説明

マイクロ波照射下での有機化合物の効率的製造方法

【課題】マイクロ波照射下で芳香族化合物等の有機化合物を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】マイクロ波照射により促進される芳香族化合物等の有機化合物の合成反応をマイクロ波照射下で行う際、誘電損失係数が大きい化合物を添加して反応を行い、生産効率(一定の電力エネルギーを用いて得られる目的生成物の収量)を向上させる。そのような添加剤としては、誘電損失係数が5〜30の化合物が効果的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波照射下で有機化合物の合成反応を効率よく行うための方法、中でも、マイクロ波照射下での芳香族化合物の効率的製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ケトン等の芳香族化合物は、有機化学工業において基礎化学品あるいは機能性化学品として利用されている重要な有機化合物である。それらの合成法として、芳香環上に反応性の原子を有する芳香族化合物を適当な修飾剤と反応させる方法が知られている。
たとえば、芳香族化合物とカルボン酸誘導体から芳香族ケトンを製造する反応は、有機化学工業において重要な基本反応の一つである。ところが、その反応では原料である芳香族化合物あるいはカルボン酸誘導体原料の反応性が低い場合、生成物を良好な収率で得ることが一般には難しいという問題点があった。その問題を解決するために、最近、マイクロ波照射を行うことにより、反応速度・収率を向上させることが提案されている(たとえば特許文献1、2)。
しかしながら、マイクロ波照射反応を生産効率(一定の電力エネルギーを用いて得られる目的生成物の収量)の観点から検討した製造反応はまだ非常に少なく、反応速度・収率が向上する場合でも、生産効率の観点からは十分といえない場合も多かった。
上記の芳香族ケトンの製造例においても、生産効率やそれを向上させるための方法についての記載はなく、マイクロ波照射を用いた芳香族ケトン製造方法の工業的促進を図るためにも、生産効率を向上させる方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−516349
【特許文献2】特開2010−235588
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、マイクロ波照射下での芳香族ケトン等の芳香族化合物の製造反応等、マイクロ波照射により促進される有機化合物の合成反応において、生産効率を向上させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、反応で使用するマイクロ波の周波数帯において、誘電損失係数が5〜30の化合物を反応系に添加することにより生産効率を効果的に向上させることができるという新規な事実を見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の芳香族化合物の効率的製造方法及びマイクロ波照射反応を効率よく行うための方法を提供するものである。
【0006】
〈1〉マイクロ波照射により促進される有機化合物の合成反応において、誘電損失係数が5〜30の化合物を添加して、有機化合物の生産効率を向上させる方法。
〈2〉誘電損失係数が5〜30の化合物が、炭酸エステル、アミド、スルホン、アルコール、ニトロ化合物、エステル、ウレア化合物、イミダゾール化合物、ニトリル、スルホキシド、ケトンから選択される化合物であることを特徴とする〈1〉の方法。
〈3〉炭酸エステル、アミド、スルホン、アルコール、ニトロ化合物、エステル、ウレア化合物、イミダゾール化合物、ニトリル、スルホキシド、ケトンが、炭酸プロピレン、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、ε−カプロラクトン、スルホラン、エチレングリコール、ニトロベンゼン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、メタノール、N,N−ジエチルアセトアミド、N−エチルイミダゾール、アジポニトリル、N−メチルイミダゾール、ジメチルスルホキシド、3−メトキシプロピオニトリル、ベンゾニトリル、2,2,2−トリフルオロエタノール、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−ブチルイミダゾール、1−メチル−2−ピロリドン、3−ブタノリド、アセトフェノン、シアン化ベンジル、アセチルアセトンから選択される化合物であることを特徴とする〈2〉の方法。
〈4〉一般式(I)
R−H (I)
(式中、Rは1価の炭化水素環系又は複素環系の芳香族有機基を示し、環上の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていても差し支えない。)
で表される芳香族化合物と一般式(II)
R’(CO)m−X (II)
(式中、mは1又は0の整数を示し、R’は1価のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示し、Xはアシルオキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子を示す。)
で表される化合物の反応を、マイクロ波照射下で行い、一般式(III)
R−(CO)mR’ (III)
(式中、m、R及びR’は前記と同じ意味である。)
で表される芳香族化合物を製造する反応において、誘電損失係数が5〜30の化合物を添加して反応を行うことを特徴とする芳香族化合物の製造方法。
〈5〉誘電損失係数が5〜30の化合物が、炭酸エステル、スルホン、ニトロ化合物、エステルから選択される化合物であることを特徴とする〈4〉の方法。
〈6〉炭酸エステル、スルホン、ニトロ化合物、エステルが、炭酸プロピレン、スルホラン、ニトロベンゼン、γ−ブチロラクトンから選択される化合物であることを特徴とする〈5〉の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法を用いることにより、マイクロ波照射下での芳香族化合物の製造反応等、マイクロ波照射下で促進される有機化合物の合成反応を、生産効率を向上させて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】約800点の有機化合物の比誘電率(ε’)と誘電損失係数(ε”)の分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
一般に、化学物質にマイクロ波を照射した時のマイクロ波吸収量は下記式で表される(Chem.Soc.Rev.,27,p.213(1998))。
P=2πfεε’’E
(P:吸収熱量、f:マイクロ波周波数、ε:真空の誘電率、ε’’:誘電損失係数、E:電界強度)
この式において、その物質固有のパラメータはε’’で表される誘電損失係数(後述)であり、マイクロ波吸収熱量Pは、誘電損失係数ε’’と比例関係にある。したがって、誘電損失係数の大きい物質はマイクロ波を効率よく吸収できると考えられ、適当な誘電損失係数を有する物質を反応系に混合することにより、反応系全体のマイクロ波吸収性を上げることができると考えられる。
実際、マイクロ波照射を用いる化学反応においても、マイクロ波を吸収して発熱する適当な加熱材(サセプター)を添加することが提案されている(たとえば前記特許文献2)。そのような加熱材として、従来の具体例としては、活性炭、炭化ケイ素等の固体系無機化合物が示されていた。
しかしながら、そのような固体系無機化合物は、有機溶液中での化学反応においては、一般にその溶解性が乏しいために、反応系が不均一状態になり、マイクロ波照射下での化学反応に使用する場合、攪拌効率の低下や、固体表面での過加熱、異常加熱が起きたり、それらが原因となる副反応の増大による目的物の収率低下等を生じる可能性があった。
さらに、従来の製造例では、加熱材を用いることによって、生産効率がどうなるのかについては何ら示されておらず、加熱材と生産効率との関係も明確ではなかった。
【0010】
一方、有機溶液系の反応では、一般に液体系の有機化合物の方が、固体系無機化合物等よりも溶液に対する混合性がよく、均一な混合系を与やすいと考えられる。
そのような液体系有機化合物の混合系では、固体加熱材を含む不均一系とは異なり、攪拌効率の低下や、固体加熱材表面での過加熱等の問題を避けることができると考えられる。
したがって、液体系有機化合物で、マイクロ波吸収性が高い化合物を見つけることができれば、有機溶液系化学反応において効果的な加熱材として利用できる可能性がある。また、そのような有機化合物を添加剤として使用することにより、反応系全体のマイクロ波吸収性も増大すると考えられるため、生産効率の向上も期待できる。
【0011】
このような観点から、有機溶液系の反応系で使用するために、入手容易な市販のさまざまな液体系有機化合物約800点について、現在、化学反応用に最も安価に利用できるマイクロ波周波数である2.45GHz帯における誘電特性の測定と評価を行った。
その結果、約800点の有機化合物について、比誘電率(ε’)は1.5から50までの狭い範囲に分布(log(logε’)では−0.7〜0.25に分布)しているが、誘電損失係数(ε”)は0.0005〜40までの非常に広範囲に分布(logε”では−3.5〜2に分布)していることを見いだした(図1参照)。
【0012】
誘電損失係数の分布の割合としては、0.0005〜0.5が約39%、0.5〜2が約33%、2〜5が約17%、5〜10が約7%、10〜40が約4%である。
この中で、2以上の化合物はマイクロ波吸収性が高く、生産効率を向上させるための添加剤として利用できる可能性がある。
そこで、誘電損失係数が大きいことがわかった化合物について、それを誘電損失係数が小さい化合物に少量添加した時、加熱効率を向上できるのかについて検討した。
具体的には、たとえば、トルエン(誘電損失係数=0.012)に対して炭酸プロピレン(誘電損失係数=25.78)をごく少量添加して、マイクロ波照射でその溶液を加熱した場合の加熱効率((溶液を一定温度上げるために要した熱量/装置の消費電力量の熱量)×100%)を調べた。
その結果、1500Wのマイクロ波加熱装置を用いて行ったトルエンの加熱試験では、炭酸プロピレンを体積で約1%添加するだけで、加熱効率が16%から27%へと大きく向上することがわかり、マイクロ波照射を用いた化学反応において、生産効率を向上させるための添加剤として有望であることがわかった。
【0013】
そこで、炭酸プロピレン等を用いて、2.45GHz帯のマイクロ波照射下での芳香族化合物等の製造反応において、生産効率に対するそれらの添加効果を調べたところ、誘電損失係数が5〜30の化合物を反応系に添加することが、生産効率の向上に大変効果的であることを見いだした。
すなわち、本発明は、誘電損失係数が5〜30の化合物を添加することにより、マイクロ波照射下で有機化合物の合成反応を効率よく行うための方法を提供するものである。
【0014】
ここで、誘電損失係数とは下記式で表される複素誘電率の虚数部分の係数である。
ε=ε’−ε’’j
(ε:複素誘電率、ε’:比誘電率、ε’’:誘電損失係数)
複素誘電率の測定法としては、たとえば、空洞共振器摂動法、同軸プローブ反射法、伝搬遅延法等を挙げることができる。空洞共振器摂動法は、少量の試料(約0.1g程度)でも精度よく(誤差約5%以内)測定できる利点がある。
誘電損失係数の値は、測定周波数によって変化するが、マイクロ波を用いた化学プロセスへの応用を考慮すると、0.3〜30GHzにおいて添加剤の化合物が5〜30の値をもつことが重要である。
この周波数領域の中では、工業的応用が可能なIMS周波数帯である0.915GHz、2.45GHz、5.8GHzまたは24.125GHzにおいて上記範囲の誘電損失係数を有することが好ましく、とくに、家庭用利用が普及し工業的利用も進みつつある安価なマイクロ波周波数である2.45GHz帯において、上記範囲の誘電損失係数を有することが最も好ましい。
【0015】
添加剤として使用する化合物の誘電損失係数は、生産効率向上の程度を考慮すると5以上が好ましく、また過加熱等を抑えるために30以下にすることが必要である。したがって、誘電損失係数の範囲は5〜30であり、7〜30がより好ましく、10〜30がさらに好ましく、15〜30が最も好ましい。
【0016】
有機化学反応において、ある化合物を上記目的のための添加剤として利用するためには、その化合物が原料や生成物と反応しにくいことや、その化合物が製造反応の反応条件下で安定であることが重要である。
そのような化合物の種類としては、炭酸エステル、アミド、スルホン、アルコール、ニトロ化合物、エステル、ウレア化合物、イミダゾール化合物、ニトリル、スルホキシド、ケトン等が挙げられる。
それらの化合物の具体例としては、炭酸プロピレン、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、ε−カプロラクトン、スルホラン、エチレングリコール、ニトロベンゼン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、メタノール、N,N−ジエチルアセトアミド、N−エチルイミダゾール、アジポニトリル、N−メチルイミダゾール、ジメチルスルホキシド、3−メトキシプロピオニトリル、ベンゾニトリル、2,2,2−トリフルオロエタノール、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−ブチルイミダゾール、1−メチル−2−ピロリドン、3−ブタノリド、アセトフェノン、シアン化ベンジル、アセチルアセトン等を挙げることができる(表1参照)。
【0017】
【表1】

【0018】
上記化合物を添加剤として利用できるマイクロ照射下での有機化合物の合成反応の種類に特に制限はなく、目的とする反応の進行を阻害しないような反応条件を選んで、適宜使用することが可能である。
具体的な反応の種類としては、人名反応を中心に例示すると、炭素−炭素結合反応を伴う芳香族化合物の合成反応として、フリーデル−クラフツ(Friedel−Crafts)型反応、鈴木−宮浦反応、園頭反応、ヘック(Heck)反応、スティレ(Stille)反応等が挙げられる。その他の炭素−炭素結合生成を伴う反応としては、クネベナーゲル(Knoevenagel)反応、ディールス−アルダー(Diels−Alder)反応や、化合物の骨格転位を伴う、クライゼン(Claisen)転位反応、ベックマン(Beckmann)転位反応等を挙げることができる。さらに、炭素−窒素結合あるいは炭素−酸素結合生成を伴う反応で、含窒素あるいは含酸素置換基を有する芳香族化合物の合成法として知られるブッフバルト−ハートウィッグ(Buchwald─Hartwig)反応等を挙げることができる。
これらの反応の中で、フリーデル−クラフツ(Friedel−Crafts)型反応による芳香族化合物の製造反応では、目的とする反応の進行を阻害しないような条件が必要であることを考慮すると、添加剤として効果的な化合物の種類は、炭酸エステル、スルホン、ニトロ化合物、エステル等から選択されることが好ましく、製造反応の反応条件下で安定性が高い化合物であることが好ましい。
それらの化合物の具体例としては、炭酸プロピレン、スルホラン、ニトロベンゼン、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、それらは、マイクロ波照射を用いる芳香族化合物の製造反応において、生産効率を向上させるための添加剤として使用できる(表2参照)。
【0019】
【表2】

【0020】
一方、本発明の芳香族化合物の製造で原料として使用する芳香族化合物は、下記一般式(I)
R−H (I)
(式中、Rは1価の炭化水素環系または複素環系の芳香族有機基を示し、環上の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていても差し支えない。)
で表される炭化水素系または複素環系化合物のものである。
【0021】
一般式(I)において、Rが炭化水素環系の場合には、環内炭素数が好ましくは6〜22、より好ましくは6〜14である。それら炭化水素環系芳香族化合物の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、ペンタセン等が挙げられる。
【0022】
また、Rが複素環系の場合には、ヘテロ原子は硫黄、酸素原子等であり、環内炭素数が好ましくは4〜12、より好ましくは4〜8である。それら複素環系芳香族化合物の具体例としては、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン等が挙げられる。
【0023】
上記Rはその環上の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよく、それらの基の具体例としては、メチル基、イソプロピル基、ヘキシル基等のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ヘキシルオキシ基のようなアルコキシ基の他に、環上の2つの炭素原子を結合させる2価の基であるオキシエチレン基やオキシエチレンオキシ基等を挙げることができる。それらの基を有する化合物の具体例としては、トルエン、アニソール、エトキシベンゼン、ジヒドロベンゾフラン等が挙げられる。
【0024】
一方、上記芳香族化合物と反応させる化合物は、下記一般式(II)
R’(CO)m−X (II)
(式中、mは1又は0の整数を示し、R’はアルキル基、アラルキル基またはアリール基を示し、Xはヒドロキシ基、アシルオキシ基又はハロゲン原子を示す。)
で表される化合物である。
【0025】
一般式(II)において、R’がアルキル基の場合、その炭素数は好ましくは1〜20、より好ましくは1〜16である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−メチルプロピル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルペンチル基、オクチル基、1−メチルヘプチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0026】
また、一般式(II)において、R’がアラルキルの場合、その炭素数は好ましくは7〜21、より好ましくは7〜15である。アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等が挙げられる。
【0027】
さらに、一般式(II)において、R’がアリール基の場合、その炭素数は好ましくは6〜20、より好ましくは6〜16である。アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントレン基、ペリレン基等が挙げられる。
一方、一般式(II)において、Xはヒドロキシ基、アシルオキシ基又はハロゲン原子を示す。アシルオキシ基の具体例としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、バレリルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基等が挙げられ、ハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
したがって、それらの基等を有する一般式(II)の化合物としては、mが1の場合には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、フェニル酢酸、ナフチル酢酸、アントリル酢酸、安息香酸、トルイル酸、4−メトキシ安息香酸、ナフトエ酸、アントラセンカルボン酸、フェナントレンカルボン酸、ペリレンカルボン酸、無水酢酸、無水酪酸、無水吉草酸、無水安息香酸、塩化アセチル、臭化アセチル、塩化バレリル、塩化ヘキサノイル、塩化ベンゾイル等の化合物が挙げられ、mが0の場合には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、トリフルオロ酢酸フェニル、臭化エチル、塩化tert−ブチル、塩化ベンジル等の化合物が挙げられる。
【0028】
一般式(II)の化合物に対する一般式(I)の芳香族化合物のモル比は任意に選ぶことができるが、一般式(II)の化合物に対して得られる芳香族化合物の収率を考慮すれば、通常0.5以上20以下である。
【0029】
本発明では、一般式(II)の化合物を用いた芳香族化合物の求電子置換反応等で使われる従来公知の各種の無機系・有機系触媒を使用できる。無機系の触媒としては、無機酸、金属塩、シリカ、ゼオライト、モンモリロナイト等を挙げることができ、有機系の触媒としては、スルホ基含有ポリマー等を挙げることができる。
これらの中でゼオライト系触媒等は、触媒の分離・回収が容易である、規則的な細孔を有するために形状選択性が高く、生成物として特定の位置異性体を与えやすいという利点がある。そのようなゼオライト触媒の具体例としては、プロトン性水素原子あるいは金属カチオン(アルミニウム、チタン、ガリウム、鉄、セリウム等)を有するゼオライト系触媒が挙げられる。
ゼオライトとしては、Y型、ベータ型、モルデナイト型、ZSM−5型、フェリエライト型、SAPO型等の基本骨格を有するものが使用可能で、この中では、Y型、ベータ型、モルデナイト型およびZSM−5型が好ましく、Y型及びベータ型がより好ましい。
それらゼオライトにおいては、プロトン性水素原子を有するブレンステッド酸型のものや金属カチオンを有するルイス酸型のものなど、各種のゼオライトを使用できる。
この中で、プロトン性水素原子を有するプロトン型のものは、H−Y型、H−SDUSY型、H−SUSY型、H−ベータ型、H−モルデナイト型、H−ZSM−5型、H−フェリエライト型等で表される。また、アンモニウム型のものである、NH−Y型、NH−VUSY型、NH−ベータ型、NH−モルデナイト型、NH−ZSM−5型、NH−フェリエライト型等のゼオライトを焼成して、プロトン型に変換したものを使用することもできる。なお、上記プロトン型及びアンモニウム型のゼオライトで、H−SDUSY型、H−SUSY型、NH−VUSY型で表したものは、いずれもY型の基本骨格を有するものである。
【0030】
それらゼオライトとしては、市販品を含む各種のものを使用できる。市販品の具体例を示すと、Y型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CBV760、CBV780、CBV720、CBV712及びCBV600等、東ソー社より市販されているHSZ−360HOA及びHSZ−320HOA等が挙げられる。また、ベータ型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CP811C、CP814N、CP7119、CP814E、CP7105、CP814C、CP811TL、CP814T、CP814Q、CP811Q、CP811E−75、CP811E及びCP811C−300等、東ソー社より市販されている、HSZ−980HOA、HSZ−940HOA及びHSZ−930HOA等、UOP社より市販されているUOP−Beta等が挙げられ、モルデナイト型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されているCBV21A及びCBV90A等、東ソー社より市販されている、HSZ−660HOA、HSZ−620HOA及びHSZ−690HOA等が挙げられる。さらに、ZSM−5型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CBV28014、CBV8014、CBV5524G及びCBV8020等、東ソー社より市販されている、HSZ−870NHA、HSZ−860HOA及びHSZ−850HOA等が挙げられ、フェリエライト型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されているCP914及びCP914C等が挙げられる。
【0031】
原料に対する触媒量は任意に決めることができるが、重量比では一般式(I)又は一般式(II)の化合物に対して、通常は0.0001〜10程度で、好ましくは0.001〜8程度、さらに好ましくは0.001〜6程度である。
また、本発明で使用する誘電損失係数が5〜30の添加剤化合物の量も任意に決めることができるが、添加剤の重量%(溶液重量に対する添加物の重量%)としては、通常は0.01〜40%程度で、好ましくは0.01〜30%程度、さらに好ましくは0.01〜20%程度である。
【0032】
本発明の反応は、反応温度や反応圧力に応じて、液相または気相状態で行うことができる。また、反応装置の形態としては、バッチ型、フロー型等、従来知られている各種形態で行うことができる。反応温度は、−20℃以上、好ましくは0〜400℃、より好ましくは、20〜350℃である。さらに、反応圧力は、通常0.1〜100気圧で、好ましくは0.1〜80気圧、より好ましくは0.1〜60気圧である。反応時間は、反応温度、触媒量、反応装置の形態等に依存するが、1〜240分、好ましくは1〜180分、より好ましくは1〜120分程度である。
【0033】
また、反応を液相系で行う場合、溶媒の有無にかかわらず実施できるが、溶媒を用いる場合には、デカリン(デカヒドロナフタレン)、デカン等の炭化水素、クロロベンゼン、1,2−又は1,3−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジブチルエーテル等のエーテル等、原料と反応するものを除いた各種の溶媒が使用可能で、2種以上混合して用いることもできる。また、反応を気相で行う場合には、窒素等の不活性ガスを混合して反応を行うこともできる。
【0034】
本発明の反応におけるマイクロ波の照射では、接触式または非接触式の温度センサーを備えた各種の市販装置等を使用できる。また、マイクロ波照射の出力、キャビティの種類(マルチモード、シングルモード)、照射の形態(連続的、断続的)、強制冷却の有無(空気、不活性ガス、冷媒等による冷却)等は、反応のスケールや種類等に応じて任意に決めることができる。マイクロ波の周波数としては、通常、0.3〜30GHzである。
【0035】
本発明の方法で生成した芳香族化合物の精製は、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の有機化学上通常用いられる手段により容易に達せられる。
【0036】
次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
アニソール(Ia) 12mmol、ヘキサン酸(IIa) 1.0mmol、炭酸プロピレン 0.065mL(溶液中の重量%濃度として5%)、H−SDUSY型ゼオライト触媒 CBV720(ゼオリスト社製) 50mgの混合物を反応管に入れ、放射温度計を備えたマイクロ波照射装置(Biotage社製、Initiator、シングルモード型、2.45GHz、マイクロ波最大出力 400W)を用いて、攪拌しながら180℃で10分反応させた。生成物についてガスクロマトグラフ分析およびガスクロマトグラフ質量分析を行った結果、1−ヘキサノイル−4−メトキシベンゼン(IIIa)が、0.285mmol(収率28.5%)生成したことがわかった(表3参照)。
IIIaの生成量(mmol)をマイクロ波電力量(kWh)又は装置の消費電力量(kWh)で除した値(mmol/kWh)は、1kWhの電力量で生産できるIIIaのmmol収量(生産効率)と考えられ、それぞれ13.0又は4.8と計算された。
【0038】
【表3A】

【0039】
【表3B】

【0040】
本発明の芳香族化合物の製造では、添加剤として誘電損失係数が5〜30の化合物を使用することが重要で、そのような化合物を使用しない場合には、下記の比較例に示すように生産効率は低下した。
【0041】
(比較例1)
実施例1において、炭酸プロピレンを添加しない他は実施例1と同様に反応及び分析を行った結果、IIIaが0.198mol(IIIaに対する収率24.6%)生成したことがわかり、マイクロ波電力量当たりの生産効率は6.9(mmol/kWh)で、装置の消費電力量当たりの生産効率は3.0(mmol/kWh)であった(表3参照)。
比較例1の結果は、炭酸プロピレンを添加しない場合には、マイクロ波電力量当たり及び装置の消費電力量当たりいずれの場合でも生産効率が低下することを示すもので、逆に言えば、実施例1では炭酸プロピレンの添加により、生産効率が、マイクロ波電力量当たりで13.0/6.9=1.9倍、消費電力量当たりで4.8/3.0=1.6倍向上することを示している
【0042】
(実施例2〜32、比較例2〜13)
反応時間、添加剤、マイクロ波反応装置等の条件を変えて、実施例1又は比較例1と同様に反応及び分析を行った結果を表3に示す。
【0043】
実施例3と比較例2の結果は、炭酸プロピレンを5重量%から17重量%に増やした場合(実施例3)、炭酸プロピレンを添加しない場合(比較例2)と比べて、生産効率が、マイクロ波電力量当たりで27.0/10.5=2.6倍、消費電力量当たりで8.3/4.5=1.8倍に向上することを示したものである。また、実施例4と比較例3の結果は、反応時間を10分から20分にした場合、炭酸プロピレンを17重量%添加することにより(実施例4)、炭酸プロピレンを添加しない場合(比較例3)と比べて、生産効率が、マイクロ波電力量当たりで23.4/7.3=3.2倍、消費電力量当たりで7.1/3.0=2.4倍に向上することを示している。
また、実施例5〜7の結果は、炭酸プロピレンだけでなく、スルホラン、ニトロベンゼン、γ−ブチロラクトンを添加しても、生産効率を向上させる効果があることを示すもので、比較例1の結果と比較すると、これらの化合物の添加により、生産効率は、それぞれ、マイクロ波電力量当たりで12.6/6.9=1.8倍、11.6/6.9=1.7倍、8.2/6.9=1.2倍、消費電力量当たりで4.9/3.0=1.6倍、4.5/3.0=1.5倍、3.3/3.0=1.1倍向上している。
これらの化合物の添加による生産効率の向上は、反応温度を、実施例1〜7における180℃から、190℃または200℃に変えた場合も同様に観察された。たとえば、190℃、10分の反応では、実施例8〜10と比較例4の結果より、炭酸プロピレン、スルホラン又はニトロベンゼンの添加により、生産効率は、それぞれ、マイクロ波電力量当たりで19.2/10.6=1.8倍、18.6/10.6=1.8倍又は15.0/10.6=1.4倍、消費電力量当たりで7.5/4.8=1.6倍、7.5/4.8=1.6倍又は6.4/4.8=1.3倍向上した。また、200℃、15分の反応では、実施例11〜13と比較例5の結果より、炭酸プロピレン、スルホラン又はニトロベンゼンの添加により、生産効率は、それぞれ、マイクロ波電力量当たりで17.1/11.6=1.5倍、17.2/11.6=1.5倍又は21.9/11.6=1.9倍、消費電力量当たりで6.3/5.2=1.2倍、7.0/5.2=1.3倍又は8.5/5.2=1.6倍向上した。
【0044】
このような生産効率の向上は、マイクロ波反応装置の種類に関係なく観察された。たとえば、Biotage社製Initiatorの代わりにCEM社製Discover S−class(シングルモード型、2.45GHz、マイクロ波最大出力 300W)を用いた場合、実施例14〜16と比較例6の結果より、炭酸プロピレン、スルホラン又はニトロベンゼンの添加により、生産効率は、それぞれ、マイクロ波電力量当たりで41.4/23.2=1.8倍、37.5/23.2=1.6倍又は38.4/23.2=1.7倍、消費電力量当たりで11.1/8.5=1.3倍、11.6/8.5=1.4倍又は11.6/8.5=1.4倍向上した。また、Biotage社製Initiatorの代わりにAnton Paar社製Monowave 300(シングルモード型、2.45GHz、マイクロ波最大出力 850W)を用いた場合、実施例17〜19と比較例7の結果より、炭酸プロピレン、スルホラン又はニトロベンゼンの添加により、生産効率は、それぞれ、マイクロ波電力量当たりで56.1/51.9=1.1倍、64.4/51.9=1.2倍又は62.1/51.9=1.2倍向上した。
【0045】
さらに、原料化合物IIとしてヘキサン酸の代わりに無水酢酸を用いた場合にも、生産効率の向上が可能であり、実施例20と比較例8の結果は、炭酸プロピレンの添加により、生産効率が、マイクロ波電力量当たりで451/275=1.6倍、消費電力量当たりで136/96=1.4倍向上したことを示している。
また、この炭酸プロピレンの添加による生産効率の向上は、マイクロ波加熱装置を他の装置に代えた場合にも、観察された。
たとえば、Biotage社製Initiator(シングルモード型、マイクロ波最大出力 400W)の代わりにCEM社製Discover S−class(シングルモード型、マイクロ波最大出力 300W)を使用した実施例21と比較例9の結果は、炭酸プロピレン添加により生産効率が、マイクロ波電力量当たりで2131/403=5.3倍、消費電力量当たりで360/142=2.5倍向上することを示している。また、実施例22と比較例10の結果は、当該装置において、反応時間を5分から10分にした場合、炭酸プロピレン添加により生産効率が、マイクロ波電力量当たりで2339/434=5.4倍、消費電力量当たりで282/130=2.2倍向上することを示している。
また、実施例21において、炭酸プロピレンの添加量を変えた場合や、炭酸プロピレンの代わりに他の添加物を用いた場合にも、同様に生産効率が向上した。たとえば、炭酸プロピレンの添加量を18重量%から2.5重量%又は5重量%に減らした場合でも、実施例23、24と無添加の場合の比較例9の結果より、生産効率は、それぞれ、マイクロ波電力量当たりで540/403=1.3倍又は627/403=1.6倍、消費電力量当たりで180/142=1.3倍又は206/142=1.5倍向上した。さらに、炭酸プロピレンに代えて、ニトロベンゼン、スルホラン又はγ−ブチロラクトンを用いた場合にも、実施例25〜27と比較例9の結果より、生産効率は、それぞれ、マイクロ波電力量当たりで518/403=1.3倍、605/403=1.5倍又は466/403=1.2倍、消費電力量当たりで170/142=1.3倍、188/142=1.3倍又は155/142=1.1倍向上することがわかった。
【0046】
さらに、四国計測工業社製のマイクロ波反応装置(マルチモード型、マイクロ波最大出力 1500W)でも、同様の生産効率向上が観察された。実施例28(反応時間5分)、実施例29(反応時間10分)と比較例11の結果は、2.5重量%の炭酸プロピレン添加により、生産効率が、それぞれ、マイクロ波電力量当たりで7200/2875=2.5倍、および、8890/2875=3.1倍、消費電力量当たりで2413/1629=1.5倍、および、2717/1629=1.7倍に向上することを示している。
【0047】
上記の実施例では、芳香族化合物と無水酢酸、ヘキサン酸のようなカルボン酸誘導体の反応例を示したが、芳香族化合物とアルコール類の反応でも同様に生産効率の向上が可能であった。
たとえば、アニソールとベンジルアルコールの反応を、炭酸プロピレン(5重量%)を添加して行った実施例30と比較例12の結果より、実施例30では、炭酸プロピレンの添加により、生産効率がマイクロ波電力量当たりで34.6/22.0=1.6倍に向上したことがわかった。
また、炭酸プロピレンに代えてスルホラン又はニトロベンゼンを用いた実施例31又は32でも、生産効率はマイクロ波電力量当たりで32.9/22.0=1.5倍又は34.4/22.0=1.6倍に向上した。
【0048】
以上の結果は、誘電損失係数が5〜30のマイクロ波吸収性が高い化合物の添加により、原料化合物やマイクロ波反応装置の種類、反応温度・時間等に関係なく、生産効率の向上が可能であることを示している。
【0049】
一方、比較例1と比較例13の結果が示すように、誘電損失係数が5より小さいニトロプロパンを添加した場合には、添加しない場合に比べて、生産効率の向上は認められなかった(添加した場合の生産効率は、マイクロ波電力量当たりで5.7/6.9=0.83倍、消費電力量当たりで2.5/3.0=0.83倍)。
また、誘電損失係数が大きすぎる場合には、添加剤の過加熱等により反応系の温度・反応制御が困難になる可能性がある。
したがって、本発明では適切な誘電損失係数の範囲(5〜30)の添加剤を用いることが重要と考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明により、マイクロ波照射下で有機化合物の合成反応を効率よく行うための方法、中でも、マイクロ波照射下での芳香族化合物の効率的製造方法を提供でき、有機化学工業において重要な化学品である芳香族化合物等を、生産効率の観点からも効率的かつ安全に製造できるため、本発明の利用価値は高く、その工業的意義は多大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波照射により促進される有機化合物の合成反応において、誘電損失係数が5〜30の化合物を添加して、有機化合物の生産効率を向上させる方法。
【請求項2】
誘電損失係数が5〜30の化合物が、炭酸エステル、アミド、スルホン、アルコール、ニトロ化合物、エステル、ウレア化合物、イミダゾール化合物、ニトリル、スルホキシド、ケトンから選択される化合物であることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
炭酸エステル、アミド、スルホン、アルコール、ニトロ化合物、エステル、ウレア化合物、イミダゾール化合物、ニトリル、スルホキシド、ケトンが、炭酸プロピレン、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、ε−カプロラクトン、スルホラン、エチレングリコール、ニトロベンゼン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、メタノール、N,N−ジエチルアセトアミド、N−エチルイミダゾール、アジポニトリル、N−メチルイミダゾール、ジメチルスルホキシド、3−メトキシプロピオニトリル、ベンゾニトリル、2,2,2−トリフルオロエタノール、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−ブチルイミダゾール、1−メチル−2−ピロリドン、3−ブタノリド、アセトフェノン、シアン化ベンジル、アセチルアセトンから選択される化合物であることを特徴とする請求項2の方法。
【請求項4】
一般式(I)
R−H (I)
(式中、Rは1価の炭化水素環系又は複素環系の芳香族有機基を示し、環上の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていても差し支えない。)
で表される芳香族化合物と一般式(II)
R’(CO)m−X (II)
(式中、mは1又は0の整数を示し、R’は1価のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示し、Xはアシルオキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子を示す。)
で表される化合物の反応を、マイクロ波照射下で行い、一般式(III)
R−(CO)mR’ (III)
(式中、m、R及びR’は前記と同じ意味である。)
で表される芳香族化合物を製造する反応において、誘電損失係数が5〜30の化合物を添加して反応を行うことを特徴とする芳香族化合物の製造方法。
【請求項5】
誘電損失係数が5〜30の化合物が、炭酸エステル、スルホン、ニトロ化合物、エステルから選択される化合物であることを特徴とする請求項4の方法。
【請求項6】
炭酸エステル、スルホン、ニトロ化合物、エステルが、炭酸プロピレン、スルホラン、ニトロベンゼン、γ−ブチロラクトンから選択される化合物であることを特徴とする請求項5の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−184183(P2012−184183A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47281(P2011−47281)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「革新的マイクロ反応場利用部材技術開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】