説明

マイクロ流路チップ及びその製造方法

【課題】培養液と雰囲気ガスとにおいて、酸素及び二酸化炭素のガス交換が可能であり、且つ、光学顕微鏡を用いた細胞観察及び培養細胞の回収が可能なマイクロ流路チップを提供すること。
【解決手段】
第1開口部、第2開口部、培養部、前記第1開口部と前記培養部とを接続する第1流路、及び前記第2開口部と前記培養部とを接続する第2流路を有する基材と、前記培養部の一部に配置された開口を酸素透過膜によって塞がれた窓部と、を有し、前記酸素透過膜の少なくとも一部を破ることによって前記窓部から前記培養部で培養された細胞を回収可能であることを特徴とするマイクロ流路チップが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロ流路チップに関し、特に、細胞培養用のマイクロ流路チップに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造技術を流路形成に応用したμ−TAS(Micro Total Analysis System)やLab-on-a-chip、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれるマイクロ流路チップが研究され、実用化されている。これらのマイクロ流路チップは、数cm角の大きさのチップの内部にマイクロ流路と呼ばれるマイクロメートルオーダーの幅の流路を有し、マイクロ流路が合流したり、分岐したりする構造を有する。
【0003】
マイクロ流路チップは、マイクロ流路に微量の溶液を流して、溶液の反応や分離、分析を行うシステムであるが、生命科学分野への応用が進められ、特に細胞の分離や分析への応用例が報告されるようになってきた。さらに、実験スペースの省スペース化の観点から、細胞培養にマイクロ流路チップを用いる方法も報告されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、酸素透過性材料からなり、内部に細胞が固着され且つ培養液が灌流される培養液用流路構造を有する少なくとも2つの細胞培養チャンバーが積層された細胞装置において、各細胞培養チャンバー間の少なくとも1カ所に、気体用流路構造を設けたマイクロ流路チップを用いた細胞培養装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−147555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
細胞を培養する場合、一般に、細胞へのコンタミネーションの有無や、細胞の増殖状況を確認するために、定期的な細胞の観察が必要となる。しかし、特許文献1の細胞培養装置では、少なくとも2つの細胞培養チャンバーが積層された構造を有するため、位相差顕微鏡等の光学顕微鏡を用いた細胞の観察ができない。また、培養された細胞は、継代したり、分析したりするために、細胞培養装置から回収する必要があるが、特許文献1の細胞培養装置は、細胞の培養について記載されているものの、細胞を回収する方法については開示していない。
【0007】
本発明は上述の問題点を解決するもので、培養液と雰囲気ガスとにおいて、酸素及び二酸化炭素のガス交換が可能であり、且つ、光学顕微鏡を用いた細胞観察及び培養細胞の回収が可能なマイクロ流路チップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、第1開口部、第2開口部、培養部、前記第1開口部と前記培養部とを接続する第1流路、及び前記第2開口部と前記培養部とを接続する第2流路を有する基材と、前記培養部の一部に配置された開口を酸素透過膜によって塞がれた窓部と、を有し、前記酸素透過膜の少なくとも一部を破ることによって前記窓部から前記培養部で培養された細胞を回収可能であることを特徴とするマイクロ流路チップが提供される。
【0009】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップは、培養された細胞は、窓部から回収することができる。培養時には窓部は酸素透過膜により塞がれているため、外部の異物が窓部から培養部へ混入するのを防止することができ、且つ、酸素透過膜を介した外部と培養部との酸素及び二酸化炭素のガス交換を行うことができる。また、酸素透過膜の少なくとも一部を破ることによって、培養部で培養された細胞を窓部から回収することが可能となる。
【0010】
前記マイクロ流路チップにおいて、前記酸素透過膜は光透過性を有し、前記培養部の下部に位置する前記基材の一部は透明な材料で形成されていてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップは、酸素透過膜が光透過性を有し、且つ、培養部の下部に位置する基材の少なくとも一部が透明な材料で形成されるため、光学顕微鏡による細胞が観察可能である。細胞培養期間において、随時、細胞の状態を観察することができる。
【0012】
前記マイクロ流路チップにおいて、前記第1開口部から前記培養部に細胞及び培養液を導入して、前記細胞を前記培養部で培養してもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップは、細胞及び培養液を導入して、培養部で細胞を培養することができる。
【0014】
前記マイクロ流路チップにおいて、前記酸素透過膜がポリジメチルシロキサンで形成されてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップは、酸素透過膜をポリジメチルシロキサンで形成することで、酸素透過膜を介した外部と培養部との酸素及び二酸化炭素のガス交換を良好に行うことができる。
【0016】
前記マイクロ流路チップにおいて、前記培養部に導入した前記培養液は、前記第2開口部から排出されてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップは、培養部に過剰な培養液が導入されても、第2開口部から排出することができる。これにより、第1開口部から培養液を常時供給することも可能となる。
【0018】
前記マイクロ流路チップにおいて、前記第1流路の断面積は前記細胞よりも大きく、前記第2流路の断面積は前記細胞よりも小さくてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップは、第1流路の断面積は細胞よりも大きく、第2流路の断面積は細胞よりも小さく形成されているため、培養部に導入された細胞は、第2流路に流出することなく、培養部に留めることができる。
【0020】
前記マイクロ流路チップにおいて、前記培養部の底部に、前記細胞が1つ収容される大きさの凹部を有してもよい。
【0021】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップは、培養部の底部に、前記細胞が1つ収容される大きさの凹部を有することで、培養部内での細胞の配置を制御することができる。
【0022】
前記マイクロ流路チップにおいて、複数の前記第2流路を有し、前記複数の第2流路の断面積の合計が前記第1流路の断面積以上であってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップは複数の第2流路を有し、複数の第2流路の断面積の合計が第1流路の断面積以上とすることで、細胞を培養部に導入するときや、培養液を培養部に供給するときに、第1流路と第2流路とにかかる圧力差をなくすようにすることができ、細胞に対するストレスを低減することが出来る。
【0024】
前記マイクロ流路チップにおいて、前記細胞よりも小さな間隔で配置された複数の柱状体を前記培養部に有してもよい。
【0025】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップは、細胞よりも小さな間隔で配置された複数の柱状体を細胞培養部に有することで、培養部に導入された細胞は第2流路に流出することなく、培養部に留めることができる。
【0026】
前記マイクロ流路チップにおいて、前記細胞よりも大きな間隔で配置された複数の柱状体を前記第1流路に有してもよい。
【0027】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップは、細胞よりも大きな間隔で配置された複数の柱状体を第1流路に有することで、培養部に細胞を導入するときや、培養液を供給するときに、異物が培養部に混入するのを防ぐことができる。
【0028】
前記マイクロ流路チップにおいて、前記ポリジメチルシロキサンで形成された酸素透過膜の膜厚が0.2mm以下であってもよい。
【0029】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップは、ポリジメチルシロキサンで形成された酸素透過膜の膜厚が0.2mm以下であることにより、酸素透過膜を介した外部と培養部との酸素及び二酸化炭素のガス交換を良好に行うことができる。また、培養した細胞を窓部から回収するときに、酸素透過膜を容易に破ることができる。
【0030】
また、本発明の一実施形態によると、第1基材に培養部、第1流路、及び第2流路を形成し、第2基材に複数の開口を形成することで第1開口部、第2開口部、および窓部を形成し、ポリジメチルシロキサンの膜を介して前記第1基材と前記第2基材とを接合して、前記窓部を前記ポリジメチルシロキサンの膜で塞ぎ、前記第1開口部及び第2開口部に位置する前記ポリジメチルシロキサンの膜を除去することを特徴とするマイクロ流路チップの製造方法が提供される。
【0031】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップの製造方法は、培養部と流路を形成した第1基材と、開口部と窓部を形成した第2基材と、をポリジメチルシロキサンの膜を介して貼り合わせることができる。また、開口部に位置するポリジメチルシロキサンの膜は、容易に除去することができる。また、培養時には窓部は酸素透過膜であるポリジメチルシロキサンの膜により覆って塞がれるため、外部の異物が窓部から培養部へ混入するのを防止することができ、且つ、酸素透過膜を介した外部と培養部との酸素及び二酸化炭素のガス交換を行うこと可能なマイクロ流路チップを製造することができる。
【0032】
前記マイクロ流路チップの製造方法において、前記第1基材は、第3基材と第4基材とを接合することにより形成されており、前記第3基材にガラス基板を用い、前記第4基材にシリコン基板を用いてもよい。
【0033】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップの製造方法は、培養部の上下に配置する第2基材と第3基材にガラス基板を用い、光透過性を有するポリジメチルシロキサンの膜が窓部を覆って塞ぐため、光学顕微鏡による細胞が観察可能なマイクロ流路チップを製造することができる。
【0034】
前記マイクロ流路チップの製造方法において、前記第2基材と前記第4基材の表面をOプラズマ照射または真空紫外線照射により処理し、前記第2基材と前記第4基材との間に前記ポリジメチルシロキサンの膜を挟んで圧着することにより貼り付けてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップの製造方法は、第2基材と第4基材の表面をOプラズマ照射または真空紫外線照射により処理し、第2基材と第4基材との間にポリジメチルシロキサンの膜を挟んで圧着することにより貼り付けることで、第3基材及び第4基材と、第2基材との接合を簡便に行うことができる。また、細胞毒性のある接着剤を用いることなく、第3基材及び第4基材と、第2基材とを接合することができる。
【0036】
前記何れか一に記載のマイクロ流路チップを用い、前記第1開口部から細胞及び培養液を前記培養部に導入し、前記第2開口部から培養液を排出し、前記培養部で細胞を培養することを含む細胞培養方法が提供される。
【0037】
本発明の一実施形態に係る細胞培養方法は、上述の何れかのマイクロ流路チップを用い、第1開口部から細胞及び培養液を培養部に導入し、第2開口部から培養液を排出し、培養部で細胞を培養することができる。
【0038】
前記細胞培養方法において、前記酸素透過膜の少なくとも一部を破ることによって前記窓部から前記培養部で培養された細胞を回収してもよい。
【0039】
本発明の一実施形態に係る細胞培養方法は、酸素透過膜の少なくとも一部を破ることによって窓部から培養部で培養された細胞を簡便に回収することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によると、培養液と雰囲気ガスとにおいて、酸素及び二酸化炭素のガス交換が可能であり、且つ、光学顕微鏡を用いた細胞観察及び培養細胞の回収が可能なマイクロ流路チップが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1A】一実施形態に係る本発明のマイクロ流路チップ100を説明する図である。(a)はマイクロ流路チップ100の上面図であり、(b)は(a)のAA’におけるマイクロ流路チップ100の断面図であり、(c)はマイクロ流路チップ100の変形例であるマイクロ流路チップ150の(a)のAA’における断面図である。
【図1B】一実施形態に係る本発明のマイクロ流路チップ100の他の変形例を説明する図である。(a)はマイクロ流路チップ100’の上面図であり、(b)は(a)のAA’におけるマイクロ流路チップ100’の断面図であり、(c)はマイクロ流路チップ100’の変形例であるマイクロ流路チップ150’の(a)のAA’における断面図である。
【図2】一実施形態に係る本発明のマイクロ流路チップ100の培養部21と、培養部21に接続する第1流路31及び第2流路33の一部とを拡大した図である。
【図3】一実施形態に係る本発明のマイクロ流路チップ200を説明する図である。(a)はマイクロ流路チップ200の培養部221と、培養部221に接続する第1流路31及び第2流路233の一部とを拡大した上面図であり、(b)は(a)のAA’におけるマイクロ流路チップ200の当該部分の断面図である。
【図4】一実施形態に係る本発明のマイクロ流路チップ300を説明する図である。(a)はマイクロ流路チップ300の培養部321と、培養部321に接続する第1流路31及び第2流路33の一部とを拡大した上面図であり、(b)は(a)のAA’におけるマイクロ流路チップ300の当該部分の断面図である。
【図5】一実施形態に係る本発明のマイクロ流路チップ400の培養部421と、培養部421に接続する第1流路31の一部及び複数の第2流路433とを拡大した上面図である。
【図6】一実施形態に係る本発明のマイクロ流路チップ500を説明する図である。(a)はマイクロ流路チップ500の第1流路531の一部を拡大した上面図であり、(b)は(a)のAA’におけるマイクロ流路チップ500の当該部分の断面図である。
【図7A】一実施形態に係る本発明のマイクロ流路チップ100の製造過程を説明する模式図である。
【図7B】一実施形態に係る本発明のマイクロ流路チップ100’の製造過程を説明する模式図である。
【図8】一実施形態に係る本発明のマイクロ流路チップ100の製造過程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明に係るマイクロ流路チップ及びその製造方法について説明する。但し、本発明のマイクロ流路チップは多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0043】
(実施形態1)
図1Aを参照して、本発明の実施形態1に係るマイクロ流路チップ100を説明する。図1A(a)はマイクロ流路チップ100の上面図であり、図1A(b)は図1A(a)のAA’におけるマイクロ流路チップ100の断面図である。また、図1A(c)はマイクロ流路チップ100の変形例であるマイクロ流路チップ150の図1A(a)のAA’における断面図である。マイクロ流路チップ100は、第1開口部11と、第2開口部13と、培養部21と、第1開口部11とを接続する第1流路31と、第2開口部13と培養部21とを接続する第2流路33と、を有する。
【0044】
マイクロ流路チップ100は、例えば、第1基材1に第2基材3、酸素透過膜5、第3基材7を順次積層して形成することができる。培養部21は平坦でもよく、また、図1A(b)に示したように、培養部21の底部に凹部(窪部)23を形成しても良い。第2基材3は培養部21、第1流路31及び第2流路33を形成する。第3基材7は、第1開口部11、第2開口部13、培養部21の上部に配置された窓部41を形成する。第1開口部11、第2開口部13の両方又はいずれか一方が第1基材1側に存在していてもよい。また、酸素透過膜5は培養部21と窓部41との間に介在し、培養部21の一部に配置された開口を覆って塞ぐ、培養部21と外部との隔壁である。本実施形態においては、培養部21と窓部41の形状と大きさを同じにしているが、培養部21と窓部41の形状を異なる形状としてもよく、窓部41の開口領域の大きさを培養部21より小さくしても良い。また、本実施形態においては、第1流路31と第2流路33が形成される第1基材1の上部表面の高さを等しくしているが、第2流路33の断面積が第1流路31の断面積よりも小さくなるように、例えば、第1流路31が形成される第1基材1の部分に凹部を形成することにより、第1流路31の高さを第2流路33より高くするようにしてもよい。逆に、第2流路33を形成する第1基材1の上部に第2流路33の底部を第2基材3で形成することにより、第2流路33の高さを第1流路31より低くするようにしてもよい。
【0045】
また、マイクロ流路チップ100は、図1A(c)に示す変形例であるマイクロ流路チップ150の構成にすることもできる。マイクロ流路チップ150は、第1基材1に第2基材3、第3基材7、酸素透過膜5を順次積層して形成した構造である。つまり、マイクロ流路チップ150は、窓部41の上部に酸素透過膜5を配置することで、酸素透過膜5を培養部21と外部との隔壁として機能させる。
【0046】
マイクロ流路チップ100に用いる第1基材1は、透明な材料で形成することが好ましい。第1基材1を不透明な材料により形成する場合でも、培養部21の下部に位置する部分は、少なくとも透明な材料で形成する。また、酸素透過膜5は、光透過性を有する材料で形成することが好ましい。マイクロ流路チップ100は、このように構成することにより、光学顕微鏡による細胞が観察可能である。細胞培養においては、細胞培養期間において、随時、細胞の状態を観察することが要求され、このような観察には、培養容器の上方から光を照射し、培養容器の下方にレンズを配置した倒立型の位相差顕微鏡を用いるのが一般的である。したがって、マイクロ流路チップ100は、第1基材1に透明な材料を用いることで、細胞観察を可能にする。
【0047】
本実施形態に係る第1基材1に用いる透明な材料としてはガラスが好ましく、位相差顕微鏡を用いた細胞観察に好適である。第1基材1にガラスを用いた場合は、第2基材3には、シリコンを好適に用いることができる。また、第3基材7にはガラスを用いるとよい。このような材料を用いることで、後述するように、MEMSの製造法を用いてマイクロ流路チップ100を製造することができる。
【0048】
酸素透過膜5に用いる光透過性を有する材料としてはポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane:PDMS)が好ましい。PDMSは酸素透過性に優れた材料であり、酸素透過膜5にPDMSを用いることで、酸素透過膜5を介した外部と培養部21との酸素及び二酸化炭素のガス交換を良好に行うことができる。また、本実施形態に係る酸素透過膜5は、膜厚を0.2mm以下とすることが好ましい。PDMSで形成された酸素透過膜5の膜厚が0.2mm以下であることにより、酸素透過膜5を介した外部と培養部21との酸素及び二酸化炭素のガス交換を良好に行うことができ、培養した細胞を窓部41から回収するときには、酸素透過膜5を容易に破る(破壊する、開口する)ことができるため好適である。
【0049】
また、図1Bに、マイクロ流路チップ100の他の変形例を示す。図1B(a)はマイクロ流路チップ100’の上面図であり、図1B(b)は図1B(a)のAA’におけるマイクロ流路チップ100’の断面図であり、図1B(c)はマイクロ流路チップ100’の変形例であるマイクロ流路チップ150’の図1B(a)のAA’における断面図である。
【0050】
図1B(b)に示したように、マイクロ流路チップ100’においては、第1基材1’で培養部21、第1流路31及び第2流路33を形成してもよい。第1基材1’としては、例えば、ガラスやPDMSを用いることができる。第1基材1’と、第1開口部11、第2開口部13および窓部41を形成した第2基材7とは、PDMSで形成された酸素透過膜5を介して接合することができる。
【0051】
また、図1B(b)に示したように、マイクロ流路チップ150’は、第1基材1’に第2基材7、酸素透過膜5を順次積層して形成することもできる。これらの変形例においては、培養部21、第1流路31及び第2流路33を第1基材1’のみで簡便に形成することができる。後述する実施形態においても、培養部21、第1流路31及び第2流路33を形成した第1基材1’を適用することができる。
【0052】
(培養方法)
上述のマイクロ流路チップ100は、細胞培養に好適に用いることができる。図2は、図1に示したマイクロ流路チップ100の培養部21と、培養部21に接続する第1流路31及び第2流路33の一部とを拡大した図であり、第1流路31が形成される第1基材1の部分に凹部を形成することにより、第1流路31の高さを第2流路33より高くする構成とした図である。
【0053】
第1開口部11から培養液に懸濁した細胞90を第1開口部11からマイクロ流路チップ100に添加すると、第1流路31を通り、培養部21に導入される。ここで、第1流路31の断面積は細胞90よりも十分に大きくなるように設定されている。培養部21に過剰量の培養液が供給された場合は、培養液は第2流路33を通り、第2開口部13からマイクロ流路チップ100の外部へ排出される。ここで、第2流路33の断面積は細胞90よりも十分に小さくなるように設定されている。このような第1流路31及び第2流路33を配置することにより、細胞90は培養部21に速やかに導入されて、過剰量の培養液はマイクロ流路チップ100の外部へ排出され、培養部21に導入された細胞90は、第2流路33に流出することなく培養部21に留めることができる。また、本実施形態においては、培養部21は円形であることが好ましい。培養部21が円形であることにより、過剰な培養液が培養部21から第2流路33に排出しやすくすることができる。
【0054】
培養部21に細胞90を導入した後は、第1開口部11及び第2開口部13は封止してもよく、灌流装置を第1開口部11及び第2開口部13に接続して、培養部21に培養液を所定流量で供給してもよい。
【0055】
培養部21に導入される細胞90は、浮遊系細胞、接着系細胞の何れも用いることができる。細胞90が接着系細胞である場合には、細胞90は培養部21の底面の凹部23に接着して成長し、増殖する。また、細胞90が接着系細胞である場合には、培養部21で浮遊した状態で成長、増殖する。用いる培養液の組成や血清の濃度、培養温度、雰囲気ガス(二酸化炭素濃度)等の細胞90の培養条件は、用いる細胞の種類により適宜選択し、公知のものを用いることができる。顕微鏡観察により細胞90が所望の細胞数に達したことが確認された場合、酸素透過膜5を破ることで窓部41から培養部21内の細胞90を回収することができる。例えば、滅菌したメス等の刃物で酸素透過膜5の少なくとも一部を破ったり、マイクロピペットのチップやシリンジに装着した注射針等を用いて酸素透過膜5の少なくとも一部を突き破ったりして、細胞90を回収してもよい。
【0056】
細胞90が接着系細胞である場合には、マイクロピペットやシリンジ等により吸引することで容易に回収することができる。細胞90が接着系細胞である場合には、第1開口部11から培養液やPBSを培養部21に導入することで、培養部21の底部に接着(付着)した細胞90の表面を洗浄し、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むトリプシン溶液を添加することで細胞90を処理し、第1開口部11から培養液をさらに供給することで細胞90を浮遊させることができる。過剰量の培養液やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むトリプシン溶液は、第2開口部13からマイクロ流路チップ100の外部へ排出される。また、マイクロピペットで回収する場合には、培養部21内の細胞90をピペッティングすることにより細胞90が浮遊するのを促進することもできる。
【0057】
本実施形態に係るマイクロ流路チップは、培養部に導入して細胞を培養し、培養された細胞は、窓部から回収することができる。培養時には窓部は酸素透過膜により被覆されているため、外部の異物が窓部から培養部へ混入するのを防止することができ、且つ、酸素透過膜を介した外部と培養部との酸素及び二酸化炭素のガス交換を行うことができる。また、本実施形態に係るマイクロ流路チップは、酸素透過膜が光透過性を有し、且つ、培養部の下部に位置する基材の少なくとも一部が透明な材料で形成されるため、光学顕微鏡による細胞が観察可能である。
【0058】
(実施形態2)
本実施形態においては、培養部21に代わり、マイクロピラー225が配置された培養部221を有するマイクロ流路チップ200について説明する。図3(a)はマイクロ流路チップ200の培養部221と、培養部221に接続する第1流路31及び第2流路233の一部とを拡大した上面図であり、図3(b)は図3(a)のAA’におけるマイクロ流路チップ200の当該部分の断面図である。なお、培養部221、第2流路233及び窓部241以外は実施形態1と同様に構成することができる。
【0059】
マイクロ流路チップ200は、培養部221の底部に結合した柱状体であるマイクロピラー225が複数配置され、培養液の送液方向(図3(a)のAからA’方向)に直交するように配置された隣接するマイクロピラー225は、細胞90よりも小さな間隔で配置される。このように構成することで、マイクロ流路チップ200は培養部221に導入された細胞が第2流路233に流出するのを防止することができる。
【0060】
本実施形態に係るマイクロピラー225は、実施形態1において説明した、第2基材3により形成することができる。マイクロピラー225は、図3(a)に示したように酸素透過膜5と離間して配置してもよく、酸素透過膜5と接着してもよい。マイクロピラー225を酸素透過膜5と離間して配置する場合には、マイクロピラー225の上端部と酸素透過膜5との距離が、細胞90よりも小さな間隔となるように配置する。なお、マイクロ流路チップ200は、マイクロピラー225の上端部と酸素透過膜5との距離を細胞90よりも小さな間隔となるように配置すれば、実施形態1で説明したマイクロ流路チップ150のように、窓部241の上部に酸素透過膜5を配置する構成にしてもよい。また、培養部221と窓部241の形状を異なる形状としてもよく、窓部241の開口領域の大きさを培養部221より小さくしても良い。
【0061】
このため、本実施形態においては、第2流路233の断面積は細胞90よりも小さくする必要はなく、したがって、第1流路31と第2流路233の断面積を等しく形成することができる。また、マイクロ流路チップ200は細胞90を培養部221に導入するときや、培養液を培養部21に供給するときに、第1流路31と第2流路233とにかかる圧力差をなくすようにすることができ、細胞90に対するストレスを低減することが出来る。
【0062】
なお、マイクロ流路チップ200は、第1流路31と第2流路233の断面積が等しくすることができるため、培養部221の形状は図3(a)に示したように、角部がカーブした略矩形形状でもよく、円形でもよい。また、第1流路31と第2流路233の断面積が等しいため、第1基材1は凹部のない平板形状でよい。マイクロ流路チップ200において、その他の構成、細胞90の培養方法及び回収方法は、実施形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0063】
(実施形態3)
本実施形態においては、培養部21に代わり、底部に細胞を捕捉するための凹部327が配置された培養部321を有するマイクロ流路チップ300について説明する。図4(a)はマイクロ流路チップ300の培養部321と、培養部321に接続する第1流路31及び第2流路33の一部とを拡大した上面図であり、図4(b)は図4(a)のAA’におけるマイクロ流路チップ300の当該部分の断面図である。なお、培養部321及び窓部341以外は実施形態1と同様に構成することができる。
【0064】
マイクロ流路チップ300は、培養部321の底部に凹部327が複数配置され、第2流路33の断面積は細胞90よりも十分に小さくなるように設定されている。このように構成することで、マイクロ流路チップ300は培養部321に導入された細胞90が第2流路33に流出するのを防止することができ、培養部321内での細胞90の配置を制御することができる。
【0065】
本実施形態においては、凹部327は第1基材1に形成する。また、第1流路31と第2流路33が形成される第1基材1の上部表面の高さは等しくしてもよく、第2流路33の断面積が第1流路31の断面積よりも小さくなるように、例えば、第1流路31が形成される第1基材1の部分に凹部を形成することにより、第1流路31の高さを第2流路33より高くするようにしてもよい。逆に、第2流路33を形成する第1基材1の上部に第2流路33の底部を第2基材3で形成することにより、第2流路33の高さを第1流路31より低くするようにしてもよい。また、培養部321の形状は図4(a)に示したように、角部がカーブした略矩形形状でもよく、円形でもよい。マイクロ流路チップ300は、実施形態1で説明したマイクロ流路チップ150のように、窓部341の上部に酸素透過膜5を配置する構成にしてもよい。また、培養部321と窓部341の形状を異なる形状としてもよく、窓部341の開口領域の大きさを培養部321より小さくしても良い。
【0066】
なお、培養部321内での細胞90の配置を制御するために、凹部327以外の培養部321の底部に、例えば、シリコーンコーティングを施すことにより撥水処理し、細胞90が凹部327に配置するようにしてもよい。
【0067】
マイクロ流路チップ300において、その他の構成、細胞90の培養方法及び回収方法は、実施形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0068】
(実施形態4)
本実施形態においては、第2流路33に代わり、培養部421と第2開口部13に接続された複数の第2流路433を有するマイクロ流路チップ400について説明する。図5はマイクロ流路チップ400の培養部421と、培養部421に接続する第1流路31の一部及び複数の第2流路433とを拡大した上面図である。なお、培養部421、第2流路433及び窓部441以外は実施形態1と同様に構成することができる。
【0069】
マイクロ流路チップ400は、培養部421に複数の第2流路433が接続され、第2流路433の断面積は細胞90よりも十分に小さくなるように設定されている。このように構成することで、マイクロ流路チップ400は培養部421に導入された細胞90が第2流路433に流出するのを防止することができる。また、マイクロ流路チップ400は複数の第2流路433の断面積の合計が第1流路31の断面積以上となるように設定されている。このような構成にすることにより、マイクロ流路チップ400は細胞90を培養部421に導入するときや、培養液を培養部421に供給するときに、第1流路31と第2流路433とにかかる圧力差をなくすようにすることができ、細胞90に対するストレスを低減することが出来る。
【0070】
本実施形態においては、第1流路31と第2流路433が形成される第1基材1の上部表面の高さは等しくしてもよく、第2流路433の断面積が第1流路31の断面積よりも小さくなるように、例えば、第1流路31が形成される第1基材1の部分に凹部を形成することにより、第1流路31の高さを第2流路433より高くするようにしてもよい。逆に、第2流路433を形成する第1基材1の上部に第2流路433の底部を第2基材3で形成することにより、第2流路433の高さを第1流路31より低くするようにしてもよい。また、培養部421の形状は図5(a)に示したように、円形でもよく、角部がカーブした略矩形形状でもよい。マイクロ流路チップ400は、実施形態1で説明したマイクロ流路チップ150のように、窓部441の上部に酸素透過膜5を配置する構成にしてもよい。また、培養部421と窓部441の形状を異なる形状としてもよく、窓部441の開口領域の大きさを培養部421より小さくしても良い。
【0071】
なお、図5においては、培養部421に接続した複数の第2流路433が1つの流路に合流する形態として示したが、複数の第2流路433が第2開口部13に直接接続する構成であってもよい。マイクロ流路チップ400において、その他の構成、細胞90の培養方法及び回収方法は、実施形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0072】
(実施形態5)
本実施形態においては、第1流路31に代わり、マイクロピラー533が配置された第1流路531を有するマイクロ流路チップ500について説明する。図6(a)はマイクロ流路チップ500の第1流路531の一部を拡大した上面図であり、図6(b)は図6(a)のAA’におけるマイクロ流路チップ500の当該部分の断面図である。なお、第1流路531以外は実施形態1と同様に構成することができる。
【0073】
マイクロ流路チップ500は、第1流路531の底部に結合した柱状体であるマイクロピラー533が複数配置され、培養液の送液方向(図6(a)のAからA’方向)に直交するように配置された隣接するマイクロピラー533は、細胞90が通過可能な程度の間隔で配置される。すなわち、隣接するマイクロピラー533の間隔は、培養部21に導入する細胞90の大きさよりわずかに広い間隔に設定される。このように構成することで、第1開口部11から添加された細胞90は第1流路531を通過して培養部21に導入されるが、細胞90よりも大きな細胞91や異物93はマイクロピラー533によりトラップされ、培養部21に導入されるのを防止することができる。
【0074】
本実施形態に係るマイクロピラー533は、実施形態1において説明した、第2基材3により形成することができる。マイクロピラー533は、図6(a)に示したように酸素透過膜5と離間して配置してもよく、酸素透過膜5と接着してもよい。マイクロピラー533を酸素透過膜5と離間して配置する場合には、マイクロピラー533の上端部と酸素透過膜5との距離が、細胞90の大きさよりわずかに広い間隔となるように配置する。
【0075】
マイクロ流路チップ500において、その他の構成、細胞90の培養方法及び回収方法は、実施形態1と同様であるため、説明は省略する。なお、マイクロピラー533は実施形態2〜4のマイクロ流路チップにも適用可能である。
【0076】
本発明の一実施形態に係るマイクロ流路チップは、細胞よりも大きな間隔で配置された複数の柱状体を第1流路に有することで、培養部に細胞を導入するときや、培養液を供給するときに、異物が培養部に混入するのを防ぐことができる。
【0077】
(製造方法)
上述した本発明に係るマイクロ流路チップについて、その製造方法を説明する。以下では、実施形態1のマイクロ流路チップ100を例に説明する。図7A及び図8は、マイクロ流路チップ100の製造過程を説明する模式図である。
【0078】
まず、第1基材1(図7A(a))に凹部23を形成する(図7A(b))。第1基材1にガラス基板を用いた場合、凹部23は、ウェットエッチング、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)等のエッチングや、ブラスト、ドリル等の物理的な加工方法を用いることができる。
【0079】
凹部23を形成したガラス基板に第2基材3を接合する(図7A(c))。第2基材3にシリコン基板を用いる場合は、ガラス基板とシリコン基板とを陽極接合する。接合したガラス基板の上部表面を、第1流路31及び第2流路33を形成するために必要な厚さまで研削、研磨する。次に、シリコン基板に培養部21、第1流路31及び第2流路33を形成する(図7A(d))。シリコン基板の加工には、Deep RIE(DRIE)を好適に用いることができる。また、実施形態2において説明したマイクロピラー225や、実施形態5において説明したマイクロピラー533も第2基材3を用いて形成することができる。
【0080】
つづいて、第3基材7にガラス基板を用い(図8(a))、ドリル、サンドブラスト、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)等により、第3基材7に第1開口部11、第2開口部13及び窓部41を形成する(図8(b))。このように加工した第3基材7の基底面に酸素透過膜5を貼り付ける(図8(c))。
【0081】
第3基材7酸素透過膜5にPDMSを用いて貼り付ける場合は、Oプラズマ照射や真空紫外線(Vacuum Ultra-Violet:VUV)照射によりガラス基板表面を処理して、圧着(80℃以上、3kN以上)することにより貼り付ける行うことができる。マイクロ流路チップ100に用いるPDMSとしては、例えば、東レダウコーニング株式会社のSYLGARD(登録商標) 184を好適に用いることができる。なお、本発明の実施形態に係るPDMSはこれに限定されるのもではない。酸素透過膜5にPDMSを用いる場合、膜厚を0.2mm以下とすることが好ましい。例えば、窓部41を2mm × 2mmとする場合、膜厚を50μmとすることができる。
【0082】
上述のように形成した第1基材1及び第2基材3と、第3基材7及び酸素透過膜5とを貼り合わせる(図8(d))。この貼り合わせ工程は、Oプラズマ照射やVUV照射により第2基材3の表面を処理して貼り付けることができる。
【0083】
また、酸素透過膜5にPDMSを用いる場合は、第1基材1及び第2基材3と、第3基材7とを接着する接着剤として利用することも可能である。この場合には、PDMS膜を加熱して、第1基材1及び第2基材3と、第3基材7との間に挟み、圧着させることで第1基材1及び第2基材3と、第3基材7との接合を簡便に行うことができる。第3基材7に第1開口部11、第2開口部13及び窓部41に位置するPDMS膜を除去し、マイクロ流路チップ100を製造する(図8(e))。PDMS膜の除去は、パンチまたはドリルなどの機械加工により行うことができる。細胞毒性のある接着剤を用いることなく、第1基材1及び第2基材3と、第3基材7とを接合することができる。
【0084】
また、上述の製造方法では、第1基材1と第3基材7にガラス基板を用い、第2基材3にシリコン基板を用いる例を説明したが、本発明に係るマイクロ流路チップはこれらに限定されるものではなく、図7B(a)に示したようにマイクロ流路チップ100’において、鋳型を用いて培養部21、第1流路31及び第2流路33を形成した第1基材1’を用いることができる。第1基材1’と、図8に示した第1開口部11、第2開口部13及び窓部41を形成した第3基材7(マイクロ流路チップ100’においては、第2基材)と、をPDMS膜で形成された酸素透過膜5で接着して製造することも可能である。
【0085】
第1基材1’としては、ガラスやPDMSを用いることができ、鋳型を用いて培養部21、第1流路31及び第2流路33を形成すると、製造工程が簡便となる。また、第3基材7(または第2基材7)と、酸素透過膜5との配置順を逆にすることで、マイクロ流路チップ150やマイクロ流路チップ150’を製造することもできる。
【符号の説明】
【0086】
1:第1基材、3:第2基材、5:酸素透過膜、7:第3基材、11:第1開口部、13:第2開口部、21:培養部、23:凹部、31:第1流路、33:第2流路、41:窓部、51:流路、90:細胞、91:大きな細胞、93:異物、100:マイクロ流路チップ、200:マイクロ流路チップ、221:培養部、225:マイクロピラー、233:第2流路、300:マイクロチップ、321:培養部、327:凹部、400:マイクロ流路チップ、433:第2流路、500:マイクロ流路チップ、531:第1流路、533:マイクロピラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口部、第2開口部、培養部、前記第1開口部と前記培養部とを接続する第1流路、及び前記第2開口部と前記培養部とを接続する第2流路を有する基材と、
前記培養部の一部に配置された開口を酸素透過膜によって塞がれた窓部と、を有し、
前記酸素透過膜の少なくとも一部を破ることによって前記窓部から前記培養部で培養された細胞を回収可能であることを特徴とするマイクロ流路チップ。
【請求項2】
前記酸素透過膜は光透過性を有し、前記培養部の下部に位置する前記基材の一部は透明な材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項3】
前記第1開口部から前記培養部に細胞及び培養液を導入して、前記細胞を前記培養部で培養することを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項4】
前記酸素透過膜がポリジメチルシロキサンで形成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項5】
前記培養部に導入した前記培養液は、前記第2開口部から排出されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項6】
前記第1流路の断面積は前記細胞よりも大きく、前記第2流路の断面積は前記細胞よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項7】
前記培養部の底部に、前記細胞が1つ収容される大きさの凹部を有することを特徴とする請求項6に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項8】
複数の前記第2流路を有し、前記複数の第2流路の断面積の合計が前記第1流路の断面積以上であることを特徴とする請求項7に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項9】
前記細胞よりも小さな間隔で配置された複数の柱状体を前記培養部に有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項10】
前記細胞よりも大きな間隔で配置された複数の柱状体を前記第1流路に有することを特徴とする請求項1乃至9の何れか一に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項11】
前記ポリジメチルシロキサンで形成された酸素透過膜の膜厚が0.2mm以下であることを特徴とする請求項4に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項12】
第1基材に培養部、第1流路、及び第2流路を形成し、
第2基材に複数の開口を形成することで第1開口部、第2開口部、および窓部を形成し、
ポリジメチルシロキサンの膜を介して前記第1基材と前記第2基材とを接合して、前記窓部を前記ポリジメチルシロキサンの膜で塞ぎ、
前記第1開口部及び第2開口部に位置する前記ポリジメチルシロキサンの膜を除去することを特徴とするマイクロ流路チップの製造方法。
【請求項13】
前記第1基材は、第3基材と第4基材とを接合することにより形成されており、前記第3基材にガラス基板を用い、前記第4基材にシリコン基板を用いることを特徴とする請求項12に記載のマイクロ流路チップの製造方法。
【請求項14】
前記第2基材と前記第4基材の表面をOプラズマ照射または真空紫外線照射により処理し、前記第2基材と前記第4基材との間に前記ポリジメチルシロキサンの膜を挟んで圧着することにより貼り付けることを特徴とする請求項13に記載のマイクロ流路チップの製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至11の何れか一に記載のマイクロ流路チップを用い、
前記第1開口部から細胞及び培養液を前記培養部に導入し、前記第2開口部から培養液を排出し、
前記培養部で細胞を培養することを含む細胞培養方法。
【請求項16】
前記酸素透過膜の少なくとも一部を破ることによって前記窓部から前記培養部で培養された細胞を回収することを含む請求項15に記載の細胞培養方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−120474(P2012−120474A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273179(P2010−273179)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】