マイコバクテリウムに対して免疫性を与える組成物
【課題】マイコバクテリウムに対して免疫性を与える組成物の提供。
【解決手段】マイコバクテリウム抗原85Aの翻訳産物を発現する非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチン。これを投与することにより宿主においてT細胞の免疫応答を生成させる。また、抗原又はその免疫原性断片を発現するアデノウイルスベクターを用いて抗原に対するCD8及びCD4のメモリーT細胞の応答を誘導する方法。
【解決手段】マイコバクテリウム抗原85Aの翻訳産物を発現する非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチン。これを投与することにより宿主においてT細胞の免疫応答を生成させる。また、抗原又はその免疫原性断片を発現するアデノウイルスベクターを用いて抗原に対するCD8及びCD4のメモリーT細胞の応答を誘導する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宿主においてT細胞の免疫応答を生じる方法に関する。この方法は、マイコバクテリウムの抗原85Aの遺伝子(本明細書では「Ag85A」遺伝子とも呼ぶ)の翻訳産物を発現する非複製性の又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンを投与するステップを含む。
【0002】
本明細書で引用された全ての出版物、特許及び特許出願は、参照によって全てが援用される。
【0003】
背景技術
結核は、呼吸器病原体、マイコバクテリウム・ツベルキュロシスが原因で起き、主として開発途上国で、毎年200万人の人々が亡くなっている(http://www.who.int/gbt/publications/globrep01/index.html)。M.ツベルキュロシスに対する唯一の認可されたワクチンであるカルメット・ゲラン桿菌(BCG)(Calmette,A.,C.Guerin,Ann.Inst.Pasteur.,38:371,1924)は、マイコバクテリウム・ボビスの弱毒化株であり、それは、開発途上国では通常、新生児に対して単回用量で経皮投与される。多くの研究の概説は、BCGによるワクチン接種が、小児の髄膜結核及び本疾患の全身性の形成に対して防御することを示唆している。しかしながら、結核による死亡の主な世界的原因である成人の肺疾患に対しては、防御有効性には、バラツキがあり(0から80%の範囲)(Golditz,G.A.et al.,JAMA271:698,1994)、それは時間とともに弱まる(Stene,J.A.et al.,Int.J.Tuberc.Lung Dis.,2:200,1998)。バラツキの理由は不確定である。そうであっても世界中の乳児の80%が毎年BCGを受けている(http://www.who.int/inf−fs/en/fact104.html)。
【0004】
マイコバクテリウム・ツベルキュロシスは、細胞内の病原体であり、それに対する防御有効性は、CD4+及びCD8+双方のT細胞が関与する、感染への強い細胞性の応答の維持及びTh1型のサイトカイン、特にIFN−γと反応する能力に関連する(Flynn,J.L.,J.Chan,Ann.Rev.Immunol.,19:93,2001)。BCGによるワクチン接種は、M.ツベルキュロシスのタンパク質と交差反応する、主としてCD4+T細胞の表現型の、IFN−γを分泌するT細胞を誘導する(Launois P et al.,Infection and Immunology62(9):3679−87,1994)。最近の研究は、非経口で送達されるBCGは、肺粘膜にてT細胞の免疫応答を誘導することができず、それが、肺疾患に対する防御に決定的である可能性があることを示唆している。
【0005】
従って、マイコバクテリウムによる疾患に対する更なるワクチンを開発するニーズがある。
【0006】
発明の開示
驚くべきことに、現在、マイコバクテリウム抗原85A(Ag85A)を発現するウイルスベクターは、免疫原性の組成物として投与された場合、ヒト患者のT細胞の免疫応答を誘導できることが見い出されている。従って、本発明は、マイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳産物を発現する非複製性の又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性の組成物を患者に投与するステップを具えるヒト患者のマイコバクテリウム抗原に対してT細胞の免疫応答を誘導する方法を提供する。好ましくは、免疫原性組成物はベクターワクチンである。この新規のワクチン法は、T細胞の免疫応答の大きさ及び持続時間を有意に改善する。好ましくは、T細胞の応答は、メモリーT細胞の応答である。
【0007】
85A抗原(Ag85A)(受入番号CAA17868及びBX842584)は、Ag85複合体の員である。これは、M.ツベルキュロシス、BCG及びマイコバクテリウムのその他多数の種によって分泌される抗原、85A、85B及び85Cを具えるタンパク質のファミリーである(Harth G.et al.,Infect.Immun.,64:3038−3047,1996)。抗原85A(Ag85A)はあらゆるマイコバクテリウム種の間で保存性が高く、動物及びヒトの研究において免疫優勢である。Ag85A(Ag85A)は、fbpA遺伝子によってコードされる。マイコバクテリウム・ツベルキュロシス由来の85A抗原(Ag85A)は、本明細書では、配列番号1及び2に列記される。
【0008】
結核のワクチン研究においてT細胞の高い応答を誘導する最近の戦略は、プラスミド、細菌又はウイルスのベクター及び組換えたんぱく質を用いた組換えDNA技術を利用してM.ツベルキュロシスの抗原を発現させている。Ag85AのDNAによるマウスのワクチン接種にAg85Aを発現するMVAベクターで追加免疫することは、M.ツベルキュロシスの感作に続くBCGと同等の程度の防御を生じることが示されている(McShane H.et al.,Infect.Immun.,70:1623−1626,2002)。しかしながら、組換えMVAベクター単独による単回の又は反復した免疫によって生じる免疫応答は弱かった。
【0009】
結核のようなマイコバクテリウムによる疾患に対する長期の防御については、数十年間に渡って防御免疫を刺激し続けることができる「メモリーT細胞」を維持することが重要であると考えられる。
【0010】
メモリー免疫応答は、古典的には、分化したエフェクターT細胞から直接生じ、均一な休止状態で生き残る長命の抗原特異的Tリンパ球の再活性化によるものとされる。エフェクターT細胞及びメモリーT細胞は、生体のあらゆる組織、特に、病原体に再遭遇する可能性が高い上皮表面(例えば、皮膚及び消化管)に分布すると考えられる。
【0011】
メモリーT細胞は、不均質であり、異なった移動能及びエフェクター機能を持つ少なくとも2つのサブセットを具えることが示されている(Reinhardt R.L.et al.,Nature 410:101−105,2001)。第1のサブセットの細胞は、それらがリンパ節ホーミング受容体、L−セレクチン及びCCR7を欠き、炎症性の組織への移動のための受容体を発現するという点で一次応答で生じるエフェクター細胞に似る。抗原との再遭遇の際、これら「エフェクターメモリーT細胞」(TEM)は、迅速にIFN−γ若しくはIL−4を産生し、又は事前に保存していたパーフォリンを放出する。第2のサブセットの細胞は、L−セレクチン及びCCR7を発現し、迅速なエフェクター機能を欠く。これら「セントラルメモリーT細胞」(TCM)は、低い活性化閾値を有し、二次リンパ系臓器にて再刺激された際、増殖し、エフェクターに分化する(Iezzi G.et al.,J.Exp.Med.,193:987−994,2001)。
【0012】
本発明者らは、Ag85A(Ag85A)を発現している複製を損傷したウイルスベクター(この場合、「MVA85A」によって例示される)が、BCGに感作されていない健常志願者にて単独で使用された場合、高レベルの抗原特異的インターフェロン−γ分泌メモリーT細胞、すなわち、エフェクターメモリーT細胞及びセントラルメモリーT細胞の双方を誘導できることを見い出した。
【0013】
最近の10年間に渡って、T細胞の応答を測定し、定量する新しい免疫アッセイが確立されている。抗原特異的T細胞からのIFN−γの分泌が、M.ツベルキュロシスに対する防御の最良の利用できる相関であるので、本発明者らは、MVA85Aによる臨床試験の主な免疫的読み出しとして、インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)ELISPOTアッセイを利用した。更に、ELISPOTアッセイは、IFN−γを分泌する抗原特異的T細胞の数を定量する、極めて再現性の高い、感度の高い方法である。
【0014】
本発明者らは、2つのELISPOTアッセイ:抗原と共に末梢血単核細胞(PBMC)を18時間インキュベートしてCCR7−の循環エフェクターT細胞のレベルを測定する生体外(新鮮)ELISPOTアッセイと、抗原と共にPBMCを10から14日間インキュベートしてCCR7+のセントラルメモリーT細胞のレベルを測定する培養ELISPOTアッセイ(Godkin et al.,JI,2002)とを利用した。
【0015】
本発明者らは、MVA85Aによるワクチン接種が、抗原85A(Ag85A)に特異的な強いセントラルメモリーT細胞の応答を誘導し、それは、循環エフェクターT細胞の応答がほとんど検出不能である、ワクチン接種後3週間でも検出可能であることを発見した。
【0016】
これは、マイコバクテリウム抗原を発現する免疫原性組成物を投与することによって患者の長期のセントラルメモリーT細胞集団が有意に増強されてもよいという最初の実証である。
【0017】
本明細書で使用するとき、「メモリーT細胞」は、T細胞のCCR7−(エフェクターメモリーT細胞)及びCCR7+(セントラルメモリーT細胞)の亜集団双方を包含することが意図される。この定義はまた、クラスII拘束性CD4メモリーT細胞及びクラスI拘束性のCD8メモリーT細胞の双方も包含する。好ましくは、本発明のベクターワクチンで誘導されるメモリーT細胞は、CCR7+の細胞表面での発現を特徴とする。これを本明細書では、セントラルメモリーT細胞と呼ぶ。
【0018】
好ましくは、本発明の免疫原性組成物によって誘導されるメモリーT細胞の応答は、防御的T細胞応答である。防御的免疫応答は、好ましくは、抗原特異的T細胞に由来するIFN−γ分泌の免疫アッセイによって測定されてもよい。好ましくは、メモリーT細胞の応答は、長く続き、少なくとも、1、2、5、10、15、20、25以上持続する。更に好ましくは、防御的免疫応答は一生続く。
【0019】
好ましくは、Ag85A遺伝子は、ウイルスベクターで発現される。好ましくは、Ag85A遺伝子は、非複製性の又は複製が損傷されたウイルスベクターで発現される。
【0020】
用語「ベクターワクチン」は当該技術で周知である。本発明に係る方法で使用されるベクターは、非複製性の又は複製が損傷されたウイルスベクターである。用語「非複製性の」又は「複製が損傷された」は、本明細書で使用されるとき、正常なヒト細胞の大半においていかなる有意な程度にも複製することが可能ではないことを意味する。非複製性の又は複製が損傷されたウイルスは、確かに天然であってもよいし(すなわち、それらがそのまま天然から単離されてもよい)、又は、例えば、試験管内で繁殖させることによって、若しくは遺伝子操作によって、例えば、複製に重要な遺伝子の欠失によって人為的であってもよい。一般に、ウイルスが増殖することができる1又は2、3の細胞種があり、例えば、改変されたウイルスAnkara(MVA)のためのCEF細胞がある。一般に、ウイルスベクターは、T細胞の応答を刺激することが可能であるべきである。
【0021】
この背景で有用であるウイルスベクターの例は、例えば、MVA又はNYVACのようなワクシニアウイルスベクターである。好ましいウイルスベクターは、ワクシニア株MVA又はMVAに由来する株である。ワクシニアウイルスの代替には、例えば、鶏痘ウイルス又はカナリア痘ウイルスのベクターのようなアビポックスベクターを具えるその他のポックスウイルスベクターが挙げられる。アビポックスベクターとして特に好適なのは、ALVAC(カナポックスとして市販)として知られるカナリア痘ウイルスの株、及びALVACに由来する株、及びFP9として知られる鶏痘ウイルス株である。更なる代替は、アルファウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、フラビウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びインフルエンザウイルスベクターである。
【0022】
例えば、ベクターは、非ヒトアデノウイルスベクターであってもよい。驚くべきことに、アデノウイルスベクターの使用は、非常に強いCD4メモリーT細胞の応答に加えて、非常に強いCD8メモリーT細胞の応答を誘導することが見い出された。同一ワクチンによるCD8及びCD4双方のメモリーT細胞の応答の誘導は、マイコバクテリウムによる疾患の予防及び治療の双方に有益である可能性が高い。従って、抗原又はその免疫原性断片を発現するアデノウイルスベクターを用いて抗原に対してCD8及びCD4のメモリーT細胞の応答を誘導する方法も、本出願の範囲内に包含される。アデノウイルスベクターによって発現される抗原は、好ましくは上述のようなマイコバクテリウムの抗原であり、最も好ましくはAg85Aであるが、代替的にはその他の好適な抗原のいかなるものでもよい。
【0023】
また、本発明の範囲内に包含されるものは、抗原に対してCD8及びCD4のメモリーT細胞の応答を誘導するための薬物の製造における抗原又はその免疫原性断片を発現するアデノウイルスベクターの使用である。好ましくは、本発明は、マイコバクテリウムによる疾患の治療又は予防のための薬物の製造におけるマイコバクテリウム抗原又はその免疫原性断片を発現するアデノウイルスベクターの使用を提供する。抗原は、好ましくは上述のようなマイコバクテリウムの抗原であり、最も好ましくはAg85Aであるが、代替的にはその他の好適な抗原のいかなるものでもよい。
【0024】
ウイルスベクターは、ヒト患者の重篤な感染を起こすことができないことが好ましい。
【0025】
ウイルスの複製は一般に2つの方法:1)DNA合成、及び2)ウイルス力価で測定される。更に正確には、用語「非複製性の又は複製を損傷した」は、本明細書で使用されるとき、及びポックスウイルスに適用されるとき、以下の基準のいずれか又は双方を満たすウイルスを意味する。
1)MRC−5細胞(ヒトの細胞株)におけるワクシニアウイルスのコペンハーゲン株に比べてDNA合成において1ログ(10倍)の低下を示す;
2)ワクシニアウイルスのコペンハーゲン株に比べて、HELA細胞(ヒト細胞株)におけるウイルス力価で2ログの低下を示す。
【0026】
この定義の範囲内に入るポックスウイルスの例は、MVA、NYVAC及びアビポックスウイルスであり、一方、定義から外れるウイルスは、弱毒化ワクシニア株M7である。
【0027】
本発明はまた、ヒト患者のマイコバクテリウムによる疾患の治療又は予防のための薬物の製造における、マイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳残物を発現する非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物の使用も提供する。好ましくは、免疫原性組成物は、ベクターワクチンである。患者のT細胞の免疫応答を誘導することによって、免疫原性組成物及びベクターワクチンは作用する。
【0028】
本発明に係るワクチンは、予防的(すなわち、感染を予防すること)、暴露後(すなわち、感染後ではあるが、発症前に治療すること)又は治療的(すなわち、疾患を治療すること)のいずれであってもよいが、通常、予防的又は暴露後であろう。
【0029】
本発明のベクターワクチンによって治療又は予防することができるマイコバクテリウムによる疾患には、結核、ハンセン氏病、マイコバクテリウム・アビウム感染、非結核性のマイコバクテリウム感染、ブルーリ潰瘍、マイコバクテリウム・ボビス感染又は疾患、マイコバクテリウム・パラツベルキュロシス感染又は関連する疾患が挙げられる。その他の疾患(すなわち、マイコバクテリウムによる疾患ではない)には、炎症性腸疾患、クローン病、自己免疫疾患、癌、膀胱癌、天然痘及びサル痘が挙げられる。
【0030】
特殊化したウイルスベクター構築物を用いて、ベクターワクチンの調製及び有用性を促進してもよい。本明細書で記載されるベクター構築物は全て本発明の態様を形成する。これらウイルス構築物を具えるベクターワクチンもまた、本発明の態様として包含される。
【0031】
例えば、1以上の抗原遺伝子を、遺伝子のC末端又はN末端で切断してもよい。このことが、ベクターワクチンのクローニング及び構築を促進する効果を有してもよいし、代替的に、又は加えて、高い有効性につながってもよい。切断する方法は当業者に既知である。この種の切断を達成する最も簡単な方法は、抗原遺伝子のいずれかの末端でコードする核酸配列を選択的に欠失し、次いで所望のコーディング配列をウイルスベクターに挿入する、遺伝子操作の種々の周知の技法を使用することである。例えば、3’及び/又は5’エクソヌクレアーゼ戦略を選択的に用いてそれぞれ、コードする核酸の3’及び/又は5’末端を破壊することによって、候補タンパク質の切断を創る。好ましくは、親型抗原に比べて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上のアミノ酸だけ、発現される抗原が切断されるように、野生型の遺伝子配列を切断する。最も好ましくは、抗原遺伝子は、野生型Ag85A抗原(配列番号3、配列番号4の発現産物)に比べてC末端で15のアミノ酸が切断されたAg85Aである。
【0032】
本発明での使用に好適な抗原は、その断片が、親型抗原と共通する又は免疫的に同一視することが可能な抗原決定基又はエピトープを有するという条件で、親型抗原の断片も包含する。これらの断片をコードするポリヌクレオチドも、本発明の免疫原性組成物及びベクターワクチンでの使用に好適である。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「断片」は、それが由来する親型抗原又はその機能的同等物の1つのアミノ酸配列の全てではないが、一部と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを言う。断片は、配列から少なくともn個の連続したアミノ酸を具えるべきであり、特定の配列によって、n個、好ましくは7個以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20以上)を具えるべきである。小型の断片が抗原決定基を形成してもよい。
【0034】
本発明の抗原遺伝子は、親型抗原の変異体又は機能的同等物をコードしてもよい。そのような核酸分子は、例えば、天然に生じる対立遺伝子の変異体のような天然に生じる変異体であってもよく、又は、該分子は、天然に生じることが知られていない変異体であってもよい。核酸分子、細胞又は生物に適用されるものを具える突然変異誘発法によって核酸分子のそのような非天然に生じる変異体を作製してもよい。
【0035】
中でも、この点での変異体は、ヌクレオチドの置換、欠失又は挿入によって前述の抗原遺伝子の配列とは異なる変異体である。置換、欠失又は挿入には、1以上のヌクレオチドが関与してもよい。コーディング領域又は非コーディング領域又はその双方で変異体を変化させてもよい。コーディング領域における変化が、保存的又は非保存的なアミノ酸の置換、欠失又は挿入を生じてもよい。
【0036】
代替的に、又は遺伝子の切断に加えて、抗原をコードする遺伝子は、翻訳の際、タグポリペプチドが抗原と共有結合するようにタグポリペプチドをコードする核酸を含んでもよい。好ましくは、タグポリペプチドは、PKタグ、FLAGタグ、MYCタグ、ポリヒスチジンタグ、又は抗体によって検出することができるタグから成る群より選択される。その他の例は、当業者に明らかであろう。使用するならば、PKタグは、好ましくは、配列Pro−Asn−Pro−Leu−Gly−Leu−Aspを有する。この種のタグは、抗原の発現及び抗原を発現するクローンの検出を円滑にし、代替的に、又は加えて、有効性の増大につながってもよい。
【0037】
翻訳に続いて、タグが、発現される抗原のC末端若しくはN末端に位置するように、又は発現される抗原に対して内在的であってもよいように、タグポリペプチドをコードする核酸を位置取りさせてもよい。好ましくは、タグは、発現される抗原のC末端に位置する。タグポリペプチドをコードする核酸と発現される抗原をコードする核酸との間にリンカー配列をコードするヌクレオチドが挿入されてもよい。好ましくは、発現される際、リンカー配列は、アミノ酸Gly−Ser−Ileを具える。更に好ましくは、アミノ酸Gly−Ser−Ileは、発現される抗原のN末端抗原配列とタグとの間に挿入される。最も好ましくは、発現される抗原は、Ag85a(Ag85A)であり、PKタグはAg85a(Ag85A)遺伝子のC末端に位置する。
【0038】
抗原をコードする遺伝子はリーダー配列も具えることができる。リーダー配列は、mRNAへの一次転写物のプロセッシング、mRNAの安定性又は翻訳効率に影響を及ぼしてもよい。好ましくは、リーダー配列は、抗原の発現及び/又は免疫原性を高める。例えば、培養ELISPOTアッセイ及び生体外ELISPOTアッセイを介して、高められた免疫原性を判定することができる。例えば、モノクローナル抗体を用いて産生したタンパク質の量を検出することによって発現の高められたレベルを判定することができる。好ましくは、リーダー配列なしで発現された抗原に比べて発現及び/又は免疫原性が2倍、3倍以上増強される。好適なリーダー配列の例には、t−PA(組織プラスミノーゲンアクチベータ)(Malin A.S.et al.,Microbes Infect.,2(14):1677−85,2000 Nov)である。
【0039】
好ましくは、ウイルスベクターの構築は、TPAリーダー配列に融合されたC末端が切断されたAg85Aの配列を具える。その上更に好ましい実施態様では、本発明のウイルスベクターは、TPAリーダー配列及びPKタグ配列に融合されたC末端が切断されたAg85Aの配列を発現する。好ましくは、リーダー配列は抗原のN末端に融合され、タグ配列はタンパク質の内部又はC末端のいずれかに融合される。特に好ましい実施態様では、ウイルスベクターの構築は、TPA配列に融合され、配列Pro−Asn−Pro−Leu−Leu−Gly−Leu−AspのPKタグを持つ、C末端で15のアミノ酸が切断されたAg85a(Ag85A)をコードするポリヌクレオチドを含み、その際、アミノ酸残基Gly−Ser−Ileが、Ag85A配列とPKタグ(配列番号5)との間に存在する。好ましくは、ウイルスベクターの発現産物は、配列番号6のアミノ酸配列を有する。
【0040】
本発明者らによって言及される防御的T細胞の効果は、以前マイコバクテリウム抗原に暴露されたことがあるヒト患者で特に強力であることが見い出されている。不均質なプライム−ブースト(prime−boost)免疫の免疫戦略は、同一ワクチンによる均質な追加免疫よりも高レベルのエフェクターT細胞の応答を動物及びヒトで誘導する(Schneider,J.et al.,Nat.med.,4:397−402,1998; McShane,H.et al.,Infect.Immun.,69:681−686,2001)。
【0041】
(新生児で接種された)個体が10から15歳に達するにつれて、BCGの有効性を徐々に失うことの根底にあるメカニズムはほとんど理解されていない。可能性のある仮説の1つは、BCGによって生じた免疫が消失し、個体は、一次免疫を誘導するように設計された新しい候補ワクチンでワクチン接種できる免疫経験のない宿主と同等になるということである。BCGによる繰り返しのワクチン接種がTBに対する防御を高めるとは思われないが(Rodrigues L.et al.,Lancet,2005を参照)、不均質なプライム−ブースト免疫の計画にBCGを組み入れることはBCGの防御効果を保持することになるであろう。幾つかの動物モデルにおける、抗原85A(Ag85A)を発現するウイルスベクターと共にBCGを追加免疫することの免疫原性及び防御効果は以前記録された(Goonetileke,N.P.et al.,J.Immunol.,171:1602−1609,2003;Williams A.et al.,Infection and Immunity,73(6):3814−6)が、防御的メモリーT細胞の応答の誘導は記録されなかった。
【0042】
従って、本発明はまた、マイコバクテリウム85a(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンと併用して、患者に少なくとも1つのマイコバクテリウム抗原を投与するステップを具えるヒト患者でT細胞の免疫応答を惹起する方法も提供する。好ましくは、T細胞の免疫応答は、メモリーT細胞の免疫応答である。
【0043】
本発明はまた、T細胞の免疫応答を誘導するために患者に投与するための薬物の製造における、(a)少なくとも1つのマイコバクテリウム抗原及び(b)マイコバクテリウム85a(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンの使用も提供する。
【0044】
マイコバクテリウム85a(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチン及びマイコバクテリウム抗原は、同時に、順次、又は別々に投与されてもよい。例えば、マイコバクテリウム抗原を投与してベクターワクチンの投与の前又は後で、患者を感作し、ベクターワクチンに対する患者の免疫応答を増強してもよい。
【0045】
更に、本発明はまた、マイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物をヒト患者に投与するステップを具えるヒト患者でT細胞の免疫応答を誘導する方法も提供し、その際、患者は少なくとも1つのマイコバクテリウム抗原に事前に暴露されている。好ましくは、T細胞の免疫応答は、メモリーT細胞の免疫応答である。
【0046】
本発明はまた、以前マイコバクテリウム抗原に暴露されたことがあるヒト患者でマイコバクテリウムによる疾患を治療する又は予防するための薬物の製造における、マイコバクテリウム85a(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンを具える免疫原性組成物の使用も提供する。
【0047】
マイコバクテリウム抗原は、M.ツベルキュロシスに由来してもよく、及び/又は例えば、M.アビウム−イントラセルラーレ、M.カンサシイ、M.マリナム、及び/又はM.ウルセランスのような1以上のその他のマイコバクテリウムに由来してもよい。患者がたった1種の抗原に以前暴露されたことがある場合、抗原は、マイコバクテリウム感染に対する防御免疫応答を付与する抗原であってもよい。本発明の実施態様の1つでは、患者が以前暴露されたことがある抗原は、Ag85Aではない。
【0048】
代替的に、又は加えて、患者は以前、1以上のマイコバクテリウム自体に暴露されたことがあってもよい。例えば、少なくとも1種のマイコバクテリア抗原への患者の以前の暴露が、M.ツベルキュロシスに対する以前の暴露を含んでもよい。代替的に、又は加えて、少なくとも1種のマイコバクテリア抗原への患者の以前の暴露が、例えば、M.アビウム−イントラセルラーレ、M.カンサシイ、M.マリナム及び/又はM.ウルセランスのような環境でのマイコバクテリウムへの以前の暴露を含んでもよい。好ましくは、患者は潜在的にマイコバクテリウムに感染する。例えば、患者は、M.ツベルキュロシスに以前暴露されたことがあってもよく、潜在的に結核に感染していてもよい。薬物が、潜在的にマイコバクテリウムに感染している患者の治療のためである場合、治療は好ましくはマイコバクテリウム感染を根絶する。
【0049】
代替的に、又は加えて、以前の暴露が、BCGによる新生児のワクチン接種又はBCGによる以前のワクチン接種を含んでもよい。本発明者らは、BCGによって以前ワクチン接種を受け、次いで、本発明のベクターワクチンの追加免疫用量を投与された志願者では、有意に高いレベルの抗原特異的なインターフェロン−γ分泌T細胞が誘導され、ワクチン接種後24週目で、単回BCG接種を投与されたワクチンよりも、これらのレベルが5から30倍高かったことを見い出している。
【0050】
従って、本発明のこの態様は、少なくとも1種のマイコバクテリウム抗原に患者を暴露するステップ、及びマイコバクテリウム85a(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物を具える追加免疫組成物を投与することによって免疫応答を増強するステップを具えるヒト患者のT細胞の免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0051】
本発明のこの態様はまた、以下のステップ:
i)少なくとも1種のマイコバクテリウム抗原に患者を暴露するステップと;
ii)マイコバクテリウム85a(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンを具える少なくとも1つの用量の追加免疫組成物を前記患者に投与するステップと;
を具えるヒト患者のT細胞の免疫応答を生成する方法にも関する。
【0052】
本発明の実施態様の1つでは、ステップi)で患者がたった1種のマイコバクテリウム抗原に暴露される場合、該抗原は、防御的免疫応答を付与する抗原ではあるが、Ag85Aではない。
【0053】
ステップi)は、いかなる年齢の患者、例えば、出生後、乳児期、青年期又は成人期の患者で行われてもよい。好ましくは、患者は新生児期に、少なくとも1つのマイコバクテリウム抗原に暴露される。
【0054】
少なくとも1種のマイコバクテリウム抗原に事前に暴露した後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10週以上、又は0.25、0.5、0.75、1、5、10、15、20、25、30、35、若しくは40年以上で、免疫原性組成物の投与が生じてもよい。好ましくは、患者が乳児期であるとき、ステップi)が実施される場合、ステップii)は乳児期又は青年期に実施される。
【0055】
ステップii)が患者に1より多くの用量の追加免疫組成物を投与するステップを具える場合、1より多くの用量が、短期間に渡って又は長期間に渡って投与されてもよい。例えば、追加免疫組成物の用量を時間、日、週、月又は年の期間に渡って投与してもよい。例えば、第1の追加免疫投与の後0.5から24時間の間に、第1の追加免疫投与の後1日から7日の間に、第1の追加免疫投与の後1週間から1ヵ月の間に、第1の追加免疫投与の後1ヵ月から6ヵ月の間に、第1の追加免疫投与の後6ヵ月から1年の間に、第1の追加免疫投与の後1から2、2から5、6から10年以上の間に、第2の追加免疫の用量を投与してもよい。好ましくは、これらの時間間隔は、必要な変更を加えて、後に続く投与との間の期間に適用される。
【0056】
本発明の第2の態様では、85a(Ag85A)抗原に対して誘導された免疫応答に加えて、ウイルスベクターが、ベクター特異的なT細胞の応答を刺激する。本発明のこの態様によれば、本発明のベクターワクチンの投与は、ウイルスベクターが由来するウイルスに対するT細胞の免疫応答を促進する。例えば、本発明のベクターワクチンにおけるMVAベクターの使用は、ワクシニアウイルスに対するT細胞の免疫応答を促進する。好ましくは、このT細胞の応答は、防御的T細胞の応答である。この種の効果は今までに報告されておらず、ベクターワクチンが、第1にマイコバクテリウムによる疾患に対する防御、及び第2に、ベクターに関連するウイルスが介在する疾患に対する防御において二重の役割を有するという点で明らかに有利である。MVAベクターの場合、そのような疾患は天然痘である。
【0057】
本発明のベクターワクチンによって治療又は予防することができるウイルスに由来する疾患は当業者に明らかであり;例として、天然痘、サル痘、及び散在性のワクシニア感染症が挙げられる。
【0058】
従って、本発明のこの態様は、マイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物をヒト患者に投与することを具えるヒト患者のマイコバクテリウム抗原及びウイルスに対するT細胞の免疫応答を誘導する方法を提供する。好ましくは、T細胞の免疫応答は、メモリーT細胞の応答である。
【0059】
本発明のこの態様はまた、ヒト患者のマイコバクテリウム抗原及びウイルスに対するT細胞の免疫応答を誘導するための薬物の製造におけるマイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物の使用も提供する。
【0060】
本発明のワクチンは、免疫的に有効な量の少なくとも1種の抗原を患者に送達する。「免疫的に有効な量」によって、その量の個体への投与が、単回用量にて又はシリーズの一部としてのいずれかで、治療又は予防に有効であることを意味する。この量は、治療される個体の健康及び身体の状態、年齢、個体の免疫系の能力、所望の防御の程度、ワクチンの剤形、治療医師の医学的状況の評価、及びその他の関連因子によって異なる。量が、日常の試行を介して決定できる相対的に広い範囲に入ることが期待される。
【0061】
本発明の第3の態様では、ウイルスベクターは、そのような追加の抗原に対して抗原特異的な免疫応答を誘導するのに使用することができる1以上の追加の抗原の翻訳産物を更に発現してもよい。免疫応答は、CD8+、CD4+及び/又は抗体の応答であってもよい。好ましくは、1以上の追加の抗原遺伝子は、M.ツベルキュロシス、プラスモジウムsp、インフルエンザウイルス、HIV、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトパピローマウイルス、マラリア、リーシュマニア寄生虫に由来し、又は好ましくは、マイコバクテリウムsppであってもよい。好ましくは、1以上の追加の抗原遺伝子は、マイコバクテリウムに由来する抗原85ファミリーの抗原又はマイコバクテリウムsppによって発現される任意の抗原;更に好ましくは、16kDa抗原又はヘパリン結合血球凝集素(HBHA)又はESAT6又は72Fとして知られる融合タンパク質のような1以上の潜伏抗原から成る群より選択される抗原をコードする。
【0062】
誘導される免疫応答が腫瘍に対して向けられるように、追加の抗原が内因性に由来してもよいことも予見される。本発明と共に使用するのに好適である内因性に由来する抗原は、ヒト熱ショックタンパク質及び、例えば、CEA、PSA、Muc−1、Her2neuのような腫瘍関連抗原である。
【0063】
Ag85A遺伝子及びエピトープ鎖としての1以上の追加の抗原遺伝子を発現するようにウイルスベクターを設計してもよい。有利なことに、一連の複数のエピトープにおけるエピトープは、不必要な核酸及び/又はアミノ酸物質を回避するように配列に介在することなく一緒に連結される。エピトープ鎖の創製は好ましくは、追加の抗原をコードするDNAと同一の読み取りフレームにてAg85AをコードするDNAと共に、エピトープ鎖のアミノ酸配列をコードする組換えDNA構築物を用いて達成してもよい。或いは、Ag85A及び追加の抗原は、別個のポリペプチドとして発現されてもよい。
【0064】
本発明のこの態様は、患者のT細胞の応答を誘導することによってヒト患者のマイコバクテリウムによる疾患、及び少なくとも1種の追加の疾患の双方を治療する又は予防するための薬物の製造におけるマイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳産物、及び少なくとも1種の追加の抗原又はエピトープの遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンの使用も提供する。
【0065】
本発明のこの態様によれば、ヒト患者のT細胞の免疫応答、好ましくはメモリーT細胞の免疫応答の誘導を介して、マイコバクテリウムによる疾患、並びにHIV,マラリア及び天然痘から成る群より選択される1以上の疾患の双方に対して防御するために、ベクターワクチンを使用してもよい。
【0066】
本発明のベクターワクチンは単独で使用されてもよいが、追加の疾患を治療、又は予防するためにその他のワクチン接種又は治療計画と組み合わせてもよい。従って、上述のようにベクターワクチンを提供するのと同様に、本発明は、本発明のベクターワクチン及び疾患の原因となる物質に由来する1以上の更なる抗原又はエピトープを具える組成物を提供する。
【0067】
本発明の組成物での使用に好適な抗原及びエピトープは、細菌又はウイルス起源のものであってもよい。好適な抗原は更に、タンパク質抗原、炭水化物抗原、又は複合糖質抗原として分類される。本発明の組成物は1以上の更なる抗原又はエピトープを含んでもよい。例は以下である。
−様々なマイコバクテリウム抗原又はエピトープ。
−HIV抗原又はエピトープ。
−プラスモディウム抗原又はエピトープ。
−マラリア抗原又はエピトープ。
−肺炎球菌に由来する糖抗原。
−肺炎球菌に由来するタンパク質抗原(例えば、PhtA、PhtD、PhtB、PhtE、SpsA、LytB、LytC、LytA、Sp125、Sp101、Sp128、Sp130及びSp133)。
−不活化ウイルスのようなA型肝炎ウイルスに由来する抗原又はエピトープ。
−表面抗原及び/又はコア抗原のようなB型肝炎ウイルスに由来する抗原又はエピトープ。
−C型肝炎ウイルスに由来する抗原又はエピトープ。
−インフルエンザb型菌に由来する糖抗原。
−ポリオ抗原又はエピトープ、例えば、IPV。
−ジフテリアワクチン又はその構成エピトープ又は抗原又は毒素。
−破傷風ワクチン又はその構成エピトープ又は抗原又は毒素。
−麻疹、おたふくかぜ、及び/又は風疹の抗原又はエピトープ。
−インフルエンザ抗原又はエピトープ、例えば、血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼ表面タンパク質。インフルエンザ抗原は、流行株、例えば、トリインフルエンザ、例えば、H5N1株から選択してもよい。
−黄色ブドウ球菌由来する抗原又はエピトープ。
−癌の抗原又はエピトープ。
【0068】
糖抗原を使用する場合、好ましくは、免疫原性を高めるためにキャリアに結合させる。毒性のタンパク質抗原は、必要に応じて、例えば、化学的な手段及び/又は遺伝的な手段によって無毒化してもよい。
【0069】
糖抗原は好ましくは抱合体の形態である。抱合体にとって好ましいキャリアタンパク質は、細菌の毒素又はトキソイド、例えば、ジフテリアトキソイド又は破傷風トキソイドである。ジフテリア毒素のCRM197変異体は、ジフテリアトキソイドのような特に好ましいキャリアである。その他の好適なキャリアタンパク質には、N.メニンギチジスの外部膜タンパク質、合成ペプチド、熱ショックタンパク質、百日咳タンパク質、サイトカイン、リンホカイン、ホルモン、成長因子、例えば、N19タンパク質、インフルエンザ菌由来のタンパク質D、肺炎球菌タンパク質PspA、ニューモリシン、鉄取り込みタンパク質、C.ディフィシル由来の毒素A又はB等のような種々の病原体由来の抗原に由来する複数のヒトCD4+T細胞のエピトープを具える人工タンパク質が挙げられる。
【0070】
組成物における更なる抗原は、少なくともそれぞれ1μg/mLの濃度で通常存在する。一般に、所定の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を引き出すのに十分であろう。
【0071】
混合物において更なるタンパク質抗原を使用することに対する代替として、抗原をコードする核酸を使用してもよい。従って、混合物のタンパク質成分は、タンパク質をコードする核酸(好ましくは、例えば、プラスミドの形態でのDNA)によって置き換えられてもよい。同様に、本発明の組成物は、糖抗原を模倣するタンパク質、例えば、ミモトープ又は抗イディオタイプ抗体を含んでもよい。
【0072】
更に、本発明はまた、本発明のベクターワクチン及び1以上の抗菌化合物を具える組成物も提供する。本発明の組成物での使用に好適な抗菌薬の例は、抗結核化学療法剤、例えば、リファンピシン、イソニアジド、エタンブトール、ピリジナミド等である。
【0073】
従って、本発明は、少なくとも1種の更なる抗原及び/又は抗菌薬との併用で、マイコバクテリウムAg85A(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンを患者に投与するステップを具えるヒト患者の少なくとも1種の抗原に対するT細胞の免疫応答を惹起する方法を提供する。
【0074】
本発明はまた、T細胞の免疫応答を誘導するためにヒト患者に投与するための薬物の製造における、(a)マイコバクテリウムAg85A(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチン及び(b)少なくとも1種の更なる抗原及び/又は抗菌薬(microbial)の使用も提供する。
【0075】
マイコバクテリウムAg85A(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチン並びに更なる抗原及び/又は抗菌薬は、同時に、順次、又は別々に投与されてもよい。例えば、抗原/抗菌薬の投与の前にベクターワクチンを投与して患者を感作してもよく、又は抗原の投与の後に投与してその抗原に対する患者の免疫反応を増強してもよい。ベクターワクチン及び抗原/抗菌薬は好ましくは混合物で投与される。
【0076】
本発明はまた、患者のT細胞の免疫応答を誘導するための薬物の製造における少なくとも1種の抗原及び/又は抗菌薬の使用も提供し、その際、該薬物は、マイコバクテリウムAg85A(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンと共に投与される。同様に、本発明は、患者のT細胞の免疫応答を誘導するための薬物の製造における、マイコバクテリウムAg85A(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンの使用を提供し、その際、該薬物は、少なくとも1種の更なる抗原及び/又は抗菌薬と共に投与される。
【0077】
本発明はまた、患者のT細胞の免疫応答を誘導するための薬物の製造における少なくとも1種の抗原及び/又は抗菌薬の使用も提供し、その際、該患者は、マイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンによって事前に治療を受けている。本発明はまた、患者のT細胞の免疫応答を誘導するための薬物の製造における、マイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンの使用を提供し、その際、該患者は、少なくとも1種の抗原及び/又は抗菌薬によって事前に治療を受けている。
【0078】
本発明を使用して、上述のように種々の免疫応答を誘導し、増強してもよい。特に、マイコバクテリウムが関係するとみなされる疾患に対して免疫性を与える有効な手段を同定することは本発明の目的である。そのような疾患には、ハンセン氏病、結核、骨髄炎、クローン病、らい病、リンパ節炎、ヨーネ病が挙げられる。
【0079】
本発明の上述の態様は、例えば、小児、HIV、AIDSを有する、免疫不全の/免疫抑制された、臓器移植、骨髄移植を受けた、又は遺伝的に免疫不全に罹っている患者を具える多種多様な患者に適用可能である。ワクチンが予防的用途である場合、患者は、小児(例えば、1から5歳の乳児又は小児)、大きい小児又は10代の子供であってもよく;ワクチンが治療用途である場合、患者は好ましくは成人である。子供に意図されるワクチンは、例えば、安全性、投与量、免疫原性等を評価するために成人に投与されてもよい。
【0080】
本発明はまた、(1)本発明の免疫原性組成物及び(2)薬学的に許容可能なキャリアを具える医薬組成物も提供する。
【0081】
本発明は、i)本発明のベクターワクチンを調製するステップ、及びii)1以上の薬学的に許容可能なキャリアと免疫原性組成物を混合するステップを具える医薬を調製する方法を提供する。
【0082】
キャリア2)は、組成物を受け取る患者に有害な抗体の産生をそれ自体誘導しない、且つ過度の毒性なしで投与することができる任意の物質であることができる。好適なキャリアは、例えば、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー及び不活性のウイルス粒子のような大型で代謝の遅い高分子であることができる。そのようなキャリアは当業者に周知である。薬学的に許容可能なキャリアには、例えば、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールのような液体を挙げることができる。例えば、湿潤剤又は乳化剤のような補助的物質、pH緩衝物質等もそのようなビヒクルに存在することができる。トレハロースのような安定剤、又は常温にて水溶性の糖ガラスを形成できる物質も存在してもよい。後者には、パーフルオロカーボン液体に懸濁されたミクロスフェアの形式での混合された可溶性ガラス安定化法の使用が含まれる。リポソームも好適なキャリアである。医薬キャリアの全般的な議論は、Gennaro、レミングトンの「製薬学の科学と実践」第20版、2000年、ISBN:0683306472で利用可能である。
【0083】
本発明の医薬組成物はまた、予防的に、例えば、微生物との接触が予想され、感染の確立が妨げられるべき場合、使用してもよい。例えば、外科手術に先立って組成物を投与してもよい。
【0084】
医薬組成物は好ましくは無菌である。それは好ましくは、発熱物質を含まない。それは好ましくは、例えば、pH6からpH8の間、一般的にはpH7前後に緩衝化される。好ましくは、組成物は実質的にヒトと等張である。
【0085】
本発明の組成物は、種々の異なった経路を介して投与してもよい。更に有効な応答の生成を生じるので、又は副作用を誘導する可能性を減らすので、又は投与が更に容易なので、特定の組成物に対して特定の経路が好まれる。
【0086】
例えば、本発明で利用される組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下、脳室内、経皮又は経皮膚塗布、皮下、腹腔内、鼻内、経腸、局所、舌下、膣内、又は直腸内の手段を具えるが、これらに限定されないいかなる数の経路によって投与されてもよい。鼻スプレー、点鼻剤、ゲル又は粉剤として、注射剤として、液体溶液又は懸濁液として鼻内投与用に組成物を調製してもよく;注射に先立った液体ビヒクル中の溶液又は懸濁液に好適な固体形態も調製してもよい。
【0087】
組成物の直接送達は、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射若しくは筋肉内注射、鼻腔内注射によって達成され、又は組織の間質空間に送達される。投与量治療は、単回用量計画であっても、複数回用量計画であってもよい。
【0088】
以下の図面を参照して、例によって本発明の種々の態様及び実施態様が今や更に詳細に説明されるであろう。
【0089】
例
例1
MVA85Aワクチン
MVA85Aの構築は以前記載された(McShane H. et al.,Infect.Immun.,70:1623−1626,2002)。Impfstoffwerke Dessau−Tornau社の適性製造実施基準に対して臨床等級のMVA85Aを製造した。臨床試験でMVA85Aを使用するために、ロンドンの医薬品及び医療用品規制局から医師及び歯科医師免除証書が発行された。
【0090】
臨床試験
オックスフォードシャー研究倫理委員会によって認可されたプロトコールのもとで免疫試験のために志願者が募集され、文書のインフォームドコンセントを得たのち登録された。参加者の年齢範囲は18から55歳であり、志願者は全て、スクリーニングの際、血清学的には、HIV、HBV及びHCVについて陰性だった。ワクチン接種に先立って、日常的な血液学的及び生化学的な臨床検査を行い、値は全て正常限界の範囲内であった。志願者は全て、規則的な時点での採血によって6ヵ月追跡検査した。MVA85Aの免疫を受けた者は、ワクチン接種後7日間、局所及び全身性の副作用及び体温を記録する日記カードを完成させた。
【0091】
ワクチン接種
ヒーフテストを用いて判定されたBCG接種をしたことがない健常な志願者で最初の2つの試験を実施した。ヒーフテストは、ツベルクリン精製タンパク質誘導体(PPD)を皮膚上に置き、次いで銃を用いて複数の穴を開けることを具える。陽性の反応は、72時間で、穿刺部位にて4丘疹を超える。陽性の皮膚テストは、活発な結核の感染又は以前のBCGワクチン接種を示す。ヒーフテスト陰性(等級0)(ツベルクリン皮膚テスト0mmと同等)の志願者に、BCG(BCGグラスゴー株の単回免疫付与、100μLを皮内に投与、n=11)又はMVA85A(5x107pfuを皮内に投与3週間離して2回免疫、n=14)のいずれかでワクチン接種した。第3の試験では、以前BCGでワクチン接種されたことがある志願者を募集した(n=17)。BCGワクチン接種とMVA85Aによる免疫との間の時間の中央値は、18年(0.5から38年の範囲)だった。ヒーフテストが強度で等級IIより大きくない(ツベルクリン皮膚テスト<15mmと同等)志願者を試験に登録し、BCGワクチン接種とは反対側の腕で三角筋を覆う皮膚の皮内に5x107pfuのMVA85Aを単回投与で免疫した。合計31人の健常な志願者がMVA85Aでワクチン接種された。14人のBCGを受けたことがない志願者のうち11人が3週間離して2回免疫を受けた。残りの3人は単回免疫付与を受けた。BCGで感作されている17人の志願者は全てMVA85Aの単回免疫付与を受けた。志願者は全員6ヵ月の追跡検査期間を完了し、これらの試験では深刻な又は重篤な有害事象はなかった。
【0092】
免疫原性の測定
ワクチンの免疫原性を判定するために使用された主な免疫学的測定は、生体外のIFN−γELISPOTアッセイだった。以下の時点:ツベルクリン皮膚テストに先立ったスクリーニング時、次いで、ワクチン接種後1、4、12及び24週で採血された血液でこれを実施した。ツベルクリンPPD(20μg/mL、SSI)、精製抗原85(Ag85A)複合体(10μg/mL)及び10アミノ酸が重複する9から10 15量体のペプチドの7つのプール(ELISPOTのウエルで各ペプチドの最終濃度10μg/mL)を用いて、新鮮なPBMCでこれらの測定を行った。手短に言えば、100μLのR10(RPMIプラス10%ウシ胎児血清)中のウエル当たり300,000個のPBMCを抗原の存在下、直接ELISPOTプレート(MAIP S4510、ミリポア)に入れ、18時間インキュベートした。アッセイでは全て、ストレプトキナーゼ(250U/mL)/ストレプトドルナーゼ(12.5U/mL)及び植物性血球凝集素(10μg/mL)を陽性対照として用いた。2連一組でアッセイを行い、結果を平均した。
【0093】
エピトープのマッピング
個々のペプチドに対する反応は、ワクチン接種後最初の試料又はその次の試料で調べた。個々のペプチドへの反応では、磁気ビーズによる除去(Dynal)を行った。氷上で200μLのR10にてM−450(ノルウエー、オスロのDynal)を用いて、5つのビーズ対1個の細胞の比率で鉄ビーズに結合したCD4及びCD8に対するモノクローナル抗体と共に30分間インキュベートすることによってCD4+及びCD8+のT細胞の除去を行った。抗体で被覆された細胞を磁石(Dynal)を用いて除いた。除去なしの群、CD4+除去群及びCD8+除去群に従って試料を分析した。細胞の除去はFACS走査によって確認し、常に、CD8+T細胞については>90%であり、CD4+T細胞については>97%だった(データは示さず)。
【0094】
免疫原性の分析
抗原又はペプチドのプール及び細胞の入ったウエルにおける平均スポット数から、培地と細胞のみの対照ウエルにおける平均スポット数を差し引くことによってELISPOTデータを解析した。カウントが5スポット/ウエルに満たない場合は無視される。カウントが陰性対照のウエルの少なくとも2倍であれば、及び陰性対照のウエルより少なくとも5スポット多ければ、ウエルは陽性とみなされた。ペプチドプールのウエルについては、各時点で各志願者についてペプチドプール全てに渡って結果を合計した。例えば、7つのペプチドプールがあり、それぞれ9から10のペプチドを含有する場合、各プールを2連一組で調べた。各プールについてこの2連一組の平均値を算出し、陰性対照ウエルの平均値を差し引き、そのプールの結果を得た。次いで、7つの個々のプールの結果を一緒に加えた。このことは、隣接するペプチドがある2つのプールで生じる10量体の重複領域のいずれかに反応するT細胞を2回数える可能性がある。
【0095】
統計的解析
共変量としてのスクリーニングの際のベースラインの結果を用いて、対数変換されたデータにて、反復測定値について変動の解析を行い、群間で比較した。次いで、群間のあらゆる比較にマン・ウィットニー検定を用い、BCGで感作し、MVA85Aで追加免疫した群におけるスクリーニング及び24週の試料の一対比較にはウイルコクソン検定を用いた。
【0096】
培養ELISPOT法
培養ELISPOTについては、24穴プレートにて、1x106個の凍結保存したPBMCを、20μg/mLのM.tbPPD(「PPD−T」)、M.アビウムPPD(「PPD−A」)又は10μg/mLの組換え抗原85A(Ag85A)で刺激した。37℃、5%CO2の雰囲気で3日間インキュベートした後、500μLの細胞培養上清を取り除き、R10中の5IU/mLのリンホカルト−T(ドイツ、ドライアイヒのバイオテスト)で置き換えた。7日目にこれを繰り返した。9日目に細胞を3回洗浄し、R10において37℃、5%CO2の雰囲気で一晩静置した。10日目に細胞を洗浄し、2mLのR10に再浮遊し、50μLの培養した細胞(当初播いた細胞の2.5x104)をELISPOTプレートの2連ウエルに移し、PPD−T20μg/mL、PPD−A20μg/mL及びAg85A10μg/mLによって18時間刺激した。次いで前述のようにELISPOTプレートを発色させた。
【0097】
結果
MVA85Aによる免疫は安全であり、良好に認容された(表1)。BCG単独、MVA85A単独及びBCGで感作し、MVA85Aで追加免疫したワクチン接種によって誘導された抗原特異的なT細胞の応答の動態及び大きさを比較した。アッセイにおいて、PPD−T、抗原85(Ag85A)タンパク質又は抗原85(Ag85A)に由来する重複ペプチドのいずれかを用いた3種のワクチン接種計画は全て有意な免疫応答を誘導する(表2、図1)。PPD−T(F=3.624、P=0.037)、抗原85(Ag85A)(F=16.605、P<0.001)及び合計したプール抗原85A(Ag85A)ペプチド群(F=39.982、P<0.001)においてワクチンの有意な主な効果があった。BCGによる免疫は、控えめなレベルの抗原特異的IFN−γ分泌T細胞を誘導し、そのピークは免疫後4週間だった(表2、図1bからd)。プールした抗原85A(Ag85A)ペプチドに対する応答は、BCGによるワクチン接種の後、顕著に弱かった。(図1d)。生体外ELISPOTアッセイでは、11人の志願者中たった4人しか7つのペプチドプールのいずれかに応答しなかった。これらのペプチドプールへの応答は全てペプチド12、13、27及び28に起因し、CD4+T細胞の除去によって完全に排除された。
【0098】
表1:MVA85Aによる免疫後の応答型の有害事象
BCG経験がない群とBCGで感作された群との間で報告された有害事象の頻度又は重症度のいずれかに差異はなかった。
a全身性症状は全て7日以内に解消した。
b37.7から38.1℃の範囲;全て24時間以内に自然に解消した。
【0099】
BCGの経験がない志願者では、MVA85Aによる単回免疫付与は、高いレベルの抗原特異的IFN−γ分泌T細胞を誘導し、14人の志願者中13人でワクチン接種後7日でピークとなった(表2、図1bからc)。4週間までに、この応答は、ベースラインのほんの少し上のレベルまで低下した。3週目に投与されたMVA85Aによる2回目のワクチン接種による増強効果は見られなかった。志願者の1人はMVA85Aによる免疫後、インサート特異的T細胞を発生させなかったが、この志願者は、ワクシニアによる免疫の既往歴を有さないにもかかわらず、MVAベクターに対する特異的T細胞の応答を発生させた(データは示さず)。MVA−lacZ抗原を用いた生体外ELISPOTアッセイを行うことによってMVA85Aによりワクチン接種された志願者のMVA−lacZに対する応答を更に調べた。アッセイ法は「免疫原性の測定」にて上記で議論したとおりである。MVA85Aによりワクチン接種された健常志願者は、強い抗MVAのT細胞応答を示し、これはワクチン接種後24週まで続く。
【0100】
BCGによるワクチン接種とは対照的に、MVA85Aによるワクチン接種は、13/14の応答性志願者全てにおいて数種のペプチドプールに強い応答を誘導した(表2、図1d)。抗原85A(Ag85A)の全長のいたる所でペプチドの広い範囲に応答は見られた。CD4+T細胞の除去によってこれら個々のペプチドへの応答は全て完全に排除された(データは示さず)。
【0101】
BCGで感作し、MVA85Aで追加免疫した群における16/17の志願者では、抗原特異的なT細胞の有意な上昇が、ワクチン接種後1週間で見られた(表2、図1)。免疫後1週間のピークの応答は、BCG単独群又はMVA85A単独群に比べてBCGで感作し、MVA85Aで追加免疫した群で有意に高かった(図1bからe)。これらの応答は、少なくとも24週間、BCG単独又はMVA85A単独によるワクチン接種後よりも有意に高いレベルで持続された(図1e)。スクリーニング時のベースライン応答は、予想どおり、BCGを経験したことがない群よりもBCGで以前ワクチン接種された志願者において高かった。それにも関わらず、BCGで感作し、MVA85Aで追加免疫した群におけるMVA85Aによるワクチン接種後24週目の応答は、PPD(ウイルコクソン:z=−3.010、P=0.003)、抗原85(Ag85A)(ウイルコクソン:z=−3.516、P<0.001)及び合計したプールペプチド(ウイルコクソン:z=−3.408、p=0.001)について、この群でのベースライン値よりも有意に高かった。
【0102】
MVA85A単独(示さず)及びBCGで感作し、MVA85Aで追加免疫した群(図1f)で見られたペプチドへの応答の幅は、非常に類似した。しかしながら、反応の大きさは、BCGで感作し、MVA85Aで追加免疫した群で有意に高かった(図1e)。抗原85A(Ag85A)由来の全部で66のペプチドによって、BCGで感作し、MVA85Aで追加免疫した群における12人の志願者のPBMCをアッセイした。50%を超える被験者によってこれらペプチドの幾つかが認識されたということは(図1f)、以前報告された(Launois P.et al.,Infect.Immun.,62:3679−3687,1994)ように、異なったHLAクラスII分子によるこれらペプチドの無差別的な認識を説明している。
【0103】
表2.
【0104】
MVA85A単独群で見られるT細胞の応答の大きさは、現在まで使用されているその他の組換えMVAで見られるものよりも約10の係数分強い(McConkey S.J.et al.,「ヒトにおける組換え改変ワクシニアウイルス、アンカラによって追加免疫したプラスミドDNAワクチンによるT細胞免疫原性の増強」、Nat.Med.,9:729−735,2003;Mwau M.et al.,「臨床試験におけるヒト免疫不全ウイルス1(HIV−1)クレードAワクチン:ヒトにおけるDNA及び組換え改変ワクシニアウイルス、アンカラ(MVA)ワクチンによるHIV特異的T細胞の応答の刺激」、J.Gen.Virol.,85:911−919,2004)。P.ファルシパルム由来の抗原を発現する組換えMVAは、ワクチン接種の7日後、90SFC/106PBMCの平均合計ペプチド応答を誘導した(McConkey S.J.et al.,Nat.Med.,9:729−735,2003)。それに対して我々は、MVA85Aでワクチン接種した7日後、1365SFC/106PBMCの合計ペプチドに対する平均の応答を見ている(表2)。これに対する説明の1つは、これらの志願者は何らかの事前に存在する抗マイコバクテリウム免疫を有しており、MVA85Aによる免疫によってそれが増強されているということである。このことを更に検討するために我々は、生体外ELISPOTではなく培養ELISPOTを用いた。培養ELISPOTアッセイは、生体外ELISPOTによって測定される活性化エフェクターT細胞ではなく、セントラルメモリー型のT細胞を測定することが以前示されている(Reece W.H.et al.,Nat.Med.,10:406−410,2004;Godkin A,J.et al.,J.Immunol.,169:2210−2214,2002)。
【0105】
MVA85A単独群における4人の志願者からのワクチン接種前スクリーニングのPBMCにて培養IFN−γELISPOTアッセイを行った。M.tbのPPD、M.アビウムのPPD及び組換え抗原85A(Ag85A)と共に細胞を培養した。4人の志願者全員がM.アビウムのPPDに応答し、2/4がM.tbのPPDに応答し、2/4が組換え抗原85A(Ag85A)に応答した(図2)。これらの志願者は、スクリーニング用生体外ELISPOTにてM.tbのPPD又は精製抗原85(Ag85A)のいずれに対してもいかなるベースライン応答も有さなかった。
【0106】
MVA85Aによるワクチン接種に続くメモリーT細胞の応答の誘導を更に検討するために、ワクチン接種後3週目のPBMCで、生体外ELISPOT及び培養ELISPOTのアッセイを行った。M.tbのPPD、M.アビウムのPPD及び組換え抗原85A(Ag85A)と共に細胞を培養した。3週間では、生体外の応答は極めて低いか又は検出不能であるが、調べた5人の志願者全てにおいて培養ELISPOTで強い応答があったということは、ワクチン接種による抗原85A(Ag85A)に特異的なセントラルメモリーT細胞の誘導を示している。
【0107】
例2
潜在的にM.tbに感染している被験者における安全性及び免疫原性のデータ
潜在的にマイコバクテリウム・ツベルキュロシス(M.tb)に感染している9人の健常な成人にMVA85Aでワクチン接種した。各被験者にてワクチン接種後、規則的な間隔で血清の炎症性マーカーを12ヵ月間に渡って測定した。ワクチン接種前及びワクチン接種後10週目に肺の高解像CTスキャンを行った。肺の炎症の不顕性の徴候を検出するためにこれらの試験を行った。9人の潜在的に感染した志願者から生じた生体外ELISPOTの結果を図5aに示す。
【0108】
この群におけるMVA85Aの安全性は、例1で記載される以前の試行で見られるものと同一である。局所性にも全身性にも副作用の増加は検出されなかったし、肺の炎症の徴候も検出されなかった。ワクチン接種後、炎症性のマーカーは変化しなかったし、ワクチン接種後、CTスキャンによって検出可能な肺の炎症はなかった。
【0109】
比較のように、以前、0.5から37年前BCG注射を受けたことがある17人の健常な成人に、MVA85Aでのワクチン接種によって追加免疫を行った。結果は例1に記載されている。潜在的に感染した群(試行7、「T007」)で見られるワクチン接種後の免疫応答は、BCGで感作した群(試行5、「T005」)で見られるものと類似する大きさである。結果を図5b及び5cに示す。
【0110】
開発途上国全体にわたる潜在的感染の有病性を考えると、新しいTBワクチンが潜在的に感染した被験者で安全であるのは重要なので、このデータは有意である。更に、有望な免疫原性は、そのような潜在的感染を撲滅することを目的として、潜在的に感染した人々に投与される暴露後ワクチンとしてのこのワクチンの適用を支持する。
【0111】
免疫応答の持続時間
BCGで感作した志願者におけるMVA85Aで追加免疫した後の生体外ELISPOT反応は、感作(BCG)と追加免疫(MVA85A)の短い間隔(1ヵ月)及び長い間隔(10年を超える)の双方で、ワクチン接種後少なくとも1年間続く。
【0112】
BCG後10年を越えてからMVA85Aでワクチン接種された12人の志願者及びBCG後1ヵ月でMVA85Aでワクチン接種された10人の志願者の長期間の追跡データを図6に示す。双方の組の志願者のデータは、ワクチン接種後1年で免疫応答の持続を示し、それは、ワクチン接種後6ヵ月で見られたのと同じ大きさである。
【0113】
ワクチンが誘導した免疫応答の持続は、メモリー応答の誘導を示している。メモリー応答が誘導されていない限り、非複製性のワクチンによるワクチン接種の1年後、ワクチンで誘導した持続する応答を見ることを誰も期待しないだろう。
【0114】
プライム−ブースト免疫の間隔と免疫応答のレベルの間の相関
図3に提示されたデータは、MVA85Aの追加免疫ワクチン接種の後見られるBCGで誘導した免疫応答の増強は、BCGによる感作とMVA85Aによる追加免疫との間の間隔に依存しないことを示している。短い(1ヵ月)及び長い(10年を超える)追加免疫との間隔で同等の増強が見られた。
【0115】
感作(BCG)と追加免疫(MVA85A)の間の間隔と、MVA85Aで誘導される免疫応答のピーク(1週間)又はプラトー(6ヵ月)のいずれかとの間に相関はない(図7)。
【0116】
従って、BCGによるワクチン接種の直後(例えば、開発途上国では乳児期)又は更に後の時点(例えば、青年期)のいずれかでマイコバクテリウムに対する免疫を増強することは同等に実現可能である。乳児期の追加免疫及び青年期の追加免疫は双方とも、有効性の試行にとって可能性のある選択肢であり、追加免疫TBワクチンに関して可能性のある適応である。
【0117】
アカゲザルにおけるBCG感作−MVA85A追加免疫の免疫原性及び防御有効性
免疫原性と負荷の実験において、アカゲザルに対して(6匹/群)、i)BCG単独、ii)BCG,次いで9週後、MVA85Aによる追加免疫、又は(iii)生理食塩水(対照群)のいずれかによってワクチン接種した。動物は全て、BCGワクチン接種後(又は対照群については生理食塩水のワクチン接種)18週目に気管内に負荷し、次いで安楽死させる前16週間追跡した。免疫原性の結果は図8に示す。
【0118】
図8aは、この負荷実験における全3群でのワクチン接種後のIFN−γの平均レベル(3日間のリンパ球の刺激試験によって測定されるように)を示す。BCG群及びBCG感作MVA85A群におけるPPDに対する反応でのIFN−γのレベルは、類似であると思われるが、Ag85Aに対する反応は、BCG感作MVA85A追加免疫の群で明らかに高い。従って、BCG単独群(i群)では見られない、MVA85Aでワクチン接種した(ii群)後のAg85A特異的なIFN−γの分泌の有意な上昇がある(図8a)。
【0119】
図8bは、この負荷実験における全3群での負荷後のIFN−γの平均レベル(3日間のリンパ球の刺激試験によって測定されるように)を示す。M.tbで負荷した後、BCG−MVA85A群(ii群)は、BCG単独群(i群)よりも有意に高いAg85A特異的な応答を有した。また、M.tb特異的な免疫応答(大きさは細菌負荷に関係する)であるESAT6/CFP10(早期分泌抗原標的タンパク質/培養ろ過タンパク質10)への応答は、生理食塩水群に比べて、BCG群及びBCG−MVA85A群で低い。PPDへの応答はこれら2つの群間では類似する。ESAT6/CFP10の結果は、これらの抗原がTB特異的であり、これらの抗原に対する免疫応答のレベルは細菌負荷に相関する(すなわち、細菌負荷が高ければ(生理食塩水群)高いほど、ESAT6及びCFP10に対する免疫応答も高い)ので重要である(最下段)。ワクチンの防御的有効性は、生理食塩水群に比べてBCG群及びBCG−MVA85A群における相対的に低いESAT6/CFP10に対する応答によって含蓄される。
【0120】
解剖では、BCG単独群よりもBCG−MVA85A群で見られる病態の方がかなり少なかった。これら2つの群での細菌負荷の低下は、BCG−MVA85A群では0.97であり、BCG群では0.42であった。
【0121】
アカゲザルは、ヒト疾患の良好なモデルであり、動物の数が少ないにもかかわらず、防御有効性におけるこの有望な改善は、類似の有効な成績がヒトにおいて期待されることを示唆している。
【0122】
南アフリカの成人におけるフェーズII試験の安全性及び免疫原性のデータ
南アフリカの西ケープにてフェーズIIの安全性と免疫原性の試験が開始された。この試行は成人においてであり、標的は24人の被験者である。潜在的に感染している被験者は本試験から除外した。今日までに、12人の被験者にワクチン接種した。12人の被験者は全て、ワクチン接種後1週間のELISPOTアッセイにてMVA85Aが誘導した有意な免疫応答の有していた。
【0123】
現在までの安全性特性は、英国及びガンビアの試験で見られたものと同じである。英国での試験の結果は図1及び図9aに示し、ガンビアでの試験の結果は図9bに示す。
【0124】
全部で、11人のBCG経験のない志願者及び10人のBCGで感作された志願者がガンビアでワクチン接種を受けた。BCG経験のない群(図9b)の免疫原性の結果は、追跡検査期間の間中、それらがベースラインより上にとどまるという点で、英国におけるBCG感作群(図1b、1c、1d)の免疫原性の結果に類似した。このことは、ベースラインにて環境のマイコバクテリウムによる更に程度の高い感作、及び応答を維持している環境のマイコバクテリウムへの現在進行中の暴露を反映している可能性がある。
【0125】
ガンビアにおいては、BCG経験のない群とBCG感作群との間に有意差はなく、それは、上記のようにこの群における更に程度の高い環境からの感作によって説明される。それにひきかえ、英国では、BCG経験のない群の免疫原性の結果は、追跡検査中、ベースラインに戻ったが(図9a、図1b、1c及び1d)、BCG感作群は、追跡検査の間中、ベースラインの上にとどまる(図1b、1c及び1d)。
【0126】
BCGの文献全体に渡って、様々な国及び大陸のいたるところで、防御的有効性の広い変動の多くの例がある。英国、西アフリカ及び南アフリカにおけるMVA85Aの一貫した安全性及び免疫原性特性は非常に重要である。
【0127】
抗原85A(Ag85A)を発現するアデノウイルスのマウスにおける免疫原性
抗原85A(Ag85A)を発現する組換えアデノウイルス(ヒト株、E1及びE3を欠失)は、単独で投与されると、マウスにおいて強い免疫応答を誘導することが示されている(CD4の応答:c800スポット/100万個の脾細胞;CD8の応答:c1200スポット/100万個の脾細胞)。以前BCGを投与されたことがあるマウスに投与すると、抗原85A(Ag85A)を発現するアデノウイルスは、更に強い応答を刺激する(CD4の応答:c1400スポット/100万個の脾細胞;CD8の応答:c2500スポット/100万個の脾細胞)。従って、このアデノウイルスベクターは、ここで、非常に強いCD4T細胞の応答に加えて、非常に強いCD8T細胞の応答を誘導することが顕著に示され、同一ワクチンによるこれらの誘導は、マイコバクテリウムによる疾患の予防及び治療の双方に有益である可能性が高い。アデノウイルスベクターは以前、CD8T細胞の応答を誘導する良好な手段として見られていたが、我々は、ここで、CD4及びCD8双方の応答が強く誘導されることを示す。このデータは、アデノウイルスベクターが、BCGで感作したT細胞の応答の強力な追加免疫でありうることを示唆している。
【0128】
例示のみを目的として本発明は上述されてきた。本発明の範囲を逸脱することなく、詳細の改変が行われてもよいことが十分に理解されるであろう。
【0129】
AG85A特定配列
【0130】
SEQ ID NO:1(AG85A ポリペプチド配列)
【0131】
SEQ ID NO:2(AG85A ヌクレオチド配列)
【0132】
SEQ ID NO:3(15のアミノ酸が切断されたAG85Aポリペプチド配列)
【0133】
SEQ ID NO:4(15のアミノ酸が切断されたAG85Aヌクレオチド配列)
【0134】
SEQ ID NO:5 1176ヌクレオチド配列の挿入部分は、次のようである(上記の場合で発現した配列、Ag85Aコード配列は下線が付されている):
【0135】
SEQ ID NO:6
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1a】図1は、各ワクチン接種群:BCG単独;MVA85A単独;BCG感作MVA85A追加免疫におけるワクチン接種後の中央値IFN−γELISPOT反応である。図1aは、各群におけるワクチン接種(週)の時系列である。
【図1b】図1は、各ワクチン接種群:BCG単独;MVA85A単独;BCG感作MVA85A追加免疫におけるワクチン接種後の中央値IFN−γELISPOT反応である。図1bは、ツベルクリン精製タンパク質誘導体(PPD)への応答である。
【図1c】図1は、各ワクチン接種群:BCG単独;MVA85A単独;BCG感作MVA85A追加免疫におけるワクチン接種後の中央値IFN−γELISPOT反応である。図1cは、精製抗原85(Ag85A)タンパク質への応答である。
【図1d】図1は、各ワクチン接種群:BCG単独;MVA85A単独;BCG感作MVA85A追加免疫におけるワクチン接種後の中央値IFN−γELISPOT反応である。図1dは、合計したプールペプチドへの応答である。
【図1e】図1は、各ワクチン接種群:BCG単独;MVA85A単独;BCG感作MVA85A追加免疫におけるワクチン接種後の中央値IFN−γELISPOT反応である。図1eは、測定された3種の抗原のそれぞれについて、マン−ウィットニー統計学を用いて各時点での各ワクチン群間の応答を比較した統計的に有意な比較を示す。
【図1f】図1は、各ワクチン接種群:BCG単独;MVA85A単独;BCG感作MVA85A追加免疫におけるワクチン接種後の中央値IFN−γELISPOT反応である。図1fは、BCGワクチン接種された個体におけるMVA追加免疫後のT細胞エピトープの表示である。CD4+T細胞を除去することによって個々のペプチドへの応答は全て完全に排除された。
【図2】図2は、ワクチン接種に先立って、MVA85A単独試験における4人の志願者から採取した血液のM.tbのPPD、M.アビウムのPPD及び組換え抗原85A(Ag85A)に対する応答の培養ELISPOTによるスクリーニングである。各志願者は、コードTXXXXXXによって同定され、その際、最初の3つのXは試行番号に相当し、最後の3つのXは志願者番号に相当し、例えば、T002022は、T002が試行番号であり、022が志願者番号である。
【図3−1】図3は、MVA85Aの単回免疫付与の3週間後の5人の志願者におけるAg85Aペプチド(大文字で標識)のプールに対する応答の培養(「culture」と標識)ELISPOT及び生体外ELISPOTである(志願者は、コードTXXXXによって同定され、XXXXは4つの桁数であり、1桁目は試行番号に相当し、2、3及び4桁は志願者番号に相当し、例えば、T2003は、T2が試行番号であり、0003が志願者番号であることを意味する(T2は、上記図2におけるT002と同義である)。ワクチン接種後の応答は非常に高く、ワクチン接種前の応答よりも高い。志願者は、以前、BCGによるワクチン接種は受けなかった。
【図3−2】図3は、MVA85Aの単回免疫付与の3週間後の5人の志願者におけるAg85Aペプチド(大文字で標識)のプールに対する応答の培養(「culture」と標識)ELISPOT及び生体外ELISPOTである(志願者は、コードTXXXXによって同定され、XXXXは4つの桁数であり、1桁目は試行番号に相当し、2、3及び4桁は志願者番号に相当し、例えば、T2003は、T2が試行番号であり、0003が志願者番号であることを意味する(T2は、上記図2におけるT002と同義である)。ワクチン接種後の応答は非常に高く、ワクチン接種前の応答よりも高い。志願者は、以前、BCGによるワクチン接種は受けなかった。
【図4】図4は、1週目に1回MVA−85Aで免疫された健常な志願者における生体外ELISPOTアッセイで抗原として使用したMVA−LacZへのT細胞の応答の追跡検査である。志願者は以前、BCGによるワクチン接種を受けたことがあった。
【図5a】図5aは、潜在的にM.tbに感染している被験者におけるMVA85Aによる単回ワクチン接種後のPPD、組換え抗原85A(Ag85A)及び抗原85A(Ag85A)のペプチドプールの合計に対する応答の中央値ELISPOTである。
【図5b】図5bは、BCGで感作した被験者(T005、すなわち、試行5、例1を参照のこと)及び潜在的にM.tbに感染している被験者(T007、すなわち、試行7)におけるMVA85Aが誘導した、抗原85A(Ag85A)のペプチドプールの合計に対する応答の比較である。
【図5c】図5cは、BCGで感作した被験者(T005)及び潜在的にM.tbに感染している被験者(T007)におけるMVA85Aが誘導した、組換え抗原85A(Ag85A)に対する応答の比較である。
【図6a】図6aは、感作(BCG)と追加免疫(MVA85A)との間で長い(10年を超える)間隔を持つ被験者群におけるワクチン接種後少なくとも1年間の、MVA85Aが誘導した免疫応答の持続である。
【図6b】図6bは、感作(BCG)と追加免疫(MVA85A)との間で短い(1ヵ月)間隔を持つ被験者群におけるワクチン接種後少なくとも1年間の、MVA85Aが誘導した免疫応答の持続である。
【図7a】図7aは、BCGとMVA85Aワクチン接種との間の間隔と、MVA85Aワクチン接種の1週間後の、抗原85A(Ag85A)のペプチドプールの合計へのT細胞の応答との相関の欠如である。
【図7b】図7bは、BCGとMVA85Aワクチン接種との間の間隔と、MVA85Aワクチン接種の24週間後の、抗原85A(Ag85A)のペプチドプールの合計へのT細胞の応答との相関の欠如である。
【図8a】図8aは、ワクチン接種後のIFN−γの平均レベルである。
【図8b】図8bは、負荷後のIFN−γの平均レベルである。
【図9a】図9aは、英国のBCG経験のない志願者におけるMVA85Aに対する応答の生体外IFN−γELISPOTである。
【図9b】図9bは、ガンビアのBCG経験のない志願者におけるMVA85Aに対する応答の生体外IFN−γELISPOTである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、宿主においてT細胞の免疫応答を生じる方法に関する。この方法は、マイコバクテリウムの抗原85Aの遺伝子(本明細書では「Ag85A」遺伝子とも呼ぶ)の翻訳産物を発現する非複製性の又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンを投与するステップを含む。
【0002】
本明細書で引用された全ての出版物、特許及び特許出願は、参照によって全てが援用される。
【0003】
背景技術
結核は、呼吸器病原体、マイコバクテリウム・ツベルキュロシスが原因で起き、主として開発途上国で、毎年200万人の人々が亡くなっている(http://www.who.int/gbt/publications/globrep01/index.html)。M.ツベルキュロシスに対する唯一の認可されたワクチンであるカルメット・ゲラン桿菌(BCG)(Calmette,A.,C.Guerin,Ann.Inst.Pasteur.,38:371,1924)は、マイコバクテリウム・ボビスの弱毒化株であり、それは、開発途上国では通常、新生児に対して単回用量で経皮投与される。多くの研究の概説は、BCGによるワクチン接種が、小児の髄膜結核及び本疾患の全身性の形成に対して防御することを示唆している。しかしながら、結核による死亡の主な世界的原因である成人の肺疾患に対しては、防御有効性には、バラツキがあり(0から80%の範囲)(Golditz,G.A.et al.,JAMA271:698,1994)、それは時間とともに弱まる(Stene,J.A.et al.,Int.J.Tuberc.Lung Dis.,2:200,1998)。バラツキの理由は不確定である。そうであっても世界中の乳児の80%が毎年BCGを受けている(http://www.who.int/inf−fs/en/fact104.html)。
【0004】
マイコバクテリウム・ツベルキュロシスは、細胞内の病原体であり、それに対する防御有効性は、CD4+及びCD8+双方のT細胞が関与する、感染への強い細胞性の応答の維持及びTh1型のサイトカイン、特にIFN−γと反応する能力に関連する(Flynn,J.L.,J.Chan,Ann.Rev.Immunol.,19:93,2001)。BCGによるワクチン接種は、M.ツベルキュロシスのタンパク質と交差反応する、主としてCD4+T細胞の表現型の、IFN−γを分泌するT細胞を誘導する(Launois P et al.,Infection and Immunology62(9):3679−87,1994)。最近の研究は、非経口で送達されるBCGは、肺粘膜にてT細胞の免疫応答を誘導することができず、それが、肺疾患に対する防御に決定的である可能性があることを示唆している。
【0005】
従って、マイコバクテリウムによる疾患に対する更なるワクチンを開発するニーズがある。
【0006】
発明の開示
驚くべきことに、現在、マイコバクテリウム抗原85A(Ag85A)を発現するウイルスベクターは、免疫原性の組成物として投与された場合、ヒト患者のT細胞の免疫応答を誘導できることが見い出されている。従って、本発明は、マイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳産物を発現する非複製性の又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性の組成物を患者に投与するステップを具えるヒト患者のマイコバクテリウム抗原に対してT細胞の免疫応答を誘導する方法を提供する。好ましくは、免疫原性組成物はベクターワクチンである。この新規のワクチン法は、T細胞の免疫応答の大きさ及び持続時間を有意に改善する。好ましくは、T細胞の応答は、メモリーT細胞の応答である。
【0007】
85A抗原(Ag85A)(受入番号CAA17868及びBX842584)は、Ag85複合体の員である。これは、M.ツベルキュロシス、BCG及びマイコバクテリウムのその他多数の種によって分泌される抗原、85A、85B及び85Cを具えるタンパク質のファミリーである(Harth G.et al.,Infect.Immun.,64:3038−3047,1996)。抗原85A(Ag85A)はあらゆるマイコバクテリウム種の間で保存性が高く、動物及びヒトの研究において免疫優勢である。Ag85A(Ag85A)は、fbpA遺伝子によってコードされる。マイコバクテリウム・ツベルキュロシス由来の85A抗原(Ag85A)は、本明細書では、配列番号1及び2に列記される。
【0008】
結核のワクチン研究においてT細胞の高い応答を誘導する最近の戦略は、プラスミド、細菌又はウイルスのベクター及び組換えたんぱく質を用いた組換えDNA技術を利用してM.ツベルキュロシスの抗原を発現させている。Ag85AのDNAによるマウスのワクチン接種にAg85Aを発現するMVAベクターで追加免疫することは、M.ツベルキュロシスの感作に続くBCGと同等の程度の防御を生じることが示されている(McShane H.et al.,Infect.Immun.,70:1623−1626,2002)。しかしながら、組換えMVAベクター単独による単回の又は反復した免疫によって生じる免疫応答は弱かった。
【0009】
結核のようなマイコバクテリウムによる疾患に対する長期の防御については、数十年間に渡って防御免疫を刺激し続けることができる「メモリーT細胞」を維持することが重要であると考えられる。
【0010】
メモリー免疫応答は、古典的には、分化したエフェクターT細胞から直接生じ、均一な休止状態で生き残る長命の抗原特異的Tリンパ球の再活性化によるものとされる。エフェクターT細胞及びメモリーT細胞は、生体のあらゆる組織、特に、病原体に再遭遇する可能性が高い上皮表面(例えば、皮膚及び消化管)に分布すると考えられる。
【0011】
メモリーT細胞は、不均質であり、異なった移動能及びエフェクター機能を持つ少なくとも2つのサブセットを具えることが示されている(Reinhardt R.L.et al.,Nature 410:101−105,2001)。第1のサブセットの細胞は、それらがリンパ節ホーミング受容体、L−セレクチン及びCCR7を欠き、炎症性の組織への移動のための受容体を発現するという点で一次応答で生じるエフェクター細胞に似る。抗原との再遭遇の際、これら「エフェクターメモリーT細胞」(TEM)は、迅速にIFN−γ若しくはIL−4を産生し、又は事前に保存していたパーフォリンを放出する。第2のサブセットの細胞は、L−セレクチン及びCCR7を発現し、迅速なエフェクター機能を欠く。これら「セントラルメモリーT細胞」(TCM)は、低い活性化閾値を有し、二次リンパ系臓器にて再刺激された際、増殖し、エフェクターに分化する(Iezzi G.et al.,J.Exp.Med.,193:987−994,2001)。
【0012】
本発明者らは、Ag85A(Ag85A)を発現している複製を損傷したウイルスベクター(この場合、「MVA85A」によって例示される)が、BCGに感作されていない健常志願者にて単独で使用された場合、高レベルの抗原特異的インターフェロン−γ分泌メモリーT細胞、すなわち、エフェクターメモリーT細胞及びセントラルメモリーT細胞の双方を誘導できることを見い出した。
【0013】
最近の10年間に渡って、T細胞の応答を測定し、定量する新しい免疫アッセイが確立されている。抗原特異的T細胞からのIFN−γの分泌が、M.ツベルキュロシスに対する防御の最良の利用できる相関であるので、本発明者らは、MVA85Aによる臨床試験の主な免疫的読み出しとして、インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)ELISPOTアッセイを利用した。更に、ELISPOTアッセイは、IFN−γを分泌する抗原特異的T細胞の数を定量する、極めて再現性の高い、感度の高い方法である。
【0014】
本発明者らは、2つのELISPOTアッセイ:抗原と共に末梢血単核細胞(PBMC)を18時間インキュベートしてCCR7−の循環エフェクターT細胞のレベルを測定する生体外(新鮮)ELISPOTアッセイと、抗原と共にPBMCを10から14日間インキュベートしてCCR7+のセントラルメモリーT細胞のレベルを測定する培養ELISPOTアッセイ(Godkin et al.,JI,2002)とを利用した。
【0015】
本発明者らは、MVA85Aによるワクチン接種が、抗原85A(Ag85A)に特異的な強いセントラルメモリーT細胞の応答を誘導し、それは、循環エフェクターT細胞の応答がほとんど検出不能である、ワクチン接種後3週間でも検出可能であることを発見した。
【0016】
これは、マイコバクテリウム抗原を発現する免疫原性組成物を投与することによって患者の長期のセントラルメモリーT細胞集団が有意に増強されてもよいという最初の実証である。
【0017】
本明細書で使用するとき、「メモリーT細胞」は、T細胞のCCR7−(エフェクターメモリーT細胞)及びCCR7+(セントラルメモリーT細胞)の亜集団双方を包含することが意図される。この定義はまた、クラスII拘束性CD4メモリーT細胞及びクラスI拘束性のCD8メモリーT細胞の双方も包含する。好ましくは、本発明のベクターワクチンで誘導されるメモリーT細胞は、CCR7+の細胞表面での発現を特徴とする。これを本明細書では、セントラルメモリーT細胞と呼ぶ。
【0018】
好ましくは、本発明の免疫原性組成物によって誘導されるメモリーT細胞の応答は、防御的T細胞応答である。防御的免疫応答は、好ましくは、抗原特異的T細胞に由来するIFN−γ分泌の免疫アッセイによって測定されてもよい。好ましくは、メモリーT細胞の応答は、長く続き、少なくとも、1、2、5、10、15、20、25以上持続する。更に好ましくは、防御的免疫応答は一生続く。
【0019】
好ましくは、Ag85A遺伝子は、ウイルスベクターで発現される。好ましくは、Ag85A遺伝子は、非複製性の又は複製が損傷されたウイルスベクターで発現される。
【0020】
用語「ベクターワクチン」は当該技術で周知である。本発明に係る方法で使用されるベクターは、非複製性の又は複製が損傷されたウイルスベクターである。用語「非複製性の」又は「複製が損傷された」は、本明細書で使用されるとき、正常なヒト細胞の大半においていかなる有意な程度にも複製することが可能ではないことを意味する。非複製性の又は複製が損傷されたウイルスは、確かに天然であってもよいし(すなわち、それらがそのまま天然から単離されてもよい)、又は、例えば、試験管内で繁殖させることによって、若しくは遺伝子操作によって、例えば、複製に重要な遺伝子の欠失によって人為的であってもよい。一般に、ウイルスが増殖することができる1又は2、3の細胞種があり、例えば、改変されたウイルスAnkara(MVA)のためのCEF細胞がある。一般に、ウイルスベクターは、T細胞の応答を刺激することが可能であるべきである。
【0021】
この背景で有用であるウイルスベクターの例は、例えば、MVA又はNYVACのようなワクシニアウイルスベクターである。好ましいウイルスベクターは、ワクシニア株MVA又はMVAに由来する株である。ワクシニアウイルスの代替には、例えば、鶏痘ウイルス又はカナリア痘ウイルスのベクターのようなアビポックスベクターを具えるその他のポックスウイルスベクターが挙げられる。アビポックスベクターとして特に好適なのは、ALVAC(カナポックスとして市販)として知られるカナリア痘ウイルスの株、及びALVACに由来する株、及びFP9として知られる鶏痘ウイルス株である。更なる代替は、アルファウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、フラビウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びインフルエンザウイルスベクターである。
【0022】
例えば、ベクターは、非ヒトアデノウイルスベクターであってもよい。驚くべきことに、アデノウイルスベクターの使用は、非常に強いCD4メモリーT細胞の応答に加えて、非常に強いCD8メモリーT細胞の応答を誘導することが見い出された。同一ワクチンによるCD8及びCD4双方のメモリーT細胞の応答の誘導は、マイコバクテリウムによる疾患の予防及び治療の双方に有益である可能性が高い。従って、抗原又はその免疫原性断片を発現するアデノウイルスベクターを用いて抗原に対してCD8及びCD4のメモリーT細胞の応答を誘導する方法も、本出願の範囲内に包含される。アデノウイルスベクターによって発現される抗原は、好ましくは上述のようなマイコバクテリウムの抗原であり、最も好ましくはAg85Aであるが、代替的にはその他の好適な抗原のいかなるものでもよい。
【0023】
また、本発明の範囲内に包含されるものは、抗原に対してCD8及びCD4のメモリーT細胞の応答を誘導するための薬物の製造における抗原又はその免疫原性断片を発現するアデノウイルスベクターの使用である。好ましくは、本発明は、マイコバクテリウムによる疾患の治療又は予防のための薬物の製造におけるマイコバクテリウム抗原又はその免疫原性断片を発現するアデノウイルスベクターの使用を提供する。抗原は、好ましくは上述のようなマイコバクテリウムの抗原であり、最も好ましくはAg85Aであるが、代替的にはその他の好適な抗原のいかなるものでもよい。
【0024】
ウイルスベクターは、ヒト患者の重篤な感染を起こすことができないことが好ましい。
【0025】
ウイルスの複製は一般に2つの方法:1)DNA合成、及び2)ウイルス力価で測定される。更に正確には、用語「非複製性の又は複製を損傷した」は、本明細書で使用されるとき、及びポックスウイルスに適用されるとき、以下の基準のいずれか又は双方を満たすウイルスを意味する。
1)MRC−5細胞(ヒトの細胞株)におけるワクシニアウイルスのコペンハーゲン株に比べてDNA合成において1ログ(10倍)の低下を示す;
2)ワクシニアウイルスのコペンハーゲン株に比べて、HELA細胞(ヒト細胞株)におけるウイルス力価で2ログの低下を示す。
【0026】
この定義の範囲内に入るポックスウイルスの例は、MVA、NYVAC及びアビポックスウイルスであり、一方、定義から外れるウイルスは、弱毒化ワクシニア株M7である。
【0027】
本発明はまた、ヒト患者のマイコバクテリウムによる疾患の治療又は予防のための薬物の製造における、マイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳残物を発現する非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物の使用も提供する。好ましくは、免疫原性組成物は、ベクターワクチンである。患者のT細胞の免疫応答を誘導することによって、免疫原性組成物及びベクターワクチンは作用する。
【0028】
本発明に係るワクチンは、予防的(すなわち、感染を予防すること)、暴露後(すなわち、感染後ではあるが、発症前に治療すること)又は治療的(すなわち、疾患を治療すること)のいずれであってもよいが、通常、予防的又は暴露後であろう。
【0029】
本発明のベクターワクチンによって治療又は予防することができるマイコバクテリウムによる疾患には、結核、ハンセン氏病、マイコバクテリウム・アビウム感染、非結核性のマイコバクテリウム感染、ブルーリ潰瘍、マイコバクテリウム・ボビス感染又は疾患、マイコバクテリウム・パラツベルキュロシス感染又は関連する疾患が挙げられる。その他の疾患(すなわち、マイコバクテリウムによる疾患ではない)には、炎症性腸疾患、クローン病、自己免疫疾患、癌、膀胱癌、天然痘及びサル痘が挙げられる。
【0030】
特殊化したウイルスベクター構築物を用いて、ベクターワクチンの調製及び有用性を促進してもよい。本明細書で記載されるベクター構築物は全て本発明の態様を形成する。これらウイルス構築物を具えるベクターワクチンもまた、本発明の態様として包含される。
【0031】
例えば、1以上の抗原遺伝子を、遺伝子のC末端又はN末端で切断してもよい。このことが、ベクターワクチンのクローニング及び構築を促進する効果を有してもよいし、代替的に、又は加えて、高い有効性につながってもよい。切断する方法は当業者に既知である。この種の切断を達成する最も簡単な方法は、抗原遺伝子のいずれかの末端でコードする核酸配列を選択的に欠失し、次いで所望のコーディング配列をウイルスベクターに挿入する、遺伝子操作の種々の周知の技法を使用することである。例えば、3’及び/又は5’エクソヌクレアーゼ戦略を選択的に用いてそれぞれ、コードする核酸の3’及び/又は5’末端を破壊することによって、候補タンパク質の切断を創る。好ましくは、親型抗原に比べて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上のアミノ酸だけ、発現される抗原が切断されるように、野生型の遺伝子配列を切断する。最も好ましくは、抗原遺伝子は、野生型Ag85A抗原(配列番号3、配列番号4の発現産物)に比べてC末端で15のアミノ酸が切断されたAg85Aである。
【0032】
本発明での使用に好適な抗原は、その断片が、親型抗原と共通する又は免疫的に同一視することが可能な抗原決定基又はエピトープを有するという条件で、親型抗原の断片も包含する。これらの断片をコードするポリヌクレオチドも、本発明の免疫原性組成物及びベクターワクチンでの使用に好適である。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「断片」は、それが由来する親型抗原又はその機能的同等物の1つのアミノ酸配列の全てではないが、一部と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを言う。断片は、配列から少なくともn個の連続したアミノ酸を具えるべきであり、特定の配列によって、n個、好ましくは7個以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20以上)を具えるべきである。小型の断片が抗原決定基を形成してもよい。
【0034】
本発明の抗原遺伝子は、親型抗原の変異体又は機能的同等物をコードしてもよい。そのような核酸分子は、例えば、天然に生じる対立遺伝子の変異体のような天然に生じる変異体であってもよく、又は、該分子は、天然に生じることが知られていない変異体であってもよい。核酸分子、細胞又は生物に適用されるものを具える突然変異誘発法によって核酸分子のそのような非天然に生じる変異体を作製してもよい。
【0035】
中でも、この点での変異体は、ヌクレオチドの置換、欠失又は挿入によって前述の抗原遺伝子の配列とは異なる変異体である。置換、欠失又は挿入には、1以上のヌクレオチドが関与してもよい。コーディング領域又は非コーディング領域又はその双方で変異体を変化させてもよい。コーディング領域における変化が、保存的又は非保存的なアミノ酸の置換、欠失又は挿入を生じてもよい。
【0036】
代替的に、又は遺伝子の切断に加えて、抗原をコードする遺伝子は、翻訳の際、タグポリペプチドが抗原と共有結合するようにタグポリペプチドをコードする核酸を含んでもよい。好ましくは、タグポリペプチドは、PKタグ、FLAGタグ、MYCタグ、ポリヒスチジンタグ、又は抗体によって検出することができるタグから成る群より選択される。その他の例は、当業者に明らかであろう。使用するならば、PKタグは、好ましくは、配列Pro−Asn−Pro−Leu−Gly−Leu−Aspを有する。この種のタグは、抗原の発現及び抗原を発現するクローンの検出を円滑にし、代替的に、又は加えて、有効性の増大につながってもよい。
【0037】
翻訳に続いて、タグが、発現される抗原のC末端若しくはN末端に位置するように、又は発現される抗原に対して内在的であってもよいように、タグポリペプチドをコードする核酸を位置取りさせてもよい。好ましくは、タグは、発現される抗原のC末端に位置する。タグポリペプチドをコードする核酸と発現される抗原をコードする核酸との間にリンカー配列をコードするヌクレオチドが挿入されてもよい。好ましくは、発現される際、リンカー配列は、アミノ酸Gly−Ser−Ileを具える。更に好ましくは、アミノ酸Gly−Ser−Ileは、発現される抗原のN末端抗原配列とタグとの間に挿入される。最も好ましくは、発現される抗原は、Ag85a(Ag85A)であり、PKタグはAg85a(Ag85A)遺伝子のC末端に位置する。
【0038】
抗原をコードする遺伝子はリーダー配列も具えることができる。リーダー配列は、mRNAへの一次転写物のプロセッシング、mRNAの安定性又は翻訳効率に影響を及ぼしてもよい。好ましくは、リーダー配列は、抗原の発現及び/又は免疫原性を高める。例えば、培養ELISPOTアッセイ及び生体外ELISPOTアッセイを介して、高められた免疫原性を判定することができる。例えば、モノクローナル抗体を用いて産生したタンパク質の量を検出することによって発現の高められたレベルを判定することができる。好ましくは、リーダー配列なしで発現された抗原に比べて発現及び/又は免疫原性が2倍、3倍以上増強される。好適なリーダー配列の例には、t−PA(組織プラスミノーゲンアクチベータ)(Malin A.S.et al.,Microbes Infect.,2(14):1677−85,2000 Nov)である。
【0039】
好ましくは、ウイルスベクターの構築は、TPAリーダー配列に融合されたC末端が切断されたAg85Aの配列を具える。その上更に好ましい実施態様では、本発明のウイルスベクターは、TPAリーダー配列及びPKタグ配列に融合されたC末端が切断されたAg85Aの配列を発現する。好ましくは、リーダー配列は抗原のN末端に融合され、タグ配列はタンパク質の内部又はC末端のいずれかに融合される。特に好ましい実施態様では、ウイルスベクターの構築は、TPA配列に融合され、配列Pro−Asn−Pro−Leu−Leu−Gly−Leu−AspのPKタグを持つ、C末端で15のアミノ酸が切断されたAg85a(Ag85A)をコードするポリヌクレオチドを含み、その際、アミノ酸残基Gly−Ser−Ileが、Ag85A配列とPKタグ(配列番号5)との間に存在する。好ましくは、ウイルスベクターの発現産物は、配列番号6のアミノ酸配列を有する。
【0040】
本発明者らによって言及される防御的T細胞の効果は、以前マイコバクテリウム抗原に暴露されたことがあるヒト患者で特に強力であることが見い出されている。不均質なプライム−ブースト(prime−boost)免疫の免疫戦略は、同一ワクチンによる均質な追加免疫よりも高レベルのエフェクターT細胞の応答を動物及びヒトで誘導する(Schneider,J.et al.,Nat.med.,4:397−402,1998; McShane,H.et al.,Infect.Immun.,69:681−686,2001)。
【0041】
(新生児で接種された)個体が10から15歳に達するにつれて、BCGの有効性を徐々に失うことの根底にあるメカニズムはほとんど理解されていない。可能性のある仮説の1つは、BCGによって生じた免疫が消失し、個体は、一次免疫を誘導するように設計された新しい候補ワクチンでワクチン接種できる免疫経験のない宿主と同等になるということである。BCGによる繰り返しのワクチン接種がTBに対する防御を高めるとは思われないが(Rodrigues L.et al.,Lancet,2005を参照)、不均質なプライム−ブースト免疫の計画にBCGを組み入れることはBCGの防御効果を保持することになるであろう。幾つかの動物モデルにおける、抗原85A(Ag85A)を発現するウイルスベクターと共にBCGを追加免疫することの免疫原性及び防御効果は以前記録された(Goonetileke,N.P.et al.,J.Immunol.,171:1602−1609,2003;Williams A.et al.,Infection and Immunity,73(6):3814−6)が、防御的メモリーT細胞の応答の誘導は記録されなかった。
【0042】
従って、本発明はまた、マイコバクテリウム85a(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンと併用して、患者に少なくとも1つのマイコバクテリウム抗原を投与するステップを具えるヒト患者でT細胞の免疫応答を惹起する方法も提供する。好ましくは、T細胞の免疫応答は、メモリーT細胞の免疫応答である。
【0043】
本発明はまた、T細胞の免疫応答を誘導するために患者に投与するための薬物の製造における、(a)少なくとも1つのマイコバクテリウム抗原及び(b)マイコバクテリウム85a(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンの使用も提供する。
【0044】
マイコバクテリウム85a(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチン及びマイコバクテリウム抗原は、同時に、順次、又は別々に投与されてもよい。例えば、マイコバクテリウム抗原を投与してベクターワクチンの投与の前又は後で、患者を感作し、ベクターワクチンに対する患者の免疫応答を増強してもよい。
【0045】
更に、本発明はまた、マイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物をヒト患者に投与するステップを具えるヒト患者でT細胞の免疫応答を誘導する方法も提供し、その際、患者は少なくとも1つのマイコバクテリウム抗原に事前に暴露されている。好ましくは、T細胞の免疫応答は、メモリーT細胞の免疫応答である。
【0046】
本発明はまた、以前マイコバクテリウム抗原に暴露されたことがあるヒト患者でマイコバクテリウムによる疾患を治療する又は予防するための薬物の製造における、マイコバクテリウム85a(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンを具える免疫原性組成物の使用も提供する。
【0047】
マイコバクテリウム抗原は、M.ツベルキュロシスに由来してもよく、及び/又は例えば、M.アビウム−イントラセルラーレ、M.カンサシイ、M.マリナム、及び/又はM.ウルセランスのような1以上のその他のマイコバクテリウムに由来してもよい。患者がたった1種の抗原に以前暴露されたことがある場合、抗原は、マイコバクテリウム感染に対する防御免疫応答を付与する抗原であってもよい。本発明の実施態様の1つでは、患者が以前暴露されたことがある抗原は、Ag85Aではない。
【0048】
代替的に、又は加えて、患者は以前、1以上のマイコバクテリウム自体に暴露されたことがあってもよい。例えば、少なくとも1種のマイコバクテリア抗原への患者の以前の暴露が、M.ツベルキュロシスに対する以前の暴露を含んでもよい。代替的に、又は加えて、少なくとも1種のマイコバクテリア抗原への患者の以前の暴露が、例えば、M.アビウム−イントラセルラーレ、M.カンサシイ、M.マリナム及び/又はM.ウルセランスのような環境でのマイコバクテリウムへの以前の暴露を含んでもよい。好ましくは、患者は潜在的にマイコバクテリウムに感染する。例えば、患者は、M.ツベルキュロシスに以前暴露されたことがあってもよく、潜在的に結核に感染していてもよい。薬物が、潜在的にマイコバクテリウムに感染している患者の治療のためである場合、治療は好ましくはマイコバクテリウム感染を根絶する。
【0049】
代替的に、又は加えて、以前の暴露が、BCGによる新生児のワクチン接種又はBCGによる以前のワクチン接種を含んでもよい。本発明者らは、BCGによって以前ワクチン接種を受け、次いで、本発明のベクターワクチンの追加免疫用量を投与された志願者では、有意に高いレベルの抗原特異的なインターフェロン−γ分泌T細胞が誘導され、ワクチン接種後24週目で、単回BCG接種を投与されたワクチンよりも、これらのレベルが5から30倍高かったことを見い出している。
【0050】
従って、本発明のこの態様は、少なくとも1種のマイコバクテリウム抗原に患者を暴露するステップ、及びマイコバクテリウム85a(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物を具える追加免疫組成物を投与することによって免疫応答を増強するステップを具えるヒト患者のT細胞の免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0051】
本発明のこの態様はまた、以下のステップ:
i)少なくとも1種のマイコバクテリウム抗原に患者を暴露するステップと;
ii)マイコバクテリウム85a(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンを具える少なくとも1つの用量の追加免疫組成物を前記患者に投与するステップと;
を具えるヒト患者のT細胞の免疫応答を生成する方法にも関する。
【0052】
本発明の実施態様の1つでは、ステップi)で患者がたった1種のマイコバクテリウム抗原に暴露される場合、該抗原は、防御的免疫応答を付与する抗原ではあるが、Ag85Aではない。
【0053】
ステップi)は、いかなる年齢の患者、例えば、出生後、乳児期、青年期又は成人期の患者で行われてもよい。好ましくは、患者は新生児期に、少なくとも1つのマイコバクテリウム抗原に暴露される。
【0054】
少なくとも1種のマイコバクテリウム抗原に事前に暴露した後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10週以上、又は0.25、0.5、0.75、1、5、10、15、20、25、30、35、若しくは40年以上で、免疫原性組成物の投与が生じてもよい。好ましくは、患者が乳児期であるとき、ステップi)が実施される場合、ステップii)は乳児期又は青年期に実施される。
【0055】
ステップii)が患者に1より多くの用量の追加免疫組成物を投与するステップを具える場合、1より多くの用量が、短期間に渡って又は長期間に渡って投与されてもよい。例えば、追加免疫組成物の用量を時間、日、週、月又は年の期間に渡って投与してもよい。例えば、第1の追加免疫投与の後0.5から24時間の間に、第1の追加免疫投与の後1日から7日の間に、第1の追加免疫投与の後1週間から1ヵ月の間に、第1の追加免疫投与の後1ヵ月から6ヵ月の間に、第1の追加免疫投与の後6ヵ月から1年の間に、第1の追加免疫投与の後1から2、2から5、6から10年以上の間に、第2の追加免疫の用量を投与してもよい。好ましくは、これらの時間間隔は、必要な変更を加えて、後に続く投与との間の期間に適用される。
【0056】
本発明の第2の態様では、85a(Ag85A)抗原に対して誘導された免疫応答に加えて、ウイルスベクターが、ベクター特異的なT細胞の応答を刺激する。本発明のこの態様によれば、本発明のベクターワクチンの投与は、ウイルスベクターが由来するウイルスに対するT細胞の免疫応答を促進する。例えば、本発明のベクターワクチンにおけるMVAベクターの使用は、ワクシニアウイルスに対するT細胞の免疫応答を促進する。好ましくは、このT細胞の応答は、防御的T細胞の応答である。この種の効果は今までに報告されておらず、ベクターワクチンが、第1にマイコバクテリウムによる疾患に対する防御、及び第2に、ベクターに関連するウイルスが介在する疾患に対する防御において二重の役割を有するという点で明らかに有利である。MVAベクターの場合、そのような疾患は天然痘である。
【0057】
本発明のベクターワクチンによって治療又は予防することができるウイルスに由来する疾患は当業者に明らかであり;例として、天然痘、サル痘、及び散在性のワクシニア感染症が挙げられる。
【0058】
従って、本発明のこの態様は、マイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物をヒト患者に投与することを具えるヒト患者のマイコバクテリウム抗原及びウイルスに対するT細胞の免疫応答を誘導する方法を提供する。好ましくは、T細胞の免疫応答は、メモリーT細胞の応答である。
【0059】
本発明のこの態様はまた、ヒト患者のマイコバクテリウム抗原及びウイルスに対するT細胞の免疫応答を誘導するための薬物の製造におけるマイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物の使用も提供する。
【0060】
本発明のワクチンは、免疫的に有効な量の少なくとも1種の抗原を患者に送達する。「免疫的に有効な量」によって、その量の個体への投与が、単回用量にて又はシリーズの一部としてのいずれかで、治療又は予防に有効であることを意味する。この量は、治療される個体の健康及び身体の状態、年齢、個体の免疫系の能力、所望の防御の程度、ワクチンの剤形、治療医師の医学的状況の評価、及びその他の関連因子によって異なる。量が、日常の試行を介して決定できる相対的に広い範囲に入ることが期待される。
【0061】
本発明の第3の態様では、ウイルスベクターは、そのような追加の抗原に対して抗原特異的な免疫応答を誘導するのに使用することができる1以上の追加の抗原の翻訳産物を更に発現してもよい。免疫応答は、CD8+、CD4+及び/又は抗体の応答であってもよい。好ましくは、1以上の追加の抗原遺伝子は、M.ツベルキュロシス、プラスモジウムsp、インフルエンザウイルス、HIV、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトパピローマウイルス、マラリア、リーシュマニア寄生虫に由来し、又は好ましくは、マイコバクテリウムsppであってもよい。好ましくは、1以上の追加の抗原遺伝子は、マイコバクテリウムに由来する抗原85ファミリーの抗原又はマイコバクテリウムsppによって発現される任意の抗原;更に好ましくは、16kDa抗原又はヘパリン結合血球凝集素(HBHA)又はESAT6又は72Fとして知られる融合タンパク質のような1以上の潜伏抗原から成る群より選択される抗原をコードする。
【0062】
誘導される免疫応答が腫瘍に対して向けられるように、追加の抗原が内因性に由来してもよいことも予見される。本発明と共に使用するのに好適である内因性に由来する抗原は、ヒト熱ショックタンパク質及び、例えば、CEA、PSA、Muc−1、Her2neuのような腫瘍関連抗原である。
【0063】
Ag85A遺伝子及びエピトープ鎖としての1以上の追加の抗原遺伝子を発現するようにウイルスベクターを設計してもよい。有利なことに、一連の複数のエピトープにおけるエピトープは、不必要な核酸及び/又はアミノ酸物質を回避するように配列に介在することなく一緒に連結される。エピトープ鎖の創製は好ましくは、追加の抗原をコードするDNAと同一の読み取りフレームにてAg85AをコードするDNAと共に、エピトープ鎖のアミノ酸配列をコードする組換えDNA構築物を用いて達成してもよい。或いは、Ag85A及び追加の抗原は、別個のポリペプチドとして発現されてもよい。
【0064】
本発明のこの態様は、患者のT細胞の応答を誘導することによってヒト患者のマイコバクテリウムによる疾患、及び少なくとも1種の追加の疾患の双方を治療する又は予防するための薬物の製造におけるマイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳産物、及び少なくとも1種の追加の抗原又はエピトープの遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンの使用も提供する。
【0065】
本発明のこの態様によれば、ヒト患者のT細胞の免疫応答、好ましくはメモリーT細胞の免疫応答の誘導を介して、マイコバクテリウムによる疾患、並びにHIV,マラリア及び天然痘から成る群より選択される1以上の疾患の双方に対して防御するために、ベクターワクチンを使用してもよい。
【0066】
本発明のベクターワクチンは単独で使用されてもよいが、追加の疾患を治療、又は予防するためにその他のワクチン接種又は治療計画と組み合わせてもよい。従って、上述のようにベクターワクチンを提供するのと同様に、本発明は、本発明のベクターワクチン及び疾患の原因となる物質に由来する1以上の更なる抗原又はエピトープを具える組成物を提供する。
【0067】
本発明の組成物での使用に好適な抗原及びエピトープは、細菌又はウイルス起源のものであってもよい。好適な抗原は更に、タンパク質抗原、炭水化物抗原、又は複合糖質抗原として分類される。本発明の組成物は1以上の更なる抗原又はエピトープを含んでもよい。例は以下である。
−様々なマイコバクテリウム抗原又はエピトープ。
−HIV抗原又はエピトープ。
−プラスモディウム抗原又はエピトープ。
−マラリア抗原又はエピトープ。
−肺炎球菌に由来する糖抗原。
−肺炎球菌に由来するタンパク質抗原(例えば、PhtA、PhtD、PhtB、PhtE、SpsA、LytB、LytC、LytA、Sp125、Sp101、Sp128、Sp130及びSp133)。
−不活化ウイルスのようなA型肝炎ウイルスに由来する抗原又はエピトープ。
−表面抗原及び/又はコア抗原のようなB型肝炎ウイルスに由来する抗原又はエピトープ。
−C型肝炎ウイルスに由来する抗原又はエピトープ。
−インフルエンザb型菌に由来する糖抗原。
−ポリオ抗原又はエピトープ、例えば、IPV。
−ジフテリアワクチン又はその構成エピトープ又は抗原又は毒素。
−破傷風ワクチン又はその構成エピトープ又は抗原又は毒素。
−麻疹、おたふくかぜ、及び/又は風疹の抗原又はエピトープ。
−インフルエンザ抗原又はエピトープ、例えば、血球凝集素及び/又はノイラミニダーゼ表面タンパク質。インフルエンザ抗原は、流行株、例えば、トリインフルエンザ、例えば、H5N1株から選択してもよい。
−黄色ブドウ球菌由来する抗原又はエピトープ。
−癌の抗原又はエピトープ。
【0068】
糖抗原を使用する場合、好ましくは、免疫原性を高めるためにキャリアに結合させる。毒性のタンパク質抗原は、必要に応じて、例えば、化学的な手段及び/又は遺伝的な手段によって無毒化してもよい。
【0069】
糖抗原は好ましくは抱合体の形態である。抱合体にとって好ましいキャリアタンパク質は、細菌の毒素又はトキソイド、例えば、ジフテリアトキソイド又は破傷風トキソイドである。ジフテリア毒素のCRM197変異体は、ジフテリアトキソイドのような特に好ましいキャリアである。その他の好適なキャリアタンパク質には、N.メニンギチジスの外部膜タンパク質、合成ペプチド、熱ショックタンパク質、百日咳タンパク質、サイトカイン、リンホカイン、ホルモン、成長因子、例えば、N19タンパク質、インフルエンザ菌由来のタンパク質D、肺炎球菌タンパク質PspA、ニューモリシン、鉄取り込みタンパク質、C.ディフィシル由来の毒素A又はB等のような種々の病原体由来の抗原に由来する複数のヒトCD4+T細胞のエピトープを具える人工タンパク質が挙げられる。
【0070】
組成物における更なる抗原は、少なくともそれぞれ1μg/mLの濃度で通常存在する。一般に、所定の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を引き出すのに十分であろう。
【0071】
混合物において更なるタンパク質抗原を使用することに対する代替として、抗原をコードする核酸を使用してもよい。従って、混合物のタンパク質成分は、タンパク質をコードする核酸(好ましくは、例えば、プラスミドの形態でのDNA)によって置き換えられてもよい。同様に、本発明の組成物は、糖抗原を模倣するタンパク質、例えば、ミモトープ又は抗イディオタイプ抗体を含んでもよい。
【0072】
更に、本発明はまた、本発明のベクターワクチン及び1以上の抗菌化合物を具える組成物も提供する。本発明の組成物での使用に好適な抗菌薬の例は、抗結核化学療法剤、例えば、リファンピシン、イソニアジド、エタンブトール、ピリジナミド等である。
【0073】
従って、本発明は、少なくとも1種の更なる抗原及び/又は抗菌薬との併用で、マイコバクテリウムAg85A(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンを患者に投与するステップを具えるヒト患者の少なくとも1種の抗原に対するT細胞の免疫応答を惹起する方法を提供する。
【0074】
本発明はまた、T細胞の免疫応答を誘導するためにヒト患者に投与するための薬物の製造における、(a)マイコバクテリウムAg85A(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチン及び(b)少なくとも1種の更なる抗原及び/又は抗菌薬(microbial)の使用も提供する。
【0075】
マイコバクテリウムAg85A(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチン並びに更なる抗原及び/又は抗菌薬は、同時に、順次、又は別々に投与されてもよい。例えば、抗原/抗菌薬の投与の前にベクターワクチンを投与して患者を感作してもよく、又は抗原の投与の後に投与してその抗原に対する患者の免疫反応を増強してもよい。ベクターワクチン及び抗原/抗菌薬は好ましくは混合物で投与される。
【0076】
本発明はまた、患者のT細胞の免疫応答を誘導するための薬物の製造における少なくとも1種の抗原及び/又は抗菌薬の使用も提供し、その際、該薬物は、マイコバクテリウムAg85A(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンと共に投与される。同様に、本発明は、患者のT細胞の免疫応答を誘導するための薬物の製造における、マイコバクテリウムAg85A(Ag85A)遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンの使用を提供し、その際、該薬物は、少なくとも1種の更なる抗原及び/又は抗菌薬と共に投与される。
【0077】
本発明はまた、患者のT細胞の免疫応答を誘導するための薬物の製造における少なくとも1種の抗原及び/又は抗菌薬の使用も提供し、その際、該患者は、マイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンによって事前に治療を受けている。本発明はまた、患者のT細胞の免疫応答を誘導するための薬物の製造における、マイコバクテリウムAg85A遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えるベクターワクチンの使用を提供し、その際、該患者は、少なくとも1種の抗原及び/又は抗菌薬によって事前に治療を受けている。
【0078】
本発明を使用して、上述のように種々の免疫応答を誘導し、増強してもよい。特に、マイコバクテリウムが関係するとみなされる疾患に対して免疫性を与える有効な手段を同定することは本発明の目的である。そのような疾患には、ハンセン氏病、結核、骨髄炎、クローン病、らい病、リンパ節炎、ヨーネ病が挙げられる。
【0079】
本発明の上述の態様は、例えば、小児、HIV、AIDSを有する、免疫不全の/免疫抑制された、臓器移植、骨髄移植を受けた、又は遺伝的に免疫不全に罹っている患者を具える多種多様な患者に適用可能である。ワクチンが予防的用途である場合、患者は、小児(例えば、1から5歳の乳児又は小児)、大きい小児又は10代の子供であってもよく;ワクチンが治療用途である場合、患者は好ましくは成人である。子供に意図されるワクチンは、例えば、安全性、投与量、免疫原性等を評価するために成人に投与されてもよい。
【0080】
本発明はまた、(1)本発明の免疫原性組成物及び(2)薬学的に許容可能なキャリアを具える医薬組成物も提供する。
【0081】
本発明は、i)本発明のベクターワクチンを調製するステップ、及びii)1以上の薬学的に許容可能なキャリアと免疫原性組成物を混合するステップを具える医薬を調製する方法を提供する。
【0082】
キャリア2)は、組成物を受け取る患者に有害な抗体の産生をそれ自体誘導しない、且つ過度の毒性なしで投与することができる任意の物質であることができる。好適なキャリアは、例えば、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー及び不活性のウイルス粒子のような大型で代謝の遅い高分子であることができる。そのようなキャリアは当業者に周知である。薬学的に許容可能なキャリアには、例えば、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールのような液体を挙げることができる。例えば、湿潤剤又は乳化剤のような補助的物質、pH緩衝物質等もそのようなビヒクルに存在することができる。トレハロースのような安定剤、又は常温にて水溶性の糖ガラスを形成できる物質も存在してもよい。後者には、パーフルオロカーボン液体に懸濁されたミクロスフェアの形式での混合された可溶性ガラス安定化法の使用が含まれる。リポソームも好適なキャリアである。医薬キャリアの全般的な議論は、Gennaro、レミングトンの「製薬学の科学と実践」第20版、2000年、ISBN:0683306472で利用可能である。
【0083】
本発明の医薬組成物はまた、予防的に、例えば、微生物との接触が予想され、感染の確立が妨げられるべき場合、使用してもよい。例えば、外科手術に先立って組成物を投与してもよい。
【0084】
医薬組成物は好ましくは無菌である。それは好ましくは、発熱物質を含まない。それは好ましくは、例えば、pH6からpH8の間、一般的にはpH7前後に緩衝化される。好ましくは、組成物は実質的にヒトと等張である。
【0085】
本発明の組成物は、種々の異なった経路を介して投与してもよい。更に有効な応答の生成を生じるので、又は副作用を誘導する可能性を減らすので、又は投与が更に容易なので、特定の組成物に対して特定の経路が好まれる。
【0086】
例えば、本発明で利用される組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下、脳室内、経皮又は経皮膚塗布、皮下、腹腔内、鼻内、経腸、局所、舌下、膣内、又は直腸内の手段を具えるが、これらに限定されないいかなる数の経路によって投与されてもよい。鼻スプレー、点鼻剤、ゲル又は粉剤として、注射剤として、液体溶液又は懸濁液として鼻内投与用に組成物を調製してもよく;注射に先立った液体ビヒクル中の溶液又は懸濁液に好適な固体形態も調製してもよい。
【0087】
組成物の直接送達は、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射若しくは筋肉内注射、鼻腔内注射によって達成され、又は組織の間質空間に送達される。投与量治療は、単回用量計画であっても、複数回用量計画であってもよい。
【0088】
以下の図面を参照して、例によって本発明の種々の態様及び実施態様が今や更に詳細に説明されるであろう。
【0089】
例
例1
MVA85Aワクチン
MVA85Aの構築は以前記載された(McShane H. et al.,Infect.Immun.,70:1623−1626,2002)。Impfstoffwerke Dessau−Tornau社の適性製造実施基準に対して臨床等級のMVA85Aを製造した。臨床試験でMVA85Aを使用するために、ロンドンの医薬品及び医療用品規制局から医師及び歯科医師免除証書が発行された。
【0090】
臨床試験
オックスフォードシャー研究倫理委員会によって認可されたプロトコールのもとで免疫試験のために志願者が募集され、文書のインフォームドコンセントを得たのち登録された。参加者の年齢範囲は18から55歳であり、志願者は全て、スクリーニングの際、血清学的には、HIV、HBV及びHCVについて陰性だった。ワクチン接種に先立って、日常的な血液学的及び生化学的な臨床検査を行い、値は全て正常限界の範囲内であった。志願者は全て、規則的な時点での採血によって6ヵ月追跡検査した。MVA85Aの免疫を受けた者は、ワクチン接種後7日間、局所及び全身性の副作用及び体温を記録する日記カードを完成させた。
【0091】
ワクチン接種
ヒーフテストを用いて判定されたBCG接種をしたことがない健常な志願者で最初の2つの試験を実施した。ヒーフテストは、ツベルクリン精製タンパク質誘導体(PPD)を皮膚上に置き、次いで銃を用いて複数の穴を開けることを具える。陽性の反応は、72時間で、穿刺部位にて4丘疹を超える。陽性の皮膚テストは、活発な結核の感染又は以前のBCGワクチン接種を示す。ヒーフテスト陰性(等級0)(ツベルクリン皮膚テスト0mmと同等)の志願者に、BCG(BCGグラスゴー株の単回免疫付与、100μLを皮内に投与、n=11)又はMVA85A(5x107pfuを皮内に投与3週間離して2回免疫、n=14)のいずれかでワクチン接種した。第3の試験では、以前BCGでワクチン接種されたことがある志願者を募集した(n=17)。BCGワクチン接種とMVA85Aによる免疫との間の時間の中央値は、18年(0.5から38年の範囲)だった。ヒーフテストが強度で等級IIより大きくない(ツベルクリン皮膚テスト<15mmと同等)志願者を試験に登録し、BCGワクチン接種とは反対側の腕で三角筋を覆う皮膚の皮内に5x107pfuのMVA85Aを単回投与で免疫した。合計31人の健常な志願者がMVA85Aでワクチン接種された。14人のBCGを受けたことがない志願者のうち11人が3週間離して2回免疫を受けた。残りの3人は単回免疫付与を受けた。BCGで感作されている17人の志願者は全てMVA85Aの単回免疫付与を受けた。志願者は全員6ヵ月の追跡検査期間を完了し、これらの試験では深刻な又は重篤な有害事象はなかった。
【0092】
免疫原性の測定
ワクチンの免疫原性を判定するために使用された主な免疫学的測定は、生体外のIFN−γELISPOTアッセイだった。以下の時点:ツベルクリン皮膚テストに先立ったスクリーニング時、次いで、ワクチン接種後1、4、12及び24週で採血された血液でこれを実施した。ツベルクリンPPD(20μg/mL、SSI)、精製抗原85(Ag85A)複合体(10μg/mL)及び10アミノ酸が重複する9から10 15量体のペプチドの7つのプール(ELISPOTのウエルで各ペプチドの最終濃度10μg/mL)を用いて、新鮮なPBMCでこれらの測定を行った。手短に言えば、100μLのR10(RPMIプラス10%ウシ胎児血清)中のウエル当たり300,000個のPBMCを抗原の存在下、直接ELISPOTプレート(MAIP S4510、ミリポア)に入れ、18時間インキュベートした。アッセイでは全て、ストレプトキナーゼ(250U/mL)/ストレプトドルナーゼ(12.5U/mL)及び植物性血球凝集素(10μg/mL)を陽性対照として用いた。2連一組でアッセイを行い、結果を平均した。
【0093】
エピトープのマッピング
個々のペプチドに対する反応は、ワクチン接種後最初の試料又はその次の試料で調べた。個々のペプチドへの反応では、磁気ビーズによる除去(Dynal)を行った。氷上で200μLのR10にてM−450(ノルウエー、オスロのDynal)を用いて、5つのビーズ対1個の細胞の比率で鉄ビーズに結合したCD4及びCD8に対するモノクローナル抗体と共に30分間インキュベートすることによってCD4+及びCD8+のT細胞の除去を行った。抗体で被覆された細胞を磁石(Dynal)を用いて除いた。除去なしの群、CD4+除去群及びCD8+除去群に従って試料を分析した。細胞の除去はFACS走査によって確認し、常に、CD8+T細胞については>90%であり、CD4+T細胞については>97%だった(データは示さず)。
【0094】
免疫原性の分析
抗原又はペプチドのプール及び細胞の入ったウエルにおける平均スポット数から、培地と細胞のみの対照ウエルにおける平均スポット数を差し引くことによってELISPOTデータを解析した。カウントが5スポット/ウエルに満たない場合は無視される。カウントが陰性対照のウエルの少なくとも2倍であれば、及び陰性対照のウエルより少なくとも5スポット多ければ、ウエルは陽性とみなされた。ペプチドプールのウエルについては、各時点で各志願者についてペプチドプール全てに渡って結果を合計した。例えば、7つのペプチドプールがあり、それぞれ9から10のペプチドを含有する場合、各プールを2連一組で調べた。各プールについてこの2連一組の平均値を算出し、陰性対照ウエルの平均値を差し引き、そのプールの結果を得た。次いで、7つの個々のプールの結果を一緒に加えた。このことは、隣接するペプチドがある2つのプールで生じる10量体の重複領域のいずれかに反応するT細胞を2回数える可能性がある。
【0095】
統計的解析
共変量としてのスクリーニングの際のベースラインの結果を用いて、対数変換されたデータにて、反復測定値について変動の解析を行い、群間で比較した。次いで、群間のあらゆる比較にマン・ウィットニー検定を用い、BCGで感作し、MVA85Aで追加免疫した群におけるスクリーニング及び24週の試料の一対比較にはウイルコクソン検定を用いた。
【0096】
培養ELISPOT法
培養ELISPOTについては、24穴プレートにて、1x106個の凍結保存したPBMCを、20μg/mLのM.tbPPD(「PPD−T」)、M.アビウムPPD(「PPD−A」)又は10μg/mLの組換え抗原85A(Ag85A)で刺激した。37℃、5%CO2の雰囲気で3日間インキュベートした後、500μLの細胞培養上清を取り除き、R10中の5IU/mLのリンホカルト−T(ドイツ、ドライアイヒのバイオテスト)で置き換えた。7日目にこれを繰り返した。9日目に細胞を3回洗浄し、R10において37℃、5%CO2の雰囲気で一晩静置した。10日目に細胞を洗浄し、2mLのR10に再浮遊し、50μLの培養した細胞(当初播いた細胞の2.5x104)をELISPOTプレートの2連ウエルに移し、PPD−T20μg/mL、PPD−A20μg/mL及びAg85A10μg/mLによって18時間刺激した。次いで前述のようにELISPOTプレートを発色させた。
【0097】
結果
MVA85Aによる免疫は安全であり、良好に認容された(表1)。BCG単独、MVA85A単独及びBCGで感作し、MVA85Aで追加免疫したワクチン接種によって誘導された抗原特異的なT細胞の応答の動態及び大きさを比較した。アッセイにおいて、PPD−T、抗原85(Ag85A)タンパク質又は抗原85(Ag85A)に由来する重複ペプチドのいずれかを用いた3種のワクチン接種計画は全て有意な免疫応答を誘導する(表2、図1)。PPD−T(F=3.624、P=0.037)、抗原85(Ag85A)(F=16.605、P<0.001)及び合計したプール抗原85A(Ag85A)ペプチド群(F=39.982、P<0.001)においてワクチンの有意な主な効果があった。BCGによる免疫は、控えめなレベルの抗原特異的IFN−γ分泌T細胞を誘導し、そのピークは免疫後4週間だった(表2、図1bからd)。プールした抗原85A(Ag85A)ペプチドに対する応答は、BCGによるワクチン接種の後、顕著に弱かった。(図1d)。生体外ELISPOTアッセイでは、11人の志願者中たった4人しか7つのペプチドプールのいずれかに応答しなかった。これらのペプチドプールへの応答は全てペプチド12、13、27及び28に起因し、CD4+T細胞の除去によって完全に排除された。
【0098】
表1:MVA85Aによる免疫後の応答型の有害事象
BCG経験がない群とBCGで感作された群との間で報告された有害事象の頻度又は重症度のいずれかに差異はなかった。
a全身性症状は全て7日以内に解消した。
b37.7から38.1℃の範囲;全て24時間以内に自然に解消した。
【0099】
BCGの経験がない志願者では、MVA85Aによる単回免疫付与は、高いレベルの抗原特異的IFN−γ分泌T細胞を誘導し、14人の志願者中13人でワクチン接種後7日でピークとなった(表2、図1bからc)。4週間までに、この応答は、ベースラインのほんの少し上のレベルまで低下した。3週目に投与されたMVA85Aによる2回目のワクチン接種による増強効果は見られなかった。志願者の1人はMVA85Aによる免疫後、インサート特異的T細胞を発生させなかったが、この志願者は、ワクシニアによる免疫の既往歴を有さないにもかかわらず、MVAベクターに対する特異的T細胞の応答を発生させた(データは示さず)。MVA−lacZ抗原を用いた生体外ELISPOTアッセイを行うことによってMVA85Aによりワクチン接種された志願者のMVA−lacZに対する応答を更に調べた。アッセイ法は「免疫原性の測定」にて上記で議論したとおりである。MVA85Aによりワクチン接種された健常志願者は、強い抗MVAのT細胞応答を示し、これはワクチン接種後24週まで続く。
【0100】
BCGによるワクチン接種とは対照的に、MVA85Aによるワクチン接種は、13/14の応答性志願者全てにおいて数種のペプチドプールに強い応答を誘導した(表2、図1d)。抗原85A(Ag85A)の全長のいたる所でペプチドの広い範囲に応答は見られた。CD4+T細胞の除去によってこれら個々のペプチドへの応答は全て完全に排除された(データは示さず)。
【0101】
BCGで感作し、MVA85Aで追加免疫した群における16/17の志願者では、抗原特異的なT細胞の有意な上昇が、ワクチン接種後1週間で見られた(表2、図1)。免疫後1週間のピークの応答は、BCG単独群又はMVA85A単独群に比べてBCGで感作し、MVA85Aで追加免疫した群で有意に高かった(図1bからe)。これらの応答は、少なくとも24週間、BCG単独又はMVA85A単独によるワクチン接種後よりも有意に高いレベルで持続された(図1e)。スクリーニング時のベースライン応答は、予想どおり、BCGを経験したことがない群よりもBCGで以前ワクチン接種された志願者において高かった。それにも関わらず、BCGで感作し、MVA85Aで追加免疫した群におけるMVA85Aによるワクチン接種後24週目の応答は、PPD(ウイルコクソン:z=−3.010、P=0.003)、抗原85(Ag85A)(ウイルコクソン:z=−3.516、P<0.001)及び合計したプールペプチド(ウイルコクソン:z=−3.408、p=0.001)について、この群でのベースライン値よりも有意に高かった。
【0102】
MVA85A単独(示さず)及びBCGで感作し、MVA85Aで追加免疫した群(図1f)で見られたペプチドへの応答の幅は、非常に類似した。しかしながら、反応の大きさは、BCGで感作し、MVA85Aで追加免疫した群で有意に高かった(図1e)。抗原85A(Ag85A)由来の全部で66のペプチドによって、BCGで感作し、MVA85Aで追加免疫した群における12人の志願者のPBMCをアッセイした。50%を超える被験者によってこれらペプチドの幾つかが認識されたということは(図1f)、以前報告された(Launois P.et al.,Infect.Immun.,62:3679−3687,1994)ように、異なったHLAクラスII分子によるこれらペプチドの無差別的な認識を説明している。
【0103】
表2.
【0104】
MVA85A単独群で見られるT細胞の応答の大きさは、現在まで使用されているその他の組換えMVAで見られるものよりも約10の係数分強い(McConkey S.J.et al.,「ヒトにおける組換え改変ワクシニアウイルス、アンカラによって追加免疫したプラスミドDNAワクチンによるT細胞免疫原性の増強」、Nat.Med.,9:729−735,2003;Mwau M.et al.,「臨床試験におけるヒト免疫不全ウイルス1(HIV−1)クレードAワクチン:ヒトにおけるDNA及び組換え改変ワクシニアウイルス、アンカラ(MVA)ワクチンによるHIV特異的T細胞の応答の刺激」、J.Gen.Virol.,85:911−919,2004)。P.ファルシパルム由来の抗原を発現する組換えMVAは、ワクチン接種の7日後、90SFC/106PBMCの平均合計ペプチド応答を誘導した(McConkey S.J.et al.,Nat.Med.,9:729−735,2003)。それに対して我々は、MVA85Aでワクチン接種した7日後、1365SFC/106PBMCの合計ペプチドに対する平均の応答を見ている(表2)。これに対する説明の1つは、これらの志願者は何らかの事前に存在する抗マイコバクテリウム免疫を有しており、MVA85Aによる免疫によってそれが増強されているということである。このことを更に検討するために我々は、生体外ELISPOTではなく培養ELISPOTを用いた。培養ELISPOTアッセイは、生体外ELISPOTによって測定される活性化エフェクターT細胞ではなく、セントラルメモリー型のT細胞を測定することが以前示されている(Reece W.H.et al.,Nat.Med.,10:406−410,2004;Godkin A,J.et al.,J.Immunol.,169:2210−2214,2002)。
【0105】
MVA85A単独群における4人の志願者からのワクチン接種前スクリーニングのPBMCにて培養IFN−γELISPOTアッセイを行った。M.tbのPPD、M.アビウムのPPD及び組換え抗原85A(Ag85A)と共に細胞を培養した。4人の志願者全員がM.アビウムのPPDに応答し、2/4がM.tbのPPDに応答し、2/4が組換え抗原85A(Ag85A)に応答した(図2)。これらの志願者は、スクリーニング用生体外ELISPOTにてM.tbのPPD又は精製抗原85(Ag85A)のいずれに対してもいかなるベースライン応答も有さなかった。
【0106】
MVA85Aによるワクチン接種に続くメモリーT細胞の応答の誘導を更に検討するために、ワクチン接種後3週目のPBMCで、生体外ELISPOT及び培養ELISPOTのアッセイを行った。M.tbのPPD、M.アビウムのPPD及び組換え抗原85A(Ag85A)と共に細胞を培養した。3週間では、生体外の応答は極めて低いか又は検出不能であるが、調べた5人の志願者全てにおいて培養ELISPOTで強い応答があったということは、ワクチン接種による抗原85A(Ag85A)に特異的なセントラルメモリーT細胞の誘導を示している。
【0107】
例2
潜在的にM.tbに感染している被験者における安全性及び免疫原性のデータ
潜在的にマイコバクテリウム・ツベルキュロシス(M.tb)に感染している9人の健常な成人にMVA85Aでワクチン接種した。各被験者にてワクチン接種後、規則的な間隔で血清の炎症性マーカーを12ヵ月間に渡って測定した。ワクチン接種前及びワクチン接種後10週目に肺の高解像CTスキャンを行った。肺の炎症の不顕性の徴候を検出するためにこれらの試験を行った。9人の潜在的に感染した志願者から生じた生体外ELISPOTの結果を図5aに示す。
【0108】
この群におけるMVA85Aの安全性は、例1で記載される以前の試行で見られるものと同一である。局所性にも全身性にも副作用の増加は検出されなかったし、肺の炎症の徴候も検出されなかった。ワクチン接種後、炎症性のマーカーは変化しなかったし、ワクチン接種後、CTスキャンによって検出可能な肺の炎症はなかった。
【0109】
比較のように、以前、0.5から37年前BCG注射を受けたことがある17人の健常な成人に、MVA85Aでのワクチン接種によって追加免疫を行った。結果は例1に記載されている。潜在的に感染した群(試行7、「T007」)で見られるワクチン接種後の免疫応答は、BCGで感作した群(試行5、「T005」)で見られるものと類似する大きさである。結果を図5b及び5cに示す。
【0110】
開発途上国全体にわたる潜在的感染の有病性を考えると、新しいTBワクチンが潜在的に感染した被験者で安全であるのは重要なので、このデータは有意である。更に、有望な免疫原性は、そのような潜在的感染を撲滅することを目的として、潜在的に感染した人々に投与される暴露後ワクチンとしてのこのワクチンの適用を支持する。
【0111】
免疫応答の持続時間
BCGで感作した志願者におけるMVA85Aで追加免疫した後の生体外ELISPOT反応は、感作(BCG)と追加免疫(MVA85A)の短い間隔(1ヵ月)及び長い間隔(10年を超える)の双方で、ワクチン接種後少なくとも1年間続く。
【0112】
BCG後10年を越えてからMVA85Aでワクチン接種された12人の志願者及びBCG後1ヵ月でMVA85Aでワクチン接種された10人の志願者の長期間の追跡データを図6に示す。双方の組の志願者のデータは、ワクチン接種後1年で免疫応答の持続を示し、それは、ワクチン接種後6ヵ月で見られたのと同じ大きさである。
【0113】
ワクチンが誘導した免疫応答の持続は、メモリー応答の誘導を示している。メモリー応答が誘導されていない限り、非複製性のワクチンによるワクチン接種の1年後、ワクチンで誘導した持続する応答を見ることを誰も期待しないだろう。
【0114】
プライム−ブースト免疫の間隔と免疫応答のレベルの間の相関
図3に提示されたデータは、MVA85Aの追加免疫ワクチン接種の後見られるBCGで誘導した免疫応答の増強は、BCGによる感作とMVA85Aによる追加免疫との間の間隔に依存しないことを示している。短い(1ヵ月)及び長い(10年を超える)追加免疫との間隔で同等の増強が見られた。
【0115】
感作(BCG)と追加免疫(MVA85A)の間の間隔と、MVA85Aで誘導される免疫応答のピーク(1週間)又はプラトー(6ヵ月)のいずれかとの間に相関はない(図7)。
【0116】
従って、BCGによるワクチン接種の直後(例えば、開発途上国では乳児期)又は更に後の時点(例えば、青年期)のいずれかでマイコバクテリウムに対する免疫を増強することは同等に実現可能である。乳児期の追加免疫及び青年期の追加免疫は双方とも、有効性の試行にとって可能性のある選択肢であり、追加免疫TBワクチンに関して可能性のある適応である。
【0117】
アカゲザルにおけるBCG感作−MVA85A追加免疫の免疫原性及び防御有効性
免疫原性と負荷の実験において、アカゲザルに対して(6匹/群)、i)BCG単独、ii)BCG,次いで9週後、MVA85Aによる追加免疫、又は(iii)生理食塩水(対照群)のいずれかによってワクチン接種した。動物は全て、BCGワクチン接種後(又は対照群については生理食塩水のワクチン接種)18週目に気管内に負荷し、次いで安楽死させる前16週間追跡した。免疫原性の結果は図8に示す。
【0118】
図8aは、この負荷実験における全3群でのワクチン接種後のIFN−γの平均レベル(3日間のリンパ球の刺激試験によって測定されるように)を示す。BCG群及びBCG感作MVA85A群におけるPPDに対する反応でのIFN−γのレベルは、類似であると思われるが、Ag85Aに対する反応は、BCG感作MVA85A追加免疫の群で明らかに高い。従って、BCG単独群(i群)では見られない、MVA85Aでワクチン接種した(ii群)後のAg85A特異的なIFN−γの分泌の有意な上昇がある(図8a)。
【0119】
図8bは、この負荷実験における全3群での負荷後のIFN−γの平均レベル(3日間のリンパ球の刺激試験によって測定されるように)を示す。M.tbで負荷した後、BCG−MVA85A群(ii群)は、BCG単独群(i群)よりも有意に高いAg85A特異的な応答を有した。また、M.tb特異的な免疫応答(大きさは細菌負荷に関係する)であるESAT6/CFP10(早期分泌抗原標的タンパク質/培養ろ過タンパク質10)への応答は、生理食塩水群に比べて、BCG群及びBCG−MVA85A群で低い。PPDへの応答はこれら2つの群間では類似する。ESAT6/CFP10の結果は、これらの抗原がTB特異的であり、これらの抗原に対する免疫応答のレベルは細菌負荷に相関する(すなわち、細菌負荷が高ければ(生理食塩水群)高いほど、ESAT6及びCFP10に対する免疫応答も高い)ので重要である(最下段)。ワクチンの防御的有効性は、生理食塩水群に比べてBCG群及びBCG−MVA85A群における相対的に低いESAT6/CFP10に対する応答によって含蓄される。
【0120】
解剖では、BCG単独群よりもBCG−MVA85A群で見られる病態の方がかなり少なかった。これら2つの群での細菌負荷の低下は、BCG−MVA85A群では0.97であり、BCG群では0.42であった。
【0121】
アカゲザルは、ヒト疾患の良好なモデルであり、動物の数が少ないにもかかわらず、防御有効性におけるこの有望な改善は、類似の有効な成績がヒトにおいて期待されることを示唆している。
【0122】
南アフリカの成人におけるフェーズII試験の安全性及び免疫原性のデータ
南アフリカの西ケープにてフェーズIIの安全性と免疫原性の試験が開始された。この試行は成人においてであり、標的は24人の被験者である。潜在的に感染している被験者は本試験から除外した。今日までに、12人の被験者にワクチン接種した。12人の被験者は全て、ワクチン接種後1週間のELISPOTアッセイにてMVA85Aが誘導した有意な免疫応答の有していた。
【0123】
現在までの安全性特性は、英国及びガンビアの試験で見られたものと同じである。英国での試験の結果は図1及び図9aに示し、ガンビアでの試験の結果は図9bに示す。
【0124】
全部で、11人のBCG経験のない志願者及び10人のBCGで感作された志願者がガンビアでワクチン接種を受けた。BCG経験のない群(図9b)の免疫原性の結果は、追跡検査期間の間中、それらがベースラインより上にとどまるという点で、英国におけるBCG感作群(図1b、1c、1d)の免疫原性の結果に類似した。このことは、ベースラインにて環境のマイコバクテリウムによる更に程度の高い感作、及び応答を維持している環境のマイコバクテリウムへの現在進行中の暴露を反映している可能性がある。
【0125】
ガンビアにおいては、BCG経験のない群とBCG感作群との間に有意差はなく、それは、上記のようにこの群における更に程度の高い環境からの感作によって説明される。それにひきかえ、英国では、BCG経験のない群の免疫原性の結果は、追跡検査中、ベースラインに戻ったが(図9a、図1b、1c及び1d)、BCG感作群は、追跡検査の間中、ベースラインの上にとどまる(図1b、1c及び1d)。
【0126】
BCGの文献全体に渡って、様々な国及び大陸のいたるところで、防御的有効性の広い変動の多くの例がある。英国、西アフリカ及び南アフリカにおけるMVA85Aの一貫した安全性及び免疫原性特性は非常に重要である。
【0127】
抗原85A(Ag85A)を発現するアデノウイルスのマウスにおける免疫原性
抗原85A(Ag85A)を発現する組換えアデノウイルス(ヒト株、E1及びE3を欠失)は、単独で投与されると、マウスにおいて強い免疫応答を誘導することが示されている(CD4の応答:c800スポット/100万個の脾細胞;CD8の応答:c1200スポット/100万個の脾細胞)。以前BCGを投与されたことがあるマウスに投与すると、抗原85A(Ag85A)を発現するアデノウイルスは、更に強い応答を刺激する(CD4の応答:c1400スポット/100万個の脾細胞;CD8の応答:c2500スポット/100万個の脾細胞)。従って、このアデノウイルスベクターは、ここで、非常に強いCD4T細胞の応答に加えて、非常に強いCD8T細胞の応答を誘導することが顕著に示され、同一ワクチンによるこれらの誘導は、マイコバクテリウムによる疾患の予防及び治療の双方に有益である可能性が高い。アデノウイルスベクターは以前、CD8T細胞の応答を誘導する良好な手段として見られていたが、我々は、ここで、CD4及びCD8双方の応答が強く誘導されることを示す。このデータは、アデノウイルスベクターが、BCGで感作したT細胞の応答の強力な追加免疫でありうることを示唆している。
【0128】
例示のみを目的として本発明は上述されてきた。本発明の範囲を逸脱することなく、詳細の改変が行われてもよいことが十分に理解されるであろう。
【0129】
AG85A特定配列
【0130】
SEQ ID NO:1(AG85A ポリペプチド配列)
【0131】
SEQ ID NO:2(AG85A ヌクレオチド配列)
【0132】
SEQ ID NO:3(15のアミノ酸が切断されたAG85Aポリペプチド配列)
【0133】
SEQ ID NO:4(15のアミノ酸が切断されたAG85Aヌクレオチド配列)
【0134】
SEQ ID NO:5 1176ヌクレオチド配列の挿入部分は、次のようである(上記の場合で発現した配列、Ag85Aコード配列は下線が付されている):
【0135】
SEQ ID NO:6
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1a】図1は、各ワクチン接種群:BCG単独;MVA85A単独;BCG感作MVA85A追加免疫におけるワクチン接種後の中央値IFN−γELISPOT反応である。図1aは、各群におけるワクチン接種(週)の時系列である。
【図1b】図1は、各ワクチン接種群:BCG単独;MVA85A単独;BCG感作MVA85A追加免疫におけるワクチン接種後の中央値IFN−γELISPOT反応である。図1bは、ツベルクリン精製タンパク質誘導体(PPD)への応答である。
【図1c】図1は、各ワクチン接種群:BCG単独;MVA85A単独;BCG感作MVA85A追加免疫におけるワクチン接種後の中央値IFN−γELISPOT反応である。図1cは、精製抗原85(Ag85A)タンパク質への応答である。
【図1d】図1は、各ワクチン接種群:BCG単独;MVA85A単独;BCG感作MVA85A追加免疫におけるワクチン接種後の中央値IFN−γELISPOT反応である。図1dは、合計したプールペプチドへの応答である。
【図1e】図1は、各ワクチン接種群:BCG単独;MVA85A単独;BCG感作MVA85A追加免疫におけるワクチン接種後の中央値IFN−γELISPOT反応である。図1eは、測定された3種の抗原のそれぞれについて、マン−ウィットニー統計学を用いて各時点での各ワクチン群間の応答を比較した統計的に有意な比較を示す。
【図1f】図1は、各ワクチン接種群:BCG単独;MVA85A単独;BCG感作MVA85A追加免疫におけるワクチン接種後の中央値IFN−γELISPOT反応である。図1fは、BCGワクチン接種された個体におけるMVA追加免疫後のT細胞エピトープの表示である。CD4+T細胞を除去することによって個々のペプチドへの応答は全て完全に排除された。
【図2】図2は、ワクチン接種に先立って、MVA85A単独試験における4人の志願者から採取した血液のM.tbのPPD、M.アビウムのPPD及び組換え抗原85A(Ag85A)に対する応答の培養ELISPOTによるスクリーニングである。各志願者は、コードTXXXXXXによって同定され、その際、最初の3つのXは試行番号に相当し、最後の3つのXは志願者番号に相当し、例えば、T002022は、T002が試行番号であり、022が志願者番号である。
【図3−1】図3は、MVA85Aの単回免疫付与の3週間後の5人の志願者におけるAg85Aペプチド(大文字で標識)のプールに対する応答の培養(「culture」と標識)ELISPOT及び生体外ELISPOTである(志願者は、コードTXXXXによって同定され、XXXXは4つの桁数であり、1桁目は試行番号に相当し、2、3及び4桁は志願者番号に相当し、例えば、T2003は、T2が試行番号であり、0003が志願者番号であることを意味する(T2は、上記図2におけるT002と同義である)。ワクチン接種後の応答は非常に高く、ワクチン接種前の応答よりも高い。志願者は、以前、BCGによるワクチン接種は受けなかった。
【図3−2】図3は、MVA85Aの単回免疫付与の3週間後の5人の志願者におけるAg85Aペプチド(大文字で標識)のプールに対する応答の培養(「culture」と標識)ELISPOT及び生体外ELISPOTである(志願者は、コードTXXXXによって同定され、XXXXは4つの桁数であり、1桁目は試行番号に相当し、2、3及び4桁は志願者番号に相当し、例えば、T2003は、T2が試行番号であり、0003が志願者番号であることを意味する(T2は、上記図2におけるT002と同義である)。ワクチン接種後の応答は非常に高く、ワクチン接種前の応答よりも高い。志願者は、以前、BCGによるワクチン接種は受けなかった。
【図4】図4は、1週目に1回MVA−85Aで免疫された健常な志願者における生体外ELISPOTアッセイで抗原として使用したMVA−LacZへのT細胞の応答の追跡検査である。志願者は以前、BCGによるワクチン接種を受けたことがあった。
【図5a】図5aは、潜在的にM.tbに感染している被験者におけるMVA85Aによる単回ワクチン接種後のPPD、組換え抗原85A(Ag85A)及び抗原85A(Ag85A)のペプチドプールの合計に対する応答の中央値ELISPOTである。
【図5b】図5bは、BCGで感作した被験者(T005、すなわち、試行5、例1を参照のこと)及び潜在的にM.tbに感染している被験者(T007、すなわち、試行7)におけるMVA85Aが誘導した、抗原85A(Ag85A)のペプチドプールの合計に対する応答の比較である。
【図5c】図5cは、BCGで感作した被験者(T005)及び潜在的にM.tbに感染している被験者(T007)におけるMVA85Aが誘導した、組換え抗原85A(Ag85A)に対する応答の比較である。
【図6a】図6aは、感作(BCG)と追加免疫(MVA85A)との間で長い(10年を超える)間隔を持つ被験者群におけるワクチン接種後少なくとも1年間の、MVA85Aが誘導した免疫応答の持続である。
【図6b】図6bは、感作(BCG)と追加免疫(MVA85A)との間で短い(1ヵ月)間隔を持つ被験者群におけるワクチン接種後少なくとも1年間の、MVA85Aが誘導した免疫応答の持続である。
【図7a】図7aは、BCGとMVA85Aワクチン接種との間の間隔と、MVA85Aワクチン接種の1週間後の、抗原85A(Ag85A)のペプチドプールの合計へのT細胞の応答との相関の欠如である。
【図7b】図7bは、BCGとMVA85Aワクチン接種との間の間隔と、MVA85Aワクチン接種の24週間後の、抗原85A(Ag85A)のペプチドプールの合計へのT細胞の応答との相関の欠如である。
【図8a】図8aは、ワクチン接種後のIFN−γの平均レベルである。
【図8b】図8bは、負荷後のIFN−γの平均レベルである。
【図9a】図9aは、英国のBCG経験のない志願者におけるMVA85Aに対する応答の生体外IFN−γELISPOTである。
【図9b】図9bは、ガンビアのBCG経験のない志願者におけるMVA85Aに対する応答の生体外IFN−γELISPOTである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者の少なくとも1つの抗原に対してT細胞の免疫応答を誘導する方法において、マイコバクテリウムのAg85A遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物を前記患者に投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記免疫原性組成物が、ベクターワクチンであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の方法において、前記T細胞の免疫応答が、CCR7+の応答であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法において、前記非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターが、ポックスウイルスベクター、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、及びインフルエンザウイルスから選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記非複製性のウイルスベクターがMVAであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、前記非複製性のウイルスベクターがアデノウイルスベクターであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法において、前記ウイルスベクターが、C末端のPKタグと共にAg85Aを発現することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法において、前記ウイルスベクターが、TPAリーダー配列と共にAg85Aを発現することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法において、前記ウイルスベクターが、切断C末端と共にAg85Aを発現することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法において、前記ウイルスベクターが、配列番号5の前記翻訳産物を発現することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法において、前記ウイルスベクターが、マイコバクテリウム種に由来する少なくとも1つの追加の抗原遺伝子の前記翻訳産物を更に発現することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法において、前記免疫原性組成物が、少なくとも1つの追加の抗原及び/又は抗菌薬と共に投与されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記少なくとも1つの追加の抗原及び/又は抗菌薬が、同時に、別々に又は順次投与されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の方法において、前記応答が、抗原特異的な免疫応答であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の方法において、前記応答が、治療用又は予防用であることを特徴とする方法。
【請求項16】
患者のT細胞の免疫応答を誘導することによって、患者のマイコバクテリウムによる疾患の治療、又は予防のための薬物を製造するためのマイコバクテリウムのAg85A遺伝子の前記翻訳産物を発現する非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えることを特徴とする免疫原性組成物の使用。
【請求項17】
マイコバクテリウムのAg85A遺伝子の前記翻訳産物を発現する非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターと、マイコバクテリウムの疾患と前記患者のT細胞応答を誘導することによる少なくとも一の追加の疾患の双方の前記治療又は予防用の薬剤を製造するための少なくとも一の追加の抗原遺伝子と、を具えることを特徴とする免疫原性組成物の使用。
【請求項18】
請求項16又は請求項17に記載の使用において、前記免疫原性組成物が、前記ウイルスベクターが誘導される前記ウイルスに対して、T細胞免疫応答を更に誘導することを特徴とする使用。
【請求項19】
T細胞の免疫応答を誘導することによって、患者の少なくとも一の疾患の治療、又は予防のための薬物を製造するためのマイコバクテリウムのAg85A遺伝子の前記翻訳産物を発現する非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物の使用において、前記薬物が少なくとも一の追加の抗原と共に投与されることを特徴とする使用。
【請求項20】
T細胞の免疫応答を誘導することによって、患者の疾患の治療用薬物を製造するための抗原の使用において、マイコバクテリウムのAg85A遺伝子の翻訳産物を発現する非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物と共に該薬物が投与されることを特徴とする使用。
【請求項21】
請求項1から15のいずれか1項に記載の方法、又は請求項16から20のいずれか1項に記載の使用において、T細胞の応答が、結核、ハンセン氏病、マイコバクテリウム・アビウム感染、非結核性のマイコバクテリウム感染、ブルーリ潰瘍、マイコバクテリウム・ボビス感染又は疾患、天然痘、サル痘、マイコバクテリウム・パラツベルキュロシス感染、炎症性腸疾患、クローン病、自己免疫疾患、癌、及び膀胱癌から成る群より選択される疾患に対して防御的であることを特徴とする方法又は使用。
【請求項22】
請求項1から15のいずれか1項に記載の方法、又は請求項16から20のいずれか1項に記載の使用において、前記患者が、小児、HIV感染又はAIDSで免疫不全になっている、又は臓器移植を受けた患者から成る群より選択されることを特徴とする方法又は使用。
【請求項23】
請求項1から15のいずれか1項に記載の方法、又は請求項16から20のいずれか1項に記載の使用において、患者が以前、マイコバクテリウムに暴露されたことがあることを特徴とする方法又は使用。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、患者が以前、M.ツベルキュロシスに暴露されたことがあることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項23又は請求項24に記載の方法において、患者が潜在的にマイコバクテリウムに感染していることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項1から15のいずれか1項に記載の方法、又は請求項16から20のいずれか1項に記載の使用において、患者があらかじめ、BCGで治療されていることを特徴とする方法又は使用。
【請求項27】
配列番号4のヌクレオチド配列の前記翻訳産物を発現する非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えることを特徴とするベクターワクチン。
【請求項28】
請求項27に記載のベクターワクチンにおいて、前記ウイルスベクターが、C末端のPKタグを追加で含む配列番号4のヌクレオチド配列の前記翻訳産物を発現することを特徴とするベクターワクチン。
【請求項29】
請求項27又は請求項28に記載のベクターワクチンにおいて、前記ウイルスベクターがTPAリーダーを追加的に含む配列番号4のヌクレオチド配列の前記翻訳産物を発現することを特徴とするベクターワクチン。
【請求項30】
請求項29に記載のベクターワクチンにおいて、前記ウイルスベクターが、配列番号5のヌクレオチド配列の前記翻訳産物を発現することを特徴とするベクターワクチン。
【請求項31】
請求項27から30のいずれか1項に記載のベクターワクチンにおいて、前記非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、及びインフルエンザウイルスから成る群より選択されることを特徴とするベクターワクチン。
【請求項32】
請求項31に記載のベクターワクチンにおいて、前記非複製性ウイルスベクターが、MVAであることを特徴とするベクターワクチン。
【請求項33】
請求項31に記載のベクターワクチンにおいて、前記非複製性ウイルスベクターが、アデノウイルスベクターであることを特徴とするベクターワクチン。
【請求項34】
請求項27から33のいずれか1項に記載のベクターワクチンにおいて、前記ウイルスベクターが、マイコバクテリウム種に由来する少なくとも1つの追加の抗原遺伝子の前記翻訳産物を更に発現するベクターワクチン。
【請求項35】
抗原又はこの免疫原性フラグメントを発現するアデノウイルスベクターを用いて、抗原に対するCD8及びCD4メモリーT細胞応答の誘導方法。
【請求項36】
前記抗原に対するCD8及びCD4メモリーT細胞応答を誘導するための薬物を製造するための抗原又はこの免疫原性フラグメントを発現するアデノウイルスベクターの使用。
【請求項37】
請求項36に記載の使用において、前記薬物が、マイコバクテリウムの疾患の治療、又は予防用であることを特徴とする使用。
【請求項38】
請求項35に記載の方法、又は請求項36又は請求項37に記載の使用において、前記抗原が、Ag85Aであることを特徴とする方法。
【請求項1】
ヒト患者の少なくとも1つの抗原に対してT細胞の免疫応答を誘導する方法において、マイコバクテリウムのAg85A遺伝子の翻訳産物を発現している非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物を前記患者に投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記免疫原性組成物が、ベクターワクチンであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の方法において、前記T細胞の免疫応答が、CCR7+の応答であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法において、前記非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターが、ポックスウイルスベクター、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、及びインフルエンザウイルスから選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記非複製性のウイルスベクターがMVAであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、前記非複製性のウイルスベクターがアデノウイルスベクターであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法において、前記ウイルスベクターが、C末端のPKタグと共にAg85Aを発現することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法において、前記ウイルスベクターが、TPAリーダー配列と共にAg85Aを発現することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法において、前記ウイルスベクターが、切断C末端と共にAg85Aを発現することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法において、前記ウイルスベクターが、配列番号5の前記翻訳産物を発現することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法において、前記ウイルスベクターが、マイコバクテリウム種に由来する少なくとも1つの追加の抗原遺伝子の前記翻訳産物を更に発現することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法において、前記免疫原性組成物が、少なくとも1つの追加の抗原及び/又は抗菌薬と共に投与されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記少なくとも1つの追加の抗原及び/又は抗菌薬が、同時に、別々に又は順次投与されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の方法において、前記応答が、抗原特異的な免疫応答であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の方法において、前記応答が、治療用又は予防用であることを特徴とする方法。
【請求項16】
患者のT細胞の免疫応答を誘導することによって、患者のマイコバクテリウムによる疾患の治療、又は予防のための薬物を製造するためのマイコバクテリウムのAg85A遺伝子の前記翻訳産物を発現する非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えることを特徴とする免疫原性組成物の使用。
【請求項17】
マイコバクテリウムのAg85A遺伝子の前記翻訳産物を発現する非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターと、マイコバクテリウムの疾患と前記患者のT細胞応答を誘導することによる少なくとも一の追加の疾患の双方の前記治療又は予防用の薬剤を製造するための少なくとも一の追加の抗原遺伝子と、を具えることを特徴とする免疫原性組成物の使用。
【請求項18】
請求項16又は請求項17に記載の使用において、前記免疫原性組成物が、前記ウイルスベクターが誘導される前記ウイルスに対して、T細胞免疫応答を更に誘導することを特徴とする使用。
【請求項19】
T細胞の免疫応答を誘導することによって、患者の少なくとも一の疾患の治療、又は予防のための薬物を製造するためのマイコバクテリウムのAg85A遺伝子の前記翻訳産物を発現する非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物の使用において、前記薬物が少なくとも一の追加の抗原と共に投与されることを特徴とする使用。
【請求項20】
T細胞の免疫応答を誘導することによって、患者の疾患の治療用薬物を製造するための抗原の使用において、マイコバクテリウムのAg85A遺伝子の翻訳産物を発現する非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具える免疫原性組成物と共に該薬物が投与されることを特徴とする使用。
【請求項21】
請求項1から15のいずれか1項に記載の方法、又は請求項16から20のいずれか1項に記載の使用において、T細胞の応答が、結核、ハンセン氏病、マイコバクテリウム・アビウム感染、非結核性のマイコバクテリウム感染、ブルーリ潰瘍、マイコバクテリウム・ボビス感染又は疾患、天然痘、サル痘、マイコバクテリウム・パラツベルキュロシス感染、炎症性腸疾患、クローン病、自己免疫疾患、癌、及び膀胱癌から成る群より選択される疾患に対して防御的であることを特徴とする方法又は使用。
【請求項22】
請求項1から15のいずれか1項に記載の方法、又は請求項16から20のいずれか1項に記載の使用において、前記患者が、小児、HIV感染又はAIDSで免疫不全になっている、又は臓器移植を受けた患者から成る群より選択されることを特徴とする方法又は使用。
【請求項23】
請求項1から15のいずれか1項に記載の方法、又は請求項16から20のいずれか1項に記載の使用において、患者が以前、マイコバクテリウムに暴露されたことがあることを特徴とする方法又は使用。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、患者が以前、M.ツベルキュロシスに暴露されたことがあることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項23又は請求項24に記載の方法において、患者が潜在的にマイコバクテリウムに感染していることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項1から15のいずれか1項に記載の方法、又は請求項16から20のいずれか1項に記載の使用において、患者があらかじめ、BCGで治療されていることを特徴とする方法又は使用。
【請求項27】
配列番号4のヌクレオチド配列の前記翻訳産物を発現する非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターを具えることを特徴とするベクターワクチン。
【請求項28】
請求項27に記載のベクターワクチンにおいて、前記ウイルスベクターが、C末端のPKタグを追加で含む配列番号4のヌクレオチド配列の前記翻訳産物を発現することを特徴とするベクターワクチン。
【請求項29】
請求項27又は請求項28に記載のベクターワクチンにおいて、前記ウイルスベクターがTPAリーダーを追加的に含む配列番号4のヌクレオチド配列の前記翻訳産物を発現することを特徴とするベクターワクチン。
【請求項30】
請求項29に記載のベクターワクチンにおいて、前記ウイルスベクターが、配列番号5のヌクレオチド配列の前記翻訳産物を発現することを特徴とするベクターワクチン。
【請求項31】
請求項27から30のいずれか1項に記載のベクターワクチンにおいて、前記非複製性又は複製を損傷したウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、及びインフルエンザウイルスから成る群より選択されることを特徴とするベクターワクチン。
【請求項32】
請求項31に記載のベクターワクチンにおいて、前記非複製性ウイルスベクターが、MVAであることを特徴とするベクターワクチン。
【請求項33】
請求項31に記載のベクターワクチンにおいて、前記非複製性ウイルスベクターが、アデノウイルスベクターであることを特徴とするベクターワクチン。
【請求項34】
請求項27から33のいずれか1項に記載のベクターワクチンにおいて、前記ウイルスベクターが、マイコバクテリウム種に由来する少なくとも1つの追加の抗原遺伝子の前記翻訳産物を更に発現するベクターワクチン。
【請求項35】
抗原又はこの免疫原性フラグメントを発現するアデノウイルスベクターを用いて、抗原に対するCD8及びCD4メモリーT細胞応答の誘導方法。
【請求項36】
前記抗原に対するCD8及びCD4メモリーT細胞応答を誘導するための薬物を製造するための抗原又はこの免疫原性フラグメントを発現するアデノウイルスベクターの使用。
【請求項37】
請求項36に記載の使用において、前記薬物が、マイコバクテリウムの疾患の治療、又は予防用であることを特徴とする使用。
【請求項38】
請求項35に記載の方法、又は請求項36又は請求項37に記載の使用において、前記抗原が、Ag85Aであることを特徴とする方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【公開番号】特開2013−10775(P2013−10775A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−184893(P2012−184893)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2007−549950(P2007−549950)の分割
【原出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(507226592)アイシス イノヴェーション リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2007−549950(P2007−549950)の分割
【原出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(507226592)アイシス イノヴェーション リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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