説明

マイナアクチニド添加燃料燃焼原子力発電装置

【課題】MA添加燃料であっても安全性を損なうこと無く、原子力発電コストを低減したい。
【解決手段】原子炉冷却材を過熱蒸気にし、石英被覆管の耐熱燃料棒を装荷せる原子炉、ガスタービン、圧縮機、発電機を全て格納容器内に納める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料としてマイナアクチニドを含む原子力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は軽水炉による原子力発電のサイクル概観図である(非特許文献1)。燃料たるウラン(U)とかプルトニウム(Pu)といったアクチノイド(A)からなる燃料棒(6)と軽水からなる冷却材(7)と粉末炭化ホウ素からなる制御棒(8)により、制御された核分裂連鎖反応を持続することができるようにした原子炉(1)を熱源とし、液体の水が給水されるとその一部が高温飽和蒸気になり、タービン(2)に導かれ熱エネルギーを回転エネルギーに変換し、発電機(3)を回転させることにより電気を発生させる。仕事を終えて低温になった湿り蒸気は復水器(4)により液体の水に変換され、この水はポンプにより再び原子炉(1)に戻る。原子炉(1)は安全性を高めるために格納容器(5)内に納められている。図中矢印は冷却材の流れ方向を示す。
【非特許文献1】:コロナ社、昭和50年、都甲著「原子動力」。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、使用済み燃料の取り扱いが問題になっている。そのまま廃棄処分するには、処分場周辺住民の同意が得難い。更に、処分費用が高い。一方、使用済み燃料の中にはUやPuの他にネプツニウム(Np)やアメリシウム(Am)やキュリウム(Cm)といったマイナアクチニド(MA)が含まれている。殆どのMAは放射能が高い。単に処分するには放射能対策が必要であり費用が嵩む。
MAを軽水を冷却材(7)とする原子炉(1)で燃焼させることができれば、電力の発生と同時に消滅することができるため発電コストの低減になる。但し、MAはボイド反応度係数が正であるため、軽水を冷却材とする原子炉(1)では冷却材が大規模に漏洩するような事故が生じた場合、出力が過度に上昇する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
原子炉(1)の中の冷却材としての水は蒸気のみとする。
【発明の効果】
【0005】
原子炉(1)に気体としての過熱蒸気はあるが液体としての水がないため、冷却材(7)が漏洩してもボイドの急激な増加が無い。したがって、ボイド反応度係数が正であろうとも反応度の急激な上昇は生じないから、出力の急上昇もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
発電コストの安いMA燃焼原子力発電装置が提供できた。
【実施例1】
【0007】
図2は本発明の過熱蒸気原子炉発電装置の概観図である。過熱蒸気原子炉(11)で熱せられた過熱蒸気冷却材(17)は高温高圧過熱蒸気になり高温高圧過熱蒸気管(24)を通ってガスタービン(12)に導かれ熱エネルギーを回転エネルギーに変換し、発電機(3)を回転させることにより電気を発生させる。仕事を終えた低温低圧過熱蒸気は冷却空気管(50)により冷却ざれている低温低圧過熱蒸気管(21)を通って、ガスタービン(12)と同軸の圧縮機(14)により圧縮され低温高圧過熱蒸気になり低温高圧過熱蒸気管(22)を通って過熱蒸気原子炉(11)と外套(19)の間の低温高圧過熱蒸気通路(23)から過熱蒸気冷却材(17)となる。過熱蒸気原子炉(11)は耐熱燃料棒(33)群を稠密に配列したMAMOX稠密格子耐熱燃料集合体(16)と耐熱制御棒(18)と過熱蒸気冷却材(17)からなる。シュラウド(30)と原子炉容器壁(31)の間には低温高圧過熱蒸気のバイパス(32)があり原子炉容器壁(31)が高温になるのを緩和している。過熱蒸気原子炉(11)、ガスタービン(12)、発電機(3)、圧縮機(14)は格納容器(5)に納められている。図中の矢印は過熱蒸気の流れ方向を示す。
図3は耐熱燃料棒(33)の概観図である。石英ガラスまたは二酸化スズガラスといった赤外線に対して透明な石英被覆管(41)と、石英被覆管(41)の上下開口端を気密閉塞する上部端栓(42)及び下部端栓(43)と、スプリング(45)と、上部プレナム(48)とからなる構造材と、石英被覆管(41)内にUとPuの混合酸化物(MOX)にMAの酸化物を添加した燃料を円柱状に焼結してなる多数個のMAMOX燃料ペレット(44)から構成されている。
図4は耐熱燃料棒(33)を稠密に配列し耐熱合金製の耐熱チャンネルボックス(35)で束ねたMAMOX稠密格子耐熱燃料集合体(16)と耐熱制御棒(18)を配置せる炉心平面部分図である。過熱蒸気原子炉(11)では、MAMOX稠密格子耐熱燃料集合体(16)は耐熱制御棒(18)側のCR側漏洩蒸気通路(51)と耐熱制御棒(18)と反対側のNCR側漏洩蒸気通路(52)を挟んで格子状に配列されている。耐熱燃料棒(33)の間は過熱蒸気通路(49)となっている。耐熱制御棒(18)は中性子吸収材である炭化ホウ素(B4C)を焼結して板状にした焼結炭化ホウ素板(300)を炭化珪素(SiC) 被覆(310)で保護し、それを耐熱合金製またはSiC繊維強化炭素の支柱(320)で支えている。支柱(320)を上下させることにより原子炉の出力を制御する。
耐熱燃料棒(33)中のAやMAが核分裂して発生した高速中性子は、冷却材が過熱蒸気であるから液体の水に比べて水素の量が少ないため減速されにくい。したがって、冷却材流量減少等が生じても高速中性子割合の変化が小さいためボイド反応度係数が正であっても原子炉出力が急激に上昇することがなく安全性の問題が少ない。
液体の水が原子炉に入った場合には、核分裂で発生した高速中性子は減速され熱中性子になる割合が多くなるがMAの強い熱中性子吸収作用により原子炉出力は低下する。したがって、安全性の問題が少ない。
燃料交換等の定期点検では、過熱蒸気原子炉(11)を液体の水で充満させて燃料からの放射線を遮蔽する。
石英被覆管(41)はSiCやアルミナや耐熱合金からなる被覆管で代替することも考えられる。
過熱蒸気冷却材(17)はヘリウムで代替することも考えられる。
【実施例2】
【0008】
図5は本発明の格納容器放出型過熱蒸気原子炉発電装置の概観図である。図4の過熱蒸気原子炉発電装置では、ガスタービン(12)で仕事を終えた低温低圧過熱蒸気は低温低圧過熱蒸気管(21)を通って圧縮機(14)に導かれる。格納容器放出型過熱蒸気原子炉発電装置では、ガスタービン(12)で仕事を終えた低温低圧過熱蒸気を格納容器(5)内に放出する。格納容器(5)の内側に敷設した冷却空気管(50)で格納容器(5)内の雰囲気たる低温低圧過熱蒸気を更に冷却する。格納容器(5)壁も低温低圧過熱蒸気を冷却する。格納容器(5)内の低温低圧過熱蒸気は圧縮機(14)に吸引され低温高圧過熱蒸気になり低温高圧過熱蒸気管(22)を通って過熱蒸気原子炉(11)に導かれる。図中の矢印は過熱蒸気の流れ方向を示す。
ガスタービン(12)から放出された低温低圧過熱蒸気中の液体や固体不純物は、イオン交換樹脂等格納容器内フィルター(62)で除去する。不純物気体はチャコールフィルターと銀箔フィルターからなる不純物気体フィルター(61)を介して外気に放出する。低温低圧過熱蒸気管(21)が不要になり発電コストが低減される。
CANDU炉のような圧力管型原子炉であれば燃料棒に漏洩が生じても当該燃料集合体を装荷せる圧力管に施栓すれば格納容器内を汚染することが少ない。
【産業上の利用可能性】
【0009】
大気圏内であれば、電動プロペラ推進機能のある空中給油タンカー・貯蔵庫の電気動力源として使える。発電機の代わりにプロペラをガスタービンに直結すれば効率が上がる。熱電半導体を使えばガスタービンや圧縮機や発電機が不要となる。
大気圏外近傍や成層圏であれば、希薄ではあるが空中の水分から水素燃料を作ったり、空中の水素ガスを収集し燃料貯蔵庫に蓄積することもできる。空気を冷却材の他に推進剤とし、圧縮機で希薄空気を収集し圧縮ポンプで高圧空気を炉に送り高温にして下方にノズルから噴出させれば、速度は遅くとも高度は長期間維持できる。貨物グライダー群で貯蔵庫を構成し緊急時に原子炉装置、各貨物ごとに単独で地上に脱出できることもできる。
砂漠地帯で事故が生じたとしても、砂漠での核実験による汚染よりもはるかに被害が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は軽水炉による原子力発電のサイクル概観図。
【図2】本発明の過熱蒸気原子炉発電装置の概観図。
【図3】耐熱燃料棒(33)の概観図。
【図4】MAMOX稠密格子耐熱燃料集合体(16)と耐熱制御棒(18)を配置せる炉心平面部分図。
【図5】本発明の格納容器放出型過熱蒸気原子炉発電装置の概観図。
【符号の説明】
【0011】
1は原子炉。
2はタービン。
3は発電機。
4は復水器。
5は格納容器。
6は燃料棒。
7は冷却材。
8は制御棒。
11は過熱蒸気原子炉。
12はガスタービン。
14は圧縮機。
16はMAMOX稠密格子耐熱燃料集合体。
17は過熱蒸気冷却材。
18は耐熱制御棒。
19は外套。
21は低温低圧過熱蒸気管。
22は低温高圧過熱蒸気管。
23は低温高圧過熱蒸気通路。
24は高温高圧過熱蒸気管。
30はシュラウド。
31は原子炉容器壁。
32はバイパス。
33は耐熱燃料棒。
35は耐熱チャンネルボックス。
41は石英被覆管。
42は上部端栓。
43は下部端栓。
44はMAMOX燃料ペレット。
45はスプリング。
49は過熱蒸気通路。
50は冷却空気管。
51はCR棒側漏洩蒸気通路。
52はNCR棒側漏洩蒸気通路。
61は不純物気体フィルター。
62は格納容器内フィルター。
300は焼結炭化ホウ素板。
310は炭化珪素被覆。
320は支柱。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線に対して透明な石英被覆管(41)の内にUとPuの混合酸化物(MOX)にMAの酸化物を添加した燃料を円柱状に焼結してなる多数個のMAMOX燃料ペレット(44)を封入してなる耐熱燃料棒(33)を稠密に配列し耐熱チャンネルボックス(35)で束ねたMAMOX稠密格子耐熱燃料集合体(16)を熱源とし過熱蒸気冷却材(17)で冷却し耐熱制御棒(18)で制御する過熱蒸気原子炉(11)、ガスタービン(12)、ガスタービン(12)と同軸の圧縮機(14)並びに発電機(3)を全て格納容器(5)内に納め、ガスタービン(12)で仕事を終えた低温低圧過熱蒸気を格納容器(5)内に放出することを特徴とする格納容器放出型過熱蒸気原子炉発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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