソリッド窒素ジェットをレジスト洗浄媒体として使用する半導体ウエハー洗浄法は、非常に有効性が高いことが確認できた。
【0040】
上記実験で使用した、半導体ウエハー洗浄装置を、図8に示す。図8において、セラミックヒーター2の上には、洗浄処理されるべきレジスト付きの半導体ウエハーが載荷されており、そのウエハーに向けてソリッド窒素ジェットを衝突させることができるように、噴出しノズル(極低温マイクロソリッド微粒化ノズル)1が配置されている。該ノズル1には、液体窒素導管3、液体ヘリウム導管4、冷ヘリウムガス導管5が配設されており、レジスト洗浄媒体供給回路を構成している。液体窒素導管3を通ってか過冷却された液体窒素がノズル1に供給される。一方、該ノズル1には、液体ヘリウム導管4を通って極低温となっている液体ヘリウムと、冷ヘリウムガス導管5を通って極低温とされているヘリウムガスとが供給されるようになっており、該ノズル1の噴射口とは反対側に位置しており且つ該ノズル内に極低温ヘリウムガスを高速で射出する極低温ヘリウムガス供給噴射管に極低温ヘリウムガスを供給できるようになっている。
【0041】
該ノズル内の極低温ヘリウムガス供給噴射管から出るジェットは、ノズル内で過冷却液体窒素と液−ガス衝突してマイクロソリッド窒素粒子を生成せしめ、マイクロソリッド窒素粒子を含有するソリッド窒素噴霧流のジェットを該ノズル1の噴射口より射出する。
セラミックヒーター2の上に置かれた洗浄処理されるべきレジスト付きの半導体ウエハー基体は、ヒーターにより、所定の温度に加熱せしめることができる。また、該セラミックヒーター2を固定する台は、a'の位置からaの位置に動かすというようにして、ソリッ
ド窒素噴霧流ジェットによる洗浄処理を調節できるようになっている。
当該半導体ウエハー洗浄装置では、超音波を印加して、ソリッド窒素粒子を細粒化せしめることが可能とされている。図8の装置において、超音波振動子と超音波ホーンを備えている超音波ユニットが可動式ステージ上に置かれており、位置決めなどの制御が可能なようにされ、噴出しノズルなどに超音波照射ができるようになっている。
【0042】
従来より、ドライ型半導体洗浄法として低温エアロゾル洗浄がケミカルフリーな洗浄法として提案されているが、これは液体窒素の断熱膨張のみを利用した固体窒素粒子形成法を用いており、基本的なアッシングプロセスが終了した後の不要微小固体粒子を窒素粒子で吹き飛ばすのみで、生成固体窒素粒子の除去性能は弱く、レジストをはく離するまでの力学的性能を有しない。さらに、固体粒子の粒径や数密度の制御が不安定という難点を有する。そこで、これら従来型の化学反応プロセスに依存した洗浄法の有する欠点を解決しうる、新しい発想から成る新型ドライ洗浄システムの開発が強く望まれている。
本発明技術は、従来型半導体ウエハーアッシングとレジスト洗浄法の有する困難を打破しうるもので、マイクロ・ナノソリッドジェットの高機能性を用いたアッシングレス方式によるレジストはく離・洗浄システムを提供するというもので、従来にない、独創性を有し、強力なメリットを有している。
【0043】
まず、本法による極低温ヘリウムガス(寒剤)を用いて連続生成したマイクロ・ナノソリッド粒子は固体窒素粒子としてきわめて安定であり、球形に近く、ミクロンオーダ均一粒径を有する粒子であり、従来方式による断熱膨張のみを利用した従来型エアロゾル洗浄用固体窒素と比較すると、粒子強度、形状、粒径分布の全てにおいて品質が上である。
さらに、粒子の運動学的性質を利用してレジストのはく離・除去を行おうとする点に特徴があり、半導体製造工程の短縮化に大きく貢献するものと考えられる。
また、低温エアロゾル洗浄に用いられている既存技術と、本発明のアッシングレス洗浄システムを融合させることにより、洗浄工程を大幅に短縮化できる可能性がある。従来の低温エアロゾル洗浄法は主としてアッシングが終了した後の微小パーティクルの除去を目的としているが、レジストを直接はく離させるほどの粒子衝撃力を有していない。一方、本発明のレジストはく離システムを既存の極低温エアロゾル洗浄システムに組み入れることで、実運用に耐えうる洗浄システムが、その開発に要する期間と費用を短縮化しつつ実現可能となるし、特には従来洗浄方式からアッシング工程を省略できる可能性がある。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る半導体基板洗浄システム(洗浄装置及び洗浄方法を含む)は、従来型半導体ウエハーアッシングとレジスト洗浄法の有する困難を打破しうるもので、マイクロ・ナノソリッドジェットの高機能性を用いたアッシングレス方式によるレジストはく離・洗浄システムを提供する。本発明技術は、マイクロ・ナノソリッドのジェット流の慣性力によるはく離作用に加えて、ソリッド噴流の熱流体力学的効果、超高熱流束急冷、さらには、超音波の付加による氷核生成促進とナノ微粒化効果によるレジスト熱収縮効果の相互作用も付加して利用するもので、超高集積半導体の50〜30nm単位の微小洗浄技術と45nm以降の洗浄技術の壁を打破する新型スーパードライ洗浄技術を与える。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0045】
1:噴出ノズル
2:セラミックヒーター
3:液体窒素導管
4:液体ヘリウム導管
5:冷ヘリウムガス導管
6:超音波振動子
7:超音波ホーン
8:可動式ステージ
9:位置出しハンドル
10:縦型可視化容器
11:架台
12:シンフレックスチューブ
13:BNCケーブル
21:電源へ
22:振動子冷却用窒素ガス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にレジストを有している基体からレジストをはく離・除去する半導体ウエハー洗浄法において、極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流体をレジスト洗浄媒体として使用し、該ウエハー表面上のレジストに対して当該極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流を衝突させることを特徴とする半導体ウエハー洗浄法。
【請求項2】
極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流体でもってレジストをはく離・除去する処理前に、当該表面にレジストを有している基体を加温又は加熱せしめ、該加温又は加熱された半導体ウエハー表面上のレジストに対して当該極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流を衝突させることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウエハー洗浄法。
【請求項3】
当該表面にレジストを有している基体を、100℃以上に加温又は加熱せしめ、該加温又は
加熱された半導体ウエハー表面上のレジストに対して当該極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流を衝突させることを特徴とする請求項2に記載の半導体ウエハー洗浄法。
【請求項4】
極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流が極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧ジェット流であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の半導体ウエハー洗浄法。
【請求項5】
極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧ジェット流が、流速15m/s又はそれ以上の流速である
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体ウエハー洗浄法。
【請求項6】
極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧ジェット流が、流速100m/s又はそれ以上の流速であることを特徴とする請求項4に記載の半導体ウエハー洗浄法。
【請求項7】
極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流中の固体粒子が平均粒子径10μm以下であることを
特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載の半導体ウエハー洗浄法。
【請求項8】
極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流体が極低温マイクロ・ナノソリッド窒素噴霧流体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一に記載の半導体ウエハー洗浄法。
【請求項9】
半導体ウエハー洗浄装置であって、個々の半導体基体を洗浄するレジスト洗浄媒体を当該半導体基体上のレジストに衝突せしめてレジストをはく離・除去するレジスト洗浄媒体照射装置と、レジスト洗浄媒体供給回路を通してレジスト洗浄媒体を循環せしめるように働くレジスト洗浄媒体駆動手段とを備え、該レジスト洗浄媒体が極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流体であり、当該レジスト洗浄媒体照射装置に極低温マイクロソリッド微粒化ノズルを備えたマイクロ・ナノソリッド噴霧流体生成システムが備えられていることを特徴とする半導体ウエハー洗浄装置。
【請求項10】
当該レジスト洗浄媒体を当該半導体基体上のレジストに衝突せしめてレジストをはく離・除去する処理前に、当該処理対象の半導体ウエハーを加温又は加熱せしめることをする加温・加熱装置を備えていることを特徴とする請求項9に記載の半導体ウエハー洗浄装置。
【請求項11】
上記加温・加熱装置は、当該処理対象の半導体ウエハーを100℃以上に加温又は加熱せし
めることのできるものであることを特徴とする請求項10に記載の半導体ウエハー洗浄装置。
【請求項12】
極低温マイクロソリッド微粒化ノズルが、超音波振動子をノズル噴出口部に設置してあるものであることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一に記載の半導体ウエハー洗浄装置。
【請求項13】
極低温マイクロソリッド微粒化ノズルが、スパイラルノズルを備えているものであることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一に記載の半導体ウエハー洗浄装置。
【請求項14】
レジスト洗浄媒体照射装置が、極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流体のジェット流を半導体基体上のレジストに衝突せしめるようにコントロールされているものであることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一に記載の半導体ウエハー洗浄装置。
【請求項15】
半導体ウエハーの洗浄を、極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流をレジスト洗浄媒体として使用して行うものであることを特徴とする極低温マイクロ・ナノソリッド利用型半導体洗浄システム。
【請求項16】
極低温マイクロ・ナノソリッド噴霧流が極低温マイクロ・ナノソリッド窒素噴霧流であることを特徴とする請求項15に記載の極低温マイクロ・ナノソリッド利用型半導体洗浄システム。
【請求項17】
加温又は加熱された半導体ウエハーに対してレジスト洗浄処理を施すことを特徴とする請求項15又は16に記載の極低温マイクロ・ナノソリッド利用型半導体洗浄システム。


【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−171691(P2011−171691A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144729(P2010−144729)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】