説明

マイナスイオン供給装置およびマイナスイオン供給方法

【課題】大空間の空気の処理に適用し得る、簡単で効率的なマイナスイオン供給装置およびマイナスイオン供給方法を提供することである。
【解決手段】送風機11と塔12の送入口12aとを送風管15によって接続し、塔12の送出口12bと被処理空間23とをダクト24によって接続する。それぞれラシヒリングが充填される上部充填部16と下部充填部17とを塔12の内部に設け、上部充填部16と下部充填部17の中間の中空部18に送水管14を装着する。送水管14を貯水槽13の中にあるポンプ21に接続し、送水管14の先端に装着されたノズル19から水を噴霧させる。また、送水管14の管路の一部に、アルミニウム管と炭素棒とが対向して成る電場印加手段22を設け、ノズル19により霧化される水に予め電場を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理空間にマイナスイオンを供給するマイナスイオン供給装置およびマイナスイオン供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中に浮遊する負電荷に帯電した10ないし100個程度の分子からな成る微粒子が人間の自律神経を安定させ、呼吸器等の機能を向上させる等、人体に好ましい影響を与えることは広く知られている。このような微粒子は通常マイナスイオン(負の空気イオン、陰イオン)と呼ばれており、自然界では、滝など水が微細に分裂するときに、レナード効果により空気中に発生する。
【0003】
このマイナスイオンの健康効果に着目し、これを人工的に発生させることが望まれ、近年、その方法が数多く提案されている。これらのマイナスイオン発生装置としては、滝を模して水を微細に分裂させるもの、電気的にイオンを作り出すもの、セラミックなどの摩擦を利用するものなどが挙げられるが、簡単、安全、確実に大量のマイナスイオンを発生させるには、水の分裂方式が適している。
【0004】
このようなマイナスイオン発生装置は、例えば特許文献1に見られるように、水を微細な水滴に分裂させるための水の霧化手段、霧化した水滴とマイナスイオンとを含む空気を被処理空間に向けて搬送する送風手段および空気と水とを分離する気液分離手段とから構成されている。この水滴分裂型の装置については従来から数多くの提案がなされているが、これらは上記各構成要素についての方式の差異や改良に関するものであって、基本的な構成は同一といってよい。これらの改良としては、特に霧化手段についてのものが多く、例えば特許文献2には対向したノズルから噴射される微細水滴同士を衝突させて水を霧化させる方法が記載され、特許文献3には羽根車に水を供給し、この羽根車により叩いて水を微細水滴とする方法が記載されている。
【特許文献1】特公平5−58755号公報
【特許文献2】特許第3047230号公報
【特許文献3】特許第2926314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来知られている水滴分裂型の装置は、水を微細水滴に分裂させて霧化し、その際発生するマイナスイオンを利用するものであるが、このような機械的方法のみでは、マイナスイオンの発生量に限界がある。そのため、家庭等の狭い空間の空気をマイナスイオン化して清浄化するのには適用し得るが、事務所、工場、体育館などの大空間の空気を処理するには能力的に不十分であった。
【0006】
本発明はこの欠点を解決し、大空間の空気の処理に適用し得る、簡単で効率的なマイナスイオン供給装置およびマイナスイオン供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のマイナスイオン供給装置は、被処理空間にマイナスイオンを供給するマイナスイオン供給装置であって、水に電場を印加する電場印加手段と、前記電場印加手段により電場が印加された水を霧化する霧化手段と、前記霧化手段により霧化された水に向けて空気を送る送風手段と、前記霧化された水を含む空気を水と空気とに分離する気液分離手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明のマイナスイオン供給装置は、前記電場印加手段は対向する異種の金属または炭素から成ることを特徴とする。
【0009】
本発明のマイナスイオン供給装置は、前記霧化手段は噴霧およびスクラバー型気液接触装置を併用したものであることを特徴とする。
【0010】
本発明のマイナスイオン供給方法は、被処理空間へのマイナスイオン供給方法であって、電場印加手段により水に電場を印加し、前記電場印加手段により電場が印加された水を霧化手段により霧化し、該霧化した水を送風手段によって送入された空気と接触させ、次いで該霧化した水を含む空気を気液分離手段によって水と空気に分離し、該分離した空気を前記被処理空間に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、霧化する水に予め電場を印加するようにしたので、水を霧化することによるマイナスイオン発生能力を大幅に向上させることができる。これにより、簡単で効率的な構造のマイナスイオン発生装置で、事務所、工場、体育館などの大空間の空気を処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施の形態であるマイナスイオン発生装置を示す説明図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に示すマイナスイオン発生装置は、送風機11、塔12、貯水槽13、および送水管14を主要な構成要素としている。
【0015】
スクラバー型気液接触装置である塔(装置本体)12は送入口12aと送出口12bとを備えた円筒状に形成され、送風手段である送風機11は塔12の下端側にある送入口12aに送風管15によって接続されている。塔12の内部には上部充填部16と下部充填部17が設けられており、これらの充填部16,17にはそれぞれラシヒリング(不図示)が充填されている。上部充填部16と下部充填部17の中間は中空部18となっており、ここに送水管14が装着され、送水管14の先端には霧化手段であるノズル19が装着されている。送水管14は塔12の下端に連通する貯水槽13まで延び、貯水槽13の中にあるポンプ21に接続されており、その管路の一部には電場印加手段22(便宜上、ハッチングを付して示す。)が設置されている。貯水槽13には水が収容されており、ポンプ21が作動すると、送水管14を介してノズル19に水が供給されるようになっている。塔12の上部にある送出口12bはダクト24によって被処理空間23に接続されている。貯水槽13には給水管25と排水管26とが接続されており、また、貯水槽13は電路27により接地されている。
【0016】
図2は電場印加手段を示す図、図3は図2におけるA−A線に沿う断面図である。
【0017】
図2、図3に示すように、電場印加手段22は、送水管14の内側に装着されるアルミニウム管28と、アルミニウム管28の中心軸上に絶縁部材29によりアルミニウム管28とは電気的に絶縁された状態で固定される炭素棒31から成っている。電場印加手段22が設けられた部分においては、水は互いに対向するアルミニウム管28と炭素棒31との間を流れ、これによりアルミニウム管28と炭素棒31との間には電位傾斜により電場が発生し、この電場が送水管14を流れる水に印加されるようになっている。
【0018】
次に、本マイナスイオン発生装置によってマイナスイオンを被処理空間23に供給する方法について述べる。
【0019】
まず、送風機11を動かして図には示さない空気濾過器を経て取り込んだ外気を送風管15を通じて送入口12aから塔12の下部に送入する。ポンプ21を動かして貯水槽13に収容された水を送水管14を通じてノズル19に送入する。このとき、ノズル19に送入される水は電場印加手段22を通過することにより予め電場が印加される。ノズル19に送入された水はノズル19から微細な水滴として下向きに噴霧され、この水滴は下部充填部17のラシヒリングによって分散流下して貯水槽13に流入する。この際、水滴は送風機11により送入口12aから送入される空気と接触する。つまり、この実施の形態においては、霧化手段はノズル19による噴霧とスクラバー型気液接触装置である塔12とを併用したものとなっている。ノズル19およびラシヒリング通過の際に、ノズル19から噴霧されることにより霧化した水滴の一部は送入された空気に同伴して上昇し、気液分離手段である上部充填部16のラシヒリングによって空気と分離される。
【0020】
電場印加手段22によって電場を印加された水は上記霧化の際にプラスに帯電し、それと同量のマイナスイオンが空気中に発生し、マイナスイオンを含む空気は送風機11により送出口12bからダクト24を通じて被処理空間23に送られる。プラスに帯電した水は貯水槽13に落下し、これに帯電していたプラス電荷は電路27を通じて接地される。貯水槽13には給水管25によって少量ずつ水道水が供給され、オーバーフローした水は排水管26によって外部に排出される。
【0021】
(実施例)
塔12はFRP(繊維強化プラスチック)製、φ1000×1800Hの円筒状とし、上部充填部16は220Hで充填したラシヒリングはPP(ポリプロピレン)製、30×φ30、下部充填部17は1000Hで充填したラシヒリングはPP(ポリプロピレン)製、30×φ30とした。送風機11は100m/分の空気を塔12に送り、ポンプ21は250リットル/分の水をノズル19に送り、このときノズル19に掛かる水圧を1.5kg/cmとした。送水管14はPVC(ポリ塩化ビニル)製、内径φ25であり、電場印加手段22のアルミニウム管28も同径で長さ30cmとし、炭素棒31は太さ10mm、長さはアルミニウム管28と等しい30cmとした。この構成でアルミニウム管28と炭素棒31との2極間に0.7Vの電位差が発生した。
【0022】
上記条件で、被処理空間23を2000mの容積の工場として運転したとき、ダクト24の内部のマイナスイオンは206200個/cmであり、工場内には15400個/cmのマイナスイオンが充満した。工場内の空気は爽快で湿度75RHであるにも拘わらず、湿気を感じさせなかった。また、従業員の呼吸器疾患にも改善が見られた。
【0023】
このように、このマイナスイオン発生装置および発生方法では、霧化手段により霧化される水に予め電場印加手段22により電場を印加するようにしたので、水を霧化するときのマイナスイオン発生能力を大幅に向上させ、簡単で効率的な構造で、工場等の大空間である被処理空間23の空気を処理することができる。また、マイナスイオンの発生能力が大幅に向上するので、被処理空間23が大空間であっても空気を浄化して快適性の向上、健康の増進に寄与することができる。また、防爆工事が不要であるため、配線等を防爆仕様にする必要がない。
【0024】
他方、電場印加手段22を用いなかった他、同様の条件で運転したところ、工場内のマイナスイオンは610個/cmであり、爽快感は著しく低く、湿度が体感された。なお、例えば従来の特許第3047230号では651900個/cmのマイナスイオンが発生したとされるが、送風量は1.07m/分であり、本発明の方法に比べて総マイナスイオン個数では30分の1程度であって、大空間の処理には適していないことが解る。
【0025】
図4(a)〜(d)はそれぞれ図3に示す電場印加手段の変形例を示す断面図、図5(a)、(b)はそれぞれ図1に示すノズルの変形例を示す断面図、図6(a)、(b)はそれぞれ霧化手段の変形例を示す断面図、図7は気液分離手段の変形例を示す説明図である。なお、図4〜図7においては、前述した部材に対応する部材には同一の符号が付されている。
【0026】
図3に示す電場印加手段22では、送水管14とアルミニウム管28、炭素棒31は、共に断面が円形に形成されているが、これに限らず、例えば図4(a)、(b)に示すように、これらの断面を四角形や楕円形など、他の形状に形成するようにしてもよい。
【0027】
また、図3に示す場合では、電場印加手段22はアルミニウム管28の内部に炭素棒31を配置して構成されているが、これに限らず、例えば、図4(c)に示すように、それぞれ断面円弧状に形成されたアルミニウム製の半管32と銅製の半管33とを絶縁部材29を挟んで組み合せて管状に形成し、これの内部に水を流すようにしてもよく、あるいは図4(d)に示すように、送水管14の内部に互いに対向する亜鉛製の電極34と銅製の電極35とをそれぞれ絶縁部材29により支持した状態で設けるなど、水に電場を印加できる構造であれば他の構造であってもよい。
【0028】
さらに、図1に示す場合では、水の霧化手段であるノズル19は下向きに水を噴射するようになっているが、これに限らず、例えば図5(a)に示すように一対のノズル19を互いに対向させて設け、これらのノズル19から噴射される水滴同士を互いに衝突させるようにしてもよい。また、図5(b)に示すように、ノズル19から噴射される水を、例えば塔12の内面や羽根車(不図示)等に衝突させるようにしてもよい。
【0029】
さらに、図1に示す場合では、霧化手段はノズル19から水を噴射させる構造となっているが、これに限らず、例えば図6(a)に示すように、駆動源により回転駆動される羽根車等の回転体36に水を供給して遠心力により水を霧化させるようにしたり、図6(b)に示すように、発振器37が発生する超音波等の振動を利用して水を霧化させるようにしたりするなど、他の方法により水を霧化するようにしてもよい。
【0030】
さらに、図1に示す場合では、霧化した水滴を含む空気を空気と水滴とに分離する気液分離手段はラシヒリング(不図示)が充填された上部充填部16とされているが、これに限らず、例えば図7に示すサイクロン式の分離装置38や、フィルター等を用いるなど、他の構造としてもよい。また、送風機11による風速が小さい場合は、単に塔12の内部を上昇させて自然に気液を分離させ塔12の上部から空気を取り出すだけの構造としてもよい。さらに、これらの気液分離手段は空気から霧状の水滴を完全に除去する必要はなく、比較的大きな水滴を除去するだけでもよい。超微細水滴はマイナスイオンとなっているものがあるからである。
【0031】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、電場印加手段22は、霧化に供する水に予め電場を印加する処理を行うための手段であれば、送水管14または貯水槽13に電極を設けて静電圧または交流電圧を供給する構造としてもよく、さらに簡単には、本実施の形態のように、イオン化傾向の異なる2種または3種の以上の金属または炭素を供給水中で対向させて電位傾斜を形成させてもよい。この場合、イオン化傾向の大きな極としてはアルミニウムに限らず、例えば鉄、亜鉛等を用いるようにしてもよく、イオン化傾向が小さな極としては炭素に限らず、例えば銅、銀、金、白金等を用いるようにしてもよい。
【0032】
また、本実施の形態においては、分離した水を貯水槽13に戻して再利用するように構成しているが、これに限らず、例えば分離した水を外部に排出するようにしてもよい。
【0033】
さらに、本発明に用いられる水は、水道水、工業用水、地下水、河川湖沼等、通常入手し得る水でよく、場合によっては浄化したものでもよい。また、海水等の溶液でも差し支えない。
【0034】
さらに、本発明のマイナスイオン発生装置に、空気の加温、冷却、除湿、濾過、脱臭等のための装置を付加得することは任意である。
【0035】
さらに、塔12内への空気の供給は送風機11を利用してダクト24を通じて行うのがよいが、この場合、ダクト24の中間に空気の加温、冷却、除湿、脱臭等のための手段を付設して空気を処理してもよい。ダクト24は1本に限定されず、分岐して複数箇所から被処理空間に提供してもよい。
【0036】
さらに、本発明のマイナスイオン供給装置によって供給されるマイナスイオン含有空気は家庭のみならず、事務所、店舗、工場、学校、病院、劇場、美術館、体育館、展示場、鶏舎、畜舎、ハウス栽培舎等の大空間の空気を浄化して快適性の向上、健康の増進に寄与することができる。また、このマイナスイオン発生装置を鶏舎や畜舎に設置してマイナスイオンを供給することにより、これら鶏舎等の衛生環境を向上させることができる。
【0037】
さらに、送風手段としては送風機11が利用されるが、大空間の空気処理のためには送風量が大きなものが適している。
【0038】
さらに、塔12はスクラバー型の充填塔となっているが、例えば棚段塔など、他の形態であってもよい。また、塔12に限らず、空気の送入口と送出口とを備えた容器状の装置本体の内部で水を霧化させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態であるマイナスイオン発生装置を示す説明図である。
【図2】電場印加手段を示す図である。
【図3】図2におけるA−A線に沿う断面図である。
【図4】(a)〜(d)はそれぞれ図3に示す電場印加手段の変形例を示す断面図である。
【図5】(a)、(b)はそれぞれ図1に示すノズルの変形例を示す断面図である。
【図6】(a)、(b)はそれぞれ霧化手段の変形例を示す断面図である。
【図7】気液分離手段の変形例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
11 送風機
12 塔
12a 送入口
12b 送出口
13 貯水槽
14 送水管
15 送風管
16 上部充填部
17 下部充填部
18 中空部
19 ノズル
21 ポンプ
22 電場印加手段
23 被処理空間
24 ダクト
25 給水管
26 排水管
27 電路
28 アルミニウム管
29 絶縁部材
31 炭素棒
32 アルミニウム製の半管
33 銅製の半管
34 亜鉛製の電極
35 銅製の電極
36 回転体
37 発振器
38 分離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理空間にマイナスイオンを供給するマイナスイオン供給装置であって、
水に電場を印加する電場印加手段と、
前記電場印加手段により電場が印加された水を霧化する霧化手段と、
前記霧化手段により霧化された水に向けて空気を送る送風手段と、
前記霧化された水を含む空気を水と空気とに分離する気液分離手段とを有することを特徴とするマイナスイオン供給装置。
【請求項2】
請求項1記載のマイナスイオン供給装置において、前記電場印加手段は対向する異種の金属または炭素から成ることを特徴とするマイナスイオン供給装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のマイナスイオン供給装置において、前記霧化手段は噴霧およびスクラバー型気液接触装置を併用したものであることを特徴とするマイナスイオン供給装置。
【請求項4】
被処理空間へのマイナスイオン供給方法であって、
電場印加手段により水に電場を印加し、前記電場印加手段により電場が印加された水を霧化手段により霧化し、該霧化した水を送風手段によって送入された空気と接触させ、次いで該霧化した水を含む空気を気液分離手段によって水と空気に分離し、該分離した空気を前記被処理空間に供給することを特徴とするマイナスイオン供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−143678(P2007−143678A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339663(P2005−339663)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(505436863)有限会社アイミー (2)
【出願人】(592123565)
【出願人】(505436874)