説明

マイコバクテリアを制御するための、芳香族アルコールとグリセロールエーテルの混合液に基づく相乗的製剤

【課題】マイコバクテリアに対して十分な活性を有する殺菌性組成物を提供する。
【解決手段】作用混合物の形態の殺菌剤組成物であって、(a)該組成物に対し0.05〜1重量%の1-(2-エチルヘキシル)グリセロールエーテル、および(b)該組成物に対し0.2〜5重量%のアリールオキシアルカノール、オリゴアルカノールアリールエーテルおよびアリールアルカノールからなる群から選択される一または複数の芳香族アルコール、とを含む殺菌剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌剤およびマイコバクテリアを制御するための殺菌剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マイコバクテリアは、殺生物活性をもつ化合物によって失活させることが比較的困難である。そのろう様の細胞壁のために、これらは最も化学的に耐性な病原菌である。十分な活性が証明された化学物質は、フェノール、アルデヒド、活性酸素化合物またはハロゲンなどの酸化性物質、および低級アルコール(エタノールおよびプロパノールなど)である。したがって、たとえば機器をマニュアルで殺菌するための最近のアルデヒドフリーの殺菌剤は、以下の活性化合物および成分を含む:重量の10〜20%の第四級アンモニウム化合物、重量の5〜15%のフェノキシプロパノール、重量の3〜10%のアミノアルキルグリシン、非イオン性表面活性剤、耐食剤、pH調節剤、芳香剤および着色剤。アルデヒドに基づく機器殺菌剤は、重量の5〜15%のグルタルアルデヒド、重量の7〜11%のホルムアルデヒド、重量の2〜6%の第四級アンモニウム化合物、非イオン性表面活性剤、pH調節剤、芳香剤および着色剤を含む。
【0003】
しかし、これらの既知の組成物は、しばしばこれらを適用される物質に対して腐食性であり、たとえばプラスチックで製造された部分(たとえば医療機器のシール)は、これらの組成物によって腐食を受ける。これらの殺生物剤の使用は、さらに、ヒト皮膚と接触するとアレルギーまたは感作を引き起こし得る。特に、強い求電子性の特性を有する殺生物剤(たとえば、イソチアゾロン、オルガノハロゲン化合物)は、防腐剤および殺菌剤としてますます公共の論議の主題となり、これらの使用は、議員によって制限的に制御されてきている。一方、物質または皮膚に腐食性に作用しない組成物は、しばしばマイコバクテリアに対して十分に活性ではない。
【0004】
加えて、低級アルコールは、高濃度で使用したときのみに活性であり、そのうえ過剰な揮発性を有する。フェノールは、不適当な生物分解性のために、許容性が低い。ペルオキシ酢酸などの活性酸素化合物も使用されるが、刺激臭および腐蝕性があるために望ましくない。ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドなどのアルデヒドは、毒性学的性質のため、および臭いを理由に許容できない。N,N'-ビス(3-アミノプロピル)ラウリルアミンなどのアミンは、この活性化合物を含むマイコバクテリア殺菌性の製剤に高いpHを与え、皮膚および物質への適合性における害を増加させる。フェノキシプロパノールなどの結核菌撲滅性の活性
芳香族アルコールは、対応する作用を達成するために非常に大量に使用しなければならず、物質適合性において害をさらに増加させる。さらに、N,N-置換されたグリシン誘導体は、マイコバクテリア殺菌性の活性化合物として記載されているが(DE-A-19801821を参照)、これらの活性化合物は、泡を生じる傾向を有し、多量に適用することは望ましくない。
【0005】
したがって、前記不都合を有さず、またはこの程度に不都合を有せず、よりヒト(特にヒト皮膚)に適合性のあるマイコバクテリア制御組成物に対する要求がある。該組成物は、効率よくマイコバクテリアを不活性化して、これらを適用した物質に対して腐食性に作用することがない。
【0006】
皮膚病学的組成物におけるグリセロールモノアルキルエーテルの使用が既知である。
【0007】
特許文献1では、式R-O-CH2-CHOH-CH2OHのグリセロールモノアルキルエーテルが脱臭作用を有することを開示している。さらに、重量の0.135%の1-(2-エチルヘキシル)グリセロールエーテルと重量の0.15%のフェノキシエタノールの組合せが記載されており、加えて、これは重量の40%のエタノールおよび0.015%のジブロモジシアノブタンを含む。
【0008】
特許文献2は、相乗的活性化合物として、a)有機酸と、b)モノフェニルグリコールエーテルと、およびc)グアニジン誘導体との混合液を含む防腐剤に関する。実施例13および14は、重量の60%以上のフェノキシエタノール並びにそれぞれ重量の15および10%のグリセロールモノアルキルエーテルを含む濃縮物である。特許文献2の防腐剤は、種々の細菌および酵母に対する活性がある。
【0009】
特許文献3は、皮膚防腐剤および手部殺菌剤として有用な組成物を開示し、この組成物は、脂肪族C1-C6-アルキルアルコール成分および少なくとも一つのグリセロールモノアルキルエーテルとの組合せの水溶液を含む。好ましいグリセロールエーテルは、1-(2-エチルヘキシル)グリセロールエーテル(Sensiva SC 50)である。
【0010】
特許文献4は、ジオールとアリール置換されたアルカノールの相乗的な組合せを含む抗菌活性混合液を記載する。ジオールの例は、グリセロールモノアルキルエーテルである。
【0011】
特許文献5は、アリール置換されたアルコールとグリセロールモノアルキルエーテルの組合せの内容物を有する製剤を開示している。好ましいアリール化合物は、フェノキシエタノールである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】DE-C-42 40 674号明細書
【特許文献2】DE-A-40 26 756号明細書
【特許文献3】DE-C 41 40 473号明細書
【特許文献4】DE-A-41 24 664号明細書
【特許文献5】DE-A-100 25 124号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の基礎をなしている目的は、マイコバクテリアに対して活性を有する殺菌剤を提供することであり、この殺菌剤は、特に、
? 腐食をせず、または著しく腐食をせず、病院部門で使用される物質であり、殺菌しなければならず、および
? ヒト皮膚と接触しても刺激活性を有さず、且つ脱脂活性を有さない(すなわち、エタノールまたはイソプロパノールなどの低級アルコールを高含量で有する必要がない)。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、(a)1または複数の1-(C3-〜C24-アルキル)グリセロールエーテルもしくは2-(C3-〜C24-アルキル)グリセロールエーテルおよび(b)1または複数の芳香族アルコールを含む殺菌剤によって達成される。
【0015】
本発明に使用されるグリセロールモノアルキルエーテルの例は、飽和または不飽和、枝分れ、または枝分かれしていないアルキル(ドデシルグリセロールエーテル、デシルグリセロールエーテル、オクチルグリセロールエーテル、プロピルグリセロールエーテル、オクタデシルグリセロールエーテル(バチルアルコール)、ヘキサデシルグリセロールエーテル(キミルアルコール)およびオクタデシルグリセロールエーテル(セラキルアルコールなど)で、1または2位(すなわち、対称的に、または、非対称に)置換されたグリセロールモノアルキルエーテルである。好ましくは、飽和した(枝分れ、または枝分かれしていない)C3-〜C18
-アルキルを有する1-モノアルキルグリセロールエーテルであり、特に好ましくは、飽和した、および枝分れしたC6-〜C12-アルキルである。特に非常に好ましくは、1-(2-エチルヘキシル)グリセロールエーテル(Sensiva(R) SC 50)である。
【0016】
芳香族アルコールは、アリールオキシアルカノール(グリコールモノアリールエーテル)、オリゴアルカノールアリールエーテルおよびアリールアルカノールから選択される。
【0017】
本発明によって使用されるアリールオキシアルカノールは、式AR-O-(CHR)n-OHを有し、式中、R=独立してH(n≧2について)またはC1-〜C6-アルキルであり、nは整数であり、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6、特に2または3である。基Arは核置換されたか、または非置換のアリール基であってもよいが、非置換のアリール(たとえばフェニルまたはナフチル)が好ましい。発明に使用されるアリールオキシアルカノールの例は、フェノキシエタノールおよびフェノキシプロパノールである。好ましいフェノキシプロパノールは、1-フェノキシプロパン-2-オル、2-フェノキシプロパン-1-オルまたはその混合液であり、また、3-フェノキシプロパン-1-オルである。オリゴアルカノールアリールエーテルは、たとえば、フェノキシジエタノール、フェノキシトリエタノールおよびフェノキシオリゴエタノール、並びにフェノキシジプロパノール、フェノキシトリプロパノールおよびフェノキシオリゴプロパノールを含む。
【0018】
発明にしたがって使用されるアリールアルカノールは、式Ar-(CHR)n-OHを有し、式中、R=独立してHまたはC1-〜C6-アルキルであり、nは整数であり、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6および特に、1、2、3または4である。基Arは核置換されたか、または非置換のアリール基であってもよいが、非置換のアリール(たとえばフェニルまたはナフチル)が好ましい。アリールアルカノールの例は、3-フェニルプロパン-1-オル、フェニルエチルアルコール、ベラトリルアルコール(3、4-ジメトキシフェニルメチルアルコール)、ベンジルアルコールおよび2-メチル-1-フェニル-2-プロパノールである。
【0019】
一つの態様において、本発明の殺菌剤において、成分(b)に対する成分(a)の重量比xは、0.15以下、好ましくは0.09以下、より好ましくは、0.08〜0.03および特に、0.07〜0.04である。
【0020】
本発明のさらなる態様において、殺菌剤は、作用混合物(working mixture)の形態で存在し、比較的小量の成分(a)および(b)を含み、たとえば、(a)重量の0.05〜1%の一または複数のグリセロールモノアルキルエーテル(たとえば1-(2-エチルヘキシル)グリセロールエーテル)、および(b)重量の0.2〜5%の一または複数の芳香族アルコール(グリコールモノアリールエーテルなど)である。作用混合物の1つの例は、作用溶液(working solution)である。好ましい作用溶液は、水溶液として存在し、重量の95〜99%の水、たとえば重量の96〜99.5%、より好ましくは、重量の97〜98.5%の水を含む。特に好ましくは、(a)重量の0.05〜0.2%の1-(2-エチルヘキシル)グリセロールエーテル、および(b)重量の1.0〜2.0%のフェノキシエタノールを含む。あるいは、作用混合物は、固体、糊状または高粘性の形態で存在することもできる。
【0021】
本発明のもう一つの実施例において、殺菌剤は、濃縮物として存在し、比較的大量の成分(a)および(b)を含む。好ましい濃縮物は、単相の濃縮物であるので、これは、他の成分とともに特に容易に処方されて作用混合液を与える。成分(a)および(b)の水溶解性が限られているため(Sensiva SC 50は、室温において水に重量の0.1%まで溶解し、フェノキシエタノールは、たとえば、室温において水に重量の1.8%まで溶解する)、好ましい本発明の濃縮物は、無水物の形態で存在する。
【0022】
本発明の成分(a)および(b)に加えて、殺菌剤は、その他の成分を含むことができる。しかし、好ましくは、これは界面活性剤中に少量だけであり、重量の5%未満の界面活性剤、好ましくは重量の2%未満、特に好ましくは重量の0.5%未満の界面活性剤を含み、特に好ましくは界面活性剤フリーである。さらなる成分は、固体、液体もしくはガスのその他の活性化合物、機能性添加物または補助物であることもできる。
【0023】
著しい生理適応性のために、本発明の殺菌剤は、幅広い分野に適用性を有する。これらは、精製されて均質であってもよく(たとえば水性製剤)、または低粘性または高粘性の製剤(たとえばジェル)であることもできる。殺菌剤は、幅広いpH範囲にわたって活性があり、強酸性から強アルカリ性の培地において、好ましくは3〜11、特に好ましくは5〜9のpH範囲において有用である。
【0024】
ここで殺菌剤として示した組成物の例は:
1)殺生物剤分散剤、農業部門における分散剤、殺虫剤製剤、ポリマー分散剤、接着剤、増粘剤、色素、塗料、色素拡散剤、写真感光材料(たとえば顕色液)などの原体、
2)たとえば、局所的適用のための、または太陽保護製品、湿性布、膜形成性の性質を有するポリマー製剤、ねり歯みがき、介護製品、メイキャップ、口紅、マニキュア液などの塗っておく製品もしくは洗い流せる製品(leave-onもしくはrinse-off製品)としての、皮膚病用および化粧用の製品、
3)等張液、薬剤およびワクチンなどの製剤、並びに
4)脱臭剤、足脱臭剤、アルコール性のスプレー殺菌剤およびマニュアルで機器クリーニングするための組成物などの殺菌剤製品。
【0025】
本発明の殺菌剤によって処理することができる表面は:
i)皮膚、粘膜、傷、植物、植物部分などの生物物質、
ii)コンタクトレンズまたは創傷包帯などの、皮膚、粘膜または傷と接触する物質、
iii)医用器具、医療機器(たとえば内視鏡)などの表面、または床および手術台などの表面。
【0026】
本発明のさらなる態様は、前記表面を処理するための方法、特にマイコバクテリアを制御するための方法に関する。これについては、本発明の殺菌剤は、殺菌される表面で作用させることができる。本発明の殺菌方法は、医療機器または実験設備の殺菌に使用され、その場合には、殺菌される表面は、金属、ガラス、プラスチックまたはセラミックから製造されていてもよい。
【0027】
本発明の殺菌方法は、超音波、圧力またはマイクロ波照射によって強化することもできる。当業者は、殺菌される物の感受性により、所望の殺菌性作用に対応する最適な作用時間と成分(a)および(b)の濃度とのパラメータ間をここで選択することができるであろう。
【0028】
本発明の殺菌剤は、細菌(グラム陽性菌)および(グラム陰性菌)、酵母および糸状菌、マイコバクテリアおよびウイルスに対する活性を有することもできる。したがって、これらは、たとえばプロピオニバクテリウム(プロピオニバクテリウム科)、ふけの原因となっている微生物、プリオン、殺生物剤耐性の微生物、エンベロープ型および/または非エンベロープ型ウイルス、臭いの原因となっている微生物、下等な病原体、原生動物および胞子に対する活性である。
【0029】
本発明は、なかでも以下の利点を供与する:
-該殺菌剤は、安価な成分から製造される。
【0030】
-該殺菌剤は、中性のpHであり、ほとんど腐食性でなく(低い侵食性)、且つそれに応じて容易に物質に適合する。
【0031】
-該薬剤は、低臭気、低発光、不活性、且つその他の添加剤または補助剤に容易に適合し、中毒学的および環境毒物学的に無害で、生理的に無害であり(良好な皮膚適合性)、高保持性の品質で、および容易に洗い流される。
【0032】
-該薬剤は、変色傾向を示さず、短い作用時間で活性であり、活性の相乗的増加の結果、低濃度の活性化合物を必要とする。
【0033】
-該薬剤は、低発泡性で、酸化およびpHに安定である。
【0034】
本発明の利点は、特に以下の実施例によっても与えられる。
【0035】
実施例
以下の省略記号を使用した:
SC 50 1-(2-エチルヘキシル)グリセロールエーテル
Sensiva SC 50
水 脱塩水
エタノール エタノール、メチルエチルケトンで変性させた
POE フェノキシエタノール
明確に定めていなければ、全てのパーセンテージは、重量のパーセントである。
【0036】
実施例1:室温におけるマイコバクテリウム・テラ(Micobacterium terra)に対する殺菌剤の活性
種々の水性の殺菌剤を、マイコバクテリウム・テラに対するそれらの活性に関し、1〜3×109の細胞数で、負荷のない定量的懸濁液試験において試験した。以下の減衰因子を測定した。減衰因子が>5では、充分なTb活性に対応する。試験のために、種々の量のエタノールを水性の活性化合物溶液に添加して、15、30および60分間暴露した後に試験した。結核菌撲滅性の活性を試験するために、1997年4月30日のDeutsche Gesellscaft fur Hygiene und Mikrobiologie [German Society for Hygiene and Microbiology](Hyg.med. 22、1997(isue6)、pages 278ff)に従って、定量的懸濁液試験マイコバクテリウム・テラ(ATCC15755)を使
用した。
【表1】

【0037】
A) 水
B) 水中に0.1%のSC 50
C) 水中に1.5%のPOE
D) 水中に0.1%のSC 50 +1.5%のPOE
結果:
結核症細菌は危険性であるため、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)における試験は実施しなかった。しかし、結核菌とマイコバクテリウム・テラは非常に構造上類似しているため、上記結果は、マイコバクテリウム・テラにおける活性試験は、結核菌に対する活性の情報を提供することができる。
【0038】
水性エタノールは、30%の含量でさえ十分なTb活性がない。0.1%のグリセロールモノアルキルエーテルSensiva SC 50を添加することにより、30%力価エタノールは、60分の暴露時間で十分なTb活性がある。1.5%のグリコールモノアリールエーテルPOEを添加することにより、20%のエタノールは、30分の暴露時間で十分なTb活性がある。対照的に、本発明の組合せの1.5%のPOEと0.1%のSensiva SC 50では、エタノールを添加しないときでさえ、室温において30分の暴露時間でTb活性がある。
【0039】
本発明の水性作用溶液は、成分(a)および(b)が低含量のときでさえ、十分な活性がある。加えて、本発明の組成物は、マイコバクテリアに対する活性に対して、わりあい大量のエタノールを必要としない。なかでもエタノールは、種々の物質に対する付随した腐蝕作用のため、また、たとえば手部に暴露する場合、抽出作用のために望ましくない。
【0040】
実施例2:Koko試験における殺菌剤の活性
Koko試験において、製品としてリンゲル液を使用し、以下の水性作用溶液を調査した:
分析原理
記載された方法を使用して、化粧製剤のためのパッケージ防腐剤に関し、化学物的な防腐剤の活性を試験した。試験では、種々の実験バッチ内で、種々の濃度の試験下において、防腐剤を保存加工していないサンプルに添加した。連続的な微生物の負荷は、実験バッチに周期的に接種することによって実施した。接種と平行して、それぞれの場合の直前に、個々のバッチの画線サンプルを得た。画線サンプルの微生物の増殖に基づいて評価を作製した。防腐剤の効果があるほど、微生物増殖が最初に出現する期間は長くなる。
【0041】
溶液および栄養培地
CSA(カゼインペプトン−大豆ベプトンアガー)
SA(サブロー寒天培地)
SAスロープチューブ
CSA+TLSH(No.4)
SA−TLSH(No.10)
NaCl(生理食塩水、8.5%)
使用した試験生物は、以下の4つの試験生物群の混合懸濁液(5群)である。
【表2】

【0042】
試験生物の増殖
細菌:CSアガーに無菌のガラス棒で画線。
【0043】
酵母:SAアガーに無菌のガラス棒で画線。
【0044】
菌類:クロカビ(Aspergillus niger)は、4Sa-スロープチューブに移す。ペニシリウム・フニクロサム(Penicillium funiculosum)は、SAアガープレートに移す。
【0045】
全ての試験生物を25℃±2℃において1週間インキューベートする。試験生物は、3〜4ヵ月間隔で入れ換えする。
【0046】
接種溶液の調製(1〜3群)
細菌は、それぞれの場合において5mlのNaCl溶液に懸濁し、100mlのメスシリンダにガラスウールを含んでいるガラス漏斗を通して濾過し、NaClで100mlにする。細菌懸濁液は、約109CFU/mlの力価を有する。
【0047】
接種溶液の調製(4群)
3種のクロカビのスロープチューブを、Heldolph攪拌機においてそれぞれ3mlのNaCl溶液と共に振とうし、ガラスウールを含むガラス漏斗を通した。酵母鵞口瘡カンジダ(Candida albicans)は、5mlのNaC1と懸濁して、また、ガラス漏斗を通して注ぐ。5mlのペニシラム・フニクロサム(Penicillium funiculosum)懸濁液(菌類の懸濁液の標品のための解析手順番号22を参照)をこの混合液に添加して、混合液をNaClで100mlにする。真菌懸濁液は、約105-9CFU/mlの力価を有する。
【0048】
接種溶液の調製(5群)
実際に使用した接種溶液は、上記の通りに調製する(1〜4群)。懸濁後、これを混合して、NaClで100mlにするだけである。
【0049】
微生物の懸濁液をガラスビーズを含む無菌のガラス栓がついたフラスコに移して、200ユニット/分(前後運動)の振盪振動数で5分間振とうする。混合した懸濁液の微生物の含量は、109CFU/ml程度である。懸濁液は、調製した日に使用するべきであるが、冷凍庫内に貯蔵する場合は、24時間後にも使用することができる。
【0050】
手順
別々のバッチに、それぞれの場合において、試験下の化粧品25gを、異なった濃度で試験下の防腐剤と混合する。保存加工されていない製品サンプルは、それぞれの場合において増殖のコントロールとして使用する。滅菌したガラス棒を使用して試験バッチをCSA/TLSHおよびSa/TLSHの上へ画線し、週に一度十分に攪拌した後、新たな接種の直前に最初の画線を行った。全てのサンプルに0.1mlの各微生物の懸濁液を接種して、十分に撹拌する。
【0051】
画線サンプルの微生物の増殖は、25℃±2℃において3日間インキューベーションした後に評価した。安全余裕のために、陰性の画線サンプルでは、さらに2日間観察して再び評価した。個々の製品濃度における防腐剤活性は、個々の画線サンプルの増殖による半定量的な方法で評価する。
【0052】
試験は、通常6回の接種サイクルにわたって実施し、固形過成長が二回生じた後は中断した。
【0053】
結果の評価
上記の実験室条件の下で、試験バッチでの微生物の感染が6週間なかった場合、すなわち6回接種した後でさえ微生物の増殖が検出できない場合は、防腐剤は優良であるとみなされる。
【表3】

【0054】
結果:
本発明の殺菌剤は、Koko試験において成分(a)および(b)の相乗的作用を示す。
【0055】
実施例3:H202の添加による枯草菌(B.subtilis)に対する本発明の殺菌剤の活性の増加。
【0056】
以下の殺菌剤を調合した:
【表4】

【0057】
これらの殺菌剤について、以下の減衰因子が枯草菌(B.subtilis)で得られた。この場合、手順は、2002年2月のDIN draft EN14347" sporicidal action(base test)"(この5.5.2.2.1部分)に基づいて実行される。
【表5】

【0058】
結果:
本発明の殺菌剤の胞子に対する活性は、H202の添加により増加させることができる。
【0059】
実施例4:
細菌および酵母真菌に対する殺菌剤の活性。
【0060】
以下の3種の製剤において、その活性について調査した:
4A 水中に0.1%のSC 50
4B 水中に1.5%のPOE
4C 水中に0.1%のSC 50の+ 1.5%のPOE
これらの製剤を使用して、以下の減衰因子を得た(SA=黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、PS=緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、EC =大腸菌(Escherichia coli)、PM =プロテウス・メラビリス(Proteus merabilis)およびCA=鵞口瘡カンジダ(Candida albicans))。この場合、水で50%および25%に希釈ものについても実験した(最初の細胞数0.8〜5×109/ml、CAでは2×107/ml(脱阻害(deinhibition) Tryp-NaCL TLSH(番号22))。
【0061】
方法:
0.1mlのCSLの微生物懸濁液を、10mlの試験下(標準化された硬度(WSH)の水溶液)の殺菌剤希釈液と室温で十分に混合する。5、15、30および60分間暴露した後、それぞれの場合において、1mlを殺菌剤/微生物の混合液から取りだして、9mlの不活性化液(0.1%のトリプトン+0.85%のNaClの二回蒸留水+不活性化物質)に接種する。長くとも30分間不活性化液に接触させた後、希釈液(10-2および10-4の0.1%トリプトン溶液+0.85% NaClの二回蒸留水溶液)を作製する。次いで、0.1mlの各不活性化液および2種の希釈液をそれぞれ3つのCSAプレート上にまく。コントロールとして、殺菌剤の代わりにそれぞれの固形微生物懸濁液を10mlのWSHと混合する。対応する暴露時間と並行して、同様の方法でこのバッチからサブカルチャーを作成する。
【0062】
全てのサブカルチャーを37℃において48時間、鵞口瘡カンジダの場合は37℃で72時間インキューベートし、コロニーを計測する。減少は、以下の方法で確かめられる:CSAプレートあたり20〜300の間のKWEsを評価する。3つの値の算術平均を決定した後、ユニット時間あたりの殺菌剤作用(KRt)を式KRt=logCFU(co)引くlogarithmCFU(D)から見積もる。式中、(CFU(co)は調合物の作用を伴わないmlあたりのCFUsの数であり、CFU(D)は調合物の作用後のmlあたりのCFUsの数である。
【表6−1】

【表6−2】

【0063】
結果:これらのデータは、POEとSC 50の組合せの部分的な相乗的作用を示す。
【0064】
実施例5:皮膚テストにおけるミクロコッカス・ルータス(Micrococcus luteus)に対する殺菌剤の活性。
【0065】
以下のエタノール含有殺菌剤を製造した。使用した試験方法は、1991年1月1日のDeutsche Gesellschaft fur Hygiene und Mikrobiologieの"Richtlinie fur die Prufung und die Bewertung von Hautdesinfektionsmnitteln"「皮膚殺菌剤の試験および評価のためのガイドライン」(Zbl.Hyg. 192(ページ99-103(1991)を参照)であった。
【表7】

【0066】
以下の減衰因子を得た:
【表8】

【0067】
結果:
基準溶液と比較して、本発明の組成物は、改良された活性を示す。30%の水だけを含む基準溶液と比較して、本発明の作用溶液(5d)は64%の水を含む。したがって、本発明の製剤は、皮膚に対してより適合性を有する。本発明によらない製剤5Bとの比較から、POEと組み合わせることにより、比較的高価なSC 50の一部を置換することができ、この組合せは、活性を改善する結果にさえなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用混合物の形態の殺菌剤であって、
(a)重量の0.05〜1%の1-(2-エチルヘキシル)グリセロールエーテルと、および
(b)重量の0.2〜5%の、アリールオキシアルカノール、オリゴアルカノールアリールエーテルおよびアリールアルカノールからなる群から選択される一または複数の芳香族アルコールと、
を含む殺菌剤。
【請求項2】
作用混合物の形態または濃縮物の形態の殺菌剤であって、
(a)1-(2-エチルヘキシル)グリセロールエーテルと、および
(b)アリールオキシアルカノール、オリゴアルカノールアリールエーテルおよびアリールアルカノールからなる群から選択される一または複数の芳香族アルコールと、
を含み、
成分(b)に対する成分(a)の重量比xは、0.15以下にあることを特徴とする殺菌剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の殺菌剤であって、
成分(b)に対する成分(a)の重量比xは、0.09以下、より好ましくは0.08〜0.03、特に0.07〜0.04であることを特徴とする殺菌剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の殺菌剤であって、
前記アリールオキシアルカノールは、フェノキシエタノールまたはフェノキシプロパノールであることを特徴とする殺菌剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の殺菌剤であって、
前記アリールアルカノールは、3-フェニルプロパン1-オル、フェニルエチルアルコール、ベラチルアルコール、ベンジルアルコールまたは2-メチル-1-フェニール-2-プロパノールであることを特徴とする殺菌剤。
【請求項6】
作用混合物の形態の殺菌剤であって、
(a)重量の0.05〜0.2%の1-(2-エチルヘキシル)グリセロールエーテルと、および
(b)重量の1.0〜2.0%のフェノキシエタノールと、
を含む殺菌剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の殺菌剤であって、さらに、該殺菌剤は、水、エタノールおよび/またはH2O2を含むことを特徴とする殺菌剤。
【請求項8】
(a)1または複数の1-(C3-〜C24-アルキル)グリセロールエーテルもしくは2-(C3-〜C24-アルキル)グリセロールエーテルと、および(b)1または複数の芳香族アルコールとを含む殺菌剤の、マイコバクテリアを制御するための使用。
【請求項9】
請求項8に記載の使用であって、前記マイコバクテリウムは、ライ菌(Mycobacterium leprae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)およびマイコバクテリウム・テラ(Mycobacterium terrae)からなる群から選択されることを特徴とする使用。
【請求項10】
請求項8または9に記載の使用であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の殺菌剤を使用することを特徴とする使用。
【請求項11】
マイコバクテリアを制御するための方法であって、(a)1または複数の1-(C3-〜C24-アルキル)グリセロールエーテルもしくは2-(C3-〜C24-アルキル)グリセロールエーテルと、および(b)1または複数の芳香族アルコールとを含む殺菌剤を殺菌される表面に作用させることによる方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記殺菌される表面は、医療機器または実験器具または生物の表面、特に皮膚、粘膜、傷、植物または植物の部分であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の方法であって、前記殺菌される表面は、金属、ガラス、プラスチックまたはセラミックから製造されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法であって、前記殺菌剤は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の殺菌剤であることを特徴とする方法。

【公開番号】特開2011−6434(P2011−6434A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178007(P2010−178007)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2003−151764(P2003−151764)の分割
【原出願日】平成15年5月29日(2003.5.29)
【出願人】(399035504)エール・リキード・サンテ(アンテルナスィオナル) (26)
【Fターム(参考)】