説明

マイクロ粒子の配列およびその製造方法

【課題】効率的なバイオチップの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明はマイクロ粒子の高単位密度配列と、この配列を集成する方法を提供する。この配列中のマイクロ粒子は、所定のターゲット検体に特異な化学的又は生物学的物質で機能化されていても良い。本発明の高単位密度配列は、チップ上に形成されており、このチップは組み合わされて、ここに述べる方法でマルチチップ配列を形成することができる。本発明のチップ配列、及び/又はマルチチップ配列は、化学分析および生物学的分析に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2001年12月28日付で出願された米国暫定出願60/343,621号の優先権を主張するものである。米国暫定出願60/343,621号は、全明細書がここに引用されている。
【0002】
発明の属する技術分野
本発明はマイクロ粒子の高単位密度配列およびこれを製造する方法に関する。本発明はまた、マルチチップ配列およびその製造方法に関する。本発明は更に、高単位密度配列とマルチチップ配列を用いた生物分析を行う方法を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
生物学的及び化学的分析用の配列フォーマットは、人的労力を最小に抑え、かつ、正確な結果を迅速に提供するものである。(Nature Genetics, 1999 Vol. 21(1) supplement pp.3-4)。典型的には、DNA、RNA、あるいは蛋白質分子などの生物プローブの配列は、付着と、不動化あるいは不活性基体上のインサイチュ合成のいずれかによって形成される。これらの従来の方法では、配列の形成は、通常、有機材料(ニトロセルロースのようなポリマー性材料など)あるいは無機材料(ガラスあるいはシリコンなど)でできた基体に直接にプローブ分子を結合させることによって行われる。
【0004】
基体にシリコンを使用することは、すでに確立されている半導体ウエハやチップの処理方法に関する利点を提供する。半導体プロセスでは、所望の特徴を得るために、一連の多重処理ステップ中で、ウエハが変性され、変形される。通常、平行処理を行うことによって、複数の同一の特徴が各ウエハに同時に作られ、ウエハ上に個々のセグメントが形成される。平行処理あるいはバッチ処理を用いて同じ特徴を製造することによって、製造時間を飛躍的に縮めることができる。更に、バッチ処理はチップの均一性を高め、所定のホトリソグラフィおよびエッチング法を使用することによって、非常に小さい(サブミクロンの)特徴を正確に作ることができる。従って、特徴密度が高い構造を、非常に小さいチップに組み込むことが可能である。処理が終了した後、シンギュレーション(切断)と呼ばれる処理を行ってそれぞれのセグメントをウエハから切り取り、多数のチップを得る。(Peter Van Zant, "Microchip Fabrication", 3rd edition, McGrawhill 1998)。
【0005】
異なるチップを相互接続することによって最終パッケージング段階において、あるいは、機能が異なるチップを伴う二つのウエハを単純に結合させた後、ウエハのスタックをはがすことによって、機能が異なるチップを含む半導体ウエハを組み合わせることができる。半導体組立プロセスの高効率化は、産業の迅速な成長に有意に寄与している。チップの製造、パッケージングおよび品質管理用に高度なシステムが開発されている。
【0006】
バイオチップは、固相支持体に結合された特定ターゲットに結合可能な様々な生体分子(プローブ)の配列である。本質的に二つのバイオチップを製造する方法が存在する。
【0007】
第1の方法は、関心のある前合成プローブ分子を含むアリコート溶液を平面基体上に乗せて、そのプローブ分子を指定位置に不動化させるステップを含む。例えば、プローブ溶液は、基体上で分取して、位置的に符号化された一次元(Kricka, Larry J., "Immunoassay", Chapter 18, pages 389-404, Academic Press, 1996)、または二次元(米国特許第5,807,755号及び5,837,551号)の、カスタマイズ組成でできたプローブ配列を形成することができる。分子プローブは、基体表面に直接付着させてもよく、あるいは、配列を形成するべく基体に付着された、あるいは結合させた固相キャリアに結合させるようにしても良い。マイクロ粒子(ビーズ)は、このようなキャリアの一タイプを代表するものである。ビーズは、基体を準備しテストするプロセスを、プローブを準備し、応用しテストするプロセスおよび分析化学とから、切り離すという利点を提供する。(米国特許第6,251,691号)。サイズと組成が様々なビーズは、化学および生化学分析に、化合合成と共に広く使用されている。
【特許文献1】米国特許第5,807,755号
【特許文献2】米国特許第5,837,551号
【特許文献3】米国特許第6,251,691号
【0008】
プローブ配列の製造に用いる蒸着、印刷、スポット法には、いくつかの好ましくない特徴がある。まず、従来の蒸着および印刷技術では、典型的なスポットの大きさは100ミクロン、スポット間の距離は300ミクロンであり、低特徴密度配列を製造するだけである。第2に、今日までのところ、プローブ蒸着方法は、スポット間に有意な変化を伴い、均一スポットを製造することができない。第3に、スポット法(米国特許第5,605,662号)は、パターン化された電極に電気泳動で蒸着する場合に異型(variants)を含み、有意な規模で配列を製造するためには、実質的に装置上および理論上のサポートを必要とする。特に、スポット法は、プローブ配列のバッチ製造を支持するものではない。すなわち、バッチ処理フォーマットは基体を効率よく製造するのに使用することはできるが、化学プローブあるいは生化学プローブを適用することによってこれらの基体を「バイオ機能化」する順次のステップは効率的ではない。なぜなら、これはバッチフォーマットには合致せず、その代わりに多数の独立したスポッティング工程を必要とするためである。したがって、この同一の機能化チップを多数製造するプロセスは、平行処理法を用いたプロセスよりもはるかに時間がかかり、高価なものになる。
【特許文献4】米国特許第5,605,662号
【0009】
プローブ配列を製造する第2の方法は、オリゴヌクレオチドやペプチドなどのリニアなプローブ分子を、半導体処理の標準であるホトリソグラフィに似たプロセスを用いてインサイチュ光化学合成を行う工程を含む。これらの方法は、近年、平衡マルチステップ光化学反応において、ガラスまたはそれに似た基体の指定領域にオリゴヌクレオチドセットを合成するのに最も広く使用されている(米国特許第5,143,854号;Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 1996, 93: 13555-13560)。
【特許文献5】米国特許第5,143,854号
【非特許文献1】Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 1996, 93: 13555-13560
【0010】
多数のプローブ配列をウエハ上に直接、同時に生成する平行処理には、スケールを大きくし、バッチ処理の均一性の問題を本質的に改善するという利点があるものの、プローブ配列の製造にいくつかの問題が存在する。第1に、一連の単一ステップの反応において、単純な比較的短いリニア分子が好適に合成されるだけであり、実用上は、短いオリゴヌクレオチドの配列がこの方法で提供されるだけである。第2に、この反応はしばしば完遂されず、組成上の有意な異種性をもたらす。第3に、すべての半導体プロセスを、生体分子の導入前に済まさなくてはならない。なぜなら、生体分子は、ある種の半導体処理ステップにおける厳しい環境にそぐわないことがあるからである。この制限は、広範囲に及ぶ半導体製造技術の全利点を得ることを妨げるものである。第4に、バッチ製造フォーマットにおいて機能化が実行される場合は、この製造プロセスが、ウエハ上の各チップの化学的あるいは生化学的組成(内容物)を規定することになる。すなわち、プローブ設計の変更が、全製造プロセスを変化させることになる。理論的には実行可能であるが、カスタマイゼーションによっては所望のプローブ分子セットの光化学的合成に必須である一連のマスキングステップを代える必要がある。このプロセスに伴うコストと時間の遅れは、事実上カスタマイゼーションを不可能なものにする。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、半導体製造方法の利点を取り入れた並行処理方法を提供するものである。更に、本発明の方法は、様々な品質および様々な分析要求に十分に対応できるものである。本発明は、高特徴密度を伴う配列内容を選択可能なフレキシビリティと、平行(バッチ)配列集成によってできるスケールの経済性を組み合わせたものである。本発明は、ランダムに符号化された、キャリア表示プローブ配列を有する複数のチップ内に分別される基体上に線引きされたコンパートメント内で所定の位置において、選択可能な組成の固相キャリア表示プローブ配列を集成するプロセスを提供する。他の実施例では、一あるいはそれ以上の基体から得た(固相キャリア表示プローブがない)切断チップが、所望の数の固相キャリア表示プローブに接触して、所望の配列を有するチップを形成する。マルチチップ配列は、数が異なるキャリア表示プローブを有する様々な基体から得られるチップを組み合わせることによって形成される。本発明は、、生化学分析テスト及び核酸、蛋白質、細胞,他などの生体分子を含む様々なターゲット検体用の分析において、チップ表示マイクロ粒子配列の性能を最大にするように化学的にタグを付したマイクロ粒子などの固層キャリアを表示する基体とチップの設計に関する。
【0012】
本発明のバイオチップの製造方法は、基体をパターニングして、複数のチップ領域を形成するステップと、このチップ領域間を線引きする(delineating)ステップと、前記基体の表面に、機能化され光学的に符号化されたビーズを具える少なくとも一のビーズ配列を集成するステップと、前記チップ領域を個々のバイオチップから切断するステップとを、具える。上述したとおり、チップ表面へのビーズ配列の集成に先立って、切断を行ってもよい。(このコンテキストでは、「バイオチップ」の用語は、例えば、生化学分析に用いる表面に付着した生体分子を有するチップを意味するものとして使用されている。)生体分子の限定されない実施例は、核酸、核酸フラグメント、蛋白質、オリゴペプチド、リガンド、レセプタ、抗原、抗体、および生化学的結合対の各員を含む。さらに、ここで用いられている「切断(singulating or singulation)」の用語は、基体、または一またはそれ以上のチップを含む基体のサブユニット上の独立したチップ領域間の連結を破断することによってチップを得るプロセスを意味する。また、ここで用いられている「機能化(functionalization)およびバイオ機能化(biofunctionalization)」の用語は、生体分子(例えば分子プローブ)を、ビーズ表面に付着させることを含む、基体に結合させるプロセスを意味する。
【0013】
本発明は、また、複数の分子プローブを具える分析装置を製造する方法を提供するものである。この方法は、プローブライブラリから分子プローブを選択するステップと、この分子プローブを複数のビーズに付着させて、ビーズサブ母集団を形成するステップとを具える。このビーズサブ母集団は、元のウエハを同定する復号可能なタグを有するチップでできた基体の主表面に付着する。次いで、ウエハを切断して、複数のバイオチップを製造する。このプロセスを、別の分子プローブを具える少なくとも一の他のビーズサブ母集団に繰り返す。次いで、結果として得られたバイオチップを集成してバイオ配列を形成する。
【0014】
本発明の他の特徴は、上述の方法によって製造した分析装置である。本発明の装置は、分離可能なチップ領域を規定するべく仕切を設けた基体を具える。このような基体は、選択的に、一又はそれ以上の例えばビーズなどの固相キャリアを制限するサブ領域を規定するパターンニングおよびパーティショニングを具えていても良い。
【0015】
他の実施例では、本発明は仕切を設け、選択的にパターン化された基体を具え、この基体は更に、ターゲット検体を検出するための総数が一またはそれ以上である固相キャリアプローブを具える。
【0016】
上述のウエハの製造によって形成された、固相キャリアプローブ配列を有する、あるいは有しない切断したチップも、本発明の実施例である。好ましくは、このチップは、固相キャリアプローブを供える。
【0017】
本発明は、また、一又はそれ以上のターゲット検体を検出するための分析装置を含む。この本発明の分析装置は、一又はそれ以上のターゲット検体を検出するのに好適な機能化したビーズ配列を具える、一又はそれ以上のバイオチップを具える。好ましい実施例では、複数の異なるバイオチップが、キャリアに固定されて、様々なターゲット検体を検出可能としている。
【0018】
本発明の他の特徴は、少なくとも一のターゲット検体を具える溶液に、キャリアに結合させた複数のバイオチップを接触させるステップと、当該検体を直接的あるいは間接的に検出するステップを具える、生物分析を実行する方法を提供する。この複数のバイオチップは、バイオ機能化された配列を伴う少なくとも一のバイオチップのサブ母集団を具えていても良い。選択的には、複数のバイオチップが、少なくとも二つのバイオチップサブ母集団を具えており、サブ母集団が異なるバイオチップは、サイズが異なるか、ビーズ配列のジオメトリが異なる。
【0019】
本発明の更なる特徴は、上述の分析装置を用いた分析の実行方法を提供することである。この方法は、当該分析装置のバイオチップ配列を、少なくとも一のターゲット検体を含む溶液に暴露させて、反応生成物を検出するステップを具える。
【0020】
本発明の他の特徴は、少なくとも一の親水性主表面を有する固相基体を、バイオチップ配列を空間的に画定するのに使用するパターニングした疎水性層で被覆するステップを具える、バイオチップ用のキャリアを製造する方法を提供するものである。
【0021】
本発明は、また、パターニングした誘電体フィルムを、半導体基体上に位置させるステップを具える半導体基体表面にビーズ配列を集成する方法を提供するものである。当該誘電体フィルムは、基体表面上に境界線を形成し、溶液中のビーズを、ビーズ配列に指定された基体領域に加え、当該領域は前記境界線で画定されている。
【0022】
本発明の更なる特徴は、半導体基体表面にビーズを付着させてビーズ配列を形成するプロセスを提供することである。このプロセスは、パターニングした半導体基体表面にビーズ溶液を加えるステップを具えており、この半導体基体はビーズのハウジングと、前記溶液を機械的に攪拌する構造と、ビーズをこの構造に沈降させる構造とを含む。
【0023】
本発明の更なる特徴は、バイオチップ上のビーズ配列を保護するための除去可能なコーティングを具えるビーズ配列を提供することである。この特徴において、ビーズ配列は分子プローブが結合している表面を伴う複数のビーズを有し、前記コーティングは、ビーズ表面の分子プローブに対して非活性であるという特徴を有する。
【0024】
本発明はまた、バイオチップの製造工程中の品質管理を行う方法を提供するものである。この方法は、バイオ機能化ビーズを光学的に符号化するステップと、ビーズをハウジングするための溝を有するパターニングした基体をビーズを含有する溶液中に暴露させるステップと、該ビーズを光学的に撮像して、当該溝が実質的に埋まっていることを確認するステップとを具える。
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、核酸や、蛋白質などの化学物質または生化学物質を具える所望の組成とレイアウトの配列を設計し製造するための組成と方法を提供するものである。特に、ここに記載する本発明の方法は、区画されたウエハコンパートメント(チップ)の所定の位置で、配列内容物をリアルタイムで選択するフレキシビリティと高特徴密度とを、組成が選択可能な多数のランダム符号化配列であって、固相キャリア表示プローブ配列の集成のための平行プロセスで実現される規模の経済性とを、組み合わせたものである。本発明はまた、位置的におよび組成的に符号化されたこのようなチップ配列を形成する方法を含む。さらに、本発明は、生体分子及びセルを用いる生化学的テストおよび分析において、タグを付したマイクロ粒子(ビーズ)と、タグを付したチップ(タイル)などの固相キャリアのパフォーマンスを最適にするウエハおよびチップの設計を提供する。
【0026】
本発明は、生物学的あるいは化学的に機能化されたマイクロ粒子の高ユニット密度配列を製造する方法及びプロセスを提供する。このような配列は、量の調整が可能であり、フレキシブルフォーマットにおいて、予め選択された組成で製造することができる。本発明の方法とプロセスは、バッチおよび平行フォーマットにおいて実行される。特に、本発明は、一又はそれ以上のウエハ上でのこのようなマイクロ粒子配列の製造に関するものであり、この製造は、特定ウエハの一部、または全体が、一又はそれ以上のこのようなマイクロ粒子配列を、あらかじめ選択する事のできる組成および機能性と共に表示するようにしている。本発明は、また、結果物としてのマイクロ粒子配列をマルチチップフォーマット内にパッケージングすることに関する。
【0027】
本発明は、配列の最終的な使用に応じた組成を有する配列を提供する。約1〜数百万のビーズを含む配列を製造することができる。一般的には、この配列は、ビーズと基体のサイズや、配列の最終使用に応じて1〜10億以上のビーズを具える。高特徴密度配列としての好ましい範囲は、10億〜1ビーズ/mm、より好ましくは100万〜100ビーズ/mm、最も好ましくは10万〜1000ビーズ/mmである。
【0028】
本発明のマイクロ粒子は、機能化されており、例えばDNA、RNA、蛋白質などの化学的または生物学的物質を含む。これらの物質は、関心のあるアプリケーションに応じて選択することができ、これによって配列の内容の選択にフレキシビリティを与える。更に、マイクロ粒子配列は、高特徴密度を有しているので、関心のある生化学解析的分析における配列能力を最適にするように設計することができる。このような配列の例は、ここで引用されているPCT/US01/20179号および米国特許第6,251,691号に開示されている。
【0029】
本発明の全プロセスを実行する方法は、4つのカテゴリに分けることができる。すなわちプリ−アッセンブリ、アッセンブリ、ポスト−アッセンブリおよびパッケージングである。このようなグループ分けは、あるグループに対するある方法を限定するためのものではない。図1aと1bは、以下に述べるとおり、本発明のプロセスを示す図である。
【0030】
I.プリ−アッセンブリ
プリ−アッセンブリの方法は、チップレイアウトの実行、このレイアウトに基づくウエハの製造、このウエハの好適なけがき(scribing)と、必要があればそれに続く洗浄および検査工程を含む。図1a及び図1bに示すとおり、切断(後述する)が、集成法(図1a)か、あるいはウエハ製造法(図1b)に続く。独立した個々のチップがウエハから得られる場合、結果物であるチップはグループ分けされ、後述するとおり各々のチップにラベルを付して、その機能化履歴に基づいてチップを同定するようにしても良い。
【0031】
1.1 チップレイアウト
チップレイアウトの一例を図2に示す。「チップ」は3次元構造でも良いと解するべきである。各チップは、基体(例えば、層1(L1))を具え、ここでバイオ−機能化ビーズを集成しマイクロ粒子配列を形成することができる。様々なタイプの材料を基体に用いることができる。好ましい材料は、所定の好ましい特徴を有する。これらの特徴は、機械的特徴(例えば、強度)、電気的特徴(例えば、変更可能な界面インピーダンスを有する)、光学的特徴(例えば、平面性、透明性、境界線が明確にされた光吸収スペクトラム、最小自動−蛍光性、高反射率)、および化学的特徴(例えば、詳細な特徴を規定する、または誘電層に蒸着するプロセスになじみやすく、共有結合的架橋を可能とする表面反応性)に分けることができる。好ましい基体の、限定されない例は、半導体(例えばシリコン)、絶縁体(例えば、サファイア、マイカ、ルビー)、セラミック材料、およびポリマ(例えば、MylarTM、KaptonTM、及びLuciteTM)を含む。
【0032】
ある実施例では、基体が、半導体デバイス業界で通常使用されている単結晶半導体ウエハのような半導体ウエハであってもよい。他の実施例では、基体は、チップ製造およびバイオ分析に使用された試薬に対して不活性化するように選択された、パターニング可能な固相基体であってもよい。このような基体の限定されない例には、ガラス、プラスチック、ポリマなどがある。
【0033】
図2は、断面矩形のチップを示す図であるが、他のジオメトリを限定するものではない。図2において、L1は中央の層を示す。(ただし、L1の両側に層が必要なわけではない。)層L1の溝配列A1は、ビーズ配列を作るべき場所である。溝A1の形状は、正方形である必要はない。他の好ましい形状の限定されない実施例には、三角形、四角形、五角形、六角形、円などがある。溝配列A1の機能のひとつは、ウエハあるいはチップ上に正規構造を形成することによって、ビーズの配置及び固定を助け、表面にビーズの動きを封じ込めることである。
【0034】
選択的に、チップは第2層(L2)を具えていても良い。層L2は、パターニングされた絶縁誘電層(例えば、二酸化シリコン)を具える。可能なパターンの一例が図3に示されている。図3は、チップ中央の星型形状を示す。暗い影を付けた領域は、誘電材料であり、白い領域は、誘電体が除去されているところである。誘電層の厚さは、限定されるものではないが、典型的には100nmである。チップに垂直な方向に電界が印可されると、L2のパターンに応じて、チップ表面近傍に非均一に電位が形成される。ここに引用されている米国特許第6,251,691号に記載されているプロセスに従って、表面に電界を印可するようにしても良い(このようなプロセスは「LEAPS」と呼ばれる。)LEAPSを用いて、基体表面に塗布された水溶液中のビーズが、AC電位が基体に印可されると、電界分布における横方向の変化を受ける。この電界分布が、溶液中のビーズをドライブして、このビーズが、L1上に表面構造が形成されている領域A1内に集められる。L2のパターンは、いくつかのパターンが、他のパターンより、一層効率よくビーズを集める旨が認識されてはいるが、基体の特定領域にビーズを集めるもので配列はどのようなパターンであってもよい。
【0035】
予め決定されたデザインに基づく誘電層L2のパターンニングは、ビーズ溶液−誘電体−半導体で形成された電解質絶縁半導体(EIS)構造の電気的インピーダンスの準不変変形(quasi-permanent modification)を容易なものにする。EISインピーダンスを空間的に変形することによって、電極−パターンニングが、電極近傍にイオンの流れを決定する。印可した電界の周波数に応じて、ビーズは、高いイオンの流れ領域をはじき出すか、あるいは拒否する。従って、空間的なパターンニングは、ビーズ配列の位置と形状を越えて、明らかな外部コントロールを可能にする。
【0036】
選択的に、ビーズ配列を具えるチップが、通常、表面を被覆する保護パッシベーション層を具えている。層L3は、チップと、ビーズ懸濁液、生物分析サンプル、あるいはチップ洗浄化学物質を含むことができる、液状媒体間のインターフェースとして機能する。従って、層L3は、化学物質の腐食および周囲環境に対して比較的強いものでなくてはならない。また、ビーズ配列の集成中に静電気によるダメージからビーズに付着した機能プローブを保護するものでなければならない。いくつかの実施例では、層L3は、ビーズ配列の集成中に生じるチップ表面へのビーズの付着を最小に抑えるものでもある。層L3は、好ましくは生物学的サンプルに対して不活性であり、生物分析中での蛍光検出に使用される波長レンジと同じ波長レンジで非蛍光であることが好ましい。更に、層L3の存在は、チップ表面近傍の電界分布を変化させて、ビーズ集成用のLEAPSの使用を妨げるものであってはならない。例えば層L3は、膜厚約40〜100ÅのLPCVD(低圧化学蒸着)窒化シリコン薄膜などである。
【0037】
層L3は、表面特性を変える化学処理によって工業化しうる。例えば、窒化シリコン表面を酸化させて、SiO(すなわち、二酸化シリコン(SiO)及び/又は準化学量論的酸化シリコン)、あるいは窒化酸化シリコン(SiO)を生成することができる。これらはいずれも、親水性であり、水溶液サンプルの適用を容易にする。他の実施例では、SiOまたはSiOをシラノール基でさらに機能化して、疎水性表面とすることができる。
【0038】
最後に、各チップの裏面側を、電気的接続(好ましくはオーミックコンタクト)を取るために金属あるいは合金で被覆するようにする。例えば、チップを、シリコン基体から作るとき、チップの裏面側を、半導体工業における通常のルーチンプロセスを使用して、薄いクロミウム接着層と厚い金の層で被覆するようにしても良い。金の被覆は、金がほとんどの化学物質に対して不活性であり、導電率が高いことから有益であるが、他のオーミック接続被覆も、化学的に他の製造プロセスと相容であれば使用することができる。限定されない実施例では、窒化チタニウム/タングステンと、チタニウムタングステン/タングステンを含む。チップは、切断前あるいは後に、金属または合金で被覆するようにする。
【0039】
選択的に、チップの片面及び/又はそれに平行な反対側の面を、磁性反応材料で被覆するようにしても良い。これは、ルーチン集成方法を用いてチップ磁性ビーズのいずれか一方の側、あるいは両側に磁性ビーズを集成することによって行われる。ここに引用されている、2001年12月28日に出願された米国特許出願第10/032,657号に記載の方法を使用することができる。磁性反応材料も、集成に先だって機能化して、更なる化学的生物学的機能を提供するようにすることができる。代替として、公知の方法を用いてチップキャリア上にビーズをランダムに吸着させることによって、チップの全側面を符号化することができる。配列の構成は、チップ(「CIP ID」)や、元のウエハ(「ウエハID」)を同定する最小化したタグを提供する。各チップIDは、L個の位置のランダムに符号化された配列の識別可能な形状の数Sから得られる。数Sは、r(k)(識別不可能)個の粒子のn(順不同)個のサンプルが、1≦k≦n、でLの位置中に分布している数によって与えられる。
【数1】

【0040】
いくつもの可能な組み合わせを示すのは、n=4の識別可能なビーズタイプでなるL=16位置の配列で、各タイプが、4倍(r(1)=…r(4)=4)に相当し、S(16;4;r(k)=4;1≦k≦4)=16!/[(4!)(4!)(4!)(4!)] を表すか、あるいは約65百万の識別可能な形状を表すという事実である。
【0041】
実際に関心のある多くのアプリケーション用に、タグ数T、ここでT<<S、を生成するランダム符号化配列を使用するに際して、サイズSの大型形状のスペースがサンプル化されて、重複する機会が減少する。ランダムに符号化したビーズ配列を用いたタグ構成の特別な利点は、本発明の方法によって、単一のプロセスステップで最小フォーマットで、かつ多数が、安価に、容易に生産できることである。ランダム符号化ビーズ配列の形のチップIDコードは、容易に構築され、2又はそれ以上のチップが同じウエハから作られたものか否かを決定するのに使用できる共通のサブフィールドあるいはサブコードを共用する。例えば、全部でn個のビーズの型が使用されて、N個のウエハ上にチップ用のチップIDを作るのであれば、p個の型を保存することができる。ここで、p<nであり、pは2>Nとなるように選択される。次いで、残りのn−p個のビーズ型を含むウエハ特定サブコードが構築される。例えば、N=100のウエハの一つからつくられた各チップを同定するサブコードを含むチップIDを構成するn=16のビーズ型が与えられている場合、p=7のビーズ型を保存して、7つの数の二値化コードを構築して、この保存したビーズ型の7つまでの欠落によって、100のウエハの各々を同定することができる。例えば、このセット中のウエハの一つは、保存された7つの型を全てを欠き、他の7つのウエハは、保存された型のうちの一つを欠くことになる。符号化したビーズは、機能化され、その表面上にプローブ分子を運搬する。符号化磁性粒子も、磁化されて、化学的および生物学的機能性を示すことが可能である。
【0042】
製造したチップの例を図4に示す。基体はシリコン(100)であり、抵抗値1.5〜4ohm−cmで、n型のリンをドーピングしたウエハである。チップは、辺1.75mm、厚さ0.5mmの正方形である。層L2は、中央に12チップの星型の開口を有する1000Åの熱成長二酸化シリコンである。星の大きさは、図4に記載されているとおりである。チップの中央に、密に詰めた、68列、59行の六角形の溝でできた配列がある。この六角形の溝の大きさは、図4に表示されているとおりである。層3は、LPCVD窒化シリコンでできた厚さ60Åの層であり、本来の酸化シリコンが有するベアシリコンのみがある前記六角形の溝の側壁および底部を除いて、チップ全体を覆っている。
【0043】
図5aおよび5bは、ビーズの動きを封じ込めるその他の好適な構造の限定されない例を示す図である。H1は、まっすぐな側壁を有する溝あるいはキャビティを有するシングルビーズである。H2は、逆ピラミッド型の溝であり、一のビーズを保持することができる。H3は、一のビーズを封じ込めるポスト群である。Hxは、複数のビーズを保持することができる溝である。上側の図(図5a)は、この構造の平面図であり、下側の図(図5b)は、断面図である。一の実施例において、一のビーズだけを保持するまっすぐな側壁のコンパートメントH1が使用される。この構造は、液状媒体中でビーズを封じ込めるのに有益である。図5の影を付けた領域は、基体材料であり、白い領域は空間である。コンパートメントの形状は、四角に限定されるものではなく、例えばピラミッド型の溝H2をコンパートメントとして使用して、シングルビーズを保持するようにしても良い。更に、溝の底部は好ましくは平面であるが、ある実施例では平面でなくとも良い。
【0044】
図6は、配列構造の例を示す図である。A1およびA2は、矩形溝の配列である。A3は、六角溝の配列である。チップあるいはウエハ上に多重構造を構成して、チップまたはウエハ表面上に配列あるいは複数配列を形成するようにしても良い。この構造は全部同じであっても、異なるタイプの構造及び/又は異なるサイズの構造が共存していても良い。3つの実施例が図6に示されている。この図において、影を付けた領域は溝である。影でない領域は、元の基体表面(薄膜で被覆されていても良い)である。配列A1は、矩形溝でできた規則的なカーテシアン(Cartesian)配列である。配列A2は、矩形溝の市松状の配列である。配列A3は、六角形溝の配列である。本発明の配列は、規則的な配列に限定されるものではないが、規則的な配列は反応結果を分析するのに都合がよい。
【0045】
チップ上の配列の位置は、もちろん、中央に限定されない。例えば、図10に示すように、配列を角部に位置させても良い。また、チップ上に一以上の配列が合ってもかまわない。例えば、図10に示すシングルチップ上には4つの配列が作られている。いくつかの実施例では、異なるビーズ群がチップ上の4つの配列の各々に加えられている。大規模プロセスで、このビーズ配分を実行する一の方法は、各チップ上に一度に一の配列を暴露するマスクを用いることである。識別ビーズ群が暴露した配列に加えられる。ついで、マスクをシフトさせて、各チップの他の配列を暴露させ、前記プロセスを繰り返す。4回繰り返すと、各チップが4つの識別ビーズ群を有する4つの配列を持つことになる。
【0046】
1.2 ウエハの製造
例えば、ホトリソグラフィや、材料エッチングなどのウエハ技術を用いて選択したチップレイアウトをウエハ上に与えるいくつかの方法を、使用することができる。この方法は、ウエハ設計の要求によって選択される。ウエハは、様々な要求に応じて、一またはそれ以上の製造サイクルを経て、完全なウエハを生産する。この目的における各製造サイクルは、限定されるものではないが、3つのステップを具える。すなわち、(i)材料の成長及び/又は蒸着;(ii)リソグラフィ;及び(iii)エッチングである。各サイクルは、通常一つの構造的層を製造する。ウエハ上の目的とする構造に応じて、一又はそれ以上の層を、サイクル毎に製造するようにしても良い。
【0047】
例えば、材料の成長あるいは蒸着は、シリコン上にSiOを成長させるか、あるいは、SiO、Si、その他の誘電材料を化学蒸着させるか、あるいはアルミニウム、クロム、金、チタン、他の金属を蒸着させることによって行われる。リソグラフィ工程には、ホトリソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、x線リソグラフィ、インプリントリソグラフィなどがある。エッチングステップには、限定されるものではないが、ホトレジストなどのマスキング層で規定される所定の領域の所定量の材料を除去するステップなどがある。限定されないエッチング法の例としては、異方性エッチング、活性イオンエッチング、結晶平面−バイアスウエット化学エッチング、等方性エッチング、等方性ウエット化学エッチング、蒸気エッチング、プラズマエッチングなどがある。
【0048】
1.3 ウエハスクライビング
機能化を効率よく行うためには、ウエハ製造プロセスの後にチップ領域を線引きして、チップ領域がバッチ平行処理に適するようにする。このため、本発明は、ウエハをけがき(scribing)して、領域を線引きして、続けて、切断を行って個々のチップを独立にする。本発明の他の実施例では、チップはスクライビング(けがき)を必要としない技術を用いて分離することも可能である。このスクライブラインの目的は、ウエハ切断工程中に、個々のチップを傷つけたり壊したりすることなく、個々のチップを分離する分割可能なラインを設けることである。けがきラインは、後に分割するものではあるが、十分に丈夫でプロセスの順次のステップをチップを破壊することなく実行できるものである。例えば、けがきラインは、ウエハスクライビング機械(例えば、DISCO、Dynatex, or Loomis Industry)を用いて作り、ウエハの厚さの何分の一でしかないスクライブラインを引くことができる。続いて、スクライブラインに垂直な方向にローラをあてて、更に個々のチップに線引きを行う。ウエハは、ダイヤモンドチップスクライバを用いて線引きすることができ、シリコンウエハ上のチップ間にある溝は、例えば温度を上げた水酸化カリウム/水溶液などの、ウエット化学物質を用いた化学エッチングによって設けることができる。ウエハは、深い活性イオンエッチングによるドライエッチングを行って、チップ間にしっかり画定された溝を作ることができる。
【0049】
1.4 ウエハ洗浄および検査
ウエハスクライビング工程の間に、埃や粒子が発生することがある。ウエハの表面を保護するために、本発明の一実施例では、ウエハ表面に保護層を設けるようにしている。例えば、この層は、接着テープ(ウエハ表面を傷つけないのであれば)、ホトレジストコーティング、あるいは他の有機コーディングの形であってもよい。保護層は、スクライビングの後、ウエハから剥がすか、適当な溶剤で溶かして、除去する。例えば、ホトレジスト層は、アセトン中で溶かして除去し、ウエハをイソプロピルアルコールですすぐ。微量の保護被覆剤が残っているような場合は、より強い洗浄方法を用いるようにしてもよい。ある実施例では、ウエハを酸素プラズマで洗浄して、微量の有機材料を除去するようにしている。他の実施例では、ウエハは半導体工場での標準洗浄処理である、RCA洗浄で洗浄する。これは、水酸化アンモニウム/過酸化水素の混合物を約75℃に加熱したものを使用する。他の実施例では、ウエハを、濃縮硫黄酸と過酸化水素の混合物で、高温(約60℃)で洗浄する。
【0050】
1.5 チップのグループ分け
図7は、チップ(C3)のグループ分けの例を示す図である。符号C1は、半導体業界で使用されるようなバッチ製造に好ましいウエハあるいは基板ユニットであり;C2は、所望の数のチップでなるC1のサブユニット(C1全体でも良い);C3は、チップであり、バイオチップの最も小さいユニットである。通常、C2はチップ機能化用の集積ユニットである。機能化後、C2は、個々のC3に分離される。
【0051】
1.6 ビーズの機能化およびプーリング
「マイクロ球」、「マイクロ粒子」、「ビーズ」、および「粒子」の用語は、ここでは相互交換可能に使用されている。ビーズの組成は、限定されるものではないが、プラスチック、セラミックス、ガラス、ポリスチレン、メチルスチレン、アクリリックポリマ、パラマグネティック材料、トリアゾル、カーボングラファイト、二酸化チタニウム、ラテックス、又は、セファローズ、セルロース、ナイロン、架橋ミセル、テフロン(登録商標)などの架橋デキストランなどである。(「Microphere Detection Guide」Bangs Laboratories, Fishers, IN、参照)。この粒子は球形でなくとも良く、また、多孔であってもよい。ビーズのサイズは、ナノメータ(例えば100nm)からミリメータ(例えば、1mm)の範囲とすることができ、約0.2マイクロンから200マイクロンのビーズが好ましく、より好ましくは、約0.5マイクロン〜5マイクロンが特に良い。
【0052】
本発明のいくつかの実施例では、ビーズはウエハ表面に分布される前に機能化されるので、各ビーズはその表面にリンクされた特定の型の生物プローブを有する。ビーズを機能化する様々な方法は、本発明と共に好適に使用される。好ましい方法は、ビーズを作るのに用いられた材料の特性によっていくぶん決定される。例えば、結合剤分子をビーズに付着させることによって機能化される。このような分子は、DNA(オリゴヌクレオチド)や、RNAフラグメントを含む核酸、ペプチドあるいは蛋白質、例えば、アプタマ(aptamers)と、従来知られている(G.T. Hermanson, Bioconjugate Techniques (Academic Press, 1996); L. Illum, P.D. E. Jones, Methods in Enzymology 112, 67-84 (1985) )いくつかのカップリング反応の一つを使用した、公知のプロセスによる小さな有機分子を含む。本発明のある実施例では、機能化ビーズは、ビーズに共有結合した結合剤分子(例えば、DNA、RNA、あるいは蛋白質など)を含む。ある実施例では、機能化ビーズは、ビーズに共有結合した結合剤分子(例えばDNA、RNA、またはたんぱく質)を有するビーズは、必要になるまで緩衝バルク懸濁液に保存されている。機能化は、典型的には、一段階、あるいは2段階の反応が必要である。これらの反応は、標準液体操作ロボットを並列に用いて行い、所定のビーズに多数の所望の機能性のどれかを共有結合させる。コア−シェル構造のビーズを使用しても良く、このシェルは好ましい組成を選択した薄いポリマのブロック層の形で構成されており、目的とする分析アプリケーションに応じて機能化が行われる。
【0053】
本発明のいくつかの実施例では、ビーズを蛍光染料でカラーコード化している。様々な分析に使用するために、ビーズはその表面に更に染料−タグを付した生物物質を具えていても良い。
【0054】
ビーズライブラリは、異なるビーズ群のサブ母集団を作成することによって作る。各ビーズのサブ母集団は、プローブライブラリから一のタイプの分子プローブを、当該サブ母集団を構成している複数のビーズに付着させて作る。各ビーズのサブ母集団は、蛍光染料でカラー符号化するか、あるいは他の方法で識別することができる。
【0055】
II.アッセンブリ
ビーズ配列は、ウエハあるいはウエハの一部の表面上にビーズを固定させることによって集成される。ウエハ表面へのビーズの固定に先立って、化学的な符号化または、励起波長、照射波長、励起状態のライフタイム、あるいは照射強度などの光学的に識別可能なタグセットでビーズを染色することによって、ビーズライブラリを形成することができる。光学的に識別可能なタグは、たとえば、米国特許第4,717,655号に記載されているように、特定の比率でビーズを染色するのに使用することができる。染色は、当業者には公知の方法により、粒子を膨張させて行うこともできる。(Molday, Dreyer, Rembaum & Yen, J. Mol Biol 64, 75-88 (1975); L. Bangs, “Uniform Latex Particles, Seragen Diagnostics, 1984)。例えば、12までの識別可能なビーズ母集団は、各々が、独立した4つの強度レベルにあり、4つの公称モル比で混合され、2色で膨張させたバルク染色することによって、コード化することができる。外部表面および内側表面用の組み合わせカラーコードが、ここに引用されている国際出願PCT/US/98/10719号に開示されている。カラーコードは、ここに引用されている米国特許第6,327,410号にも開示されている。
【0056】
ビーズ配列を形成するに際して、ビーズをチップ表面上に固定させる方法はいろいろある。ウエハ製造ステップ間で形成された溝は、基体表面にビーズを保持するコンパートメントを提供する。ビーズを固定(不動化)する効力は、ビーズのサイズに対する溝の大きさに依存する。この目的に使用される溝の大きさは、溝の深さが、使用するビーズの直径の約0.5〜1.5倍である。より好ましくは、溝の大きさは、ビーズが溝中で重力的に安定であるときに、そのもっとも高い点がエッジの先端の下に位置し、他のビーズの体積の1/3まで収容するのに十分のスペースがあるような大きさとする。さらに、溝の開口は、ビーズより若干大きい。図4に示す六角形配列は、例えば、直径3.2ミクロンのビーズとコンパチブルである。
【0057】
ビーズを保持するのに基体内の溝を必ずしも使う必要はない。例えば、基体表面上に複数の支柱を配置して、ビーズを保持することができる。このような構造が図5cの上側の図(平面図)および下側の図(斜視図)に示されている。この場合、各ビーズは、その周囲の6本の支柱によって封じ込められる。支柱の数は6本に限定されるものではなく、3本以上であればよい。さらに、これ以外に、ブロック、支柱、隆起、刻み目などの、上に上がる、あるいは下に下がる構造を使用することができる。他の実施例では、1以上のビーズを保持することができる大きな溝が使用されている。例えば、図5bは、まっすぐな側壁を有する大きな溝を示す。上側の図の概観は、この大きな溝の水平方向の大きさが、ビーズの直径の2倍以上であることを示す。
【0058】
上述したとおり、マイクロ粒子配列の作成に使用される溝のジオメトリとサイズは、変えることができる。ある実施例では、このジオメトリと大きさは、エッチングによって孔を形成した後に、酸化シリコンまたはポリマ層を蒸着させることによって変えることができる。例えば、凹角の側壁プロファイルを有する溝は、この蒸着プロセスで形成することができる。このコンテキストにおいて、「凹角側壁プロファイル」なる用語は、側壁のプロファイルが、表面に開口している溝の直径が、底部における溝の直径より小さいという状態を意味する。この方法で形成された凹角側壁プロファイルを有する溝は、処理中および集成中に、より高い保持率を有する。
【0059】
ビーズは、共有結合、あるいは、ファンデルワールス力、静電気、重力、磁気、あるいはその他の力によって表面に結合させることができる。これらの結合方法を組み合わせて使用してもよい。一の実施例では、ビーズ配列は、特定の配列組成に応じた独立した容器から指定の符号化したビーズのアリコートを取り出すことによって製造することができる。懸濁液の「プールされた」アリコートは、コンパートメントを区画したウエハなどの選択された基体上に分取される。
【0060】
他の実施例では、LEAPSを用いてビーズ配列を準備するようにしてもよい。これらの実施例では、第2の平面電極に実質的に平行な第1の平面電極(サンドイッチ構造)が提供されており、2本の電極は、電解液を含むギャップで離隔されている。第1の平面電極の表面または内部は、後述する界面パターンニング法でパターン化されている。符号化され、機能化されたビーズは、ギャップ内に導かれる。交流電圧がこのギャップに印加されると、ビーズは第1の電極(例えば、チップまたはウエハ)の上にランダムに符号化したビーズ配列を形成する。代替として、LEAPSを用いて感光電極(例えば、チップまたはウエハ)上にビーズ配列を形成してもよい。好ましくは、上述したサンドイッチ構造は、平面感光電極と他の平面電極とともに使用される。2本の電極は、電解液を含むギャップで離隔されている。機能化され、コード化されたビーズは、このギャップに誘導され、光と組み合わせて交流電圧が印加されると、感光電極の上に配列を形成する。
【0061】
本発明で使用される基体(例えば、チップまたはウエハ)は、例えば、パターン化した酸化物の成長または他の誘電材料によるLEAPSの界面パターンニング法に従って、パターン化し、AC電界の存在下でインピーダンス勾配を所望の形に設けるようにしてもよい。代替として、パターン化した基体を、基体の内部領域を選択的にドーピングすることによって得るようにしてもよい。パターンは、AC電界が印加された所望の形状の液体の流れと、それに応じた粒子の移動を作り出すように設計することができる。基体は、半導体処理技術を用いてウエハスケール上にパターン化することができる。さらに、基体は、UVパターン可能な光学的に透明なポリマ薄膜を蒸着することによって、コンパートメントを作ることができる。このポリマは、液状コンデュイットの所望のレイアウトを貼り付けて、基体にコンパートメントを作り、一またはそれ以上の別個のコンパートメント内に液体を封じ込める。これによって、多数サンプルが所定の基体に位置させることになる。
【0062】
空間的な符号化を、例えば、LEAPSを用いた配列集成中に単一の液相内で行って、交流電界に応じて及び/又は基体上に投影された光パターンに応じて平面ビーズ配列を所望の形状に集成することができる。LEAPSは、シリコンチップと溶液の間の界面インピーダンスに横方向に勾配をつけて、配列集成を実現する電気流体動力を調整する。電気的な条件は普通であり、典型的には、10Vpp以下の低AC電圧が、二つの電極間の、典型的には100mの液状ギャップに印加される。この集成プロセスは、迅速であり、光学的にプログラム可能である。何千ものビーズを含む配列が、電界の下に数秒のうちに形成される。多数のサブ配列の形成も、コンパートメントに分けたチップ表面に維持されている多数の液相内に生じうる。代替として、各々が、特定のプールからの少なくとも一のランダム符号化された配列を担う、分離されたチップを指定されたマルチチップ形状に集成することによって、空間的符号化が行われる。
【0063】
一の実施例では、ここに全体が引用されているPCT/US01/20179号に開示されているプロセス(「READ」と呼ぶ)を用いて、本発明による複合生体分子分析を実行するのに使用することのできるカスタムビーズ配列を準備するようにしている。READを用いて、分離したバッチプロセスを実行して、アプリケーション-特定基体(例えば、ウエハスケールでのチップ)を作り、化学的に符号化され、生物学的に機能化されたビーズ(例えば、1懸濁液中の、〜108ビーズ/100のスケール)を製造することによって配列を準備することができる。好ましくは、ビーズは、配列の組み立てに先立って、形態的および電気的な特徴の決定などの、各々の品質管理(QC)ステップが行われる。後者の例は、表面(zeta)電位および表面の導電率を含む。さらに、実際の分析は、基体に導かれる前に懸濁液中のビーズ上で実行される。これは、分析条件を最適なものにするためであり、一般的には、分析の感度と特定性を最大にし、ビーズとビーズの差を最小にする目的でなされる。基体に関しては、QCステップは、光学的検査、エリプソメトリ、および電気的トランスポート測定を含む。
【0064】
化学的に符号化され、生物学的に機能化されたビーズが、いったん基体(たとえば、チップまたはウエハ)と組み合わされると、LEAPSまたはここに述べられているその他の活性付着プロセスによって、基体上の所定の領域上で密集した配列の迅速な集成が可能となる。同じ流体相中で集成することによって、スポット間あるいはチップ間の変動可能性などの問題を、再編成あるいはプロセスの再設計を必要とせずに、防ぐことができる。さらに、これらのプロセスの均一性によって、ビーズのチップに依存する特性のみならず、分析条件の最適化が可能となる。さらに、マルチビーズ配列を、同一のチップあるいはウエハ上に維持されている識別可能な液体コンパートメント内で同時に形成することができる。一旦この配列が形成されると、これらのマルチビーズ配列を、マルチサンプルを同時に処理するのに使用することができる。LEAPSとマイクロ流体素子工学の一体化は、たんぱく質と核酸の平行分析用の、自蔵式の、最小化された、光学的にプログラム可能なプラットフォームを作る。
【0065】
機能化され符号化されたビーズが準備され、基体と組み合わされると、ビーズ上の結合剤と検体間の相互結合作用が、ランダム符号化配列が基体上で集成される前あるいは後のいずれかに行われる。例えば、ビーズ配列は、分析の後に形成され、それに続いて分析メージおよび復号イメージとを撮影するようにしても良い。代替として、ビーズを配列内で集成して、物理的あるいは化学的手段で不動化して、ランダム符号化配列を製造するようにしても良い。DC電圧を印加してランダム符号化配列を作るようにしてもよい。DC電圧、典型的には、5−7Vにセットされた電圧(2−6μmの範囲のビーズ用、および100〜150μmのギャップサイズ用)を、30秒以下の間“逆バイアス”をかけて、n型にドープしたシリコン基体がアノードを形成するようにして、配列を圧縮させ、配列内の隣接するビーズ間接触を促進し、同時に電極近くの高電界領域にビーズを移動させる。ビーズは、ファンデルワール力あるいは、例えば、ポリリジンや、ストレプタビジンなどのビーズ表面から延在するテザー(tethers)によって、定着する。
【0066】
ビーズ集成の後、チップあるいはウエハを検査して、蛍光顕微鏡で撮像して、復号マップを得る。復号は、後に、各独立したビーズの位置および機能性を同定するのに使用することができる。
【0067】
一杯になる配列位置のパーセンテージは好ましくは、50%以上、より好ましくは90%以上である。この溝が基体表面でいかに効率よくビーズを保持するかをテストするために、ビーズ配列を具えるチップを水溶液中において、3日間連続的に振った。このテストの前後で撮影した画像を比較すると、テストしたチップ上のビーズの99%が溝に保持されることを示した。
【0068】
III.ポスト−アッセンブリ
ポスト-アッセンブリの間、ビーズ配列を保護面で被覆しておくようにしても良い。ビーズを被覆する前あるいは後に、ビーズ配列を具えるウエハは、一またはそれ以上のビーズチップに切断される。
【0069】
3.1 マイクロ粒子の固定
本発明の実施例では、ビーズ配列領域を覆うゲルを用いて、ビーズがとれないように保護することができる。他の実施例では、溝の底部および/または側壁の化学官能基を用いて、表面にビーズをリンクさせている。ビーズの付着に先立ってチップを被覆するのに荷電ポリマも使用することができる。ポリマコーティング剤の電荷は、ビーズの電荷と反対になるように選択されるので、ビーズがポリマに対して静電的にひきつけられる。ビーズが荷電ポリマで被覆された溝にあるとき、ビーズと溝の側壁および底部間のクーロン引力が、溝内にビーズを保持する働きをする。このようにして、処理中および分析中のビーズの保持率が上がる。いくつかの実施例では、ビーズが溝に位置した後に第2の荷電ポリマをチップ表面に蒸着するようにしている。第2のポリマの電荷はビーズの電荷と同じになるように選択されるので、ポリマはビーズには付着されないが、チップ表面の電荷が中性になる。コア処理という最小の変更で、この技術のいくつかの変形例を実行することができる。例えば、単一のポリ電解質層を使用するか、多層構造(正負のポリマ層を交互に有する)を構成して、より均一で、厚さを制御したコーティングを製造することができる。さらに、ポリマに変えて、荷電ポリマーナノ粒子単独で、あるいは、荷電ポリマとの組み合わせを使用することができる。非荷電であるが、ガラス繊維温度Tgが低いポリマおよび/または、ナノ粒子コーティングを用いて、チップ表面へのビーズの付着性を改善することもできる。
【0070】
3.2 集成した配列の保護
除去可能な被覆を行って、バイオチップへの切断前のウエハあるいは、切断したバイオチップ自体のうちのいずれかの配列中のバイオ−機能化したビーズを保護することができる。したがって、バイオチップあるいはウエハがストーレージに置かれている間の大気中の埃、ごみ、他の汚染からビーズ配列を保護することが望まれる。本発明は、バイオチップおよびウエハ用の保護被覆剤と、この被覆剤を製造する方法を提供するものである。好ましい実施例では、被覆剤はビーズ配列中のビーズを大気中の汚染から保護し、ビーズ表面上の生体分子(例えば、プローブ)の劣化を防止する。さらに、この被覆剤はバイオ分析を行う前にバイオチップ表面から容易に除去することができる。
【0071】
ある実施例では、この被覆剤は、例えばトレハローズなどの、不活性な、非希釈糖を含み、これは、ペプチドやたんぱく質中のアミノ基などの活性化学成分と相互作用せず、したがって、他の添加剤と共通する乾燥させるときの劣化を防ぐ。
【0072】
他の実施例では、ヒドロゲル(例えば、アガロースヒドロゲル)を使用して、保存中の汚染や、脱水、物理的なダメージを防ぐようにしている。バイオ分析を実行する前に、ヒドロゲルを基体表面からはがすようにする。このはがす行為は、ヒドロゲルを除去するのみならず、溝あるいは他の保持構造で規定される配列位置にないエキストラビーズを除去して表面をきれいにすることを含む。ヒドロゲル中に埋め込まれているこれらのエキストラビーズは、再使用することができる。
【0073】
3.3 チップの切断
機能化後、チップ群(ウエハまたはウエハのサブユニット)を切断する。ウエハが前もって、スクライブされている場合は、チップ同士の連結部を破断することによって切断することができる。これは、米国特許第3,790,051号に記載されているように、ウエハの背面に、スクライビングラインに直交する方向にローラをかけることによって行う。代替として、Dynates International(商標)社によって製造されたGSTスクライバ/ブレーカを使用するなどの他の方法で切断を行っても良い。このようにして得た個々のチップは、パッケージングされるようになる。ここに記載した切断方法に加えて、例えばレーザーカッティングなど、他のどのような切断方法を用いても、本発明の目的を達成することができる。
【0074】
いくつかの実施例では、ウエハあるいはサブユニットは、バイオ機能化に先立って切断される。個々のチップは、次いで、同じようにバイオ機能化されるか、あるいはチップのサブ母集団を暴露させてさまざまなバイオ活性群として活性化することもできる。
【0075】
IV.パッケージング
本発明の方法を用いて、符号化したビーズ上に表示されたブローブ分子のランダム符号化配列の集成によって、多数のチップを製造することができる。各チップは、均一に同一化されたウエハから切り出されており、一またはそれ以上のランダム符号化ビーズ配列を含んでいる。本発明のランダム集成方法は、ランダム符号化配列を含むチップ上のビーズ−表示プローブが、多数のウエハから選択されたタグを付したチップ上に表示された大型プローブライブラリの員である実施例を含む。異なるウエハからチップが選択され、集成されて、プールしたチップセットを形成する。好ましくは、チップは元のウエハを同定する復号可能なタグを表示する。符号化チップの配列は、図15に示されており、ここで、ランダムタイリングと呼ばれるプロセスにおける、平面上のランダム集成によって形成される。ランダムタイリングは、平面的アレンジメントもしくは配列に、集成または配列内の各チップのあるいは各チップ部分の光学的検査を行えるように、符号化チップセットを集成するプロセスのことである。
【0076】
ビーズ配列レベルからチップ配列レベルまでのランダム集成の階層スケールは、カスタマイズ組成で、高特性密度の大型プローブセット配列を迅速に生成するフレキシビリティを提供する。このような配列は、遺伝子表現プロファイリング用大型プローブセットの表示、あるいは、公知の分析方法によるDNAのメチル化をプロファイルするのに使用することができる。さらに、多重プローブ配列を暴露させて、反応を分離することが望ましい場合は、下記の単一支持体上に複数チップを固定するランダムタイリングプロセスは、公知のプーリングおよび復元(deconvolution)を行う迅速かつフレキシブルな新規方法を提供する。例えば、部分的にオーバーラップしているプローブセットを表示する配列は、好適な構造およびチップの選択によって容易に製造することができる。
【0077】
本発明のビーズ配列の集成に続いて、ウエハが切断され、ここのタグを付したチップのマニピュレーションが行われる。ランダムタイリングにおいて、1またはそれ以上のウエハから選択されたタグを付したチップを、チップが移動可能である表面(好ましくは、平面基体によって提供される)上にほぼ位置させて、所望のレイアウトに対応するマルチチップアッセンブリを形成する。しっかりしたパッキングを行うために、チップは、四角形、三角形あるいは六角形など、凸の対称形状を表示するように設計される。近接するチップ上のビーズ配列間の距離を短縮するために、チップは内部係合形状(図14c)を表示するよう設計される。
【0078】
スライディング集成
本実施例では、多数の切断されたウエハが、プローブ配列を表示する側を下に向けて、共通の大きな基体上に位置している。好ましい実施例では、プローブ配列に溝をつけて、基体との直接的な接触を防ぐようにしている。一またはそれ以上のチップが、各ウエハからランダムに選択され、卓上でコインをスライディングさせるのと同じようにして、所望の集成領域にチップをスライディングさせて、チップ配列を形成するように構成されている。このプロセスは、図8に示す行と列のマニュピレーションに一般化されている。本実施例では、このタイリングプロセスが、半導体の検査に使用される標準光学的および機械的ヴィジョン器具の使用によって、モニタされる。この器具の使用によって、その各々の元のウエハから各々の最終位置へチップを搬送して、集成したチップ配列の直接的な位置的符号化および復号化が可能となる。集成プロセスが終わると、マルチチップキャリア(ここに記載されているような)を、集成領域に配置されている一またはそれ以上のチップ配列に整列させ、下降させて、チップに結合させてマルチチップ集成を形成する。結合を行うために、キャリアは、接着剤をあらかじめ被覆しておくか、あるいは、チップがここで述べられている方法で磁化可能であれば磁性材料で被覆しておくようにしても良い。
【0079】
このスライディング集成法は、当業者には公知である、個々のチップを持ち上げて操作することができる吸引装置などの機械的先端を使用することが好ましい。代替として、磁化可能なチップは、各ウエハから一またはそれ以上のチップを選択することができる磁気スタイラスを用いてマニピュレートすることができる。ウエハ(およびその上に含まれるチップ)は、ニッケルや、ニッケル−鉄合金(パーマロイ)などの磁性材料を、例えば半導体やセラミックス技術で理解されているように、電気めっきまたは無電解蒸着によって蒸着させて、磁化することができる。代替として、プローブ分子を表示するマイクロ粒子のランダム符号化配列の一部として、あるいは、例えば、各チップの所定部分で集成した配列の形状の別の特徴として、定磁性マイクロ粒子を導入するようにしても良い。磁化可能な粒子配列は、ランダム符号化プローブ配列を含むチップ側、あるいはその反対側にある。
【0080】
スライディング集成は、一般的に、個々のチップの操作を含み、チップ配列中のチップを構成する数が増えるにつれて徐々に面倒になる。この状態は、例えば、線寸法が100μm以下と、チップが小さいと、悪化する。例えば、立方体またはほぼ立方体形状の小さなチップを、セラミックの基体からこの大きさで形成することができる。この状態で、個々のチップは、同じ大きさのガラスあるいはポリママイクロ粒子を操作する公知の方法によって、もっとも良好に操作される。
【0081】
集合アッセンブリ
本実施例では、個々のウエハから切り出されたチップは、微量のアジ化物を含む純度の高い水などの不活性保存バッファを用いてバルク懸濁液中に保持される。選択された懸濁液のアリコートを調剤して混合することによってチップのプールが形成される。選択的に、少量のグルコースか他の高水溶性の分子重量成分を、この懸濁液に加えて、粘度を上げ、フロー特性を改善するようにしても良い。ついで、シリンジ、ピペット、またはキャピラリを用いて、識別アリコートをスポットしてランダムに付着させるか、または、この技術分野で公知の方法を用いて、フロー動作とキャピラリ力を使ってコロイド状粒子の配列を製造するか、することによって、懸濁液を平面基体上に付着させる。(Adachi, E., et al, Langmuir, vol. 11, 1057−1060(1995);Science, Vol. 276, 233-235(1997)。
【0082】
ランダムに付着させた場合は、個々のチップの位置決めを案内するべく、また、チップを基体上の所定の位置に保持するべくテンプレートを基体上に設けることができる。一の実施例では、メッシュを懸濁液に挿入してそれを取り出すことによって、個々のチップを水平方向に持ち上げるか、掬い取るかして、混合懸濁液からチップを集めるようにしても良い。チップは、特に平面で、特性フリーな基体上におかれる場合は、チップが密なパッキング形状に重なる前に、部分的なオーバーラップや、重なりを防ぐべく、十分に他から離すことが好ましい。分離は、例えば、スライディング集成(上記参照)か、あるいは、機械的な攪拌によって行われる。攪拌は、公知技術で行われているように、ポリメリック基体などのフレキシブル基体上の「ドラムモード」を誘導するという利点がある。
【0083】
好ましい実施例では、例えば、サンドイッチフローセル中の基体表面に平行に方構付けられた流体フロー中でチップを流れに乗せて運ぶといった、機械的手段によって、チップを重ねる。サンドイッチフローセルでは、チップは、フローセルの遠端においてバリアに対抗する力を受ける。
【0084】
好ましくは、ランダムアッセンブリ内のチップは、ランダム符号化プローブ配列を表示する活性側を暴露するように方向づけられる。活性側が暴露されない場合は、チップを反転しなければならない。好ましい方向へのチップの反転は、機械的な攪拌サイクルと正しく方向付けられたチップ(熱活性結合接着剤、あるいは光活性結合接着剤で被覆されている)の結合によって行われる。代替として、機械的な攪拌が行われている間の反転は、例えば、金属化などによって、所望しないチップの側に重心を置くことによって、促進される。磁化可能なチップは、高粘度の媒体中で十分にゆっくりと沈殿させて、チップが表面に近づくときに正しい方向を向くようにすれば、基体表面に直交する方向に順次整列させる磁界の存在下において付着しうる。
【0085】
反転は、ピラミッド形状などの3次元形状を作ることによって行っても良い。標準半導体エッチング法によって製造したとおり、ピラミッドの頂点は活性表面から離れた方向を向く。
【0086】
チップはシングルあるいはマルチチップパッケージにパッケージすることができる。マルチチップパッケージでは、さまざまなバイオプローブ配列を含むチップが同じキャリア上に置かれている。図8は、スクエアコンボチップ、あるはリニアコンボチップを形成する互いにパッケージされた4つのチップを示す。この4つのチップは、ガラススライドなどの共通のキャリアに、のりで貼り付けるか、あるいは、磁性キャリアにチップが張り付くように、チップの裏側に結合磁性材料をつけるといった、他の方法でキャリアに付着させることができる。切断後、チップは行と列にグループ分けすることができる。これらのチップの行と列は、封じ込めバーによって移動させることができる。図9は、異なるチップ列を選択的に配置した、異なるチップの組み合わせを示す。
【0087】
他のパッケージデザインを図10に示す。コーナに配列を有する4つのチップを組み合わせて、中央に大きな配列をもつチップを形成している。4つのチップ上のこの配列が、識別機能プローブを具えていれば、この大きな配列は、シングルチップの4倍の情報を含むことになる。
【0088】
ビーズ上に表示されたプローブのランダム符号化配列を集成することによって、多数のチップを製造することができる。各チップは、一またはそれ以上の符号化ビーズ配列を含んでおり、均一に同定されたウエハから切り出すことができる。他の実施例では、ビーズ上にプローブのランダム符号化配列を含むチップがプローブライブラリの員でありうる。この実施例では、マルチチップ配列中の各チップが、元のウエハを同定する復号可能なタグを表示する。
【0089】
スライド形状のガラス表面や、他の同様な表面は、マルチチップキャリアの製造に使用することができる。キャリアとしてのスライドを作るには、テフロン(登録商標)などのコーティング剤を、円形の開口あるいはウエル(すなわち、テフロン(登録商標)で覆われていないガラス領域)を残して塗布する。各ウエルは、直径6.5mmの円形である。一またはそれ以上のチップを、ウエル内でガラス表面に結合させることができる。典型的なガラススライドは、25×75mm、厚さ1mmであり、2×5の配列のウエルを有する。典型的なチップサイズでは1.75×1.75mmで、最大4つのチップを各ウエルのガラス表面に結合させる。同じウエル内の各チップは、キャリアへの結合が行われる前に集成された識別ビーズ群を有する。例えば、各チップが39種類のビーズ群を含む配列を有する場合は、4つの識別チップをもつ一のウエルは、トータルで4×39=156種類のビーズを持つことになる。一方、大型チップ(例えば4.5×4.5平方mm)は、ウエル全体が単一のチップで占められている。ここで述べたウエルの大きさに関しては、各ウエルが40μlの液体(通常は、水溶液)を保持することが可能である。典型的には、各チップが全体的にサンプル溶液で覆われるように、体積20μlのサンプル溶液が生物学的反応用に各ウエルに加えられる。ウエルの外側のテフロン(登録商標)コーティングは、疎水性であるので、水溶液サンプルはこぼれない。キャリアスライドの型式を、あるアプリケーションに合うように設計しても良い。例えば、スライド上に8個のウエルの単一の列を用いて、8つのサンプルを分析することができる。更に、4×8の配列のウエルを用いて、32のサンプルを分析することができる。同様に、より多くのウエル(例えば96,384、および1536)を単一のスライド上に配置して、より多くのサンプルを分析することもできる。
【0090】
移動チップキャリアに関する実施例では、チップはガラス、ステンレススチール、プラスチック材料、シリコン、セラミック材料などの基体に貼り付けられる。キャリアユニット全体が移動可能であり、反応チャンバ、洗浄チャンバ、および単一リーディングステージなどの様々な反応媒体にチップを暴露させるべく処理中に移動させることができる。
【0091】
他の実施例では、移動チップキャリアが、チップを固定しているチャンバを具えている。移動チップキャリア内部のチップをハウジングすることによって、移動中の汚染を最小限に抑えることができる。ある実施例では、この移動チップキャリアのチャンバは、処理環境としても作用する。バイオ分析の実行や、チップの洗浄など、さまざまな目的に用いる反応ガスあるいは液状の溶液を、チャンバ内に入れて、必要に応じてこれをくみ出すようにする。さらに、移動チップキャリアは、チャンバ圧あるいは温度などの、チャンバの熱力学特性を変更する手段を持っていても良い。
【0092】
V.分析
ビーズ配列を具える本発明のバイオチップは、さまざまな生化学解析的分析および化学分析を実行するのに有益である。いったん集成されると、本発明のバイオチップ上のビーズ配列は、分析信号を記録するために撮像され、配列内の個々のビーズに関連するプローブに結合したターゲット検体を同定するために復号される。このビーズ配列は、マルチステップ生化学分析または化学分析シーケンスの結果を読み取るのに使用することができるシステムを提供する。さらに、マルチターゲット検体は、配列を有する様々なターゲット検体に向けられた複数のプローブの存在により、同時に検出することが可能である。特定のターゲット検体の存在あるいは不存在を検出する能力を提供する一方で、本発明のビーズ配列は、プローブに結合するターゲット検体の親和力定数を決定する際の適合可能性がわかる。したがって、バイオチップは、例えば、TNF-アルファや、Il-6などの生体分子の検出に広い適用可能性を有する。この他の限定されないアプリケーションは、多形分析によるゲノタイピング、遺伝子発現分析、サイトカイン発現の量子論的多重プロファイリング、同一流体サンプル中の遺伝子および遺伝子生成物の分析、指紋の類似性;および反応動力学の多重分析を含む。ここに引用されている米国特許第6,327,410号に記載されているような他の分析および分析の決定は、本発明のバイオチップとともに使用するようにしても良い。
【0093】
実験例
本発明は、以下の実験例からよりよく理解される。しかしながら、当業者には、ここで述べる特定の方法およびその結果が、請求項に記載された本発明の単なる例示であることは明らかである。
【0094】
実験1:ウエハの製造およびビーズ配列を具えるチップの設計
図4に示すようなビーズ配列を具えるチップの製造方法を、図11に示す。基体は直径100mm、厚さ0.5mmで、結晶配列(100)、燐でn型にドープした。これらのウエハの抵抗の好適な範囲は、1.5〜4Ω-cmである。ウエハは、通常、25のバッチで製造した。第1のステップは、SiOの成長ステップを具える。まず、ウエハをRCA洗浄プロセスを用いて洗浄した。このプロセスは、(1)ウエハを、NHOH:H(30%):HO、体積比1:1:5、温度75℃の混合液中に、10分間浸漬するステップと;(2)18MΩ-cmの水を用いてカスケードバッチクリーニングですすぐステップと;(3)ウエハを、Hcl(36%):H(30%):HO、体積比1:1:5、温度75℃の混合液中に10分間浸漬しておくステップと;(4)バスの中の水が少なくとも16MΩ-cmになるまで、カスケードバッチクリーニングですすぐステップと;を具える。ウエハは、SiOを成長用の水平炉に入れる前に遠心脱水させた。ウエハを、水晶ボート上に縦において、1050℃の酸化炉に入れた。この炉は、760torrの圧力で、O+HCl(4%)の雰囲気である。酸化時間は34分であった。この方法で、均一な1000Åの層を得た。この厚さは、エリプソメトリ(反射率:n=1.46、厚さ変動<5%)を用いて認証された。
【0095】
SiOを伴うウエハは、スピンレート4000rpm(スピン時間30秒)で、ホトレジスト(Shipley1813)でスピンコートし、115℃のホットプレートで、60秒間焼き付けて溶媒を除去した。ついで、ハイブリッドテクノロジグループ(HTG)のシステム3HRコンタクト/近位マスクアライナを用いた、接触リソグラフィ工程で、ウエハにUVライト(365〜405ナノメータ)を露光した。UVの露光に続いて、AZ300MIF現像液によって60秒間ウエハを現像し、脱イオン水ですすぎ、圧縮乾燥窒素ストリームでブロー乾燥させた。ウエハは、バッファ酸化エッチング液(フッ化アンモニウムと、50%のフッ化水素水溶液の6:1の混合液)に、2分間浸し、暴露領域(図11の星型)上のSiOをエッチング除去した。ウエハは、ついで、脱イオン水ですすいで、1165マイクロポシットホトレジスト除去剤に、60℃で60分間漬けて、ホトレジストを除去した。ついで、ウエハを脱イオン水ですすぎ、圧縮乾燥窒素の噴流でブロー乾燥させた。この全工程で、パターン化した酸化層を有するウエハを作成した。
【0096】
酸化パターニングステップに続いて、ウエハをRCAプロセスを用いて洗浄し、窒化シリコン(SiN)を蒸着するために水平炉に入れた。標準型と、低ストレス型の、2つのタイプの窒化シリコンを使用することができる。蒸着条件は:LPCVD窒化物(標準)、圧力200mTorr、温度800℃、SiCl=30sccm、NH=90sccm;LPCVD窒化物(低ストレス)、圧力150mTorr、温度850℃、SiCl=47sccm、NH=10sccm、である。2,3分蒸着させると、Siフィルム厚は、60〜90Åになる。
【0097】
次のステップは配列構造の作成である。スピンレート4000rpm(スピン時間30秒)で、ホトレジストOCG12iで、ウエハをスピンコートして、90℃のホットプレートで60秒間焼き付けて、溶媒を除去した。ウエハにUV光(365nm)を照射して、GCA-6300 10x i−lineステッパを用いてリソグラフィを繰り返し行った。露光後、AZ300MIF現像液で60秒間現像する前に、ウエハを115℃のホットプレートで90秒間焼いて、脱イオン水ですすぎ、圧縮窒素ストリームでブロー乾燥させた。ウエハを、90℃のオーブンで20分間焼成した。このウエハを、ついでプラズマテルム(Plasma Therm)72エッチャでエッチングして、CFガス反応イオンエッチングを用いて、暴露領域(配列の六角形状)の窒化シリコンを除去した。次いで、酸素反応イオンエッチングを行って、六角形状上の残余のポリメリック材料を除去した。UnaxisSLR770ICPディープシリコンエッチャ(Boschフッ素プロセスとライセンス)を用いたディープ反応イオンエッチング(DRIE)によって六角溝を形成した。このプロセスは、3.8マイクロンの深さの溝をエッチングするのに2−3分かかるように調整した。深さの制御は、0.3マイクロン以内とした。エッチングを行った後、ウエハを60℃の1165マイクロポジットホトレジスト除去剤に、60分間漬けて、ホトレジストを除去した。ウエハを、脱イオン水ですすいで、乾燥圧縮窒素の噴流でブロー乾燥させた。ついで、ウエハをGaSonics, Aura 1000, Downstream Photoresist Stripper中で、90秒間、酸素プラズマ処理を行い、DRIE処理中に生じた六角溝内部の残余のポリマを除去した。ついで、ウエハを保護ホトレジストコーティング剤(Shipley 1813, スピンレート4000rpm、スピン時間30秒)でスピンコートを行い、さらに、115℃のホットプレートで60秒間焼き付けて、溶剤を除去した。ウエハは、業者に送られて、接着層として100オングストロームのクロミウムを有する500オングストロームの金の背面コーティングを行った。ウエハの背面に、アルゴンイオンスパッタリングを用いたコーティング処理の直前に、自然な二酸化シリコンのストリップができた。
【0098】
製造したウエハは、表面上をのこひきして、各チップ(各チップの大きさ、1.75×1.75平方mm)を画定する。カットの深さはウエハ厚の2/3とした。カッティングの後、ウエハを、60℃の1165Micropositoホトレジスト除去剤に60分間漬けて洗浄し、ホトレジストを除去した。ついで,脱イオン水ですすぎ、圧縮乾燥窒素ストリームでブロー乾燥させた。通常は、ウエハをさらに、60℃のNanoStrip(濃縮硫黄酸と過酸化水素の混合液)に2時間つけて、脱イオン水ですすぎ、圧縮乾燥窒素ストリームでブロー乾燥させる。これらの過程を経て、ウエハのビーズ集成ステップへの準備が整う。
【0099】
ビーズ集成を行った後、溝に固定されていない余分なビーズを除去する。固定されなかったビーズの除去方法のひとつは、チップまたは上は表面を湿ったコットンアプリケータでふき取ることである。他の方法は、チップあるいはウエハ表面にほぼ水平にウオータージェットをあてて、固定されなかったビーズを洗い流すことである。更なる別の方法は、表面上にゲルを成長させ、順次そのゲルをはがすステップを具える。
【0100】
実験2:ビーズの機能化とビーズ配列の作成
カラー符号化した、直径3.2μmのトシル-機能化ビーズを、固相キャリアとして用いた。標準的な方法(Bangs. L.B. “Uniform Latex Particles”, Seragen Diagnostics Inc. p40)を用いて粒子を染色して、数セットの識別可能なカラーコードを生成した。染色したビーズを、ニュートラビジン(Neutravidin、Pierce、Rockford, IL)というビオチン結合たんぱく質で機能化し、ビオチン化したプローブあるいはプライマの不動化を行った。典型的な小スケールカップリング反応において、1%のビーズを含む200μlの懸濁液を、500μlの100mMホスフェートバッファ/pH7.4(バッファA)で3回洗浄し、このバッファ500μlで再度懸濁させた。このビーズ懸濁液に、20μlの、5mg/mlのニュートラビジンを加えたのち、37℃で一晩反応させた。次いで、結合したビーズ(すなわち、それに付着したバイオ−機能分子を有するビーズ)を、10mg/mlのBSAを伴う500μlのPBS/pH7.4 (バッファB)で一旦洗浄し、このバッファ500μl中で再度懸濁させて、37℃で1時間反応させ、ビーズ表面の未反応サイトをブロックした。ブロッキングの後、ビーズをバッファBで3回洗浄し、このバッファ200μl中で保存した。
【0101】
ビーズに結合されたプローブ(ターゲット分子の検出用)と、プライマ(次の触媒反応用にハイブリダイズしたDNAターゲットを延長して反応プローブを同定するテンプレートとして使用することができる)を、5’末端でビオチン化した;炭素数15のトリエチレングリコール架橋剤を、ビオチンとオリゴヌクレオチドの間に挿入し、次の反応における表面の不動化の分裂効果を最小限に抑えた。各プライマに対して、50μlのビーズ懸濁液を用いて結合反応を行った。ビーズを、500μlの20mMトリス/pH7.4、0.5M NaCl(バッファC)で一旦洗浄し、このバッファ300μlに再度懸濁させた。プライマ溶液(2.5μlの100μM溶液)をビーズ懸濁液に加えて、室温で30分間反応させた。次いで、ビーズを20mMトリス/pH7.4、150mM NaCl、0.01%のトリトンで3回洗浄して、20mMトリス/pH7.4、150mM NaClの中で保存した。
【0102】
典型的なビーズ配列は、以下のように集成させた。上記の手順で得たビーズ懸濁液を、0.01mMのトリスベース+0.01%トリトンx-100水溶液中に懸濁させる前に、脱イオン水(すべての水は高度に純化されており、18MΩ-cm以上の抵抗で滅菌した)で5回洗浄した。懸濁液中のビーズ内容物は0.5%であった。2μlのビーズ懸濁液を、ビーズ配列を具える4.5平方mmのチップ表面に、マイクロピペットを用いて加えた。次いで、このチップに、LEAPSプロセスを行った。対抗電極は、インジウム錫酸化物(ITO)層で被覆したガラス片であった。チップ表面とITOで被覆したガラス間のギャップは、100マイクロンであった。交流電力を、下記の表の通り印加した。
【表1】

【0103】
このシーケンスが完了した後、星型パターンによるスパン領域内のビーズが、配列領域内に集中する。この星型パターンの存在で導かれたフローパターンは、ビーズの集中を助ける。ビーズが沈下するまで15分待って、この装置を純水中にゆっくりと沈めた。ITOガラスコーティングがゆっくりと持ち上がり、チップ表面が浮かび上がるように水をゆっくりと排水した。この時点で、延長された期間中、室温にチップを置くか、あるいは、55℃のオーブンで5分間焼成するかのいずれかによって、表面を乾燥させた。この乾燥させたチップを、純水に15分間沈め、次いで、チップ表面を湿った綿布で数回そっとふいて、配列中にないビーズを除去した。次いで、このチップを、表面に圧縮窒素を吹き付けて乾燥させる前に、純水で3回すすいだ。最後に、蛍光顕微鏡でチップを検査して、配列の外側に余分なビーズがないことを確認した。
【0104】
実験3:ビーズ配列の形成
ビーズスラリをチップ上の配列領域に直接に乗せた。湿った綿アプリケータ(K1)を用いて、配列表面のビーズスラリをそっとかき混ぜた。K1の動きは、円をかく、直線的に、あるいはその他の意味のあるモードで行ってもよく、通常チップ表面に平行になされる。スラリを数回かき混ぜた後、ビーズを配列中に移動させた。次いで、チップ表面をK1を用いて洗浄し、配列中にない余分なビーズをふき取った。このプロセスは、シングルチップからウエハスケールのマルチチップ集成まで、スケールを大きくして行い、また、自動化することができる。
【0105】
ビーズ配列を形成する処理工程の一例は、以下の通りである。100μlのホスフェート−バッファ生理食塩水(PBS:150mM、NaCl;100mM、NaP、pH7.2、として知られている)中の1%のマイクロ粒子(直径約3.2μm)2μl用いて、各チップに4000個のマイクロウエルを有するシリコンチップ(2.5×2.5mm)上に、8つのマイクロ粒子配列を集成させた。次の工程を用いた。
(1)PBSからのマイクロ粒子を、遠心分離(14,000g、1分間)を行って、1.5mlの遠心分離管に集めた。他の収集法を用いることもできる。
(2)運搬ピペットを用いて吸引し、上澄み液を捨てた。
(3)粒子を、10mM Tris pH7.5中の5%のグリセロール5μlに再度懸濁させた。
(4)遠心分離によって、グリセロール溶液から粒子を集めた。他の収集法を用いることもできる。
(5)粒子パレットからグリセロール溶液を吸引した。
(6)パレットを、10mM Tris pH7.5中の5%のグリセロール1μlに再度懸濁させた。
(7)8つのシリコンチップを、顕微鏡スライドに設けた両面タップ上においた。
(8)体積0.1μlの粒子懸濁液を、各々のチップの4,000個のマイクロウエル領域にピペットした。
(9)綿アプリケータを洗浄ボトルの水で洗った。
(10)濡れた綿アプリケータを、圧縮エアを30秒間吹きつけて乾燥させた。このエアフローは、アプリケータの綿部分の余分な水を除去する。更に、綿玉をより毛羽立たせる表面らのファイバに、エアを吹きつけた。
(11)ビーズ懸濁液が空気中で蒸発することと、溶液中のグリセロールの吸湿性によって、ステップ9および10が完了するまで(約1−2分)に、ステップ8からの懸濁液中の水分が平衡になった。粘度が増すため、水滴はよりスラリ化した。マイクロ粒子配列を集成するために、ビーズスラリを濡れた綿アプリケーションのチップを用いて、何度かくるくる回す動作で、そっとかき混ぜた。綿玉の粗い繊維がビーズを表面上のマイクロウエル内に運んだ。
(12)マイクロウエルの粒子占有度を、蛍光顕微鏡を用いて測定した。この占有度が十分でない場合は、ステップ11を繰り返すことができる。
(13)綿アプリケータを用いて、チップから余分な粒子をそっとぬぐい取った。表面上に余分な水分を残さないために、綿アプリケータはチップに押し付けないようにした。
(14)チップ表面に圧縮窒素を吹きつけてチップを乾燥させた。
(15)この方法で準備した集成マイクロ粒子は、分析に用いるか、あるいは、後に使用するために、4℃の溶液中で保存することができる。
【0106】
この実施例では、マイクロ粒子を少量の5%グリセロール、10mM Tris pH7.5溶液中に懸濁させて、シリコンチップ上にマイクロ粒子配列を直接付着させた。しかしながら、粒子は他の溶液に懸濁させても良い一方で、ビーズの組み立てにLEAPSが用いられる場合は、高粘度の溶液や、あるいはイオン濃度の高い溶液は、LEAPS(例えば、パターン化されたあるいは光照射された電極などの基体の所定の領域上の粒子集成など)を阻害してしまう。したがって、懸濁液のイオン濃度は、約1.0mMかそれ以下であることが望ましく、好ましくは、約0.1mMから1.0mMの間であることが推奨される。
【0107】
更に、燐酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどのある種の塩は、ステップ11で発生する徐々に生じる集中において、クリスタルを形成することがある。このようなクリスタルは、ビーズ表面上の生体分子を阻害することがある。したがって、これらは、ビーズ懸濁液に使用することは進められない。
【0108】
実験4:直接付着法
本願で開示している直接付着法は、マイクロ粒子配列を固相表面に効率よく集成するシンプルな方法である。例えば、体積0.25μlの1%のマイクロ粒子溶液(10mg/ml、これは168,000個のビーズに相当する)は、4000個のマイクロウエルを有し、占有度95%以上のシリコンチップ上に十分に配列を集成することができる。換言すると、表面上で、マイクロウエルを埋めるには、懸濁液中に約2%のビーズがあればよい。また、集成プロセスは、室温で、中性pHの水溶液中で行われる。このようなマイルドな条件は、DNA、RNA、ペプチド、たんぱく質などの分子が、粒子上に不動化される場合の反応性が、集成中に変化しないことを確かなものとする。このように、この方法を用いて集成されたマイクロ粒子配列は、さまざまな生化学分析と相溶である。また、組み立てプロセスは、シングルチップ集成から、ウエハスケールの集成にスケールアップすることができ、自動化して、大量のマイクロ粒子配列を製造することが可能である。
【0109】
直接付着法は、次の実施例によってより明らかになる。体積2μlの1%マイクロ粒子溶液(直径役3.5μmのマイクロ粒子)、燐酸−バッファの生理食塩水(PBS:150mM、NaCl;100mM,NaP,pH7.2)100μlに加えて、各チップが4000個のマイクロウエルを具えるシリコンチップ(2.5×2.5mm)上に8つのマイクロ粒子配列を形成した。手順は以下の通りとした。
(1)PBSからのマイクロ粒子を、遠心分離(14,000g、1分間)を行って、エッペントフ管(eppentof tube)に集めた。他の収集法を用いることもできる。
(2)運搬ピペットを用いた吸引によって、上澄み液を捨てた。
(3)粒子を、10mM Tris pH7.5中の5%のグリセロール5μl中に再度懸濁させた。
(4)遠心分離によって、グリセロール溶液から粒子を集めた。他の収集法を用いることもできる。
(5)粒子パレットからグリセロール溶液を吸引した。
(6)パレットを、10mM Tris pH7.5中の5%のグリセロール1μl中に再度懸濁させた。
(7)8つのシリコンチップを、顕微鏡スライドに取り付けた両面タップ上においた。
(8)体積0.1μlの粒子懸濁液を、各々のチップの4,000個のマイクロウエル領域にピペットした。
(9)綿アプリケータを洗浄ボトルの水で洗った。
(10)濡れた綿アプリケータを、圧縮エアを用いて30行間吹きつけ乾燥させた。このエアフローは、アプリケータの綿部分からの余分な水を除去する。更に、綿玉をより毛羽立たせる表面のファイバに、エアを吹きつけた。
(11)ビーズ懸濁液が空気中に蒸発することと、溶液中のグリセロールの吸湿性によって、ステップ9および10が完了するまで(約1−2分)に、ステップ8からの懸濁液中の水分が平衡状態に「なった。粘度が増すために、水滴はよりスラリ化した。マイクロ粒子配列を集成するために、ビーズスラリを濡れた綿アプリケーションのチップを用いて、何度かくるくる回す動きを行って、そっとかき混ぜた。綿玉の粗い繊維がビーズを表面上のマイクロウエル内に運搬した。
(12)マイクロウエルの粒子占有度を、蛍光顕微鏡を用いて測定した。この占有度が十分でない場合は、ステップ11を繰り返すことができる。
(13)綿アプリケータを用いて、チップから余分な粒子をそっとぬぐい取った。表面上に余分な水分を残さないために、綿アプリケータはチップに押し付けないようにした。
(14)ステップ13を行った後、集成したマイクロ粒子は、分析に用いるか、あるいは、後に使用するために、4℃の溶液中で保存する。
【0110】
直接付着法を用いて配列を集成するためには、少量の5%グリセロール、10mMトリス pH7.5溶液に懸濁させたマイクロ粒子を使用することが有益である。濃縮したグリセロール(すなわち、5%以上のもの)の使用は、ビーズスラリの粘度をあげて、チップ上の水滴内の溶液の比重が高くなる(ステップ11)。このことは、集成効率に関係する。直接付着法に使用される溶液は、10mM Tri,pH7.5に限定されるものではないが、燐酸ナトリウムや、塩化ナトリウムなどのある種の塩は、ステップ11にあるような徐々に進行する凝縮過程で、結晶を作る傾向にある。この塩結晶は、ウエル内のマイクロ粒子の占有度を下げるのみならず、集成中に表面の分子にダメージを与えることがある。
【0111】
また、集成を終えたチップあるいはチップを具えるウエハを、短時間(例えば、30分間)、湿度のあるチャンバに保存することが推奨される。これによって、分析に使用する前に、重力でビーズが溝に沈降する。ガラススライドに結合された集成配列の遠心分離は、沈降プロセスを容易なものとする。遠心分離の推奨される装置は以下の通りである。
遠心分離器 Sorvall遠心分離器 モデルRT6000B
ロータ Sorvallスイングバケット モデル H1000B
速 度 2000RPM
時 間 5分間
操 作 遠心分離器を10℃の冷蔵モードに設定ブレーキをオフに設定最初の2分間で速度を0−2000RPMに上げ、次いで、更に5分間2000RPMで遠心分離を行う。このプロセスには、均等の装置とセッティングを使用する。
【0112】
ビスコース浸漬媒体は、顕微鏡検査のためのスライドにチップを装填するのに有益である。一例として、2.25Mテトラチルアンモニウムクロライド、37.4mMTris、pH8.0,25%グリセロールを含有する装填媒体を使用する。
【0113】
実験5:バイオチップ配列の平行アッセンブリ
本発明は、バイオチップ配列の平行集成方法を提供するものである。本実施例では、バイオチップ配列は、別々のウエハからとったチップから形成される。限定的でない例が図9に示されており、ここには、A、B、C、およびDの4つのタイプのチップにする4つの異なるウエハが示されている。チップの行と列は、どのジオメトリに組み合わせてもよく、中間チップマトリックスを形成する。好ましい実施例では、チップは、正規のジオメトリック形状を有しており(例えば、正方形または矩形)、対応する中間チップマトリックスも、正規のジオメトリ形状を有する。行および列は、行と列がタイプの異なるチップを具えるように、中間チップマトリックスから抽出される。アプリケーションによって、行または列の混合は、所定の型のバイオチップの一以上のコピーを含むことがある。この実施例で形成された、混合した行および/または列は、バイオ分析用のバイオチップ配列に取り込むことができる。好ましい実施例では、半導体チップ操作装置を用いて、中間チップマトリックスを組み立て、混合した行または列を抽出する。中間チップ配列を形成するべく長いチップの行または列を用いて、多くの混合した行または列を同時に製造することができる。このように、混合した量または列を大量生産することが可能である。
【0114】
実験6:サッカライドコーティングによるバイオチップの保護
機能化したビーズを、標準的な手順でチップ上に組集成した。集成に続いて、チップ表面を洗浄して、脱イオン水中の、トレハローズ(アルファ−D−グルコピラノジール アルファ−D−グルコピラノサイド、自然−発生、ガラス形成コサッカライド)1%の水溶液を2〜4μlをmチップ(表面大きさ:1.75×1.75mm)の上において、大気状態で乾燥させた。乾燥中に、基体上にガラス上フィルムが形成され、集成されたビーズを封じ込めた。このフィルムは高湿度状態でも安定ではあるが、液体の水にさらすと、フィルムが即座に溶ける。
【0115】
機能化粒子の活性におけるフィルム形成の効果を評価するために、ニュートラビジン機能化粒子をバイオチップ上に集成した。いくつかのバイオチップは、上述のトレハローズ溶液でパッシベートされて、通常の大気環境におかれ、他のバイオチップは、トレハローズ溶液で被覆されていないが、その代わりに4℃で2週間保存した。バイオ被覆チップのバイオ活性は、4℃に保たれた被覆していないバイオチップのバイオ活性と同様であった。
【0116】
実験7:ウエハ洗浄における多重機能化剤としてのハイドロゲル、保存、および粒子の回復
アガロースハイドロゲルは、後に取り出すことができるようにチップから粒子を除去するピーリング剤として使用することができる。このハイドロゲルは、ウエハと粒子を脱水状態および埃から守る保存料として使用することもできる。
【0117】
機能化粒子は、チップを備える6インチのウエハ上に集成される。表面に残った粒子を洗浄するために、55℃の、1%のアガロース溶液(融点95℃、ゲル化温度50℃)をウエハの上に注ぎ、大気状態下、あるいは4℃で、ゲル化が生じるまで放置する。厚さの異なるスペーサを用いることによって、マイクロメータからミリメータまで、さまざまな厚さのゲルを作ることができる。このスペーサは、ウエハのエッジにバリアを提供して、アガロース溶液がエッジから流れ出るのを防止する。溝の中というよりはむしろ、ウエハ表面に位置しているビーズは、ゲル内に埋め込まれてしまう。溶液が完全に固まった後、ゲル膜は、埋め込まれたビーズと同じように、容易にはがすことができる。すぐに圧縮窒素ストリームを当てて、表面に残留している少量の水をブロー乾燥させる。このようにして、ウエハ表面を清潔に保つ。
【0118】
占有度におけるピーリング工程の効果および機能化粒子の活性におけるアガロースゲル膜の効果を確認するために、粒子を、チップ上に集成して、次いで、そのチップの復号分析と延長分析を行った。図12は、ピーリング工程が占有度を下げていない(すなわち、粒子は溝から引き出されなかった)ことを示す。ゲル溶液の粘度が、ホール内部の粒子を保持する役割を果たしたと考えられる。ゲル溶液の粘度をより高くすると、水溶液はゲル化が減少する前に溝の中にゆく傾向があり、占有が影響される可能性は低い。オンチップ分析のSSPは、信号とCVが比較可能であることを示しており(図13ab)、ゲルが分析の感度に影響しないことを示す。
【0119】
アガロースゲルは、熱可逆的に物理的架橋したハイドロゲルである。粒子の回復の目的には、融点が極度に低いアガロース(融点50℃以下、ゲル化温度8−17℃)を使用する。粒子上の生体分子の生物学的活性は、この状態で保持される。
【0120】
このような、親水性ハイドロゲルは、ピーリング剤として使用できるだけでなく、保存剤として用いて、保存と輸送の間の脱水、埃、および物理的ダメージから粒子/ウエハを保護することもできる。
【0121】
実験8:ポリマコーティング
洗浄した独立チップ(約5〜20個)の小バッチを、ポリアリラミンハイドロクロライド(Mw〜15,000)の1%溶液(1mg/ml)か、もしくは、0.1%のポリリジン溶液(Sigma Aldrich)を入れた小さなテフロン(登録商標)容器(体積、〜5ml)に入れた。このチップは、1〜2時間、室温でそっと振って、インキュベートした。その後、チップをポリマ溶液から取り出して、〜1時間50〜70度の温度で乾燥させた。この処置は、通常、チップ表面に、厚く不均一なコーティング膜を残す。このように変形したチップを、標準プロトコルを用いて、ビーズの集成に使用した。集成プロセスにおける表面洗浄ステップは、過剰ビーズとともに過剰なポリマをほとんど除去した。ポリマコーティングの存在が、チップ表面に対するビーズの接着性を改善し、この処置の後溝内のビーズの保持が有意に改善された。
【0122】
実験9:生化学分析用マルチチップキャリアを形成するためのバイオチップのパッケージングおよびビーズ配列の追加、およびその製造方法
特定のバイオチップ用のパッケージングタイプはアプリケーションに依存して選択される。通常、一またはそれ以上のバイオチップを便宜上チップキャリアに固定する。キャリアは、ガラススライドのように単純なものでよいが、液体の操作、温度制御、信号の記録、その他の機能を有する複雑なカートリッジにすることもできる。バイオチップは、のりで永久的にキャリアに連結することができ、あるいは、磁石あるいは機械的な力などのさまざまな手段でリバーシブルに連結するようにしてもよい。
【0123】
実験9A:ガラススライドでできたマルチチップキャリア
キャリアとしてのスライドを作るには、丸い開口あるいはウエル(すなわち、テフロン(登録商標)で覆われていないガラス領域)を残してテフロン(登録商標)コーティングを行う。各ウエルは、直径6.5mmの円である。一またはそれ以上のチップをウエル内のガラス表面に接着させる。典型的なガラススライドは25×75mm、厚さ1mmで、2×5のウエルの配列を持つ。典型的なチップサイズは、1.75×1.75mmで、最大4つまでのチップが各ウエルのガラス表面に設けられている。同じウエル中の各チップは、キャリアに結合させる前に組み立てた識別可能なビーズ群を有していても良い。例えば、各チップが39の型のビーズ群を含む配列を有している場合、4つの識別チップを有するウエルは、トータルで4×39=156の型のビーズを有することになる。一方、より大きなチップ(例えば4.5×4.5mm平方)であれば、ウエル全体が単一チップで占められる。ここに記載されているウエルの大きさでは、各ウエルが40μlの液体(通常水溶液)を保持できる。典型的には20μlのサンプル溶液を、各ウエルに加えて生化学反応を行い、各チップはサンプル溶液で全体的にカバーされる。ウエルの外側を被覆するテフロン(登録商標)は疎水性であるため、水性サンプルがこぼれることはない。キャリアスライドのフォーマットは、所定のアプリケーションに合うように設計することができる。例えば、スライド上の8つのウエルの一の列を、8つのサンプルの分析に使用することができる。更に、4×8のウエルの配列は、32のサンプルを分析することができる。同様に、より多いウエル(例えば96、384、1536)を単一のスライド上に配置して、より多くのサンプルを分析するようにしても良い。
【0124】
実験9B:移動チップキャリア
移動チップキャリアのある実施例では、チップをガラス、ステンレススチール、プラスチック素材、半導体、セラミック素材などの基体に結合させる。キャリアユニット全体は移動可能であり、チップを、さまざまな反応媒体に暴露させる処理の間に反応チャンバ、洗浄チャンバ、信号読み取りステージなどに移送することができる(図14参照)。
【0125】
他の実施例では、移動チップキャリアは、そこでチップを結合させるチャンバを具えている。移動チップキャリア内にチップをハウジングすることによって、移動中の汚染を最小限にすることができる。ある実施例では、これらの移動チップキャリアのチャンバは、処理環境としても作用する。反応ガスあるいは、バイオ分析あるいはチップの洗浄など、さまざまな目的のための溶液、を移動チップキャリアに収容して、必要に応じて順次空にしてゆく。更に、移動チップキャリアは、チャンバ圧力、温度などの、チャンバの熱ダイナミック特性を変更する手段を有する。
【0126】
実験10:ランダムタイリングによる符号化チップ配列の集成
ビーズ上に表示されたプローブのランダム符号化配列の集成によって、多数のチップを製造することができる。各チップは、一またはそれ以上のランダム符号化ビーズ配列を含んでおり、独自に同定されたウエハから切り出される。図15(a,b,c,d)に示すように、チップのランダム符号化配列は、タイリングプロセス中に製造される。このプロセスは、整列を容易にし、内部結合位置を最大にして配列間の距離を小さくするために、適当なチップ形状を選択することによって、容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1a】図1aは、本発明の方法を示す図である。
【図1b】図1bは、本発明の方法を示す図である。
【図2】図2は、ビーズ配列を具えるチップの例を示す図である。このチップは、三層(L1、L2、L3)からなる。L1は、ビーズ(A1)を保持するためのマイクロ機械処理された配列を有するシリコン基体であり、L2はパターン処理されたSiO(厚さ100nm)層;L3はSi(厚さ5−10nm)層である。
【図3】図3は、ウエハ設計の一例を示す図である。
【図4】図4は、ビーズ配列を具えるチップの設計例を示す図である。基体はシリコン(Si)である。12−チップの星型パターンは、厚さ100nmのSiO層である。この星型内部の領域は、SiOで被覆されていないが、外側領域はSiOで被覆されている。中心には、密にパックされた六角溝の配列がある。この溝の総数は4012本である。
【図5】図5は、ビーズを固定するのに使用することができる表面構造の例を示す図である。H1は、まっすぐな側壁を有するシングルビーズを保持する孔である。H2は一のビーズを保持することができるピラミッド型の溝である。H3は一のビーズを規定する支柱群である。Hxは、複数のビーズを保持できる溝である。
【図6】図6は、配列構造の例を示す図である。A1及びA2は、矩形溝の配列である。A3は、六角溝の配列である。
【図7】図7は、チップのグループ分けの例を示す図である。
【図8】図8は、チップのパッケージング処理を示す図である。A、B、C、Dは、異なる機能を有するチップである。ウエハは、けがき線に従ってウエハを破断することによってチップに分けることができる。異なるウエアから分離された異なる機能群を有する個々のチップを一緒に位置させることができる。A4チップパッケージは、生化学的に適用するため、順次結合した4つの識別可能な機能化チップからなる。この4つのチップは、四角若しくはリニアフォーマットを含む、限定されない実施例にあるように、様々な方法で配置することができる。
【図9】図9は、列および行方向に自由チップを移動させることによってチップを集成する方法を示す図である。
【図10】図10は、各チップの角部にプローブ配列をセットしたチップ設計の一例を示す図である。図に示すように、このようなチップを4つ組み合わせることによって、より大きな配列を形成することができる。
【図11】図11は、本発明のビーズ配列を具えるチップの製造方法を示す図である。
【図12】図12は、シリコンウエハ上に形成したハイドロゲルの写真である。
【図13a】図13aは、ハイドロゲルの形成前で、ゲルピーリング後のチップ上のビーズ配列の蛍光画像を示す図である。ビーズの数とビーズの位置は同じである。
【図13b】図13bは、ハイドロゲル処理を行った場合と、ハイドロゲル処理を行わなかった場合のチップ上の反応結果を示す図である。
【図14】図14は、移動チップキャリアおよび反応チャンバとのその適用を示す図である。
【図15a】図15は、ランダム符号化配列の例を示す図である。
【図15b】図15bは、チップのライブラリを示す。
【図15c】図15cは、チップライブラリからのチップのランダム集成を示す。
【図15d】図15dは、配列のランダムタイリングを示す。
【図16】図16は、サイズが識別可能なビーズ群の同時集成あるいは順次集成用の配列設計を示す図である。
【図17】図17は、マルチチップキャリア設計を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオチップを製造する方法において、
ウエハ基体をパターン化して、複数のチップ領域を形成するステップと;
少なくとも一のビーズ配列を集成するステップであって、少なくとも一のチップ領域内のウエハ表面に、機能化され、符号化されたビーズを具えるステップと;
前記ウエハを切断して、複数の独立したバイオチップを形成するステップと;
を、具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記方法が、更に、線引きされたチップ領域にしたがって、前記ウエハ基体をけがきするステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記方法が、更に、前記チップ領域間の境界線に沿って前記パターン化したウエハに溝をカットするステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記カッティングが、液状化学物質で行われることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、前記カッティングが、ドライエッチングで行われることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記ビーズ配列が、切断前に除去可能な保護コーティング剤で保護されていることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載のバイオチップを製造する方法において、前記方法が更に、前記チップ領域中にビーズ封じ込め構造を作るステップを具え、当該ビーズ封じ込め構造が、ビーズの移動を制限する溝を具えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記溝をホトリソグラフィによって画定し、反応イオンエッチングで形成することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記各溝が、まっすぐな側壁と所定の深さを持つことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記溝が、凹角形状の側壁を具え、当該形状が、まっすぐな側壁を持つ溝を、順次、当該側壁に接着する材料層を付着させて、所望の凹角形状の側壁を形成するように変形することによって形成することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記材料が、二酸化シリコンであることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法が、更に、ビーズを光学的に撮像して、チップ領域に形成された溝が実質的にビーズで占められることを確実なものとするバイオチップの評価および制御ステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法によって製造したバイオチップをパッキングする方法において、当該方法が複数のウエハ基体から得たバイオチップを選択するステップと、これらのバイオチップを平面上で集成して、プールとしたバイオチップセットを形成するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって製造したバイオチップをパッキングする方法において、前記プールとしたバイオチップセットが分析装置を形成することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、前記バイオチップが、共通の基体上にある多数のウエハ基体から前記バイオチップをスライドさせることによって、集成エリア内で集成されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記バイオチップが、もともとのウエハ基体を同定するタグが付されていることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記バイオチップが、ランダムに組み立てられることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法において、多数のウエハ基体から得たバイオチップが、懸濁液中に存在し、前記懸濁液が平面基体上に付着されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項13に記載の方法において、多数のウエハ基体からバイオチップを取り出して、共通の平面に位置させることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法で製造したバイオチップをパッケージングする方法において、当該方法が少なくとも一のウエハ基体から少なくとも一のバイオチップを選択するステップと、当該少なくとも一のバイオチップを、キャリア基体上の液体封じ込め領域に位置させるステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記キャリア基体が、親水性主表面と、パターン化した疎水性層を具えることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記キャリア基体上の前記パターン化した疎水性層が液体封じ込め領域を画定することを特徴とする方法。
【請求項23】
前記方法によって製造した複数のバイオチップが、
複数のチップ領域を形成するウエハ基体をパターン化するステップと;
少なくとも一のチップ領域中のウエハ基体表面に機能化され、符号化したビーズを具える少なくとも一のビーズ配列を集成するステップと;
前記ウエハを切断して、前記複数の独立したバイオチップを形成するステップと;
を具えることを特徴とするバイオチップ。
【請求項24】
請求項23に記載の複数のバイオチップにおいて、前記ウエハ基体が、線引きされたチップ領域に応じてけがきする工程を具えることを特徴とするバイオチップ。
【請求項25】
請求項23に記載の複数のバイオチップにおいて、前記ウエハ基体が、前記チップ領域間の境界にそって前記パターン化したウエハに分ける溝を具えることを特徴とするバイオチップ。
【請求項26】
複数のウエハ基体から得たプールバイオチップであって、当該バイオチップが請求項1に記載の方法で製造されたものであることを特徴とするバイオチップ。
【請求項27】
移動チップキャリアと、液体保持用の機能デバイスを備える分析装置において、当該移動チップキャリアが、共通基体に結合した複数のバイオチップを具え、前記移動チップキャリアに取り付けたバイオチップが、分析中に前記機能デバイスによって保持されている液体を接触させる位置にあることを特徴とする方法。
【請求項28】
少なくとも一のバイオチップを具える少なくとも一のチャンバを具える移動チップキャリアにおいて、当該移動チップキャリアが、更に、
前記少なくとも一のチャンバの熱力学的特性を変更する手段を具えることを特徴とする方法。
【請求項29】
キャリア基体を結合させた複数のバイオチップを具える移動チップキャリアを、少なくとも一の検体を具える溶液に接触させるステップであって、前記溶液が液体を保持する機能デバイス内に保持されている、ステップと;
ターゲット検体が前記バイオチップと反応したかどうかを検出するステップと;
を具えることを特徴とする分析。
【請求項30】
請求項29に記載の分析において、前記移動チップキャリアを複数の機能デバイスに保持された異なる反応媒体に接触させるマルチ処理ステップを具えることを特徴とする分析。
【請求項31】
請求項29または30に記載の方法において、前記機能デバイスが、反応チャンバ、洗浄チャンバ、または信号読み取りステージからなる群から選択されたものであることを特徴とする方法。
【請求項32】
バイオチップ上の前記ビーズ配列を保護するための除去可能なコーティングを具えるビーズ配列において、前記ビーズ配列が、分子プローブが付着した表面に機能化され、符号化された複数のビーズを具え、前記コーティングが、ビーズ表面の分子プローブに対して非活性である特性を備えることを特徴とするビーズ配列。
【請求項33】
パターン化したウエハ基体表面にビーズを蒸着させてビーズ配列を形成するプロセスにおいて、前記ウエハ基体の表面がパターン化された層を具え、当該パターン化された層がビーズ封じ込め表面構造を伴う領域を有し、前記プロセスが、ビーズ懸濁液アリコートを前記ウエハ基体上に位置させるステップと、当該ビーズ懸濁液を機械的に攪拌してビーズをビーズ封じ込め表面構造を有する前記領域に沈降させて、前記ビーズ配列を形成するステップとを具えることを特徴とするプロセス。
【請求項34】
請求項33に記載のプロセスにおいて、前記ビーズ懸濁液を機械的に攪拌するステップが、湿った綿アプリケータで前記懸濁液を攪拌して、前記ビーズ封じ込め領域中のビーズの占有を増加させるステップを具えることを特徴とするプロセス。
【請求項35】
少なくとも一のチップ領域を具える半導体ウエハ基体において、前記チップ領域が:
ビーズの動きを前記基体上に封じ込める溝配列と;
前記基体がビーズ溶液に接触するときに電解質絶縁体半導体構造のインピーダンスを変更する光学的にパターン化された絶縁誘電層であって、前記パターン化された誘電層が、交流電界が前記ビーズに印加されたときに、前記ビーズ溶液が前記溝配列にたまるようにドライブされるように位置づけられている絶縁誘電層と;
前記基体表面を被覆する光学的保護パッシベーション層と;
を具えることを特徴とする半導体ウエハ基体。
【請求項36】
請求項35に記載の半導体ウエハ基体が、更に、複数のチップ領域を具えることを特徴とする半導体ウエハ基体。
【請求項37】
請求項35に記載の半導体ウエハ基体において、前記パターン化された絶縁誘電層が、周辺星型の領域を画定することを特徴とする半導体ウエハ基体。
【請求項38】
請求項37に記載の半導体ウエハ基体において、前記溝配列が、三角形、五角形、六角形、円からなる群から選択された形状を有する溝を具えることを特徴とする半導体ウエハ基体。
【請求項39】
ビーズでできた配列を集成する方法において、前記方法が:
請求項35に記載の半導体ウエハ基体であって、前記パターン化された誘電層が誘電体を伴う、あるいは、伴わない前記基体上で領域を画定し、前記溝配列が誘電体を伴わない領域中に位置している、半導体ウエハ基体を提供するステップと;
前記パターン化された誘電層を具える基体表面にビーズ溶液を加えるステップと;
LEAPSを用いてビーズ配列を集成するステップであって、第1の周波数の電界を、ビーズを前記誘電体を伴う領域へ移動させるように、第2の周波数の電界を、ビーズを前記溝配列へ配置するように印加するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項40】
前記ウエハ基体をパターニングし、光学的にけがくことによって画定した複数のチップ領域を具え、前記チップ領域が少なくとも一のビーズ保持領域を具え、前記スクライビングが、前記チップ領域を分割可能として一またはそれ以上のチップ領域を具えるバイオチップを形成することを特徴とするウエハ基体。
【請求項41】
請求項40に記載のウエハ基体が、さらに、前記基体の少なくとも一のチップ領域の表面に固定された少なくとも一のビーズサブ母集団を具え、前記ビーズサブ母集団が、プローブライブラリから選択され、複数のビーズに固定された少なくとも一のバイオ機能化分子を形成していることを特徴とするウエハ基体。
【請求項42】
請求項41に記載の少なくとも一のビーズ基体を破断して前記チップ領域に分割して前記複数のバイオチップを形成することによって、前記バイオチップを製造することを特徴とする複数のバイオチップ。
【請求項43】
請求項42に記載の複数のバイオチップにおいて、前記バイオチップが異なるビーズサブ母集団を具える2またはそれ以上のウエハ基体を破断して得ることを特徴とするバイオチップ。
【請求項44】
半導体ウエハ基体の表面の所定位置に荷電ビーズ母集団を保持する方法が、前記半導体ウエハ基体表面に第1の荷電ポリマを蒸着し、前記第1の荷電ポリマが荷電ビーズと反対の電荷を有するステップと;前記半導体ウエハ基体の表面に前記ビーズを蒸着するステップと、半導体ウエハ基体の表面に第2の荷電ポリマを蒸着し、当該第2の荷電ポリマが、前記第1の荷電ポリマと反対の電荷を有するステップと;
を具えることを特徴とする方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図15c】
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【図15d】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−175163(P2009−175163A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118683(P2009−118683)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【分割の表示】特願2003−558459(P2003−558459)の分割
【原出願日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【出願人】(503369358)バイオアレイ ソリューションズ リミテッド (14)
【Fターム(参考)】