説明

マイクロ波を利用した抽出装置

【課題】バイオマス中に含まれる有用成分を劣化させることなく高品質で且つ高い回収率で回収することが可能であるマイクロ波を利用した抽出装置を提供すること。
【解決手段】処理対象物が収容されるタンクと、マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置と、前記マイクロ波発生装置により発生したマイクロ波を前記タンク内に導く導波管と、前記マイクロ波による加熱により前記タンクから蒸発した前記処理対象物中の成分を凝縮するコンデンサと、前記コンデンサにより凝縮された液体を回収する回収器とを備えており、前記タンクは、前記導波管の接続部にマイクロ波を透過するマイクロ波透過材を備えており、前記マイクロ波透過材は、前記タンクの内面から外面に向かうにつれて大径となる円錐台形状をなしていることを特徴とするマイクロ波を利用した抽出装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス等の処理対象物に対してマイクロ波を照射して加熱することにより、処理対象物中に含まれる精油等の有用成分を抽出して回収するマイクロ波を利用した抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、農作物の残渣等からなるバイオマスを有効利用しようとする試みが数多くなされており、その一例としてバイオマスから精油等の有用成分を抽出する方法が実施されている。
バイオマスから精油等の有用成分を抽出する方法としては、例えば圧搾抽出、水蒸気抽出、熱水抽出等の方法が知られているが、これらの方法は、抽出効率が低い、エネルギー消費量が多い等の問題点を有していた。
【0003】
そこで、近年、マイクロ波を利用してバイオマスから精油等の有用成分を抽出する装置が提案されている(例えば、下記特許文献1,2参照)。
図6は、従来の装置における、バイオマスを収容するタンク(A)とマイクロ波の導波管(B)との接続部の構造の一例を示す断面図である。図中の矢印はマイクロ波の流れを示している。
従来の装置では、タンク(A)と導波管(B)との接続部に設けられるマイクロ波透過材(D)は例えば直方体形状に形成されている。そして、導波管(B)の端部フランジとタンク(A)、導波管(B)の端部フランジとマイクロ波透過材(D)とその固定枠(E)は、夫々ボルト(C)により固定されている。
そのため、導波管(B)から導かれるマイクロ波が、導波管(B)の端部フランジとマイクロ波透過材(D)とその固定枠(E)とを固定するボルト(C)と、固定枠(E)の端部に集中し、これらの部分が異常に昇温することにより、バイオマス中に含まれる有用成分が劣化し、抽出物の品質が低下してしまうという問題があった。特に、柑橘類の精油成分は熱劣化を起こし易いことから、従来の装置では柑橘類の残渣から高品質の精油等の有用成分を回収することは困難であった。また、マイクロ波が、ボルト(C)と固定枠(E)の端部に集中するため、マイクロ波のエネルギーが熱に変換され、マイクロ波がタンク内に進入する前にエネルギーロスを生じさせる原因となって、抽出時間が長くなることによるコスト高の原因となっていた。
【0004】
また、従来の装置では、タンクから蒸発した有用成分をコンデンサに導いて液化することにより回収しているが、蒸発した有用成分がコンデンサに到達する前に熱量を失って、タンク上部又はコンデンサ入口迄の配管内で結露となって配管等に付着することにより、回収効率が低下するという問題があった。特に、針葉樹からの精油等の有用成分抽出等の高温加熱を必要とするバイオマスからの抽出処理の際には、一般的には減圧を行わないため、蒸発した有用成分と装置外部の温度差が大きくなり、蒸発した有用成分が熱量を失ってこの問題が生じ易かった。
更に、コンデンサ内において液化した有用成分がコンデンサの内部に付着することにより、回収効率が低下するという問題もあった。
また、タンク内に収容されたバイオマスを攪拌するための攪拌翼を備えている装置では、攪拌翼は一方向にのみ回転することから、粘度の高いバイオマスを攪拌すると、攪拌翼の片面にバイオマスの焦げ付きが生じて有用成分の品質が劣化するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−231196号公報
【特許文献2】特表平8−512337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、バイオマス中に含まれる有用成分を劣化させることなく高品質で且つ高い回収率で回収することが可能であるマイクロ波を利用した抽出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、処理対象物が収容されるタンクと、マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置と、前記マイクロ波発生装置により発生したマイクロ波を前記タンク内に導く導波管と、前記マイクロ波による加熱により前記タンクから蒸発した前記処理対象物中の成分を凝縮するコンデンサと、前記コンデンサにより凝縮された液体を回収する回収器とを備えており、前記タンクは、前記導波管の接続部にマイクロ波を透過するマイクロ波透過材を備えており、前記マイクロ波透過材は、前記タンクの内面から外面に向かうにつれて大径となる円錐台形状をなしていることを特徴とするマイクロ波を利用した抽出装置に関する。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記導波管は、前記タンクと接続される端部にフランジが形成されており、前記フランジは、前記タンクに対してのみボルト止めされており、前記マイクロ波透過材は、前記タンクの外面側において前記フランジに当接していることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波を利用した抽出装置に関する。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記タンク内を減圧することができる減圧ポンプを備えており、前記タンクは、該タンク内に外気又は不活性ガスを取り入れるための通気穴を有しており、前記減圧ポンプの駆動により、前記通気穴を介して前記タンク内に外気又は不活性ガスを流入させることが可能であることを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロ波を利用した抽出装置に関する。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記通気穴に接続された気体取入経路に、前記通気穴から前記タンクへの外気又は不活性ガスの流入を許容又は遮断するためのバルブが取り付けられていることを特徴とする請求項3記載のマイクロ波を利用した抽出装置に関する。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記タンク及び、前記タンクから蒸発した前記処理対象物の蒸気を前記コンデンサへと導く配管は、外殻部材により外面が被覆された二重構造となっており、前記外殻部材と前記タンク及び前記配管の外面との間に形成された空間は、前記減圧ポンプと接続されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のマイクロ波を利用した抽出装置に関する。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記タンク及び、前記タンクから蒸発した前記処理対象物の蒸気を前記コンデンサへと導く配管は、外面に断熱材又はヒータが取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のマイクロ波を利用した抽出装置に関する。
【0013】
請求項7に係る発明は、前記タンクの内部には該タンク内の処理対象物を攪拌する攪拌翼が設けられており、前記攪拌翼は、正転及び逆転が可能に制御されることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載のマイクロ波を利用した抽出装置に関する。
【0014】
請求項8に係る発明は、前記回収器に回収された液体の一部を前記コンデンサの上部へと還流する還流機構を備えており、前記コンデンサの上部には、前記コンデンサの内面に対して液体を噴射する噴射ノズルが設けられており、前記噴射ノズルは、前記還流機構により還流された液体を噴射することを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載のマイクロ波を利用した抽出装置に関する。
【0015】
請求項9に係る発明は、前記還流機構は、前記回収器の下方部分と前記コンデンサの上部とを接続する還流路と、該還流路に設けられた還流ポンプからなり、前記還流路の中途部にはバルブが設けられており、該バルブより上流側には分岐路が形成されており、前記分岐路は、中途部にバルブが設けられ、端部は前記タンクに接続されていることを特徴とする請求項8記載のマイクロ波を利用した抽出装置に関する。
【0016】
請求項10に係る発明は、前記還流機構は、前記回収器の下方部分と前記コンデンサの上部とを接続する還流路と、該還流路に設けられた還流ポンプからなり、前記回収器に回収された液体の一部を前記タンク内へと還流するための第二還流路を備えており、前記第二還流路は、前記回収器の下方部分と前記タンクとを接続しており、その中途部に還流ポンプ及びバルブを備えていることを特徴とする請求項8記載のマイクロ波を利用した抽出装置に関する。
【0017】
請求項11に係る発明は、前記タンクから蒸発した前記処理対象物の蒸気を前記コンデンサへと導く配管の中途部にバルブが設けられていることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載のマイクロ波を利用した抽出装置に関する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、マイクロ波透過材と導波管のフランジとマイクロ波透過材の固定枠とを固定するボルト及び固定枠を省略することができるため、導波管から導かれるマイクロ波がボルト及び固定枠の端部に集中することによる異常昇温が生じることがなく、バイオマス中に含まれる有用成分の劣化が防止され、有用成分(精油等)を高品質で回収することができる。そのため、例えば、熱劣化を生じ易い柑橘類の有用成分(精油等)を抽出する場合において有効性が高い装置となる。
また、ボルト及び固定枠にマイクロ波が集中することがなくなるため、マイクロ波がロス無くタンク内へ進入し、抽出のためにマイクロ波が有効的に作用し、抽出コストを削減することができる。
また、タンクと導波管との接続部の構造を簡素化することができる(ボルトや固定枠を省略できる)ため、抽出終了後のタンクの洗浄性にも優れている。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、導波管はタンクと接続される端部にフランジが形成されており、フランジはタンクに対してのみボルト止めされており、マイクロ波透過材はタンクの外面側においてフランジに当接していることから、マイクロ波透過材にボルトを挿通せずにフランジで押さえるのみで確実に固定することが可能となる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、減圧ポンプの駆動により、タンクに設けられた通気穴を介してタンク内に外気又は不活性ガスを流入させることが可能であるため、コンデンサへと有用成分を導くためのキャリアーとして外気又は不活性ガスを利用することができ、有用成分の回収効率を高めることが可能となる。また、減圧ポンプの出力を小さくしても、外気又は不活性ガスを利用することで有用成分をコンデンサへと運ぶことができるため、一般的に減圧を行わない針葉樹からの精油等の有用成分抽出等の高温加熱を必要とするバイオマスからの抽出処理においても、有用成分の回収効率を高めることが可能となる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、通気穴に接続された気体取入経路に、通気穴からタンクへの外気又は不活性ガスの流入を許容又は遮断するためのバルブが取り付けられていることから、バルブを開閉することにより、有用成分の抽出時にタンク内に外気又は不活性ガスを流入させる場合と流入させない場合とを使い分けることができる。従って、減圧が不要な高温抽出時にはバルブを開放し、減圧が必要な低温抽出時にはバルブを閉鎖することにより、抽出条件の異なる様々な処理対象物への適用が可能となり汎用性に優れた装置となる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、タンク及び、タンクから蒸発した処理対象物の蒸気をコンデンサへと導く配管が、外殻部材により外面が被覆された二重構造となっており、外殻部材とタンク及び前記配管の外面との間に形成された空間が減圧ポンプと接続されていることから、減圧ポンプを駆動させて前記空間を真空状態とすることができる。これにより、タンク及び前記配管が魔法瓶のような断熱構造を有することとなり、有用成分の抽出時における結露による回収ロスを低減することが可能となる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、タンク及び、タンクから蒸発した処理対象物の蒸気をコンデンサへと導く配管が、外面に断熱材又はヒータが取り付けられていることから、有用成分の抽出時における結露による回収ロスを低減することが可能となる。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、攪拌翼が正転及び逆転が可能に制御されることから、攪拌翼に付着したバイオマスの焦げ付きを防止することができ、粘度の高いバイオマスであっても有用成分を劣化させることなく抽出することが可能となる。
【0025】
請求項8に係る発明によれば、回収器に回収された液体の一部をコンデンサの上部へと還流する還流機構を備えており、コンデンサの上部にはコンデンサの内面に対して液体を噴射する噴射ノズルが設けられており、噴射ノズルは還流機構により還流された液体を噴射することから、コンデンサ内部に付着した有用成分を凝縮水(還流された液体)で洗い流して回収することができ、回収効率を高めることができる。またコンデンサ内部の洗浄も行うことが可能となる。
【0026】
請求項9に係る発明によれば、還流機構が、回収器の下方部分とコンデンサの上部とを接続する還流路と、該還流路に設けられた還流ポンプからなるため、回収器内に精油等の有用成分と凝縮水を回収した時に比重の大きい凝縮水のみをコンデンサの上部へと還流させることが可能となる。
また、還流路の中途部にはバルブが設けられており、該バルブより上流側には分岐路が形成されており、分岐路は、中途部にバルブが設けられ、端部はタンクに接続されていることから、還流路に設けたバルブと分岐路に設けたバルブの開閉を切り換えることにより、回収器に回収された液体(凝縮水)の一部を、コンデンサの上部に還流させるかタンク内へと戻すかを選択的に切り換えることが可能となる。
また、回収器に回収された液体(凝縮水)の一部を分岐路を介してタンク内へと還流させることにより、加熱された処理対象物がタンク内面や攪拌翼等に付着することが防がれ、処理対象物の焦げ付きが防止されるとともに、タンク内の蒸留環境が一定化される。また、還流ポンプによってタンク内への還流量を制御することにより、このような焦げ付き防止と蒸留環境の一定化を確実に達成することができる。
【0027】
請求項10に係る発明によれば、還流機構が、回収器の下方部分とコンデンサの上部とを接続する還流路と、該還流路に設けられた還流ポンプからなるため、回収器内に精油等の有用成分と凝縮水を回収した時に比重の大きい凝縮水のみをコンデンサの上部へと還流させることが可能となる。
また、回収器に回収された液体の一部をタンク内へと還流するための第二還流路を備えており、第二還流路は、回収器の下方部分とタンクとを接続しており、その中途部に還流ポンプ及びバルブを備えていることから、回収器に回収された液体(凝縮水)の一部を、コンデンサの上部及びタンク内に流量を調整しながら同時に還流することが可能となる。
また、回収器に回収された液体(凝縮水)の一部を第二還流路を介してタンク内へと還流させることにより、加熱された処理対象物がタンク内面や攪拌翼等に付着することが防がれ、処理対象物の焦げ付きが防止されるとともに、タンク内の蒸留環境が一定化される。また、還流ポンプによってタンク内への還流量を制御することにより、このような焦げ付き防止と蒸留環境の一定化を確実に達成することができる。
【0028】
請求項11に係る発明によれば、タンクから蒸発した処理対象物の蒸気をコンデンサへと導く配管の中途部にバルブが設けられていることから、処理対象物と溶剤(アルコール等)をタンクに投入してバルブを閉鎖することにより、マイクロ波による加熱で処理対象物から抽出した有用成分を液相(溶剤)に溶出(分離)させることができ、通常加熱(バルブが無い状態での加熱)より抽出時間を大幅に短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置の好適な実施形態を示す全体構成図である。
【図2】本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置のタンクと導波管との接続部を示す拡大断面図である。
【図3】本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置の第二実施形態を示す全体構成図である。
【図4】本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置の第三実施形態を示す全体構成図である。
【図5】本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置の第四実施形態を示す全体構成図である。
【図6】従来のマイクロ波を利用した抽出装置のタンクと導波管との接続部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置の好適な実施形態(第一実施形態)を示す全体構成図である。
本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置は、処理対象物が収容されるタンク(1)と、マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置(2)と、マイクロ波発生装置(2)により発生したマイクロ波をタンク(1)内に導く導波管(3)と、マイクロ波による加熱によりタンク(1)から蒸発した処理対象物中の成分を凝縮するコンデンサ(4)と、コンデンサ(4)により凝縮された液体を回収する回収器(5)とを備えている。
【0031】
本発明における処理対象物としては、例えば、草、木、果実、果皮、樹皮、おがくず、もみ殻、稲藁、バガス、ヤシ殻等の植物系バイオマス、家畜糞尿等の動物系バイオマス、食品残渣や家庭ごみ等の産業系バイオマス等が挙げられる。具体的な処理対象物の一例としては、蜜柑(Citrus unshiu)やオレンジ(Citrus sinensis)等の柑橘類の搾汁残渣の果皮を例示することができる。
これらの処理対象物は、単独でもしくは抽出溶媒と共にタンク(1)内に収容される。
抽出溶媒としては、処理対象物に応じて適当なものを選択すればよく特に限定されないが、例えば水、メタノールやエタノール等のアルコール類、エーテル類、ヘキサン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等を例示することができる。一般に、マイクロ波抽出の場合は抽出能力に優れており、比較的に処理対象物単独で抽出可能な例が多いが、抽出溶媒の中では水が安全且つ安価であるために好適に用いられる。
【0032】
タンク(1)は処理対象物が収容される容器であって、処理対象物を攪拌するための攪拌装置を備えている。攪拌装置は、タンク内底部の中心に配設された攪拌翼(6)と、タンク外底部に配設されたモータ(7)とから構成されており、モータ(7)の駆動により攪拌翼(6)が垂直軸周りに回転する。
モータ(7)は図示しない制御装置により、その回転軸が正方向及び逆方向への回転が可能に制御されている。これにより、攪拌翼(6)はタンク内部において正転及び逆転することが可能となっている。
【0033】
タンク(1)の底部には、マイクロ波発生装置(2)により発生したマイクロ波をタンク(1)内に導く導波管(3)が接続されている。導波管(3)の数は1本でもよいが、複数本をタンク底部の中心を挟んだ複数個所(図示例では2箇所)に接続すると、タンク(1)内部の処理対象物に対して均等にマイクロ波を照射することが可能となるため好ましい。導波管(3)を複数本とする場合、各導波管にマイクロ波発生装置(2)を接続してもよいし、1つのマイクロ波発生装置(2)からの導波管を複数本に分岐してもよい。
【0034】
マイクロ波発生装置(2)としてはマグネトロンが好適に使用されるが、処理対象物等に応じて、ジャイロトロン、クライストロン、進行波管等の電子管を利用した発振機、水晶振動子等の固有振動を増幅するソリッドステート式発振機等のその他の公知のマイクロ波発生装置を使用することも可能である。
【0035】
図2は、タンク(1)と導波管(3)との接続部を示す拡大図である。図中の矢印はマイクロ波の流れを示している。
タンク(1)は、導波管(3)の接続部にマイクロ波を透過するマイクロ波透過材(8)を備えている。
マイクロ波透過材(8)は、マイクロ波が透過可能な誘電体(例えばPTFE等の樹脂類、石英やアルミナ等のセラミック類、ガラス類等)から形成されており、導波管(3)に導入されたマイクロ波はマイクロ波透過材(8)を透過してタンク(1)内へと導かれ、タンク内の処理対象物を加熱する。
マイクロ波透過材(8)は、タンク(1)の内面から外面に向かうにつれて大径となる円錐台形状をなしている。タンク(1)の底部には、タンクの内面から外面に向かうにつれて大径となる円錐台形状をなす取付穴(9)が形成されており、この取付穴(9)にマイクロ波透過材(8)が嵌合されている。
【0036】
導波管(3)の端部にはフランジ(31)が形成されている。フランジ(31)の外径はマイクロ波透過材(8)の大径部(下端部)の外径よりも大きく、フランジ(31)の内径(導波管の内径)はマイクロ波透過材(8)の小径部(上端部)の外径よりも小さく設定されている。
フランジ(31)は、マイクロ波透過材(8)の大径部より外側(外周側)に貫通孔を有しており、この貫通孔に挿通されたボルト(10)が、タンク(1)の底部の取付穴(9)より外側(外周側)に形成されたねじ孔に螺合されている。これにより、導波管(3)の端部がタンク(1)の底部に対して固定(ボルト止め)されている。尚、ボルト止めは、導波管を中心として少なくとも3箇所以上、好ましくは4箇所以上で行われる。
フランジ(31)の端面(上面)にはOリング(11)が装着されている。Oリング(11)は、上記ボルト止めによりマイクロ波透過材(8)の下面に密接されている。
【0037】
上記したように、マイクロ波透過材(8)が、タンク(1)の内面から外面に向かうにつれて大径となる円錐台形状をなしていることにより、導波管(3)のフランジ(31)とタンク(1)の底部を固定(ボルト止め)するだけで、マイクロ波透過材(8)がタンクの底部から脱落することが防がれる。つまり、従来の装置(図6参照)のように、導波管のフランジとマイクロ波透過材とその固定枠を固定(ボルト止め)する必要がない。
そのため、従来の装置のように、導波管から導かれるマイクロ波がボルト及びマイクロ波透過材が取り付けられる固定枠の端部に集中することによる異常昇温が生じることがなく、バイオマス中に含まれる有用成分の劣化が防止され、更にはマイクロ波のロスも無く、高品質の精油等の有用成分を低コストで回収することができる。
また、タンク(1)と導波管(3)との接続部の構造を簡素化することができる(ボルト及び固定枠を省略することができる)ため、抽出終了後のタンク(1)の洗浄性にも優れたものとなる。
【0038】
タンク(1)は、その側面に1つ又は複数の通気穴(12)を有している。
通気穴(12)はタンク(1)内に外気(空気)又は不活性ガスを取り入れるための小孔であって、後述する減圧ポンプの駆動により、通気穴(12)を介してタンク(1)内に外気又は不活性ガスを流入させることが可能となっている。不活性ガスとしては、窒素やアルゴン等が好適に用いられる。
通気穴(12)を介してタンク(1)内に流入した外気又は不活性ガスは、コンデンサ(4)へと回収すべき有用成分を導くためのキャリアーとして作用する。これにより、タンク(1)内に収容された処理対象物から発生(蒸発)する有用成分がコンデンサに到達する前に熱量を失ってタンク上部又はコンデンサ入口迄の配管内で結露となって配管等に付着することにより回収効率が低下するという問題を解決することができ、有用成分の回収効率を高めることが可能となる。
【0039】
通気穴(12)に接続された気体取入経路(22)には、通気穴(12)からタンク(1)への外気又は不活性ガスの流入を許容又は遮断するためのバルブ(23)が取り付けられている。尚、通気穴(12)から不活性ガスを流入させる場合には、気体取入経路(22)には、不活性ガスを収容したボンベ(図示略)がバルブ(23)を介して接続される。
バルブ(23)を開閉することにより、抽出時にタンク(1)内に外気又は不活性ガスを流入させる場合と流入させない場合とを使い分けることができる。
従って、減圧が不要な高温(約90〜100℃)での抽出時にはバルブ(23)を開放し、減圧が必要な低温(約40〜60℃)での抽出時にはバルブ(23)を閉鎖する。
これにより、高温抽出時(例えば、処理対象物がスギやヒノキ等の針葉樹の葉や生姜の根茎等である場合)と、低温抽出時(例えば、処理対象物が柚子、文旦、スダチ等の柑橘類の果皮である場合)のいずれにも対応することが可能となり、1つの装置で様々な処理対象物への適用が可能な汎用性に優れた装置となる。
【0040】
本発明においては、タンク(1)の内面を鏡面仕上げする構成や、タンク(1)の外面に断熱材を装着する構成も好適に採用することができる。これらの構成を採用することにより、処理対象物の加熱効率を向上させることが可能となる。
【0041】
タンク(1)の上部を密閉する上蓋には、マイクロ波照射によりタンク(1)内にて加熱されて蒸発した処理対象物中の有用成分を含む蒸気(有用成分含有蒸気)をタンク外へと取り出して、コンデンサ(4)へと導くための配管(13)の一端部が接続されている。配管(13)の他端部は、コンデンサ(4)の上方部分に接続されている。
タンク(1)から蒸発した有用成分含有蒸気をコンデンサ(4)へと導く配管(13)の中途部にはバルブ(36)が設けられている。
【0042】
コンデンサ(4)には冷却機(14)が接続されている。
コンデンサ(4)内を流れる水及び不凍液等の冷媒は、一旦外部へと取り出されて冷却機(14)により冷却されてから再度コンデンサ(4)内に戻される。
配管(13)を通って上方部分からコンデンサ(4)内に供給された有用成分含有蒸気は流下する過程で、冷却機(14)から供給される冷媒により冷却されて液化し、コンデンサ(4)の底部に連結された回収器(5)内に回収される。
回収器(5)内において、回収された液体は比重により分離し、上層部(A)に精油等の有用成分、下層部(B)に芳香蒸留水等の凝縮水が溜まる。
【0043】
回収器(5)の上方部分(液体が溜まる部分より上方部分)には、減圧ポンプ(15)が接続されている。
減圧ポンプ(15)を駆動すると、コンデンサ(4)及び配管(13)を介してタンク(1)内が減圧される。このとき、バルブ(23)が開放状態にあると、通気穴(12)からタンク(1)内に外気又は不活性ガスが流入する。タンク(1)内に流入した外気又は不活性ガスは、タンク(1)内にて発生した有用成分含有蒸気をコンデンサ(4)へと導くためのキャリアーとして作用する。
【0044】
減圧ポンプ(15)の出力(減圧度)は、処理対象物の種類に応じて変更することができる。
本発明においては、タンク(1)に通気穴(12)が設けられているため、バルブ(23)の開放状態において有効成分の抽出処理中の減圧ポンプ(15)の出力を小さくすることができる。具体的には、減圧ポンプ(15)の出力(減圧度)を−20〜0kPa程度に絞ることができる。これにより、一般的に減圧を行わない高温加熱を必要とするバイオマスからの抽出処理(例えば針葉樹からの精油等の有用成分抽出等)においても有用成分の回収効率を高めることが可能となる。
【0045】
回収器(5)の下方部分(液体が溜まる部分の下層部)には、回収器(5)に回収された液体の一部をコンデンサ(4)の上部(上流側)へと還流する還流路(16)が接続されている。
還流路(16)の中途部には還流ポンプ(17)が設けられている。
還流路(16)及び還流ポンプ(17)は、還流ポンプ(17)の駆動によって回収器(5)に回収された液体(凝縮水)の一部を、還流路(16)を通してコンデンサ(4)の上部(上流側)へと還流するための還流機構を構成している。
【0046】
コンデンサ(4)の上部(塔頂部)には、コンデンサ(4)の内面に対して液体を噴射する噴射ノズル(18)が設けられている。
回収器(5)に回収された凝縮水は、還流ポンプ(17)の駆動により還流路(16)を通ってコンデンサ(4)の上部へと運ばれ、噴射ノズル(18)からコンデンサ(4)の内面に対して噴射される。
これにより、コンデンサ(4)内部に付着した有用成分を凝縮水で洗い流して回収することができ、回収効率を高めることができる。また、コンデンサ内部の洗浄も行うことが可能となる。
【0047】
還流路(16)の中途部にはバルブ(19)が設けられており、バルブ(19)より上流側(還流ポンプ(17)側)には分岐路(20)が形成されている。
分岐路(20)の中途部にはバルブ(21)が設けられており、分岐路(20)の端部はタンク(1)の上蓋に接続されている。
バルブ(19)を閉じてバルブ(21)を開いた状態で、還流ポンプ(17)を駆動させると、回収器(5)に回収された液体(凝縮水)の一部は還流路(16)の中途部から分岐路(20)を通ってタンク(1)内へと戻される。
一方、バルブ(21)を閉じてバルブ(19)を開いた状態で、還流ポンプ(17)を駆動させると、上述した通り、回収器(5)に回収された液体(凝縮水)の一部は還流路(16)を通ってコンデンサ(4)の上部(上流側)へと還流される。
【0048】
図3は、本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置の第二実施形態を示す全体構成図である。
以下、第二実施形態の抽出装置が上記第一実施形態の抽出装置と異なる点について説明する。
第二実施形態の抽出装置では、タンク(1)は外殻部材(24)により外面全体が被覆された二重構造となっている。また、タンク(1)から蒸発した処理対象物の蒸気をコンデンサ(4)へと導く配管(13)も、外殻部材(25)により外面全体が被覆された二重構造となっている。
タンク(1)の外面と外殻部材(24)との間には空間(26)が形成されている。また、配管(13)の外面と外殻部材(24)との間には空間(27)が形成されている。これら2つの空間(26)と空間(27)は独立している。
空間(26)及び空間(27)は、夫々別の配管(28)(29)を介して減圧ポンプ(15)と接続されている。配管(28)(29)の中途部には夫々バルブ(30)(31)が設けられている。
【0049】
バルブ(30)(31)を開放して減圧ポンプ(15)を駆動させると、配管(28)(29)を介して空間(26)及び空間(27)内の空気が吸引され、空間(26)及び空間(27)内を真空状態とすることができる。
これにより、タンク(1)及び配管(13)が魔法瓶のような優れた断熱構造を有することとなる。そのため、有用成分が加熱抽出される時にタンク(1)から配管(13)を通ってコンデンサ(4)に達するまでに結露することが防止され、有用成分の回収ロスを大幅に低減することが可能となる。
【0050】
図4は、本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置の第三実施形態を示す全体構成図である。
以下、第三実施形態の抽出装置が上記第一実施形態の抽出装置と異なる点について説明する。
第三実施形態の抽出装置では、タンク(1)の外面及び配管(13)の外面が断熱材(32)により被覆されている。
このように断熱材を取り付けることにより、タンク(1)及び配管(13)が優れた断熱構造を有することとなる。そのため、有用成分が加熱抽出される時にタンク(1)から配管(13)を通ってコンデンサ(4)に達するまでに結露することが防止され、有用成分の回収ロスを大幅に低減することが可能となる。
また、第三実施形態の抽出装置において、タンク(1)の外面及び配管(13)の外面にヒータ(図示略)を取り付けてもよい。この場合、ヒータによりタンク(1)及び配管(13)を加熱することで、有用成分が加熱抽出される時にタンク(1)から配管(13)を通ってコンデンサ(4)に達するまでに結露することが防止され、有用成分の回収ロスを大幅に低減することが可能となる。
【0051】
図5は、本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置の第四実施形態を示す全体構成図である。
以下、第四実施形態の抽出装置が上記第一実施形態の抽出装置と異なる点について説明する。
第四実施形態の抽出装置は、回収器(5)に回収された液体の一部をタンク(1)内へと還流するための第二還流路(33)を備えている。
第二還流路(33)は、回収器(5)の下方部分(液体が溜まる部分の下層部)とタンク(1)とを接続している。還流路(16)には分岐路(20)が形成されておらず、第二還流路(33)と還流路(16)とは独立している。
第二還流路(33)の中途部には、還流ポンプ(34)及びバルブ(35)が設けられている。
このように、還流路(16)と独立した別系統の第二還流路(33)が設けられていることにより、回収器(5)に回収された液体(凝縮水)の一部を、コンデンサ(4)の上部とタンク(1)内の両方に、バルブ(19)(35)により夫々流量を調整しながら同時に還流することが可能となる。
【0052】
以下、本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置を使用した抽出方法について説明する。
先ず、タンク(1)内に処理対象物(バイオマス等)と必要に応じて抽出溶媒(水等)を収容する。そして、攪拌翼(6)を回転させて処理対象物を攪拌しながら、マイクロ波発生装置(2)にて発生させたマイクロ波を、導波管(3)からマイクロ波透過材(8)を通過させてタンク(1)内に導入する。これにより、タンク(1)内の処理対象物がマイクロ波により加熱される。
【0053】
タンク(1)内の処理対象物がマイクロ波により加熱されると、処理対象物から蒸発した有用成分(精油等)を含む蒸気(有用成分含有蒸気)は、配管(13)を通ってコンデンサ(4)へと導かれ、冷却機(14)から供給される冷媒により冷却されて液化し、回収器(5)内に回収される。回収器(5)内において、回収された液体は比重により分離し、上層部に精油等の有用成分、下層部に芳香蒸留水等の凝縮水が溜まる。
【0054】
上記した加熱工程において、高温抽出時にはバルブ(23)を開放して減圧ポンプ(15)を駆動させることにより、タンク(1)の通気穴(12)から外気又は不活性ガスが流入する。この外気又は不活性ガスが、タンク(1)内にて発生した有用成分含有蒸気を運ぶキャリアーとして機能することにより、有用成分含有蒸気が途中で結露して配管等に付着することなく円滑にコンデンサ(4)へと導かれる。尚、低温抽出時には、バルブ(23)を閉鎖して減圧ポンプ(15)を駆動させることにより、タンク(1)内を減圧する。
【0055】
また、上記した加熱工程において、処理対象物と溶剤(アルコール等)をタンク(1)に投入してバルブ(13)及びバルブ(21)を閉鎖することにより、マイクロ波による加熱で処理対象物から抽出した有用成分を液相(溶剤)に溶出(分離)させることができ、通常加熱より抽出時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0056】
回収器(5)への有用成分の回収が終了すると、還流ポンプ(17)を駆動することにより、回収器(5)に回収された凝縮水の一部を噴射ノズル(18)からコンデンサ(4)の内面に対して噴射することにより、コンデンサ(4)内部に付着した有用成分を凝縮水で洗い流して回収器(5)に回収する。
【実施例】
【0057】
以下、本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置の実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例により何ら限定されない。
【0058】
<1.実験装置>
図1及び図2に示す構造を有する抽出装置を使用し、容量10Lのタンク(1)内に処理対象物2kgを収容し、抽出溶媒は使用しなかった。マイクロ波発生装置(2)として、出力0〜1.5kWの装置(ミクロ電子株式会社製)を使用した。
【0059】
<2.精油の抽出>
処理対象物として、柑橘類(柚子(果皮)、土佐文旦(果皮)、小夏(果皮)、スダチ(果皮)、ポンカン(果皮))、針葉樹(ヒノキ(葉)、スギ(葉))、その他(生姜(根茎))を夫々使用し、有用成分としての精油の抽出を行った。
処理対象物が柑橘類の場合、マイクロ波発生装置(2)として上記装置を周波数2.45GHzで使用し、加熱時にバルブ(23)を閉鎖して減圧ポンプ(15)を駆動してタンク(1)内を減圧状態(−82〜−94kPa)とした。処理対象物が針葉樹及び生姜の場合、加熱時にバルブ(23)を開放して減圧ポンプ(15)を駆動してタンク(1)の通気穴(12)から外気を流入させた。その他の抽出条件及び結果を表1に示す。また、夫々の柑橘類から抽出された精油の成分をガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)により分析した結果を表2〜表6に示す。
【0060】
【表1】


【0061】
【表2】


【0062】
【表3】


【0063】
【表4】


【0064】
【表5】


【0065】
【表6】


【0066】
<3.芳香蒸留水の抽出>
処理対象物として、スイカ(果皮)及びメロン(果皮)を使用し、芳香蒸留水の抽出を行った。
マイクロ波発生装置(2)として上記装置を周波数2.45GHzで使用し、加熱時にバルブ(23)を閉鎖して減圧ポンプ(15)を駆動してタンク(1)内を減圧状態(−94kPa)とした。その他の抽出条件及び結果を表7に示す。
【0067】
【表7】


【0068】
上記実施例より、本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置によれば、様々な種類の処理対象物から精油等の有用成分を劣化させることなく効率良く抽出することが可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係るマイクロ波を利用した抽出装置は、バイオマスからの精油等の有用成分抽出、果汁濃縮、薬品濃縮等の用途に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 タンク
2 マイクロ波発生装置
3 導波管
4 コンデンサ
5 回収器
6 攪拌翼
8 マイクロ波透過材
12 通気穴
13 タンクから蒸発した処理対象物の蒸気をコンデンサへと導く配管
16 還流路(還流機構)
17 還流ポンプ(還流機構)
18 噴射ノズル
19 バルブ
20 分岐路
21 バルブ
22 気体取入経路
24 タンクの外殻部材
25 配管の外殻部材
26 タンクの外面と外殻部材との間に形成された空間
27 配管の外面と外殻部材との間に形成された空間
32 断熱材
33 第二還流路
34 還流ポンプ
35 バルブ
36 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物が収容されるタンクと、
マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置と、
前記マイクロ波発生装置により発生したマイクロ波を前記タンク内に導く導波管と、
前記マイクロ波による加熱により前記タンクから蒸発した前記処理対象物の蒸気を凝縮するコンデンサと、
前記コンデンサにより凝縮された液体を回収する回収器とを備えており、
前記タンクは、前記導波管の接続部にマイクロ波を透過するマイクロ波透過材を備えており、
前記マイクロ波透過材は、前記タンクの内面から外面に向かうにつれて大径となる円錐台形状をなしていることを特徴とするマイクロ波を利用した抽出装置。
【請求項2】
前記導波管は、前記タンクと接続される端部にフランジが形成されており、
前記フランジは、前記タンクに対してのみボルト止めされており、
前記マイクロ波透過材は、前記タンクの外面側において前記フランジに当接していることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波を利用した抽出装置。
【請求項3】
前記タンク内を減圧することができる減圧ポンプを備えており、
前記タンクは、該タンク内に外気又は不活性ガスを取り入れるための通気穴を有しており、
前記減圧ポンプの駆動により、前記通気穴を介して前記タンク内に外気又は不活性ガスを流入させることが可能であることを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロ波を利用した抽出装置。
【請求項4】
前記通気穴に接続された気体取入経路に、前記通気穴から前記タンクへの外気又は不活性ガスの流入を許容又は遮断するためのバルブが取り付けられていることを特徴とする請求項3記載のマイクロ波を利用した抽出装置。
【請求項5】
前記タンク及び、前記タンクから蒸発した前記処理対象物の蒸気を前記コンデンサへと導く配管は、外殻部材により外面が被覆された二重構造となっており、
前記外殻部材と、前記タンク及び前記配管の外面との間に形成された空間は、前記減圧ポンプと接続されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のマイクロ波を利用した抽出装置。
【請求項6】
前記タンク及び、前記タンクから蒸発した前記処理対象物の蒸気を前記コンデンサへと導く配管は、外面に断熱材又はヒータが取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のマイクロ波を利用した抽出装置。
【請求項7】
前記タンクの内部には該タンク内の処理対象物を攪拌する攪拌翼が設けられており、
前記攪拌翼は、正転及び逆転が可能に制御されることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載のマイクロ波を利用した抽出装置。
【請求項8】
前記回収器に回収された液体の一部を前記コンデンサの上部へと還流するための還流機構を備えており、
前記コンデンサの上部には、前記コンデンサの内面に対して液体を噴射する噴射ノズルが設けられており、
前記噴射ノズルは、前記還流機構により還流された液体を噴射することを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載のマイクロ波を利用した抽出装置。
【請求項9】
前記還流機構は、前記回収器の下方部分と前記コンデンサの上部とを接続する還流路と、該還流路に設けられた還流ポンプからなり、
前記還流路の中途部にはバルブが設けられており、該バルブより上流側には分岐路が形成されており、
前記分岐路は、中途部にバルブが設けられ、端部は前記タンクに接続されていることを特徴とする請求項8記載のマイクロ波を利用した抽出装置。
【請求項10】
前記還流機構は、前記回収器の下方部分と前記コンデンサの上部とを接続する還流路と、該還流路に設けられた還流ポンプからなり、
前記回収器に回収された液体の一部を前記タンク内へと還流するための第二還流路を備えており、
前記第二還流路は、前記回収器の下方部分と前記タンクとを接続しており、その中途部に還流ポンプ及びバルブを備えていることを特徴とする請求項8記載のマイクロ波を利用した抽出装置。
【請求項11】
前記タンクから蒸発した前記処理対象物の蒸気を前記コンデンサへと導く配管の中途部にバルブが設けられていることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載のマイクロ波を利用した抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−30167(P2012−30167A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170973(P2010−170973)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【特許番号】特許第4849578号(P4849578)
【特許公報発行日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(000165343)兼松エンジニアリング株式会社 (23)
【出願人】(591039425)高知県 (51)
【Fターム(参考)】