説明

マイクロ波プローブ及び温熱治療装置

【課題】術者への負担を軽減し、術中における人体組織への影響を緩和する。
【解決手段】内視鏡の挿通チャンネルに挿脱自在なマイクロ波プローブであって、前記マイクロ波プローブは、患部を加温するための加温部5aが設けられたマイクロ波アンテナからなるアンテナ部5と、アンテナ部5における加温部5aを前記患部へと導くための誘導部7であって、前記アンテナ部5に対して自在に相対移動する誘導部7と、誘導部7に沿った方向へとアンテナ部5の移動方向を規定する方向規定部8と、マイクロ波プローブの末端に設けられた末端部9と、を具備し、前記末端部9は、先細りのテーパー形状であり且つ可撓性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波プローブ及び温熱治療装置に関し、特に、マイクロ波による患部の温熱治療に用いられるマイクロ波プローブ及び温熱治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、体内に存在する腫瘍を一定の温度にコントロールすることによって治療を行うという温熱治療(ハイパーサーミア)が知られている。
【0003】
このとき、温度コントロールに用いられる器具として、プローブ内に挿通されたマイクロ波アンテナが挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
このマイクロ波アンテナとしては、同軸ケーブルが主に用いられている(例えば、特許文献1参照)。この同軸ケーブルの具体的構成としては、断面同心円状にて中心から順に内部導体、誘電体、外部導体、外部被覆が設けられたものが挙げられる。以降、マイクロ波アンテナのことを単にアンテナともいう。
【0005】
そして、同軸ケーブルの一部において外部導体及び外部被覆を除去して誘電体を露出させることにより、スリットを形成している。そしてこのスリットの部分からマイクロ波を放射することにより、患部を加温することが特許文献1に記載されている。
【0006】
この特許文献1とは別に、マイクロ波アンテナと共にガイドワイヤーを用いる技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、特許文献2とは別に、結石を取り込みやすいバスケット鉗子の先端にガイドワイヤーを挿通させることも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−164215号公報
【特許文献2】特開平7−39589号公報
【特許文献3】特開2004−249093号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kazuyuki Saito et al,IEEE TRANSACTIONS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES.VOL.54,NO.8,AUGUST 2006(p.3443−3449)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献1や特許文献2には、主として胆道における腫瘍を加温するためアンテナを用いることについて記載されている。その場合、当然、アンテナを胆道に移動させる必要がある。
【0011】
胆道の温熱治療の概略を表す図1に示すように、経口にてアンテナを体内に挿入する場合、口、食道、胃を経て、十二指腸31から胆道32内の患部34へとアンテナを移動させる必要が出てくる。しかしながら、この十二指腸31と胆道32の間にはファーター乳頭部33(以降、単に乳頭部ともいう)が存在する。
【0012】
この乳頭部33は括約筋を有している。そのため、例え特許文献2に記載のようなガイドワイヤーを先行させて胆道32に移動させたとしても、ガイドワイヤーに続くべきアンテナ100が乳頭部33の括約筋により移動を遮られてしまう可能性がある。
【0013】
このように、乳頭部33に対してアンテナ100を通過させる作業が、術者にとって別途必要になる。その結果、術者には余計なストレスが掛かることになってしまう。
【0014】
また、過度に力を入れてアンテナ100を通過させた場合、乳頭部33を傷つけるおそれもある。また、アンテナ100が乳頭部33を通過した後、勢い余ってアンテナ100が胆道32を傷つけるおそれもある。
【0015】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、術者への負担を軽減し、術中における人体組織への影響を緩和するマイクロ波プローブ及び温熱治療装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様は、内視鏡の挿通チャンネルに挿脱自在なマイクロ波プローブであって、患部を加温するための加温部が設けられたマイクロ波アンテナからなるアンテナ部と、前記マイクロ波プローブの末端に設けられた、先細りのテーパー形状の末端部と、を具備するマイクロ波プローブにおいて、前記アンテナ部における前記加温部を前記患部へと導くための誘導部であって、前記アンテナ部に対して自在に相対移動する誘導部と、前記誘導部に沿った方向へと前記アンテナ部の移動方向を規定する方向規定部と、を更に具備し、前記末端部は可撓性を有することを特徴とするマイクロ波プローブである。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、前記誘導部はガイドワイヤーであり、前記方向規定部は前記末端部に設けられたガイドワイヤー挿通孔であることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載の発明において、前記アンテナ部は同軸ケーブルからなり、前記加温部は、前記同軸ケーブルに設けられたスリットであり、前記スリットからマイクロ波が放射され、前記患部が誘電加温されることを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1ないし第3のいずれかの態様に記載の発明において、前記マイクロ波プローブには更に測温部が備えられており、前記測温部は、熱電対、ファイバー型温度計及び超音波センサのいずれか又はそれらの組み合わせを有することを特徴とする。
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載の発明において、電源部との連結のためのコネクタであって、前記アンテナ部及び前記測温部に設けられたコネクタには、滅菌自在な材料が用いられていることを特徴とする。
本発明の第6の態様は、第1ないし第5のいずれかの態様に記載の発明において、前記アンテナ部の外部被覆には、滅菌自在な材料が用いられていることを特徴とする。
本発明の第7の態様は、第1ないし第6のいずれかの態様に記載のマイクロ波プローブを用いた温熱治療装置であって、測温部により測定された温度情報を制御部に伝達し、前記温度情報における温度と、前記制御部により制御される所定の温度との差を補正するために電源部の出力を変動させる手段を、前記制御部が備えていることを特徴とする温熱治療装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、術者への負担を軽減し、術中における人体組織への影響を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】胆道内の患部に対する温熱治療の概要を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る温熱治療装置の概要を示す概略図である。
【図3】本実施形態に係るマイクロ波プローブを示す図であり、(a)は温熱治療装置におけるマイクロ波プローブと制御部及び電源部との関係を示す図であり、(b)はマイクロ波プローブにおける一部を拡大した図であり、(c)はアンテナ部の構造を示す図である。
【図4】本実施形態に係るマイクロ波プローブをファーター乳頭部へと挿入する方法を示す図である。
【図5】本実施形態に係る内視鏡の概略斜視図である。
【図6】別の実施形態に係るマイクロ波プローブを示す図である。
【図7】別の実施形態に係るマイクロ波プローブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者らは、ファーター乳頭部33のように括約筋を有する部位に対してガイドワイヤーのような誘導部を通過させた後、容易に挿入可能なプローブについて種々検討した。そして、括約筋のように挿入しづらい部位に対して、ガイドワイヤーのような誘導部に引き続いて、プローブにおけるアンテナ部を挿入する際に、アンテナ部が容易に挿入可能であると同時に、人体組織を傷つけない構成についても検討を行った。
【0020】
この検討により、本発明者らは、挿入しづらい部位に対して誘導部が挿入された後、引き続いて挿入されるアンテナ部の末端を先細りのテーパー形状とし、さらには、アンテナ部の末端が可撓性を有する、という構成を想到した。
【0021】
このような構成により、括約筋を有する部位であっても、誘導部の力を借りながら、テーパー形状の末端からアンテナ部を容易に挿入できることを見出した。それと共に、仮にアンテナ部の末端が人体組織に食い込んでも、アンテナ部の末端に可撓性が与えられることによって、アンテナ部がそのまま人体組織を貫通するのを抑制でき、ひいては人体組織の損傷の可能性を抑制できることを見出した。
【0022】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の実施の形態においては、次の順序で説明を行う。
1.温熱治療装置の構成の概要
2.マイクロ波プローブの構成の概要
3.マイクロ波プローブの各部の詳細
1)アンテナ部
2)測温部
3)誘導部
4)方向規定部
4.内視鏡及びマイクロ波プローブの使用方法の説明
5.実施の形態の効果に関する説明
【0023】
<1.温熱治療装置の構成の概要>
図2は本発明の実施の形態に係る温熱治療装置の構成例を示す概略図である。
【0024】
図2にて図示した温熱治療装置は、マイクロ波プローブ1と、内部の挿通チャンネルにマイクロ波プローブ1を挿脱自在とした長尺な内視鏡2と、マイクロ波プローブ1の加温度合い及び内視鏡2の動作を制御する制御部3と、マイクロ波プローブ1及び内視鏡2及び制御部3に電力を供給する電源部4を有している。以下、本実施形態に係るマイクロ波プローブ1について説明する。
【0025】
<2.マイクロ波プローブの構成の概要>
図3は本発明の実施の形態に係るマイクロ波プローブ1の構成例を示す概略図である。
【0026】
まず、本実施形態に係るマイクロ波プローブ1は、内視鏡2の挿通チャンネルに挿脱自在且つ長尺なプローブ1である。本実施形態においては、内視鏡2と共に経口にて体内に挿入し、十二指腸31と胆道32の間にある括約筋(ファーター乳頭部33の孔)を通過させるプローブ1について説明する。なお、以降、マイクロ波プローブ1を単にプローブ1とも言う。
【0027】
また、図3(a)に示すように、本実施形態においては長尺なプローブ1において、電源部4と連結している側を基端、その反対側であり人体内に挿入する側を末端とする。以下に説明するアンテナ部5及び内視鏡2についても同様である。
【0028】
図3(a)(b)にて図示したプローブ1には、マイクロ波にて患部34を加温するための加温部5aを有するアンテナ部5と、前記アンテナ部5における前記加温部5aを前記患部34へと導くための誘導部7と、前記誘導部7に沿った方向へと前記アンテナ部5の移動方向を規定する方向規定部8と、が設けられている。そしてこのアンテナ部5には末端部9が設けられている。
【0029】
本実施形態のプローブ1は、このアンテナ部5、誘導部7、方向規定部8、アンテナ部5に設けられた末端部9に加え、さらに好ましくは、このアンテナ部5にて加温される温度を測定する測温部6と、を備えた構成になっている。
本実施形態においては、上述の構成を有するプローブ1について説明する。
【0030】
<3.マイクロ波プローブの各部の詳細>
1)アンテナ部
アンテナ部5は、同軸ケーブルにより構成される。そしてこのアンテナ部5には、患部34を加温するための加温部5aと、前記アンテナ部5の末端に設けられた末端部9であって、先細りのテーパー形状及び可撓性を有する末端部9と、が設けられている。
【0031】
この同軸ケーブルは、図3(c)に示すように、断面において同心円の中心が同一である長尺の内部導体51、その外側に設けられた絶縁体52、その外側に設けられた外部導体53、この外部導体53を被覆する外部被覆54からなる。
【0032】
なお、アンテナ部5の外部被覆54には、滅菌自在な材料が用いられている。こうすることにより、プローブ1を繰り返し使用しやすくなる。
【0033】
そして加温部5aは、図3(a)(b)に示すように、同軸ケーブルに設けられたスリット5aにより構成される。
【0034】
このスリット5aの作製方法としては、この同軸ケーブルの一部において外部導体53及び外部被覆54を除去し、外部導体53の一部を短絡させるためのスリット5aを形成する。このスリット5aにより、短絡した外部導体53からマイクロ波が放射される。このマイクロ波により、患部34が所定の温度に加温される。
なおこのスリット5aの数は、図2に示すように1つだけでも良いし、患部34が複数箇所か否か、患部34の範囲等に応じて複数設けてもよい。
【0035】
次に、アンテナ部5の末端には末端部9が設けられている。本実施形態においては、この末端部9が、先細りのテーパー形状及び可撓性を有している。
【0036】
ここで挙げた末端部9の可撓性としては、主に、3つの要因からなる可撓性が考えられる。
すなわち、
1.末端部の形状
2.末端部の素材
3.末端部の構造
に起因する可撓性である。本実施形態においては、主として1.末端部の形状を工夫して末端部9に可撓性を持たせたものについて述べる。
【0037】
本実施形態においては、アンテナ部5そのものの末端部9を先細りのテーパー形状としている。
このテーパーの度合いとしては、アンテナ部5の挿入の際に末端部9が乳頭部33の孔から受ける摩擦抵抗及び弾性変形抵抗に対しては充分に打ち勝つことができるものであるのが一つの条件である。
【0038】
これに加えて、乳頭部33における孔以外の部分や胆道32に末端部9が食い込んだ際の弾性変形抵抗に打ち勝つことができない可撓性、つまり、末端部9の先端が組織に食い込んだとしても末端部9が撓むことによりそのまま組織を貫通することを防ぐ程度の可撓性を末端部9が有していることが、もう一つの条件である。
【0039】
これらの条件を満たすように末端部9を先細りのテーパー形状にすることにより、以下の効果が得られる。
【0040】
まず、括約筋を有する乳頭部33に対して先に誘導部7(例えばガイドワイヤー)を通過させアンテナ部5を挿入しやすくしていることに加え、このような末端部9をアンテナ部5が有することにより、乳頭部33にアンテナ部5を挿入する際に掛ける力が少なくて済む。さらに、括約筋により締まっている乳頭部33に、誘導部7の助力を得つつも、更に容易に挿入することができる。
【0041】
また、この末端部9に対して可撓性が与えられることにより、アンテナ部5が乳頭部33を通過する際の乳頭部33への損傷のおそれを低減することができる。
【0042】
さらに、アンテナ部5が乳頭部33を通過したあとも、通過の際の勢いが余り、例え胆道32に末端部9が接触したとしても、末端部9が撓むおかげで、アンテナ部5が接触後そのまま胆道32を貫通することを抑制することもできる。
【0043】
この末端部9の具体的な構成としては、以下の通りである。
すなわち、アンテナ部5の末端の外部被覆54を除去し、外部導体53を露出させる。 そして、この末端に高分子樹脂からなるキャップを嵌める。
本実施形態においては、このキャップを上述のようなテーパー形状を有する末端部9とする。
【0044】
なお、このときの末端部9に用いられる素材は、人体に悪影響を与えない高分子樹脂であればよく、例えばテフロン(登録商標)でもよい。また、末端部9に用いられる素材は、滅菌可能な材料であればより好ましい。こうすることにより、プローブ1を繰り返し使用しやすくなる。
【0045】
なお、先に述べた加温部5aは、この末端部9以外に設けられており、末端部9に対して別体で設けられている。こうすることにより、アンテナ部5の挿入は末端部9にて行い、挿入した後は加温部5aにて安定して患部34を加温するという様に役割分担を各部が行える。その結果、容易且つ安定して治療を行うことができる。
【0046】
2)測温部
次に、加温部5aにおいて加温された温度を測定するための測温部6について説明する。
この測温部6は、熱電対と、ファイバー型温度計と、超音波センサのいずれかから構成されている。
【0047】
熱電対6は、熱電能の異なる二種類の金属を接合した温度センサであり、2つの接合点を異なる温度にすると一定の方向に電流が流れ、熱起電力が生じる現象(ゼーベック効果)を利用した温度センサである。
【0048】
本実施形態においては、この熱電対6が長尺なものを使用する。そして熱電対6の末端が前記スロットに位置させながら、アンテナ部5の外部被覆54に沿わせて配置する。さらに、この熱電対6とアンテナ部5とをテフロン(登録商標)樹脂でコーティングし、熱収縮チューブ11からなる最外部被覆11を形成する。
【0049】
この熱電対6の代わりに、ファイバー型温度計や超音波センサを設けてもよい。また、熱電対6と共にこれらを設けてもよい。
【0050】
上述した測温部6により、スリット5a近傍の温度の値が測定される。そしてこの測定された温度の値を、図2及び図3に示す温熱治療装置の制御部3に伝達する。そして、前記制御部3に設けられた温度補正手段により、前記温度情報における温度と、前記制御部3により制御される所定の温度との差を補正するために電源部4の出力を変動させる。
【0051】
この温度補正手段により、所定の温度よりも患部34が加温され、正常な組織が死滅することを抑制することができる。また、患部34への加温が充分でないといった不具合を解消することができる。
【0052】
なお、この熱電対6やファイバー型温度計や超音波センサは、各々複数設けてもよいし、各種一つずつ設けてもよい。ただ、プローブ1の柔軟性を向上させるという点では、いずれか1つだけ設けるのが好ましい。
【0053】
なお、電源部4とアンテナ部5との間、及び電源部4と測温部6との間を連結するコネクタ10には、滅菌自在な材料が用いられている。アンテナ部5及び測温部6に、このコネクタ10が設けられることにより、プローブ1を繰り返し使用しやすくなる。
なお、制御部3とアンテナ部5との間、及び制御部3と測温部6との間についても、同様のコネクタ10を用いても良い。
【0054】
3)誘導部
次に、アンテナ部5における前記加温部5aを前記患部34へと導くための誘導部7について説明する。
【0055】
この誘導部7は、人体組織に与える影響が少ない金属製の長尺なガイドワイヤー7により構成されている。また、このガイドワイヤー7は、アンテナ部5に対して自在に相対移動する。
【0056】
ガイドワイヤー7の機能についてであるが、本実施形態に係るアンテナ部5をファーター乳頭部33へと挿入する方法を示す図4に示すように、まず、アンテナ部5と共にこのガイドワイヤー7を経口にて体内に挿入させ、胆道32の乳頭部33手前まで進行させる(図4(a))。
【0057】
そして、このガイドワイヤー7のみを、乳頭部33から胆道32へと先行して挿入させる(図4(b))。ガイドワイヤー7が乳頭部33から挿入されることにより、次にアンテナ部5を乳頭部33から胆道32内へと挿入しやすくなる。
【0058】
このとき、ガイドワイヤー7に高周波ナイフ(図示せず)を設けてもよい。高周波ナイフを設けることにより、ガイドワイヤー7の末端が乳頭部33を通り抜けた後、高周波ナイフにより乳頭部33の孔を広げることができる。その結果、アンテナ部5の挿入がさらに容易になる。
なお、このときの高周波ナイフの周波数は、術後、乳頭部33に影響が残らない程度の周波数であればよい。
【0059】
ところで、ガイドワイヤー7が胆道32内へ挿入した後、アンテナ部5を同じく乳頭部33から胆道32内へと挿入するためには、アンテナ部5をガイドワイヤー7に沿わせる必要がある。すなわち、アンテナ部5を進行させる方向を規定する必要がある。このアンテナ部5の進行方向を、以下の方向規定部8により定める。
【0060】
4)方向規定部
以下、前記誘導部7(ガイドワイヤー7)に沿った方向へと前記アンテナ部5の移動方向を規定する方向規定部8について、図3(b)及び図4を用いて説明する。
【0061】
本実施形態における方向規定部8は、アンテナ部5における末端部9に設けられた誘導部挿通孔8(ガイドワイヤー挿通孔8)である。図3(b)に示すように、このガイドワイヤー挿通孔8は末端部9を貫通する孔であり、孔の出入口の一つは末端部9の側面に設けられており、もう一つの出入口は、末端部9の最も末端の部分に設けられている。以下、このガイドワイヤー挿通孔8の機能について述べる。
【0062】
まず先にも述べたように、ガイドワイヤー7を乳頭部33から胆道32内へと挿入する。このとき、ガイドワイヤー7は、アンテナ部5の一部である末端部9に設けられたガイドワイヤー挿通孔8を貫通している。
【0063】
そして、ガイドワイヤー7を胆道32内へと挿入した後、このガイドワイヤー7に沿って、アンテナ部5を胆道32内へと移動させる。この際、アンテナ部5の一部である末端部9をガイドワイヤー7が貫通していることから、アンテナ部5の進行方向はガイドワイヤー7の進行方向へと規定される(図4(c))。
【0064】
その後、アンテナ部5を患部34近傍に配置させる。必要ならば、アンテナ部5を患部34近傍に配置させた後、ガイドワイヤー7のみを基端側へと引き抜き、内視鏡2内に収納する(図4(d))。
【0065】
以上、本実施形態におけるマイクロ波プローブ1について述べた。
次に、このマイクロ波プローブ1により内部を挿通されている内視鏡2について、温熱治療の方法と共に説明する。
【0066】
<4.内視鏡及びマイクロ波プローブの使用方法の説明>
本実施形態における内視鏡2は、上述のマイクロ波プローブ1を挿通自在とできるものである必要がある。
【0067】
さらに、本実施形態に係る内視鏡の概略斜視図である図5に示すように内視鏡2の末端部9には、乳頭部33へのガイドワイヤー7及び/又はアンテナ部5(以降、アンテナ部5等という)の挿入の様子を確認するための撮影部21、撮影部21よる撮影に必要な明かりを提供する照明部22、アンテナ部5等の進行方向を所望の方向に変化させる起上部23が設けられている。
【0068】
この撮影部21は乳頭部33の様子を映し出すことができる程度の精度を有していれば良く、照明部22はこの撮影が可能な程度の明かりを提供できれば良い。この撮影部21及び照明部22は、先に述べた電源部4から電源が供給され、制御部3により動作が制御される。
【0069】
また、起上部23は内視鏡2の内部に設けられており、撮影部21及び照明部22と同じく、電源部4から電源が供給され、制御部3により動作が制御される。
【0070】
具体的には、マイクロ波プローブ1を内部に有する内視鏡2が経口により挿入後、胆道32及び乳頭部33手前の十二指腸31に至るまでは、この起上部23は折りたたまれた状態で内視鏡2内に収納されている。
【0071】
そして、乳頭部33近傍へと近づいたとき、図1にも示すように、この起上部23を制御部3により操作して起立させる。そして、十二指腸31の側壁にある乳頭部33の方向にアンテナ部5等が向かうように調整する。
そして、照明部22にて乳頭部33近傍を照らしながら、アンテナ部5等を挿入する様子を撮影部21にて撮影する。
このように撮影しながら、術者は乳頭部33の孔からアンテナ部5等を挿入する。
【0072】
その後、ガイドワイヤー7を乳頭部33の孔から胆道32内へと挿入する(図4(a)(b))。それに引き続いて、アンテナ部5を、末端部9に設けられたガイドワイヤー挿通孔8によって、ガイドワイヤー7に沿って移動させる。そして、テーパー形状及び可撓性を有する末端部9から乳頭部33の孔へと挿入する。そして、アンテナ部5におけるスリット5aを患部34近傍へと配置する(図4(c))。
【0073】
配置が終了次第、ガイドワイヤー7を基端方向に引き抜き、内視鏡2内に収納する。こうして、アンテナ部5を胆道32内に残し、アンテナ部5のスリット5aにより患部34を加温し、温熱治療を行う(図4(d))。
【0074】
<5.実施の形態の効果に関する説明>
本実施形態におけるマイクロ波プローブ1及び温熱治療装置は以下の効果を奏する。
【0075】
すなわち、挿入しづらい部位に対して最初に挿入される誘導部7を、マイクロ波プローブ1は具備する。同じくプローブ1に具備された方向規定部8により、アンテナ部5が誘導部7に引き続いて挿入される。
【0076】
さらに、アンテナ部5において最初に挿入される部分、すなわちアンテナ部5の末端を先細りのテーパー形状とし、さらには、このアンテナ部5の末端が可撓性を有する、という構成とする。
【0077】
これにより、括約筋を有する部位であっても、誘導部7の力を借りながらも末端からアンテナ部5を挿入自在とすると共に、人体組織を傷つけるおそれがあるアンテナ部5の末端に可撓性が与えられる。この可撓性によって、人体組織の損傷のおそれを抑制できる。
その結果、術者への負担を軽減し、術中における人体組織への影響を緩和できる。
【0078】
なお、本実施形態に係るマイクロ波プローブ1及び温熱治療装置は、胆道32の腫瘍の治療以外にも、患部34に至るまでに括約筋のような挿入困難な部位が存在する場合においても適用可能であるのは言うまでもない。
【0079】
(実施の形態2)
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
以下、実施の形態1の変形例について詳述する。
【0080】
末端部9についてであるが、実施の形態1においては、アンテナ部5の末端部9をテーパー形状とした。それとは別に、図6に示すように、熱電対6及びアンテナ部5をコーティングした熱収縮チューブ11、つまりプローブ1におけるガイドワイヤー7以外の部分(すなわちプローブ本体部)そのものにテーパー形状の末端部9を設けてもよい。
【0081】
この場合の末端部9の具体的な構成としては、以下の通りである。
すなわち、アンテナ部5の末端の外部被覆54を除去し、外部導体53を露出させる。そして、この末端に高分子樹脂からなり末端が平坦なキャップ56を嵌める。
【0082】
そして、アンテナ部5における少なくともスロットを含む部分に対し、熱可塑性高分子樹脂でコーティングし、最外部被覆11が熱収縮チューブからなるプローブ1を形成する。本実施形態においては、この最外部被覆11の末端部9を上述のようなテーパー形状とする。
【0083】
この場合、末端部9はプローブ1と一体に成型されていても良い。もちろん、実施の形態1のように別体に成型されていても良い。
【0084】
(実施の形態3)
実施の形態1においては、主に末端部9の形状に起因する可撓性について述べた。本実施形態においては、1.末端部の形状、以外の要因、すなわち、2.末端部の素材、3.末端部の構造、に起因する可撓性について述べる。
【0085】
まず、2.末端部の素材、についてであるが、先に述べたように、アンテナ部5の挿入の際に末端部9が乳頭部33の孔から受ける摩擦抵抗及び弾性変形抵抗に対しては充分に打ち勝つことができ、末端部9の先端が組織に食い込んだとしても末端部9が撓むことによりそのまま組織を貫通することを防ぐ程度の可撓性を有する素材を用いても良い。
【0086】
こうすることにより、末端部9を撓む程度に長尺なテーパー形状にせずとも、乳頭部33の孔を通過することができ、乳頭部33及び胆道32を傷つけるおそれも抑制できる。さらには、末端部9を長尺とせずとも良くなり、内視鏡2へのプローブ1の収納効率が向上する上、プローブ1製造の際の末端部9作製の手間も省け、歩留まりが向上する。
【0087】
なお、この素材としては、具体的には人体に影響を及ぼさない物質、例えばシリコーンが挙げられる。
【0088】
次に、3.末端部の構造、についてであるが、図7に示すように、末端部9の素材や形状に起因する可撓性がなくとも、例えば末端部9を首振り構造にすることにより、末端部9全体として可撓性が存在するようにすることもできる。
【0089】
具体的には、末端部9における基端側にシリコーンなどの柔軟な物質からなる首振り部91を設ける。末端部9が比較的硬質であった場合でも、こうすることにより末端部9全体として可撓性を有することになる。その結果、乳頭部33や胆道32を傷つけるおそれが抑制される。また、末端部9における基端側をバネ構造として可撓性を担保しても良い。
【0090】
本実施形態及び実施の形態1では、可撓性の要因を個別に説明したが、もちろん上述の要因を複数組み合わせても良い。そうすることにより、末端部9にさらに可撓性が付与されるし、可撓性が高すぎて乳頭部33の孔に挿入できない場合は、適宜上述の要因を変更又は組み合わせ、可撓性の高低を調整しても構わない。
【0091】
(実施の形態4)
実施の形態1においては、加温部5aが末端部9以外に設けられており、末端部9に対して別体で設けられている場合について述べた。本実施形態においては、加温部5aが末端部9を兼ねている場合について述べる。
【0092】
例えば極めて細い通路を有する患部34に対して加温治療を行う場合、アンテナ部5における同軸ケーブルを細径にすることが考えられる。
【0093】
この細径化により、アンテナ部5自体が可撓性を有することになる。ここでは、アンテナ部5の末端側がプローブ1における末端部9を兼ねることになる。
【0094】
こうすることにより、わざわざ可撓性を有する末端部9をプローブ1に設ける必要がなくなる。その結果、プローブ1の製造工程において、末端部9を作製する工程が不要となり、歩留まりが向上する。
【0095】
(実施の形態5)
実施の形態1においては、ガイドワイヤー7に沿ってアンテナ部5を移動させる際に、方向規定部8として、末端部9にガイドワイヤー挿通孔8を設けた場合について述べた。本実施形態においては、方向規定部8としてリングを設けた場合について述べる。
【0096】
本実施形態における方向規定部8は、アンテナ部5とガイドワイヤー7とを括り付け自在とした金属製のリングである。
【0097】
まず先にも述べたように、ガイドワイヤー7を乳頭部33から胆道32内へと挿入する。このとき、リングはアンテナ部5及びガイドワイヤー7を一括りにしておらず、両者から外れている、又は一括りにしていたとしてもリングの括りを緩めてある。
【0098】
そして、ガイドワイヤー7を胆道32内へと挿入した後、このリングを用いてアンテナ部5及びガイドワイヤー7を一括りにし、両者が一体となって同一方向に進行するようにする。
【0099】
その後、アンテナ部5を患部34近傍に配置させる。必要ならば、再びリングを外す又は緩め、ガイドワイヤー7のみを基端側へと引き取り、内視鏡2内に収納する。
【0100】
こうすることにより、プローブ1の製造工程において、プローブ1の末端部9にガイドワイヤー挿通孔8を設ける加工を行わなくてもよくなり、歩留まりが向上する。
【0101】
さらには、ガイドワイヤー挿通孔8が血液等にて詰まることによりガイドワイヤー7の引き抜き操作ができなくなるというおそれも解消することができる。
【0102】
(実施の形態6)
実施の形態1のマイクロ波プローブ1に、更に吸引用チューブを設けてもよい。吸引用チューブを設けることにより、術中、人体組織から出血したとしても、少量の出血であればこのチューブから吸引して排出することができる。
【0103】
また、内視鏡2における撮影部21の撮影を妨害する膿等の体液であっても、このチューブから吸引して排出することができる。その結果、作業を中断することなく、温熱治療を行うことができる。
【0104】
さらに、冷却液還流用チューブを設けてもよい。冷却液還流用チューブを設けることにより、アンテナ部5における加温部5aすなわちスリット5a近傍が所定の温度以上に加温されそうになっても、冷却液還流用チューブがスリット5a近傍の温度を下げることができ、異常加温による正常細胞の死滅を抑制することができる。
【0105】
具体的には、吸引用チューブと冷却液還流用チューブは長尺なものを使用する。
そして冷却液還流用チューブは、測温部6に影響を与えない程度に距離を置きつつ、アンテナ部5の外部被覆54上に配置する。そして吸引用チューブは、この冷却液還流用チューブと平行させて配置する。
なお、吸引するための引き込み口は、プローブ1の末端部9に設けてもよいし、側面部に設けてもよい。
【0106】
(実施の形態7)
実施の形態1の加温部5aとなる同軸ケーブルのスリット5aに加え、別の加温部5aを設けてもよい。
【0107】
患部34によっては近傍に太い血管が存在し、マイクロ波で加温を行っても太い血管の血流によって熱が奪われ、加温が充分に行えない場合も想定される。
【0108】
その場合、マイクロ波を放出するアンテナ部5のスリット5aに加え、末端に電熱自在な部材を有する新たな熱源を、アンテナ部5(プローブ1)の最外部被覆11上に設けてもよい。
【0109】
こうすることにより、太い血管が近傍に存在する患部34であっても、充分な温熱治療を患部34に対して行うことができる。
【0110】
(実施の形態8)
実施の形態1のプローブ1において、加温部5a(スリット5a)近傍に、加温部5aを示すマーカーを設けてもよい。最外部被覆11が透明な場合は、アンテナ部5におけるスリット5a近傍に、マーカーを設けてもよい。
【0111】
乳頭部33の孔へアンテナ部5を挿入した後、乳頭部33の括約筋が開いていれば、内視鏡2の撮影部21にてマーカーを確認しながら患部34を確実に加温することができる。
【0112】
(実施の形態9)
同じくプローブ1において、テーパー形状の末端部9よりも基端側、又は末端部9そのものにバルーンを形成する機構を設けてもよい。また、アンテナ部5の一部には最外部被覆11を行わず、この部分におけるアンテナ部5の外部被覆54にバルーンを形成する機構を設けてもよい。
【0113】
乳頭部33から胆道32にプローブ1を挿入後、このバルーンを形成することにより、折角挿入したプローブ1(ひいてはアンテナ部5)が胆道32及び乳頭部33から抜けてしまうことを抑制し、確実に患部34を加温することができるためである。
【0114】
(実施の形態10)
実施の形態1においては、アンテナ部5が同軸ケーブルからなる場合について述べた。本実施形態においては、アンテナ部5が変形同軸ケーブルからなる場合について述べる。
【0115】
具体的には、中空形状を有する同軸ケーブルを使用する。つまり、長尺のアンテナ部5は断面中心において中空である。この場合、内部導体51は円筒状の導体を使用する。なお、アンテナ部5の末端部9は、実施の形態1と同様に先細りのテーパー形状のキャップを嵌めておく。ただ、アンテナ部5と同様に中空形状としておく。
【0116】
そしてこのアンテナ部5及び末端部9における中空部に、ガイドワイヤー7を挿通する。こうすることにより、ひとたびガイドワイヤー7が乳頭部33の孔を通れば、中空部のおかげでガイドワイヤー7に沿ってアンテナ部5が摺動、すなわちアンテナ部5における中空部がアンテナ部5の方向規定部8となり、アンテナ部5を確実に胆道32内の患部34へと導くことができる。
【0117】
さらに、アンテナ部5を患部34へと配置した後は、ガイドワイヤー7のみを基端方向に引き抜くことにより、アンテナ部5を胆道32内に配置させることができる。
【0118】
(実施の形態11)
これとは逆に、アンテナ部5は実施の形態1のような同軸ケーブルのままとし、ガイドワイヤー7を中空としてもよい。
【0119】
具体的には、ガイドワイヤー7の中空部分にアンテナ部5を挿通する。
こうすることにより、乳頭部33の孔にひとたびガイドワイヤー7を通せば、結果としてガイドワイヤー7の内部に収納されているアンテナ部5も乳頭部33の孔を通すことができ、アンテナ部5を胆道32内に挿入することができる。
【0120】
この場合、ガイドワイヤー7の中空部のおかげで、ガイドワイヤー7内壁に沿ってアンテナ部5が摺動、すなわちガイドワイヤー7の中空部がアンテナ部5の方向規定部8となり、アンテナ部5を確実に胆道32内の患部34へと導くことができる。
【0121】
さらに、アンテナ部5を患部34へと配置した後は、ガイドワイヤー7のみを基端方向に引き抜くことにより、アンテナ部5を胆道32内に配置させることができる。
【0122】
(実施の形態12)
実施の形態1においては、マイクロ波プローブ1の末端に設けられた末端部9であって、先細りのテーパー形状を有する末端部9について述べた。本実施形態においては、テーパー形状の詳細について述べる。
【0123】
まず、実施の形態1におけるテーパー形状としては、円錐状、多角錘状等々、末端部9における末端側が、末端部9における基端側よりも断面積が漸減していくものであれば良い。
【0124】
そして、本実施形態においては、このテーパー形状が扁平形状(つまり断面が略長方形形状)である場合について挙げる。こうすることにより、料理に用いられるヘラのように、乳頭部33の孔を通過した後、引き続いて太くなっていくアンテナ部5を容易に胆道32内へと挿入することができる。
【0125】
また、このテーパー形状が円錐形状かつ流線型であっても良い。こうすることにより、乳頭部33の孔への挿入の際、孔による摩擦抵抗や弾性変形抵抗を最小限にすることができると考えられる。
【0126】
(実施の形態13)
これに加え、末端部9の先端が乳頭部33や胆道32に食い込んだとしても、末端部9ひいてはプローブ1がそのまま人体組織を貫通してしまうことを抑制するために、末端部9の先端を流線型としつつも、その先端の基端側を逆流線型となる形状に末端部9を形成しても良い。
【0127】
こうすることにより、末端部9の先端が乳頭部33の孔以外を刺してしまったとしても、先端よりも基端側の部分は逆流線型となっていることから、乳頭部33の孔から受ける摩擦抵抗及び弾性変形抵抗が一気に増大する。その結果、末端部9を挿入する際に一旦、いわばブレーキがかかる。
【0128】
挿入にブレーキがかかった時点で内視鏡2における撮影部21にて作業の様子を確認する。そして、乳頭部33の孔以外を刺していた場合は、末端部9の先端のみが乳頭部33に食い込む程度で済み、再び乳頭部33の孔を目指す作業を行うことができる。
【0129】
逆に、乳頭部33の孔を刺していた場合は、そのまま胆道32内にアンテナ部5における末端部9を挿入すればよい。
【0130】
その結果、末端部9によって人体組織を傷つけるおそれを顕著に抑制することができる。
【0131】
(実施の形態14)
更にこれらに加え、孔による摩擦抵抗を軽減するために、乳頭部33との接触面積を減らす処理を末端部9に行ってもよい。
【0132】
具体的には、末端部9の表面に対してシボ加工を行ったり、凹部を設けたりしても良い。こうすることにより、より容易にアンテナ部5を胆道32内に挿入することができ、ひいては術者のストレスを軽減することができる。
【0133】
(実施の形態15)
更にこれらに加え、誘導部7の末端部を、アンテナ部5(ひいてはプローブ1)の末端部9と同様の形状としてもよい。また、誘導部7の素材も、ガイドワイヤーのように金属製ではなく乳頭部33の括約筋を通り抜けられる程度に硬質な高分子材料を用いても良い。
【0134】
(実施の形態16)
実施の形態1においては、加温部5aとして、同軸ケーブルの或る部分において全周に亘るスリット5aを設けた。このスリット5aが全周に亘る代わりに、同軸ケーブルの一部のみに外部導体53を短絡させるためのスリット又は孔を設けても良い。この孔の形状は円形状でも矩形形状でも良い。また、この孔は、患部34の大きさ等に合わせて適宜複数設けても良い。
【符号の説明】
【0135】
1 ・・・マイクロ波プローブ
2 ・・・内視鏡
21 ・・・撮影部
22 ・・・照明部
23 ・・・起上部
3 ・・・制御部
4 ・・・電源部
5 ・・・アンテナ部
5a ・・・加温部(スリット)
51 ・・・内部導体
52 ・・・絶縁体
53 ・・・外部導体
54 ・・・外部被覆
56 ・・・キャップ
6 ・・・測温部(熱電対)
7 ・・・誘導部(ガイドワイヤー)
8 ・・・方向規定部(ガイドワイヤー挿通孔)
9 ・・・末端部
91 ・・・首振り部
10 ・・・コネクタ
11 ・・・最外部被覆(熱収縮チューブ)
31 ・・・十二指腸
32 ・・・胆道
33 ・・・ファーター乳頭部
34 ・・・患部
100・・・アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の挿通チャンネルに挿脱自在なマイクロ波プローブであって、
患部を加温するための加温部が設けられたマイクロ波アンテナからなるアンテナ部と、
前記マイクロ波プローブの末端に設けられた、先細りのテーパー形状の末端部と、
を具備するマイクロ波プローブにおいて、
前記アンテナ部における前記加温部を前記患部へと導くための誘導部であって、前記アンテナ部に対して自在に相対移動する誘導部と、
前記誘導部に沿った方向へと前記アンテナ部の移動方向を規定する方向規定部と、
を更に具備し、
前記末端部は可撓性を有することを特徴とするマイクロ波プローブ。
【請求項2】
前記誘導部はガイドワイヤーであり、前記方向規定部は前記末端部に設けられたガイドワイヤー挿通孔であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波プローブ。
【請求項3】
前記アンテナ部は同軸ケーブルからなり、
前記加温部は、前記同軸ケーブルに設けられたスリットであり、前記スリットからマイクロ波が放射され、前記患部が誘電加温されることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ波プローブ。
【請求項4】
前記マイクロ波プローブには更に測温部が備えられており、前記測温部は、熱電対、ファイバー型温度計及び超音波センサのいずれか又はそれらの組み合わせを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のマイクロ波プローブ。
【請求項5】
電源部との連結のためのコネクタであって、前記アンテナ部及び前記測温部に設けられたコネクタには、滅菌自在な材料が用いられていることを特徴とする請求項4に記載のマイクロ波プローブ。
【請求項6】
前記アンテナ部の外部被覆には、滅菌自在な材料が用いられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のマイクロ波プローブ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のマイクロ波プローブを用いた温熱治療装置であって、
測温部により測定された温度情報を制御部に伝達し、前記温度情報における温度と、前記制御部により制御される所定の温度との差を補正するために電源部の出力を変動させる手段を、前記制御部が備えていることを特徴とする温熱治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−217960(P2011−217960A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90599(P2010−90599)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】