説明

マイクロ波の利用によるペプチド合成

【課題】固相法によってペプチドの合成を促進するための機器と方法の提供。
【解決手段】マイクロ波エネルギーを活用する機器であって、マイクロ波キャビティ;前記キャビティと連通状態にあるマイクロ波源;マイクロ波放射線に対して透過性の材料で作製されている、前記キャビティ中のカラム;前記カラム中の固相ペプチド担体樹脂;前記カラム中の前記固相担体樹脂を保持するためのそれぞれのフィルター;前記カラムに出発組成物を加えるための第1の通路;前記カラムから組成物を取り出すための第2の通路;および前記カラムからの組成物を循環させて、前記カラムに戻すための第3の通路;を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年6月23日付け出願の特許出願第10/604,022号の一部継続出願である。本出願はさらに、同時係属出願第11/235,027号;第11/235,328号;および第11/235,329号(いずれも2005年9月26日付けの出願であり、第10/604,022号の分割出願である)と関連している。
【技術分野】
【0002】
本発明は固相ペプチド合成(SPPS)に関し、具体的にはSPPSを行う上でマイクロ波を利用する手法に関する。
【背景技術】
【0003】
ペプチドが合成により得られるようになったことで、化学構造と生物学的活性との間の関係を研究するのが極めて容易になったという点で、20世紀の初期において、科学研究における新規概念が誕生したといっていい。そのときまでは、ペプチドとそれらの生物学的機能との間の構造-活性関係に対する研究は、精製された天然由来のペプチドを使用して行っていた。しかしながら、ペプチドの精製に対するこうした溶液をベースとする初期の方法は、低い生成物収率、不純物による汚染、労働集約的な特質、および一部のペプチドの予測できない溶解性特性、等の種々の問題で悩まされてきた。20世紀の前半において、幾つかの溶液ベースの合成法は、特定の“困難な(difficult)”ペプチドを得ることができたものの、これは公知の方法を徹底的に押し進めることによってなされたにすぎない。ペプチドのより高い収率と純度に対する要求が高まった結果、アミノ酸から直接ペプチドを合成するための画期的な方法が、1963年に初めてもたらされた〔現在は、固相ペプチド合成(SPPS)と呼ばれている〕。
【0004】
溶液ベースのペプチド合成に付きものの難点は、ペプチドを合成する上でSPPSの使用がほぼ限定的になる、ということにある。固相カップリングにより、試剤の分離がより容易となり、従来の化学的手法(エバポレーションや再結晶など)による生成物の損失がなくなり、過剰の試剤を加えることで反応の強制的な終了が可能となる。
【0005】
ペプチドは、あるアミノ酸のカルボキシル基が別のアミノ酸のアミノ基に連結した、2つ以上のアミノ酸で構成される小さなタンパク質であると定義される。したがって基本的なレベルにおいて、どんなタイプのペプチドであってもペプチド合成は、アミノ酸分子をお互いに、あるいは存在するアミノ酸のペプチド鎖に加える、という繰り返し工程を含む。
【0006】
合成によるペプチドの製造は、多くの理由から、科学研究の分野における極めて有用なツールである。例えば、インフルエンザウイルスやヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対して存在している一部の抗ウイルス性ワクチンはペプチドをベースとしている。同様に、抗細菌性のペプチドベースワクチン(ジフテリア毒素やコレラ毒素)を使用して、ある研究がなされている。合成的に変性を施したペプチドにトレーサー(例えば放射性同位体)で標識付けすることができ、また標識付けしたペプチドを使用して、天然ペプチドの生物学的受容体(レセプターとして知られている)の量、位置、および作用のメカニズムを明らかにすることができる。次いでこの知見を利用して、当該レセプターを介して作用するより優れた薬物を設計することができる。ペプチドはさらに、抗原用に使用することもできる(例えば、新たに発見された遺伝子のタンパク質を識別するためのペプチドベースの抗体)。最後に、一部のペプチドは疾患の原因物質となることがある。例えば、β-アミロイドタンパク質の生物学的プロセシングにエラーが生じると、脳内の神経繊維の絡み合いが起こり、神経炎性斑が形成される。こうした神経炎性斑の存在は、アルツハイマー病の病理学的な特徴である。β-アミロイドの前駆体(すなわち親分子)の合成による製造によって、アルツハイマー病の研究が容易になる。
【0007】
言うまでもなく、これらは、ペプチド合成を基本的な科学的ツールにする多種多様なトピックスや調査研究ベースのほんの一部にすぎない。
【0008】
SPPSに対する基本的な原理は、リンカー分子を介して固相粒子に固定されている、成長しつつあるポリペプチド鎖にアミノ酸を段階的に加えることである。この固相粒子は、カップリング段階がいったん完了すれば、開裂と精製を行うことができる。簡単に説明すると、固相樹脂担体と出発アミノ酸を、リンカー分子を介して互いに結びつける。このような樹脂-リンカー-酸マトリックスが市販されている〔例えば、カルバイオケム、EMDバイオサイエンス社(ドイツ、ダルムシュタットのメルクKGaAの系列会社)の商標;あるいはドイツ、ハイデルベルクのORPEGENファーマ〕。出発アミノ酸は、そのアミノ末端が化学基で保護されており、そしてさらに側鎖に保護化学基を有してもよい。保護基は、遊離アミノ酸の保護されていないカルボキシル基と、成長しつつあるペプチド鎖の脱保護されたα-アミノ基との間に新たなペプチド結合が形成されるときに、α-アミノ基において望ましくない反応や有害な反応が起こるのを防止する。引き続き一連の化学的ステップによりアミノ酸を脱保護し、鎖中に次のアミノ酸を用意し、こうして最後までカップリングを起こさせる。別の言い方をすれば、酸を“保護する(protecting)”とは、望ましくない副反応または競争反応を防ぐことを表わしており、酸を“脱保護する(deprotecting)”とは、その官能基を望ましい反応に対して利用できるようにすることを表わしている。
【0009】
アミノ酸の望ましい配列が達成されると、ペプチドが、リンカー分子の箇所にて固相担体から開裂される。この方法は多くの繰り返し工程からなっており、したがって可能ならいつでも自動化したい、という関心をそそるものとなっている。
【0010】
SPPSの種々の工程に対して多くの選択肢が存在しており、これらは先ず反応のタイプから始まる。SPPSは、連続式フロー法を使用しても、あるいはバッチ式フロー法を使用しても行うことができる。連続式フロー法は、分光光度計を介して反応の進行状況をリアルタイムでモニターできるので有用である。しかしながら連続式フロー法は、樹脂上のペプチドと接触している試剤が希釈され、そして固相樹脂の物理的なサイズが制約されるためにスケールがより制限される、という点で2つの明確な欠点を有する。バッチ式フロー法は、フィルター反応容器中にて行われ、反応物が接触しやすく、手操作でも自動的にでも加えることができるので有用である。
【0011】
α-アミノ末端を化学的に保護するための他の選択肢が存在する。第1の選択肢は、“Boc”(N-α-t-ブトキシカルボニル)法として知られている。Boc法のための試剤は比較的安価ではあるけれども、腐食性が高く、高価な装置を必要とする。これに代わる好ましい方法は、“Fmoc”(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)保護スキームであり、この方法は、腐食性はより低いものの、より高価な試剤を使用する。
【0012】
SPPSの場合、固体担体相は通常ポリスチレン懸濁液であり、より最近では、ポリアミド等のポリマー担体も使用されている。固相担体の調製は、固相担体を適切な溶媒(例えば、DMFすなわちジメチルホルムアミド)中に“溶媒和させる”ことを含む。固相担体は、溶媒和時にかなり膨潤する傾向があり、したがってペプチド合成を行うのに利用可能な表面積が増大する。前述したように、リンカー分子がアミノ酸鎖を固相樹脂に連結する。リンカー分子は、最終的な開裂により、カルボキシル末端にて遊離酸もしくは遊離アミドがもたらされるように設計されている。リンカー分子は樹脂特異的ではなく、4-ヒドロキシメチルフェノキシアセチル-4’-メチルベンズヒドリルアミン(HMP)等のペプチド酸、またはベンズヒドリルアミン誘導体等のペプチドアミドを含む。
【0013】
適切な溶媒を使用して固相担体を調製した後、次の工程は、ペプチド鎖に結合するようアミノ酸を脱保護することである。脱保護は、一時的な保護基に対しては弱塩基(例えば、ピクロジンやピペリジン)による処理で行われ、一方、不変的な(permanent)側鎖保護基は、穏やかな酸分解(例えば、TFAすなわちトリフルオロ酢酸)によって除去される。
【0014】
脱保護の後の、アミノ酸鎖の伸張は、ペプチド結合が形成されることを特徴とする。このプロセスはC-α-カルボキシル基の活性化を必要とし、これは、5つの異なった方法のうちの1つを使用して果たすことができる。これらの方法は、順不同にて、その場試剤を使用する方法、予備形成させた対称酸無水物を使用する方法、活性エステルを使用する方法、酸ハロゲン化物を使用する方法、およびウレタン保護されたN-カルボキシ無水物を使用する方法である。その場法を使用すると、活性化とカップリングを並行して行うことが可能となる。最も一般的なタイプのカップリング剤はカルボジイミド誘導体(例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミドやN,N-ジイソプロピルカルボジイミド)である。
【0015】
所望の配列体を合成した後、樹脂からペプチドを開裂する。このプロセスは、ペプチドのアミノ酸組成と側鎖保護基の感受性に依存する。しかしながら開裂は一般に、反応性のカルボニウムイオンをクエンチするために複数の除去剤を含有する環境において行われる。一般的な開裂剤の1つはTFAである。
【0016】
概略的に言うと、SPPSは、脱保護する工程、活性化させる工程、加えたそれぞれの酸とカップリングさせる工程、そして最後に開裂して、完結したペプチドを最初の固体担体から分離させる工程、で構成される繰り返し工程を必要とする。
【0017】
現在のSPPS技術に関しては2つの明確な欠点が存在する。第1の欠点は、所定のペプチドを合成するのに必要な時間が長いことである。脱保護工程は、30分以上かかることがある。上記のような各アミノ酸と鎖とのカップリングは約45分を要し、各アミノ酸に対する活性化工程は15〜20分を要し、そして開裂工程は2〜4時間を要する。したがって、ほんの12のアミノ酸で構成されるペプチドの合成に、最大で14時間もかかることがある。これに対処するために、マイクロ波技術を使用するペプチド合成とカップリングの代替法が試みられている。マイクロ波加熱は、有機合成を含めた種々の化学反応に対して有利である。なぜならマイクロ波は、組成物または溶媒と即座に且つ直接的に相互作用しやすいからである。初期の研究者は、キッチンタイプの電子レンジを使用する単純なカップリング工程(但し、完全なペプチド合成ではない)を報告した。しかしながら、電子レンジの放射線源としての限界、エネルギー制御の欠如、および電子レンジごとの再現精度の問題などから、このような報告の結果は、簡単には再現できない。他の研究者は、マイクロ波を使用してカップリング速度を増大させることを報告しているが、このとき同時に高温を生じており、この高温が固相担体や反応混合物の劣化を引き起こす。工程間のサンプル移動も欠点となっている。
【0018】
現在の技術が持つもう一つの問題点はペプチドシーケンスの凝集である。凝集とは、成長しつつあるペプチドそれ自体が折り畳まれ、水素結合を介して結びついてループを形成しやすい傾向を表わしている。このことは、さらなる鎖延長に関して明らかに問題を生じる。理論的には、より高温になると水素結合が減少し、したがって折り畳みの問題が緩和されるが、こうした高温は、熱に敏感なペプチドカップリング剤に悪影響を及ぼすことがあるので、それ自体が不都合を生じる。このためSPPS反応は、一般には室温にて行われ、したがって必然的に反応時間が長くなるのが特徴である。
【発明の開示】
【0019】
1つの態様においては、本発明は、固相法によってペプチドの合成を促進させるための機器である。この態様においては、本発明は、マイクロ波キャビティ;前記キャビティと連通状態にあるマイクロ波源;マイクロ波放射線に対して透過性の材料で作製されている、前記キャビティ中のカラム;前記カラム中の固相ペプチド担体樹脂;前記カラム中の前記固相担体樹脂を保持するためのそれぞれのフィルター;前記カラムに出発組成物を加えるための第1の通路;前記カラムから組成物を取り出すための第2の通路;および前記カラムからの組成物を循環させて、前記カラムに戻すための第3の通路;を含む。
【0020】
他の実施態様においては、本発明は、固相担体ペプチド合成の方法である。この態様においては、本発明は、マイクロ波エネルギーを照射しながら第1のアミノ酸から保護化学基を除去することによって、カラム中の固相樹脂に結合している第1のアミノ酸を脱保護する工程;第2のアミノ酸上の化学基を活性化して、カラム中の固相樹脂に結合している第1のアミノ酸とカップリングさせるための第2のアミノ酸を調製する工程;マイクロ波エネルギーを照射しながら、活性化された第2のアミノ酸を、脱保護された第1のアミノ酸にカップリングして、第1と第2のアミノ酸から固相樹脂上にペプチドを形成させる工程;および第3のアミノ酸とそれに引き続いたアミノ酸を逐次的に脱保護、活性化、およびカップリングして、カラム中の固相樹脂上にペプチドを形成させる工程;を含む。
【0021】
本発明の上記目的と他の目的、および本発明の上記利点と他の利点、ならびにこれらが達成される方法は、添付の図面を参照しつつ下記の詳細な説明を考察すればより明確になろう。
(図面の簡単な説明)
【0022】
図1は、固相ペプチド合成の特定の態様を示している概略図である。
【0023】
図2は、本発明による合成機器の斜視図である。
【0024】
図3、4、および5は、本発明による反応容器とアダプターの斜視図である。
【0025】
図6は、本発明の態様を示している流れ回路図である。
【0026】
図7は、本発明のキャビティと導波管の切り取り斜視図である。
【0027】
図8は、本発明の方法にしたがって合成されたあるペプチドのマススペクトルである。
【0028】
図9は、本発明の方法にしたがって合成された別のペプチドのマススペクトルである。
【0029】
図10は、本発明の他の実施態様の概略図である。
(発明の詳細な説明)
【0030】
本発明は、1つ以上のペプチドを固相合成するための装置と方法である(合成を促進させるために、特にマイクロ波エネルギーを利用する)。
【0031】
図1は、固相ペプチド合成プロセスの幾つかの態様を示している概略図である。言うまでもないが、図1は一般的に表わしたものであり、図1によって本発明が限定されることはない。図1は、N-α保護基11と側鎖保護基12を含んだ第1のアミノ酸10を示している。リンカー分子13が樹脂担体14に結びついている。矢印15で示されている第1の工程においては、第1のアミノ酸およびその保護基11と12を、リンカー分子13と樹脂担体14に結びつける。矢印17で示されている第2の工程においては、N-α保護基を除去(“脱保護”)して、第1のアミノ酸10とその側鎖保護基12が、リンカー分子13を介して樹脂担体14に連結された構造を生成させる。矢印21で示されている次の工程においては、第1のアミノ酸10を20で示す第2のアミノ酸(同様に、N-α保護基11と、カップリングを促進するための、アミノ酸に結合した活性化基22を有する)にカップリングする。カップリング工程21の後に得られる構造は、互いに連結された第1のアミノ酸10と第2のアミノ酸20を含み、そしてさらに、第2のアミノ酸20に結合したN-α保護基11、および第1のアミノ酸10に結合した側鎖保護基12を含み、このとき連結されたアミノ酸は、リンカー分子13を介して樹脂担体14に順々に繋がる。さらなるアミノ酸(破線長方形25で示す)を同じ方法で加えて(矢印21’)、ペプチド鎖を要求に応じた長さにする。
【0032】
最終工程においては、連結されたアミノ酸(10、20、および25)が保護基と樹脂担体から開裂されて(矢印23で示す)、樹脂担体14から分離した所望のペプチドが得られる。カップリング工程(本明細書の他の所で何回も説明したように)を必要に応じて何度でも繰り返して、所望するペプチド鎖を得ることができる。
【0033】
図2は、30で大まかに指定されている、本発明の1つの工業上の実施態様を示している。図2は、本発明の大まかな構造態様の一部を示しており、その詳細を図3と6に関して説明する。
【0034】
第一に、図2は、デバイス31のマイクロ波部分を示している。容器にマイクロ波放射線を照射する、機器のこの部分は、本発明の方法において使用されるサンプルサイズとサンプル材料に適切な量のエネルギーを当てるよう制御することができる単一モードキャビティ機器であるのが好ましい。本発明の好ましい実施態様においては、機器のマイクロ波部分は、本発明の譲受人に譲渡された多くの米国特許や米国特許出願に記載されている設計と操作を有する。これらの特許文献としては、米国特許出願第6,713,719号、第6,630,652号、第6,744,024号、および第6,867,400号;ならびに米国公開特許出願第20030199099;などがある。これら文献の全開示内容を参照により本明細書に含める。このような単一モードマイクロ波機器の工業製品は、本発明の譲受人(ノースカロライナ州マシューズのCEMコーポレーション)から、DISCOVERY(商標)、VOYAGER(商標)、およびEXPLORER(商標)の商品名にて入手可能である。
【0035】
これらの説明を考慮すると、図2は、キャビティ32、ハウジング33、および操作時の指示や情報をもたらすための適切なディスプレイ34の位置を示している。複数のアミノ酸源容器もしくはボトルをそれぞれ35で示す。個々の樹脂容器を36で、ペプチド生成物容器を37で示す。一連の流体通路が、大まかに指定されているチューブの部分によって示されており、図6に関してより詳細に後述する。同様に、機器30は上部ハウジング部分41を含み、上部ハウジング部分41は、流体と樹脂を本明細書に記載の方法にて移送するための適切なマニホルドを含む。マニホルドは示されていないけれども、マニホルドは、流体を、本明細書に記載の方法にて、そして特に図6の回路図に関して記載の方法にて方向付けするよう機能する任意の一連の通路と弁を含んでよい。
【0036】
したがって、図2に示されている実施態様においては、個々の容器35に最大で20のアミノ酸を組み込むことができ、自動化された方法にて最大で12種のペプチドを生成させ、これらを個々の容器37中に配置することができる。しかしながら、これらの容器数は工業上の実施態様における数であって、本発明はこれらの数に限定されることがなく、また示されているような多くの供給源や生成物容器を有する必要もない、ということは言うまでもない。
【0037】
図2はさらに、42で大まかに指定されているチューブとして示されている補足的な一連の通路を示しており、これらの通路は、すぐに反応容器アダプター43(図2に部分的に示されているが、図3、4、および5に関してより詳細に説明する)に連結されている。
【0038】
図3は、反応容器45と反応容器アダプター43の部分斜視図であり、その一部が図2にも示されている。反応容器45は、西洋ナシ形であるのが好ましく、マイクロ波放射線に対して透過性の材料で造られているのが好ましい。好ましい材料としては、ガラス、テフロン(登録商標)、およびポリプロピレンなどがあるが、これらに限定されない。第1の通路(チューブ46として示す)は、反応容器45(または“セル”;これらの用語は、本明細書では区別なく使用されている)と流体連通状態にあり、これによりセル45に対して外部の樹脂源とセル45との間で固相樹脂が移送できるようになっている。第2の通路47は、アミノ酸をセル45に加えるべく、少なくとも1つのアミノ酸源(図6)とセル45との間で流体連通している。第3の通路50は、セル45にガス圧力を加えるべく不活性ガス源(図6)と、そしてセル45からガス圧力を放出すべくベント(図6)とガス連通しており、したがってセル45への、そしてセル45からの、マニホルド中の制御されたガス流れを使用して、流体と固体流れをセル45に加えることができ、また流体と固体流れをセル45から取り出すことができる。
【0039】
図3はさらに、固相樹脂がセル45から第2の通路47に進入するのを防ぐためのフィルター(フリット51として示す)を第2の通路47がさらに含むことを示している。
【0040】
好ましい実施態様においては、本発明はさらに、セル45を溶媒でフラッシングするための、外部溶媒源(図6)とセル45との間で流体連通している第4の通路52を含む。図3に示されているように、第4の通路52は、セル45に溶媒を加えるためのスプレーヘッド53もしくは同等構造物を含む。
【0041】
アダプター43は、マイクロ波に対して透過性であって、且つ化学的に不活性の材料で造られており、例えば、フッ素化ポリマー(例えばPTFE)や適切なグレードのポリプロピレン等のポリマーで造られているのが好ましい。アダプター43は、通路46、47、50、および52が穴あけされているか、あるいはくりぬかれている状態の固体シリンダーであるのが好ましい。通路46、47、50、および52は単に、アダプター43を通るボアホール(bore holes)を含んでよいが、さらにチューブを含むのが好ましく、この場合もチューブは、マイクロ波に対して透過性であって、且つ化学的に不活性の材料(例えば、PTFE、PTFE誘導体、またはポリプロピレン)で造られている。チューブは、外径が1/8インチであって、内径が1/16インチであるの好ましい。
【0042】
図3には示されていないが(図面の複雑さを少なくするために)、容器ネック54は、外面にネジ山をつけ、内面にネジ山をつけたボアホール55と、アダプター43の下部においてかみ合わせるのが好ましい。容器45とアダプター43との間のネジかみ合いにより、これら2つの物体間の確実なかみ合いが可能となり、そしてさらに、容器45をアダプター43に簡単にかみ合わせること、そして容器45をアダプター43から簡単に切り離すことが可能となる。特に、ネックが同じサイズであって、ネジ山がつけられているならば、異なった材料で造られた異なったサイズの容器に置き換えて、アダプター43に適合させることができる。
【0043】
図3はさらに、第1、第2、第3、および第4の各通路(46、47、50、および52)に対する、ネジ山つきの取り付け部品(56、57、60、および62)を含む。これらの取り付け部品により、アダプター43と容器45の全体を機器30の残部に容易に連結することができ、またアダプター43と容器45の全体を機器30の残部から容易に取り外すことができる。
【0044】
図4と5はそれぞれ、図3のアダプターの組立斜視図と分解斜視図であり、したがって同じエレメントを示している。どちらの図面も、アダプター43とセル45を含む。図5においては、ネジ山つき取り付け部品は、57、60、56、および52の他に56も視認できる。図5の分解図はさらに、第1と第2の通路(46と47)の一部分、およびネジ山のついた容器ネック54とアダプター43の下部に位置する広い開口55も示している。
【0045】
図6は、本発明に対する流れ回路図である。可能な限りいかなる場合でも、図6に示されているエレメントは、他の図面の場合と同じ参照番号を有する。図6に記号で表わされているエレメントの殆どは、一般的に入手することができ、よく知られているので、これらについては特に詳細には説明しない(当業者であれば、必要以上の実験を行わずとも、図6に基づいて本発明を実施することができる)。
【0046】
したがって図6は、固相法によるペプチドの合成を促進するための容器システムを示している。容器システムは反応セル(すなわち容器)45を含み、これは図6において正方形として概略的に示されている。他の点では、反応セル45は、既に記載した特徴の全てを有しており、これらについては図6に関して繰り返し説明はしない。第1の通路46は、外部樹脂源36とセル45との間で固相樹脂を移送するために、セル45と流体連通している。3つの樹脂源36(A,B,C)が図6に示されており、これらは図2に示されている樹脂源36に対応している。図2に関して記載したように、樹脂源の数は、強制的なものではなく随意選択的なものであって、図2において12個の樹脂源が示されていて、図6において3個が示されているのは、単純化するためと、概略的な理解を助けるためである。樹脂源36のそれぞれが、個々の三方弁64(A,B,C)と連通しており、そして順に適切な樹脂ライン65(A,B,C)と連通しており、次いで、第1の通路46を介して樹脂をセル45中に移送するための、セル45に隣接した別の三方弁66と連通している。三方弁66は、直ちに別の三方弁67と連通している(この目的については簡単に後述する)。
【0047】
図6はさらに第2の通路47を示している。この通路はアミノ酸源35の少なくとも1つと連通しており、この場合も図6の上部に長方形として示す。概略的に示されているアミノ酸源すなわち容器35は、図2に示す容器35に対応している。
【0048】
第3の通路50は、セル45にガス圧を加えるための不活性ガス源70、およびセル45からガス圧を抜くためのベント71とガス連通しており、したがってセル45への、およびセル45からの制御されたガス流れを使用して、セル45に流体と固体流れを加えることができ、またセル45から流体と固体流れを取り出すことができる。第3の通路50は、これを少なくとも1つの弁72と連動して行い、弁72により(その操作に応じて)、第3の通路50は、ガス源70またはベント71と連通することができる。ガス源は、適切に加圧することができて、ペプチド合成の化学または機器自体の構成部品に支障をきたさないガスであればいかなるガスであってもよい。したがって種々の不活性ガスが適しており、広く入手できること、より安価であること、使いやすいこと、および毒性がないことから、一般には加圧窒素が有利である。図6は、窒素源70が二方弁72と適切なレギュレータ73(さらにフィルターを含んでよい)によって制御されることを示している。図6のオリエンテーションにおいて、二方弁72からベント71までのガスラインは74で示されており、弁72からレギュレータ73までの通路は75で示されている。
【0049】
図6はさらに、セル45から第2の通路47に進入するのを防ぐためのフィルター51を示している。
【0050】
図6はさらに、第4の通路52をスプレーヘッド53とともに示している。図3に関して記載したように、第4の通路52は、1つ以上の外部溶媒源と流体連通しており、その内の3つが76A、76B、および76Cで示されている。他の2つの外部溶媒源は、任意の異なった流体通路であるので別に表示されている。
【0051】
図6はさらに、供給源70からの加圧ガスを使用して反応セル45に組成物を供給し、次いで反応セル45から組成物を取り出すことができる(組成物が、ペプチド、溶媒、廃棄物質、または樹脂のいずれであるかに応じて)。したがって、このような供給の1つの態様においては、図6は、幾つかのアイテムと連通しているガス通路81を示している。第一に、ガス通路81は、一連の二方弁(82A、82B、82C、および82Dで示す)と連通しており、これらの弁のそれぞれは、個々の弁がその対応するアミノ酸容器35に対して開放しているときにガス通路の機能を果たしている。容器35中に進入した加圧ガスが、それぞれの供給ライン(83A、83B、83C、または83D)を介してアミノ酸を押し出し、順にそれぞれのアミノ酸弁(84A、84B、84C、および84D)と連通し、次いで第2の通路47、ならびにそれぞれの二方弁85および三方弁86と連通する。弁82Aと84Aが開くと、残りの弁82B、82C、および82Dが閉じ、供給源70からのガスを、ガス通路81を介して、弁82Aを通して、アミノ酸ボトル35A中に進めることができ、そしてボトル35Aから弁84A、85、および86を通してセル45中に進めることができる。
【0052】
それぞれの弁は、合成における適切な時点においてセルに所望の組成物(例えば、樹脂、溶媒、アミノ酸)を供給できるよう、そして他の適切な時点にてセルから組成物(ペプチドや廃棄物質)を取り出せるよう自動化されている。必要とされるプログラミングとプロセッサの能力は、十分にパソコン型プロセッサ〔例えばペンティアムIII(登録商標)〕が有する能力範囲内であり、自動化された制御機器やシーケンスの使用については、関連業界において一般的によく理解されている〔例えば、Dorf,The Electrical Engineering Handbook,第2版(CRCプレス1997)〕。
【0053】
言うまでもないことであるが、アミノ酸には多種類のアミノ酸が存在するけれども、本発明の装置における20個の供給源容器は、当業者によく知られているタンパク質を合成するための、20の“一般的な(common)”アミノ酸を収容するよう(但し、これに限定されない)意図されている。これらの市販されている一般的なアミノ酸は、望ましくない反応、及び/又は、有害な反応が起こらないよう化学的に“保護された”形で(シグマ-アルドリッチ社から)購入することができる。
【0054】
溶媒は、類似の方法にてセルに供給することができる。溶媒は、弁(87A、87B、87C、90、および91)を介してガス通路81と連通している。こうした配置により、ガスは、外部溶媒タンク(76A、76B、76C、77、および80)と直接連通している状態になる。外部溶媒タンク(76A、76B、および76C)はさらに、それぞれの二方弁(92A、92B、および92C)と連通し、外部溶媒タンク(77と80)はさらに、それぞれの三方弁(93と94)と連通する。弁が正しく配向されると、これらの全てが適切に機能して第2の通路47に溶媒を導き、アミノ酸が供給されたのと同じ仕方で、ガス圧を使用して反応容器45に溶媒が供給される。外部リザーバ76CにはTFA溶媒が使用され、したがって任意に単離できるよう別のラインを介して送ることができる。
【0055】
図6はさらに、アミノ酸と外部溶媒リザーバに対する弁の全てを閉じることにより、次いでガスを、レギュレータ・フィルター92とそれに関連した通路93を介して直接弁67と66に、次いで第1の通路46とセル45中に送ることにより、ガス源70を使用してアイテムをセル45に直接送ることができる、ということを示している。
【0056】
これとは別に、第1の通路46を使用してセル45を空にすることもできる。この態様では、ガスを、ガス源70から通路75を介して弁72に、そして第3の通路50を介してセル中に送るように弁72を設定する。次いでガス圧力により、セル45中の流体が、弁86、66、および67の向きに応じて第2の通路47または第1の通路46を介して送られる。図6はさらに、生成物を生成物容器〔37A、37B、および37C(これらは、図2に示されている生成物容器37に対応している)〕に送ることができる三方弁95を示している。適切なセットの生成物弁(96A、96B、および96C)を必要に応じて開いたり閉じたりして、所望のペプチド生成物を所望の生成物容器(37A、37B、または37C)に送ることができる。
【0057】
これとは別に、弁86、66、67、および95の向きに応じて、そしてさらなる二方弁100と廃棄物質容器(102Aと102B)に隣接した三方弁101の向きに応じて、物質をセル45から廃棄物質容器102Aと102Bのどちらかに送ることができる。
【0058】
供給源70からの加圧ガスを使用して樹脂を移送することができる。この態様においては、加圧ガスは、ガス通路81を介して、そして三方弁103と104を介して送られる。しかしながら、樹脂の移送に関して、弁103と104の両方が樹脂容器に対して開位置にあるとき、これらの弁により加圧ガスは3つの各弁(105A、105B、および105C)に送られる。これらの弁は、樹脂容器36と出口弁(64A、64B、および64C)と連通している。これらの出口弁は、供給されたガス圧を使用して、樹脂ライン65を介して最終的には樹脂を第1の通路46に強制的に送り込み、これにより樹脂が反応容器45中に供給される。
【0059】
樹脂源は、さまざまな量と種類の樹脂を含有してよく、ワング樹脂(Wang resins)、トリチル樹脂(Trityl resins)、およびリンクアシッドラバイル樹脂(Rink acid labile resins)などがあるが、これらに限定されない。これらの樹脂は、ミズーリ州セントルイス63101のシグマ-アルドリッチ社等のメーカーから市販されている。溶媒リザーバと樹脂容器との間の弁103と104を使用して、溶媒を外部リザーバ(77と80)から樹脂容器(36A、36B、36C)に送ることができる。
【0060】
図6Aは、反応容器45に隣接した弁システムをより詳細に表わしたものである。図6Aは特に、一連の三方弁と連動している一連の液体センサー(106、107、110)を示している。センサーに応じて弁を操作することにより、必要に応じて所定量の液体を反応容器45に加えることができる。例えば、弁111、113、および114が図6Aに記載の向きで示されている場合、流体は、弁86から直接、反応容器45中に延在している第2の通路47の部分に全面的に流れていく。これとは別に、弁111が弁112に対して開位置にあると、液体は、液体センサー107と110に達するまで、弁111と112を介して流れていく。液体センサーは、適切な量もしくは所望量の液体が流れていることをシステムに知らせ、弁112の操作を変えることで、こうした量を弁113に、次いで弁114に、次いで第2の通路47に、そして最後に要望どおりにセル45中に移送することができる。
【0061】
したがって全体として、図6は、各供給源から単一の反応セルまでの前駆体組成物(アミノ酸、溶媒、樹脂、脱保護剤、活性剤)の移送、および反応セルからそれぞれの送り先までの生成物と副生物(ペプチド、廃棄物質、開裂した樹脂)のさらなる移送を示している。言うまでもないが、個々の流路や弁の位置は、本発明の1つの態様を示しているのであって、本発明がこれらによって限定されることはない。
【0062】
前述したように、合成機器のマイクロ波機器部分は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願や、同時係属の米国特許出願等の、多くの特許出願に記載の機器部分と実質的に同じであってもよい。したがって図7は、合成機器のマイクロ波部分の特定の態様に含まれるが、本明細書に記載の仕様に過度に従ってはいない。特に、図7は、前記した米国特許第6,744,024号中の図1と実質的に同じである。図7は、分かりやすいように切り取り様式で表わしたマイクロ波キャビティ117を示している。マイクロ波キャビティが導波管120に取り付けられ、この導波管が適切な供給源(図示せず)とマイクロ波で連通している。マイクロ波源は、広く利用されていて当業者によく知られており、マグネトロン、クライストロン、およびソリッドステート・ダイオードなどがある。図7は、キャビティ117中の試験管形状のセル121を示しており、本発明の反応に対して必要であればこのようセルを使用することができるが、一般には西洋ナシ形の容器45が好ましい。
【0063】
冷却を同時に行うために、機器は、冷却ガスをフローバルブ123(一般にはソレノイド)上の取り付け部品122に送る冷却ガス源(図示せず)を含む。アクティブな冷却時に、ソレノイド123(一般にはソフトウェアで制御される)により、冷却ガスがチューブ124を介して冷却ノズル125に送られ、この冷却ノズルが、冷却ガスを反応容器121上に送る。
【0064】
しかしながら、この方法に対しては他の冷却メカニズム(例えば、マイクロ波エネルギーの伝達を阻害しない仕方での、低温空気の流れや、反応セルの周りに低温液体を循環させる液体冷却メカニズムなど)も適合させることができるのは言うまでもない。
【0065】
図7はさらに、円筒形の開口126を示しており、この開口は一般には、反応バイアル121の温度観察を可能にするために使用される。このような温度観察は、任意の適切なデバイスを使用して行うことができ、通常は、物体から生じる赤外線を読み取ることで物体の温度を測定できるタイプの光ファイバーデバイスなどがある。このようなデバイスは当業界によく知られており、本明細書では詳細な説明は行わない。前出の文献中に幾つかの態様が記載されている。
【0066】
好ましい実施態様においては、マイクロ波源は、マイクロ波エネルギーを“スパイクする(spiking)”(これに限定されない)ことができる。言い換えると、マイクロ波源は、長時間にわたる低出力(これに限定されない)とは対照的に、短時間での高出力を生成することができる。この特徴は、反応容器の内容物を過熱するという望ましくない影響を防ぐのに役立ち、そのうえ反応速度を増大させると思われる。
【0067】
本発明の装置は、必要に応じて、温度を測定するための赤外線フォトセンサーを含む。赤外線センサーは反応セルの内容物と接触せず、内容物を取り囲んでいる空気の温度ではなく反応セル内容物の平均温度を正確に測定する。赤外線による温度分析は、より正確で且つ非侵入式であり、プローブ等(局在化されたエリアのみを測定し、内容物との物理的な接触を必要とする)と比較してより単純化された装置設計が可能となる。
【0068】
第2の通路はさらに、樹脂の通過を防止するフィルターが取り付けられていることを特徴とする。さらに、第1と第2の通路は、液体溶媒と流動固体の移動に関して互いに流体連通している。本明細書では、“流動固体(flowing solids)”という用語は、適切な溶媒中に懸濁している状態の樹脂(アミノ酸またはペプチドが結合している場合と、結合していない場合を含む)を表わしている。
【0069】
他の態様においては、本発明は、マイクロ波エネルギーの使用を組み込んだ、1種以上のペプチドを固相合成するための方法である。脱保護工程、活性化工程、カップリング工程、および開裂工程時に反応セルの内容物に加えられるマイクロ波エネルギーは、これらの反応を完了させるのに必要な時間の長さを大幅に減少させる。マイクロ波エネルギーを加える方法は、熱量の蓄積を最小限に抑えつつできるだけ速やかに反応が進行するようマイクロ波源によって適度に調整することができ、したがってより多くのマイクロ波エネルギーを加えることができ、反応セル内容物の熱による分解は起こらない。この方法は、マイクロ波エネルギーを短時間で大量にスパイクすること(これに限定されない)を含む。
【0070】
本発明の方法は、2つ以上のアミノ酸で構成される完結したペプチドを単一の反応容器中にて合成することを必要に応じて含み、固相樹脂に結合している1つ以上のアミノ酸に1つ以上のアミノ酸をカップリングさせることを含んでよい。
【0071】
本発明の方法は、マイクロ波エネルギーの照射時と照射間に反応セルを(したがってその内容物を)冷却する工程、および最終的な開裂工程を含む。本発明の方法の冷却メカニズムはアミノ酸の伸張サイクル時に作動する。ここで使用している“サイクルとは”、あるアミノ酸を別のアミノ酸に繋げるのに必要な脱保護、活性化、およびカップリングを表わしている。冷却システムはさらに、反応セル内容物のバルク温度を低く保持するよう、所定のサイクルにおけるマイクロ波エネルギーの照射時と照射間にも作動することができる。冷却システムはさらに、完結したペプチドが樹脂から開裂されるときにも作動することができる。
【0072】
これとは別に、温度を厳密に制御するよりむしろ、マイクロ波エネルギーを制御することで、反応の進行に対して所望の制御がもたらされる、ということが見出された。本明細書の他のところで記載したように、可変で切り換え可能なエネルギー供給源を使用すると、この目的に対して効果的であることがある。この1つの例が、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,288,379号(該特許の全開示内容を参照により本明細書に含める)に記載されている。
【0073】
本発明の方法は、樹脂とそれに結びついたアミノ酸もしくはペプチドの、溶媒と遊離アミノ酸に対する最大の曝露を促進するために、反応セルの内容物を窒素ガスでかき混ぜることを含む。
【0074】
好ましい実施態様においては、本発明の方法は、一般的に好まれる樹脂に結合した第1の一般的なアミノ酸(どちらも適切な溶媒中に懸濁されている)を、加圧窒素によって反応セルに移送することを含む。次いで脱保護溶液を反応セル中にポンプ送りする。脱保護プロセスは、マイクロ波エネルギーを加えることによって促進され、マイクロ波エネルギーによって発生する熱が冷却メカニズムによって最小限に抑えられる。複数回の脱保護工程を実施することができる。次いで脱保護溶液を反応セルから抜き取り、脱保護された状態の、樹脂に繋がった一般的なアミノ酸を残す。適切な溶媒(それぞれ約1樹脂容)を使用して樹脂を数回(3〜4回)洗浄した後、そして洗浄溶媒を除去した後、次の“遊離した”一般的なアミノ酸(溶液状態にて)を、活性化用溶液と共に反応セルに加える。遊離アミノ酸の活性化は、マイクロ波エネルギーの照射によって促進され、反応セルの温度は、前述の冷却メカニズムによって制御される。本発明の方法はさらに、反応を促進させるべくマイクロ波エネルギーを使用して、遊離アミノ酸と脱保護された結合アミノ酸とをカップリングしてペプチドを形成させることを含む。上記したように、マイクロ波エネルギーによって発生する熱は、冷却メカニズムによって最小限に抑えられる。カップリング工程はさらに、反応セル内容物を窒素でかき混ぜることを含むのが好ましい。この工程の完了は、1つ以上のアミノ酸付加の1サイクルが終わったことを表わしている。カップリング工程の後、活性化溶液を抜き取り、樹脂を上記のように洗浄する。所望のペプチドシーケンスが合成されるまでこのサイクルを繰り返す。ペプチドの合成が完了したら、さらなる脱保護工程を行って、アミノ酸の側鎖に結合している保護化学基を取り除くことができる。この脱保護工程は上記のように行う。結合した完了ペプチドを含有している樹脂を二次的な溶媒で上記のように洗浄して、ペプチドを樹脂から開裂できるよう調製する。二次的溶媒を除去した後、開裂溶液を反応セルに加え、マイクロ波エネルギーを加えることによって開裂を促進し、マイクロ波エネルギーから発生する熱を、冷却メカニズムによって最小限に抑える。開裂が完了したら、ペプチド生成物を生成物チューブに移送する。必要に応じて、合成プロセス中の任意のポイントにてペプチドを“キャップする(capped)”ことができる。キャッピングは、カップリングの不完全なペプチドを終結させるのに、ペプチドシーケンスの適正な折り畳みを起こしやすくするのに、そしてある特定のペプチドに特異的な化学的識別用タグを得るのに有用である。しかしながら、これらの改良手段は、合成ペプチドの溶解性を低下させるので、慎重に検討しなければならない。キャッピングは、例えば、固相合成における無水酢酸またはフッ素によるキャッピング(fluorous capping)を使用して、あるいは種々の化学基のいずれか(例えばビオチン)をペプチドのN-末端、C-末端、または側鎖に結びつけることによって(これらに限定されない)行われる。
【0075】
他の実施態様においては、本発明の方法は、第1のアミノ酸から保護化学基を除去することによって、固相樹脂に結合している第1のアミノ酸を脱保護すること;第2のアミノ酸上の化学基を活性化して、第1のアミノ酸とカップリングさせるための第2のアミノ酸を調製すること;活性化された第2のアミノ酸を、脱保護された第1のアミノ酸にカップリングして、第1と第2のアミノ酸から固相樹脂上にペプチドを形成させること;ペプチドを固相樹脂から開裂すること;脱保護、活性化、およびカップリングのサイクルを促進させるためにマイクロ波エネルギーを加えること;ならびにマイクロ波エネルギーを加えて開裂工程を促進させること;を含む。
【0076】
言うまでもないが、種々のアミノ酸を互いに加えてペプチドシーケンスを形成させるのが通常のやり方である。したがって本発明の方法は、一般には、第3のアミノ酸とそれに引き続いたアミノ酸を加えて所望のシーケンスのペプチドを形成させるために、脱保護、活性化、およびカップリングのサイクルを繰り返すことを含む。
【0077】
この点に関して、本明細書で使用している“第1”、“第2”、または“第3”等の用語は、絶対的に意味ではなく相対的な意味で使用されている。
【0078】
特に好ましい実施態様においては、本発明の方法は、サイクル間で固相樹脂からペプチドを取り除くことなく、単一の容器にて、脱保護、活性化、および複数のアミノ酸のペプチドへのカップリングを逐次的に行うことを含む。本発明のこの態様とさらなる態様は、図面の説明に基づいて考察すれば理解できるであろう。
【0079】
他の態様においては、本発明の方法は、マイクロ波エネルギーの照射時に容器とその内容物を積極的に冷却し、これによりマイクロ波エネルギーの照射から生じるであろう蓄熱を制限することによってペプチドまたは酸の望ましくない分解を防止することを含む。
【0080】
ペプチド合成においては一般的なことであるが、脱保護工程は、アミノ酸のα-アミノ基を脱保護することを含むが、さらにペプチドのアミノ酸上の側鎖を脱保護することを含んでよい(どちらもマイクロ波の照射により)。同様に、活性化工程は一般に、第2のアミノ酸のα-カルボキシル基を活性化することを含む。
【0081】
アミノ酸とペプチドは、過剰の熱に対して、そしてさらに上記の積極的な冷却工程に対して影響を受けやすいので、マイクロ波エネルギーを加える工程は、マイクロ波エネルギーの照射を比較的短い時間間隔に“スパイクし(spiking)”、これによりマイクロ波エネルギーの連続的な照射によって促進されるであろう蓄熱を制限することによってpeptidal acidsの望ましくない分解を防ぐことを含んでよい。本明細書で使用している“スパイクする(spiking)”という用語は、マイクロ波エネルギーの照射を比較的短い時間間隔に制限することを表わしている。これとは別に、マイクロ波エネルギーは、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,288,379号(該特許出願の全開示内容を参照により本明細書に含める)に記載のスイッチング電源から供給することもできる。
【0082】
他の実施態様においては、ペプチド合成プロセスは、カルボジイミドタイプのカップリング剤(a carbodiimide type coupling free agent)を使用して、その場で活性化・カップリングすることを含んでよい。
【0083】
他の態様においては、本発明はペプチドの固相合成を促進するための方法である。この態様においては、本発明の方法は、固相樹脂に連結した保護された第1のアミノ酸と脱保護溶液とを、マイクロ波エネルギーからの蓄熱で固相担体または混合された構成物のいずれかが分解しないように、マイクロ波透過性の容器中にてマイクロ波を照射しながら、そして混合物を冷却しながら混合することによって、固相樹脂に連結した保護された第1のアミノ酸を脱保護することを含む。本発明の方法は特に、アミノ酸のα-アミノ基を、最も一般的には、fmocとbocからなる群から選択される、保護化学物質(protective chemicals)を取り除くのに適した組成物を使用して脱保護することを含む。この化学に精通している当業者には公知のことであるが、脱保護工程はさらに、アミノ酸の側鎖を脱保護することを含んでよい。こうした状況においては、脱保護工程は、t-ブチルをベースとする側鎖保護基を取り除くのに適した組成物を使用することを含む。
【0084】
本発明の方法は、脱保護工程の後に、容器にマイクロ波を照射しながら、そしてマイクロ波エネルギーからの蓄熱で固相担体または混合組成物のいずれかが分解しないよう同時に容器を冷却しながら、同じ容器に第2のアミノ酸と活性化用溶液を加えることによって、第2のアミノ酸を活性化させることを含む。
【0085】
本発明の方法はさらに、同じ容器中の組成物にマイクロ波を照射しながら、そしてマイクロ波エネルギーからの蓄熱で固相担体または混合組成物のいずれかが分解しないよう混合物を冷却しながら、第1のアミノ酸に第2のアミノ酸をカップリングさせることを含む。
【0086】
最後に、本発明の方法は、組成物にマイクロ波を照射しながら、そしてマイクロ波エネルギーからの蓄熱で固相担体またはペプチドが分解しないよう容器を冷却しながら、同じ容器中にて連結しているペプチドと開裂用組成物とを混合することによって、連結しているペプチドを固相樹脂から開裂する工程を含む。
【0087】
活性化工程はさらに、その場活性化法、ならびにホスホリウム(phosphorium)活性剤、ウラン活性剤、HATU、HBTU、PyBOP、PyAOP、およびHOBT等の組成物を使用して、第2のアミノ酸を活性化およびカップリングさせることを含む。
【0088】
繰り返しになるが、ペプチドの合成は殆どいつも、鎖中に3つ以上のアミノ酸を組み込むことを含むので、本発明の方法は、3つ以上のアミノ酸に対して、逐次での脱保護工程、活性化工程、およびカップリング工程を循環的に繰り返すことを含んでよい。
【0089】
本発明の特定の実施態様においては、脱保護、活性化、カップリング、および開裂(pleading)の連続した工程が、固相樹脂からペプチドを取り外すことなく、あるいはサイクル間に容器からペプチドを取り除くことなく単一容器中にて行われる。
【0090】
本発明の方法はさらに、脱保護工程、活性化工程、カップリング工程、および開裂工程の1つ以上の実施時に、混合物を好ましくは窒素ガスでかき混ぜることを含んでよい。ガスが、ペプチドやアミノ酸の合成化学反応を阻害しないという条件にて、かき混ぜに対してはいかなるガスも使用することができるが、入手しやすいこと、低コストであること、および特定の反応に対して化学的に不活性であることから、一般には、この目的に対しては窒素が好ましい。
【0091】
実験の部
【0092】
ペプチド: Asn-Gly-Val
【0093】
MW=288
【0094】
スケール=0.10ミリモル
【0095】
使用した樹脂=Fmoc-Val-ワング樹脂
【0096】
樹脂置き換え(resin substitution)=0.27×10-3モル/グラム樹脂
【0097】
マイクロ波プロトコル:
【0098】
このペプチドにおける全ての反応に対し、マイクロ波エネルギーを最初は50Wに設定し、次いで温度が60℃未満に保持されるように調整した。
【0099】
脱保護: DMF中20%ピペリジン溶液を脱保護に使用した。マイクロ波を30秒照射して反応を行い、次いで新たな脱保護溶液を使用し、マイクロ波を1分照射して反応を繰り返した。
【0100】
カップリング: 0.40ミリモルのHCTU、0.80ミリモルのDIPEA、および合成における各カップリングのための0.40ミリモルの各Fmoc-アミノ酸を使用して活性化を行った。約10mlのDMFを使用して混合物を溶解した。マイクロ波を5分照射して反応を行った。
【0101】
洗浄: 容器に約10mlのDMFを充填し、脱保護とカップリングの各工程の後に5回すすぎ洗いした。
【0102】
開裂: 開裂処理は、95%TFAと5%H2Oを使用して90分行った。
【0103】
ペプチドを、50mlの冷エチルエーテル中にて一晩沈殿させた。生成物を採集し、乾燥した。サーモフィンニガン・アドバンテージ(ThermoFinnigan Advantage)LC/MSを使用するエレクトロスプレーイオン化質量分析により、粗生成物のマススペクトルを得た。
【0104】
結果: エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(図8)は、Asn-Gly-ValのMWに相当する289.1にて単一のピークを示した。不完全なカップリングに相当する他のピークは観察されなかった。
【0105】
ペプチド: Gly-Asn-Ile-Tyr-Asp-Ile-Ala-Ala-Gln-Val
【0106】
MW=1062
【0107】
スケール=0.25ミリモル
【0108】
使用した樹脂=Fmoc-Val-ワング樹脂
【0109】
樹脂置き換え=0.27×10-3モル/グラム樹脂
【0110】
マイクロ波プロトコル:
【0111】
このペプチドは、パワータイムコントロール法(a power time control method)を使用して合成した。
【0112】
脱保護: DMF中20%ピペリジン溶液を脱保護に使用した。25Wのマイクロ波エネルギーを30秒照射して脱保護を行い、次いで新たな脱保護溶液を使用し、マイクロ波エネルギーを1分照射して脱保護を繰り返した。
【0113】
カップリング: 0.9ミリモルのHBTU、1.0ミリモルHOBt、2ミリモルのDIPEA、および合成における各カップリングのための1.0ミリモルのFmoc-アミノ酸を使用して活性化を行った。約15mlのDMFを使用して混合物を溶解した。電力をオン15秒とオフ45秒で交互に切り換えて、マイクロ波エネルギーを5分照射してカップリング反応を行った。最初のサイクルの電力は25Wであり、残りの4サイクルの電力はそれぞれ20Wであった。
【0114】
洗浄: 容器に約15mlのDMFを充填し、脱保護とカップリングの各工程の後に5回すすぎ洗いした。
【0115】
開裂: 開裂処理は、95%TFA、2.5%H2O、および2.5%TISを使用して行った。
【0116】
ペプチドを、100mlの冷エチルエーテル中にて一晩沈殿させた。生成物を採集し、乾燥した。サーモフィンニガン・アドバンテージLC/MSを使用するエレクトロスプレーイオン化質量分析により、粗生成物のマススペクトルを得た。
【0117】
結果: エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(図9)は、所望のペプチドマスに相当する1063.3にてピークを示した。不完全なカップリングに対するピークは観察されなかった。余分のIleアミノ酸を有する所望のペプチドに相当する1176.5に別のピークが得られた。このことは、Ileカップリング反応の一方の前の、脱保護溶液の除去が不完全であったことを示しており、2つのIleアミノ酸がペプチドに組み込まれた。
【0118】
図10は、本発明のフロースルー実施態様(a flow through embodiment)の概略図である。本実施態様においては、本発明は、点線で囲まれた長方形130で示されるマイクロ波キャビティを含む。131で大まかに示されているカラムが、キャビティ130内に配置されている。言うまでもないが、キャビティは、マイクロ波源、導波管(必要に応じて)、シングルモードもしくはマルチプルモードの確立、および他の実施態様に記載の適切なフィードバックエレメントとコントロールエレメントに対する適切な配置がなされた前述のタイプであってよい。わかりやすくするために、図10にはこれらのうちの幾つかが示されていないが、これは、限定しているのではなく明確さを期すための処置である。
【0119】
本実施態様においては、一般にはガラスで造られている(必ずしもガラスである必要はない)マイクロ波透過性のカラム131に固相樹脂132を充填する。この樹脂は、前出の実施態様に関して記載の樹脂と同じであるか又は同等である。それぞれのフィルター133と134がカラム131の各端部を画定している。一般的なカラムは、直径が約15〜25ミリメートルおよび長さが約100〜150ミリメートルであって、約2.5〜5.0グラムの樹脂を収容する。
【0120】
ソースリザーバ135は、チューブ部分136と137および弁140を介してカラム131と流体連通している。同様な仕方にて、アウトプットリザーバ141は、チューブ142と143および弁144を介してカラム131と連通している。弁140と144はそれぞれ、リザーバ135からソース組成物を加えるように、そしてリザーバ141にアウトプット組成物を捕集するように制御することができる。しかしながら、弁140と144はさらに、場合によってはポンプ146(一般には容積移送式ポンプ)と連結しているループチューブ(loop tubing)145を介して組成物が循環するよう調整することができる。
【0121】
したがって本実施態様は、一般には複数のソースリザーバまたはそれらの同等物を含むことは言うまでもない。前出の実施態様と類似の仕方にて、これらのソースリザーバまたはそれらの同等物は、アミノ酸もしくは保護アミノ酸誘導体、活性剤溶液、洗浄組成物、キャッピング組成物、および溶媒交換組成物(solvent exchange compositions)に対して複数のポジションもしくはステーションを含んでよい。
【0122】
同様に、実際に実施する上で、機器は、複数のアウトプットリザーバおよび複数の弁とそれらの関連したチューブを含む。しかしながら、これらはいずれも、一般には図10に示されている仕方で作動する。
【0123】
同様に、単一のキャビティ中に複数のカラムを、あるいは個別のカラムを含んだ複数のキャビティを、あるいは両方の組み合わせたものを使用できる可能性が存在することは言うまでもない。しかしながらいずれの場合も、基本的なシステムとその操作が図10に示されており、より複雑なシステムは、図10と同一または類似したさらなる集成体を示すであろう。
【0124】
必要に応じて、個々の反応は、弁140と144を使用してカラム131において単離される関連組成物を使用して行うこともできるし、あるいはカラム131とループチューブ145を介して循環している関連組成物を使用して反応を進行させることもできる。場合によっては、反応は両方の集成体を使用して進行させることもできる(すなわち、ある時間に対しては、カラム131において単離される関連組成物を、そして他の時間に対しては、カラム131とチューブ145を介して循環している関連組成物を使用して)。所望の数のサイクルの終わりにて(あるいはある特定のサイクルの終わりにて)、弁140と144を、ペプチド生成物を移送するように調整することができる。
【0125】
本実施態様のフロースルーシステムは、組成物をリアルタイムで分光分析するための便利な手段になると思われる。図10にソース147および検出器148として概略的に示されているのは、一般には、紫外周波数または赤外周波数(あるいは両方の場合もある)にて作動する分光器である。リアルタイムのモニタリングは、所定の反応(一般には脱保護)がどの程度まで進行したかを識別することができ、そして制御回路(またはその同等物)と連動させて使用したときに、反応が十分に完了するまで、ループチューブ145を使用して所定の工程を押し進めることができる。
【0126】
本明細書と図面には、本発明の典型的な実施態様が開示されている。特定の用語は、本明細書に記載の意味でのみ使用されており、これらの用語は、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定することを意図してはいない。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】固相ペプチド合成の特定の態様を示している概略図である。
【図2】本発明による合成機器の斜視図である。
【図3】本発明による反応容器とアダプターの斜視図である。
【図4】本発明による反応容器とアダプターの斜視図である。
【図5】本発明による反応容器とアダプターの斜視図である。
【図6】本発明の態様を示している流れ回路図である。
【図7】本発明のキャビティと導波管の切り取り斜視図である。
【図8】本発明の方法にしたがって合成されたあるペプチドのマススペクトルである。
【図9】本発明の方法にしたがって合成された別のペプチドのマススペクトルである。
【図10】本発明の他の実施態様の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波キャビティ;
前記キャビティと連通状態にあるマイクロ波源;
マイクロ波放射線に対して透過性の材料で作製されている、前記キャビティ中のカラム;
前記カラム中の固相ペプチド担体樹脂;
前記カラム中の前記固相担体樹脂を保持するためのそれぞれのフィルター;
前記カラムに出発組成物を加えるための第1の通路;
前記カラムから組成物を取り出すための第2の通路;および
前記カラムからの組成物を循環させて、前記カラムに戻すための第3の通路;
を含む、固相法によってペプチドの合成を促進させるための機器。
【請求項2】
前記カラムに酸を逐次的に加えるための、そして完了したペプチドを前記カラムからペプチドリザーバに移すためのプロセッサーと制御システムを含む、請求項1に記載のペプチド合成機器。
【請求項3】
前記マイクロ波キャビティ中に2つのカラムを含む、請求項1に記載のペプチド合成機器。
【請求項4】
2つのマイクロ波キャビティを含む、請求項1に記載のペプチド合成機器。
【請求項5】
外部溶媒源からの溶媒で前記カラムをすすぎ洗いするための、次いで前記カラムに酸を加えて前記カラム中にて引き続きペプチドを形成させるための手段を含む、請求項1に記載のペプチド合成機器。
【請求項6】
前記カラムを溶媒でフラッシングするための、外部溶媒源と前記カラムとの間で流体連通状態にある少なくとも1つの通路をさらに含む、請求項1に記載のペプチド合成機器。
【請求項7】
前記通路における流体連通を制御するためのバルブシステムを含む、請求項1に記載のペプチド合成機器。
【請求項8】
樹脂リザーバ群を含む、請求項7に記載のペプチド合成機器。
【請求項9】
アミノ酸リザーバ群を含む、請求項7に記載のペプチド合成機器。
【請求項10】
ペプチドリザーバ群を含む、請求項7に記載のペプチド合成機器。
【請求項11】
専用のクリービング溶液リザーバ、ならびに前記クリービング溶液リザーバおよび前記カラムと流体連通状態にある専用通路を含む、請求項1に記載のペプチド合成機器。
【請求項12】
一般的なアミノ酸もしくはアミノ酸誘導体に対する1〜20の供給源を含む、請求項1に記載のペプチド合成機器。
【請求項13】
前記キャビティ中の前記カラムの内容物から放出される赤外線を、前記カラムの内容物と接触することなく測定することができ、そして前記キャビティ中の前記カラムの内容物から放出される赤外線を、前記カラムの内容物と接触することなく測定するように配置された赤外線温度センサーを含む、請求項1に記載のペプチド合成機器。
【請求項14】
マイクロ波放射線の照射時において同時に前記カラムを冷却するための手段をさらに含む、請求項1に記載のペプチド合成機器。
【請求項15】
前記カラム上に空気を循環させることによって前記カラムを同時に冷却するための手段をさらに含む、請求項14に記載のペプチド合成容器システム。
【請求項16】
マイクロ波エネルギーを照射しながら第1のアミノ酸から保護化学基を除去することによって、カラム中の固相樹脂に結合している第1のアミノ酸を脱保護する工程;
第2のアミノ酸上の化学基を活性化して、カラム中の固相樹脂に結合している第1のアミノ酸とカップリングさせるための第2のアミノ酸を調製する工程;
マイクロ波エネルギーを照射しながら、活性化された第2のアミノ酸を、脱保護された第1のアミノ酸にカップリングして、第1と第2のアミノ酸から固相樹脂上にペプチドを形成させる工程;および
第3のアミノ酸とそれに引き続いたアミノ酸を逐次的に脱保護、活性化、およびカップリングして、カラム中の固相樹脂上にペプチドを形成させる工程;
を含む固相単体ペプチド合成法。
【請求項17】
開裂を促進させるためにマイクロ波エネルギーを照射しながら固相樹脂からペプチドを開裂する工程を含む、請求項16に記載のペプチド合成法。
【請求項18】
マイクロ波エネルギーの照射時に容器とその内容物を積極的に冷却し、これによりマイクロ波エネルギーの照射によって生じると思われる蓄熱を制限することによって、ペプチドもしくは酸の望ましくない分解を防止する工程を含む、請求項16に記載のペプチド合成法。
【請求項19】
脱保護工程がアミノ酸のα-アミノ基を脱保護することを含む、請求項16に記載のペプチド合成法。
【請求項20】
マイクロ波の照射によりペプチドのアミノ酸上の側鎖を脱保護することをさらに含む、請求項16に記載のペプチド合成法。
【請求項21】
活性化工程が、第2のアミノ酸のα-カルボキシル基を活性化することを含む、請求項16に記載のペプチド合成法。
【請求項22】
マイクロ波エネルギーを照射する工程が、マイクロ波エネルギーの照射を比較的短い時間間隔に制限することで、マイクロ波エネルギーの連続的な照射によって促進されると思われる蓄熱を抑えることによってペプチドもしくは酸の望ましくない分解を防止することを含む、請求項16に記載のペプチド合成法。
【請求項23】
容器の温度をモニターし、モニターされた温度に基づいて照射するエネルギーを適度に調節することを含む、請求項16に記載のペプチド合成法。
【請求項24】
反応の状態に基づいて照射するエネルギーを適度に調節することを含む、請求項16に記載のペプチド合成法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−110977(P2008−110977A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−276680(P2007−276680)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(500119569)シーイーエム・コーポレーション (16)
【Fターム(参考)】