説明

マイクロ流体装置における試料混合

試料処理装置上で使用するための混合構造を開示する。この混合構造は、試料処理装置の回転速度の変更によって混合チャンバ中へ、および混合チャンバから外へ試料材料が強制されて試料材料の混合が達成されるように、プロセスチャンバ(40)と流体連通状態にある1個以上の混合チャンバ(60)を備える。混合チャンバは、それに対して試料処理装置が回転される軸に関連して、プロセスチャンバの遠位側上に位置する混合ポート(62)を通してプロセスチャンバと流体連通状態にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロ流体試料処理装置中での流体試料の混合に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な化学的または生物学的プロセスが実行されるプロセスチャンバを備えた試料処理装置は、科学的および/または診断的研究において益々高まる役割を果たしている。かかる装置中に提供されるプロセスチャンバは、好ましくはプロセスを実行するために必要とされる試料材料の量を減少させるように体積が小さい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プロセスチャンバを備えた試料処理装置に関連する継続的な問題の1つは、プロセスチャンバ中での材料の混合にある。例えば試薬の利用および/または試料の利用の改善のために、混合は有用となり得る。しかしながら、多くの試料処理装置は少量体積の試料材料(例えば5マイクロリットル)を使用するように設計されており、かかる少量試料体積のプロセッシングのために設計された試料処理装置中への装填後、接近が容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は試料処理装置上で使用するための混合構造を提供する。この混合構造は、試料処理装置の回転速度の変更によって混合チャンバ中へ、および混合チャンバから外へ試料材料が強制されて試料材料の混合が達成されるように、プロセスチャンバと流体連通状態にある1個以上の混合チャンバを備える。混合チャンバは、それに対して試料処理装置が回転される軸に関連して、プロセスチャンバの遠位側上に位置する混合ポートを通してプロセスチャンバと流体連通状態にある。
【0005】
本発明の混合構造の1つの潜在的な利点は、プロセスチャンバ体積が試料体積よりも大きい場合さえも混合を実行可能であるということである。試料処理装置の回転間に試料材料が移動される場所であるプロセスの遠位側上に混合ポートが位置するため、部分的に充填されたプロセスチャンバの回転によって混合チャンバ中へと試料材料を移動させることが可能であって、そのため、なお混合が生じ得る。
【0006】
いくつかの実施形態において、プロセスチャンバは出口ポートを備えてもよく、これもプロセスチャンバの遠位側上に位置する。かかる構造の1つの潜在的な利点は、例えば、混合チャンバおよびプロセスチャンバの排出の向上である。
【0007】
他の実施形態において、混合チャンバはプロセスチャンバのフットプリント内に位置してもよい。かかる構造の1つの潜在的な利点は、試料処理装置上の領域がプロセスチャンバによって占有され、そして関連混合構造を減少することができるということである。
【0008】
一態様において、本発明は、プロセスチャンバの近位側上の送出ポートとプロセスチャンバの遠位側上の出口ポートとを有するプロセスチャンバと、プロセスチャンバの遠位側上に位置する混合ポートを有する混合チャンバとを備えた試料処理装置上の試料混合構造を提供する。回転軸線に対する試料処理装置の回転によって、混合ポートの開放時にプロセスチャンバ中の試料材料の少なくとも一部分を混合ポートを通して混合チャンバ中へと移動させる。ここでは、プロセスチャンバの近位側はプロセスチャンバの遠位側よりも回転軸線の近位に位置する。プロセスチャンバの出口ポートの解放時に、回転軸線に対する試料処理装置の回転によって、試料材料をプロセスチャンバおよび混合チャンバの外へと移動させる。
【0009】
もう1つの態様において、本発明は、プロセスチャンバの近位側上の送出ポートとプロセスチャンバの遠位側上の出口ポートとを有し、出口ポートが閉鎖されているプロセスチャンバと、プロセスチャンバの遠位側上に位置する混合ポートを有する混合チャンバとを備えた試料処理装置上の試料混合構造を提供する。このプロセスチャンバは試料処理装置の第1主側面と第2主側面との間に位置し、混合チャンバの少なくとも一部分はプロセスチャンバと試料処理装置の第2主側面との間に位置する。回転軸線に対する試料処理装置の回転によって、混合ポートの開放時にプロセスチャンバ中の試料材料の少なくとも一部分を混合ポートを通して混合チャンバ中へと移動させる。ここでは、プロセスチャンバの近位側はプロセスチャンバの遠位側よりも回転軸線の近位に位置している。そしてプロセスチャンバの出口ポートの解放時に、回転軸線に対する試料処理装置の回転によって、試料材料をプロセスチャンバおよび混合チャンバの外へと移動させる。
【0010】
もう1つの態様において、本発明は、プロセスチャンバの近位側上の送出ポートとプロセスチャンバの遠位側上の出口ポートとを有するプロセスチャンバと、プロセスチャンバの遠位側上に位置する第1混合ポートを通してプロセスチャンバと流体連通状態にある第1混合チャンバと、プロセスチャンバの遠位側上に位置する第2混合ポートを通してプロセスチャンバと流体連通状態にある第2混合チャンバとを備えた試料処理装置上の試料混合構造を提供する。回転軸線に対する試料処理装置の回転によって、プロセスチャンバ中の試料材料の少なくとも一部分を第1混合チャンバおよび第2混合チャンバの少なくとも1個中へと移動させる。ここでは、プロセスチャンバの近位側はプロセスチャンバの遠位側よりも回転軸線の近位に位置している。プロセスチャンバの出口ポートの解放時に、回転軸線に対する試料処理装置の回転によって、試料材料を第1混合チャンバ、第2混合チャンバおよびプロセスチャンバの外へと移動させる。
【0011】
もう1つの態様において、本発明は、試料処理装置中で流体を混合する方法を提供する。この方法は、プロセスチャンバと、少なくとも1個の混合チャンバと、プロセスチャンバの遠位側上に位置する少なくとも1個の混合ポートとを備えた試料処理装置を提供する工程と、プロセスチャンバ中で試料材料を提供する工程と、回転軸線に対して試料処理装置を回転させる工程であって、試料処理装置の回転時にプロセスチャンバ中の試料材料の少なくとも一部分を少なくとも1個の混合ポートを通して少なくとも1個の混合チャンバ中へと移動させ、回転工程が少なくとも1回の加速および減速サイクルを含んでなる工程とを含む。
【0012】
もう1つの態様において、本発明は、試料処理装置中で流体を混合する方法を提供する。この方法は、プロセスチャンバと、少なくとも1個の混合チャンバと、プロセスチャンバの遠位側上に位置する少なくとも1個の混合ポートとを有する試料処理装置を提供する工程と、プロセスチャンバ中で試料材料を提供する工程と、回転軸線に対して試料処理装置を回転させる工程であって、試料処理装置の回転時にプロセスチャンバ中の試料材料の少なくとも一部分を少なくとも1個の混合ポートを通して少なくとも1個の混合チャンバ中へと移動させ、回転工程が2回以上の加速および減速サイクルを含んでなる工程とを含む。この方法は、プロセスチャンバ中の試料材料の少なくとも一部分を少なくとも1個の混合チャンバ中へと移動させるために、試料処理装置の回転後にプロセスチャンバ中に出口ポートを開放する工程と、回転軸線に対して試料処理装置を回転させることによって、試料材料の少なくとも一部分を出口ポートを通してプロセスチャンバから除去する工程とも含む。
【0013】
以下、本発明の様々な実例となる実施形態に関連して、本発明のこれらおよび他の特徴と利点を記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実例となる実施形態の以下の詳細な記述において、その一部を形成し、図示によって本発明が実施され得る具体的な実施形態が示される添付の図面が参照される。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態が利用されてもよいこと、および構造の変更がなされてもよいことは理解されるべきである。
【0015】
本発明は、所望の反応、例えば、PCR増幅、リガーゼ連鎖反応(LCR)、自立性アレイ複製(self−sustaining sequence replication)、酵素の動力学的研究、均質配位子結合アッセイおよび他の化学的、生化学的または他の反応であって、例えば正確および/または迅速な熱的変動を必要とする反応を得るための複数のプロセスチャンバにおける液体試料材料(または液体に同伴された試料材料)のプロセッシングにおいて使用可能な試料処理装置を提供する。特に本発明は、各プロセスアレイが好ましくは装填チャンバ、少なくとも1つのプロセスチャンバ、バルブチャンバおよびプロセスアレイの様々な構成要素間で流体を移動させるための導管を備え得る1個以上のプロセスアレイを備えた試料処理装置を提供する。
【0016】
実例となる実施形態の様々な構造が以下に記載されるが、本発明の試料処理装置は、例えば米国特許出願公報第2002/0064885A1号(ベディンハム(Bedingham)ら)、第2002/0048533A1号(ハームス(Harms)ら)、第2002/0047003A1号(ベディンハム(Bedingham)ら)、および第2003/0138779A1号(パータサラティ(Parthasarathy)ら)、ならびに米国特許第6,627,159B1号(ベディンハム(Bedingham)ら)および2003年12月12日出願の「可変性バルブ装置および方法(VARIABLE VALVE APPARATUS AND METHODS)」と題された米国特許出願第10/734,717号に記載のものと同様であってもよい。上記識別される文献は全て、本発明の原理に従う試料処理装置を製造するために使用可能な様々な異なる構造の試料処理装置を開示する。
【0017】
本発明の原則に従って製造される1つの実例となる試料処理装置を図1に示す。これは、本発明のプロセスチャンバおよび関連する混合構造を含み得る1つの試料処理装置10の平面図である。この試料処理装置10は、好ましくは図1に図示されるように円形ディスクの形状であり得るが、回転可能ないずれの他の形状、例えば長方形等も円形ディスクの代わりに使用可能である。
【0018】
図1に示されるように、試料処理装置10は少なくとも1個のプロセスアレイ20を含む。他の実施形態において、試料処理装置10が2個以上のプロセスアレイ20を含むことが好ましい。描写されるように試料処理装置10が円形である場合、描写された各プロセスアレイ20が、試料処理装置10の外周部に向けて試料処理装置10の中心12の近位から延在する径方向軸線21と一直線になる構成要素を備える。このアレイが好ましいが、試料処理装置10上のプロセスアレイ20のいずれのアレイも代わりに使用されてもよいことは理解されるであろう。
【0019】
試料処理装置10は、回転によってプロセスアレイ20を通して流体移動が生じるように設計されている。試料処理装置10の中心12を通して回転軸線が延在することが好ましいが、その変形も可能である。
【0020】
プロセスアレイ20は、好ましくは少なくとも1個のプロセスチャンバ40を備える。描写された実施形態において、プロセスアレイ20は、導管32に沿ってプロセスチャンバ40に連結された任意の装填チャンバ30も備える。プロセスチャンバ40は、好ましくは導管42に沿って第1プロセスチャンバ40に連結された第2プロセスチャンバ50に連結されてもよい。プロセスチャンバ40は、好ましくはプロセスチャンバ40から第2プロセスチャンバ50への移動を制御するためにバルブ44を備える。好ましくはバルブ44は、開放されるまで、通常、閉鎖されている。プロセスアレイ20は、プロセスチャンバ40と流体連通状態にある混合チャンバ60も備える。
【0021】
プロセスアレイ20と関連する多くの特徴が任意でもよいことは理解されなければならない。例えば、異なる装填構造を通して試料材料を直接的にプロセスチャンバ40に導入可能である場合、装填チャンバ30および関連導管32は任意であり得る。他の任意の特徴としては、例えばバルブ40および/または第2プロセスチャンバ50、ならびにそれに導かれる導管42が挙げられる。
【0022】
プロセスアレイ20と関連して提供されるいずれの装填構造(例えば装填チャンバ30)も、試料材料を受け取る外部装置(例えば、ピペット、中空注射器または他の流体送出装置)と組み合わせて設計されてよい。装填構造自体が体積を画定してもよく(例えば、図1の装填チャンバ30のように)、または装填構造が特定の体積を画定しないが、代わりに試料材料が導入される位置であり得る。例えば、ピペットまたは針が挿入されるポートの形態で装填構造が提供されてよい。一実施形態において、装填構造は、例えばピペット、注射器針等を受け取るように適応された導管に沿って設定された位置であり得る。手動または自動化システム(例えば、ロボット等)によって装填が実行されてもよい。さらに、もう1つの装置から直接的に試料処理装置10が装填されてもよい(自動化システムを使用して、または手動)。
【0023】
図2は、プロセスチャンバ40ならびに混合チャンバ60および混合ポート62の形態のその関連混合構造の拡大平面図である。混合ポートを通して、混合チャンバ60はプロセスチャンバ40の体積と流体連通状態にある。
【0024】
混合ポート62がプロセスチャンバ40の遠位側に位置することが好ましい。プロセスチャンバ40の遠位側は、プロセスアレイ20を通しての流体移動および/または混合チャンバ60を使用する混合をもたらすために、その軸に対して試料処理装置10が回転される回転軸線から遠位に位置するプロセスチャンバ20の側面として画定される。本明細書で説明される通り、回転軸線は、好ましくは試料処理装置10の中心12である。試料材料が導管32を通してプロセスチャンバ40に送出されるいくつかの例において、プロセスチャンバ40の遠位側は送出ポート34の反対側として画定され得、それを通して試料材料がプロセスチャンバ40に入る。かかる実施形態において、送出ポート34は、好ましくはプロセスチャンバ40の近位側、すなわち、流体移動をもたらすために、それに対して試料処理装置10が回転される軸に最も近いプロセスチャンバ40の側面に位置し得る。
【0025】
第2プロセスチャンバ50への送出のための導管42へとプロセスチャンバ50中の試料材料を移動させるために、図2に描写されるバルブ44を開放可能である。バルブ44は、図3の断面図に描写される通り、プロセスチャンバ40の一部分上に張出しているバルブリップ48に提供されたバルブセプタム46の形態であってよい。かかるバルブ構造のさらなる例および説明は、例えば米国特許出願公報第2003/138779A1号(パータサラティ(Parthasarathy)ら)および2003年12月12日出願の「可変性バルブ装置および方法(VARIABLE VALVE APPARATUS AND METHODS)」と題された米国特許出願第10/734,717号に見出され得る。
【0026】
いずれの数の適切な構造技術を使用して本発明の試料処理装置が製造されてもよいが、図3の断面図において1つの実例となる構造体が示される。試料処理装置10は、コア層16に結合されたベース層14を備える。カバー層18は、ベース層14から外方に向くコア層16の側面上でバルブ層16に結合される。
【0027】
いずれかの適切な材料または材料の組み合わせから試料処理装置10の層を製造してよい。ベース層14および/またはコア層16のためのいくつかの適切な材料の例としては、限定されないが、高分子材料、ガラス、ケイ素、石英、セラミックス等が挙げられる。層が試料材料と直接接触する試料処理装置10に関して、層のために使用される材料が試料材料と非反応性であることが好ましい。多くの異なる生物学的分析の用途において基材のために使用可能ないくつかの適切な高分子材料の例としては、限定されないが、ポリカーボネート、ポリプロピレン(例えば、アイソタクチックポリプロピレン)、ポリエチレン、ポリエステル等が挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態において、コア層16および/またはベース層14に形成される特徴がカバー層18を通して見えるように、コア層18が透明または半透明であることが好ましい。例えば試料処理装置10の描写された実施形態において、本明細書に記載される通り、コア層18はプロセスアレイ20中の特徴の視覚化を可能にする。
【0029】
いずれかの適切な技術または技術の組み合わせによって、試料処理装置10を形成する層を互いに結合することができる。適切な結合技術は、好ましくはプロセスチャンバ中での試料材料のプロセッシング間に経験する力に結合が耐性を示すような十分な完全性を有する。いくつかの適切な結合技術の例としては、例えば、接着結合(感圧接着剤、硬化性接着剤、ホットメルト接着剤等を使用する)、ヒートシール、熱溶接、超音波溶接、化学溶接、溶媒結合、共押出、押出キャスティング等およびそれらの組み合わせが挙げられる。さらに、異なる層を結合するために使用される技術は同一であっても異なってもよい。例えば、ベース層14およびコア層16を結合するために使用された技術は、カバー層18およびコア層16を結合するために使用された技術と同一であっても異なってもよい。
【0030】
混合ポート62がプロセスチャンバ40の遠位側上に位置することによって、試料処理装置10の回転速度の変化を使用して、試料材料を混合チャンバ60中へと、および混合チャンバ60から外へと選択的に移動させることができる。プロセスチャンバ40から混合チャンバ60中へ、および混合チャンバ60から外への試料材料の移動は、例えばプロセスチャンバ40内に位置する試薬41と試料材料を例えば混合するために有用であり得る。かかる試薬41は図3の拡大断面図に描写される。
【0031】
図4および5は、混合チャンバ60中へ、およ外への試料材料70の移動を描写する。図4において、試料材料70は実質的にプロセスチャンバ40内に位置する。試料処理装置10の回転によって、装填チャンバ30から例えば導管32を通して、プロセスチャンバ40に試料材料70が送出されてもよい。試料処理装置10の回転はプロセスチャンバに試料材料70を送出するために十分であるが、回転によって発達された遠心力は、試料材料70を混合チャンバ60に入れるため十分でない。
【0032】
しかしながら図4に示されるように、一旦プロセスチャンバ40内の位置にあれば、混合チャンバ60へと導かれる混合ポート62は、好ましくは試料材料70によって閉鎖される。結果として、混合チャンバ60内に位置するいずれの空気または他の圧縮性流体も、その中に捕らえられる。
【0033】
試料材料70上の遠心力が増加するように試料処理装置10がより迅速に回転される場合、例えば図5に描写されるように、試料材料70の少なくとも一部分は好ましくは混合ポート62を通して混合チャンバ60中へと強制される。より高密度の試料材料70において作用する遠心力のため、混合チャンバ60内に位置する空気または他の圧縮性流体(好ましくはガス)は、好ましくは混合チャンバ60内で圧縮される。試料処理装置10の回転速度を減速させることによって、好ましくは少なくともいくつか、そしておそらく好ましくは全ての試料材料70がプロセスチャンバ40へと戻され得る。
【0034】
本発明に従って混合を達成するために回転を使用する場合、回転は、好ましくは少なくとも1回の加速および減速サイクルを含み得、すなわち試料処理装置10の回転速度が増加されて、試料材料70の少なくとも一部分を混合チャンバ60中へと移動させ、続いて減速によって回転速度が低下(または停止)されて、試料材料70の少なくとも一部分が混合チャンバ60の外へ移動される。いくつかの例において、混合工程が2回以上のかかる加速および減速サイクルを含むことが好ましい。
【0035】
試料処理装置10の回転速度の変化による混合チャンバ60中へ、および混合チャンバ60から外への試料材料70の移動を繰り返すことによって、プロセスチャンバ40内に位置する試料材料70およびいずれかの試薬の混合が増強される。さらにいくつかの例において、試料処理装置10の回転速度の変化によって試料材料70とかかる試薬との接触が好ましく防除されるように、一種以上の試薬が混合チャンバ60中に提供されてもよい。例えば、混合チャンバ60中に位置する試薬との試料材料70の初期接触時間は、試料処理装置10の回転速度に基づいて制御され得る。
【0036】
図6は、本発明の原則に従うプロセスチャンバおよび関連混合構造のもう1つの別の実施形態である。多くの点で、プロセスチャンバ140および関連混合構造は、図1〜5に関連して記載されるものと同様である。中でも差異は、それぞれ混合ポート162aおよび162bを通して、プロセスチャンバ140と流体連通状態にある2個の混合チャンバ160aおよび160bの形態で混合構造が提供されることである。
【0037】
混合チャンバ160aおよび160b(本明細書において集合的に混合チャンバ160として称される)は、好ましくは、それに沿ってプロセスチャンバ140が位置する径方向軸線121の反対側にあってよい。描写される通り、径方向軸線121は、好ましくは混合チャンバ160に関して対称軸である。
【0038】
プロセスチャンバ140は送出ポート134も備え、それを通して試料材料がプロセスチャンバ140に送出され得る。送出ポート134は、好ましくはプロセスチャンバ140の近位側、すなわち、流体移動および/または混合チャンバ160を使用する試料材料の混合をもたらすために、それに対してプロセスチャンバ140を含有する試料処理装置が回転される軸に最も近いプロセスチャンバ140の側面に位置する。
【0039】
図6に示される通り、ベース層114が結合されるコア層116において特徴(例えばプロセスチャンバ140、混合チャンバ160、送出ポート134等)が形成される。実際の装置において、ベース層114が結合される主表面の反対側であるコア層116の主表面上にカバー層(図示せず)が提供される。
【0040】
図7および8は、プロセスチャンバ240および関連混合構造のもう1つの実施形態を描写しており、図8は図7の線8−8に沿って取られる断面図である。本実施形態において、混合構造は2個の混合チャンバ260aおよび260b(本明細書において集合的に混合チャンバ260として称される)を備える。各プロセスチャンバ260の少なくとも一部分が、プロセスチャンバ240とプロセスチャンバ240が位置する試料処理装置の主側面のうちの1つとの間に位置するように、混合チャンバ260はプロセスチャンバ240上に位置する。プロセスチャンバ240のフットプリント内に位置する部分を有するものとして混合チャンバ260が記載されてもよく、ここでは、主側面に対して垂直の、軸に沿って試料処理装置の主側面上のプロセスチャンバ240の突出としてプロセスチャンバ240のフットプリントは画定される。描写されないが、混合チャンバがプロセスチャンバ240のフットプリント内に完全に位置することが好ましい。
【0041】
一部分または全ての混合チャンバがプロセスチャンバのフットプリント内に位置する構造の1つの潜在的な利点は、混合構造が、混合構造を有するプロセスチャンバを提供するために試料処理装置上で必要とされる領域の量を実質的に拡大しないということである。
【0042】
混合チャンバ260はプロセスチャンバ240上に位置するため、ベース層214に連結された混合層216を通して延在する混合ポート262aおよび262bによって連結される。プロセスチャンバ240はベース層214中で、そしてまたベース層214に結合されたベースカバー層213によって画定される。混合層216に結合されたカバー層218は、混合チャンバ260の体積をさらに画定する。
【0043】
プロセスチャンバ240は任意のバルブ244を備えており、これは、試料処理装置上に存在し得る他の特徴への送出のための導管242中へと試料材料を流すために開放されるバルブセプタム246を有する。
【0044】
加えて、混合ポート262aおよび262bもセプタム266aおよび266bの形態で任意のバルブを備えており、それらはプロセスチャンバ240中のいずれかの試料材料が混合チャンバ260の一方または両方に入るように開放されなければならない。セプタム266aおよび266bは、例えばバルブ244のセプタム246に関連して使用されるいずれかの適切な技術によって開放され得る。例えば混合チャンバ260が内部に位置する一種以上の試薬を含み、それらの試薬と試料材料との接触が制御されるべき場合、混合チャンバ260に関連するバルブの使用が特に有用である。
【0045】
本明細書および添付の請求の範囲において使用される場合、文脈で明白に記載されない限り、単数形(「a」「and」および「the」)は複数形の指示を含む。従って、例えば、「混合チャンバ」の言及は複数の混合チャンバを含み、そして「プロセスチャンバ」の言及は1以上のプロセスチャンバおよび当業者に既知のその同等物を含む。
【0046】
本発明の実例となる実施形態が説明されており、そして本発明の範囲内で可能な変更に対する引用がなされている。本発明におけるこれらおよび他の変更および改造は本発明の範囲から逸脱することなく当業者に明らかであり、そして本発明が本明細書で明示された実例となる実施形態に限定されないことは理解されるべきである。従って、本発明は添付の請求の範囲およびその同等物によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による1つの代表的な試料処理装置の平面図。
【図2】本発明による1つの代表的な混合構造および関連プロセスチャンバの拡大図。
【図3】図2の線3−3に沿った、図2のプロセスチャンバの拡大断面図。
【図4】本発明の一実施形態におけるプロセスチャンバおよび混合チャンバを使用する混合作用を示す図。
【図5】本発明の一実施形態におけるプロセスチャンバおよび混合チャンバを使用する混合作用を示す図。
【図6】本発明による別のプロセスチャンバおよび関連混合構造の斜視図。
【図7】本発明によるもう1つの別のプロセスチャンバおよび関連混合構造の斜視図。
【図8】図7の線8−8に沿った、図7のプロセスチャンバおよび関連混合構造の拡大断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料処理装置上の試料混合構造であって、
プロセスチャンバの近位側の送出ポートおよびプロセスチャンバの遠位側の出口ポートを備えるプロセスチャンバと、
前記プロセスチャンバの前記遠位側に位置する混合ポートを備える混合チャンバと
を具備し、
回転軸線を中心とする前記試料処理装置の回転により、前記混合ポートの開放時に前記プロセスチャンバ内の試料材料の少なくとも一部分を前記混合ポートを通して前記混合チャンバ内へと移動させ、このとき前記プロセスチャンバの前記近位側が前記プロセスチャンバの前記遠位側よりも該回転軸線の近位に位置しており、
前記プロセスチャンバの前記出口ポートの開放時には、前記回転軸線を中心とする前記試料処理装置の回転により、前記試料材料を前記プロセスチャンバおよび前記混合チャンバの外へ移動させるようになっている、
試料混合構造。
【請求項2】
前記プロセスチャンバの前記出口ポートが閉鎖されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセスチャンバの前記近位側と前記遠位側とを通して、径方向軸線が延在する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記径方向軸線が前記回転軸線と交差し、前記径方向軸線が前記プロセスチャンバの前記送出ポートと前記出口ポートとを通して延在する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記混合チャンバの少なくとも一部分が、前記プロセスチャンバの一側から前記径方向軸線に関して接線方向に位置する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセスチャンバが、前記試料処理装置の第1主側と第2主側との間に位置し、前記混合チャンバの少なくとも一部分が、前記プロセスチャンバと前記試料処理装置の該第2主側との間に位置する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記混合チャンバの実質的全体が、前記プロセスチャンバと前記試料処理装置の前記第2主側との間に位置する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記混合ポートがバルブを備え、前記混合ポートの該バルブが閉鎖されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記混合チャンバ内の試薬をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
試料処理装置上の試料混合構造であって、
プロセスチャンバの近位側の送出ポートおよびプロセスチャンバの遠位側の出口ポートを備え、該出口ポートが閉鎖されているプロセスチャンバと、
前記プロセスチャンバの前記遠位側に位置する混合ポートを備える混合チャンバと
を具備し、
前記プロセスチャンバが、前記試料処理装置の第1主側と第2主側との間に位置し、前記混合チャンバの少なくとも一部分が、前記プロセスチャンバと前記試料処理装置の該第2主側との間に位置し、
回転軸線を中心とする前記試料処理装置の回転により、前記混合ポートの開放時に前記プロセスチャンバ内の試料材料の少なくとも一部分を前記混合ポートを通して前記混合チャンバ内へと移動させ、このとき前記プロセスチャンバの前記近位側が前記プロセスチャンバの前記遠位側よりも前記回転軸線の近位に位置しており、
前記プロセスチャンバの前記出口ポートの開放時には、前記回転軸線を中心とする前記試料処理装置の回転により、前記試料材料を前記プロセスチャンバおよび前記混合チャンバの外へと移動させるようになっている、
試料混合構造。
【請求項11】
試料処理装置上の試料混合構造であって、
プロセスチャンバの近位側の送出ポートおよびプロセスチャンバの遠位側の出口ポートを備えるプロセスチャンバと、
前記プロセスチャンバの前記遠位側に位置する第1混合ポートを通して、前記プロセスチャンバに流体連通する第1混合チャンバと、
前記プロセスチャンバの前記遠位側に位置する第2混合ポートを通して、前記プロセスチャンバに流体連通する第2混合チャンバとを具備し、
回転軸線を中心とする前記試料処理装置の回転により、前記プロセッシングチャンバ内の試料材料の少なくとも一部分を前記第1混合チャンバおよび前記第2混合チャンバの少なくとも一方へと移動させ、このとき前記プロセスチャンバの前記近位側が前記プロセスチャンバの前記遠位側よりも該回転軸線の近位に位置しており、
前記プロセスチャンバの前記出口ポートの開放時には、前記回転軸線を中心とする前記試料処理装置の回転により、前記試料材料を前記第1混合チャンバ、前記第2混合チャンバおよび前記プロセスチャンバの外へと移動させるようになっている、
試料混合構造。
【請求項12】
前記プロセスチャンバの前記出口ポートが閉鎖されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセスチャンバの前記近位側と前記遠位側とを通して、径方向軸線が延在する、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記径方向軸線が前記回転軸線と交差し、前記径方向軸線が前記プロセスチャンバの前記送出ポートと前記出口ポートとを通して延在する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1混合チャンバと前記第2混合チャンバとが、前記径方向軸線に関して対称的である、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記第1混合チャンバの少なくとも一部分が、前記プロセスチャンバの第1側から前記径方向軸線に関して接線方向に位置し、前記第2混合チャンバの少なくとも一部分が、前記プロセスチャンバの第2側から前記径方向軸線に関して接線方向に位置する、請求項11に記載の装置。
【請求項17】
前記プロセスチャンバが、前記試料処理装置の第1主側と第2主側との間に位置し、前記第1混合チャンバの少なくとも一部分および前記第2混合チャンバの少なくとも一部分が、前記プロセスチャンバと前記試料処理装置の該第2主側との間に位置する、請求項11に記載の装置。
【請求項18】
前記プロセスチャンバが、前記試料処理装置の第1主側と第2主側との間に位置し、前記第1混合チャンバの実質的全体および前記第2混合チャンバの実質的全体が、前記プロセスチャンバと前記試料処理装置の該第2主側との間に位置する、請求項11に記載の装置。
【請求項19】
前記第1混合ポートがバルブを備え、前記第1混合ポートの該バルブが閉鎖されている、請求項11に記載の装置。
【請求項20】
前記混合チャンバ内の試薬をさらに具備する、請求項11に記載の装置。
【請求項21】
試料処理装置内で流体を混合する方法であって、
プロセスチャンバと、少なくとも1個の混合チャンバと、該プロセスチャンバの遠位側に位置する少なくとも1個の混合ポートとを備える試料処理装置を用意することと、
前記プロセスチャンバ内に試料材料を用意することと、
回転軸線を中心に前記試料処理装置を回転させて、前記試料処理装置の回転時に前記プロセスチャンバ内の試料材料の少なくとも一部分を前記少なくとも1個の混合ポートを通して前記少なくとも1個の混合チャンバ内へと移動させることとを含み、該回転が、少なくとも1サイクルの加速および減速を含む、
方法。
【請求項22】
前記回転が、2サイクル以上の加速および減速を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1個の混合ポートが閉鎖され、前記回転の前に前記プロセスチャンバと前記少なくとも1個の混合チャンバとが流体連通状態にあるように、前記少なくとも1個の混合ポートを開放することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記プロセスチャンバが試薬を含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1個の混合チャンバが試薬を含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1個の混合チャンバが、2個以上の混合チャンバを備え、該2個以上の混合チャンバの各々の混合チャンバが、前記少なくとも1個の混合ポートのうち1個の混合ポートを備える、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記プロセスチャンバが出口ポートを備え、前記試料処理装置の前記回転の後に、該出口ポートを開放して、前記プロセスチャンバ内の試料材料の少なくとも一部分を、前記混合ポートを通して前記混合チャンバ内へ移動させることをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記回転軸線を中心に前記試料処理装置を回転させて、前記試料材料の少なくとも一部分を、前記出口ポートを通して前記プロセスチャンバから除去することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
試料処理装置内で流体を混合する方法であって、
プロセスチャンバと、少なくとも1個の混合チャンバと、該プロセスチャンバの遠位側に位置する少なくとも1個の混合ポートとを備える試料処理装置を用意することと、
前記プロセスチャンバ内に試料材料を用意することと、
回転軸線を中心に前記試料処理装置を回転させて、前記試料処理装置の回転時に前記プロセスチャンバ内の試料材料の少なくとも一部分を前記少なくとも1個の混合ポートを通して前記少なくとも1個の混合チャンバ内へと移動させることであって、該回転が2サイクル以上の加速および減速を含むようにすることと、
前記試料処理装置の前記回転の後に、前記プロセスチャンバに出口ポートを開口させて、前記プロセスチャンバ内の試料材料の少なくとも一部分を前記少なくとも1個の混合チャンバ内へと移動させることと、
前記回転軸線を中心に前記試料処理装置を回転させることにより、前記試料材料の少なくとも一部分を前記出口ポートを通して前記プロセスチャンバから除去することと、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−513757(P2007−513757A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543806(P2006−543806)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/034749
【国際公開番号】WO2005/061084
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】