マイコバクテリウムの増強された検出のための方法および培地
本発明は、マイコバクテリウム増殖の増強された増殖と検出のための向上された培地および方法に関する。本発明はさらに、マイコバクテリアの増強された増殖と検出に使用することのできる、向上されたマイコバクテリア試薬システムまたはキットに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年7月1日に出願された「マイコバクテリウムの増強された検出のための方法および培地」と題される米国仮特許出願第61/269,977号の恩恵を主張するものであり、これを本明細書に援用する。
【0002】
本発明は一般に、マイコバクテリウムの検出を改善するための培地および方法に関するものである。より具体的には、本発明は、培地におけるマイコバクテリウムの増殖の検出時間(TTD:time to detection)を向上すなわち低減させる培地および方法に対する種々の改善に関するものである。
【背景技術】
【0003】
マイコバクテリアは抗酸性、非運動性、グラム陽性桿菌と特徴付けられる細菌属である。この属には、マイコバクテリウム・アフリカヌム、マイコバクテリウム・アビウム、ウシ型結核菌、ウシ型結核菌−BCG、マイコバクテリウム・ケローネ、マイコバクテリウム・フォーチュイタム、マイコバクテリウム・ゴルドナエ、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ、カンサシ菌、ライ菌、ネズミ型結核菌、マイコバクテリウム・スクロフラセウム、ヨーネ菌およびヒト型結核菌を含む多くの種がある。マイコバクテリアの中には、人間にも動物にも病原性を持つものがあり、特にヒト型結核菌、ライ菌およびウシ型結核菌はそうである。その他のマイコバクテリア種は通常病原性はないが、たとえばAIDS患者などの免疫低下状態の個体に日和見感染を引き起こす。例えば、カンサシ菌、マイコバクテリウム・アビウムおよびマイコバクテリウム・イントラセルラーレによる感染は、免疫系が抑制された、または免疫系が不全の患者に何らかの肺病を引き起こすことがある。実際、1953年以降マイコバクテリア感染の報告症例はアメリカ合衆国内において増加しており、これらの症例の多くはAIDS感染症に関連するものである。
【0004】
臨床種におけるマイコバクテリウム種の検出は、臨床診断ツールとして重要である。歴史的に、ヒト型結核菌はこの属において唯一の臨床的意義を持つ病原体であると考えられてきた。ヒト型結核菌の薬剤耐性菌株の発生率の上昇により、この種を検出する必要性がさらに強調された。結核は世界的な流行病のあらゆる主要特性を示す。現在結核は世界中で3500万以上の人々を苦しめ、年間で400万人以上が亡くなっている。よって結核は世界中が大きな関心を持つ問題である。結核は、マイコバクテリア科の抗酸性、グラム陽性の結核菌である、ヒト型結核菌、ウシ型結核菌、マイコバクテリウム・アフリカヌムおよびネズミ型結核菌によって引き起こされる。ヒト型結核菌のいくつかの局所的な病原体菌株は、インドのマドラスおよびその他の街の患者から分離されてきた。これは毒性菌株であるヒト型結核菌H37Rvとはいくつかの点で異なる。
【0005】
しかしながらその他のマイコバクテリウム種も臨床的に重要である。これらは時折「MOTT:Mycobacterium other than tuberculosis:非結核性抗酸菌」と呼ばれ、一般にマイコバクテリウム・アビウム/イントラセルラーレ複合微生物(一般にMAICと呼ばれる、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ、ヨーネ菌)、マイコバクテリウム・ゴルドナエ、マイコバクテリウム・フォーチュイタム、マイコバクテリウム・ケローネ、マイコバクテリウム・ムコゲニカムおよびマイコバクテリウム種の混合物が臨床検体に含まれる。例えば、マイコバクテリウム・アビウム複合体(MAC:M. avium complex)細菌によって急増殖する日和見感染は、エイズおよびその他の免疫低下状態の個体に頻繁に発生することが証明されている。このような感染した個体では、少なくとも106MAC細胞/mlの唾液沈殿物が見つかっている。従って多くのマイコバクテリウム種を検出することのできる検出アッセイは臨床的に重要である。
【0006】
試料内のマイコバクテリウム種の検出および同定の多くの臨床方法では、細菌の物理的特性(例えば細菌の抗酸染色および顕微鏡による検出)、生理学的特性(例えば合成培地での増殖)または生化学的特性(例えば膜脂質組成)の分析が必要とされる。これらの方法では、検出する試料内の細菌は比較的高い濃度でなければならず、これは臨床技師の経験や専門知識によるものであり、時間がかかるものである。というのもマイコバクテリウム種を体外で増殖させるのは大抵難しく、培地内で有用な密度に到達するには数週間かかり、これらの方法では患者の処置の遅れや、感染した個体の診断終了までの隔離に関連する費用が生じることもある。
【0007】
マイコバクテリア一般と、特にヒト型結核菌およびウシ型結核菌とは、増殖の大変遅い偏好性微生物である。従来使用している培地でこれらの微生物を増殖させるには2〜3週間かかる。増殖を増強させて時間因子を低減させることのできる培地または物質を見つけるために、いくつかの試みが行われてきた。例えば、本明細書に参考として援用する特許文献1は、以下の栄養素を以下に示す量ずつ含有するマイコバクテリアを培養するための培養基を開示している。すなわち、かかる培養基は、7H9基礎培地0.47%(メリーランド州コッキーズビレのBBLマイクロバイオロジーシステムス社より入手、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、ピリドキシン、クエン酸鉄アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、ビオチンおよび塩化カルシウムを含有)、ウシ血清アルブミン0.5%、カゼイン加水分解物0.1%、カタラーゼ96単位/バイアル、14C標識基質2uCi/バイアル、および培養基を2mlとして、最終pH6.8±0.1に調整するための脱イオン水を含有する。
【0008】
アルブミンはマイコバクテリアを増殖するための培地において、解毒剤として使用することができる。アルブミンはほぼ全ての動物組織および多くの野菜組織で見つかる単純タンパク質である。アルブミンは水溶性であり、熱で凝固する特徴がある。アルブミンは炭素、水素、窒素、酸素および硫黄を含有する。本発明の培養基のための好適なアルブミンは、ウシ血清アルブミンである。アルブミンは典型的に約0.1重量%〜約10重量%のレベルで培養基に存在する。
【0009】
しかしながら、遅い増殖速度や培地におけるマイコバクテリアの増殖のために富栄養培地が必要なことから、臨床試料(例えば、唾液、肺液、組織または糞便)からマイコバクテリアを検出することは依然として生物学の大きな課題である。この課題の1つの要因は、より急速に増殖する細菌が、対象とする増殖の遅いマイコバクテリア微生物を圧倒してしまい、そのためマイコバクテリアの検出を妨げる、または著しく妨害するという事実から生じる。数10年にわたり、マイコバクテリア同定のために提出された診断用試料を除染する(すなわち、非マイコバクテリア微生物を死滅させる、または阻害する)ために、いくつかの技術が開発されてきた。これらの技術は、潜在的な汚染物質を死滅させるか、またはそれらの増殖が阻害されるかもしくは完全に妨害されるくらいにそれらを傷つけるものである。
【0010】
従来マイコバクテリアの検査診断は、微生物の抗酸性染色および培養、その後の生化学分析に基づくものであった。マイコバクテリアの遅い増殖と長い世代時間の結果、従来の技術によるマイコバクテリアの正確な検査診断には6週間もかかることがある。BacT/ALERT(登録商標)システム(バイオメリュー社)などの自動培養システムは、マイコバクテリアの同定にかかる時間を2週間まで低減させることができる。
【0011】
本譲受人であるバイオメリュー社は、血液以外の臨床試料においてマイコバクテリアを検出するための培養ベースのシステムとして、BacT/ALERT(登録商標)微生物検出システムに使用するプラスチック製のBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶を提供する。BacT/ALERT(登録商標)微生物検出システムは、比色センサと反射光を利用して、培地に溶解した二酸化炭素(CO2)の存在と生成を監視するものである。試験試料にマイコバクテリアが存在する場合には、これらの微生物が培地の中で基質を代謝する際に二酸化炭素が生成される。マイコバクテリアの増殖によって二酸化炭素が生成されると、各培養瓶の底に設置されたガス透過性センサの色が青緑から黄色へと変化する。
【0012】
BacT/ALERT(登録商標)MP試薬システムは、BacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶、再構成液(RF)、MB/BacT抗菌サプリメント(MAS)(以下従来の、または旧いRF(すなわち従来の/旧いRF)および従来の、または旧いMAS(すなわち従来の/旧いMAS)と呼ぶ)を含む。BacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶はプラスチック製の瓶であり、これはいくつかの培地の成分を含んでいる。再構成液(RF)はマイコバクテリアの増殖のための残りの栄養素を含み、MASを再構成するために使用される。MASは、唾液試料からの好ましくない呼吸器内細菌叢(respiratory flora)を抑制するために6つの抗菌剤で作られた、凍結乾燥粉末である。RFおよびMASは、MASキットとしてパッケージ化されている。それでもなおマイコバクテリアの正確な診断のために必要とされる時間をさらに削減するための必要性が、当技術分野には今なお存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第3,935,073号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って本発明の主な目的は、臨床試料に存在するマイコバクテリウム種の増強された増殖および検出のための培地および方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、マイコバクテリアの体外培養に適した、新規のマイコバクテリア培地を提供することである。本発明のまたさらなる目的は、前述の目的に従ってマイコバクテリア培地を提供することであり、この場合、汚染微生物の増殖は阻害される。
【0015】
よって本明細書には、新規の培地処方と、新規の栄養サプリメント(NS:nutrient supplement)および新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS:MB BacT antibiotic supplement)と、マイコバクテリアの増殖および検出に予測を超えた増強を示す製造工程の向上とを記載する。また本明細書にはマイコバクテリアの増強された増殖および検出の方法を記載する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は概してマイコバクテリウムの増殖および検出のための新規の培地に関するものである。さらに本発明は、臨床試料に存在するマイコバクテリウム種の広域スペクトルを検出する組成および診断方法を提供する。また本発明は、マイコバクテリアの増殖および検出の増強された検出時間(TTD)を示す、新規かつ改善されたMPシステムまたはキットにも関するものであり、このMPシステムまたはキットは、オートクレーブ可能なBacT/ALERT(商標登録)MP培養瓶と、栄養サプリメント(NS)と、新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)とを備える。
【0017】
一実施形態では、本発明はマイコバクテリアを培養する新規の培地に関し、培地は、(a)マイコバクテリアの増殖に適した基本培地と、(b)1つまたは複数の栄養サプリメント添加剤と、(c)向上された抗菌サプリメントとを含み、前記培地は前記マイコバクテリアの増強された増殖を呈する。
【0018】
別の実施形態では、本発明はマイコバクテリアの増強された増殖の方法に関し、本方法は、マイコバクテリアを含むと疑われる試料を、有効な量の1つまたは複数の栄養添加剤を含有する培地に添加して、前記マイコバクテリアの増殖を増強するステップと、該培地を前記マイコバクテリアの増殖に適した条件にさらすステップとを含む。
【0019】
本発明の別の実施形態はマイコバクテリウム種による感染の診断方法に関し、(a)培地を提供するステップと、(b)該培地に栄養サプリメントを添加するステップであって、該栄養サプリメントは、前記マイコバクテリアの増殖を増強させるための1つまたは複数の栄養添加剤を含むステップと、(c)前記マイコバクテリウム種の有無が決定される試料を添加するステップと、(d)マイコバクテリウム種の存在について培地を分析するステップと、を含み、マイコバクテリウム種の存在の発見は前記感染の陽性診断を示す。
【0020】
さらに別の実施形態では、本発明は向上されたBacT/ALERT(登録商標)MP試薬システムまたはキットに関する。向上されたBacT/ALERT(登録商標)MP試薬システムまたはキットは、マイコバクテリアの増殖のための基本培地または水を含む、向上されたMP培養瓶を含んでいる。随意に、新規のMP培養瓶の培地または水は熱不安定性成分を含まず、よって新規のMP培養瓶はオートクレーブ可能とすることができる。試薬システムまたはキットはさらに新規の栄養サプリメント(NS)および新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)を含む。栄養サプリメント(NS)は、マイコバクテリアの増殖のための基本培地および/または1つまたは複数の炭素源、窒素源、糖類、塩類、栄養素、タンパク質類、アミノ酸類、脂肪酸類またはその他の栄養素を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】脂肪酸の補給のある場合とない場合のヒト型結核菌の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図1B】脂肪酸の補給のある場合とない場合のマイコバクテリウム・イントラセルラーレの検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図1C】脂肪酸の補給のある場合とない場合のマイコバクテリウム・アビウムの検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図2】α‐ケトグルタラートを使った場合と使わない場合のマイコバクテリア菌株の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図3】アズロシリンを使った場合のマイコバクテリア菌株の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図4】マイコバクテリア菌株の増殖に対するバンコマイシンの効果を示す箱髭図である。
【図5A】種々のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方を使った場合のヒト型結核菌18283の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図5B】種々のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方を使った場合のヒト型結核菌27294の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図5C】種々のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方を使った場合のマイコバクテリウム・アビウム569の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図5D】種々のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方を使った場合のマイコバクテリウム・イントラセルラーレ13950の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図5E】種々のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方を使った場合のマイコバクテリウム・スクロフラセウム19981の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図5F】種々のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方を使った場合のカンサシ菌12478の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図6】ヒト型結核菌複合体の増殖の検出時間(TTD)に関して、以前のMAS処方と新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方との比較を示す箱髭図である。
【図7】その他のマイコバクテリア菌株の増殖の検出時間(TTD)に関して、以前のMAS処方と新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方との比較を示す箱髭図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
適切な栄養条件および環境条件を提供することによる微生物の繁殖は周知である。適切な培養基または培養地は、培養する微生物が必要とする全ての栄養素を含んでいなくてはならない。例えば、典型的な微生物学的培地は、利用できる水源、炭素源、窒素源、ビタミン、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄などの微量元素および硫黄、リンなどのミネラル類を含んでいなくてはならない。典型的にこれらの必要物は多くの源から供給される。適切な繁殖条件のその他の要因には、pH、温度、エアレーション、食塩濃度および培地の浸透圧がある。
【0023】
さらに、特定の増殖要因が必要であることが知られている。増殖要因は有機化合物であり、これは増殖するために微生物が含んでいなければならないものであるが、合成することのできないものである。多くの微生物は、上述の栄養素が与えられると、自らの原形質の全ての有機成分を合成することができ、これらの有機成分には、アミノ酸類、ビタミン類、プリン・ピリミジン類、脂肪酸類およびその他の化合物がある。これらの必須化合物の各々は酵素反応の個々のシーケンスによって合成され、各々の酵素は特異遺伝子の支配下で生成される。しかしながら、微生物の中には1つまたは複数のこれらの増殖要因を合成することができず、よって環境からその化合物を得なければならないものがある。必要とされる増殖要因としては、以下のものに限定しないが、アミノ酸類、ビタミン類、プリン・ピリミジン類、脂肪酸類および増殖に必要なその他の化合物がある。
【0024】
上述のように、本譲受人であるバイオメリュー社は、マイコバクテリウムの増殖および検出のための培養瓶(BacT/ALERT(登録商標)MP処理瓶)の製造と販売を行っている。BacT/ALERT(登録商標)MP処理瓶は、無菌体の検体および消化、除染された臨床検体からマイコバクテリアを回収して検出するためのBacT/ALERT(登録商標)またはBacT/ALERT(登録商標)3Dシステムで使用するためのものである。MP処理瓶は、MB/BacT(登録商標)抗菌サプリメント(MAS)および/またはMB/BacT(登録商標)再構成液(RF)(本明細書では従来の、または旧いMASおよび従来の、または旧いRFと呼ぶ)と共に使用することができる。
【0025】
BacT/ALERT(登録商標)MP使い捨て培養瓶は脱着可能な蓋を有し、およそ10mlの培地および微生物増殖の指標としての二酸化炭素を検出する内部センサを含む。培地処方は、精製水中のMiddlebrook 7H9 Broth(0.47% w/v)、カゼインの膵臓消化物(0.1% w/v)、ウシ血清アルブミン(0.5% w/v)およびカタラーゼ(48u/ml)から構成される(本明細書では、従来の、または旧い培地と呼ぶ)。
【0026】
従来の、または旧いMB//BacT(登録商標)抗菌サプリメント(従来の/旧いMAS)は、アムホテリシンB(0.0180% w/v)、アズロシリン (0.0034% w/v)、ナリジクス酸(0.0400% w/v)、ポリミキシンB(10000単位)、トリメトプリム(0.00105% w/v)およびバンコマイシン(0.0005% w/v)を含有するように処方された凍結乾燥サプリメントである。
【0027】
従来の/旧いMB/BacT(登録商標)再構成液(従来の/旧いRF)は、精製水中にオレイン酸(0.05% w/v)、グリセリン(5% w/v)、アマランス(0.004%)およびウシ血清アルブミン(1% w/v)を含有する。再構成液(RF)およびMB/BacT/ALERT(登録商標)抗菌サプリメント(MAS)は、MP瓶に添加することのできるサプリメントキットを含む。
【0028】
本発明は、マイコバクテリウムの増殖を増強するための新規かつ改善された培地および方法に関するものである。本発明の培地および方法は、任意の、既知のマイコバクテリアの培養に使用することができ、マイコバクテリアとしては、以下のものに限定しないが、ヒト型結核菌、ウシ型結核菌、ネズミ型結核菌、マイコバクテリウム・アフリカヌム、マイコバクテリウム・カネッティ、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ、マイコバクテリウム・スクロフラセウム、カンサシ菌、マイコバクテリウム・マルモエンセ、マイコバクテリウム・ゼノピ、マイコバクテリウム・マリヌム、マイコバクテリウム・シミアエ、マイコバクテリウム・テラエ、マイコバクテリウム・ウルセランス、マイコバクテリウム・アブセサス、マイコバクテリウム・フォーチュイタム、マイコバクテリウム・ケローネおよびマイコバクテリウム・ゴルドネがある。本発明者は今回マイコバクテリアの増殖および検出に予測を超えた増強を示す新規の培地処方、新規の栄養サプリメント(本明細書では新NSと呼ぶ)、新規の抗菌サプリメント(本明細書では新MASと呼ぶ)処方、および製造工程の改善を発見した。
【0029】
本発明によるMPシステムの新規の特徴には、(1)熱不安定性成分をMP培地から栄養サプリメントへ移すことによって可能となるMP瓶の最終滅菌、(2)新規の炭素源を使用することによる二酸化炭素生成の最適化、(3)栄養サプリメントの最適化、および/または(4)MAS抗菌剤の最適化および/または抗菌剤の濃縮がある。これらの改善はマイコバクテリアの増殖と検出にいくつかの予測を超えた改善をもたらし、これらの改善には、(1)マイコバクテリアの増殖の検出時間(TTD)に関するMP瓶の性能の向上、(2)臨床的に意義のあるマイコバクテリアの回収の向上、(3)汚染呼吸器内細菌叢(CRF)の飛躍的な低減、および/または(4)偽陽性の最小化がある。付加的な向上には、BacT/ALERT(登録商標)MP瓶を室温で保管および出荷することができるという製造工程の簡素化がある。
【0030】
培地
一実施形態では、本発明の新規の培地はマイコバクテリアの増強された増殖を提供する。本明細書で使用する場合、「増強された増殖」とは、マイコバクテリアの増殖を本発明の培地および/またはサプリメントを使って、例えば培養瓶の中で、従来の培地を用いるよりも少なくとも約半日、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約5日または少なくとも約7日早期に検出可能なことを意味する。つまり、マイコバクテリアの増殖を増強することによって、従来の培地におけるマイコバクテリアの増殖と比較して、増殖の検出時間(TTD)を向上すなわち低減させることができる。本発明によれば、本発明の培地を使うと、従来の培地と比較してTTDを少なくとも約半日、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約5日または少なくとも約7日向上すなわち低減させることができる。一実施形態では、従来の培地は、上述のBacT/ALERT(登録商標)MP処理瓶(バイオメリュー社)の従来の/旧いRFおよび従来の/旧いMASを補給した従来の培地とすることができる。
【0031】
別の実施形態では、本発明の新規の培地は、マイコバクテリアの増殖における誘導時間の減少を提供する。本明細書で使用する場合、「減少された誘導時間」とは、マイコバクテリウムが対数期増殖に入る前のインキュベーション、すなわち潜伏時間の減少を意味する。本発明によれば、本培地および/またはサプリメントは、従来の/旧い培地内のマイコバクテリウムの誘導期と比較すると、少なくとも約半日、少なくとも約1日、少なくとも約2日または少なくとも約3日の誘導時間の減少または低減をもたらす。一実施形態では、従来の/旧い培地は、上述のBacT/ALERT(登録商標)MP処理瓶(バイオメリュー社)の従来の/旧いRFおよび従来の/旧いMASを補給した従来の培地とすることができる。
【0032】
本発明の培地は、液体栄養素培地すなわち栄養素ブロスを含む。本発明の培地すなわち栄養素ブロスは、典型的には1つまたは複数の既知の栄養素を含む。例えば培地は1つまたは複数の炭素源(例えばグリセリン)、窒素源(例えばアンモニア塩)、糖類、塩(例えばK+、Mg2+、Ca2+、Zn2+)、栄養素および/または水を含有することができる。一実施形態では、本発明の培地は、Middlebrook 7H9を含む。上述のように、Middlebrook 7H9は、カリウム塩、ナトリウム塩、グルタミン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、ピリドキシン、クエン酸第二アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、ビオチンおよび塩化カルシウムを含む。
【0033】
本発明の培地は、マイコバクテリアの増殖の増強された検出を可能にする付加的な栄養素および/または成分をさらに含むことができる。本発明の培地に添加することのできる付加的な栄養素および/または成分としては、以下のものに限定しないが、タンパク質、アミノ酸、脂肪酸、細胞または植物抽出物および/またはその他の栄養素がある。例えば、本発明の培地は、カゼイン(例えば、カゼインの膵液消化物)、アルブミン(例えばウシ血清アルブミン)、カタラーゼおよび/またはアマランスをさらに含むことができる。一実施形態では、本明細書でさらに述べるように、これらの付加的な栄養素および/または成分は、マイコバクテリウムの有無の決定が所望される試料を培地に接種する前に基本培地に添加することのできる、別個の栄養サプリメントを含むことができる。
【0034】
本発明によれば、培地瓶内でウシ血清アルブミン(BSA)と結合する高レベルの短鎖脂肪酸および中鎖脂肪酸(例えば8以下の炭素原子を有する脂肪酸)は、偽陽性の表示(reading)をもたらすことがあることを発見した。よって、短鎖脂肪酸または中鎖脂肪酸の使用を避けることが好適である。例えば、本実施形態によれば、8以下の炭素原子を有する脂肪酸(例えばカプリル酸)の使用は避けるべきである。
【0035】
しかしながら本発明者は、偽陽性を引き起こすこれらの試薬は、脂肪酸を含まないBSAを使用し、そして培地処方に長鎖脂肪酸を補給することによって排除することができる、または著しく低減させることができることも発見した。従って、培地は脂肪酸を含まないBSA(FAフリーBSA)および1つまたは複数の飽和または不飽和の長鎖脂肪酸またはその塩をさらに含むことができる。一実施形態では、10以上の炭素原子を有する1つまたは複数の長鎖脂肪酸を使用するのが好適である。一般には任意の既知の長鎖脂肪酸を使用することができ、この長鎖脂肪酸としては以下のものに限定しないが、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびそれらの塩がある。別の実施形態では、本明細書にさらに述べるように、脂肪酸は、瓶の培地から、試験試料を接種する前に培地に別途添加することのできる栄養サプリメントに移すことができることを発見した。本明細書に示すように(例えば実施例1および図1A〜図1C参照)、脂肪酸を含まないBSAの使用および長鎖脂肪酸の培地への補給は、ヒト型結核菌(図1A参照)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(図1B参照)およびマイコバクテリウム・アビウム(図1C参照)の増殖および検出時間(TTD)を2〜2.5日向上させることとなった。
【0036】
本発明の一態様では、本発明の培地には1つまたは複数の既知の代謝経路基質すなわち中間体を補給することができる。本発明者は驚くことに、代謝経路基質(例えばα-ケトグルタラート)を培地に含有させることによって、マイコバクテリアの増殖および検出を、代謝経路基質(例えばα-ケトグルタラート)を含有しない培地と比較して増強させることができることを発見した。理論に縛られることを望むものではないが、代謝経路基質(例えばα-ケトグルタラート)を培地内で使用すると、培地に存在するマイコバクテリアによる二酸化炭素の生成が増強されると考えられる。本実施形態によれば、クエン酸回路、解糖またはグリオキシル酸経路基質すなわち中間体を使用することができる。一実施形態では、二酸化炭素を生成する酵素の基質、共同因子またはそれらの中間体、前駆体もしくは誘導体を本発明で使用することができる。例えば、ピルビン酸、クエン酸、シス-アコニット酸、イソクエン酸、オキサロスクシナート、α−ケトグルタラート、スクリニル‐CoA、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸などのクエン酸回路中間体が有用である。別の実施形態では、α−ケトグルタラート、α−ケトグルタラート前駆体および/またはα−ケトグルタラート誘導体のうちの1つまたは複数を本発明の培地に含ませることができる。α−ケトグルタラート前駆体または誘導体としては、以下のものに限定しないが、グルタミン酸、イソクエン酸、オキサロスクシナートまたはそれらの混合物がある。α−ケトグルタラート、α−ケトグルタラート前駆体および/またはα−ケトグルタラート誘導体は、最終濃度約0.1g/L〜約50g/L、約0.5g/L〜約20g/Lまたは約1g/L〜約20g/Lで培地内に存在させることができる。一実施形態では、本明細書でさらに述べるように、α−ケトグルタラート、α−ケトグルタラート前駆体および/またはα−ケトグルタラート誘導体は、培地に別途添加することのできる栄養サプリメント内に含ませることができる。
【0037】
本発明のさらに別の態様では、本発明の培地はさらに1つまたは複数の抗菌剤または抗菌物質を含むことができる。抗菌薬は微生物の増殖を死滅、抑制、または阻害する薬剤または物質である。一般に、微生物の増殖を死滅、抑制または減速する薬物、化学薬品またはその他の物質などのような任意の既知の抗菌剤を使用することができる。有用な抗菌剤としては、以下のものに限定しないが、抗生物質、静菌剤、殺菌剤、抗菌薬、抗ウィルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤および抗寄生虫剤がある。一般に抗菌剤は培地内に存在する汚染細菌の増殖を死滅、抑制または阻害するのに十分な量で使用する。例えば、当業者であれば理解できるように、培地における汚染呼吸器内細菌叢(CRF)の増殖を阻害することは好適であろう。CRFはマイコバクテリアの増殖を妨げ、マイコバクテリアの増殖に必要な栄養素を枯渇させ、および/または偽陽性をもたらす。汚染呼吸器内細菌叢(CRF)としては、以下のものに限定しないが、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス、フェカリス菌、肺炎桿菌、人口呼吸器肺炎菌、カンジダ・トロピカリス、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(すなわちMRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(すなわちVRE)がある。
【0038】
抗菌薬は1つまたは複数の抗生物質または合成薬物とすることができ、これらは以下のものに限定しないが、ポリミキシンB、バンコマイシン、アズロシリン、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンがある。好適な実施形態では、有用な抗生物質は、マイコバクテリアの増殖を抑制または阻害せずに汚染呼吸器内細菌叢(CRF)を阻害する。
【0039】
いくつかの実施形態では、抗菌サプリメントは1つまたは複数の抗真菌性抗生物質、グラム陰性抗生物質、グラム陽性抗生物質、1つの抗真菌性抗生物質および広域スペクトル抗生物質を含む。例えば、本発明の抗菌サプリメントは、抗真菌剤(例えばアムホテリシンB)、細胞質膜透過性を変化させるグラム陰性抗生物質(例えばポリミキシンB)、DNAジャイレースを阻害する広域スペクトル抗生物質(例えばナリジクス酸)、化学療法剤(例えば、ジビロド葉酸還元酵素を阻害する薬剤(例えばトリメトプリム))およびエノールピルビン酸塩トランスフェラーゼを阻害する広域スペクトル抗生物質(例えばホスホマイシン)を含むことができる。一般に、任意の既知の抗真菌剤、グラム陰性抗生物質、広域スペクトル抗生物質、DNAジャイレースの抗生物質阻害剤または化学療法剤を本発明の実行で使用することができる。一実施形態では、抗菌サプリメントは、アムホテリシンB、ポリミキシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンを含むことができる。
【0040】
本明細書に示すように(例えば実施例3、4および図3、4を参照のこと)、バンコマイシンおよび/またはアズロシリンの使用によっていくつかのマイコバクテリア種の増殖を抑制、阻害または減速させることができる。よっていくつかの実施形態では、バンコマイシンおよび/またはアズロシリンの使用を避けることが好適である。本発明者は、アズロシリンおよびバンコマイシンの代わりにホスホマイシンを使うと、MB/BacT(登録商標)抗菌サプリメントと比較して、培地内でマイコバクテリアの増進と検出を増強させるために使用することのできる抗菌サプリメント(MAS)を生成することができることを発見した。例えば、アズロシリンおよびバンコマイシンをホスホマイシンに代えることによって、新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)は従来の/旧いMAS(例えば実施例5と図5A〜5F参照)と比較して、マイコバクテリア増殖の検出時間(TTD)を2〜9日間向上すなわち低減させることを発見した。従って、いくつかの実施形態では、ポリミキシンB、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンの使用は好適である。これらの抗生物質は、培地に存在する汚染細菌の増殖を阻害するのに十分な量で使用することができる。例えば、培地はポリミキシンB約400単位/ml〜約2000単位/ml、アムホテリシンB約50μg/ml〜約400μg/ml、ナリジクス酸約100μg/ml〜約1000μg/ml、トリメトプリム約10μg/ml〜約100μg/mlおよびホスホマイシン約100μg/ml〜約1000μg/mlを最終濃度で含有することができる。一実施形態では、本明細書でさらに述べるように、これらの抗菌剤は、マイコバクテリウムの有無を決定することが所望される試料を培地に接種する前に基本培地に添加することのできる、別個のサプリメントを含むことができる。
【0041】
本発明によれば、一実施形態では、本発明の培地は、Middlebrook 7H9、ウシ血清アルブミン、α-ケトグルタラート、カゼイン、カタラーゼおよび/または水のうちの1つまたは複数を含むことができる。培地は、当業者にはマイコバクテリアの培養に恩恵のあるものとして知られる、1つまたは複数の付加的な栄養素および/または成分をさらに含むことができる。例えば、本発明の培地は、1つまたは複数の糖類または炭素源、窒素源、ミネラル類、塩類、アミノ酸類、ビタミン類、プリン・ピリミジン類、脂肪酸類ならびにその他の化合物を付加的に含むことができる。別の実施形態では、本発明の培地は、Middlebrook 7H9、グリセリン、ステアリン酸(例えばステアリン酸ナトリウム)、ミリスチン酸(またはその塩)、パルミチン酸(例えばパルミチン酸ナトリウム)、オレイン酸(例えばオレイン酸ナトリウム)、ウシ血清アルブミン、カゼイン(例えばカゼインの膵液消化物)、カタラーゼ、ピルビン酸ナトリウム、α‐ケトグルタラート、アマランスおよび水を含む。
【0042】
さらに別の実施形態では、培地はさらに1つまたは複数の抗菌剤(例えばホスホマイシン)を含む。例えば、培地は、ポリミキシンB、アズロシリン、バンコマイシン、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよび/またはホスホマイシンのうちの1つまたは複数から選択した抗菌剤の混合物をさらに含むことができる。培地はポリミキシンB、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンを含む抗生物質の混合物をさらに含むことができる。
【0043】
さらにまた別の実施形態では、培地は約5.5〜約7.5pH、約6.0〜約7.0pH、または約6.5〜約7.0pHに調整することができる。本発明によれば、本培地は従来の/旧いマイコバクテリア培地と比較すると、マイコバクテリア増殖の検出時間(TTD)を少なくとも約0.5日、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約5日または少なくとも約7日向上すなわち低減させる。
【0044】
マイコバクテリアの増強された検出の方法
一般に、本発明は生体試料内に存在する1つまたは複数のマイコバクテリウムの増殖を検出する方法に関するものである。試験する試料には、マイコバクテリウムの存在が疑われる臨床試料と非臨床試料の両方が含まれる。試験する臨床試料には、典型的には臨床実験室で試験される任意のタイプの試料が含まれ、これらの試料としては、以下のものに限定しないが、血液、唾液、吸引液、スワッブおよびスワッブすすぎ液(swab rinsates)および体液などがある。一実施形態では、試料は無菌体の検体または消化、除染された臨床検体とすることができる。試験する非臨床試料は高度に可変性のある物質を含むことができ、この物質としては、以下のものに限定しないが、食品、飲料、医薬品、化粧品、水、空気、土、植物、血液製剤(血小板を含む)、ドナー臓器または組織試料などがある。
【0045】
一態様では、本発明はマイコバクテリアの増強された増殖および/または検出の方法に関するものであり、本方法は、マイコバクテリアを含有すると疑われる試料を、脂肪酸を含まないBSA、1つまたは複数の長鎖脂肪酸および随意に抗菌サプリメントを含む培地に添加するステップと、該培地を前記マイコバクテリアの増殖に適した条件にさらすステップとを含み、前記脂肪酸を含まないBSAおよび前記1つまたは複数の長鎖脂肪酸は前記マイコバクテリアの増殖を増強させる。脂肪酸を含まないBSAおよび1つまたは複数の長鎖脂肪酸のNSにおける使用は、偽陽性の表示(readings)の著しい低減をもたらすことを発見した。さらに本明細書に示すように(実施例1および図1A〜図1C参照)、脂肪酸を含まないBSAの使用および長鎖脂肪酸の培地への補給は、ヒト型結核菌(図1A参照)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(図1B参照)およびマイコバクテリウム・アビウム(図1C参照)の増殖および検出の検出時間(TTD)を2〜2.5日向上させることとなった。一実施形態では、培地は前記マイコバクテリアの増殖を増強させるために有効な量のα-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体またはα-ケトグルタラート誘導体を含む添加剤をさらに含み、この培地を前記マイコバクテリアの増殖に適した条件にさらす。α-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体および/またはα-ケトグルタラート誘導体を培地内で使用することにより、本発明の方法において、マイコバクテリアの増殖のTTDを、従来の/旧い培地(すなわち、α-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体または誘導体を含まない培地)を使用するよりも、少なくとも約半日、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約5日または少なくとも約7日早く検出できることを思いがけなく発見した。実施例2と図2に示すように、α-ケトグルタラートを含有する培地内のマイコバクテリア菌株の検出時間(TTD)は、α-ケトグルタラートを含有しない培地のTTDと比較しておよそ2日間向上、すなわち低減された。
【0046】
本発明はマイコバクテリウム種によって引き起こされる感染の診断方法にも関するものであり、本方法は、(a)培地を提供するステップと、(b)該培地に栄養サプリメントを添加するステップであって、該栄養サプリメント添加剤は脂肪酸を含まないBSAと随意に1つまたは複数の長鎖脂肪酸とを含むステップと、(c)前記マイコバクテリウム種の有無が決定される試料を添加するステップと、(d)前記マイコバクテリウム種の存在について前記培地を分析するステップであって、前記マイコバクテリウム種の存在の発見は前記感染の陽性診断を示すステップと、を含む。脂肪酸を含まないBSAと1つまたは複数の長鎖脂肪酸をNSで使用すると、偽陽性の表示(readings)の著しい低減がもたらされることを発見した。さらに本明細書に示すように(実施例1および図1A〜1C参照)、脂肪酸を含まないBSAの使用および長鎖脂肪酸の培地への補給は、ヒト型結核菌(図1A参照)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(図1B参照)およびマイコバクテリウム・アビウム(図1C参照)の増殖および検出の検出時間(TTD)を2〜2.5日向上させることとなった。一実施形態では、サプリメントはα-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体および/またはα-ケトグルタラート誘導体をさらに含むことができる。上述のように、α-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体またはα-ケトグルタラート誘導体の培地での使用により、本発明の方法において、TTDを少なくとも約半日、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約5日または少なくとも約7日低減させることができる。本方法によれば、栄養サプリメント(NS)には随意に脂肪酸を含まないBSAを使用してもよく、NSは1つまたは複数の長鎖脂肪酸(例えば、10以上の炭素元素を有する脂肪酸)をさらに含むことができる。
【0047】
別の実施形態では、本発明はマイコバクテリア培地内の細菌汚染を阻害する方法に関するものであり、本方法は、マイコバクテリアの増殖に適した条件において、汚染細菌の増殖を阻害するのに十分な量のホスホマイシンを含む培地内でマイコバクテリアを含有すると疑われる試料を培養するステップを含む。本方法によれば、1つまたは複数の抗菌剤または抗菌物質を、試験される生体試料を接種する前または接種と同時に培地に添加することができる。続いて、培地および試料を十分な時間、十分な温度で培養して、試験試料内に存在するマイコバクテリアの増殖および検出を可能にする。別の実施形態では、1つまたは複数の抗菌薬をマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)に含めることができ、このサプリメントは、培地へ試験される試料を接種する前または接種と同時に基本培地に添加することができる。上述のように、MASはポリミキシンB、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0048】
さらにまた別の実施形態では、本発明は、向上されたBacT/ALERT(登録商標)MP試薬システムまたはキットを生体試料内に存在するマイコバクテリアの増殖および/または検出に使用する方法に関するものである。本実施形態によれば、本明細書にさらに詳しく説明するように、向上されたBacT/ALERT(登録商標)MP試薬システムは、マイコバクテリア増殖のための基本培地を含む向上されたMP培養瓶、新規の栄養サプリメント(NS)および新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)を含む。栄養サプリメント(NS)および/またはマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)は、マイコバクテリアの存在について試験される生体試料を培地に接種する前または接種と同時に基本培地に添加することができる。接種された瓶は十分な時間、十分な温度で培養し、生体試料内に存在するマイコバクテリアの増殖および/または検出を可能にする。一実施形態では、新規のMP培養瓶の培地は熱不安定性成分を含まないので、新規のMP培養瓶をオートクレーブ可能にすることができる。
【0049】
MP試薬キット
一態様では、本発明はマイコバクテリアの増強された増殖および検出のためのMP試薬キットに関するものである。MP試薬キットは基本マイコバクテリウム培地を有する培養瓶、栄養サプリメント(NS)および/またはマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)を含む。
【0050】
培養瓶
一実施形態では、本発明は新規かつ改善されたマイコバクテリウム培地を含む瓶または容器(すなわち培養瓶)に関する。一般に、培養瓶は当技術分野において周知である任意の設計またはサイズとすることができ、マイコバクテリアの増殖および/または検出に恩恵のある任意の既知の培地を含むことができる。一実施形態では、培養瓶はMiddlebrook 7H9ブロスおよび/または水を基本培地として含む。従来の/旧いMP瓶は、マイコバクテリウムの増殖および検出のために、約6.8pHの液体培地を使用する。同様に、新規の向上されたMP培養瓶は液体すなわちブロス基本培地を有し、基本培地には、新規の栄養サプリメントおよび/または新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)を添加することができる。培地は約5.5〜約7.5pH、約6.0〜約7.0pHまたは約6.5〜約7.0pHに調整することができる。別の実施形態では、MP培養瓶の培地のpHは約6.8である。
【0051】
本発明者は驚くことに、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシ肝臓カタラーゼおよび/またはカゼインを含む特定の増殖栄養素を培地瓶から取り除くことにより、その瓶を最終滅菌することができることを発見した。例えば、熱不安定性成分を取り除くことにより、瓶をオートクレーブすることができる。瓶の最終滅菌に関する向上には、向上された保管と出荷がある。例えば、最終滅菌された瓶(例えばオートクレーブされた瓶)は室温で保存と出荷を行うことができ、著しいコスト削減をもたらす。この最終滅菌された瓶はさらに貯蔵寿命の向上および/または滅菌レベル(SAL)の増大をもたらす。
【0052】
栄養サプリメント(NS)
本発明はまた、マイコバクテリアの増殖および検出を増強させるために本発明の培養瓶に添加することのできる、向上された栄養サプリメント(NS)に関するものである。一般に栄養サプリメント(NS)は、マイコバクテリアを増殖させるための基本培地を含有する培養瓶に、該瓶および培地にマイコバクテリウムの存在の検出が所望される試料を接種する前に添加する。
【0053】
本発明の向上された栄養サプリメント(NS)は、マイコバクテリアの増殖に恩恵のある任意の、既知の栄養素またはサプリメントを含むことができる。例えば栄養サプリメントは1つまたは複数の炭素源、窒素源、糖類、塩類、栄養素、タンパク質類、アミノ酸類、脂肪酸類および/または当業者に周知のその他の栄養素を含むことができる。
【0054】
本発明によれば、一実施形態では、栄養サプリメントはさらに、α-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体および/またはα-ケトグルタラート誘導体を含む。一般に、任意の、既知のα-ケトグルタラート前駆体または誘導体を使用することができ、これらには、以下のものに限定しないが、グルタミン酸、イソクエン酸、オキサロスクシナートまたはそれらの混合物がある。α-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体および/またはα-ケトグルタラート誘導体は、培養瓶の培地に添加した後に、α-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体および/またはα-ケトグルタラート誘導体の最終濃度が約0.1g/L〜約50g/Lとなるように、十分な量で栄養サプリメントに存在することができる。
【0055】
本発明の別の実施形態によれば、栄養サプリメントは1つまたは複数の飽和または不飽和長鎖脂肪酸またはその塩をさらに含むことができる。一実施形態では、10以上の炭素原子を有する1つまたは複数の長鎖脂肪酸を利用することが好適である。一般に、任意の、既知の長鎖脂肪酸を使用することができ、これらには、以下のものに限定しないが、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびそれらの塩がある。別の実施形態では、短鎖または中鎖の脂肪酸を使用することは避けることが好適である。例えば、本実施形態によれば、8以下の炭素原子を有する脂肪酸(例えばカプリル酸)の使用は避けるべきである。
【0056】
別の態様では、上述のように、本発明の栄養サプリメントでは、脂肪酸を含まないウシ血清アルブミン(BSA)を使用することが好適である。先にも述べたように、脂肪酸を含まないBSAの使用は、試薬に基づく偽陽性を大幅に低減または削減させることができる。
【0057】
一実施形態では、栄養サプリメント(NS)はグリコール、1つまたは複数の長鎖脂肪酸、脂肪酸を含まないウシ血清アルブミン(BSA)、カゼインの膵液消化物、ピルビン酸ナトリウム、アマランスおよびα-ケトグルタラートを含む。栄養サプリメントは基本培地と共に培養瓶に添加することができる、または、試験試料の接種のすぐ前に培養瓶に添加することができる。あるいは、栄養サプリメントはマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)を再懸濁するために使用することができ、その後に培地瓶に添加する。
【0058】
マイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)
本発明は、マイコバクテリアの増殖と検出を増強するために本発明の培養瓶に添加することのできる、向上されたマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)にも関するものである。本発明者は、培地においてマイコバクテリアの増殖を増強させる、向上されたマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)を開発した。向上されたMASは、マイコバクテリアの増殖を抑制または阻害せずに、汚染呼吸器内細菌叢(CRF)の増殖を抑制または阻害するのに効果的である。汚染呼吸器内細菌叢(CRF)としては、以下のものに限定しないが、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス、フェカリス菌、肺炎桿菌、人口呼吸器肺炎菌、カンジダ・トロピカリス、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)がある。一実施形態では、マイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)は、マイコバクテリアの基本培地を含む培養瓶に、該瓶と培地にマイコバクテリウムの存在の検出が所望される試料を接種する前に、直接添加することができる。別の実施形態では、栄養サプリメント(NS)は、培地瓶に添加する前に、抗菌サプリメント(MAS)を再懸濁するために使用することができる。
【0059】
一般に、任意の、既知の抗菌剤または抗菌物質を使用することができ、これには、以下のものに限定しないが、抗生物質、静菌剤、殺菌剤、抗菌薬、抗ウィルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤および/または抗寄生虫剤がある。しかしながら好適な抗菌剤には、マイコバクテリアの増殖を抑制または阻害せずに汚染呼吸器内細菌叢(CRF)の増殖を抑制または阻害する任意の抗菌剤がある。一実施形態では、MASは1つまたは複数の抗菌薬を前記培地の細菌汚染を阻害するのに十分な量で含む。
【0060】
別の実施形態では、本発明の培地は1つまたは複数の抗生物質を含む。有用な抗生物質には例えば、CRFの増殖を抑制する抗生物質があり、これには、以下のものに限定しないが、ポリミキシンB(POLY B)、バンコマイシン(VAN)、アズロシリン(AZL)、アムホテリシンB(AMP B)、ナリジクス酸(NA)、トリメトプリム(TMP)およびホスホマイシン(FOS)がある。マイコバクテリア感染の治療に使用される抗生物質で、マイコバクテリアの増殖を死滅、抑制または阻害するものは、本発明の抗菌サプリメントでは有用でなく、これには、例えば、イソニアジド、リファンピン、ピラジナミド、ストレプトマイシンおよびエタンブトールがある。先にも述べたように、本譲受人は、MB/BacT(登録商標)抗菌サプリメントの市販および販売を行っており、このサプリメントは、アムホテリシンB(0.0180% w/v)、アズロシリン(0.0034% w/v)、ナリジクス酸(0.0400% w/v)、ポリミキシンB(10000単位)、トリメトプリム(0.00105% w/v)およびバンコマイシン(0.0005% w/v)を含有するように処方された凍結乾燥サプリメントである。しかしながら本発明者は、従来の/旧いMB/BacT(登録商標)抗菌サプリメントと比較して、ホスホマイシンをアズロシリンとバンコマイシンの代わりに補給すると、培地においてマイコバクテリアの増強された増殖と検出のために使用することのできる抗菌サプリメント(MAS)を生成することができることを思いがけずに発見した。
【0061】
よって一実施形態では、向上されたマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)は、アムホテリシンB(AMP B)、ポリミキシンB(POLY B)、トリメトプリム(TMP)、ナリジクス酸(NA)およびホスホマイシン(FOS)を含有するように処方された凍結乾燥サプリメントを含む。マイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)は、最終培地がポリミキシンB約400単位/ml〜約2000単位/ml、アムホテリシンB約50μg/ml〜約400μg/ml、ナリジクス酸約100μg/ml〜約800μg/ml、トリメトプリム約10μg/ml〜約100μg/mlおよびホスホマイシン約100μg/ml〜約1000μg/mlの最終濃度を含有するように処方することができる。
【0062】
またさらに別の実施形態では、栄養サプリメント(NS)および抗菌サプリメント(MAS)は、最終滅菌された培地瓶に添加することのできる、別個のキットを形成することができる。本実施形態では、NS/MASキットは、BacT/ALERT MP瓶の添加剤として、別途市販および販売を行うことができる。
【0063】
下記の実施例は本発明のさらなる特徴を説明するものであるが、本発明の範囲を制限することを何ら意図するものではない。
【実施例】
【0064】
実施例1:脂肪酸の補給のある場合とない場合の種々のマイコバクテリア菌株のTTD
マイコバクテリアの増殖に対する長鎖脂肪酸(FA)の効果を評価するために、脂肪酸を含まない(FAF)BSAをProliant社(アイオワ州エームズ)から選択した。5つの長鎖脂肪酸、すなわちミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1)およびリノール酸(C18:2)を、FAプロファイルおよび増殖能力に基づき、可能なFAサプリメントとして認定した。FAF BSAを補給したサプリメントの新規の処方を調製し(新規のサプリメント処方については表1を参照のこと)、5つのFAの補給のある場合とない場合とで試験を行った。FA補給の目標レベルは、過去の評価から得られたFA含有量に基づく。使用したFAF BSAの濃度は10g/Lであった。新規のサプリメントの濾過中のFAの損失は、脂肪酸メチルエステル(FAME)の分析によって決定した。0.45μmフィルタで濾過した後のFAの回収率は80%超と観察された。この処方の分析により、高レベルのBSAはFAの溶解化とBSA-FA結合による安定性を増強させることが証明された(データは示さず)。また分析により、BSAの含有量が下がると、FAの結合が弱くなり、濾過中のFA損失が増えることが証明された。
【0065】
新規のオートクレーブ可能な培養瓶は、従来の、または旧い瓶に存在する培地の熱不安定性成分を従来の/旧いRFに移すことによって考案した。新規のオートクレーブ可能な培養瓶はMiddlebrook 7H9を含む。新規のRFサプリメントは、従来の、または旧いRFの組成を使って調製したが、旧いMP瓶処方から移された熱不安定性成分に適合させるために変更を加えた。下記の表1は新規のオートクレーブ可能なMP瓶(上述のような)および新規のサプリメントの組成を示す。この新規のサプリメントで使用するBSAは、従来の/旧いRFで使用した従来のBSAではなく、脂肪酸を含まない(FAF)BSA(Proliant社、アイオワ州エームズ)であった。
【0066】
【表1】
新規のMP瓶および新規のサプリメント処方
【0067】
増殖能力については、5つの微生物(ヒト型結核菌、マイコバクテリウム・アビウムおよびマイコバクテリウム・イントラセルラーレ)を試験した。従来のMAS処方をこれらの実験に使用した。FA補給のある場合とない場合の新規のサプリメントおよび従来の/旧いRFを、従来の、または旧いMB/BacT抗菌サプリメント(従来の/旧いMAS)(バイオメリュー社)の凍結乾燥粉末の再水和に使用した。従来の/旧いMASは、ポリミキシンB(POLY B)1000単位/ml、アムホテリシンB(AMP B)180μg/ml、ナリジクス酸(NA)400μg/ml、トリメトプリム(TMP)10.5μg/ml、アズロシリン(AZL)34μg/mlおよびバンコマイシン(VAN)5μg/mlを含有する。
【0068】
新規のサプリメントに関しては、新規のオートクレーブ可能なBacT/ALERT(登録商標)MP瓶(上述のような)を使用し、従来の/旧いRFに関しては、従来の/旧いMP瓶を使用した。新規の、および従来の/旧いMP培養瓶(バイオメリュー社)にマイコバクテリア培地を接種する前に、FAの補給のある、またはない新規のサプリメント0.5mlまたは従来の/旧いRF0.5mlを、BacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶の1つめのセットに添加した。(FAの補給のある、またはない新規のサプリメントおよび従来の/旧いRFを使って)再水和した従来のMASをMP培養瓶の2つめのセットに添加した。およそ0.5×103CFU/mlを接種した後、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレおよびヒト型結核菌の培地に関して、これらの瓶内の増殖(増殖のTTD)を比較した。Middlebrook 7H10寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、培地の接種量と純度を検証した。接種されたMP瓶は、BacT/ALERT(登録商標)3D(バイオメリュー社)ノンロッキングシステムに35〜37℃で35日間装填した。BacT/ALERT(登録商標)装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。結果を表2および図1A〜図1Cに示す。
【0069】
【表2】
ヒト型結核菌、マイコバクテリウム・イントラセルラーレおよびマイコバクテリウム・アビウムのTTD結果
【0070】
図1Aは、長鎖脂肪酸の補給のある場合とない場合のFAを含まない(FAF)BSAを含有する培地におけるヒト型結核菌のTTD結果を示す。図1Aに示すように、FAの補給のないBSAを含有する試料と比較して、FAを補給したFAを含まないBSAを含有する試料にはTTDの低減が見られた。
【0071】
図1Bは、長鎖脂肪酸の補給のある場合とない場合のFAを含まない(FAF)BSAを含有する培地におけるマイコバクテリウム・イントラセルラーレのTTD結果を示す。図1Bに示すように、FAの補給のないBSAを含有する試料と比較して、FAを補給したFAを含まないBSAを含有する試料にはTTDの低減が見られた。
【0072】
図1Cは、長鎖脂肪酸の補給のある場合とない場合のFAを含まない(FAF)BSAを含有する培地におけるマイコバクテリウム・アビウムのTTD結果を示す。図1Cに示すように、FAの補給のないBSAを含有する試料と比較して、FAを補給したFAを含まないBSAを含有する試料にはTTDの低減が見られた。
【0073】
この結果によって、マイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)と新規の栄養サプリメント(NS)の存在する場合には、ヒト型結核菌、マイコバクテリウム・イントラセルラーレおよびマイコバクテリウム・アビウムのTTDに2〜2.5日の向上のあることが証明された。上述のように、新規のNSは、脂肪酸を含まないBSAおよび補給された長鎖脂肪酸を含む。
【0074】
実施例2:α-ケトグルタラートを使った場合と使わない場合のマイコバクテリア菌株のTTD
マイコバクテリアのTTDをさらに向上させるために、マイコバクテリア細胞経路内の二酸化炭素生成酵素の基質および/または補因子をさらなる研究のために選択した。これらの基質および/または補因子には、α-ケトグルタラート、イソクエン酸、L‐リンゴ酸、オキサロ酢酸、乳酸およびL‐アルギニンがある。FAを含む新規のサプリメントを上述のように調製し、フィルタ滅菌した。基質を新規のサプリメントに異なる濃度で添加した。
【0075】
4種のマイコバクテリアを0.5×l03CFU/mlで試験した。α-ケトグルタラートの異なる濃度の効果を、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレおよびヒト型結核菌の培地の増殖(増殖のTTD)に関して調べた。新規のオートクレーブ可能なBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶を使用した(上述に示す)。MP培養瓶にマイコバクテリア培地を接種する前に、種々の量のα-ケトグルタラートを含む新規のサプリメント5mlを新規のBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶に添加した。Middlebrook 7H10寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、培地の接種量と純度を検証した。接種されたMP瓶は、BacT/ALERT(登録商標)3Dノンロッキングシステムに35〜37℃で35日間装填した。BacT/ALERT(登録商標)装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。
【0076】
5gおよび15g/Lの2つの濃度のα-ケトグルタラートを含む主要なマイコバクテリア種のTTDの結果を表3および図2に示す。表3および図2は、α-ケトグルタラート(5g/Lまたは15g/L)を培地に添加することにより、α-ケトグルタラートを含有しない培地と比較して、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレおよびヒト型結核菌の培地における増殖の検出時間(TTD)がおよそ2日間低減されたことを示している。
【0077】
異なる濃度のイソクエン酸、L‐リンゴ酸、オキサロ酢酸、乳酸およびL‐アルギニンを使って同様の実験を行った。しかしながら、α-ケトグルタラートとは異なり、これらのその他の基質はTTDの低減は示さなかった(データは示さず)。
【0078】
【表3】
α-ケトグルタラートを使った場合と使わない場合のマイコバクテリア種のTTD
【0079】
実施例3:従来のMASを使った場合のマイコバクテリア種のTTD
ポリミキシンB(POLY B)、アムホテリシンB(AMP B)、ナリジクス酸(NA)、トリメトプリム(TMP)、アズロシリン(AZL)およびバンコマイシン(VAN)を含む6つの薬物の効果を研究することによって、マイコバクテリアの増殖に対する従来のMASの有効性を決定した。これらの研究はまた、マイコバクテリアの増殖に悪影響を及ぼす薬物とその濃度を同定するためにも行った。
【0080】
増殖能力に関して、従来の/旧いRFを調製し、濃度の異なる6つの抗菌薬を添加した。濃度は従来のMASの濃度よりも25〜50%高いか、または低いレベルに選択した。従来のMASの濃度は、ポリミキシンB(POLY B)1000単位/ml、アムホテリシンB(AMP B)180μg/ml、ナリジクス酸(NA)400μg/ml、トリメトプリム(TMP)10.5μg/ml、アズロシリン(AZL)34μg/ml、バンコマイシン(VAN)5μg/mlである。
【0081】
アズロシリンを使って、培地内におけるマイコバクテリウム・イントラセルラーレ、カンサシ菌、マイコバクテリウム・スクロフラセウムおよびヒト型結核菌の増殖(増殖のTTD)を決定した。唾液試料(汚染呼吸器内細菌叢すなわちCRFと呼ばれる)に存在するグラム陽性菌、グラム陰性菌および酵母菌の抑制も同じ処方と並行して研究した(データは示さず)。
【0082】
この評価には、従来の、または旧いMP処方(バイオメリュー社)を使用した。MP培養瓶にマイコバクテリアまたはその他の細菌/イースト菌培地を接種する前に、異なる薬物を使った従来の/旧いRF0.5mlを従来のBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶(バイオメリュー社)に添加した。Middlebrook 7H10または羊血液またはトリプチックソイの寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、培地の接種量と純度を検証した。接種されたMP瓶は、マイコバクテリア培地に関しては、BacT/ALERT(登録商標)3D(バイオメリュー社)ノンロッキングシステムに35〜37℃で35日間装填し、他の培地に関しては、最大15日間装填した。BacT/ALERT(登録商標)装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。結果を表4および表5ならびに図3および図4に示す。
【0083】
表4と図3に示すように、培地におけるアズロシリンの使用は、抗菌剤を含有しない培地と比較すると、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ、カンサシ菌、マイコバクテリウム・スクロフラセウム、およびヒト型結核菌の増殖(増殖のTTDによって決定される)に悪影響を及ぼした。
【0084】
培地内でバンコマイシンを使って、カンサシ菌、マイコバクテリウム・スクロフラセウム、およびヒト型結核菌に関する増殖(増殖のTTD)を決定した。
【0085】
表5および図4に示すように、培地におけるバンコマイシンの使用は、抗菌剤を含有しない培地と比較すると、カンサシ菌、マイコバクテリウム・スクロフラセウムおよびヒト型結核菌の増殖(増殖のTTD)に悪影響を及ぼした。
【0086】
培地におけるその他の薬物の使用は、より高い濃度で試験してもマイコバクテリアの増殖に悪影響を与えなかった(データは示さず)。薬物の濃度を上げると、グラム陰性菌のいくつかの例外を除き、CRFのほとんどを10〜15日間抑制することができた(データは示さず)。
【0087】
【表4】
アズロシリン(AZL)の存在下でのマイコバクテリア種のTTD
【0088】
【表5】
バンコマイシン(VAN)の存在下でのマイコバクテリア種のTTD
【0089】
実施例4:種々のMAS処方を使った種々のマイコバクテリウム種のTTD
マイコバクテリアのTTDを向上させるために、種々の薬物をスクリーニングして汚染呼吸器内細菌叢(CRF)を抑制させる能力について調べた。これらの評価から、ホスホマイシンがCRFの抑制には一番の選択であると考えられた。
【0090】
新規のMAS混合物のための最良の処方を決定するために研究を行い、異なる濃度のTMP、NA、FOSおよびPOLY Bを含有させて種々の処方を試験した。下記の処方、すなわち(1)NS:新規の瓶+栄養サプリメント(NS)、(2)RF:従来の/旧いMP瓶+従来の/旧い再構成液、(3)処方1:NS+TMP(30μg/ml)、NA(600μg/ml)、POLY B(1250単位/ml)、FOS(600μg/ml)、Amp B(180μg/ml‐PIまたはIFU)、(4)処方2:NS+TMP(30μg/ml)、NA(400μg/ml‐PIまたはIFU)、POLY B(1250単位/ml)、FOS(600μg/ml)、Amp B(180μg/ml‐PIまたはIFU)、(5)処方3:NS+TMP(30μg/ml)、NA(400μg/ml‐PIまたはIFU)、POLY B(1500単位/ml)、FOS(600μg/ml)、Amp B(180μg/ml‐PIまたはIFU)、(6)処方4:NS+TMP(30μg/ml)、NA(600μg/ml)、POLY B(1250単位/ml)、FOS(600μg/ml)、Amp B(180μg/ml‐PIまたはIFU)および(7)処方5:NS+TMP(50μg/ml)、NA(400μg/ml‐NS+TMP)、POLY B(1250単位/ml)、FOS(600μg/ml)、Amp B(180μg/ml‐PIまたはIFU)を評価した。ここで、TMPはトリメトプリム、NAはナリジクス酸、POLY BはポリミキシンB、FOSはホスホマイシン、Amp BはアムホテリシンBである。
【0091】
脂肪酸を含まない(FAF)BSA、5つの長鎖脂肪酸およびα-ケトグルタラートを含有する栄養サプリメント(NS)と呼ばれる新規のサプリメントを先に説明したように調製し、フィルタ滅菌した。新規のオートクレーブ可能なMP培養瓶(上述に示す)をこの研究のために使用した。表6は新規のMP培養瓶および栄養サプリメント(NS)の組成を示す。
【0092】
【表6】
新規の培養瓶および新規の栄養サプリメント処方
【0093】
新規のNSにはオートクレーブされた、または新規のBacT/ALERT(登録商標)MP瓶を使用し(上述に示す)、従来の/旧いRFには従来の/旧いMP瓶(バイオメリュー社)を使用した。従来のまたは新規のMP培養瓶にマイコバクテリアまたは他の細菌/イースト菌培地を接種する前に、栄養サプリメント(新規のNS)0.5mlまたは異なる薬物を使った従来の/旧いRF0.5mlをBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶の1つめのセットに添加した。従来のMAS(従来の/旧いRFを使用)および新規のMAS処方(NSを使用)をMP培養瓶の2つめのセットに添加した。マイコバクテリア種0.5×l03CFU/mlおよびCRF培地0.5×l05CFU/mlで実験を行った。Middlebrook 7H10または羊血液またはトリプチックソイの寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、接種量と培地純度を検証した。接種されたMP瓶は、BacT/ALERT(登録商標)3D(バイオメリュー社)ノンロッキングシステムに35〜37℃でマイコバクテリア培地に関しては35日間装填し、他の培地に関しては最大で15日間装填した。BacT/ALERT(登録商標)装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。結果を表7および図5A〜図5Fに示す。
【0094】
従来の/旧いMASと比較して、新規のMAS処方は全てグラム陰性菌のより優れた抑制を達成した。従来の/旧いMASと比較して、新規の処方では、スタヒロコッカス種とエンテロコッカス種に飛躍的な増殖があった。
【0095】
表7および図5Aは種々のMAS処方を使ったヒト型結核菌18283のTTDを示す。5つの新規の処方は全て、MASの従来の/旧い処方と比較すると、TTDの向上を示した。新規のMAS処方を使ったヒト型結核菌18283のTTDの向上はおよそ6〜8日であった。
【0096】
表7および図5Bは、種々のMAS処方を使ったヒト型結核菌27294のTTDを示す。5つの新規の処方は全て、MASの従来の/旧い処方と比較すると、TTDの向上を示した。新規のMAS処方を使ったヒト型結核菌27294のTTDの向上はおよそ3〜4日であった。
【0097】
表7および図5Cは種々のMAS処方を使ったマイコバクテリウム・アビウム569のTTDを示す。5つの新規の処方は全て、MASの従来の/旧い処方と比較すると、TTDの向上を示した。新規のMAS処方を使ったマイコバクテリウム・アビウム569のTTDの向上はおよそ6〜7日であった。
【0098】
表7およびと図5Dは、種々のMAS処方を使ったマイコバクテリウム・イントラセルラーレ13950のTTDを示す。5つの新規の処方は全て、MASの従来の/旧い処方と比較すると、TTDの向上を示した。新規のMAS処方を使ったマイコバクテリウム・イントラセルラーレ13950のTTDの向上はおよそ8〜9日であった。
【0099】
表7および図5Eは、種々のMAS処方を使ったマイコバクテリウム・スクロフラセウム19981のTTDを示す。5つの新規の処方は全て、MASの従来の/旧い処方と比較すると、TTDの向上を示した。新規のMAS処方を使ったマイコバクテリウム・スクロフラセウム19981におけるTTDの向上はおよそ6〜7日であった。とりわけマイコバクテリウム・スクロフラセウム19981について試験した5つの試料のうちの2つは、従来の/旧いMAS処方では増殖が見られなかった。
【0100】
表7と図5Fは種々のMAS処方を使ったカンサシ菌12478のTTDを示す。5つの新規の処方は全て、MASの従来の/旧い処方と比較すると、TTDの向上を示した。従来の/旧いMAS処方を使って検出した増殖のない場合と比較すると、新規のMASを使った場合、カンサシ菌12478のTTD検出はおよそ13〜14日であった。
【0101】
【表7】
様々な種のTTD
【0102】
実施例5:ヒト型結核菌複合体の増殖のTTDに関する以前のMAS処方と新規のMAS処方との比較
さらなる試験のために、新規のMP瓶の処方と栄養サプリメントおよび新規のMASの処方5とを選択した。この研究はマイコバクテリウム・アフリカヌム、ウシ型結核菌、ネズミ型結核菌およびヒト型結核菌を含むヒト型結核菌複合体菌株によって行った。処方5の成分は、NS+TMP(50μg/ml)、NA(400μg/ml‐PIまたはIFU)、POLY B(1250単位/ml)、FOS(600μg/ml)、Amp B(180μg/ml‐PIまたはIFU)であった。
【0103】
新規のMAS処方とNSには、新規のオートクレーブしたBacT/ALERT(登録商標)MP瓶(上述に示す)を使用し、従来の/旧いRFには、従来の/旧いMP瓶(バイオメリュー社)を使用した。従来のまたは新規のMP培養瓶にマイコバクテリア培地を接種する前に、栄養サプリメント(新規のNS)0.5mlまたは異なる薬物を使った従来の/旧いRF0.5mlをBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶の1つめのセットに添加した。従来のMAS(従来の/旧いRFを使用)および新規のMAS処方(NSを使用)をMP培養瓶の2つめのセットに添加した。
【0104】
マイコバクテリアの接種量は0.5×l03CFU/mlであった。Middlebrook 7H10または羊血液またはトリプチックソイの寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、培地の接種量および純度を検証した。マイコバクテリア培地に関しては、接種されたMP瓶をBacT/ALERT(登録商標)3D(バイオメリュー社)ノンロッキングシステムに35〜37℃で35日間装填した。BacT/ALERT装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。
【0105】
従来の/旧いRFおよびMAS(RF+従来の/旧いMAS)と新規の栄養サプリメントおよび新規のMAS(NS+新規のMAS)とを比較して、ヒト型結核菌複合体菌株の増殖(増殖のTTD)を決定した。TTDは、RF+従来の/旧いMAS培地およびNS+新規のMAS培地内の5つのヒト型結核菌複合体菌株のうちの4つ、すなわちマイコバクテリウム・アフリカヌム、ウシ型結核菌、ネズミ型結核菌およびヒト型結核菌に関して決定した。結果を表8および図6に示す。
【0106】
表8および図6に示すように、NS+新規のMASは、RF+従来の/旧いMASと比較すると、ヒト型結核菌複合体菌株に関する増殖のTTDにおよそ1〜10日の向上を示した。
【0107】
【表8】
ヒト型結核菌複合体のTTD
【0108】
実施例6:結核菌以外のマイコバクテリア(MOTT)の増殖のTTDに関する以前のMAS処方と新規のMAS処方との比較
さらなる試験のために、新規のMP瓶の処方と、栄養サプリメント(NS)および新規のMASの処方5とを選択した。この研究は、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ、カンサシ菌およびマイコバクテリウム・スクロフラセウムを含む、結核菌以外のマイコバクテリア(MOTT)の菌株によって行った。処方5の組成は、NS+TMP(50μg/ml)、NA(400μg/ml‐PIまたはIFU)、POLY B(1250単位/ml)、FOS(600μg/ml)、Amp B(180μg/ml‐PIまたはIFU)であった。
【0109】
新規の処方とNSには、オートクレーブした、または新規のBacT/ALERT(登録商標)MP瓶(上述に示す)を使用し、従来の/旧いRFには、従来の/旧いMP瓶(バイオメリュー社)を使用した。旧いまたは新規のMP培養瓶にマイコバクテリア培地を接種する前に、栄養サプリメント(新規のNS)0.5mlまたは異なる薬物を使った従来の/旧いRF0.5mlをBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶の1つめのセットに添加した。従来のMAS(従来の/旧いRFを使用)および新規のMAS処方(NSを使用)をMP培養瓶の2つめのセットに添加した。
【0110】
マイコバクテリアの接種量は0.5×l03CFU/mlであった。Middlebrook 7H10または羊血液またはトリプチックソイの寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、培地の接種量と純度を検証した。マイコバクテリア培地に関して、接種されたMP瓶はBacT/ALERT(登録商標)3D(バイオメリュー社)ノンロッキングシステムに35〜37℃で35日間装填した。BacT/ALERT(登録商標)装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。結果を表9および図7に示す。
【0111】
表9および図7に示すように、NS+新規のMASは、RF+従来の/旧いMASと比較すると、結核菌以外のマイコバクテリア(MOTT)のTTDにおよそ1〜12日の向上が示された。
【0112】
【表9】
結核菌以外のマイコバクテリア(MOTT)のTTD
【0113】
実施例7:ヒト型結核菌の菌株におけるTTDに関する以前のMAS処方と異なるFOS濃度を使った2つの新規のMAS処方との比較
FOS濃度を600μg/mlから800μg/mlに増やして、CRFのより優れた抑制を達成するために、新規のMASの処方5をさらに精製した。次の研究は、0.5×l03CFU/mlで、10のヒト型結核菌の菌株を使って行った。10の結核菌の菌株は、4つのCDC分離株、5つの毒性ATCC菌株および1つのQC参考菌株から構成される。
【0114】
新規の処方と新規のNSには、オートクレーブした、または新規のBacT/ALERT(登録商標)MP瓶(上述に示す)を使用し、従来の/旧いRFには、従来の/旧いMP瓶(バイオメリュー社)を使用した。従来のまたは新規のMP培養瓶にマイコバクテリア培地を接種する前に、栄養サプリメント(新規のNS)0.5mlまたは異なる薬物を使った従来の/旧いRF0.5mlをBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶の1つめのセットに添加した。従来のMAS(従来の/旧いRFを使用)および新規のMAS処方(NSを使用)をMP培養瓶の2つめのセットに添加した。
【0115】
マイコバクテリアの接種量は0.5×l03CFU/mlであった。Middlebrook 7H10または羊血液またはトリプチックソイの寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、培地の接種量および純度を検証した。マイコバクテリア培地に関しては、接種されたMP瓶はBacT/ALERT(登録商標)3D(バイオメリュー社.)ノンロッキングシステムに35〜37℃で35日間装填した。BacT/ALERT(登録商標)装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。結果を表10に示す。
【0116】
表10に示すように、新規のMAS処方はRF+従来の/旧いMASと比較して、ヒト型結核菌の菌株のTTDにおよそ2〜8日の向上を示した。
【0117】
【表10】
600μg/ml(MAS 5)および800μg/ml(処方5+FOS200μg/ml)を含有する新規のMAS処方を使った種々のヒト型結核菌の菌株のTTD
【0118】
実施例8:汚染呼吸器内細菌叢(CRF)の抑制に関する、以前のMAS処方と異なるFOS濃度を有する2つの新規のMAS処方との比較
FOS濃度を600μg/mlから800μg/mlに増やして、CRFのより優れた抑制を達成するために、新規のMASの処方5をさらに精製した。従来の/旧いRFおよびMAS(RF+従来の/旧いMAS)と新規の栄養サプリメントおよび新規のMAS処方(NS+新規のMAS)とを比較して、種々のグラム陽性またはグラム陰性の細菌およびイースト菌培地に関して、増殖があるかない(NG)かを決定した。新規のMAS処方は、処方5+200μg/mlのFOS(合計で800μg/mlのFOS)を含有する。CRFは0.6×104CFU/mlで試験した。羊血液またはトリプチックソイの寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、培地の接種量と純度を検証した。全ての培地に関して、接種されたMP瓶をBacT/ALERT(登録商標)3D(バイオメリュー社)ノンロッキングシステムに35〜37℃で15日間装填した。BacT/ALERT(登録商標)装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。
【0119】
表11は、新規のMASの処方が従来の/旧いMAS処方と比較してCRFの増殖を抑制するにはより優れた処方であることを示している。
【0120】
【表11】
汚染呼吸器内細菌叢(CRF)の抑制を示す表
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年7月1日に出願された「マイコバクテリウムの増強された検出のための方法および培地」と題される米国仮特許出願第61/269,977号の恩恵を主張するものであり、これを本明細書に援用する。
【0002】
本発明は一般に、マイコバクテリウムの検出を改善するための培地および方法に関するものである。より具体的には、本発明は、培地におけるマイコバクテリウムの増殖の検出時間(TTD:time to detection)を向上すなわち低減させる培地および方法に対する種々の改善に関するものである。
【背景技術】
【0003】
マイコバクテリアは抗酸性、非運動性、グラム陽性桿菌と特徴付けられる細菌属である。この属には、マイコバクテリウム・アフリカヌム、マイコバクテリウム・アビウム、ウシ型結核菌、ウシ型結核菌−BCG、マイコバクテリウム・ケローネ、マイコバクテリウム・フォーチュイタム、マイコバクテリウム・ゴルドナエ、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ、カンサシ菌、ライ菌、ネズミ型結核菌、マイコバクテリウム・スクロフラセウム、ヨーネ菌およびヒト型結核菌を含む多くの種がある。マイコバクテリアの中には、人間にも動物にも病原性を持つものがあり、特にヒト型結核菌、ライ菌およびウシ型結核菌はそうである。その他のマイコバクテリア種は通常病原性はないが、たとえばAIDS患者などの免疫低下状態の個体に日和見感染を引き起こす。例えば、カンサシ菌、マイコバクテリウム・アビウムおよびマイコバクテリウム・イントラセルラーレによる感染は、免疫系が抑制された、または免疫系が不全の患者に何らかの肺病を引き起こすことがある。実際、1953年以降マイコバクテリア感染の報告症例はアメリカ合衆国内において増加しており、これらの症例の多くはAIDS感染症に関連するものである。
【0004】
臨床種におけるマイコバクテリウム種の検出は、臨床診断ツールとして重要である。歴史的に、ヒト型結核菌はこの属において唯一の臨床的意義を持つ病原体であると考えられてきた。ヒト型結核菌の薬剤耐性菌株の発生率の上昇により、この種を検出する必要性がさらに強調された。結核は世界的な流行病のあらゆる主要特性を示す。現在結核は世界中で3500万以上の人々を苦しめ、年間で400万人以上が亡くなっている。よって結核は世界中が大きな関心を持つ問題である。結核は、マイコバクテリア科の抗酸性、グラム陽性の結核菌である、ヒト型結核菌、ウシ型結核菌、マイコバクテリウム・アフリカヌムおよびネズミ型結核菌によって引き起こされる。ヒト型結核菌のいくつかの局所的な病原体菌株は、インドのマドラスおよびその他の街の患者から分離されてきた。これは毒性菌株であるヒト型結核菌H37Rvとはいくつかの点で異なる。
【0005】
しかしながらその他のマイコバクテリウム種も臨床的に重要である。これらは時折「MOTT:Mycobacterium other than tuberculosis:非結核性抗酸菌」と呼ばれ、一般にマイコバクテリウム・アビウム/イントラセルラーレ複合微生物(一般にMAICと呼ばれる、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ、ヨーネ菌)、マイコバクテリウム・ゴルドナエ、マイコバクテリウム・フォーチュイタム、マイコバクテリウム・ケローネ、マイコバクテリウム・ムコゲニカムおよびマイコバクテリウム種の混合物が臨床検体に含まれる。例えば、マイコバクテリウム・アビウム複合体(MAC:M. avium complex)細菌によって急増殖する日和見感染は、エイズおよびその他の免疫低下状態の個体に頻繁に発生することが証明されている。このような感染した個体では、少なくとも106MAC細胞/mlの唾液沈殿物が見つかっている。従って多くのマイコバクテリウム種を検出することのできる検出アッセイは臨床的に重要である。
【0006】
試料内のマイコバクテリウム種の検出および同定の多くの臨床方法では、細菌の物理的特性(例えば細菌の抗酸染色および顕微鏡による検出)、生理学的特性(例えば合成培地での増殖)または生化学的特性(例えば膜脂質組成)の分析が必要とされる。これらの方法では、検出する試料内の細菌は比較的高い濃度でなければならず、これは臨床技師の経験や専門知識によるものであり、時間がかかるものである。というのもマイコバクテリウム種を体外で増殖させるのは大抵難しく、培地内で有用な密度に到達するには数週間かかり、これらの方法では患者の処置の遅れや、感染した個体の診断終了までの隔離に関連する費用が生じることもある。
【0007】
マイコバクテリア一般と、特にヒト型結核菌およびウシ型結核菌とは、増殖の大変遅い偏好性微生物である。従来使用している培地でこれらの微生物を増殖させるには2〜3週間かかる。増殖を増強させて時間因子を低減させることのできる培地または物質を見つけるために、いくつかの試みが行われてきた。例えば、本明細書に参考として援用する特許文献1は、以下の栄養素を以下に示す量ずつ含有するマイコバクテリアを培養するための培養基を開示している。すなわち、かかる培養基は、7H9基礎培地0.47%(メリーランド州コッキーズビレのBBLマイクロバイオロジーシステムス社より入手、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、ピリドキシン、クエン酸鉄アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、ビオチンおよび塩化カルシウムを含有)、ウシ血清アルブミン0.5%、カゼイン加水分解物0.1%、カタラーゼ96単位/バイアル、14C標識基質2uCi/バイアル、および培養基を2mlとして、最終pH6.8±0.1に調整するための脱イオン水を含有する。
【0008】
アルブミンはマイコバクテリアを増殖するための培地において、解毒剤として使用することができる。アルブミンはほぼ全ての動物組織および多くの野菜組織で見つかる単純タンパク質である。アルブミンは水溶性であり、熱で凝固する特徴がある。アルブミンは炭素、水素、窒素、酸素および硫黄を含有する。本発明の培養基のための好適なアルブミンは、ウシ血清アルブミンである。アルブミンは典型的に約0.1重量%〜約10重量%のレベルで培養基に存在する。
【0009】
しかしながら、遅い増殖速度や培地におけるマイコバクテリアの増殖のために富栄養培地が必要なことから、臨床試料(例えば、唾液、肺液、組織または糞便)からマイコバクテリアを検出することは依然として生物学の大きな課題である。この課題の1つの要因は、より急速に増殖する細菌が、対象とする増殖の遅いマイコバクテリア微生物を圧倒してしまい、そのためマイコバクテリアの検出を妨げる、または著しく妨害するという事実から生じる。数10年にわたり、マイコバクテリア同定のために提出された診断用試料を除染する(すなわち、非マイコバクテリア微生物を死滅させる、または阻害する)ために、いくつかの技術が開発されてきた。これらの技術は、潜在的な汚染物質を死滅させるか、またはそれらの増殖が阻害されるかもしくは完全に妨害されるくらいにそれらを傷つけるものである。
【0010】
従来マイコバクテリアの検査診断は、微生物の抗酸性染色および培養、その後の生化学分析に基づくものであった。マイコバクテリアの遅い増殖と長い世代時間の結果、従来の技術によるマイコバクテリアの正確な検査診断には6週間もかかることがある。BacT/ALERT(登録商標)システム(バイオメリュー社)などの自動培養システムは、マイコバクテリアの同定にかかる時間を2週間まで低減させることができる。
【0011】
本譲受人であるバイオメリュー社は、血液以外の臨床試料においてマイコバクテリアを検出するための培養ベースのシステムとして、BacT/ALERT(登録商標)微生物検出システムに使用するプラスチック製のBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶を提供する。BacT/ALERT(登録商標)微生物検出システムは、比色センサと反射光を利用して、培地に溶解した二酸化炭素(CO2)の存在と生成を監視するものである。試験試料にマイコバクテリアが存在する場合には、これらの微生物が培地の中で基質を代謝する際に二酸化炭素が生成される。マイコバクテリアの増殖によって二酸化炭素が生成されると、各培養瓶の底に設置されたガス透過性センサの色が青緑から黄色へと変化する。
【0012】
BacT/ALERT(登録商標)MP試薬システムは、BacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶、再構成液(RF)、MB/BacT抗菌サプリメント(MAS)(以下従来の、または旧いRF(すなわち従来の/旧いRF)および従来の、または旧いMAS(すなわち従来の/旧いMAS)と呼ぶ)を含む。BacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶はプラスチック製の瓶であり、これはいくつかの培地の成分を含んでいる。再構成液(RF)はマイコバクテリアの増殖のための残りの栄養素を含み、MASを再構成するために使用される。MASは、唾液試料からの好ましくない呼吸器内細菌叢(respiratory flora)を抑制するために6つの抗菌剤で作られた、凍結乾燥粉末である。RFおよびMASは、MASキットとしてパッケージ化されている。それでもなおマイコバクテリアの正確な診断のために必要とされる時間をさらに削減するための必要性が、当技術分野には今なお存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第3,935,073号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って本発明の主な目的は、臨床試料に存在するマイコバクテリウム種の増強された増殖および検出のための培地および方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、マイコバクテリアの体外培養に適した、新規のマイコバクテリア培地を提供することである。本発明のまたさらなる目的は、前述の目的に従ってマイコバクテリア培地を提供することであり、この場合、汚染微生物の増殖は阻害される。
【0015】
よって本明細書には、新規の培地処方と、新規の栄養サプリメント(NS:nutrient supplement)および新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS:MB BacT antibiotic supplement)と、マイコバクテリアの増殖および検出に予測を超えた増強を示す製造工程の向上とを記載する。また本明細書にはマイコバクテリアの増強された増殖および検出の方法を記載する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は概してマイコバクテリウムの増殖および検出のための新規の培地に関するものである。さらに本発明は、臨床試料に存在するマイコバクテリウム種の広域スペクトルを検出する組成および診断方法を提供する。また本発明は、マイコバクテリアの増殖および検出の増強された検出時間(TTD)を示す、新規かつ改善されたMPシステムまたはキットにも関するものであり、このMPシステムまたはキットは、オートクレーブ可能なBacT/ALERT(商標登録)MP培養瓶と、栄養サプリメント(NS)と、新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)とを備える。
【0017】
一実施形態では、本発明はマイコバクテリアを培養する新規の培地に関し、培地は、(a)マイコバクテリアの増殖に適した基本培地と、(b)1つまたは複数の栄養サプリメント添加剤と、(c)向上された抗菌サプリメントとを含み、前記培地は前記マイコバクテリアの増強された増殖を呈する。
【0018】
別の実施形態では、本発明はマイコバクテリアの増強された増殖の方法に関し、本方法は、マイコバクテリアを含むと疑われる試料を、有効な量の1つまたは複数の栄養添加剤を含有する培地に添加して、前記マイコバクテリアの増殖を増強するステップと、該培地を前記マイコバクテリアの増殖に適した条件にさらすステップとを含む。
【0019】
本発明の別の実施形態はマイコバクテリウム種による感染の診断方法に関し、(a)培地を提供するステップと、(b)該培地に栄養サプリメントを添加するステップであって、該栄養サプリメントは、前記マイコバクテリアの増殖を増強させるための1つまたは複数の栄養添加剤を含むステップと、(c)前記マイコバクテリウム種の有無が決定される試料を添加するステップと、(d)マイコバクテリウム種の存在について培地を分析するステップと、を含み、マイコバクテリウム種の存在の発見は前記感染の陽性診断を示す。
【0020】
さらに別の実施形態では、本発明は向上されたBacT/ALERT(登録商標)MP試薬システムまたはキットに関する。向上されたBacT/ALERT(登録商標)MP試薬システムまたはキットは、マイコバクテリアの増殖のための基本培地または水を含む、向上されたMP培養瓶を含んでいる。随意に、新規のMP培養瓶の培地または水は熱不安定性成分を含まず、よって新規のMP培養瓶はオートクレーブ可能とすることができる。試薬システムまたはキットはさらに新規の栄養サプリメント(NS)および新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)を含む。栄養サプリメント(NS)は、マイコバクテリアの増殖のための基本培地および/または1つまたは複数の炭素源、窒素源、糖類、塩類、栄養素、タンパク質類、アミノ酸類、脂肪酸類またはその他の栄養素を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】脂肪酸の補給のある場合とない場合のヒト型結核菌の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図1B】脂肪酸の補給のある場合とない場合のマイコバクテリウム・イントラセルラーレの検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図1C】脂肪酸の補給のある場合とない場合のマイコバクテリウム・アビウムの検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図2】α‐ケトグルタラートを使った場合と使わない場合のマイコバクテリア菌株の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図3】アズロシリンを使った場合のマイコバクテリア菌株の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図4】マイコバクテリア菌株の増殖に対するバンコマイシンの効果を示す箱髭図である。
【図5A】種々のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方を使った場合のヒト型結核菌18283の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図5B】種々のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方を使った場合のヒト型結核菌27294の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図5C】種々のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方を使った場合のマイコバクテリウム・アビウム569の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図5D】種々のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方を使った場合のマイコバクテリウム・イントラセルラーレ13950の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図5E】種々のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方を使った場合のマイコバクテリウム・スクロフラセウム19981の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図5F】種々のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方を使った場合のカンサシ菌12478の検出時間(TTD)を示す箱髭図である。
【図6】ヒト型結核菌複合体の増殖の検出時間(TTD)に関して、以前のMAS処方と新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方との比較を示す箱髭図である。
【図7】その他のマイコバクテリア菌株の増殖の検出時間(TTD)に関して、以前のMAS処方と新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)処方との比較を示す箱髭図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
適切な栄養条件および環境条件を提供することによる微生物の繁殖は周知である。適切な培養基または培養地は、培養する微生物が必要とする全ての栄養素を含んでいなくてはならない。例えば、典型的な微生物学的培地は、利用できる水源、炭素源、窒素源、ビタミン、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄などの微量元素および硫黄、リンなどのミネラル類を含んでいなくてはならない。典型的にこれらの必要物は多くの源から供給される。適切な繁殖条件のその他の要因には、pH、温度、エアレーション、食塩濃度および培地の浸透圧がある。
【0023】
さらに、特定の増殖要因が必要であることが知られている。増殖要因は有機化合物であり、これは増殖するために微生物が含んでいなければならないものであるが、合成することのできないものである。多くの微生物は、上述の栄養素が与えられると、自らの原形質の全ての有機成分を合成することができ、これらの有機成分には、アミノ酸類、ビタミン類、プリン・ピリミジン類、脂肪酸類およびその他の化合物がある。これらの必須化合物の各々は酵素反応の個々のシーケンスによって合成され、各々の酵素は特異遺伝子の支配下で生成される。しかしながら、微生物の中には1つまたは複数のこれらの増殖要因を合成することができず、よって環境からその化合物を得なければならないものがある。必要とされる増殖要因としては、以下のものに限定しないが、アミノ酸類、ビタミン類、プリン・ピリミジン類、脂肪酸類および増殖に必要なその他の化合物がある。
【0024】
上述のように、本譲受人であるバイオメリュー社は、マイコバクテリウムの増殖および検出のための培養瓶(BacT/ALERT(登録商標)MP処理瓶)の製造と販売を行っている。BacT/ALERT(登録商標)MP処理瓶は、無菌体の検体および消化、除染された臨床検体からマイコバクテリアを回収して検出するためのBacT/ALERT(登録商標)またはBacT/ALERT(登録商標)3Dシステムで使用するためのものである。MP処理瓶は、MB/BacT(登録商標)抗菌サプリメント(MAS)および/またはMB/BacT(登録商標)再構成液(RF)(本明細書では従来の、または旧いMASおよび従来の、または旧いRFと呼ぶ)と共に使用することができる。
【0025】
BacT/ALERT(登録商標)MP使い捨て培養瓶は脱着可能な蓋を有し、およそ10mlの培地および微生物増殖の指標としての二酸化炭素を検出する内部センサを含む。培地処方は、精製水中のMiddlebrook 7H9 Broth(0.47% w/v)、カゼインの膵臓消化物(0.1% w/v)、ウシ血清アルブミン(0.5% w/v)およびカタラーゼ(48u/ml)から構成される(本明細書では、従来の、または旧い培地と呼ぶ)。
【0026】
従来の、または旧いMB//BacT(登録商標)抗菌サプリメント(従来の/旧いMAS)は、アムホテリシンB(0.0180% w/v)、アズロシリン (0.0034% w/v)、ナリジクス酸(0.0400% w/v)、ポリミキシンB(10000単位)、トリメトプリム(0.00105% w/v)およびバンコマイシン(0.0005% w/v)を含有するように処方された凍結乾燥サプリメントである。
【0027】
従来の/旧いMB/BacT(登録商標)再構成液(従来の/旧いRF)は、精製水中にオレイン酸(0.05% w/v)、グリセリン(5% w/v)、アマランス(0.004%)およびウシ血清アルブミン(1% w/v)を含有する。再構成液(RF)およびMB/BacT/ALERT(登録商標)抗菌サプリメント(MAS)は、MP瓶に添加することのできるサプリメントキットを含む。
【0028】
本発明は、マイコバクテリウムの増殖を増強するための新規かつ改善された培地および方法に関するものである。本発明の培地および方法は、任意の、既知のマイコバクテリアの培養に使用することができ、マイコバクテリアとしては、以下のものに限定しないが、ヒト型結核菌、ウシ型結核菌、ネズミ型結核菌、マイコバクテリウム・アフリカヌム、マイコバクテリウム・カネッティ、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ、マイコバクテリウム・スクロフラセウム、カンサシ菌、マイコバクテリウム・マルモエンセ、マイコバクテリウム・ゼノピ、マイコバクテリウム・マリヌム、マイコバクテリウム・シミアエ、マイコバクテリウム・テラエ、マイコバクテリウム・ウルセランス、マイコバクテリウム・アブセサス、マイコバクテリウム・フォーチュイタム、マイコバクテリウム・ケローネおよびマイコバクテリウム・ゴルドネがある。本発明者は今回マイコバクテリアの増殖および検出に予測を超えた増強を示す新規の培地処方、新規の栄養サプリメント(本明細書では新NSと呼ぶ)、新規の抗菌サプリメント(本明細書では新MASと呼ぶ)処方、および製造工程の改善を発見した。
【0029】
本発明によるMPシステムの新規の特徴には、(1)熱不安定性成分をMP培地から栄養サプリメントへ移すことによって可能となるMP瓶の最終滅菌、(2)新規の炭素源を使用することによる二酸化炭素生成の最適化、(3)栄養サプリメントの最適化、および/または(4)MAS抗菌剤の最適化および/または抗菌剤の濃縮がある。これらの改善はマイコバクテリアの増殖と検出にいくつかの予測を超えた改善をもたらし、これらの改善には、(1)マイコバクテリアの増殖の検出時間(TTD)に関するMP瓶の性能の向上、(2)臨床的に意義のあるマイコバクテリアの回収の向上、(3)汚染呼吸器内細菌叢(CRF)の飛躍的な低減、および/または(4)偽陽性の最小化がある。付加的な向上には、BacT/ALERT(登録商標)MP瓶を室温で保管および出荷することができるという製造工程の簡素化がある。
【0030】
培地
一実施形態では、本発明の新規の培地はマイコバクテリアの増強された増殖を提供する。本明細書で使用する場合、「増強された増殖」とは、マイコバクテリアの増殖を本発明の培地および/またはサプリメントを使って、例えば培養瓶の中で、従来の培地を用いるよりも少なくとも約半日、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約5日または少なくとも約7日早期に検出可能なことを意味する。つまり、マイコバクテリアの増殖を増強することによって、従来の培地におけるマイコバクテリアの増殖と比較して、増殖の検出時間(TTD)を向上すなわち低減させることができる。本発明によれば、本発明の培地を使うと、従来の培地と比較してTTDを少なくとも約半日、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約5日または少なくとも約7日向上すなわち低減させることができる。一実施形態では、従来の培地は、上述のBacT/ALERT(登録商標)MP処理瓶(バイオメリュー社)の従来の/旧いRFおよび従来の/旧いMASを補給した従来の培地とすることができる。
【0031】
別の実施形態では、本発明の新規の培地は、マイコバクテリアの増殖における誘導時間の減少を提供する。本明細書で使用する場合、「減少された誘導時間」とは、マイコバクテリウムが対数期増殖に入る前のインキュベーション、すなわち潜伏時間の減少を意味する。本発明によれば、本培地および/またはサプリメントは、従来の/旧い培地内のマイコバクテリウムの誘導期と比較すると、少なくとも約半日、少なくとも約1日、少なくとも約2日または少なくとも約3日の誘導時間の減少または低減をもたらす。一実施形態では、従来の/旧い培地は、上述のBacT/ALERT(登録商標)MP処理瓶(バイオメリュー社)の従来の/旧いRFおよび従来の/旧いMASを補給した従来の培地とすることができる。
【0032】
本発明の培地は、液体栄養素培地すなわち栄養素ブロスを含む。本発明の培地すなわち栄養素ブロスは、典型的には1つまたは複数の既知の栄養素を含む。例えば培地は1つまたは複数の炭素源(例えばグリセリン)、窒素源(例えばアンモニア塩)、糖類、塩(例えばK+、Mg2+、Ca2+、Zn2+)、栄養素および/または水を含有することができる。一実施形態では、本発明の培地は、Middlebrook 7H9を含む。上述のように、Middlebrook 7H9は、カリウム塩、ナトリウム塩、グルタミン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、ピリドキシン、クエン酸第二アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、ビオチンおよび塩化カルシウムを含む。
【0033】
本発明の培地は、マイコバクテリアの増殖の増強された検出を可能にする付加的な栄養素および/または成分をさらに含むことができる。本発明の培地に添加することのできる付加的な栄養素および/または成分としては、以下のものに限定しないが、タンパク質、アミノ酸、脂肪酸、細胞または植物抽出物および/またはその他の栄養素がある。例えば、本発明の培地は、カゼイン(例えば、カゼインの膵液消化物)、アルブミン(例えばウシ血清アルブミン)、カタラーゼおよび/またはアマランスをさらに含むことができる。一実施形態では、本明細書でさらに述べるように、これらの付加的な栄養素および/または成分は、マイコバクテリウムの有無の決定が所望される試料を培地に接種する前に基本培地に添加することのできる、別個の栄養サプリメントを含むことができる。
【0034】
本発明によれば、培地瓶内でウシ血清アルブミン(BSA)と結合する高レベルの短鎖脂肪酸および中鎖脂肪酸(例えば8以下の炭素原子を有する脂肪酸)は、偽陽性の表示(reading)をもたらすことがあることを発見した。よって、短鎖脂肪酸または中鎖脂肪酸の使用を避けることが好適である。例えば、本実施形態によれば、8以下の炭素原子を有する脂肪酸(例えばカプリル酸)の使用は避けるべきである。
【0035】
しかしながら本発明者は、偽陽性を引き起こすこれらの試薬は、脂肪酸を含まないBSAを使用し、そして培地処方に長鎖脂肪酸を補給することによって排除することができる、または著しく低減させることができることも発見した。従って、培地は脂肪酸を含まないBSA(FAフリーBSA)および1つまたは複数の飽和または不飽和の長鎖脂肪酸またはその塩をさらに含むことができる。一実施形態では、10以上の炭素原子を有する1つまたは複数の長鎖脂肪酸を使用するのが好適である。一般には任意の既知の長鎖脂肪酸を使用することができ、この長鎖脂肪酸としては以下のものに限定しないが、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびそれらの塩がある。別の実施形態では、本明細書にさらに述べるように、脂肪酸は、瓶の培地から、試験試料を接種する前に培地に別途添加することのできる栄養サプリメントに移すことができることを発見した。本明細書に示すように(例えば実施例1および図1A〜図1C参照)、脂肪酸を含まないBSAの使用および長鎖脂肪酸の培地への補給は、ヒト型結核菌(図1A参照)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(図1B参照)およびマイコバクテリウム・アビウム(図1C参照)の増殖および検出時間(TTD)を2〜2.5日向上させることとなった。
【0036】
本発明の一態様では、本発明の培地には1つまたは複数の既知の代謝経路基質すなわち中間体を補給することができる。本発明者は驚くことに、代謝経路基質(例えばα-ケトグルタラート)を培地に含有させることによって、マイコバクテリアの増殖および検出を、代謝経路基質(例えばα-ケトグルタラート)を含有しない培地と比較して増強させることができることを発見した。理論に縛られることを望むものではないが、代謝経路基質(例えばα-ケトグルタラート)を培地内で使用すると、培地に存在するマイコバクテリアによる二酸化炭素の生成が増強されると考えられる。本実施形態によれば、クエン酸回路、解糖またはグリオキシル酸経路基質すなわち中間体を使用することができる。一実施形態では、二酸化炭素を生成する酵素の基質、共同因子またはそれらの中間体、前駆体もしくは誘導体を本発明で使用することができる。例えば、ピルビン酸、クエン酸、シス-アコニット酸、イソクエン酸、オキサロスクシナート、α−ケトグルタラート、スクリニル‐CoA、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸などのクエン酸回路中間体が有用である。別の実施形態では、α−ケトグルタラート、α−ケトグルタラート前駆体および/またはα−ケトグルタラート誘導体のうちの1つまたは複数を本発明の培地に含ませることができる。α−ケトグルタラート前駆体または誘導体としては、以下のものに限定しないが、グルタミン酸、イソクエン酸、オキサロスクシナートまたはそれらの混合物がある。α−ケトグルタラート、α−ケトグルタラート前駆体および/またはα−ケトグルタラート誘導体は、最終濃度約0.1g/L〜約50g/L、約0.5g/L〜約20g/Lまたは約1g/L〜約20g/Lで培地内に存在させることができる。一実施形態では、本明細書でさらに述べるように、α−ケトグルタラート、α−ケトグルタラート前駆体および/またはα−ケトグルタラート誘導体は、培地に別途添加することのできる栄養サプリメント内に含ませることができる。
【0037】
本発明のさらに別の態様では、本発明の培地はさらに1つまたは複数の抗菌剤または抗菌物質を含むことができる。抗菌薬は微生物の増殖を死滅、抑制、または阻害する薬剤または物質である。一般に、微生物の増殖を死滅、抑制または減速する薬物、化学薬品またはその他の物質などのような任意の既知の抗菌剤を使用することができる。有用な抗菌剤としては、以下のものに限定しないが、抗生物質、静菌剤、殺菌剤、抗菌薬、抗ウィルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤および抗寄生虫剤がある。一般に抗菌剤は培地内に存在する汚染細菌の増殖を死滅、抑制または阻害するのに十分な量で使用する。例えば、当業者であれば理解できるように、培地における汚染呼吸器内細菌叢(CRF)の増殖を阻害することは好適であろう。CRFはマイコバクテリアの増殖を妨げ、マイコバクテリアの増殖に必要な栄養素を枯渇させ、および/または偽陽性をもたらす。汚染呼吸器内細菌叢(CRF)としては、以下のものに限定しないが、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス、フェカリス菌、肺炎桿菌、人口呼吸器肺炎菌、カンジダ・トロピカリス、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(すなわちMRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(すなわちVRE)がある。
【0038】
抗菌薬は1つまたは複数の抗生物質または合成薬物とすることができ、これらは以下のものに限定しないが、ポリミキシンB、バンコマイシン、アズロシリン、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンがある。好適な実施形態では、有用な抗生物質は、マイコバクテリアの増殖を抑制または阻害せずに汚染呼吸器内細菌叢(CRF)を阻害する。
【0039】
いくつかの実施形態では、抗菌サプリメントは1つまたは複数の抗真菌性抗生物質、グラム陰性抗生物質、グラム陽性抗生物質、1つの抗真菌性抗生物質および広域スペクトル抗生物質を含む。例えば、本発明の抗菌サプリメントは、抗真菌剤(例えばアムホテリシンB)、細胞質膜透過性を変化させるグラム陰性抗生物質(例えばポリミキシンB)、DNAジャイレースを阻害する広域スペクトル抗生物質(例えばナリジクス酸)、化学療法剤(例えば、ジビロド葉酸還元酵素を阻害する薬剤(例えばトリメトプリム))およびエノールピルビン酸塩トランスフェラーゼを阻害する広域スペクトル抗生物質(例えばホスホマイシン)を含むことができる。一般に、任意の既知の抗真菌剤、グラム陰性抗生物質、広域スペクトル抗生物質、DNAジャイレースの抗生物質阻害剤または化学療法剤を本発明の実行で使用することができる。一実施形態では、抗菌サプリメントは、アムホテリシンB、ポリミキシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンを含むことができる。
【0040】
本明細書に示すように(例えば実施例3、4および図3、4を参照のこと)、バンコマイシンおよび/またはアズロシリンの使用によっていくつかのマイコバクテリア種の増殖を抑制、阻害または減速させることができる。よっていくつかの実施形態では、バンコマイシンおよび/またはアズロシリンの使用を避けることが好適である。本発明者は、アズロシリンおよびバンコマイシンの代わりにホスホマイシンを使うと、MB/BacT(登録商標)抗菌サプリメントと比較して、培地内でマイコバクテリアの増進と検出を増強させるために使用することのできる抗菌サプリメント(MAS)を生成することができることを発見した。例えば、アズロシリンおよびバンコマイシンをホスホマイシンに代えることによって、新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)は従来の/旧いMAS(例えば実施例5と図5A〜5F参照)と比較して、マイコバクテリア増殖の検出時間(TTD)を2〜9日間向上すなわち低減させることを発見した。従って、いくつかの実施形態では、ポリミキシンB、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンの使用は好適である。これらの抗生物質は、培地に存在する汚染細菌の増殖を阻害するのに十分な量で使用することができる。例えば、培地はポリミキシンB約400単位/ml〜約2000単位/ml、アムホテリシンB約50μg/ml〜約400μg/ml、ナリジクス酸約100μg/ml〜約1000μg/ml、トリメトプリム約10μg/ml〜約100μg/mlおよびホスホマイシン約100μg/ml〜約1000μg/mlを最終濃度で含有することができる。一実施形態では、本明細書でさらに述べるように、これらの抗菌剤は、マイコバクテリウムの有無を決定することが所望される試料を培地に接種する前に基本培地に添加することのできる、別個のサプリメントを含むことができる。
【0041】
本発明によれば、一実施形態では、本発明の培地は、Middlebrook 7H9、ウシ血清アルブミン、α-ケトグルタラート、カゼイン、カタラーゼおよび/または水のうちの1つまたは複数を含むことができる。培地は、当業者にはマイコバクテリアの培養に恩恵のあるものとして知られる、1つまたは複数の付加的な栄養素および/または成分をさらに含むことができる。例えば、本発明の培地は、1つまたは複数の糖類または炭素源、窒素源、ミネラル類、塩類、アミノ酸類、ビタミン類、プリン・ピリミジン類、脂肪酸類ならびにその他の化合物を付加的に含むことができる。別の実施形態では、本発明の培地は、Middlebrook 7H9、グリセリン、ステアリン酸(例えばステアリン酸ナトリウム)、ミリスチン酸(またはその塩)、パルミチン酸(例えばパルミチン酸ナトリウム)、オレイン酸(例えばオレイン酸ナトリウム)、ウシ血清アルブミン、カゼイン(例えばカゼインの膵液消化物)、カタラーゼ、ピルビン酸ナトリウム、α‐ケトグルタラート、アマランスおよび水を含む。
【0042】
さらに別の実施形態では、培地はさらに1つまたは複数の抗菌剤(例えばホスホマイシン)を含む。例えば、培地は、ポリミキシンB、アズロシリン、バンコマイシン、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよび/またはホスホマイシンのうちの1つまたは複数から選択した抗菌剤の混合物をさらに含むことができる。培地はポリミキシンB、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンを含む抗生物質の混合物をさらに含むことができる。
【0043】
さらにまた別の実施形態では、培地は約5.5〜約7.5pH、約6.0〜約7.0pH、または約6.5〜約7.0pHに調整することができる。本発明によれば、本培地は従来の/旧いマイコバクテリア培地と比較すると、マイコバクテリア増殖の検出時間(TTD)を少なくとも約0.5日、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約5日または少なくとも約7日向上すなわち低減させる。
【0044】
マイコバクテリアの増強された検出の方法
一般に、本発明は生体試料内に存在する1つまたは複数のマイコバクテリウムの増殖を検出する方法に関するものである。試験する試料には、マイコバクテリウムの存在が疑われる臨床試料と非臨床試料の両方が含まれる。試験する臨床試料には、典型的には臨床実験室で試験される任意のタイプの試料が含まれ、これらの試料としては、以下のものに限定しないが、血液、唾液、吸引液、スワッブおよびスワッブすすぎ液(swab rinsates)および体液などがある。一実施形態では、試料は無菌体の検体または消化、除染された臨床検体とすることができる。試験する非臨床試料は高度に可変性のある物質を含むことができ、この物質としては、以下のものに限定しないが、食品、飲料、医薬品、化粧品、水、空気、土、植物、血液製剤(血小板を含む)、ドナー臓器または組織試料などがある。
【0045】
一態様では、本発明はマイコバクテリアの増強された増殖および/または検出の方法に関するものであり、本方法は、マイコバクテリアを含有すると疑われる試料を、脂肪酸を含まないBSA、1つまたは複数の長鎖脂肪酸および随意に抗菌サプリメントを含む培地に添加するステップと、該培地を前記マイコバクテリアの増殖に適した条件にさらすステップとを含み、前記脂肪酸を含まないBSAおよび前記1つまたは複数の長鎖脂肪酸は前記マイコバクテリアの増殖を増強させる。脂肪酸を含まないBSAおよび1つまたは複数の長鎖脂肪酸のNSにおける使用は、偽陽性の表示(readings)の著しい低減をもたらすことを発見した。さらに本明細書に示すように(実施例1および図1A〜図1C参照)、脂肪酸を含まないBSAの使用および長鎖脂肪酸の培地への補給は、ヒト型結核菌(図1A参照)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(図1B参照)およびマイコバクテリウム・アビウム(図1C参照)の増殖および検出の検出時間(TTD)を2〜2.5日向上させることとなった。一実施形態では、培地は前記マイコバクテリアの増殖を増強させるために有効な量のα-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体またはα-ケトグルタラート誘導体を含む添加剤をさらに含み、この培地を前記マイコバクテリアの増殖に適した条件にさらす。α-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体および/またはα-ケトグルタラート誘導体を培地内で使用することにより、本発明の方法において、マイコバクテリアの増殖のTTDを、従来の/旧い培地(すなわち、α-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体または誘導体を含まない培地)を使用するよりも、少なくとも約半日、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約5日または少なくとも約7日早く検出できることを思いがけなく発見した。実施例2と図2に示すように、α-ケトグルタラートを含有する培地内のマイコバクテリア菌株の検出時間(TTD)は、α-ケトグルタラートを含有しない培地のTTDと比較しておよそ2日間向上、すなわち低減された。
【0046】
本発明はマイコバクテリウム種によって引き起こされる感染の診断方法にも関するものであり、本方法は、(a)培地を提供するステップと、(b)該培地に栄養サプリメントを添加するステップであって、該栄養サプリメント添加剤は脂肪酸を含まないBSAと随意に1つまたは複数の長鎖脂肪酸とを含むステップと、(c)前記マイコバクテリウム種の有無が決定される試料を添加するステップと、(d)前記マイコバクテリウム種の存在について前記培地を分析するステップであって、前記マイコバクテリウム種の存在の発見は前記感染の陽性診断を示すステップと、を含む。脂肪酸を含まないBSAと1つまたは複数の長鎖脂肪酸をNSで使用すると、偽陽性の表示(readings)の著しい低減がもたらされることを発見した。さらに本明細書に示すように(実施例1および図1A〜1C参照)、脂肪酸を含まないBSAの使用および長鎖脂肪酸の培地への補給は、ヒト型結核菌(図1A参照)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(図1B参照)およびマイコバクテリウム・アビウム(図1C参照)の増殖および検出の検出時間(TTD)を2〜2.5日向上させることとなった。一実施形態では、サプリメントはα-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体および/またはα-ケトグルタラート誘導体をさらに含むことができる。上述のように、α-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体またはα-ケトグルタラート誘導体の培地での使用により、本発明の方法において、TTDを少なくとも約半日、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約5日または少なくとも約7日低減させることができる。本方法によれば、栄養サプリメント(NS)には随意に脂肪酸を含まないBSAを使用してもよく、NSは1つまたは複数の長鎖脂肪酸(例えば、10以上の炭素元素を有する脂肪酸)をさらに含むことができる。
【0047】
別の実施形態では、本発明はマイコバクテリア培地内の細菌汚染を阻害する方法に関するものであり、本方法は、マイコバクテリアの増殖に適した条件において、汚染細菌の増殖を阻害するのに十分な量のホスホマイシンを含む培地内でマイコバクテリアを含有すると疑われる試料を培養するステップを含む。本方法によれば、1つまたは複数の抗菌剤または抗菌物質を、試験される生体試料を接種する前または接種と同時に培地に添加することができる。続いて、培地および試料を十分な時間、十分な温度で培養して、試験試料内に存在するマイコバクテリアの増殖および検出を可能にする。別の実施形態では、1つまたは複数の抗菌薬をマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)に含めることができ、このサプリメントは、培地へ試験される試料を接種する前または接種と同時に基本培地に添加することができる。上述のように、MASはポリミキシンB、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0048】
さらにまた別の実施形態では、本発明は、向上されたBacT/ALERT(登録商標)MP試薬システムまたはキットを生体試料内に存在するマイコバクテリアの増殖および/または検出に使用する方法に関するものである。本実施形態によれば、本明細書にさらに詳しく説明するように、向上されたBacT/ALERT(登録商標)MP試薬システムは、マイコバクテリア増殖のための基本培地を含む向上されたMP培養瓶、新規の栄養サプリメント(NS)および新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)を含む。栄養サプリメント(NS)および/またはマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)は、マイコバクテリアの存在について試験される生体試料を培地に接種する前または接種と同時に基本培地に添加することができる。接種された瓶は十分な時間、十分な温度で培養し、生体試料内に存在するマイコバクテリアの増殖および/または検出を可能にする。一実施形態では、新規のMP培養瓶の培地は熱不安定性成分を含まないので、新規のMP培養瓶をオートクレーブ可能にすることができる。
【0049】
MP試薬キット
一態様では、本発明はマイコバクテリアの増強された増殖および検出のためのMP試薬キットに関するものである。MP試薬キットは基本マイコバクテリウム培地を有する培養瓶、栄養サプリメント(NS)および/またはマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)を含む。
【0050】
培養瓶
一実施形態では、本発明は新規かつ改善されたマイコバクテリウム培地を含む瓶または容器(すなわち培養瓶)に関する。一般に、培養瓶は当技術分野において周知である任意の設計またはサイズとすることができ、マイコバクテリアの増殖および/または検出に恩恵のある任意の既知の培地を含むことができる。一実施形態では、培養瓶はMiddlebrook 7H9ブロスおよび/または水を基本培地として含む。従来の/旧いMP瓶は、マイコバクテリウムの増殖および検出のために、約6.8pHの液体培地を使用する。同様に、新規の向上されたMP培養瓶は液体すなわちブロス基本培地を有し、基本培地には、新規の栄養サプリメントおよび/または新規のマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)を添加することができる。培地は約5.5〜約7.5pH、約6.0〜約7.0pHまたは約6.5〜約7.0pHに調整することができる。別の実施形態では、MP培養瓶の培地のpHは約6.8である。
【0051】
本発明者は驚くことに、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシ肝臓カタラーゼおよび/またはカゼインを含む特定の増殖栄養素を培地瓶から取り除くことにより、その瓶を最終滅菌することができることを発見した。例えば、熱不安定性成分を取り除くことにより、瓶をオートクレーブすることができる。瓶の最終滅菌に関する向上には、向上された保管と出荷がある。例えば、最終滅菌された瓶(例えばオートクレーブされた瓶)は室温で保存と出荷を行うことができ、著しいコスト削減をもたらす。この最終滅菌された瓶はさらに貯蔵寿命の向上および/または滅菌レベル(SAL)の増大をもたらす。
【0052】
栄養サプリメント(NS)
本発明はまた、マイコバクテリアの増殖および検出を増強させるために本発明の培養瓶に添加することのできる、向上された栄養サプリメント(NS)に関するものである。一般に栄養サプリメント(NS)は、マイコバクテリアを増殖させるための基本培地を含有する培養瓶に、該瓶および培地にマイコバクテリウムの存在の検出が所望される試料を接種する前に添加する。
【0053】
本発明の向上された栄養サプリメント(NS)は、マイコバクテリアの増殖に恩恵のある任意の、既知の栄養素またはサプリメントを含むことができる。例えば栄養サプリメントは1つまたは複数の炭素源、窒素源、糖類、塩類、栄養素、タンパク質類、アミノ酸類、脂肪酸類および/または当業者に周知のその他の栄養素を含むことができる。
【0054】
本発明によれば、一実施形態では、栄養サプリメントはさらに、α-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体および/またはα-ケトグルタラート誘導体を含む。一般に、任意の、既知のα-ケトグルタラート前駆体または誘導体を使用することができ、これらには、以下のものに限定しないが、グルタミン酸、イソクエン酸、オキサロスクシナートまたはそれらの混合物がある。α-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体および/またはα-ケトグルタラート誘導体は、培養瓶の培地に添加した後に、α-ケトグルタラート、α-ケトグルタラート前駆体および/またはα-ケトグルタラート誘導体の最終濃度が約0.1g/L〜約50g/Lとなるように、十分な量で栄養サプリメントに存在することができる。
【0055】
本発明の別の実施形態によれば、栄養サプリメントは1つまたは複数の飽和または不飽和長鎖脂肪酸またはその塩をさらに含むことができる。一実施形態では、10以上の炭素原子を有する1つまたは複数の長鎖脂肪酸を利用することが好適である。一般に、任意の、既知の長鎖脂肪酸を使用することができ、これらには、以下のものに限定しないが、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびそれらの塩がある。別の実施形態では、短鎖または中鎖の脂肪酸を使用することは避けることが好適である。例えば、本実施形態によれば、8以下の炭素原子を有する脂肪酸(例えばカプリル酸)の使用は避けるべきである。
【0056】
別の態様では、上述のように、本発明の栄養サプリメントでは、脂肪酸を含まないウシ血清アルブミン(BSA)を使用することが好適である。先にも述べたように、脂肪酸を含まないBSAの使用は、試薬に基づく偽陽性を大幅に低減または削減させることができる。
【0057】
一実施形態では、栄養サプリメント(NS)はグリコール、1つまたは複数の長鎖脂肪酸、脂肪酸を含まないウシ血清アルブミン(BSA)、カゼインの膵液消化物、ピルビン酸ナトリウム、アマランスおよびα-ケトグルタラートを含む。栄養サプリメントは基本培地と共に培養瓶に添加することができる、または、試験試料の接種のすぐ前に培養瓶に添加することができる。あるいは、栄養サプリメントはマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)を再懸濁するために使用することができ、その後に培地瓶に添加する。
【0058】
マイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)
本発明は、マイコバクテリアの増殖と検出を増強するために本発明の培養瓶に添加することのできる、向上されたマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)にも関するものである。本発明者は、培地においてマイコバクテリアの増殖を増強させる、向上されたマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)を開発した。向上されたMASは、マイコバクテリアの増殖を抑制または阻害せずに、汚染呼吸器内細菌叢(CRF)の増殖を抑制または阻害するのに効果的である。汚染呼吸器内細菌叢(CRF)としては、以下のものに限定しないが、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス、フェカリス菌、肺炎桿菌、人口呼吸器肺炎菌、カンジダ・トロピカリス、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)がある。一実施形態では、マイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)は、マイコバクテリアの基本培地を含む培養瓶に、該瓶と培地にマイコバクテリウムの存在の検出が所望される試料を接種する前に、直接添加することができる。別の実施形態では、栄養サプリメント(NS)は、培地瓶に添加する前に、抗菌サプリメント(MAS)を再懸濁するために使用することができる。
【0059】
一般に、任意の、既知の抗菌剤または抗菌物質を使用することができ、これには、以下のものに限定しないが、抗生物質、静菌剤、殺菌剤、抗菌薬、抗ウィルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤および/または抗寄生虫剤がある。しかしながら好適な抗菌剤には、マイコバクテリアの増殖を抑制または阻害せずに汚染呼吸器内細菌叢(CRF)の増殖を抑制または阻害する任意の抗菌剤がある。一実施形態では、MASは1つまたは複数の抗菌薬を前記培地の細菌汚染を阻害するのに十分な量で含む。
【0060】
別の実施形態では、本発明の培地は1つまたは複数の抗生物質を含む。有用な抗生物質には例えば、CRFの増殖を抑制する抗生物質があり、これには、以下のものに限定しないが、ポリミキシンB(POLY B)、バンコマイシン(VAN)、アズロシリン(AZL)、アムホテリシンB(AMP B)、ナリジクス酸(NA)、トリメトプリム(TMP)およびホスホマイシン(FOS)がある。マイコバクテリア感染の治療に使用される抗生物質で、マイコバクテリアの増殖を死滅、抑制または阻害するものは、本発明の抗菌サプリメントでは有用でなく、これには、例えば、イソニアジド、リファンピン、ピラジナミド、ストレプトマイシンおよびエタンブトールがある。先にも述べたように、本譲受人は、MB/BacT(登録商標)抗菌サプリメントの市販および販売を行っており、このサプリメントは、アムホテリシンB(0.0180% w/v)、アズロシリン(0.0034% w/v)、ナリジクス酸(0.0400% w/v)、ポリミキシンB(10000単位)、トリメトプリム(0.00105% w/v)およびバンコマイシン(0.0005% w/v)を含有するように処方された凍結乾燥サプリメントである。しかしながら本発明者は、従来の/旧いMB/BacT(登録商標)抗菌サプリメントと比較して、ホスホマイシンをアズロシリンとバンコマイシンの代わりに補給すると、培地においてマイコバクテリアの増強された増殖と検出のために使用することのできる抗菌サプリメント(MAS)を生成することができることを思いがけずに発見した。
【0061】
よって一実施形態では、向上されたマイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)は、アムホテリシンB(AMP B)、ポリミキシンB(POLY B)、トリメトプリム(TMP)、ナリジクス酸(NA)およびホスホマイシン(FOS)を含有するように処方された凍結乾燥サプリメントを含む。マイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)は、最終培地がポリミキシンB約400単位/ml〜約2000単位/ml、アムホテリシンB約50μg/ml〜約400μg/ml、ナリジクス酸約100μg/ml〜約800μg/ml、トリメトプリム約10μg/ml〜約100μg/mlおよびホスホマイシン約100μg/ml〜約1000μg/mlの最終濃度を含有するように処方することができる。
【0062】
またさらに別の実施形態では、栄養サプリメント(NS)および抗菌サプリメント(MAS)は、最終滅菌された培地瓶に添加することのできる、別個のキットを形成することができる。本実施形態では、NS/MASキットは、BacT/ALERT MP瓶の添加剤として、別途市販および販売を行うことができる。
【0063】
下記の実施例は本発明のさらなる特徴を説明するものであるが、本発明の範囲を制限することを何ら意図するものではない。
【実施例】
【0064】
実施例1:脂肪酸の補給のある場合とない場合の種々のマイコバクテリア菌株のTTD
マイコバクテリアの増殖に対する長鎖脂肪酸(FA)の効果を評価するために、脂肪酸を含まない(FAF)BSAをProliant社(アイオワ州エームズ)から選択した。5つの長鎖脂肪酸、すなわちミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1)およびリノール酸(C18:2)を、FAプロファイルおよび増殖能力に基づき、可能なFAサプリメントとして認定した。FAF BSAを補給したサプリメントの新規の処方を調製し(新規のサプリメント処方については表1を参照のこと)、5つのFAの補給のある場合とない場合とで試験を行った。FA補給の目標レベルは、過去の評価から得られたFA含有量に基づく。使用したFAF BSAの濃度は10g/Lであった。新規のサプリメントの濾過中のFAの損失は、脂肪酸メチルエステル(FAME)の分析によって決定した。0.45μmフィルタで濾過した後のFAの回収率は80%超と観察された。この処方の分析により、高レベルのBSAはFAの溶解化とBSA-FA結合による安定性を増強させることが証明された(データは示さず)。また分析により、BSAの含有量が下がると、FAの結合が弱くなり、濾過中のFA損失が増えることが証明された。
【0065】
新規のオートクレーブ可能な培養瓶は、従来の、または旧い瓶に存在する培地の熱不安定性成分を従来の/旧いRFに移すことによって考案した。新規のオートクレーブ可能な培養瓶はMiddlebrook 7H9を含む。新規のRFサプリメントは、従来の、または旧いRFの組成を使って調製したが、旧いMP瓶処方から移された熱不安定性成分に適合させるために変更を加えた。下記の表1は新規のオートクレーブ可能なMP瓶(上述のような)および新規のサプリメントの組成を示す。この新規のサプリメントで使用するBSAは、従来の/旧いRFで使用した従来のBSAではなく、脂肪酸を含まない(FAF)BSA(Proliant社、アイオワ州エームズ)であった。
【0066】
【表1】
新規のMP瓶および新規のサプリメント処方
【0067】
増殖能力については、5つの微生物(ヒト型結核菌、マイコバクテリウム・アビウムおよびマイコバクテリウム・イントラセルラーレ)を試験した。従来のMAS処方をこれらの実験に使用した。FA補給のある場合とない場合の新規のサプリメントおよび従来の/旧いRFを、従来の、または旧いMB/BacT抗菌サプリメント(従来の/旧いMAS)(バイオメリュー社)の凍結乾燥粉末の再水和に使用した。従来の/旧いMASは、ポリミキシンB(POLY B)1000単位/ml、アムホテリシンB(AMP B)180μg/ml、ナリジクス酸(NA)400μg/ml、トリメトプリム(TMP)10.5μg/ml、アズロシリン(AZL)34μg/mlおよびバンコマイシン(VAN)5μg/mlを含有する。
【0068】
新規のサプリメントに関しては、新規のオートクレーブ可能なBacT/ALERT(登録商標)MP瓶(上述のような)を使用し、従来の/旧いRFに関しては、従来の/旧いMP瓶を使用した。新規の、および従来の/旧いMP培養瓶(バイオメリュー社)にマイコバクテリア培地を接種する前に、FAの補給のある、またはない新規のサプリメント0.5mlまたは従来の/旧いRF0.5mlを、BacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶の1つめのセットに添加した。(FAの補給のある、またはない新規のサプリメントおよび従来の/旧いRFを使って)再水和した従来のMASをMP培養瓶の2つめのセットに添加した。およそ0.5×103CFU/mlを接種した後、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレおよびヒト型結核菌の培地に関して、これらの瓶内の増殖(増殖のTTD)を比較した。Middlebrook 7H10寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、培地の接種量と純度を検証した。接種されたMP瓶は、BacT/ALERT(登録商標)3D(バイオメリュー社)ノンロッキングシステムに35〜37℃で35日間装填した。BacT/ALERT(登録商標)装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。結果を表2および図1A〜図1Cに示す。
【0069】
【表2】
ヒト型結核菌、マイコバクテリウム・イントラセルラーレおよびマイコバクテリウム・アビウムのTTD結果
【0070】
図1Aは、長鎖脂肪酸の補給のある場合とない場合のFAを含まない(FAF)BSAを含有する培地におけるヒト型結核菌のTTD結果を示す。図1Aに示すように、FAの補給のないBSAを含有する試料と比較して、FAを補給したFAを含まないBSAを含有する試料にはTTDの低減が見られた。
【0071】
図1Bは、長鎖脂肪酸の補給のある場合とない場合のFAを含まない(FAF)BSAを含有する培地におけるマイコバクテリウム・イントラセルラーレのTTD結果を示す。図1Bに示すように、FAの補給のないBSAを含有する試料と比較して、FAを補給したFAを含まないBSAを含有する試料にはTTDの低減が見られた。
【0072】
図1Cは、長鎖脂肪酸の補給のある場合とない場合のFAを含まない(FAF)BSAを含有する培地におけるマイコバクテリウム・アビウムのTTD結果を示す。図1Cに示すように、FAの補給のないBSAを含有する試料と比較して、FAを補給したFAを含まないBSAを含有する試料にはTTDの低減が見られた。
【0073】
この結果によって、マイコバクテリア抗菌サプリメント(MAS)と新規の栄養サプリメント(NS)の存在する場合には、ヒト型結核菌、マイコバクテリウム・イントラセルラーレおよびマイコバクテリウム・アビウムのTTDに2〜2.5日の向上のあることが証明された。上述のように、新規のNSは、脂肪酸を含まないBSAおよび補給された長鎖脂肪酸を含む。
【0074】
実施例2:α-ケトグルタラートを使った場合と使わない場合のマイコバクテリア菌株のTTD
マイコバクテリアのTTDをさらに向上させるために、マイコバクテリア細胞経路内の二酸化炭素生成酵素の基質および/または補因子をさらなる研究のために選択した。これらの基質および/または補因子には、α-ケトグルタラート、イソクエン酸、L‐リンゴ酸、オキサロ酢酸、乳酸およびL‐アルギニンがある。FAを含む新規のサプリメントを上述のように調製し、フィルタ滅菌した。基質を新規のサプリメントに異なる濃度で添加した。
【0075】
4種のマイコバクテリアを0.5×l03CFU/mlで試験した。α-ケトグルタラートの異なる濃度の効果を、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレおよびヒト型結核菌の培地の増殖(増殖のTTD)に関して調べた。新規のオートクレーブ可能なBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶を使用した(上述に示す)。MP培養瓶にマイコバクテリア培地を接種する前に、種々の量のα-ケトグルタラートを含む新規のサプリメント5mlを新規のBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶に添加した。Middlebrook 7H10寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、培地の接種量と純度を検証した。接種されたMP瓶は、BacT/ALERT(登録商標)3Dノンロッキングシステムに35〜37℃で35日間装填した。BacT/ALERT(登録商標)装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。
【0076】
5gおよび15g/Lの2つの濃度のα-ケトグルタラートを含む主要なマイコバクテリア種のTTDの結果を表3および図2に示す。表3および図2は、α-ケトグルタラート(5g/Lまたは15g/L)を培地に添加することにより、α-ケトグルタラートを含有しない培地と比較して、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレおよびヒト型結核菌の培地における増殖の検出時間(TTD)がおよそ2日間低減されたことを示している。
【0077】
異なる濃度のイソクエン酸、L‐リンゴ酸、オキサロ酢酸、乳酸およびL‐アルギニンを使って同様の実験を行った。しかしながら、α-ケトグルタラートとは異なり、これらのその他の基質はTTDの低減は示さなかった(データは示さず)。
【0078】
【表3】
α-ケトグルタラートを使った場合と使わない場合のマイコバクテリア種のTTD
【0079】
実施例3:従来のMASを使った場合のマイコバクテリア種のTTD
ポリミキシンB(POLY B)、アムホテリシンB(AMP B)、ナリジクス酸(NA)、トリメトプリム(TMP)、アズロシリン(AZL)およびバンコマイシン(VAN)を含む6つの薬物の効果を研究することによって、マイコバクテリアの増殖に対する従来のMASの有効性を決定した。これらの研究はまた、マイコバクテリアの増殖に悪影響を及ぼす薬物とその濃度を同定するためにも行った。
【0080】
増殖能力に関して、従来の/旧いRFを調製し、濃度の異なる6つの抗菌薬を添加した。濃度は従来のMASの濃度よりも25〜50%高いか、または低いレベルに選択した。従来のMASの濃度は、ポリミキシンB(POLY B)1000単位/ml、アムホテリシンB(AMP B)180μg/ml、ナリジクス酸(NA)400μg/ml、トリメトプリム(TMP)10.5μg/ml、アズロシリン(AZL)34μg/ml、バンコマイシン(VAN)5μg/mlである。
【0081】
アズロシリンを使って、培地内におけるマイコバクテリウム・イントラセルラーレ、カンサシ菌、マイコバクテリウム・スクロフラセウムおよびヒト型結核菌の増殖(増殖のTTD)を決定した。唾液試料(汚染呼吸器内細菌叢すなわちCRFと呼ばれる)に存在するグラム陽性菌、グラム陰性菌および酵母菌の抑制も同じ処方と並行して研究した(データは示さず)。
【0082】
この評価には、従来の、または旧いMP処方(バイオメリュー社)を使用した。MP培養瓶にマイコバクテリアまたはその他の細菌/イースト菌培地を接種する前に、異なる薬物を使った従来の/旧いRF0.5mlを従来のBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶(バイオメリュー社)に添加した。Middlebrook 7H10または羊血液またはトリプチックソイの寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、培地の接種量と純度を検証した。接種されたMP瓶は、マイコバクテリア培地に関しては、BacT/ALERT(登録商標)3D(バイオメリュー社)ノンロッキングシステムに35〜37℃で35日間装填し、他の培地に関しては、最大15日間装填した。BacT/ALERT(登録商標)装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。結果を表4および表5ならびに図3および図4に示す。
【0083】
表4と図3に示すように、培地におけるアズロシリンの使用は、抗菌剤を含有しない培地と比較すると、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ、カンサシ菌、マイコバクテリウム・スクロフラセウム、およびヒト型結核菌の増殖(増殖のTTDによって決定される)に悪影響を及ぼした。
【0084】
培地内でバンコマイシンを使って、カンサシ菌、マイコバクテリウム・スクロフラセウム、およびヒト型結核菌に関する増殖(増殖のTTD)を決定した。
【0085】
表5および図4に示すように、培地におけるバンコマイシンの使用は、抗菌剤を含有しない培地と比較すると、カンサシ菌、マイコバクテリウム・スクロフラセウムおよびヒト型結核菌の増殖(増殖のTTD)に悪影響を及ぼした。
【0086】
培地におけるその他の薬物の使用は、より高い濃度で試験してもマイコバクテリアの増殖に悪影響を与えなかった(データは示さず)。薬物の濃度を上げると、グラム陰性菌のいくつかの例外を除き、CRFのほとんどを10〜15日間抑制することができた(データは示さず)。
【0087】
【表4】
アズロシリン(AZL)の存在下でのマイコバクテリア種のTTD
【0088】
【表5】
バンコマイシン(VAN)の存在下でのマイコバクテリア種のTTD
【0089】
実施例4:種々のMAS処方を使った種々のマイコバクテリウム種のTTD
マイコバクテリアのTTDを向上させるために、種々の薬物をスクリーニングして汚染呼吸器内細菌叢(CRF)を抑制させる能力について調べた。これらの評価から、ホスホマイシンがCRFの抑制には一番の選択であると考えられた。
【0090】
新規のMAS混合物のための最良の処方を決定するために研究を行い、異なる濃度のTMP、NA、FOSおよびPOLY Bを含有させて種々の処方を試験した。下記の処方、すなわち(1)NS:新規の瓶+栄養サプリメント(NS)、(2)RF:従来の/旧いMP瓶+従来の/旧い再構成液、(3)処方1:NS+TMP(30μg/ml)、NA(600μg/ml)、POLY B(1250単位/ml)、FOS(600μg/ml)、Amp B(180μg/ml‐PIまたはIFU)、(4)処方2:NS+TMP(30μg/ml)、NA(400μg/ml‐PIまたはIFU)、POLY B(1250単位/ml)、FOS(600μg/ml)、Amp B(180μg/ml‐PIまたはIFU)、(5)処方3:NS+TMP(30μg/ml)、NA(400μg/ml‐PIまたはIFU)、POLY B(1500単位/ml)、FOS(600μg/ml)、Amp B(180μg/ml‐PIまたはIFU)、(6)処方4:NS+TMP(30μg/ml)、NA(600μg/ml)、POLY B(1250単位/ml)、FOS(600μg/ml)、Amp B(180μg/ml‐PIまたはIFU)および(7)処方5:NS+TMP(50μg/ml)、NA(400μg/ml‐NS+TMP)、POLY B(1250単位/ml)、FOS(600μg/ml)、Amp B(180μg/ml‐PIまたはIFU)を評価した。ここで、TMPはトリメトプリム、NAはナリジクス酸、POLY BはポリミキシンB、FOSはホスホマイシン、Amp BはアムホテリシンBである。
【0091】
脂肪酸を含まない(FAF)BSA、5つの長鎖脂肪酸およびα-ケトグルタラートを含有する栄養サプリメント(NS)と呼ばれる新規のサプリメントを先に説明したように調製し、フィルタ滅菌した。新規のオートクレーブ可能なMP培養瓶(上述に示す)をこの研究のために使用した。表6は新規のMP培養瓶および栄養サプリメント(NS)の組成を示す。
【0092】
【表6】
新規の培養瓶および新規の栄養サプリメント処方
【0093】
新規のNSにはオートクレーブされた、または新規のBacT/ALERT(登録商標)MP瓶を使用し(上述に示す)、従来の/旧いRFには従来の/旧いMP瓶(バイオメリュー社)を使用した。従来のまたは新規のMP培養瓶にマイコバクテリアまたは他の細菌/イースト菌培地を接種する前に、栄養サプリメント(新規のNS)0.5mlまたは異なる薬物を使った従来の/旧いRF0.5mlをBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶の1つめのセットに添加した。従来のMAS(従来の/旧いRFを使用)および新規のMAS処方(NSを使用)をMP培養瓶の2つめのセットに添加した。マイコバクテリア種0.5×l03CFU/mlおよびCRF培地0.5×l05CFU/mlで実験を行った。Middlebrook 7H10または羊血液またはトリプチックソイの寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、接種量と培地純度を検証した。接種されたMP瓶は、BacT/ALERT(登録商標)3D(バイオメリュー社)ノンロッキングシステムに35〜37℃でマイコバクテリア培地に関しては35日間装填し、他の培地に関しては最大で15日間装填した。BacT/ALERT(登録商標)装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。結果を表7および図5A〜図5Fに示す。
【0094】
従来の/旧いMASと比較して、新規のMAS処方は全てグラム陰性菌のより優れた抑制を達成した。従来の/旧いMASと比較して、新規の処方では、スタヒロコッカス種とエンテロコッカス種に飛躍的な増殖があった。
【0095】
表7および図5Aは種々のMAS処方を使ったヒト型結核菌18283のTTDを示す。5つの新規の処方は全て、MASの従来の/旧い処方と比較すると、TTDの向上を示した。新規のMAS処方を使ったヒト型結核菌18283のTTDの向上はおよそ6〜8日であった。
【0096】
表7および図5Bは、種々のMAS処方を使ったヒト型結核菌27294のTTDを示す。5つの新規の処方は全て、MASの従来の/旧い処方と比較すると、TTDの向上を示した。新規のMAS処方を使ったヒト型結核菌27294のTTDの向上はおよそ3〜4日であった。
【0097】
表7および図5Cは種々のMAS処方を使ったマイコバクテリウム・アビウム569のTTDを示す。5つの新規の処方は全て、MASの従来の/旧い処方と比較すると、TTDの向上を示した。新規のMAS処方を使ったマイコバクテリウム・アビウム569のTTDの向上はおよそ6〜7日であった。
【0098】
表7およびと図5Dは、種々のMAS処方を使ったマイコバクテリウム・イントラセルラーレ13950のTTDを示す。5つの新規の処方は全て、MASの従来の/旧い処方と比較すると、TTDの向上を示した。新規のMAS処方を使ったマイコバクテリウム・イントラセルラーレ13950のTTDの向上はおよそ8〜9日であった。
【0099】
表7および図5Eは、種々のMAS処方を使ったマイコバクテリウム・スクロフラセウム19981のTTDを示す。5つの新規の処方は全て、MASの従来の/旧い処方と比較すると、TTDの向上を示した。新規のMAS処方を使ったマイコバクテリウム・スクロフラセウム19981におけるTTDの向上はおよそ6〜7日であった。とりわけマイコバクテリウム・スクロフラセウム19981について試験した5つの試料のうちの2つは、従来の/旧いMAS処方では増殖が見られなかった。
【0100】
表7と図5Fは種々のMAS処方を使ったカンサシ菌12478のTTDを示す。5つの新規の処方は全て、MASの従来の/旧い処方と比較すると、TTDの向上を示した。従来の/旧いMAS処方を使って検出した増殖のない場合と比較すると、新規のMASを使った場合、カンサシ菌12478のTTD検出はおよそ13〜14日であった。
【0101】
【表7】
様々な種のTTD
【0102】
実施例5:ヒト型結核菌複合体の増殖のTTDに関する以前のMAS処方と新規のMAS処方との比較
さらなる試験のために、新規のMP瓶の処方と栄養サプリメントおよび新規のMASの処方5とを選択した。この研究はマイコバクテリウム・アフリカヌム、ウシ型結核菌、ネズミ型結核菌およびヒト型結核菌を含むヒト型結核菌複合体菌株によって行った。処方5の成分は、NS+TMP(50μg/ml)、NA(400μg/ml‐PIまたはIFU)、POLY B(1250単位/ml)、FOS(600μg/ml)、Amp B(180μg/ml‐PIまたはIFU)であった。
【0103】
新規のMAS処方とNSには、新規のオートクレーブしたBacT/ALERT(登録商標)MP瓶(上述に示す)を使用し、従来の/旧いRFには、従来の/旧いMP瓶(バイオメリュー社)を使用した。従来のまたは新規のMP培養瓶にマイコバクテリア培地を接種する前に、栄養サプリメント(新規のNS)0.5mlまたは異なる薬物を使った従来の/旧いRF0.5mlをBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶の1つめのセットに添加した。従来のMAS(従来の/旧いRFを使用)および新規のMAS処方(NSを使用)をMP培養瓶の2つめのセットに添加した。
【0104】
マイコバクテリアの接種量は0.5×l03CFU/mlであった。Middlebrook 7H10または羊血液またはトリプチックソイの寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、培地の接種量および純度を検証した。マイコバクテリア培地に関しては、接種されたMP瓶をBacT/ALERT(登録商標)3D(バイオメリュー社)ノンロッキングシステムに35〜37℃で35日間装填した。BacT/ALERT装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。
【0105】
従来の/旧いRFおよびMAS(RF+従来の/旧いMAS)と新規の栄養サプリメントおよび新規のMAS(NS+新規のMAS)とを比較して、ヒト型結核菌複合体菌株の増殖(増殖のTTD)を決定した。TTDは、RF+従来の/旧いMAS培地およびNS+新規のMAS培地内の5つのヒト型結核菌複合体菌株のうちの4つ、すなわちマイコバクテリウム・アフリカヌム、ウシ型結核菌、ネズミ型結核菌およびヒト型結核菌に関して決定した。結果を表8および図6に示す。
【0106】
表8および図6に示すように、NS+新規のMASは、RF+従来の/旧いMASと比較すると、ヒト型結核菌複合体菌株に関する増殖のTTDにおよそ1〜10日の向上を示した。
【0107】
【表8】
ヒト型結核菌複合体のTTD
【0108】
実施例6:結核菌以外のマイコバクテリア(MOTT)の増殖のTTDに関する以前のMAS処方と新規のMAS処方との比較
さらなる試験のために、新規のMP瓶の処方と、栄養サプリメント(NS)および新規のMASの処方5とを選択した。この研究は、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ、カンサシ菌およびマイコバクテリウム・スクロフラセウムを含む、結核菌以外のマイコバクテリア(MOTT)の菌株によって行った。処方5の組成は、NS+TMP(50μg/ml)、NA(400μg/ml‐PIまたはIFU)、POLY B(1250単位/ml)、FOS(600μg/ml)、Amp B(180μg/ml‐PIまたはIFU)であった。
【0109】
新規の処方とNSには、オートクレーブした、または新規のBacT/ALERT(登録商標)MP瓶(上述に示す)を使用し、従来の/旧いRFには、従来の/旧いMP瓶(バイオメリュー社)を使用した。旧いまたは新規のMP培養瓶にマイコバクテリア培地を接種する前に、栄養サプリメント(新規のNS)0.5mlまたは異なる薬物を使った従来の/旧いRF0.5mlをBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶の1つめのセットに添加した。従来のMAS(従来の/旧いRFを使用)および新規のMAS処方(NSを使用)をMP培養瓶の2つめのセットに添加した。
【0110】
マイコバクテリアの接種量は0.5×l03CFU/mlであった。Middlebrook 7H10または羊血液またはトリプチックソイの寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、培地の接種量と純度を検証した。マイコバクテリア培地に関して、接種されたMP瓶はBacT/ALERT(登録商標)3D(バイオメリュー社)ノンロッキングシステムに35〜37℃で35日間装填した。BacT/ALERT(登録商標)装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。結果を表9および図7に示す。
【0111】
表9および図7に示すように、NS+新規のMASは、RF+従来の/旧いMASと比較すると、結核菌以外のマイコバクテリア(MOTT)のTTDにおよそ1〜12日の向上が示された。
【0112】
【表9】
結核菌以外のマイコバクテリア(MOTT)のTTD
【0113】
実施例7:ヒト型結核菌の菌株におけるTTDに関する以前のMAS処方と異なるFOS濃度を使った2つの新規のMAS処方との比較
FOS濃度を600μg/mlから800μg/mlに増やして、CRFのより優れた抑制を達成するために、新規のMASの処方5をさらに精製した。次の研究は、0.5×l03CFU/mlで、10のヒト型結核菌の菌株を使って行った。10の結核菌の菌株は、4つのCDC分離株、5つの毒性ATCC菌株および1つのQC参考菌株から構成される。
【0114】
新規の処方と新規のNSには、オートクレーブした、または新規のBacT/ALERT(登録商標)MP瓶(上述に示す)を使用し、従来の/旧いRFには、従来の/旧いMP瓶(バイオメリュー社)を使用した。従来のまたは新規のMP培養瓶にマイコバクテリア培地を接種する前に、栄養サプリメント(新規のNS)0.5mlまたは異なる薬物を使った従来の/旧いRF0.5mlをBacT/ALERT(登録商標)MP培養瓶の1つめのセットに添加した。従来のMAS(従来の/旧いRFを使用)および新規のMAS処方(NSを使用)をMP培養瓶の2つめのセットに添加した。
【0115】
マイコバクテリアの接種量は0.5×l03CFU/mlであった。Middlebrook 7H10または羊血液またはトリプチックソイの寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、培地の接種量および純度を検証した。マイコバクテリア培地に関しては、接種されたMP瓶はBacT/ALERT(登録商標)3D(バイオメリュー社.)ノンロッキングシステムに35〜37℃で35日間装填した。BacT/ALERT(登録商標)装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。結果を表10に示す。
【0116】
表10に示すように、新規のMAS処方はRF+従来の/旧いMASと比較して、ヒト型結核菌の菌株のTTDにおよそ2〜8日の向上を示した。
【0117】
【表10】
600μg/ml(MAS 5)および800μg/ml(処方5+FOS200μg/ml)を含有する新規のMAS処方を使った種々のヒト型結核菌の菌株のTTD
【0118】
実施例8:汚染呼吸器内細菌叢(CRF)の抑制に関する、以前のMAS処方と異なるFOS濃度を有する2つの新規のMAS処方との比較
FOS濃度を600μg/mlから800μg/mlに増やして、CRFのより優れた抑制を達成するために、新規のMASの処方5をさらに精製した。従来の/旧いRFおよびMAS(RF+従来の/旧いMAS)と新規の栄養サプリメントおよび新規のMAS処方(NS+新規のMAS)とを比較して、種々のグラム陽性またはグラム陰性の細菌およびイースト菌培地に関して、増殖があるかない(NG)かを決定した。新規のMAS処方は、処方5+200μg/mlのFOS(合計で800μg/mlのFOS)を含有する。CRFは0.6×104CFU/mlで試験した。羊血液またはトリプチックソイの寒天平板を使ってコロニー数の計数も行い、培地の接種量と純度を検証した。全ての培地に関して、接種されたMP瓶をBacT/ALERT(登録商標)3D(バイオメリュー社)ノンロッキングシステムに35〜37℃で15日間装填した。BacT/ALERT(登録商標)装置によって瓶が陽性であると示されると、検出時間(TTD)データを収集した。
【0119】
表11は、新規のMASの処方が従来の/旧いMAS処方と比較してCRFの増殖を抑制するにはより優れた処方であることを示している。
【0120】
【表11】
汚染呼吸器内細菌叢(CRF)の抑制を示す表
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイコバクテリアの増強された増殖の方法において、マイコバクテリアを含有すると疑われる試料を、脂肪酸を含まないBSAと、1つまたは複数の長鎖脂肪酸と、抗菌サプリメントとを含む培地に添加するステップと、該培地を前記マイコバクテリアの増殖に適した条件にさらすステップとを含み、前記脂肪酸を含まないBSAおよび前記1つまたは複数の長鎖脂肪酸は、前記マイコバクテリアの増殖を増強させる、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記増強された増殖は、マイコバクテリアの増殖の検出時間を少なくとも約1日低減させることを含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記1つまたは複数の長鎖脂肪酸は10以上の炭素原子を有する脂肪酸である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記脂肪酸を、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびこれらの塩からなる群より選択する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記抗菌サプリメントは、1つまたは複数の抗菌物質を、前記培地において細菌、イースト菌またはカビ汚染を阻害するのに十分な量で含み、前記1つまたは複数の抗菌物質を、抗生物質、静菌剤、殺菌剤、抗菌薬、抗ウィルス剤、抗真菌剤、抗原虫薬および抗寄生虫薬からなる群より選択する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記1つまたは複数の抗菌物質は、1つまたは複数の抗生物質を含み、該1つまたは複数の抗生物質を、ポリミキシンB、バンコマイシン、アズロシリン、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンからなる群より選択する、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、前記抗菌サプリメントは、ポリミキシンB、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンを含む、方法。
【請求項8】
マイコバクテリウム種による感染の診断の方法において、(a)培地を用意するステップと、(b)栄養サプリメントを前記培地に添加するステップであって、前記栄養サプリメント添加物は脂肪酸を含まないBSAと1つまたは複数の長鎖脂肪酸とを含む、ステップと、(c)前記マイコバクテリウム種の有無について決定する試料を添加するステップと、(d)前記マイコバクテリウム種の存在について前記培地を分析するステップと、を含み、前記マイコバクテリウム種の存在の発見は、前記感染の陽性診断を示す、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記1つまたは複数の長鎖脂肪酸は、10以上の炭素原子を有する脂肪酸である、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、前記脂肪酸を、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびこれらの塩からなる群より選択する、方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法において、前記試料を、血清、血漿、唾液、痰、吸引液およびスワッブ試料からなる群より選択する、方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法において、前記培地はさらに抗菌サプリメントを含み、該抗菌サプリメントは前記試料をステップ(c)で添加する前に添加する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記抗菌サプリメントは前記栄養サプリメントを使って懸濁し、前記栄養サプリメントで懸濁した抗菌サプリメントをステップ(b)で前記培地に添加する、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法において、前記抗菌サプリメントは、ポリミキシンB、バンコマイシン、アズロシリン、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンからなる群より選択する1つまたは複数の抗生物質を含む、方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法において、前記抗菌サプリメントは、ポリミキシンB、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンを含む、方法。
【請求項16】
培地内のマイコバクテリアの増殖を検出するキットであって、該キットは、(1)基本培地を含有する培養瓶と、(2)脂肪酸を含まないBSAと1つまたは複数の長鎖脂肪酸とを含む栄養サプリメントと、(3)前記培地内で汚染呼吸器内細菌叢の増殖を抑制する1つまたは複数の抗菌剤を含む抗菌サプリメントとを含む、キット。
【請求項17】
請求項16に記載のキットにおいて、前記増殖は、マイコバクテリア増殖の検出時間を少なくとも約1日低減させることを含む、キット。
【請求項18】
請求項16に記載のキットにおいて、前記基本培地はMiddlebrook 7H9である、キット。
【請求項19】
請求項16に記載のキットにおいて、前記基本培地は熱不安定性成分を含有しない、キット。
【請求項20】
請求項19に記載のキットにおいて、前記培養瓶および前記基本培地はオートクレーブによって滅菌する、キット。
【請求項21】
請求項16に記載のキットにおいて、前記1つまたは複数の長鎖脂肪酸は、10以上の炭素原子を有する脂肪酸である、キット。
【請求項22】
請求項21に記載のキットにおいて、前記脂肪酸を、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびこれらの塩からなる群より選択する、キット。
【請求項23】
請求項16に記載のキットにおいて、前記抗菌サプリメントはホスホマイシンを含む、キット。
【請求項24】
請求項23に記載のキットにおいて、前記抗菌サプリメントは、ポリミキシンB、バンコマイシン、アズロシリン、アムホテリシンB、ナリジクス酸およびトリメトプリムからなる群より選択した1つまたは複数の付加的な抗生物質をさらに含む、キット。
【請求項25】
請求項24に記載のキットにおいて、前記抗菌サプリメントは、ポリミキシンB、バンコマイシン、アムホテリシンB、ナリジクス酸およびトリメトプリムをさらに含む、キット。
【請求項26】
培地内でマイコバクテリアの増殖を増強させるために前記培地に添加することのできる抗菌サプリメントであって、該抗菌サプリメントは、前記培地に存在しうる汚染呼吸器内細菌叢の増殖を抑制する少なくとも1つの抗菌剤を含み、該少なくとも1つの抗菌剤はホスホマイシンであり、前記抗菌サプリメントはアズロシリンおよびバンコマイシンを欠いており、前記抗菌サプリメントはマイコバクテリアの増殖の検出時間を少なくとも約1日低減させる、抗菌サプリメント。
【請求項27】
請求項26に記載のサプリメントにおいて、前記抗菌サプリメントは、ポリミキシンB、バンコマイシン、アムホテリシンB、ナリジクス酸およびトリメトプリムをさらに含む、サプリメント。
【請求項28】
マイコバクテリアの増殖のために、培地内の汚染呼吸器内細菌叢の増殖を抑制する抗菌サプリメントであって、該抗菌サプリメントは、抗真菌剤、細胞質膜透過性を変化させるグラム陰性抗生物質、DNAジャイレースを阻害する広域スペクトル抗生物質、ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害する薬剤、およびエノールピルビン酸塩トランスフェラーゼを阻害する広域スペクトル抗生物質から構成される、抗菌サプリメント。
【請求項29】
請求項28に記載のサプリメントにおいて、前記抗菌サプリメントは、ポリミキシンB、バンコマイシン、アムホテリシンB、ナリジクス酸およびトリメトプリムから構成される、サプリメント。
【請求項1】
マイコバクテリアの増強された増殖の方法において、マイコバクテリアを含有すると疑われる試料を、脂肪酸を含まないBSAと、1つまたは複数の長鎖脂肪酸と、抗菌サプリメントとを含む培地に添加するステップと、該培地を前記マイコバクテリアの増殖に適した条件にさらすステップとを含み、前記脂肪酸を含まないBSAおよび前記1つまたは複数の長鎖脂肪酸は、前記マイコバクテリアの増殖を増強させる、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記増強された増殖は、マイコバクテリアの増殖の検出時間を少なくとも約1日低減させることを含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記1つまたは複数の長鎖脂肪酸は10以上の炭素原子を有する脂肪酸である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記脂肪酸を、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびこれらの塩からなる群より選択する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記抗菌サプリメントは、1つまたは複数の抗菌物質を、前記培地において細菌、イースト菌またはカビ汚染を阻害するのに十分な量で含み、前記1つまたは複数の抗菌物質を、抗生物質、静菌剤、殺菌剤、抗菌薬、抗ウィルス剤、抗真菌剤、抗原虫薬および抗寄生虫薬からなる群より選択する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記1つまたは複数の抗菌物質は、1つまたは複数の抗生物質を含み、該1つまたは複数の抗生物質を、ポリミキシンB、バンコマイシン、アズロシリン、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンからなる群より選択する、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、前記抗菌サプリメントは、ポリミキシンB、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンを含む、方法。
【請求項8】
マイコバクテリウム種による感染の診断の方法において、(a)培地を用意するステップと、(b)栄養サプリメントを前記培地に添加するステップであって、前記栄養サプリメント添加物は脂肪酸を含まないBSAと1つまたは複数の長鎖脂肪酸とを含む、ステップと、(c)前記マイコバクテリウム種の有無について決定する試料を添加するステップと、(d)前記マイコバクテリウム種の存在について前記培地を分析するステップと、を含み、前記マイコバクテリウム種の存在の発見は、前記感染の陽性診断を示す、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記1つまたは複数の長鎖脂肪酸は、10以上の炭素原子を有する脂肪酸である、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、前記脂肪酸を、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびこれらの塩からなる群より選択する、方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法において、前記試料を、血清、血漿、唾液、痰、吸引液およびスワッブ試料からなる群より選択する、方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法において、前記培地はさらに抗菌サプリメントを含み、該抗菌サプリメントは前記試料をステップ(c)で添加する前に添加する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記抗菌サプリメントは前記栄養サプリメントを使って懸濁し、前記栄養サプリメントで懸濁した抗菌サプリメントをステップ(b)で前記培地に添加する、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法において、前記抗菌サプリメントは、ポリミキシンB、バンコマイシン、アズロシリン、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンからなる群より選択する1つまたは複数の抗生物質を含む、方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法において、前記抗菌サプリメントは、ポリミキシンB、アムホテリシンB、ナリジクス酸、トリメトプリムおよびホスホマイシンを含む、方法。
【請求項16】
培地内のマイコバクテリアの増殖を検出するキットであって、該キットは、(1)基本培地を含有する培養瓶と、(2)脂肪酸を含まないBSAと1つまたは複数の長鎖脂肪酸とを含む栄養サプリメントと、(3)前記培地内で汚染呼吸器内細菌叢の増殖を抑制する1つまたは複数の抗菌剤を含む抗菌サプリメントとを含む、キット。
【請求項17】
請求項16に記載のキットにおいて、前記増殖は、マイコバクテリア増殖の検出時間を少なくとも約1日低減させることを含む、キット。
【請求項18】
請求項16に記載のキットにおいて、前記基本培地はMiddlebrook 7H9である、キット。
【請求項19】
請求項16に記載のキットにおいて、前記基本培地は熱不安定性成分を含有しない、キット。
【請求項20】
請求項19に記載のキットにおいて、前記培養瓶および前記基本培地はオートクレーブによって滅菌する、キット。
【請求項21】
請求項16に記載のキットにおいて、前記1つまたは複数の長鎖脂肪酸は、10以上の炭素原子を有する脂肪酸である、キット。
【請求項22】
請求項21に記載のキットにおいて、前記脂肪酸を、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびこれらの塩からなる群より選択する、キット。
【請求項23】
請求項16に記載のキットにおいて、前記抗菌サプリメントはホスホマイシンを含む、キット。
【請求項24】
請求項23に記載のキットにおいて、前記抗菌サプリメントは、ポリミキシンB、バンコマイシン、アズロシリン、アムホテリシンB、ナリジクス酸およびトリメトプリムからなる群より選択した1つまたは複数の付加的な抗生物質をさらに含む、キット。
【請求項25】
請求項24に記載のキットにおいて、前記抗菌サプリメントは、ポリミキシンB、バンコマイシン、アムホテリシンB、ナリジクス酸およびトリメトプリムをさらに含む、キット。
【請求項26】
培地内でマイコバクテリアの増殖を増強させるために前記培地に添加することのできる抗菌サプリメントであって、該抗菌サプリメントは、前記培地に存在しうる汚染呼吸器内細菌叢の増殖を抑制する少なくとも1つの抗菌剤を含み、該少なくとも1つの抗菌剤はホスホマイシンであり、前記抗菌サプリメントはアズロシリンおよびバンコマイシンを欠いており、前記抗菌サプリメントはマイコバクテリアの増殖の検出時間を少なくとも約1日低減させる、抗菌サプリメント。
【請求項27】
請求項26に記載のサプリメントにおいて、前記抗菌サプリメントは、ポリミキシンB、バンコマイシン、アムホテリシンB、ナリジクス酸およびトリメトプリムをさらに含む、サプリメント。
【請求項28】
マイコバクテリアの増殖のために、培地内の汚染呼吸器内細菌叢の増殖を抑制する抗菌サプリメントであって、該抗菌サプリメントは、抗真菌剤、細胞質膜透過性を変化させるグラム陰性抗生物質、DNAジャイレースを阻害する広域スペクトル抗生物質、ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害する薬剤、およびエノールピルビン酸塩トランスフェラーゼを阻害する広域スペクトル抗生物質から構成される、抗菌サプリメント。
【請求項29】
請求項28に記載のサプリメントにおいて、前記抗菌サプリメントは、ポリミキシンB、バンコマイシン、アムホテリシンB、ナリジクス酸およびトリメトプリムから構成される、サプリメント。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2012−531901(P2012−531901A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517883(P2012−517883)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/040564
【国際公開番号】WO2011/002862
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(502073946)ビオメリュー・インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/040564
【国際公開番号】WO2011/002862
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(502073946)ビオメリュー・インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】
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