説明

マウスガードの製造方法

【課題】スポーツ時の顎組織への負担や外傷を予防するために使用するマウスガードの製造方法に関し、専用の装置を必要とせず、簡便な方法で、最適な咬合を与えられ、装着感の良いマウスガードを提供する。
【解決手段】歯列模型1にマウスガード形状のワックスアップを行い、常温重合レジンなどの型枠用の材料で型枠4を作製し、型枠に注入孔6と排出孔7の2つの孔を設け、それを歯列模型1に被せ、常温付加重合型シリコーンなどの弾性材料を注入し、マウスガード製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ時の顎組織への負担や外傷を予防するために使用するマウスガードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツ時の顎組織の外傷を防止し、歯や顎の骨を保護するためのスポーツ保護用具あるいは口腔内保護装置として、ボクシング等のコンタクトスポーツで使用されるマウスガード(マウスピースまたはマウスプロテクターとも呼ばれる)が知られている。
一般的に、スポーツ用のマウスガードの装着目的は、顔面に前方及び側方から直接受ける外力から歯、歯周組織(特に上顎前歯)を保護したり、外力による口唇、舌、頬に対する歯による損傷を防止したり、下顎に外力が加わったときに上顎との接触による衝撃等から歯、歯周組織、補綴物等を保護したり、外力から顎関節(関節腔、関節円板等)を保護したり、顎関節及び歯列を介して受ける脳への衝撃による脳震盪等の脳へのダメージを防いだりすることにある。
【0003】
マウスガードは、材料として柔軟性に優れた弾性材料を用いることで、上記のように、顎、口腔内の外傷防止及び脳への衝撃吸収・緩和等の効果を発揮することが可能になる。即ち、マウスガードの装着により、外力は、マウスガード全体に拡散し、衝撃の集中を抑制することができる。
マウスガードについて、例えば、特許文献1では、複数のサイズが用意された既製のシリコーンの枠体の中から使用者の歯列の大きさに適したサイズの枠体を選び、その内面に補隙層としてペースト状のシリコーンゴムを充填し、マウスガード使用者の口腔内歯列に挿入し、硬化させて製造するマウスガードが開示されている。
特許文献2では、マウスガード製造専用の加熱圧接吸引装置を用いて、事前にシート状に成形された熱可塑性弾性材料であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAとする)を加熱軟化し、歯列模型上に圧接し吸引することで密着させて製造するマウスガードが開示されている。
また、特許文献3では、模型上にマウスガード形状のワックスアップを行い、石膏による埋没を行い、流蝋し、弾性材料であるポリビニルアルコール(以下、PVAとする)ゲルを填入し、冷却などより硬化させる義歯製造方法と類似した方法で製造するマウスガードが開示されている。
【特許文献1】特許第1563289号
【特許文献2】特許第2594830号
【特許文献3】特開2003−102478号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1で開示されているマウスガードは、技工操作を必要とせず、使用者の口腔内で補隙層のシリコーンを硬化させるため、装着する歯列に対して適合の良いマウスガードを簡単に製作することができるというメリットがあるが、以下の問題点がある。
(1)事前に数種類のサイズで用意された既製の枠体を用いるため、使用者個々に合わせて最適な咬合を与えることが難しいこと(以下、第1の問題点とする)
(2)マウスガード全体の厚みをコントロールすることが難しく装着感が良くないこと(以下、第2の問題点する)
(3)枠体と補隙層の界面が機械的な嵌合力のみで保持させているため、耐久性が充分ではないこと(以下、第3の問題点とする)
(4)枠体と補隙層の界面に汚れが付着しやすく衛生的ではないこと(以下、第4の問題点とする)、などの問題があった。
上記の特許文献2で開示されているマウスガードは、歯列模型上に専用の装置でシート状の熱可塑性弾性材料を軟化、圧接、吸引することによってマウスガードを成形するため、簡単な技工操作で適合の良いマウスガードを製造できるというメリットがあるが、以下の問題点がある。
(5)専用の装置を必要とするため、その装置の導入に初期投資が必要となるという問題があった(以下、第5の問題点する)。
上記の特許文献3で開示されているマウスガードは、一般的な技工道具を用いて、適合が良く、適切な咬合が与えられたマウスガードを製造できるというメリットがあるが、以下の問題点がある。
(6)義歯製造と同様な方法でマウスガードを製造するため、歯列模型を石膏により埋没しなければならず、操作が煩雑である上、石膏は硬化に時間がかかり、製造に時間と手間がかかりすぎる(以下、第6の問題点とする)、という問題があった。
そこで本発明は、上記第1〜第6の問題点を解消するマウスガードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、歯列模型にマウスガード形状のワックスアップを行い、型枠材料として重合性レジンを用いてマウスガードの型枠を作製し、型枠に注入孔と排出孔の2つの孔を設け、それを歯列模型に被せ、硬化性の弾性材料としてシリコーンの未硬化液状物を注入し硬化させて脱型してマウスガードを製造することにより、上記第1〜第6の問題点を解消するマウスガードの製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
歯列模型、ワックス、型枠用の材料として重合性レジン、マウスガードを形成する弾性材料としてシリコーンを用い、
歯列模型にワックスを重ねてマウスガード形状に形成する工程と、
マウスガード形状のワックスを型枠用の材料である重合性レジンで型取り硬化させる工程と、
型取りした型枠からワックスを除去する工程と、
上記ワックス除去工程に前後して、上記型枠に注入孔と排出孔を切削する工程と、
歯列模型に型枠を取り付けた状態で弾性材料であるシリコーンの未硬化液状物を注入し硬化させた後、硬化物を脱型する工程と、
からなるマウスガード製造方法である。
上記マウスガード製造方法は、弾性材料であるシリコーンに常温付加重合型シリコーンを用いることが好ましい。
上記マウスガード製造方法は、ワックス除去工程の前に型枠に注入孔と排出孔を切削する工程を実施し、ワックス除去工程に於いて、型枠を歯列模型に装着したまま加温し、溶かしたワックスを注入孔及び排出孔のうち少なくともいずれか一方から排出させることが好ましい。
上記マウスガード製造方法は、弾性材料であるシリコーンに引裂き強度が10以上の常温付加重合型シリコーンを用いることが好ましい。
上記マウスガード製造方法は、弾性材料であるシリコーンにショアA硬度が40〜90の常温付加重合型シリコーンを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明のマウスガード製造方法では、歯列模型にマウスガード形状をワックスアップすることでマウスガードの厚みをコントロールできることから、最適な咬合を与え、装着感の良いマウスガードを製造することができるため、上記第1及び第2の問題点は起こらない。
製造されたマウスガードが単一の素材で構成されることから、剥離等が起らず耐久性があり、汚れの溜まりにくい衛生的なマウスガードを製造することができるため、上記第3及び第4の問題点は起こらない。
また、マウスガード製造に際し、専用の装置を必要としないため、装置導入による初期投資がかからないため、上記第5の問題点は起こらない。
さらに、義歯製造と同様な方法、例えば石膏による埋没操作を必要とせず、重合性レジンでワックスアップしたマウスガード形状の型取りを行うため、上記第6の問題点を解決することができる。
加えて、弾性材料であるシリコーンとして常温付加重合型シリコーンを用いることにより、常温で重合可能であり、酸素阻害による表面未重合がないため研磨操作を必要とせず、また着色が少なく、更に切削性の良いマウスガードを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態によるマウスガードの製造方法について図面を参照しながら説明する。
本発明のマウスガード製造方法では、歯列模型、ワックス、型枠用の材料として重合性レジン、弾性材料としてシリコーンを用い、歯列模型にマウスガード形状をワックスアップする工程と、ワックスアップしたマウスガード形状を型枠用の材料である重合性レジンで型取りする工程と、型取りした型枠からワックスを除去する工程と、上記ワックス除去工程に前後して、上記型取りした型枠に注入孔と排出孔を切削する工程と、型枠を模型に戻し、弾性材料であるシリコーンを注入する工程からなる。以下、各工程について順次、説明する。
【0008】
図1は、歯列模型1の斜視図である。
先ず、ワックスアップ工程に進む前に、これから形成しようとするマウスガードの歯列模型1を作製する。歯列模型1は、粘度状の型採り剤を歯に被せて、歯型を形成し、この歯型形状の空間に模型材を充填させて歯列模型1を形成する。
ワックスアップ工程で用いる歯列模型1は、公知の模型材を用いて作製されていればよく、特に制限されるものではない。このような歯列模型1の模型材には、普通石膏、硬質石膏、超硬質石膏などの石膏系模型材、エポキシレジン模型材などのレジン系模型材、リン酸塩系耐火模型材などの耐火模型材、アマルガムなどの金属系模型材などが挙げられる。これらの模型材は制限なく使用できるが、取り扱いやすさ、材料費、硬化の早さなどの観点から石膏系模型材が好適である。更には、硬化膨張が小さいことによる口腔内の寸法再現性、技工操作で削れてしまわない耐磨耗性の観点から、超硬石膏が好適である。
【0009】
[ワックスアップ工程]
本実施の形態に係る製造方法において、ワックスアップ工程のワックスアップの方法には、下記の(A)〜(C)に示すものなどが挙げられる。
(A)ワックスを溶かしたワックスバスに模型を浸漬させ、ワックスバスより模型を取り出して硬化させることでワックスアップする方法(ディッピング法)
(B)温めたインスツルメントでワックスを溶かし採り、目的の部位に溶かし採ったワックスを盛り付け硬化させることでワックスアップする方法(盛り上げ法)
(C)既製のワックスパターンやシート状のワックスを模型に圧接し貼り付ける方法(圧接法)
などがある。
これらのワックスアップ方法は制限なく採用できるが、素早く均一の厚みを与えてマウスガード形状をワックスアップすることや、型取り後のワックス除去が流蝋操作を用いずに容易にできることなどの観点から、一定厚みのシート状ワックスを用いた上記(C)の圧接法が好適である。
【0010】
歯列模型1にマウスガード形状をワックスアップするワックスの種類は、公知のワックスが使用できる。このようなワックスには、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンなどの鉱物系ワックス、蜜蝋などの昆虫系ワックス、カルナウバ、ダンマルなどの植物系ワックスなどが挙げられる。これらのワックスはそのまま、もしくは任意の配合比で混合した混合物を制限なく使用できるが、お湯による流蝋やワックスの除去性の観点から、融解温度が40〜60程度と低く、粘着性の少ないパラフィンが好適である。また、切削や溶融築盛による成形性を高めるために、パラフィンに蜜蝋やセレシンを添加したパラフィンワックスが好適である。更には、ワックスアップの際に容易に均一の厚みが与えられ、厚みのコントロールができるように、一定厚みに成形されたシート状のパラフィンワックスを用いることが好適である。
【0011】
図1に示すように、シート状ワックス2は一定の肉厚で一方向へ長い四角形状の板形状に形成されている。このシート状ワックス2を歯列3に合わせるようにしてU字形状に変形させ、図2のA及びBに示すように、歯列3の廻りにシート状ワックス2を覆い被せるように圧接させる。
シート状ワックス2を圧接しやすくするために、圧接する際にシート状ワックス2をトーチなどの熱源によって軟化させてから圧接を行うことが好適である。こうして、ワックスを歯列の隅々まで行き渡らせることができる。ワックス除去時には、歯列模型からワックスを除去しやすくするために、ワックスアップする前の歯列模型1にワックス分離材を塗布してもよい。
このような方法で、シート状ワックス(以下、シート状ワックスを変形させたものを単に成形ワックスと呼ぶ)2のワックスアップを行うことにより、上記第1及び第2の問題点が解消するマウスガードを作製することができる。
【0012】
[型取り工程]
ワックスアップ工程の後は、型取り工程を行う。型取り工程では、マウスガード形状の成形ワックス2を型枠用の材料で型取りして、図3のA及びBに示すように型枠4を形成する。
本実施形態に係る製造方法において、型取り工程は、好適には、型枠用の材料によりマウスガード形状の成形ワックス2の全体を覆っていることが望ましい。確実な型取りを行えるように、型取りの際にワックス2と型枠4との界面に気泡を巻き込まないことが望ましい。
また、後述する注入工程で弾性材料が型枠4の辺縁からもれることのない密閉性を高めるために、型枠材料がワックスによるマウスガード形状の辺縁を超えて、歯列模型1と接触もしくは接近していることが望ましい。好ましくは、歯列模型1に型枠用の材料が付着しないように、公知の分離剤を使用することができる。
【0013】
型枠4の材料には、取扱い性にすぐれることから重合性レジンが用いられる。重合性レジンは、化学重合型のものでも光重合型のものでも良く、一般には、即時重合レジンと総称される常温重合性の化学重合型レジンが用いられる。これらのレジンは、非シリコーン系の樹脂であり、好適には、マウスガードとなるシリコーンからなる弾性材料が硬化する際に型枠用の材料との接着性を有さないものがよい。通常は、(メタ)アクリル系重合性単量体等の重合性単量体、重合開始剤、および充填材等を主成分として含有する重合性組成物からなるものが使用される。
また、弾性材料となるシリコーンの未硬化液状物の注入を行う際に、型枠が変形してマウスガードの形状に悪影響を及ぼすことを防ぐために、型枠材料は硬化した際に外力による変形が起こりにくいものが望ましい。
このような方法で型枠を作製することにより、石膏による埋没操作などを必要としないため、上記第6の問題点を解消するマウスガードを製造することができる。
【0014】
[ワックス除去工程]
型枠用の材料が充分に硬化したら、模型から型枠4を取り外し、成形ワックス2を除去する。好適な成形ワックス2の除去は、型枠4に内接している成形ワックス2をエバンスなどで剥がし採る方法が素早く短時間でできるため望ましい。また、流蝋操作を行っても良い。
なお、このワックス除去工程は、次に説明する孔切削工程の後に行ってもよいが、これについては、孔切削工程で説明する。
【0015】
[孔切削工程]
図4は、歯列模型1から外した型枠4の斜視図である。この図4を参照して、孔切削工程では、型取りした型枠4に注入孔6と排出孔7を切削して型枠4の側面に孔を開ける。
本実施の形態に係る孔切削工程では、その切削する孔は2箇所であり、1つは注入孔6として使用し、もう一つは排出孔7として使用する。孔6,7を切削する場所は任意に決めることができるが、好適には、後述の弾性材料注入工程にて、排出孔7から弾性材料があふれでた時、型枠4と歯列模型1の間に形成されたマウスガード形状の空隙に弾性材料が満たされていることを確認できるように、2つの孔はマウスガードの中で一番離れた場所、大臼歯の頬側部分に左右一つずつ孔を切削することが望ましい。ただし、孔数については3以上形成してもよい。
孔を切削するための道具は、公知の切削道具を採用することができる。好適には、技工用マイクロモーターなどの高トルクの電気ドリルを用いることが、確実な切削と作業時間短縮の観点から望ましい。また、切削冶具にはラウンドバーを用いると容易に孔を切削することができる。ラウンドバーの大きさは、弾性材料を注入する注射器もしくはシリンジの先端の径に合わせた大きさのものを選択することが望ましい。
上述したように、孔切削工程を上述したワックス除去工程の前に行なう場合は、成形ワックス2をそのままにしておき、注入孔6と排出孔7を先に形成し、型枠を歯列模型に装着したまま加熱し枠内のワックスを溶かし、注入孔6及び(又は)排出孔7から溶かしたワックスを排出する。溶融したワックスを上記操作により概ね排出したら、注入孔6から型枠内にワックスの溶融温度以上の温水を注入し、排出孔7から排出し、残余のワックスを洗い流すのが好適である。この方法は、ワックス除去操作を簡便に行える他、歯列模型1と型枠4との位置合わせをする必要がなく、歯列模型1と型枠4に位置決め部を形成しなくても位置決めができ、正確な形状のマウスガードの製作ができる。なお、斯様にワックス除去工程として効率的な、型枠を歯列模型に装着したままで、内部のワックスを溶融させて注入孔6及び(又は)排出孔7を利用して排出する方法は、後述するように、本発明において、型枠用の材料として重合性レジンを用い、さらに、マウスガードを形成する弾性材料としてシリコーンを用いたことで、初めて採択できたものである。
【0016】
[弾性材料注入工程]
図5のAは、上記孔切削工程を終了した後に型枠4を再度、歯列模型1に被せた状態の斜視図、図5のBはその断面図である。
図に示すように、型枠4を歯列模型1に装着することによって、それらの間にマウスガード形状の空隙8が形成され、弾性材料注入工程では、型枠4を歯列模型1に戻し、歯列模型1と型枠4との間に弾性材料であるシリコーンの未硬化液状物(ペースト状のものを含む)を注入する。
予め、型枠4を歯列模型1に戻す前に、シリコーンと歯列模型1とがくっついてしまわないように分離剤を歯列模型1に塗布することが好適である。型枠を模型に戻す操作は、好適には型取りを行った適正な位置に戻し、型枠の辺縁と歯列模型の隙間をワックスや瞬間接着剤などで封鎖することが望ましい。この際、封鎖に使用するワックスや瞬間接着剤などは公知のものを使用することができる。
【0017】
シリコーンの未硬化液状物を注入する道具は、公知のものが使用できるが、後述にでてくる常温付加重合型シリコーンでペーストまたは液状の硬化触媒を含む部材(甲材)と硬化触媒を含まない部材(乙材)の二部材が別々に充填されて、先端に押し出すことでペースト混練されるチップを取り付けた押出器を用いるのが好適である。そのことにより、混練紙状でヘラを用いペーストを混練する手間がかからず、また、ペーストに気泡を巻き込む可能性が低くなり、気泡がなく耐久性があり汚れの付着が少ない衛生的なマウスガードを作製することができる。
【0018】
注入方法は、片方の孔を注入孔6とし、注入孔6からシリコーンの未硬化液状物を注入し、もう一つの孔を排出孔7とし、排出孔7から該未硬化液状物があふれ出てくるまで注入を行うことが好適である。更には、型枠4と歯列模型1によって作られたマウスガード形状の空隙8に気泡を入れることなく、隅々までシリコーンを行き渡らせるために、図5のBに示すように、注入孔6を下に向け排出孔7を上に向けた状態で注入することが好適である。この方法を用いることにより、重さの重いシリコーンの未硬化液状物は型枠4と歯列模型1によって作られたマウスガード形状の空隙8の下から徐々に充填され、空隙内にある重さの軽い空気は排出孔より排出されることで、隅々まで気泡を巻き込まずにシリコーンを行き渡らせることができる。
【0019】
図6は、歯列模型1と型枠4との間の空隙8にシリコーンの未硬化液状物を注入した後に型枠4を外した状態の斜視図である。
図に示すように、シリコーンの未硬化液状物を空隙8に充填させてシリコーンが硬化したら、慎重に歯列模型1から型枠4を取り外し、さらに硬化したマウスガード10を歯列模型1から取り外し、注入孔6と排出孔7にできたシリコーンのスプルー11,11をカットする。必要があれば、マウスガード辺縁にできるバリをカットすることでマウスガード10を完成させる。
マウスガードの咬合調整は、上下顎模型を用いた咬合調整や使用者の歯列に装着して行う咬合調整などの公知の方法を制限なく採用することができる。
【0020】
ここで、マウスガード10の材料となる弾性材料について説明する。
上記弾性材料注入工程で用いられる弾性材料は、力を加えると変形するが、除荷すれば元の寸法に戻る性質を有する材料である必要があり、本発明ではシリコーンを用いる。
シリコーンは、優れた柔軟性、撥水性、非粘着性、比較的安定で生理的に無毒であるという歯科用材料として優れた特徴を有する。また、型枠用の材料である重合性レジンと親和性が低いため、型枠内で硬化しても一体化せず脱型が容易であり好ましい。本発明では、このようにマウスガードを形成する弾性材料として、型枠用の材料である重合性レジンと接着性が低いシリコーンを用いている。このことに起因して、本発明では、前記したようにワックス除去工程において、型枠を歯列模型に装着したままで、内部のワックスを溶融させて注入孔6及び(又は)排出孔7を利用して排出する方法を採用することが可能になる。すなわち、この方法でワックスを除去した場合、型枠や歯列模型の内面に微量のワックスが吸着して残存することが通常避けられないが、これらの間で硬化させる弾性材料がシリコーンであると、該シリコーンはポリオルガノシロキサンを主成分とすることにより硬化時にレジンなどに比べ硬化発熱が小さいため、その硬化時に型枠や歯列模型内面に残存するワックスが溶融して該シリコーン中に混入することがほとんどない。アクリル系レジン等の多くの他の弾性材料を用いると、この硬化発熱が大きく、上記方法によりワックスの除去を行うと、その硬化時に表面に該ワックスが混入することが避けられず、得られるマウスピースは、重合阻害を受けて表面性状が悪化したり、純度が低下し表面荒れを生じたりするが、弾性材料としてシリコーンを用いる本発明では、このような問題の発生がなく、効率的(型枠の辺縁と歯列模型の隙間を封鎖しなくても良い)にワックス除去工程を操作することが実現できる。また、残存したワックスが石膏とシリコーンとの分離材としての役割をする為、分離材の塗布をせずに模型からシリコーンを脱型することが可能となる副次的効果も得られる。
また、シリコーンには加熱重合型シリコーンと常温重合型のシリコーンがあるが、ワックス除去工程において、型枠を歯列模型に装着したままで、内部のワックスを溶融させて注入孔6及び(又は)排出孔7を利用して排出する方法を採用する場合は、前記した型枠や歯列模型内面に残存するワックスの混入を極力防止する理由から、加熱操作を必要とせず硬化させることができる常温重合型シリコーンが好適である。この場合、加熱重合型シリコーンを用いるのであれば、加熱温度が、ワックスの溶融温度以下のものを用いるのが好ましい。
一般に、常温重合型シリコーンの調製方法としては、基材と硬化材を別々に保存しておき、使用直前に両者を混練して行われる。そのため、本発明の製造方法において、ペーストを注入し硬化を待つという簡便な操作でマウスガード作製するためには、上記常温重合型のシリコーンが好適である。
【0021】
更には、常温付加重合型シリコーンであることが、重合収縮に伴う寸法安定性の相違に起因した装着感の観点から最も好ましい。常温付加重合型シリコーンは、重合に伴う副生成物が無く、重合収縮が小さい為、寸法安定性に優れている。そのため、常温付加重合型シリコーンで作製したマウスガードは、模型との適合が良好であり、使用時の装着感はきつく無く、かつ良好な適合を得ることができる。
また、常温付加重合型シリコーンの充填材にポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を用いることが、切削性、耐着色性の観点から好ましい。切削性が良く耐着色性の良い常温付加重合型シリコーンについては、特開平7−41411号公報で開示されている。即ち、常温付加重合型シリコーンの充填材にポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を用い、該充填材はシリカ系粉末に比べて疎水性が高く、またSi−O結合、Si−CH結合などを持つため、マトリックスであるシリコーンとの馴染みもよく、更にシリコーンゴムに対する補強効果もあり、そのため硬化後の弾性体はある程度の力学的強度を持つと同時に着色量も少ない。更に適度な粒径のものを選択することにより高充填率で充填することが可能であり、又、硬化後の弾性体に充分な剛性を与えることができる。そのため硬化後の弾性体に切削性を付与することができる。よって、咬合調整や形態修正を行うための切削性を与えることができ、マウスガード作製時及び使用時の着色を抑制することができる。
【0022】
常温付加重合型シリコーンは硬化の際に酸素による重合阻害を受けないため、表面に未重合成分がほとんど残らず、研磨操作を行うことなく、滑沢な表面を得られる。そのため、研磨操作の省略と汚れの付着しにくい衛生的なマウスガード10を製造することができる。また、常温付加重合型シリコーンは副生成物が発生しないというメリットもある。
このような常温付加重合型シリコーンで一塊成形のマウスガードを製造することにより、上記第3及び第4の問題点を解消するマウスガード10を製造することができる。
上記弾性材料に用いられる常温付加重合型シリコーンにおいて、引裂き強度(JIS K 6250に従い試験片を作製し、JIS K 6252に従い試験を行いもとめられた値)が10以上であることが耐久性のあるマウスガードを製造するという観点から好ましい。
また、上記弾性材料に用いられる常温付加重合型シリコーンにおいて、ショアA硬度が40〜90であることが、顎組織の外傷防止及び脳への衝撃吸収・緩和等の効果を発揮するという観点から好ましい。
上記製造方法によってマウスガードを製造することにより、専用の装置を必要としないため、上記第5の問題点を解消する方法でマウスガード10を製造することができる。
【実施例】
【0023】
本発明を更に具体的に説明するために、以下に実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例のような条件によって、マウスガードの製造に関して、作業時間、装着感、専用装置の有無、引っ張り試験、衝撃吸収試験、マウスガードの表面状態の評価を行った。
【0024】
[実施例1]
マウスガード使用者の上下顎歯列模型を用意した。次に、上顎歯列模型にマウスガード形状のワックスアップを行った。ワックスアップは1.5mmのシート状のパラフィンワックスを用い、それを卓上のトーチで軟化し、模型に貼り付けていくようにして、上顎歯列を全て覆うようなマウスガード形状の形成を行った。下顎歯列模型と咬合させて、咬合関係の確認、調整を行った(ワックスアップ工程作業時間10分)。
次に、即時重合レジン「オストロン」(GC社製)を用い、その粉100重量部と液33重量部を混合し、均一な餅状になるまで練り、ガラス板を用いて厚さ2mmのシート状に押し伸ばし、それをワックスアップした模型の上から圧接し、マウスガード形状の型取りを行った(型取り工程作業時間10分)。即時重合レジンが硬化したら、型枠を歯列模型につけたままの状態で、型枠の両側大臼歯頬側の部分に樹脂注入が可能な孔を片側に1つずつ切削付与した。孔の切削付与にはラウンドバーを用い、技工用マイクロモーターで行った(孔切削工程1分)。次に型枠のついたままの歯列模型をお湯(80〜90℃)に浸しワックスを充分に溶解させ、その後お湯から取り出し、型枠に開けた孔の一つ(注入孔)からお湯を流し込み、もう一つの孔(排出孔)から排出させ、ワックスを洗い流した(ワックス除去工程作業時間10分)。
次に常温付加重合型シリコーン「ソフリライナータフ」(トクヤマデンタル製、ショアA硬度が43、引裂き強度が18.5)の基材と硬化材を等量で混合して得た未硬化液状物を型枠に開けた孔の一つ(注入孔)から注入し、もう一つの孔(排出孔)からシリコーンが排出されるまでシリンジにより注入を行った。注入する時には、マウスガードに気泡が入らないように、注入孔を下に、排出孔を上に向けるようにして注入を行った。シリコーンが排出孔から排出されたら注入をやめ、シリコーンを硬化させた。注入した常温付加重合型シリコーンが硬化したら、歯列模型から型枠を取り外し、成形されたマウスガードを取り外し、マウスガードの両側大臼歯頬側部分に注入孔及び排出孔の形状に形成されたスプルーを切り取り、マウスガードを完成させた(注入工程作業時間15分)。
【0025】
[実施例2]
実施例1と同じ要領で型取り工程まで行い、上顎歯列模型から型枠を取り外し、上顎歯列模型と型枠についたパラフィンワックスを エバンスを用いてはがすように除去した。取り外した型枠に、実施例1と同様な注入孔及び排出孔を切削付与した。上顎歯列模型にシリコーンの分離材として、ワセリンを塗布し、型枠を上顎歯列模型に戻した後、型枠の辺縁と上顎歯列模型の隙間を瞬間接着材で封鎖した(ワックス除去工程及び孔切削工程作業時間20分)。その後、実施例1と同様にして、常温付加重合型シリコーンの未硬化液状物の注入、硬化、取り外し、スプルーの切り取りを実施し、マウスガードを完成させた。
【0026】
[実施例3]
実施例1と同じ要領で、弾性材料注入工程前までを実施した。次いで、弾性材料注入工程を、使用する弾性材料として、実施例1で使用した常温付加重合型シリコーン「ソフリライナータフ」に変えて、加熱付加重合型シリコーン「TSE3453」(モメンティブ社製)を用い、その基材100重量部と硬化材10重量部とを混合して未硬化液状物を得、シリンジにて型枠内へ注入し、型枠のついたままの歯列模型を100℃で加熱し、硬化させる態様で実施した(注入工程作業時間20分)。その後は実施例2と同様に取り外し、スプルーを切り取り、マウスガードを完成させた。
【0027】
[実施例4]
実施例1の弾性材料注入工程において、常温付加重合型シリコーン「ソフリライナータフ」に変えて、常温付加重合型シリコーン「ソフリライナーSS」(トクヤマデンタル社製、ショアA硬度が23、引裂き強度が3.1)を用い、その基材と硬化材を等量で混合させた以外は、該実施例1と同様に操作して、マウスガードを完成させた。
【0028】
[実施例5]
実施例1の弾性材料注入工程において、常温付加重合型シリコーン「ソフリライナータフ」に変えて、常温付加重合型シリコーン「ソフリライナータフ」の基材と常温付加重合型シリコーン「ソフリライナーSS」の硬化材とを等量で混練したもの(硬化体はショアA硬度が33、引裂き強度が11)を用いたこと以外は、該実施例1と同様に操作して、マウスガードを完成させた。
【0029】
[実施例6]
実施例1の弾性材料注入工程において、常温付加重合型シリコーン「ソフリライナータフ」に変えて、常温縮合型液状シリコーン「TES350(基材)、CE601(硬化材)」(モメンティブ社製)を、基材100重量部と硬化材1重量部とを混合する態様で用いたこと以外は、該実施例1と同様に操作して、マウスガードを完成させた。
【0030】
[比較例1]
加熱圧接吸引装置を用い、厚さ3.0mmのEVAシートを軟化させた(10分)、マウスガード使用者の上顎歯列模型に軟化させたEVAシートを、マウスガード製造専用の加熱圧接吸引装置を用いて圧接吸引させ、EVAシートを上顎歯列模型に密着させた(作業時間10分)。密着させたEVAシートにマウスガードの外形線を記入し、その外形線に沿ってEVAシートを切り取り取ることでマウスガード辺縁形態を修正し、マウスガードを完成させた(作業時間15分)。この製造方法では、専用の装置を必要とするため、装置導入の初期投資が必要であった。
【0031】
[比較例2]
シリコーンゴムにより事前に用意された既製の馬蹄形マウスガード枠体に、補隙層としてペースト状シリコーンゴムを充填し、マウスガード使用者の口腔内上顎歯列に挿入した(作業時間10分)。硬化後、マウスガードを口腔内から取り外し、はみ出したシリコーンゴムを切り取り、マウスガードを完成させた(作業時間10分)。この方法では、既製の枠体が咬合面となるため最適な咬合を与えることが難しく、かみ合わせが悪く感じた。また、頬舌側の厚みも均一ではないため、マウスガードによる頬舌側への不規則な当たりを感じ、違和感があった。
【0032】
[比較例3]
マウスガード使用者の上下顎歯列模型を用意し、マウスガードのワックスアップを行った(ワックスアップ工程作業時間10分)。ワックスアップした歯列模型に石膏分離材を塗布し、フラスコ内に普通石膏で埋没した。埋没は下部フラスコに歯列模型下部の埋没(マウスガード辺縁までの埋没、1次埋没)を行い(作業時間20分)、1次埋没の石膏が硬化したら石膏分離材を1次埋没の石膏に塗布し、上部フラスコを被せ、ワックスアップ部分の埋没(2次埋没)を行った(作業時間20分)。2次埋没の石膏が硬化したら、フラスコ全体をお湯に付け、ワックスを軟化させ、フラスコを上部と下部に外すことで1次埋没と2次埋没の分割を行い、石膏で凹型に型取りされたマウスガード形状部分をお湯で洗い流し、ワックスの除去を行った(作業時間15分)。その石膏によるマウスガード凹型に、ポリビニルアルコール(PVA)乾燥ゲルを所定量の水と共に加熱溶解したものを充填し、上下フラスコを合致させ、フラスコ全体を常温の水につけ、溶解したPVAを冷却し再ゲル化させた(60分)。その後、フラスコ内の石膏からマウスガードを掘り出して、マウスガードを完成させた(20分)。この方法では、義歯製造と同様な方法で製造するため、埋没操作に非常に手間がかかり、マウスガード製造に時間がかかった。
【0033】
[比較例4]
実施例1と同じ要領で、弾性材料注入工程前までを実施した。次いで、弾性材料注入工程を、常温付加重合型シリコーン「ソフリライナータフ」に変えて、即時重合レジン「プロビナイス」(松風社製)を用い、その粉と液をゆるいペースト状になるように任意で混合し、シリンジにて型枠内への注入を行い硬化させる態様で実施した。しかしながら、この方法では、まず歯列模型よりマウスガード状レジン硬化体を取り外すことができなった。そこで、そのレジン硬化体を技工用マイクロモーターに装着したダイヤモンドディスクで切り、歯列模型から外し、内面(歯列模型との接触面)の状態を確認したところ、即時重合レジンの硬化発熱で歯列模型表面から溶け出したワックスによる硬化阻害が起きたため、レジン硬化体の表面が充分に硬化していなかった。
【0034】
[比較例5]
実施例1と同じ要領で、弾性材料注入工程前までを実施した。次いで、弾性材料注入工程を、常温付加重合型シリコーン「ソフリライナータフ」に変えて、PVA乾燥ゲルを所定量の水と共に加熱溶解したものを用い、シリンジにて型枠内への注入を行い、全体を常温の水につけ、溶解したPVAを冷却し再ゲル化させる態様で実施した。(注入工程作業時間65分)しかしながら、この方法では、PVAの溶解と冷却による再ゲル化に手間がかかり、マウスガード製造に時間がかかった。また、加熱溶解により高温となったPVAを注入したことにより、歯列模型表面や型枠表面に残存したワックスが溶け、PVAに混ざったことにより、マウスガード表面性状が荒れた。
【0035】
試験結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
上記実施例及び比較例の評価は以下の通りである。
(1)作業時間
上述の実施例及び比較例において、作業時間に関するマウスガード製造方法の評価は、マウスガードが完成するまでの実作業時間を分単位計測した。60分未満のものを ○、60分以上を ×とした。
作業時間に関しては、特に、比較例3および比較例5が溶解したPVAを冷却し再ゲル化させる作業に60分を費やし、評価が×となった。各実施例及び比較例で費やした作業時間を表1中に記載した。
【0038】
(2)装着感
完成したマウスガードの装着感の評価は、以下の判定基準に従い、○、△、×で評価した。
◎:厚みが均一で、頬や舌に不自然なあたりを感じるがなく、非常に装着感がよく気にならない。
○:装着感はよいが、違和感がある。
×:厚みが不均一で、頬や舌に不自然なあたりを感じ、装着感が悪い。
装着感については、比較例1に違和感があり、比較例2では装着感及び違和感が悪かった。
【0039】
(3)専用装置の有無
マウスガード作製に際して、専用の装置を用いる製造方法は「必要」、専用装置を必要としない製造方法は「なし」とした。「なし」のものを○、「必要」のものを×とした。
比較例1のみ専用の装置として加熱圧接吸引装置を使用しているので、評価が×となった。
【0040】
(4)引張試験
完成したマウスガードを37℃空気中で24時間放置した後、マウスガードの正中部分を両手で引き伸ばし、放したときのマウスガードの状態で引っ張りに対する強さの評価を行った。評価は以下の判定基準に従い、◎、○、△、×で評価した。
◎:元の状態と同じ
○:やや伸びている
△:切れ目が入っている
×:引き伸ばした時に2つに切り離されてしまう
引張試験では、比較例2のマウスガードが枠体と補隙装の界面で剥がれが生じ、比較例3および比較例5では、切断が生じた。
【0041】
(5)衝撃吸収試験
マウスガード製造に用いた弾性材料を、厚み1.5mm、縦10cm、横10cmのシート状にモールドを用いて作製した。木製のテーブルの上に白紙を置き、その上にカーボンシートを重ね、その上に作製した弾性材料のシートを置いた。そのシートの上に、高さ50cmから重さ100gの鉄球を落とした。この時の白紙への印字のされ方によって、弾性材料の衝撃吸収性の評価を行った。評価は以下の判定基準に従い、◎、○、△、×で評価した。
◎:全く印字されない
○:うっすら黒くなっている
△:はっきりと点で印字されている
×:はっきりと大きく円形に印字されている
衝撃吸収試験では、実施例4及び5にうっすら黒く印字され○の評価となった。
【0042】
(6)マウスガードの表面状態の評価
目視及び手で触った感触でマウスガードの表面状態の評価を行った。表面まで充分に硬化しているものは◎、表面に未硬化部分があるがマウスガードとして使用できる範囲のものは○、マウスガードとして使用出来ない程に硬化していないものを×で評価した。
マウスガードの表面状態の評価では、実施例3、比較例4及び5で硬化の不十分な部分がみられたが、使用は可能であり、評価が○となった。
【0043】
以上、本発明を実施形態に基づいて添付図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、更に他の変形あるいは変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態によるマウスガードの製造方法で用いられる歯列模型の斜視図である。
【図2】Aは、図1の歯列模型にワックスをワックスアップした状態の斜視図、Bは断面図である。
【図3】Aは、図2のワックスアップした歯列模型に型枠用材料を重ねた状態の斜視図、Bは断面図である。
【図4】図3の型枠用材料で形成した型枠を歯列模型から分離し、注入用孔と抽出用孔を形成した状態の斜視図である。
【図5】Aは、図3の歯列模型からワックスを剥がし図4の型枠を再度歯列模型に重ね合わせ、マウスガードとなる空隙をそれらの間に形成した状態の斜視図、Bは断面図である。
【図6】図5のAから型枠を外した状態の歯列模型に覆い被さっているマウスガードの斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 歯列模型
2 シート状ワックス
3 歯列
4 型枠
6 注入孔
7 排出孔
8 空隙
10 マウスガード
11 スプルー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯列模型、ワックス、型枠用の材料として重合性レジン、マウスガードを形成する弾性材料としてシリコーンを用い、
歯列模型にワックスを重ねてマウスガード形状に形成する工程と、
マウスガード形状のワックスを型枠用の材料である重合性レジンで型取り硬化させる工程と、
型取りした型枠からワックスを除去する工程と、
上記ワックス除去工程に前後して、上記型枠に注入孔と排出孔を切削する工程と、
歯列模型に型枠を取り付けた状態で弾性材料であるシリコーンの未硬化液状物を注入し硬化させた後、硬化物を脱型する工程と、
からなるマウスガード製造方法。
【請求項2】
弾性材料であるシリコーンに常温重合型シリコーンを用いることを特徴とする請求項1記載のマウスガード製造方法。
【請求項3】
常温重合型シリコーンが常温付加重合型シリコーンである請求項2記載のマウスガード製造方法。
【請求項4】
ワックス除去工程の前に型枠に注入孔と排出孔を切削する工程を実施し、ワックス除去工程に於いて、型枠を歯列模型に装着したまま加温し、溶かしたワックスを注入孔及び排出孔のうち少なくともいずれか一方から排出させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマウスガード製造方法。
【請求項5】
弾性材料であるシリコーンに引裂き強度が10以上の常温付加重合型シリコーンを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマウスガード製造方法。
【請求項6】
弾性材料であるシリコーンにショアA硬度が40〜90の常温付加重合型シリコーンを用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマウスガード製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−131181(P2010−131181A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309800(P2008−309800)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)