説明

マウスモデル

本発明は一般に、候補免疫原を試験するのに適した動物モデル、特に膜近接外部領域(MPER)HIV−Iの広域中和抗体の重鎖および軽鎖を発現するノックインマウス、ならびにそれを用いて候補免疫原をスクリーニングする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願No. 61/202,778, 2009年4月3日出願に基づく優先権を主張し、その内容全体を本明細書に援用する。
技術分野
本発明は一般に、候補免疫原を試験するのに適した動物モデル、特に膜近接外部領域(membrane proximal ext
ernal region (MPER))HIV−1の広域中和抗体の重鎖および軽鎖を発現するノックインマウス、ならびにそれを用いて候補免疫原をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
急性HIV−1感染症において形成される最初の抗体は、CD4結合部位(Moore et al, J. Virol, 68(8) 5142 (1994))、CCR5共受容体結合部位(Choe et al, Cell 114(2): 161-170 (2003))、およびV3ループ(Moore et al, J. Acquir, Immun. Def. Syn. 7(4): 332 (1994))に対するものである。しかし、これらの抗体はHIV−1を抑制せず、容易に回避される(Burton et al, Nature Immun. 5: 233-236 (2004), Wei et al, Nature 422 (6929): 307-312 (2003))。オートロガスウイルスに対する中和抗体は感染後50〜60日目に発現するが、ヘテロロガスHIV−1株を中和できる抗体は感染の1年後まで形成されない(Richman et al, Proc. Natl, Acad. Sci. USA 100(7): 4144-4149 (2003), Wei et al, Nature 422 (6929): 307-312 (2003))。
【0003】
希有広域(broadly)反応性中和抗体が結合するHIV−1エンベロープ上の4つのエピトープは、CD4結合部位(CD4BS)(mab(モノクローナル抗体)IgG1b12)(Zwick et al, J. Virol. 77(10): 5863-5876 (2003))、ヒトmab 2F5および4E10により規定される膜近接外部領域(MPER)エピトープ類(Armbruster et al, J. Antimicrob. Chemother. 54: 915-920 (2004), Stiegler and Katinger, J. Antimicrob. Chemother. 51: 757-759 (2003), Zwick et al, Journal of Virology 79: 1252-1261 (2005), Purtscher et al, AIDS 10: 587 (1996))(図1)、ならびにヒトmab 2G12により規定されるマンナングリカンエピトープ(Scanlan et al, Adv. Exper. Med. Biol. 535: 205-218 (2003))である。これら4つの希有ヒトmabはすべて特異である:2つはIgG3であり(2F5および4E10)、1つはユニークIg二量体構造をもち(2G12)、1つは著しく疎水性のCDR3をもち(2F5)(Ofek et al, J. Virol. 198: 10724 (2004))、かつ4つすべてにおいてCDR3が異例に長い(Burton et al, Nature Immunol. 5(3): 233-236 (2004), Kunert et al, AIDS Res. Hum. Retroviruses 20(7): 755-762 (2004), Zwick et al, J. Virol. 78(6): 3155-3161 (2004), Cardoso et al, Immunity 22: 163-172 (2005))。これらのうち、2F5様および4E10様のヒトmabはかなり稀である。急性HIV−1患者はMPERまたは2G12エピトープに対する抗体を形成しない;MPERはHIVエンベロープのアミノ酸652−683として定義できる(Cardoso et al, Immunity 22: 163-173 (2005) (たとえばQQEKNEQELLELDKWASLWNWFDITNWLWYIK)。CD4結合部位(BS)抗体は普通はHIV−1感染の初期に形成されるが、これらの抗体はmab IgG1b12が示す広域中和スペクトルを一般にもたない(Burton et al, Nat. Immunol. 5(3): 233-236 (2004))。
【0004】
HIV−1エンベロープの多数のエピトープが宿主組織と交差反応することが示され(Pinto et al, AIDS Res. Hum. Retrov, 10: 823-828 (1994), Douvas et al, AIDS Res. Hum. Retrov. 10: 253-262 (1994), Douvas et al, AIDS Res. Hum. Retrov, 12: 1509-1517 (1996))、自己免疫患者はHIV−1タンパク質と交差反応する抗体を形成することが示された(Pinto et al, AIDS Res. Hum. Retrov. 10: 823-828 (1994), Douvas et al, AIDS Res. Hum. Retrov. 10: 253-262 (1994), Douvas et al, AIDS Res. Hum. Retrov, 12: 1509-1517 (1996), Barthel et al, Semin. Arthr. Rheum. 23: 1-7 (1993))。同様に、自己エピトープに対する免疫応答の誘発がエイズにおける自己免疫異常およびT細胞枯渇の原因であると示唆された(Douvas et al, AIDS Res. Hum. Retrov. 12: 1509-1517 (1996), Ziegler et al, Clin. Immunol. Immunopath. 41: 305-313 (1986))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Moore et al, J. Virol, 68(8) 5142 (1994)
【非特許文献2】Choe et al, Cell 114(2): 161-170 (2003)
【非特許文献3】Moore et al, J. Acquir, Immun. Def. Syn. 7(4): 332 (1994)
【非特許文献4】Burton et al, Nature Immun. 5: 233-236 (2004)
【非特許文献5】Wei et al, Nature 422 (6929): 307-312 (2003)
【非特許文献6】Richman et al, Proc. Natl, Acad. Sci. USA 100(7): 4144-4149 (2003)
【非特許文献7】Zwick et al, J. Virol. 77(10): 5863-5876 (2003)
【非特許文献8】Armbruster et al, J. Antimicrob. Chemother. 54: 915-920 (2004)
【非特許文献9】Stiegler and Katinger, J. Antimicrob. Chemother. 51: 757-759 (2003)
【非特許文献10】Zwick et al, Journal of Virology 79: 1252-1261 (2005)
【非特許文献11】Purtscher et al, AIDS 10: 587 (1996)
【非特許文献12】Scanlan et al, Adv. Exper. Med. Biol. 535: 205-218 (2003)
【非特許文献13】Ofek et al, J. Virol. 198: 10724 (2004)
【非特許文献14】Kunert et al, AIDS Res. Hum. Retroviruses 20(7): 755-762 (2004)
【非特許文献15】Zwick et al, J. Virol. 78(6): 3155-3161 (2004)
【非特許文献16】Cardoso et al, Immunity 22: 163-172 (2005)
【非特許文献17】Pinto et al, AIDS Res. Hum. Retrov, 10: 823-828 (1994)
【非特許文献18】Douvas et al, AIDS Res. Hum. Retrov. 10: 253-262 (1994)
【非特許文献19】Douvas et al, AIDS Res. Hum. Retrov, 12: 1509-1517 (1996)
【非特許文献20】Barthel et al, Semin. Arthr. Rheum. 23: 1-7 (1993)
【非特許文献21】Ziegler et al, Clin. Immunol. Immunopath. 41: 305-313 (1986)
【発明の概要】
【0006】
本発明は、MPER特異的B細胞の調節におけるB細胞寛容の役割を直接調べ、関与する機序/作用を受けるB細胞亜集団を決定するために設計した研究から得られた。本明細書に記載するノックインマウスモデルを用いて、自己反応性および/または中和活性を付与することができるMPER特異的B細胞レパートリー内の重鎖および軽鎖のスペクトルに関する遺伝情報を得ることができる。開示したマウスモデルは、寛容が関与するか否かに関係なく、MPER bnAbを誘発する際のリード候補免疫原の試験を促進するためにも使用できる。
【0007】
発明の概要
一般に本発明は、候補免疫原を試験するのに適した動物モデルに関する。より詳細には、本発明はMPER HIV−1の広域中和抗体の重鎖および軽鎖を発現するノックインマウスに関する。本発明はさらに、それらのマウスを用いて候補免疫原をスクリーニングする方法に関する。
【0008】
本発明の目的および利点は以下の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、広域中和抗体(broadly neutralizing antibody)(bnAb)ノックイン(ki)マウスを作成するための全般的方法を示す。
【図2】図2は、2F5 VをマウスのIgMおよびIgGの定常ドメインと会合した状態で発現させることができることの証明を示す。
【図3】図3は、2F5 V+/−マウスの骨髄B細胞の約80%は2F5重鎖が最初にB細胞表面の軽鎖と対合/発現するB細胞発生初期(すなわち、プレB細胞から未熟B細胞への移行期)に欠失することを証明する代表的な染色プロフィールを示す。
【図4】図4は、2F5 V+/−マウスにおいて未熟なアネルギー(機能的に不活性な非Ab分泌性)様表現型をもつB細胞が末梢に蓄積することを示す代表的な染色である。
【図5】図5は、2F5 Vノックインマウスの2F5重鎖発現レパートリー内にある自己反応性+MPERエピトープ反応性B細胞の亜集団の証明を示す。
【図6】図6Aおよび6Bは、2F5ノックインマウスにおいて負の選択圧の不存在下でMPERリード候補免疫原を試験することを目的とした2つの戦略を示す。
【図7A】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7B】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7C】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7D】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7E】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7F】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7G】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7H】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7I】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7J】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7K】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7L】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7M】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7N】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7O】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7P】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7Q】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7R】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7S】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7T】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7U】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7V】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7W】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7X】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図7Y】図7は、2F5 Vノックインマウスにおける中枢および末梢機序による、2F5重鎖発現B細胞のストリンジェント対抗選択を示す。
【図8】図8A〜8D。キメラ組換え2F5抗体(m2F5)は元のヒト2F5 mAb(h2F5)とインビトロで機能的に同等である。(図8Aおよび8B)表面プラズモン共鳴(SPR)分析によるm2F5とh2F5の機能の比較であり、抗原結合特異性および脂質反応性が組換えm2F5抗体において保存されていることを証明する。(図8A)m2F5は、2F5結合エピトープ(ELDKWAS)を含むHIV−1 gp41 MPERペプチドgp41652−671(上)およびgp41656−683(下)に結合した。MPERペプチドへのm2F5の結合(実線)は、h2F5のもの(破線)に匹敵していた。CD4i gp120 mAb 17b(点線)を陰性対照として用いた。(図8B)m2F5抗体において脂質反応性が保持され、ホスファチジルセリン(破線)またはカルジオリピン(実線)のいずれかを含むリポソームへの結合が、h2F5およびm2F5両方のmAbについてみられた。(図8C)m2F5およびh2F5抗体は比較可能な結合力および特異性でマウス核抗原と反応する。(図8D)m2F5およびh2F5抗体はヒト核抗原に対する比較可能な反応性をもつ。さらに、m2F5およびh2F5をTZM−bl HIV Env擬ウイルス中和アッセイにおいて試験し、両抗体ともHlV−1株B.BG1168、B.SF162、B.QH0692、BJRFLおよびC.92UG0237を中和したが、C.TV−1を中和しなかった。m2F5およびh2F5のIC50中和力価は、それぞれ0.35から11.9μg/mlまで、および0.06から1.8μg/mlまでの範囲であった(表1)。
【図9】図9は、2F5 V遺伝子の標的化置換を示す。2F5 V標的化構築体、内在性Ig HC遺伝子座、相同組換え後の標的化対立遺伝子、およびCre−仲介neoカセット欠失後の標的化対立遺伝子のゲノム構造。2F5 V発現カセットは、J558 H10ファミリーVプロモーター(p)、H10スプリットリーダー配列(L)、および前転位2F5 V(D)J Vセグメント(2F5 V)からなる。エキソンを閉じたボックスとして示し、Ighイントロンエンハンサー(E)を円により示し、2F5 VH、neoおよびCAG−DTAカセットを影付きボックスにより示し、loxP部位を三角形として表わす。図示した制限フラグメントサイズは野生型および標的化した遺伝子座について示される。JH−Eμ領域の5’および3’側領域それぞれにおける相同組換え事象を証明するために用いた5’および3’プローブを黒い棒として示す。下記のものを同定するためのPCRプライマーも示す:i)相同組換えクローン(黒い矢印)、ii)neoマーカーの除去(灰色の矢印)、およびiii)生殖細胞系列伝達されたヘテロ接合(2F5 V+/−)およびホモ接合(2F5 V+/+)マウス(彩色した矢印)。B=BamHI、RV=EcoRV、N=NdeI。
【図10】図10Aおよび10B。C57BL/6(WT)、2F5 V+/−、および2F5 V+/+マウスの骨髄におけるB細胞発生のフローサイトメトリー分析。図10A:代表的なドットプロットヒストグラム;数字は全骨髄B細胞集団(singlet,live,lin細胞としてゲート;lin=Ter−119、Gr−1、CD11b、CD4、CD8)内の細胞のパーセントを示す。骨髄細胞は9〜12週令の雌マウスから単離された。図10B:骨髄B細胞亜集団頻度の統計分析;各々の黒、中空および灰色の円は、それぞれ個々のWT、2F5 V+/−、および2F5 V+/+マウスを表わす;水平の線は各グループの平均を表わす。有意の数値は両側(two-tailed)スチューデント検定により決定された:,p≦0.05;**,p≦0.001;***,p≦0.0001;NS,有意でない。集団を下記のように定義した:プロ/大型プレB(画分A〜C;B220loCD43)、小型プレB(画分D;B220loCD43)、未熟B(B220int/loIgMloIgD)、移行期、T1+T2(B220intIgMint/hiIgDlo)、および骨髄成熟(B220hiIgMintIgDhi)。
【図11】図11Aおよび11B。2F5 V+/− B細胞の表面に発現したWTおよび2F5 VトランスジェニックHCのフローサイトメトリー分析。(図11A)WT IgH/WT IgHおよび2F5 V IgH/WT IgH Flマウスからの脾臓B細胞集団の代表的な輪郭コンターヒストグラム(contour histogram);数字はsinglet,live,全B(B220CD19)細胞ゲート内のIgMa+およびIgMb+細胞(それぞれ、内在性および2F5 V導入遺伝子保有HCをもつ)のパーセントを示す。(図11B)それぞれ5および6匹のマウス/Flグループについて示したIgM骨髄および脾臓画分内のIgM陽性細胞の頻度。
【図12】図12A〜12C。C57BL/6(WT)、2F5 V+/−、および2F5 V+/+マウスの脾臓B細胞発生のフローサイトメトリー分析。Allman分類スキーム(Allman et al, J. Immunol. 167: 6834-6840 (2001))を用いた代表的なドットプロットヒストグラム;上パネルの数字はCD93(AA4.1)移行期またはCD93(成熟+境界帯域,MZ)B細胞であったB細胞(B220)の総数を示し(図12A)、B220CD19画分内の移行期T1−T3集団を計数できるように(図12B)、またはさらにB220CD19画分内のMZおよび成熟B細胞亜集団を計数できるように(図12C)ゲートした。PE標識抗IgMによるWT、2F5 V+/−、および2F5 V+/+成熟B細胞亜集団の染色についての平均蛍光強度は、それぞれ756、506、および342であった。
【図13】図13Aおよび13B。WT、2F5 V+/−、および2F5 V+/+マウスにおける、全または自己抗原特異的な血清Igレベル、およびgp41 MPER特異的血清IgまたはB細胞反応性。(図13A)全IgMおよびIgG血清抗体レベル。各ドットは個々のマウスを表わす;水平の線は平均血清抗体レベルを表わす。有意数値は両側スチューデント検定により決定された:,p≦0.05;**,p≦0.001;***,p≦0.0001;NS,有意でない。(図13B)プレートに結合したgp41 MPER 2F5公称エピトープペプチド、抗核抗原、およびカルジオリピンに対する全血清Ig反応性。gp41 MPER、ANA、およびカルジオリピン反応性アッセイには、MRL/pr血清を陽性対照として用いた。各ドットは個々のマウスを表わす;水平の線は平均血清抗体レベルを表わす。
【図14】図14A〜14C。キメラ2F5重鎖と任意の内在性マウスLCとの対合によって、2F5 LCと対合したものと同等に良好に自己抗原に結合する機能性抗体を作成できる。(図14Aおよび14B)組換え抗体MK−1、MK−4、MK−5、およびMK−6(キメラ2F5重鎖と内在性マウスLCの対合により作成)はMPERに対する反応性を欠如するが、3/4はm2F5(m2F5HC+m2F5LC組換え抗体)に匹敵するカルジオリピンとの反応性を保持する。(図14A)組換え抗体を上清から精製し、標準ELISAにより100μg/mlで、カルジオリピンまたは先に記載された2F5の公称エピトープペプチドであるgp41652−671MPER(Haynes et al, Science 308: 1906-1908 (2005), Alam et al, J. Immunool 178: 4424-4435 (2007))の結合についてアッセイした。カルジオリピンおよびgp41 MPER両方の結合について、m2F5を陽性対照として用いた。(図14B)MK−1、MK−4、MK−5、およびMK−6のカルジオリピン反応性のELISA分析(図14Aの場合と同様に実施)を、全濃度範囲にわたってグラフで示したもの。P3=P3X63/Ag8陰性対照パラプロテイン。(図14C)MK−1、MK−4、MK−5、およびMK−6におけるカルジオリピン(CL)反応性のSPR結合分析。SPR分析、ならびにCL、ホスファチジルコリン(PC)およびPC:CL(3:1)リポソームの調製は、先の記載に従って実施された(Alam et al, J. Immunol. 178: 4424-4435 (2007))。これらの結果は、組換え抗体MK−1、MK−4、MK−5、およびMK−6の脂質結合反応性が対照m2F5HC+m2F5LC抗体のものに匹敵することを示す。m2F5陽性対照およびMK1〜6 mAbは共にカルジオリピンに結合したが、ホスファチジルコリン(PC)リポソームには結合しなかった。すべての抗体を50μg/mL、30μL/分で注入した。
【図15】図15A〜15C。Igh遺伝子座へのマウス2F5 Vの標的化挿入の確認。(図15A)親(列1)および標的化2F5 Vを含む4つの組換えES細胞クローン(列2〜5)からのゲノムDNAの代表的なサザンブロット分析。変異体(mt)および野生型(wt)バンドを3種類の方法で解明した:NdeI消化したDNAをJ−Eμ領域の5’側PCR生成物で探査(5’プローブ;上パネル)、およびBam HI消化したDNAを3’側PCR生成物で探査(3’プローブ;中パネル)、またはneo特異的プローブで探査(下パネル)。(図15B)neo欠失2F5 V+/−ES細胞に由来する、生殖細胞系列伝達された2F5 V挿入配列を宿した子孫の代表的なPCR分析。生殖細胞系列伝達されたFlヘテロ接合交配子孫の尾のDNAから増幅したゲル分画PCR生成物を示し、WT、ヘテロ接合(2F5 V+/−)およびホモ接合(2F5 V+/+)マウスを表わす;予想したWT対立遺伝子特異的および標的化遺伝子特異的アンプリコンは、それぞれ約0.4kbおよび0.5kbである。(図15C)C57BL/6(WT)および2F5 V B細胞におけるIgMおよびIgG転写体のPCR増幅。共通プライマー(V J558)を用いるとIgM(列3、4)およびIgG1(列9、10)再編成配列を表わすPCR生成物はC57BL/6および2F5 V+/−両方のcDNAに検出され、一方、2F5 V特異的プライマーを用いるとIgM(列5、6)およびIgG1(列11、12)再編成配列は2F5 V+/− cDNAのみに検出可能であった。
【図16】図16は、2F5 Vおよび3H9ホモ接合ノックインマウスの骨髄におけるB細胞発生の比較を示す。全BM B細胞集団(singlet,live,lin細胞としてゲート;lin=Ter−119、Gr−1、CD11b、CD4、CD8)内のB細胞画分におけるCD93、CD23およびCD21の細胞表面発現の代表的なフローサイトメトリーヒストグラムを示す。BM細胞は9〜12週令の雌マウスから単離され、図10について記載したように染色および分析された。
【図17】図17は、C57BL/6(WT)、2F5 V+/−、および2F5 V+/+マウスの全(B220)B細胞画分内の脾臓B細胞亜集団頻度の統計分析を示す。B細胞亜集団を図12に示したAllman分類スキーム(Allman et al, J. Immunol. 167: 6834-6840 (2001))を用いて分画し、データを図10の場合と同じ方法でグラフ表示する。
【図18】図18Aおよび18B。4E10 V+/+マウスの骨髄における大画分の4E10 V発現B細胞が(2F5 V+/+マウスの2F5 V発現骨髄B細胞と同様に)B細胞発生の初期に(すなわち、プレB細胞から未熟B細胞への移行期;その時期に4E10重鎖がB細胞表面で最初に軽鎖と対合/発現する)削除される(deleted)ことを証明する代表的な染色プロフィール。図3について記載したようにBM細胞を単離し、フローサイトメトリー処理し、判定した。頻度が著しく低下したB細胞集団を赤色で強調する。
【図19】図19Aおよび19B。2F5 V+/+ノックインマウスの骨髄において2F5 V発現B細胞が正常な発生を行なうことを証明する代表的な染色プロフィール。図3について記載したようにBM細胞を単離し、フローサイトメトリー処理し、判定した。
【図20】図20A〜20C。抗アポトーシス生存因子bcl2のB細胞特異的発現は、インビボで2F5 V発現B細胞および血清IgをB細胞寛容からレスキューし、より高頻度のMPER+B細胞を生じる。2F5 V Eμ−bcl2 tgマウスは、Eμ−bcl2トランスジェニックマウスを2F5 Vマウスと交配することにより作成された。(図20A)Eμ−bcl2導入遺伝子が2F5 Vの脾臓および骨髄においてB細胞の生存および発生を助けることを証明する代表的な染色プロフィール。骨髄細胞(上パネル)および脾細胞(下パネル)を8〜12週令の雌マウスから単離し、全生存B細胞をB細胞特異的マーカーIgM、IgD、B220およびCD19の組合わせで染色した。(図20B)血清IgM、IgG3、IgG1およびIgG2bレベルの比較は、2F5 Vノックインマウスにおいて普通は抑制される血清IgMおよびIgG3が、2F5 V Eμ−bcl2 tgマウスにおいては選択的にレスキューされることを証明する(bcl2導入遺伝子が特定のIgMおよびIgG3を産生するB細胞集団をアネルギー、すなわち機能不活性化からレスキューすることをも示唆する)。8−12週令のB6(WT)、2F5 V+/−、または2F5 V+/+ Eμ−bcl2 tg雌マウスからの全血清免疫グロブリンレベルの分析は、標準的なLuminexアッセイを用いて測定された。(図20C)bcl2導入遺伝子発現によりMPER反応性をもつIgM脾臓B細胞の頻度増大が生じることを証明するハイブリドーマ分析。LPS活性化した2F5 V+/−または2F5 V+/+×bcl2 tg脾臓培養からハイブリドーマを作成し、ハイブリドーマ上清を限定希釈度で2回サブクローニングし、次いでELISAによりカルジオリピン(CL)またはMPER反応性についてスクリーニングした。示したデータはCLおよび/またはMPER(Sp62)特異的ウェル/全IgMウェルの頻度を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、MPER HIV−1広域中和抗体を発現するノックイン動物(たとえばマウス)モデル、およびそれを用いてリード候補免疫原をスクリーニングする方法に関する。本発明は、内在性免疫グロブリン遺伝子座において2種類の広域中和HIV−1 gp41膜近接外部領域(MPER)抗体(2F5および4E10)の重鎖および軽鎖を発現する一連のノックインマウス系列の構築から得られる(図1および後記の実施例を参照)。これらの系列のひとつである2F5 Vノックインマウス(2F5重鎖の部位特異的発現を伴う)の特性付けにより、2F5重鎖をB細胞によって適宜発現させることができる(図2)が、これらの2F5発現B細胞はB細胞発生の初期に重鎖が軽鎖と対合する段階で排除されるという決定的な所見が得られた(図3)。重要なことに、2F5 Vノックインマウスは、末梢にこの初期対抗選択段階を逃れるアネルギー様2F5発現B細胞の実質的亜集団をもち(図4)、また自己反応性かつMPER反応性である2F5発現抗体を分泌しうる小亜集団のB細胞をもつ(図5)。これに関して、これらのマウスは、残存する2F5発現B細胞をどのような方法でリード候補免疫原により誘発、調節または拡張して広域中和抗体(bnAb)を分泌させることができるかを直接に試験するための魅力的なモデルとなる。
【0011】
したがって、1態様において本発明は、そのゲノムがヒトHIV−1の広域中和抗体の重鎖および/または軽鎖の可変部をコードする核酸配列を含む標的化トランスジェニックマウスに関する。本発明によれば、この核酸配列を、核酸配列が発現してヒトHIV−1の広域中和抗体(たとえば、2F5および4E10)の重鎖および/または軽鎖の可変部を産生するように、作動可能な状態でプロモーターに結合してゲノム内に存在させることができる。有利には、この核酸配列は作動可能な状態で内在性エンハンサーエレメントに結合してゲノム内に存在する。
【0012】
好ましい態様において、ヒトHIV−1の広域中和抗体の重鎖可変部をコードする核酸配列は、作動可能な状態でJ558 H10ファミリーのVHプロモーター(Love et al, Mol. Immunol. 37: 29-39 (2000))に結合している。他の好ましい態様において、ヒトHIV−1の広域中和抗体の軽鎖可変部をコードする核酸配列は、作動可能な状態でVκOχ−1ファミリーのVκプロモーター(Sharpe et al, EMBO 10(8): 2139-2145 (1991))に結合している。
【0013】
本発明はさらに、前記の標的化トランスジェニックマウス、特にそれのゲノム中にヒトHIV−1の広域中和抗体の重鎖可変部をコードする核酸配列およびヒトHIV−1の広域中和抗体の軽鎖可変部をコードする核酸配列の両方を含むマウスから単離できる、キメラ型のHIV−1広域中和抗体に関する。本発明は、前記マウスの抗体産生B細胞を、たとえば常法により骨髄腫細胞と融合させることによって得られたハイブリドーマにも関する。本発明は、そのようなハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を含む。
【0014】
さらに他の態様において本発明は、HIV−1広域中和抗体の産生を誘導できる候補作用物質を同定する方法に関する。この方法は下記を含むことができる:i)前記マウスに、抗体を産生できる条件下または抗体を発現するようにB細胞を誘導できる条件下で被験化合物(たとえば、タンパク質またはペプチドを含む化合物)を投与し、ii)抗体を含有する試料または抗体を発現するB細胞を含有する試料をマウスから入手し、そしてiii)HIV−1膜近接外部領域(MPER)に特異的な抗体またはMPER特異的B細胞の存在または不存在について試料をアッセイする(たとえば、ELISA、ELISPOT、表面プラズモン共鳴、Luminexまたはサイトメトリーベースのアッセイ法)。その際、対照試料(たとえば、非処理マウス)と比較して試料中にMPER特異的な抗体またはB細胞が存在することは、その被験化合物が候補作用物質であることの指標となる。抗体を含有する試料または抗体を発現するB細胞を含有する試料は、血清試料または粘膜抽出物の試料(たとえば、唾液、便または膣洗浄液の試料)であってもよい。B細胞を含有する試料は、マウスの全身または粘膜の免疫組織から入手できる。たとえば、試料は骨髄、脾臓または末梢血リンパ球試料であってもよい。試料は腸リンパ節もしくはパイエル板の試料または雌性生殖管試料または肺試料であってもよい。本発明方法を用いて同定した候補作用物質をHIV−1中和活性について、たとえばTZM−blアッセイ(たとえば、Polonis et al, virol. 375(2) 315 (2008)を参照)を用いてアッセイすることができる。
【0015】
本発明はさらに、HIV−1広域中和抗体の産生を誘導できる作用物質を同定する方法であって、下記を含む方法に関する:i)前記マウスに、抗体を産生できる条件下または抗体を発現するようにB細胞を誘導できる条件下で被験化合物(たとえば、タンパク性化合物)を投与し、ii)抗体を含有する試料または抗体を発現するB細胞を含有する試料をマウスから入手し、そしてiii)対照試料(たとえば、非処理マウスからのもの)と比較してHIV−1中和活性について試料をアッセイする。上記の段階(iii)は、たとえばTZM−blアッセイ法を用いて行なうことができる。
【0016】
後記の実施例に提示するデータは、ヘテロ接合型およびホモ接合型両方の2F5 Vノックインマウスが特性付けされたことを証明する。両方とも骨髄B細胞の発生においてプレB細胞から未熟B細胞への移行期に著しい遮断を示し、これはこの発生ブロックが導入遺伝子の発現の欠陥によるものではあり得ず、むしろ2F5 HCと自己抗原の遭遇を伴う能動プロセスを伴うにちがいないということを指摘する。2F5 Vを含む重鎖がインビボで多数の内在性マウス軽鎖パートナーと対合できることは実施例2で証明され(表6のハイブリドーマ分析を参照)、これは発生ブロックがマウス軽鎖との不適正会合によるものであるということに強く反論する。より低い表面密度をもつ成熟した脾臓B細胞の総数が減少するにもかかわらず、これらのマウスには正常比率の成熟B細胞があり、これは小割合の細胞が骨髄における初期削除(initial deletion)を逃れることを指摘する。重要なことに、これは、発生ブロックが著しいけれども完全ではなく、残存細胞は多様な方策でレスキューされる可能性をもつことを示す。ヘテロ接合2F5 Vノックインマウスには実質的なレベルの総血清Igがあるが、これらはMPERエピトープまたはヒト/ネズミ自己抗原に対する反応性を欠如する。これらのマウスが正常レベルのIgを発現できることは、この反応性の欠如は導入遺伝子の不適正な発現によるものではなく、むしろこの反応性が多様な寛容機序により排除されたことによるものにちがいないということを示す。インビトロで、2F5 V挿入配列はキメラ型ヒト/マウス抗体を産生することができ、これはMPERエピトープ+ヒト/ネズミ自己抗原に対する反応性およびHIV−1を中和する能力が比較可能なことを含めて、元のヒト2F5抗体に機能的に類似する。これは、これらのマウスにおける血清Ig反応性の欠如も2F5 HCのキメラ性によるものではないことを証明する。
【0017】
さらに、他のノックインモデルを遺伝子操作して前記の対抗選択圧を除くことが容易にでき(図6)、それらは、どのリード免疫原候補/免疫化戦略がB細胞寛容作用に関係なく体細胞過変異または他のB細胞多様化プロセスによって最も良く前駆bnAb B細胞レパートリーを形成できるかを解明するための有力なインビボモデルともなる。さらに、HIV−1 bnAb特異性を生じさせるために記載したノックイン法は、いかなるbnAb特異性の発現のためにも同様に使用でき、したがって候補ワクチン免疫原をそれらが広域中和抗体を誘導する能力についていかなるウイルス感染作用物質に対しても試験することが可能になる。最後に、このノックイン法を用いて、他のウイルス感染作用物質モデルにおけるB細胞免疫調節の潜在的影響を調べることができる;HIV−1との類似性をもつウイルス感染に特に関連するもの、たとえば、分子擬態またはV B細胞レパートリーを偏らせる強い選択圧、たとえばインフルエンザおよびC型肝炎に対するbnAbについてみられるV1−69バイアスの潜在的シグネチャーを示すもの。
【0018】
限定ではない以下の実施例によって、本発明の特定の観点をより詳細に記載することができる。(米国仮特許出願No. 61/166,625, 2009年4月3日出願、および米国仮特許出願No. 61/166,648, 2009年4月3日出願も参照)。
【実施例】
【0019】
実施例1
図1は、広域中和抗体(bnAb)ノックイン(ki)マウスを作成するための全般的方法を示す。bnAb 2F5/4E10 VおよびV kiマウスは、内在性マウスJおよびJκクラスター(赤色)を元の変異型2F5/4E10 VDJまたは2F5/4E10 VκJκ遺伝子再編成配列(青色)で部位特異的に置換することにより作成された。2F5/4E10 Vカセットは、J558 H10ファミリーVプロモーター(p)、H10スプリットリーダー配列(L)、および前再編成した2F5/4E10 V(D)J Vセグメントからなる。2F5/4E10 Vカセットは、VκOχ1プロモーター(p)、VκOχ1スプリットリーダー配列(L)、および再編成した2F5/4E10 VκJκコーディングセグメントからなる。
【0020】
図2は、2F5 VをマウスIgMおよびIgG定常ドメインと会合した状態で発現させることができることを示す。共通V1 IgM(列3、4)およびIgG1再編成配列(列9、10)を表わすPCR生成物が、V J558プライマーを用いて、C57BL/6および2F5 Vki両方のcDNAに検出された。これに対し、IgM(列5、6)またはIgGl(列11、12)のいずれかについて予想した2F5 PCR生成物は、2F5 Vki+/− cDNAにのみ検出された。これらのデータは、2F5 Vがキメラ動物においてIgMおよびIgG1として転写可能であることを示し、これはマウスにおけるヒト2F5 VDJ再編成配列の発現およびクラス切換えが適切であること、またマウス軽鎖との対合が可能であることの指標となる。
【0021】
図3は、2F5 V+/−マウスの骨髄B細胞の約80%が、2F5重鎖がB細胞表面の軽鎖と対合/発現するB細胞発生初期(すなわち、プレB細胞から未熟B細胞への移行期)に削除されることを証明する代表的な染色プロフィールを示す。BM細胞を8週の野生型または2F5 V+/−から単離し、フローサイトメトリー処理した。全B細胞集団(singlet,live,lineage、CD19およびB220ゲートした細胞)からのB細胞亜集団を、Kalledサブフラクショネーションスキーム(左パネル;より成熟したB細胞BM画分を識別するため)またはHardyフラクショネーションスキーム(右パネル;初期B細胞亜集団を識別するため)により決定した。
【0022】
図4は、2F5 V+/−マウスにおいてアネルギー(機能的に不活性な非Ab分泌性)様表現型をもつ未熟なB細胞が末梢に蓄積することを示す。全脾臓B細胞集団(singlet,live,lineage、CD19ゲートした細胞)からのB細胞亜集団を、WTマウス(左パネル)と比較して2F5 V+/−マウスにおいてより低いレベルの全B220発現をもつことに基づいて“未熟様”と定義した。“アネルギー様”表現型は、2F5 V+/−マウスにおいて一般的なB細胞集団(青色)のいずれとも異なるIgMlo集団(赤色)のB細胞が蓄積することに基づく;これらはKalledサブフラクショネーションスキームを用いて決定された。この表現型は、これらのマウスにおいてMPERエピトープまたはANAに対する血清抗体反応性が最小レベルであることと一致する(データを示していない)。
【0023】
図5は、2F5 Vノックインマウスにおける2F5重鎖発現レパートリー内の自己反応性+MPERエピトープ反応性B細胞の亜集団の証明を示す。2F5 VノックインマウスにおけるナイーブレパートリーのB細胞をB細胞ハイブリドーマの分析により決定した;これは、NSOネズミ骨髄腫細胞および免疫化した2F5 V+/a(すなわち、2F5 V IgH × WT IgH)または2F5 V+/+マウスから採取した脾細胞を用いて実施した融合により作成された。2F5 V+/aマウスにおける2F5重鎖発現クローンの数はIgM特異的ELISAアッセイを用いるハイブリドーマのスクリーニングにより推定され、一方、2F5 V+/+マウスにおけるものは総IgM特異的ELISAアッセイを用いて推定された。2F5 V+/−レパートリーと比較して2F5 V+/+レパートリー内ではより大きな画分のクローンがカルジオリピンおよびMPER反応性であることに注目されたい;これは、2F5 V+/+マウスからの末梢B細胞が内在性重鎖対立遺伝子の利用により自己反応性を排除する選択肢をもたないという事実によるものと思われる。
【0024】
2F5ノックインマウスにおいて負の選択圧の無い状態でMPERリード候補免疫原を試験することを目的とした2つの戦略を図6に示す。
実施例2
実験の詳細
m2F5の発現/特性付けおよび2F5 Vマウスの作成。m2F5の作成に用いた方法および試薬、ならびにそれの機能特性を解明するために用いた結合、免疫蛍光および中和アッセイは、2F5 VをマウスIgh遺伝子座に部位特異的に標的化するために用いた試薬および方法と共に実施例3に記載される。
【0025】
マウスおよびフローサイトメトリー。雌C57BL/6およびC57BL/6 Igh同系交配マウス系統(8〜12週令)をCharles River Laboratoriesから購入した。Dr. Martin Weigertの研究室において最初に作成されたBALB/cバックグラウンドの3H9マウスを、Dr. Robert Eisenbergの研究室(University of Pennsylvania, Philadelphia, PA)で14世代以上、C57BL/6バックグラウンドに戻し交配した。
【0026】
フローサイトメトリー分析のために、BM細胞および脾細胞を9〜12週令の雌マウスから単離した。全BM B細胞(singlet,live,CD19,linリンパ球としてゲート;lin=Ter−l19、Gr−1、CD11b、CD4、CD8)を、APC抗B220およびPE抗CD43抗体またはFITC抗IgDおよびPE抗IgM抗体で染色した;singlet,live,リンパ球ゲートした脾細胞は、FITC抗B220、PE抗IgM、APC抗CD93、およびPE−Cy7抗CD23抗体の組合わせを用いて染色された。データはFACS Divaソフトウェアを備えたBD LSRlIフローサイトメーターを用いるフローサイトメトリーにより取得され、FloJoソフトウェアを用いて分析された。
【0027】
アロタイプスクリーニング。2F5 V IgH/WT IgHおよびWT IgH/WT IgH Flマウスは、C57BL/6 Ighコンジェニックマウスをそれぞれ2F5 V+/−マウスおよびWT同腹仔対照と交配することにより作成された。各グループからの8〜16週令の雌Flマウスに由来するBM細胞および脾細胞をPE−IgM抗体およびFITC−IgM抗体で表面染色して、標的化IgH対立遺伝子のアロタイプ(IgM)を保有する標的化2F5 V μHCを、IgMアロタイプを保有する内在性μHCから識別した。
【0028】
ELISA分析。血清試料を、ナイーブ雌WT、2F5 V+/−および2F5 V+/+、ならびに利用できる場合にはMRL/lprマウスから採集した。総IgGおよびIgMの血清濃度を、それぞれ定量マウスIgGおよびIgM ELISAキット(Bethyl)により測定した。総(IgM+IgG特異的)Igのカルジオリピンおよびgp41 MPER 2F5反応性のELISA測定値を、先の記載(Haynes et al, Science 308: 19064908 (2005), Alam et al, J. Immunol. 178: 4424-4435 (2007))に従って光学濃度読取りにより測定し、核自己抗原に対する総Igの血清反応性をマウス抗ANA定量ELISAキット(Alpha Diagnostics)により測定した。カルジオリピンおよびANAのアッセイは12〜32週からの血清を用いて行なわれた;他のすべてのアッセイは8〜16週令のマウスからの血清を用いて行なわれた。
【0029】
結果
ヒト2F5 VDJ再編成配列はマウスCとの機能的キメラ抗体を形成する。マウス定常部が元のヒトIgGl 2F5 mAb(本明細書中でh2F5と呼ぶ)の会合および結合特性に作用を及ぼすかどうかを判定するために、まずインビトロ試験法を作成した。これを実施するために、2F5 V/マウスCγlおよび2F5 V/マウスCκ発現構築体を作成し、293T細胞内へ同時形質導入した。2F5キメラ型マウス/ヒト組換え抗体(m2F5)を、それが脂質ならびにマウスおよびヒト細胞抗原を結合する能力について評価した。実際に、m2F5は両方のgp41および脂質をヒトIgGl 2F5 mAb(h2F5;図8Aおよび8B)と同等に結合した。さらに、m2F5はh2F5と同様にヒト上皮およびマウス線維芽細胞の核抗原と反応し(図8Cおよび8D)、HIV−1を中和した(図8記号一覧および表1)。
【0030】
表1.キメラ組換え2F5抗体(m2F5)およびヒト2F5 mAb(h2F5)のHIV−1中和活性プロフィール
【0031】
【表1】

【0032】
TZM−bl HIV−1エンベロープ擬ウイルス感染性アッセイにおいて決定した50%中和力価(IC50

キメラ2F5 HCがインビトロでマウスκ軽鎖(LC)と対合する能力も、2F5 V/マウスCγl発現構築体とC57BL/6脾臓B細胞から5’RACE PCRにより得られたマウスκLCとの同時形質導入により評価した。これを実施するために、脾臓C57BL/6LCレパートリーにしばしば用いられる2つのVκファミリー(Vκ4およびVκ9)を表わす4−52、4−60、4−70および9−96 V遺伝子を含むように4種類のマウスκLCを任意に選択した。それぞれの場合、2F5 HCの同時形質導入により、分泌型機能性mAbが得られた(表2)。重要なことに、これらの形質導入により作成された4種類のキメラ構築体のうち3種類が、表面プラズモン共鳴およびELISAにより測定してカルジオリピン多反応性を示した(図14)。
【0033】
表2.キメラ2F5 HCとランダムマウス軽鎖を同時形質導入した293T細胞から精製した組換えmAbの特異性および収率
【0034】
【表2】

【0035】
マウスIgG1に融合したヒト2F5 V(D)再編成配列およびネズミκ鎖定常部に融合したヒト2F5 V(J)再編成配列を含む構築体の同時形質導入により作成した陽性対照
マウスκLC定常部に融合した2F5 V−J再編成配列を含むLC

2F5 Vノックインマウスの作成。2F5 mAb HCが免疫寛容により調節されるのに十分なほど自己反応性であるかどうかを判定するために、元の体細胞性変異2F5 VDJ再編成配列(Muster et al, J. Virol. 68: 4031 -4034 (1994), Muster et a!, J. Virol. 67: 6642-6647 (1993))をマウスIgh遺伝子座にノックインしてJ 1−4領域を置き換えた(図9)。予想したIgh遺伝子座における相同組換え事象を確認するために、4種類の独立したESクローンを推定挿入配列について評価し(図15A)、生殖細胞系列伝達された2F5 VDJ再編成配列を宿したヘテロ接合およびホモ接合子孫(2F5 Vノックインマウス)をPCRにより同定した(図15B)。2F5 Vノックインマウスはインビボで内在性Cγl遺伝子座に対するCSRを支持し(図15C)、したがって2F5 VDJがB細胞寛容機序を誘導できるかどうかの直接測定に有効なモデルを提供する。
【0036】
2F5 Vを発現する大部分のB細胞はプレB細胞から未熟B細胞への段階でBMにおいて削除される。Igh対立遺伝子の一方または両方における標的化2F5 VDJ挿入がB細胞発生に及ぼす作用を調べるために、ヘテロ接合(2F5 V+/−)およびホモ接合(2F5 V+/+)ノックインマウスのBMにおけるB細胞個体発生とC57BL/6対照のものとの比較を行なった。2F5 V+/−および2F5 V+/+マウスからの総BM B細胞画分を、プロB/大型プレB(B220loCD43)、小型プレB(B220loCD43)、および未熟/成熟B(B220hiCD43)画分に分画することにより(Hardy et al, J, Exp. Med. 173: 1213-1225 (1991))、表面免疫グロブリン(sIg)B細胞亜集団(B220hiCD43)が頻度(2F5 V+/−および2F5 V+/+の両方のマウスについて約4倍;図10)および絶対数(2F5 V+/−および2F5 V+/+の両方のマウスについて約10倍;表3)の両方において著しく低下したことが証明された。未熟、移行期、および成熟B細胞集団を同定するために、BM B細胞をIgMおよびIgDに特異的な抗体によっても標識した。各集団の頻度および絶対数が2F5 Vマウスにおいて同様に低下し、最大低下は移行期B細胞集団にみられた(2F5 V+/−および2F5 V+/+マウスにおいて、それぞれ約7または約20倍低下した頻度、および約15または約60倍減少した数)。これらの結果は、2F5 Vマウスが主にプレBから未熟B細胞への移行期にB細胞発生の著しい遮断を示すことを証明した;これは、多くの内在性LCと対合した2F5 Ig HCを発現する未熟B細胞の削除により寛容が誘導されるのと一致する。未熟B細胞期におけるこの発生遮断は、自己反応性抗DNA 3H9ノックインマウスについて以前に報告されたものと同様である(Chen et al. Nature 373: 252-255 (1995), Sekiguchi et al, J. Immunol. 176: 6879- 6887 (2006))、および図16、表4)。
【0037】
表3.2F5 Vノックインマウスおよび野生型同腹仔対照におけるBM B細胞画分の細胞数
【0038】
【表3】

【0039】
表4.2F5 Vおよび3H9ホモ接合ノックインマウスにおけるBM B細胞亜集団数の比較;Hardy画分
【0040】
【表4】

【0041】
数値は絶対細胞数である(×10±SD)

2F5 V+/−ノックイン脾臓B細胞は内在性重鎖を優先的に発現する。ヘテロ接合体2F5 Vマウスにおいて2F5 Ig HCを発現するB細胞がBM削除を逃れるとすれば、それらは3H9−76Rマウス(Chen et al, Nature 373: 252-255 (1995))の場合と同様に、内在性Igh再編成配列を発現するB細胞が優先的に対抗選択されるはずであるという疑問があった。したがって、2F5 V標的化(IgM)対立遺伝子と比較した内在性(IgM)対立遺伝子の表面発現の実験を、2F5 V+/−IgM/IgM F1(F1)マウスにおいて行なった。実際に、2F5 V+/− F1マウスからの大部分のIgM脾細胞は表面IgMを発現し、これは内在性HCについての強い選択を指摘した(図11A)。この所見はBM中のIgM B細胞と対照的である;その場合は内在性対立遺伝子の対立遺伝子排除が大幅に維持されている(図11B)。総IgM B細胞画分内のIgMおよびIgMの発現の相対量により測定して、2F5 V+/− F1マウスにおける内在性μHC発現の頻度は脾臓において約85%、BMにおいて約40%と推定された(図11B)。脾臓2F5 V+/− F1細胞における内在性HCのこの優先的発現は、染色体内組換え、続く代替対立遺伝子の再編成/発現、により、2F5 μHCを発現する末梢B細胞集団がそれらの2F5 V導入遺伝子に対抗して選択されるかまたはそれらを排除することを示唆する(Chen et al, J. Immunol. 152: 1970-1982 (1994));ただし、これらの細胞のうち若干がCSRを受ける可能性があることを正式に除外することはできない。2F5 V+/− F1において2F5 μHCを発現する脾臓B細胞がそれらのB細胞受容体(B cell receptor)(BCR;図11A)を下方調節した可能性もあり、すなわち受容体エンゲージメントによってアネルギー性になる細胞にみられたIgMレベルがより低いことと一致する可能性がある(Goodnow et al, Nature 352: 532-536 (1991), Goodnow et al, Nature 334: 676-682 (1988))。
【0042】
2F5 Vノックインマウスは、低い表面Ig密度をもつ成熟脾臓B細胞集団の数が著しく減少している。2F5 Ig HC BM B細胞に対抗する選択は、末梢B細胞数を減少させるはずである。実際に、同腹仔対照と比較して、2F5 V+/−および2F5 V+/+マウスにおける脾臓B細胞(B220 CD19 lin,live−ゲート)の数は、それぞれ72%および86%減少した(表5)。この残遺脾臓B細胞集団内の移行期、MZ、および成熟B細胞亜集団頻度が変化するかどうかを判定するために、2F5 V B220 B細胞を、CD23、CD93、およびIgMに対して特異的な抗体で染色した(Allman et al, J. Immunol. 167: 6834-6840 (2001))。興味深いことに、この残存B細胞集団内で移行期IgMlo(T3)B細胞の頻度はほとんど変化しなかったが、移行期IgMhi(T1およびT2)亜集団の頻度は2F5 V+/−および2F5 V+/+両方のマウスにおいて、正常対照と比較して著しく低下した(図12Aおよび図17)。さらに、残存する総2F5 V+/+脾臓B細胞集団内に、正常頻度のMZ B細胞および濾胞成熟(B220、CD93、CD93、IgM)B細胞がみられたが、同腹仔対照と比較して、後者はより低い表面IgM密度を示した。T1/T2 B細胞頻度の低下および比較的正常な頻度の成熟B細胞亜集団(ただし、膜Igレベルの低下を伴う)というこのパターンは、3H9ノックインマウスについて以前に報告されたものともきわめて類似する(Chen et al, Nature 373: 252-255 (1995), Li et al, J. Exp. Med. 195: 181-188 (2002), Sekiguchi et al, J. Immunol. 176: 6879-6887 (2006))。移行期および成熟両方のB細胞にみられた低い表面IgM密度は、2F5 V+/− F1マウスからのIgMb+脾臓B細胞が発現する低い膜IgMレベルも反映する(図11A)。
【0043】
表5.2F5 Vおよび3H9ホモ接合ノックインマウスにおけるBM B細胞亜集団数の比較;IgD対IgM染色
【0044】
【表5】

【0045】
数値は絶対細胞数である(×10±SD)

2F5 Vノックインマウスは、実質的レベルの血清IgGをもつにもかかわらず、カルジオリピンおよび抗核自己抗原に対する血清反応性を欠如する。2F5 V+/−および2F5 V+/+マウスは正常対照と比較してそれぞれ正常ないし増大した血清IgGレベルを示したが、2F5 V+/+マウスのみは有意に低いレベルの血清IgMを発現した(図13A)。2F5 Vノックインマウスにおける循環血清Igが実質的レベルであるにもかかわらず、ヘテロ接合およびホモ接合ノックインマウスからの血清はカルジオリピンまたは核自己抗原を結合しなかった(図13B)。この反応性欠如は、2F5 VノックインマウスにおけるB細胞発生の自己抗原特異的遮断および自己反応性B細胞集団の喪失と一致する。
【0046】
まとめると、安全かつ有効なHIV−1ワクチンの開発は、多様なHIV−1株を中和できる抗体を誘導するHIV−1免疫原を設計できないことによって妨げられてきた。HIV−1 Envは希有な広域中和ヒト抗体が結合する保存された領域をもつが、免疫原上で、または自然感染に関して、これらの保存された領域は広域中和抗体を稀に誘導するにすぎない(Burton et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 14943-14948 (2005), Haynes and Montefiori, Expert Rev. Vaccines 5: 579-595 (2006), Simek et at, J. Virol. 83: 7337- 7348 (2009))。さらに、広域中和抗体がHIV−1により誘導される稀な場合ですら、それらは感染の数ヵ月後に産生されるにすぎない(S hen et al, J. Virol. 83: 3617-3625 (2009))。
【0047】
2F5 Vノックインマウスが未熟B細胞期の2F5 V発現に際して著しいブロックを示すことは、2F5 Vが寛容制御を発動するのに十分なほど自己反応性であることを証明し、この特異性の発現がインビボで寛容機序により調節されているという認識を支持する。これに関して、多くの広域中和抗体、たとえばmAb 4E10および1B12が、長い疎水性CDR3を含めた2F5 HCのある特徴、および多反応性、すなわち先にヒトBMにおける削除についてマークされた抗体と関連づけられた特徴を共有する(Meffre et al, J. Clin. Invest. 108: 879-886 (2001))。
【0048】
2F5 V含有HCを発現するB細胞における著しい遮断は、キメラ2F5 V/マウスC HCと内在性マウスLCとの不完全および/または不十分な対合によって増強される可能性がある。しかし、本明細書に示すデータは、この可能性を支持しない。第1に、2F5 VノックインマウスにおいてプレB区画が比較的正常なこと(3H9ノックインマウスのものに匹敵する;表4〜7)は、2F5 μHCが代理LCと効果的に会合し、未熟B細胞期への分化の継続を支持できることと最も一致する;ただし、これは初期の部分的プレB細胞欠損が、プレB細胞期で停止した自己反応性未熟B細胞により補償されることによるものである可能性もある。しかし、いずれの可能性も、対合不適合よりむしろ、2F5 μHCがシグナル伝達コンピテントBCRおよび/またはプレBCR複合体を形成する能力と一致する。第2に、m2F5 HCと4種類の別個のマウスLCの同時形質導入により、自己抗原と反応する機能性組換え抗体が産生された(図14)。この所見は、LC対合のための能力および2F5自己反応性表現型の実質的な表現率(penetrance)を証明する。第3に、κLCと会合した2F5 μHCを含むナイーブ2F5 Vノックインマウスの脾臓から9種類の異なるVκ遺伝子ファミリーを用いて26のハイブリドーマ系列が作成された(表9)。第4に、2F5 Vノックインマウスは、脾臓B細胞数が有意に減少した(表8)にもかかわらず、正常な比率のMZ B細胞および瀘胞B細胞を示した(図12)。この所見は、正常なB細胞成熟のための能力が維持されていることを指摘する。最後に、2F5 V+/+マウスにおける血清IgMの欠如は、血清IgMを産生しないけれどもHC二量体からなる検出可能な血清IgGをもつκ+λ LC鎖欠損マウスにおいて報告された表現型(Zou et al, J. Exp. Med. 204: 3271-3283 (2007))と同様に、2F5 HCがLCと対合できないことによるものであると反論される可能性がある。しかし、2F5 Vノックインマウスは、ELISA定量のために抗κLC Abを用いて血清IgGを捕獲することにより証明されたように、実質的レベルの血清IgG/κをもつ。これらの所見を合わせて考えると、2F5 VノックインマウスにおいてB細胞数が減少することについては、HC+LC対合を損なわない免疫寛容が最も可能性のある説明であることが強く示唆される。
【0049】
表6.2F5 Vおよび3H9ホモ接合ノックインマウスにおけるBM B細胞亜集団頻度の比較;Hardy画分
【0050】
【表6】

【0051】
数値は絶対細胞頻度である(%±SD)
表7.2F5 Vおよび3H9ホモ接合ノックインマウスにおけるBM B細胞亜集団頻度の比較;IgD対IgM染色
【0052】
【表7】

【0053】
数値は絶対細胞頻度である(%±SD)
表8.2F5 VノックインマウスおよびWT同腹仔対照のBMおよび脾臓における総細胞数
【0054】
【表8】

【0055】
数値は平均±SDである
a,b,c 異なる文字をもつグループは、スチューデントのt検定により判定して0.05レベルで異なる
表9.2F5 Vノックインハイブリドーマ細胞系列における軽鎖利用の選択例
【0056】
【表9】

【0057】
ハイブリドーマ細胞系列は、2つのハイブリドーマ融合体から限定希釈度で平板培養した細胞の反復サブクローニングにより作成された;2F5 V+/+(2F5 V+/+)または2F5 V IgH/WT IgH F1(2F5 V+/a)のいずれかのノックインマウスから採取したNSOネズミ骨髄腫細胞およびナイーブ脾細胞を用いて実施した。2F5 V+/aマウスに由来するハイブリドーマ系列を、上清のIgH特異的抗体に関するELISAにより、まず2F5保有HCの発現についてスクリーニングした。2F5 VDJ挿入配列の存在を、2F5 V導入遺伝子およびCμに特異的なプライマーの組合わせを用いたcDNAのPCR増幅、続いて直接配列決定により立証した;Vκファミリーは、縮重Vκ特異的プライマーとCκプライマーの組合わせを用いたcDNAのPCR増幅、および直接配列決定により決定された。このパネルのすべてのハイブリドーマがIgMイソ型のものであり、2F5 V導入遺伝子に変異をもつものはなかった。

2F5 V+/+マウスにおける末梢表現型は、中枢寛容を逃れた残存する脾臓2F5 V保有B細胞において自己反応性を制御するための付加的な機序と一致する。特に、2F5 V+/+マウスにおいてT3 IgMlo集団が相対的に富化されること(図12)は、受容体エンゲージメントによってアネルギー性になった自己反応性B細胞の頻度が増大したことと一致する(Goodnow et al, Nature 352: 532-536 (1991), Goodnow et al, Nature 334: 676-682 (1988))。同様なIgMlo表現型が、種々の3H9マウス系列の脾臓移行期B細胞にも記載されており(Chen et al, Nautre 373: 252-255 (1995), Erikson et al, Nature 349: 331-334 (1991), Li et al, J. Exp. Med. 195: 181-188 (2002), Chen et al, J. Immunol. 176: 5183-5190 (2006), Sekiguchi et al, J. Immunol. 176: 1213-1225 (1991))、これはアネルギー性B細胞あるいはLC編集を受けた細胞の頻度が高いことを反映する(Sekiguchi et al, J. Immunol. 176: 1213-1225 (1991), Kiefer et al, J. Immunol. 180: 6094-6106 (2008), Kakajima et al, J. Immunol. 182: 3583-3596 (2009)))。興味深いことに、2F5 V+/+成熟B細胞は、アネルギー性抗Smトランスジェニック成熟B細胞画分と同様なより低いsIgM密度も示す(Culton et al, J. Immunol. 176: 790-802 (2006))。成熟2F5 V+/+B細胞集団において低下したsIgM発現についてこれに代わる魅力的な説明は、鶏卵リゾチーム(HEL)モデルの成熟B細胞集団と同様に、それらの自己反応性BCRが細胞内抗原に結合するというものである(Ferry et al, J. Exp. Med. 198: 1415-1425 (2003))。成熟2F5 V+/+B細胞においてIgMレベルが低下した理由とは関係なく、そのような集団が正常な比率で存在するという事実を2F5 V+/+マウスに非自己反応性血清Igが豊富に存在することと合わせると、付加的な機序(アネルギー以外)がこれらの集団における自己反応性をパージすると推定される。多様な3H9ノックイン系列において、3H9を保有するdsDNA反応性成熟B細胞を寛容化するそのような付加的な機序には、LC受容体編集、または二次的なV→VDJ再編成すなわちV置換による3H9挿入配列の置換が含まれる(Chen et al, Immunity 6: 97-105 (1997), Li et al, Immunity l5: 947-957 (2001), Chen et al, Immunity 3: 747-755 (1995))。これらの末梢B細胞寛容機序および/またはアネルギーのどちらが2F5 V+/+マウスにおいて作動しているかを判定することが重要であろう。
【0058】
一般的または標的化した自己反応性Ig導入遺伝子を保有するマウスは、自己反応性B細胞が排除された発生段階を判定するのに重要である(Shlomchik, Immunity 28: 18-28 (2008))。2F5 VDJノックインマウス系列は、2F5 VDJ再編成配列を発現する大多数のB系列細胞が小型プレBから未熟B細胞への移行期にそれらの発生を停止することを証明する(図10)。この発生遮断は、多くのLCと会合して抗DNA反応性を特定する3H9−76R VDJ再編成配列を発現するマウスにみられたものとほぼ等しい(Li et al, Immunity 15: 947-957 (2001))。生殖細胞系列2F5 VDJ再編成配列が自己反応性を特定しなければ、2F5 HCを保有する未熟B細胞は寛容化されず、自己反応性およびHIV−1中和にとって決定的な2F5 HC CDR残基が胚芽中心に生じたにちがいない。顕著なことに、自己反応性B細胞の排除は胚芽中心にも起きる可能性があり(Han et al, J, Exp. Med. 182: 1635-1644 (1995))、体細胞に生じた自己反応性/HIV−1中和にとって決定的な変異を保有する2F5 HC B細胞は、普通は胚芽中心の反応に際して削除または修正される可能性がある。寛容機序が同様に2F5生殖細胞系列VDJ配列に作用するかどうかを判定するためのさらに他の試験は有益な情報をもたらし、これらの試験の補足となるであろう。
【0059】
2F5および4E10 mAbは両方とも、HIV−1ウイルス粒子のgp41膜近接領域、および脂質二重層に結合する(Alam et al, J. Immunol. 178: 4424-4435 (2007))。2F5 HC CDR3における疎水性残基の変異は、脂質結合およびHIV−1中和を両方とも妨げる(Alam et al, Proc. Natl, Acad. Sci. USA epub (November 1 1, 2009))。この領域に特異的な中和抗体を誘導するには、脂質およびgp41 Envエピトープの両方を結合する抗体を産生できるB細胞集団を標的化することが必要であると思われる。この要件は、普通は起きないワクチン誘導によるB細胞応答を促進できる樹状細胞または他の抗原提示細胞の活性化によって容易になる可能性がある。2F5 mAbは多数のヒトに安全に投与されており、2F5は病原性脂質自己抗体の特徴をもたない(すなわち、それは脂質に結合するためにβ−2−グリコプロテイン−1を必要としない)(haynes et al, Science 308: 1906-1908 (2005), de Groot and Derksen, Thromb. Haemost 3: 1854-1860 (2005), Vcelar et al, AIDS 21: 2161-2170 (2007))。ただし、これらの抗体を誘導できるとすれば、ヒト以外の霊長類での試験での安全性モニタリングがきわめて重要であろう。
【0060】
これらの試験により、HIV−1広域中和抗体2F5含有HCはノックインマウス設定で免疫寛容を誘発するのに十分なほど自己反応性であることが証明される。これらの所見は、HIV−1 Env gp41膜近接領域に対する中和抗体を誘導する戦略を設計するのに重要な示唆をもつ。HIV−1ワクチン開発は、これらの寛容制御を安全に逃れることができるワクチン療法計画に注目すべきである。さらに、HIV−1に応答して直ちに生じる中和抗体応答、たとえば自然HIV−1感染の数ヵ月後に生じるオートロガス中和抗体を促進および拡張することに努力を集中すべきである(Richnab et akm Oric, Batk, /acad, /scu, YSA 100: 4144-4149 (2003), Wei et al, Nature 422: 307-312 (2003))。
【0061】
実施例3
m2F5の作成および特性付け。m2F5を作成するために、ヒトV+マウスC構築体であって元の2F5 V領域がマウスCγ1にライゲートしたもの(m2F5 HC)および元の2F5 Vκ領域がマウスCκに融合したもの(m2F5 LC)を、pCDNA 3.1発現ベクター内へクローニングし、293T細胞において一過性形質導入により同時発現させ、得られた組換え抗体(m2F5)を標準法により精製した。SPR結合測定のために、ビオチニル化MPERペプチドをストレプトアビジンセンサーチップに固着し、スクランブルド型のMPERペプチドへの非特異的結合を差し引いた。先の記載(Alam et al, J. Immunol. 178: 4424-4435 (2007))に従って、指示したリン脂質組成をもつリポソームを調製し、500RUの各リポソームをLlセンサーチップに固着した。各抗体を100μg/mLで注入し、ホスファチジルコリンを含むリポソーム上における抗体の非特異的結合を評価した。m2F5およびh2F5とマウス核抗原との反応性を検出するために、NIH−3T3細胞を標準条件下にスライドガラス上で増殖させ、次いで固定し、透過処理した(Wardemann et al, Science 301: 1374-1377 (2003))。固定した細胞を、次いで100μg/mlのm2F5またはh2F5を含有する培地中でインキュベートし、結合した抗体をそれぞれヤギ抗マウスIgκまたはヤギ抗ヒトIgG−FITCで、Zeiss Axiovert 200M共焦点免疫蛍光顕微鏡(50ms露光)により視覚検査した。m2F5およびh2F5とヒト核抗原との反応性を検出するために、HEp−2上皮細胞スライド(Zeus scientific, Raritan, NJ)を100μg/mlのm2F5およびh2F5抗体と共にインキュベートし、続いて飽和量のヤギ抗マウスIgκまたはヤギ抗ヒトIgで染色し、前記と同様に視覚検査した。自己反応性CD4i gp120 mAbであるヒトmAb 17bを、バックグラウンド染色のための陰性対照として用いた。キメラ型m2F5抗体およびh2F5抗体を、標準TZMB/L擬ウイルス感染阻害アッセイ法でEnv HIV−1擬ウイルスB.BG1168、B.SF162、B.QH0692、A.92UG037、およびC.TV−1を用いて試験した。
【0062】
2F5 Vマウスの作成。標的化ベクターは、免疫グロブリン重鎖の接合(J)領域に挿入された再編成2F5 V遺伝子を含み、すべての内在性Jセグメントは破壊されていた。ネズミ免疫グロブリンJ領域ならびにJから上流および下流の領域(3’および5’側相同アームの作成に用いた)をマウスC57BL/6ゲノムライブラリー由来のBACクローンから単離した。標的化主鎖は、CAG−DTAおよびloxP−フランクされたNeo選択カセットを含んでいた。ES細胞の相同組換えを、Nde IまたはBam HIを用いるサザンブロット法により確認した。標的化したESクローンに、neo選択カセットのインビトロCreリコンビナーゼ仲介欠失を施し、4つの適正に標的化されたneoクローンをC57BL/6J Tyrc−2J胚盤胞に注入し、それらのうち2つは、2F5 V挿入配列が伝達されたキメラマウスを産生した。これらの子孫において、WTまたは標的化対立遺伝子に特異的なPCRプライマーおよび両方の対立遺伝子に共通のプライマーにより、2F5 V+/−および2F5 V+/+遺伝子型を決定した(ベクター標的化スキームおよびスクリーニング戦略については、図8を参照)。2F5 V+/−または対照C57BL/6マウスにおいてIg HC転写体を検出するために、2F5 Vに特異的なプライマーおよびネズミCμまたはCγ1のいずれかに特異的なプライマーを、精製した脾臓B細胞からのcDNAを用いるPCR増幅に用いた。対照である内在性V1再編成配列は、多重V J558リーダー配列を認識するプライマーをCμまたはCγ1に特異的なプライマーと組み合わせて用いて検出された。
【0063】
実施例4
図18および19は、他の2つのHTV−1 MPERノックインマウス系統からの最初の特性付け(すなわち、骨髄B細胞の表現型プロフィール)を表わす:4E10 V+/+ノックインマウス(MPER bnAb 4E10の重鎖を両方の対立遺伝子に発現するように工学的処理)、および2F5 V+/+ノックインマウス(MPER+bnAb 2F5の軽鎖を両方の対立遺伝子に発現するように工学的処理)。
【0064】
図18は、他のMPER bnAbである4E10からの重鎖(類似の自己反応性プロフィール、すなわち長い疎水性CDR3、および自己抗原に対するインビトロ反応性を示す)が、2F5 HCと同様に、インビボで寛容を誘発するのに十分なほど自己反応性であることも示す。これは、MPER bnAbノックインモデルにおいて実施した試験を、このクラスのHTV−1 bnAb、すなわちこの著しく保存されたワクチン標的であるMPERに対するものがインビボで寛容機序によってどのように扱われるかを理解するために、また種々のワクチン接種戦略により誘発されるMPER特異的Ab応答がその機序によってどのような作用を受けるかを評価するための読出しとして、一般化できることを指摘する。
【0065】
図19は、特異性制御として2つの理由で重要である。第1に、それは、ヒトIgの一部を保有する発現構築体の標的化挿入がB細胞発生に全般的な非特異的作用を及ぼさないことを示す。第2に、それは、十分に特性付けされた高親和性自己抗体のノックインモデルにおける先の所見を確証し、これにより、それらの軽鎖が内在性HCレパートリーと対合した際に自己反応性を特定せず、かつ重要なことに、B細胞発生に対する随伴作用をもたないことが証明された(これは、それらの自己反応性の特定におけるそのような高親和性自己抗体の重鎖の優先的役割と対照的である)。
【0066】
図20は、2F5 V+/+ノックイン系統を図6に提示した系統であるEm−bcl2 tgマウスと交配することにより作成された2F5 VH Eμ−bcl2 tgマウスから得られた初期データを示す。図20の重要性は2つある。第1に、それは2F5 V発現B細胞が削除制御下にあるという追加証拠を提供し、これは、そのような削除制御が遺伝的に除かれると普通はきわめて稀な潜在的bnAb産生B細胞前駆体であるMPER反応性B細胞を富化できることを指摘する(図20C)。第2に、2F5 V×bcl2 tgマウスの脾臓および骨髄における2F5 V発現B細胞の総数のレスキュー(図20A)、および総血清IgMおよびIgG3のレスキューは、2F5 Vマウス(削除/アネルギー制御をもつ)および2F5 V×bcl2 tgマウス(これらの削除/アネルギー制御をもたない)は、特別な免疫化戦略により誘発されたMPER Ab応答が削除/アネルギー寛容機序によりどのような作用を受けるかを調べるためのエレガントな比較読出しモデルとして役立ちうることを意味する。
【0067】
前記に引用したすべての文献および他の情報源を全体として本明細書に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的化トランスジェニックマウスであって、前記マウスのゲノムはヒトHIV−1の広域中和抗体の重鎖または軽鎖の可変部をコードする核酸配列を含み、その際、前記核酸配列は、前記核酸配列が発現して前記ヒトHIV−1の広域中和抗体の前記重鎖または軽鎖の可変部が産生されるように作動可能な状態でプロモーターに結合して前記ゲノム内に存在するマウス。
【請求項2】
前記ヒトHIV−1の広域中和抗体が2F5である、請求項1に記載のマウス。
【請求項3】
前記ヒトHIV−1の広域中和抗体が4E10である、請求項1に記載のマウス。
【請求項4】
前記核酸配列が、ヒトHIV−1の広域中和抗体の重鎖可変部をコードする、請求項1に記載のマウス。
【請求項5】
前記核酸配列が、ヒトHIV−1の広域中和抗体の軽鎖可変部をコードする、請求項1に記載のマウス。
【請求項6】
前記ヒトHIV−1の広域中和抗体の重鎖可変部をコードする前記核酸配列が、作動可能な状態でJ558 H10ファミリーのVHプロモーターに結合している、請求項4に記載のマウス。
【請求項7】
前記ヒトHIV−1の広域中和抗体の軽鎖可変部をコードする前記核酸配列が、作動可能な状態でVκOχ−1ファミリーのVκプロモーターに結合している、請求項5に記載のマウス。
【請求項8】
前記核酸配列が、作動可能な状態で内在性エンハンサーエレメントに結合して前記ゲノム内に存在する、請求項1に記載のマウス。
【請求項9】
前記マウスのゲノムが、前記ヒトHIV−1の広域中和抗体の重鎖可変部をコードする核酸配列、および前記ヒトHIV−1の広域中和抗体の軽鎖可変部をコードする核酸配列を含む、請求項1に記載のマウス。
【請求項10】
請求項1に記載のマウスから単離できる、キメラ型のHIV−1広域中和抗体。
【請求項11】
請求項9に記載のマウスから単離できる、キメラ型のHIV−1広域中和抗体。
【請求項12】
前記キメラ抗体が2F5の重鎖および軽鎖の可変部を含む、請求項11に記載のキメラ抗体。
【請求項13】
前記キメラ抗体が4E10の重鎖および軽鎖の可変部を含む、請求項11に記載のキメラ抗体。
【請求項14】
請求項1に記載の前記マウスの抗体産生B細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより誘導されたハイブリドーマ。
【請求項15】
請求項14に記載のハイブリドーマにより産生されたモノクローナル抗体。
【請求項16】
HIV−1広域中和抗体の産生を誘導できる候補作用物質を同定する方法であって、
i)請求項1に記載の前記マウスに、抗体を産生できる条件下または抗体を発現するようにB細胞を誘導できる条件下で被験化合物を投与し、
ii)抗体を含有する試料または抗体を発現するB細胞を含有する試料をマウスから入手し、そして
iii)HIV−1の膜近接外部領域(MPER)に特異的な抗体またはMPER特異的B細胞の存在または不存在について前記試料をアッセイし、その際、前記試料中に対照試料と比較して前記MPER特異的な抗体またはB細胞が存在することは前記化合物が前記候補作用物質であることの指標となる
ことを含む方法。
【請求項17】
前記抗体を含有する試料または前記抗体を発現するB細胞を含有する試料が、血清試料または粘膜抽出物の試料である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記粘膜抽出物の試料が唾液、便または膣洗浄液の試料である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記B細胞を含有する試料がマウスの全身または粘膜の免疫組織から入手した試料である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記試料が骨髄、脾臓または末梢血リンパ球試料である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記試料が腸リンパ節もしくはパイエル板の試料または雌性生殖管試料または肺試料である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
段階iii)がELISA、ELISPOT、表面プラズモン共鳴、Luminexまたはサイトメトリーベースのアッセイ法を用いて行なわれる、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
さらに、前記候補作用物質をHIV−1中和活性についてアッセイすることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
TZM−blアッセイ法を用いて中和活性について前記作用物質をアッセイすることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記被験化合物がタンパク質またはペプチドを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
HIV−1広域中和抗体の産生を誘導できる作用物質を同定する方法であって、
i)請求項1に記載の前記マウスに、抗体を産生できる条件下または抗体を発現するようにB細胞を誘導できる条件下で被験化合物を投与し、
ii)抗体を含有する試料または抗体を発現するB細胞を含有する試料を前記マウスから入手し、そして
iii)前記試料を対照試料と比較してHIV−1中和活性についてアッセイする
ことを含む方法。
【請求項27】
段階(iii)がTZM−blアッセイ法を用いて行なわれる、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図7I】
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【図7J】
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【図7K】
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【図7L】
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【図7M】
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【図7N】
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【図7O】
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【図7P】
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【図7Q】
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【図7R】
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【図7S】
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【図7T】
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【図7U】
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【図7V】
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【図7W】
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【図7X】
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【図7Y】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2012−522520(P2012−522520A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503774(P2012−503774)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/030011
【国際公開番号】WO2010/115210
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(511043965)デューク ユニバーシティー (9)
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】