説明

マイクロ波アシスト化学反応中のリアルタイム画像化およびスペクトロスコピー

マイクロ波アシスト化学反応を実施する機器と関連する方法が開示される。機器は、マイクロ波システム化学反応を実施するためのマイクロ波キャビティ、好ましくは閉じたマイクロ波キャビティと、マイクロ波放射をキャビティ内部で、容器とその内容物とに印加するソースとを含む。機器は、容器とその内容物とを照明する照明光源を含むとともに、容器とその内容物とを視覚的に観察する手段と、容器とその内容物の温度をモニタリングする赤外線検出器と、照明光源が赤外線検出器を飽和させるのを防ぎ、これにより視覚的観察と赤外線モニタリングとを可能にする手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、マイクロ波アシスト化学技術の分野に関し、特にマイクロ波アシスト化学反応をモニタリングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波アシスト化学技術は、概ね学術および商業分野において既に確立されている。マイクロ波は特定の物質を加熱する(またはそうでなくそれにエネルギーを供給する)上でいくつかの大きな利点を持つ。特に、マイクロ波が、それが結合できる物質、最も典型的には極性分子またはイオン種と相互作用する場合、マイクロ波は大量の運動エネルギーをそのような種の中に迅速に作り出すことができ、これにより様々な化学反応を引き起こすまたは促進するのに十分なエネルギーを提供できる。マイクロ波は瞬間的に所望の種と反応できるため、周囲のものが加熱される必要がない点で、マイクロ波は伝導加熱に関する利点も持つ。
【0003】
用語「マイクロ波」は、約1ミリメートル(1mm)から1メートル(1m)の間の波長を持つ、約300から300,000メガヘルツ(MHz)の間の電磁スペクトルの部分を意味する。これらは勿論任意の境界であるが、赤外線(IR)放射の周波数より下で、無線周波数と呼ばれるものより上になることから、マイクロ波を定量化する上で助けとなる。同様に、周波数と波長との間でのうまく確立された逆相関が与えられると、マイクロ波は赤外線よりも長い波長を持つが、無線周波数波長より短い波長を持つ。
【0004】
その波長とエネルギーのため、比較的大量のサンプル量での強い反応、または反応、または両方を行う上で、マイクロ波は歴史的に最も有用であった。別の言い方をすれば、大部分のマイクロ波の波長は、マイクロ波が印加されているキャビティ内で、多モード状態を作り出す傾向にある。多くの種類の化学反応において、このことはほとんど、または全く不都合をもたらさず、マイクロ波技術は、例えば分解または、乾燥減量含水率分析の反応のために商業的によく確立されている。
【0005】
しかしながら、比較的強い、多モードマイクロ波技術は、少量のサンプルの材料に適用された場合には、あまり成功しない傾向がある。一部の化学技術は化学的反応を拡大するという明らかな目的を持つが、多くの検査技術や研究技術においては、少量のサンプルで化学反応を行うことが必要、または好都合であることが多い。例えば、一部の化合物の有用性は、少量のサンプルに限定される可能性がある。他のケースでは、反応物質のコストが大きなサンプルサイズを妨げる可能性がある。組み合わせ化学など他の技術は、有意な量の情報を迅速に集めるために、多数の少量のサンプルを使用し、その後、結果を調整することにより、医薬品の好ましい候補、またはそれらの有用な前駆物質などの所望の解答を提供する。
【0006】
他の種類のマイクロ波アシスト技術(例えば、乾燥、分解など)に適した大きな多モードキャビティを持つマイクロ波装置は、キャビティ内の電力密度パターンが比較的不均一なため、一般的に少量の有機サンプルにあまり適さない。
【0007】
従って、マイクロ波アシスト化学反応に対するより焦点を絞った方法に対するニーズが、この目的のための装置の改良につながった。例えば、譲受人(CEM Corporation、3100 Smith Farm Road、Matthews、NC28106)のDISCOVER(登録商標)、EXPLORER(登録商標)、VOYAGER(登録商標)、NAVIGATORTM、LIBERTYTM、およびINVESTIGATORTM商標のもとで販売された市販の機器は、少量のサンプルや、化学合成などの高度な反応に適する、単一モードに焦点を絞ったマイクロ波装置を提供している。
【0008】
しかしながら、まさにそのような単一モード装置の成功は、関連する問題も生み出した。特に、単一モード装置によってもたらされた電力密度における改良は、少量のサンプルにおける有意な加熱を引き起こすことができるが、これは、一部の状況における望ましくない過熱を含んでいる。マイクロ波アシスト化学反応の温度をモニタリングする能力は、これらの困難を回避する助けとなる。
【0009】
温度変化をモニタリングする一つの技術は、赤外線(IR)温度モニタリングの使用によるものである。赤外線検出器は、容器またはその内容物から放出される赤外線放射をモニタリングし、また直接容器に接触することなしにそれを行える。従って、検出器は、キャビティの内部またはその近くのいずれかの位置に設置でき、これによりマイクロ波との干渉を避けられる。従来の温度計や温度プローブが主として局所化された領域に対する温度測定値を生成する傾向がある一方で、赤外線温度のモニタリングは、サンプル全体のより典型的な測定値を生成することもできる。
【0010】
さらに、赤外線放射は、前述のように、マイクロ波とは異なる波長を持つことから、検出器は、マイクロ波の加熱過程を妨げることなしに、放出された赤外線放射の温度を正確に測定でき、または逆もまた同じである。温度プローブや従来の温度計は、マイクロ波加熱に影響を受ける可能性があり、その結果として、サンプルに対する余分な熱の加熱、または不正確な温度の読み取りをもたらす。
【0011】
当業者には公知であるように、例えば色の変化または沈殿の存在を検出するために、有機反応は視覚的にモニタリングされることが多い。これらの物理的変化は、終了を含む反応の進行の指標となることが多く、反応の時間(速度)を決定する上で助けとなる。例えば、物理的変化の不足は、もっと時間が必要であることを示すことがある。逆に、予想よりも早く物理的変化が起こるということは、より速い反応時間を示す可能性がある。加熱の際の遅延した、または早期の反応を認識する能力は、反応を止めるか、または反応を継続するかによって、長い反応時間を持つ反応の反復の必要を回避して、化学者が時間を節約するのを可能にする。視覚的に有利に観察されるその他の物理的または化学的変化には、吸収、放出、光散乱、および濁度における変化が含まれる。
【0012】
進行中の反応における目に見える変化(またはその不足)を観察する能力は、望まない副反応を回避して、最適な反応条件、特に温度または温度範囲を評価して特定するための機会を提供することもできる。
【0013】
しかしながら、大部分の単一モードマイクロ波機器は閉じたキャビティを必要とし、故に直接的な反応の視覚的観察を困難にあるいは不可能にしている。さらに、マイクロ波キャビティは、電磁放射線の適切な波長を、伝達するよりむしろ内部で反射しなくてはならない。故に、可視放射に対して透明なキャビティの壁は、概ね(不都合にも)マイクロ波放射に対しても同様に透過である。透過型キャビティは、当然ながら、モードにかかわらずマイクロ波放射を内部で保持するものではない。
【0014】
独立した問題として、またたとえもしキャビティの壁または壁の一部分が(多くの家庭用台所電子レンジのスクリーンドアのように)いくらかの視界を提供するとしても、照明を提供する光源、例えば白熱灯、蛍光灯、およびその他の一般的な可視光源は、赤外線成分を含むことが多い。赤外線成分の存在は、赤外線温度検出器に干渉するか、飽和させる可能性があり、また概してそうなるもので、これによりその性能を低下させるか、無効にしてしまう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(概要)
別の局面では、本発明は、キャビティ内部で、キャビティ内の反応容器と反応容器内の反応物質とにマイクロ波放射を印加するステップを含む、マイクロ波アシスト化学反応を行う方法である。該方法は、同時に反応容器と反応物質とから放出される赤外線放射をモニタリングすることにより、容器内容物の温度を決定し、同時に、赤外線波長以外の波長で、反応物質を照明して視覚的にモニタリングするステップをさらに含む。
【0016】
さらに別の局面では、本発明は、マイクロ波アシスト化学反応を実施する器具である。該器具は、マイクロ波キャビティ内のマイクロ波透過型容器と、キャビティ内部で容器とその内容物にマイクロ波放射を印加するソースと、容器とその内容物とを照明する照明光源を含む。該器具は、さらに、容器とその内容物とを視覚的に観察する手段と、該容器またはその内容物の温度をモニタリングする赤外線検出器と、該照明光源が赤外線検出器を飽和させるのを防ぎ、これにより視覚的観察と赤外線モニタリングとを同時に行えるようにする手段とを含む。
【0017】
別の局面では、本発明は、反応物質をマイクロ波透過型容器内に入れるステップと、該容器とその内容物とをマイクロ波キャビティ内部に設置するステップとを含む、マイクロ波アシスト化学反応を行う方法である。該方法は、連続性単一モードのマイクロ波放射をキャビティ内部で、容器とその内容物に印加し、一方、同時に、反応物質から放出される赤外線放射をモニタリングすることにより容器内容物の温度を決定し、かつ反応物質を照明して視覚的にモニタリングすることにより反応の進行を決定するステップをさらに含む。さらに、該方法は、容器内の反応物質におけるモニタリングされた変化に応じてマイクロ波出力を調節するステップを含む。
【0018】
さらに別の局面では、本発明は、キャビティ内部で、該キャビティ内の反応容器と反応容器内の反応物質とに連続性単一モードのマイクロ波放射を印加するステップと、該反応容器と該反応物質から放出される赤外線放射を断続的にモニタリングすることにより、容器内容物の温度を決定するステップと、該反応物質を照明して視覚的にモニタリングするステップとを含む、マイクロ波アシスト化学反応を行う方法である。
【0019】
さらなる局面では、本発明は、マイクロ波透過型容器と、キャビティ内部で、容器とその内容物とに連続性単一モードのマイクロ波放射を印加するソースと、該容器とその内容物とを照明する照明光源とを含む、キャビティ内でマイクロ波アシスト化学反応を実施するための装置である。該装置は、該容器とその内容物とを視覚的に観察する手段と、該容器またはその内容物の温度をモニタリングする赤外線検出器と、該照明光源が該赤外線検出器を飽和させるのを防ぐ手段とをさらに含む。
【0020】
本発明の前述およびその他の態様と実施形態は、添付の図面とともに用いられる以下の詳細な説明に基づいてより明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、リアルタイムの温度および視覚モニタリングを含む、マイクロ波アシスト化学反応を実施する方法と器具である。リアルタイムの温度および視覚モニタリングは、反応速度および条件のより優れた制御を提供する。
【0022】
図1は、本発明の一つの局面の概略図である。この局面によれば、本発明はマイクロ波を使った化学反応を実施するための、概して10で示される機器である。機器10は、マイクロ波アシスト化学反応を実施するための、マイクロ波キャビティ12、好ましくは閉じたマイクロ波キャビティを含む。機器10は、キャビティ12内部で、容器16とその内容物とにマイクロ波放射を印加するための、ダイオード14として図示されているソースをさらに含む。機器10は、容器16とその内容物を照明する、可視波長で発光するランプ記号20で図示される照明光源とともに、容器16とその内容物を視覚的に観察する手段も含む。器具は、容器16とその内容物の温度をモニタリングする赤外線検出器22と、照明光源20が赤外線検出器22を飽和するのを防ぎ、これにより視覚的観察と赤外線モニタリングを同時に行えるようにする、フィルター21として図示される手段も含む。
【0023】
図1は、照明光源20、フィルター21、およびキャビティ12に進入する光ファイバー線23を、観察ポート26とその関連する光ファイバー27との位置とは独立して、かつレンズ28、カメラ32、または分光計34との潜在的な接続を、下記にさらに考察するという方法で、示している。
【0024】
当然ながら、図1はこれらの要素を明確にする目的で別々に図示するが、光源からキャビティへの照明波長を保つだけでなく、観察目的のための可視的なアクセスを提供するために、単一の光ファイバー線を使用できることが理解されるであろう。従って、図1は、本発明の本局面や他の局面を限定するものというよりは、説明的で例示的なものである。
【0025】
いくつかの実施形態では、機器10は、マイクロ波放射を所望の方向に向けるために、ソース14およびキャビティ12と通信する導波管24を含むことができる。
【0026】
別の実施形態では、ソース14は連続性単一モードのマイクロ波放射をキャビティ12内に伝播する。よく理解されている波動伝播の法則に従うマイクロ波の性質のため、単一モードの生成は、ほとんどの場合、ソース14によって生成される波長で単一モードを支持する形状を持つキャビティ12を設計することによって達成される。例えば、米国では、2450メガヘルツ(MHz)は、実験室でのマイクロ波の使用のために確保される規制された周波数(波長)の一つである。本明細書で用いられ、またこの分野において概ね周知であるように、用語「モード」は、キャビティ内部の、許容される(すなわち物理学の原理に関する)電磁場パターンを意味する。
【0027】
マイクロ波モードは通常TEn,l,m記号表示によって示され(TEは磁場)、この場合下付き文字が伝播方向のヌルの数を意味する。単一モードを支持し得るキャビティ12は当該技術分野で説明され、一般的にはマイクロ波とそれらの伝播に精通する者によって理解される。単一モードのマイクロ波放射を伝播するための典型的なキャビティ12は、米国特許第6,288,379号で説明される。しかし、本発明は単一モードの技術またはキャビティに限定されるものではない。
【0028】
本発明の他の局面と調和する適切なマイクロ波ソース14が使用され得る。典型的なソース、例えばマグネトロン、クライストロン、または、例えばガンダイオードなどの固体ソースを本発明で使用できる。典型的な実施形態では、連続性マイクロ波放射を印加することは、米国特許第6,288,379号で説明されるように電源をスイッチングする共振インバータを用いて達成される。故に、用語「連続性」は、絶対的な意義よりむしろ、説明的な意義で本明細書で用いられ、約60ヘルツより高い周波数でソースを駆動しながら、ソースからの放射を印加することを意味する。より好ましくは、約600ヘルツより高い周波数で、さらにより好ましくは約6000ヘルツより高い周波数で、最も好ましくは約10,000から約250,000ヘルツの間の周波数でソースは駆動される。’379の特許で説明されるように、これにより、50サイクル(ヨーロッパで一般的)または60サイクル交流(米国で標準的)で作動する従来の装置よりも、電力がより長い時間等しいレベルで印加されるようにすることができる。
【0029】
本発明の目的の一つは視覚的な情報を提供することであるので、典型的な実施形態では、照明光源20は可視照明光源である。好適な可視照明光源には、一つ以上のLED、光ファイバー、蛍光ライト、白熱ライト、広帯域光源、およびその他の当該技術分野で公知の可視光源が含まれる。用語「視覚的な」は、照明に関してそれが持つ普通の意味で本明細書で用いられ、すなわち、可視周波数は人間の目が正常に反応するものである。正確な境界は任意であるが、可視光線は、電磁スペクトルの赤外線部分と紫外線部分との間に収まるものとして機能的に説明される。数値として説明すると、それらは約400から700ナノメートルの間に収まる。
【0030】
図示される実施形態では、照明光源20は、キャビティ12に挿入される光ファイバーライトパイプ23を含む。
【0031】
容器16とその内容物を視覚的に観察するための手段は、カメラ(ビデオまたは静止画、フィルムに基づくもの、磁気メディア、またはデジタルメディア)32、分光光度計34、およびその他の当該技術分野で公知の視覚的観察手段から選択されてもよい。カメラ32または分光光度計34からの出力を表示するために、モニター36も使用されてもよい。典型的な実施形態では、キャビティ内部の好適な視野、例えば広角視野を提供するためにレンズ28が使用される。
【0032】
本発明は、カメラ32、分光光度計34、およびモニター36の一つ以上と信号通信するプロセッサ38をさらに含んでもよい。コネクター19(ソースに対するプロセッサ)、27(分光計に対するプロセッサ)、29(圧力トランスデューサーに対するプロセッサ)、30(温度モニターに対するプロセッサ)、および31(モニターに対するプロセッサ)は概略的にこれらの関係を図示する。プロセッサ38は、好ましくはカメラ32、分光光度計34、およびモニター36の一つ以上から受け取られるデータに応じて自動または手動のいずれかでマイクロ波ソース14を制御できる。好適な実施形態では、カメラ32、分光光度計34、およびコンピュータ36の一つ以上によって検出される既定のモニタリングされる変化に応じて、プロセッサはマイクロ波ソース14を制御する。
【0033】
プロセッサ38は、パーソナルコンピュータに一般的に使用される、広く利用可能で、周知のプロセッサ、例えばIntel(登録商標)(Santa Clara、CA)によるPentium(登録商標)シリーズなど、または例えばAMD(登録商標)(Sunnyvale、CA)などの他の供給元による機能的に同等なプロセッサから選択できる。一部のケースでは、市販のデスクトップまたはラップトップコンピュータは、所望の制御機能を実施するようにソフトウェアを用いてプログラムできる一方で、その他の環境では、同じ目的のために、前もってプログラムされた読み出し専用メモリ(ROM)との連携でプロセッサが使用され得る。いずれにせよ、当業者は、必要以上の実験を行うことなしに該当するプロセッサを入手して使用できる。制御回路および制御論理と、関連デバイスおよびシステムとに関する一般的な考察は、広く利用可能であり、ひとつの共通の情報源は、Dorfによる、The Electrical Engineering Handbook、第二版(1997、CRC Press)の1104〜1107ページ、43.6〜43.7セクションである。
【0034】
典型的な実施形態では、照明光源が赤外温度検出器22を飽和させるのを防ぐ手段は、照明光源20から放出される赤外線照射がキャビティ12に到達するのを防ぐ。一つの実施形態では、照明光源が赤外温度検出器22を飽和させるのを防ぐ手段は、照明光源20から放出される赤外線放射を除去するフィルター21である。好適なフィルター21は、赤外線放射(例えば、HOYATMガラス−HA−30、San Jose、California)をフィルタリングする、周知の市販の遮熱ガラスを含む。
【0035】
別の局面では、本発明は、マイクロ波放射をキャビティ内部でキャビティ内の反応容器および反応容器内の反応物質に印加し、一方同時に、反応容器と反応物質から放出される赤外線放射を同時にモニタリングすることにより容器内容物の温度を決定し、かつ同時に反応物質を、赤外線波長以外の波長で照明して視覚的にモニタリングする、マイクロ波アシスト化学反応を行う方法である。
【0036】
用語「容器」は本発明の機器と方法の局面の両方に関して本明細書で用いられるが、本発明は特定の大きさや形状の密封された、または密封されていない容器に限定されないことが理解されるであろう。さらに、用語、容器は、フロースルーシステムを含む、反応物質を取り扱うその他の物理的構成を含むことができる。
【0037】
温度は、好ましくはマイクロ波放射の印加と有効性を妨げない装置または方法を用いてモニタリングされる。故に、好適な実施形態では、温度モニタリングは赤外温度センサーを用いてオプションで行われる。赤外線センサーは、反応物質にエネルギーを供給するために適用されている周波数が赤外線以外である場合に特に有用である。なぜなら、赤外線センサーは容器またはその内容物から放出される放射物を測定し、容器と直接接触する必要がないためである。従って、マイクロ波放射を妨げない場所にそれを設置できる。そのような赤外線センサーの典型的な供給元にはLuxtron(登録商標)(Santa Clara、CA)、Ircon(登録商標)(Niles、IL)、およびLand Instruments International(Newtown、PA)が含まれる。
【0038】
別の実施形態では、方法はマイクロ波透過型容器内に反応物質を入れるステップを含み、場合によっては、しかし必ずしもそうではないが、これにはマイクロ波放射を印加する前に、密封できる耐圧容器に反応物質を入れるステップが含まれる。容器とその内容物は次にマイクロ波キャビティ内に設置され、同時に外部から容器を冷やしながら、マイクロ波放射、好ましくは連続性単一モードのマイクロ波放射がキャビティ内部で、容器とその内容物に印加される。
【0039】
方法はまた、マイクロ波透過型容器に反応物質を配置するためと、またマイクロ波キャビティに容器と内容物を配置するための両方のために、ロボットによる様々な運搬を用いるステップを含んでもよい。
【0040】
好適な実施形態では、マイクロ波キャビティ、好ましくは閉じたマイクロ波キャビティは、少なくとも電磁スペクトルの可視波長で発光する光源によって照明される。一つの実施形態では、照明ステップは、そうしなければ温度モニタリングステップを妨げることになる電磁スペクトルの赤外領域で放出された波長を除去するために、可視光源をフィルタリングするステップをさらに含む。赤外線波長をフィルタリングするための好適な方法には、赤外線波長を除去するために、ヒートガラス、例えばHOYATMガラス−HA−30、などを用いるステップが含まれる。
【0041】
異なる実施形態では、照明ステップは、電磁スペクトルの赤外領域で発光しない光源を用いる。例えば、白色発光LEDランプは、可視光線(赤、緑、青)の狭い範囲の組み合わせで発光し、電磁スペクトルの赤外領域で発光しない。そのようなランプは、これにより赤外温度検出器または測定への干渉を回避する。
【0042】
一つの典型的な実施形態では、マイクロ波キャビティの照明は、光ファイバーライトパイプを閉じたマイクロ波キャビティに挿入することによって達成されてもよい。キャビティ内部の広角視野を提供するために、レンズを用いるのが好ましいかもしれない。レンズは、視角を向上させるために、好ましくは照明光源、例えば光ファイバーライトパイプのキャビティ端上に設置されてもよい。
【0043】
別の実施形態では、本発明は反応を視覚的に記録するステップをさらに含む(例えば、ビデオまたは静止画記録、およびフィルムに基づいたもの、磁気メディアまたはデジタルメディア)。
【0044】
本発明は、観察される変化に応じてマイクロ波放射を、自動または手動のいずれかで加減する能力を提供する。マイクロ波放射は、モニタリングされる温度変化、視覚的に観察される変化、または両方に応じて加減されてもよい。さらに、既定のモニタリングされる変化に応じて、自動または手動のいずれかでマイクロ波放射を加減するのが好ましいかもしれない。
【0045】
その他のマイクロ波装置および技術と調和する方式で、機器10は、図1のライン43で概略的に示されるように、容器16と直接または間接的に圧力の伝わる圧力トランスデューサー42を含むこともできる。次には、トランスデューサー42はプロセッサ38と信号通信している。容器内の圧力に関する情報を提供するのに加えて、温度データと視覚的観察データについて既に説明したものと同様の方式で、マイクロ波の印加を加減するために、圧力測定は制御回路で使用できる。
【0046】
さらに別の実施形態では、方法は、視覚的にモニタリングされた出力を分光光度計に向けるステップを含んでもよい。分光光度計は、好ましくは反応物質における化学的変化、例えば吸収、放射、濁度、および沈殿、ならびに当業者に認識されるその他の化学的変化をモニタリングする。
【0047】
好適な局面では、本発明はマイクロ波アシスト化学反応を行う方法である。方法は、組成物、多くの場合は反応物質をマイクロ波透過型容器に入れるステップと、マイクロ波キャビティ内部に容器とその内容物を設置するステップと、連続性単一モードのマイクロ波放射をキャビティ内部で、容器とその内容物に印加するステップとを含む。方法は、反応物質から放出された赤外線放射を同時にモニタリングすることにより容器内容物の温度を決定し、一方で、反応物質を照明して視覚的にモニタリングすることにより、反応の進行を決定するとともに、容器内の反応物質にモニタリングされる変化に応じてマイクロ波出力を調整するステップをさらに含む。
【0048】
当然ながら、用語「反応物質」は本明細書で頻繁に用いられるが、方法は出発物質に限定されず、あらゆる適切な組成物に適用することができることが理解されるであろう。
【0049】
一つの実施形態では、マイクロ波出力は、容器内の反応物質でのモニタリングされた変化に応じて手動または自動のいずれかで調整されてもよい。さらに、温度センサーによってモニタリングされた変化に応じて、または視覚的にモニタリングされた変化に応じて、マイクロ波出力は調整されてもよい。視覚的にモニタリングされた変化の例には、吸収、放出、光散乱、濁度、固形分における変化、および当業者に認識されるその他の視覚的な反応変化が含まれる。一つの実施形態では、既定のモニタリングされた変化(例えば、反応が既定の温度に達する場合、または色の変化が起こる場合)に応じて、マイクロ波出力は手動または自動のいずれかで調整されてもよい。
【0050】
さらなる実施形態では、反応を視覚的にモニタリングするステップは、反応容器と反応容器内の反応物質とを可視光源で照明するステップを含む。照明ステップは、モニタリングされた赤外線波長を、例えば上述のようにフィルターまたはLEDとの相互作用によって生成された赤外線波長に限定することをさらに含む。
【0051】
図2は、本発明の代替的な実施形態の該当部分を図示する別の概略図であり、この実施形態では、照明光源20からの赤外線放射が赤外線温度測定を妨げるのを防ぐように変調器が組み込まれている。図2では、類似要素は類似参照番号を持つ。明確にする目的で図2は機器の一部分に限定されており、この機器は図1に関して説明される要素のいずれか、または全てを含むことができることが理解されるであろう。
【0052】
従って、図2は赤外線温度検出器22、照射ランプ20とともに、キャビティ12と容器16を図示する。ランプ20によって生成された赤外線波長が赤外線検出器22の測定に干渉するのを防ぐために、この実施形態では、機器は、キャビティ12と単一の光ファイバー接続45を通じて光通信している変調器44を含む。変調器44はまた、光ファイバー46を通じて赤外線検出器22と、また光ファイバー47を通じてランプ20と別々に光通信している。変調器44は周期的に(すなわち、時間ベースで)ランプ20からの放射をキャビティへ、または容器からの放射を赤外線検出器へのいずれかに向けるが、両方を同時に行うことは決してない。従って、変調器44を組み込む機器は、容器(とその内容物)によって生成された赤外線波長と、照明光源によってもたらされたそれとの間の干渉を除去するための赤外線ブロックフィルターを必要としない。
【0053】
可視周波数は実質的に赤外振動数によって影響されないため、カメラ32(またはその他の検出器)およびそれに関連する光ファイバー27は、変調システム中に含まれる必要がない。
【0054】
変調器44を、照明光源20が赤外線検出器22を飽和させるのを防ぐ手段として使用することは、キャビティ12での照明と非照明の断続的な期間を生ずる。非照明の期間の際は、赤外線温度検出器22は、照明光源20によって放出される赤外線放射からの干渉なしに、容器16とその内容物18から放出される赤外線放射を検出する。
【0055】
別の局面では、本発明は、連続性単一モードのマイクロ波放射を、キャビティ、好ましくは閉じたキャビティ内で、キャビティ内の反応容器と反応容器内の反応物質とに加えるステップを含む、マイクロ波アシスト化学反応を行う方法である。方法は、反応容器と反応物質とから放出された赤外線放射を断続的にモニタリングすることにより、容器内容物の温度を決定するステップと、反応物質を断続的に照明して視覚的にモニタリングするステップをさらに含む。
【0056】
方法は、マイクロ波放射を印加する前に、容器、好ましくは耐圧容器に反応物質を入れ、容器を密閉するステップも含んでもよい。マイクロ波放射を印加するステップは、前述のように連続性単一モードのマイクロ波放射を印加するステップを好ましくは含む。
【0057】
好適な実施形態では、反応物質を断続的に照明し視覚的にモニタリングするステップは、断続的な視覚的観察と赤外線温度モニタリングとを可能にするために、赤外線成分を含む光源を変調するステップを含む。光源は、当該技術分野で公知の技術によって変調されてもよく、この技術には、シャッター、フィルターホイール、スイッチ、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これに限定されない。
【0058】
一つの実施形態では、キャビティを照明するステップは、光ファイバーライトパイプを閉じたキャビティ内へ挿入するステップを含む。典型的な実施形態では、キャビティ内部の好適な視野、例えば広角視野を提供するためにレンズが使用される。
【0059】
方法は、前述のように、カメラを用いて反応を視覚的に記録するステップを好ましくはさらに含む。方法は、マイクロ波放射を観察された変化に応じて加減するステップと、モニタリングされる出力を分光光度計に向けることにより反応物質内の化学的変化を観察するステップとを含んでもよい。
【0060】
本発明の説明において、数多くの技術が開示されることが理解されるであろう。これらのそれぞれは、個々の利点を持ち、その他の開示される技術の一部と、または全てと併用してそれぞれを使用することもできる。従って、明確にする目的で、この説明は、不要な方法の個々のステップの可能な全ての組み合わせの繰り返しを控えている。それでもなお、そのような組み合わせは完全に本発明と特許請求の範囲内にあることを理解しながら、明細書と特許請求の範囲を読むべきである。
【0061】
別の局面では、本発明は、容器とその内容物の画像を機械可読フォーマット、最も典型的にはデジタルフォーマットに変換するステップと、フォーマットされた情報をプロセッサに転送するステップとを含む。プロセッサは、画像に基づいて反応を制御するように、前もって(ハードウェアまたはソフトウェアベースで)プログラムされている。制御機能は、画像入力単独に基づいて行われるか、またはその他の種類の入力と連携して行われ得る。マイクロ波アシスト化学反応では、最も典型的な、追加的な測定可能変数には、マイクロ波出力、反応または容器(または両方)の測定温度、容器内の反応によって生成される測定圧力が含まれる。制御回路を通じてマイクロ波出力の印加を加減することによって反応を制御するために、温度または圧力、または両方を使用することは、他の場所で考察されてきており、例えば、同一の譲受人による米国特許第6,866,408、米国特許第6,084,226号、米国特許第5,840,583号、および米国特許第5,796,080号である。本発明では、画像情報は、プロセッサに転送される場合、それらの反応に変化をもたらすように、印加されるマイクロ波出力と連携して、または温度、または圧力、またはこれらのうちいずれか二つ、またはこれらの変数の三つ全てと連携して使用される。
【0062】
例えば、色の変化単独では、一つの化学反応または一連の化学反応の相変化または終了を示すことができる。従って、そのような色の情報は、変換されてプロセッサに転送される場合、マイクロ波出力を制御するために(開始、終了、増加、または減少させることを含む)そのような色の情報を使用できる。
【0063】
本発明は、そのような分析の単一のポイントにのみ限定されるものでない。例を拡大するために、変化が起こる前に、設定ポイント温度と連携して色の変化を認識するように、または変化が起こる前に設定ポイント圧力と連携して色の変化を認識するように、あるいは変化が起こる前に特定の設定ポイント温度と設定ポイント圧力の両方と連携して色の変化を認識するように、プロセッサをプログラムできる。
【0064】
同様の方式で、画像での変化を含む画像を、たとえもし反応が予想される設定ポイント温度、または設定ポイント圧力に達しなくても、反応の終了を知らせるために使用できる。例えば、画像情報がない状態では、所望の反応スキームの終点を制御するステップは必然的に特定の設定ポイント温度または設定ポイント圧力に基づくこととなる。
【0065】
しかしながら、本発明を用いると、正常な設定ポイント圧力または設定ポイント温度に達する前に、反応が成功裏に終了したという証拠を、画像情報は提供する。そのようなケースでは、温度または圧力測定のいずれかを用いるよりも早い、反応の終了を認識する能力を画像情報は提供する。
【0066】
本発明は、所望の化学反応の過程の間中、時間ベースで、対応する一連のデータをコンパイルするステップをさらに含む。この局面では、指定された時間に撮影されたデジタル画像(1分間に一度、1秒間に一度、一秒回に数回)を、同じ指定された時間での、印加出力、測定温度、および測定圧力と正確に一致させることができる。そのような情報をコンパイルするステップは、従来の性能を持つプロセッサを用いれば容易であり、全反応(または化学者が適当であると判断するならば反応の一部)の進行を、要求に応じて繰り返し再生する能力を、作業している化学者に提供し、一方で、時間選択ベースで、測定された項目をお互いに、かつ画像情報と比較する能力を持つことも提供する。
【0067】
別の局面では、マグネチック攪拌バーなどの機械的物体を反応容器に加えることもできる。この局面では、物体からの画像情報は、視覚的な指標が不足しているかもしれない、プロセスパラメーターに関する二次的な情報を提供する。例えば、液体の粘度の変化は、反応物質や生成物の画像を変化させないかもしれない。しかし、攪拌バーの動きの変化は、粘度に関する適切な情報を提供できる。故に、もし固定された磁場のもとにある攪拌バーが、認識される粘度で既知の回転数で回転し(例としては水)、その後反応中に異なる回転数で回転するのが見られたら、回転数における変化は、観察され、デジタル化され、さらに、反応容器中の粘度、または粘度の変化を評価して予測または決定するために使用され得る。その他の例は当業者によって容易に理解されるであろう。
【0068】
関連する局面では、本発明は、反応容器とその内容物にマイクロ波放射を印加するステップと、容器とその内容物の温度、反応容器内の圧力からなるグループから選択される変数を周期的に測定するステップと、容器とその内容物の画像を周期的に取得するステップと、取得された画像をデジタル出力に変換するステップと、デジタル画像出力と、温度および圧力の周期的測定値のうち少なくとも一つとに基づいて、容器とその内容物へのマイクロ波の印加を加減するステップとを含む、マイクロ波アシスト化学反応の方法である。
【0069】
この局面では、マイクロ波の印加の加減は、デジタル画像出力と、温度および圧力の周期的測定値との両方に基づいたものとすることもできる。
【0070】
好適な実施形態では、方法は、可視波長で容器とその内容物の画像を取得するステップを含む。なぜなら、前述のように、可視波長は印加されるマイクロ波の波長と異なり、またある種の光学的温度検出器で用いられる赤外線波長とも異なるためである。
【0071】
この局面では、視覚的出力はユーザーのために生成され得るが、方法は、取得された画像の視覚的表示と関係なく、つまり場合によってはこれを用いずに、マイクロ波の印加を加減するステップを含むことが理解されるであろう。別の言い方をすれば、方法は、操作者が視覚的画像を観察し、その後マイクロ波の印加を加減することを必要としない。その代わりに、画像は、マイクロ波の印加を加減するために操作者と関係なく、取得され、デジタル出力に変換される。
【0072】
図3は、本発明のこの実施形態の一部の機器局面の別の概略図である。図3の多くの要素は、図1と2に関して説明されたものと同じであり、そのような場合それらは同じ参照番号を持つ。同様に、図3は、機器の特定の要素の概略図であり、可能なバリエーションの全てを図示することを意図しておらず、むしろ特定の機能を明らかにすることを意図していることが理解されるであろう。例えば、図3はキャビティを明確には図示しないが、マイクロ波は典型的に、もしそうと限らないとしても、キャビティにおける反応容器内の化学的組成物に印加されることが理解されるであろう。
【0073】
故に、図3は、ダイオード14として図示されるマイクロ波ソースを、ソース14からマイクロ波が印加される、機器(図3は単に容器16を図示する)内の組成物の温度を測定する温度検出器22とともに、図示する。再び42で示された圧力トランスデューサーは、ソース14からのマイクロ波が印加される、容器16内の組成物によって生成された圧力を測定する。
【0074】
しかし図3に図示される実施形態では、カメラ32(図1と2)は、必ずしもカメラではない画像検出器50と置き換えられている。検出器50は、ソース14からマイクロ波が印加されている間、機器中の組成物の画像を取得することができ、同様に取得された画像に対応するデジタル出力を作成できる。可視光線、その他の波長の光線、またはその他のアナログ入力に基づいてデジタル出力を作成できる検出器は、当分野で周知であり、広く利用可能であり、不必要な実験を行うことなしに、当業者によって選択され組み込まれることができる。従って、検出器50は、直接デジタル出力を作成する能力を持つことができるか、あるいは図3に図示するように、取得された画像からデジタル出力を作成するアナログデジタル変換器51と併用して用いられ得る。
【0075】
この実施形態では、プロセッサ38は、検出器50または変換器51のいずれか、温度検出器22、圧力検出器42、ならびにマイクロ波ソース14と信号通信するものであり、機器内の組成物へのソース14からのマイクロ波の印加を、検出器(または変換器)からのデジタル出力に基づいて、かつ測定圧力と測定温度のうち少なくとも一つと組み合わせて加減するものである。
【0076】
特に、図3は、プロセッサ38が、取得された画像の視覚的表示(例えば、操作者に対するもの)と無関係に、マイクロ波の印加を加減することを図示する。別の言い方をすれば、容器16とその内容物の外観を、それがまたモニター(例えば図1の36)上に表示されるかどうかにかかわらず、直接的にプロセッサ38のためのデジタル情報に変換され得る。さらに、プロセッサ38は視覚的表示と無関係に作動可能であることから、機器は、取得された画像の視覚的表示なしで、マイクロ波の印加を加減できる。
【0077】
別の局面では、本発明は、組成物の画像を、マイクロ波放射が特定の時間間隔でそれらの組成物に印加されている間に取得するステップであって、該組成物の画像を取得することが、組成物の温度を同じ特定の時間間隔で測定することと組み合わされ、また組成物によって生成された圧力を同じ時間間隔で測定することと組み合わされたステップを含む、マイクロ波アシスト化学反応の方法である。この局面では、組成物に加えられるマイクロ波出力も、画像とその他の情報が取得されるのと同じ特定の時間間隔で記録される。記録されたマトリクスは、特定の時間間隔での画像、温度、圧力および出力の情報から生成されている。表1はそのようなマトリクスを示す。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

多くの場合では、方法は、可視波長で画像を取得するステップを含むが、選択された画像検出器と変換機器によって、望ましいならば、または必要ならばその他の波長を使用してもよいことが理解されるであろう。機器局面におけるように、取得された画像のどのような視覚的表示とも無関係に、記録されたマトリクスは作成され得る。もし操作者が(例えば)その他のどのような目的のためにも視覚的画像を必要としない場合は、方法は、どんなものであれ、取得された画像の視覚的表示なしで、記録されたマトリクスを作成するステップを含み得る。
【0080】
図4はそのようなマトリクスの概略図である。7回の周期が図示され、マイクロ波アシスト化学反応の間に取得された7つの画像に対応している。図4の容器のそれぞれは、可能性のある外観の変化を概略的に図示するために、異なるパターンを用いて図示されている。当然ながら、定められた反応の過程における、わずかひとつの画像の変化が本発明において有用であること、また、7つの選択されたグループは、図示の目的のために任意に選択されることが理解されるであろう。
【0081】
図4に図示されるように、それぞれ個別の時間間隔ベースの画像が、対応する出力レベル(W)、温度(T)、および圧力(P)と関連付けられ得る。反応の全過程は、容易に利用できるプロセッサ出力と従来から利用可能なメモリとを用いて保存され、その後、要求に応じて再生されることにより、出力、温度、および圧力と、出発物質、生成物、および中間体の外観との間の相互作用をより良く理解することができる。
【0082】
図面と明細書において、本発明の好適な実施形態が説明され、また特定の用語が用いられているが、それらは一般的かつ説明的な意義においてのみ用いられ、特許請求の範囲で定められる本発明の範囲を限定する目的のものではない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、本発明の一つの実施形態にしたがった機器の要素の概略図である。
【図2】図2は、本発明の別の実施形態にしたがった機器のある要素の概略図である。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態にしたがった機器の選択された要素の別の概略図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にしたがったデータの収集を示す概略的マトリクスである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波アシスト化学反応を行う方法であって、該方法は、
キャビティ内部で、該キャビティ内の反応容器と該反応容器内の反応物質とにマイクロ波放射を印加するステップであって、
同時に、該反応容器および反応物質から放出された赤外線放射をモニタリングすることにより、該容器内容物の温度を決定し、
かつ、同時に、赤外線波長以外の波長で、該反応物質を照射し、視覚的にモニタリングするステップを含む、
方法。
【請求項2】
前記マイクロ波放射を印加する前記ステップの前に、前記反応物質を容器内に置き、該容器をシールするステップをさらに含む、請求項1に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項3】
前記反応物質を容器に入れる前記ステップは、前記反応物質を耐圧容器内に入れるステップを含む、請求項2に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項4】
マイクロ波放射を印加する前記ステップは、連続性単一モードのマイクロ波放射を印加するステップを含む、請求項1に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項5】
マイクロ波放射を印加する前記ステップは、マグネトロン、クライストロン、および固体ソースからなるグループから選択されたソースからのマイクロ波放射を印加するステップを含む、請求項1に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項6】
連続性単一モードのマイクロ波放射を印加する前記ステップは、ソースからの放射を印加し、該ソースを約60Hzより大きい周波数で駆動するステップを含む、請求項4に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項7】
前記反応物質を視覚的にモニタリングする前記ステップは、可視波長を含む光源を用いて前記反応容器と前記反応物質を照明するステップを含む、請求項1に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項8】
前記照明ステップは、赤外領域内の波長をフィルタリングし、これにより、そうしなければ温度モニタリングステップを妨げることになる赤外周波数で前記キャビティが飽和状態になるのを回避するステップをさらに含む、請求項7に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項9】
前記照明ステップは、電磁スペクトルの前記赤外領域内の光を放出しない可視光源から前記キャビティを照明するステップを含む、請求項7に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項10】
前記照明および視覚的モニタリングステップは、閉じたキャビティの内部を照明するステップを含む、請求項1に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項11】
前記照明および視覚的モニタリングステップは、光ファイバーライトパイプを閉じたマイクロ波キャビティ内の分光ポートの内部へ挿入するステップを含む、請求項1に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項12】
レンズを通してモニタリングするステップをさらに含む、請求項11に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項13】
レンズを通してモニタリングする前記ステップは、前記光ファイバーライトパイプの前記キャビティ端部上のレンズを通してモニタリングすることにより、視角を拡大させるステップを含む、請求項12に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項14】
反応を視覚的に記録するステップをさらに含む、請求項10に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項15】
観察された反応の変化に応じて、マイクロ波放射を加減するステップをさらに含む、請求項1に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項16】
前記反応物質を視覚的にモニタリングする前記ステップは、前記モニタリングされた出力を分光光度計に向けるステップを含む、請求項1に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項17】
反応物質をマイクロ波透過型容器に入れるステップと、
前記容器とその内容物をマイクロ波キャビティの内部に設置するステップと、
連続性単一モードのマイクロ波放射を、前記キャビティ内部で、前記容器とその内容物とに印加するステップと、
前記容器内の前記反応物質のモニタリングされた変化に応じてマイクロ波出力を調整するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
モニタリングされた温度変化に応じて前記マイクロ波出力を調整するステップを含む、請求項17に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項19】
視覚的に観察された変化に応じて、前記マイクロ波出力を調整するステップを含む、請求項17に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項20】
前記反応物質におけるモニタリングされた化学的変化に応じて、前記マイクロ波出力を調整するステップを含む、請求項17に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項21】
前記反応を視覚的に記録するステップをさらに含む、請求項17に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項22】
前記反応物質を照明して視覚的にモニタリングする前記ステップは、前記モニタリングされる波長を、前記反応によって生成される赤外線波長に限定するステップをさらに含む、請求項17に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項23】
前記反応容器と前記反応物質から放出された赤外線放射を断続的にモニタリングすることにより、前記容器内容物の温度を決定するステップと、
前記反応物質を断続的に照明して視覚的にモニタリングするステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記反応物質を断続的に照明して視覚的にモニタリングする前記ステップは、赤外線成分を含む光源を変調することにより、断続的な視覚的観察と赤外線温度モニタリングを可能にするステップを含む、請求項23に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項25】
前記照明および視覚的モニタリングステップは、閉じたマイクロ波キャビティ内の分光ポートの内部へ光ファイバーライトパイプを挿入するステップを含む、請求項23に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項26】
レンズを通してモニタリングするステップをさらに含む、請求項25に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項27】
レンズを通してモニタリングする前記ステップは、前記光ファイバーライトパイプの前記キャビティ端部上のレンズを通してモニタリングすることにより、視角を拡大させるステップを含む、請求項26に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項28】
前記反応を視覚的に記録するステップをさらに含む、請求項23に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項29】
観察される反応の変化に応じて、前記マイクロ波放射を加減するステップをさらに含む、請求項23に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項30】
前記反応物質を視覚的にモニタリングすることにより反応の進行を決定する前記ステップは、前記モニタリングされる出力を分光光度計に向けるステップを含む、請求項23に記載のマイクロ波アシスト化学反応を行う方法。
【請求項31】
周期的に前記容器とその内容物の画像を取得するステップと、
取得した画像をデジタル出力に変換するステップと、
前記容器とその内容物へのマイクロ波の印加を、デジタル画像出力に基づいて加減するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記容器とその内容物の温度および前記反応容器内の圧力からなるグループから選択される変数を周期的に測定するステップと、前記デジタル画像出力と温度および圧力の周期的な測定値のうち少なくとも一つとに基づいて、前記容器とその内容物へのマイクロ波の印加を加減するステップとをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記デジタル画像出力と、温度と圧力の周期的な測定値の両方とに基づいて、前記容器とその内容物へのマイクロ波の印加を加減するステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
可視波長で前記容器とその内容物の画像を取得するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記取得した画像の視覚的な表示と関係なく、マイクロ波の印加を加減するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記取得した画像の視覚な表示をせずに、マイクロ波の印加を加減するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
マイクロ波キャビティと、
前記キャビティ内のマイクロ波透過型容器と、
マイクロ波放射を前記キャビティ内で前記容器とその内容物とに印加するソースと、
前記キャビティ内の前記容器とその内容物とを照明する照明光源と、
前記容器とその内容物とを視覚的に観察する手段と、
前記キャビティ内の前記容器またはその内容物の温度をモニタリングする赤外線検出器と、
前記照明光源が前記赤外線検出器を飽和させるのを防ぎ、これにより視覚的観察と赤外線モニタリングとを同時に行うことを可能にする手段と
を含む、マイクロ波アシスト化学反応を行う機器。
【請求項38】
前記ソースおよび前記キャビティと通信する導波管をさらに含む、請求項37に記載の機器。
【請求項39】
前記照明光源は可視照明光源を含む、請求項37に記載の機器。
【請求項40】
前記可視照明光源は、LED、光ファイバーライト、蛍光ランプ、白熱ランプ、広帯域光源、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択される、請求項39に記載の機器。
【請求項41】
前記照明光源による前記赤外線検出器の飽和を防止する前記手段は、前記照明光源によって放出される赤外線波長が前記マイクロ波キャビティに侵入するのを防ぐフィルターを含む、請求項37に記載の機器。
【請求項42】
前記視覚的観察手段はカメラを含む、請求項37に記載の機器。
【請求項43】
前記視覚的観察手段は、前記容器の内容物の化学的変化をモニタリングする分光光度計を含む、請求項37に記載の機器。
【請求項44】
前記温度検出器と信号通信するプロセッサをさらに含み、前記プロセッサは、前記温度検出器から受信したデータに応じて前記マイクロ波光源を制御する、請求項37に記載の機器。
【請求項45】
前記視覚的観察手段と信号通信するプロセッサをさらに含み、前記視覚的観察手段から受信したデータに応じて前記マイクロ波光源を制御する、請求項37に記載の機器。
【請求項46】
連続性単一モードのマイクロ波放射を、前記キャビティ内部で、前記容器とその内容物とに加えるソースを含む、請求項1に記載の機器。
【請求項47】
前記照明光源による前記赤外線検出器の飽和を防ぐ前記手段は、前記容器とその内容物との断続的な照射を可能にする手段を含む、請求項46に記載の機器。
【請求項48】
前記容器とその内容物との断続的な照射を可能にする前記手段は、シャッター、フィルターホイール、スイッチ、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択される、請求項47に記載の機器。
【請求項49】
マイクロ波アシスト化学反応のための機器であって、
マイクロ波放射を前記機器の構成物に印加するソースと、
該ソースからマイクロ波が印加されている間に、前記機器内の構成物の画像を取得し、該取得された画像に対応するデジタル出力を生成することが可能な検出器と、
前記検出器と前記マイクロ波ソースと信号通信するプロセッサであって、前記検出器からのデジタル出力に基づいて、該ソースから該機器内の構成物へのマイクロ波の印加を加減するプロセッサと
を含む、マイクロ波アシスト化学反応のための機器。
【請求項50】
前記プロセッサと信号通信する手段であって、前記ソースからマイクロ波が加えられる、前記機器内の構成物の温度を測定する手段と、
該プロセッサと信号通信する手段であって、該ソースから該マイクロ波が加えられる、該機器内の構成物によって生成される圧力を測定する、手段とを含み、
該プロセッサは、前記検出器からのデジタル出力と、測定された圧力および測定された温度のうち少なくとも一つとに基づいて、該ソースからのマイクロ波の印加を加減する、請求項49に記載の機器。
【請求項51】
前記温度測定手段は、温度計、熱電温度計、高温計、および光学温度検出器からなるグループから選択される、請求項50に記載の機器。
【請求項52】
前記圧力測定手段は、マノメーター、圧力計、および圧力トランスデューサーからなるグループから選択される、請求項50に記載の機器。
【請求項53】
前記検出器は、前記取得された画像からデジタル出力を生成するための、アナログ・デジタル変換器を含む、請求項49に記載の機器。
【請求項54】
前記プロセッサは、取得された画像の視覚表示と関係なく、マイクロ波の印加を加減する、請求項49に記載の機器。
【請求項55】
前記プロセッサは、取得した画像の視覚表示を全く行わずに、マイクロ波の印加を加減する、請求項49に記載の機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−505108(P2009−505108A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527224(P2008−527224)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/032756
【国際公開番号】WO2007/024848
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508047875)シーイーエム コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】