説明

マイクロ波を使用して繊維強化複合材料からなる構造部分を製造する方法及び成形用具

繊維強化複合材料(4)を含む少なくとも一層(2)を有する部分(1)を製造する方法が開示されて、前記方法は、a)重合可能な繊維強化複合材料(4)からなる前記少なくとも一層(2)をある形状(5)に整えて、前記形状(5)は基部面(6)及び複数の盛り上がった部分(7)を有し、b)少なくとも一つの前記盛り上がった部分(7)と接触させるように少なくとも一つの成形用具(8)を位置決めして、前記成形用具(8)は、前記少なくとも一つの盛り上がった部分(8)に対する少なくとも一つの接触面(9)がマイクロ波感受性材料(10)からなり、c)前記少なくとも一つの成形用具(8)をマイクロ波(3)で照射することにより少なくとも一つの前記盛り上がった部分(7)を重合させることを少なくとも含む。前記成形用具は三次元の型(11)を有し、前記成形用具(8)は前記部分(1)に対する接触面(9)を有し、少なくとも前記接触面(9)はマイクロ波感受性材料(10)からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料を含む少なくとも一層を有する構造部分を製造する方法及び上記のような方法に使用する用具に関する。本発明は、飛行機の胴体及び/又はより大きな流れ表面(flow surface)の部品の製造に特に使用される。
【背景技術】
【0002】
今後の環境上の要件に従い、製造及び操作が安価で、それでも最も厳格な安全要件を満たす飛行機を提供することに注がれている努力に関して、必須の主要構造(例えば、翼、胴体部品、駆動ユニット用のハウジング等)をアルミニウムではなく繊維強化複合材料を使用して製造する可能な方法がますます探求されている。この軽量構成技術は、特に、飛行機の重量を大幅に減少させることを可能にする。このような必須の主要構造の製造の間、これらは相当な規模になることを考慮する必要があり、例としては、着陸用フラップは数メートルにも亘り延びる構造部分である。これらの構造部分は、動作中に大きなストレスに更にさらされ、従ってセーフティクリティカルな構造部分(safety-critical structural parts)を代表し、この部分は特別な品質要件に従う必要がある。
【0003】
この種の繊維強化複合材料は概して二つの必須な部品を含み、即ち、一つ目は繊維、そして二つ目は繊維を囲むポリマーマトリックスである。マトリックスは繊維を包み込み、熱処理(重合)により硬化され、三次元の橋かけが行われるようになる。この重合は繊維が互いに強く結合される効果があり、従って繊維に力を加えることができ、即ち主にせん断応力(shear stress)により加えることができる。適切な繊維は、炭素繊維と、もしかするとガラス繊維とである。現在ではまだ比較的高価である炭素繊維は、重量で少なくとも90%の程度炭素から一様に構成されている。繊維の直径は、例えば、4.5μmから8μm(マイクロメータ)である。この種の炭素繊維は、異方性の特性を有する。反対に、ガラス繊維は非晶質(amorphous)の構造を有し、等方性の特性を有する。これらは主に酸化珪素(silicon oxide)で構成されて、適切であれば更に酸化物を混合することも可能である。ガラス繊維は比較的安価であるのに対して、炭素繊維はその高い強度及び剛性が有名である。
【0004】
特に、飛行機の構成(construction)では、プレプレッグ技術として知られている技術が使用される。この技術では、例えば、予備含浸布(pre-impregnated fabrics)又は他の繊維の形(プリフォーム)が合成繊維に浸漬されて、ほんのわずかに固体化するまで熱処理されて(ゲル生成)、それは層として取り扱うことができるようになる。この種のプリプレグ材料は付着力を少し示している。従って、構成部分の所望の形が形成されるまで、適当な成形用具の中又は互いの上に層状に載せて簡単に配置することができる。プレプレッグ材料の所望の層が配置されると、それらは(熱で)硬化することができる。これらのプリプレッグ構造部分を硬化するために、現在はオートクレーブとして知られているものが使用される。即ちオートクレーブとは、構造部分を完全に硬化させるために何時間にも亘り過剰圧力(10バールまで)で加熱する場合があるオーブンである。
【0005】
更に、特許文献1はマイクロ波オートクレーブを開示しており、そのマイクロ波オートクレーブによりマイクロ波の放射による繊維複合構造部分の製造が提案されている。上記の文献で提案されている装置は、オートクレーブの圧力室内にマイクロ波放射を加えることが可能になる。この方法に適したプリプレッグ材料をマイクロ波により直接励起することは、構造部分のサイズのせいで相当な容量で存在するオートクレーブ内にある空気又は希ガスを熱する必要がないという利点を有する。マイクロ波技術の使用は、硬化されるプリプレッグ材料自体を直接加熱し、残りの周囲領域を結果的に比較的冷たいままにすることを可能とする。
【0006】
特許文献2に記載されている空洞共振器(microwave resonator)は、同様に熱処理を実施するために適している。この空洞共振器は通常過剰圧力を加えずに動作される。しかしながら、これは圧力容器(オートクレーブ)内に組み込まれてもよい。
【0007】
マイクロ波を使用して材料を熱する場合、次のアクティブな仕組み(active mechanisms)が起こり得る。それらは、誘電加熱及び抵抗加熱である。もし(自由に)移動可能な双極子(言い換えれば、不規則な電荷の分布を有する分子)が材料に存在する場合、これらは励起されてマイクロ波により生成された電磁界にて高周波で振動する。そして双極子のこの運動エネルギーは、内部摩擦により熱に変換されて、その熱は材料の中に直接生成される(誘電加熱)。更に、誘電の結果として渦電流が起こる可能性があり、従って材料の電気抵抗は最終的に温度の上昇を招く(抵抗加熱)。例としては、このように材料を130℃より高い温度、160℃より高い温度、又は更に200℃より高い温度に熱することができる。この温度レベルは、プレプリッグ材料の重合又は硬化が起こることを可能にする。
【0008】
この点について、比較的大きな基部面及びそこから突出している盛り上がった部分を有する飛行機の部品が特に重視されている。例として、この盛り上がった部分は蜘蛛の巣状のフィン(web-like fins)であり、これらは特に(組み立てた)構成部分の剛性の増加に貢献することが意図されている。例として、この種の盛り上がった部分は、約11m(メートル)の長さと、2.5mmから4mm(ミリメートル)の範囲にある材料厚さと、基部面を超えて延在する少なくとも25mm(ミリメートル)の高さとを有する。
【0009】
このような部品をマイクロ波の照射により硬化させて製造している間、材料に均一及び充分な橋かけが保証されていることが重要である。この目的のため、部品のこの「歪んだ(contorted)」形状がマイクロ放射(microradiation)で適切に処理できる及び/又は部品に均質な温度分布が実現されることが不可欠である。また、ここで使用されているプレプレッグ材料はそれ自体に一様に寸法安定性があるわけではなく、即ちマイクロ波放射の間は適当な保持及び/又は成形用具を使用して所望の位置に固定されなければならない。上記に示される問題はその結果更に大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ドイツ特許DE10 2005 050 528 A1
【特許文献2】ドイツ特許DE103 29 411 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記に鑑みて、本発明の目的は、従来技術を参照して概略を説明した問題を少なくとも部分的に解決することである。特に、本発明では、上述の構成部分を、繊維強化複合材料の望ましい高く、均一の橋かけ度(degree of crosslinking)と共に、簡単に及び確実に製造が可能な方法を明記することである。更に、特にマイクロ波処理の間の均一の硬化処理を確実にする成形用具を明記する意図がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、請求項1の特徴を含む方法と請求項5に記載の特徴を有する成形用具とにより達成される。更に、本発明の好ましい実施形態の変形例及び使用する分野は各々の従属請求項に指示されている。請求項にそれぞれ指示されている特徴は、技術的に有効な方法で互いと組み合わせることができ、本発明の更なる実施形態を明らかにすることができる。特に図面を参照する説明は、本発明の特に好ましい例示的な実施形態を更にあげている。
【0013】
繊維強化複合材料を含む少なくとも一層を有する構造部分を製造する本発明の方法であって、前記方法は、
a)重合可能な繊維強化複合材料からなる前記少なくとも一層をある形状に整えて、
前記形状は基部面及び複数の盛り上がった部分を有し、
b)少なくとも一つの前記盛り上がった部分と接触させるように少なくとも一つの成形用具を位置決めして、
前記成形用具は、前記少なくとも一つの盛り上がった部分に対する少なくとも一つの接触面がマイクロ波感受性材料からなり、
c)前記少なくとも一つの成形用具をマイクロ波で照射することにより少なくとも一つの前記盛り上がった部分を重合させる
ことを少なくとも含むことを特徴とする方法。
【0014】
ここで使用される繊維強化複合材料は重合可能である。たとえここで主要な要求ではなくても、繊維強化複合材料はマイクロ波を吸収することもできる。特に、このことは使用されている繊維強化複合材料が加熱されることができ、従って序文にも記載されているように、複合材料の(部分的な)硬化(又は重合)が行われ得る。
【0015】
繊維強化複合材料は、特に、炭素繊維強化複合材料である。炭素繊維は好ましくは長い繊維の形であり、それらは初期段階では終わりがなく、繊維の長手方向が異なる向きで、層をなして構造部分に配置される。エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、又はポリエステル樹脂のうちの一つが特に樹脂として適している。更に、周知の樹脂マトリックス材料でガラス繊維強化複合材料を使用することも可能である。
【0016】
構造部分を製造するために、重合可能な繊維強化複合材料を一層のみ使用することが可能であるが、構造部分の可変の厚さを適当であれば生成できるようにするために、少なくとも特定の複数の領域においてそのような複数の層を互いの上に配置することも可能である。異なる複数の層を使用して更に複雑な形を表すことができ、ここでは基部面及び複数の盛り上がった部分などを有する形である。ここで、「層」とは、特にプリプレッグ材料のプライ(ply)を表している。
【0017】
a)の間は、例として、複数の層は、基部面を作るように、支持体の上に互いの上に重なり及び/又は隣接して配置されている。この場合、基部面は数平方メートルの寸法を有することがあり、(少しばかり)曲線状の形を有することがある。好ましくはその一面には、複数の盛り上がった部分が作られるように複数の層が配置され、それらは支持体とは反対側に明確に設置される。好ましくは、盛り上がった部分はフィンのような長めの設計である。このような盛り上がった部分を少なくとも3個、特に好ましくは少なくとも5個、又は更には少なくとも10個、層のある基部面上に作ることが好ましい。特に、それにより飛行機の着陸フラップ又は別の流れ表面の部品の所望の形が構成される。
【0018】
b)によると、少なくとも一つの成形用具が少なくとも一つの盛り上がった部分と接するように更に配置される。この場合、成形用具はその接触面により、少なくとも一つの盛り上がった部分に当たり(一辺及び/又は二辺で)、直接又は間接的に(適当であれば、慣例のフィルム(films)等を介して)支えられる。成形用具は、少なくとも接触面を含む領域では、マイクロ波感受性材料からなる。特に、このことはこの材料がマイクロ波で処理又は照射されると加熱されることを示し、特に誘電加熱及び/又は抵抗加熱の作用が生じる。このように、従って成形用具はマイクロ波照射により(適当であれば部分的に)加熱され、そしてその熱は重合可能な繊維強化複合材料の層へ伝達される。この状況では、材料自体が重合可能でない材料が好ましくは使用される。即ち、その材料とは、寸法安定性、多孔性、及び熱生産容量などの特性を少なくとも多数のそのようなマイクロ波処理の間維持するものである。例としては、この目的のために次の材料を(個々に又は部分的に互いと組み合わせて)使用することができる。その材料とは、異なる混合比率で様々な添加物を含むマイクロ波透過材料、例えば、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、エポキシ樹脂(EP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ガラスセラミック、酸化アルムニウム、石英ガラス等である。添加物としては、(粉末の(ground))炭素短繊維(例えば、長さは0.1から0.25mm)、カーボンブラック、活性炭、ナノ構造(nanostructure)、例えばCNT(カーボンナノチューブ(carbon nanotube))、ケイ酸塩、ゾル‐ゲル材料等である。更に使用できる材料は、少なくとも一つのポリマー又は熱可塑性マトリックス材料を含む(適当な場合には、更には充填されている)ゴム及び繊維複合材料である。
【0019】
このような成形用具が基部面の上に適当に配置されて、少なくとも一つの盛り上がった部分と接するようにしたら、c)を開始することができる。ここでは、重合可能な繊維強化複合材料の層及び成形用具の全体の機構(arrangement)がマイクロ波で処理されて、これら全ての要素が高周波電磁界に露出されるようになる。成形用具はマイクロ波が重合可能な強化複合材料の層に直接作用することを少なくとも部分的に防止するため、従ってマイクロ波で直接処理されるのは層ではなく、成形用具(のみ)である。層又は、特に接触している盛り上がった部分及び盛り上がった部分と基部面との間の移行領域においての重合は成形用具が接することによって一様に生じさせられて、その成形用具はマイクロ波照射によって加熱される。従って、これらの複雑な層の移行部で層の中に一様で十分な熱の導入を達成することも可能であり、十分な橋かけ度を有する一様な橋かけが保証される。成形用具は、このように加熱装置(heating unit)及び同時に熱配分構造(heat distribution structure)の両方として機能する。
【0020】
本方法の更なる実施形態によると、b)において、前記少なくとも一つの成形用具は二つの隣接している前記盛り上がった部分と接触するように位置決めされていることが提案されている。このような関係においては、成形用具は、例えば、U字のプロフィールのように設計されるのが好ましく、そして従って二つの隣接する盛り上がった部分の間に(そして基部面の上に載って)配置されるのが好ましい。更に特に好ましくは、そのような成形用具が構造部分の隣接している全ての盛り上がった部分の間に配置されることである。それにより、盛り上がった部分のある基部面のほとんど全面が成形用具により覆われる。寸法安定性を有し三次元の型で形成されている成形用具は、従って盛り上がった部分の保持又は支持要素としても機能する。それにより、盛り上がった部分の互いに対する位置及び/又は基部面に対する盛り上がった部分の位置に関して、特に高い寸法公差(dimensional tolerances)を実現することが可能である。その上、構造部分が比較的複雑な形状であるにもかかわらず、構造部分に熱を一様に導入することも従って可能である。
【0021】
更に有利と考えられているのは、b)において、前記複数の盛り上がった部分は複数の相互に作用する前記成形用具によって固定されている。これは、特に、成形用具が直接互いに又はそれらは盛り上がった部分を介して相互に作用することを意味する。適当であれば、従って成形用具及び/又は盛り上がった部分は互いに対して補強する(braced)ことができて、その結果層は重合の前及びその間に確実に固定される。特に、このことは硬化のために準備された層の取り扱い又は搬送をも簡略にする。
【0022】
本方法の更なる実施形態によると、d)として、前記少なくとも一つの成形用具が取り外される。基本的には、d)はc)が完了すると、即ち構造部分における望ましい橋かけ度が少なくとも大部分達成されたら、実施される。しかしながら、特定の適用では、重合がまだ完了していない場合でも、少なくとも一部の成形用具が取り除かれることも可能である。これは、特に、重合可能な繊維強化複合材料の層自体がマイクロ波の感受性が高い場合に関する。
【0023】
本発明の更なる態様によると、繊維強化複合材料を含む少なくとも一層を有する構造部分を製造する成形用具が提案されており、前記成形用具は三次元の型で形成され、前記成形用具は前記構造部分に対する接触面を有し、少なくとも前記接触面はマイクロ波感受性材料からなる。
【0024】
この成形用具は、ここに本発明によって記載された方法を実施するために特に使用される。
【0025】
この場合、成形用具は有利に形成されており、例として、マイクロ波感受性材料を受ける(receives)寸法安定性のある支持構造が設けられている。しかしながら、マイクロ波感受性材料自体が寸法安定性を有し、よって用具の三次元の型を(少なくとも部分的に)独立して形成することも可能である。三次元の型は、ここで関係するものは不安定なフィルム等ではなく、これらは例えば、L字、U字、又は同様の断面を有するように形成されて、例えば10バールまでの増加した周囲気圧(ambient pressure)でもこの形を失わないことを特に表すことを意図している。成形用具は、成形用具の外側面を含む領域に接触面が一般的に作られている。また、接触面は、外側面、即ち構造部分にその後対するようになる面、のみがマイクロ波感受性材料からなることが好ましい。従ってマイクロ波感受性材料がその接触面に熱で結合されて、それにより熱をここの構造部分へ導入することを可能にする。
【0026】
更に、前記成形用具は前記構造部分に対する接触面を有し、前記接触面の外側の少なくとも一つの領域はマイクロ波透過材料からなることは有利と考えられている。成形用具は、接触面の反対に配置されている外側面が、マイクロ波で通常処理される。成形用具内で接触面の近くでできるだけ完全にそしてそこを対象とするように(targeted manner)熱を生成して、同時に成形用具の寸法安定性に関する高い要求を満たすためには、材料に関しても、二つの機能を互いから切り離すことが適切かもしれない。ここで、寸法安定性が、例えば、マイクロ波透過材料(microwave transparent material)、即ちマイクロ波を「透過する」材料、により提供されて、それでもその結果エネルギーの実質的に完全な導入が可能となっている。そのようなマイクロ波透過材料の例としては、シリコーン、PTFE、PP、EP、PET、ガラスセラミックス、酸化アルミニウム、石英ガラス等である。
【0027】
更に、前記成形用具は前記構造部分に対する接触面及び前記接触面の反対側に位置している外側面を有し、断熱材用の手段が前記外側面の近くに設けられていることが提案されている。ここでは、特に、断熱材の手段としてマイクロ波透過材料が含まれると推測される。断熱材には、マイクロ波感受性材料にて発生した熱は主に構成部分に対してのみ放射されて、その周囲の部分には放射されないという効果がある。それにより更に効率が増加する。断熱材には、例えば、ガラスウール又は類似のミネラルウールを使用しても良い。
【0028】
成形用具の更なる実施形態によると、前記成形用具は少なくとも一つの穴を有し作られている。例として、穴は、周囲の空気がその中を通りぬけ及び/又はそれを充填するように設計されても良い。特に、従って穴は断熱材にも使用できる。適当ならば、そのような穴が複数設けられることも可能であり、その場合には穴は様々な材料(マイクロ波透過及び/又はマイクロ波感受性材料)用の溜め(reservoir)としても使用できる。
【0029】
更に、前記成形用具はアクティブ冷却装置(active cooling system)に少なくとも部分的に接続可能であることが提案されている。アクティブ冷却装置は、断熱材と同様に、接触面から離れている成形用具の側面に配置されるべきであり、その結果周囲領域への熱の排出が目標をしぼって更に防止でき、そして適当な場合には特定の領域のみで防止できる。このような“アクティブ”冷却装置は、特に、制御可能な冷却装置に関し、その場合冷却媒体が成形用具を通り流れる。冷却媒体とは、特に、周囲の冷気(cold ambient air)、冷ガス(cold gas)、及び/又は40℃以下又は0℃以下の冷液である。
【0030】
更に、前記成形用具は少なくとも一つの露出されているマイクロ波導入構造を有し作られ、前記マイクロ波導入構造はマイクロ波感受性材料からなる前記接触面と相互作用することが有利と考えられている。このことは、特に、接触面と熱伝動接触しているマイクロ波感受性材料は、接触面から離れている複数の領域に配置されていることを意味する。従って、特に、熱の「内部」伝導を、接触面に対するマイクロ波の放射線(microwave rays)が特に簡単に到達可能な成形用具の上にある複数の場所から、実現することも可能である。
【0031】
特に好ましくは、ここで提案される方法又はここで提案される成形用具は、前記構造部分を有する飛行機の胴体又は外側流れ表面の部品を製造するために使用される。部品は、特に、次のグループの部品に関し、グループとは、着陸フラップ、フラップ・トラック・ビーム(flap track beam)、ノーズ部分、方向舵装置(rudder unit)、エレベータ装置、スポイラー、屋根部品、ノズルハウジング、側部アーム、及び構造フレームである。本発明は、他の航空機、例えばヘリコプター、の構造部分にも同様に使用できる。
【0032】
本発明及びその技術的な内容は、図面を参照しながら下記に更に詳細に説明されている。図面では本発明の特に好ましい実施形態の変形例を示しているが、本発明はこれらに限定されることはない。図面では概略的に下記を示している。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本方法を実施する装置を示している。
【図2】図2は、成形用具の第一実施形態の変形例を示している。
【図3】図3は、前記成形用具の第二実施形態の変形例を示している。
【図4】図4は、飛行機を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明によって本明細書に記載されている方法を実施する装置23を示している。例として、この装置は上記に(introduction)で説明されているようにマイクロ波オートクレーブであっても良い。本装置には支持体24が設けられており、その上に硬化される構造部分1、この場合には着陸フラップの一部、が断面で示されている。構造部分1は、二つの支持面25の間で支持体24の上に固定されており、部分1は略湾曲した基部面(base surface)6及び複数の上向きフィンのような盛り上がった部分(elevations)7を有する。
【0035】
熱源の局所的な生成のため、及び盛り上がった部分7の互いに対する正確な配置を保証するためには、この場合には複数の成形用具8が支持体24の反対にある構造部分1の側面に配置されている。ここで、成形用具8は互いに相互に作用する。従って、それらは特に互いに対して、及び二つの支持面25の間に、固定される。従って、成形用具8は、重合可能な繊維強化複合材料4からなる構造部分1の自由な外側面を全部覆う。
【0036】
構造部分のこの比較的複雑な形5にもかかわらず、一様の重合を保証するためには、成形用具はマイクロ波感受性材料を含み、このマイクロ波感受性材料は装置23内で構造部分1が局所的にマイクロ波3で照射されることにより熱せられる。従って、特に、構造部分において少なくとも130℃又は180℃にでも達する温度を実現することが可能である。
【0037】
図2は、成形用具8の実施形態の変形例の詳細を示している。図の下部は初めに構造部分の一部が示されており、それは重合可能な繊維強化複合材料からなる複数の層2(プレプレグ材の複数の層)からなる。ここでは形5があり、この場合基部面6に対して略垂直に延長する二つの盛り上がった部分7が設けられている。
【0038】
成形用具8は、この場合には略U字の設計であり、二つの盛り上がった部分7の間に配置されている。この成形用具は、二つの隣接している盛り上がった部分7の間の構造部分の外側面を完全に覆い、従って両方の盛り上がった部分7及びその間に位置する基部面6により接触面9を形成する。正確には成形用具8のこの接触面9がマイクロ波感受性材料10からなる。この場合マイクロ波感受性材料10は成形用具8の全厚さ26に亘り延在せず、代わりにマイクロ波感受性材料13は外側面18へ向かう外領域12のみに設けられており、例としては、成形用具8が繰り返し使用される場合でも三次元のU字のような型11を保証する。従って、マイクロ波3はマイクロ波透過材料13を含む領域12を最初に貫通して、そして接触面9の領域のマイクロ波感受性材料10の誘電加熱を引き起こす。
【0039】
成形用具8のU字のような型11の横の壁部分が盛り上がった部分7より上に突出していることが図2から分かる。これらの突出している壁部分は、同様に、特に、隣接する成形用具8の支持面25として機能し、成形用具8が互いに対して配置される又は固定されるようになり、従って盛り上がった部分の位置が正確に維持できる。
【0040】
図3は、成形用具8の更なる実施形態の変形例を示している。この場合、成形用具8は、接触面9の領域のみならず、盛り上がった部分7よりも先へ突出している壁部分もまたマイクロ波感受性材料10により成形されている。例としては、この部分は、露出されたマイクロ波導入構造(microwave introduction structure)として機能し、そこから接触面9へ向かう熱の流れ(ここでは矢印で示されている)を生じることができる。特に、このことは接触面9の縁部分で望ましくない冷たい箇所(points)が生じることをも防止する。
【0041】
更に、この場合、成形用具8はマイクロ波感受性材料13からなる複数の領域からなり、外側面18の領域に断熱材19(例えば、ガラスウールからなる)が設けられている。角領域には複数の穴20が更に作られており、それらは、例としては、アクティブ冷却装置21に結合されることができる。従って、例としては、穴20内を通じて周囲の冷気(cool ambient air)を伝えることが可能である。
【0042】
図4は、飛行機17の胴体又は流れ表面16の部品14を示しており、それらは本発明によりここで説明されている方法によって構成部分を用いて製造できる。大きな面積を有する飛行機17の構造の主要な構造部分でさえも提案されている方法により製造でき、飛行機17の重量をかなり減少させることも同様に可能である。燃料の低消費及び/又はそれに関連するより多いペイロードは本発明の必須の利点である。
【符号の説明】
【0043】
1 構造部分
2 第一層
3 マイクロ波
4 複合材料
5 形
6 基部面
7 盛り上がった部分
8 成形用具
9 接触面
10 マイクロ波感受性材料
11 型
12 領域
13 マイクロ波透過材料
14 部品
15 胴体
16 流れ表面
17 飛行機
18 外側面
19 断熱材
20 穴
21 冷却装置
22 マイクロ波導入構造
23 装置
24 支持体
25 支持面
26 厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化複合材料(4)を含む少なくとも一層(2)を有する構造部分(1)を製造する方法であって、前記方法は、
a)重合可能な繊維強化複合材料(4)からなる前記少なくとも一層(2)をある形状(5)に整えて、
前記形状(5)は基部面(base surface)(6)及び複数の盛り上がった部分(elevations)(7)を有し、
b)少なくとも一つの前記盛り上がった部分(7)と接触させるように少なくとも一つの成形用具(8)を位置決めして、
前記成形用具(8)は、前記少なくとも一つの盛り上がった部分(8)に対する少なくとも一つの接触面(9)がマイクロ波感受性材料(10)からなり、
c)前記少なくとも一つの成形用具(8)をマイクロ波(3)で照射することにより少なくとも一つの前記盛り上がった部分(7)を重合させる
ことを少なくとも含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
b)において、前記少なくとも一つの成形用具(8)は二つの隣接している前記盛り上がった部分(7)と接触するように位置決めされていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
b)において、前記複数の盛り上がった部分(7)は複数の相互に作用する前記成形用具(8)によって固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
d)として、前記少なくとも一つの成形用具(8)が取り外される、前述の一つの請求項に記載の方法。
【請求項5】
繊維強化複合材料(4)を含む少なくとも一層(2)を有する構造部分(1)を製造する成形用具(8)であって、
前記成形用具は三次元の型(11)を有し、
前記成形用具(8)は前記構造部分(1)に対する接触面(9)を有し、少なくとも前記接触面(9)はマイクロ波感受性材料(10)からなる
ことを特徴とする成形用具(8)。
【請求項6】
前記成形用具(8)は前記構造部分(1)に対する接触面(9)を有し、前記接触面(9)の外側(outside)の少なくとも一つの領域(12)はマイクロ波透過材料(microwave-transparent material)(13)からなることを特徴とする請求項5に記載の成形用具(8)。
【請求項7】
前記成形用具(8)は前記構造部分(1)に対する接触面(9)及び前記接触面(9)の反対側に位置している外側面(18)を有し、
断熱材(19)用の手段が前記外側面(18)の近くに設けられている
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の成形用具(8)。
【請求項8】
前記成形用具(8)は少なくとも一つの穴(20)を有する
ことを特徴とする請求項5から7の一つに記載の成形用具(8)。
【請求項9】
前記成形用具(8)はアクティブ冷却装置(active cooling system)(21)に少なくとも部分的に接続可能である
ことを特徴とする請求項5から8の一つに記載の成形用具(8)。
【請求項10】
前記成形用具(8)は少なくとも一つの露出されているマイクロ波導入構造(22)(microwave introduction structure)を有し作られ、前記マイクロ波導入構造(22)はマイクロ波感受性材料(10)からなる前記接触面(9)と相互作用する
ことを特徴とする請求項5から9の一つに記載の成形用具(8)。
【請求項11】
飛行機(17)の胴体(15)又は外側流れ表面(16)の部品(14)であって、
前記部品は前記構造部分(1)を少なくとも一つ有し、
前記構造部分(1)は、請求項1から4の一つに記載されている前記方法により、請求項5から10の一つに記載されている前記成形用具(8)を用いて製造されている
ことを特徴とする部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−524825(P2011−524825A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514021(P2011−514021)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057470
【国際公開番号】WO2009/153259
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510334549)ゲーカーエン エアロスペース サービシズ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】GKN AEROSPACE SERVICES LIMITED
【住所又は居所原語表記】Ferry Road,East Cowes,Isle of Wight PO32 6RA (GB).
【Fターム(参考)】