説明

マイクロ波硬化性組成物

【課題】 本発明の目的は、硬化性組成物を効率的に硬化させることができ、かつ、硬化物の機械的物性も良好である硬化性組成物を提供することにある。
【解決手段】 イオン液体(A)と重合性化合物(D)を含有するマイクロ波硬化性組成物(X)であって、重合性化合物(D)の硬化物が架橋ポリマーであることを特徴とするマイクロ波硬化性組成物である。好ましくは組成物(X)の重量に対してイオン液体(A)の含有量が0.1〜25重量%であり、重合性化合物(D)が多官能性の重合性化合物(D2)である硬化性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、接着剤、粘着剤、塗料、コーティング剤、レジスト材料、成形材料には大量の有機溶剤を含む樹脂溶液が使われてきたが、地球環境または作業環境への関心の高まりとともに、大量の有機溶剤を飛散する樹脂溶液の使用を制限する様になってきている。それらに対処する一つの方法として、熱、紫外線、電子線硬化性樹脂組成物等の樹脂素材の開発が進められてきた。これら硬化性樹脂組成物に代表される無溶剤型樹脂組成物は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、またはエステルアクリレート等の反応性オリゴマー及び、各種のビニル、アクリレート系モノマー等の低粘度単量体を主成分として構成されており、硬化物の硬度、耐溶剤性、強靱性、機械特性は使用する反応性オリゴマー、低粘度単量体の配合により調整され、通常は揮発性の有機溶剤等は使用されない。
【0003】
硬化を行うにあたっては、熱硬化性樹脂の場合、オーブン、電気炉などによる加熱であるため、熱伝導効率が低いため、熱が伝わりにくく、樹脂が硬化するまでに長時間を要する。また、加熱機器によっては、硬化に使用される熱量は、全体の加熱に要する熱量の10%にも達していない場合が多く、とても効率のよい方法とはいえない。
紫外線硬化型の場合、紫外線照射装置が比較的安価で市場に流通している点と、熱硬化型と比較して、硬化速度、エネルギー的に大きな優位性があることから、コーティング材料、レジスト材料などの硬化には、専らこの樹脂が使用されている。しかしながら、紫外線硬化の場合、紫外線の透過深度が非常に浅いため、薄膜の形成しかできず、また薄膜であっても着色剤、顔料などの紫外線を通さない物質が樹脂に含まれていると、使用することができないため、透明かつ薄膜でないものは紫外線硬化樹脂は一般的に使用することができない。
【0004】
電子線硬化型の場合、装置が高価であったり、照射強度の調節により、紫外線硬化型よりは厚膜で樹脂組成物を硬化させることができるが、表面近傍の樹脂が劣化したりと、均一な硬化物を得ることが難しい。
【0005】
そこでこれら従来の硬化方式の欠点を解決するために、近年マイクロ波を用いた化学反応が注目されており、マイクロ波を用いたポリイミド前駆体のイミド環化(例えば、特許文献1および2参照)など、マイクロ波を吸収して樹脂を硬化させる検討が行われている。
また、イオン液体を重合性化合物に添加することでマイクロ波吸収効率が上がるため、反応速度を速くできることが知られている(非特許文献1)。
【特許文献1】特開平4−305148
【特許文献2】特開平5−040339
【非特許文献1】Macromolecular Rapid Communications (2007)、28、456
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献のようにイオン液体を重合性化合物に添加することで、反応速度は大きくなるが、合成したポリマー中にイオン液体が大量に残存するため、得られるポリマーの強度は、イオン液体を添加していない場合と比較して非常に低くなる。
すなわち、本発明の目的は、硬化性組成物を効率的に硬化させることができ、かつ、硬化物の機械的物性も良好である硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、イオン液体(A)と重合性化合物(D)を含有するマイクロ波硬化性組成物であって、重合性化合物(D)の硬化物が架橋ポリマーであることを特徴とするマイクロ波硬化性組成物(X);該組成物(X)を硬化してなる硬化物;該組成物(X)にマイクロ波を照射する重合性化合物(D)の重合方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマイクロ波硬化性組成物を用いれば、機械的物性が良好な樹脂硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、イオン液体(A)とは、100℃以下で液体である塩をいうものとする。イオン液体(A)はカチオン(a1)とアニオン(a2)からなる。
カチオン(a1)としては、例えばアミジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピペリジンカチオン、モルホリンカチオン、ピペラジンカチオン、ピロールカチオンなどの第4級アンモニウムカチオン、ホスフォニウムカチオン、並びにスルホニウムカチオンなどが挙げられ、2種以上の混合物であってもよい。好ましくは、一般式(1)または(2)で示されるアミジニウムカチオン(a11)である。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
一般式(1)および(2)においてR1は、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基または水素原子である。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、及び芳香族基含有の炭素数6〜20の炭化水素基が挙げられる。炭素数1〜20のアルキル基としてはメチル、エチル、イソプロピル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル等、水酸基で置換された炭素数1〜20の炭化水素基としてはヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシヘキシル、1−ヒドロキシラウリル等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。芳香族基含有の炭素数6〜20の炭化水素基としては、例えばフェニル基、ベンジル基が挙げられる。好ましくは、炭化水素数が1〜10の炭化水素基又は水素原子である。特に好ましくは炭素数が1〜5の炭化水素基又は水素原子である。
【0013】
Rは、それぞれ水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基、及びアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有していてもよい炭素数1〜10(官能基の炭素数は含まない)の炭化水素基であり、同じであっても異なっていてもよい。
Rとしては、上記R1にあげられた炭素数1〜10の炭化水素基、及びこれらの任意の位置に水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルデヒド基を有している基(例えば2−ヒドロキシブチル基、1−アミノエチル基、1−ニトロエチル基、2−シアノプロピル基、1−カルボキシプロピル基等)、また主鎖の中にエーテル基(例えばメトキシエチル基、エトキシプロピル基等)を有している基が挙げられる。R1およびRの一部または全部は、それらの2〜4個が相互に結合して2〜4価の基となり窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。好ましくは、環形成基である。
【0014】
アミジニウムカチオン(a1)の具体例としては、下記に例記するようなカチオンが挙げられる。
(i)イミダゾリニウムカチオン
1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−ヘプチルイミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−(−2’ヘプチル)イミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−(−3’ヘプチル)イミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−(−4’ヘプチル)イミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−ドデシルイミダゾリニウム、1,1−ジメチルイミダゾリニウム、1,1,2−トリメチルイミダゾリニウム、1,1,2,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,1,2,5−テトラメチルイミダゾリニウム、1,1,2,4,5−ペンタメチルイミダゾリニウムなど。
(ii)イミダゾリウムカチオン
1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−ヘプチルイミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−(−2’ヘプチル)イミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−(−3’ヘプチル)イミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−(−4’ヘプチル)イミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−ドデシルイミダゾリウム、1,1−ジメチルイミダゾリウム、1,1,2−トリメチルイミダゾリウム、1,1,2,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,1,2,5−テトラメチルイミダゾリウム、1,1,2,4,5−ペンタメチルイミダゾリウムなど。
(iii)テトラヒドロピリミジニウムカチオン
1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム、5−メチル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネニウム、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム、5−エチル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネニウムなど。
これらのうちで好ましいのは(ii)イミダゾリウムカチオン及び(iii)テトラヒドロピリミジニウムカチオンであり、さらに好ましいのは、1、3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1、2、3トリメチルイミダゾリウムであり、特に好ましいものは、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムである。
【0015】
第四級アンモニウムカチオンとしては、例えば、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどの炭素数1〜16のアルキル基により置換されたアンモニウムカチオンなどがあげられる。
ホスホニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウムなどの炭素数1〜16のアルキル基により置換された第四級ホスホニウムカチオンなどがあげられる。
【0016】
本発明におけるアニオン(a2)としては、公知のアニオンが使用でき、例えば下記に例示するような酸からプロトンを除いたアニオンである。アニオンは2種以上の混合物であってもよい。
【0017】
(1)無機強酸:
フッ酸、塩酸、硫酸、燐酸、HClO4、HBF4、HPF6、HAsF6、HSbF6、フルオロスルホン酸等;
(2)ハロゲン原子含有アルキル基置換無機強酸(アルキル基の炭素数1〜30):
HBFn(CF34-n、HPFn(CF36-n、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、ペンタクロロプロパンスルホン酸、ヘプタクロロブタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロブタン酸、トリクロロ酢酸、ペンタクロロプロピオン酸およびヘプタクロロブタン酸等;
(3)ハロゲン原子含有スルホニルイミド(炭素数1〜30):
ビス(フルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドおよびビス(フルオロスルホニル)イミド等;
(4)ハロゲン原子含有スルホニルメチド(炭素数3〜30):
トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド等;
(5)ハロゲン原子含有カルボン酸アミド(炭素数2〜30):
ビス(トリフルオロアセト)アミド等;
(6)ニトリル基含有イミド:
HN(CN)2等;
(7)ニトリル含有メチド:
HC(CN)3等;
(8)炭素数1〜30のハロゲン原子含有アルキルアミン:
HN(CF32
(9)チオシアン酸等;が挙げられる。
【0018】
これらのうちで好ましいものは、(2)ハロゲン原子含有アルキル基置換無機強酸および(3)ハロゲン原子含有スルホニルイミドであり、さらに好ましいのは(3)ハロゲン原子含有スルホニルイミド、特に好ましいのはビス(フルオロスルホニル)イミドおよびビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドである。
【0019】
本発明におけるイオン液体(A)の具体例としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとテトラフルオロボレートアニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(フルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとBF4アニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとBF3(CF3)アニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとBF2(CF32アニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとBF3(C25)アニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとBF3(C49)アニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとN(CN)2アニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとC(CN)3アニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとトリフルオロメタンスルホン酸アニオンからなるイオン液体、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−ブチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−(2,2,2−トリフルオロエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−メトキシエチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、トリメチルブチルアンモニウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、ジメチルエチルプロピルアンモニウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、トリブチルエチルホスホニウムカチオンビス(フルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体と、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムカチオンとトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドからなるイオン液体などが挙げられる。これらのうちで、好ましいものは1−エチル−3−ブチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとテトラフルオロボレートアニオンからなるイオン液体、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとテトラフルオロボレートアニオンからなるイオン液体からなるイオン液体である。
【0020】
本発明に用いられる重合性化合物(D)としては、付加重合性化合物、重付加性化合物、重縮合系化合物、開環重合性化合物などであって、少なくとも多官能性の重合性化合物(D2)を含有し、好ましくは単官能性の重合性化合物(D1)と多官能性の重合性化合物(D2)を併せ含有するものである。
(D1)と(D2)の比率は、マイクロ波照射し硬化後の重合体に、特に耐熱性、物性強度を要求する場合は、(D2)を20%以上とするのがよく、適度の可とう性を要求する場合は、(D2)を0.1〜20%とするのがよい。
【0021】
付加重合性化合物の単官能性の重合性化合物(D1)としてはオレフィン類(エチレン、プロピレン、ブテン-1、イソブテン、4-メチルペンテン-1、オクテンなど);芳香族ビニ ル炭化水素またはその置換体(スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、アセトキシスチレン、ビニルトルエンなど);(メタ)アクリル酸およびそのアルキルエステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルなど);ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテルなど);ビニルアルコール誘導体(酢酸ビニル、酪酸ビニルなど);(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミドおよびそのN置換誘導体;エチレンのハロゲン置換化合物(塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンなど);1,2-ジ置換不飽和ポリカルボン酸またはその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸およびそのエステル化合物など)などが挙げられる。
【0022】
付加重合性化合物の多官能性の重合性化合物(D2)としては、以下のものが挙げられる。ジエン類(ブタジエン、イソプレンなど);多官能アクリレート:2官能としては:エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等が例示される。
3官能としては、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリアクリレート等が例示される。
4〜6官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が例示される。
これらのなかで、多官能性アクリレートが好ましい。
【0023】
重付加性化合物の単官能性の重合性化合物(D1)としては、例えば重合によりポリウレタンを生成するような、活性水素含有化合物として、例えば低分子量ジオール[エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなど];ポリエーテルジオール[上記に例示した低分子量ジオールのアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)付加物、アルキレンオキシドの開環重合物(ポリテトラメチレングリコールなど)];ポリエステルジオール[脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、マレイン酸、二量化リノレイン酸など)または芳香族ジカルボン酸(フタル酸、テレフタル酸など)と上記に例示した低分子量ジオールとの縮合ポリエステルジオール、ε-カプロラクトンの開環重合によるポリラクトン ジオールなど];低分子量ジアミン(イソホロンジアミン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタンなど)が挙げられる。
また、ジイソシアネートとしては、例えば芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど)、脂環式ジイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサンなど)、脂肪族ジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートなど)などが挙げられる。
【0024】
重付加性化合物の多官能性の重合性化合物(D2)としては、例えば、3官能以上の活性水素含有化合物(トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの多価アミ ン;トリエタノールアミンなどのアミノアルコールなど)
および/または3官能以上のポリイソシアネート[トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートの1対3付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートの環状3量体など]との組合せ などが挙げられる。
【0025】
エポキシ化合物としては、フェノールエーテル系グリシジル化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのジグリシジルエーテル類など);エーテル系グリシジル化合物(ジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、ポリアリルグリシジルエーテルなど);
エステル系グリシジル化合物[グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和単量体(アクリロニトリルなど)との共重合体など];グリシジルアミン類(パラアミノフェノールのグリシジルエーテルなど)、非グリシジル型エポキシ化合物(エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油など)などを挙げることができる。
エポキシ硬化剤としては、ポリアミン類および(無水)ポリカルボン酸などを挙げることができる。
ポリアミン類としては、例えば脂肪族ポリアミン類(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミンなどのアルキレンジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアルキレンポリアミン類、アルキルアミノプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミンなどのアルキルまたはヒドロキシアルキルアミン類、キシリレンジアミンなどの芳香環含有脂肪族アミン類、ポリオキシプロピレンポリアミンなどのポリエーテルポリアミン類など);脂環または複素環含有脂肪族ポリアミン類(N-アミノエチルピペラジン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);芳香族ポリアミン類(フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど);ポリアミドポリアミン類(上記ポリアミン類とダイマー酸との縮合物);ベンゾグアナミンおよび/またはアルキルグアナミンおよびその変性物;およびジシアンジアミドなどを挙げることができる。
【0026】
重縮合性化合物としては、例えば重合によりポリエステルを生成するような、脂肪族ジカルボン 酸エステル類の重合体(ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなど);ポリカーボネート;並びにこれらの2種以上の共エステル化物やこれら重合体を構成する化合物とアルキレンオキシド(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、3官能以上の低分子架橋剤(トリメチロールプロパン、グリセリン、トリメリット酸など)との共重縮合物が挙げられる。
ポリアミド系としては、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン、11-ナイロン、12-ナイロン、4,6-ナイロン等およびこれらの2種以上の共アミド化物やこれら重合体を構成する化合物とポリエステルを構成する化合物もしくはアルキレンオキシド(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、3官能以上の低分子架橋剤(トリメリット酸など)との共重縮合物があげられる。
ポリイミド系としてはピロメリット酸と1,4-ジアミノベンゼンとの重縮合物;これらポリイミドを構成する化合物と上記ポリアミドを構成する化合物との共重縮合物、すなわちポリアミドイミドなどが挙げられる。これら、分子内に2つ以下の官能基を持つもの以外に、3つ以上の官能基をもつ、重合により、架橋構造を形成するような、重合性化合物も含まれる。例えば、3官能以上の活性水素含有化合物(トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの多価アミ ン;トリエタノールアミンなどのアミノアルコールなど)、トリメリット酸、および/または3官能以上のポリイソシアネート[トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートの1対3付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートの環状3量体など]との組合せ などが挙げられる。
【0027】
本発明のマイクロ波硬化性組成物(X)において、組成物(X)の重量に対して、イオン液体(A)の含有量は0.1〜25重量%であることが好ましい。イオン液体(A)は少量でもマイクロ波吸収による発熱性が高く、0.1重量%以上の添加で、十分にマイクロ波硬化組成物の温度を上昇させることができる。またイオン液体(A)が25重量%以下であれば、イオン液体によるマイクロ波照射時の発熱性が非常に高く、重合性化合物(D)の濃度も高いため重合反応がより速やかに完了させることができる。
【0028】
本発明のマイクロ波硬化性組成物(X)には、必要によりイオン液体(A)と重合性化合物(D)以外の添加物(E)を含有してもよい。添加物(E)の添加量は組成物(X)の重量に対して0〜20重量%である。
添加物(E)としては、重合開始剤、触媒などの重合反応に直接関与するもの、他に溶剤、顔料、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、耐光安定剤などが挙げられる。
【0029】
重合開始剤としては、過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
過酸化物としては、無機過酸化物(例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなど)、および有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ラウリルパーオキシドなど)などが挙げられる。アゾ化合物としては、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩(例えば塩酸塩など)、およびアゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライドなどが挙げられる。好ましいものは有機過酸化物である。重合開始剤の使用量(重量%)としては、モノマーの合計重量に基づいて、通常、0.0001〜20%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜15%、特に好ましくは0.005〜10%である。反応温度および反応時間は、ラジカル重合開始剤の種類により適宜決定される。
【0030】
本発明のマイクロ波硬化性組成物(D)をマイクロ波照射により重合する方法は例えば以下の方法が挙げられる。
【0031】
(1)本発明のマイクロ波硬化性組成物を配合する工程
本発明のマイクロ波硬化性組成物は必須成分であるイオン液体、重合性化合物の他に、開始剤、触媒、顔料、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、耐光安定剤等を添加することができる。混合方法としては、イオン液体、重合性化合物を均一溶解後、添加剤を添加、混合していけばよい。混合の際の温度は、粘度が高い場合、加熱して粘度を下げることもできるが、この場合、開始剤、触媒等は入れない方が好ましい。開始剤、触媒を添加する際は、重合が開始しない条件であることを確認してから添加したほうがよい。可能であれば、開始剤、触媒は、マイクロ波照射を行う直前に添加するのが最も好ましい。
(2)−1 本発明のマイクロ波硬化性組成物を塗布する工程
本発明に係るマイクロ波硬化性組成物を基材上に塗布する方法としては、例えば、塗付、スプレー法、スピンコート、スクリーン印刷、グラビア印刷、凹板印刷、フレキソ印刷、バーコート法による方法等が挙げられるが、特に限定されない。
本発明のマイクロ波硬化性組成物の利用方法は多様に考えられるが、例えば基板の表面コートに使用する場合、コーティング膜の精度にも影響されるが、塗付法が低コストであり、簡便である。本発明のマイクロ波硬化性組成物用いて塗膜を形成させる際に使用する基材は、高温、例えば200℃以上の温度での熱処理で変形、溶融、劣化等の損傷を受けてしまう素材であっても、使用することができる。なぜならば、温度上昇する部分が、マイクロ波硬化組成物に限られ、基材が熱伝導により昇温する前に、反応が完結してしまうからである。よって、本発明に係る本発明のマイクロ波硬化性組成物を用いれば、より広い範囲の基材の中から選ぶことができ、高い密着性を有する被膜を形成させることができる。本発明に係るマイクロ波硬化性組成物を適用する基材としては、例えば、熱にガラス、セラミックなどの基材をはじめ、高温をかけると変形または分解するおそれのある高分子系の基体(例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニル樹脂等)が挙げられる。
【0032】
本発明のマイクロ波硬化性組成物と基材との濡れ性が悪い場合には、使用するイオン液体の組成を調整することにより、濡れ性を向上させればよい。本発明のマイクロ波硬化性組成物は重合性化合物を代えることなく、イオン液体により、溶解性パラメーター(SP値)を調整することができる。
【0033】
(2)−2
本発明のマイクロ波硬化性組成物を鋳型に注入する工程
本発明に係るマイクロ波硬化性組成物は液状であるため、様々な鋳型内に注入、あるいは展開し、硬化させることができる。注入する方法は特に限定されないが、従来から知られる重力注型法、トップゲート方式、アンダーゲート方式、真空注型法などが挙げられる。
【0034】
(3)マイクロ波照射工程
本発明のマイクロ波硬化性組成物を基材に塗布、または鋳型内に注入した後、これをマイクロ波照射装置内にセットする。マイクロ波照射の強度は装置によるが、家庭用の電子レンジと同じ500W程度の照射でも、マイクロ波硬化組成物は十分に硬化することができる。硬化が可能な照射強度としては、30〜3000Wが好ましく、100〜1500Wが特に好ましい。照射強度を上げればその分、硬化速度は速くなるが、温度制御が困難になり、過昇温させてしまうので注意を要する。硬化に必要な時間は、マイクロ波硬化組成物の組成にもよるが、5秒〜10分である。照射時の雰囲気、温度は特に限定されないので、照射装置内の雰囲気管理等は特に必要としない。
【0035】
実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下、部は重量部とする。
【0036】
製造例1
<ウレタンプレポリマーの合成>
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(50部)とポリオキシテトラメチレングリコール(分子量1000)(100部)と触媒として、ジブチルチンジラウレート(0.01部)を攪拌装置、温度計、窒素導入管を備えた、ガラス製4つ口フラスコに入れ、80℃に加熱して、4時間反応させることで、ウレタンプレポリマー(P)を得た。イソシアネート基含量は5.6%であった。
【0037】
<実施例1>
製造例1で合成したウレタンプレポリマー(P)(100部)、1,4−ブタンジオール(3部)、トリメチロールプロパン(3部)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとテトラフルオロボレートアニオンからなるイオン液体(25部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X−1)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、25重量%であった。
【0038】
<実施例2>
分子内のアクリレート基数が2で、分子量が約900のエポキシアクリレートEBECRYL 3105(ダイセル・サイテック社製)(70部)、トリメチロールプロパントリアクリレート(15部)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(12.4部)、過酸化ベンゾイル(2.5部)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体(0.1部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X−2)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、0.1重量%であった。
【0039】
<実施例3>
分子内のアクリレート基数が2で、分子量が1500のウレタンアクリレートEBECRYL270(ダイセル・サイテック社製)(70部)、トリメチロールプロパントリアクリレート(15部)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(10部)、過酸化ベンゾイル(2.5部)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとテトラフルオロボレートアニオンからなるイオン液体(2.5部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X−3)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、2.5重量%であった。
【0040】
<実施例4>
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(油化シェルエポキシ)(100部)と、エピキュア113(4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサン)アミン)(油化シェルエポキシ)(30部)と、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体(10部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X−4)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、7.1重量%であった。
【0041】
<比較例1>
製造例1で合成したウレタンプレポリマー(P)(100部)、1,4−ブタンジオール(6部)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとテトラフルオロボレートアニオンからなるイオン液体(25部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X’−1)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、25重量%であった。
【0042】
<比較例2>
メタクリル酸メチル(96部)、アゾビスイソブチロニトリル(1部)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体(3部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X’−2)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、3重量%であった。
【0043】
<比較例3>
フェニルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)(90部)と、エピキュア113(油化シェルエポキシ)(5部)と、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなるイオン液体(5部)を500mlの4つ口フラスコに入れ、スリーワンモーター(アズワン社製)を用いて150rpmで30℃で1時間混合することで、マイクロ波硬化性組成物(X’−3)を得た。イオン液体(A)の含有量はマイクロ波硬化性組成物(X)の重量に対して、5重量%であった。
【0044】
<マイクロ波照射による硬化試験>
マイクロ波硬化性組成物(X−1)〜(X−4)、及び(X’−1)〜(X’−3)を、100×100×10mmのテフロン製の容器に、2mmの膜厚になるように展開した後、マイクロ波照射装置μリアクター(四国計測工業製)内に入れ、500Wの条件で120秒間マイクロ波照射を行ない、マイクロ波硬化性組成物の硬化を行った。
厚さ2.0mmのシートが得られた。このシートについて、以下の試験方法で強度試験の測定を行なった。その結果を表1に示した。
【0045】
<硬化物強度試験>
(1)引張破断点強度および引張破断点伸び
JIS K6301(1995年改正)に従い、引張速度200mm/分で引張試験(オートグラフAG−500N/50N IS、島津製作所製)を行なって測定した。
(2)摩耗量テーバー摩耗試験
JIS K7204(1999年改正)に従い、摩耗輪(CS17/1kg荷重)が1000回転した後の試験片の重量を測定し、試験前後の試料片の重量の変化量を摩耗量とした。
(3)耐熱性試験
100℃に設定したオーブン中に、2mm厚のJIS K6301規格(1995年改正)で定められている3号ダンベルを100時間吊し、ダンベルの外観及び重量の変化を測定した。自重による変形はダンベルの上端から下端の長さで評価を行い、重量変化はダンベル全体の重量変化を測定した。これらの変化のいずれもが5%以下のダンベルを合格とし、一方もしくは両方が5%を超えるものを不合格とした。
【0046】
【表1】

【0047】
上述のように、ウレタン系、アクリレート系、エポキシ系樹脂同士を比較すると、本発明のマイクロ波硬化性組成物(X)は、従来のものに比べマイクロ波を照射することにより、高強度、耐熱性に優れる樹脂硬化物が得られることが判った。
【0048】
参考例としてイオン液体を含まない点以外は、実施例1〜4、及び比較例1〜3と同組成の重合性化合物(D)を加熱により重合硬化させた硬化物についても同様の評価を行い、本発明のマイクロ波硬化性組成物をマイクロ波照射することで得られた硬化物との比較を行った。
【0049】
<参考例1>
実施例1の重合性組成物(X−1)からイオン液体を除いた重合性組成物(X’’−1)を得た。
【0050】
<参考例1>
実施例2の重合性組成物(X−2)からイオン液体を除いた重合性組成物(X’’−2)を得た。
【0051】
<参考例3>
実施例3の重合性組成物(X−3)からイオン液体を除いた重合性組成物(X’’−3)を得た。
【0052】
<参考例4>
実施例4の重合性組成物(X−4)からイオン液体を除いた重合性組成物(X’’−4)を得た。
【0053】
<参考例5>
比較例1の重合性組成物(X’−1)からイオン液体を除いた重合性組成物(X’’−5)を得た。
【0054】
<参考例6>
比較例2の重合性組成物(X’−2)からイオン液体を除いた重合性組成物(X’’−6)を得た。
【0055】
<参考例7>
比較例3の重合性組成物(X’−3)からイオン液体を除いた重合性組成物(X’’−7)を得た。
【0056】
<熱硬化試験>
重合性組成物(X’’−1)〜(X’’−7)を、100×100×10mmのテフロン製の容器に、2mmの膜厚になるように展開した後、循風乾燥器(ESPEC製)内に入れ、100℃で2時間反応させた。その後、乾燥器内から取り出し、室温で1週間放置することで、厚さ2.0mmのシートが得られた。これらのシートについて、同様の試験方法で強度試験の測定を行なった。その結果を表2に示した。
【0057】
【表2】

【0058】
本発明の実施例のマイクロ波硬化性組成物(X)は、硬化後の硬化物中にイオン液体を含有しているが、その機械的物性は、同組成の重合性化合物(D)を熱重合により重合して得られる硬化物のそれと、大きくは変わらない。それに対して、比較例のマイクロ波硬化性組成物は、同組成の重合性化合物(D)を熱重合により重合して得られる硬化物のそれと比べると、機械的物性が大きく低下していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のマイクロ波硬化性組成物は、接着剤、コーティング剤、塗料、レジスト材料、ポリマー製の各種成形物、レンズ、フィルム等の各種光学成形材料など、これまでオーブン、電気炉などによる加熱、またはUV硬化、電子線硬化などの方法により固化定着を行っていたものを、マイクロ波照射により強力に固化定着させることができるようになるため、省エネ、被接着体への熱履歴低減できる点、実用的な強度を持つ点からも極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン液体(A)と重合性化合物(D)を含有するマイクロ波硬化性組成物であって、重合性化合物(D)の硬化物が架橋ポリマーであることを特徴とするマイクロ波硬化性組成物(X)。
【請求項2】
重合性化合物(D)が多官能性の重合性化合物(D2)を含有する請求項1に記載の組成物(X)。
【請求項3】
多官能性の重合性化合物(D2)が多官能性アクリレートである請求項1又は2に記載の組成物(X)。
【請求項4】
組成物(X)の重量に対して、イオン液体(A)の含有量が0.1〜25重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロ波硬化性組成物(X)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物(X)にマイクロ波を照射することを特徴とする重合性化合物(D)の重合方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物(X)を硬化してなることを特徴とする硬化物。


【公開番号】特開2009−149828(P2009−149828A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331289(P2007−331289)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】