マイクロ流体チップ及びそれを用いたマイクロ流体システム
【課題】その場でマイクロ流路の形状を変更できるマイクロ流体チップ及びそれを用いたマイクロ流体システムを提供する。
【解決手段】基板2と、基板2上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体301…331、351…381からなる側壁部31、32とを備え、側壁部31,32は、棒状体301…331、351…381の幅方向側面35,36が互いに対向するように基板2上に離間して配置され、幅方向側面35、36間にマイクロ流路10が形成され、複数の棒状体301…331、351…381の少なくとも一部を棒状体301…331、351…381の長手方向に移動させることでマイクロ流路10の形状を変形させることができるマイクロ流体チップ1。
【解決手段】基板2と、基板2上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体301…331、351…381からなる側壁部31、32とを備え、側壁部31,32は、棒状体301…331、351…381の幅方向側面35,36が互いに対向するように基板2上に離間して配置され、幅方向側面35、36間にマイクロ流路10が形成され、複数の棒状体301…331、351…381の少なくとも一部を棒状体301…331、351…381の長手方向に移動させることでマイクロ流路10の形状を変形させることができるマイクロ流体チップ1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体チップ及びそれを用いたマイクロ流体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体チップによる微小流体下の細胞培養は、培地内物質の濃度勾配や流速の時間・空間的制御が容易であるため、生体医工学・生命科学のツールとして期待されている。
【0003】
ところが、マイクロ流体チップを作製し、実際にマイクロ流路に培養液を循環させる際に、培養液の流れに不具合が生じる箇所が見つかった場合、マイクロ流路の形状等の微調整を行うことができなかった。そのため、マイクロチップを再度作製する必要があった(特許文献1参照)。またマイクロ流路内で細胞を増殖した場合、マイクロ流路内の培養環境を維持するため、薬液をマイクロ流路内に流すなどして細胞をまびく手法が用いられていた。そのため、マイクロ流路内の細胞の増殖に併せてマイクロ流路のレイアウト変更等ができることが求められていた。さらに、マイクロ流路内では、液体のみを流すことができ、高分子ゲル等の粘度の高い流体や、気泡を流すことは困難であった。そのため、細胞の培養条件に併せて、細胞を培養するその場でマイクロ流路の形状を変更できるマイクロ流体チップが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−8891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、その場でマイクロ流路の形状を変更できるマイクロ流体チップ及びそれを用いたマイクロ流体システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、基板と、基板上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体からなる第1、第2の側壁部とを備え、第1、第2の側壁部は、棒状体の幅方向側面が互いに対向するように基板上に離間して配置され、幅方向側面間にマイクロ流路が形成され、複数の棒状体の少なくとも一部を棒状体の長手方向に移動させることでマイクロ流路の形状を変形させることができるマイクロ流体チップを要旨とする。
【0007】
本発明の第2の態様は、基板と、基板上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体からなる第1の側壁部とを備え、基板には、基板に垂直に壁部が形成されており、第1の側壁部は、棒状体の幅方向側面が壁部に対向するように基板上に配置され、壁部と棒状体の幅方向側面間にマイクロ流路が形成され、複数の棒状体の少なくとも一部を棒状体の長手方向に移動させることでマイクロ流路の形状を変形させることができるマイクロ流体チップを要旨とする。
【0008】
本発明の第3の態様は、マイクロ流体チップと、棒状体を移動させる駆動手段とを有するマイクロ流体システムを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、その場でマイクロ流路の形状を変更できるマイクロ流体チップ及びそれを用いたマイクロ流体システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態にかかるマイクロ流体チップの斜視図である。
【図2】実施形態にかかるマイクロ流体チップの組み立て図である。
【図3】実施形態にかかるマイクロ流体チップを上面図である。
【図4】実施形態にかかるマイクロ流体チップの断面図である。
【図5】実施形態の変形例にかかるマイクロ流体チップの断面図である。
【図6】側壁駆動用ディバイスの概略図である。
【図7】実施形態の変形例にかかるマイクロ流体チップの斜視図である。
【図8】(a)〜(d)は実施形態にかかるマイクロ流体チップのマイクロ流路に気泡を流したときの図である。
【図9】(a)〜(d)は実施形態にかかるマイクロ流体チップのマイクロ流路に高分子ゲルを流したときの図である。
【図10】実施形態にかかるマイクロ流体チップ内における細胞の増殖に応じてマイクロ流路を変形したときの図である。
【図11】実施形態にかかるマイクロ流体チップ内における細胞の増殖に応じてマイクロ流路を変形したときの図である。
【図12】実施形態にかかるマイクロ流体チップ内における細胞の増殖に応じてマイクロ流路を変形したときの図である。
【図13】実施形態にかかるマイクロ流体チップ内における細胞の増殖に応じてマイクロ流路を変形したときの図である。
【図14】(a)(b)は実施形態にかかるマイクロ流体チップ内における細胞の増殖に応じてマイクロ流路を変形したときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。尚、図中同一の機能又は類似の機能を有するものについては、同一又は類似の符号を付して説明を省略する。
【0012】
[マイクロ流体チップ]
図1に示すように、マイクロ流体チップ1は、基板2と、基板2上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体301…331、351…381からなる側壁部31、32とを備える。図2に示すように側壁部31,32は、棒状体301…331、351…381の幅方向側面35,36が互いに対向するように基板2上に離間して配置されている。図3に示すように幅方向側面35、36間にマイクロ流路10が形成されている。複数の棒状体301…331、351…381の少なくとも一部を棒状体301…331、351…381の長手方向に移動させることでマイクロ流路10の形状を変形させることができる。
【0013】
マイクロ流体チップ1は、側壁部31,32のそれぞれの一部と接しつつ、マイクロ流路10上に配置されるカバー体5をさらに有してもよい。カバー体5を配置することで、棒状体301…331、351…381を長手方向に押し込んだ際に跳ね上がることを防止することができるからである。またカバー体5を配置することで、マイクロ流路10内の乾燥を防ぐことができるからである。
【0014】
棒状体301…331、351…381の断面形状は特に制限されないが、図4に示すように長方形とすることができる。材質は細胞培養に悪影響を与えないものであれば特に制限されず、種々の材料を用いることができる。例えば、真鋳、銅等の金属や、アクリル樹脂等の樹脂組成物を用いることができる。寸法はマイクロ流路10が形成されるものであれば特に制限はないが、直径0.1〜0.5mm程度、長さ5〜10mm程度である。棒状体301…331、351…381としては、例えば金属メッキされた一辺が約0.3mm、長さ約7mmの正四角柱形状の金属製ピンを用いることができる。
【0015】
棒状体301…331、351…381間の距離は、流体の液漏れがなく駆動手段を用いて棒状体301…331を移動可能な程度であれば特に制限されない。
【0016】
図4に示すように複数の棒状体301…307の長手方向側面間の隙間に封止剤8を配置してもよい。流体の漏れを防止することができるからである。また棒状体301…307を動かす際の潤滑剤としても機能するからである。封止剤8としては隙間を埋めることができ細胞培養に悪影響を与えないものであれば特に制限なく種々のものを用いることができる。封止剤8としては、例えばグリースを用いることができる。
【0017】
図5に示すように、断面が円形状の棒状体301a…307aを用いてもよい。断面を円形状とすることで、基板2と棒状体301a…307aの接触面積が狭くなることで、基板2と棒状体301a…307aの摩擦抵抗が減り棒状体301a…307aを動かしやすくなる。この場合、液漏れを防止するため、棒状体301a…307a間に封止剤8を配置することが好ましい。
【0018】
複数の棒状体301…331、351…381の少なくとも一部を長手方向(図3X軸方向)に移動させることで、マイクロ流路10の形状を変形させることができる。棒状体301…331、351…381を動かす駆動手段としては、棒状体301…331、351…381の位置を制御できるものであれば特に制限はなく種々のものを用いることができる。駆動手段としては、例えば図6に示すような側壁駆動用ディバイス60(XY-2Z軸駆動システム)を用いることができる。図6の側壁駆動用ディバイス60は、マイクロ流体チップ1が配置されるステージ61と、マイクロ流体チップ1をステージ61上に固定する固定手段63,64と、ステージの上方にマイクロ流体チップ1に対向して配置されるプローブ65と、プローブ65に接続されプローブ65のX、Y、Z軸方向の位置を制御する駆動部(図示せず)とを備える。駆動部を作動させ、プローブ65のX,Y軸位置を調整して棒状体301…331、351…381のいずれか1つの上方に移動させ、その後Z方向にプローブ65を動かし、プローブ65の先端を棒状体に当接させる。その後、棒状体の長手方向(図3X軸方向)に動かす。この作業を繰り返して側壁部31,32の形状を変形することで、マイクロ流路10の形状を変形させることができる。
【0019】
図1のマイクロ流体チップ1では、側壁部31,32の端部35,36を互いに対向させることによりマイクロ流路10を形成した。その他にも、図7に示すように実施形態の変形例として、基板2に垂直に壁部21を形成し、その壁部21に側壁部31の端部35を対向して配置し、壁部21と側壁部31の間にマイクロ流路10を形成してもよい。即ち、基板2と、基板2上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体301…331からなる側壁部31とを備え、基板2には基板2に垂直に壁部21が形成されたマイクロ流体チップ1Aが提供される。側壁部31は、棒状体301…331の幅方向側面が壁部21に対向するように基板2上に配置され、壁部21と棒状体301…331の幅方向側面間にマイクロ流路10が形成されている。複数の棒状体301…331の少なくとも一部を棒状体301…331の長手方向に移動させることでマイクロ流路10の形状を変形させることができる。なお、側壁部31の一部と接しつつ、マイクロ流路上に配置されるカバー体5をさらに有してもよい。
【0020】
マイクロ流体チップ1、1Aの作用効果を示すべく以下に実施例を挙げて説明する。
【0021】
[実施例1]
図8(a)〜(d)は、マイクロ流体チップ1Aを用いて気泡を搬送した際の図である。マイクロ流体チップ1Aを図6の側壁駆動用ディバイス60のステージ61上に配置し、固定手段63,64で固定した。その後、図8(a)に示すようにマイクロ流路10中に気泡51を注入した。そして図8(b)に示すように棒状体301、302を壁部21に向かって移動させた。具体的には、プローブ65の先端を棒状体302に当接した後、駆動手段を作動させて、棒状体302を壁部21に向かって移動させた。同様にして、図8(c)に示すように棒状体304、305を壁部21に向かって移動させた。そして図8(d)に示すように気泡51を下流側(図面の左)に押し出した。これにより、気泡を搬送できることが示された。
【0022】
[実施例2]
図9(a)〜(d)は、マイクロ流体チップ1を用いて高分子ゲル53を搬送した際の図である。まずマイクロ流体チップ1を図6の側壁駆動用ディバイス60のステージ61上に配置し、固定手段63,64で固定した。そして、図9(a)に示すように、高分子ゲル53をマイクロ流体チップ1のマイクロ流路10に導入した。側壁駆動用ディバイス60により、図9(b)に示すように、図面下方から上方に向かって、棒状体351,352,353を順々に長手方向に移動しマイクロ流路10を拡げた。それと併せて、図9(c)に示すように、高分子ゲル53を図面上方に押し出すように、棒状体301、302…の順に長手方向に移動させマイクロ流路10を閉鎖していった。そして高分子ゲル53を、図9(d)に示すように図面上方に押し出した。これにより、高分子ゲル53を搬送できることが示された。
【0023】
[実施例3]
図10〜図14は、細胞の増殖に併せて、マイクロ流路の形状を変形できることを示す図である。マイクロ流体チップ1のマイクロ流路10を培養液の循環経路(図示せず)に接続した。その後図1の棒状体311…323を図面に向かって長手方向右側に移動させ、棒状体361…373を図面に向かって長手方向左側に移動させた。そして図10に示すような、マイクロ流路10内に細胞増殖領域101を形成した。その後流体駆動装置(図示せず)を作動させることで、マイクロ流路10を介して、細胞増殖領域101内に培養液を供給しまた培養液を排出させた。そして、循環経路内に培養液を循環させた。その後細胞増殖領域101内に細胞12を導入し細胞12を増殖させた。次に、細胞12が増殖して細胞増殖領域101内のスペースが過密になったところで、図11に示すように、棒状体308,309,310を図面に向かって長手方向右側、棒状体358,359,360を図面に向かって長手方向左側に移動させて、細胞増殖領域101の面積を拡げた。そして、細胞12が細胞増殖領域101内で適当に分散したところで、図12に示すように細胞増殖領域101中段の棒状体362,363、364を図面に向かって長手方向右側に移動させた。さらに、棒状体311,312、313を図面に向かって長手方向左側に移動させ、図13に示すように、細胞増殖領域101、102に2分割した。このように、マイクロ流体チップ1によれば簡易に細胞をまびくことができた。
【0024】
細胞増殖領域101を2分割する他にも、図14(a)(b)に示すように、棒状体310…324を図面に向かって長手方向右側、棒状体360…374を図面に向かって長手方向左側に開放していくことにより、細胞増殖領域101の面積を拡大させてもよい。
【0025】
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0026】
例えば、マイクロ流体チップ1の応用例として、マイクロ流体チップ1と、さらに棒状体301…331、351…381を動かす駆動手段とを有するマイクロ流体システムが提供される。また培養流路の一部にマイクロ流体チップ1を供える、細胞培養システムが提供される。
【0027】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0028】
1、1A…マイクロ流体チップ
2…基板、
31,32…側壁部、
5…カバー体
8…封止剤
10…マイクロ流路、
301〜331、351〜381…棒状体
60…側壁駆動用ディバイス
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体チップ及びそれを用いたマイクロ流体システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体チップによる微小流体下の細胞培養は、培地内物質の濃度勾配や流速の時間・空間的制御が容易であるため、生体医工学・生命科学のツールとして期待されている。
【0003】
ところが、マイクロ流体チップを作製し、実際にマイクロ流路に培養液を循環させる際に、培養液の流れに不具合が生じる箇所が見つかった場合、マイクロ流路の形状等の微調整を行うことができなかった。そのため、マイクロチップを再度作製する必要があった(特許文献1参照)。またマイクロ流路内で細胞を増殖した場合、マイクロ流路内の培養環境を維持するため、薬液をマイクロ流路内に流すなどして細胞をまびく手法が用いられていた。そのため、マイクロ流路内の細胞の増殖に併せてマイクロ流路のレイアウト変更等ができることが求められていた。さらに、マイクロ流路内では、液体のみを流すことができ、高分子ゲル等の粘度の高い流体や、気泡を流すことは困難であった。そのため、細胞の培養条件に併せて、細胞を培養するその場でマイクロ流路の形状を変更できるマイクロ流体チップが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−8891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、その場でマイクロ流路の形状を変更できるマイクロ流体チップ及びそれを用いたマイクロ流体システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、基板と、基板上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体からなる第1、第2の側壁部とを備え、第1、第2の側壁部は、棒状体の幅方向側面が互いに対向するように基板上に離間して配置され、幅方向側面間にマイクロ流路が形成され、複数の棒状体の少なくとも一部を棒状体の長手方向に移動させることでマイクロ流路の形状を変形させることができるマイクロ流体チップを要旨とする。
【0007】
本発明の第2の態様は、基板と、基板上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体からなる第1の側壁部とを備え、基板には、基板に垂直に壁部が形成されており、第1の側壁部は、棒状体の幅方向側面が壁部に対向するように基板上に配置され、壁部と棒状体の幅方向側面間にマイクロ流路が形成され、複数の棒状体の少なくとも一部を棒状体の長手方向に移動させることでマイクロ流路の形状を変形させることができるマイクロ流体チップを要旨とする。
【0008】
本発明の第3の態様は、マイクロ流体チップと、棒状体を移動させる駆動手段とを有するマイクロ流体システムを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、その場でマイクロ流路の形状を変更できるマイクロ流体チップ及びそれを用いたマイクロ流体システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態にかかるマイクロ流体チップの斜視図である。
【図2】実施形態にかかるマイクロ流体チップの組み立て図である。
【図3】実施形態にかかるマイクロ流体チップを上面図である。
【図4】実施形態にかかるマイクロ流体チップの断面図である。
【図5】実施形態の変形例にかかるマイクロ流体チップの断面図である。
【図6】側壁駆動用ディバイスの概略図である。
【図7】実施形態の変形例にかかるマイクロ流体チップの斜視図である。
【図8】(a)〜(d)は実施形態にかかるマイクロ流体チップのマイクロ流路に気泡を流したときの図である。
【図9】(a)〜(d)は実施形態にかかるマイクロ流体チップのマイクロ流路に高分子ゲルを流したときの図である。
【図10】実施形態にかかるマイクロ流体チップ内における細胞の増殖に応じてマイクロ流路を変形したときの図である。
【図11】実施形態にかかるマイクロ流体チップ内における細胞の増殖に応じてマイクロ流路を変形したときの図である。
【図12】実施形態にかかるマイクロ流体チップ内における細胞の増殖に応じてマイクロ流路を変形したときの図である。
【図13】実施形態にかかるマイクロ流体チップ内における細胞の増殖に応じてマイクロ流路を変形したときの図である。
【図14】(a)(b)は実施形態にかかるマイクロ流体チップ内における細胞の増殖に応じてマイクロ流路を変形したときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。尚、図中同一の機能又は類似の機能を有するものについては、同一又は類似の符号を付して説明を省略する。
【0012】
[マイクロ流体チップ]
図1に示すように、マイクロ流体チップ1は、基板2と、基板2上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体301…331、351…381からなる側壁部31、32とを備える。図2に示すように側壁部31,32は、棒状体301…331、351…381の幅方向側面35,36が互いに対向するように基板2上に離間して配置されている。図3に示すように幅方向側面35、36間にマイクロ流路10が形成されている。複数の棒状体301…331、351…381の少なくとも一部を棒状体301…331、351…381の長手方向に移動させることでマイクロ流路10の形状を変形させることができる。
【0013】
マイクロ流体チップ1は、側壁部31,32のそれぞれの一部と接しつつ、マイクロ流路10上に配置されるカバー体5をさらに有してもよい。カバー体5を配置することで、棒状体301…331、351…381を長手方向に押し込んだ際に跳ね上がることを防止することができるからである。またカバー体5を配置することで、マイクロ流路10内の乾燥を防ぐことができるからである。
【0014】
棒状体301…331、351…381の断面形状は特に制限されないが、図4に示すように長方形とすることができる。材質は細胞培養に悪影響を与えないものであれば特に制限されず、種々の材料を用いることができる。例えば、真鋳、銅等の金属や、アクリル樹脂等の樹脂組成物を用いることができる。寸法はマイクロ流路10が形成されるものであれば特に制限はないが、直径0.1〜0.5mm程度、長さ5〜10mm程度である。棒状体301…331、351…381としては、例えば金属メッキされた一辺が約0.3mm、長さ約7mmの正四角柱形状の金属製ピンを用いることができる。
【0015】
棒状体301…331、351…381間の距離は、流体の液漏れがなく駆動手段を用いて棒状体301…331を移動可能な程度であれば特に制限されない。
【0016】
図4に示すように複数の棒状体301…307の長手方向側面間の隙間に封止剤8を配置してもよい。流体の漏れを防止することができるからである。また棒状体301…307を動かす際の潤滑剤としても機能するからである。封止剤8としては隙間を埋めることができ細胞培養に悪影響を与えないものであれば特に制限なく種々のものを用いることができる。封止剤8としては、例えばグリースを用いることができる。
【0017】
図5に示すように、断面が円形状の棒状体301a…307aを用いてもよい。断面を円形状とすることで、基板2と棒状体301a…307aの接触面積が狭くなることで、基板2と棒状体301a…307aの摩擦抵抗が減り棒状体301a…307aを動かしやすくなる。この場合、液漏れを防止するため、棒状体301a…307a間に封止剤8を配置することが好ましい。
【0018】
複数の棒状体301…331、351…381の少なくとも一部を長手方向(図3X軸方向)に移動させることで、マイクロ流路10の形状を変形させることができる。棒状体301…331、351…381を動かす駆動手段としては、棒状体301…331、351…381の位置を制御できるものであれば特に制限はなく種々のものを用いることができる。駆動手段としては、例えば図6に示すような側壁駆動用ディバイス60(XY-2Z軸駆動システム)を用いることができる。図6の側壁駆動用ディバイス60は、マイクロ流体チップ1が配置されるステージ61と、マイクロ流体チップ1をステージ61上に固定する固定手段63,64と、ステージの上方にマイクロ流体チップ1に対向して配置されるプローブ65と、プローブ65に接続されプローブ65のX、Y、Z軸方向の位置を制御する駆動部(図示せず)とを備える。駆動部を作動させ、プローブ65のX,Y軸位置を調整して棒状体301…331、351…381のいずれか1つの上方に移動させ、その後Z方向にプローブ65を動かし、プローブ65の先端を棒状体に当接させる。その後、棒状体の長手方向(図3X軸方向)に動かす。この作業を繰り返して側壁部31,32の形状を変形することで、マイクロ流路10の形状を変形させることができる。
【0019】
図1のマイクロ流体チップ1では、側壁部31,32の端部35,36を互いに対向させることによりマイクロ流路10を形成した。その他にも、図7に示すように実施形態の変形例として、基板2に垂直に壁部21を形成し、その壁部21に側壁部31の端部35を対向して配置し、壁部21と側壁部31の間にマイクロ流路10を形成してもよい。即ち、基板2と、基板2上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体301…331からなる側壁部31とを備え、基板2には基板2に垂直に壁部21が形成されたマイクロ流体チップ1Aが提供される。側壁部31は、棒状体301…331の幅方向側面が壁部21に対向するように基板2上に配置され、壁部21と棒状体301…331の幅方向側面間にマイクロ流路10が形成されている。複数の棒状体301…331の少なくとも一部を棒状体301…331の長手方向に移動させることでマイクロ流路10の形状を変形させることができる。なお、側壁部31の一部と接しつつ、マイクロ流路上に配置されるカバー体5をさらに有してもよい。
【0020】
マイクロ流体チップ1、1Aの作用効果を示すべく以下に実施例を挙げて説明する。
【0021】
[実施例1]
図8(a)〜(d)は、マイクロ流体チップ1Aを用いて気泡を搬送した際の図である。マイクロ流体チップ1Aを図6の側壁駆動用ディバイス60のステージ61上に配置し、固定手段63,64で固定した。その後、図8(a)に示すようにマイクロ流路10中に気泡51を注入した。そして図8(b)に示すように棒状体301、302を壁部21に向かって移動させた。具体的には、プローブ65の先端を棒状体302に当接した後、駆動手段を作動させて、棒状体302を壁部21に向かって移動させた。同様にして、図8(c)に示すように棒状体304、305を壁部21に向かって移動させた。そして図8(d)に示すように気泡51を下流側(図面の左)に押し出した。これにより、気泡を搬送できることが示された。
【0022】
[実施例2]
図9(a)〜(d)は、マイクロ流体チップ1を用いて高分子ゲル53を搬送した際の図である。まずマイクロ流体チップ1を図6の側壁駆動用ディバイス60のステージ61上に配置し、固定手段63,64で固定した。そして、図9(a)に示すように、高分子ゲル53をマイクロ流体チップ1のマイクロ流路10に導入した。側壁駆動用ディバイス60により、図9(b)に示すように、図面下方から上方に向かって、棒状体351,352,353を順々に長手方向に移動しマイクロ流路10を拡げた。それと併せて、図9(c)に示すように、高分子ゲル53を図面上方に押し出すように、棒状体301、302…の順に長手方向に移動させマイクロ流路10を閉鎖していった。そして高分子ゲル53を、図9(d)に示すように図面上方に押し出した。これにより、高分子ゲル53を搬送できることが示された。
【0023】
[実施例3]
図10〜図14は、細胞の増殖に併せて、マイクロ流路の形状を変形できることを示す図である。マイクロ流体チップ1のマイクロ流路10を培養液の循環経路(図示せず)に接続した。その後図1の棒状体311…323を図面に向かって長手方向右側に移動させ、棒状体361…373を図面に向かって長手方向左側に移動させた。そして図10に示すような、マイクロ流路10内に細胞増殖領域101を形成した。その後流体駆動装置(図示せず)を作動させることで、マイクロ流路10を介して、細胞増殖領域101内に培養液を供給しまた培養液を排出させた。そして、循環経路内に培養液を循環させた。その後細胞増殖領域101内に細胞12を導入し細胞12を増殖させた。次に、細胞12が増殖して細胞増殖領域101内のスペースが過密になったところで、図11に示すように、棒状体308,309,310を図面に向かって長手方向右側、棒状体358,359,360を図面に向かって長手方向左側に移動させて、細胞増殖領域101の面積を拡げた。そして、細胞12が細胞増殖領域101内で適当に分散したところで、図12に示すように細胞増殖領域101中段の棒状体362,363、364を図面に向かって長手方向右側に移動させた。さらに、棒状体311,312、313を図面に向かって長手方向左側に移動させ、図13に示すように、細胞増殖領域101、102に2分割した。このように、マイクロ流体チップ1によれば簡易に細胞をまびくことができた。
【0024】
細胞増殖領域101を2分割する他にも、図14(a)(b)に示すように、棒状体310…324を図面に向かって長手方向右側、棒状体360…374を図面に向かって長手方向左側に開放していくことにより、細胞増殖領域101の面積を拡大させてもよい。
【0025】
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0026】
例えば、マイクロ流体チップ1の応用例として、マイクロ流体チップ1と、さらに棒状体301…331、351…381を動かす駆動手段とを有するマイクロ流体システムが提供される。また培養流路の一部にマイクロ流体チップ1を供える、細胞培養システムが提供される。
【0027】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0028】
1、1A…マイクロ流体チップ
2…基板、
31,32…側壁部、
5…カバー体
8…封止剤
10…マイクロ流路、
301〜331、351〜381…棒状体
60…側壁駆動用ディバイス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体からなる第1、第2の側壁部とを備え、
前記第1、第2の側壁部は、前記棒状体の幅方向側面が互いに対向するように前記基板上に離間して配置され、前記幅方向側面間にマイクロ流路が形成され、
前記複数の棒状体の少なくとも一部を前記棒状体の長手方向に移動させることで前記マイクロ流路の形状を変形させることができることを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体からなる第1の側壁部とを備え、
前記基板には、前記基板に垂直に壁部が形成されており、
前記第1の側壁部は、前記棒状体の幅方向側面が前記壁部に対向するように前記基板上に配置され、前記壁部と前記棒状体の前記幅方向側面間にマイクロ流路が形成され、
前記複数の棒状体の少なくとも一部を前記棒状体の長手方向に移動させることで前記マイクロ流路の形状を変形させることができることを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項3】
前記第1、第2の側壁部のそれぞれの一部と接しつつ、前記マイクロ流路上に配置されるカバー体をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項4】
前記第1の側壁部の一部と接しつつ、前記マイクロ流路上に配置されるカバー体をさらに有することを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項5】
前記複数の棒状体の長手方向側面間の隙間に封止剤が配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の前記マイクロ流体チップと、
前記棒状体を移動させる駆動手段とを有することを特徴とするマイクロ流体システム。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体からなる第1、第2の側壁部とを備え、
前記第1、第2の側壁部は、前記棒状体の幅方向側面が互いに対向するように前記基板上に離間して配置され、前記幅方向側面間にマイクロ流路が形成され、
前記複数の棒状体の少なくとも一部を前記棒状体の長手方向に移動させることで前記マイクロ流路の形状を変形させることができることを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に接着されずに長手方向側面で接するように一列に配置された複数の棒状体からなる第1の側壁部とを備え、
前記基板には、前記基板に垂直に壁部が形成されており、
前記第1の側壁部は、前記棒状体の幅方向側面が前記壁部に対向するように前記基板上に配置され、前記壁部と前記棒状体の前記幅方向側面間にマイクロ流路が形成され、
前記複数の棒状体の少なくとも一部を前記棒状体の長手方向に移動させることで前記マイクロ流路の形状を変形させることができることを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項3】
前記第1、第2の側壁部のそれぞれの一部と接しつつ、前記マイクロ流路上に配置されるカバー体をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項4】
前記第1の側壁部の一部と接しつつ、前記マイクロ流路上に配置されるカバー体をさらに有することを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項5】
前記複数の棒状体の長手方向側面間の隙間に封止剤が配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の前記マイクロ流体チップと、
前記棒状体を移動させる駆動手段とを有することを特徴とするマイクロ流体システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−194062(P2012−194062A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58299(P2011−58299)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2010年11月17日、「化学とマイクロ・ナノシステム研究会」事務局発行の「第22回 化学とマイクロ・ナノシステム研究会講演要旨集」に発表
【出願人】(800000068)学校法人東京電機大学 (112)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2010年11月17日、「化学とマイクロ・ナノシステム研究会」事務局発行の「第22回 化学とマイクロ・ナノシステム研究会講演要旨集」に発表
【出願人】(800000068)学校法人東京電機大学 (112)
【Fターム(参考)】
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