説明

マイクロ波支援化学における高圧容器用の密封閉塞体

【課題】マイクロ波支援化学にて使用される圧力容器用のダイナミックシール構造体。
【解決手段】構造体は、マイクロ波透過性材料にて形成された円形の容器ライナー11及び取り外し可能なライナーキャップ12を備えている。ライナー11はそれぞれの第一及び第二の斜角付き端縁32、33にて形成されたリップ部31を有する円形の開口26を備えている。キャップ12は、それぞれの内面27及び外面30を備え、内面27から垂下するスリーブ24を有し、スリーブは圧力下にて容器ライナーの内面に対して付勢されるように容器ライナー11の内面に係合する周縁を有する。キャップの内面は、スリーブ24の外方に円形の通路25を備え、また、容器ライナー11のリップ部31に係合する周縁を有し、通路25はライナー11のリップ部31の双方の斜角付き端縁34、35にそれぞれ係合する2つの斜角付き端縁を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波支援化学用の方法及び装置、特に、高圧用の容器の閉塞体に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波支援化学は、化学的又は物理的反応を開始させ、進行させ又は向上させるためマイクロ波周波数範囲の電磁放射線が使用されるシステム、装置及び方法を説明すべく使用される用語である。マイクロ波支援化学は、マイクロ波放射線に応答可能な材料を加熱するのに特に有用であり、それは、殆どの状況下にて、対流、又は伝導加熱のようなより従来的な加熱技術を使用して反応を開始させ又は加速する場合よりも、加熱効果は遥かにより迅速に行われる結果となるからである。
【0003】
マイクロ波支援化学は、水分の測定、灰化焼却、消化、抽出等を含む多岐に亙る化学的過程にて使用することができる。幾つかの状況下にて、これらの色々な技術は、密封容器内で行われることが好ましく又は必要であり、これらの密封容器は、その内部でのガスの発生又は膨張のため、高圧力に耐え得るものでなければならない。
【0004】
電磁放射線分野の当業者に周知であるように、「マイクロ波」という語は、一般に、約1000乃至500,000ミクロン(μ)の範囲の波長及び約1×109乃至5×1011ヘルツ(Hz)の範囲の相応する周波数を有する放射線を一般的に指すためにしばしば使用される。しかし、これらは、任意の限界値であり、他の文献は、約108Hz乃至1012Hzの範囲の周波数及び約300センチメートル(cm)乃至0.3ミリメートル(mm)の範囲の周波数を有するものをマイクロ波と称している。米国における商業的及び消費者の目的のため、利用可能なマイクロ波周波数は、連邦通信委員会(Federal Communications Commission)により統括されており、一般に、2450メガヘルツ(MHz)のような特定の周波数に制限される。マイクロ波放射線の波長が相対的に長いため、マイクロ波支援化学技術は、閉じた容器内でしばしば行われ、その容器は、次に、外観上、消費者の電子レンジと似ているが、その発生源、導波管、キャビティ及び制御要素の点にて遥かにより高級のものである装置に入れる。
【0005】
本出願は、また、その内容の全体を参考として引用し本明細書に含めた、「連続的に巻いた織地補強材を有する圧力容器用の複合スリーブ(Composite Sleeve For Pressure Vessels With Continuously Wound Fabric Reinforcement)」という名称で、1999年3月1日付けで出願された、同時出願係属中の特許出願第09/260,209号にも関するものである。本発明が適用可能である、反応容器の型式を示すその他の特許及び出願係属中の出願は、その双方が本発明と同一人に譲渡された米国特許第5,427,741号及び米国特許第5,520,886号を含む。別の型式のものは、その内容の全体を参考として引用し本明細書に含めた、同時出願係属中で且つ同一人に譲渡された、1998年4月20日付け出願の特許出願第09/062,858号(「第’858号出願」)に記載されている。
【0006】
特許出願第09/260,209号に記載された複合スリーブは、その先行出願と共に、反応容器の初期の開発段階の不利益な点の幾つかを回避しつつ、マイクロ波支援化学を行うことのできるときの反応圧力を著しく増す機会を提供するものである。特に、特許出願第09/260,209号に記載された複合容器の向上した性能、及び制御された破損故障無しの特徴及びそれに関連した特徴は、マイクロ波支援化学を反応容器内で5515.81kPa(800ポンド平方インチ(psi))のような高圧にて行うことを可能にしている。特許出願第09/260,209号及びその先行出願に記載されたように、複合スリーブと、フレームの双方により反応容器を取り巻き、そのフレームが容器を所定位置に保持し且つ容器の蓋又はキャップを反応容器に対して緊密に押し付けるようにすることにより、より高圧力をある程度まで受け入れることができる。
【0007】
しかし、これらのより高圧力における研究が進むに伴って新たな問題点が生じる傾向となった。具体的には、典型的な反応容器はポリマー(すなわち、マイクロ波の透過性及び化学的攻撃に対する抵抗性がある)にて製造されているため、これらの反応容器は、現在、使用されている極めて高圧力下にて変形し勝ちである。更に、フレームは、容器の寸法は容器の軸方向に沿って多少、制限されたものに保つため、高圧力にて生ずる変形は、典型的に円筒形の反応容器の半径方向への変形として観察され勝ちとなる。一方、この半径方向への変形は、容器の蓋又はキャップを容器から離脱させ、容器内の所望の圧力又は試薬又はその双方が失われることになる。幾つかの装置(例えば、特許出願第09/062,858号)において、この変形は、高圧力を自然解放するための技術として歓迎される。しかし、その他の状況において、高圧力は望ましく、また、容器は閉じたままでなければならない。換言すれば、高圧力にて作動可能な容器及び装置を開発することに成功したが、高圧力下の容器の変形として対処しなければならない新たな問題点が生じている。
【0008】
従って、特許出願第09/260,209号及びその先行出願に記載された複合スリーブ及びフレーム構造体の利点を活用することができ、しかも、反応が進行するに伴って容器の内部から抽出される半径方向への高圧力に耐えることができ、フレームが容器の長手方向寸法を保ち、また、キャップが反応が行われる前と相対的に同一である、典型的に、ポリマーで出来た、マイクロ波透過性及び化学的抵抗性のある容器が課題とされている。マイクロ波支援化学、特に、特許出願第09/260,209号及びその先行出願に記載された型式の装置に詳しい当業者は、勿論、容器及びフレームは共に、多少、長手方向に変形するが、その程度は、容器及びフレームの設計パラメータの下で望まれる程度以上でないことが認識されよう。特許出願第09/260,209号及び特許出願第09/062,858号に記載されたように、キャップが僅かに解放することを許容する、フレームの僅かな曲がりは、幾つかの状況下にて、反応容器内の圧力を制御する自然調節方法として望ましいものである。このことは、特定の圧力時、特定の自然解放が望まれるとき有益であるが、反応の進行を促進し又は完了させるため容器がより高圧力にて閉じたままでなければならないとき、不利益なことである。
【0009】
従って、容器内部の圧力によって変形されるときでさえ、密封されたままである重合系の反応容器及びキャップが課題とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このため、本発明の1つの目的は、容器内部の高圧力によって変形し、また、かかる変形が生じつつあるときでも、密封されたままである反応容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、マイクロ波支援化学にて使用される圧力容器に対するダイナミックシール構造体によってこの目的を達成するものである。該構造体は、容器と、該容器のキャップとを備えている。容器の中身が圧力下にあるとき、該キャップの第一の手段がキャップの一部分を半径方向に密封した関係にて容器の内部に対して付勢する。キャップの第二の手段がキャップの一部分を半径方向に密封した関係にて容器の外側に対して付勢する。より具体的には、反応容器は円筒形であり、該反応容器の一端が試薬を投入することのできる円形の開口を画定する。円形のキャップは上記の容器に対するそれぞれの内面及び外面を有し、スリーブがキャップの内面から垂下しており、また、該スリーブは、容器の内面に係合するのに十分な直径を有している。キャップの内面もまた、反応容器の円形の開口を受け入れる十分な幅の円形の通路も備えており、反応容器の外側に重なり合う通路の半径方向外側となるキャップの部分を有している。
【0012】
より好ましくは、ライナーはそれぞれの第一及び第二の斜角付き端縁に形成されたリップ部を有する円形の開口を備え、該第一の斜角付き端縁が円形の開口の内側端縁を形成し、第二の斜角付き端縁が円形の開口の外側端縁を形成するようにする。該キャップは、それぞれの内面及び外面を備えており、中空のスリーブが内面から垂下し且つ周縁を有し、この周縁が容器の内面に係合して圧力下にて容器のライナーの内面に対して付勢されるようにする。キャップの内面は、また上記スリーブの外側の円形の通路も備え且つ周縁を有しており、この周縁は容器のライナーのリップ部に係合する。該通路は、それぞれライナーのリップ部の双方の斜角付き端縁に係合する2つの斜角付き端縁を備えている。
【0013】
本発明の上記及びその他の目的並びに有利な点及び本発明が実施される方法は、添付図面に関する以下の詳細な説明に基づいて一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による容器及びフレームの斜視図である。
【図2】本発明の細部の一部を示す、図1の線2−2に沿った、断面図である。
【図3】本発明による反応容器の上方部分及びそのキャップの分解断面図である。
【図4】圧力容器と係合したキャップを示す、図3と同様の部分断面図である。
【図5】マイクロ波支援化学に適したマイクロ波装置のキャビティ内にある本発明による複数の容器及びフレームを示す、本発明によるマイクロ波装置の前方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、マイクロ波支援化学にて使用される圧力容器のダイナミックシール構造体である。図1及び図2には、天井構造体の全体的な構成要素及び該天井構造体が使用される環境が示されている。図1の斜視図には、全体として容器アセンブリが参照番号10で示してある。該容器アセンブリ10は、図2、図3及び図4に最も良く図示した容器11を備えている。該容器11は円筒形の形状であり、また、テフロン(Teflon)(登録商標)のようなマイクロ波透過性で且つ化学的抵抗性のある材料にて製造されたものであることが好ましい。該容器は容器を閉じ且つその内部に中身を保つキャップ12を備えている。容器及びキャップはフレーム13により取り巻かれており、このフレームはキャップ12を圧力容器11に対して所定の位置に保つのに役立つ。図1及び図2に図示するように、容器アセンブリ10は、容器11が休止することのできるフレーム13の下方部分に取り付けプラグ14を更に備えており、また、調節可能な量の圧力(ボルトを締め付ける緊密さの程度に依存する)をキャップ12に対して作用させるべく使用することができる締め付けボルト15を備えている。幾つかの実施の形態において、容器は、ボルト15とキャップ12との間に配置され、容器及び締め付けられるボルト15の全体を構造的に強化するのに役立つ荷重ディスク(図示せず)を備えることができる。
【0016】
図5には、マイクロ波放射線源を含むマイクロ波装置のキャビティ内に複数の容器装置を配置する典型的な方法が示してある。本発明の閉塞体とは別に、図5に図示したもののような装置の構造体及び作用は、全体としてこの技術分野にて周知であり、従って詳細には説明しない。全体として、キャビティ16は、その内部に配置された複数の容器装置10への容易なアクセスを許容する扉17を備えている。該容器装置は、マイクロ波が照射される間、これら装置を動かすことができるように回転台20上に取り付けられることが好ましい。マイクロ波に詳しい当業者に既知であるように、かかる動きは、容器の各々の中身が同時に実質的に等しい量のマイクロ波放射線にて照射されることを確実にするのに役立つ。図5の装置の全体は、参照番号21で表示されており、マイクロ波源と、制御盤22で代表させた制御装置と、装置の作用に関する適正な情報及び反応容器内の状態に関する可能な情報を提供するディスプレイ23とを備えている。この型式の装置21のその他の型式におけるように、容器装置10の1つは、典型的に、反応が進行するに伴い、オペレータがモニターし又は装置21によって自動的にモニターすることができる何らかの型式の温度測定及び圧力測定装置を受け入れ得るような構造とされている。
【0017】
一例としての実施の形態において、容器装置10は、上記の特許出願第09/260,209号及びその先行出願に記載された型式の複合スリーブ18を更に備えている。その他の全ての材料の場合のように、複合スリーブは、同様に、マイクロ波周波数の範囲内の電磁放射線に対して実質的に透過性であり、また、最も苛酷な化学物質、特に、鉱物系酸による攻撃に対し同様に抵抗性のある材料にて形成されている。
【0018】
図3及び図4には、本発明の特定の特徴が図示されている。その最も広い意味において、本発明は、容器11の中身に圧力が加わったとき、キャップ12の部分を容器11の内部に対して半径方向(軸方向ではなく)密封関係に付勢する垂下スリーブ24として図示された、キャップ12における第一の手段を備えている。本発明は、容器11の中身に圧力が加わったとき、キャップ12の部分を容器11の外部に対して半径方向に密封する関係に付勢する、キャップ12の円形の通路25として図示された、キャップにおける第二の手段を更に備えている。換言すれば、ダイナミックシール構造体は、キャップ12を容器11の内部と係合させると同時に、キャップ12を容器の外部に対して付勢する力を容器の内部に対して提供する。
【0019】
本発明によるダイナミックシール構造体は、円筒形の反応容器11にて形成され、その反応容器の一端が図面に全体として参照番号26で示した円形の開口を画定するものとして更に理解することができる。該開口26は、勿論、容器11内に試薬を入れることができる位置にある。幾つかの環境において、容器11は、全体的な容器装置10の内部ライニングを形成するため、「ライナー」とも称される。
【0020】
容器11に対する円形のキャップ12は、それぞれの内面27及び外面30を有している。この実施の形態において、中空のスリーブ24は、キャップ12の内面27から垂下し、また、スリーブ24が容器11の内面に係合するのに十分な直径を有している。
【0021】
キャップ12はまた、その内面27に円形の通路25も備えている。該円形の通路25は、反応容器11と円形の開口26を受け入れるのに十分な幅を有し、また、該通路は、反応容器11の外側に重なり合い、通路25の半径方向外側にあり、反応容器11の外側に重なり合う、キャップ12の部分を有する。
【0022】
上記に記載したように、容器及びキャップの以前の組み合わせに伴う可能な問題点の1つは圧力を受けたときに容器が変形し勝ちであり、特に、その軸方向(すなわち、長手方向)拡張がフレーム13及びボルト15により制限され又は制御されることを考慮するならば、特に半径方向に変形し勝ちであった。その結果、容器11が半径方向に変形して、容器11とキャップ12との間の密封状態が損なわれ易かった。しかし、本発明において、図3及び図4に最も良く図示するように、中空のスリーブ24は、容器11内の上昇した圧力がスリーブ24を容器11の内面に対して緊密に付勢し、これにより変形力に対する内部シールを与える機構を提供する。キャップ12の通路25及び重なり合う部分は、半径方向に変形した容器11がそのシール効果を失わずに当接する面を提供することにより、スリーブの動作を補助する。
【0023】
換言すれば、容器11内の高圧力はスリーブ24を容器11の内部に対して緊密に付勢し、また、容器11をキャップ12内の通路25に対して緊密に付勢する。
好ましい実施の形態において、また、図3及び図4に図示するように、円形の通路25は、鋭角な角度にて形成された斜断面を有している。しかし、通路の断面に対しその他の形態を採用することも可能であり、これらの形態は、同様に特許請求の範囲に記載した本発明の一部を形成するものであることが理解されよう。例えば、円形の通路25は、矩形の断面、曲線状断面又はこれらの幾何学的特徴の組合わせ体さえも有するようにしてもよい。しかし、本明細書に記載した斜断面は、占有スペースが最小程度であり、従って、より効率的な寸法の圧力装置を提供することができる。同様に、該圧力装置は、ライナー開口における通路と、キャップ12の斜角付きリップ部とを備えるようにしてもよい。しかし、容器を充填し且つ空ける間、反応液体が通路内に漏れ出る可能性が大きいため、かかる構成は液体の取扱いに対して制御性が低く、またこの構成は、好ましい実施の形態のものよりも大型ともなり勝ちである。
【0024】
図3及び図4を更に詳細に参照すると、これら図面には、円筒形の容器ライナー11及び除去可能なキャップ12が図示されており、容器11は、それぞれの第一及び第二の斜角付き端縁32、33にて形成された、全体として参照番号31で示したリップ部が設けられた円形の開口26を有する。第一の斜角付き端縁32は、円形の開口26の内端縁を形成する一方、第二の斜角付き端縁33は円形の開口26の外端縁を形成する。
【0025】
上述したように、キャップ12は、それぞれの内面27及び外面30を備え、中空のスリーブ24が内面27から垂下している。スリーブ24は、圧力下にて容器のライナー11の内部に対して付勢されるように容器のライナー11の内面に係合する周縁を有している。
【0026】
この実施の形態において、キャップの内面27は、スリーブ24の外側にあり且つ容器11のリップ部31に係合する周縁を有する円形の通路を備えている。リップ部31と相補的な仕方にて、通路25は、ライナー11のリップ部31の斜角付き端縁32、33の双方にそれぞれ係合する2つの斜角付き端縁34、35を備えている。上述したように、斜角付きリップ部31及び斜角付き通路25を使用することは、装置の密封性と最も効率的なスペースの使用と組み合わせるうえで最も効率が良い。
【0027】
図4には、好ましい実施の形態において、通路25の斜角部分34は、容器11のリップ部31における斜角部分32と正確に等しい角度で形成されていないことが示してある。代わりに、斜角部分32、34は、圧力が容器11を変形させるとき、シールの動的性質を向上させるような互いに対する角度を形成する。斜角部分34を斜角部分32に僅かに異なる角度に保つことにより、この構造体は、部品が圧力下にて変形するとき、又は、製造中に完全に機械加工されないときでも、斜角部分34の表面と斜角部分32の表面との間に常に幾分かの接触が存在することを保証する。換言すれば、斜角部分が同一の角度を有するとき、これらの斜角部分は、より大きい設計許容公差を必要とし、また、高圧力下にて完全に接触したままである可能性は幾分小さい(必ずしもそうとは限らないが)。全ての状態下にてこれらの双方を満足させることは、不可能でないにしても、多少難しい。しかし、角度が僅かに相違するならば、表面34と表面32との間の接触点は、容器11が変形するとき、移動する効果があり、しかも、表面32、表面34を常に互いに接触した状態に保つ。また、この角度差は、表面34、32が各ストリップを横断するよりも1つの点(すなわち、周縁線)にて交わる可能性がより大きい構造体も形成する。表面34、32は、1点にて交わるため、その点における単位荷重は、常に相対的に大きい、すなわちより効果的なシールを提供する。
【0028】
リップ部31の斜角32及び通路25の斜角34は、このダイナミックシール効果を許容するのに十分大きくしなければならないが、キャップ12を殆どの状態下にてライナー11上に密封された状態に保つため遥かにより大きい力を必要とするような角度よりは小さくなければならない。このように、現在、少なくとも約2°の角度が必要であるが、約8°の角度では大きすぎると考えられる。従って、現在の好ましい実施の形態において、リップ部31の表面32と通路25の表面34との間の角度は約4°に保たれる。
【0029】
本明細書に記載した全ての実施の形態におけるように、この実施の形態のキャップ及びライナーは、複合強化スリーブ18、取り巻くフレーム13及び締め付けボルト15と共に使用することが好ましい。これらの全ては、マイクロ波放射線に対して実質的に透過性であり且つ化学的攻撃に対して抵抗性があり、しかも、その内部で行なおうとする反応に対する構造上の強度条件に適合する材料で出来ている。材料を効率的に且つ経済的に使用する理由のため、異なる用途に対し異なる材料又は材料の強度を設定し又は選ぶことができる。換言すれば、予想される使用条件に依存して、本明細書に記載した要素の各々に対し幾つかの異なる型式の材料を使用することが可能であるが、使用される特別型式のポリマー又はその他の材料は、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されよう。その代わり、本発明の範囲は、本発明を多数の異なる材料と共に好都合に使用できるようなものである。
【0030】
以前の実施の形態におけるように、斜角付き端縁を有する実施の形態は、単一のキャビティ16内で複数の化学的反応を同時に行なわせるため、参照番号21で示すようなマイクロ波装置でその他の複数の実施の形態にて具現化することができる。
【0031】
更なる詳細として、フレームは、典型的に、高強度熱可塑性ポリマー及びエンジニアリングポリマーから成る群から選ばれる。典型的なポリマーは、ABS樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン、PEEK樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、より高強度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)及び尿素ホルムアルデヒド樹脂を含むが、これらにのみ限定されるものではない。特に好ましいプラスチックは、ゼネラルエレクトリック(General Electric)からのULTEM(登録商標名)のようなポリエーテルイミドプラスチックである。熱可塑性材料は、ポリマー技術の当業者にとって周知であり、従って、本明細書で再度、説明しない多数の重合化及び触媒技術により異なる強度にて形成することができる。
【0032】
マイクロ波透過性で且つ化学的に不活性であり、しかも構造的に適したポリマーに精通した当業者は、容器及びキャップに対してこれらの特性に適合するその他のポリマーを使用し、また、不必要な実験を行なわずに選ぶことができることが理解されよう。一例としてのフルオロポリマー及びその他の材料は、米国特許第5,520,886号のコラム5、17−55行にも記載されている。米国特許第5,520,886号の内容の全体は参考として引用して本明細書に含められる。
【0033】
図面及び本明細書において、本発明の典型的な実施の形態を開示し、また、特定の語を使用したが、これらの語は、限定的することを目的とするものではなく、一般的で且つ説明の目的のためにのみ使用したものであり、本発明の範囲は特許請求の範囲に記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波支援化学で使用される圧力容器用のダイナミックシール構造体において、
容器と、該容器用のキャップと、
前記容器の中身が圧力下にあるとき、前記キャップの部分を半径方向に密封する関係にて前記容器の内側に対して付勢すべく、前記キャップに設けられた第一の手段と、
前記容器の中身が圧力下にあるとき、前記キャップの部分を半径方向に密封する関係にて前記容器の外側に対して付勢すべく、前記キャップに設けられた第二の手段と、を備えるダイナミックシール構造体。
【請求項2】
請求項1によるダイナミックシール構造体において、前記容器の中身が圧力下にあるとき、前記キャップ上の前記第二の手段と係合させるべく前記容器の外側に設けられた第三の手段を更に備える、ダイナミックシール構造体。
【請求項3】
請求項2によるダイナミックシール構造体において、前記容器及び前記キャップを取り巻き且つ前記容器及び前記キャップに対して当接するフレームを更に備える、ダイナミックシール構造体。
【請求項4】
請求項3によるダイナミックシール構造体において、前記容器、前記キャップ、及び前記フレームが全て、マイクロ波放射線に対して透過性で且つ化学的攻撃に対する抵抗性のある材料にて形成される、ダイナミックシール構造体。
【請求項5】
請求項4によるダイナミックシール構造体において、前記容器を取り巻く複合スリーブを更に備える、ダイナミックシール構造体。
【請求項6】
マイクロ波支援化学用の装置において、
マイクロ波発生源と、
該発生源とマイクロ波連通したキャビティと、
前記発生源により発生され且つ前記キャビティ内で伝播するマイクロ波にて照射される、前記キャビティ内の請求項5による複数の容器とを備える、マイクロ波支援化学用の装置。
【請求項7】
マイクロ波支援化学にて使用される圧力容器用のダイナミックシール構造体において、
試薬を入れることのできる円形の開口を画定する一端を有する円筒形の圧力容器と、
前記容器に対するそれぞれ内面及び外面を有する、前記容器用の円形のキャップと、
前記キャップの前記内面から垂下し且つ前記容器の内面に係合するのに十分な直径を有するスリーブと、
前記反応容器の前記円形の開口部を受け入れる十分な幅を有する、前記キャップの前記内面における円形の通路とを備え、前記通路の半径方向外側にある前記キャップの部分が前記反応容器の外側に重なり合う、ダイナミックシール構造体。
【請求項8】
請求項7によるダイナミックシール構造体において、前記円形の通路が矩形の断面を有する、ダイナミックシール構造体。
【請求項9】
請求項7によるダイナミックシール構造体において、前記円形の通路が斜断面を有する、ダイナミックシール構造体。
【請求項10】
請求項7によるダイナミックシール構造体において、前記円形の通路が曲線状断面を有する、ダイナミックシール構造体。
【請求項11】
請求項7によるダイナミックシール構造体において、
前記容器及び前記キャップを取り巻く矩形のフレームと、
前記容器及び前記キャップに対して当接し得るように調節可能に締め付けるべく前記容器と同軸状に且つ該キャップに対して当接するように前記フレーム内にねじ込まれたボルトとを更に備える、ダイナミックシール構造体。
【請求項12】
請求項11によるダイナミックシール構造体において、前記容器、前記キャップ、前記フレーム及び前記ボルトが全てマイクロ波放射線に対して透過性で且つ化学的攻撃に対して抵抗性のある材料にて形成される、ダイナミックシール構造体。
【請求項13】
請求項12によるダイナミックシール構造体において、前記容器を取り巻く複合スリーブを更に備える、ダイナミックシール構造体。
【請求項14】
マイクロ波支援化学用の装置において、
マイクロ波発生源と、
該発生源とマイクロ波連通したキャビティと、
前記発生源により発生され且つ前記キャビティ内に伝播するマイクロ波にて照射され得る、前記キャビティ内の請求項13による複数の容器とを備える、ダイナミックシール構造体。
【請求項15】
マイクロ波支援化学にて使用される圧力容器用のダイナミックシール構造体において、
各々がマイクロ波透過性材料でできた円筒形の容器ライナー及び取り外し可能なライナーキャップを備え、
前記ライナーが、それぞれの第一及び第二の斜角付き端縁にて形成されたリップ部を有する円形の開口を備え、
前記第一の斜角付き端縁が前記円形の開口の内端縁を形成し、
前記第二の斜角付き端縁が前記円形の開口の外端縁を形成し、
前記キャップが、それぞれの内面及び外面を備え、スリーブが、前記内面から垂下し、圧力下にて前記容器のライナー内面に対して付勢されるように前記容器のライナーの内面に係合する周縁を有し、
前記キャップの前記内面が、前記スリーブの外側にあり且つ前記容器のライナーのリップ部に係合する周縁を有する円形の通路を備え、
前記通路が、前記ライナーの前記リップ部の双方の斜角付き端縁にそれぞれ係合する2つの斜角付き端縁を備える、ダイナミックシール構造体。
【請求項16】
請求項15によるダイナミックシール構造体において、
前記容器及び前記キャップを取り巻く矩形のフレームと、
前記容器及び前記キャップに対して当接し得るよう調節可能に締め付けるべく前記容器と同軸状で且つ前記キャップに対して当接するように前記フレーム内にねじ込まれたボルトと、
前記容器を取り巻く複合スリーブとを備え、
前記フレーム、前記ボルト及び前記複合スリーブが全て、マイクロ波放射線に対して透過性で且つ化学的攻撃に対して抵抗性のある材料にて形成される、ダイナミックシール構造体。
【請求項17】
マイクロ波支援化学用の装置において、
マイクロ波発生源と、
該発生源とマイクロ波連通したキャビティと、
前記発生源により発生され且つ前記キャビティ内で伝播するマイクロ波にて照射される、前記キャビティ内の請求項16による複数の容器とを備える、マイクロ波支援化学用の装置。
【請求項18】
請求項15によるダイナミックシール構造体において、前記通路の前記斜角部の少なくとも一方が前記リップ部の相応する斜角部に対して斜めである、ダイナミックシール構造体。
【請求項19】
請求項15によるダイナミックシール構造体において、前記ライナー及びキャップがフルオロポリマーにて形成される、ダイナミックシール構造体。
【請求項20】
請求項16によるダイナミックシール構造体において、前記フレーム及びボルトが、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、PEEK樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、尿素ホルムアルデヒド樹脂から成る群から選ばれた重合系材料にて形成される、ダイナミックシール構造体。
【請求項21】
請求項16によるダイナミックシール構造体において、前記複合スリーブが織り地及びポリマーの複数の隣接する層を備える、ダイナミックシール構造体。
【請求項22】
高圧マイクロ波支援化学用のダイナミックシール構造体用のキャップにおいて、
それぞれの内面及び外面と、
前記キャップの前記内面から垂下するスリーブであって、反応容器の内面に係合するのに十分な直径を有する前記スリーブと、
反応容器の開口を受け入れるのに十分な幅を有する前記キャップの前記内面における通路とを備え、前記通路の半径方向外側の前記キャップ部分が反応容器の外側に重なり合うようにした、キャップ。
【請求項23】
請求項22によるキャップにおいて、前記スリーブ及び前記通路が共に円形である、キャップ。
【請求項24】
請求項22によるキャップにおいて、前記通路が2つの斜角付き端縁にて形成された斜断面を有する、キャップ。
【請求項25】
請求項22によるキャップにおいて、フルオロポリマーにて形成される、キャップ。
【請求項26】
高圧マイクロ波支援化学用のダイナミックシール装置用のライナーにおいて、
それぞれの第一及び第二の斜角付き端縁にて形成されたリップ部を有する開口を備え、
前記第一の斜角付き端縁が前記開口の内端縁を形成し、
前記第二の斜角付き端縁が前記開口の外端縁を形成する、ダイナミックシール装置用のライナー。
【請求項27】
請求項26によるライナーにおいて、前記開口が円形である、ライナー。
【請求項28】
請求項26によるライナーにおいて、フルオロポリマーにて形成される、ライナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132565(P2012−132565A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−288805(P2011−288805)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2000−621060(P2000−621060)の分割
【原出願日】平成12年5月17日(2000.5.17)
【出願人】(500119569)シーイーエム・コーポレーション (16)
【Fターム(参考)】