説明

マイコバクテリウム・イントラセルラーレ検出用プライマー及びプローブ、並びにこれを用いたマイコバクテリウム・イントラセルラーレの検出方法

【課題】新規なM.イントラセルラーレ検出用プライマー、及びこれを用いた簡便、迅速且つ精度の高いM.イントラセルラーレの検出方法を提供する。
【解決手段】2種類の特定の塩基配列からなるプライマー対、該プライマー対を用いるM.イントラセルラーレの検出方法、及びキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の増幅及びその検出系を利用した、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare、以下、「M.イントラセルラーレ」と略記する場合がある。)を検出及び/又は同定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非結核性抗酸菌(nontuberculous mycobacterium)は、マイコバクテリウム(Mycobacterium、以下、単にM.と略記する場合がある。)属に分類される抗酸性の性質を持つグラム陽性桿菌で、結核菌群及びMycobacterium leprae以外の抗酸菌の一種である。喀痰の抗酸菌塗抹検査で陽性となった症例の15〜20%は、その後の菌種同定検査で非結核性抗酸菌と診断されている。
【0003】
非結核性抗酸菌のうち、臨床上問題となる菌種としては、M.イントラセルラーレ、Mycobacterium kansasii(マイコバクテリウム・カンサシイ)、Mycobacterium marinum(マイコバクテリウム・マリナム)、Mycobacterium gordonae(マイコバクテリウム・ゴルドネア)、Mycobacterium szulgai(マイコバクテリウム・スズルガイ)、Mycobacterium avium(マイコバクテリウム・アビウム)、Mycobacterium xenopi(マイコバクテリウム・ゼノピ)、Mycobacterium fortuitum(マイコバクテリウム・フォーチュイタム)、Mycobacterium chelonei(マイコバクテリウム・セロネイ)、Mycobacterium abscessus(マイコバクテリウム・アプセッサス)等が知られている。
【0004】
その中でもよく見られるのが、M.イントラセルラーレとM.aviumである。M.イントラセルラーレとM.aviumは非常によく似ており、区別が付きにくかったことから、M.イントラセルラーレとM.aviumをあわせてMycobacterium avium complex (MAC)と呼ばれる。非結核性抗酸菌症患者のおよそ70%はMAC感染症であり、次に多いのがM.kansasii症で、20%を占める。そして残る10%がその他の菌種による感染症である。
【0005】
非結核性抗酸菌は一般には毒力が弱く、健常人に対しては無害であるといわれている。しかし、まれにヒトに対して感染性を示す。中でもMACは、結核後遺症(肺感染症)を引き起こしたり、AIDSなどの易感染患者に対して日和見感染を引き起こすことが知られている。そのため、非結核性抗酸菌を迅速且つ正確に検出することは治療上、特に重要である。
【0006】
また、非結核性抗酸菌症は近年増加傾向にあるため、結核菌と非結核性抗酸菌を短時間で鑑別する方法の開発が強く望まれている。更に、M.イントラセルラーレ及びM.aviumを核酸増幅検出法で検出・診断する方法が健康保険の適用となったことからも、その診断上の意義は大きい。
【0007】
また、非結核性抗酸菌は、多くが抗結核薬に対して抵抗性を示す。そのため、患者に抗酸菌感染症の疑いがある場合、結核症か非結核性抗酸菌症かを鑑別診断することが、治療方針を決定するために重要である。更に、非結核性抗酸菌による病気は、その菌の種類によって治療法が夫々異なるので、その菌種を決めることも非常に重要である。しかし、非結核性抗酸菌症には特異的な臨床症状がない。そのため、臨床的所見、病理組織学的所見から結核症と非結核性抗酸菌症を鑑別し、更に非結核性抗酸菌の種類を特定することは極めて困難である。そのため、結核症か非結核性抗酸菌症かの診断は菌の同定によってなさなければならない。
【0008】
非結核性抗酸菌症の診断のために行う一般的な菌の同定法は、喀痰塗沫検査である。しかし、この検査では、その病原菌が「抗酸菌陽性」か否かということが判るだけで、その病原菌が結核菌か非結核性抗酸菌かということは鑑別できない。そこで、通常、喀痰塗末検査で陽性だった場合は、小川培地等の培地上で菌を分離培養することによって菌の培養検査を行い、結核菌か非結核性抗酸菌かを鑑別する。そして、さらに生化学的試験を行い、菌種の同定をする。しかしながら、一般にマイコバクテリウム属は発育が遅く、例えば、菌の分離培養だけで3〜4週間を要する。そして、菌種を同定するための各種生化学的試験の結果を得るまでに、更に2〜3週間を要する。そのため、従来の基本法である、以上のような塗沫検査や培養検査を行って結核症か否かの診断結果を得るという方法は、かなり時間がかかる方法である。
【0009】
一方、近年、遺伝子レベルで菌を検出する技術が開発されてきた。例えばポリメラーゼ連鎖反応(Polymerare Chain Reaction、PCR)等の核酸増幅技術を利用した診断技術が、菌を検出するための有用な手段として検討されている。この方法は感度が高いので、試料中に数個の菌があれば、菌を検出できる。また、短時間(長くても4日)で検出できる(菌種を同定できる)という利点がある。しかし、通常のPCR法では、菌数は判らない。また、生菌でも死菌でも区別無く検出してしまう。更に、試料に菌があれば、菌数の多少に関わらず陽性と判定される。そのため、PCR法では感染性の診断が不確実になる。更にまた、PCR法には、感度が高すぎるため、偽陽性の判定が出やすい等の問題点がある。
【0010】
PCR法を利用したM.イントラセルラーレの検出方法としては、例えばMacSequevar遺伝子領域、M.avium 19キロダルトンタンパク質(MAV19k)遺伝子領域、及びM.イントラセルラーレリボソームタンパク質s1遺伝子領域の二つ以上に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーの多重プライマーセットを用いて、MAC核酸の存否を検出する方法(特許文献1)がある。しかしながら、この検出方法ではM.イントラセルラーレとM.aviumを判別することはできない。また、使用したrps1プライマー(M.イントラセルラーレリボソームタンパク質s1遺伝子領域から設計されたプライマー)を用いたPCRでは、試料がM.avium分離株の場合にも増幅産物が検出されており、M.イントラセルラーレに対する特異性に問題がある。
【0011】
また、遺伝子挿入配列IS901の挿入部位を挟むDNA塩基配列を増幅するプライマーを用いてPCRを行い、得られた増幅産物の鎖長によって、トリ結核菌(M.avium)かM.イントラセルラーレかを判定する方法(特許文献2)も知られている。しかし、該プライマーを用いたPCRでは、試料がトリ結核菌(M.avium)の場合でもM.イントラセルラーレの場合でもプライマー伸長産物が得られるので、この判別方法はM.イントラセルラーレに特異的な方法とはいえない。また、プライマー伸長産物の鎖長によって両者を判別するという方法は、煩雑であるし、判定者によってその判定結果が異なる場合もあり得、確実な判定方法とは言えない。
【0012】
PCR法以外に、鎖置換増幅法(SDA法、Strand Displacement Amplification Method)を利用する検出方法もある。例えば、特開平10−4984号(特許文献3)には、マイコバクテリアのα抗原の一部分をコードするBCG85−B遺伝子の63ヌクレオチドセグメントを標的とする方法が開示されている。この方法は、M.イントラセルラーレとM.aviumの、両方の菌が持つBCG85−B遺伝子の標的配列を増幅させるプライマーを用いて、SDA法で核酸増幅反応を行い、そして、その結果をもとにMACを検出する方法である。即ち、該方法に用いられるプライマーは、M.イントラセルラーレとM.aviumの両方を増幅させるプライマーである。しかし、この方法では、当然のことながら、試料中にM.イントラセルラーレがある場合とM.aviumがある場合の両方の場合でプライマー伸長産物が得られる。そのため、この方法でMACを検出することはできるが、M.イントラセルラーレを特異的に検出することはできない。また、MACを検出する際であっても、偽陽性が出現する場合がある。
【0013】
特開2001−103986号公報(特許文献4)には、MACを検出するために用いられるプライマー、捕捉プローブ及び検出用プローブとして使用されるオリゴヌクレオチドが開示されている。しかしながら、該プライマーはM.イントラセルラーレと鳥型結核菌(M.avium)の両方の菌が持つdnaJ遺伝子からの48bp標的配列を増幅する。即ち、試料中にM.イントラセルラーレが存在する場合にも、M.aviumが存在する場合にも増幅反応が起こる。従って、該プライマーを用いてSDA法を行い、補足プローブ及び検出用プローブを用いてプライマー伸長産物を検出し、その結果に基づいてMACの検出を行うことはできる。しかし、M.aviumを検出せずに、M.イントラセルラーレを特異的に検出することはできない。
【0014】
その他、LAMP(Loop−Mediated Isothermal Amplification)法を利用し、M.イントラセルラーレの核酸を増幅する方法(特許文献5)等がある。しかし、LAMP法には増幅されたDNAの塩基配列を決定することができない、効率よく増幅できるDNAの長さに制限がある、偽陽性が出現する、等の問題がある。
【0015】
以上のことから、M.イントラセルラーレを特異的に且つ迅速に検出する方法を確立することが望まれている現状にあった。
【0016】
【特許文献1】特開平11−69999号公報
【特許文献2】特許第3111213号公報
【特許文献3】特開平10−4984号公報
【特許文献4】特開2001−103986号公報
【特許文献5】特開2005−204582号公報
【非特許文献1】F.Poly et al., J. Bacteriology, 2004, 186(14), p.4781−4795
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、診断上の偽陽性を排除した新規なM.イントラセルラーレ検出用プライマー、及びこれを用いた簡便、迅速且つ精度の高いM.イントラセルラーレの検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記課題を解決する目的で成されたもので、以下の構成よりなる。
(1)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列(但し、Aはアデニン、Cはシトシン、Gはグアニン、Tはチミンを表す。また、任意の位置のTはウラシル(U)と置換されていてもよい。以下同じ。)の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド。
(2)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含有する、M.イントラセルラーレ検出用プライマー。
(3)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含有する、M.イントラセルラーレ検出用プローブ。
(4)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマー及び/又はプローブとして用いることを特徴とするM.イントラセルラーレの検出方法。
(5)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマー及び/又はプローブとして含んでなる、M.イントラセルラーレ検出用試薬キット。
(6)配列番号1〜配列番号8のいずれかで表される塩基配列、又は配列番号1〜配列番号8のいずれかで表される塩基配列に対する相補配列からなり、且つマイコバクテリウム・イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ検出に使用するプライマーおよび/又はプローブ設計への使用。
【0019】
本発明者は、現在までに決定されたM.イントラセルラーレとその他の生物の各種遺伝子について、各種間の各遺伝子配列の相同性についての理論的検証と実験的検証を重ねた。その結果、マイクロアレイ法を用いた方法により得られたM.イントラセルラーレ由来の塩基配列の断片中に、M.イントラセルラーレの遺伝子配列の特定領域に特異的にハイブリダイズし、M.イントラセルラーレの検出に有用となる塩基配列が存在することを見出した。
【0020】
そこで、これらの知見をもとに更に鋭意研究の結果、M.イントラセルラーレに特異的なオリゴヌクレオチド(配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列)を得、これらの塩基配列がM.イントラセルラーレの検出に有用であることを見出した。そして更にこれらの配列をもとにM.イントラセルラーレ検出用プライマー及びプローブを開発し、これらを用いたM.イントラセルラーレの検出方法を確立するに到った。
【発明の効果】
【0021】
本発明のプライマー又は/及びプローブを用いたM.イントラセルラーレの検出方法によれば、従来の菌の培養検査等により菌種を同定する方法と比較して、はるかに迅速且つ高精度に、M.イントラセルラーレの検出を行うことができる。また、本発明の検出方法でM.イントラセルラーレの検出を行うことにより、従来のプライマー又は/及びプローブを用いたPCR法による診断方法に比較して、診断上の偽陽性が排除可能となり、より高精度に且つ正確に、しかも特異的にM.イントラセルラーレの検出及び診断を行うことができる。更に、本発明の検出方法を用いることにより、M.イントラセルラーレ菌体の定量を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】候補クローン1の塩基配列と、プライマーとして設計した塩基配列の存在位置を矢印で示す。
【図2】候補クローン2の塩基配列と、プライマーとして設計した塩基配列の存在位置を矢印で示す。
【図3】候補クローン3の塩基配列と、プライマーとして設計した塩基配列の存在位置を矢印で示す。
【図4】候補クローン4の塩基配列と、プライマーとして設計した塩基配列の存在位置を矢印で示す。
【図5】候補クローン5の塩基配列と、プライマーとして設計した塩基配列の存在位置を矢印で示す。
【図6】候補クローン6の塩基配列と、プライマーとして設計した塩基配列の存在位置を矢印で示す。
【図7】候補クローン7の塩基配列と、プライマーとして設計した塩基配列の存在位置を矢印で示す。
【図8】候補クローン8の塩基配列と、プライマーとして設計した塩基配列の存在位置を矢印で示す。
【図9】実施例1で得られた、プライマー02_Fw1及びプライマー02_Rv1を用い、M.イントラセルラーレ由来のDNA試料を鋳型として用いた、インターカレーター法によるリアルタイムPCRの結果をもとに得られた融解曲線解析の結果である。
【図10】実施例2で行ったリアルタイムPCR検出結果を示し、各PCR用DNA試料のゲノムのコピー数(x軸、対数値)に対するCt値(y軸)をプロットした検量線である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明において、M.イントラセルラーレ遺伝子とは、Mycobacterium intracellulareの持つ全ゲノム配列における任意の塩基配列単位(領域)をいう。Mycobacterium intracellulareの全ゲノム配列は、まだ解読されていない。
【0024】
本発明のオリゴヌクレオチドとしては、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列(但し、Aはアデニン、Cはシトシン、Gはグアニン、Tはチミンを表す。また、任意の位置のTはウラシル(U)と置換されていてもよい。以下同じ。)の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つマイコバクテリウム・イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが挙げられる(以下、「本発明のオリゴヌクレオチド」と略記する場合がある。)。
【0025】
本発明に係る、配列番号1で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは666塩基、配列番号2で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは1128塩基、配列番号3で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは1002塩基、配列番号4で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは747塩基、配列番号5で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは618塩基、配列番号6で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは510塩基、配列番号7で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは1005塩基、配列番号8で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは700塩基の大きさである。
【0026】
本発明に係る配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチドとしては、例えば、(1)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、更に好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するオリゴヌクレオチド、又は(2)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列中の、連続する10塩基以上、好ましくは15塩基以上、より好ましくは20塩基以上を含有することを特徴とするオリゴヌクレオチド等が挙げられる。
【0027】
本発明に係る配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の全部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0028】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号9〜203で表される塩基配列から選ばれる配列の一部若しくは全部を含有するものが挙げられる。好ましくは配列番号9〜203で表される塩基配列から選ばれる配列中の、連続する10塩基以上、好ましくは15塩基以上、より好ましくは20塩基以上を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0029】
配列番号9〜203で表される塩基配列から選ばれる配列の全部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号9〜203で表される塩基配列から選ばれる配列からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号9〜203で表される塩基配列から選ばれる配列を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0030】
配列番号1で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号9〜22又は配列番号139〜145で表される塩基配列から選ばれる配列を含有するものが挙げられる。
【0031】
配列番号2で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号23〜40又は配列番号146〜154で表される塩基配列から選ばれる配列を含有するものが挙げられる。
【0032】
配列番号3で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号41〜58又は配列番号155〜163で表される塩基配列から選ばれる配列を含有するものが挙げられる。
【0033】
配列番号4で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号59〜78又は配列番号164〜173で表される塩基配列から選ばれる配列を含有するものが挙げられる。
【0034】
配列番号5で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号79〜92又は配列番号174〜180で表される塩基配列から選ばれる配列を含有するものが挙げられる。
【0035】
配列番号6で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号93〜104又は配列番号181〜186で表される塩基配列から選ばれる配列を含有するものが挙げられる。
【0036】
配列番号7で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号105〜126又は配列番号187〜197で表される塩基配列から選ばれる配列を含有するものが挙げられる。
【0037】
配列番号8で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号127〜138又は配列番号198〜203で表される塩基配列から選ばれる配列を含有するものが挙げられる。
【0038】
本発明に係る、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチドとしては、例えば本発明の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとハイブリダイズする塩基配列の、一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチド等が挙げられる。
【0039】
上記の、本発明の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとハイブリダイズする塩基配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチドとは、具体的には、本発明の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、ハイストリンジェントな条件又はストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列の、一部若しくは全部を有するオリゴヌクレオチド等が挙げられる。
【0040】
尚、ここでいう「ハイストリンジェントな条件」とは、具体的には例えば「50%ホルムアミド中で42〜70℃で、好ましくは60〜70℃でのハイブリダイゼーション、その後0.2〜2×SSC、0.1% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)中で25〜70℃で洗浄」という条件である。
【0041】
また、「ストリンジェントな条件」とは、具体的には例えば「6×SSC又はこれと同等の塩濃度のハイブリダイゼーション溶液中、50〜70℃の温度の条件下で16時間ハイブリダイゼーションを行い、6×SSC又はこれと同等の塩濃度の溶液等で必要に応じて予備洗浄を行った後、1×SSC又はこれと同等の塩濃度の溶液等で洗浄」という条件である。
【0042】
本発明に係る配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の、一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチドの例としては、例えば、(1)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、更に好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するオリゴヌクレオチド、又は(2)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列中の、連続する10塩基以上、好ましくは15以上、より好ましくは20塩基以上を含有することを特徴とするオリゴヌクレオチド、等が挙げられる。
【0043】
本発明に係る配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の全部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0044】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号9〜203で表される塩基配列から選ばれる配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。好ましくは、配列番号9〜203で表される塩基配列から選ばれる配列に対する相補配列中の、連続する10塩基以上、好ましくは15塩基以上、更に好ましくは20塩基以上を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0045】
配列番号9〜配列番号203で表される塩基配列から選ばれる配列に対する相補配列の全部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号9〜203で表される塩基配列から選ばれる配列に対する相補配列からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号9〜203で表される塩基配列から選ばれる配列に対する相補配列を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0046】
本発明に係るM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドとは、前記した、M.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイストリンジェントな条件又はストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するオリゴヌクレオチド等が挙げられる。そのハイストリンジェントな条件及びストリンジェントな条件は、前記した通りである。
【0047】
尚、本発明のオリゴヌクレオチドはデオキシリボ核酸(DNA)でもリボ核酸(RNA)でもよい。リボ核酸の場合はチミジン残基(T)をウリジン残基(U)と読み替えることは言うまでもない。また合成に際して任意の位置のTをUに変えて合成を行なって得られた、ウリジン残基を含むDNAであってもよい。同様に任意の位置のUをTに変えたチミジン残基を含むRNAであってもよい。また、一つ若しくは複数のヌクレオチドが欠失、挿入或いは置換されていてもよい。一つ若しくは複数のヌクレオチドがイノシン(I)のような修飾ヌクレオチドであってもよい。
【0048】
本発明のオリゴヌクレオチドを得る方法としては、特に限定されないが、例えば自体公知の化学合成法により調製する方法が挙げられる。この方法では、ベクター等を用いる遺伝子操作法によりオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを得る方法(クローン化法)に比べ、容易、大量且つ安価に一定品質のオリゴヌクレオチドを得ることが可能である。
【0049】
例えば、DNAの合成に通常行われている、DNAシンセサイザーを用い、通常のホスホアミダイト法にてオリゴヌクレオチドを合成し、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを用いる常法により精製すれば、目的とする本発明のオリゴヌクレオチドを得ることができる。
【0050】
また、オリゴヌクレオチドの合成を業者に委託して、業者から購入しても良い。
【0051】
本発明の目的を達成し得るオリゴヌクレオチドを探索(スクリーニング)する手段としては、FEMS Microbiology Letters 166: 63−70, 1998 あるいはSystematic and Applied Microbiology 24: 109−112, 2001などに示されているサブトラクション法、即ち標的であるゲノムDNA由来フラグメント群から区別したい生物種由来のゲノムDNA由来フラグメント群と反応したものを差し引く事で、候補配列を濃縮する方法等がある。
【0052】
また、標的であるゲノムDNA及び区別したい生物種由来のゲノムDNAからの増幅産物のディファレンシャルディスプレイを作成するといったアプローチ、即ち任意にプライムされたポリメラーゼ連鎖反応(AP−PCR)を利用する方法等が考えられる(特開平11−155589号公報)。
【0053】
更に、いわゆるマイクロアレイ法と呼ばれる方法を利用することによっても、本発明の目的を達成し得るオリゴヌクレオチドを探索することができるし、本発明のオリゴヌクレオチドを得ることができる。その方法の概略は以下の通りである。
【0054】
即ち、例えばM.イントラセルラーレゲノム由来DNAのショットガン・クローンを作成し、得られたショットガン・クローンからDNAを精製する。次いで、そのシヨットガン・クローン由来の精製DNAを、PCR等により増幅させた後、スライドガラス上に配置させてマイクロアレイを作成する。別に、標的であるM.イントラセルラーレのゲノムDNAから蛍光標識(標識1)したDNAフラグメント群を作成する。一方、区別したい生物種由来のゲノムDNAからも蛍光標識(標識2)したDNAフラグメント群を別途に作成し、対照実験を行う。即ち、標識1及び標識2の各々を同一反応系で用いる競合ハイブリダイゼーション法によって、マイクロアレイ上の配列と、標識1及び標識2との反応性(結合性)を検定する。この検定により、標的であるM.イントラセルラーレのゲノムDNA由来フラグメント(標識1)と、より特異的に反応する配列候補群を選定できる(例えば非特許文献1等)ため、これにより目的のオリゴヌクレオチドを選別することができる。以下にマイクロアレイ法を用いた、本発明のオリゴヌクレオチドの選定方法の一例について詳説する。
【0055】
(1)M.イントラセルラーレ由来精製ゲノムDNAの調製
まず、M.イントラセルラーレ菌株を、常法(例えばオートクレーブ処理とガラスビーズ等を用いた菌体の粉砕処理)によって破砕処理した後、常法に従ってDNAの抽出,精製を行えばよい。
【0056】
(2)Whole Genome Shotgun libraryの作製
M.イントラセルラーレのWhole Genome Shotgun libraryの作製を行う方法の一例として、Venter et al., Science. 2001 Feb 16;291(5507):1304−1351 に記載のWhole Genome Shotgun法を改変した方法を、以下に説明する。
まず、前記(1)で得られたM.イントラセルラーレ由来精製ゲノムDNAを、適当な緩衝液等で希釈した後、例えば終濃度20%のグリセロール存在下、5kPa〜9kPaの圧力下で、ネビュライザーを用いて約1〜5分間処理し、DNAの断片化処理を行う。この処理方法により、目的とする500〜1000塩基対のサイズ画分を効率よく回収する事ができる。得られた画分を市販の抽出カラムを利用して精製する。
【0057】
その後、得られた画分(DNA断片。目的のDNA断片を含む。)を、常法に従いライゲーションによってベクターDNAに組み込んだ、組み換えDNA(M.イントラセルラーレのWhole Genome Shotgun library)を得る。
【0058】
そのために用いられるベクターDNAとしては、後で形質転換する宿主細胞が大腸菌の場合には、例えば、pBS[例えばpBSII sk+ベクター(Stratagene社)]、pQE−TRIプラスミド (Qiagen社製)、pBluescript、pET、pGEM−3Z、pGEX等のベクターが挙げられる。用いるベクターの種類によっては、ライゲーションの前に、予めDNA断片を、DNAポリメラーゼで処理して、DNA断片の末端を平滑化処理してもよい。
【0059】
次いで、得られた組み換えDNAを用いて、適当な宿主細胞を形質転換して形質転換体を得る。
【0060】
そのために用いられる宿主細胞としては例えば、大腸菌(E.coli)が挙げられ、好ましくはJM109、DH5α、TOP10等が挙げられる。この他、よりプラスミドやファージDNAの導入効率の高い、Competent Cell(コンピテントセル)を用いても良い。例えば、E. coli JM109 Competent Cells(タカラバイオ社製)等が挙げられる。
【0061】
形質転換は、例えば、D.M.Morrisonの方法(Method in Enzymology, 68, 326−331,1979)等により行うことができる。また、市販のCompetent Cellを用いる場合には、その製品プロトコールに従って、形質転換を行えばよい。
【0062】
目的のDNA断片を組み込んだ組換えDNAが導入された形質転換体を選別するには、例えば、形質転換のために用いたベクターの性質を利用する方法で行えばよい。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を含有するベクターを用いた場合にば、アンピシリンを含有する培地上で形質転換体を培養し、得られたクローンを選択することにより、目的のDNA断片を組み込んだ組換えDNAが導入された、形質転換体(M.イントラセルラーレのゲノム由来のWhole Genome Shotgun clone library)が容易に得られる。
(3)マイクロアレイ作製
続いて、下記の方法でマイクロアレイを作製する。
【0063】
即ち、上記(2)で得られた形質転換体(M.イントラセルラーレのゲノム由来のWhole Genome Shotgun clone library)から常法に従いDNAを精製する。精製したDNAを鋳型として用い、適当なプライマー[市販のプライマーでも良い。例えばM13 Primer M1(タカラバイオ社製)及びM13 Primer RV (タカラバイオ社製)等]を用い、常法に従ってPCRを行った後、得られたPCR増幅産物を精製する。次いで常法に従って、精製したPCR増幅産物をマイクロアレイ用スライドガラス上にスポットする。これにUV照射(60mJ/cm2〜300mJ/cm2、通常150mJ/cm2)を行ない、スライドガラス上にPCR増幅産物(ターゲットのM.イントラセルラーレ由来DNAを含む)を固定することにより、マイクロアレイを作製する。
【0064】
尚、必要に応じコントロールのマイクロアレイも作製する。例えばrpsl(特許文献1)等のM.イントラセルラーレに特異的な配列のDNAフラグメント、区別したい生物種由来のゲノムDNAのフラグメント〔結核菌特有の挿入配列IS6110の部分配列(IS6110 element)、KATS2 sequence(特開平11−155589号公報)等のM.kansasiiに特異的な塩基配列のDNAフラグメント、MAV19K (特許文献1)等のM.aviumに特異的な塩基配列のDNAフラグメント、等や、例えば大腸DNA等のマイコバクテリウム属菌以外の菌由来のDNA等〕を用い、夫々同様にDNAの断片化からWhole genome Shotgun clone libraryを作成までの一連の処理を行い、同様にPCRを行い、得られたPCR産物をスライドガラス上に固定して、夫々のマイクロアレイも作製する。
【0065】
尚、コントロールのマイクロアレイについて、あるマイクロアレイをポジティブコントロールとして設定した場合、後で行うマイクロアレイ・ハイブリダイゼーションで使用するCy3標識対照用ゲノムDNAには、該ポジティブコントロールの由来菌体と同じ菌体由来のゲノムDNAをCy3標識したものを、用いる。例えば、M.kansasiiに特異的な塩基配列のDNAフラグメントを用いてマイクロアレイを作製し、これをポジティブコントロールに設定した場合には、マイクロアレイ・ハイブリダイゼーションで使用するCy3標識対照用ゲノムDNAの一つとして、M.kansasiiから抽出・精製したゲノムDNAをCy3で標識した標識産物を用いる。
【0066】
また、あるマイクロアレイをネガティブコントロールとして設定した場合、後で行うマイクロアレイ・ハイブリダイゼーションでは、該ネガティブコントロールの由来菌体と同じ由来菌体ゲノムDNAのCy3標識産物もCy5標識産物も使用しない。
【0067】
(4)標的ゲノムDNAの蛍光色素標識
i)標的ゲノムDNAの蛍光色素標識
ヘキシルアミノ−UTPを用いた間接標識法により、M.イントラセルラーレ菌株から常法により抽出・精製したゲノムDNAをCy5でラベリングする。また、前記マイクロアレイのポジティブコントロールの由来菌体から抽出・精製した対照用ゲノムDNAをCy3でラベリングする。例えばDeRisi研究室(www.microarrays.org)が発表したプロトコールを改変した間接標識法を例にとって説明する。この方法は、アミノ基をもつαUTP を使い、酵素伸長反応によりこれを分子内に取り込ませたDNA鎖を作成する。そしてそのアミノ基に蛍光色素(サクシニイミド体)を化学的に結合させることによってDNAをラベリングしようというものである。
【0068】
まず、出発材料(M.イントラセルラーレのゲノムDNA、及び対照用ゲノムDNA)を、常法に従い熱変性処理する。次いで、熱変性処理物にDTT 2μL、dATP/dCTP/dGTPの混合液、dTTP、Ha−dUTP、Klenow酵素を添加し、37℃で3時間程度の伸長反応を行う。得られた反応産物を限外ろ過カラムにのせ14000rpm で4分程度遠心した後、濃縮液をマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機等を用いて完全に乾燥させる。次に、乾燥させた上記反応産物にNaHCO3 を加えて混合し、2〜3 分常温静置する。
【0069】
別にCy3(又はCy5)をDMSO に溶かしたものを調製(Cy−dye Solution Cy3、Cy−dye Solution Cy5)する。このCy−dye Solution Cy3を、対照用ゲノムDNAを用いて得られた上記反応産物に加え、またCy−dye Solution Cy5をM.イントラセルラーレゲノムDNAを用いて得られた上記反応産物に加え、夫々40℃で60 分程度、遮光下にインキュベートする。さらに、夫々の反応産物に4M NH2OHを加え、攪拌後に15 分程度、遮光下にインキュベートして、夫々のゲノム由来DNAの標識産物を得る。その後、得られた標識産物を、限外ろ過カラムにのせ14000rpm で4 分程度遠心した後、濃縮液をマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機で完全に乾燥させる。
【0070】
ii)標識産物の断片化工程
前記(4)i)で得られた乾燥状態の各ゲノム由来のDNAフラグメントの標識産物に対して、終濃度が0.04M Tris−acetate(pH8.1)、0.1M 酢酸カリウム、0.03M酢酸マグネシウム四水和物の組成の溶液を調製する。該溶液に乾燥状態のゲノム由来のDNAフラグメントの標識産物を懸濁混和させる。94℃で15 分間加熱処理し、100base〜300 base のゲノム由来DNAフラグメントの標識産物を得る(Cy3標識産物、Cy5標識産物)。
【0071】
得られたCy3標識産物とCy5標識産物を混合した後、限外ろ過カラムにのせ14000rpm で4 分程度遠心した後、濃縮液をマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機等で完全に乾燥させる。
【0072】
次いで、このマイクロチューブに、salmon sperm DNA(10mg/mL) 0.5μL、formamide 5μLを含有し、ArrayHyb Hybridization buffer(SIGMA社製)で全量を40〜50μLに調整した試薬溶液(後に使用するマイクロアレイのカバーガラスが24×55mm の大きさの場合の組成である)を加え、上記で得た乾燥物を同一の溶液中で懸濁混和後、95℃で5 分程度インキュベートし、Cy3Cy5標識産物混合溶液を調製する。
【0073】
(5)マイクロアレイ・ハイブリダイゼーション(アレイ上でのDNA−DNA hybridization)
前記(3)の工程で得られたマイクロアレイ(DNAチップ)上に、上記(4)ii)で調製したCy3Cy5標識産物混合溶液をのせ、カバーガラスをかぶせる。これをハイブリカセットにセットした後、65℃で8 時間以上、遮光下に反応させて、ハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーション後、マイクロアレイをカバーグラスごと2×SSC−0.1%SDS 溶液に室温で浸し、カバーグラスをはずす。1×SSC、0.03%SDS溶液(60℃)で10 分間洗浄、0.2×SSC 溶液(42℃)で10 分間洗浄、0.05×SSC溶液(室温)で10 分間洗浄後、800prm で約5 分間遠心を行って乾燥させる。
【0074】
(6)蛍光強度の測定;シグナル検出から数量化まで
蛍光読み取りスキャナーを用いて、上記(5)で得られたマイクロアレイ・ハイブリダイゼーション処理したマイクロアレイ上の蛍光強度を測定する。この際、Cy3及びCy5の、2チャンネルでの蛍光強度を測定して、蛍光検出データを得る。蛍光シグナルの数量化は市販のDNAチップ発現イメージ解析ソフトウェア等を用い、ソフトの操作手順に従って、スポット自動認識、バックグラウンド計算、蛍光強度比の正規化を行えば良い。
【0075】
ハイブリダイゼーションに用いたCy5標識産物は、M.イントラセルラーレ由来ゲノムDNAを材料として標識したDNAフラグメント群であり、Cy3標識産物は対照用ゲノムDNAを材料として標識したDNAフラグメント群である。そのため、マイクロアレイ上のあるスポットのCy3とCy5の夫々の蛍光強度を測定した結果、Cy5の蛍光の方が強く検出された場合には、そのスポットのDNA断片(PCR産物)は、Cy5標識産物、即ちM.イントラセルラーレ由来のゲノムDNAの特定の配列とより強くハイブリダイズした、ということを意味し、DNA断片(PCR産物)はM.イントラセルラーレに対する特異性が高いと判断される。
一方、あるスポットについてCy5よりCy3の蛍光の方が強く検出された場合には、そのスポットのDNA断片(PCR産物)は、Cy3標識産物、即ち対照用ゲノムDNAとハイブリダイズした、ということを意味し、DNA断片(PCR産物)はM.イントラセルラーレに対する特異性が低いと判断される。また、Cy3及びCy5の蛍光の強さが同程度だった場合と、Cy3及びCy5のどちらの蛍光も検出されなかった場合にも、そのスポットのDNA断片(PCR産物)は、M.イントラセルラーレに対する特異性が低いと判断される。
【0076】
そこで、例えばマイクロアレイ上で検出されたCy3/Cy5の蛍光強度比(Ratio)を基に、例えば、散布図(スキャッタープロット)を作成する等して、結果を解析し、M.イントラセルラーレ特異配列の検出のためのスクリーニングを行う。解析においては、用いたポジティブコントロール配列のうちM.イントラセルラーレに特異的なDNAのCy3/Cy5 Ratioの数値が特異性評価のための有用な基準値となる。
【0077】
尚、マイクロアレイ上にポジティブコントロール及びネガティブコントロールがスポットされている場合には、夫々のCy3Cy5蛍光強度を測定して、その蛍光強度の傾向をみれば、蛍光スキャナー測定における1つのデータ評価基準として利用する事ができる。
【0078】
スクリーニングを行った候補の中から、Cy3/Cy5 Ratioの数値解析の結果、有意にM.イントラセルラーレ特異的なシグナルが得られ(Cy5の蛍光強度が強い場合)、なおかつ上述のM.イントラセルラーレに特異的なポジティブコントロールのスポットに比べてRatioの数値が大きい(Cy5の蛍光強度が強い)クローンを選択する。
【0079】
次いで、通常この分野で用いられているシークエンサー、例えばABI PRISM310キャピラリーシーケンサー(アプライドバイオ社)等の機器を利用し、常法に従い、得られた候補クローンの塩基配列決定を行えばよい。
【0080】
尚、選択されたクローンの中から、更にM.イントラセルラーレ特異的検出のための候補配列をスクリーニングするために、例えば、リアルタイムPCR法による二次スクリーニングを行っても良い。
【0081】
即ち、上記したCy3/Cy5 Ratioの数値解析の結果選択された候補クローンについて、塩基配列決定を行う。夫々の候補クローンについて、得られた塩基配列を基に、例えばプライマー設計のために一般に用いられているソフトや、例えばプライマーデザイン用のWebツールPrimer3 (Whitehead Institute for Biomedical Research.)等を用いて夫々PCR用の適当なプライマーを設計する。
【0082】
設計されたプライマーから適当な組合せを選択し、その組合せのプライマーを用いて、M.イントラセルラーレ由来ゲノムDNAを鋳型として、常法に従いリアルタイムPCRを行う。また、マイコバクテリウム属の適当な菌体由来ゲノムDNA、更に要すれば大腸菌等のマイコバクテリウム属以外の菌体由来ゲノムDNA等(対照)を鋳型として、同様にリアルタイムPCRを行う。その結果、M.イントラセルラーレ由来ゲノムDNAを鋳型として用いたリアルタイムPCRでは増幅産物が得られ、その他の菌体由来ゲノムDNA(対照)を鋳型として用いたリアルタイムPCRでは増幅産物が得られなかったプライマーの組合せを選択する。そして、そのプライマーの組合せを設計した候補クローンを、最終的なM.イントラセルラーレに特異的な候補クローンとして選択すればよい。
【0083】
本発明のM.イントラセルラーレ検出用プライマーとしては、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含有するプライマーが挙げられる(以下、本発明のプライマーと記載する場合がある。)。
【0084】
また、本発明のプライマーは、PCR(リアルタイムPCRを含む)等の核酸増幅反応、核酸ハイブリダイゼーション等の条件に合わせて、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチド、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチドの中から、解離温度(Tm値)などを考慮して、適当な領域の適当な長さを選択して使用すればよい。
【0085】
好ましくは、プライマー配列としての特異性を維持するために必要な塩基数と考えられている10〜50塩基、より好ましくは10〜35塩基、更に好ましくは18〜25塩基の長さを有しているオリゴヌクレオチドがよい。
【0086】
プライマーの設計方法は、プライマー設計のために一般に用いられているソフトや、例えばプライマーデザイン用のWebツールPrimer3 (Whitehead Institute for Biomedical Research.)等を用いて設計すればよい。
【0087】
本発明のプライマーに用いられる、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(本発明のオリゴヌクレオチド)の具体例は、前記の本発明のオリゴヌクレオチドの説明において記載したものと同じである。
【0088】
本発明のプライマーの具体例としては、例えば配列番号9〜138で表される塩基配列から選ばれる配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、又は配列番号9〜138で表される塩基配列から選ばれる配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0089】
本発明のプライマーの好ましい具体例としては、配列番号9〜138で表される塩基配列から選ばれる配列を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、又は配列番号9〜138で表される塩基配列から選ばれる配列に対する相補配列を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0090】
より好ましいプライマーとしては、例えば配列番号9、10、23、24、41、42、59、60、79、80、93、94、105、106、127、128で表される塩基配列から選ばれる配列を含有するオリゴヌクレオチド、又は配列番号9、10、23、24、41、42、59、60、79、80、93、94、105、106、127、128で表される塩基配列から選ばれる配列に対する相補配列を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0091】
尚、配列番号9〜22で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号1で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0092】
配列番号23〜40で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号2で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0093】
配列番号41〜58で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号3で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0094】
配列番号59〜78で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号4で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0095】
配列番号79〜92で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号5で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0096】
配列番号93〜104で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号6で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0097】
配列番号105〜126で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号7で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0098】
配列番号127〜138で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号8で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0099】
図1に、配列番号1で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号9及び配列番号10で表される塩基配列の存在位置を、02_Fw1 及び 02_Rv1として、夫々矢印で示す。
【0100】
図2に、配列番号2で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号23及び配列番号24で表される塩基配列の存在位置を、03_Fw1 及び 03_Rv1として、夫々矢印で示す。
【0101】
図3に、配列番号3で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号41及び配列番号42で表される塩基配列の存在位置を、04_Fw2 及び 04_Rv2として、夫々矢印で示す。
【0102】
図4に、配列番号4で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号59及び配列番号60で表される塩基配列の存在位置を、06_Fw1 及び 06_Rv1 として、夫々矢印で示す。
【0103】
図5に、配列番号5で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号79及び配列番号80で表される塩基配列の存在位置を、10_Fw1 及び 10_Rv1 として、夫々矢印で示す。
【0104】
図6に、配列番号6で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号93及び配列番号94で表される塩基配列の存在位置を、13_Fw2 及び 13_Rv2 として、夫々矢印で示す。
【0105】
図7に、配列番号7で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号105及び配列番号106で表される塩基配列の存在位置を、14_Fw1 及び 14_Rv1 として、夫々矢印で示す。
【0106】
図8に、配列番号8で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号127及び配列番号128で表される塩基配列の存在位置を、15_Fw2 及び 15_Rv2 として、夫々矢印で示す。
【0107】
また、配列番号1で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号11〜22で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号11(02_Fw2):415位〜434位、
配列番号12(02_Fw3):91位〜110位、
配列番号13(02_Fw4):272位〜290位、
配列番号14(02_Fw5):245位〜264位、
配列番号15(02_Fw6):41位〜61位、
配列番号16(02_Fw7):423位〜442位、
配列番号17(02_Rv2):563位〜582位、
配列番号18(02_Rv3):294位〜313位、
配列番号19(02_Rv4):447位〜466位、
配列番号20(02_Rv5):373位〜392位、
配列番号21(02_Rv6):175位〜194位、
配列番号22(02_Rv7):641位〜659位。
【0108】
配列番号2で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号25〜40で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号25(03_Fw2):18位〜35位、
配列番号26(03_Fw3):111位〜128位、
配列番号27(03_Fw4):229位〜248位、
配列番号28(03_Fw5):412位〜430位、
配列番号29(03_Fw6):580位〜599位、
配列番号30(03_Fw7):776位〜796位、
配列番号31(03_Fw8):873位〜890位、
配列番号32(03_Fw9):911位〜930位、
配列番号33(03_Rv2):158位〜175位、
配列番号34(03_Rv3):288位〜306位、
配列番号35(03_Rv4):362位〜381位、
配列番号36(03_Rv5):542位〜561位、
配列番号37(03_Rv6):700位〜719位、
配列番号38(03_Rv7):955位〜972位、
配列番号39(03_Rv8):1040位〜1059位、
配列番号40(03_Rv9):1075位〜1093位。
【0109】
配列番号3で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号43〜58で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号43(04_Fw3):4位〜21位、
配列番号44(04_Fw4):217位〜235位、
配列番号45(04_Fw5):423位〜440位、
配列番号46(04_Fw6):476位〜494位、
配列番号47(04_Fw7):658位〜675位、
配列番号48(04_Fw8):709位〜728位、
配列番号49(04_Fw9):772位〜789位、
配列番号50(04_Fw10):803位〜822位、
配列番号51(04_Rv3):134位〜152位、
配列番号52(04_Rv4):367位〜384位、
配列番号53(04_Rv5):560位〜579位、
配列番号54(04_Rv6):605位〜622位、
配列番号55(04_Rv7):801位〜820位、
配列番号56(04_Rv8):845位〜862位、
配列番号57(04_Rv9):899位〜916位、
配列番号58(04_Rv10):955位〜972位。
【0110】
配列番号4で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号61〜78で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号61(06_Fw2):153位〜172位、
配列番号62(06_Fw3):1位〜19位、
配列番号63(06_Fw4):32位〜49位、
配列番号64(06_Fw5):268位〜285位、
配列番号65(06_Fw6):376位〜395位、
配列番号66(06_Fw7):445位〜462位、
配列番号67(06_Fw8):492位〜509位、
配列番号68(06_Fw9):556位〜574位、
配列番号69(06_Fw10):581位〜600位、
配列番号70(06_Rv2):282位〜301位、
配列番号71(06_Rv3):100位〜119位、
配列番号72(06_Rv4):184位〜203位、
配列番号73(06_Rv5):386位〜405位、
配列番号74(06_Rv6):516位〜534位、
配列番号75(06_Rv7):575位〜594位、
配列番号76(06_Rv8):656位〜675位、
配列番号77(06_Rv9):686位〜705位、
配列番号78(06_Rv10):703位〜720位。
【0111】
また、配列番号5で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号81〜92で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号81(10_Fw2):388位〜407位、
配列番号82(10_Fw3):2位〜19位、
配列番号83(10_Fw4):122位〜141位、
配列番号84(10_Fw5):207位〜226位、
配列番号85(10_Fw6):298位〜318位、
配列番号86(10_Fw7):459位〜478位、
配列番号87(10_Rv2):541位〜560位、
配列番号88(10_Rv3):150位〜169位、
配列番号89(10_Rv4):276位〜294位、
配列番号90(10_Rv5):370位〜389位、
配列番号91(10_Rv6):453位〜472位、
配列番号92(10_Rv7):593位〜610位。
【0112】
配列番号6で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号95〜104で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号95(13_Fw3):56位〜75位、
配列番号96(13_Fw4):129位〜148位、
配列番号97(13_Fw5):200位〜219位、
配列番号98(13_Fw6):333位〜352位、
配列番号99(13_Fw7):286位〜305位、
配列番号100(13_Rv3):225位〜244位、
配列番号101(13_Rv4):242位〜261位、
配列番号102(13_Rv5):325位〜343位、
配列番号103(13_Rv6):481位〜500位、
配列番号104(13_Rv7):416位〜435位。
【0113】
配列番号7で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号107〜126で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号107(14_Fw3):11位〜29位、
配列番号108(14_Fw4):73位〜92位、
配列番号109(14_Fw5):201位〜220位、
配列番号110(14_Fw6):413位〜431位、
配列番号111(14_Fw7):519位〜538位、
配列番号112(14_Fw8):657位〜674位、
配列番号113(14_Fw9):596位〜613位、
配列番号114(14_Fw10):618位〜635位、
配列番号115(14_Fw11):864位〜883位、
配列番号116(14_Fw12):806位〜824位、
配列番号117(14_Rv3):158位〜177位、
配列番号118(14_Rv4):208位〜227位、
配列番号119(14_Rv5):337位〜356位、
配列番号120(14_Rv6):548位〜565位、
配列番号121(14_Rv7):669位〜688位、
配列番号122(14_Rv8):782位〜800位、
配列番号123(14_Rv9):721位〜740位、
配列番号124(14_Rv10):755位〜773位、
配列番号125(14_Rv11):978位〜997位、
配列番号126(14_Rv12):967位〜986位。
【0114】
配列番号8で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号129〜138で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号129(15_Fw3):28位〜45位、
配列番号130(15_Fw4):64位〜82位、
配列番号131(15_Fw5):131位〜148位、
配列番号132(15_Fw6):348位〜366位、
配列番号133(15_Fw7):462位〜481位、
配列番号134(15_Rv3):182位〜200位、
配列番号135(15_Rv4):197位〜215位、
配列番号136(15_Rv5):270位〜287位、
配列番号137(15_Rv6):451位〜470位、
配列番号138(15_Rv7):619位〜636位。
【0115】
尚、上記において、各配列番号の後の( )内に、本発明で命名したプライマーの名称を示す。
【0116】
本発明のプライマーを得る方法は、前記の本発明のヌクレオチドを得る方法において記載した通りである。
【0117】
また、本発明のプライマーは、標識物質で標識されていてもよい。
【0118】
本発明のプライマーを標識する方法としては、この分野で通常行われているオリゴヌクレオチドの標識方法が挙げられ、標識物質毎に適宜方法を選択すればよい。
【0119】
本発明のプライマーを標識物質で標識するために用いられる標識物質としては、放射性同位体や酵素、蛍光物質、発光物質、ビオチンなど公知の標識物質であれば何れも用いることができる。
【0120】
例えば、放射性同位体としては32P,33P,35S等、酵素としてはアルカリホスファターゼ,西洋ワサビペルオキシダーゼ等、蛍光物質としてはCyanine Dye系のCy3,Cy5(アマシャムバイオサイエンス株式会社)、フルオレセイン等、発光物質としてはAcridinium Esterを含む化学発光試薬等が挙げられる。
【0121】
本発明のプライマーを放射性同位体により標識する方法としては、プライマーを合成する際に、放射性同位体で標識されたヌクレオチドを取り込ませることによって、プライマーを標識する方法や、プライマーを合成した後、放射性同位体で標識する方法等が挙げられる。具体的には、一般によく用いられているランダムプライマー法、ニックトランスレーション法、T4ポリヌクレオチド キナーゼによる5'−末端標識法、ターミナルデオキシヌクレオチドトランスフェラーゼを用いた3'−末端標識法、RNAラベリング法等が挙げられる。
【0122】
本発明のプライマーを酵素で標識する方法としては、アルカリホスファターゼ,西洋ワサビペルオキシダーゼ等の酵素分子を、標識するプライマーに直接共有結合させる等の、この分野における常法である直接標識法が挙げられる。
【0123】
本発明のプライマーを蛍光物質で標識する方法としては、例えばフルオレセイン標識したヌクレオチドをこの分野における常法の標識手法によりプライマーに取り込ませればよい。また、リンカーアームを有するヌクレオチドを配列のオリゴヌクレオチドの一員として置換する方法(例えば、Nucleic Acids Res.,1986年, 第14巻, p.6115参照)でもヌクレオチドを蛍光物質で標識することができる。その場合、5位にリンカーアームを有するウリジンを特開昭60−500717 号公報に開示された合成法によりデオキシウリジンから化学合成し、上記オリゴヌクレオチド鎖に蛍光物質を導入する方法もある。
【0124】
本発明のプライマーを発光物質又はビオチンで標識するには、通常この分野で行われているヌクレオチドを発光標識又はビオチン標識する常法に従って行えばよい。
【0125】
本発明のM.イントラセルラーレ検出用プローブとしては、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つマイコバクテリウム・イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含有するプローブが挙げられる(以下、本発明のプローブと記載する場合がある。)。
【0126】
本発明のプローブは、PCR(リアルタイムPCRを含む)等の核酸増幅反応、核酸ハイブリダイゼーション等の条件に合わせて、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチド、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチドから、解離温度(Tm値)などを考慮して、適当な領域の適当な長さを選択して使用すればよい。但し、プローブに十分な特異性を持たせたいのならば、プローブ配列としての特異性を維持するために必要な塩基数を考慮して設計することが望ましい。
【0127】
例えば、核酸ハイブリダイゼーション法(例えばサザン・ハイブリダイゼーション等)等に用いるプローブとしては、10〜700塩基、好ましくは100〜600塩基、より好ましくは100〜500塩基、更に好ましくは200〜500塩基の長さを有しているものが挙げられる。
【0128】
例えばリアルタイムPCR増幅系(例えばTaqManTM法、Molecular Beacon法等)等に用いるプローブとしては、10〜50塩基、好ましくは15〜40塩基、更に好ましくは20〜30塩基の長さを有しているものが挙げられる。
【0129】
本発明のプローブに用いられる、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(本発明のオリゴヌクレオチド)の具体例は、前記の本発明のオリゴヌクレオチドの説明において記載したものと同じである。
【0130】
本発明のプローブの具体例としては、例えば、配列番号9〜203で表される塩基配列から選ばれる配列の一部若しくは全部、又は配列番号9〜203で表される塩基配列から選ばれる配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含有するプローブから選ばれるものが挙げられる。
【0131】
本発明のプローブの好ましい具体例としては、配列番号9〜203で表される塩基配列から選ばれる配列を含有するもの、又は配列番号9〜203で表される塩基配列から選ばれる配列に対する相補配列を含有するものが挙げられる。中でも配列番号139〜203で表される塩基配列から選ばれる配列を含有するもの、又は配列番号139〜203で表される塩基配列から選ばれる配列に対する相補配列を含有するものが挙げられる。特に好ましいものとしては、配列番号139、146、155、164、174、181、187、198で表される塩基配列から選ばれる配列を含有するもの、又は配列番号139、146、155、164、174、181、187、198で表される塩基配列から選ばれる配列に対する相補配列を含有するものが挙げられる。
【0132】
尚、配列番号139〜203で表される塩基配列又は配列番号139〜203で表される塩基配列に対する相補配列は、本発明のプライマーを用いたPCRにより増幅されるオリゴヌクレオチドの塩基配列である。フォワードプライマーとリバースプライマーの組合せと、それを用いたPCRにより増幅される塩基配列の配列番号を表1に併せて示す。例えば、配列番号139で表される塩基配列は、配列番号9で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとし、配列番号10で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとして用いたPCRにより増幅されるオリゴヌクレオチドの塩基配列であることを示す。
【0133】
【表1】

【0134】
本発明のプローブを得る方法は、前記の本発明のヌクレオチドを得る方法において記載した通りである。
【0135】
本発明のプローブは、標識物質で標識されていてもよい。
【0136】
本発明のプローブを標識物質で標識するために用いられる標識物質としては、放射性同位体や酵素、蛍光物質、発光物質、ビオチンなど公知の標識物質であれば何れも用いることができる。
【0137】
本発明のプローブを標識するために用いられる標識物質の具体例及び標識方法は、本発明のプライマーの標識方法の説明において記載した通りである。
【0138】
また、後述するリアルタイムPCRによる検出法において用いられる標識プローブとしては、本発明のプローブを、リアルタイムPCR法において通常用いられている標識物質で標識したものが挙げられる。例えば、5'末端がレポーター蛍光物質[カルボキシフルオレセイン(FAM)、ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、テトラクロロフルオレセイン(TET)等]で標識され、3'末端がクエンチャー色素[例えばカルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)等の蛍光物質、Black Hole Quencher色素(BHQ),4−((4−(dimethylamino) phenyl)azo)benzoic acid (DABCYL)等の非蛍光物質]で標識された本発明のプローブが挙げられる。
【0139】
後述するTaqManTMリアルタイムPCRによる検出法においても、上記した標識プローブを用いることができる。
【0140】
本発明に係るM.イントラセルラーレの検出に用いられる試料(被検試料)としては、喀痰、血液、咽頭粘液、胃液、気管支洗浄液、経気管支採取物、胸水などの穿刺液、尿、膿等の各種臨床材料が挙げられる。また、検体から単離、培養された培養菌体、これらより単離、精製された核酸、又は核酸増幅検出系等で増幅された核酸でもよい。
【0141】
上記試料からDNAを抽出・精製するには、検体からの抗酸菌(結核菌)のDNA抽出に用いられる常法に従って行えばよい。
【0142】
まず、試料中の菌体の細胞壁を破壊する必要がある。その方法としては、例えば菌体を試料とする場合には、例えばSDS等の界面活性剤や、グアニジンチオシアネート(GTC)等の蛋白変性剤で菌体を処理して結核菌等の抗酸菌の膜構造を破壊する方法、菌体をガラスビーズ等によって物理的に破砕する方法等が用いられる。
【0143】
喀痰を検体として用いる場合には、まず前処理として、米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention、略称CDC)で推奨しているNALC (N−acetyl−L−cysteine) −NaOH法(Kent PT, Kubica GP, Pubric Health Mycobacteriology, A Guide for the Level III Laboratory, U.S.Department of Health and Human Services, Public Health Service, Center for Disease Control, Atlanta, U.S.A., 1985年, p.31−55)による検体の均質化を行うことが望ましい。
【0144】
菌体の細胞壁を破壊した後、この分野で一般的なDNAの調製法(フェノール・クロロホルム抽出、エタノール沈殿法等 Rapid and simple method for purification of nucleic acids, J. Clin. Microbiol., 1990, Mar;28(3), 495−503, Boom R, Sol CJ, Salimans MM, Jansen CL, Wertheim−van Dillen PM, van der Noordaa J)、イソプロパノールを用いて沈殿させる方法等によりDNAの抽出及び精製を行えばよい。
【0145】
検体から単離、培養された培養菌体を、M.イントラセルラーレを検出する試料として用いる場合を例にとって示すと、次の通りである。
【0146】
例えば小川培地上のコロニーを採取し、滅菌蒸留水に懸濁、遠心分離して菌体を集めた後、蒸留水に再懸濁し、オートクレーブ処理した後、菌体の粉砕処理(ガラスビーズによる物理的破砕等)を経て、さらに遠心分離して上清を回収する。得られた上清からDNAを抽出・精製すればよい。
【0147】
DNAの抽出・精製には、そのための様々なキットが市販されているので、それを用いてもよいし、この分野における常法(例えば、フェノール・クロロホルム抽出法、エタノールやイソプロパノール等を用いて沈殿させる方法等)に従って行ってもよい。例えば(株)キアゲン製イオン交換樹脂タイプ DNA抽出精製キットGenomic−tip等を用いてDNAの抽出、精製を行えばよい。
【0148】
本発明に係るM.イントラセルラーレの検出方法としては、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマー及び/又はプローブとして用いる方法(本発明のプライマー及び/又はプローブを用いる方法)が挙げられる。
【0149】
例えば、
(A)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(本発明のオリゴヌクレオチド)をプライマーとして用いて核酸増幅反応を行い、得られたプライマー伸長産物を検出する方法、
(B)本発明のオリゴヌクレオチドを標識物質で標識したものを標識プローブとして用いる方法、
等が挙げられる。以下に、夫々の方法について説明する。
【0150】
(A)本発明のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて核酸増幅反応を行い、得られたプライマー伸長産物を検出する方法
該方法において(A)の、本発明のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて核酸増幅反応を行う方法としては、例えば、本発明のプライマーを用い、試料中の核酸を鋳型として用いて、DNAポリメラーゼ等による核酸増幅反応[例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法(特開昭60−281号公報)、LAMP(Loop−mediated Isothermal Amplification)法(Tsugunori Notomi et al., Nucleic Acid Res., 28, e63, 2000)、ICANTM(Isothermal and Chimeric primer−initiated Amplification of Nucleic acids)法(臨床病理, 51(11), 1061−1067, 2003, Nov)、LCR(ligase chain reaction)法(特開平4−211399号)、SDA(strand displacement amplification)法(特開平8−19394号)]を行ってプライマー伸長させる方法が挙げられる。これによりM.イントラセルラーレの塩基配列の特定の領域の配列を増幅させることができるので、得られたプライマー伸長産物を測定することにより、M.イントラセルラーレを検出することができる。
【0151】
上記の核酸増幅反応を行う方法の中でも、PCR法が最も一般的な方法として挙げられ、PCR法の例としては、例えばリアルタイム増幅検出系(例えば米国特許第5210015号、米国特許第5538848号の記載参照)を用いることができる。また、リアルタイム増幅検出系による検出系の例として、例えばリアルタイムPCR検出法が挙げられる。
【0152】
リアルタイムPCR検出法の例としては、TaqManTMリアルタイムPCR法(例えば米国特許第5538848号の記載参照)、MGB Eclipse Probe System法(例えば米国特許第5,801,155号の記載参照)、Molecular Beacons Probe Technology法(例えば米国特許第5925517号の記載参照)、LUX Fluorogenic Primer法(Invitrogen Corporation)、Quenching probe−PCR(QP)法(例えば米国特許第6,492,121号の記載参照)等が挙げられる。
【0153】
PCR等の核酸増幅反応において用いられる本発明のプライマーの具体例は、前記した通りである。
【0154】
また、核酸増幅反応に用いられる、好ましいフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せとしては、前記表1で示される組合せが挙げられる。
【0155】
その中でも好ましいフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せとしては、例えば下記のものが挙げられる。
【0156】
(1)フォワードプライマーが配列番号9で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドで、リバースプライマーが配列番号10で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドである組合せ、
【0157】
(2)フォワードプライマーが配列番号23で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドで、リバースプライマーが配列番号24で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドである組合せ、
【0158】
(3)フォワードプライマーが配列番号41で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドで、リバースプライマーが配列番号42で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドである組合せ、
【0159】
(4)フォワードプライマーが配列番号59で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドで、リバースプライマーが配列番号60で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドである組合せ、
【0160】
(5)フォワードプライマーが配列番号79で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドで、リバースプライマーが配列番号80で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドである組合せ、
【0161】
(6)フォワードプライマーが配列番号93で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドで、リバースプライマーが配列番号94で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドである組合せ、
【0162】
(7)フォワードプライマーが配列番号105で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドで、リバースプライマーが配列番号106で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドである組合せ、
【0163】
(8)フォワードプライマーが配列番号127で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドで、リバースプライマーが配列番号128で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドである組合せ。
【0164】
上記プライマーを用いたリアルタイムPCR等の核酸増幅反応に用いられるその他のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)、DNAポリメラーゼ等の試薬は、通常この分野で用いられているものを用いればよく、その条件、手法等は、本発明のプライマー及びプローブを用いる以外は、PCRの一般的なプロトコルに従って行えばよい。
【0165】
核酸増幅反応で得られたプライマー伸長産物を検出する方法は、通常この分野で行われている常法で良く、限定されるものではない。
【0166】
例えばインターカレーター法、TaqManTMリアルタイムPCR法(例えば米国特許第5538848号の記載参照)、MGB Eclipse Probe System法(例えば米国特許第5,801,155号の記載参照)、Molecular Beacons Probe Technology法(例えば米国特許第5925517号の記載参照)、LUX Fluorogenic Primer法(Invitrogen Corporation)、Quenching probe−PCR(QP)法(例えば米国特許第6,492,121号の記載参照)、核酸増幅反応を行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、その結果に基づいて行う方法、標識プライマーを用いた核酸増幅反応を行って得られたプライマー伸長産物の標識を測定する方法等、様々な検出法が挙げられる。
【0167】
これらのうち、一般によく用いられる方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0168】
(A−1)インターカレーター法、
(A−2)TaqManTMリアルタイムPCR法、
(A−3)核酸増幅反応を行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、その結果に基づいて行う方法、
(A−4)標識プライマーを用いた核酸増幅反応を行って得られたプライマー伸長産物の標識を測定する方法。
【0169】
以下に、夫々の方法について説明する。
(A−1)インターカレーター法
公知のインターカレーターを利用してリアルタイムPCRを行う、通常のインターカレーター法が利用できる。
【0170】
例えば、本発明のプライマーと、インターカレーターを用い、通常のインターカレーター法を利用したリアルタイムPCRを行う方法が挙げられる。
【0171】
即ち、インターカレーターは、二本鎖DNAに特異的に結合して蛍光を発する試薬であり、励起光を照射すると蛍光を発する。PCRによって増幅を繰り返してDNAが増えると、インターカレーターがそのDNAに取り込まれるので、プライマー伸長産物の生成量に比例して、DNAに取り込まれていくため、インターカレーターに由来する蛍光強度を検出することにより、プライマー伸長産物の量を知ることができる。
【0172】
但しインターカレーターは全ての二本鎖DNAに結合するので、得られた蛍光強度の測定結果を基に、必要に応じ、融解曲線分析を行う。即ち、PCR後にPCR反応液の温度を徐々に上げながら、インターカレーター由来の蛍光強度を測定する。最初はPCR増幅産物は二本鎖を形成しているので蛍光を発しているが、PCR反応液の温度がある一定の温度に達すると一本鎖に解離するので、インターカレーター由来の蛍光は急激に低下する。この時の温度が融解温度(Tm値)であり、プライマー伸長産物の配列に固有の値である。そのピークが、目的とする特異産物のピークか、又は非特異産物のピークかについては、このTm値から判定することができる。
【0173】
このインターカレーター法は、リアルタイムPCRの後に電気泳動を行う必要がないので、臨床検査の分野等において、迅速に判定を行う必要がある場合には、有効な方法である。
【0174】
本発明に用いられるインターカレーターとしては、通常この分野で用いられているインターカレーターであれば、何でも用いることができるが、例えばSYBRTM Green I (Molecular Probe社商品名)、エチジウムブロマイド、フルオレン等がある。
【0175】
本発明に係る「インターカレーター法を利用したM.イントラセルラーレの検出方法」の例を説明すると、以下の通りである。
【0176】
本発明のプライマーと、インターカレーター(例えばSYBRTM Green I)を用い、M.イントラセルラーレを検出する試料(被検試料)から精製した精製DNA試料を鋳型として用いて、Taq DNA ポリメラーゼ等のポリメラーゼを用いたリアルタイムPCRを行う。そして前記した温度を上げる方法で、プライマー伸長産物に対してインターカレーションするインターカレーター(SYBRTM Green I)由来の蛍光量を測定する。
【0177】
次いで、横軸をプライマー伸長産物(二本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光量の1次微分(変化量)をとり、プライマー伸長産物の融解曲線解析を行うことによって、ピークの検出を行い、単一のピークが得られた場合に、被検試料はM.イントラセルラーレ陽性(即ち、M.イントラセルラーレ菌、又はその遺伝子が存在する。以下同じ。)と判定される。
【0178】
又は、精製DNA試料溶液の希釈系列を調製し、各希釈系列毎に、上記と同様にリアルタイムPCRを行う。次いで、横軸をプライマー伸長産物(2本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光量の1次微分(変化量)をとり、融解曲線を作成して、増幅産物の融解曲線解析を行い、ピークの検出を行う。
【0179】
この場合のM.イントラセルラーレの検出方法としては、融解曲線解析で各希釈系列に対する各プライマー伸長産物について、同一のTm値のピークが検出された場合に、被検試料はM.イントラセルラーレ陽性と判定すればよい。
【0180】
また、インターカレーター法を利用した方法で得られた測定値をもとに、リアルタイムPCRにおいて行われる情報に従って、検量線を作成することもできるので、その検量線を用いて試料中にあるM.イントラセルラーレのゲノムDNA量(コピー数)を得ることができる。
検量線の作成方法及びそれを用いたM.イントラセルラーレの定量方法は後記する。
【0181】
本発明に係るインターカレーターを用いたリアルタイムPCR検出法によるM.イントラセルラーレの検出方法の一例として、前記した「プライマー02_Fw1」と「プライマー02_Rv1」を用いて、M.イントラセルラーレを検出する場合を例にとって説明すると、以下の通りである。
【0182】
まず、公知の方法により、M.イントラセルラーレを検出する試料(被検試料)中から精製DNA試料を得る。
【0183】
別に、DNAシンセサイザーを用いて、ホスホアミダイト法にて、配列番号9で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(02_Fw1)、及び配列番号10で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(02_Rv1)を合成する。
【0184】
上記で合成した02_Fw1をフォワードプライマーとして、02_Rv1をリバースプライマーとして用い、例えば下記の通りリアルタイムPCRを行う。
【0185】
即ち、プライマー02_Fw1と、プライマー02_Rv1を各50〜2000nM、インターカレーター[例えばSYBRTM Green I (Molecular Probe社商品名)]を原液の約5000〜100000倍希釈、1.0〜4.0mM MgCl2、KCl、BSA、コール酸ナトリウム、0.005〜0.2% TritonX−100、夫々0.2mM程度のdATP、dCTP、dGTP、dTTP、10〜80単位/mLのポリメラーゼ(例えばTaq DNA ポリメラーゼ)を含有する10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.9)を調製し、PCR用反応液とする。該PCR用反応液に、M.イントラセルラーレを検出する試料(被検試料)から精製した精製DNA試料を加え、PCR用試料とする。このPCR用試料を96穴反応プレートのウェルに入れ、リアルタイムPCR検出装置等を用いてリアルタイムPCRを行う。反応は30〜50回サイクル繰り返し、1サイクル毎にプライマー伸長産物に対してインターカレーションするインターカレーター(例えばSYBRTM Green I)由来の蛍光量を測定する。
【0186】
次いで、横軸をプライマー伸長産物(2本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光量の一次微分(変化量)をとり、プライマー伸長産物の融解曲線解析を行い、ピークの検出を行い、単一のピークが得られた場合に、被検試料はM.イントラセルラーレ陽性と判定される。
【0187】
又は、精製DNA試料溶液の希釈系列を調製し、各希釈系列毎に、上記と同様にリアルタイムPCRを行う。次いで横軸をプライマー伸長産物(2本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光量の1次微分(変化量)をとり、融解曲線を作成して、プライマー伸長産物の融解曲線解析を行い、検出ピークの解析を行う。
【0188】
この場合のM.イントラセルラーレの検出方法としては、融解曲線解析で各希釈系列に対する各プライマー伸長産物について、同一のTm値のピークが検出された場合に、被検試料はM.イントラセルラーレ陽性と判定される。
【0189】
また、対照として、M.イントラセルラーレ以外のマイコバクテリウム属菌由来DNAを常法により抽出・精製し、これを鋳型として用いる以外は、上記と同様の方法にしてリアルタイムPCRを行い、同様にSYBRTM Green Iの蛍光量を測定し、融解曲線解析を行ってもよい。この場合は、試料中にM.イントラセルラーレ由来の配列がないので、融解曲線解析でピークは出現しないはずである。M.イントラセルラーレの有無の判定をより確実にするためには、上記した対照実験を一緒に行うことが望ましい。
【0190】
更に、検量線を作成することによって、試料中のM.イントラセルラーレのゲノムDNAの数(コピー数)を得ることができる。また、その数はM.イントラセルラーレの数に比例するので、試料(被検試料)中のM.イントラセルラーレの数も知ることができる。
(A−2)TaqManTMリアルタイムPCR法(TaqManTMプローブ法)
TaqManTMリアルタイムPCR法は、5'末端を例えばFAM等の蛍光色素(レポーター)で、3'末端を例えばTAMRA等のクエンチャー色素で標識した標識プローブを用いたリアルタイムPCR法で、目的の微量なDNAを高感度且つ定量的に検出することができる方法である(例えば米国特許第5,538,848号の記載参照)。
【0191】
具体的には、配列番号1,配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1,配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマー(本発明のプライマー)として用い、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部又は配列番号1,配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(本発明のオリゴヌクレオチド)の5'末端がレポーター蛍光色素で標識され、3'末端がクエンチャー色素で標識されたものを標識プローブとして用いて、試料中の核酸を鋳型としてPCRを行い、該標識プローブから遊離された標識物質の標識を検出する方法である。
【0192】
TaqManTMリアルタイムPCR法の原理は以下の通りである。
【0193】
この方法には、5'末端を蛍光色素(レポーター)で、3'末端をクエンチャー色素で標識した、目的遺伝子の特定領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが使用される。該プローブは、通常の状態ではクエンチャー色素によってレポーターの蛍光が抑制されている。この蛍光標識プローブを目的遺伝子に完全にハイブリダイズさせた状態で、その外側からDNAポリメラーゼを用いてPCRを行う。DNAポリメラーゼによる伸長反応が進むと、そのエキソヌクレアーゼ活性により蛍光標識プローブが5'端から加水分解され、レポーター色素が遊離し、蛍光を発する。リアルタイムPCR法は、この蛍光強度をリアルタイムでモニタリングする方法であり、これにより、鋳型DNAの初期量を正確に定量することができる。
【0194】
本発明に係るTaqManTMリアルタイムPCR検出系に用いられるフォワードプライマー及びリバースプライマーには、本発明のプライマーが用いられる。好ましいプライマーとしては、前記したPCR法等の核酸増幅反応において用いられるものが挙げられ、その好ましい具体例及び好ましい組合せも前記した通りである。
【0195】
本発明に係るTaqManTMリアルタイムPCR検出系に用いられる5'末端を蛍光色素(レポーター)で、3'末端をクエンチャー色素で標識したプローブに用いられるプローブとしては、前記した本発明のプローブであればよい。実際には、選択したフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せでリアルタイムPCRを行った場合に得られると予測されるプライマー伸長産物の塩基配列を含有するプローブ、又は更にその配列から設計される塩基配列を含有するプローブが用いられる。例えば、02_Fw1(配列番号9で表される塩基配列を持つ)と02_Rv1(配列番号10で表される塩基配列を持つ)の二つのプライマーの組み合わせを用いてリアルタイムPCRを行う場合に用いられるプローブは、そのリアルタイムPCRで増幅されると予想される配列番号139の塩基配列を含有するヌクレオチドか、配列番号139の塩基配列から設計される配列(例えば配列番号204で表される配列)を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0196】
標識プローブの5’末端を標識するレポーター蛍光物質としてはカルボキシフルオレセイン(FAM)、ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、Cy5、VIC等が挙げられるが、中でもFAMがよく用いられる。3’末端を標識するクエンチャー色素としては、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)等の蛍光物質、Black Hole Quencher色素(例えばBHQ2),4−((4−(dimethylamino) phenyl)azo)benzoic acid (DABCYL)等の非蛍光物質が挙げられるが、中でもTAMRAがよく用いられる。
【0197】
リアルタイムPCR検出系に用いられるその他のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)、DNAポリメラーゼ等の試薬は、通常のリアルタイムPCRで用いられているものを用いればよく、リアルタイムPCRの手法は、本発明のプライマー及びプローブを用いる以外は、リアルタイムPCRの一般的なプロトコルに従って行えばよい。
【0198】
本発明に係るTaqManTMリアルタイムPCR検出系によるM.イントラセルラーレの検出方法の一例を説明すると、以下の通りである。
【0199】
まず、公知の方法(例えば前記した方法)に従い、M.イントラセルラーレを検出する試料(被検試料)中から精製DNA試料を得る。別に、DNAシンセサイザーを用いて、ホスホアミダイト法にて、配列番号9で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(02_Fw1)、及び配列番号10で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(02_Rv1)を合成する。
【0200】
また、02_Fw1及び02_Rv1をプライマーとして用いたPCRで増幅されると予想される配列番号138の塩基配列から、プローブとして利用するための配列(例えば配列番号204で表される配列)を設計し、この塩基配列のオリゴヌクレオチドを合成する。このオリゴヌクレオチドの5'末端にレポーター色素のFAMを、3’末端にレポーター消光体のTAMRAを常法により結合し、蛍光標識プローブを得る。
【0201】
上記で調製した02_Fw1をフォワードプライマーとして、02_Rv1をリバースプライマーとして用い、例えば下記の通りリアルタイムPCRを行う。
【0202】
即ち、各0.1〜2μM、好ましくは各1μMのプライマー02_Fw1及びプライマー02_Rv1、100〜1000nMの蛍光標識プローブ、1.0〜4.0mM MgCl2 、KCl、BSA、コール酸ナトリウム、0.005〜0.2% TritonX−100、夫々0.2mM程度のdATP、dCTP、dGTP、dTTP、10〜80単位/mLのTaq DNA ポリメラーゼ等のポリメラーゼを含有する10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.9)を調製し、PCR用反応液とする。このPCR用反応液20μLに精製DNA試料1ngを加え、PCR用試料を得る。このPCR用試料を96穴反応プレートのウェルに入れ、適当なリアルタイムPCR検出装置等を用いてリアルタイムPCRを行う。反応は30〜50回サイクル繰り返し、1サイクル毎にレポーター色素の蛍光量を測定する。
【0203】
この場合のM.イントラセルラーレ検出方法としては、レポーター色素の蛍光が測定された場合に、被検試料はM.イントラセルラーレ陽性と判定される。
【0204】
また、リアルタイムPCR法では、検量線を作成することができるので、試料中のM.イントラセルラーレのゲノムDNAの数(コピー数)を得ることがでる。また、その数はM.イントラセルラーレの数に比例するので、試料(被検試料)中のM.イントラセルラーレの数も知ることができる。
【0205】
検量線の作成方法は、リアルタイムPCR法において通常行われている常法に従えばよい。例えば、標準としてコピー数既知のM.イントラセルラーレのゲノムDNA試料を用い、希釈系列の濃度(コピー数)のPCR用DNA試料を調製する。次いで各希釈系列のPCR用DNA試料を用いて上記方法に従いリアルタイムPCRを行い、レポーター色素の蛍光量を測定する。各希釈系列のPCR用DNA試料毎に、PCRの各サイクル数(x軸)に対する、測定した蛍光量の測定値(Rn、y軸)をプロットした増幅曲線を作成する。次いで、蛍光量が指数関数的に増幅しているRn部を選択し、Threshold line(Th)を引く。Thと各PCR用DNA試料の増幅曲線が交差した点をThreshold cycle(Ct)値とする。次いで用いた各PCR用DNA試料のコピー数の対数値(x軸)に対するCt値(y軸)をプロットし、各Ctに対して得られた近似曲線を検量線とすればよい。
【0206】
インターカレーター法によるリアルタイムPCRを行って、得られた測定値を基に同様に検量線を作成することができる。例えば、PCRの各サイクル数(x軸)に対するインターカレーター由来の蛍光量の測定値(Rn、y軸)をプロットした増幅曲線を作成する。次いで、上記と同じ方法でCt値を得、リアルタイムPCRに用いた各PCR用DNA試料のコピー数の対数値(x軸)に対するCt値(y軸)をプロットし、各Ctに対して得られた近似曲線を検量線とすればよい。
【0207】
試料中のM.イントラセルラーレのゲノムDNAの数(コピー数)を定量するには、先ずM.イントラセルラーレを検出する試料中からDNAを分離精製した後、得られたDNA試料についてリアルタイムPCRを行い、同様に増幅曲線を作成する。検量線を作成したときのThと得られた増幅曲線が交差したCt値を得る。そのCt値を検量線に当てはめることにより、試料中のM.イントラセルラーレのゲノムDNA量(コピー数)を得ることができる。
【0208】
(A−3)核酸増幅反応を行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、その結果に基づいて行う方法
この方法としては、例えば
「下記工程
(i)配列番号1,配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1,配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマー(本発明のプライマー)として用い、試料中の核酸を鋳型として核酸増幅反応を行う、
(ii)上記(i)で得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、その結果に基づいてM.イントラセルラーレの有無を判定する、
を包含することを特徴とするM.イントラセルラーレの検出方法」が挙げられる。
【0209】
電気泳動を行い、その結果に基づいて、M.イントラセルラーレの有無を判定する方法としては、例えば
(A−3−1)目的とする大きさ(塩基対数)のプライマー伸長産物画分を確認することにより判定する方法、
(A−3−2)標識プローブを用いたハイブリダイゼーションにより判定する方法
等が挙げられる。
【0210】
核酸増幅反応の具体例は、前記した通りである。
【0211】
電気泳動法の条件、操作方法等は、この分野で通常行われている常法に従えばよい。
【0212】
以下に、(A−3−1)及び(A−3−2)の方法について説明する。
【0213】
(A−3−1)目的とする大きさ(塩基対数)のプライマー伸長産物画分を確認することにより判定する方法
例えば、まず本発明のプライマーから、適当なフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せを選択し、それを用いてPCR等の核酸増幅反応を行う。次いで、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行う。予め、核酸増幅反応に用いたフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せから、増幅されるであろうプライマー伸長産物の大きさ(塩基対数)を予測しておき、得られた電気泳動画分が予測された大きさのプライマー伸長産物に該当するか否かを、常法により確認すればよい。例えば、得られた電気泳動画分をエチジウムブロマイド等で染色して核酸種を視覚化するといった方法で、そのプライマー伸長産物の特徴的大きさ(塩基対数)により確認する等の方法が挙げられる。
【0214】
(A−3−1)の方法による具体的な判定方法としては、例えば前記した表1に記載されたフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、そのプライマーの組合せで増幅されると予想される、表1に記載の配列番号で表される塩基配列のオリゴヌクレオチド、又はその塩基対数の大きさの画分が確認された場合に、被検試料はM.イントラセルラーレ陽性と判定する方法が挙げられる。
【0215】
これらの方法の中のより好ましい方法としては、例えば下記の方法が挙げられる。
(1)配列番号9で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号10で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、155塩基対のオリゴヌクレオチド画分又は配列番号139で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドの画分が確認されたものを陽性と判定する方法、
【0216】
(2)配列番号23で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号24で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、159塩基対のオリゴヌクレオチド画分又は配列番号146で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドの画分が確認されたものを陽性と判定する方法、
【0217】
(3)配列番号41で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号42で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、179塩基対のオリゴヌクレオチド画分又は配列番号155で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドの画分が確認されたものを陽性と判定する方法、
【0218】
(4)配列番号59で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号60で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、157塩基対のオリゴヌクレオチド画分又は配列番号164で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドの画分が確認されたものを陽性と判定する方法、
【0219】
(5)配列番号79で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号80で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、160塩基対のオリゴヌクレオチド画分又は配列番号174で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドの画分が確認されたものを陽性と判定する方法、
【0220】
(6)配列番号93で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号94で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、172塩基対のオリゴヌクレオチド画分又は配列番号181で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドの画分が確認されたものを陽性と判定する方法、
【0221】
(7)配列番号105で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号106で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、181塩基対のオリゴヌクレオチド画分又は配列番号187で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドの画分が確認されたものを陽性と判定する方法、
【0222】
(8)配列番号127で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号128で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、152塩基対のオリゴヌクレオチド画分又は配列番号198で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドの画分が確認されたものを陽性と判定する方法。
【0223】
(A−3−2)標識プローブを用いたハイブリダイゼーションにより判定する方法
例えば核酸増幅反応を行って得られたプライマー伸長産物について、電気泳動を行う。得られた電気泳動画分について、本発明のプローブを標識物質で標識した標識プローブに対するハイブリダイゼーションを行う。該標識プローブの標識を検出することによって、該標識プローブとハイブリダイズした画分の存在が確認された場合に、その被検試料は、M.イントラセルラーレ陽性と判定する方法が挙げられる。
【0224】
用いられるプローブ及びプローブを標識する標識物質の具体例、並びにプローブの標識方法は、前記した通りである。
【0225】
その一例を示すと、次の通りである。即ち、前記した表1に記載のフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行う。予め、PCRに用いたフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せで増幅されると予測される、表1に記載の配列番号の塩基配列の一部又は全部を含有する塩基配列のオリゴヌクレオチドを標識物質で標識した標識プローブを調製しておく。電気泳動画分の該標識プローブに対するハイブリダイゼーションを行い、該標識プローブの標識を検出することによって該標識プローブとハイブリダイズした画分の存在が確認された場合に、その被検試料はM.イントラセルラーレ陽性である、と判定する方法、が挙げられる。
【0226】
これらの方法の好ましい具体例としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
(1)配列番号9で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号10で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行う。次いで、得られた画分について、配列番号139で表される塩基配列の一部又は全部を含有する塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドを標識物質で標識した標識プローブに対するハイブリダイゼーションを行い、該標識プローブの標識を検出することによって該標識プローブとハイブリダイズした画分が確認されたものを陽性と判定する方法、
【0227】
(2)配列番号23で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号24で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行う。次いで、得られた画分について配列番号146で表される塩基配列の一部又は全部を含有する塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドを標識物質で標識した標識プローブに対するハイブリダイゼーションを行い、該標識プローブの標識を検出することによって該標識プローブとハイブリダイズした画分が確認されたものを陽性と判定する方法、
【0228】
(3)配列番号41で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号42で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行う。次いで、得られた画分について配列番号155で表される塩基配列の一部又は全部を含有する塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドを標識物質で標識した標識プローブに対するハイブリダイゼーションを行い、該標識プローブの標識を検出することによって該標識プローブとハイブリダイズした画分が確認されたものを陽性と判定する方法、
【0229】
(4)配列番号59で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号60で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行う。次いで、得られた画分について配列番号164で表される塩基配列の一部又は全部を含有する塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドを標識物質で標識した標識プローブに対するハイブリダイゼーションを行い、該標識プローブの標識を検出することによって該標識プローブとハイブリダイズした画分が確認されたものを陽性と判定する方法、
【0230】
(5)配列番号79で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号80で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行う。次いで、得られた画分について配列番号174で表される塩基配列の一部又は全部を含有する塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドを標識物質で標識した標識プローブに対するハイブリダイゼーションを行い、該標識プローブの標識を検出することによって該標識プローブとハイブリダイズした画分が確認されたものを陽性と判定する方法、
【0231】
(6)配列番号93で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号94で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行う。次いで、得られた画分について配列番号181で表される塩基配列の一部又は全部を含有する塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドを標識物質で標識した標識プローブに対するハイブリダイゼーションを行い、該標識プローブの標識を検出することによって該標識プローブとハイブリダイズした画分が確認されたものを陽性と判定する方法、
【0232】
(7)配列番号105で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号106で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行う。次いで、得られた画分について配列番号187で表される塩基配列の一部又は全部を含有する塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドを標識物質で標識した標識プローブに対するハイブリダイゼーションを行い、該標識プローブの標識を検出することによって該標識プローブとハイブリダイズした画分が確認されたものを陽性と判定する方法、
【0233】
(8)配列番号127で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号128で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行う。次いで、得られた画分について配列番号198で表される塩基配列の一部又は全部を含有する塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドを標識物質で標識した標識プローブに対するハイブリダイゼーションを行い、該標識プローブの標識を検出することによって該標識プローブとハイブリダイズした画分が確認されたものを陽性と判定する方法。
【0234】
(A−3)の方法による、本発明のM.イントラセルラーレの検出方法の詳細を、例えば02_Fw1をフォワードプライマーとして用い、02_Rv1をリバースプライマーとして用いたPCR、及び電気泳動を行った後、目的とする塩基対数のプライマー伸長産物画分を確認する方法によって検出する場合(上記の(A−3−1)の(1)の方法)を例に挙げて説明すると、以下の通りである。
【0235】
まず、公知の方法(例えば前記した方法)に従い、M.イントラセルラーレの有無を検出する試料(被検試料)中から精製DNA試料を得る。別に、前記した方法で、本発明に係るヌクレオチドから、DNAシンセサイザーを用いてホスホアミダイト法にて、02_Fw1(配列番号9で表される配列を持つオリゴヌクレオチド)及び02_Fw1(配列番号10で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチド)を合成する。
【0236】
各0.1〜2μM、好ましくは各1μMのプライマー02_Fw1及びプライマー02_Rv1、1.0〜4.0mM MgCl2 、KCl、BSA、コール酸ナトリウム、0.005〜0.2%ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、夫々0.1〜0.6mM程度のdATP、dCTP、dGTP、dTTP及び10〜80単位/mLのTaq DNA ポリメラーゼを含有する10mM Tris−HCl(pH8.9)緩衝液を調製し、PCR用反応液とする。
【0237】
PCR用反応液に精製DNA試料を添加したものをPCR用試料として用い、DNAサーマルサイクラーにて、20〜40回PCRを行う。得られたPCR後の反応液を、1.5%アガロースゲル電気泳動する。次いでエチジウムブロマイド染色した後、紫外線での蛍光を検出する。また、分子量マーカーも反応液と同時に電気泳動し、相対泳動度の比較により、検出されたDNA断片の長さを算出する。フォワードプライマーとして02_Fw1、及びリバースプライマーとして02_Rv1を用いたPCRでは、M.イントラセルラーレの塩基配列中の155塩基対のDNA断片(配列番号139で表される塩基配列を持つ。)が複製されると予測される。そこで、155塩基対の大きさの蛍光バンドが確認された場合に、被検試料はM.イントラセルラーレ陽性と判定すればよい。
【0238】
また本発明は、核酸増幅工程において、RNA転写産物を利用した検出法を適用する事ができる。例えば、NASBA(nucleic acid sequence based amplification)法(特許第2650159号)、3SR(self−sustained sequence replication)法(特公平7−114718号)、TAS(transcription based amplification system)法(特表平2−500565号:国際公開WO88/10315号)、TMA(transcription mediated amplification)法(特開平11−46778号)などが挙げられるが、中でも逆転写酵素及びRNAポリメラーゼの協奏的作用(逆転写酵素及びRNAポリメラーゼが協奏的に作用するような条件下で反応させる。)を利用する一定温度核酸増幅法が測定系の自動化には適する。
【0239】
(A−4)標識プライマーを用いた核酸増幅反応を行って得られたプライマー伸長産物の標識を測定する方法、
本発明のプライマーを前記した方法で標識した標識プライマーを用い、被検試料中の核酸を鋳型として用いてPCR等の核酸増幅反応を行い、得られたプライマー伸長産物の標識を検出・測定し、標識を検出できた場合には、その被検試料M.イントラセルラーレ陽性である、と判定する方法が挙げられる。この方法に用いられるフォワードプライマー及びリバースプライマーとしては、前記のPCR法において用いられるものが挙げられ、その好ましい具体例及び好ましい組合せも前記した通りである。
【0240】
上記方法の場合、核酸増幅反応を行ったのち、遊離の標識プライマーを除き、プライマー伸長産物の標識を測定し、標識を検出できた場合に、被検試料はM.イントラセルラーレ陽性であると判定すればよい。
【0241】
遊離の標識プライマーを除く方法としては、核酸増幅反応反応を行って得られた反応物中のプライマー伸長産物を、核酸を沈殿させる常法(エタノール沈殿法、イソプロパノールを用いた沈殿法等)により沈殿させた後、沈殿しなかった遊離の標識プライマーを含有する上清を除去する方法等が挙げられる。
【0242】
また、核酸増幅反応を行って得られた反応物を適当な条件下、ゲルクロマトグラフィーで処理して、プライマー伸長産物と遊離の標識プライマーを分離する方法、電気泳動法により分離する方法等も挙げられる。
【0243】
(B)本発明のオリゴヌクレオチドを標識物質で標識したものを標識プローブとして用いる方法
更に、本発明のM.イントラセルラーレの検出方法として、配列番号1,配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1,配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(本発明のオリゴヌクレオチド)を標識物質で標識したものを標識プローブとして用い、該標識プローブを試料中の核酸とハイブリダイゼーションさせ、遊離の標識プローブを除いた後、ハイブリダイズした複合体の標識を検出する方法が挙げられる。
【0244】
具体的には、例えば下記のような方法が挙げられる。
(B−1)本発明のオリゴヌクレオチドを固相担体に結合させたものを捕捉プローブとして用い、被検試料中の核酸とハイブリダイゼーションさせて、試料中のM.イントラセルラーレ由来の核酸を固相上に固定化させる検出法(例えば、特開昭62−265999号の記載参照)。この場合、本発明のオリゴヌクレオチドあるいは固相担体が、標識物質で標識されていてもよい。
(B−2)標識されていない(B−1)の捕捉プローブと、本発明のプローブを標識した標識プローブを、被検試料中の核酸とハイブリダイゼーションさせて、固相担体上に補足プローブとM.イントラセルラーレ由来の核酸と標識プローブの複合体を形成させて、標識プローブの標識を測定するサンドイッチアッセイ(例えば、特開昭58−40099号の記載参照)を行う方法。
(B−3)ビオチンで標識した本発明のプローブを用い、被検試料中の核酸とハイブリダイゼーション後、試料中のM.イントラセルラーレ由来の核酸をアビジン結合担体で捕捉する方法。
【0245】
尚、本発明のM.イントラセルラーレの検出方法に用いられる試薬中には、通常この分野で用いられる試薬類、例えば緩衝剤、安定化剤、防腐剤等であって、共存する試薬等の安定性を阻害せず、PCR等の核酸増幅反応やハイブリダイゼーション反応を阻害しないものを用いることができる。また、その濃度も、通常この分野で通常用いられる濃度範囲から適宜選択すればよい。
【0246】
緩衝液の具体例を挙げると、例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液等、通常のPCR等の核酸増幅反応やハイブリダイゼーション反応を実施する場合に用いられている緩衝液は全て挙げられ、そのpHも特に限定されないが、通常5〜9の範囲が好ましい。
【0247】
また、必要に応じて核酸合成酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素など)、酵素に応じた基質(dNTP、rNTPなど)、また二本鎖インターカレーター(エチジウムブロマイド、SYBRTM Greenなど)あるいはFAMやTAMRA等の標識検出物質などが用いられる。
【0248】
本発明に係るM.イントラセルラーレ検出用試薬キットとしては、「配列番号1,配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1,配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマー(本発明のプライマー)又は/及びプローブ(本発明のプローブ)として含んでなるM.イントラセルラーレ検出用試薬キット。」が挙げられる。プライマーは標識物質で標識されたものであってもよい。その標識物質の具体例は前記した通りである。
【0249】
上記キットを構成する本発明のプライマー及び本発明のプローブの具体例は、前記した「本発明のプライマー」、「本発明のプローブ」についての説明に記載した通りである。
【0250】
本発明のプライマーは標識物質で標識されたものであってもよい。その標識物質の具体例は前記した通りである。
【0251】
本発明のプライマーを含んでなるキットには、フォワードプライマーとリバースプライマーの一組のプライマーを含む組成も含まれる。その好ましい実施態様としては、前記表1に記載のプライマーの組合せを含む組成が挙げられる。
【0252】
例えば下記のものが挙げられる。
(1)(a)配列番号9で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号9で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーと、(b)配列番号10で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号10で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマー、を構成試薬として含んでなるもの。
【0253】
(2)(a)配列番号23で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号23で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーと、(b)配列番号24で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号24で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマー、を構成試薬として含んでなるもの。
【0254】
(3)(a)配列番号41で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号41で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーと、(b)配列番号42で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号42で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマー、を構成試薬として含んでなるもの。
【0255】
(4)(a)配列番号59で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号59で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーと、(b)配列番号60で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号60で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマー、を構成試薬として含んでなるもの。
【0256】
(5)(a)配列番号79で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号79で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーと、(b)配列番号80で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号80で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマー、を構成試薬として含んでなるもの。
【0257】
(6)(a)配列番号93で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号93で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーと、(b)配列番号94で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号94で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマー、を構成試薬として含んでなるもの。
【0258】
(7)(a)配列番号105で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号105で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーと、(b)配列番号106で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号106で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマー、を構成試薬として含んでなるもの。
【0259】
(8)(a)配列番号127で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号127で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーと、(b)配列番号128で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号128で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.イントラセルラーレ遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマー、を構成試薬として含んでなるもの。
【0260】
上記キットは、更に、本発明のオリゴヌクレオチドを標識物質で標識したものを標識プローブとして含んでいてもよい。
【0261】
更に、「本発明のオリゴヌクレオチドをプローブとして含んでなるM.イントラセルラーレ検出用試薬キット。」が挙げられる。該プローブは標識物質で標識されたものであってもよい。
【0262】
これらのキットを構成する構成試薬の好ましい態様及び具体例は前記した通りである。
【0263】
尚、本発明のM.イントラセルラーレの検出用試薬キットには、例えば緩衝剤、安定化剤、防腐剤等であって、共存する試薬等の安定性を阻害せず、PCR等の核酸増幅反応やハイブリダイゼーション反応を阻害しないものが含まれていてもよい。また、その濃度も、通常この分野で通常用いられる濃度範囲から適宜選択すればよい。
【0264】
緩衝液の具体例を挙げると、例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液等、通常のPCRやハイブリダイゼーション反応を実施する場合に用いられている緩衝液は全て挙げられ、そのpHも特に限定されないが、通常5〜9の範囲が好ましい。
【0265】
また、必要に応じて核酸合成酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素など)、酵素に応じた基質(dNTP、rNTPなど)、また二本鎖インターカレーター(エチジウムブロマイド、SYBRTM Greenなど)あるいはFAMやTAMRA等の標識検出物質などを含んでいてもよい。
【0266】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。
【0267】
尚、実施例で用いられる細菌はいずれも臨床分離株であり、培養後、コロニーの形状や従来の各種生化学的試験などによって菌種がすでに鑑別されているものである。
【実施例】
【0268】
実験例1.M.イントラセルラーレゲノム由来のクローンの選択
(1)DNA試料の調製
まず、小川培地上で培養したM.イントラセルラーレ(ATCC13950)のコロニーを精製水に懸濁し、オートクレーブ処理(120℃・2気圧、20分)した後、菌体の粉砕処理(直径2mmガラスビーズによる物理的破砕)を経て、遠心分離し、上清を得た。得られた上清から、(株)キアゲン製のイオン交換樹脂タイプ DNA抽出精製キットGenomic−tipを用いてDNAの抽出、精製を行った。
【0269】
得られた精製ゲノムDNA断片を、最終400ng/μL(10mM Tris−HCl緩衝液、pH8.9)になるように調製し、M.イントラセルラーレ由来DNA試料として用いた。
【0270】
また、ポジティブコントロール用に、rps1(配列番号205で表される配列のDNAフラグメント、M.イントラセルラーレに特異的な配列、特許文献1に記載)、IS6110 element(配列番号206で表される配列のDNAフラグメント、Mycobacterium bovis(ウシ型結核菌)が持つ配列)、M.kansasiiのKATS2 sequence(配列番号207で表される配列のDNAフラグメント、M.kansasiiに特異的な配列、特開平11−155589号公報)、ネガティブコントロールとしてM.aviumのMAV19K(配列番号208で表される配列のDNAフラグメント、M.aviumに特異的な配列、特開平11−06999号公報に記載)及び大腸菌のDNAの抽出方法の常法に従いDNAを抽出,精製した大腸菌由来のDNA、を用いて夫々同様にDNA試料を調製し、同様に以下の処理を行った。
【0271】
(2)Whole Genome Shotgun libraryの作製
上記(1)で得られたM.イントラセルラーレ由来DNA試料24μgを材料として用い、以下の方法(Science. 2001 Feb 16;291(5507):1304−1351 Venter et al.に記載のWhole Genome Shotgun法を改変)で、Whole Genome Shotgun libraryの作製を行った。
【0272】
まず、終濃度20%のグリセロール存在下で、5kPa〜9kPaの圧力下、ネビュライザー(インビトロジェン社製)を用いて約10分間処理して、M.イントラセルラーレ由来DNA試料を断片化した。この処理方法により、目的とする500〜1000塩基対のサイズ画分を効率よく回収する事ができた。得られた画分を(株)キアゲン製の抽出カラムを利用して精製した。
【0273】
次に、タカラバイオ社製のDNA Blunting Kitを用い、T4 DNA Polymeraseの5'→3'polymerase活性と3'→5'exonuclease活性を利用して、得られたDNA断片の末端を平滑化した。このDNA断片と、平滑末端処理済みpBSII sk+ベクター(Stratagene社)とでライゲーション反応を行い、DNA断片をpBSII sk+ベクター(amp)に組み込んだ組み換えDNAを作製した。
【0274】
タカラバイオ社製E. coli JM109 Competent Cellsを用い、その製品プロトコールに従って、上記で得られた組み換えDNAを用いてE. coli JM109 Competent Cellsの形質転換を行った。得られた形質転換体を100μg/mLのアンピシリン、0.2 mM IPTG、40μg/mL X−Galを含むLB−寒天培地にプレート培養した。白色コロニーをピックアップし、目的のDNA断片を組み込んだ組み換えDNAが導入された、形質転換体のlibrary(M.イントラセルラーレのゲノム由来のWhole Genome Shotgun clone library)を得た。
【0275】
(3)マイクロアレイ作製
上記(2)で得られた形質転換体のlibrary(M.イントラセルラーレのゲノム由来のWhole Genome Shotgun clone library)を用い、下記の方法でPCRを行って、スライドガラス上に固定するプローブ材料を調製した。
【0276】
まず、各1μMのプライマーM13 Primer M1(タカラバイオ社製)及びプライマーM13 Primer RV(タカラバイオ社製)、1.5mM MgCl2 、80mM KCl、500μg/mL BSA、0.1% コール酸ナトリウム、0.1% Triton X−100(トリトンX−100、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ローム アンド ハース社商品名)、夫々0.2mM のdATP、dCTP、dGTP、dTTP及びTaq DNA ポリメラーゼ((株)ニッポン・ジーン製)40単位/mL を含有する10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.9)を調製し、PCR用反応液とした。
【0277】
上記(2)で得られた形質転換体(M.イントラセルラーレのゲノム由来のWhole Genome Shotgun clone)のそれぞれから、常法に従いDNAを精製した。この精製したDNA(テンプレートとなる)をPCR用反応液20μLに懸濁添加したものを調製し、PCR用試料とした。このPCR用試料を用い、MJ Research社のDNAサーマルサイクラー(DNA Engine PTC200)を使用して、下記の反応条件で30サイクル PCRを行った。
【0278】
PCR反応条件:
熱変性: 94℃、0.5分
アニーリング:55℃、1分
重合反応: 75℃、0.5分。
【0279】
得られたPCR増幅産物を精製後、固定化Buffer(終濃度3x SSC)と混合した。
【0280】
スポットされるPCR産物の終濃度が300ng/μLとなるように調整し、装置内の湿度を55%に設定したタイピング用装置(GTMAS Stamp II; 日本レーザ電子社製)を使用し、スライドガラス(CMT GAPS−II; Corning社製)上に、上記で得られたPCR産物をスポットした(スポット径150−250μm)。スポットが終了したスライドガラスをUVクロスリンカー(UV Stratalinker1800; Stratagene社製)に移し、150mJ/cm2のUV照射を行なって、PCR増幅産物(目的のDNA)をスライドガラス上に固定化し、マイクロアレイ(M.イントラセルラーレゲノム由来DNAのWhoule Genome Shotgun clone libraryを材料としたマイクロアレイ、合計1100クローン)を作製した。
【0281】
前記(1)で得られたポジティブコントロール用DNA試料(rps1、IS6110 element、KATS2 sequence)、及びネガティブコントロール用DNA試料(MAV19K、大腸菌由来DNA)についても、同様に前記(2)のWhole Genome Shotgun libraryの作製及び上記(3)のマイクロアレイの作製を行い、スライドガラス上に夫々のマイクロアレイを作製した。
【0282】
(4)標的ゲノムDNAの蛍光色素標識とマイクロアレイ・ハイブリダイゼーション
i)標的ゲノムDNAの蛍光色素標識
BioPrime DNA labeling system(インビトロジェン社製)を利用し、標的ゲノムDNAフラグメントの蛍光色素標識を行った。
まず、M.intracellulare(ATCC16950)から常法により抽出・精製したゲノムDNA 2μgに、製品中のrandom primer solution 20μLを混合した後、熱変性(95℃、5分間)処理を行い、サンプル溶液を得た。別に、Mycobacterium bovis(ウシ型結核菌、日本細菌学会から供与された。)、及びM.kansasii(ATCC12478)から常法により夫々ゲノムDNAを抽出・精製し(対照用ゲノムDNA)、各々についても同様に処理を行い、サンプル溶液を得た。
【0283】
次いで、得られたサンプル溶液夫々に、0.1M DTT 2μL、dATP/dCTP/dGTP(各5mM)の混合液 2μL、2.5mM dTTP 0.8μL、5mM Ha−dUTP 1.6μL、Klenow酵素(40U/μL) 1μLを添加し、total volume=50μLとなるように脱イオン化滅菌水を加え、37℃で3時間の伸長反応を行った。マイクロコンYM−30(ミリポア社製)の限外ろ過カラムを付属の1.5mL チューブにセットし、上記で得られた反応産物をカラムにのせ、14000rpm で4 分遠心した後、濃縮液をマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機(CentriVap concentrator; LABCONCO社製)で完全に乾燥させた。
【0284】
乾燥させた上記反応産物に、50mM NaHCO3 を10μL 加え混合し、2〜3 分常温で静置した(以下、「反応産物溶液」と称する。)。
【0285】
別に、1mg のCy3(アマシャムバイオサイエンス株式会社)又はCy5(アマシャムバイオサイエンス株式会社)を105μL のDMSO に溶かしたものを調製した(Cy−dye Solution Cy3、Cy−dye Solution Cy5)。このCy−dye Solution Cy3 10μL を対照用ゲノムDNAフラグメント(M. bovis由来、M.kansasii由来)を用いて得られたサンプル溶液夫々に加え、40℃で60 分インキュベート(遮光)を行った。また、Cy−dye Solution Cy5 10μL をM.イントラセルラーレ由来ゲノムDNAを用いて得られた上記サンプル溶液に加え、40℃で60 分インキュベート(遮光)を行った。
【0286】
さらに、インキュベート後の、夫々の上記反応産物溶液に、4M NH2OH(使う直前に調製する)を10μL 加え、攪拌後、15 分インキュベート(遮光)を行い、夫々の標識産物、即ちM. bovis由来の対照用ゲノムDNAをCy3で標識した標識産物、M.kansasii由来の対照用ゲノムDNAをCy3で標識した標識産物、及びM.イントラセルラーレ由来ゲノムDNAをCy5で標識した標識産物を得た。
【0287】
マイクロコンYM−30(ミリポア社製)の限外ろ過カラムを付属の1.5mL チューブにセットし、上記で得られた各ゲノムDNAの標識産物をカラムにのせ、14000rpm で4 分遠心した後、濃縮液をマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機(CentriVap concentrator; LABCONCO社製)で完全に乾燥させた。
【0288】
ii)標識産物の断片化工程
上記(4) i)で得られた乾燥状態のゲノムDNAの標識産物に対して、終濃度が0.04M Tris−acetate(pH8.1)、0.1M 酢酸カリウム、0.03M酢酸マグネシウム四水和物の組成の溶液40μLを調製したものを加え、懸濁混和させた。次いで94℃で15 分間加熱処理し、100base〜300 base の、ゲノムDNAの標識産物を断片化した生成物を得た。
【0289】
尚、BcaBEST DNA Polymerase(タカラバイオ社製)及びrBst DNA Polymerase(EPICENTRE社製)を用いてラベル化効率(base/dye)を調べた結果、Cy3標識の実験結果ではM. bovis由来の対照用ゲノムDNA、M.kansasii由来の対照用ゲノムDNAともに、約20塩基にdye 1分子が取り込まれていることを確認している。また、Cy5標識の実験結果では、M.イントラセルラーレゲノムDNAの約10塩基にdye 1分子が取り込まれていることを確認している。
【0290】
得られたCy3標識産物溶液及びCy5標識産物溶液を混合し、マイクロコンYM−10(ミリポア社製)の限外ろ過カラムにのせ14000rpm で4 分遠心した後、濃縮液をマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機(CentriVap concentrator; LABCONCO社製)で完全に乾燥させた。次いで、マイクロチューブに以下の試薬を加え、懸濁混和して標識産物を溶解させ、M. bovis由来の対照用ゲノムDNAのCy3標識産物とM.イントラセルラーレゲノム由来DNAのCy5標識産物のCy3Cy5標識産物混合溶液と、M.kansasii由来の対照用ゲノムDNAのCy3標識産物とM.イントラセルラーレゲノム由来DNAのCy5標識産物のCy3Cy5標識産物混合溶液を得た。
【0291】
ArrayHyb Hybridization buffer(SIGMA社製);40μL
salmon sperm DNA(10mg/mL) ;0.5μL
formamide ;5μL
Total 40〜50μL
得られたCy3Cy5標識産物混合溶液を、95℃で5 分インキュベートし、ハイブリダイゼーションまで70℃に保っておいた。
【0292】
iii)マイクロアレイ・ハイブリダイゼーション
前記(3)の工程により、M.イントラセルラーレのWhole Genome shotgun clone、ポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして用いるDNAフラグメントの各々のスポットを同一のスライドガラス上に集積したマイクロアレイ(DNAチップ)が作製される。
上記(4)ii)で得られたCy3Cy5標識産物混合溶液をマイクロアレイ上にのせ、気泡が入らないようにカバーガラスをかぶせた。これをハイブリカセットにセットし、タッパーに蒸留水で湿らせたキムタオルをひいたものの上にのせて密閉し、遮光下に65℃で8 時間以上反応させてハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、DNAチップをカバーガラスごと2×SSC−0.1%SDS 溶液に室温で浸し、溶液中でDNAチップを静かに揺らしてカバーグラスをはずした。次いで1×SSC、0.03%SDS溶液(60℃)で10 分間洗浄、 0.2×SSC 溶液(42℃)で10 分間洗浄、0.05×SSC溶液(室温)で10 分間洗浄した後、新しい乾いたラックにDNAチップをすばやく移し、すぐに800prm で5 分間遠心を行って乾燥させた。
【0293】
(5)蛍光強度の測定:シグナル検出から数量化まで
蛍光読み取りスキャナー(Protein Array Scanner;日本レーザ電子社製)を用いて、マイクロアレイ・ハイブリダイゼーション処理したマイクロアレイ(DNAチップ)上の蛍光強度を測定した。この際、Cy3標識産物とCy5標識産物を用いた競合ハイブリダイゼーションの結果を解析するため、2チャンネル、即ち2ch(Cy3、Cy5)での蛍光検出データを得た。
【0294】
蛍光シグナルの数量化は日立ソフト社製のDNASISTM−Array(DNAチップ発現イメージ解析ソフトウェア)を用い、ソフトの操作手順に従って、スポット自動認識、バックグラウンド計算、蛍光強度比の正規化を行った。また、信頼性限界ラインを定め、それ以下の領域のデータは扱わない事で正規化され信頼性のある蛍光強度比を求めた。
【0295】
マイクロアレイチップ上には、M.イントラセルラーレの菌体由来のDNA、ポジティブコントロール(rps1:M.イントラセルラーレに特異的な配列のDNAフラグメント、IS6110 element:M. bovisに特異的な配列のDNAフラグメント、KATS2 sequenceM.kansasiiに特異的な配列のDNAフラグメント)及びネガティブコントロール(MAV19K:M.Aviumに特異的な配列のDNAフラグメント、大腸菌由来ゲノムDNAの断片)がスポットされている。
【0296】
まず、M. bovis由来の対照用ゲノムDNAのCy3標識産物とM.イントラセルラーレ由来ゲノムDNAのCy5標識産物の混合物を用いてマイクロアレイ・ハイブリダイゼーションを行い、蛍光強度を測定して、Cy3/Cy5の蛍光強度比(Ratio)を求めた。即ち、あるマイクロアレイ上のスポットのCy3に対するCy5の蛍光強度比が高い場合は、そのスポットのDNA断片(PCR増幅産物)は、Cy5標識産物、即ちM.イントラセルラーレ由来ゲノムDNAとより強くハイブリダイズしたことを示す。他方、あるマイクロアレイ上のスポットのCy3に対するCy5の蛍光強度比が低い場合は、そのスポットのDNA断片は、M.イントラセルラーレ由来ゲノムDNAに対する特異性が弱く、Cy3標識産物、即ちM. bovis由来の対照用ゲノムDNAとより強くハイブリダイズしたことを示す。この方法で、マイクロアレイの全てのスポットの蛍光強度比を算出し、蛍光強度が高く、且つCy3に対するCy5の蛍光強度比が高いスポットの上位50スポットを選択した。
【0297】
同じマイクロアレイについて、M.kansasii由来の対照用ゲノムDNAのCy3標識産物とM.イントラセルラーレ由来ゲノムDNAのCy5標識産物の混合物を用いて同様にマイクロアレイ・ハイブリダイゼーション、蛍光強度の測定及び蛍光強度比を測定した。この場合は、あるスポットのCy3に対するCy5の蛍光強度比が高い場合は、そのスポットのDNA断片(PCR増幅産物)は、Cy5標識産物、即ちM.イントラセルラーレゲノム由来DNAとより強くハイブリダイズしたことを示す。他方、あるスポットのCy3に対するCy5の蛍光強度比が低い場合は、そのスポットのDNA断片は、M.イントラセルラーレ由来ゲノムDNAに対する特異性が弱く、Cy3標識産物、即ちM.kansasii由来の対照用ゲノムDNAとより強くハイブリダイズしたことを示す。マイクロアレイの全てのスポットの蛍光強度比を算出し、蛍光強度が高く、且つCy3に対するCy5の蛍光強度比が高いスポットの上位50スポットを選択した。
【0298】
M. bovis由来の対照用ゲノムDNAのCy3標識産物を用いた場合に選択された上位50スポットと、M.kansasii由来の対照用ゲノムDNAのCy3標識産物を用いた場合に選択された上位50スポットを比較し、両方の場合に共通するスポットで、rps1(M.イントラセルラーレに特異的な配列)のスポットよりも更に強いCy5の蛍光が検出されたスポット16個を選択した。このスポットは、M. bovisよりも、M.kansasiiよりも、更にrps1よりもM.イントラセルラーレに対する特異性が高いと判断された。そこで、この16クローンを先ず一次候補クローンとして選定した。
【0299】
(6)一次候補クローンの塩基配列決定
次に、選択された一次候補の16クローンについて、下記の方法で塩基配列決定を行った。
【0300】
即ち、Big Dye Terminatorキット(アプライドバイオシステムズ社製)を使用し、製品プロトコールに従い以下の手順でシークエンス解析を行った。
【0301】
一次候補DNA(一次候補クローン) ;2μL(100ng)
M13 Primer M1 ;1μL(5pmoL)
premix ;8μL
【0302】
上記の混合物に、総volume=20μLとなるように脱イオン化滅菌水を加え、MJ Research社のDNAサーマルサイクラー(DNA Engine PTC200)を使用して、下記の反応条件で30サイクルのシークエンス反応を行った。
【0303】
96℃ 2 min → (96℃ 10sec→50℃ 5sec→60℃ 4min)×25 →4℃
【0304】
得られたシークエンス反応産物をQIAGEN社製ゲルろ過カラムで精製後、MJ Research社製のシークエンサー(BaseStation)を用い、機器付属の手順書に従い候補配列すべてのシークエンス(塩基配列)解読を完了した。
【0305】
得られた結果をデータベース(NCBI BLAST及びCHEMICAL ABSTRACT)で検索した結果、M.イントラセルラーレがゲノム配列未解読の生物種であるにも起因するが、データベース上では一次候補の16クローン全てが、未登録の新規な配列であった。
【0306】
(7)二次候補クローンの選択
1)PCRプライマーの合成
まず、決定された一次候補16クローンのシークエンスの解析結果に基づき、夫々の一次候補クローンについて、プライマーデザイン用のWebツールPrimer3(Whitehead Institute for Biomedical Research.)を用いてPCR増幅検出のためのプライマー配列を設計し、更にその結果を基にPCRに使用可能と推測されるフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せを設計した。
【0307】
ABI社DNAシンセサイザー392型を用いて、ホスホアミダイト法にて、設計したオリゴヌクレオチドを合成した。合成手法はABI社マニュアルに従い、各種オリゴヌクレオチドの脱保護はオリゴヌクレオチドのアンモニア水溶液を55℃で一夜加熱することにより実施した。
【0308】
次いでファルマシア社製FPLCを用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにより、合成オリゴヌクレオチドを精製した。
【0309】
2)プローブの作製
夫々の一次候補クローン毎に設計されたフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せを用いたPCRで増幅されると予測される塩基配列から、プローブとして利用するための配列を設計し、この配列のオリゴヌクレオチドを合成した。このオリゴヌクレオチドの5'末端にレポーター色素のFAMを、3’末端にレポーター消光体のTAMRAを結合し、標識オリゴヌクレオチドプローブ(TaqManTMフルオレセント・プローブ、アプライドバイオシステムズジャパン社製)を得た。
【0310】
3)PCR用DNA試料の調製
別に、M.イントラセルラーレから、常法に従いゲノムDNA試料を調製した。また、対照としてEscherichia coli、及び18菌種のマイコバクテリウム属細菌(M.tuberculosisM.kansasiiM.marinumM.simiaeM.scrofulaceumM.gordonaeM.szulgaiM.aviumM.gastriM.xenopiM.nonchromogenicumM.terraeM.trivialeM.fortuitumM.cheloneiM.abscessusM.peregrinum)から、常法に従いDNA試料(対照用)を調製した。得られたDNA試料について、吸光度を測定して試料中のDNA量を測定した。得られたDNA量を、既知の各菌体のゲノムDNA量と比較することにより、試料中のゲノムDNA量(ゲノムコピー数)を決定した。10コピー/μLのゲノムDNAが得られた。
【0311】
次いで10mM Tris−HCl緩衝液、pH8.9を用いてDNA試料を105, 104, 103, 102, 10, 5, 2コピー/μLの希釈系列に希釈したものを調製し、PCR用DNA試料とした。
【0312】
4)リアルタイムPCR
上記1)で調製したフォワードプライマーとリバースプライマーを用い、下記の通りリアルタイムPCRを行った。
【0313】
即ち、一次候補クローンひとつから設計されたフォワードプライマー及びリバースプライマー各1μM、195nMの上記(2)で調製した蛍光標識プローブ、1.5mM MgCl2 、80mM KCl、500μg/mL BSA、0.1% コール酸ナトリウム、0.1%TritonX−100、夫々0.2mM のdATP、dCTP、dGTP、dTTP及びTaq DNA ポリメラーゼ((株)ニッポン・ジーン製)40単位/mL を含有する10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.9)を調製し、反応液とした。
【0314】
反応液20μLに各希釈系列のDNA試料1μL を加えたものをPCR用試料とし、これを96穴反応プレート( マイクロアンプ・オプチカル・96 ウェル・リアクション・プレート、アプライドバイオシステムズジャパン社製)のウェルに入れ、TaqManTM PCR 専用サーマルサイクラー・検出器(ABI7500、アプライドバイオシステムズジャパン社製)を用いてリアルタイムPCRを行った。反応は、95℃ で10分間保温の後、95℃で15秒間、60℃で1分間の反応を50サイクル繰り返し、1サイクル毎にレポーター色素の蛍光量を測定した。尚、蛍光量は、測定に用いたサーマルサイクラーの、測定に供した96穴反応プレート1プレート毎に相対的な蛍光強度比を数値化する機能を用いて求めた。
【0315】
尚、ひとつの一次候補クローン毎に、それぞれその塩基配列を本に設計されたフォワードプライマー及びリバースプライマーを用い、M.イントラセルラーレ由来DNA試料、マイコバクテリウム属菌体由来DNA試料18種、及び大腸菌DNA由来試料を夫々鋳型として96穴反応プレートを用いて、夫々のリアルタイムPCRを一度に行った。
【0316】
5)二次スクリーニング
上記4)で得られたリアルタイムPCRの結果から、M.イントラセルラーレのゲノム由来DNAを鋳型として用いたリアルタイムPCRでは増幅産物が得られ、その他の菌体由来ゲノムDNA(対照)を鋳型として用いたリアルタイムPCRでは増幅産物が得られなかったプライマーの組合せを選択した。そして、そのプライマーの組合せを設計した候補クローンを、最終的なM.イントラセルラーレに特異的な候補クローンとして選択した。
【0317】
選択された候補クローンは、以下の8クローンである。尚、特に記載しない限り、以下、一次スクリーニングで選択された候補クローンを「一次候補クローン」と呼び、二次スクリーニングで最終的に選択された候補クローンを、単に「候補クローンと」呼ぶ。)
・候補クローン1:配列番号1で表されるヌクレオチド配列を持つ667塩基のオリゴヌクレオチド
・候補クローン2:配列番号2で表されるヌクレオチド配列を持つ1129塩基のオリゴヌクレオチド
・候補クローン3:配列番号3で表されるヌクレオチド配列を持つ1003塩基のオリゴヌクレオチド
・候補クローン4:配列番号4で表されるヌクレオチド配列を持つ748塩基のオリゴヌクレオチド
・候補クローン5:配列番号5で表されるヌクレオチド配列を持つ619塩基のオリゴヌクレオチド
・候補クローン6:配列番号6で表されるヌクレオチド配列を持つ511塩基のオリゴヌクレオチド
・候補クローン7:配列番号7で表されるヌクレオチド配列を持つ1006塩基のオリゴヌクレオチド
・候補クローン8:配列番号8で表されるヌクレオチド配列を持つ702塩基のオリゴヌクレオチド
【0318】
実施例1.候補クローンのM.イントラセルラーレ特異性評価
実験例1で得られた候補8クローンについてPCR増幅系を利用した評価実験を実施し、これらの候補クローンが、遺伝子増幅検出系を用いたM.イントラセルラーレの特異的検出系に利用できるかどうかを調べた。
(1)PCRプライマーの合成
まず、決定された候補クローン1のシークエンス(塩基配列)の解析結果に基づき、プライマーデザイン用のWebツールPrimer3(Whitehead Institute for Biomedical Research.)を用いてPCR増幅検出のためのプライマー配列、即ち「5’−GTTCAGCAGATCGTCGTAGG−3’」(配列番号9)及び「5’−CTCTTGACGAGGCAAAACAT−3’」(配列番号10)のオリゴヌクレオチドを設計した。以下、配列番号9で表される塩基配列のプライマーを「02_Fw1」、配列番号10で表される塩基配列のプライマーを「02_Rv1」という。
【0319】
次いで、ABI社DNAシンセサイザー392型を用いて、ホスホアミダイト法にて、設計したオリゴヌクレオチドを合成した。合成手法はABI社マニュアルに従い、各種オリゴヌクレオチドの脱保護はオリゴヌクレオチドのアンモニア水溶液を55℃で一夜加熱することにより実施した。次いでファルマシア社製FPLCを用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにより、合成オリゴヌクレオチドを精製した。
【0320】
(2)試料の調製
Escherichia coliE. coli、大腸菌)(ATCC11775)、及び18種のマイコバクテリウム属細菌、即ちMycobacterium tuberculosis(マイコバクテリウム・ツベルクローシス、ヒト型結核菌)(TMC102[H37Rv])、M.イントラセルラーレ(ATCC13950)、Mycobacterium kansasii(マイコバクテリウム.カンサシ)(ATCC12478)、Mycobacterium marinum(マイコバクテリウム・マリナム)(ATCC927)、Mycobacterium simiae(マイコバクテリウム・シミアエ)(ATCC25275)、Mycobacterium scrofulaceum(マイコバクテリウム・スクロフラセウム)(ATCC19981)、Mycobacterium gordonae(マイコバクテリウム・ゴルドネア)(ATCC14470)、Mycobacterium szulgai(マイコバクテリウム・スズルガイ)(ATCC35799)、Mycobacterium avium(マイコバクテリウム・アビウム)(ATCC25291)、Mycobacterium gastri(マイコバクテリウム・ガストリ)(ATCC15754)、Mycobacterium xenopi(マイコバクテリウム・ゼノピ)(ATCC19250)、Mycobacterium nonchromogenicum(マイコバクテリウム・ノンクロモゲニカム)(ATCC19530)、Mycobacterium terrae(マイコバクテリウム・テレ)(ATCC15755)、Mycobacterium triviale(マイコバクテリウム・トリビアレ)(ATCC23292)、Mycobacterium fortuitum(マイコバクテリウム・フォーチュイタム)(ATCC6841)、Mycobacterium chelonei(マイコバクテリウム・セロネイ)(ATCC35752)、Mycobacterium abscessus(マイコバクテリウム・アプセッサス)(ATCC19977)、Mycobacterium peregrinum(マイコバクテリウム・ペレグリナム)(ATCC14467)を用い、下記の方法でDNAを抽出・精製し、DNA試料を得た。
【0321】
まず、Mycobacterium tuberculosisは、Mycos Research, LLCから精製ゲノムDNAを入手し、それを精製DNAとして用いた。
【0322】
それ以外の細菌については、American Type Culture Collection (ATCC)から菌株を入手し、下記の方法でDNAを抽出・精製した。細菌はいずれも臨床分離株であり、培養後、コロニーの形状や従来の各種生化学的試験などによって菌種がすでに鑑別されているものである。
【0323】
すなわち、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属細菌については、まず、小川培地上のコロニーを精製水に懸濁し、オートクレーブ処理(120℃・2気圧、20分)した。次いで菌体を粉砕処理(直径2mmガラスビーズによる物理的破砕)した後、遠心分離し、上清を得た。得られた上清から、(株)キアゲン製のイオン交換樹脂タイプ DNA抽出精製キットGenomic−tipを用いてDNAの抽出、精製を行った。
【0324】
また、大腸菌については、大腸菌のDNA抽出方法の常法に従い、DNAを抽出、精製した。
【0325】
得られたマイコバクテリウム属菌それぞれの精製DNAを、最終1ng/μL(10mM Tris−HCl緩衝液、pH8.9)になるように調製し、DNA試料とした。
【0326】
得られた大腸菌の精製DNAを、最終1ng/μL(10mM Tris−HCl緩衝液、pH8.9)になるように調製し、DNA試料とした。
【0327】
(3)PCR
候補クローンの塩基配列(配列番号1)をもとに、上記(1)で設計、合成したプライマー02_Fw1及び02_Rv1を用い、下記の通りPCRを行った。尚、候補クローン1の塩基配列上の、各プライマー02_Fw1及びプライマー02_Rv1の持つ塩基配列の存在位置は図1に示した通りである。
【0328】
1)PCR用反応液の調製
上記(1)で得られたプライマー02_Fw1及びプライマー02_Rv1を各300nM、発色試薬としてSYBRTM Green I (Molecular Probe社商品名)を原液の30倍希釈、1.5mM MgCl2 、80mM KCl、500μg/mL BSA、0.1% コール酸ナトリウム、0.1% TritonX−100、dATP、dCTP、dGTP、dTTPを各0.2mM、及びTaq DNA ポリメラーゼ(ニッポンジーン製)40単位/mL を含有する10mM Tris−HCl(pH8.9)を調製し、PCR用反応液とした。
【0329】
2)リアルタイムPCR
PCRにおける増幅ターゲットとなる鋳型DNAとして、上記(2)で調製したマイコバクテリウム属細菌由来又は大腸菌由来のDNA試料を用い、以下の方法で、インターカレーション法での定量モニタリングによる検討評価を行った。
【0330】
まず、上記(3)1)で調製したPCR用反応液20μLに、前記(2)で調製したDNA試料1μL(1ng)を添加してPCR用試料とした。このPCR用試料を、96 穴反応プレート(マイクロアンプ・オプチカル・96ウェル・リアクション・プレート、アプライドバイオシステムズジャパン社製)のウェルに入れ、TaqManTM PCR 専用サーマルサイクラー・検出器(ABI 7500、アプライドバイオシステムズジャパン社製) を用いてリアルタイムPCRを行った。反応は、95℃ で10分間保温の後、95℃で15秒間、60℃ で1分間の反応を40サイクル繰り返し、増幅産物に対してインターカレーションするSYBRTM Green Iの蛍光量を測定した。
【0331】
(4)融解曲線解析
各DNA試料に対して各々増幅されてきた産物について、横軸をプライマー伸長産物(2本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光量の1次微分(変化量)をとり、融解曲線を作成し、ピークの検出を行った。
【0332】
(5)結果
各DNA試料について得られた融解曲線解析の結果を1つのグラフにまとめて、図9に示す。
【0333】
図9の結果から明らかな如く、本発明のプライマー02_Fw1、及びプライマー02_Rv1を用いて、SYBR Green I存在下で増幅された核酸の融解曲線解析を行った結果、M.イントラセルラーレ由来のDNA試料を鋳型として用いた場合のみに、核酸増幅の結果生じる蛍光シグナルが確認でき(図9:M.intraccellulare)、陽性と判定できた。
【0334】
これに対し、図9から明らかな如く、M.イントラセルラーレ以外のマイコバクテリウム属細菌や他の属の細菌である大腸菌由来のDNAを鋳型として用いて、同じプライマーの組合せを用いて同様にリアルタイムPCRを行った場合には、該当する蛍光シグナルが確認できず(図9:other species)、すべて陰性と判定できた。
【0335】
更に、図9から明らかな如く、M.イントラセルラーレ由来のDNA試料を鋳型として用いた場合の融解曲線解析の結果、単一の明瞭なピークが得られたことから、行った検出系は、M.イントラセルラーレに極めて特異性の高い、検出方法であることが分かる。
【0336】
以上のことから、本発明のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRに用いることにより、M.イントラセルラーレを特異的に検出することが出来ることが判る。また、PCRなどの核酸増幅による検出は高感度が期待できるため、細菌を単離する必要がなく、臨床材料をそのまま検出に用いることが可能であるため、従来の細菌を培養してから検出する方法では培養に数週間かかっていたM.イントラセルラーレの検出を、長くても1日以内に終わらせることができる。
【0337】
実施例2.候補クローンのM.イントラセルラーレの検出感度の検定
(1)M.イントラセルラーレ検出用PCRプライマーの合成
実施例1(1)と同じ機器を用い、同様の操作でプライマー02_Fw1、及びプライマー02_Rv1を合成した。
【0338】
(2)M.イントラセルラーレ検出用プローブの作製
02_Fw1及び02_Rv1をプライマーとして用いたPCRで増幅されると予測される配列番号139の塩基配列(155塩基)から、プローブとして利用するための配列「5’−ATACGTGCCCAGAAGCTCTACCGAGAT−3’」を設計し、この配列のオリゴヌクレオチドを合成した(配列番号204。この配列を持つオリゴヌクレオチドプローブを、以下、INT02_F1R1_FAMTAMと記載する。)。このオリゴヌクレオチドの5'末端にレポーター色素FAMを、3'末端にレポーター消光体のTAMRAを結合し、標識オリゴヌクレオチドプローブ(TaqManTMフルオレセント・プローブ、アプライドバイオシステムズジャパン社製)を得た。
【0339】
(3)PCR用DNA試料の調製
実験例1(1)で調製したM.イントラセルラーレから得られたM.イントラセルラーレ由来DNA試料について、吸光度を測定して試料中のDNA量を測定した。得られたDNA量を、既知のM.イントラセルラーレのゲノムDNA量と比較することにより、試料中のゲノムDNA量(ゲノムコピー数)を決定した。10コピー/μLのゲノムDNAが得られた。
【0340】
次いで10mM Tris−HCl緩衝液、pH8.9を用いてDNA試料を105, 104, 103, 102, 10, 5, 2コピー/μLの希釈系列に希釈したものを調製し、PCR用DNA試料とした。
【0341】
(4)リアルタイムPCR
上記(1)で調製した02_Fw1をフォワードプライマーとして、02_Rv1をリバースプライマーとして用い、下記の通りリアルタイムPCRを行った。
【0342】
即ち、各1μMのプライマー02_Fw1、及びプライマー02_Rv1、195nMの上記(2)で調製した蛍光標識プローブINT02_F1R1_FAMTAM、1.5mM MgCl2 、80mM KCl、500μg/mL BSA、0.1% コール酸ナトリウム、0.1%TritonX−100、夫々0.2mM のdATP、dCTP、dGTP、dTTP及びTaq DNA ポリメラーゼ((株)ニッポン・ジーン製)40単位/mL を含有する10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.9)を調製し、反応液とした。
【0343】
反応液20μLに各希釈系列のDNA試料1μL を加えたものをPCR用試料とし、これを96穴反応プレート( マイクロアンプ・オプチカル・96 ウェル・リアクション・プレート、アプライドバイオシステムズジャパン社製)のウェルに入れ、TaqManTM PCR 専用サーマルサイクラー・検出器(ABI7500、アプライドバイオシステムズジャパン社製)を用いてリアルタイムPCRを行った。反応は、95℃ で10分間保温の後、95℃で15秒間、60℃で1分間の反応を50サイクル繰り返し、1サイクル毎にレポーター色素の蛍光量を測定した。尚、蛍光量は、測定に用いたサーマルサイクラーの、測定に供した96穴反応プレート1プレート毎に相対的な蛍光強度比を数値化する機能を用いて求めた。
【0344】
(5)結果
得られた実験データから、リアルタイムPCR法において行われている常法に従って、検量線を作成した。
【0345】
即ち、各PCR用DNA試料毎に、PCRのサイクル数(x軸)に対するレポーター色素の蛍光量(Rn、y軸)をプロットした増幅曲線を作成した。次いで、蛍光量が指数関数的に増幅しているRn部を選択し、Threshold line(Th)を引いた。Thと各PCR用DNA試料の蛍光量が交差した点をThreshold cycle(Ct)値とした。次いで用いた各PCR用DNA試料のゲノムのコピー数(x軸、対数値)に対するCt値(y軸)をプロットし、各Ctに対して得られた近似曲線を検量線とした。得られた検量線を図10に示す。
【0346】
y=−3.825x+38.78
=0.996
以上のことより、リアルタイムPCRで発光が検出されたことから、本発明のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、その増幅領域となる配列から標識プローブを設計し、リアルタイムPCRを行う事でM.イントラセルラーレが検出できることが判った。
【0347】
また、検量線が作成できたことより、本発明のプライマー及びプローブを用いたリアルタイムPCR法によれば、M.イントラセルラーレの定量が可能であることが判った。更に、図10より、本発明のプライマー及びプローブを用いたリアルタイムPCR法では、M.イントラセルラーレのゲノムDNAが初期量として2コピー存在する条件でもM.イントラセルラーレの検出が可能である事がわかる。
【0348】
更に、リアルタイムPCR法を利用した場合では、この蛍光強度をリアルタイムでモニタリングするので、鋳型DNAの初期量を正確に定量することができ、M.イントラセルラーレの検出に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0349】
本発明のプライマー又は/及びプローブを用いたM.イントラセルラーレの検出方法によれば、従来の菌の培養検査等により菌種を同定する方法と比較して、はるかに迅速且つ高精度に、M.イントラセルラーレの検出を行うことができる。また、本発明の検出方法でM.イントラセルラーレの検出を行うことにより、従来のプライマー又は/及びプローブを用いたPCR法による診断方法に比較して、診断上の偽陽性が排除可能となり、より高精度にM.イントラセルラーレの検出及び診断を行うことができる。更に、本発明の検出方法を用いることにより、M.イントラセルラーレ菌体の定量も行うこともできるという効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号9で表される塩基配列からなるプライマーと配列番号10で表される塩基配列からなるプライマーとのプライマー対
【請求項2】
プライマーが標識物質で標識された、請求項1に記載のプライマー対。
【請求項3】
標識物質が放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光物質又はビオチンから選択されるものである、請求項2に記載のプライマー対。
【請求項4】
請求項1に記載のプライマー対を用い、試料中の核酸を鋳型として核酸増幅反応を行い、得られたプライマー伸長産物を検出することを特徴とする、マイコバクテリウム・イントラセルラーレの検出方法。
【請求項5】
更に、配列番号139で表される塩基配列又はその相補配列から設計された15〜40塩基からなるオリゴヌクレオチドを標識物質で標識した標識プローブを用いる、請求項4に記載の検出方法。
【請求項6】
プローブが、配列番号204で表される塩基配列又はその相補配列である、請求項5に記載の検出方法。
【請求項7】
下記工程を包含することを特徴とする、請求項4に記載の検出方法、
(1)請求項1に記載のプライマー対を用い、試料中の核酸を鋳型として核酸増幅反応を行う、
(2)(1)で得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、その結果に基づいてマイコバクテリウム・イントラセルラーレの有無を判定する。
【請求項8】
下記のいずれかの場合に、被検試料がマイコバクテリウム・イントラセルラーレ陽性であると判定する、請求項7に記載の検出方法、
(1)電気泳動を行った後、得られた電気泳動画分について、目的とする155塩基対のプライマー伸長産物の画分を確認し、目的とする155塩基対のプライマー伸長産物が確認された場合、
(2)電気泳動を行った後、得られた電気泳動画分について、配列番号139で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号139で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部からなるオリゴヌクレオチドを標識物質で標識した標識プローブに対するハイブリダイゼーションを行い、該標識プローブの標識を検出することによって該標識プローブとハイブリダイズした画分が確認された場合。
【請求項9】
プライマーが標識物質で標識されており、当該プライマー対を用いて試料中の核酸を鋳型としたポリメラーゼ連鎖反応を行い、得られたプライマー伸長産物の標識を測定する、請求項4に記載の検出方法。
【請求項10】
核酸増幅連鎖反応を行ったのち、遊離の標識プライマーを除き、プライマー伸長産物の標識を測定する、請求項9に記載の検出方法。
【請求項11】
請求項1に記載のプライマー対を含んでなる、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ検出用試薬キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−46617(P2013−46617A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−209102(P2012−209102)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2008−514461(P2008−514461)の分割
【原出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【Fターム(参考)】