説明

マウントキャップ

【課題】撮像素子の受光面上に、カメラマウントとの摺動によって生じるマウントキャップの削りかすが付着することを回避したい。
【解決手段】内径が規格化されたカメラマウントを有するカメラの、カメラマウントを覆うマウントキャップであって、カメラマウントの内周に対して遊嵌して装着する内周装着部と、内周よりも外側に設けられた嵌合壁に対して嵌合して装着する外周装着部とを備え、外周装着部により装着されたときには、内周装着部は内周に接触しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウントキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラマウントに交換レンズが装着されていない場合に、マウントキャップを装着することにより、カメラマウント開口からカメラ本体内部に塵埃等が侵入することを防ぐ。カメラマウントは複数の規格により規格化されており、それぞれの規格に合わせてマウントキャップが用意されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−15016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同一の規格を謳うカメラマウントにおいて、カメラマウントの内周径は唯一に規定されていても、外周径は、カメラの構造に合わせて数種類に規定されている場合がある。このような場合であっても、マウントキャップをカメラマウントの内周径で嵌合するように構成すれば、外周径に関わらず同一規格のカメラマウントに装着することができる。しかしながら、近時のカメラは、撮像素子を用いるデジタルカメラが主流であり、撮像素子の受光面上に、カメラマウントとの摺動によって生じるマウントキャップの削りかすが付着することを回避したいという要請があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の態様におけるマウントキャップは、内径が規格化されたカメラマウント(11)を有するカメラの、カメラマウントを覆うマウントキャップ(20)であって、カメラマウントの内周(112)に対して遊嵌して装着する内周装着部(251)と、内周よりも外側に設けられた嵌合壁(113)に対して嵌合して装着する外周装着部(270)とを備え、外周装着部により装着されたときには、内周装着部は内周に接触しない。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】カメラ本体とマウントキャップの外観斜視図である。
【図2】カメラマウントの構造を示す斜視図である。
【図3】マウントキャップの外観斜視図である。
【図4】外周径が最大でない場合のマウントリングと、マウントキャップの関係を示す断面図である。
【図5】図4のカメラマウントにおいて、図4とは異なる断面線によるマウントリングとマウントキャップの関係を示す断面図である。
【図6】図5とは別方向から観察した、マウントリングとマウントキャップの関係を示す断面図である。
【図7】外周径が最大の場合のマウントリングと、マウントキャップの関係を示す断面図である。
【図8】カメラマウントの外側に嵌合壁が設けられたカメラの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、カメラ本体10とマウントキャップ20の外観斜視図である。カメラ本体10は、カメラマウント11を備え、交換式レンズを装着できるように構成されている。カメラマウント11はカメラ本体10の開口部であり、交換式レンズの未装着時にはカメラ本体10の内部であるミラーボックス12が外界に曝され、塵埃等が侵入する恐れがある。特に、ミラーボックス12の背後に配置される撮像素子の受光面に塵埃が付着すると、撮影画像にその影が写り込んでしまい、非常に不都合である。そこで、交換式レンズを装着しないときには、カメラマウント11を覆うべく、マウントキャップ20を矢印方向に装着する。なお、以下の説明においては図示するように、ミラーボックス12へ入射する被写体光軸の方向をz軸とし、これに直交する方向をx軸、y軸とする。
【0010】
図2は、本実施形態に係るカメラマウント11の構造を示す斜視図である。カメラマウント11はいわゆるバヨネット方式を採用する。カメラマウント11は、マウントリング110、マウント係合爪120および板バネ130を主な構成要素とする。
【0011】
マウントリング110は、被写体光軸に垂直な平面であってフランジバックの基準面となるマウント面111、斜線で示す内周壁112、および網点で示す外周壁113を備え、複数のビス140でカメラボディに固定されている。マウントリング110のうちマウント面111とは反対の面、すなわちミラーボックス12側の面には、周方向に約120度間隔でマウント係合爪120が3個設けられている。マウント係合爪120は、マウントリング110の内周壁よりも若干内側に突出しており、マウントリング110と同心円弧状に所定の中心角をもって形成されている。なお、マウント係合爪120は、マウントリング110と一体成形されていても良いし、別体としてマウントリング110に固着されても良い。
【0012】
3個のマウント係合爪120のそれぞれに、マウントリング110と接する面とは反対の面、すなわちミラーボックス12側の面に、板バネ130が設けられている。板バネ130は、バヨネット式マウントとして、装着される交換式レンズに設けられたレンズマウントをマウントリング110のマウント面111に付勢する役割を担う。つまり、板バネ130は、交換式レンズが装着されたときに、当該交換式レンズの被写体光軸方向のがたを除去する。また、マウントキャップ20が装着されたときも被写体光軸方向のがたを除去するが、具体的な構成については後述する。
【0013】
交換式レンズに設けられたレンズマウントは、カメラマウント11の板バネ130によりマウント面111に付勢されると同時に、マウントリング110の内周壁112に嵌合する。これにより、径方向のがたも除去される。したがって、カメラマウント11に対して交換式レンズのレンズマウントを装着するときの径方向の関係に着目すれば、カメラマウント11は、その内周径が一定となるように規格化されてさえいれば、外周径に関わらず交換式レンズを装着することができることになる。
【0014】
カメラマウント11は、交換式レンズの装着および固定の機能に限らず、カメラ本体10と交換式レンズとの通信をになう端子の接続、交換式レンズのフォーカスレンズを駆動する駆動力の伝達などの機能を担う場合もある。このような機能は、カメラ本体10が備える性能によって、存在する場合もあればそうでない場合もある。すなわち、カメラ本体10の機種に応じて、カメラマウント11が果たす役割が異なる。例えば、カメラマウント11内にフォーカスレンズを駆動する駆動カプラーを備える場合、内周径が一定であれば、外周径は、駆動カプラーを備えない場合に対して大きくなる。したがって、内周径が規定されこれに対応する交換式レンズが装着できるような、同一の規格を謳うカメラマウントであっても、その外周径は、数種類が規定されている場合がある。つまり、同一規格を謳うマウントリング110において、内周壁112の径は一定であるが、外周壁113の径はいくつかの値を取る。
【0015】
図3は、本実施形態に係るマウントキャップ20の、カメラマウント11に装着される側から見た外観斜視図である。マウントキャップ20は、カメラ本体10の開口部を覆う蓋板210、蓋板210の外周部から略鉛直方向に延びるスカート部220およびカメラ本体10の開口部に侵入する円筒部230を主な骨格とする。
【0016】
円筒部230の先端には、カメラマウント11のマウント係合爪120に対応して、周方向に約120度間隔で3箇所にキャップ係合爪240が設けられている。キャップ係合爪240は、板バネ130の付勢力を受けるバネ受けリブ241と回転規制リブ242とからなる。マウントキャップ20は、キャップ係合爪240とマウント係合爪120が干渉しないように互いにずれた状態で、その円筒部230がカメラ本体10の開口部に差し込まれる。そして、反時計回りに回転されることによりバネ受けリブ241とマウント係合爪120が板バネ130の付勢力を受けてz軸方向に係合する。さらに反時計回りに回転されると、マウント係合爪120の端部が回転規制リブ242と接触し、それ以上の回転を規制する。これにより、マウントキャップ20は、カメラマウント11に対してz軸方向にがたなく装着される。
【0017】
円筒部230には、内周装着リブ250が複数設けられる。例えば、図示するように3つの内周装着リブ250を一組として、周方向に約120度間隔で3組設ける。内周装着リブ250の斜線で示す内周装着面251は、いずれも被写体光軸を中心軸として同一の径となるように形成されている。なお、回転規制リブ242の外周面243の被写体光軸からの径は、内周装着面251の径以下となるように形成されている。マウントリング110の内周壁112との相対的な関係は後述する。
【0018】
スカート部220の内側には段差状にマウント面当接部260が設けられている。マウントキャップ20がカメラマウント11に装着されたときに、マウント面当接部260は、マウント面111と当接し、マウント係合爪120およびキャップ係合爪240と協調して、マウントキャップ20をz軸方向にがたなく固定させる。マウント面当接部260に対してスカート部220の端方向に略垂直に連なる網点で図示する面は、外周装着面270を形成する。外周装着面270は、被写体光軸を中心軸として同一の径となるように形成されている。マウントリング110の外周壁113との相対的な関係は後述する。
【0019】
図4は、内周径が同一に規定された同一規格を謳うカメラマウント11において、外周径が最大でない場合のマウントリング110と、マウントキャップ20の関係を示す断面図である。特に、カメラマウント11に対してマウントキャップ20を装着したときに同一断面を形成する、図2のA−A断面と図3のA−A断面を表す。
【0020】
規定された内周径とは、マウントリング110の内周壁112が被写体光軸から一定の距離にあることを意味する。このとき、マウントキャップ20の内周装着面251は、内周壁112に対して対向するが、複数設けられている内周装着リブ250のそれぞれの内周装着面251のすべてが内周壁112に接して嵌合するわけではない。すなわち、マウントキャップ20がその中心を被写体光軸に一致させてカメラマウント11に装着されると、複数の内周装着面251で形成する円と内周壁112の円は同心円をなし、内周装着面251は、内周壁112に対して遊嵌するように形成されている。換言すれば、内周装着面251の半径は、内周壁112の半径よりも若干小さく形成されている。
【0021】
一方、同一規格を謳うカメラマウント11であっても、外周径が最大でない場合は、マウントキャップの外周装着面270は外周壁113に対向するが、互いに接触することはない。ただし、外周装着面270に連なるマウント面当接部260は、マウントリング110のマウント面111の少なくとも一部と接触するように形成されている。
【0022】
図5は、図4のカメラマウント11において、図4とは異なる断面線によるマウントリング110とマウントキャップ20の関係を示す断面図である。具体的には、カメラマウント11に対してマウントキャップ20を装着したときに同一断面を形成する、図2のB−B断面と図3のB−B断面を表す。また、図6は、図5とは別方向から観察した、マウントリング110とマウントキャップ20の関係を示す断面図である。具体的には、カメラマウント11に対してマウントキャップ20を装着したときに同一の視点を形成する、図2のC方向と図3のC方向から見た断面図である。
【0023】
マウントリング110に設けられたマウント係合爪120は、マウントキャップ20のバネ受けリブ241と対向しており、マウント係合爪120に設けられた板バネ130がバネ受けリブ241をz軸方向へ付勢している。同時に、マウント面当接部260は、マウントリング110のマウント面111の少なくとも一部と接触している。したがって、このようないわゆるバヨネット方式のカメラマウント11に対して、マウントキャップ20を、マウント係合爪120の端部が回転規制リブ242と接触するまで回転して装着すると、z軸方向のがたは解消される。
【0024】
以上のように、マウントリング110の内周壁112に対して遊嵌するように内周装着面251を形成したので、装着時に互いに全周にわたって摺動するようなことがなく、よって摺動時に発生する削りかすは大幅に削減されることが期待できる。また、内周壁112に対して内周装着面251を遊嵌させるだけでは、マウントキャップ20がカメラマウント11に対して固定されずにがたが生じるところ、マウント面111に対してマウント面当接部260が当接するようにマウント面当接部260を形成したので、マウントキャップ20はカメラマウント11に対してz軸方向に付勢され、装着後にがたつくことがない。
【0025】
図7は、内周径が同一に規定された同一規格を謳うカメラマウント11において、外周径が最大の場合のマウントリング110と、マウントキャップ20の関係を示す断面図である。特に、カメラマウント11に対してマウントキャップ20を装着したときに同一断面を形成する、図2のA−A断面と図3のA−A断面を表す。
【0026】
マウントキャップ20の外周装着面270は、同一規格を謳うカメラマウント11において外周径が最大のマウントリング110の外周壁113に対して嵌合する。この場合は、マウントキャップ20は、カメラマウント11に対して、xy平面内においてもがたなく固定される。このとき、マウントリング110の内周壁112、外周壁113、マウントキャップ20の複数の内周装着面251が形成する円、および外周装着面270は互いに被写体光軸を中心とした同心円をなす。外周径が最大であってもそうでなくても内周径は同一であるので、内周壁112の半径よりも若干小さく形成されている内周装着面251は、外周装着面270が外周壁113に対して嵌合する限り、内周壁112と接触することがない。なお、これらの意味においてカメラマウント11の最大の外周径とは、マウントキャップ20の外周装着面270により嵌合させることを想定した外周壁113の径である。
【0027】
以上のように、外周径が最大のマウントリング110に対しては、その外周壁で嵌合するようにマウントキャップ20を形成したので、内周壁112と内周装着面251は接触することがなく、装着時にこれらから削りかすが発生することはない。したがって、撮像素子に付着する塵埃を軽減する観点から非常に有効である。
【0028】
なお、上記の実施形態においては、内周装着面251を内周装着リブ250により形成したが、回転規制リブ242の幅を広く取ってその外周面243を代用させることにより、内周装着リブ250を除いても良い。また、内周装着面251をリブの表面で形成することに限らず、円筒部230上に凸部を複数並べてその包絡面で形成してもよいし、外周装着面270と同様に円筒部230を一周囲んで形成しても良い。同様に外周装着面270も、スカート部220の内周を一周囲んで形成することに限らず、凸部を複数並べてその包絡面で形成してもよいし、複数のリブの表面で形成しても良い。
【0029】
なお、マウントキャップ20は、外周装着面270がマウントリング110の外周壁113に嵌合する構成に限らない。図8は、カメラマウント11の外側に嵌合壁370が設けられたカメラの外観斜視図である。図示するように、マウントキャップ20の外周装着面270と嵌合させるべく、カメラマウント11の外側に、独立して嵌合壁370が円周方向に複数個所設けられている。このような場合、マウントキャップ20の外周装着面270は、この嵌合壁370に嵌合するように形成される。
【0030】
嵌合壁370がマウントキャップ20の装着に特化して設けられると、外周装着面270は嵌合壁370の形状に合わせて形成すれば良いので、必ずしも円周面で形成しなくても良い。すなわち、マウントキャップ20の外形は円以外の形状であっても良い。例えば、複数の嵌合壁370が矩形の一部を形成するように設けられていれば、外周装着面270はその矩形形状となるように形成される。このような場合であっても、内周装着面251は、マウントリング110の内周壁112には接触しない。
【0031】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0032】
10 カメラ本体、11 カメラマウント、12 ミラーボックス、20 マウントキャップ、110 マウントリング、111 マウント面、112 内周壁、113 外周壁、120 マウント係合爪、130 板バネ、140 ビス、210 蓋板、220 スカート部、230 円筒部、240 キャップ係合爪、241 バネ受けリブ、242 回転規制リブ、243 外周面、250 内周装着リブ、251 内周装着面、260 マウント面当接部、270 外周装着面、370 嵌合壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径が規格化されたカメラマウントを有するカメラの、前記カメラマウントを覆うマウントキャップであって、
前記カメラマウントの内周に対して遊嵌して装着する内周装着部と、
前記カメラの前記内周よりも外側に設けられた嵌合壁に対して嵌合して装着する外周装着部と
を備え、
前記外周装着部により装着されたときには、前記内周装着部は前記内周に接触しないマウントキャップ。
【請求項2】
前記カメラマウントはバヨネット式であり、
前記内周装着部により装着される場合であっても、前記外周装着部により装着される場合であっても、前記内周装着部近傍に設けられた爪部が係合することにより前記カメラマウントに固定される請求項1に記載のマウントキャップ。
【請求項3】
前記マウントキャップの回転を規制する回転規制部が前記爪部に隣接して設けられ、
前記内周装着部は、前記内周と接触する面を前記回転規制部の外周面で形成する請求項2に記載のマウントキャップ。
【請求項4】
前記嵌合壁は、前記カメラマウントの外周である請求項1から3のいずれか1項に記載のマウントキャップ。
【請求項5】
前記内周装着部と前記外周装着部の少なくとも一方は、前記内周または前記嵌合壁と接触する面をリブ面で形成する請求項1から4のいずれか1項に記載のマウントキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−81193(P2011−81193A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233459(P2009−233459)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】