説明

マウスおよびマウスのバッテリー充電方法

【課題】マウス操作のむらによる影響を少なくし、発電効率を向上させる。
【解決手段】マウス操作に伴う物理移動を回転運動へと変換する回転式揺動子と、回転式揺動子による回転運動を回転エネルギーとして蓄える回転エネルギー蓄積部と、回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電部とを備える。回転エネルギー蓄積部としてはゼンマイバネ装置を用いることができる。発電部、及び回転式揺動子と回転エネルギー蓄積部は複数設けることができる。さらに、ゼンマイバネ装置に回転エネルギーを与える巻上ダイヤルを設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウスおよびマウスのバッテリー充電方法に係わり、特にバッテリーに充電された電気エネルギーで動作するマウスおよびマウスのバッテリー充電方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
従来の無線式マウスでは、内蔵されたバッテリーが消耗すると電波や赤外線を飛ばせなくなるため、マウスの操作情報をコンピュータに伝送できない状態となっていた。
バッテリー消耗を抑える技術としてマウスのトラックボールを動力源とする発電機構を搭載する技術が存在する。またトラックボールから得た動力をゼンマイバネに蓄え動力源とする発電機構を搭載する技術が存在する。
例えば、特許文献1には、ボールの動きをローラーに伝え、ローラーの回転をシャフトを通して発電装置に連結したマウスの記載があり、また静止時にはボタンを押してクリックボタンを押すことで電力を発生することの記載がある。
また特許文献2には、ボールの回転をローラーに伝え、ローラーを回転可能に軸支するローラー軸の回転をぜんまい装置に機械的エネルギーとして蓄積し、その機械的エネルギーを発電機に伝えることの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−118480号公報(段落0050)
【特許文献2】特開2003−233459号公報(段落0015−0018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、机上でのマウスの移動速度に応じて画面上のマウスカーソルの移動速度を高める加速度機能を保有するマウス機能により、マウスの絶対的な物理移動量そのものが減少している。そのためトラックボールの回転を動力とする発電機構では、トラックボールの回転量が減少し、マウスの操作情報をコンピュータに伝送する電波や赤外線を飛ばすために十分な発電量を得られにくくなっている。
また、トラックボールの磨耗や塵によって回転が妨げられ効率的に発電できないケースや、発電機構とトラックボールが接していることから生じる回転抵抗がマウスの操作性を低下させてしまう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るマウスは、マウス操作に伴う物理移動を回転運動へと変換する回転式揺動子と、前記回転式揺動子による回転運動を回転エネルギーとして蓄える回転エネルギー蓄積部と、蓄えられた回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電部とを備えたことを特徴とする。
本発明に係るマウスのバッテリー充電方法は、回転式揺動子によりマウス操作に伴う物理移動を回転運動へと変換し、
前記回転式揺動子による回転運動を回転エネルギーとして蓄え、
蓄えられた回転エネルギーを電気エネルギーに変換し、バッテリー部に蓄積することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、トラックボールの回転を動力とせず、マウス操作のむらによる影響が少なくなり、発電効率も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るマウスの第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明に係るマウスの第1の実施形態の電気回路を示すブロック図である。
【図3】本発明に係るマウスの第2の実施形態を示す構成図である。
【図4】本発明に係るマウスの第2の実施形態の電気回路を示すブロック図である。
【図5】本発明に係るマウスの第3の実施形態を示す構成図である。
【図6】本発明に係るマウスの第4の実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るマウスの典型的な一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本実施形態のマウスは、マウスの外殻であるマウスケース101、回転式揺動子付自動巻上ゼンマイバネ装置102、発電部103を備えている。また、本実施形態のマウスは、図2に示すように、発電部103と接続される、バッテリー部201、バッテリー部201から電力を供給するマウス機能部202とを備えている。発電部103、バッテリー部201、マウス機能部202は電気回路200を構成する。
【0010】
回転式揺動子付自動巻上ゼンマイバネ装置102は、回転式揺動子111と自動巻上ゼンマイバネ装置112で構成される。
【0011】
次に、図1および図2を参照して本実施形態の動作について説明する。
【0012】
マウスケース101には、回転式揺動子付自動巻上ゼンマイバネ装置102、電気回路200を内蔵する。
【0013】
マウス操作に伴う物理移動は、回転式揺動子111(回転錐、ローターとも呼ばれる)により回転運動へと変換され、その回転運動エネルギーは自動巻上ゼンマイバネ装置112へ蓄えられる。この機構は自動巻式腕時計で利用されているので、その詳細な構成は説明を省略する。回転式揺動子付自動巻上ゼンマイバネ装置102で蓄えられた回転運動エネルギーの出力による回転運動を、発電部103に伝達することで発電する。回転エネルギーを電気エネルギーに変換する機構は、自動巻き発電時計で用いられているように電磁誘導の原理を用いる。具体的には、自動巻上ゼンマイバネ装置112に接続されたローターを回転させ、その回転によりコイルブロックに電圧が誘導され、電流が流れ、その電流をバッテリー部201に充電する。なお、自動巻き発電時計ではローターの回転を電気エネルギーに変換しているが、本実施形態では自動巻上ゼンマイバネ装置112に回転エネルギーを蓄えることで、バッテリー部201に安定した電力を供給できるようにしている。自動巻き発電時計の詳細な構成については、特開2008−76301号公報、特開平8−75873号公報等に記載されている。また、ゼンマイ装置に蓄えられた機械的エネルギーを発電機で電気エネルギーに変換することについては特許文献2に記載されている。
【0014】
図2における電気回路では、マウス機能部202にてマウス操作に伴う物理移動やボタン操作を検出した情報を電波または赤外線でコンピュータに伝送する。
【0015】
マウス機能部202で必要な電力はバッテリー部201から供給する。発電部103で発電した電力を、バッテリー部201へ充電することでバッテリー消耗の低減を図る。
【0016】
(第2の実施形態)
本発明に係るマウスの第2の実施形態として、複数個の発電部を設ける例を図3および図4を参照して説明する。図1及び図2に示した構成部材と同一構成部材については同一符号を付して説明を省略する。図3では、発電部301と発電部302の、2つの発電部を設ける。図4に示す電気回路400では、発電部301と発電部302で発電した電力を同じバッテリー部201へ充電している。かかる構成により、回転式揺動子付自動巻上ゼンマイバネ装置102により二つの発電部を発電できるので、バッテリー部201に充電する電気エネルギーを増やすことができる。発電部の数は2個に限定されず3個以上あってもよい。
【0017】
(第3の実施形態)
本発明に係るマウスの第3の実施形態として、複数個の回転式揺動子付自動巻上ゼンマイバネ装置を設ける例を、図5を参照して説明する。図1に示した構成部材と同一構成部材については同一符号を付して説明を省略する。図5では、第1の回転式揺動子付自動巻上ゼンマイバネ装置501と、第2の回転式揺動子付自動巻上ゼンマイバネ装置502を設け、同じ発電部103を動作させている。回転式揺動子付自動巻上ゼンマイバネ装置501および502はそれぞれ、回転式揺動子511と自動巻上ゼンマイバネ装置512で構成される。回転式揺動子511と自動巻上ゼンマイバネ装置512は、回転式揺動子111と自動巻上ゼンマイバネ装置112と同じ構成である。回転式揺動子付自動巻上ゼンマイバネ装置の数は2個に限定されず3個以上あってもよい。
【0018】
(第4の実施形態)
本発明に係るマウスの第4の実施形態として、自動巻上ゼンマイバネ装置に手動巻上装置を付加する例を、図6を参照して説明する。図1に示した構成部材と同一構成部材については同一符号を付して説明を省略する。図6では自動巻上ゼンマイバネ装置102に接する巻上ダイヤル601を、わずかにマウスケース101の外側に出るように設ける。指での操作で巻上ダイヤル601を回転させ、その回転運動エネルギーを自動巻上ゼンマイバネ装置112へ蓄える。
【0019】
本実施形態のマウスは、LED等の発光素子を発光させるためにバッテリーのエネルギー消費が大きい光学式マウスに好適に用いることができる。しかし、トラックボール式マウスにも適用可能である。
【0020】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下の構成には限られない。
【0021】
(付記1)
マウス操作に伴う物理移動を回転運動へと変換する回転式揺動子と、前記回転式揺動子による回転運動を回転エネルギーとして蓄える回転エネルギー蓄積部と、蓄えられた回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電部とを備えたマウス。
【0022】
(付記2)
前記回転エネルギー蓄積部はゼンマイバネ装置であることを特徴とする付記1に記載のマウス。
【0023】
(付記3)
前記発電部は複数設けられていることを特徴とする付記1又は2に記載のマウス。
【0024】
(付記4)
前記回転式揺動子と前記回転エネルギー蓄積部とは複数設けられていることを特徴とする付記1又は2に記載のマウス。
【0025】
(付記5)
前記ゼンマイバネ装置に回転エネルギーを与える巻上ダイヤルを備えた付記2に記載のマウス。
【0026】
(付記6)
回転式揺動子によりマウス操作に伴う物理移動を回転運動へと変換し、
前記回転式揺動子による回転運動を回転エネルギーとして蓄え、
蓄えられた回転エネルギーを電気エネルギーに変換し、バッテリー部に蓄積することを特徴とするマウスのバッテリー充電方法。
【0027】
(付記7)
前記回転エネルギーはゼンマイバネ装置により蓄えられることを特徴とする付記6に記載のバッテリー充電方法。
【0028】
(付記8)
前記回転エネルギーの電気エネルギーへの変換は発電部により行われ、該発電部は複数設けられていることを特徴とする付記6又は7に記載のバッテリー充電方法。
【0029】
(付記9)
前記回転式揺動子は複数設けられていることを特徴とする付記6又は7に記載のバッテリー充電方法。
【0030】
(付記10)
前記ゼンマイバネ装置に回転エネルギーを与える巻上ダイヤルを備えた付記7に記載のバッテリー充電方法。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によりマウス自体で電力を発生させることでバッテリーを長寿命化させ、バッテリー交換や充電の手間を減らせるため、一般個人向けのマウス、多くのコンピュータ台数を保有する教育・研究機関等でのマウスに利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
101 マウスケース
102,511,512 回転式揺動子付自動巻上ゼンマイバネ装置
103,301,302 発電部
111 回転式揺動子
112 自動巻上ゼンマイバネ装置
200,400 電気回路
201 バッテリー部
202 マウス機能部
601 巻上ダイヤル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウス操作に伴う物理移動を回転運動へと変換する回転式揺動子と、前記回転式揺動子による回転運動を回転エネルギーとして蓄える回転エネルギー蓄積部と、蓄えられた回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電部とを備えたマウス。
【請求項2】
前記回転エネルギー蓄積部はゼンマイバネ装置であることを特徴とする請求項1に記載のマウス。
【請求項3】
前記発電部は複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマウス。
【請求項4】
前記回転式揺動子と前記回転エネルギー蓄積部とは複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマウス。
【請求項5】
前記ゼンマイバネ装置に回転エネルギーを与える巻上ダイヤルを備えた請求項2に記載のマウス。
【請求項6】
回転式揺動子によりマウス操作に伴う物理移動を回転運動へと変換し、
前記回転式揺動子による回転運動を回転エネルギーとして蓄え、
蓄えられた回転エネルギーを電気エネルギーに変換し、バッテリー部に蓄積することを特徴とするマウスのバッテリー充電方法。
【請求項7】
前記回転エネルギーはゼンマイバネ装置により蓄えられることを特徴とする請求項6に記載のバッテリー充電方法。
【請求項8】
前記回転エネルギーの電気エネルギーへの変換は発電部により行われ、該発電部は複数設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載のバッテリー充電方法。
【請求項9】
前記回転式揺動子は複数設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載のバッテリー充電方法。
【請求項10】
前記ゼンマイバネ装置に回転エネルギーを与える巻上ダイヤルを備えた請求項7に記載のバッテリー充電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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