説明

マイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置

【課題】被処理物によって処理容器の中にマイクロ波と超音波エネルギーを単独または同時に導入し、効率的に処理を行うことができるマイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置100は、筐体10と、処理容器20と、制御手段30と、マイクロ波発生手段40と、超音波発生手段(50,60,70)と、マグネチックスターラー80を備え、制御手段30は、マイクロ波発生手段40と超音波発生手段(50,60,70)とを単独または同時にマイクロ波と超音波を発生するように制御する。これにより、被処理物によって処理容器20の中にマイクロ波と超音波エネルギーを単独または同時に導入し、効率的に処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の化学反応の促進、無機・有機化合物の分解や合成、および物質の分散、乳化、抽出、分解等の処理を行う装置に関する。詳しくは、被処理物によって処理容器の中にマイクロ波と超音波エネルギーを単独または同時に導入し、効率的に処理を行うことができるマイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
周波数2.45GHzのマイクロ波で反応速度が速くなり、高収率で製品が得られることが従来から周知されている。
【0003】
従来からマイクロ波を反応物質または媒体物質に照射し、その反応物質または媒体物質を活性化させ化学反応を促進させるマイクロ波反応装置が一般的に利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、周波数20kHz〜数百kHzの超音波を用いて化学反応を促進し、高収率を得ることも周知されている。例えば、反応槽の側面に超音波振動子を配置し、振動子の放射面から超音波を放射する構成を有する反応装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、反応槽の底面または側面の外側から数個の超音波振動子を取り付ける場合、超音波エネルギーの放射面積が小さいため、反応槽内の反応物を均一に照射することができない、反応装置の大型化が困難である。
【0006】
これを解決するために、超音波エネルギーの放射面積が大きくし、超音波エネルギーが均一に反応槽中の反応物を照射することができ、実用化に適した超音波反応装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
この場合、反応槽内に円柱または円筒状の超音波放射体を配置することによって、超音波エネルギーの放射面積が大きくし、超音波エネルギーが均一に反応槽中の反応物を照射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−4544号公報
【特許文献2】特開2000−202277号公報
【特許文献3】特開2003−200042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した特許文献1に開示のマイクロ波反応装置は、2.45GHzのような周波数が比較的に高いマイクロ波エネルギーを利用して反応速度をアップさせることしかできない欠点があった。
【0010】
また、上記した特許文献2,3に開示の超音波反応装置は、20kHz〜数百kHzのような周波数が比較的に低い超音波エネルギーを利用して反応速度をアップさせることしかできない欠点があった。
【0011】
しかし、実際の化学処理過程の中では、異なる物質に対して反応速度を促進できる外部から印加されるエネルギーの種類も異なり、そのため、マイクロ波エネルギーと超音波エネルギーを単独または同時に印加でき、より効率的に処理を行うことができる反応装置が期待されている。
【0012】
そこで、本発明は、被処理物によって処理容器の中にマイクロ波と超音波エネルギーを単独または同時に導入し、効率的に処理を行うことができるマイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係るマイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置は、上部に少なくとも一つの開口を有する処理容器と、前記処理容器を収納する空間を有する筐体と、前記空間にマイクロ波を放射するマイクロ波発生手段と、前記処理容器に超音波を放射する超音波発生手段と、前記マイクロ波発生手段と前記超音波発生手段とを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記マイクロ波発生手段と前記超音波発生手段とを単独または同時にマイクロ波と超音波を発生するように制御することを特徴とするものである。
【0014】
例えば、前記超音波発生手段は、超音波発振器と、超音波振動子と、前記超音波振動子の先端に取り付けられ、冷却ジャケットを有する超音波振動ホーンとから構成され、前記超音波振動ホーンは、前記処理容器の開口より前記処理容器の内部に挿入され、前記超音波振動子から発生する超音波が、前記超音波振動ホーンを介して前記処理容器の内部に伝達される。
【0015】
また例えば、前記超音波振動ホーンは、非金属材料から形成され、または金属材料から形成され、その側面にはフッ素樹脂でコーティングされた。
【0016】
また例えば、前記超音波発生手段は、超音波発振器と、超音波振動子と、前記超音波振動子の放射面に取り付けられた振動板を有する水槽とから構成され、前記処理容器は、前記水槽に設置され、前記超音波振動子から発生する超音波が、前記振動板および水槽内の水を介して前記処理容器の内部に伝達される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、マイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置は、マイクロ波発生手段と、超音波発生手段と、マイクロ波発生手段と超音波発生手段とを制御する制御手段とを備え、制御手段は、マイクロ波発生手段と超音波発生手段とを単独または同時にマイクロ波と超音波を発生するように制御することで、被処理物によって処理容器の中にマイクロ波と超音波エネルギーを単独または同時に導入し、効率的に処理を行うことができる。
【0018】
また、超音波振動子から発生する超音波が、超音波振動ホーンを介して処理容器の内部に伝達されることで、超音波を直接に被処理物に照射することができる。よりハイパーワの超音波を導入することができる。
【0019】
また、超音波振動ホーンは、非金属材料から形成され、または金属材料から形成され、その側面にはフッ素樹脂でコーティングされたことで、マイクロ波発生手段への影響を減少することができる。
【0020】
また、超音波発生手段は、超音波発振器と、超音波振動子と、超音波振動子の放射面に取り付けられた振動板を有する水槽とから構成され、処理容器は、水槽に設置され、超音波振動子から発生する超音波が、振動板および水槽内の水を介して処理容器の内部に伝達されることで、超音波発生手段のコストを削減することができると共に、比較的に高い周波数の超音波を発生することが容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態のマイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置100の構成を示す図である。
【図2】第2の実施の形態のマイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置200の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るマイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置を実施するための形態を、図を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施の形態のマイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置100の構成を示す図である。
【0024】
図1に示すように、マイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置100は、筐体10と、処理容器20と、制御手段30と、マイクロ波発生手段40と、超音波発生手段(50,60,70)と、マグネチックスターラー80とを備える。
【0025】
筐体10は、処理容器20を収納する空間11を有する。空間11の側面および上下の面は金属板から構成される。上面には連結管21を挿通するための開口、および超音波振動ホーン70を挿通するための開口が設けられている。筐体10が金属で覆われて、外部にマイクロ波の遺漏がないように設計された。
【0026】
処理容器20は、ガラス製または樹脂製容器で、上部に少なくとも一つの開口を有する。この例では、ガラス製三口フラスコを用いる。三口フラスコの中央の開口は、超音波振動ホーン70が挿入され、三口フラスコ3の左側の開口は、連結管21を介して冷却器22、分液ロート23が配置されている。三口フラスコの右側の開口は、ゴム栓を介して温度センサ31が配置されている。処理容器20である三口フラスコが台座となるマグネットスターラー80に戴置されている。三口フラスコの中に撹拌子81が入れられている。
【0027】
制御手段30は、温度制御回路、タイマー、電源回路等が組み込まれ、マイクロ波発生手段40と超音波発生手段(50,60,70)とを単独または同時にマイクロ波と超音波を発生するように制御し、さらに、マイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置100の全体の動作を制御するものである。また、制御手段30は、温度センサ31により計測した温度で温度制御を行う。また、筐体10に設けられたCCDカメラ32からの画像信号をディスプレーに、または外部へ出力するように制御する。これにより、処理容器20内部の処理状態を容易に確認、記録することができる。
【0028】
マイクロ波発生手段40は、例えば、周波数2.45GHzのマイクロ波を発生するマイクロ波発振器および導波管(図示せず)が筐体10に取り付けられ、処理容器20を収納する空間11にマイクロ波を放射するものである。
【0029】
超音波発生手段(50,60,70)は、処理容器20に周波数20kHzまたは40kHzの超音波を放射するものであり、超音波発振器50と、超音波振動子60と、超音波振動子60の先端に取り付けられ、フランジ71および冷却ジャケット72を有する超音波振動ホーン70とから構成され、超音波振動ホーン70は、フランジ71で筐体10に固定され、処理容器20の開口より内部に挿入され、超音波発振器50と超音波振動子60から発生する超音波が、超音波振動ホーン70を介して処理容器20の内部に伝達される。また、超音波発振器50と超音波振動子60は、周波数20kHz〜80kHzの範囲において、少なくとも1つの周波数の超音波振動を発生することができる。
【0030】
超音波振動ホーン70は、金属材料から形成された段付きホーンである。または、非金属材料、例えばセラミックス等から形成されるホーンを用いてもよい。なお、超音波振動ホーン70は、金属材料から形成され、その側面にフッ素樹脂でコーティングを施すようにしてもよい。金属材料から形成された段付きホーンを用いる場合は、超音波振動ホーン70から反射されるマイクロ波がマイクロ波発振器に戻らないように形状、設置位置、およびマイクロ波発振器に繋がる導波管の形状等を適宜に設計することが望ましい。
【0031】
また、超音波振動ホーン70は、円柱または円筒状、例えば長さが少なくとも1つの超音波振動の周波数に対して、該超音波振動の半波長の整数倍に設定されている。超音波振動ホーン70は、先端面から超音波を放射するように形成される。
【0032】
なお、超音波振動ホーン70は、先端および側面が放射面として超音波を放射するように形成するようにしてもよい。これによって、超音波エネルギーの放射面積が大きくし、超音波エネルギーが均一に処理容器20中の被処理物を照射することが可能となる。この場合、超音波振動ホーン70の長手方向の長さは、例えば、超音波振動子の発振周波数に対応する波長λである場合、λ/2の整数倍とされる。超音波振動ホーン70の直径はλ/4〜λ/10される。
【0033】
このように本実施の形態においては、マイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置100は、筐体10と、処理容器20と、制御手段30と、マイクロ波発生手段40と、超音波発生手段(50,60,70)と、マグネチックスターラー80を備え、制御手段30は、マイクロ波発生手段40と超音波発生手段(50,60,70)とを単独または同時にマイクロ波と超音波を発生するように制御する。
【0034】
これにより、被処理物によって処理容器20の中にマイクロ波と超音波エネルギーを単独または同時に導入し、効率的に処理を行うことができる。
【0035】
また、超音波振動子60から発生する超音波が、超音波振動ホーン70を介して処理容器20の内部に伝達されることで、超音波を直接に被処理物に照射することができる。よりハイパーワの超音波を導入することができる。
【0036】
また、超音波振動ホーン70は、非金属材料から形成され、または金属材料から形成され、その側面にはフッ素樹脂でコーティングされたことで、マイクロ波発生手段40への影響を減少することができる。
【0037】
図2は、本発明の第2の実施の形態のマイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置200の構成を示す図である。
【0038】
図2に示すように、マイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置200は、筐体10と、処理容器20Aと、制御手段30と、マイクロ波発生手段40と、超音波発生手段(50,60A,90)とを備える。
【0039】
筐体10は、処理容器20Aを収納する空間11を有する。空間11の側面および上下の面は金属板から構成される。上面には連結管21を挿通するための開口が設けられている。筐体10が金属で覆われて、外部にマイクロ波の遺漏がないように設計された。
【0040】
処理容器20Aは、ガラス製または樹脂製容器で、上部に少なくとも一つの開口を有する。この例では、ガラス製三角フラスコを用いる。三角フラスコの開口は、連結管21を介して冷却器22、分液ロート23が配置されている。
【0041】
制御手段30は、温度制御回路、タイマー、電源回路等が組み込まれ、マイクロ波発生手段40と超音波発生手段(50,60A,90)とを単独または同時にマイクロ波と超音波を発生するように制御し、さらに、マイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置200の全体の動作を制御するものである。また、制御手段30は、非接触赤外線センサからなる温度センサ31Aにより計測した温度で温度制御を行う。
【0042】
マイクロ波発生手段40は、例えば、周波数2.45GHzのマイクロ波を発生するマイクロ波発振器および導波管(図示せず)が筐体10に取り付けられ、処理容器20Aを収納する空間11にマイクロ波を放射するものである。
【0043】
超音波発生手段(50,60A,90)は、処理容器20に周波数40kHzまたは200kHzの超音波を放射するものであり、超音波発振器50と、超音波振動子60Aと、超音波振動子60Aの放射面に取り付けられた振動板(底面)91、側面92からなる水槽90とから構成され、処理容器20Aは、支持具93に支持されて水槽90に設置され、超音波振動子60Aから発生する超音波が、振動板91および水槽内の水を介して処理容器20Aの内部に伝達される。また、超音波発振器50と超音波振動子60Aは、周波数20kHz〜800kHzの範囲において、少なくとも1つの周波数の超音波振動を発生することができる。
【0044】
このように本実施の形態においては、マイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置200は、筐体10と、処理容器20Aと、制御手段30と、マイクロ波発生手段40と、超音波発生手段(50,60A,90)とを備え、制御手段30は、マイクロ波発生手段40と超音波発生手段(50,60A,90)とを単独または同時にマイクロ波と超音波を発生するように制御する。
【0045】
これにより、被処理物によって処理容器20の中にマイクロ波と超音波エネルギーを単独または同時に導入し、効率的に処理を行うことができる。
【0046】
また、超音波発生手段(50,60A,90)は、超音波発振器50と、超音波振動子60Aと、水槽90とから構成され、処理容器20Aは、水槽90に設置され、超音波振動子60Aから発生する超音波が、振動板91および水槽内の水を介して処理容器20Aの内部に伝達されることで、超音波発生手段のコストを削減することができると共に、比較的に高い周波数の超音波を発生することが容易に実現できる。
【0047】
なお、上述した第1の実施の形態においては、超音波発生手段(50,60,70)は、筐体10の上面から内部に挿通される構成について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、筐体10の側面から内部に挿通するようにしてもよい。この場合、処理容器20の側面に開口が設けることが必要である。
【0048】
また、上述した第1の実施の形態においては、処理容器20としてガラス製三口フラスコを用いるものについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、先端および側面が放射面として超音波を放射するように形成される超音波振動ホーン70を用いる場合、処理容器20として試験管のような有底管状容器を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明は、各種の化学反応の促進、無機・有機化合物の分解や合成、および物質の分散、乳化、抽出、分解等の処理にマイクロ波と超音波エネルギーを単独または同時に導入し、効率的に処理を行う目的に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
10・・・筐体、11・・・空間、20,20A・・・処理容器、21・・・連結管、22・・・冷却器、23・・・分液ロート、30・・・制御手段、31,31A・・・温度センサ、32・・・CCDカメラ、40・・・マイクロ波発生手段、50・・・超音波発振器、60,60A・・・超音波振動子、70・・・超音波振動ホーン、71・・・フランジ、72・・・冷却ジャケット、80・・・マグネットスターラー、81・・・撹拌子、90・・・水槽、91・・・振動板、92・・・側面、100,200・・・マイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に少なくとも一つの開口を有する処理容器と、
前記処理容器を収納する空間を有する筐体と、
前記空間にマイクロ波を放射するマイクロ波発生手段と、
前記処理容器に超音波を放射する超音波発生手段と、
前記マイクロ波発生手段と前記超音波発生手段とを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記マイクロ波発生手段と前記超音波発生手段とを単独または同時にマイクロ波と超音波を発生するように制御することを特徴とするマイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置。
【請求項2】
前記超音波発生手段は、超音波発振器と、超音波振動子と、前記超音波振動子の先端に取り付けられ、冷却ジャケットを有する超音波振動ホーンとから構成され、
前記超音波振動ホーンは、前記処理容器の開口より前記処理容器の内部に挿入され、
前記超音波振動子から発生する超音波が、前記超音波振動ホーンを介して前記処理容器の内部に伝達されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置。
【請求項3】
前記超音波振動ホーンは、非金属材料から形成され、または金属材料から形成され、その側面にはフッ素樹脂でコーティングされたことを特徴とする請求項2に記載のマイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置。
【請求項4】
前記超音波発生手段は、超音波発振器と、超音波振動子と、前記超音波振動子の放射面に取り付けられた振動板を有する水槽とから構成され、
前記処理容器は、前記水槽に設置され、前記超音波振動子から発生する超音波が、前記振動板および水槽内の水を介して前記処理容器の内部に伝達されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波・超音波ハイブリッド化学装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−260036(P2010−260036A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126986(P2009−126986)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(503407797)新科産業有限会社 (3)
【Fターム(参考)】