マイクロ反応容器
【課題】各種試薬などを予め含有するマイクロ反応容器において、試薬の飛び散りを防止し、隣接するマイクロ反応容器からの混入の可能性が減少されたマイクロ反応容器を提供することを目的とする。
【解決手段】上記問題を解決すべく、本発明は、マイクロ反応容器であって、該マイクロ反応容器は、連通部を介して上部収納部および下部収納部に分割された構造を有し、前記連通部は、上部収納部と前記下部収納部を屈伸可能な構造を有し、屈曲時には、前記連通部における連通が遮断され、伸張時には、前記連通部が連通されることを特徴とするマイクロ反応容器を提供する。
【解決手段】上記問題を解決すべく、本発明は、マイクロ反応容器であって、該マイクロ反応容器は、連通部を介して上部収納部および下部収納部に分割された構造を有し、前記連通部は、上部収納部と前記下部収納部を屈伸可能な構造を有し、屈曲時には、前記連通部における連通が遮断され、伸張時には、前記連通部が連通されることを特徴とするマイクロ反応容器を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ反応容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡易に生体検査を行う手段としてマクロ反応容器を用いて、所望の反応と測定とを行う技術が種々提案されている。たとえば、Y.Lapierreらは、特許文献1において、10〜200μmのポリマー粒子やガラス粒子に代表される不溶性粒子をガード上に配置した細長いマイクロ反応容器に充填し、遠心によって効率よく赤血球の凝集物と非凝集物を区別できる反応容器を開示している。また、特許文献2では、ガラスビーズを用いた同様の反応容器が開示されている。いずれの方法も、不溶性粒子が充填された細長いマイクロ反応容器が板状のプラスチック板に複数個埋め込まれたような形状を有し、マイクロ反応容器を垂直方向に立てた状態で使用する。通常、不溶性粒子は、抗A抗体または抗B抗体、あるいは抗ヒトグロブリン血清といった赤血球と反応する試薬(抗血清)に分散されている。また、不溶性粒子に抗体や抗原等の免疫学的反応をする物質を結合させて、赤血球をこれらの活性化された不溶性粒子に補足する方法が、特許文献3に開示されている。
【0003】
分析に際しては、垂直に立てたマイクロ反応容器の上部開口から液体試料を注入するが、開口部は、ロート状になっていて反応槽として使用される。反応槽は、不溶性粒子相とは接しないように空気で隔離されるようになっている。反応させた後に遠心を行い、血球のみを不溶性粒子相に移動させて凝集物を不溶性粒子で捕捉する。次いで、側面から不溶性粒子による凝集物の捕捉を黙視または光学的に検出する。凝集物が不溶性粒子上にある場合は、強陽性反応を示し、凝集物が不溶性粒子の中層に存在する場合は、弱陽性を示し、また、凝集物がしたにある場合には、陰性を示すことを特徴とする。このように隔離された反応相で赤血球−抗体の反応を行い、血球のみを不溶性粒子層に移動されることによって、赤血球の洗浄(B/F分離)を行うことなく規則性抗体を抗グロブリン試薬で検出する間接抗グロブリン試験(IAT)を実施できることが、マイクロかラム凝集法の最大の特徴である。
【0004】
また、他のマイクロ反応容器においては、不溶性粒子を使用する代わりに、反応容器の内壁に抗体やDNAなどの試薬を直接固定化して乾燥状態にして、乾燥用のパッケージ袋に入れて密封する。分析に際しては、パッケージを破ってマイクロ反応容器を取り出し、試料注入口からノズル等により試料を注入し、容器内壁の試薬と反応させる。試薬との反応結果は、適当な標識物質(たとえば蛍光色素、発色性酵素)を使用して光学的に測定したり、結合反応による物理的変化(たとえば偏光、プラズモン共鳴など)を測定したりしている。
【0005】
上記のような、各種試薬などを予め含有するマイクロ反応容器は、密封用のシールやパッケージが破れたり、位置ずれ等があったりすると、確実な分析ができなくなる場合がある。特に、不溶性粒子の上部に位置するロート状の反応槽は、通常空洞になっており、運送時または測定時に強い衝撃を与えてしまうと、不溶性粒子の飛び散りが生じ、反応の減弱、再現性不良の要因となってしまう。また、上記のような複数の細長いマイクロ反応容器は、プラスチック板に埋め込まれたような構造を有するため、上部のシールを開封する際に(一枚のシールで複数の反応容器を封する構造のものが多い)、隣同士でコンタミネーションを生じてしまう可能性もある。
【特許文献1】特公平8−7215号公報
【特許文献2】欧州特許第725276号公報
【特許文献3】国際公開公報第9531761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題を解決すべく、本発明は、各種試薬などを予め含有するマイクロ反応容器において、試薬の飛び散りを防止し、隣接するマイクロ反応容器からの混入の可能性が減少されたマイクロ反応容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、マイクロ反応容器であって、該マイクロ反応容器は、連通部を介して上部収納部および下部収納部に分割された構造を有し、前記連通部は、上部収納部と前記下部収納部を屈伸可能な構造を有し、屈曲時には、前記連通部における連通が遮断され、伸張時には、前記連通部が連通されることを特徴とするマイクロ反応容器を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記マイクロ反応容器であって、前記連通部が、屈曲時には折れ曲がって連通が遮断され、伸張時には、前記連通部が筒状となって連通される柔軟な材料であることを特徴とするマイクロ反応容器を提供する。
【0009】
さらに、上記マイクロ反応容器であって、前記柔軟な材料は、ゴムまたは可撓性樹脂であることを特徴とするマイクロ反応容器を提供する。
【0010】
さらに、上記マイクロ反応容器が、同一平面上に一体として形成されていることを特徴とするマイクロ反応容器を提供する。
【0011】
また、本発明は、上記マイクロ反応容器の下部収納部に試薬が充填されていることを特徴とする、試験キットを提供する。
【0012】
さらに、前記試薬が不溶性粒子であることを特徴とする、上記試験キットを提供する。
【0013】
さらに、前記不溶性粒子がシリカ、デキストラン、ポリアクリルアミドゲル、およびゼラチン粒子からなる群より選択されることを特徴とする、上記試験キットを提供する。
【0014】
さらに、前記試薬が前記下部収納部の壁面に結合されていることを特徴とする、上記試験キットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のマイクロ反応容器について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明のマイクロ反応容器の一態様について、屈曲時の状態を示す図である。図1には、本発明のマイクロ反応容器1を4つ並べ、同一平面上に一体として形成した例を示してある。また、図1の右側には、マイクロ反応容器1の断面図を示してある。マイクロ反応容器1は、連通部4を介して上部収納部2および下部収納部3に分割された構造を有する。
【0017】
連通部4は、屈伸可能な構造を有し、その屈伸状態に応じて上部収納部2と下部収納部3を連通状態が変化する。すなわち、連通部4の屈曲時には、上部収納部2と下部収納部3の連通が遮断され、連通部4の伸張時には、上部収納部2と下部収納部3が連通される構造を有する。上記構造を有することにより、屈曲時には、上部収納部2と下部収納部3の連通が遮断されることにより、下部収納部3の内容物が密閉された状態になる(図1)。一方、伸張時には、上部収納部2と下部収納部3が連通され、従来のマイクロ反応容器と同様の容器構造を有することとなる(図2)。従って、強い衝撃を受ける可能性のある運送時または搬送時には、マイクロ反応容器1を屈曲した状態にしておき、測定時のみ伸張した状態で使用することにより、内容物の飛び散りによって生じる反応の減弱、再現性不良の要因をなくすことができると考えられる。
【0018】
たとえば、連通部4の構造として、図3に示したような復元力の高い折れ曲がる材料を使用することができる(図3)。すなわち、屈曲させる力を適用すると連通部4の連通を遮断するまで屈曲させることができるが、屈曲させる力を取り除くと連通部4が伸張し、その後は伸張したままとなる材料および構造を使用することができる。また、屈曲させる角度は、連通部4の連通を遮断することができれば限定されないが、180℃が好ましいであろう。復元力の高い折れ曲がる素材(または構造)6の材料としては、たとえば、柔軟な材料を使用することができる。そのような柔軟な材料は、たとえばゴム、たとえば、ブチルゴムおよびシリコーンゴムなどであればよく、またそれ自身公知の何れのゴムであってもよい。さらにまた、そのような材料は、例えば、可撓性物質、例えば、可撓性樹脂であってよく、例えば、ビニル樹脂およびアクリル樹脂など、それ自身公知の何れの可撓性物質であってもよい。この場合、上記材料を連通部4にのみ使用することもできるが、その他の部分の全体または一部にも同じ材料使用することができる。
【0019】
また、その他の連通部4の構造として、図3の右側に示したような、上部収納部2と下部収納部3のそれぞれに接続された連通部4に穴があけられており、かつそれぞれの連通部4がかみ合った構造であって、屈曲時には上部収納部2に接続された連通部の穴と下部収納部3に接続された連通部の穴がずれているため、上部収納部2と下部収納部3が連通されないが、伸張時には、該穴と穴が重なることによって上部収納部2と下部収納部3が連通される構造7を使用することもできる。図3右の態様は、連通部9を軸としてそれぞれの収納部8が屈伸可能な構造であって、上部収納部2に連通部9の中心部が接続されており、下部収納部3に連通部9の外周部が接続されている態様を示す。また、連通部9は、中心部および外周部に穴があけられており、各収納部8が伸張した一直線となったときに、中心部および外周部の穴が重なって連通されるように穴があいた構造である。したがって、図3右に示した状態では、中心部および外周部の穴が重なっていないため、収納部が密封された状態となっている。
【0020】
さらに、屈曲時において、上部収納部2または下部収納部3のいずれか一方に予め針などの突き刺さる構造を有する連結部を接続しておき、他方の連通部と接続する箇所をシールしておくことにより、伸張時に上記一方の構造が上記シールに突き刺さって連通部を介してそれぞれの収納部8(上部収納部2と下部収納部3)が連通される構造を使用することもできる。
【0021】
当業者であれば、これらの構造以外にも、種々の形態の連結部を使用することができるであろう。
【0022】
また、本発明のマイクロ反応容器の形状は、特に限定されない。従って、マイクロ反応容器の上部収納部2および下部収納部3の形状も特に限定されない。マイクロ反応容器は、全体として丸型のものであってもまた先端がとがった形状のものであってもよく、その形は読み出し技術、分離技術、および試料などの量に応じて適宜選択すればよい。たとえば、伸張時に、図1〜4に示したような従来のマイクロ反応容器と同様の形態となるように形成させることが好ましい。
【0023】
また、本発明のマイクロ反応容器は、これらを所望の数だけ同時に並べて配置することもできる。たとえば、図1および2に示した構成など、同一平面上に一体として並べて配置することもできる。また、試験希釈液や試験懸濁液製造用の更に別の容器を同時に備えてもいてもよい。このとき、それぞれのマイクロ反応容器の各連通部4は、個別にまたは一体的に屈伸可能とする構造にすることができる。
【0024】
また、本発明のマイクロ反応容器は、いずれの材料にも限定されないが、PVC/PVDC、PET、またはポリスチレンの様なプラスチック製であることができる。特に、上部収納部2および下部収納部3は、いずれの材料にも限定されず、上記連通部4と同じ材料を使用してもよく、異なる材料を使用してもよい。
【0025】
本発明のマイクロ反応容器は、当該技術分野において既知のいずれの方法を使用して作製することもできるが、例えば、ブリスター法、接合法、またはニカワによる接着法等により作製することができる。また、上部収納部2、下部収納部3、および連通部4を別々に作製した後にこれらを組み立てて一体とすることもできる。
【0026】
また、本発明のマイクロ反応容器内には、種々の試薬を含有させて、試験キットとして提供することができる。たとえば、下部収納部3に、不活性粒子または種々の反応性物質の溶液を含有させておくことができる。また、下部収納部3の壁面に種々の試薬を結合させておくこともできる。不溶性粒子は、たとえばシリカ、デキストラン、ポリアクリルアミドゲル、およびゼラチン粒子を使用することができる。その他、従来のマイクロカラム凝集法において通常使用されているものを使用することができ、比重の大きい不溶性粒子が扱いやすいが、特に限定されるものではない。また、欧州特許第797097号に記載される様な多孔物質を用いることもできる。ガラスビーズまたは架橋ポリマーを使用することもできる。粒径は、特に限定されるものではないが、たとえば25〜200μmを使用することができる。また、IATなどの試験項目によっては、不溶性粒子を抗血清中に浮遊させておいてもよい。
【0027】
上述の通り、上記試薬を下部収納部3に含有させておくことにより、屈曲時には試薬が飛び散ることなく搬送などを行うことができるであろう。
【0028】
また、本発明のマイクロ反応容器は、上部収納部2の上面にシールを有する形態で提供することができる。特に、試薬キットとして提供される場合には、上記シールと共に提供されることが想定されるが、この場合、使用時に該シールを開封する必要がある。従来のマイクロ反応容器では、開封時に隣接する容器内の試薬が混入してしまうおそれがあったが、本発明のマイクロ反応容器によれば、屈曲時には下部収納部3に試薬が密封されるため、混入のおそれもなく開封することができるであろう。
【0029】
以下、本発明のマイクロ反応容器を試験キットとして使用する場合、特に粒子凝集判定用キットとして使用する場合の使用方法を示す。しかし、本発明の容器の用途は、以下の態様に限定されるものではない。
【0030】
まず、本発明の粒子凝集判定用キットは、抗原または抗体が結合したラテックスまたは赤血球などの凝集用粒子を下部収納部3に含むマイクロ反応容器が、屈曲した状態で提供される(図1)。この場合、凝集用粒子は下部収納部3に密封されて上部収納部2などへ飛び散ることがない。
【0031】
次いで、マイクロ反応容器の連結部4を伸張状態にする。これにより、従来のマイクロ反応容器と同様の形態となる。上面にシールを有する場合は、シールを開封し、凝集用粒子上の抗原または抗体と結合する抗体または抗原を含む検体などを上部収納部2の試料注入口に添加する(図5)。必要に応じて、一定時間反応させた後にマイクロ反応容器を遠心分離にかける。沈殿された凝集用粒子(およびこれに結合した抗体または抗原)を観察することにより、容易に凝集物の捕捉を判定できるであろう。
【0032】
上記粒子凝集判定用キットにおいては、短時間で所望の沈殿を達成するために、遠心分離法によりパターン形成することが好ましい。遠心の最適条件の決定は、使用する容器の形状、不溶性粒子の種類、分析対象それぞれについて確認しなければならない。その理由は、凝集物および凝集していない凝集用粒子、遊離している抗体および抗原ならびに不溶性粒子のそれぞれの比重、大きさ、形、変形性、安定性が影響力を有しており、それは計算によって得ることが困難であるからである。
【0033】
上記のような態様によれば、連通部を屈伸させるだけで、下部収納部に収容された試薬や不溶性粒子の保存状態と試料注入が可能な状態とを容易に切り替えることができる。特に、不溶性粒子の場合、密閉されているため飛び散りによる反応低下や再現性不良を抑制できる。また、シールを開封する際の混入も抑制できる。さらに、現行品よりもコンパクトなカード型の反応容器および試験キットとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のマイクロ反応容器の一態様の屈曲時を示す図。
【図2】本発明のマイクロ反応容器の一態様の伸張時を示す図。
【図3】本発明のマイクロ反応容器の一態様の連通部を示す図。
【図4】従来のマイクロ反応容器の一態様を示す図。
【符号の説明】
【0035】
1・・・マイクロ反応容器
2・・・上部収納部
3・・・下部収納部
4・・・連結部
5・・・試料注入口の拡大図
6・・・復元力の高い折れ曲がる素材(または構造)の材料の屈曲時を示す図
7・・・上部収納部
8・・・下部収納部
9・・・穴と穴が重なることによって上部収納部と下部収納部が連通される構造の屈曲時を示す図
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ反応容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡易に生体検査を行う手段としてマクロ反応容器を用いて、所望の反応と測定とを行う技術が種々提案されている。たとえば、Y.Lapierreらは、特許文献1において、10〜200μmのポリマー粒子やガラス粒子に代表される不溶性粒子をガード上に配置した細長いマイクロ反応容器に充填し、遠心によって効率よく赤血球の凝集物と非凝集物を区別できる反応容器を開示している。また、特許文献2では、ガラスビーズを用いた同様の反応容器が開示されている。いずれの方法も、不溶性粒子が充填された細長いマイクロ反応容器が板状のプラスチック板に複数個埋め込まれたような形状を有し、マイクロ反応容器を垂直方向に立てた状態で使用する。通常、不溶性粒子は、抗A抗体または抗B抗体、あるいは抗ヒトグロブリン血清といった赤血球と反応する試薬(抗血清)に分散されている。また、不溶性粒子に抗体や抗原等の免疫学的反応をする物質を結合させて、赤血球をこれらの活性化された不溶性粒子に補足する方法が、特許文献3に開示されている。
【0003】
分析に際しては、垂直に立てたマイクロ反応容器の上部開口から液体試料を注入するが、開口部は、ロート状になっていて反応槽として使用される。反応槽は、不溶性粒子相とは接しないように空気で隔離されるようになっている。反応させた後に遠心を行い、血球のみを不溶性粒子相に移動させて凝集物を不溶性粒子で捕捉する。次いで、側面から不溶性粒子による凝集物の捕捉を黙視または光学的に検出する。凝集物が不溶性粒子上にある場合は、強陽性反応を示し、凝集物が不溶性粒子の中層に存在する場合は、弱陽性を示し、また、凝集物がしたにある場合には、陰性を示すことを特徴とする。このように隔離された反応相で赤血球−抗体の反応を行い、血球のみを不溶性粒子層に移動されることによって、赤血球の洗浄(B/F分離)を行うことなく規則性抗体を抗グロブリン試薬で検出する間接抗グロブリン試験(IAT)を実施できることが、マイクロかラム凝集法の最大の特徴である。
【0004】
また、他のマイクロ反応容器においては、不溶性粒子を使用する代わりに、反応容器の内壁に抗体やDNAなどの試薬を直接固定化して乾燥状態にして、乾燥用のパッケージ袋に入れて密封する。分析に際しては、パッケージを破ってマイクロ反応容器を取り出し、試料注入口からノズル等により試料を注入し、容器内壁の試薬と反応させる。試薬との反応結果は、適当な標識物質(たとえば蛍光色素、発色性酵素)を使用して光学的に測定したり、結合反応による物理的変化(たとえば偏光、プラズモン共鳴など)を測定したりしている。
【0005】
上記のような、各種試薬などを予め含有するマイクロ反応容器は、密封用のシールやパッケージが破れたり、位置ずれ等があったりすると、確実な分析ができなくなる場合がある。特に、不溶性粒子の上部に位置するロート状の反応槽は、通常空洞になっており、運送時または測定時に強い衝撃を与えてしまうと、不溶性粒子の飛び散りが生じ、反応の減弱、再現性不良の要因となってしまう。また、上記のような複数の細長いマイクロ反応容器は、プラスチック板に埋め込まれたような構造を有するため、上部のシールを開封する際に(一枚のシールで複数の反応容器を封する構造のものが多い)、隣同士でコンタミネーションを生じてしまう可能性もある。
【特許文献1】特公平8−7215号公報
【特許文献2】欧州特許第725276号公報
【特許文献3】国際公開公報第9531761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題を解決すべく、本発明は、各種試薬などを予め含有するマイクロ反応容器において、試薬の飛び散りを防止し、隣接するマイクロ反応容器からの混入の可能性が減少されたマイクロ反応容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、マイクロ反応容器であって、該マイクロ反応容器は、連通部を介して上部収納部および下部収納部に分割された構造を有し、前記連通部は、上部収納部と前記下部収納部を屈伸可能な構造を有し、屈曲時には、前記連通部における連通が遮断され、伸張時には、前記連通部が連通されることを特徴とするマイクロ反応容器を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記マイクロ反応容器であって、前記連通部が、屈曲時には折れ曲がって連通が遮断され、伸張時には、前記連通部が筒状となって連通される柔軟な材料であることを特徴とするマイクロ反応容器を提供する。
【0009】
さらに、上記マイクロ反応容器であって、前記柔軟な材料は、ゴムまたは可撓性樹脂であることを特徴とするマイクロ反応容器を提供する。
【0010】
さらに、上記マイクロ反応容器が、同一平面上に一体として形成されていることを特徴とするマイクロ反応容器を提供する。
【0011】
また、本発明は、上記マイクロ反応容器の下部収納部に試薬が充填されていることを特徴とする、試験キットを提供する。
【0012】
さらに、前記試薬が不溶性粒子であることを特徴とする、上記試験キットを提供する。
【0013】
さらに、前記不溶性粒子がシリカ、デキストラン、ポリアクリルアミドゲル、およびゼラチン粒子からなる群より選択されることを特徴とする、上記試験キットを提供する。
【0014】
さらに、前記試薬が前記下部収納部の壁面に結合されていることを特徴とする、上記試験キットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のマイクロ反応容器について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明のマイクロ反応容器の一態様について、屈曲時の状態を示す図である。図1には、本発明のマイクロ反応容器1を4つ並べ、同一平面上に一体として形成した例を示してある。また、図1の右側には、マイクロ反応容器1の断面図を示してある。マイクロ反応容器1は、連通部4を介して上部収納部2および下部収納部3に分割された構造を有する。
【0017】
連通部4は、屈伸可能な構造を有し、その屈伸状態に応じて上部収納部2と下部収納部3を連通状態が変化する。すなわち、連通部4の屈曲時には、上部収納部2と下部収納部3の連通が遮断され、連通部4の伸張時には、上部収納部2と下部収納部3が連通される構造を有する。上記構造を有することにより、屈曲時には、上部収納部2と下部収納部3の連通が遮断されることにより、下部収納部3の内容物が密閉された状態になる(図1)。一方、伸張時には、上部収納部2と下部収納部3が連通され、従来のマイクロ反応容器と同様の容器構造を有することとなる(図2)。従って、強い衝撃を受ける可能性のある運送時または搬送時には、マイクロ反応容器1を屈曲した状態にしておき、測定時のみ伸張した状態で使用することにより、内容物の飛び散りによって生じる反応の減弱、再現性不良の要因をなくすことができると考えられる。
【0018】
たとえば、連通部4の構造として、図3に示したような復元力の高い折れ曲がる材料を使用することができる(図3)。すなわち、屈曲させる力を適用すると連通部4の連通を遮断するまで屈曲させることができるが、屈曲させる力を取り除くと連通部4が伸張し、その後は伸張したままとなる材料および構造を使用することができる。また、屈曲させる角度は、連通部4の連通を遮断することができれば限定されないが、180℃が好ましいであろう。復元力の高い折れ曲がる素材(または構造)6の材料としては、たとえば、柔軟な材料を使用することができる。そのような柔軟な材料は、たとえばゴム、たとえば、ブチルゴムおよびシリコーンゴムなどであればよく、またそれ自身公知の何れのゴムであってもよい。さらにまた、そのような材料は、例えば、可撓性物質、例えば、可撓性樹脂であってよく、例えば、ビニル樹脂およびアクリル樹脂など、それ自身公知の何れの可撓性物質であってもよい。この場合、上記材料を連通部4にのみ使用することもできるが、その他の部分の全体または一部にも同じ材料使用することができる。
【0019】
また、その他の連通部4の構造として、図3の右側に示したような、上部収納部2と下部収納部3のそれぞれに接続された連通部4に穴があけられており、かつそれぞれの連通部4がかみ合った構造であって、屈曲時には上部収納部2に接続された連通部の穴と下部収納部3に接続された連通部の穴がずれているため、上部収納部2と下部収納部3が連通されないが、伸張時には、該穴と穴が重なることによって上部収納部2と下部収納部3が連通される構造7を使用することもできる。図3右の態様は、連通部9を軸としてそれぞれの収納部8が屈伸可能な構造であって、上部収納部2に連通部9の中心部が接続されており、下部収納部3に連通部9の外周部が接続されている態様を示す。また、連通部9は、中心部および外周部に穴があけられており、各収納部8が伸張した一直線となったときに、中心部および外周部の穴が重なって連通されるように穴があいた構造である。したがって、図3右に示した状態では、中心部および外周部の穴が重なっていないため、収納部が密封された状態となっている。
【0020】
さらに、屈曲時において、上部収納部2または下部収納部3のいずれか一方に予め針などの突き刺さる構造を有する連結部を接続しておき、他方の連通部と接続する箇所をシールしておくことにより、伸張時に上記一方の構造が上記シールに突き刺さって連通部を介してそれぞれの収納部8(上部収納部2と下部収納部3)が連通される構造を使用することもできる。
【0021】
当業者であれば、これらの構造以外にも、種々の形態の連結部を使用することができるであろう。
【0022】
また、本発明のマイクロ反応容器の形状は、特に限定されない。従って、マイクロ反応容器の上部収納部2および下部収納部3の形状も特に限定されない。マイクロ反応容器は、全体として丸型のものであってもまた先端がとがった形状のものであってもよく、その形は読み出し技術、分離技術、および試料などの量に応じて適宜選択すればよい。たとえば、伸張時に、図1〜4に示したような従来のマイクロ反応容器と同様の形態となるように形成させることが好ましい。
【0023】
また、本発明のマイクロ反応容器は、これらを所望の数だけ同時に並べて配置することもできる。たとえば、図1および2に示した構成など、同一平面上に一体として並べて配置することもできる。また、試験希釈液や試験懸濁液製造用の更に別の容器を同時に備えてもいてもよい。このとき、それぞれのマイクロ反応容器の各連通部4は、個別にまたは一体的に屈伸可能とする構造にすることができる。
【0024】
また、本発明のマイクロ反応容器は、いずれの材料にも限定されないが、PVC/PVDC、PET、またはポリスチレンの様なプラスチック製であることができる。特に、上部収納部2および下部収納部3は、いずれの材料にも限定されず、上記連通部4と同じ材料を使用してもよく、異なる材料を使用してもよい。
【0025】
本発明のマイクロ反応容器は、当該技術分野において既知のいずれの方法を使用して作製することもできるが、例えば、ブリスター法、接合法、またはニカワによる接着法等により作製することができる。また、上部収納部2、下部収納部3、および連通部4を別々に作製した後にこれらを組み立てて一体とすることもできる。
【0026】
また、本発明のマイクロ反応容器内には、種々の試薬を含有させて、試験キットとして提供することができる。たとえば、下部収納部3に、不活性粒子または種々の反応性物質の溶液を含有させておくことができる。また、下部収納部3の壁面に種々の試薬を結合させておくこともできる。不溶性粒子は、たとえばシリカ、デキストラン、ポリアクリルアミドゲル、およびゼラチン粒子を使用することができる。その他、従来のマイクロカラム凝集法において通常使用されているものを使用することができ、比重の大きい不溶性粒子が扱いやすいが、特に限定されるものではない。また、欧州特許第797097号に記載される様な多孔物質を用いることもできる。ガラスビーズまたは架橋ポリマーを使用することもできる。粒径は、特に限定されるものではないが、たとえば25〜200μmを使用することができる。また、IATなどの試験項目によっては、不溶性粒子を抗血清中に浮遊させておいてもよい。
【0027】
上述の通り、上記試薬を下部収納部3に含有させておくことにより、屈曲時には試薬が飛び散ることなく搬送などを行うことができるであろう。
【0028】
また、本発明のマイクロ反応容器は、上部収納部2の上面にシールを有する形態で提供することができる。特に、試薬キットとして提供される場合には、上記シールと共に提供されることが想定されるが、この場合、使用時に該シールを開封する必要がある。従来のマイクロ反応容器では、開封時に隣接する容器内の試薬が混入してしまうおそれがあったが、本発明のマイクロ反応容器によれば、屈曲時には下部収納部3に試薬が密封されるため、混入のおそれもなく開封することができるであろう。
【0029】
以下、本発明のマイクロ反応容器を試験キットとして使用する場合、特に粒子凝集判定用キットとして使用する場合の使用方法を示す。しかし、本発明の容器の用途は、以下の態様に限定されるものではない。
【0030】
まず、本発明の粒子凝集判定用キットは、抗原または抗体が結合したラテックスまたは赤血球などの凝集用粒子を下部収納部3に含むマイクロ反応容器が、屈曲した状態で提供される(図1)。この場合、凝集用粒子は下部収納部3に密封されて上部収納部2などへ飛び散ることがない。
【0031】
次いで、マイクロ反応容器の連結部4を伸張状態にする。これにより、従来のマイクロ反応容器と同様の形態となる。上面にシールを有する場合は、シールを開封し、凝集用粒子上の抗原または抗体と結合する抗体または抗原を含む検体などを上部収納部2の試料注入口に添加する(図5)。必要に応じて、一定時間反応させた後にマイクロ反応容器を遠心分離にかける。沈殿された凝集用粒子(およびこれに結合した抗体または抗原)を観察することにより、容易に凝集物の捕捉を判定できるであろう。
【0032】
上記粒子凝集判定用キットにおいては、短時間で所望の沈殿を達成するために、遠心分離法によりパターン形成することが好ましい。遠心の最適条件の決定は、使用する容器の形状、不溶性粒子の種類、分析対象それぞれについて確認しなければならない。その理由は、凝集物および凝集していない凝集用粒子、遊離している抗体および抗原ならびに不溶性粒子のそれぞれの比重、大きさ、形、変形性、安定性が影響力を有しており、それは計算によって得ることが困難であるからである。
【0033】
上記のような態様によれば、連通部を屈伸させるだけで、下部収納部に収容された試薬や不溶性粒子の保存状態と試料注入が可能な状態とを容易に切り替えることができる。特に、不溶性粒子の場合、密閉されているため飛び散りによる反応低下や再現性不良を抑制できる。また、シールを開封する際の混入も抑制できる。さらに、現行品よりもコンパクトなカード型の反応容器および試験キットとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のマイクロ反応容器の一態様の屈曲時を示す図。
【図2】本発明のマイクロ反応容器の一態様の伸張時を示す図。
【図3】本発明のマイクロ反応容器の一態様の連通部を示す図。
【図4】従来のマイクロ反応容器の一態様を示す図。
【符号の説明】
【0035】
1・・・マイクロ反応容器
2・・・上部収納部
3・・・下部収納部
4・・・連結部
5・・・試料注入口の拡大図
6・・・復元力の高い折れ曲がる素材(または構造)の材料の屈曲時を示す図
7・・・上部収納部
8・・・下部収納部
9・・・穴と穴が重なることによって上部収納部と下部収納部が連通される構造の屈曲時を示す図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ反応容器であって、
該マイクロ反応容器は、連通部を介して上部収納部および下部収納部に分割された構造を有し、
前記連通部は、上部収納部と前記下部収納部を屈伸可能な構造を有し、屈曲時には、前記連通部における連通が遮断され、伸張時には、前記連通部が連通されることを特徴とするマイクロ反応容器。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロ反応容器であって、
前記連通部が、屈曲時には折れ曲がって連通が遮断され、伸張時には、前記連通部が筒状となって連通される柔軟な材料であることを特徴とするマイクロ反応容器。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロ反応容器であって、前記柔軟な材料が、ゴムまたは可撓性樹脂であることを特徴とするマイクロ反応容器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロ反応容器が、同一平面上に一体として形成されていることを特徴とするマイクロ反応容器。
【請求項5】
請求項4のいずれか1項に記載のマイクロ反応容器であって、前記連通部が個別にまたは一体的に屈伸可能であることを特徴とするマイクロ反応容器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロ反応容器の下部収納部に試薬が充填されていることを特徴とする、試験キット。
【請求項7】
前記試薬が不溶性粒子であることを特徴とする、請求項6に記載の試験キット。
【請求項8】
前記不溶性粒子がシリカ、デキストラン、ポリアクリルアミドゲル、およびゼラチン粒子からなる群より選択されることを特徴とする、請求項6に記載の試験キット。
【請求項9】
前記試薬が前記下部収納部の壁面に結合されていることを特徴とする、請求項6に記載の試験キット。
【請求項1】
マイクロ反応容器であって、
該マイクロ反応容器は、連通部を介して上部収納部および下部収納部に分割された構造を有し、
前記連通部は、上部収納部と前記下部収納部を屈伸可能な構造を有し、屈曲時には、前記連通部における連通が遮断され、伸張時には、前記連通部が連通されることを特徴とするマイクロ反応容器。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロ反応容器であって、
前記連通部が、屈曲時には折れ曲がって連通が遮断され、伸張時には、前記連通部が筒状となって連通される柔軟な材料であることを特徴とするマイクロ反応容器。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロ反応容器であって、前記柔軟な材料が、ゴムまたは可撓性樹脂であることを特徴とするマイクロ反応容器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロ反応容器が、同一平面上に一体として形成されていることを特徴とするマイクロ反応容器。
【請求項5】
請求項4のいずれか1項に記載のマイクロ反応容器であって、前記連通部が個別にまたは一体的に屈伸可能であることを特徴とするマイクロ反応容器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロ反応容器の下部収納部に試薬が充填されていることを特徴とする、試験キット。
【請求項7】
前記試薬が不溶性粒子であることを特徴とする、請求項6に記載の試験キット。
【請求項8】
前記不溶性粒子がシリカ、デキストラン、ポリアクリルアミドゲル、およびゼラチン粒子からなる群より選択されることを特徴とする、請求項6に記載の試験キット。
【請求項9】
前記試薬が前記下部収納部の壁面に結合されていることを特徴とする、請求項6に記載の試験キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2007−327835(P2007−327835A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158861(P2006−158861)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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