説明

マウスピース

【課題】 容易にバイトプレートを交換可能であって、使用感に優れたマウスピースを提供すること。
【解決手段】 着脱自在のバイトプレートを備えたマウスピースであって、リードを取り付けるためのリード取付面と、リード取付面の逆側において斜めに切り取られたビーク部と、を備えている。バイトプレートは、マウスピースの先端付近からビーク部の頂点まで延設されており、ビーク部に設けられた凹部に貼着されていることを特徴とする。これにより、バイトプレートの着脱が極めて容易になった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばクラリネットやサックスなどの管楽器において、音を発生させるためのマウスピースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図5に示すように、クラリネットやサックスなどの管楽器に用いられるマウスピース1000には、バイトプレート(歯あて)2000が設けられているものが多い。バイトプレートとは、一般的にはマウスピースのリード側とは逆側の傾斜面(ビーク)に埋め込まれた樹脂製の部材を指す。バイトプレートに上の前歯をあてつつマウスピース先端を口に含んで息を吐くことにより、リードを振動させて音を発生させるのが基本的な吹奏方法である。マウスピースから演奏者の上前歯に伝わる振動を、バイトプレートによって軽減することができるので、マウスピースのグリップが向上し、演奏が容易になるという利点がある。
【0003】
図5に示すバイトプレート2000は、インサート成形によって形成されていた。つまり、バイトプレート用に削られた凹部に対して、樹脂を注入し、その後、表面を研磨することによって他の面との段差を無くしていた。しかしながら、マウスピースを長く使用していると、演奏者の歯によってバイトプレートに凹みができたり、穴が空いたり、バイトプレート全体が壊れることがあり、樹脂を注入してから削る方法で作られたバイトプレートの場合には、その補修が非常に困難であった。
【0004】
これに対し、特許文献1には、バイトプレート(bite plate)106を交換可能に構成したマウスピース100Aが開示されている。この文献では、ビーク104の中央付近の一部だけがバイトプレートとして交換可能となっている(特許文献1の図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開公報2008/0087156(2008年4月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、歯あての交換が容易ではなかった。これは、ビーク全体に対して、バイトプレートが小さく、かつ面の中央に設けられているからである。更に、従来技術のようなバイトプレートの場合、演奏者の上唇が触れる箇所に、バイトプレートとマウスピースとの継ぎ目がくることになり、ちょっとした段差でも演奏者に違和感を感じさせてしまっていた。そして結局、バイトプレートと他の面とを平滑化させるためビーク表面を研磨する必要が生じていた。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、容易にバイトプレートを交換可能であって、使用感に優れたマウスピースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るマウスピースは、
着脱自在のバイトプレートを備えたマウスピースであって、
リードを取り付けるためのリード取付面と、
前記リード取付面の逆側において斜めに切り取られたビーク部と、
を備え、
前記バイトプレートは、前記マウスピースの先端付近から前記ビーク部の頂点まで延設されており、
前記ビーク部に設けられた凹部に貼着されたことを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る他のマウスピースは、
着脱自在のバイトプレートを備えたマウスピースであって、
リードを取り付けるためのリード取付面と、
前記リード取付面の逆側において斜めに切り取られたビーク部と、
を備え、
前記バイトプレートは、前記マウスピースの先端付近から前記ビーク部の頂点まで延設されており、
前記バイトプレートの先端は前記ビーク部に設けられた切り込み部に挿入されたことを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る更に他のマウスピースは、
着脱自在のバイトプレートを備えたマウスピースであって、
リードを取り付けるためのリード取付面と、
前記リード取付面の逆側において斜めに切り取られたビーク部と、
を備え、
前記バイトプレートは、前記マウスピースの先端付近から前記ビーク部の頂点まで延設されており、
前記バイトプレートの後端側に設けられたノッチが、前記ビーク部に設けられたノッチと係合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容易にバイトプレートを交換可能であって、使用感に優れたマウスピースを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態としてのマウスピースの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態としてのマウスピースを取り付けたサックスを示す図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態としてのマウスピースの断面図であり、(b)は、バイトプレートを取り外した状態を示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態としてのバイトプレートについて説明する断面図である。
【図5】従来のマウスピースの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、本実施形態では、管楽器の一例としてのサックスのマウスピースについて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、同様のマウスピースを用いる他の管楽器にも適用可能である。
【0014】
図2は、本発明に係るマウスピース100を適用したサックス200の外観を示す図である。図1に示すようにバイトプレート110は、使用状態において、マウスピース100の上面を形成し、ここに演奏者の上側の前歯があたる構成となっている。この前歯と、首から提げるネックストラップと、右手親指を引っかけるサムフックとの3点によって、基本的に、サックス本体の位置が規定される。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態のマウスピース100の外観を示す全体斜視図である。図3(a)は、マウスピース100のA−A断面図であり、図3(b)は、更にバイトプレート110を取り外した状態を示す図である。
【0016】
マウスピース100は、サックス本体200との連結に用いられる連結部120と、リード(不図示)を取り付けるためのリード取付面135を備えた胴体部130と、リード取付面と逆側において胴体部130から斜めに切り取られたビーク(くちばし)部140とを備えている。そして、ビーク部140の表面には、ビーク部140の頂点150から、先端付近155にかけて、バイトプレート110が貼着されている。バイトプレート110は、樹脂製の薄板であり、ビーク部140に設けられた凹部160に対してぴったりと嵌め込まれ、接着剤によって固定されている。
【0017】
バイトプレート110は、マウスピース100の先端付近155からマウスピース100の胴体部130の頂点付近150まで延びている。このため、従来に比べ、隙間に対する治具(例えば非常に薄いプレートや小さなマイナスドライバなど)の挿入が容易になり、治具を挿入してバイトプレート110を剥がす作業が容易になる。結果として、マウスピース100の胴体部130やビーク部140に傷を付けることなく、バイトプレート110を交換することができる。更に、バイトプレート110を貼り付ける際にも、ビーク部140に設けられて凹部160に沿わせてバイトプレート110を上から移動させて突き当たった場所で貼り付ければよいので、従来に比べ、格段に作業が容易になる。
【0018】
また更に、バイトプレート110を、マウスピース100の胴体部130の頂点付近150まで延びた薄板によって形成したので、バイトプレート110のみが演奏者の上の唇が触れることになる。したがって、ユーザは、バイトプレート110とその他の部分との段差を感じることはなく、使用感に優れたマウスピースが実現できる。
【0019】
(他の実施形態)
図4は、本発明に係る他の実施形態としてのマウスピースを示す図である。図4のように、マウスピース100のビーク部140には、上記実施形態と同様にバイトプレート110を貼着するための凹部160が形成されている。しかし、本実施形態では、上記実施形態と異なり、その凹部160の先端側に、プレート先端挿入部170を形成しけている。つまり、ビーク部140の表面に対して鋭角に切れ込んだ溝の形状となっている。この切れ込みに対してバイトプレート110の先端を挿入することによって(Step1)、バイトプレート110の先端はしっかりとマウスピース100に固定され、浮き上がることはなくなる。
【0020】
一方、バイトプレート110の後端側のもノッチ115が設けられており、ビーク部140に設けられたノッチ180とパチンと係合することによって(Step2)、バイトプレート110の後端もマウスピース100に固定される。この二つの係合により、接着剤を用いることなくバイトプレート110をマウスピース100に固定することが可能となる。もちろん、補助的に接着剤を用いて固定を確実にしてもよい。
【0021】
さらに、ビーク部140には、例えばマイナスドライバのような治具300を挿入するための切り欠き190が設けられている。この切り欠き190に治具300の先端を挿入し(Step3)、治具300の角度を変えることにより(Step4)、バイトプレート110のノッチ115とビーク部140のノッチ180との係合は解除され、バイトプレート110を容易に取り外すことができる。
【0022】
以上のように、バイトプレートの着脱が極めて容易になるように構成したので、演奏者は自由にバイトプレート110を変更することができ、マウスピース本体との組合せによって、自分だけのマウスピースを作ることができる。例えば、黒のマウスピースに赤のバイトプレートを組み合わせるなど、好みに応じて奇抜なデザインのマウスピースを作ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱自在のバイトプレートを備えたマウスピースであって、
リードを取り付けるためのリード取付面と、
前記リード取付面の逆側において斜めに切り取られたビーク部と、
を備え、
前記バイトプレートは、前記マウスピースの先端付近から前記ビーク部の頂点まで延設されており、
前記ビーク部に設けられた凹部に貼着されたことを特徴とするマウスピース。
【請求項2】
着脱自在のバイトプレートを備えたマウスピースであって、
リードを取り付けるためのリード取付面と、
前記リード取付面の逆側において斜めに切り取られたビーク部と、
を備え、
前記バイトプレートは、前記マウスピースの先端付近から前記ビーク部の頂点まで延設されており、
前記バイトプレートの先端は前記ビーク部に設けられた切り込み部に挿入されたことを特徴とするマウスピース。
【請求項3】
着脱自在のバイトプレートを備えたマウスピースであって、
リードを取り付けるためのリード取付面と、
前記リード取付面の逆側において斜めに切り取られたビーク部と、
を備え、
前記バイトプレートは、前記マウスピースの先端付近から前記ビーク部の頂点まで延設されており、
前記バイトプレートの後端側に設けられたノッチが、前記ビーク部に設けられたノッチと係合することを特徴とするマウスピース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−2720(P2011−2720A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146846(P2009−146846)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【特許番号】特許第4403203号(P4403203)
【特許公報発行日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(597041448)株式会社石森管楽器 (7)