説明

マイクロRNAによるオンコジーンの調節

【課題】ヒトのオンコジーンを調節する天然に存在するmiRNAおよびその使用方法の提供。
【解決手段】本明細書中に記載される方法および組成物に使用するのに適切な核酸としては、プリmiRNA、プレmiRNA、成熟miRNA、成熟miRNAの生物学的活性を保持するフラグメントまたはそれらの改変体および、プリmiRNA、プレmiRNA、成熟miRNA、それらのフラグメントもしくは改変体をコードするDNA、またはmiRNAの調節エレメントが挙げられるが、これらに限定されない。核酸を含む組成物は、癌の少なくとも1つの症状もしくは発現の処置または予防を必要とする患者に投与される。1つの実施形態において、その組成物は、1種以上のオンコジーンの遺伝子発現を阻害するのに有効な量で投与される。癌の少なくとも1つの症状もしくは発現の処置または予防のための方法もまた、記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、Frank J.Slack、Steven M.Johnson、Kristy L.Reinert、およびHelge Grosshansによる発明の名称「Regulation of Oncogenes by MicroRNAs」である米国特許出願第60/606,855号(2004年9月4日出願)に基づく優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府研究開発活動に関する記載)
連邦政府は、National Institute of HealthからFrank J.Slackに対する助成金番号1R01GM062594−01A1および助成金番号1R01GM064701−01の効力により、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
癌は、異常細胞の制御されていない増殖および拡散によって特徴付けられる疾患の群である。癌は、外部要因(タバコ、化学物質、放射線、および感染生物体)および内部要因(遺伝的変異、ホルモン、免疫の状態、およびDNAの損傷)の両方によって引き起こされる。これらの因子は、同時か、または連続的に作用して、発癌をイニシエート(initiate)し、そして/または促進する。癌は、米国において、4人に1人の死因であり、そして85歳未満の人々の死の主な原因である。米国において、全男性の約半分および全女性の少なくとも3分の1が、その人生の間に癌を発症する。現在、数百万人の人々が、癌と共に生きているか、または癌を有している。より早期に癌が発見され、そして処置が開始されるほど、長い年数を生きる可能性が高くなる。
【0004】
肺癌は、米国において、男性および女性おいて、癌による死の主な原因である。American Cancer Societyによると、各年の新規に約170,000の事例が診断され、約160,000人の人々が、毎年この疾患によって死亡する。外科手術、化学療法、および放射線の使用にもかかわらず、患者の生存率は、非常に低いままである(5年間で15%未満)。American Cancer Societyによって推定されるように、全ての癌についての5年間生存率は、1995年〜2000年の間に診断された癌について、約64%である。しかし、生存率は、癌の型および検出時の癌の段階に依存して変化する。例えば、脳の癌、乳癌、および結腸癌についての生存率は、1995年〜2000年の間に診断された癌に関して、それぞれ、33%、88%、および63%である。従って、外科手術、放射線、化学療法、免疫療法、およびホルモン療法を含む処置という標準的な方法の他の処置が、必要とされる。
【0005】
細胞運命決定を制御する遺伝子の間違った制御(misregulation)は、癌に寄与する。このような変化した遺伝子は、オンコジーンとして公知である。オンコジーンは、それらが正常(すなわち、変異していない)である場合、プロトオンコジーンと称される。プロトオンコジーンは、細胞の通常の増殖制御経路の成分をコードする。これらの成分のいくつかは、増殖因子、レセプター、シグナル伝達酵素、および転写因子である。
【0006】
Rasは、1つのこのようなオンコジーンである。哺乳動物のras遺伝子は、密接に関連する低分子タンパク質(H−ras、K−rasおよびN−ras)をコードする。Rasは、正常細胞中に見出され、ここでRasは、スイッチとして機能することによってシグナルの中継を補助する。細胞表面上のレセプターが、(例えば、ホルモンによって)刺激される場合、Rasは、細胞に増殖を呼びかけるシグナルにスイッチをいれ、そしてそのシグナルを伝達する。上記細胞表面レセプターが、刺激されない場合、Rasは、活性化されず、その結果、細胞増殖を生じる経路は、イニシエートされない。ヒトの癌の約30%において、Rasは、それが持続的にスイッチがはいった状態であるように変異され、細胞表面上のレセプターが活性化されるか否かにかかわらず、細胞に増殖を呼びかける。ras遺伝子変異の高い発生率は、全ての肺癌および腺癌(それぞれ、10%および25%(K−ras))、膵臓の悪性腫瘍(80〜90%(K−ras))、結腸直腸癌(30−60%(K−ras))、非メラノーマ性皮膚癌(30〜50%、H−ras)、骨髄を起源とする造血器の新形成(18〜30%(K−rasおよびN−ras))、およびセミノーマ(25〜40%(K−ras))において見出される。他の腫瘍において、変異ras遺伝子は、より低い頻度で見出される(例えば、乳癌(0〜12%(K−ras))、グリア芽細胞腫および神経芽細胞腫(0〜10%(K−rasおよびN−ras))において)。
【0007】
他のオンコジーンは、広範に研究されているMYCファミリー(c−MYC、N−MYC、およびL−MYC)のメンバーを含み、そしてmyc遺伝子の増殖は、肺(c−MYC、N−MYC、L−MYC)、結腸(c−MYC)、乳房(c−MYC)、および神経芽細胞腫(N−MYC)を含む種々の腫瘍の型において見出される。アポトーシスを阻害する遺伝子はまた、オンコジーンとして同定されている。これらの遺伝子の原型は、BCL−2である。本来、濾胞性リンパ腫中の染色体の分岐点として同定され、このタンパク質は、細胞増殖を促進するよりもむしろ細胞死を阻害することが見出された。BCL−2は、細胞内タンパク質のファミリーに属し、その役割は、DNAの分断および細胞死をもたらすカスパーゼの活性化を調節することである。メラノーマにおいて、BCL−2は、原発性の病変および転移性の病変において過剰発現されることが報告されており、そしてこの表現型は、腫瘍の進行に関連する。
【0008】
マイクロRNA(「miRNA」といわれる)は、非翻訳の低分子RNAであり、マイクロRNAは、標的メッセンジャーRNA(mRNA)転写物上の相補部位に結合することによって遺伝子発現を制御することが植物および動物において見出される、調節性分子のクラスに属する。miRNAは、核において約70ヌクレオチドのプレmiRNAにプロセスされる大きいRNA前駆体(プリmiRNAと称される)から産生され、miRNAは、不完全なステム−ループ構造(非特許文献1)(図1)にフォールディングされる。プレmiRNAは、18ヌクレオチド長〜25ヌクレオチド長の成熟miRNAがRNase III酵素(Dicer)によってプレmiRNAヘアピンの一方から切り出される細胞質内で、さらなるプロセシング工程を受ける(非特許文献2および非特許文献3)。miRNAは、2つの方法で遺伝子発現を調節することが示されている。第1に、そのmiRNAに厳密に相補的であるタンパク質をコードするmRNA配列に結合するmiRNAは、RNA媒介性の干渉(RNAi)経路を誘導する。メッセンジャーRNA標的は、RISC複合体においてリボヌクレアーゼによって切断される。miRNA媒介性の遺伝子サイレンシングのこの機構は、主に植物において観察されている(非特許文献4および非特許文献5)が、動物からの例も知られている(非特許文献6)。第2の機構において、メッセンジャーRNA転写物上の不完全な相補部位に結合するmiRNAは、転写後のレベルにおける遺伝子制御を指揮するが、そのmRNA標的を切断しない。植物および動物の両方において同定されたmiRNAはこの機構を使用して、それらの遺伝子標的の翻訳の制御を発揮する(非特許文献7)。
【0009】
数百種のmiRNAが、ハエ、虫、植物および哺乳動物のゲノムにおいて同定されている。miRNAの大部分について生物学的役割は、これらのほぼ全てが、クローニングおよび生命情報学のアプローチによって見出されたので、不明なままである(非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;および非特許文献15)。
【0010】
これらの特徴付けされていないmiRNAは、発生の間に、重要な遺伝子制御因子として機能して、適切な器官の形成、胚のパターン化(patterning)、および身体の成長を調整するようである(しかし、このことは、証明する必要がある)。ゼブラフィッシュにおいて、ほとんどのmiRNAは、器官形成が進んでから発現される(非特許文献16および非特許文献17)。
【0011】
数種のmiRNAについての生物学的役割が、解明されてきた。これらの研究は、種々の発生および代謝のプロセスにおけるこれらの調節性分子の重要性を強調する。例えば、ショウジョウバエのmiRNA(bantam)は、組織の異常な増殖を引き起こす因子についての、機能獲得型遺伝子のスクリーニングにおいて同定された(非特許文献18)。bantamは、細胞増殖を刺激すること、およびアポトーシスを阻害することの両方によってハエの組織の増殖を誘導することが見出された(非特許文献18)。bantamについての増殖標的は、同定されていないが、アポトーシス促進遺伝子(pro−apoptotic gene)(hid)は、その3’UTR中に複数のbantam相補部位を有することが示された。hidの遺伝子発現は、上記bantam miRNAによって抑制されるので、これは、hidの機能を遮断することによるアポトーシスの制御におけるbantamについての役割に関連する。別のショウジョウバエmiRNA(mir−14)は、ハエの眼においてReaper誘導性のアポトーシスを改変する因子についての遺伝子スクリーニングにおいて同定された(非特許文献19)。mir−14は、アポトーシスの強力なサプレッサーであることが示された。さらに、mir−14はまた、ショウジョウバエのストレス応答、および脂肪代謝の調節に関与するようである。miRNAはまた、ショウジョウバエにおけるNotch経路遺伝子を調節する(非特許文献20)。哺乳動物のmiRNA(mir−181)は、ヒトB細胞の分化を指揮することが示され(非特許文献21)、mir−373は、インスリン分泌を調節し(非特許文献22)、一方、他のmiRNAは、ウイルス感染を調節する(非特許文献23および非特許文献24)。
【0012】
C.elegans、ショウジョウバエおよびヒトの細胞におけるRNAiの機構を理解するための研究は、miRNAおよびRNAiの経路が交差し得ることを示した(非特許文献25および非特許文献26)。miRNAは、RNAiエフェクター複合体(RISC)の成分と一緒に同時精製され、このことは、miRNAとsiRNAとの間の関連がRNAiに関係していることを示唆する(非特許文献27;非特許文献28;および非特許文献29)。いくつかのタンパク質因子がmiRNAリボ核タンパク質(miRNP)およびRISCの両方に関与し、そして他のものは、そのmiRNPに固有であり得るという指摘もまた存在する(非特許文献30および非特許文献31)。例えば、アルゴノート/PAZ/PIWIファミリーのタンパク質は、RISCおよびmiRNPの両方の成分である。これらのタンパク質をコードする遺伝子が癌に関連するという証拠も増えつつある。hAgo3、hAgo1、およびhAgo4は、しばしばウィルムス腫瘍において喪失する領域1p34〜1p35に存在し、そしてHiwiは、精巣の胚細胞腫瘍の発症に関連している、染色体12q24.33上に位置する(非特許文献31)。さらに、miRNAおよびsiRNAをプロセシングする酵素であるDICERは、肺癌において十分に発現されない(非特許文献32)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Lee,Y.ら、Nature、2003年、第425巻、第6956号、p.415−9
【非特許文献2】Hutvagner,G.ら、Science、2001年、第12巻、p.12
【非特許文献3】Grishok,A.ら、Cell、2001年、第106巻、第1号、p.23−34
【非特許文献4】Hamilton,AJ.およびD.C.Baulcombe、Science、1999年、第286巻、第5441号、p.950−2
【非特許文献5】Reinhart,BJ.ら、「MicroRNAs in plants」、Genes and Dev、2002年、第16巻、p.1616−1626
【非特許文献6】Yekta,S.、I.H.Shih、およびD.P.Bartel、Science、2004年、第304巻、第5670号、p.594−6
【非特許文献7】Bartel,D.P.、Cell、2004年、第116巻、第2号、p.281−97
【非特許文献8】Lagos−Quintana,M.ら、Curr Biol、2002年、第12巻、第9号、p.735−9
【非特許文献9】Lagos−Quintana,M.ら、RNA、2003年、第9巻、第2号、p.175−179
【非特許文献10】Lagos−Quintana,M.ら、Science、2001年、第294号、第5543号、p.853−8
【非特許文献11】Lee,R.C.およびV.Ambros、Science、2001年、第294巻、第5543号、p.862−4
【非特許文献12】Lau,N.C.ら、Science、2001年、第294巻、第5543号、p.858−62
【非特許文献13】Lim,L.P.ら、Genes Dev、2003年、第17巻、第8号、p.991−1008
【非特許文献14】Johnston,RJ.およびO.Hobert、Nature、2003年、第426巻、第6968号、p.845−9
【非特許文献15】Chang,S.ら、Nature、2004年、第430巻、第7001号、p.785−9
【非特許文献16】Chen,P.Y.ら、Genes Dev、2005年、第19巻、第11号、p.1288−93
【非特許文献17】Wienholds,E.ら、Science、2005年
【非特許文献18】Brennecke,J.ら、Cell、2003年、第113巻、第1号、p.25−36
【非特許文献19】Xu,P.ら、Curr Biol、2003年、第13巻、第9号、p.790−5
【非特許文献20】Laiら、Genes Dev、2005年、第19巻、第9号、p.1067−80
【非特許文献21】Chen,C.Z.ら、Science、2004年、第303巻、第5654号、p.83−6
【非特許文献22】Poy,M.N.ら、Nature、2004年、第432巻、第7014号、p.226−30
【非特許文献23】Lecellier,C.H.ら、Science、2005年、第308巻、第5721号、p.557−60
【非特許文献24】Sullivan,C.S.ら、Nature、2005年、第435巻、第7042号、p.682−6
【非特許文献25】Grishok,A.ら、Cell、2001年、第106巻、第1号、p.23−34
【非特許文献26】Hutvagner,G.ら、Science、2001年、第293巻、第5531号、p.834−8
【非特許文献27】Mourelatos,Z.ら、Genes Dev、2002年、第16巻、第6号、p.720−8
【非特許文献28】Hutvagner,G.およびP.D.Zamore、Science、2002年、第297巻、第5589号、p.2056−60
【非特許文献29】Caudy,A.A.ら、Nature、2003年、第425巻、第6956号、p.411−4
【非特許文献30】Grishok,A.ら、Cell、2001年、第106巻、第1号、p.23−34
【非特許文献31】Carmell,M.A.ら、Genes Dev、2002年、第16巻、第21号、p.2733−42
【非特許文献32】Karube,Y.ら、Cancer Sci、2005年、第96巻、第2号、p.111−5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、1種以上のオンコジーンの発現を阻害するために、天然に存在するmiRNAを提供することが、本発明の目的である。
【0015】
さらに、癌の1つ以上の症状の処置または予防のために、天然に存在する核酸を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
細胞の分化および発達を制御する遺伝子は、ヒトの癌において頻繁に変異される。これらとしては、RAS、c−mycおよびbcl−2のようなオンコジーンが挙げられるが、これらに限定されない。天然に存在するマイクロRNA(特に、let−7)は、ヒトにおいてこれらのオンコジーンをダウンレギュレートすることが見出されている。let−7遺伝子のいくつかは、特定の癌において欠失される染色体領域に位置する。従って、これらの特定のマイクロRNAをアップレギュレートすること、または類似の薬学的化合物を外因的に提供することは、これらのオンコジーンの活性化または過剰発現によって生じる腫瘍に対する、有効な癌療法であるはずである。プリmiRNA、プレmiRNA、成熟miRNA、成熟miRNAの生物学的活性を保持するフラグメントまたはそれらの改変体および、プリmiRNA、プレmiRNA、成熟miRNA、それらのフラグメントもしくは改変体をコードするDNA、またはmiRNAの調節エレメントを含むmiRNAの核酸(特に明記しない限り、まとめて「miRNA」と称される)、が、記載される。1つの実施形態において、上記miRNAの大きさの範囲は、21ヌクレオチド〜170ヌクレオチドであり得るが、2000ヌクレオチドまでのmiRNAが、利用され得る。好ましい実施形態において、上記miRNAの大きさの範囲は、70ヌクレオチド長〜170ヌクレオチド長である。別の好ましい実施形態において、21ヌクレオチド長〜25ヌクレオチド長の成熟miRNAが、使用され得る。
【0017】
これらのmiRNAは、診断薬および治療薬として有用である。これらの組成物は、癌の少なくとも1つの症状もしくは発現(疾患が、症状の非存在下で発生/進行し得ることに起因する)の処置または予防を必要とする患者に投与される。オンコジーンの異常な発現は、癌(例えば、肺癌)の特徴である。1つの実施形態において、これらの組成物は、1種以上のオンコジーンの発現を阻害するのに有効な量で投与される。より好ましい実施形態において、これらの組成物は、RAS、MYC、および/またはBCL−2の発現を阻害するのに有効な量で投与される。有効で、安全な投薬量は、モデル生物体およびヒトの試行において、当業者に周知である方法によって実験的に決定され得る。これらの組成物は、単独か、または補助の癌療法(例えば、外科手術、化学療法、放射線療法、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法、およびレーザー療法)と組み合わせて投与されて、例えば、腫瘍の大きさを減少させるか、腫瘍の細胞増殖を減少させるか、新脈管形成を阻害するか、転移を阻害するか、あるいは他の方法で疾患の少なくとも1つの症状または発現を改善する有益な効果を提供し得る。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
一種以上のオンコジーンの発現を阻害するための方法であって、以下:
miRNAを提供する工程、または該miRNAの発現を増加させる工程を包含し、該miRNAは、生物体の細胞中のオンコジーンに結合し、そして該オンコジーンの発現を示す、
工程を包含する、方法。
(項目2)
上記miRNAは、プリmiRNA、プレmiRNA、成熟miRNA、およびそれらのフラグメントまたはそれらの改変体からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記miRNAは、核酸によってコードされる、項目2に記載の方法。
(項目4)
上記核酸は、ベクター上に配置される、項目3に記載の方法。
(項目5)
上記ベクターは、プラスミド、コスミド、ファージミド、ウイルス、およびウイルスの供給源または細菌の供給源に由来する他のビヒクルからなる群により選択される、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記ベクターは、1つ以上のインビボ発現エレメントをさらに含む、項目4に記載の方法。
(項目7)
前記インビボ発現エレメントは、プロモーター、エンハンサー、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記miRNAは、21ヌクレオチド長〜170ヌクレオチド長である、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記miRNAは、21ヌクレオチド長〜25ヌクレオチド長である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記miRNAは、癌の処置もしくは予防のために患者に投与されるか、または該miRNAは、癌の処置もしくは予防のために発現が、該患者の細胞において増加される、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記癌は、肺癌、膵臓癌、皮膚癌、血液学的新生物、乳癌、脳の癌、結腸癌、濾胞性リンパ腫、膀胱癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部および頚部の癌、多発性骨髄腫、肝臓癌、リンパ腫、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、および甲状腺癌からなる群より選択される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記オンコジーンは、NRAS、KRAS、HRAS、MYC、MYCL1、MYCN、BCL2、BCL2L1、BCL2L2、TERT、VEGF、EGF、EGFR、ERBB3、GRB2、RAF1、ARAF、MAP2K2、MAPK1、MAPK3、MET、KIT、TP73L(AIX)、CCND1、CDK4、MDM2、FES、FURTN、INSL3、CSFIR、MYBL2、MYB、PIK3CD、PIK3C2B、PIK3CG、PIK3R5、AKT1、HLIN−41、VDR、PXR、FOXA1、FOXA2、ASH1L、ARID1B、GR、GLI2、14−3−3ζ、MO25、SMG1、FRAP1、PER2およびAKT3からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目13)
上記miRNAは、eor−1、had−1、let−60、lin−3、lin−9、lin−11、lin−36、lin−39、lin−45、mpk−1、およびsem−5からなる群より選択されるオンコジーン上の部位に結合する、項目12に記載の方法。
(項目14)
上記患者は、外科手術、化学療法、放射線療法、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法、およびレーザー療法からなる群より選択される1つ以上の癌療法を受容する、項目10に記載の方法。
(項目15)
上記生物体は、ヒトである、項目1に記載の方法。
(項目16)
miRNAに対する癌の感受性を決定するための方法であって、該方法は、miRNAを提供する工程、または該miRNAの発現を増加させる工程であって、該miRNAは、該癌性細胞もしくは形質転換細胞または癌性細胞もしくは形質転換細胞を有する生物体中のオンコジーンに結合する工程、および該オンコジーンの発現が阻害される場合に、癌性細胞もしくは形質転換細胞の増殖または生存が阻害されるか否かを決定する工程を包含する、方法。
(項目17)
1種以上のオンコジーンの発現を阻害するための治療的組成物であって、該組成物は、生物体中の形質転換細胞または癌性細胞におけるオンコジーンの発現に結合し、そして該オンコジーンの発現を示すmiRNAの有効な量、および薬学的に受容可能なキャリアを含有する、組成物。
(項目18)
上記miRNAは、プリmiRNA、プレmiRNA、成熟miRNA、およびそれらのフラグメントまたはそれらの改変体からなる群より選択される、項目17に記載の組成物。
(項目19)
上記miRNAは、プラスミド、コスミド、ファージミド、ウイルス、および他のウイルスの供給源または細菌の供給源からなる群より選択されるベクター上に配置される核酸によってコードされ、該核酸は、プロモーター、エンハンサー、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される一種以上のインビボ発現エレメントを含む、項目17に記載の組成物。
(項目20)
前記miRNAは、21ヌクレオチド長〜170ヌクレオチド長である、項目17に記載の組成物。
(項目21)
前記miRNAは、21ヌクレオチド長〜25ヌクレオチド長である、項目20に記載の組成物。
(項目22)
前記癌は、肺癌、膵臓癌、皮膚癌、血液学的新生物、乳癌、脳の癌、結腸癌、濾胞性リンパ腫、膀胱癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭部および頚部の癌、多発性骨髄腫、肝臓癌、リンパ腫、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、および甲状腺癌からなる群より選択される、項目17に記載の組成物。
(項目23)
上記オンコジーンは、NRAS、KRAS、HRAS、MYC、MYCL1、MYCN、BCL2、BCL2L1、BCL2L2、TERT、VEGF、EGF、EGFR、ERBB3、GRB2、RAF1、ARAF、MAP2K2、MAPK1、MAPK3、MET、KIT、TP73L(AIX)、CCND1、CDK4、MDM2、FES、FURTN、INSL3、CSFIR、MYBL2、MYB、PIK3CD、PIK3C2B、PIK3CG、PIK3R5、AKT1、HLIN−41、VDR、PXR、FOXA1、FOXA2、ASH1L、ARID1B、GR、GLI2、14−3−3ζ、MO25、SMG1、FRAP1、PER2およびAKT3からなる群より選択される、項目17に記載の組成物。
(項目24)
上記miRNAは、eor−1、had−1、let−60、lin−3、lin−9、lin−11、lin−36、lin−39、lin−45、mpk−1、およびsem−5からなる群より選択されるオンコジーン上の部位に結合する、項目23に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、種々の生物体由来のlet−7 プレmiRNAの予想される二次構造を示す。網掛けされた残基は、Dicerによって切り出される成熟miRNA転写物を示す。
【図2】図2は、C.elegansのmiRNA(let−7)と、その標的mRNA(lin−41)との間の可能なRNA/RNA二重鎖の模式図である。let−7 miRNAについての機能喪失型変異の部分(let−7(n2853))は、その二重鎖の下方の矢印によって示される。
【図3】図3は、ヒトおよびマウスを含む多様な種に由来するlet−7ホモログを示す。lin−4の2種のヒトホモログ、mir−125aおよびmir−125bが存在する。mir−237は、C.elegansのlin−4ホモログである。
【図4−1】図4A〜図4Dは、C.elegansのlet−60/RAS遺伝子および哺乳動物のRAS遺伝子中の可能性のあるLCSを示す。図4A:C.elegansのlet−60/RAS mRNA 3’UTR、黒い矢印は、C elegansとC.briggsaeとの間の類似性を有する部位を示し、そして白い矢印は、非類似部位を示す。LCS(一番上)およびmiR−84(一番下)によって形成される予想される二重鎖は、下に示され、let−7およびmiR−84は、類似するので、大部分のlet−7部位がまた、可能性のあるmiR−84部位である。図4B、図4C、および図4Dは、H.s.NRAS 3’UTR、KRAS 3’UTRおよびHRAS mRNA 3’UTRsが、それぞれ、9個、8個および3個の可能なLCSを有することを示す。黒い矢印は、哺乳動物種の間(ほとんどの場合において、ヒト、ラット、マウス、ハムスターおよびモルモット)で保存される部位を示す。LCS(一番上)およびlet−7a miRNA(一番下)によって形成される仮定された二重鎖は、下に示される。
【図4−2】図4A〜図4Dは、C.elegansのlet−60/RAS遺伝子および哺乳動物のRAS遺伝子中の可能性のあるLCSを示す。図4A:C.elegansのlet−60/RAS mRNA 3’UTR、黒い矢印は、C elegansとC.briggsaeとの間の類似性を有する部位を示し、そして白い矢印は、非類似部位を示す。LCS(一番上)およびmiR−84(一番下)によって形成される予想される二重鎖は、下に示され、let−7およびmiR−84は、類似するので、大部分のlet−7部位がまた、可能性のあるmiR−84部位である。図4B、図4C、および図4Dは、H.s.NRAS 3’UTR、KRAS 3’UTRおよびHRAS mRNA 3’UTRsが、それぞれ、9個、8個および3個の可能なLCSを有することを示す。黒い矢印は、哺乳動物種の間(ほとんどの場合において、ヒト、ラット、マウス、ハムスターおよびモルモット)で保存される部位を示す。LCS(一番上)およびlet−7a miRNA(一番下)によって形成される仮定された二重鎖は、下に示される。
【図5】図5Aは、20℃にて成長させた5つの独立した野生型トランスジェニック系から得た発現パターンの定量的分析のグラフである。少なくとも25%の抑制が、全ての株において観察された。LCS(pFS 1031)を欠く非調節のlin−41 3’UTR(二つ組で試験された)は、コントロールとして示される。図5Bは、レポーター遺伝子発現のダウンレギュレーションが許容温度(15℃)にて成長させたlet−7(n2853)変異体の虫において喪失することを示すグラフである。その親(N2)の系は、三つ組で試験された;4つの同遺伝子系のlet−7(n2853)変異体系が、試験された。エラーバーは、標準偏差を表す。
【図6−1】図6A〜図6Cは、発現データの定量化のグラフである。gfp54は、lin−31プロモーターによって駆動される、gfpのunc−54 3’UTRへの融合体である。エラーバーは、標準偏差を表す。
【図6−2】図6A〜図6Cは、発現データの定量化のグラフである。gfp54は、lin−31プロモーターによって駆動される、gfpのunc−54 3’UTRへの融合体である。エラーバーは、標準偏差を表す。
【図7】図7Aおよび図7Bは、let−7の存在が、ヒト細胞においてRASの発現に影響することを示すグラフ。HEPG2細胞は、10nMおよび30nMのlet−7またはネガティブコントロールの前駆体miRNAによってトランスフェクトされた。NRAS、VRAS、およびKRASに特異的な抗体を使用した免疫蛍光は、let−7のトランスフェクト細胞がRASタンパク質のずっと低いレベルを有することを示した。図7Aは、トランスフェクト体の複製物から得たRAS抗体の蛍光の定量化のグラフである。あるいは、HeLa細胞は、100nMのlet−7インヒビターまたは100nMのネガティブコントロールインヒビターによってトランスフェクトされた。RASの免疫蛍光は、let−7インヒビターによってトランスフェクトされた細胞が、ネガティブコントロールのトランスフェクト細胞と比較して、RASタンパク質の増加したレベルを有することを示した。図7Bは、トランスフェクト体の複製物から得たRAS抗体の蛍光の定量化のグラフである。
【図8】図8A〜図8Cは、KRASおよびKRASの3’UTRが、let−7の調節を可能にすることを示す。図8Aは、短いNRAS(NRAS S)3’UTR、長いNRAS(NRAS L)3’UTRおよびKRAS 3’UTRを示す模式図である。矢印は、LCSを示す。黒塗りの領域は、レポーターの後方にクローニングされた配列を示す。図8Bは、トランスフェクションのコントロール(ウミシイタケルシフェラーゼ)に対して正規化された、ホタルルシフェラーゼ発現の相対的抑制のグラフである。pGL3−Contは、空ベクターである。図8Cは、KRASおよびNRASに対応する3’UTRドメインを有するレポータープラスミドがlet−7のインヒビターによって同時トランスフェクトされる場合に、コントロールインヒビターと比較した、ホタルルシフェラーゼ発現の誘導のグラフである。
【図9】図9Aは、付随する隣接正常組織(NAT)と比較した、21種の乳房、結腸、および肺の腫瘍におけるlet−7の発現のグラフである。蛍光標識したmiRNAは、let−7aおよびlet−7cに特異的なプローブを含んだマイクロアレイにハイブリダイズされた。腫瘍およびNATについての蛍光強度は、全てのエレメントについての合計の蛍光シグナルによって正規化された。腫瘍サンプルおよび隣接正常サンプルにおけるlet−7プローブからの相対的な平均シグナルを、対数比として表す。図9Bは、3つの肺の有棘細胞癌由来の腫瘍組織サンプルおよび隣接組織サンプルにおける、RASタンパク質とlet−7c発現との間の相関関係のグラフである。GAPDHタンパク質およびRASタンパク質は、ウェスタン分析を使用して、腫瘍組織および隣接正常組織の粗抽出物から測定された。上記2つのタンパク質は、検出のために使用される抗体を混合することによって同時に評価された。小さいRNAのノーザンブロットは、let−7cおよびU6 snRNAに特異的な放射標識プローブを用いて連続的にアッセイされた。in the腫瘍組織サンプルおよび隣接組織サンプル中のNRAS mRNAは、リアルタイムPCRによって測定された。リアルタイムデータは、種々のサンプルにおける18S rRNAのリアルタイムPCR検出に基づいて正規化された。隣接正常組織におけるNRASの相対的な発現は、100%として採用され、そして腫瘍サンプル中のNRASのCt値は、腫瘍サンプルにおけるNRASの相対的な発現を割り当てるために使用された。
【図10】図10Aは、C.elegansにおけるlet−7ファミリーのmiRNAの配列比較である。図10Bは、let−7ファミリーメンバーのデンドログラムである。
【図11】図11は、C.elegansのmRNAにおけるlet−60/RAS中の可能であるLCSを示す。
【図12−1】図12は、C.elegansのlet−60/RAS mRNA(一番上)およびC.briggsaeのlet−60/RAS mRNA(一番下)の配列アライメントである(コンセンサス配列は、中段に示される)。LCSは、黒枠として示される。
【図12−2】図12は、C.elegansのlet−60/RAS mRNA(一番上)およびC.briggsaeのlet−60/RAS mRNA(一番下)の配列アライメントである(コンセンサス配列は、中段に示される)。LCSは、黒枠として示される。
【図13−1】図13A〜図13Cは、Let−60が、ヒトHRASタンパク質、ヒトKRASタンパク質、およびヒトNRASタンパク質の、オルソログであることを示す。図13Aは、C.elegansのLET−60と、ヒトおよびC.elegans由来の他のRASタンパク質ならびにRAS関連タンパク質との配列アライメントである。図13Bは、他のRAS関連タンパク質に対するLET−60の相関関係を示すデンドログラムである。図13Cは、let−60(gf)対立遺伝子の部分的な抑制の定量化を示すグラフである。o84−Xは、mir−84を過剰発現する系であり、そしてTOPO−Xは、空ベクターのコントロールを有する系である。3つの実験系およびコントロール系の各々の平均が、示される。
【図13−2】図13A〜図13Cは、Let−60が、ヒトHRASタンパク質、ヒトKRASタンパク質、およびヒトNRASタンパク質の、オルソログであることを示す。図13Aは、C.elegansのLET−60と、ヒトおよびC.elegans由来の他のRASタンパク質ならびにRAS関連タンパク質との配列アライメントである。図13Bは、他のRAS関連タンパク質に対するLET−60の相関関係を示すデンドログラムである。図13Cは、let−60(gf)対立遺伝子の部分的な抑制の定量化を示すグラフである。o84−Xは、mir−84を過剰発現する系であり、そしてTOPO−Xは、空ベクターのコントロールを有する系である。3つの実験系およびコントロール系の各々の平均が、示される。
【図14−1】図14は、げっ歯類およびヒトのNJRAS 3’UTR由来の部分配列の配列アライメントである。このアライメント中に示されるLCSは、黒色で囲まれる。
【図14−2】図14は、げっ歯類およびヒトのNJRAS 3’UTR由来の部分配列の配列アライメントである。このアライメント中に示されるLCSは、黒色で囲まれる。
【図14−3】図14は、げっ歯類およびヒトのNJRAS 3’UTR由来の部分配列の配列アライメントである。このアライメント中に示されるLCSは、黒色で囲まれる。
【図14−4】図14は、げっ歯類およびヒトのNJRAS 3’UTR由来の部分配列の配列アライメントである。このアライメント中に示されるLCSは、黒色で囲まれる。
【図14−5】図14は、げっ歯類およびヒトのNJRAS 3’UTR由来の部分配列の配列アライメントである。このアライメント中に示されるLCSは、黒色で囲まれる。
【図15】図15は、Xenopus laevisのNRAS 3’UTRおよびDanio rerioのNRAS 3’UTRによって形成される、可能性のあるlet−7::LCS二重鎖を示す。
【図16】図16Aおよび図16Bは、let−7の存在が、ヒト細胞において、コントロールタンパク質の発現に影響しないことを示す。図16Aは、GAPDHまたはp21に特異的な抗体を使用する、let−7 siRNAまたはネガティブコントロールsiRNAによってトランスフェクトされたHepG2細胞の複製物から得た抗体の蛍光の定量化のグラフである。図16Bは、NRAS siRNAのトランスフェクト体およびネガティブコントロールsiRNAのトランスフェクト体の両方についての、50個〜100個の細胞の単一の視野から得た蛍光シグナルの定量化のグラフである。
【図17】図17は、付随する隣接正常組織(NAT)と比較した、肺腫瘍におけるlet−7cおよびlet−7gの発現のグラフである。
【図18−1】図18Aは、コントロールのトランスフェクションおよびコントロール抗miRNA(mir−19a)と比較してA549の細胞数の100%の増加を生じるlet−7の阻害のグラフである。図18Bは、コントロールのmiRNA(NC)と比較したA549の細胞数の減少をもたらす余分なlet−7のグラフである。
【図18−2】図18Aは、コントロールのトランスフェクションおよびコントロール抗miRNA(mir−19a)と比較してA549の細胞数の100%の増加を生じるlet−7の阻害のグラフである。図18Bは、コントロールのmiRNA(NC)と比較したA549の細胞数の減少をもたらす余分なlet−7のグラフである。
【図19】図19は、ヒトMYCおよび他の脊椎動物の3’UTR、ならびにlet−7とヒトMYCとの間の可能性のある二重鎖における、可能性のあるlet−7相補部位(囲まれる)を示す。
【図20】図20Aは、外因性let−7 miRNAによって処理した細胞におけるMYCおよびBCL−2タンパク質の減少した発現の、スクランブルlet−7配列を有するコントロールmiRNAと比較したグラフである。図20Bは、抗let−7分子によってトランスフェクトされたHeLa細胞における、MYCおよびBCL−2の増加した発現のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書中で使用される場合、用語「核酸」とは、複数のヌクレオチド(すなわち、リン酸基および置換ピリミジン(例えば、シトシン(C)、チミジン(T)またはウラシル(U))または置換プリン(例えば、アデニン(A)またはグアニン(G))のいずれかである交換可能な有機塩基に連結される糖(例えば、リボースまたはデオキシリボース)を含む分子)をいう。この用語はまた、ポリヌクレオシド(すなわち、ポリヌクレオチドからリン酸を引いたもの)および任意の他の有機塩基含有ポリマーを含むものとする。プリンおよびピリミジンとしては、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、イノシン、5−メチルシトシン、2−アミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、2,6−ジアミノプリン、ヒポキサンチン、ならびに他の天然に存在する核酸塩基(nucleobase)および天然に存在しない核酸塩基、置換および非置換の芳香族部分が挙げられるが、これらに限定されない。他のこのような改変は、当業者に周知である。従って、用語「核酸」はまた、塩基および/もしくは糖におけるような置換または改変を有する核酸を包含する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「マイクロRNA」とは、任意の型の干渉RNAをいい、これらとしては、内因性マイクロRNAおよび人工のマイクロRNAが挙げられるが、これらに限定されない。内因性マイクロRNAは、ゲノム中に天然に存在する小さいRNAであり、これは、mRNAの生産的な利用を調節し得る。用語「人工のマイクロRNA」は、内因性マイクロRNA以外の任意の型のRNA配列を含み、この配列は、mRNAの生産的な利用を調節し得る。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「マイクロRNAフランキング配列」とは、マイクロRNAプロセシングエレメントを含むヌクレオチド配列をいう。マイクロRNAプロセシングエレメントは、前駆体マイクロRNAからの成熟マイクロRNAの産生に寄与する最小の核酸配列である。プリmiRNAと称される前駆体miRNAは、核内で約70ヌクレオチドのプレmiRNAへとプロセシングされ、プレmiRNAは、不完全なステム−ループ構造にフォールディングされる。
【0022】
マイクロRNAフランキング配列は、ネイティブなマイクロRNAフランキング配列または人工のマイクロRNAフランキング配列であり得る。ネイティブなマイクロRNAフランキング配列は、マイクロRNA配列を含む天然に存在するシステムに関連したヌクレオチド配列である(すなわち、これらの配列は、インビボで最小マイクロRNAヘアピンを囲むゲノム配列内に見出される)。人工のマイクロRNAフランキング配列は、天然に存在するシステム中のマイクロRNA配列に対してフランキングであることが見出されないヌクレオチド配列である。人工のマイクロRNAフランキング配列は、他のマイクロRNA配列の状況において天然に見出されるフランキング配列であり得る。あるいは、人工のマイクロRNAフランキング配列は、最小のマイクロRNAプロセシングエレメントから構成され得、最小のマイクロRNAプロセシングエレメントは、天然に存在するフランキング配列内に見出され、そしてフランキング配列として天然に存在しないか、または天然のフランキング配列として一部にのみ存在する他のランダムな核酸配列中に挿入される。
【0023】
前駆体マイクロRNA分子内のマイクロRNAフランキング配列は、マイクロRNA配列を包含するステム−ループ構造の片側または両側に隣接し得る。好ましい構造は、ステム−ループ構造の両端上にフランキング配列を有する。上記フランキング配列は、ステム−ループ構造の一端または両端に直接隣接しても、リンカー、さらなるヌクレオチドまたは他の分子を介して上記ステム−ループ構造に連結されてもよい。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「ステム−ループ構造」とは、主に一本鎖のヌクレオチド(ループ部分)の領域によって片側に連結される二本鎖(ステム部分)を形成することが公知であるか、または予想されるヌクレオチドの領域を含む二次構造を有する核酸をいう。用語「ヘアピン」構造および「フォールド−バック」構造はまた、ステム−ループ構造をいうために本明細書中で使用される。このような構造および用語は、当該分野において周知である。ステム−ループ構造内のヌクレオチドの実際の一次配列は、その二次構造が存在する限り重要ではない。当該分野において公知であるように、上記二次構造は、正確な塩基対形成を必要としない。従って、上記ステムは、1つ以上の塩基のミスマッチを含み得る。あるいは、上記塩基対形成は、ミスマッチを全く含み得ない。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「let−7」とは、let−7 miRNAおよびそのホモログ、およびその中に、構造または機能に不利に影響しない保存的な置換、付加、および欠失を含むその改変体をコードする核酸をいう。好ましくは、let−7とは、C.elegans由来のlet−7(NCBIアクセッション番号AY390762)をコードする核酸をいい、最も好ましくは、let−7とは、ヒト由来のlet−7ファミリーメンバー(NCBIアクセッション番号AJ421724、AJ421725、AJ421726、AJ421727、AJ421728、AJ421729、AJ421730、AJ421731、AJ421732およびlet−7の生物学的に活性な配列改変体(対立遺伝子を含む)が挙げられるが、これらに限定されない)、およびlet−7活性を示すlet−7のインビトロで産生された誘導体をコードする核酸をいう。
【0026】
let−7の配列改変体は、以下の3つの分類のうちの1つ以上に含まれる:置換型改変体、挿入型改変体、または欠失型改変体。挿入としては、5’末端および/または3’末端の融合、ならびに単一の残基または複数の残基の内部配列への挿入が挙げられる。挿入はまた、let−7の成熟配列内に導入され得る。しかし、これらは、通常、5’末端または3’末端における挿入より小さい、約1〜4残基程度の挿入である。
【0027】
let−7の挿入型配列改変体は、1または数個の残基が標的let−7中の所定の部位に導入される改変体である。最も一般的な挿入型改変体は、let−7の5’末端または3’末端における核酸の融合体である。
【0028】
欠失改変体は、let−7 RNA配列からの1つ以上の残基の除去によって特徴付けられる。これらの改変体は、通常、let−7をコードするDNA中のヌクレオチドの部位特異的変異誘発(それによってその改変体をコードするDNAを生成し、その後、組換え細胞の培養においてそのDNAを発現する)によって調製される。しかし、改変体let−7フラグメントは、インビトロ合成によって都合よく調製され得る。代表的に、上記改変体は、天然に存在するアナログと質的に同じ生物学的活性を示すが、改変体はまた、let−7の特徴を改変するために選択される。
【0029】
置換型改変体は、少なくとも1つの残基の配列が除去され、そしてその場所に異なる残基が挿入された改変体である。配列のバリエーションを導入するための部位は、予め決定されるが、その変異自体は、予め決定される必要がない。例えば、所与の部位における変異の実行を最適化するために、ランダム変異誘発が、標的領域において行なわれ得、そして発現したlet−7改変体は、所望の活性の最適な組み合わせについてスクリーニングされる。公知の配列を有するDNA中の所定の部位における置換の変異を作製するための技術は、周知である。
【0030】
ヌクレオチドの置換は、代表的に、単一の残基の置換であり;挿入は、通常、約1残基〜10残基程度であり;そして欠失は、約1残基〜30残基の範囲である。欠失または挿入は、好ましくは、隣接する対において作製される;すなわち、2残基の欠失または2残基の挿入。置換、欠失、挿入またはそれらの任意の組み合わせは、最終的な構築物に到達するために組み合わされ得る。変更が、そのmiRNAの活性を上昇させ、その生物学的安定性または半減期などを上昇させるために行われ得る。このようなmiRNAをコードするヌクレオチド配列に対する全てのこのような改変が、包含される。
【0031】
DNA単離物(isolate)は、3’フランキング領域および/または5’フランキング領域を有するか、もしくはそれらを有さない化学的に合成されたDNA、cDNAまたはゲノムDNAを意味することが理解される。let−7をコードするDNAは、a)mRNAを含む細胞からcDNAライブラリーを得ること、b)相同配列を含むcDNAライブラリーにおいてクローンを検出するためにlet−7またはそのフラグメントをコードする標識したDNA(通常は、100bpより大きい)を用いてハイブリダイゼーション分析を行なうこと、およびc)制限酵素分析および核酸配列決定を用いてそのクローンを分析して、完全長クローンを同定することによって他の供給源から得られ得る。
【0032】
本明細書中で使用される場合、核酸および/または核酸配列は、それらが天然にまたは人工的に、共通した祖先の核酸または核酸配列から誘導される場合、相同である。相同性は、一般的に、2つ以上の核酸またはタンパク質(またはそれらの配列)の間の配列類似性から推測される。相同性を確立するのに有用な配列の間の類似性の正確な%は、対象となっている核酸およびタンパク質によって変わるが、少なくとも25%の配列類似性が、相同性を確立するために慣用的に使用される。より高いレベルの配列類似性(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%以上)がまた、相同性を確立するために使用され得る。配列類似性の%を決定するための方法(例えば、初期設定のパラメーターを使用したBLASTN)が、一般的に利用可能である。BLAST分析を行なうためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov)を通じて公に利用可能である。
【0033】
(I.組成物)
細胞の分化および発達を制御する遺伝子は、ヒトの癌において頻繁に変異される。これらとしては、RAS、c−mycおよびbcl−2のようなオンコジーンが挙げられるが、これらに限定されない。天然に存在するマイクロRNA(特に、let−7)は、ヒトにおいてこれらのオンコジーンをダウンレギュレートすることが見出されている。let−7遺伝子のいくつかは、特定の癌において欠失される染色体領域中に位置する。従って、これらの特定のマイクロRNAをアップレギュレートすること、または類似の薬学的化合物を外因的に提供することは、これらのオンコジーンの活性化または過剰発現によって生じる腫瘍に対する、有効な癌療法であるはずである。
【0034】
好ましい実施形態において、miRNA処方物は、let−7またはlin−4の1つ以上の標的を発現する癌を有する個体に投与される。より好ましくは、上記処方物は、RAS、MYCおよび/もしくはBCL−2、またはlet−7に対する1つ以上の結合部位を有する他の標的を過剰発現する癌を有する個体に投与される。RAS/MAPK経路に加えて、複数の異なる経路が、癌に関わる。多くの公知の癌遺伝子の3’UTRが、調べられており、そして可能性のあるlet−7相補部位が、それらのうちの多くの3’UTRにおいて同定されている(図19および表1)。これらの部位は、公知のC.elegans let−7の標的において確立されたlet−7相補部位の特徴を有する(Reinhartら、Nature、(2000)、403:901−906;Johnsonら、Cell、(2005)、120(5):635−47;Grosshansら、Dev Cell、(2005)、8(3):321−30;Linら、Dev Cell、(2003)、4(5):639−50;Slackら、Molec.Cell、(2000)、5:659−669;Vellaら、Genes Dev、(2004)、18(2):132−7)。ヒトのc−MYCおよびBCL−2の3’UTR中のlet−7相補部位(LCS)は、同定されている(c−MYCについては、図19を参照のこと)。表1に示される多くの可能性のある標的遺伝子はまた、肺癌および他の癌においてアップレギュレートされ、このことは、let−7が正常組織においてそれらの発現を抑制する原因であるという結論をもたらす。GRB2のような他の遺伝子は、KRASのような公知のlet−7標的遺伝子と同様の数のLCSを有する(表1)。VEGFはまた、let−7相補部位を有することが確認されている。これらの結果は、let−7が複数のオンコジーンの発現を抑制し得ることを示す。細胞増殖の阻害に加えて、let−7はまた、新脈管形成を阻害し得る。従って、let−7の投与は、癌細胞または腫瘍細胞の生存を促進する複数の経路(すなわち、新脈管形成、減少したアポトーシスおよび増加した細胞増殖)を阻害し得る。
【0035】
(表1.let−7結合部位を含む癌に関わる遺伝子)
【0036】
【表1−1】

【0037】
【表1−2】

(miRNAはヒトの癌において公知の役割を有する)
異なる研究室からの最近の研究は、ヒトの癌におけるmiRNAの役割を示す(McManus、Seminars in Cancer Biology、(2003)、13:253−258)。ヒトのmiRNA(mir−15およびmir−16)は、成人の白血病、B細胞慢性リンパ性白血病の一般的な形態を有する患者において、優先的に欠失されるかまたはダウンレギュレートされる(Calinら、Proc Natl Acad Sci USA、(2002)、99(24):15524−9)。この研究は、miRNAが癌抑制遺伝子として機能し得ることを示唆する。mir−155 miRNAをコードするbic遺伝子座は、c−mycと協同的に機能し、そしておそらくプロトオンコジーンとして作用してB細胞リンパ腫を誘導する(Haasch,D.ら、Cell Immunol、(2002)、217(1−2):78−86)。miR142は、慢性リンパ性白血病において腫瘍抑制因子として作用する(Calin,G.A.ら、Proc Natl Acad Sci USA、(2002)、99(24):15524−9;Lagos−Quintana,M.ら、Curr Biol、(2002)、12(9):735−9)。His−1は、B細胞リンパ腫においてオンコジーンとして作用する(Haasch,D.ら、(2002);Lagos−Quintana,M.ら、(2002);Lagos−Quintana,M.ら、Science、(2001)、294(5543):853−8;Liら、Am J Pathol、(1997)、150:1297−305)。mir−142遺伝子座へのmycの転座は、B細胞リンパ腫を引き起こす(Lagos−Quintana,M.ら、(2002);Gauwerky,C.E.ら、Proc Natl Acad Sci USA、1989.86(22):8867−71)。mir−143およびmir−145は、結腸直腸癌において十分に発現されない(Michael、M.Z.ら、Mol Cancer Res、(2003)、1(12):882−91)。mir−17遺伝子座、mir−18遺伝子座、mir−19遺伝子座、mir−20遺伝子座の過剰発現は、マウスモデルにおいてリンパ腫を引き起こし得、そしてMYCによってアップレギュレートされる(He,L.ら、Nature、(2005)、435(7043):828−33;O’Donnell,K.A.ら、Nature、(2005)、435(7043):839−43)。
【0038】
細胞運命決定を制御する遺伝子の間違った制御は、しばしば癌に寄与する。細胞の分化および発達を制御する遺伝子は、ヒトの癌において頻繁に変異される。モデル生物体Caenorhabditis elegansは、表皮中の幹細胞様系統(stem−cell like lineage)における細胞分化に必要とされる遺伝子を同定するために使用されている。C.elegansの成長および発生は、胚子、幼虫および成虫と称される3つの主要な段階に分けられる。幼虫の成長は、4つの幼虫期(L1、L2、L3およびL4)に細分される。それぞれの幼虫期は、脱皮で終わり、そして最終的にその動物は、成虫へと成長する。段階に適した細胞分裂および細胞分化のタイミングを調節する遺伝子は、ヘテロクロニック遺伝子として公知である(Slack,F.およびG.Ruvkun、Annu Rev Genet、(1997)、31:611−34;Banerjee,D.およびF.Slack、Bioessays、(2002)、24(2):119−29)。C.elegansにおいて、ヘテロクロニック遺伝子は、細胞運命決定および分化のタイミングを制御する。ヘテロクロニック変異体において、細胞は、頻繁に末端へと分化し損ない、その代わりに、再び分裂する(癌の特徴)。
【0039】
上記miRNAファミリーの基礎をなすメンバー(lineage defective−4(lin−4)およびlethal−7(let−7))は、C.elegansにおいて段階に適した細胞分裂および細胞分化のタイミングを制御することが遺伝子分析によって確認された(Leeら、Cell、(1993)、75(5):843−854;Reinhart,B.ら、Nature、(2000)、403:901−906;Slack,F.およびG.Ruvkun、Annu Rev Genet、(1997)、31:611−34;Banerjee,D.およびF.Slack、Bioessays、(2002)、24(2):119−29)。let−7およびlin−4は、分化の決定に対する増殖のタイミングを制御する。lin−4およびlet−7のようなこれらの遺伝子のいくつかは、ヒトにおいて保存されるマイクロRNA(miRNA)をコードする。lin−4 miRNAおよびlet−7 miRNAにおける変異は、それぞれ、第1の幼虫期(L1)および第4の幼虫期(L4)の運命の不適切な反復をもたらし、そしてこれらの欠損により細胞周期から抜け出せなくなる(Leeら、Cell、(1993)、75(5):843−854;Reinhart,B.ら、Nature、(2000)、403:901−906)。例えば、野生型の動物において、特殊化した皮膚細胞(シーム細胞(seam cell)として公知である)は、幹細胞のパターンで分裂し、そして成虫段階の初めにおいて末端へと分化する。シーム細胞は、lin−4変異動物およびlet−7変異動物において末端へと分化し損ない、その代わりに、幼虫の運命を反復し、そして再び分裂する。細胞周期制御の欠如および末端へと分化し損なうことは、癌の特徴である。
【0040】
lin−4およびlet−7についての発現パターンは、発生のタイミングを指揮する役割と相関し、lin−4 RNAは、L1段階の間に蓄積し、そしてlin−14およびlin−28(L1後の運命のレプレッサ)の発現を阻害することによって線虫におけるL1/L2の遷移を担う(Leeら、Cell、(1993)、75(5):843−854;Ambros,V.およびH.R.Horvitz、Science、(1984)、226:409−416;Wightmanら、Cell、(1993)、75(5):855−862;Mossら、Cell、(1997)、88(5):37−46;およびFeinbaum,R.およびV.Ambros、Dev Biol、(1999)、210(1):87−95)。let−7 RNAは、L4段階の間に蓄積し、そしてlin−41、hbl−1およびRASの発現をダウンレギュレートすることによってL4/成虫の遷移を担う(Johnsonら、Cell、(2005)、120(5):635−47;Grosshansら、Dev Cell、(2005)、8(3)321−30;Linら、Dev Cell、(2003)、4(5):639−50;Slack,FJ.、Molec.Cell、(2000)、5:659−669)。
【0041】
これらの21ヌクレオチド〜22ヌクレオチドのmiRNAは、それらの標的タンパク質をコードするmRNAの3’非翻訳領域(3’UTR)内の不完全な相補部位に結合することによって効果を発揮し、そして翻訳のレベルにおいてこれらの遺伝子の発現を抑制する(Leeら、Cell、(1993)、75(5):843−854;Reinhart,B.ら、Nature、(2000)、403:901−906;Mossら、Cell(1997)、88(5):637−46;Lin,S.Y.ら、Dev Cell、(2003)、4(5):639−50;Slack,F.J.ら、Molec.Cell、(2000)、5:659−669;Abrahante,J.E.ら、Dev
Cell、(2003)、4(5):625−37;ならびにOlsen,P.H.およびV.Ambros、Dev Biol、(1999)、216(2):671−80)。lin−41 3’UTRからのlet−7 miRNA相補部位(LCS)の欠失(図2)は、L4段階および成虫段階の間の、lin−41の正常なダウンレギュレーションの抑止を示し、そして最近の研究は、これらの相補部位が、単独で、lin−41の調節に十分であることを示した(Reinhart,B.ら、Nature、(2000)、403:901−906;Slack,F.J.ら、Molec.Cell、(2000)、5:659−669;Vella,M.C.ら、Genes Dev、(2004)、18(2):132−7)。
【0042】
let−7標的遺伝子、lin−41は、公知のオンコジーンに類似する。C.elegansのlin−41機能喪失型(If)変異は、let−7(If)によって認められる効果とは逆に、早発性に細胞を末端へと分化させるが、lin−41の過剰発現は、let−7(If)様のシーム細胞増殖を引き起こす(Reinhart,B.ら、Nature、(2000)、403:901−906;Slack,F.J.ら、Molec.Cell、(2000)、5:659−669)。let−7と同様に、lin−41は、細胞増殖および細胞分化の重要な遺伝子であり、let−7およびlin−41は一緒に働いて、細胞を適切な時期に増殖させるか、または分化させる。
【0043】
lin−41は、RBCC(RINGフィンガー、Bボックス、コイルドコイル(Freemont、Ann.New York.Acad.Sci.、(1993)、684:174−192))ファミリーのメンバーのタンパク質をコードする。このファミリーのメンバーは、種々の提唱された機能(例えば、転写およびRNAの結合)を有し、そしてPML(Kakizuka,A.ら、Cell、(1991)、66:663−674)、TIF1(Le Dourarin,B.ら、EMBO J.、(1995)、14(9):2020−2033)およびRfpプロトオンコジーンが挙げられる。前骨髄性白血病の最も一般的な形態は、RARa遺伝子にPMLを融合させる転座を含む。TIF1のN末端部分は、上記オンコジーンのタンパク質T18においてB−rafに融合される(Le Dourarin,B.ら、EMBO J.、(1995)、14(9):2020−2033)。emu−retマウス(免疫グロブリン重鎖エンハンサーの転写制御下においてRFP/RET融合遺伝子を保有する)は、B系統の白血病およびリンパ腫を発症する(Wassermanら、Blood、(1998)、92(l):273−82)。形質転換NTH 3T3細胞において、RINGフィンガーモチーフを有するRfpのアミノ末端の半分は、短縮されたRetレセプターチロシンキナーゼ(Rfp/Ret)に融合される(Hasegawa,N.ら、Biochem Biophys Res Commun、(1996)、225(2):627−31)。このファミリーのメンバーは、癌の進行に関連する。哺乳動物のlin−41もまた、プロトオンコジーンであると予想される。
【0044】
lin−41に加えて、let−7は、3’UTR依存的に他の標的遺伝子を調節し、これらの標的遺伝としては、hunchback−like 1(hbl−1)(Lin
Shin−Yi,J.ら、Dev.Cell、2003、(4):1−20)およびlet−60(C.elegansのRASオンコジーンホモログが挙げられる(実施例1を参照のこと)。表2に示されるように、let−60/RASは、その3’UTR中に複数のlet−7相補(complimentary)部位を含み、そしてlet−60(lf)は、let−7変異を抑制する。let−60/RASは、C.elegansの陰門形成においてその役割が最も理解され、そしてlet−60/RASの3’UTRは、絶対的にlet−60/ras活性を必要とする陰門前駆細胞(VPC)(一次誘導細胞、1°細胞またはP6.p細胞)だけにlet−60/RAS発現を制限するのに十分である。正常な動物において、let−7ファミリーメンバー(mir−84)は、一次誘導細胞を除く全てのVPCにおいて発現され、そしてこれらの細胞におけるlet−60/ras発現を抑制する。
【0045】
let−60活性化変異を有する動物において、1種より多いVPCが誘導されて、過剰な陰門を生じる1°細胞運命へと分化する。mir−84の過剰発現は、let−60/RASにおける活性化変異を抑える。ヒトのNRAS遺伝子、KRAS遺伝子およびHRAS遺伝子における多くの活性化変異は、C.elegansのlet−60活性化変異に影響される同一のアミノ酸を変化させる。RASは、複数のヒトの癌において変異される(Malumbresら、Nat Rev Cancer、(2003)、3(6):459−65)ので、ヒトのRASがヒトのlet−7の標的であるという仮説が検証され、そしてそうであることが決定された(下の実施例1を参照のこと)。
【0046】
lin−4 miRNAおよびlet−7 miRNAは、ヒトを含む高等動物において進化的に保存され(図3)、そして時間的に発現され(下の実施例を参照のこと)、このことは、動物の発生の間のこれらのmiRNAの普遍的な役割を暗示する(Lagos−Quintana,M.ら、Mouse.Curr Biol、(2002)、12(9):735−9およびPasquinelli,A.E.ら、Nature、(2000)、408(6808):86−9)。let−7オルソログは、ヒトを含む哺乳動物において同定されており、そしてlet−7は、ノーザンブロットによって判断されるように、ヒトの肺組織中で発現される(Pasquinelli,A.E.ら)。配列決定されたヒトゲノム中の成熟let−7配列の3つの正確なコピー(別個のプロモーターの制御下において、let−7a1、let−7a2、let−7a3と称される)、および特定のヌクレオチド位置においてlet−7と異なる種々の近いホモログ(例えば、let−7c、図3を参照のこと)が存在する。線虫、ハエおよびヒトのlet−7遺伝子は、ステムループ構造を形成すると予想される前駆体形態(プレlet−7)からプロセシングされ、このステムループ構造はまた、保存される(図1)。同様に、mir−125aおよびmir−125bと命名される、lin−4の2つのヒトホモログおよびマウスホモログが存在する(図3)。
【0047】
最近の研究は、マイクロRNAの発現プロフィールが標準的なメッセンジャーRNAの発現プロフィールより良好に、特定の癌を正確に診断し得ることを示した(Luら、Nature、435:834−838、(2005))。
【0048】
(ヒトのオンコジーンを調節するのに有用なmiRNA)
ヒトのオンコジーン調節する天然に存在するマイクロRNA(プリmiRNA、プレmiRNA、成熟miRNA、または成熟miRNAの生物学的活性を保持するそれらのフラグメントもしくは改変体をコードするDNA、それらのフラグメントもしくは改変体、およびプリmiRNA、プレmiRNA、成熟miRNA、またはそれらのフラグメントもしくは改変体をコードするDNAあるいは上記miRNAの調節エレメント)が、同定されている。上記miRNAの大きさは、代表的に、21ヌクレオチド〜170ヌクレオチドであるが、2000ヌクレオチドまでのヌクレオチドが、利用され得る。好ましい実施形態において、上記プレmiRNAの大きさの範囲は、70ヌクレオチド長と170ヌクレオチド長との間であり、成熟miRNAは、21ヌクレオチド長と25ヌクレオチド長との間である。
【0049】
(核酸)
(一般的技術)
分子生物学的技術を記載する一般的な教科書としては、Sambrook、Molecular Cloning:a Laboratory Manual(第2版)、第1巻〜第3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、(1989);Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel編、John Wiley & Sons,Inc.、New York(1997);Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology:Hybridization With Nucleic Acid Probes、Part I.Theory and Nucleic Acid Preparation、P.Tijssen編、Elsevier,N.Y.(1993);BergerおよびKimmel、Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology volume 152 Academic Press,Inc.、San Diego、Califが挙げられる。これらの教科書は、例えば、let−7または任意の他のmiRNA活性をコードする遺伝子の生成および発現に関する、変異誘発、ベクターの使用、プロモーター、ならびに多くの他の関係のある話題を記載する。核酸、遺伝子の単離、精製および操作のための技術(例えば、ライブラリーの生成、発現ベクター中へのサブクローニング、プローブの標識、ならびにDNAハイブリダイゼーションもまた、上記の教科書において記載され、そしてそれらは、当業者に周知である。
【0050】
上記核酸(miRNA、DNA、cDNA、もしくはゲノムDNA、またはそれらの改変体にかかわらず)は、種々の供給源から単離されても、インビトロで合成されてもよい。本明細書中に記載されるような核酸は、ヒト、トランスジェニック動物、形質転換細胞に投与され得るか、またはそれらにおいて発現され得、この核酸は、形質転換細胞溶解物、または部分的に精製された形態もしくは実質的に純粋な形態で投与され得る。
【0051】
核酸は、当業者に周知である多くの一般的手段によって検出され、そして定量される。これらとしては、例えば、分析的な生化学的方法(例えば、分光測光法、X線撮影、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、および高拡散クロマトグラフィー(hyperdiffusion chromatography)、種々の免疫学的方法(例えば、流体沈降反応またはゲル内沈降反応、免疫拡散(一次元または二次元)、免疫電気泳動、放射免疫測定法(RIA)、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、免疫蛍光アッセイなど)、サザン分析、ノーザン分析、ドットブロット分析、ゲル電気泳動、RT−PCR、定量的PCR、他の核酸もしくは標的もしくはシグナルの増幅方法、放射標識、シンチレーション計数法、およびアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。
【0052】
種々の型の変異誘発が、例えば、let−7または他のmiRNA活性を有する遺伝子をコードする核酸を改変するために使用され得る。それら変異誘発としては、部位特異的変異誘発、ランダム点変異誘発(random point mutagenesis)、相同組換え(DNAシャッフリング)、ウラシル含有テンプレートを使用した変異誘発、オリゴヌクレオチド指向型の変異誘発、ホスホロチオエート改変型のDNA変異誘発、およびギャップ入り二重鎖DNAを使用した変異誘発などが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる適切な方法としては、ポイントミスマッチ修復、修復欠損宿主株を使用した変異誘発、制限−選択および制限−精製、欠失変異誘発、全体の遺伝子合成による変異誘発、二本鎖切断修復などが挙げられる。例えば、キメラ構築物に関連する変異誘発もまた、本発明に含まれる。1つの実施形態において、変異誘発は、天然に存在する分子または変化したかもしくは変異した天然に存在する分子の公知の情報(例えば、配列、配列比較、物性、結晶構造など)によって導かれ得る。変更が、そのmiRNAの活性を上昇させ、その生物学的安定性または半減期などを上昇させるために行われ得る。
【0053】
比較ハイブリダイゼーションは、核酸の保存的なバリエーションを含む、let−7または他のmiRNA活性を有する遺伝子をコードする核酸を同定するために使用され得る。
【0054】
核酸は、それらが代表的には溶液中で会合する場合に、「ハイブリダイズする」。核酸は、種々の十分に特徴付けられた物理化学的な力(例えば、水素結合、溶媒排除、塩基スタッキングなど)に起因してハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションについての広範な指針は、Tijssen、(1993)、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes part I chapter 2、「Overview of principles of hybridization and the strategy of
nucleic acid probe assays」、(Elsevier,N.Y.)、およびAusubel、前出に見出される。HamesおよびHiggins、(1995)、Gene Probes 1 IRL Press at Oxford
University Press、Oxford、England、(HamesおよびHiggins 1)ならびにHamesおよびHiggins、(1995)、Gene Probes 2 IRL Press at Oxford University Press、Oxford、England(HamesおよびHiggins
2)は、オリゴヌクレオチドを含むDNAおよびRNAの合成、標識化、検出ならびに定量化についての詳細を提供する。
【0055】
ストリンジェントな条件下において互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが、実質的に同一である場合、既に実質的に同一である。これは、例えば、核酸のコピーが、遺伝暗号によって許容される最大コドン縮重度を使用してもたらされる場合に生じる。
【0056】
本明細書中に記載される方法に使用するのに適した核酸としては、プリmiRNA、プレmiRNA、成熟miRNA、あるいは上記miRNAの生物学的活性を保持するそれらのフラグメントもしくは改変体、およびプリmiRNA、プレmiRNA、成熟miRNA、それらのフラグメントもしくは改変体をコードするDNA、または上記miRNAの調節エレメントをコードするDNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
(ウイルスベクター)
1つの実施形態において、miRNA分子をコードする上記核酸は、ベクター上にある。これらのベクターは、成熟マイクロRNAおよびインビボ発現エレメントをコードする配列を含む。好ましい実施形態において、これらのベクターは、上記プレmiRNAが発現され、そしてインビボで成熟miRNAへとプロセシングされるように、プレmiRNAおよびインビボ発現エレメントをコードする配列を含む。別の実施形態において、これらのベクターは、上記プリmiRNA遺伝子およびインビボ発現エレメントをコードする配列を含む。この実施形態において、一次転写物は、最初にプロセシングされて、ステム−ループ前駆体miRNA分子を生成する。次いで上記ステム−ループ前駆体はプロセシングされて、成熟マイクロRNAを生成する。
【0058】
ベクターとしては、核酸配列の挿入もしくは組み込みによって、マイクロRNA、およびこれらの核酸配列に結合され得る遊離の核酸フラグメントを生成するように操作された、プラスミド、コスミド、ファージミド、ウイルス、ウイルス供給源または細菌供給源に由来する他のビヒクルが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターが、好ましい型のベクターであり、そしてそれらとしては、以下のウイルス由来の核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない:レトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス;マウス幹細胞ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス;マウス乳癌ウイルス;ラウス肉腫ウイルス;アデノウイルス;アデノ随伴ウイルス;SV40−型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタイン−バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス);およびRNAウイルス(例えば、任意のレトロウイルス)。当業者は、当該分野において公知である他のベクターを容易に利用し得る。
【0059】
ウイルスベクターは、一般的に、不必要な遺伝子が目的の核酸配列によって置換された、非細胞変性性の真核細胞に対するウイルスに基づく。非細胞変性性のウイルスとしては、レトロウイルス(その生活環は、ゲノムウイルスRNAのDNAへの逆転写、その後の宿主細胞DNA中へのプロウイルスの組み込みを含む)が挙げられる。レトロウイルスは、ヒトの遺伝子治療の試行について認可されている。遺伝子操作されたレトロウイルス発現ベクターは、インビボでの核酸の高効率の形質導入について、一般的な利用性を有する。複製欠損レトロウイルスを産生するための標準的なプロトコル(外因性の遺伝子物質のプラスミドへの組み込み、プラスミドが入れられた(lined)パッケージング細胞のトランスフェクション、そのパッケージング細胞株による組換えレトロウイルスの産生、組織培養培地からのウイルス粒子の回収、およびウイルス粒子による標的細胞の感染の工程を含む)は、Kriegler,M.、「Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual」、W.H.Freeman Co.、New York(1990)およびMurry,E.J.編、「Methods in Molecular Biology」、第7巻、Humana Press,Inc.、Cliffton、N.J.(1991)において提供される。
【0060】
(プロモーター)
「インビボ発現エレメント」は、上記マイクロRNAを生成するために上記核酸の効率的な発現を容易にする、任意の調節ヌクレオチド配列(例えば、プロモーター配列またはプロモーターとエンハンサーとの組み合わせ)である。上記インビボ発現エレメントは、例えば、哺乳動物プロモーターまたはウイルスプロモーター(例えば、構成的プロモーターもしくは誘導性プロモーターまたは組織特異的プロモーター)であり得る。これらプロモーターの例は、当業者に周知である。構成的哺乳動物プロモーターとしては、ポリメラーゼプロモーターおよび以下の遺伝子についてのプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPTR)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、およびβ−アクチン。真核生物細胞において構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターとしては、シミアンウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスおよび他のレトロウイルスの長い末端反復配列(LTR)由来のプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。他の構成的プロモーターは、当業者に公知である。誘導性プロモーターは、誘導剤の存在下において発現され、そして上記誘導性プロモーターとしては、金属誘導性プロモーターおよびステロイド調節型プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、メタロチオネインプロモーターは、特定の金属イオンの存在下において転写を促進するように誘導される。他の誘導性プロモーターは、当業者に周知である。
【0061】
組織特異的プロモーターの例としては、クレアチンキナーゼについてのプロモーター(これは、筋肉および心臓組織における発現を指向するために使用されている)、およびB細胞における発現のための免疫グロブリン重鎖プロモーターまたは免疫グロブリン軽鎖プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。他の組織特異的プロモーターとしては、ヒト平滑筋α−アクチンプロモーターが挙げられる。
【0062】
肝臓についての例示的な組織特異的発現エレメントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:HMG−COAレダクターゼプロモーター、ステロール調節エレメント1、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)プロモーター、ヒトC−反応性タンパク質(CRP)プロモーター、ヒトグルコキナーゼプロモーター、コレステロール7−αヒドロキシラーゼ(hydroylase)(CYP−7)プロモーター、β−ガラクトシダーゼα−2,6シアリルトランスフェラーゼプロモーター、インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP−I)プロモーター、アルドラーゼBプロモーター、ヒトトランスフェリンプロモーター、およびI型コラーゲンプロモーター。
【0063】
前立腺についての例示的な組織特異的発現エレメントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:前立腺性酸性ホスファターゼ(PAP)プロモーター、前立腺分泌性タンパク質の94(PSP 94)プロモーター、前立腺特異的抗原複合体プロモーター、およびヒト腺性カリクレイン遺伝子プロモーター(hgt−1)。
【0064】
胃の組織についての例示的な組織特異的発現エレメントとしては、ヒトH+/K+−ATPase αサブユニットプロモーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0065】
膵臓についての例示的な組織特異的発現エレメントとしては、膵炎関連タンパク質プロモーター(PAP)、エラスターゼ1転写エンハンサー、膵臓特異的なアミラーゼエンハンサープロモーターおよびエラスターゼエンハンサープロモーター、ならびに膵臓由来コレステロールエステラーゼ遺伝子プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
子宮内膜についての例示的な組織特異的発現エレメントとしては、ウテログロビンプロモーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0067】
副腎の細胞についての例示的な組織特異的発現エレメントとしては、コレステロール側鎖切断(SCC)プロモーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0068】
一般的な神経系についての例示的な組織特異的発現エレメントとしては、γ−γエノラーゼ(ニューロン特異的エノラーゼ、NSE)プロモーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0069】
脳についての例示的な組織特異的発現エレメントとしては、神経フィラメント重鎖(NF−H)プロモーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0070】
リンパ球についての例示的な組織特異的発現エレメントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヒトCGL−1/グランザイムBプロモーター、末端デオキシトランスフェラーゼ(TdT)、λ5、VpreB、およびlck(リンパ球特異的チロシンタンパク質キナーゼp561ck)のプロモーター、ヒトCD2プロモーターおよびその3’転写エンハンサー、ならびにヒトNK細胞およびヒトT細胞の特異的活性化(NKG5)プロモーター。
【0071】
結腸についての例示的な組織特異的発現エレメントとしては、pp60c−srcチロシンキナーゼプロモーター、器官特異的ネオ抗原(OSN)プロモーター、および結腸特異的抗原−Pプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
乳腺細胞についての例示的な組織特異的発現エレメントとしては、ヒトα−ラクトグロブリンプロモーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0073】
肺についての例示的な組織特異的発現エレメントとしては、嚢胞性線維症伝達調節因子(CFTR)遺伝子プロモーターが挙げられるが、これに限定されない。
【0074】
目的の組織における発現の特異性を補助する他のエレメントとしては、分泌リーダー配列、エンハンサー、核移行シグナル、エンドソーム溶解(endosmolytic)ペプチドなどが挙げられ得る。好ましくは、これらのエレメントは目的の組織に由来して、特異性を補助する。
【0075】
一般的に、上記インビボ発現エレメントは、必要な場合、転写の開始に関係する、5’非転写配列および5’非翻訳配列を含むものとする。それらは、必要に応じて、エンハンサー配列または上流活性化配列を含む。
【0076】
(miRNAの生成のための方法および材料)
上記miRNAは、当業者に周知である種々の技術によって、細胞または組織から単離されても、組換え的に生成されても、インビトロで合成されてもよい。
【0077】
1つの実施形態において、miRNAは、細胞または組織から単離される。細胞または組織からmiRNAを単離するための技術は、当業者に周知である。例えば、miRNAは、Ambion,Inc.製のmirVana miRNA単離キットを使用して全RNAから単離され得る。別の技術は、小さい核酸のPAGE精製のためのflashPAGETM Fractionator System(Ambion,Inc.)を利用する。
【0078】
上記miRNAは、それらの組換えバージョンを調製すること(すなわち、遺伝子工学の技術を使用して、組換え核酸(この核酸は、その後、当業者に周知の技術を用いて単離または精製され得る)を生成すること)によって得られ得る。この実施形態は、適切な培養培地において宿主細胞の培養物を増殖させる工程、およびその細胞、またはその細胞が増殖される培養物から上記miRNAを精製する工程を包含する。例えば、上記方法は、miRNAをコードする核酸を含む適切な発現ベクターを有する宿主細胞が、そのコードされたmiRNAの発現を可能にする条件下において培養される、miRNAを生成するためのプロセスを包含する。好ましい実施形態において、上記核酸は、let−7をコードする。上記miRNAは、培養物、培養培地または宿主細胞から調製された溶解物から回収され得、そしてさらに精製され得る。上記宿主細胞は、高等真核生物の宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)、下等真核生物の宿主細胞(例えば、酵母細胞)であり得るか、または上記宿主細胞は、原核生物細胞(例えば、細菌細胞)であり得る。上記miRNAをコードする核酸を含むベクターの、上記宿主中への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE、デキストラン媒介性トランスフェクション、またはエレクトロポレーションによって達成され得る(Davis,L.ら、Basic Methods in Molecular Biology(1986))。
【0079】
任意の宿主/ベクター系が、上記miRNAの1種以上の発現のために使用され得る。これらとしては、真核生物細胞(例えば、HeLa細胞および酵母)、および原核生物細胞(例えば、E.coliおよびB.subtilis)が挙げられるが、これらに限定されない。miRNAは、哺乳動物細胞、酵母、細菌、または上記miRNA遺伝子が適切なプロモーターの制御下にある他の細胞において発現され得る。原核生物宿主および真核生物宿主と一緒に使用するための適切なクローニングベクターならびに発現ベクターは、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)に記載される。好ましい実施形態において、上記miRNAは、哺乳動物細胞中で発現される。哺乳動物発現系の例としては、C127、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト腎臓293細胞、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、3T3細胞、CV−1細胞、他の形質転換された霊長類細胞株、正常二倍体細胞、一次組織のインビトロ培養に由来する細胞株、初代外植片、HeLa細胞、マウスL細胞、BHK細胞、HL−60細胞、U937細胞、HaK細胞またはJurkat細胞が挙げられる。哺乳動物発現ベクターは、複製起点、適切なプロモーター、ポリアデニル化部位、転写終結配列、および5’フランキング非転写配列を備える。SV40ウイルスゲノムに由来するDNA配列(例えば、SV40起点、初期プロモーター部位、エンハンサー部位、スプライス部位、およびポリアデニル化部位)が使用されて、必要とされる非転写遺伝エレメントを提供し得る。可能性のある適切な酵母株としては、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、クルイベロミセス株、カンジダ属、またはmiRNAを発現し得る任意の酵母株が挙げられる。可能性のある適切な細菌株としては、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、またはmiRNAを発現し得る任意の細菌株が挙げられる。
【0080】
好ましい実施形態において、let−7をコードするゲノムDNAが、単離され、そのゲノムDNAは、哺乳動物発現系において発現され、RNAが、患者に対する投与のために、精製され、そして必要な場合、改変される。好ましい実施形態において、上記let−7は、所望される場合(すなわち、安定性または細胞の取り込みを増大させるため)に改変され得るプレmiRNAの形態である。
【0081】
miRNAのDNA配列の知識は、内因性miRNAの発現を許容するか、または増加させるための、細胞の改変を可能にする。細胞は、増加したmiRNA発現を、異種プロモーターの全部または一部によって天然に存在するプロモーターを全体または一部において置換することによって提供するために、改変され得(例えば、相同組換えによって)、それによって上記細胞は、より高いレベルにて上記miRNAを発現する。上記異種プロモーターは、そのプロモーターが所望のmiRNAをコードする配列に作動可能に連結されるような様式で挿入される。例えば、Transkaryotic Therapies,Inc.によるPCT国際公開番号WO 94/12650、Cell Genesys,Inc.による同WO 92/20808、およびApplied Research Systemsによる同WO 91/09955を参照のこと。細胞はまた、上記miRNAを含む内因性遺伝子を、その内因性遺伝子の調節配列が相同組換えによって置換され得る場合に、誘導性調節エレメントの制御下において発現するように操作され得る。遺伝子活性化技術は、Chappelの米国特許第5,272,071号;Sherwinらの同第5,578,461号;SeldenらによるPCT/US92/09627(WO93/09222);およびSkoultchiらによるPCT US90/06436(WO91/06667)に記載される。
【0082】
上記miRNAは、そのmiRNAを発現するのに適した培養条件下で形質転換宿主細胞を培養することによって調製され得る。生じる発現したmiRNAは、次いで、公知の精製プロセス(例えば、ゲル濾過およびイオン交換クロマトグラフィー)を使用してこのような培養物(すなわち、培養培地または細胞抽出物)から精製され得る。上記miRNAの精製はまた、タンパク質に結合する因子を含むアフィニティーカラム;コンカナバリンA−アガロース、heparin−toyopearlTMまたはCibacrom blue 3GA SepharoseTMのようなアフィニティー樹脂に対する1つ以上のカラム工程;フェニルエーテル、ブチルエーテル、またはプロピルエーテルのような樹脂を使用した疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む1つ以上の工程;免疫親和性クロマトグラフィー、または相補的cDNA親和性クロマトグラフィーを含み得る。
【0083】
上記miRNAはまた、そのmiRNAをコードするヌクレオチド配列を含む体細胞または生殖細胞によって特徴付けられるトランスジェニック動物の産物として発現され得る。miRNAをコードするDNAおよび適切な調節エレメントを含むベクターは、動物の生殖系細胞中に相同組換えを使用して、その生殖系細胞がそのmiRNAを発現するように挿入され得る(Capecchi、Science 244:1288−1292(1989))。トランスジェニック動物(好ましくは、非ヒト哺乳動物)は、Robinsonらの米国特許第5,489,743号、およびOntario Cancer InstituteによるPCT公開番号WO 94/28122に記載されるような方法を使用して生産される。miRNAは、上で考察されるようなトランスジェニック動物から単離された細胞または組織から単離され得る。
【0084】
好ましい実施形態において、上記miRNAは、例えば、当業者に公知である任意の合成方法を用いて核酸を化学的に合成することによって、合成的に得られ得る。次いでその合成されたmiRNAは、当該分野において公知である任意の方法によって精製され得る。核酸の化学合成のための方法としては、ホスホトリエステル化学反応、ホスフェート化学反応もしくはホスホラミダイト化学反応および固相技術を使用したインビトロ化学合成、またはデオキシヌクレオチド(deosynucleoside)H−ホスフェート中間体を介したインビトロ化学合成が挙げられるが、これらに限定されない(Bhongleの米国特許第5,705,629号を参照のこと)。
【0085】
いくつかの状況において、例えば、増加したヌクレアーゼ安定性が所望される場合、核酸アナログおよび/または改変型ヌクレオシド間結合を有する核酸が、好まれ得る。改変型ヌクレオシド間結合を含む核酸はまた、当該分野において周知である試薬および方法を使用して合成され得る。例えば、ホスホネートホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ポスホラミデートメトキシエチルホスホラミデート、ホルムアセタール(formacetal)、チオホルムアセタール、ジイソプロピルシリル、アセトアミデート(acetamidate)、カルバメート、ジメチレン−スルフィド(−CH−S−CH)、ジメチレン(diinethylene)−スルホキシド(−CH−SO−CH)、ジメチレン−スルホン(−CH−SO−CH)、2’−O−アルキル、および2’−デオキシ−2’−フルオロホスホロチオエートのヌクレオシド間結合を含む核酸を合成する方法が、当該分野において周知である(Uhlmannら、1990、Chem.Rev.90:543−584;Schneiderら、1990、Tetrahedron Lett.31:335およびそれらの中に列挙される参考文献を参照のこと)。Cookらの米国特許第5,614,617号および同第5,223,618号、Acevedoらの同第5,714,606号、Cookらの同第5,378,825号、Buhrらの同第5,672,697号および同第5,466,786号、Cookらの同第5,777,092号、De Mesmaekerらの同第5,602,240号、Cookらの同第5,610,289号ならびにWangの同第5,858,988号もまた、向上したヌクレアーゼ安定性および細胞の取り込みのための核酸アナログを記載する。
【0086】
(処方物)
上記組成物は、癌の少なくとも1つの症状もしくは発現(疾患が、症状の非存在下で発生/進行し得ることに起因する)の処置または予防を必要とする患者に投与される。オンコジーンの異常な発現は、癌の特徴である。好ましい実施形態において、上記癌は、肺癌である。1つの実施形態において、上記組成物は、1種以上のオンコジーンの発現を阻害するのに有効な量で投与される。好ましい実施形態において、これらの組成物は、RAS、MYC、および/またはBCL−2の発現を阻害するのに有効な量で投与される。
【0087】
癌の少なくとも1つの症状もしくは発現の処置または予防のための方法がまた、記載され、この方法は、少なくとも1つの症状を軽減するか、または少なくとも1つの発現を減少させる核酸を含む組成物の有効な量の投与からなる。好ましい実施形態において、上記癌は、肺癌である。本明細書中に記載される組成物は、単独か、または補助の癌療法(例えば、外科手術、化学療法、放射線療法、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法、およびレーザー療法)と組み合わせて、有効な投薬量で投与されて、例えば、腫瘍の大きさを減少させるか、腫瘍の細胞増殖を減少させるか、新脈管形成を阻害するか、転移を阻害するか、あるいは他の方法で疾患の少なくとも1つの症状または発現を改善する有益な効果を提供し得る。
【0088】
上に記載される核酸は、好ましくは、適切な薬学的キャリアと組み合わせた治療的使用のために利用される。このような組成物は、上記化合物の有効な量、および薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含有する。処方物は、投与の様式に適するように作製される。薬学的に受容可能なキャリアは、投与される特定の組成物、および上記組成物を投与するために使用される特定の方法によって、部分的に決定される。従って、本明細書中に記載されるいくつかの核酸を含む薬学的組成物の、広範な種々の処方物が、存在する。
【0089】
インビボで投与される核酸が、細胞および組織に取り込まれ、そして細胞および組織に分布することは、当業者に理解される(Huangら、FEBS Lett.、558(1−3):69−73(2004))。例えば、Nyceらは、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)が、吸入された場合、内因性サーファクタント(肺細胞によって生成される脂質)に結合し、そしてさらなるキャリア脂質を必要とすることなく肺細胞によって取り込まれることを示した(NyceおよびMetzger、Nature、385:721−725(1997))。小さい核酸は、T24膀胱癌組織培養細胞中に容易に取り込まれる(Maら、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.8:415−426(1998))。siRNAは、全身投与によって、内因性遺伝子の治療的サイレンシングのために使用されている(Soutschekら、Nature、432、173−178(2004))。
【0090】
上に記載される核酸は、適切な薬学的キャリアにおける局所的(topically)、局所的(locally)または全身的な投与のための処方物中にあり得る。E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciences、第15版(Mark Publishing Company、1975)は、代表的なキャリアおよび調製方法を開示する。上記核酸はまた、生分解性ポリマーもしくは非生分解性ポリマーまたは細胞を標的化するためのタンパク質もしくはリポリームから形成される、適切な生体適合性のマイクロカプセル、マイクロ粒子あるいはマイクロスフェア中にカプセル化され得る。このようなシステムは、当業者に周知であり、そして適切な核酸と一緒に使用するために最適化され得る。
【0091】
核酸送達のための種々の方法は、例えば、Sambrookら、1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York;およびAusubelら、1994、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New Yorkに記載される。このような核酸送達システムは、例として、「むき出し(naked)」の核酸のような「むき出し」の形態か、または送達に適したビヒクル(例えば、カチオン性分子もしくはリポソームを形成する脂質との複合体)中に処方されるか、またはベクターの成分もしくは薬学的組成物の成分としてかのいずれかで所望の核酸を含むが、これらに限定されない。上記核酸送達システムは、直接的(例えば、そのシステムと細胞とを接触させることによって)か、または間接的(例えば、任意の生物学的プロセスの作用を経て)かのいずれかで細胞に提供され得る。例として、上記核酸送達システムは、エンドサイトーシス、レセプター標的化、ネイティブな細胞膜フラグメントもしくは合成の細胞膜フラグメントとの結合、エレクトロポレーションのような物理的手段、上記核酸送達システムと、ポリマー性キャリア(例えば、徐放フィルムまたはナノ粒子もしくはマイクロ粒子)との組み合わせ、ベクターの使用、組織もしくはその細胞を取り囲む流体へのその核酸送達システムの注入、細胞膜を横切るその核酸送達システムの単純拡散、または細胞膜を横切る任意の能動輸送機構もしくは受動輸送機構によって細胞に提供され得るが、これらに限定されない。従って、上記核酸送達システムは、ウイルスベクターの、抗体関連性の標的化および抗体媒介性の固定化のような技術を使用して細胞に提供され得る。
【0092】
局所投与のための処方物としては、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴剤、坐剤、スプレー、液体および粉末が挙げられ得る。従来の薬学的キャリア(水性基剤、粉末基剤または油性基剤、増粘剤など)は、所望される場合に使用され得る。
【0093】
非経口投与(例えば、関節内(関節における)経路、静脈内経路、筋肉内経路、皮内経路、腹腔内経路、および皮下経路によるような)に適した処方物としては、水性および非水性の、等張滅菌注射溶液が挙げられ、この溶液は、酸化防止剤、緩衝液、静菌薬、および上記処方物を意図されるレシピエントの血液と等張にさせる溶質、ならびに水性滅菌懸濁物および非水性滅菌懸濁物、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、分散剤、安定化剤、および保存料を含有し得る溶液またはエマルションを含み得る。注射のための処方物は、さらなる保存料を伴って、単位投薬形態(例えば、アンプルまたは複数用量容器中に)で存在し得る。上記組成物は、このような形態をとり得る。
【0094】
調製物としては、滅菌水性溶液または滅菌非水性溶液、滅菌水性懸濁物または滅菌非水性懸濁物および滅菌水性エマルションまたは滅菌非水性エマルションが挙げられ、これらは、特定の実施形態において被験体の血液と等張であり得る。非水性溶媒の例は、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油、ゴマ油、ヤシ油、落花生油、ピーナッツ油)、鉱油、注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)、または合成モノグリセリドもしくは合成ジグリセリドを含む不揮発性油である。水性キャリアとしては、水、生理食塩水および緩衝媒体を含むアルコール性/水性の溶液、エマルションまたは懸濁物が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、1,3−ブタンジオール、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンガー溶液または不揮発性油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、流体および栄養補充液、電解質補充液(例えば、リンガーデキストロースに基づくもの)などが挙げられる。保存料および他の添加剤(例えば、抗微生物剤、酸化防止剤、キレート化剤および不活性ガスなどのような)もまた、存在し得る。さらに、滅菌した不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として従来通りに利用される。この目的のために、任意の無刺激性不揮発性油が、合成モノグリセリドもしくは合成ジグリセリドを含め、利用され得る。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は、注射剤の調製において使用され得る。キャリアの処方は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton,Pa.に見出され得る。当業者は、過度の実験を行うことなく、上記組成物を調製し、そして処方するための種々のパラメーターを容易に決定し得る。
【0095】
単独か、または他の適切な成分と組み合わせた上記核酸はまた、吸入を介して投与されるエアロゾル処方物(すなわち、それらは、「噴霧」され得る)にされ得る。エアロゾル処方物は、加圧された受容可能な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など)中におかれ得る。吸入による投与のために、上記核酸は、適切な噴霧剤の使用によって、加圧された容器またはネブライザーからエアロゾルスプレー調製物の形態で従来通りに送達される。
【0096】
いくつかの実施形態において、上に記載される核酸は、処方物成分(例えば、塩、キャリア、緩衝剤、乳化剤、希釈剤、賦形剤、キレート化剤、フィラー、乾燥剤、酸化防止剤、抗微生物剤、保存料、結合剤、充填剤(bulking agent)、シリカ、可溶化剤、または安定化剤)を伴う薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。1つの実施形態において、上記核酸は、細胞の取り込みを改良するために、コレステロールならびにC32官能性を有するラウリル酸誘導体およびリトコール酸誘導体のような親油性の群と結合体化される。例えば、コレステロールは、siRNAの取り込みおよび血清安定性を向上させることが、インビトロ(Lorenzら、Bioorg.Med.Chem.Lett.、14(19):4975−4977(2004))およびインビボ(Soutschekら、Nature、432(7014):173−178(2004))で示されている。さらに、ステロイドと結合体化したオリゴヌクレオチドの、血流中の異なるリポタンパク質(例えば、LDL)に対する結合は、完全性を保護し、そして体内分布を容易にすることが示されている(Rumpら、Biochem.Pharmacol.、59(11):1407−1416(2000))。上に記載される核酸と結合されるかまたは結合体化されて、細胞の取り込みを増大させ得る他の群としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アクリジン誘導体;架橋剤(たとえば、ソラレン誘導体、アジドフェナシル、プロフラビン、およびアジドプロフラビン);人工エンドヌクレアーゼ;金属錯体(例えば、EDTA−Fe(II)およびポルフィリン−Fe(II));アルキル化部分;ヌクレアーゼ(例えば、アルカリホスファターゼ);末端トランスフェラーゼ;アブザイム;コレステリル部分;親油性キャリア;ペプチド結合体;長鎖アルコール;リン酸エステル;放射性マーカー;非放射性マーカー;炭水化物;およびポリリジンまたは他のポリアミン。Levyらの米国特許第6,919,208号はまた、核酸分子の向上した送達のための方法を記載した。
【0097】
これらの薬学的処方物は、それ自体公知である様式(例えば、従来の混合プロセス、溶解プロセス、顆粒化プロセス、研和プロセス、乳化プロセス、カプセル化プロセス、封入プロセスまたは凍結乾燥プロセスの手段によって)で製造され得る。
【0098】
上記核酸の本明細書中に記載される処方物は、上記核酸が別の部分(例えば、標的化部分または別の治療因子)と融合される場合、上記核酸の融合体または上記核酸の改変物(modifications)を含む。このようなアナログは、改善された特性(例えば、活性および/または安定性)を示し得る。上記核酸に連結されてもされなくてもよい部分の例としては、例えば、特定の細胞に対する核酸の送達を提供する標的化部分(例えば、膵臓細胞に対する抗体、免疫細胞に対する抗体、肺細胞に対する抗体または任意の他の好ましい細胞型に対する抗体)、ならびに上記好ましい細胞型において発現されるレセプターおよびリガンドが挙げられる。好ましくは、上記部分は、癌細胞または腫瘍細胞を標的化する。例えば、癌細胞は、グルコースの増加した消費を有するので、上記核酸は、グルコース分子に連結され得る。癌細胞または腫瘍細胞を標的化するモノクローナルヒト化抗体は、好ましい部分であり、そして上記核酸に連結されてもされなくてもよい。癌治療薬の場合において、その標的抗原は、代表的にはその腫瘍細胞について固有および/または必須であるタンパク質(例えば、レセプタータンパク質HER−2)である。
【0099】
(II.処置の方法)
(投与の方法)
一般的に、核酸を投与する方法は、当該分野において周知である。特に、現在使用している処方物に従って、核酸治療薬について既に使用されている投与の経路は、上に記載される核酸についての投与および処方物の好ましい経路を提供する。
【0100】
核酸組成物は、多くの経路によって投与され得、それらの経路としては、経口の手段、静脈内の手段、腹腔内の手段、筋肉内の手段、経皮の手段、皮下の手段、局所の手段、舌下の手段、または直腸の手段が挙げられるが、これらに限定されない。核酸はまた、リポソームによって投与され得る。このような投与経路および適切な処方物は、一般的に、当業者に公知である。
【0101】
本明細書中に記載される処方物の投与は、上記miRNAまたは上記miRNAをコードする核酸をその標的に到達させる任意の受容可能な方法によって達成され得る。選択される特定の様式は、当然に、特定の処方物、処置される被験体の状態の重症度、および治療上の有効性のために必要とされる投薬量のような因子に依存する。本明細書中で一般に使用される場合、核酸の「有効な量」は、上記化合物または治療剤を受容しない対応する被験体と比較して、上記処方物が投与される被験体において、癌または関連疾患の1つ以上の症状を処置し得るか、癌または関連疾患の1つ以上の症状の進行を逆転し得るか、癌または関連疾患の1つ以上の症状の進行を停止させ得るか、または癌または関連疾患の1つ以上の症状の出現を予防し得る量である。薬物の実際の有効な量は、利用される特定の薬物またはその組み合わせ、処方される特定の組成物、投与の様式、および患者の年齢、体重、状態、ならびに処置される症状および状態の重症度によって変化し得る。
【0102】
当業者に公知である任意の受容可能な方法が使用されて、処方物が上記被験体に投与され得る。上記投与は、処置される状態に依存して、局所的(すなわち、特定の領域、生理系、組織、器官、または細胞型に対して)であっても全身的であってもよい。
【0103】
注射は、例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、または腹腔内であり得る。上記組成物は、例えば、癌の処置または予防のために皮内に注射され得る。いくつかの実施形態において、上記注射は、複数の位置において与えられ得る。移植は、移植可能な薬物送達システム(例えば、マイクロスフェア、ヒドロゲル、ポリマーレザバ、コレステロールマトリックス、ポリマーシステム(例えば、マトリックスの侵食システムおよび/または拡散システム)および非ポリマーシステム(例えば、圧縮したか、融合したか、または部分的に融合したペレット)を挿入する工程を包含する。吸入は、吸入器中のエアロゾルを用いて、単独か、または吸収され得るキャリアに結合されるかのいずれかで組成物を投与する工程を包含する。全身投与のために、上記組成物は、リポソーム中にカプセル化されることが好ましくあり得る。
【0104】
好ましくは、上記薬剤および/または核酸送達システムは、上記薬剤および/または核酸送達システムの組織特異的な取り込みを可能にする様式で提供される。技術としては、包帯もしくは経皮送達システムのような組織局在化デバイスまたは器官局在化デバイスを使用すること、侵襲的デバイス(例えば、血管カテーテルまたは尿路カテーテルを使用すること、およびインターベンショナルデバイス(例えば、薬物送達能力を有し、そして膨張性デバイスまたはステントグラフトのように構成されるステント)を使用することが挙げられる。
【0105】
上記処方物は、ポリマーマトリックスの拡散を経るか、またはポリマーマトリックスの分解によって、生体内分解性(bioerodible)移植物を使用して送達され得る。特定に実施形態において、上記処方物の投与は、特定の期間(例えば、数時間、数日間、数週間、数ヶ月間または数年間)にわたる上記miRNAに対する連続的な曝露をもたらすために設計され得る。これは、例えば、処方物の投与を繰り返すことによってか、または上記miRNAが反復投与無しで長期にわたって送達される、持続放出もしくは徐放の送達システムによって達成され得る。このような送達システムを使用した上記処方物の投与は、例えば、経口投薬形態、ボーラス注入、経皮パッチまたは皮下移植物によるものであり得る。上記組成物の実質的に一定の濃度を維持することが、いくつかの場合において好ましくあり得る。
【0106】
適切な他の送達システムとしては、時間放出送達システム、遅延放出送達システム、持続放出送達システム、または徐放送達システムが挙げられるが、これらに限定されない。このようなシステムは、多くの場合において反復投与を回避し得、被験体および医師に対する利便性を増加させる。多くの型の放出送達システムが、利用可能であり、そして当業者に公知である。それらとしては、例えば、ポリマーベースのシステム(例えば、ポリ乳酸および/もしくはポリグリコール酸、ポリ無水物、ポリカプロラクトン、コポリオキサレート(copolyoxalate)、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、ならびに/またはこれらの組み合わせが挙げられる。核酸を含む上述のポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載される。他の例としては、以下が挙げられる:ステロール(例えば、コレステロール、コレステロールエステル)および脂肪酸または天然の脂肪(例えば、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド)を含む脂質ベースであるナノポリマーシステム;ヒドロゲル放出システム;リポソームベースのシステム;リン脂質ベースのシステム;シラスティックシステム;ペプチドベースのシステム;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を使用した圧縮錠;または部分的に融合した移植物。特定の例としては、上記miRNAがマトリックス内で処方物中に含まれる侵食システム(例えば、米国特許第4,452,775号、同第4,675,189号、同第5,736,152号、同第4,667,013号、同第4,748,034号および同第5,239,660号に記載されるような)、または活性成分がその放出速度を制御する拡散システム(例えば、米国特許第3,832,253号、同第3,854,480号、同第5,133,974号、および同第5,407,686号に記載されるような)が挙げられるが、これらに限定されない。上記処方物は、例えば、マイクロスフェア、ヒドロゲル、ポリマーレザバ、コレステロールマトリックス、またはポリマーシステムとしてあり得る。いくつかの実施形態において、上記システムは、例えば、上記miRNAを含む処方物の拡散または浸食/分解速度の制御によって、上記組成物の持続放出もしくは徐放を起こさせ得る。さらに、ポンプベースのハードウェア送達システムは、1つ以上の実施形態を行うために使用され得る。
【0107】
放出がバースト(burst)で起きるシステムの例としては、例えば、組成物がポリマーマトリックス中にカプセル化されるリポソーム中に封入され、そのリポソームが特定の刺激(例えば、温度、pH、光または分解酵素)に感受性であるシステム、および組成物がマイクロカプセルのコア(core)を分解する酵素を用いてイオン的(ionically)にコーティグされたマイクロカプセルによってカプセル化されるシステムが挙げられる。インヒビターの放出が漸進的かつ継続的であるシステムの例としては、例えば、組成物がマトリックス内にある形態で含まれる侵食システム、および組成物が、例えば、ポリマーによって、制御された速度にて浸透する拡散システムが挙げられる。このような持続放出システムは、例えば、ペレット、またはカプセルの形態であり得る。
【0108】
長期放出移植物の使用は、いくつかの実施形態において特に適切であり得る。本明細書中で使用される場合、「長期放出」は、組成物を含む移植物が、少なくとも30日間もしくは45日間、および好ましくは少なくとも60日間もしくは90日間、またはいくつかの場合においてはさらに長く組成物の治療有効レベル送達するように構築され、そして準備されることを意味する。長期放出移植物は、当業者に周知であり、そしてそれらとしては、上に記載される放出システムのいくつかが挙げられる。
【0109】
特定の患者に対する投薬量は、従来の考慮事項を用いて(例えば、適切な、従来の薬理学的プロトコルによって)、当業者によって決定され得る。医師は、例えば、最初に比較的低用量を処方し、次いで適切な応答が得られるまでその用量を増加し得る。患者に投与される用量は、その適用に依存して、長い期間をかけて患者において有益な治療的応答(すなわち、例えば、症状を減少させる)、または他の適切な活性を達成するのに十分である。上記用量は、特定の処方物の効力、および利用されるmiRNAの活性、安定性または血清半減期、および患者の状態、および処置される患者の体重または表面積によって決定される。上記用量の大きさがまた、特定の患者における特定のベクター、処方物などの投与に伴う任意の有害な副作用の存在、性質および程度によって決定される。
【0110】
1つ以上の核酸を含有する治療的組成物は、必要に応じて、1つ以上の適切なインビトロおよび/またはインビボの疾患の動物モデルにおいて、当該分野で周知である方法によって、効力、組織代謝を確認するためおよび投薬量を推定するために試験される。特に、投薬量は、関連したアッセイにおいて、処置対非処置の活性、安定性または他の適切な尺度(例えば、処置した細胞または動物モデル対未処置の細胞または動物モデルの比較)によって最初に決定され得る。処方物は、関連した処方物のLD50、ならびに/または、例えば、患者の質量および全体的な健康に適した種々の濃度における上記核酸の任意の副作用の観察によって決定される速度にて投与される。投与は、単一用量または分割した用量を介して達成され得る。
【0111】
インビトロモデルが使用されて、潜在的な癌の処置としての上記核酸の有効量を決定し得る。適切なインビトロモデルとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:培養した腫瘍細胞の増殖アッセイ、軟寒天における培養した腫瘍細胞の増殖(Freshney、(1987)、Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique、Wily−Liss、New York、N.Y.第18章および第21章を参照のこと)、Giovanellaら、J.Natl.Can.Inst.、52:921−30(1974)に記載されるようなヌードマウスにおける腫瘍系、Pilkingtonら、Anticancer Res.、17:4107−9(1997)に記載されるような、Boyden Chamberアッセイにおける腫瘍細胞の移動度および侵襲の可能性、ならびに新脈管形成アッセイ(例えば、Ribattaら、Intl.J.Dev.Biol.、40:1189−97(1999)およびLiら、Clin.Exp.Metastasis、17:423−9(1999)にそれぞれ記載されるような、ヒヨコ絨毛尿膜の血管新生の誘導または血管内皮細胞の移動の誘導)。適切な腫瘍細胞株は、例えば、American Type Tissue Culture Collectionカタログから利用可能である。
【0112】
インビボモデルは、潜在的な癌の処置としての上に記載される核酸の有効量を決定するのに好ましいモデルである。適切なインビボモデルとしては、National Cancer Institute(NCI)Frederick Mouse Repositoryから入手可能である、KRASオンコジーン(Lox−Stop−Lox K−RasG12D変異体、Kras2tm4Tyj)に変異を有するマウスが挙げられるが、これに限定されない。当該分野において公知であり、かつ利用可能な他のマウスモデルとしては、胃腸癌、造血器の癌(hematopoietic cancer)、肺癌、乳腺の癌、神経系の癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、子宮頚癌、口腔癌、および肉腫の癌(sarcoma cancer)についてのモデルが挙げられるが、これらに限定されない(http://emice.nci.nih.gov/mouse models/を参照のこと)。
【0113】
疾患の処置または予防において投与される上記miRNAの有効な量の決定において、医師は、循環血漿レベル、処方物の毒性、および疾患の進行を評価する。70キログラムの患者に投与される用量は、代表的に、現在使用されている治療的なアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、サイトメガロウイルスRNAの処置についてFDAによって認可され、関連する組成物の変化した活性または血清半減期について調整されたVitravene(登録商標)(ホミビルセンナトリウム注射)の投薬量と等しい範囲である。
【0114】
本明細書中に記載される処方物は、任意の公知である従来の療法によって処置の状態を補い得、それらの療法としては、抗体投与、ワクチン投与、細胞傷害性薬剤、天然のアミノ酸ポリペプチド、核酸、ヌクレオチドアナログ、および生物学的応答改変因子の投与が挙げられるが、これらに限定されない。2つ以上の併用される化合物は、同時に使用されても、連続的に使用されてもよい。例えば、上記核酸はまた、抗癌カクテルの一部として治療的に有効な量で投与され得る。抗癌カクテルは、送達のための薬学的に受容可能なキャリアに加えて、上記オリゴヌクレオチドまたは調節因子と1種以上の抗癌薬との混合物である。癌の処置としての抗癌カクテルの使用は、慣用的である。当該分野で周知であり、かつ本明細書中に記載される核酸と組み合わせた処置として使用され得る抗癌薬としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アクチノマイシンD、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン(cis−DDP)、シクロホスファミド、シタラビンHCl(アラビノシルシトシン)、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、ドキソルビシンHCl、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エトポシド(V16−213)、フロクスウリジン、5−フルオロウラシル(5−Fu)、フルタミド、ヒドロキシ尿素(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、酢酸ロイプロリド(LHRH−放出因子アナログ)、ロムスチン、メクロレタミンHCl(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート(MTX)、マイトマイシン、ミトザントロンHCl、オクトレオチド、プリカマイシン、プロカルバジンHCl、ストレプトゾシン、クエン酸タモキシフェン、チオグアニン、チオテパ、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、アムサクリン、アザシチジン、ヘキサメチルメラミン、インターロイキン−2、ミトグアゾン、ペントスタチン、セムスチン、テニポシド、および硫酸ビンデシン。
【0115】
(処置される疾患)
癌の処置は、腫瘍細胞増殖を阻害し、新脈管形成(腫瘍の増殖を補助するのに必要である新しい血管の増殖)を阻害し、そして/または腫瘍細胞の移動度または侵襲性を減少させることで転移を制止することによって腫瘍の後退を促がす。本明細書中に記載される治療的処方物は、以下を含む成人および小児の腫瘍学において有効であり得る:固形腫瘍/悪性腫瘍、局所で進行した腫瘍、ヒト軟部組織肉腫、リンパ行性転移を含む転移性癌、多発性骨髄腫、急性白血病および慢性白血病、ならびにリンパ腫を含む血液細胞の悪性腫瘍、口の癌、喉頭癌および甲状腺癌を含む頭部および頚部の癌、小細胞癌および非小細胞癌を含む肺癌、小細胞癌および腺管癌を含む乳癌、食道癌、胃癌、結腸癌、結腸直腸癌および結腸直腸の新形成に関するポリープを含む胃腸癌、膵臓癌、肝臓癌、膀胱癌および前立腺癌を含む泌尿器の癌、卵巣癌、子宮癌(子宮内膜癌を含む)、および卵胞における固形腫瘍を含む女性生殖管の悪性腫瘍、腎細胞癌を含む腎臓癌、内因性の脳腫瘍を含む脳の癌、神経芽細胞腫、星状細胞の脳腫瘍、神経膠腫、中枢神経系における転移性腫瘍細胞の侵襲、骨腫を含む骨癌、悪性黒色腫を含む皮膚癌、ヒトの皮膚ケラチノサイトの腫瘍の進行、有棘細胞癌、基底細胞癌、血管周囲細胞腫およびカポジ肉腫。治療的処方物は、単独か、または補助の癌療法(例えば、外科手術、化学療法、放射線療法、温熱療法、免疫療法、ホルモン療法、およびレーザー療法)と組み合わせて、治療的に有効な投薬量で投与されて、例えば、腫瘍の大きさを減少させるか、腫瘍増殖速度を遅くするか、腫瘍の細胞増殖を減少させるか、癌細胞の死を促進するか、新脈管形成を阻害するか、転移を阻害するか、あるいは他の方法で必ずしも癌を根絶せずに全体的な臨床状態を改善する有益な効果を提供し得る。
【0116】
癌としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:胆道癌;膀胱癌;乳癌;多形性神経膠芽細胞腫および髄芽細胞腫を含む脳の癌;子宮頚癌;絨毛癌;結腸直腸癌を含む結腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;頭部および頚部の癌;急性リンパ性白血病および骨髄性白血病、多発性骨髄腫、AIDS関連性白血病ならびに成人T細胞白血病リンパ腫を含む血液学的新生物;ボーエン病およびパジェット病を含む上皮内新生物;肝臓癌;小細胞肺癌および非小細胞肺癌を含む肺癌;ホジキン病およびリンパ球性リンパ腫を含むリンパ腫;神経芽細胞腫;有棘細胞癌を含む口腔癌;骨肉腫;上皮細胞、間質細胞、生殖細胞および間葉細胞から生じる癌を含む卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、滑膜肉腫および骨肉腫を含む肉腫;黒色腫、カポジ肉腫、基底細胞の癌、および扁平上皮癌を含む皮膚癌;胚の腫瘍(例えば、セミノーマ、非セミノーマ(奇形腫、絨毛癌)、間質の腫瘍、および生殖細胞の腫瘍)を含む精巣癌;甲状腺の腺癌(thyroid adenocarcinoma)および髄質の癌を含む甲状腺癌;腺癌およびウィルムス腫瘍を含む移行性の癌ならびに腎臓の癌。好ましい実施形態において、上記処方物は、肺癌の処置または予防のために投与される。
【0117】
さらに、治療的核酸は、癌の予防的処置のために使用され得る。個体に癌を発症し易くさせる、当該分野で公知である遺伝性の状態および/または環境状況(例えば、発癌物質への曝露)が存在する。これらの状況において、癌を発症する危険を減少させるために、上記核酸の治療有効量を用いてこれらの個体を処置することが、有利であり得る。1つの実施形態において、適切な処方物中の核酸は、癌の家族歴を有する被験体、または癌についての遺伝的素因を有する被験体に投与され得る。他の実施形態において、適切な処方物中の上記核酸は、特定の年齢に達している被験体、または癌になる可能性がより高い被験体に投与される。なお他の実施形態において、適切な処方物中の上記核酸は、癌(例えば、初期かまたは進行した)の症状を示す被験体に投与される。なお他の実施形態において、適切な処方物中の上記核酸は、予防措置として被験体に投与され得る。いくつかの実施形態において、適切な処方物中の上記核酸は、人口統計もしくは疫学研究に基づく被験体、または特定の領域もくしは経歴にある被験体に投与され得る。
【実施例】
【0118】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに理解される。
【0119】
(実施例1.RASは、let−7マイクロRNAファミリーにによって調節される)
C.elegansのlet−7、mir−48、mir−84およびmir−241は、let−7ファミリーを構成する4種の発生学的に調節されたmiRNAをコードする(Lauら、(2001)、Science、294、858−862;Limら、(2003)、Genes Dev、77、991−1008;Reinhartら、(2000)、Nature、403、901−906)。このファミリーは、その成熟miRNAの5’末端における特定の保存を伴う高い配列同一性を提示する(図10A、図10B)。C.elegansのlet−7ファミリーmiRNA(mir−84)は、陰門形成(RAS/MAPキナーゼシグナル伝達を分析するためのモデル)に関与する(WangおよびSternberg、(2001)、Curr Top Dev Biol
51、189−220)。C.elegansのlet−60/RASは、上記let−7ファミリーのメンバーによって調節され、let−7およびmir−84は、let−60/RASの3’UTRにおける複数の部位と相補的である。let−7およびmir−84は、それぞれ、皮下組織および陰門においてlet−60/RASについて逆の様式で発現される。
【0120】
let−7およびmir−84は、let−60/RASと遺伝子的に相互作用し、これは、let−7およびmir−84によるRAS発現の負の調節と一致する。この結果は、miRNAがRAS(重要なヒトのオンコジーン)を調節し得るということを初めて実証する。さらに、3種全てのヒトRAS遺伝子は、細胞培養において上記オンコジーンをlet−7 miRNA媒介性の調節に供するそれらの3’UTR中にlet−7相補部位を有する。肺腫瘍組織は、正常な肺組織と比較して、顕著に減少したレベルのlet−7、および顕著に増加したレベルのRASタンパク質を提示し、このことは、肺の腫瘍形成におけるlet−7の機構としてRASのlet−7調節を示唆する。
【0121】
(実験手順)
プラスミド構築。PSJ840(mir−84::gfp)を、プライマーMIR84UPおよびMIR84DN(全てのプライマー配列は必要な際に入手可能である)を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)使用して、N2ゲノムDNA由来の成熟mir−84配列の上流の2.2kbのゲノム配列(塩基対−2201〜−9)を増幅し、そしてSmaI部位およびAgeI部位を、それぞれ5’末端および3’末端に付加することによって作製した。この産物を、SmaIおよびAgeIによって消化し、次いでSmaIおよびAgeIによって消化したpPD95.70ベクターにクローニングした。mir−84の上流のDNAは、let−7の上流のDNAにも見出される種々の配列エレメントを含んだ。PSJo84(mir−84(+++))を、プライマーMIR84UPおよびMIR84DN2を用いたPCRを使用して、N2ゲノムDNA由来の上記mir−84配列自体を含む成熟mir−84配列の上流および下流の3.0kbのゲノム配列(塩基対−2201〜+792)を増幅し、そしてSmaI部位を5’末端および3’末端の両方に付加することによって作製した。この産物を、製造業者(Invitrogen)によって記載される通り、TOPO TA Cloning Kitを使用してpCR4−TOPOベクターに連結した。空のTOPOコントロールベクターを、EcoRIによってPSJo84を消化し、4kbのベクターバンドを抽出し、そしてそれを自己連結させることによって作製した。miR−84欠失プラスミド(o84Δ84(Δmir−84(+++)))を、プライマーMIR84UPと共にDEL84DNを使用し、プライマーMIR84DN2と共にDEL84UPを使用し、そしてテンプレートとしてPSJo84プラスミドを使用した2つの別個のPCR反応によって開始する、オーバーラップ伸長PCRによって作製した。2つのPCR産物を精製し(QIAGEN)、次いでプライマーMIR84UPおよびMIR84DN2を使用した最終的なPCRのためのテンプレートとして一緒に使用した。この最終産物(75ntのプレmiR84をコードする配列の欠失を除いてPSJo84と同一)を、TOPO TA Cloning Kit(Invitrogen)を使用してpCR2.1−TOPOベクターに連結し、そしてo84Δ84と称した。GFP60を、プライマー3LET60UPおよび3LET60DNを用いたPCRを使用して、N2ゲノムDNA由来のlet−60 3’UTRをコードする819bpのゲノム配列を増幅し、そしてEcoRI部位およびSpeI部位を、それぞれその5’末端および3’末端に付加することによって作製した。この産物を、EcoRIおよびSpeIによって消化し、次いでEcoRIおよびSpeIによって消化したpPD95.70ベクター(Fire Lab)にクローニングし、それによってlet−60 3’UTRによってpPD95.70において見出されるunc−54 3’UTRを置換した。次いでlet−60 3’UTRが続く緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)を、プライマーBGLGFPおよび3UTRNOTを用いたPCRを使用して、このプラスミドから増幅し、そしてBglII部位およびNotI部位を、それぞれその5’末端および3’末端に付加した。このPCR産物を、BglIIおよびNotIによって消化し、そしてBglIIおよびNotIによって消化したPB255に連結して、上記let−60 3’UTRによってGFPを駆動するlin−31プロモーターおよびエンハンサーを含むプラスミドGFP60を得た。GFP54を、プライマーBGLGFPおよび3UTRNOTを用いたPCRを使用して、unc−54 3’UTRが続くgfpをpPD95.70から増幅することによって作製した。このPCR産物を、消化し、そしてBglIIおよびNotIによって消化したPB255に連結し、unc−54 3’UTRによってGFPを駆動するlin−31プロモーターおよびエンハンサーを含むプラスミドGFP54を得た。pGL3−NRAS SおよびpGL3−NRAS
Lを、IMAGE cDNAクローン(アクセッション番号AI625442)からのH.s.NRAS 3’UTRの1140bpの短い形態全体、またはH.s.ゲノムDNA由来のH.s.NRAS 3’UTR(最初の43bpを除く)の3616bpの長い形態全体を増幅し、そしてそれぞれ、プライマーSMJ100およびSMJ101またはプライマーSMJ102およびSMJ103を用いたPCRによってその末端にNheI部位を付加することによって作製した。これらの産物を、NheIによって消化し、そしてXbaIによって消化したpGL3−Control(Promega)に連結し、そしてCIPを用いて処理し、H.s.NRAS 3’UTRの短い形態全体または長い形態全体を含むRrluc発現プラスミドを得た。col−10−lacZ−let−60 3’UTRレポーター遺伝子を含むpFS1047を産生するために、let−60
3’UTR全体を、プラスミドB29(Wightman,B.、Ha,I.、およびRuvkun,G.、(1993)、Cell、75、855−862)のSacII部位およびNcoI部位にサブクローニングした。
【0122】
let−60;let−7二重変異体。let−60(n2021);let−7(mn112)二重変異体動物を、let−60(n2021)ヘテロ接合体とlet−7(mn112)unc−3/0;mnDp1ヘミ接合体(hemiyzgote)とを交雑させることによって産出した。この交雑から、180個体のホモ接合let−7(mn112)F2動物は、それらのUnc表現型によって決定したところ、unc−3に対するlet−7(mn112)の緊密な結合に起因して雌性であった。これらのうちの10個体が、成虫期まで生存し、そして卵を産んだ。これらの動物から生じた子孫は、let−60変異体動物の特徴である棒状の表現型を伴う幼虫として死亡し、それによって、これらの動物全てはlet−60(n2021)変異を含むこと、および成虫の生存はlet−60(n2021)変異に起因するようであることが示され、本発明者らのRNAiデータが確認された。180個体のF2から、25%(または約45個体の動物)は、let−60(n2021)ホモ接合であることが予想された。これらの動物のうちの10個体のみの生存を確認したことに起因して、これはRNAiによって観察されたものと同様に、約22%の抑制を示す。しかし、同腹の規模は、低かった(通常は、約10個体の孵化した幼虫および数個の孵化していない卵)こと;および幼虫の死亡率と限定的な親の生存率との組み合わせに起因して、二重変異体系は、さらなる分析について確立できなかった;全ての子孫は幼虫として死亡した。
【0123】
C.elegansおよびトランスジェニックレポーター分析。全ての動物実験を、特に明記しない限り、室温または20℃にて行った。全ての実験プラスミドを、50〜100ng/μlにて動物に注入した。2つの異なるマーカー(rol−6(100ng/μl)およびmyo−3::gfp(50ng/μl))を、別々に、PSJo84と一緒に同時注入し:myo−3::gfp(50ng/μl)を、o84Δ84と一緒に同時注入し;そしてmyo−2::gfp(5ng/μl)を、GFP60およびGFP54と一緒に同時注入した。これらの動物は、トランスジーンについてモザイクである。個体系の間の発現を比較するために、Pn.p細胞の各々におけるGFPの発現の%を、最も高く発現するPn.p細胞の発現に対して正規化し、そして動物の各個体系について最も高いエクスプレッサー(expresser)の分画として表した。各構築物について、上記系の平均を、エラーバーとして表される各構築物についての標準偏差に従って算出した(mir−84::gfp n=239、gfp60 n=42およびgfp54 n=40)。mir−84(+++)の分析に関して、動物をDIC光学を使用して試験して、シーム細胞および陰門の解剖を記録した。LacZレポーター分析を、記載される通りに行った(Vellaら、(2004)、Genes Dev、18、132−137)。上記lin−41 3’UTRを欠くそのLCS(pFS1031)を、コントロールとして使用した(Reinhartら、(2000))。RNAi方法は、同調L1を使用した標準的な飼育手順であった(Timmonsら、(2001)、Gene、263、103−112)。全てのRNAi実験を、空ベクター(L4440)の飼育コントロールと並行して行った。let−60;let−7二重変異体交雑の詳細については、補足実験手順を参照のこと。
【0124】
哺乳動物細胞のlet−7/RAS。10%ウシ胎仔血清(GIBCO)を補充したD−MEM(GIBCO)中で増殖させたHeLa S3細胞を、製造業者のプロトコルによりLipofectamine 2000(Invitrogen)を使用して、ウェル1つあたり1.0μgのPp−luc発現プラスミド(PromegaからのpGL3−Control、pGL3−NRAS S pGL3−NRAS LおよびpGL3−KRAS)およびウェル1つあたり0.1μgのRr−luc発現プラスミド(PromegaからのpRL−TK)を使用して、12ウェルプレート中で同時トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、上記細胞を、収穫し、そして製造業者(Promega)によって記載される通り、Dual Luciferaseアッセイを使用してアッセイした。上記のように増殖させたHeLa細胞を、Lipofectamine 2000を使用して、30pmoleのAnti−miR let−7またはネガティブコントロール#1インヒビター(Ambion)によって24ウェルプレート中でトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後、RAS発現を、RASタンパク質(US Biological)に対する一次抗体と結合体化したFITCを使用した免疫蛍光によってモニタリングした。得られた蛍光シグナルを、適切なフィルターセットを使用して分析し、そしてMetaMorphソフトウェアを使用して定量化した。150〜300個の細胞の蛍光強度を、代表的に、1または数個の表示領域において測定した。前駆体およびインヒビターの両方を用いた実験を、3回行った。写真は、上記実験の1つから得た単一の視野を表し、そしてその三つ組の実験を代表するものである。完全に等しく増殖したHeLa細胞を、製造業者のプロトコルによりLipofectamine 2000(Invitrogen)を使用して、ウェル1つあたり200ngのPp−luc発現プラスミド(PromegaからのpGL3−Control、pGL3−NRAS S pGL3−NRAS LおよびpGL3−KRAS)を使用して、24ウェルプレート中で同時トランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、上記細胞を、収穫し、そして製造業者(Promega)によって記載される通り、Luciferaseアッセイを使用してアッセイした。
【0125】
10%ウシ胎仔血清(GIBCO)を補充したD−MEM(GIBCO)中で増殖させたHepG2細胞を、製造業者のプロトコルに従いsiPort Neo−FX(Ambion)を使用して、15pmoleまたは5pmoleのPre−miR Let−7cまたはネガティブコントロール#1前駆体miRNAs(Ambion)によって24ウェルプレート中でトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後、RAS発現を、上に記載される通り、免疫蛍光によってモニタリングした。
【0126】
Ambion,Inc.によるものを使用したmiRNAマイクロアレイ分析手順。3人の乳癌患者、6人の結腸癌患者、および12人の肺癌患者由来の腫瘍組織サンプルならびに隣接正常組織(NAT)サンプルからの全RNAを、mirVana RNA Isolation Kit(Ambion)を使用して単離した。20μgの各全RNAサンプルを、15%変性ポリアクリルアミドゲルを使用したポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分画し、そして各サンプルについてのmiRNA分画を、回収した。上記サンプルの全てからのmiRNAを、ポリ(A)ポリメラーゼ反応に供し、ここでアミン改変型ウリジンを、約40nt長の尾部の一部として組み込んだ(Ambion)。尾部を有する腫瘍サンプルを、アミン反応性Cy3(Amersham)を使用して蛍光標識し、そして上記隣接正常細胞サンプルを、Cy5(Amersham)によって標識した。蛍光標識したmiRNAを、ガラス繊維フィルターの結合および溶出(Ambion)によって精製し、そして上記同じ患者由来の腫瘍サンプルおよび隣接正常組織サンプルを、混合した。各サンプル混合物を、167種のmiRNAプローブが配列されたスライドと14時間ハイブリダイズさせた。上記マイクロアレイを、2×SSC中で3回×2分間(min)洗浄し、そしてGenePix 4000B(Axon)を使用して走査した。各エレメントに対するCy3標識サンプルおよびCy5標識サンプルについての蛍光強度を、上記アレイ上の合計のCy3シグナルおよびCy5シグナルによって正規化した。各エレメントに関する正規化したシグナル強度を、患者サンプルの各対由来の腫瘍サンプルとNATサンプルとの間で比較し、そして隣接正常サンプルに対する腫瘍サンプルの対数比として表した。
【0127】
ノーザン分析。mir−84のノーザンを、記載される通りに行った(Johnsonら、(2003)、Dev Biol、259、364−379)。ヒト組織について、患者1および患者5の腫瘍組織および隣接正常組織由来の1μgの全RNAを、15%変性ポリアクリルアミドゲルを使用したPAGEによって分画した。上記RNAを、0.5×TBE中で200mAにて2時間のエレクトロブロッティングによって、正に荷電したナイロンメンブレンに移した。上記ノーザンブロットを、乾燥し、次いで、10cpmのlet−7cと相補的な放射標識転写物と一緒に、10mlのULTRAhyb−Oligo(Ambion)中で一晩インキュベートした。上記ブロットを、2×SSC、0.5% SDS中で室温にて3回×10分間洗浄し、次いで2×SSC、0.5% SDS中で42℃にて1回×15分間洗浄した。Stormシステム(Amersham)を使用した一晩のホスホイメージング(phosphorimaging)は、let−7cを示した。上記プロセスを、5S rRNAに対する放射標識プローブを使用して繰り返した。
【0128】
肺腫瘍タンパク質/ノーザン/mRNA分析。全RNAおよび全タンパク質を、mirVana PARIS Kit(Ambion)を使用して、3人の肺癌患者由来の腫瘍組織サンプルおよび隣接正常組織サンプルから単離した。let−7 miRNAおよびU6 snRNAを、上に記載したノーザン手順を使用して測定した。NRAS mRNAおよびB−アクチンmRNAならびに18S rRNAを、上記標的RNAの各々に特異的なプライマーを使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した。RASタンパク質およびGAPDHタンパク質を、上に記載したRAS抗体およびGAPDH(Ambion)に対する抗体を使用したウェスタン分析によって測定した。
【0129】
アクセッション番号。以下の配列を、3’UTR LCSについて検索した:Hs KRAS(Genbank M54968)、Hs HRAS(NM176795)、Hs
NRAS(BC005219)。NRASは、2Kb形態および4.3Kb形態として存在することが公知である。BC005219は、1151ntのポリアデニル化3’UTRを有する短い形態を示す。2種のヒトESTクローン(Genbank BU177671およびBG388501)を配列決定して、さらなるNRAS 3’UTR配列を得た。これは、上記NRAS 3’UTRが、代替的なポリアデニル化および切断部位(最初の2491nt下流)を利用する3642ntのポリアデニル化3’UTRバージョンで存在することを示した。このバージョンは、おそらく長いNRAS形態に対応する。その配列を、アクセッション番号AY941100およびAY941101を用いて示した。
【0130】
(結果)
C.elegansにおけるlet−7 miRNAのlet−60/RASを含むさらなる標的。上記let−7 miRNAは、それが少なくとも2つの標的遺伝子(lin−41(Slackら、(2000)、Molec Cell、5、659−669)およびhbl−1(Abrahanteら、(2003)、Dev Cell、4、625−637;Linら、(2003)、Dev Cell、4、639−650))をダウンレギュレートする場合(シーム細胞の早発性の末端への分化を生じる変異)、C.elegansにおいて時間的に発現される(Johnsonら、(2003)、Nature、426、845−849;Pasquinelliら、(2000)、Nature、408、86−89;Reinhartら、(2000)、Nature、403、901−906)。C.elegansのシーム細胞分化におけるlet−7の役割およびヒトにおけるその潜在的な役割を十分に理解するために、let−7のさらなる標的を同定した。C.elegans遺伝子についてのコンピューターによるスクリーニングを、let−7ファミリーの3’UTRにおけるlet−7ファミリー相補部位(LCS)(Grosshans,H.ら、Dev Cell、(2005)、8(3):321−30)を用いて行った。最高スコアの遺伝子の1つは、ヒトのオンコジーンRASのC.elegansオルソログをコードするlet−60であった。8種のLCSを、確認されたLCSのような特徴(Linら、(2003)、Dev Cell、4、639−650;Reinhartら、(2000)、Nature、403、901−906;Slackら、(2000)、Molec Cell、5、659−669;Vellaら、(2004)、Genes Dev、18、132−137)を有するlet−60の3’UTRにおいて同定した(図4A)。その同定した部位の多くを、近縁の線虫C.briggsae由来のlet−60の3’UTR(Steinら、(2003)、PLoS Biol、1、E45)において見出した(図4A、図11および図12)。このことは、それらの部位が生物学的に重要であるらしいことを示唆する。さらなる3つの部位を、let−60/RASをコードする配列、およびlet−7ファミリーmiRNAも結合し得る10個の他の適合しない3’UTR部位に見出した(図11)。
【0131】
let−7(n2853ts)機能喪失型(If)変異体は、減少したlet−7 miRNAを発現し、そして非許容温度にて陰門の破裂によって死亡する(Reinhartら、(2000);Slackら、(2000)、Molec Cell、5、659−669)。let−7、lin−41およびhbl−1の2つの先に同定された標的における機能喪失型変異は、let−7致死表現型を部分的に抑制する特性を有する(Abrahanteら、(2003)、Dev Cell、4、625−637;Linら、(2003)、Dev Cell、4、639−650;Reinhartら、(2000)、Nature、403、901−906;Slackら、(2000)、Molec Cell、5、659−669)。RNA干渉(RNAi)を供給することによるlet−60の機能の後胚期における減少がまた、再現可能な様式でlet−7(n2853)を部分的に抑制したことを見出した。コントロールRNAiおいて成長したlet−7変異体の5%が25℃の非許容温度にて生存し(n=302)、一方でlet−7(n2853);let−60(RNAi)動物の27%が生存した(n=345)。従って、他の公知のlet−7標的と同様に、let−60 Ifは、let−7(n2853)致死表現型を部分的に抑制し、let−7の死亡率が、少なくとも部分的に、let−60の過剰発現によって引き起こされ得ることを示唆する。しかし、let−60(RNAi)は、let−7シーム細胞の末端への分化の欠損を抑制しないようであり、そしてシーム細胞の早発性の末端への分化を引き起こさなかった。さらに、let−60(RNAi)に供された野生型の動物は、let−60対立遺伝子に関連する代表的な致死的でありかつ陰門がない表現型を提示しなかった(Beitelら、(1990)、Nature 348、503−509;Hanら、(1990)、Genetics、126、899−913;HanおよびSternberg、(1990)、Cell、63、921−931)。let−60(RNAi)は、let−60 mRNAの約80%のノックダウンをもたらし(Grosshans,H.ら、(2005)、Dev Cell、8(3):321−30)、残りのlet−60が、シーム細胞分化および陰門形成に、なお十分であることを示唆した。let−60(RNAi)の特性を検証するために、let−7(mn112)成虫の全てが死亡する一方で、let−60(n2021);let−7(mn112)成虫が生存し得ることを示した(実験手順を参照のこと)。興味深いことに、let−7(n2853);let−60(RNAi)動物は、同腹を行い、そしていくつかの卵を産むことができ、let−7の陰門が破裂する表現型が、単に陰門の欠如に起因して抑制されなかったことを示唆した。
【0132】
let−60およびlet−7は、皮下組織のシーム細胞において両方とも発現される(DentおよびHan、1998、Post−embryonic expression pattern of C.elegans let−60 ras reporter constructs.、Mech Dev、72、179−182;Johnsonら、2003、A microRNA controlling left/right neuronal asymmetry in Caenorhabditis
elegans.、Nature、426、845−849)。let−60 3’UTRを、皮下組織に発現するcol−10プロモーターによって駆動されるEscherichia coliのlacZ遺伝子の後方に融合した。レポーター遺伝子活性がL4段階付近でダウンレギュレートされ(図5A)、ほぼ同時に、let−7がシーム細胞において発現されることを見出した(Johnsonら、(2003)、Nature、426、845−849)。対照的に、未調節のコントロール3’UTRに融合された同じレポーター遺伝子は、全ての段階において発現した(図5A)(Reinhartら、(2000)、Nature、403、901−906;Slackら、(2000)、Molec Cell、5、659−669;Vellaら、(2004)、Genes Dev、18、132−137;Wightmanら、(1993)、Cell、75、855−862)。ダウンレギュレーションがlet−7(n2853)変異体において失敗した(図5B)ことに起因して、let−60 3’UTRによって指揮されるレポーターのダウンレギュレーションが野生型let−7遺伝子に依存することを見出した。従って、複数の傾向の証拠は、let−60がlet−7によって負に調節されることを強力に示唆する。第1に、let−60 3’UTRは、let−7と相補的な複数のエレメントを含み;第2に、let−60 3’UTRは、let−7依存的な様式でレポーター遺伝子のダウンレギュレーションを指揮し;第3に、このダウンレギュレーションは、上記皮下組織におけるlet−7のアップレギュレーションと相反的であり;そして最後に、let−60の機能喪失型は、let−7致死表現型を部分的に抑制する。
【0133】
let−7ファミリーメンバーmir−84は、陰門前駆細胞において劇的に発現される。let−60/RASは、陰門形成におけるその役割について最もよく理解されている(WangおよびSternberg、(2001)、Curr Top Dev Biol、51、189−220)が、let−7は、陰門において発現することが報告されていない。C.elegansにおいて、let−7、mir−48、mir−84およびmir−241は、let−7ファミリーを構成する(Lauら、(2001)、Science、294、858−862;Limら、(2003)、Genes Dev、17、991−1008;Reinhartら、(2000)、Nature、403、901−906)(図10A、図10B)。先の研究は、let−7::gfp融合体が、let−7の時間的な発現を忠実に繰り返し、そしてlet−7変異体において影響を受けるシーム細胞中で時間的に発現されることを示した(Johnsonら、(2003)、Dev Biol、259、364−379)。mir−84(最も近縁のlet−7類縁体)の発現パターンを、miR−84をコードする配列のすぐ上流の2.2キロベース(Kb)のゲノム配列を緑色蛍光タンパク質(gfp)遺伝子に融合することによって試験し、mir−84::gfpを、最初に、幼虫段階1(L1)において体幹の生殖腺で観察した。L3動物において、強力な発現が、アンカー細胞(AC)を含む子宮細胞において観察され、そして弱い動的発現が、陰門前駆細胞(VPC)において観察された(図6A〜図6C)。VPCは、L3段階の間およびその後の段階に陰門を生じる多分化能の腹部皮下組織細胞である(SulstonおよびHorvitz、(1977)、Dev Biol、56、110−156)。VPCは、上記ACからのEGFシグナル伝達に依存して3つの運命のうちの1つを選ぶ(WangおよびSternberg、(2001)、Curr Top Dev Biol、51、189−220)。上記ACに最も近い細胞(P6.p)は、ほぼLIN−3/EGFシグナルを受容し(Katzら、(1995)、Cell、82、297−307)、そしてRAS/MAPKシグナル伝達経路の活性化によって一次(1°)運命を選ぶ(Beitelら、(1990)、Nature、348、503−509;Hanら、(1990)、Genetics、126、899−913;HanおよびSternberg、(1990)、Cell、63、921−931):P5.pおよびP7.pは、より少ないLIN−3を受容し、P6.pからの二次的な側方シグナルを受容し(Sternberg、(1988)、Nature、335、551−554)、そして二次(2°)運命を選択する:P3.p、P4.pおよびP8.pは、非誘導性の三次(3°)運命を選ぶ。mir−84::gfp発現を、発現が稀に観察されるP6.pを除き、全てのVPCにおいてL3段階の初期から中期の間に観察した(図6A)。L3段階の中期から後期におけるその後のVPC発現を、P6.pの娘においてP6.pxxへのそれらの分裂直前に最初に出現する、より弱いGFPによって、P5.pおよびP7.pの娘(Pn.px)を限定した。その後、等価な発現を、P5.p、P6.pおよびP7.pの娘(Pn.pxx)において観察した。mir−84::gfp発現は、陰門形成におけるそれらの細胞の運命がACからのシグナル伝達によって決定される場合、上記段階におけるP6.pを除き、全てのVPCにおいて観察され(Ambros、(1999)、Development、126、1947−1956)、これは、mir−84が陰門細胞の運命決定に関連し得ることを示唆する。L4段階において、GFP発現は、ACおよび他の子宮細胞において維持され、皮下組織のシーム細胞において弱く出現し、そして多くのP5.p〜P7.pの子孫において、より高いレベルにアップレギュレートされた。第2のlet−7ファミリーメンバー(mir−48)もまた、非P6.p VPCにおいて発現され、上記VPCにおけるmir−48とmir−84との間の重複性についての可能性を示唆した。
【0134】
mir−84の過剰発現は、陰門およびシームの欠損を引き起こす。miR−84を、miR−84をコードする配列の2.2Kb上流から0.8Kb下流にわたる3.0KbのゲノムDNAフラグメントのマルチコピーアレイ(multi−copy array)を有するトランスジェニック動物(mir−84(+++)と称される)を産出することによって過剰発現させた。これらの動物は、高いレベルのmiR−84を発現し、そして陰門の突出および破裂を含む異常な陰門形成の表現型を提示した(40%の動物、n=40)。シーム細胞におけるmir−84::gfp発現と一致して、mir−84(+++)動物はまた、L4段階におけるシーム細胞の早発性の末端への分化および翼の形成(発生のタイミングが早発性である変異体において見られる特徴)を示した。実際に、let−7過剰発現株もまた、L4段階においてシーム細胞の早発性の末端への分化を示した(Reinhartら、(2000)、Nature、403、901−906)。対照的に、予想されるプレmir−84(Δmir−84(+++))をコードする配列の75ヌクレオチド(nt)の欠失を除いて、mir−84(+++)と同一の構築物を含むアレイを保有する動物は、陰門またはシームの欠損を全く示さず、mir−84(+++)において観察される表現型が、miR−84配列に依存することを示した。
【0135】
検索を、陰門形成に関連することが公知である全ての遺伝子の3’UTRにおけるlet−7ファミリーmiRNA相補配列(LCS)について実行した(表2)。LCSは、、mir−84を含むlet−7ファミリーの全てのメンバーを結合する可能性を有する。約11種の陰門遺伝子が、少なくとも1つのLCSを含み(表2)、let−7ファミリーが、陰門において複数の遺伝子を調節し得るという可能性を生じた。しかし、この分析において、LCS部位の数の多さに起因して、let−60/RASが際立っていた。
【0136】
(表2.公知の陰門遺伝子の3’UTRにおけるLCS)
【0137】
【表2】

mir−84の過剰発現は、let−60/RAS機能獲得型の表現型を部分的に抑制する。let−60/RASは、P6.pを1°の陰門運命に形質転換するMAPKシグナル伝達カスケードを活性化するアンカー細胞からのlin−3 EGFシグナルに従って、P6.pにおいて活性である(HanおよびSternberg、(1990)、Cell、63、921−931)。mir−84は、P6.pを除く全てのVPCにおいて発現されるので、mir−84が、1°運命を選ぶことが決まっていない細胞においてlet−60/RASの発現を負に調節する可能性を調べた。let−60/RASにおける変異の活性化は、複数のVPC(非P6.p VPCを含む)に、複数の陰門を有する(Muv)表現型をもたらす1°運命または2°運命を選ばせる(Hanら、1990)。mir−84の過剰発現がlet−60(gf)変異のMuv表現型を部分的に抑制することを、見出した。この研究において、let−60(ga89)(EisenmannおよびKim、(1997)、Genetics、146、553−565)動物の41%(n=51)は、Muv表現型を提示したが、13%(n=168)のみは、マルチコピーアレイからmir−84を過剰発現する場合にもMuv表現型を提示した(p<<0.0001のχ二乗検定)。同じ抑制は、第2のlet−60(gf)対立遺伝子let−60(n1046)によって観察された(Hanら、(1990)、Genetics、126、899−913):let−60(n1046)動物の77%(n=39)がMuv表現型を提示した一方で、50%(n=113)のみは、mir−84を過剰発現する場合にもMuv表現型を提示した(p<<0.0001のχ二乗検定)。let−60(nl046)動物は、mir−84を過発現するlet−60(n1046)動物1個体あたり平均で0.66個の偽陰門(pseudovulvae)と比較して、動物1個体あたり平均で1.54個の偽陰門を提示した。両方のlet−60(gf)対立遺伝子について、myo−3::gfp同時注入マーカーに対して低いモザイク現象を示す動物は、完全に抑制され、部分的な抑制が、トランスジーンのアレイのモザイク現象に起因するようであることを示唆した。空ベクターのコントロール(TOPO)(n=111)(p=0.1435のχ二乗検定)およびΔmir−84(+++)アレイ(n=129)は両方とも、let−60(n1046)のMuv表現型を抑制しなかった。全てのlet−60(gf)実験について、3つの独立した系は、同様の挙動を示した(図13C)。
【0138】
let−60/RAS 3’UTRは、発現をP6.pに限定する。let−60/RASのプロモーターは、全てのVPCにおいてレポーター発現を駆動する(DentおよびHan、(1998)、Mech Dev、72、179−182)。しかし、この初期の研究において使用したトランスジェニックレポーターは、let−60 3’UTRを含まなかった。GFPを、let−60 3’UTRに融合し、そしてVPC特異的なlin−31(Tanら、(1998)、Cell、93、569−580)プロモーター(gfp60)を使用して全てのVPCにおいてGFP発現を駆動した。L2段階の後期およびL3段階の初期において、GFPは、全てのPn.p細胞において発現されたが、L3段階の中期〜後期に関しては、GFPは、P5.p細胞およびP7.p細胞の子孫におけるある程度の発現を伴って、かなりP6.p細胞に限られた(図6B)。let−60 3’UTRが未調節のunc−54 3’UTRによって置換される同様の融合構築物は、全てのPn.p細胞においてGFP発現を示した(図6C)。lin−31プロモーターは、全てのPn.p細胞において活性である(Tanら、(1998)、Cell、93、569−580)ので、この結果は、let−60/RAS 3’UTRが、非P6.p細胞においてレポーター遺伝子をダウンレギュレートするのに十分であることを示す。
【0139】
let−60 3’UTRを、let−60ゲノムDNAフラグメント中の未調節のunc−54 3’UTRを用いて置換した。let−60::let−60(+)::let−60 3’UTR構築物を10ng/μlで使用して生存可能な系を産生し得たが、このlet−60::let−60(+)::unc−54 3’UTR構築物を0.1ng/μlを使用してでさえ、生存可能な形質転換体を産生することはできなかった。この結果は、let−60 3’UTRの除去が、let−60を大幅に過剰発現させ、死亡率を引き起こし得ることを示唆する。
【0140】
let−60/RASは、陰門においてmir−84の標的であるようである。先の研究は、VPCがlet−60/RASのレベルに対して感受性であることを示している(Beitelら、(1990)、Nature、348、503−509;Hanら(1990))。野生型let−60/RAS遺伝子の余分なコピーを保有する動物は、非P6.p VPCが1°運命を選び得る場合、Muv表現型を提示する。このデータは、mir−84が非P6.p VPCにおいてlet−60を負に調節することを、強力に示唆する。第1に、mir−84は、let−60 3’UTR中の複数の部位と相補的である。第2に、mir−84は、VPCにおいてlet−60と相反する様式で発現される。miR−84は、P6.pから大幅に欠如し、同時に、let−60 3’UTRは、GFP発現を主としてP6.p細胞系列に限定する。最終的に、mir−84の過剰発現は、let−60遺伝子中の変異を活性化する効果を部分的に抑制する。mir−84は、非P6.p VPCにおけるlet−60/RASの発現を変調し、RAS/MAPKシグナル経路を介してフラックスを低下させ、それによってこれらの細胞がまた、1°運命を選ぶ可能性を減少させる。しかし、mir−84は、明らかに、非P6.p細胞におけるlet−60/RASの単なる調節因子ではなく:daf−12(rh61)変異体は、いずれのVPC(n=60、動物)においてもmir−84を発現せず、そしてさらに、daf−12(rh61)動物は、Muv表現型を提示しない。他の公知の因子(例えば、synmuv遺伝子(Bersetら、(2001)、Science、291、1055−1058;CeolおよびHorvitz、(004)、Dev Cell、6、563−576;Hopperら、(2000)、Mol Cell、6、65−75;Leeら、(1994)、Genes Dev、8、60−73;WangおよびSternberg、(2001)、Curr Top Dev Biol、51、189−220;Yooら、(2004)、Science、303、663−666;Yoonら、(1995)、Science、269、1102−1105))または未知の因子もまた、これらの細胞においてlet−60/RASシグナル伝達を調節し得る。
【0141】
それらの合わせた結果は、let−7およびmir−84が、シーム細胞および陰門細胞(let−7およびmir−84が全て天然に発現される細胞)におけるその3’UTRによってlet−60/RAS発現を調節するという強力な証拠を提供する。let−60/RASの3’UTRが複数のlet−7/mir−84相補部位を含むことによって、この調節が指揮されることが予想される。
【0142】
ヒトのRAS 3’UTR中のlet−7相補部位。多くのmiRNAは、ヒトの癌において変更され(Calinら、(2002)、Proc Natl Acad Sci
USA、99、15524−15529;Calinら、(2004)、Proc Natl Acad Sci USA、101、2999−3004;Michaelら、(2003)、Mol Cancer Res、1、882−891;Tamら、(2002)、J Virol、76、4275−4286)、そして3種の最もよく認識されれいるmiRNA、lin−4(Leeら、(1993)、Cell、75、843−854)、let−7(Reinhartら、(2000)、Nature、403、901−906)およびbantam(Brenneckeら、(2003)、Cell、113、25−36)の全ては、細胞増殖および細胞分化を調節する。let−7およびmir−84の最も近縁のヒトホモログは、H.s.let−7ファミリーmiRNA(Lagos−Quintanaら、(2002)、Curr Biol、12、735−739;Pasquinelliら、(2000)、Nature、408、86−89)である。let−60/RASは、ヒトHRAS、ヒトKRAS、およびヒトNRAS(肺癌を含むヒトの癌において一般的に変異される(MalumbresおよびBarbacid、(2003)、Nat Rev Cancer、3、459−465))のC.elegansオルソログである(図13A〜図13B)。3種全てのヒトのRAS 3’UTRが、確認されたC.elegansのLCSの特徴を有する、複数の推定let−7相補部位を含むことを見出した(図4B〜図4D)。これらの多くは、げっ歯類、両生類および魚類において保存され(図14および図15)、このことは、機能的な関連性を示唆する。ヒトのRAS 3’UTRにおける推定LCSの存在は、哺乳動物のlet−7ファミリーメンバーが、let−7およびmir−84がC.elegansにおいてlet−60/RASを調節するのと同様の様式で、ヒトRASを調節し得ることを示す。
【0143】
ヒトのRASの発現は、細胞培養においてlet−7によって調節される。Ambion,Inc.によって行った6種の異なる細胞株に対するマイクロアレイ分析は、HepG2細胞が、マイクロアレイ分析によって検出されるような低いレベルでlet−7を発現することを示した。従って、Ambion,Inc.は、要求に応じて、let−7a前駆体を模倣する二本鎖(ds)RNAを用いてHepG2細胞をトランスフェクトした。RAS発現がlet−7によって負に調節されるという予想と一致して、RAS特異的抗体を用いた免疫蛍光は、上記タンパク質が、外因性let−7a miRNAによってトランスフェクトされたHepG2細胞において、ネガティブコントロールのmiRNAによってトランスフェクトされた同じ細胞と比較して約70%減少したことを示した(図7A)。GAPDHおよびp21CIP1のタンパク質発現レベルは、トランスフェクトしたlet−7a miRNAおよびネガティブコントロールのプレmiRNAによってほとんど影響を受けず(図16A)、let−7aによる調節が、RASに特異的であることを示した。上記RAS抗体が、上記トランスフェクト細胞においてRASタンパク質に特異的であることを確認するために、HepG2細胞をまた、NRASの独立した領域を標的とする2つの正確に相補的なsiRNAを用いて、独立にトランスフェクトした。両方のsiRNAは、ネガティブコントロールのsiRNAによってトランスフェクトされた細胞と比較して、細胞の蛍光を60%より大きく減少させた(図16B)。
【0144】
ネイティブなlet−7を発現する細胞は、より少ないRASタンパク質を発現し得ること、およびlet−7の阻害は、RAS発現の抑制解除をもたらすことが予想された。このことを試験するために、Ambion,Inc.は、要求に応じて、内因性let−7を発現するHeLa細胞(Lagos−Quintanaら、(2001)、Science、294、853−858;Limら、(2003)、Genes Dev、17、991−1008)を、let−7の活性を阻害するように設計されたアンチセンス分子(Hutvagnerら、(2004)、PLoS Biol、2、E98;Meisterら、(2004)、RNA、10、544−550)によってトランスフェクトした。HeLa細胞におけるlet−7の活性の減少は、RASタンパク質のレベルの約70%の増加を生じた(図7B)。上で考察したプレlet−7 miRNAを使用する相反的な実験と組み合わせたこれらの結果は、let−7がヒト細胞においてRASの発現を負に調節することを示す。
【0145】
ヒトNRASの3’UTRおよびヒトKRASの3’UTRを、ルシフェラーゼレポーター遺伝子に融合し、そしてこれらの構築物を、トランスフェクションのコントロールとともに、HeLa細胞にトランスフェクトした。NRASは、代替的なポリアデニル化部位および切断部位を利用する2つの天然に存在する3’UTRを含み、これらの3’UTRの一方は、他方より2.5kb長い。上記長いNRAS 3’UTRは、未調節のコントロール3’UTRと比較してレポーター発現を強力に抑制する(図8A〜図8B)が、上記短いNRAS 3’UTRは、わずかだけであるが再現可能な、上記レポーターの抑制を生じたことを見出した。上記短い3’UTRが、4個のLCSを含む一方で、上記長い形態は、9個のLCSを含む。KRAS 3’UTRはまた、上記ルシフェラーゼレポーターを抑制した(図8A〜図8B)が、一方で、HRASを、試験しなかった。これらの結果は、NRASおよびKRASの3’UTRが、上記レポーターをダウンレギュレートするのに十分な調節情報を含むことを示す。
【0146】
上に記載される内因性RASの実験と同様に、逆の実験を行ない、ここでHeLa細胞を上記RAS 3’UTRレポーター構築物および上記let−7aアンチセンスインヒビター分子(またはコントロールスクランブル分子)によってトランスフェクトした。上記let−7aインヒビターによってトランスフェクトされた細胞は、コントロールのトランスフェクションと比較して、上記レポーターに対して作用する抑制を示した(図8C)。ダウンレギュレーションの程度における損失は、let−7が阻害される場合に観察されるので、これらの結果は、let−7が、それらの3’UTRを介して、ヒト細胞においてNRASおよびKRASを調節することを強力に示す。
【0147】
let−7、RASおよび肺癌。let−60/rasと同様に、ヒトのRASは、RASの過剰発現がヒト細胞の腫瘍形成の形質転換を生じることに起因して、用量感受性である(McKayら、(1986)、Embo J、5、2617−2621;Pulcianiら、(1985)、Mol Cell Biol、5、2836−2841)。RASのmiRNAによる制御の喪失がまた、RASの過剰発現をもたらし得、そしてヒトの癌に寄与し得ると考えられる。最近の研究は、let−7ファミリーメンバーを、種々の癌にかかわるヒト染色体の部位に対してマッピングした(Calinら、(2004)、Proc Natl Acad Sci USA、101、2999−3004)。特に、let−7a−2、let−7cおよびlet−7gは、肺癌(RASの誤った調節が、重要な腫瘍形成の事象であることが公知である癌型(Ahrendtら、(2001)、Cancer、92、1525−1530;Johnsonら、(2001)、Nature 410、1111−1116))において削除される染色体の小さな間隔に連結されている(Calinら、(2004)、Proc Natl Acad Sci
USA、101、2999−3004)。
【0148】
miRNAマイクロアレイ分析をAmbion,Inc.によって行ない、21人の異なる癌患者(有棘細胞癌(ステージIBまたはIIA)を有する12人の肺癌患者を含む)由来の組織において上記let−7遺伝子ファミリーのメンバーの発現レベルを調べた。付随する隣接正常組織(「NAT」)と比較して、21種の乳房、結腸、および肺の腫瘍におけるlet−7の発現によって示される通り、let−7は、肺腫瘍において不十分に発現される。蛍光標識したmiRNAを、let−7aおよびlet−7cに特異的なプローブを含んだマイクロアレイにハイブリダイズさせた。上記腫瘍およびNATについての蛍光強度を、全てのエレメントについての合計の蛍光シグナルによって正規化した。上記腫瘍サンプルおよび隣接正常サンプルにおけるlet−7プローブからの相対的な平均シグナルを、対数比として表す。let−7aおよびlet−7cは、2つの近縁なmiRNAの間の交差ハイブリダイゼーションを示唆する、類似のプロフィールを有した。let−7 miRNAは、同じ患者由来の隣接正常組織サンプルと比較して、上記腫瘍の多くにおいて発現が減少した。let−7は、上記肺腫瘍組織の全てにおいて、より低いレベルで発現された(図9A)が、他の腫瘍型においては、散発的にのみ発現された。同様の知見が、独立して見出された(Takamizawaら、(2004)、Cancer Res、64、3753−3756)。平均して、let−7は、付随する正常な肺サンプルにおける発現の50%未満にて、肺腫瘍において発現された。ノーザン分析を使用して、RNAが精製された2人の患者についての腫瘍サンプルおよびNATサンプル(図9Bにおいて1番目および15番目の肺癌のバーによって表されるサンプル)におけるlet−7cを測定した。Ambion,Inc.によるマイクロアレイの結果と一致して、ノーザン分析は、let−7cの発現が、患者#1の腫瘍において65%より低く、そして患者#5の腫瘍において25%より低かったことを実証した。8個の調べたサンプルのうち7個はまた、上記腫瘍組織において、平均30%未満のlet−7g発現を有した(図17)。上記miRNAアレイを使用して、全167種のmiRNAに対するプローブを含めて上記肺腫瘍およびNATを比較した。これらの大多数の発現は、肺腫瘍において変化せず、let−7が肺腫瘍において重要であり得ることを示した。理論的には、let−7のダウンレギュレーションは、RASのアップレギュレーションをもたらし、それによって腫瘍形成を誘導し得るか、または強め得る。
【0149】
この仮説を試験するために、Ambion,Inc.は、有棘細胞癌を有する3人の新しい肺癌患者の腫瘍組織および隣接正常組織から、全RNAならびに全タンパク質を単離した。上記RNAサンプルを分割し、そして半分をノーザン分析に使用して、let−7cおよびU6 snRNAを測定した。上記RNAサンプルの他の半分をリアルタイムPCRに使用して、NRAS mRNA、18S rRNA、およびB−アクチンmRNAを測定した。上記タンパク質サンプルをウェスタン分析に使用して、RASタンパク質レベルおよびGAPDHタンパク質レベルを評価した。RASタンパク質は、同じ患者由来の隣接正常サンプルより、少なくとも10倍高いレベルで上記腫瘍中に存在した。他の肺癌サンプルに関するAmbion,Inc.のmiRNAアレイの結果と一致して、3つ全ての肺腫瘍サンプルは、対応するNATサンプルより4倍〜8倍低いlet−7のレベルを有した。第1および第3の肺癌サンプルが、腫瘍およびNATの両方において、NRAS mRNAの同様のレベルを有した一方で、第2のサンプルの対は、上記腫瘍サンプルにおいてNRAS mRNAの有意に、より高いレベルを有した。RASタンパク質レベルは、NRAS mRNAレベルと不十分に相関するが、let−7レベルとは非常に良好に相関し、このことは、上記オンコジーンの発現が、無脊椎動物におけるlet−7の公知である機構と一致して、翻訳のレベルにおいて顕著に影響を受けることを示唆する。
【0150】
癌細胞におけるlet−7とRASとの相反的な発現パターンは、C.elegansおよびヒトの組織培養実験において、let−7およびRASによって見られるパターンと酷似する。上記肺腫瘍サンプルにおける減少したlet−7発現と増加したRASタンパク質発現との間の相関関係は、上記let−7遺伝子ファミリーの1つ以上のメンバーがインボビでRAS発現を調節すること、および上記miRNAの発現のレベルが腫瘍形成の制限または腫瘍形成への寄与において重要な因子であることを示す。
【0151】
これらの結果は、上記let−7 miRNAファミリーが、2つの異なるC.elegans組織および2つの異なるヒト細胞株においてRASを負に調節することを示す。ひときわ、let−7は、成人の正常な肺組織において発現されるが(Pasquinelliら、(2000)、Nature、408、86−89)、肺癌細胞株および肺癌組織においては不十分に発現される(Takamizawaら、(2004)、Cancer Res、64、3753−3756)。let−7の発現は、肺癌組織において、RASタンパク質の発現と逆に相関し、このことは,考えられる因果関係を示唆する。さらに、let−7の過剰発現は、インビトロで肺癌細胞の増殖を阻害し(Takamizawaら、(2004)、Cancer Res、64、3753−3756)、これらの細胞におけるlet−7と細胞増殖との因果関係を示唆した。
【0152】
これらの結果は、上記RASオンコジーンの発現がlet−7によって調節されること、およびlet−7の過剰発現が腫瘍細胞株の増殖を阻害し得ることを示す。let−7発現が肺腫瘍において減少すること、数種のlet−7遺伝子が、しばしば肺癌患者において削除されるゲノム領域にマッピングされること、let−7の過剰発現が肺腫瘍細胞株の増殖を阻害し得ること、上記RASオンコジーンの発現がlet−7によって調節されること、およびRASが肺腫瘍サンプルにおいて著しく過剰発現されることを合わせた観察は、let−7を肺組織における腫瘍抑制因子として強力に示し、そして処置の基礎を形成する機構の証拠を提供する。
【0153】
(実施例2.let−7およびmir−125の発現パターン、lin−4ホモログの発現パターン)
let−7およびmir−125の両方、lin−4ホモログが、肺および脳における顕著な発現と共に、成人の種々の組織において発現されることを見出した。興味深いことに、それらの両方は、膵臓および精巣において低いレベルで発現される。過去の研究は、C.elegansのlin−4 miRNAおよびlet−7 miRNAが、時間的に発現されることを示している(Reinhart,B.ら、(2000)、403:901−906ならびにFeinbaum,R.およびV.Ambros、(1999)、Dev Biol、210(l):87−95)。同様に、これらのmiRNAの哺乳動物ホモログもまた、マウスの発生の間に時間的に発現されることが示されている。ノーザンブロットは、let−7およびmir−125が、非常に類似した発現を有することを示す。それらの両方は、約E9.5日目で発現し始めた。興味深いことに、これは、肺の器官形成の時期、および他の主要な器官が発生し始めるときとほぼ一致する。
【0154】
let−7c miRNAのマウス配列に基づくオリゴヌクレオチドを使用したインサイチュプロトコル(このヌクレオチドは、ジゴキシゲニン標識されている)が、開発された。let−7cがE12.5にて発現されることは、ノーザン分析によって確認されているので、同様の齢の胚から採取した凍結切片を、分析した。予備的な結果は、let−7が、インサイチュによって胚の上皮において発現されることを示す。他の癌に加えて、これらの結果は、let−7は、let−7が肺細胞における天然の化合物であることに起因して肺癌治療のための治療薬として有用であることを示す。
【0155】
(実施例3.肺癌細胞におけるlet−7の阻害および過剰発現の効果)
トランスフェクション(抗let−7分子を用いた)を介したA549肺癌細胞におけるlet−7機能の阻害は、A549肺癌細胞の細胞分裂の増加を引き起こし(図18A)、一方で、let−7過剰発現(トランスフェクトしたプレlet−7による)は、A549の細胞数の減少を引き起こした(図18B)。これらの結果は、let−7の腫瘍を抑制する活性と一致する。さらに、let−7過剰発現の表現型は、MYCのダウンレギュレーションによってもたらされる表現型と共通し(図18A)、このことは、細胞増殖に対するlet−7の効果もまた、MYCの抑制を介し得ることを示唆した。予備的証拠は、MYCがまた、ヒト細胞においてlet−7の直接の標的であるを示す。従って、これらの結果は、let−7が、MYCの異常な発現を有する癌において有力な治療薬であり得ることを示す。
【0156】
(実施例4.let−7は、MYCおよびBCL−2の発現に影響する)
let−7は、RASタンパク質レベル、MYCタンパク質レベルおよびBCL−2タンパク質レベルを調節し、それらの3つ全ては、主要な癌のオンコジーンである。HepG2細胞(let−7を内因的に生成しない)に対するlet−7の添加は、これらの3つの重要な腫瘍性タンパク質の全ての発現を減少させる(図20、図7A、および図8)。内因性let−7を生成するHeLa細胞は、抗let−7インヒビターによってトランスフェクトされる場合に、3つ全ての腫瘍性タンパク質の増加したレベルを発現する(図20A、図20Bおよび図7B)。これらの結果は、let−7がこれらの遺伝子の発現を抑制することを示す。複数のmir−125相補部位およびmir−143相補部位は、ヒトのKRAS 3’UTRおよびBCL2 3’UTRにおいて同定されており、そしてこれらのオンコミル(oncomir)がまた、let−7によって見られる様式と類似する様式でこれらのオンコジーンを調節し得ることが、予期される。この結果は、let−7が、増殖経路(RASおよびMYC)および生存経路(BCL2)を調節する、癌経路の優れた調節因子であることを示す。let−7はまた、テロメラーゼ経路(TERT)および新脈管形成経路(VEGF)を調節することが可能である(表1)。癌は、複数の遺伝子突然変異の結果であるので、これらの結果は、癌患者に対するlet−7の導入が、複数のオンコジーンの発現を抑制し得、そして有効な療法(事実上、1つの薬物のカクテル)を提供し得ることを示す。
【0157】
記載される特定の方法論、プロトコル、および試薬は変動し得るので、本開示の発明は、それらに限定されないことが、理解される。本明細書中で使用される用語法は、特定の実施形態のみを記載する目的のためのものであり、そして本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解され、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。当業者は、本明細書中に記載される発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を、認識するか、または慣用的な実験法のみを使用して確認し得る。このような等価物は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図14−3】
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【図14−4】
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【図14−5】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−105669(P2012−105669A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−39065(P2012−39065)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【分割の表示】特願2007−530400(P2007−530400)の分割
【原出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(506361834)イェール ユニバーシティ (6)
【Fターム(参考)】